[書評]のメルマガ

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[書評]のメルマガ vol.689

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■■ [書評]のメルマガ                2019.11.20.発行
■■                              vol.689
■■ mailmagazine of book reviews     [創造とは、かくも神秘的 号]
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■コンテンツ
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★「トピックス」
→ トピックス募集中です

★「音楽本専門書評 BOOK’N’ROLL」/おかじまたか佳
→ #112『脳と音楽』

★「目につく本を読んでみる」/朝日山
→ 『天才を殺す凡人』北野唯我 日本経済新聞出版社

★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→ 今回はお休みです

★【募集中】献本読者書評のコーナー
→ 献本お待ちしています!

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#112『脳と音楽』
 
 前回、オペラを聴くために何時間も立っている老人の登場する小説を紹介し
たけれど、いくつになっても音楽を楽しみたいというのは、音楽ファンの切実
な願いだ。

 その点で不安なのは、耳が遠くなること。親世代の話を聞いていると、どう
も補聴器の進化は遅々として進まず、余分な雑音ばかり聞こえて肝心の声が聞
き取れないなど、不満たらたら。せっかく買ってもあまり使っていないらしい。
 
 音楽が聴こえなくなるのも困るが、一方で、世の中には聴こえてしまって困
っている人もいる。
 音楽幻聴、という病である。
 文字通り、実際には音楽など鳴っていないのに、聴こえてしまう現象。
 懐かしい童謡やクラシックの名曲。中には、エディット・ピアフのシャンソ
ンが聞こえる、とか、演奏者が特定されるケースもある。
 
 音楽がただで聴こえるなら、いわば脳の中にApple musicやGoogle playや
Spotifyがあるようなもので、かえって便利な気もするが、あいにく選曲がま
まならない、という問題がある。

 聴きたくもない曲が聴きたくもない時に何度も何度も鳴ったら、それは確か
にうんざりするだろう。そう言えば昔、隣のピアノがうるさいという理由で殺
人事件が起きたこともあった。
 そろそろクリスマス商戦だが、この季節、ショッピング・モールで働く人は
一日中流されるクリスマス・ソングに気が狂いそうにならないのかな、と他人
事ながら心配である。
 
 逆に、失音楽症という病もある。
 音楽を聴いても、メロディとして認識できず、何の曲かわからなくなる病気。
いや、そもそも音楽に聴こえない、という病気だ。
 これも、恐ろしい。
 
 こうした病気は、脳に原因がある。脳腫瘍や脳梗塞、あるいは頭部に受けた
外傷によって、脳機能の一部が損なわれると発症するのだ。
 本書『脳と音楽』は、音楽愛好家にして神経内科医の岩田誠が、クラシック
の有名作曲家と脳、そして音楽幻聴や失音楽症について書いた本である。
 
 二十代の頃、著者の本を一冊読んでいる。言葉に関する機能が、脳の言語野
という場所にあることを知り、ふと興味を持って手に取った、『脳とコミュニ
ケーション』という本で、いまでも本棚にある。

 横書きの、いかにも医大で使われる教科書然とした体裁のハードカバーだっ
たが、案外に面白く読めた。というのも、教科書らしく事実を淡々と記述する
中に、妙に個人的な感想めいたものや、体験談が不意に現れ、それが赤瀬川源
平によってスポットライトをあてられた国語辞典、新明解国語辞典的なユニー
クさを持っていたからだ。
 
 その岩田誠に『脳と音楽』という本があると知ったのは、タワーレコードで
配布されているフリーペーパー『intoxicate』のブック・レビュー欄だった。
こちらはより一般向けのソフトカバーで、縦書き。『BRAIN MEDICAL』という
雑誌に連載された記事をまとめたものである。
 
 第1章には、バッハが登場する。死後、その墓の所在がわからなくなってい
たが、いくつもの骨の中からその遺骨を推定し、医学的分析を行った記録を紹
介している。
 第2章は名曲『ボレロ』を書いたモーリス・ラヴェル。実はラヴェルは失語
症にかかり、作曲にも支障をきたした。そこで脳外科手術を受けたのだが、か
えってそのために死亡しているという。
 第3章は、失語症と音楽の関係をテーマにした、さまざまな医学者による研
究史。
 第4章は、音楽能力を失ってしまう、失音楽症に関する研究史。
 第5章は、『ラプソディー・イン・ブルー』や、スタンダードとなった名曲
「サマータイム」を含むオペラ『ポギーとベス』、さらに数々のミュージカル
・ナンバーで知られるガーシュインが、脳梗塞で亡くなった顛末を語る。
 第6章は、脳のどの場所に、音楽に関する機能があるのかを明らかにしよう
とした、これも研究史。
 
 そして最終章、第7章の主人公がシューマンだ。
 
 シューマンは子どもの頃から音楽幻聴に悩まされていた。それが大人になっ
てからも度々再発し、終生彼を苦しめたのだそうだ。
 とうとう最後には、その苦痛に耐え切れず自殺未遂を引き起こす。そして精
神病院に収監されるが、それから2年を経て死亡した。享年、46歳。
 
 音楽幻聴の患者は、一般の人の場合、既存の、本人もよく知っている曲の幻
聴が現れる。しかし、音楽家がこの病を患うと、未知のメロディを聴くことも
あるそうだ。
 
 ただ、必ずしも美しいメロディとは限らないらしい。不快な和音だったりす
ることもある。
 だが、逆に言えば、きちんとした曲になっていることもあるわけだ。
 
 ここで、著者は面白い問題提起をする。
 
 シューマンのような作曲家が音楽幻聴を発症し、美しいメロディが聴こえた
場合、それは「幻聴」なのか、「インスピレーション」なのか、という問題だ。
 
 確かに、メロディが天啓のように降りて来る、という話はある。
 典型的なのは、夢に見る、というか、夢で聴く、というパターンだ。
 
 例えばポール・マッカートニーも、ある朝起きたら、夢で聴いたメロディが
頭の中でリフレインしていた。とりあえず、その日の朝食にちなんで「スクラ
ンブル・エッグ」と名づけ、いろんな人にそのメロディを聴かせた。

 というのも、こういう風にすらすらと曲が出来た場合、無意識に他人の曲を
パクっている可能性があるからだ。
 しかし、誰に聴かせても、聴いたことのない新しいメロディだという。
 そこで、これなら大丈夫だろうと歌詞をつけた。それがかの名曲「イエスタ
デイ」である。
 
 こういう風に、インスピレーションとしてのメロディも、幻聴として作曲家
を悩ませるメロディも、どこからかいきなり振って来るという点では変わらな
い。
 だとすると、美しいメロディが頭の中で鳴った時、本人が「おっ、インスピ
レーション、キターーーーーー」と思えばインスピレーションであり、「くそ
っ、なんてうるせー幻聴だ」と思えば幻聴、という主観の問題でしかないのだ
ろうか。

 それとも、インスピレーションを認知する脳の場所は、幻聴を認知する脳の
場所とは違うとか、何かしら客観的な差があるものなのか。
 
 残念ながらこの疑問、現代の大脳生理学をもってしても、未だ謎のままだそ
うだ。
 創造とは、かくも神秘的、ということだろう。

 ちなみにこの第7章、いみじくも「創造と幻覚」と題されている。
 
 
岩田誠
『脳と音楽』
2001年5月30日 初版第1刷発行
2001年11月15日 初版第2刷発行
メディカルレビュー社
 
おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
下北沢は我が家から徒歩20分。微妙な距離ですが、好きな街なのでよく出かけ
ます。小田急線が地下に潜った影響で、このところずっと駅周辺は工事中。そ
れが徐々に形になって、だいぶ変わりました。その内温泉まで出来るとか。湧
いたわけではなく、箱根から運んで来るそうですが、好きな街が変わってしま
うのが寂しくもあり。

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『天才を殺す凡人』北野唯我 日本経済新聞出版社

 何よりタイトルがいい!サブタイトル「職場の人間関係に悩む全ての人へ」。
帯の文句は「なぜ才能はつぶされてしまうのか?」。なんだか、虐げられた天
才が会社で逆襲して行くようなことが書いてあるように思えた。

 実際の中身は全く違っていて、天才と秀才と凡人が併存する会社(や社会)
で、どういうポジションで生きていけばいいのかを問うストーリー形式のビジ
ネス書であった。もともとネットで話題になっていた「凡人が、天才を殺すこ
とがある理由」というblogを書籍化したものだそうだ。

 主人公はテクノロジー企業CANNAの広報部門で働く青野トオル。社員番号3
番で創業者の上納アンナの天才ぶりにほれ込んで入社して10年になる。社長の
腰ぎんちゃくと呼ばれつつも楽しかった創業期は過ぎて、今の企業の業績はよ
くない。会社を牛耳るのはもはや上納ではなくなった。秀才である外資系から
転職してきた神崎秀一CFOや上山経理財務部長が仕切っている。

 この会社にいてもつまらない。会社の業績が悪いからか上納アンナも精彩を
欠き、社員からも相手にされなくなって来つつある。上納アンナは依然として
天才で、まだ死んじゃいない。そう信じている青野の旗色は悪かった。凡人に
天才が殺されていくのは見ていられない。

 そんな絶望感に打ちひしがれ、渋谷のハチ公前に立っていた青野は「どうか
私に力を与えてください」とハチ公に祈る。すると不思議なことに目の前の銅
像からOKが出た。翌日、朝起きたら、微妙に東北弁の混じった関西弁をしゃべ
る秋田犬がいた。渋谷ではハチ公が消えたと大騒ぎになっている。

 ここで象を思い出す人もいるかも知れない。動物が先生やるのはこの手の本
のお約束なのだろう。この秋田犬(名前はケン)がカウンセラーかコンサルタ
ントかコーチなのか知らないが、要は青野の指導者として才能の活かし方を伝
授していく。

 ケンいわく、人間の悩みのほとんどは、自分ではコントロールできないこと
を無理やりコントロールしようとするから生まれる。そして人間が最もコント
ロールしたがるが、一番悩みの元になるのは「自分の才能」であるという。自
分に才能がないからと悩むのが一般的だが、多くの場合、才能はないのではな
く、自分がどんな才能があるのか気が付いていないからだという。

 そこから、秋田犬ケンは、人を天才(創造性をもつ)と秀才(再現性に優れ
る)と凡人(共感で動く)の3タイプに分類し、どうして天才が凡人に殺され
るのかなど組織におけるそれぞれのタイプの関係を解説して行く。

 当初は創造性あふれる天才タイプが創業した会社でも、成長して大きくなる
と凡人の多数決で物事が決められるようになり、天才は殺される。

 経営はアートとサイエンスとクラフトの組み合わせで、これが上手に組み合
わさっていると強い経営になる。ここでアートが出て来たのは近年の流行です
ね。

 話を戻すと。そうした組織の仕組みの解説と並行しながら、物語の上ではテ
クノロジー企業CANNAは次第に追いつめられて行く。上納アンナのやることが
成功しなくなり、会社の止血のためには、上納アンナが会社から追放される可
能性も濃厚になってきた。神崎秀一CFOや上山経理財務部長は、すでにその方
向で動いていた。

 そんななか、凡人青野は、会社を、そして天才上納アンナを守るため、創業
期の会社のワクワク感を取り戻すため動き始める。凡人の「才能」をフルに生
かした青野の挑戦は成功するのか・・・

 いわゆる自己啓発ものでは、「誰でも、こうすれば成功できる」とやるのが
お約束だ。この本もそうした系譜に連なる一冊と言えると思うが「誰でも成功
できる」はその通りでも、天才、秀才、凡人と3タイプに人を分けで、自分が
どのタイプなのかを知り、自分に合ったやり方で自分にできることを行えば成
功すると言っている。要は成功と言うゴールはあるにしても、ルートや行き先
は人によって異なるというのである。

 すなわち、人は自分の才能がどこにあるのかを見極めて、その才能が活かせ
るように行動すべきということだ。しかし、自分の才能がどこにあるのかは案
外わからない。たとえば自分は営業向きだと思っていても、実際の営業は業種
や会社の進化の途上によっても違う。創業間もない頃の新規開拓メインの営業
と創業100年の会社の顧客を維持する営業は同じ営業でも全く違う。

 自分の才能と仕事の性質がドンピシャと嵌まればいいが、そういうことはな
かなかない。職場の人間関係が苦しくなる理由の多くはここにある。

 この本はそうした理由の提示だけで、解決法まで提示しているわけではない
が、それでも職場で苦しむ人の中には、この本を読んで救われる人も多いだろ
うなと思う。

 努力しても報われない理由は、努力不足にあるとは限らない。いわゆる「自
己責任」だけで自分の運命が変わるわけでもないからだ。


(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ─ 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510


 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

 〒142-0041 東京都品川区戸越5-4-3 アズ品川ビル4階
       ビズナレッジ株式会社内 [書評]のメルマガ 献本 係

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
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 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
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 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 しれっと、10日号と20日号を同じ日に配信。

 いや、あれですよ。合併号的な何かですよ。

 子どもの頃、合併号っていうなら厚さが倍になっていないのはおかしいって
思ってませんでしたか?

 私だけ?(あ)

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