[書評]のメルマガ

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[書評]のメルマガ vol.641


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■■ [書評]のメルマガ                2017.11.10.発行
■■                              vol.641
■■ mailmagazine of book reviews       [慣れるとすっきり! 号]
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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→週刊プレイボーイと漫画についての一考察

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→帝都防衛の変遷をみる・・・大規模自然災害対策に活かせるか?

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→知らないことを知る

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 まころんさんに、『脳疲労が消える最高の休息法 CDブック』(ダイヤモン
ド社)の書評を書いていただきました。

「慣れるとすっきり!」

これまでとは違う組織体制や役割になったこともあって、今までとは違う脳の
使い方をしているのか、いつも頭がしびれたような疲労感がありました。眠り
も浅く、会社の中でも外でもイライラしていたため、ストレスで倒れる前にこ
の本とCDを試してみようと思いました。瞑想も試してみましたが、続かなか
ったので……

はじめのうちは緊張していたみたいで、まったくリラックスできませんでした。
ナレーションも、何度も同じことを聞かなければならない(特に最初のほう)
のが苦痛で、実は少しの間投げ出していました。ただ、ナレーターの声や話し
方は耳に心地よく、聞いた後には思い出せないくらいの癖のなさなので、野球
のドラフト会議のナレーションみたいだったら嫌だな、という心配は解消され
ていました。

(続きはこちらで…)
 https://www.amazon.co.jp/gp/review/R167NJEJ8Z4HB4/

 ありがとうございます!

 読者書評はまだまだ募集中です。

 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<95>週刊プレイボーイと漫画についての一考察

 「松本清」という太ゴシックの三文字が、デカデカと表示されたパネルが目
についたのは、京都の四条通だった。
 ドラッグストアの店頭に掲げられたそのパネルは、「マツモトキヨシ」の中
国語表記…であるらしいと知れたが、しかし…

 店側は中国語表記のつもりでも、中国の人がこれを「マツモトキヨシ」と読
めるか?
 という疑問が、ふと湧いた。
 多分、「ソンペンチン」と読んでしまうのではないだろうか?

 だがしかし、マツモトキヨシとしては、なんと読まれようとも「松本清」と
いう固有名詞を憶えてもらえれば、「それでいいのだ!」かも、と思ったのは、
昨年の、やはり京都でのことを思い出したから。

 同じ四条通だった。
 赤信号で立ち止まった交差点で、中国人観光客らしき男女4人ほどのグルー
プに道を尋ねられていたのは、サラリーマン風の男性。
 と、その男性が、隣に立ち止まったわしの方へふいに振り向き、困惑の態で
尋ねてきた。

 「あの〜〜、この人たち、なんか“ターパン”ってとこに、行きたいそうな
んですが…」
 「は? ターパン?」
 「はい…多分、店かなんかだと思うんですが……ご存じないですか?」
 と言われても、皆目見当もつかないので、そう答えた。
 「はあ、そうですか」と、サラリーマン氏は大きなキャリーバッグを抱えた
グループのリーダーらしき人に向き直り、英語で「ソーリー、わからない」と
伝えて、交番の場所を教えていた。

 「ターパン」の正体は、それから3か月後に判明した。
 たまたま見ていたテレビのニュースショーで、大阪ミナミにある、中国人観
光客に人気だというホテルを紹介していたのだ。
 で、その宿泊客の一人に、レポーターは大阪の印象尋ねていたのだが、上機
嫌でインタビューを受けている中国人のおじさんの会話の中に、やたらに「タ
ーパン」が連発されるのだ。

 で、気がついた。
 「ターパン」は、「大阪」なのだった。
 あの京都での中国人たちは、大阪への行き方を尋ねていたのだった、と、よ
うやくにわかったのであった。

 地名や人名に関しては、漢字表記を日本、中国それぞれの原音ではなく、そ
れぞれの音で読むのが、なんでか日本−中国間でのみ、慣例化されてますから
ね。
 だから、習近平は、日本では「シュウ・キンペイ」だし、安倍晋三は、中国
では「アンペイ・チンサン」だし。

 ふと気になって調べてみると、「トヨタ」「ホンダ」は中国では「豊田(豊
は簡体字)」「本田」と表記して、それぞれ「フェンティャン」「ペンティャ
ン」と読み、「マツダ」は「馬自達(馬・達は簡体字)」で「マツダ」と読ま
せているそうだ。

 マツモトキヨシもまた、「ソンペンチン」と中国人に発音しやすい名前で憶
えてもらえれば本望なんだろう。

 そんな、チントゥー…いや京都からの帰り、電車の中吊りに「週刊プレイボ
ーイ」の広告を見つけたのは、ついこないだ。
 おお、月刊の「PLAYBOY」は、とっくに休刊したというのに、こちらはまだ
頑張ってたのね、と妙な親しみと感慨を抱いてしまった。
 「週刊プレイボーイ」、ライバル誌の「平凡パンチ」とともに、中学高校の
ころには本屋の立ち読みで、ずいぶんとお世話になったものです。

 確か、わしらが高校生の頃に、「プレイボーイ」と同じ集英社から「日本版
PLAYBOY」が創刊されて、大学生になったころには、もっぱらそっちを買って…
と言っても毎号ではないけど…いたのだけど、同じ下宿で隣の部屋の、宮崎県
出身でわしより1学年上のクマダさんなどは、高校時代からの「週刊プレイボ
ーイ」愛読者で、部屋には、そこから切り取ったピンナップ(「キャンディー
ズ」と「アグネス・ラム」だっけか…?)なども壁に貼られていたりした。

 あ、そう言えば、キャンディーズもアグネス・ラムも、わしと「同級生」な
のだった…というのは、どうでもいいですね、はい。

 あのころ…というのは、わしらが「若者」だったころ、この「週刊プレイボ
ーイ」「平凡パンチ」、それから「GORO」なんてのもありましたっけ、これら
の雑誌のメインの読者層というのは、10代後半から20歳代前半の男性だった、
と思う。

 ところが、今や唯一の「生き残り」である「週刊プレイボーイ」の読者層の
メインは、なんと「30〜40歳」だ…というのを、ふと気になって調べたネット
の「媒体資料」で知って愕然とした。

 で、ただ今の「週刊プレイボーイ」、その誌面は、いったいどうなっておる
のか? と、買ってみたのは、「創刊51周年記念月間特大号 第4弾」と銘打
たれた2017年11月6日号。定価は税込480円…た、高い…

 表紙と巻頭グラビアは、「欅坂46」。おお、特大ピンナップも健在で、こ
ちらも欅坂。
 グラビア含めた誌面構成は、まず「オンナ」そして「クルマ」「スポーツ」
ときて、合間合間にエンタメと時事ネタ、社会ネタ、巻末には(きちんと)ヌー
ドグラビアも健在…で、その昔とまったく変わらない。

 昔と変わってない、のが、ただ今の読者層に若者がいない理由じゃないか、
と気がついた。

 わしが学校で接する男子学生諸君は、「(生身の)オンナ」「クルマ」「スポ
ーツ」には、まるで関心がない。
 増して、時事ネタや社会ネタは、彼らにとっては遠い異次元の出来事でしか
ない。
 ためしに、教室でこの雑誌を見せたところが、大半の学生がその存在自体を
「知らない」と言うのであった。

 「オンナ」「クルマ」「スポーツ」と並んで、かつての週刊プレイボーイの
もうひとつの柱は、「漫画」だった。
 週プレには、昔からストーリー漫画が連載されていた。
 ライバルの「平凡パンチ」には、他の一般週刊誌と同じく、ギャグのコマ漫
画こそ創刊当初から連載されていたが、ストーリー漫画が連載され始めたのは、
ようやく80年代に入ってからだった。

 今では別に珍しくもないが、一般週刊誌でストーリー漫画を連載したのは、
週プレが最初ではなかったかな?
 中でも、70年代の『修羅雪姫』(小池一夫・原作/上村一夫・画)と80年代
の『俺の空』(本宮ひろ志)は、ともに映画化もされ、大ヒット作であった。

 『修羅雪姫』は、後に、クエンティン・タランティーノの映画『キル・ビル』
の原案となった。
 小学校で同級生だったカズヤくんは、『俺の空』の主人公・安田一平に心酔
してたので、最近生まれた長男には「一平」と名付けた、と、1985年頃、久し
ぶりに会ったわしに、嬉しそうに話してくれた。

 漫画雑誌を買うのは、漫画を読むのが好きな人だ。
 言い換えると…言い換え過ぎて極論かもしれないが…漫画雑誌での連載漫画
は、漫画好きな読者にしか読まれない。
 だから、一般誌での連載漫画がヒットし、漫画が格段好きでもない読者に読
まれることが、漫画のすそ野を広げる一助となってきた、と思うのだ。

 が、最近の漫画で、一般誌の連載からヒットにつながった作品、というのは、
「週刊アサヒ芸能」連載の『めしばな刑事タチバナ』くらいしか思い浮かばな
い。

 漫画が、漫画雑誌という「囲いの中」に閉じこもってしまうと、ますます閉
塞し、縮小の道を歩んでしまうんじゃ…という危惧は、あながち的外れではな
いと思う。

 今回買ってきた週プレにも、やはり漫画は連載されている。
 猿渡哲也『TOUGH外伝』。
 90年代に『高校鉄拳伝タフ』として「週刊ヤングジャンプ」で連載が始まり、
その後シリーズ化されて、長く同誌で連載が続いていた格闘技漫画の続編であ
る。
 かつて「ヤンジャン」誌上でこれを読んでいたであろう、ただ今の「30代〜
40代」という読者層には、ぴたりと嵌まる作品なのだろうけど、自社の他媒体
からの続編…「借りもの」でお茶を濁すというのは、あの「週プレ」らしくな
い、と思うのは、わしだけ?

 それと、今回買った「週プレ」をパラパラとめくりつつ眺めるうち、「なん
か変」な違和感が…と思ったら、広告だった。
 あるべきところに、あるべき広告が「ない」のだ。

 まず「表4」に広告がない。「表2」も広告はなく、表2から続く見開きの
グラビアは「創刊51周年記念」のTシャツプレゼントのお知らせ。
 「表3」に辛うじて「GREE」の広告が入っている。
 中のカラーページでも、広告はたいていが集英社の自社広告。

 これは、一般誌としてはあり得ない事態ではなかろうか。
 480円と、週刊誌としてはいささか高い定価も、これなら納得だ。
 納得はできても、この定価で週刊誌を買う気には、ならんだろうけど。
 ことに、わしらの頃には最大の読者層だった「20歳前後・男」は、まず買わ
ないだろう。
 さきの媒体資料によると、発行部数はおよそ22万部。全盛時でいくらあった
かは知らんが、多分、半減以下には落ちてると思う。

 出版不況の元凶は、雑誌が売れないことだ。
 雑誌が売れないから、その主たる収入源である広告が集まらないという構図
は、昨今のTV界と同じ。

 紙の雑誌の存続が、ますます難しくなっているけど、電子であれWEBであ
れ形はどうあれ、「週プレ」には、漫画を、できれば「借りもの」ではなく、
オリジナルの漫画を掲載し、新しい(若い)読者層を取り込む努力を続けてい
ただきたい、と思う。

 普段買いもしないし読んでもない外野からの、まことに勝手な言い分ではあ
るが、はるか後方の外野から、週プレに励ましのエールを送って、この稿を〆
ようと思う。

 がんばれ頑張れ、週プレ! ハダカもいいけど漫画もね!

 あ、そうだ。英語「PLAYBOY」の中国語表記は、音訳ではなく意訳で「花花
公子」なんだそうだ。

 加油! 週刊花花公子!


太郎吉野(たろう・よしの)
 2011年に神戸から西宮へ引っ越して、ただ今のホームグラウンドは甲子園。
右投げ右打ち。掛布二軍監督はひとつ年上の同級生。

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第95回 帝都防衛の変遷をみる・・・大規模自然災害対策に活かせるか?

 阪神・淡路大震災(1995年)や東日本大震災(2011年)の惨状をみて、70数
年前の空襲などの戦災をイメージした人は多いと思う。すべてが焼き払われて
いる(あるいは流されている)様子は、戦争を体験していない人々でも写真を
比較してほとんど同じ状況だなぁ、という感想を持つに違いない。

 特にいま心配されている、首都直下型地震において、東京という街がどんな
様子になってしまうのかを想像する上で、過去に経験した自然災害や戦争に対
する対策と被害状況をみてみることは、すこぶる有益なことということになる。
まさに歴史を知ることは将来への対策になるのである。

 首都のことを戦前は「帝都」と云っていた。幕末・維新(1868年)から終戦
(1945年)までの東京の守り、防衛体制はどのようになっていたのかを知り、
防災対策・災害後の復興対策のヒントになるいい本がある。

『帝都防衛 −戦争・災害・テロ−』(土田宏成 著)(吉川弘文館)
(歴史文化ライブラリー452)(2017年9月1日初版発行)

 本書は、江戸幕府によるお台場構築から始まる。“街を防衛する”というこ
とについては、ペリー提督の来航までは、ずっと国内の敵から街を守る、とい
う発想しかなかったが、大砲を備えた蒸気船が太平洋を越えてはるばるやって
きたとき、人々は海からの敵から街を守らなければならない、ということに気
づいた。それで東京湾に大砲の陣地(台場)を構築していくのである。

 帝都となった東京を外敵から守るのはもっぱら、海からの備えをしていれば
よかったのは日清・日露戦争まで。第一次世界大戦のとき、飛行機が登場して
空からの敵にも備えなくてはならなくなった。

 しかし帝都の防衛は外敵だけではないのである。
 自然災害(関東大震災)と暴動(日比谷焼打事件など)とテロ・クーデター
(2.26事件など)などからも帝都を守らなければならなかった。

 実際、帝都に配備されていた軍隊は、帝都において一度も外敵と戦ったこと
はなく、帝都での動員は同じ日本人を取り締まるためのものだった。日露戦争
後の講和に対して不満を爆発させた群衆を取り締まるために軍隊が出動する
(明治38年(1905年)9月5日)。関東大震災後の無秩序な混乱の中で、朝鮮
人の大虐殺が行われ、それを阻止し秩序を回復させるために出動する(大正12
年(1923年)9月1日)。情報が不足していたこの時代。思い込み(流言や蜚
語)ほど恐ろしいものはない。朝鮮人虐殺事件はもっともっと情報があれば、
起こらなかった事件と云えるかもしれない。関東大震災のとき、日本人はまだ
ラジオを持たなかった。ラジオ放送自体が存在しなかった。実際に、執筆子の
祖母(明治25年(1892年)生まれ)は死ぬまで、朝鮮人が井戸に毒を投げ入れ
たと信じていた。この間違った考えを覆すことができなかったのは、とても残
念なのである。

 さらにクーデターも起こる。帝都防衛を任務としている第一師団の一部が反
乱を起こし、政府要人を暗殺して政府の転覆と新政府の樹立を目標としたこの
事件に対して、軍隊は同じ武力で立ち向かった(昭和11年(1936年2月26日))。

 昭和20年(1945年)8月15日の終戦後、最も心配されたのは、終戦=降伏に
反対し、徹底抗戦を叫ぶ身内の軍隊の反乱であり、そのために帝都はただなら
ぬ緊張の中にあったという。実際に、一部の兵士たちは決起しており、それを
取り締まったのも同じ帝国陸軍の兵士たちであった。
 こうしてみると、戦前は実にさまざまな出来事があり、人々は若く、体の中
に溜めたエネルギーの持って行きどころがなく、それが暴動やクーデターなど
の負の行動に出てしまったんだろう、という観察もできる。

 さて、帝都における最大の危機は、云う間でもなく戦争末期の空襲である。
敵は容赦なく民間人を殺戮した。敵との技術の差は、歴然としている。さらに
帝都東京は木と紙でできている。一夜にして10万人の人々が空襲によって命を
落としたのは、昭和20年(1945年)3月10日の未明のことだった。

 政府の方針も間違えていた。最後まで焼夷弾を消すこと(初期消火)を住民
に強いていたので、人々は避難をしたくてもできず、そこに踏みとどまり、迫
る炎に対する恐怖と戦いながら、火を消そうとする。…そんなことできるわけ
がない。
 なんということだろう。敵の理不尽な攻撃と政府の間違った方針により、何
人の人々が死ななければならなかったのか。想像するだけで怒りがこみ上げて
くる。

 その場に踏みとどまる、という発想は実は現在の防災対策でも云えるかもし
れない。東京都の方針として、人々は自分たちの力で自分たちを守るように云
っている。被害が大きすぎて、公的な救助はお手上げ状態。ならば住民同士で
命を守り、命を繋いで行こう、ということだ。それはそれで仕方がないし、快
適に過ごすためにさまざまな装置が隈なく身の回りに張り巡らされた私たちの
生活では、生存への強い行動は起こせなくなっている。現代の都民は、寝床と
餌を与えられなければ何もできないペットのようだ。ここで生きる力を取り戻
そうとするためには、あらためて身の回りを振り返り、いざと云うときのため
に備えなくてはいけない。

 そのためにあの時代。あの空襲の時代をもっと研究しなくてはいけないし、
経験者の話を聞かなければいけないと思うのである。

 首都を何から守るのだろう? 外敵や自然災害、そして群衆。さらに病原菌
からも守らなくてはならないことになるのかもしれない。
 いつの世もたいへんなのだ。自分の身は自分で守らなければいけない。その
ために我々は歴史を学ぶのだ。


多呂さ(身近な問題として殺人鬼からも身を守らなければならないのです)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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77 知らないことを知る

 10月に入ってからの台風、被害にあわれた地域の方々にお見舞い申し上げま
す。

 毎年、いままでにない気象が起こり、各地で日常が突然奪われてしまう。
 さまざまな状況の中でできるだけ冷静に対処し、明るく過ごす事の大事さを
思います。

 こういう時はじっくり本を読む。
 読んでいろいろ考える。

 今月はじっくり時間をかけて読む、長編作品をご紹介します。

 『灰色の地平線のかなたに』 
 『凍てつく海のむこうに』
 ルータ・セペティス作 野沢佳織 訳 岩波書店

 今年2017年カーネギー賞を受賞したのは『凍てつく海のむこうに』

 イギリスの図書館協会が年に1度、児童・ヤングアダルト向けのすぐれた
作品に贈る賞です。

 ルータ・セペティスの作品は2012年に『灰色の地平線のかなたに』が翻訳さ
れています。
 2冊続けて読んでみました。

 『灰色の地平線のかなたに』

 第二次世界大戦中のリトアニアで、15歳のリナはソ連の秘密警察につかまり
シベリアの強制労働収容所に送られてしまいます。
 父親は別の場所に連れていかれ、母親とリナ、弟のヨーナスの3人は、集団
農場(コルホーズ)で働かされることになりました。
 つらい長旅のあと、厳しい農作業の労働を強いられる中、リナはいつか父親
と再会し、画家を再び目指せることを未来に描き、現実を耐え抜きます。

 文字を読みながら映像をみているかのような描写に、息をつめて読んでいる
自分がいました。

 過酷な環境の中、自分を守ることで精一杯になりがちな場においてリナの母
親が常に他者に対しての思いやりをもっている姿も心を揺さぶられました。
 
 作者、ルータ・セペティスは歴史上であまり語られていなかったできごとを
物語にして差し出します。

 ナチスのユダヤ人虐殺は多く語られてきている一方、同時期にスターリンが
率いるソ連がバルト諸国のみならず自国の市民も逮捕し、シベリアに追放して
きたことはそれほど知られておらず、これに光をあてて書いたのが本作です。

 生き延びたいという強い気持ちをもつリナの生き方に圧倒され、ここまで追
い詰める戦争の罪深さを忘れてはならないと強く思いました。

 続けて
 『凍てつく海のむこうに』を読みました。

 リナの従兄弟ヨアーナが主人公です。

 『灰色の〜』でもヨアーナについて語られることはあっても、本人は登場し
ていません。ヨアーナもまた、リナと同じように強い少女でした。

 第二次世界大戦末期、ソ連軍の侵攻がはじまるなか、ナチス・ドイツ政府は
孤立した東プロイセンから、バルト海を経由して住民を避難させる「ハンニバ
ル作戦」をとります。

 その史実を背景に、作者は海運史上最大の惨事とよばれる〈ヴィルヘルム・
グストロフ〉号のことをヨアーナ含む4人の若者たちの視点でフィクションを
紡ぎました。

 大人がしている戦争に巻き込まれるこどもたちが、どんな思いを抱いていた
のか、物語を読むことで、私たちは想像し、そうでない未来をつくっていかな
くてはと意識するようになるのでは。

 知らなくてはいけないことを知ること。
 意識していないと、知っている世界はごく狭いものになってしまう。
 知ろうと意識すること、
 物語の世界は、それをみせてくれます。

 2冊あわせて6センチ近い厚みをもつ物語は、読むのにちょっとひるんでし
まうかもしれませんが、読み始めるとあっというまに歴史の世界へ誘います。
 ぜひ読んでください。

 
(林さかな)
会津若松在住。
http://1day1book.strikingly.com/

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・『元アイドルのAVギャル瀬名あゆむ、アイドルプロデューサーになる』
 (コアマガジン)
 http://www.coremagazine.co.jp/book/coreshinsho_024.html

・『ミスなくすばやく仕事をする技術』(秀和システム)
 http://www.shuwasystem.co.jp/products/7980html/5125.html

・『マンガでわかるグーグルのマインドフルネス革命』(サンガ)
 http://www.samgha-ec.com/SHOP/300870.html

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

 〒142-0041 東京都品川区戸越5-4-3 アズ品川ビル4階
       ビズナレッジ株式会社内 [書評]のメルマガ 献本 係

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンや楽天などのオンライン
 書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。つまり
 は当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願いしま
 す。(あまりにも短いものは書評とは呼べませんので、文字数の条件を設け
 ました。書評は500字以上でお願い致します。)

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 11月になり、今年も残すところ2か月となりました。早いもんです。

 と、師走の影がちらついてきたせいか、何やら急激に忙しくなって参りまし
た。

 このまま年明けまで突っ走りたいと思います。(あ)

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