[書評]のメルマガ

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[書評]のメルマガ vol.617

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■■ [書評]のメルマガ                2016.11.10.発行
■■                              vol.617
■■ mailmagazine of book reviews    [と言っても住所は「代田」 号]
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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→『こち亀』のころ、そして再び下北沢あのころ

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→“この世は舞台”とシェイクスピアは云った。

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→生きる希望

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<83>『こち亀』のころ、そして再び下北沢あのころ

 前回取り上げた『東北沢5号』の、全3巻を読み終えた。
 2巻あたりにも、そんな予感というか空気は孕んでたのだが、物語は3巻に
至って、「え!?」と言うような意外かつヘビーな展開になだれ込みつつ、最後
は大団円で終わり、読み終えたときには思わず「ほろり」としてしまった。
 物語の時間軸は、1巻冒頭から3巻結末までに数年が経過しており、最終話
では、東北沢5号を含む踏切も既に工事によって消えつつあるのであった。

 この漫画、下北沢という街の空気を実によく体現していて、わしがここに住
んでいたのは、この漫画よりもずっと昔だけど、あのころのあれやこれやら、
あそこでなにがどないして、とかイロイロと思い出すことしきりだった。

 小田急経堂の、四畳半台所トイレ共用風呂なし家賃月額9千円の下宿から、
「むらさき」での稼ぎをつぎ込んで、下北沢……と言っても住所は「代田」の、
5畳半台所付きだがトイレは共用、風呂もちろんなし、家賃2万3千円のアパ
ートに越したのは、大学2年の春。今からかれこれ40年前だった。
 下北沢駅北口から徒歩約10分、井の頭線でひと駅吉祥寺寄りの新代田駅から
なら5分ほど。
 新宿や渋谷に出るときは下北沢駅、吉祥寺へは新代田と使い分けていた。

 下北沢はその少し前から、ライブハウスや小劇場や、あるいは若向けのバー
やらカフェやらブティックとか雑貨屋とか、様々な店やスポットがこの街に集
まり始めてもいた。
 経堂時代から、ここへはよく遊びや買い物に来てたのだけど、街の域内に2
車線より広い道路は一切なく、X字型に交差する二本の線路を囲むように、狭
い通りが縦横に走るこの街は、アップダウンも結構あって立体的で、ふらふら
とうろつくのには、実に按配のいい街だった。
 駅前に「大丸ピーコック」があるのも、心強かった。「東京の関西人」は、
身近に「関西物件」があると落ち着けるのだ。

 ちなみに小田急の電車にも、「神戸 川崎重工」という川重兵庫工場製を示
すタグプレートがついていて、電車も同じ神戸生まれという愛着が、小田急沿
線を好もしく思う一因でもあった。

 ピーコックの向かいにあった市場も、トタン屋根に覆われた薄暗い通路の両
側に、小汚い飲み屋やジーパン屋やらアメリカンポップな服屋やスニーカー中
心の靴屋やらが並んで、神戸の高架下商店街を思わせる雰囲気なのが気にいっ
た。

 遊びも買い物も、狭いこの街の中で全て賄えて、とても居心地のいい街だっ
たので、ヒマがあると、狭い通りから通りへとうろついては、ふらふらとお店
に入ったりひやかしたり、飲んだくれたりバカ騒ぎしたり、していた。

 「一番街」の端っこには、鈴木翁二の直筆壁画のあるロック喫茶(という呼
び名が、当時はまだあったのだ)があった。

 茶沢通りの交番前踏切(東北沢4号、ですね)近く、線路沿いの木造家屋二
階にあったジャズ喫茶には、建物が木造でボロだったせいか、どすどす歩くと
床が揺れてレコードの針が飛ぶので「静かに歩け」という張り紙があった。

 そのジャズ喫茶の隣には、「蜂屋」という中華食堂があって、ここは「ラー
メン100円」「チャーハン150円」「かつ丼200円」等々、学食よりも安かった
ので、フトコロの寒いときには、随分とお世話になった。

 南口駅前ビルの地下にあった「とんかつ太郎」という豚カツ屋が滅法うまく
て、あづま通りには「本店」もあったのだけど、本店よりもこの駅前地下店の
方が断然旨かった。
 やたらと分厚いロースカツは、揚げるに際して温度の違う二つの油鍋を順に
潜らせて、切り口はピンクという絶妙の揚げ加減で、わしは、いまだにこれよ
り旨い豚カツを食ったことがない。

 「広島風お好み焼き」というのを知ったのも下北沢で、最初鎌倉通りの住宅
街にぽつんとあった、とても美人なおばさんが一人で切り盛りしてた店は、そ
の後南口に引っ越して、そのころには人も大勢使って、たいそう繁盛していた。

 南口をかなり下った辺りに「ロフト」が開店したのは、住み始めて2年目く
らいだったか。ここには、「鈴木慶一とムーンライダーズ」が出演してたりも
した。
 「ロフト」は、当時新宿と中央線の西荻とにあって、下北沢の店は3軒目だ
ったと思う。

 本多劇場はまだなくて、その「建設予定地」と記された広い空地には、状況
劇場の紅テントが度々かかって、何度か足を運んだ。
 小林薫と根津甚八が二枚看板で、トップ女優はもちろん李礼仙(麗仙)。不
破万作や十貫寺梅軒などが脇を固めていた。
 なんの公演だったか、終幕、クライマックスを迎えたところで、舞台背面の
テントが「バーン!」と開かれ夜空が見えたと思うと、その空に浮かぶように、
明るい窓の列を煌めかせた井の頭線の電車が土手上の線路を駆け抜けて、あの
演出には度肝を抜かれた。

 街のあちこちで、「下北マンボ」と呼ばれる派手なプリント柄の細身のパン
ツを履いた女の子たちを見かけた。
 「下北マンボ」は、北口の横浜銀行近くにあった「ENNY」という店のオリジ
ナルで、この店でしか買えないのだった。

 住んでいた代田のアパートから、一旦坂を下ってまた坂を昇って成徳女子学
園の横を過ぎると、一番街の端っこが鎌倉通りと交差する角で、そこに小さな
市場があり、その市場の隣に喫茶店があった。カウンターだけの小さな店で、
カウンターも十席ほどだったと思う。
 当時よくあった、いわゆる珈琲専門店で、メニューは、種類が選べるコーヒ
ーと他は紅茶のみで、食べ物は…トーストくらいはあったっけ?
 ここに週に何度か、主に昼間に通っていたのは、置いてある漫画雑誌を読む
ためだった。

 少年マガジンとサンデー、ジャンプ、それからビッグコミックと週刊漫画ア
クション、その最新号が、発売日には毎号きちんと揃っていて、それらの発売
日に合わせて通っていた。

 店をやっていたのは、三十過ぎに見える女性で、いつもカウンターの中の椅
子に掛けて、なにか本を読んでいた。
 注文のコーヒーを出すとまた椅子に座って読書に戻り、客になにか喋りかけ
るということもなく、客もまた喋らない。
 店内には音楽もなく、実に静かな店だった。

 わしもまた、店に入るとブレンドコーヒーを注文し、あとは何も喋らず、置
いてある雑誌を順繰りに読んでいく。
 そのうちに、店に入って座るだけで、なにも言わずにブレンドコーヒーが出
てくるようにもなった。
 わし以外の他の客も同様で、わしは、ついぞあの店で、注文とそれを受ける
以外の会話を聞いたことがなかった。
 会話がなく、ゆえに他の客のお喋りを聞かされることもなく、余計な音楽も
またなくて、そこは、とても居心地のいい店だった。

 『こちら葛飾区亀有公園前派出所』という、やたらと長いタイトルの漫画が
始まったのを知ったのも、この店で読んだ「少年ジャンプ」でだった。
 やたらと拳銃をぶっぱなすデタラメで破天荒、かつ自分の欲求に忠実なおま
わりさんは、赤塚不二夫のおまわりさんと、当時大ヒットしていた『がきデカ』
を組み合わせた? と思えたのは、作者の名前が、『がきデカ』の作者「山上
たつひこ」をもじったらしい「山止たつひこ」というペンネームだったから。

 そんな破天荒なおまわりさんの生息地を、「葛飾区亀有」という下町に特定
して……はは〜〜ん、これは、赤塚・おまわりさん+がきデカ+フーテンの寅、
を狙ったな。おもろいことを考えるやないかい。と、弱冠ハタチのわしは、分
析したのでありました。

 にしても、その後作者の名前を本名に戻したこの漫画が、40年も連載を続け
るとは、当時は露も思わなかったのだった。
 作者や編集部もそう考えてたようで、当初の「山止たつひこ」というふざけ
たペンネームも、長くとも連載は1年くらいだからと、軽いノリで使っていた、
とは連載終了時の後日譚で知った。

 代田のアパートは、途中、部屋は置いたまま中央線界隈をふらふらとしたこ
ともあったが、学生時代から、その後就職してからも、数年間をそこに住んだ。
 結婚してから住まいがまたもや小田急経堂になったのだが、電車で下北沢ま
で行って、下北沢始発のバスに乗り換えるという通勤経路だったので、相変わ
らずこの街は馴染みで、休日に夫婦で訪れることも多かった。

 その後日常の移動手段がクルマになると、この街は車にはやたらに不便だと
気がついて、やや遠ざかりもしたのだけど、会社の同僚たちと勤め帰りに飲む
のもなぜかこの街が多くて、先月の当欄で触れたUさんの店などに、わしが同
僚たちを案内することも度々だった。

 そんなこんなで、学生時代の1975、6年から、神戸へ引っ越すまでの十と数
年間、この街の推移を眺めてきたのだけど、今回、『東北沢5号』を読んで、
郷愁とノスタルジーを滅法刺激されてしまった。
 あの街の、あのころをモチーフに、なにか物語を紡いでみたいな、とも思う
今日この頃。

 10年ほど前に公開された映画『男はソレを我慢できない』は、竹中直人が、
この下北沢という街が都市開発の波に飲まれてゆくのに危機感を感じて製作し
た映画だと聞く。
 その映画の惹句にあったと思うのだけど、下北沢という街は、映画、音楽、
演劇、そして漫画、等々の若い人材が、交差し、混じりあう場であった、のは
確かだ。
 今の、そしてこれからの下北沢は、どう変化していくのか。遠く離れたとは
いえ、妙に気になってしまう。

 会社員時代、「劇画村塾」という私塾に、事務方として係わっていた。
 その塾生だった、たなか亜希夫のデビュー作が、やはりこの街を舞台にした
『下北フォービートソルジャー』という作品だった。
 掲載誌は「漫画アクション」。
 入塾するまで「絵は描いたことがない」という彼が、その同期生の中では一
番早くデビューしたと記憶する。
 彼もまた、この下北沢という街に思い入れが強かったようで、主人公である
若きジャズプレーヤーの卵は、下北沢の街を根城に、鬱屈や屈託を抱えながら
煩悶したり、いきがったり怯えたり、ときに性欲を爆発させたり・・・しなが
ら、仲間とともに街を彷徨し這いずり回る、というような漫画だった。

 あれもまた、もう一度読んでみたくなって、ただいまはアマゾンを渉猟中、
なのだった。


太郎吉野(たろう・よしの)
 2011年に神戸から西宮へ引っ越して、ただ今のホームグラウンドは甲子園。
右投げ右打ち。掛布二軍監督はひとつ年上の同級生。

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第82回 “この世は舞台”とシェイクスピアは云った。

 河合祥一郎はシェイクスピアを研究している大学の先生だ。彼はわかりやす
い言葉で次々とシェイクスピアの入門書を書き発行しているが、今回俎上に乗
せる本は、まったくシェイクスピアを知らない人向け、というものではなく、
少なくともシェイクスピアの四大悲劇といくつかの喜劇を観ている、という人
向けの本のような気がする。シェイクスピアの生涯を辿り、彼が生きた時代を
理解して、作品が表現している人間の喜怒哀楽を丁寧に解説してくれる。そし
て最終章ではシェイクスピアの戯曲から生き方や哲学を解析してみせている。

『シェイクスピア −人生劇場の達人−』(河合祥一郎 著)(2016年)
(中央公論新社)(中公新書)

 新書は、専門的な問題を一般の人向けに解説する書籍。という定義だと理解
しているが、本書はまさにその定義どおりの解説書になっている。とにかくわ
かりやすい。

 本文が7章ある本書を大きく3つのテーマに分けるとしたら、1章から3章
までがシェイクスピアの生涯を辿る道のり。4章から6章は、シェイクスピア
の作品をうまく解説している内容であり、最終の7章は「シェイクスピアの哲
学」というタイトルでシェイクスピアが影響を受けたであろう思想や哲学を戯
曲のセリフから分析し解説している。

 最初のシェイクスピアの生涯をみたとき、本書は単なる事実と推測の羅列に
終わらず、誰と出会い、どんなことを考えていたかを推測し、彼の戯曲を分析
する後半の内容につなげている。さらにシェイクスピアが生きていた時代を世
界規模で俯瞰してみる。シェイクスピアの活躍した時代はエリザベス朝と重な
っているのは皆に周知のことであるが、そのエリザベス朝において、当時世界
最強とされていたスベインの無敵艦隊を打ち破ったこと、そして遙か極東の日
本においては信長秀吉家康の時代であることは、あらためて指摘されないと気
づかない。初めて日本に来たイギリス人は、三浦按針の日本名で知られたウィ
リアム・アダムスであり、彼はシェイクスピアと同い年であった。しかもファ
ーストネームも同じウィリアムである。イギリスのウィリアムは女王陛下のた
めに芝居をつくり、女王のために尽くした。日本に来たウィリアムは徳川家康
のために船をつくり外交顧問として活躍していた。なんだか、とても興味深い
歴史の偶然なのである。いい話だ。

 シェイクスピア演劇は日本の狂言と似ている。まず、精巧なセットではない。
また上演する舞台には幕がない。太郎冠者は舞台上を一周りして田舎から都に
上る。同じようにシェイクスピアの登場人物は舞台を一周りして宮廷から鬱蒼
とした森に辿り着く。ひとつの舞台で時間と空間を飛び越えてしまう。そこで
は役者の力量も試されるが、観客の想像力も柔軟にしておかなくては芝居の進
行についていけなくなる。そこでは自由に時と場所を移動することができるの
で、自由な発想が許される。『オセロ』では舞台はベネチアからあっという間
にキプロスに移動する。近代演劇では舞台がひとつのセットでおこなわれるこ
とが多いので、場所の制約はシェイクスピア演劇とは比べられない。とは云い
つつも、現代に生きるわれわれは、このような舞台上においてひとつのセット
で、登場人物が入れ替わり立ち替わり出入りして進行していく芝居に慣れてお
り、舞台演劇と云えば、そういうスタイルを思い浮かべるのである。今ではシ
ェイクスピア演劇が異端と考えてよさそうだ。制約が多いほうが濃密な演劇に
なる、と思う人は多いだろう。この観点から演劇論を試みる書物は多い。

 シェイクスピアの悲劇と喜劇の違いは何か。本書ではそれを上手に表現して
いる。すなわち“悲劇の世界を《To be,or not to be》(=あれかこれか)と
するなら、喜劇のせかいは《To be and not to be》(=あれでもあり、これ
でもある)と規定できる”と云っている。悲劇ではひとりの主人公が悩み、彼
の価値観が唯一正しいとされるが、喜劇ではたくさんの登場人物があれこれ能
弁におしゃべりをして価値観もたくさん存在し、すべて肯定される。

 シェイクスピアの喜劇は混乱が生じてそれを解消していく物語だ。混乱は解
消され大団円で芝居が終了する。その混乱の中で主人公は自分を見失う。そし
てそれが収束して解消されていく過程で主人公は今までの殻を破り、新しい個
性を手に入れる。

 一方の悲劇はどうか。主人公がもともと持っている強靭な精神は変化するこ
となくそのままで最後には死が待っている。自分の価値観からはずれたものを
否定するのであるが、それは逆に自分に災いが降り掛かってきてしまうのだ。
主人公は神の替わりに判断する。それを“ヒューブリス”というらしい。シェ
イクスピアの悲劇の主人公は皆がそのように、「神に成り代わって運命を定め
ようとする傲慢さ」を持っている、という。ハムレットもオセローもマクベス
もリヤ王も。皆、神に替わって正義を行おうとしてそして自滅するのだ。この
4つのタイトルロールがシェイクスピアの四大悲劇に数えられる。

 同じように主人公が死んでしまう悲劇に『ロミオとジュリエット』があるが、
これが四大悲劇に入らない理由は何かと云えば、ロミオもジュリエットもヒュ
ーブリスがないからだ。神に代わって運命を定めようとはしていない。彼らが
死んでしまうのはまったく運が悪かったことに尽きる。

 シェイクスピア演劇、特に悲劇を考えるときに“世界劇場”という概念はと
ても重要である。『お気に召すまま』の有名なセリフ。「世界はすべて一つの
舞台。男も女も、みな役者にすぎぬ。」というあれである。人生は芝居であり、
人間は役者である。・・・ということは自分自身を客観視する必要がある。自
分を客観視するとき人は冷静になる。自分自身を判断するのだ。そして死へと
一直線に進んでしまうのだろう。世界劇場の概念は悲劇に結びついているのだ。

 最終章の「シェイクスピアの哲学」には「心の目で見る」という副題がつい
ている。物事は一方からだけでみるのではない、いろいろな方向からみなけれ
ばならないし、時には見えないものも心の目で見なければならないのだ。自分
の心の中で真実だと思える何かを感じられなければ見たことにならない。事実
は客観的なものであり、真実は主観的なもので、人によって違ってくる。つま
り自分の人生は自分で切り拓くために自分の真実を感じなければならない。シ
ェイクスピア演劇には、その真実を感じる方法がふんだんに盛り込まれている。

 演劇を通して真実をみつけるために、自分の中の「信じる力」を頼りにする。
それが自分は何を信じるか、自分の信じる力で真実をみつけるのだ。それこそ
が演劇の大きな力であり、「信じる力」こそが人生を切り拓く手段であろう。
これが今回の結論なのだ。


多呂さ(季節は暑い夏と寒い冬しかなくなりましたね。快適な春と秋がどんど
ん短くなっているような気がしませんか)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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66 生きる希望

『スマート キーラン・ウッズの事件簿』
 キム・スレイター 作 武富博子 訳 評論社

 YA(ヤングアダルト)小説です。


 青を基調としたさわやかな表紙。
 ですが、はじまりは少々刺激的です。
 キーラン少年が川で死体をみつけたところから、物語ははじまります。

 キーランはこの死体が事故ではなく事件にまきこまれたのだと直感します。
 しかし調べに来た警察官からは事故として片付けられ、
 関わらないように注意を受けるのですがそれではおさまりません。

 調査用のノートを作成し、
 テレビドラマの事件解決をなぞるように、自ら調査を続けます。

 キーランは母親の再婚相手に時に虐待され家で安心できる時間をなかなかも
てず、学校でも学習補助のクレーン先生と一緒にいることで他の子どもたちか
らしょっちゅうからかわれています。

 家でも学校でもキーランには平穏なときがなかなかありません。
 
 長田弘さんの「ぼくの祖母はいい人だった」という詩にこういうくだりがあ
ります。

 無限につづく平日にあっては、悲しみも祭日である。

 キーランの平日もそうです。

 謎解きがメインでも、虐待の悲惨さが声高に語られるわけでもなく、淡々と
物語はすすみます。殺人や虐待も日常の延長線上に起きていることが伝わって
きます。

 キーランが殺人事件の謎をどう解くのか、
 義父や義弟との関係はどうなるのか、
 薬物やホームレスなど社会問題も交えながら、はたしてどう着地する物語な
のか最後まで引き込まれました。

 デビュー作でこれだけの物語を書き上げた作者の力量に次作の期待もふくら
みます。二作目は既にイギリスでは刊行されているので早く邦訳されますよう
に! 
 

 もう1冊ご紹介。こちらも語り口が印象的です。

 『青空のかけら』
     S・E・デュラント 作 杉田七重 訳 すずき出版

 「この地球を生きる子どもたち」のシリーズ通算30冊目の本書。
 このシリーズは子どもに生きる希望や夢を伝えたいという版元のつよい思い
が一冊一冊に感じられ、出る本の期待を裏切られたことはありません。
 
 シリーズ本どれにも挟まれているちらしに「この地球が抱えている様々な問
題に立ち向かう子どもたちを応援します!」という言葉があります。これを読
むたびに版元の心意気を再確認するのです。

 さて、本書は児童養護施設に姉弟で入ることになってしまったミラとザック
の物語です。ふたり一緒に引き取ってくれる里親がなかなか見つからず、施設
では古株になっていきます。

 施設での暮らしの描写、自分たちを求めてくれる人を待ち焦がれる気持ち、
どの描写も先に紹介した『スマート』と同じく、語り口が繊細で声高ではあり
ません。

 悲しいこと、うれしいこと、日々の小さな出来事ひとつひとつが精密に言葉
でデッサンされ、文章を絵でみているかのようでした。

 とくにミラが絵をかいたり文章をかいたりすることで、気持ちが落ち着く様
子は心に残ります。

 生きている中で嫌なことやうまくいかないことは常です。
 そんな時、どうしたら自分をいい状態にもっていけるかを知っているのはと
ても大事です。ミラはそれをよく知っていました。

 読後の余韻は深いものがあります。

 本書も作者のデビュー作品。

 掘り出し物の2冊はどちらの装画もすてきです。
 『スマート』は祖敷大輔さん、
 『青空のかけら』は中のイラストもすべて原書と同じくケイティー・ハーネ
ットさん。こちらは読後カバーをはずしたときのお楽しみもあります。
 

(林さかな)
会津若松在住。
編集協力した新訳「オズの魔法使い」(復刊ドットコム)シリーズ
15巻は絶賛発売中! ★おかげさまで少しずつ重版されています
http://1day1book.strikingly.com/

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・『セブン・ハーフ・アンド・ワン』(文芸社)
 http://www.bungeisha.co.jp/bookinfo/detail/978-4-286-17241-5.jsp

・『トシ、1日1分でいいからフクシマ英語に触れてみて。それだけできっと世
  界は変わる。』(SCICUS)
 https://www.facebook.com/scicus.jp/posts/1054815034566643

・『あれか、これか
  「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門』(ダイヤモンド社)
 http://www.diamond.co.jp/book/9784478066041.html

・『最高のリーダーは何もしない』(ダイヤモンド社)
  http://www.diamond.co.jp/book/9784478068137.html

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
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 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
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 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

 〒142-0041 東京都品川区戸越5-4-3 アズ品川ビル4階
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2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンや楽天などのオンライン
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6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 ここ数日、肩や背中が凝っているというか、固くなっていて、しかも眠気が
半端ない状態が続いています。これはなんか病気なのか、はてまた単なる老化
現象なのか、とりあえず今日、血液検査に行って来ました。結果は3日後だそ
うです。次回のこの欄で発表…って別に興味ないですね(w(あ)

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