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[書評]のメルマガ vol.696


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■■ [書評]のメルマガ                2020.03.10.発行
■■                              vol.696
■■ mailmagazine of book reviews  [「コロナ」を復活させて中国で 号]
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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<122>新型コロナとタルホとオージ

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→104 毎日の積み重ね

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→今回はお休みです

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<122>新型コロナとタルホとオージ

 「コロナ」が猛威をふるっている。
 全国の小中高校は、政府の要請を受けて、3月早々から臨時休校となり、わ
しが関係している学校と大学でも、卒業式が中止となった。入学式も早々に
「中止」と決めたところもあるようだ。
 大相撲やプロ野球オープン戦、そして春のセンバツも「無観客開催」と決ま
った。

 全国的にマスクが品薄となり、ドラッグストアでも、どの店を見ても「品切
れ」表示が掲げられている…と思ったら、今度は、トイレットペーパーやティ
ッシュ、紙おむつなどの紙製品もまた、「原料がすべて中国製だから、生産が
滞っている」あるいは「原料がマスクに回されて生産が追い付かない」とのデ
マによって各地で買い占めや買い溜めの騒ぎが起きているという。
 その光景は、50年近く前にも、わしらは見たはずだぞ。
 人は、前例からなんら学ぶことのない動物であるようだ。

 中国政府の措置によって、中国からの観光客は激減し、他の国々からの観光
客もまた、移動の制限や自粛によってかなり減った結果、ホテルや観光バスな
どの観光業者には、大きな打撃になっている。

 そんなさなかの2月末日土曜日に、所用で京都へ行った。
 朝の10時ころ、梅田から乗った河原町行きの阪急特急は、スカスカのガラ空
きだった。以前の土曜日なら、電車が入る前からホームには長い列ができてい
たものだが、それもなかった。
 試しに覗いてみた観光名所「錦小路市場」は、以前は、いつ行っても、観光
客が狭い通路いっぱいに詰めかけて、「ちょっとそこまで」歩くのにも苦労し
たのだが、この日は、やはりガラガラ。
 おかげで、いつもは人ごみに恐れをなし、近づけなくていた店の七味唐辛子
を、楽々ゲットできたが、考えてみたら、市場に身動きとれぬほどに観光客が
押し寄せていたのが異常で、今の状態こそが、正常な姿なのかもしれない。
 この錦小路に限らず、大阪の黒門市場でも、観光客の多さに辟易して足が遠
のいた常連客も少なくないと聞いた。

 アメリカでは、コロナウィルスの流行を受けて、「コロナビール」の売り上
げが激減したそうだが、アホですね。
と言いながら、ニュースの見出しで目についた「新型コロナ」「中国」との文
言の並びを見て、トヨタが、あの「コロナ」を復活させて中国で売り出すんか? 
と思ってしまったのは、わしです。

 関係先の学校も、コロナの影響で卒業式がすべて縮小あるいは取りやめとな
った。
 本来なら卒業式に出席してたはずの一日、家に居て、“未読の山”…という
のはつまり、とりあえず買ってきた本をとりあえず積んどいたら、いつしか山
になってる、その山をゴソゴソやると、河出文庫版の稲垣足穂『彼等(They)』
が出てきた。1991年刊。
 京都のブックオフで見つけて、「100円」だったから、また読んでみようかな、
と買ったのを思い出す。

 以前に読んだのは、確か40年以上前。
 やはり古本屋で入手した現代思潮社の「タルホスコープ」シリーズで、赤い
飛行船の絵が特徴的な表紙の、A5判か菊判だったと思うのだが、大判の単行本
だった。
 あのころ…って、1960年代末から1970年代なのだけど、稲垣足穂は、長らく
忘れられた作家でいたところが、三島由紀夫の推薦による第一回文学大賞の受
賞をきっかけとして、一種のブームとなり、各社から競うようにして旧作が復
刻され、新作の出版も相次いでいたのだった。

 わしが、稲垣足穂という作家の存在を知ったのは、「ガロ」に掲載されてい
た鈴木翁二の漫画を通して、だった。
 鈴木翁二の私小説的漫画の中で「足穂」は「タルホ」と読むのだと知り、さ
らにそれは「稲垣足穂」という作家名であると知って、当時すでに文庫化され
ていた「一千一秒物語」を買ってきて読んだのは、確か18歳のころ。
 読んで、なるほど鈴木翁二が影響を受けたのが、よくわかった。

 18歳当時は神戸で浪人していたのだけど、その気になって「コーベブックス」
とか「イカロス書房」の棚を探すと、「稲垣足穂」の名は、そこここに散見さ
れる。
 京都の丸善では、一角にコーナーが設けられていて、そこには、銅板で装丁
した豪華本をはじめ、いずれも凝った装丁の単行本が並べられていた。

 東京で大学生になってからは、住んでいた世田谷・経堂をはじめ、界隈の古
本屋を探すと、たいていの店で「稲垣足穂」の名を見つけることができた。
 その時々のフトコロと相談しながら、前に挙げた「タルホスコープ」とか、
同じ現代思潮社の「足穂大全」の端本、その他60年代末から70年代にかけて陸
続と刊行された短編集やエッセイなどを、1冊ずつ買い求めていった。

 それらは、すべて一度は読んだはず…なのだが、今回『彼等(They)』を読
み直してみると、まるで初めてのような…いっかな記憶の奥から物語やその断
片が浮かび上がってくる気配がない。
 収録作のうち、後ろの方の「古典物語」と「明石」に至ってようやく、ああ、
これは…とおぼろに記憶が蘇ってきた。

 しかし、これ、文章がやたらと硬質な上に、難しい漢字や昭和戦前的当て字
も多用されており、40と数年前にこれを読んだわしは、いったい内容を理解し
ていたのか? という疑問が湧いてくる。
 多分、理解できないまま、文字だけを追ってたんだろうな。

 改めて思ったのは、鈴木翁二がこのタルホロジーな世界から、大きな影響を
受けていた、という事実。
 鈴木翁二は、その漫画の中に、足穂の小説中から拝借した言い回しを使った
り、文章の一節を多少のアレンジを加えてネームに転用したりもしているのだ
が、なにより、その世界観をそのまま、小説から漫画に写し取った、と言える
ような作品も少なくない。
 足穂少年が神戸の関学で中学生だったころを題材とする短編『古典物語』や
『菫とヘルメット』などでは、友人とのやり取りの場面などことに、オージ的
少年世界を彷彿させ、思わず知らず、脳内で鈴木翁二の絵に人物を変換して読
んでいた。

 鈴木翁二だけでなく、稲垣足穂は、1970年代において漫画家の多くに、大き
な影響を与えてきた。
 以前にここで取り上げたつりたくにこや、伊藤重夫なども、鈴木翁二と同じ
「直系」ともいえる漫画家かもしれない。

 そんな稲垣足穂の、他の作品も読み直してみようと思うのだが、いかんせん、
学生時代に買い集めた本は、引っ越しを繰り返すうちに、処分したり紛失した
りで、ほとんど手元に残っていない。
 文庫の2、3冊は、どこかに埋まっていると思うのだが、これを掘り出すの
もまた大儀だ。
 文庫でこつこつと、また買い集めてみるか、と思う今日この頃。

 と、さきほど今一度本棚を精査してみると、『パテェの赤い雄鶏を求めて』
が1冊だけ、残っていた。1972年、新潮社刊。
 これまた何十年ぶりかで開いてみると、裏表紙の見返りに、経堂すずらん通
りの古本屋「遠藤書店」のシールが貼ってあった。
 あの商店街に面したガラスのショーウィンドウが誇らしげだった古本屋さん
は、まだあるのかな?
 しばし、40数年前の日々に思いを馳せた、妙に生暖かい春の深夜なのだった。


太郎吉野(たろう・よしの)
阪神タイガースお膝元在住。右投げ右打ち。趣味は途中下車、時々寝過ごし乗
り越し、最長不倒距離は三重県名張。
ちなみに「阪神タイガース」の「阪神」は、「兵庫県阪神地方」を指します。

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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104 毎日の積み重ね

 9年前の3月は震災で何もかもが混乱の中にありました。
 その混乱はまだすべて鎮まってはいません。

 今年の3月は疫病の混乱で息をひそめなくてはいけないような空気を感じま
す。

 大人社会がざわざわしていると、小さい人たちも時に落ち着かないときもあ
るかもしれません。大人はなにができるでしょう。

 前回も17歳の環境活動家のグレタさんについて書かれた本を紹介しましたが
引き続き、今回は絵本を紹介します。

 『わたしたちの家が火事です』
      ジャネット・ウィンター 福本友美子訳 すずき出版

 帯文で紹介されている言葉です。

 ―― スピーチを聞いて、若いグレタがわたしのいいたいことをいってくれ
たと思いました。80歳のわたしのかわりに。――

 世界じゅうの気候がおかしいことにグレタさんは授業で知りました。
 地球がどんどんあたたかくなり、南極の氷がとけて、
 動物たちの命が脅かされていると。

 グレタさんは映像でみる水にのまれている家や、家事で森が炎につつまれて
いる様子に、「わたしたちのいえが火事だ」と感じます。

 目の前の知らない人に、自分のいいたいことを伝えようと、人はよくあなた
の立場がこうだったらと語ります。
 グレタさんもまさしくそうしました。
 いま世界で起きていることが自分の家に起きたと想像してほしいと訴えたの
です。地球はわたしたちの大きな家でもあるのですが、人はなかなか自分事に
考えない、リアルな目の前のことが世界の中心になってしまいがちです。

 グレタさんとともにプラカードをかかげるたくさんの子どもたち、そしてそ
の言葉。最後は文字のみでしめくくられ、80歳の絵本作家の強い気持ちが伝わ
ってきました。

 さあ、私よ。まずはできることからしていきます。

 次にご紹介するのも絵本です。
 なんと、モーリス・センダックの新刊絵本!

 『プレストとゼスト リンボランドをいく』
 アーサー・ヨーリンクス 文 モーリス・センダック 文/絵 青山南訳
 岩波書店

 2012年に亡くなったセンダックの新刊絵本?!とびっくりしました。
 この絵本ができるまでの経緯を、ヨーリンクス自身が書かれています。

 1990年にセンダックはロンドン交響楽団によるヤナーチェクの「わらべうた」
の公演に、プロジェクションとして使う絵を依頼され、詩につける一連の絵を
描く。3年後の2000年、その絵を忘れられないヨーリンクスがセンダックに
「本にできるんじゃない?」ともちかけた。2人は即興で話をつくりあげるも、
実際に本にするまでには至らなかった。2015年、センダックのアシスタントが、
ファイルをチェックしているときに、この原稿をみつけ、そこからとんとん拍
子に形になったのが本書。

 ざっくり要約するとサトウダイコンが結婚することになり、プレストとゼスト
がプレゼントを探して結婚式でケーキを食べようというもの。

 サトウダイコンが結婚?! 即興でつくった話がベースになっているだけに、
テンポは軽やか、話は飛び跳ね、そもそも、プレストとゼストの2人の姿は描
かれていないのです。

 けれど、プレストとゼストの姿は常にみえるようで、心うきうき、ラストは
笑いがこみあげます。

 センダックの絵はユーモアとどこかに大きな意味がかくれていそうな雰囲気
たっぷりでにやにやしながらじっくり見入ってしまうのです。

 笑いながら読める絵本は最高の娯楽です。

 最後に紹介する本もワクワクします。

 『世界魔法道具の大図鑑』
  バッカラリオ/オリヴィエーリ 文 ソーマ 絵
  日本語版監修 小谷真理 山崎瑞花 訳 西村書店

 古今東西の物語に出てくる魔法道具がずらーり紹介されています。
 
『オデュッセイア』、『ギリシア神話』、『今昔物語集』、『旧約聖書』、
『千夜一夜物語』、『はてしない物語』、『ハリー・ポッターと賢者の石』、
『美女と野獣』、『不思議の国のアリス』、『指輪物語』から、アンデルセ
ン、グリム、シェイクスピア、H・G・ウェルズ・スティーブン・キング、
レイ・ブラッドベリ、H・P・ラブクラフトまでなんと合計204冊からの魔法
道具が210個、図鑑におさめられているのです。

 丘の上にたてた館に収録されている道具という体で紹介され、館の間取り、
書斎、玄関の間、応接の間と隅々にまで道具がおかれています。

 もうどのページもワクワクしかありません。

 巻末の所蔵品リストにはそれぞれの道具がどの本にあるかも記されています。
知らない道具をみたときは、原本を探して読む楽しみもあるのです。

 私はキッチンのページがとにかく好きで何度も読み返しています。
 読んだ人はどの部屋を気に入るでしょうか。
 ぜひぜひ館をのぞいてみてください。

  
(林さかな)
会津若松在住。「本の雑誌」新刊めったくたガイド海外文学担当。
http://1day1book.strikingly.com/

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ― 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510

・『支え合い・学び合いで育つ「わたし」』(エディット・パルク)
  http://web.kyoto-inet.or.jp/people/cogito/%8Fo%94%C5%88%C4%93%E0/%8Ex%82%A6%8D%87%82%A2%81E%8Aw%82%D1%8D%87%82%A2.html

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

 〒142-0041 東京都品川区戸越5-4-3 アズ品川ビル4階
       ビズナレッジ株式会社内 [書評]のメルマガ 献本 係

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンや楽天などのオンライン
 書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。つまり
 は当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願いしま
 す。(あまりにも短いものは書評とは呼べませんので、文字数の条件を設け
 ました。書評は500字以上でお願い致します。)

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 なんとかちょっと遅れで配信できました!(あ)

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| バックナンバー | 20:22 | comments(0) | -
[書評]のメルマガ vol.695

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★「トピックス」
→ トピックス募集中です

★「音楽本専門書評 BOOK’N’ROLL」/おかじまたか佳
→ #115『パン屋再襲撃』

★「目につく本を読んでみる」/朝日山
→ 『フェアトレードのおかしな真実』コナー・ウッドマン 英治出版

★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→ 今回はお休みです

★【募集中】献本読者書評のコーナー
→ 献本お待ちしています!

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#115『パン屋再襲撃』

 前回は、泉鏡花の「歌行燈」に、明治時代のサウンドスケープを偲んだが、
今回はぐっと時代も下って1974年のサウンドスケープ。
 
「街は変ることのないいつもの街であった。混じりあってそのひとつひとつの
本来の意味を喪失してしまった人々のざわめきや、どこからともなく次々にあ
らわれて耳をとおり抜けていくこまぎれの音楽や、ひっきりなしに点滅をくり
かえす信号とそれをあおりたてる自動車の排気音、そんな何もかもが空からこ
ぼれ落ちてくる無尽蔵のインクのように夜の街に降りかかっていた。夜の街を
歩いていると、そのようなざわめきや光や匂いや興奮の何分の一かは本当は現
実に存在しないものであるように僕には思えた。それらは昨日や一昨日や、先
週や先月からの遠いこだまなのだと。
 しかし僕にはそのこだまの中に聞き覚えのある何かを認めることはできなか
った。それはあまりにも遠く、あまりにも漠然としていた。」

 ざわめき、音楽、排気音。
 ほとんど聴覚情報だけからなる街の描写。
 それを束ねる「こだま」という言葉もまた、目ではなく耳で捉えるものだ。

 これは、村上春樹、初期の短編集『パン屋再襲撃』所収の「双子と沈んだ大
陸」に現れる70年代東京のサウンドスケープである。

 この短編は、主人公がかつて共に暮らした双子の女の子たちを、雑誌の写真
で偶然見つけ、その行方を追う物語なのだが、ここに引いたサウンドスケープ
は、主人公の生活にふと現れる都市の点描で、特に重要な箇所ではない。
 しかし今回は、敢えてこの部分に着目してみたい。

 自動車の排気音は、その前にある信号の明滅と呼応して、都市の慌ただしい
スピード感を示している。これはまあ、典型的な表現だ。
 それより問題は、ざわめきと音楽である。前者は無数の言葉が重なり合い、
互いに打ち消し合うことで、意味を失っている。後者は、とぎれとぎれにしか
聞こえないことで、断片化された結果、やはり意味を失っている。

 意味のないものは、存在感を失う。無意味は、無存在に近い。それは我々の
都市文明が、利便性という意味を金科玉条として発展した以上、当然のことだ。
 だから「そのようなざわめきや光や匂いや興奮の何分の一かは本当は現実に
存在しないものであるように」主人公の「僕」には思えたのである。
 そしてそれらの意味を失った「音」は、「こだま」と呼ばれている。それも
「昨日や一昨日や、先週や先月」という過去からのこだまだ。
 こだまは、初めに何かの音が存在し、その残響として発生する。つまり、自
立した存在としての意味を初めから持っていない。ゆえに、意味を無くしたさ
まざまな音を束ねる言葉として、これほど相応しいものはないのである。

 しかし、ここではたと立ち止まらざるを得ない。

 ざわめきは人の言葉で構成されている。誰かが誰かに発言しているのだから、
それはちゃんと聴き取ることさえ出来れば、きちんと意味を持っているはずだ。
それが錯綜し、重層化して、ひとつの塊になったために、意味を失ってしまっ
たに過ぎない。

 しかし、「どこからともなく次々にあらわれて耳をとおり抜けていくこまぎ
れの音楽」はどうだろう。
 こまぎれでなかったとしても、音楽は本来、意味のない表現行為だ。ここで
言う「意味」とは、例えば「腹が減った」とか「明日暇?」とか、我々が日常
言葉で伝えようとし、伝えてもいるような「意味」で、芸術的意義とか、そう
いう高尚なことを言っているわけではない。
 そうした実用的な意味からは初めから乖離しているのが音楽というもので、
だからそれは抽象的であり、純度の高い表現であり、さらには音響特性という
科学的な側面も備えていたので、伝統的にヨーロッパでは諸芸術の中でも特別
な地位を与えられてきた。プラトンが開いた学校アカデミアでも、美術や文学
は科目になかったが、音楽はあったのだ。

 ならば、そもそも無意味な音楽がこまぎれになることで意味を失い、遠いこ
だまとなるというのは、一体どういう事態を表しているのだろうか。

 この謎を一旦棚に上げて、次に収められている「ローマ帝国の崩壊・一八八
一年のインディアン蜂起・ヒットラーのポーランド侵入・そして強風世界」と
いう長いタイトルの、ごく短い掌編に進もう。

 冒頭、主人公の「僕」は、「害のない音楽を聴きながら」日記をつけている。
 その後、「害のない音楽のつづきを聴きながら」コーヒーを入れる。
 日記をつけ終わると、「強風の吹き荒れる日曜日の午後にふさわしいと思え
る音楽」を選ぶ。

 ここで気づくのは、すべての音楽が、BGMとして聴かれていることである。
 害のない音楽。なぜそんなものを聴くのか。それは日記をつける行為の、伴
奏として、なくてもいいが、あっても構わないものだから許容されている。
 強風の日にふさわしい音楽を聴いている時は、ながら聴きではないけれど、
そもそも聴こうと思った動機は強風にあるので、もし風がなければ音楽を聴か
なかったかも知れないし、仮に聴いたとしても、その曲ではなかったかも知れ
ない。すわなち、ここでも音楽は強風に付随している、いわば強風のおまけで
ある。

 主人公の「僕」にとって、大切なのは「日記」と「コーヒー」と「強風」で
あって、あくまで「音楽」は、それらにふさわしい気分を盛り上げるという機
能を与えられた添え物に過ぎない。つまり、本来無意味であることで純粋な芸
術であった音楽が、生活の伴奏という「意味」を付与されて、堕落したものに
過ぎないのである。

 一方、夜の街に鳴り響く「こまぎれの音楽」もまた、音楽本来の自立性を失
って、街に賑わいをもたらし、人々の購買意欲をそそるといったような、何ら
かの機能を果たすという点で「意味のある」ものに成り下がっている。
 それがもう一度意味を失うことで「こだま」になるのだが、しかしそれ以前
には、やはり都市の伴奏としての「意味」によって汚されていたのだ。

 無意味な音楽が、こだま化して改めて無意味になる。このことが示している
のは、音楽が一度「意味化」されたという事実である。BGMという機能を与
えられて、意味を持たされた音楽の堕落を、それは照射している。

 さらに、もともとの無意味な音楽を聴くことは、機能ではなく体験である。
 体験は消費されない。純粋に音楽と向きあい、真剣に耳を傾けた後、音楽は
聴く者の魂に刻印を残す。
 先に、無意味は無存在、と書いたが、このような無意味には強烈な体験とし
ての存在感がある。それは十分にリアルだ。

 だが、機能性は消費される。一定の利便性を享受することで、人はその機能
を消費してしまい、役割を終えた後に顧みられることはない。誰が、一度鼻を
かんだティッシュの思い出を心に刻むだろう。
 同じように機能化して意味を与えられた後、こだま化した音楽の無意味さは、
無存在であり、だからこそ、夜の街を歩く「僕」は、「ざわめきや光や匂いや
興奮の何分の一かは本当は現実に存在しないものであるように」思えたのだっ
た。

 利便性を金科玉条として発展してきた都市が、消費文明の華となったのは必
然である。
 次々と消費されていく文明は、本質を蝕まれ、表層的な流行にのみ翻弄され
ていく。
 リアルというものが、確固たる本質的な何ものかであれば、それが都市にお
いて、どんどん希薄化していくのもまた当然だろう。
 機能として消費される音楽の誕生は、まさにそうした希薄な都市文明の象徴
だった。
 70年代のあの時点で、まだバーチャル・リアリティーはなかったけれど、そ
れでも既に都市は徐々に現実感を失い始めて、やがてリアリティーという言葉
そのものが歪に変質していく予兆があったのだ。
「何分の一か」と村上春樹が書いた、そのパーセンテージは、この時十分の一
程度だったかも知れない。しかしそれは徐々に上がって、いまでは三分の一? 
いや、二分の一?

 そう言えば、作家であると同時に、優れた音楽の聴き手でもある村上春樹が、
1974年にそんな予兆を捉えていた頃。音楽を発信するミュージシャンの側にも、
同じ感覚を持った新しい才能が登場していた。1972年にデビューしたそのシン
ガーソングライターは、「私の音楽はBGM」と自ら言い放っていたのである。

 彼女の名を、荒井由実、と言う。


村上春樹
「双子と沈んだ大陸」
「ローマ帝国の崩壊・一八八一年のインディアン蜂起・ヒットラーのポーラン
ド侵入・そして強風世界」
(『パン屋再襲撃』所収)
昭和六十一年四月十日 第一刷
文藝春秋

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
新型コロナウイルスが蔓延する中、たまたまジャレド・ダイヤモンドの『銃・
病原菌・鉄』を再読していました。マヤやアステカの帝国を滅ぼしたのが、ス
ペイン人の征服者による銃の力と、天然痘などの伝染病であったこと。もはや
そこまでの被害に見舞われはしないだろうと思いつつ、人類とウイルスの果て
しない闘いに気が遠くなります。

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『フェアトレードのおかしな真実』コナー・ウッドマン 英治出版

 フェアトレードは、昔からうさん臭いと思っていた。フェアトレードの最初
の試みはコーヒーだったと思うが、貧困に苦しむ生産者から相場より高い価格
で買い付けて社会貢献をするというやつ。

 なぜうさん臭いと思ったのかと言うと、コーヒー豆の原価がおそろしく低い
ことを知ってるからだ。分かりやすく説明するため。実際の市場価格とは違う
が、こういう例を挙げると分かりやすいだろう。

 コーヒー1杯分の豆の価格を10円とする。フェアトレードで取引されるコー
ヒー豆は20円で買い取られるとしよう。コーヒー農家から20円の豆を買った店
が従来300円で出していたコーヒーを、フェアトレードのラベルを付けて350円
でも売れるようになったとしたら、アラ不思議!農家は10円しか儲からないが、
買った店は40円利益が増える。農家のもうけの4倍儲かるのだ。

 要はフェアトレードとはマーケティングであって、コーヒー農家のことを考
えてないとは言わないけども、慈善をネタにしてより儲けようとすることだと
思っていたわけだ。そんなことを思っている人間としては、この本のタイトル
は刺さる。

 著者は英国のテレビキャスターでジャーナリスト。ナショナルジオグラフィ
ックの番組のホストを務める人で、世界中を回ってフェアトレードの現場を見
て回った。8ヶ所回ってきたので8章立てになる。

 最初に来るのはニカラグアのロブスター漁だ。海底にいるロブスターを取る
ために水深10メートル以上を潜る漁師たちは、先進国のダイバーが持つダイビ
ングの装備は持っていない。潮の流れによって流されて行方不明になったりす
る危険も大きい。実際、事故が多発している。
 その上潜水病の知識もないから潜水病を防ぐ減圧停止もやらない。だから事
故で死ななくても、しまいには潜水病になる。

 ロブスターは、卸売業者を経て大手の飲食業者の手に渡る。大手の飲食業者
はCSRに敏感だ。自分たちの扱っているロブスターは、漁師に危険なことをさ
せないものを選んでいると主張する。しかし、ロブスターに、危険な漁で獲ら
れたものかどうか、ロブスターを見て判別することはできない。

 仕掛け漁にすれば、こうした危険は避けられるが、仕掛け漁は漁獲量が少な
い。それがわかっていても、食っていくために漁師たちは危険を犯す。

 その次に紹介されるのは、英国のチョコレートの大企業、キンバリーがいわ
ゆるフェアトレード認証業者の認定を受けたカカオを仕入れるために仕入れ先
を変えるとした話が来る。これにより、キンバリーは倫理的に正しい企業であ
ると認められるとして喜んでいる。

 しかし、そもそもキンバリーと言う会社は100年前に奴隷制度に反対するた
め、奴隷制度のない国であるガーナからカカオを仕入れることにした。キンバ
リーの決断は、奴隷解放運動の大きな後押しになった。もともと立派な会社な
のである。今も立派な会社である。

 そんな会社でもフェアトレード認証機関の認証マークを製品に付けたいと望
むとは・・・

 そんな感じで、世界中のさまざまなフェアトレードの現場を訪ね歩いている。
中には、コンゴの章のように、もう救いようがないと言うか、本当にフェアト
レードをしたいと思っている会社ですら確認不可能なレベルのごまかしが横行
している例も紹介されていたりもする。

 しかし、そうでない例も紹介されていて、糾弾だけの本にはなっていないの
が、この本の良いところだろう。いろいろ問題があると言ってもフェアトレー
ドを進めようとする流れは悪いことではないし、現在フェアトレードにはなっ
ていないが、状況が変わればフェアトレードを推進しようとする人や企業も少
なくないようだ。

 著者も言っているが、読んでいて思うのは、中国の影響力の大きさだ。良き
につけ悪きにつけ、著者はあちこちで中国の力を目の当たりにしている。今や
世界第二位の経済大国であるから、世界中に影響力を持つのは当然なのだ。し
かし、言い方を変えれば、中国が本気になってフェアトレードを推進するなら、
世界のかなりの地域が救われることになりそうだ。

 フェアトレードの認証マークがついているモノを買って、「私はいいことし
ている」と満足するのは賢明な人の態度とは言えない。業種によっては、フェ
アトレードをやろうとしても事実上不可能なこともある。

 そんな中でも、人知れずコツコツ努力する人たちがいる。世の中、まだまだ
捨てたもんじゃない。

(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
----------------------------------------------------------------------

 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ─ 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510


 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

 〒142-0041 東京都品川区戸越5-4-3 アズ品川ビル4階
       ビズナレッジ株式会社内 [書評]のメルマガ 献本 係

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンや楽天などのオンライン
 書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。つまり
 は当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願いしま
 す。(あまりにも短いものは書評とは呼べませんので、文字数の条件を設け
 ました。書評は500字以上でお願い致します。)

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 続いて20日号をお送りします。(あ)

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[書評]のメルマガ vol.694


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■■ [書評]のメルマガ                2020.02.10.発行
■■                              vol.694
■■ mailmagazine of book reviews     [思いがけないカタルシス 号]
■■------------------------------------------------------------------
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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→103 たべることはいきること

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<121>神戸の垂水の舞子で漫画…う、嬉しい!

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→今回はお休みです

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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103 たべることはいきること

 家族で年越しした夜、一年の中でどの食事がおいしかった?という質問をし
 ました。
 次男坊は、夏に食べた鰻やさんの鰻と昼酒。お店の雰囲気も老舗感があり、
 おいしいご飯の思い出になったことを話してくれました。
 
 折々の思い出に食卓は不可欠。
 子育てはあっという間で、一緒に暮らさなくなってから、お正月など帰省時
 の食事は私にとって大事な時間です。

『たべる たべる たべること』
 くすのきしげのり・作 小渕もも・絵 おむすび舎

 新潟の出版社おむすび舎さんの絵本は、名前のあるおむすびのように食べた
 ら(読んだら)ほっこりします。

 この絵本ではひとりの女の子が生まれて、成長して、大人になっていく――。

 流れていく時間の中での食事は、どのときも愛しく、胸があつくなりました。
 あたたかい色合いの絵に、大事な思いがおいしく優しく描かれています。

 大人が読むと、この時間がよりリアルに感じられるのではないでしょうか。
 子どもはすなおに目の前の時間を楽しんで読むでしょう。

 ぜひぜひ手にとってほしい絵本です。

 次に紹介するのは2018年ニューベリー受賞作の邦訳です。
 アメリカで毎年優れた児童文学作品に贈らる賞で、何を読んでいいかわから
 ない時は指標になるものです。

 『ハロー、ここにいるよ』
 エリン・エントラーダ・ケリー 作 武富博子 訳 評論社

 11歳の少年ヴァージルに起こった怖いできごと。
 その一日を描いた物語です。

 おとなしくて家族にも「カメ」と呼ばれてしまうヴァージル。
 彼の大事なモルモット、ガリヴァーを入れたバッグを、いじめっこチェット
 に意地悪されてしまいます。

 あっ!と声がでてしまったほど、その意地悪はヴァージルを大変なことに追
 い込み、いったいどうなるのかハラハラしながら読んでいきました。

 なんていったらいいのでしょうか。
 おとなしい少年vsいじめっこの図式は、児童文学ではよく描かれるものです
 が、2人のキャラクターはわかりやすいものではありません。
 丁寧な人物描写のおかげで、チェットに対しても一面的ないじめっこには思
 えず、考えさせられます。

 ヴァレンシアやカオリという個性的な友人も、ヴァージルの大事な仲間。
 耳の聞こえないヴァレンシアや、妹をアシスタントに霊能者として相談者の
 運勢を占うカオリも面白いキャラクターです。

 多様性が自然に描かれ、今までにない読後感がありました。

 最後にご紹介するのは、グレタさんについて書かれたものです。
 オーストラリアの森林火災、日本の台風や各地の雪不足。世界的な気候変動
 の中、グレタさんは強烈な印象をもって登場しました。 

 『グレタのねがい 地球をまもり 未来に生きる』
 キャメリニ著 杉田七重訳 西村書店

 本書では、グレタさんがどのような経緯で環境活動家になったのか、子ども
 が読んでわかるように、読みやすく書かれています。

 スウェーデンに暮らすグレタさんは、地球を守るためには、大人になるまで
 待たずとも、いまできることをしようとまずは毎週金曜日にストライキを起
 こします。

 両親もグレタさんのよき理解者となり、まずは家族で地球を害するような行
 動をを慎むようになります。

 身近な家族が変化し、次はもっと広く周りが変わっていくようにグレタさん
 は行動していきます。

 大きな視野をもつグレタさんに大人も追いついていかなくてはと思いました。
 まずは自分にできることを今まで以上に日々意識していきます。

  
(林さかな)
会津若松在住。「本の雑誌」新刊めったくたガイド海外文学担当。
http://1day1book.strikingly.com/

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<121>神戸の垂水の舞子で漫画…う、嬉しい!

 むつき潤の漫画『バジーノイズ』が「面白いよ」と教えてくれたのは、村上
知彦さんだった。
 しかも、その物語の舞台が神戸、さらには垂水の舞子で、若い男女が音楽を
めぐって、なンやかンやんする話…と聞けば、もう嫌でも伊藤重夫を連想して
しまうではないか!

 とりあえず、電子版の「試し読み」でアタマのとこだけ読んでみると、絵柄
が違うのは当たり前だが、作品中に流れるその空気感というか雰囲気は、まん
ま伊藤重夫の再来!
 早速に、その時に出ていた単行本4巻までを、まとめて買ったのは、昨年10月。

 明石海峡を見晴らす、神戸は垂水の舞子。そこでマンション管理人やりなが
ら、夜は自室にこもり、一人、サンプラーとパソコンを駆使して、誰に聴かせ
るわけでもない、ただ自分の満足のために音楽を作り続ける21歳の男子・清澄
が、ひょんなことから同じマンションに住む「潮」という女性と知り合い、彼
女に引きずられる形で、外の世界に出ていき、同じく潮の画策…というかお節
介で、自分のためだけだった音楽をSNSを通じて、外に向けて発信していく。

 そもそもが、若い身空でマンションの管理人などというジジむさい仕事に就
いているのは、人と親密にかかわるのが苦手な故で、好きな音楽だけを糧に、
一人静かに暮らしたい清澄だったのだが、潮に引きずられるまま、街頭ライブ
をやったり、SNSでの発信を続けるうち、誰かに聴かせること、聞いた人の反
応を知ることの喜びを、次第に感じるようになってくる。

 さらに、潮の元同級生で音楽事務所から新人ミュージシャンの発掘とマネジ
メントを委託業務として請け負っている「航太郎」や、かつて清澄とバンドを
組んでいたベーシストの「陸」を巻き込んだユニットに発展していく。

 ユニットでの活動は順調に進み、自主製作でアルバムも完成するのだが、航
太郎とその上司のプロデューサーからメジャーデビューを持ち掛けられたあた
りから、4人の関係性に綻びが出始める。
 まずは、メジャーデビューを目指し、東京へ進出する過程で、疎外感を感じ
た潮が離れていき、さらに、航太郎の上司プロデューサーの、業界的腹グロな
思惑による画策で、清澄一人が東京に残され、神戸に戻った陸と切り離される。

 …と、それまで紆余曲折しながらも、ひとつにまとまっていた清澄、潮、陸、
航太郎はバラバラに分裂し、「どないなるんやろ…?」と不安な先行きを暗示
しながら「4巻」は終わっていた。

 が、しかし、この1月に発売された「5巻」でこの物語は完結するのだが、
そこには、思いがけないカタルシスが用意されていて、正直、わしは、泣きま
した。

 作者のむつき潤さんは、神戸芸術工科大学で漫画を専攻した26歳。
 某サイトにインタビューが掲載されていたのだが、驚いたことにこれまで音
楽は聴いたことはあるけど、実際に演奏したりバンドを組んだりという経験は
皆無だそうで、作中の、音楽に関する部分は、担当編集を通じて情報を得たり、
実際にライブハウスに足を運んで、業界関係者に話を聞いたりもしたらしいが、
その大部分は、ネットを通じて調べた情報なんだそうだ。

 「いま、『音楽を描くこと』は、イコール『SNSを描くこと』」と語ってい
て、音楽が、今や一人で「完パケ」状態のものが作れて、さらにはそれを全世
界に向けて発信できることが、とても新鮮に映ったらしい。
 そして、一人で発信できる音楽を、「商品」としてお金を出して買ってもら
うことに腐心する「大人の事情」と、ただ好きな音を極めたい、というある意
味「ピュア」な心情がぶつかったときに生じる軋轢やひずみ、といったものを、
この作品で表現したかったようだ。

 同時に、「一人で発信できる」というのは、漫画も今や同じで、ツイッター
などのSNSやウェブ上には、無料で読める漫画があふれている昨今、いかにす
れば「紙の漫画をお金を出して買って」もらえるか? と考えて出した結論が、
「おしゃれな本にする」だったそうだ。
 確かに、この単行本全5巻、どの巻もすこぶるおしゃれで、レコードジャケ
ットのような表紙に仕上がっている。

 中身もまた、すこぶるおしゃれで、コマ割りや構図もイマドキの漫画によく
みられる、これ見よがしな斜めカットのコマや、暑苦しいたち切りの多用が一
切なくて、とてもセンスを感じさせる「おしゃれ」に仕上がっている。
 この「おしゃれ」が、絵柄は全然違うのに、伊藤重夫を彷彿させる原因であ
るな、と、今気づきました、はい。

 清澄と陸が組むユニットは、「アジュール」という名で、それは、マンショ
ンの管理人を首になり、行き場を失った清澄が深夜、潮と二人で音楽を奏でて
いた「アジュール舞子」からネーミングされていた。
 明石海峡大橋の真下に位置する人工海浜の「アジュール舞子」は、わしも個
人的に思い入れのある場所で、作中の重要なシーンでここがたびたび登場する
のは、ちょっと嬉しかった。

 この「バジーノイズ」は、かなり前からあちこちで評判になっていたらしく、
発展途上の若いミュージシャンを描いているからか、「下北系漫画」と呼ぶ人
たちもいるようだが、わしは、断固として、これは「舞子系」と呼びたい!

 むつきさんには、この後も、舞子系神戸漫画をこそ描き続けて、神戸的「お
しゃれ」漫画を追及していただきたい、と今は、勝手に期待しているところな
のです。

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ― 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510

・『支え合い・学び合いで育つ「わたし」』(エディット・パルク)
  http://web.kyoto-inet.or.jp/people/cogito/%8Fo%94%C5%88%C4%93%E0/%8Ex%82%A6%8D%87%82%A2%81E%8Aw%82%D1%8D%87%82%A2.html

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

 〒142-0041 東京都品川区戸越5-4-3 アズ品川ビル4階
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2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンや楽天などのオンライン
 書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。つまり
 は当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願いしま
 す。(あまりにも短いものは書評とは呼べませんので、文字数の条件を設け
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5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 またまた忙しさの中で、発行がすっかり遅くなってしまいました。

 なんでこんなに忙しいんだろうか、、、と思ったら、オンラインでの仕事が
増え、オンラインでの打ち合わせが増えたせいではないかと思い当たりました。

 オンライン化で便利にはなりましたが、その分、セルフコントロールも必要
ですね。(あ)

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[書評]のメルマガ vol.693

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■■ mailmagazine of book reviews  [変わらないことを楽しめる年齢 号]
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■コンテンツ
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★「トピックス」
→ トピックス募集中です

★「音楽本専門書評 BOOK’N’ROLL」/おかじまたか佳
→ #114『歌行燈』

★「目につく本を読んでみる」/朝日山
→ 『なぜ彼らは、北朝鮮の「チュチェ思想」に従うのか』

★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→ 今回はお休みです

★【募集中】献本読者書評のコーナー
→ 献本お待ちしています!

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#114『歌行燈』

 霜月十日あまりと言うから、いまの暦で十二月の半ばあたりか。時刻は初夜。
すなわち午後八時頃。

 処は焼き蛤でお馴染みの桑名である。闇垂れ込めし停車場(ステイション)
に、今しも降り立つ二人の弥次喜多。いや、その内の一人、幾分若い六十年配
は、実際弥次喜多の一節を口ずさみながら登場し、その懐にはしっかり膝栗毛
の五編が忍ばせてあるという丁寧さ。連れの七十年配は、そんな相方と遠慮の
ない言いたい放題を交わしつつ、息も凍る夜の町、二台の人力車を仕立てて宿
へ向かうのが発端である。

 その人力とすれ違う、一人の男。三味を片手の門附芸人。眉の濃い、二十八、
九の人品(ひとがら)な兄い。

博多帯しめ、筑前絞、

  田舎の人とは思われぬ、

歩行(ある)く姿が柳町、

「ぞっとするような、うっとりするような、緊めたような、投げたような、緩
めたような、海の中に柳があったら、お月様の影の中へ、身を投げて死にたい
ような」惚れ惚れする人たらしな声で博多節を唄い棄て、くぐった暖簾がとあ
る饂飩屋。余りの寒さに耐えかねて熱燗でちと温まろうという算段。主、女将
と軽口交じりに、酒を煽ってやれ人心地と気を緩めたのも束の間、通りから
「星の凍てそうな按摩の笛が流れ」込み、「月天心の冬の町に、あたかもこれ
凩の吹き込む声」がする。

「ああ、霜に響く」門附の兄いはふと痩せた肩を抱いて、「按摩が通る……女
将さん」

「ええ、笛を吹いてですな」

「畜生、怪しからず身に染みる、堪らなく寒いものだ」


 声が寒いとは、ある種の共感覚だろうか。色が聴こえたり、音が香ったりす
る、感覚の混乱。しかし、この「歌行燈」を書いた明治の文豪、泉鏡花は、未
だそうした心理学的知見から遠い位置にある。

 門附が按摩の声に覚える寒さは、実は恐怖である。怯えである。「白眼(し
ろまなこ)の座頭の首が、月に蒼ざめて」と描写される異相とはいえ、三十路
間近のいい大人がたかが按摩になぜ震えるか。もちろんそれにはそれ相応の因
縁がある。なぜなら彼もまた、三味の糸ならぬ運命の糸が縺れ縺れて絡み合う
鏡花世界の住人なのだから。

 一方、人力に乗った弥次喜多は無事宿へ上がり、派手なお座敷の賑わいに迎
えられる。

「三味線太鼓でトトン、ジャカジャカじゃんじゃんと沸返るばかり」「土間を
隔てた隣の座敷に、凡そ十四五人の同勢で、女交りに騒いだ」「猿が鳴きなが
ら走廻るように、キャキャとする雛妓(おしゃく)の甲走った声」「洞穴から
風が抜けたように哄(どっ)と動揺(どよめ)く」

 女中の説明によれば、「丁ど霜月でな、今年度の新兵さんが入営なさります
で、その送別会じゃ言うて、彼方此方(あっちこっち)、皆、この景気でござ
ります」

 日清日露の戦争を経た明治43(1910)年の作だけに、帝国軍人さんたちの意
気軒昂な時代背景が偲ばれる。

 そこで二人も負けじと芸者を呼ぼうとするが、既に皆出払って、この好景気
にさえお茶を引いていたうら若い妓がやっと一人。三味も歌もままならない半
人前だが、たったひとつ身に叩き込まれた芸が、なんと能の舞だった。そして
その見事な踊りを見て、明かされた旅人二人の正体は……

 運命の糸に絡まれたのは、無論門附の兄いのみではなく、弥次喜多気取りの
二人と、能を舞う芸妓もまた、同じ糸に操られ、氷のような桑名の夜に引き寄
せられていた。

 鏡花独特の名調子は、地球温暖化の昨今、エアコン完備の住環境で忘れがち
な、この国の冬が元来持っていた身に染みる凍てつきの味を思い出させる。そ
れも、按摩の笛という音を通して。

 サウンドスケープという言葉がある。風景の意を持つランドスケープの、最
初の言葉をサウンド、すなわち音に替えた、これはすなわち、造語。

 泉鏡花はその絢爛たる美文で、目にも彩な情景描写に巧みだが、ここではそ
うした技もたっぷり披露しつつ、本作の主題が能の舞と謡、すなわちダンスと
ミュージックであるところから、按摩の笛という音を通して、桑名の夜のしん
しんとした冷え込みを鮮やかに描破している。

 町に響く物売りの声は、江戸から昭和の初めにかけて、日本のサウンドスケ
ープを彩った。金魚売りの呼び声、豆腐屋のらっぱ……それが1970年代にはチ
リ紙交換、最近では廃品回収。つまりは、ものを売る商売ではなく、ものを引
き取る商売が、いずれもマイクを通した無粋な声で我々の生活に押しかけて来
ているわけで、改めて日本における資本主義の爛熟など思ったりする。

 失われたサウンドスケープを偲び、泉鏡花を「聴く」、令和二年の年初め。
本年もどうぞよろしくお願いします。

泉鏡花『歌行燈・高野聖』
昭和二十五年八月十三日 発行
昭和四十二年十二月三十日 二十刷改版
昭和六十一年七月二十日 五十二刷
新潮文庫

おかじまたか佳

素人書評家&アマチュア・ミュージシャン

今年も、例年通りの年末年始。いつもと変わらないことを楽しめる年齢になっ
てきたようです。

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『なぜ彼らは、北朝鮮の「チュチェ思想」に従うのか』
 篠原常一郎、岩田温 扶桑社

 サブタイトル「日本の教員や大学教授もハマり、拉致問題にも影響を与えた、
人々を反日に駆り立てるイデオロギーの正体!」

 書いているのは、昨年末からチュチェ思想ネタでYouTubeにデビューし、コ
ンテンツのクオリティの高さから、数日で1万を越えるチャンネル登録を確保
し、現在(1/18日)7.5万のチャンネル登録を得ているジャーナリストの篠原
常一郎氏。そして、YouTuberでもあるが、出版的には「人種差別から読み解く
大東亜戦争」とか、いかにも美味しそうな本を書いている新進気鋭の学者であ
る岩田温氏の共著である。

 何かと話題になることが多い北朝鮮。近年はミサイル実験で話題をまくこと
が多い国で、近くて遠い国だと思う人は多いだろう。しかし意外に北朝鮮は身
近にあるようだ。身近にあるのは北朝鮮のチュチェ思想(主体思想)を日本で
広めようとする、チュチェ思想研究会に所属する人たちが活躍しているからだ。
学者や教員が多いが、日本で最も一般に知られているチュチェ思想研究会メン
バーとおぼしき人を挙げれば、デビ婦人になるだろう。

 チュチェ思想とは、もともと金日成が作った思想で、「人間は自己の運命の
主人であり大衆を革命と建設の主人公としながら、民族の自主性を維持するた
めに人民は絶対的権威をもつ指導者に服従しなければならない」とする。要す
るに北朝鮮の指導者である金正恩を崇拝しろという思想なわけだ。

 北朝鮮がそういう思想で国家を支配しているのは多くの人が知っている。朝
鮮総連系の在日朝鮮人の人がチュチェ思想の支持者であっても、まぁ理解はで
きる。しかし、タイトルにある『なぜ彼らは、北朝鮮の「チュチェ思想」に従
うのか』の彼らとは、韓国で生まれ育った韓国人だったり、日本で生まれ育っ
た日本人のことをさす。

 そんな韓国人や日本人のチュチェ思想の持ち主はチュチェ思想研究会という
組織に属し、拉致問題や沖縄の基地問題、そしてアイヌ問題にも密かに介入し
てきて、韓国や日本を内部から潰そうとする。

 特に韓国はひどい。なにせ現職の大統領文在黄やソウル市長朴元淳、そして
不正のオンバレードになっている法務次官候補だった曹国などがチュチェ思想
研究会のメンバーである疑いが濃厚なのだ。(証拠も本書で提示されている)
言い換えれば北朝鮮が韓国を実質支配しているようなもの。

 だから文在黄は韓国と日本との関係が悪くなるように動いている。在韓米軍
が撤退すると言えば、文在黄はたちは本気で喜ぶだろう。なんで韓国大統領が
こんなことをやるのだろうか?....背後にチュチェ思想研究会があると言うな
ら、確かに話のつじつまは合う。

 韓国ほどではないが、日本でもチュチェ思想研究会は確実に根を下ろしてい
る。秘密裏に感動しているような団体ではないが「暗躍」していると言ってい
い。なぜならチュチェ思想研究会のメンバーは、なぜこんなトコにいるのだと
思うようなトコにいるのですね。

 拉致問題関係は北朝鮮が関わっているから、わりと納得しやすいが、沖縄の
基地問題やアイヌに関わってくるとなると多少の説明は必要だろう。

 沖縄の辺野古では、米軍基地の件で今も反対運動家が抗議の座り込みを行っ
ているが、座り込みをする人が持つ看板にはハングルで書かれているものがあ
る。韓国からも反対運動家が来ているからだが、なぜ韓国から辺野古の反対運
動に参加してくる人がいるのか?しかも日本のチュチェ思想研究会の本拠は沖
縄にあるのだ。

 アイヌ問題への介入もひどい。自分たちの都合の良いようにアイヌと日本の
歴史を改ざんし、改ざんした内容を教育する博物館まで北海道に作らせている。
いやはや、そんなことになっていたとは知らなかったよ。

 目的は当然日本の弱体化であろう。そして彼らの活動に無自覚な人は政界に
も多く、上手にからめ捕られている人も少なくないようだ。

 日本での主な活動拠点が沖縄とか北海道になるので、本州や中国四国、そし
て九州の人にはピンと来ないかも知れないが、北朝鮮の対日工作は着々と進め
られてきた。

 とはいえ反論もあると思う。確かにそうした工作が進められてきたのは事実
だろう。だがこれからもすすめられるかは疑問だ・・・確かにその通りだと思
う。しかし、これまで、そんな工作が行われてきたことを知らない人、要する
に私のような者にとっては、知らないでいいことにはならない。

 なぜなら、一見正義の顔をした悪徳に対して鈍感であるままでいるのは、害
悪だからだ。たとえば自分としてはいいことをしているつもりでも、実際には
悪に手を貸すような行為の判別くらいはできなければ、悪に利用される人にな
ってしまうから。

 マキァヴェッリは、天国に行きたければ地獄への道を熟知せよと言った。こ
の本は、地獄への道のひとつを指し示してくれていると思う。


(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)

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・『ヒューマン ─ 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
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・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
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[書評]のメルマガ vol.692


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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<120>“大大阪”発『エコール・ド・プラトーン』

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第120回 検証 大川小学校事故

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→102 昔と今、なにが違う

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■守屋淳著『「論語」がわかれば日本がわかる』の御紹介
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 みなさん、こんにちは、というかお久しぶりです。このメルマガの創設にか
かわった守屋淳です。

 今回、一般の皆さんにも楽しんで頂けるような新刊を発売しますので、宣伝
のためにしゃしゃり出てきました。2月5日の発売です。

『「論語」がわかれば日本がわかる』守屋淳  ちくま新書  968円

 日本人は、教育学や社会学、心理学などの比較調査や、種々のアンケートの
結果に明らかなように、いろいろ特徴的な傾向を持っています。たとえば、

・日本人が好むコンピューターゲームの形は、たとえば五人のメンバーがいた
 場合、その五人でチームを作って、強大な敵を倒しに行くようなゲーム。ア
 メリカ人の好むゲームの形は、五人のメンバーがバトルロイヤルでお互いに
 殺し合いをして、一人の勝ち残りを決めるようなゲーム。(和田洋一スクウ
 ェアエニックス前社長の指摘)

・日本の「いじめの特徴」は、何かをすることというより、何かをしないこと
 (〜外し、ハブにする)であり、加害者、被害者、傍観者がころころ変わり
 やすい。

・日本の学校で成績のいい子は、不得意科目を我慢して努力して克服できた子。
 アメリカで成績のいい子は、自分の得意な部分を伸ばした子。

・二〇一四年に実施された、日本を含めた七カ国の満一三〜二九歳の若者を対
 象とした意識調査で「自分自身に満足している」「自分には長所がある」と
 いう質問に対して、ともに調査国中で日本は最低の数字だった。

・二〇〇七年、アメリカのピュー研究所が、各国の意識調査を行ったなかで、
 「政府はひどい貧困に陥っている人を助けるべきか」という質問に対して、
 日本は「完全に同意する」という答えが一五%で、調査国中ダントツの最下
 位。

・日本の総務省が二〇一四年に実施した「ICTの進化がもたらす社会へのイ
 ンパクトに関する調査研究」によると、ツイッターやSNS,掲示板、ブロ
 グなどにおいて匿名率が諸外国に比べてかなり高い。たとえば日本では、ツ
 イッターの匿名での利用率が七十五.一%ですが、フランスが四十五%、そ
 れ以外の国はすべて三十%台の匿名率。

 なぜ、こういった傾向が出るのか。それは日本の公教育や組織文化のなかに、
『論語』や儒教の価値観が根強く残り続けていて、その影響を複合的に受けて
いるからだ、ということを、歴史的な経緯から解き明かしたのが本書なのです。

 昨今、いろいろな大企業が不祥事を起こしていますが、その多くは、『論語』
や儒教の価値観の悪い面が出てしまったと見ることもできます。

 そして、こうした問題は、『論語』や儒教の価値観が、まさしく「無意識」
の刷り込みになっているから起こる、と筆者は考えています。いわば日本人の
刷り込まれた性(サガ)とでもいうべきもの。ただし、「自分には、こういう無
意識の刷り込みがある」とわかれば、人はそこから自由になることもできるの
です。自由になるとは、それを捨てろという意味ではありません。もう一回同
じものを選んでもいいし、ダメな部分を直して使ってもいいし、全然別の道を
選ぶこともできます。つまり再選択をすることができるのです。

 ぜひ、ご一読して頂ければと思います。

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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<120>“大大阪”発『エコール・ド・プラトーン』

 昨年の10月、所用で東京へ行った。約10年ぶりだった。
 一泊二日の日程を終え、新大阪で新幹線からJRに乗り換えて大阪駅に降り立
ったとき、ふと思ったのだった。

 なんか、やたらにのんびりと長閑だぞ、と。

 そういえば10年前に東京へ行って帰ってきたときにも、ふとそんな思いが過
ったな、と思い出しもした。

 およそ30と数年前、東京に住んで、月に一度、大阪・神戸へ出張していた。
 あのころは、東京も大阪も、どちらも同じように、街には人がわらわらとひ
しめき溢れていて、どちらも同じように賑やかに忙しなく動いているように、
見えた。確かに。
 しかし、今は、その「賑わい度」において、明らかに違いが見える。

 これは、この30年ほどの間に大阪が以前よりも田舎になったのか、はたまた
東京が巨大に膨れすぎたのか、どっちなんでしょうね?
 どちらにしても、今や大阪は、その賑わいや人口の集中度において、東京の
はるか後塵を拝しているのは確かなようで、関西人としては、やや複雑な思い
にもとらわれる。
 まあ、やたらと賑やかで忙しないのが「いい」というわけでもないのだけど
…でも、なァ…ちょっと寂しい気がするのも、事実。

 市川崑が1980年に撮った映画『細雪』は、およそ10年近くのスパンで描かれ
た原作小説を、昭和13年春から翌年初頭の冬まで、という1年間に凝縮して描
いている。
 大阪と阪神間の芦屋、神戸を主な舞台とする物語は、昭和初期の「阪神間モ
ダニズム」の空気を見事に捉えているのだが、同時に、当時「大大阪」と呼ば
れた大阪が、人口でも、また経済面においても、東京を凌ぐ威勢を誇った様子
を、忠実に伝えている。

 映画の中で、代々続く船場の大店の「とうさん」として育った四姉妹の長女
「鶴子」は、婿養子の夫とともに代々受け継いできた「本家」を守る立場で、
だから銀行員の夫に降って湧いた東京への転勤話を、頑なに拒む。
 大阪の「本家」を守らねば、という義務感もあるのだが、それよりもなお、
「京都より東へは行ったこともない」というのが矜持である鶴子にとって、
「東京」は、遥か地の果てともいえる辺境であり、大阪を離れてそこへ引っ越
すというのは、「都落ち」以外のナニモノでもないのだ。

 結局、周囲の説得と夫への気遣いから東京への引っ越しを承知するのだが、
大阪駅で姉妹たちに見送られるラストシーンでも、東京転勤は栄転でもあり、
にこやかに見送られる夫とは裏腹に、鶴子は一人、まだ大阪に未練を残してそ
うな、寂しげな笑顔を見せているのである。

 「大大阪」の雰囲気は、人口では既に東京が大阪を凌いでいた昭和30年代に
もまだ健在で、当時淀屋橋の会社に勤めていたわが父は、常日頃から「父ちゃ
んが働いとる場所が、日本の中心なんやで」と誇らしげに威張っていた。

 永美太郎『エコール・ド・プラトーン』は、そんな「大大阪」が実質的にも
日本経済の牽引車だった時代、大阪に興された出版社「プラトン社」を舞台に、
大正末から昭和初期にかけての、大大阪モダニズム的文芸史を描く群像劇だ。
 リイド社からただいまは単行本の1巻が発売中で、続編は「トーチweb」で連
載中。

 物語の語り部という位置づけでの主人公は、若き日の川口松太郎(!)。
 大正12年、関東大震災の東京を逃れた主人公・松太郎が、師である小山内薫
を頼って、大阪の港に降り立つところから、物語は始まる。
 松太郎は、師・小山内の推薦で、当時まだ「三十二」だった「直木三十五」
とともに、当時大きく売り上げを伸ばしていた「クラブ化粧品」が出資する出
版社「プラトン社」の新雑誌「苦楽」の創刊に、編集者として携わっていく。

 そして、その過程で登場するのが、前述の小山内薫はじめ、菊池寛、芥川龍
之介、谷崎潤一郎、岡本かの子とその夫である一平と息子の太郎、川端康成、
等々、綺羅星のごとき文壇の寵児たち。

 この漫画、関川夏央・谷口ジローのコンビで描かれた、『坊ちゃんの時代』
以下の「明治5部作」の「その後」を引き継ぐ作品、とも言えるんじゃなかろ
うか。
 その時代の作家の目を通して俯瞰する近現代史、明治に続けて大正・昭和も
見てみたいな、と思っていたところに、この作品が登場した。
 しかも、それを「大阪視点」でやってくれるのだから、なおうれしい。

 また、川口松太郎といえば、自分的には「文壇のドン」然として君臨してい
た姿(筒井康隆『大いなる助走』にカリカチュアライズされてましたよね)し
か思い浮かばないのだけど、その松太郎のペーペーの駆け出し時代、というの
も面白いし、名前だけは知ってるものの、その作品や人物像については皆目知
らなかった「直木三十五」が、主要キャラクターとして動き、その存在を見せ
つけてくれるのもまた、楽しい。

 作者・永美太郎は、ジュンク堂書店でアルバイトの書店員として働いていた
とき、職場の棚にあった『モダニズム出版社の光芒:プラトン社の一九二〇年
代』(小野高裕・西村美香・明尾圭造:淡交社刊)を読んだことで、この作品
の着想を得たそうだ。
 作品化にあたっては、1920年代の「大大阪」的モダニズムをリアルに感じさ
せる、街景やキャラクターの服装の描写など、ディテールの正確な描写に腐心
しているそうだ。

 関東大震災以後、東京の出版社は、その大半が大阪へ移転し、それら出版社
が心斎橋筋に相次いで社屋を構えると同時に、同じ心斎橋筋には書店も相次い
で出店し、神田を凌ぐ書店街として活況を呈した、ということを、書店時代、
大阪の書店組合の古い人から聞いた覚えがある。
 そんな心斎橋筋の往時の姿もまた、今後の展開の中で見せてほしいな、と思
う。

 いずれにしてもこれまで「たこ焼き」「吉本」「どケチな商売人とど派手な
おばちゃん」というイメージでしか語られなかった大阪を、従来にはなかった
角度から描く漫画であるのは、確かだ。
 今後の展開とともに、どの時代までが描かれるのか、という点でも、興味は
尽きない。

 それにつけても、これまた過去に何度も触れてはいるのだが、「トーチweb」、
漫画界において、今や「エコール・ド・トーチ」とも言うべき存在に育ってい
る。
 この「エコール」の今後にも、大いに注目したい、と思うのであります。


<追記>
 以前、当欄で触れた、故・うらたじゅん氏の生前の全作品を収録した『ザ・
うらたじゅん 全マンガ全一冊』が、昨年末に第三書館から刊行されました。
 “幻の名作”『ちんちんばしら』も掲載されていて、早速買いました。定価
2800円(税別)は、お値打ちだ。

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第120回 検証 大川小学校事故

 まもなく、東日本大震災から9年が経つ。さまざまな犠牲があった。その犠
牲の中には人災と思われるものもあり、そういう疑いのあるものは訴訟に進ん
だケースもある。
 石巻市立大川小学校については、以前に本稿でも取り上げた。今回、再び大
川小学校をテーマにした本をご紹介することにした。というのも、昨年(2019
年)10月11日に大川小学校の訴訟について、最高裁の判断が下され、遺族の勝
訴が確定した。そのこともあり、学校防災を忘れないように、今回の本につい
て書く。

『止まった刻 検証・大川小学校』(河北新報社報道部 著)(岩波書店)
(2019年7月5日)

 あらためて紹介するまでもない。石巻市立大川小学校。
 東日本大震災の津波により、児童70名が死亡。4名が行方不明。10名の教職
員が死亡。
 我が子を失った親たちの心の時計は、2011年3月11日の午後2時46分で止ま
ったままになっている。それをタイトルにしている。したがって、「止まった
刻」は“とまったとき”と読む。地元新聞社は徹底的に遺族に寄り添って取材
を進め、記事を書き、それを新聞に「止まった刻」というタイトルで49回にわ
たり連載した。そして一部加筆して、単行本化した。

 震災以降の大川小学校の流れを年表風に振り返ってみよう。

平成23年3月11日
  地震発生 津波襲来 学校にいて生き残った児童は4名
平成23年4月9日
  第一回遺族説明会(以後、断続的に10回開かれる)
平成25年1月
  第三者検証委員会発足(以後、9回の会議)
平成26年3月1日
  第三者検証委員会報告書
平成26年3月10日
  23名の遺族が仙台地裁に損害賠償を求める民事訴訟を起こす
平成28年3月
  大川小学校の校舎が震災遺構となり、保存が決定される
平成28年10月26日
  仙台地裁判決(その後、双方が控訴)
平成30年4月26日
  仙台高裁判決(市と市教委に対し組織的過失を認める判決)
令和元年10月11日
  最高裁が上告を退け、高裁判決が確定した

 本書は、高裁の判決までを追っている。遺族はとても苦しい8年間を送って
いたことがよくわかる。
 責任を取りたくない、市と市教委。市教委は証言メモを廃棄してしまうし、
証言を二転三転と遺族説明会のたびに変えるし。市長は「自然災害の宿命」と
云って、原因究明をしようとしないし。完全に市長と市教委の両者はヒール役
になっている。
 また、第三者検証委員会も結局は何もできなかった。これまでにわかってい
ることをなぞっただけの報告書であり、また委員長自ら、「これが第三者検証
委員会の限界」と発言している。第三者検証委員会の敗北に終わった。
 遺族は、第三者検証委員会の報告書の提出を待って、その10日後に仙台地裁
に提訴した。
 平成30年4月の地裁判決では、遺族側が勝訴したにもかかわらず、遺族の気
持ちは晴れなかったという。なぜか? なぜ避難が遅れたか、について充分に
解明されなかったからだ。民事訴訟では、裁判所が原告と被告の双方の意見を
よく聞き、証拠を比べて、どちらが説得力があるかを判断するだけなのである。
 控訴した高裁での審理では、遺族側は「学校の災害に対する備え」について、
争う姿勢を示した。そして高裁の判断は地裁のそれとは少し違っていた。
 本書は、高裁の判決について多くのページを割いている。
 高裁では「事前防災に過失」があると断じた。そして、モデルとなる地震を
マグニチュード9の東日本大震災ではなく、より高い確率で起こる、宮城沖地
震とした。大川小学校のような川に面した学校は川の堤防を越えるような大き
な津波が来なくても堤防が水の力によって崩壊してしまい、結果として津波が
押し寄せることを予想しなければならない、と云い、学校は一般の人よりも高
いレベルの防災力が求められる、と断じた。
 実際に大川小学校では、津波に対する避難訓練はやっておらず、津波での避
難場所も決まっていなかった。それは学校側の大きな過失である、というわけ
である。
 この高裁判決が、今後の学校防災の方向を決めた、と云っても過言ではない
であろう。学校は質量ともに世間のレベルを超える防災力を持たなければなら
ないのだ。
 学校の防災は、地域と一緒に作るべきだと思う。しかしながら、この大川小
学校では、その日に避難場所の議論で地元区長(自治会会長)が、避難せずこ
のまま校庭にいるべきだと、教員たちの前で強く云ったと伝わっている。この
区長も前例に囚われすぎていた。

 遺族は苦しいであろう。遺族は物語を欲している。物語とは事故の再現であ
り、原因であり、子供が死んだ理由である。なんで、我が子は死んでしまった
のだろう。判決は確定したが、遺族の苦しみと悲しみはけっして癒やされるこ
となく、続いていくのであろう。

 唯一生存している教務主任だった教師が、すべてを話す日は来るのだろうか。


多呂さ(今年の冬は暖かい、ということです。雪国に雪が積もっていません)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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102 昔と今、なにが違う

 昨年、元号が変わりました。
 平成に変わったとき、私はお寺で働いており、半紙に墨で「平成」と書いた
紙を拝観されている方々に見せながら「元号が変わりました!」と伝えた事を
思い出しました。


『元号ってなんだろう? 大化から令和まで』
 宮瀧交示 監修 おおつかのりこ 文 藤原ヒロコ 絵 岩崎書店

 そもそも元号とはと考えた人は少なからずいたのではないでしょうか。
 
 こういう時、子どもの本では的確にわかりすい本が出てくるもので、本書が
まさにそうです。大人が読んでも勉強になります。

 ・元号の概要
 ・元号の歴史
 ・世界の日付について
 ・くらしの中の元号

 これら4つの項目を豊富で見やすいイラストで元号について、わかりやすく
教えてくれます。

 個人的におもしろく読んだのは、平安時代、天皇や貴族が縁起をかつぐよう
になり陰陽師の占いにたよるようになったエピソード。暦をみて、その日にし
てはいけないことなどを確認し、困ったら陰陽師に相談する。現代とあまり変
わらない人の心持ちにくすりと笑いがこぼれました。

 数十年で改元してしまう元号故、西暦を用いることが利便性ありとされがち
な昨今だからこそ、元号について知識を深めてみるには最適の本です。

 次にご紹介するのは、以前にご紹介している『いろいろいろんなかぞくのほ
ん』の第二弾。

『いろいろいろんなからだのほん』
 メアリ・ホフマン ぶん ロス・サスクィス え
 すぎもと えみ やく 少年写真新聞社

 赤ちゃんが生まれ、子どもに、大人に成長していく。
 年月で体は大きくなるけれど、それは人それぞれ。
 同じところ、違うところ、本作では「からだ」のいろいろを描いています。

 男の子と女の子。
 身体は女の子でも心は男の子。その反対もしかり。
 
 太っていたり、やせていたり、
 スポーツが得意だったり、そうでなかったり。

 本当に人それぞれ、その通り。

 カラフルに彩色されたたくさんの人が登場し、個性がみえてきます。

 こんな絵本が家の本棚にあると、子どもは読み聞かせされなくても自分で手
にとって世界を広げてくれるかもしれません。

 我が家の子どもたちもそうでした。直接伝えていなくても、読み聞かせして
いない絵本でも、自分で本棚から探して読み、知識を増やし、親を驚かせまし
た。

 最後にご紹介するのは、子どもの幸せな一日を描いた絵本です。

 『ブラウンぼうやの とびきり さいこうのひ』
 イソベル・ハリス 文 アンドレ・フランソワ 絵 
 ふしみ みさを 訳 ロクリン社

 ブラウン家は大きな町の大きなホテルで暮らしています。
 両親はホテルからの地下道で直接職場に行くことができるので、外気にふれ
るのはブラウンぼうや一人だけです。

 そんなブラウンぼうやにとって最高の一日は、ホテルで働くヒルダの家に行
ったこと。ヒルダの弟はおまわりさんで、ヒルダのママとパパもぼうやを大歓
迎してくれます。

 絵本では、ホテルの家からヒルダの家に行く途中、到着してから、そして家
に戻るまでが描かれているのですが、20世紀を代表するフランスのグラフィッ
クデザイナーであるアンドレ・フランソワの絵がとにかく格好いい。

 洒落た線画にブラウン(!)の一色に濃淡をつけ、ぼうやの最高の一日を祝
うかのように描き、新鮮でわくわくしたものに満ちた時間が伝わってきます。

 大人の方が読まれたら、自分の子ども時代を思い出すかもしれません。
 例えば親戚の家や親しい友人宅で過ごした、非日常の一日。
 めったにない事だからこそ、とびきり最高の日になることを私は思い出し、
なんともいえない幸福感につつまれました。

(林さかな)
会津若松在住。「本の雑誌」新刊めったくたガイド海外文学担当。
http://1day1book.strikingly.com/

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・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510

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■あとがき
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 またまた忙しさの中で、発行がすっかり遅くなってしまいました。

 トピックスで取り上げた守屋さん、御存じの読者の方はどれくらいいらっし
ゃるかな、と思いつつ、このメルマガの創設者です。

 さて、このあと、20日号も発行します!

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[書評]のメルマガ vol.691

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■コンテンツ
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★「トピックス」
→ トピックス募集中です

★「音楽本専門書評 BOOK’N’ROLL」/おかじまたか佳
→ #113『クワタを聴け!』

★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→ 『聡明な女は料理がうまい』を再読してみた

★「目につく本を読んでみる」/朝日山
→ 『「もしドラ」はなぜ売れたのか?』岩崎夏海 東洋経済新報社

★【募集中】献本読者書評のコーナー
→ 献本お待ちしています!

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#113『クワタを聴け!』

 紅白を見なくなってもう久しいけど、ネットの記事によると、今年の出場者
にはいまひとつ面白みがないんだとか。

 紅白が歌手のステイタスであり、憧れだった時代はとうに過ぎ去り、むしろ
大晦日はカウントダウン・ライブで稼ぎ時。紅白なんかに拘束されたくないの
が事務所側の本音。そのためNHKの方が連ドラの主題歌に使ってみたり、一
人のアーティストをフューチャーする『SONGS』に出してみたりでご機嫌を取
り、やっと出てもらえるらしい。

 その点、昨年の紅白は画期的だったと言う。トリがいつものような演歌の大
御所ではなく、桑田佳祐とユーミンだったからだ。これでついに、かつてニュ
ーミュージックと呼ばれた和製ロックや和製ポップスこそが現在の国民歌謡な
のであると公式に認められた。そんな風に書いていたのは、音楽評論家のスー
ジー鈴木であった。

 今年、ご両所の紅白出場はないようだが、桑田佳祐に関しては山田洋次のま
さかの寅さん新作であの有名な主題歌を歌ったり、日本ってそんなことやって
る場合なんだっけの東京五輪でも民放共同企画の応援ソングを担当するなど、
相変わらず話題に事欠かない。

 そこで今年の締めは、『クワタを聴け!』で行く。

 これは音楽評論家、中山康樹の『〇〇を聴け!』シリーズの一環。

 元スイングジャーナル編集長の経歴に相応しく、最初は『マイルスを聴け!』
から始まったが、以降、ボブ・ディラン、ビートルズ、ジョン・レノン、ビル
・エヴァンス、ビーチ・ボーイズなど、多彩なミュージシャンの全楽曲を解説
し、採点するという力技を積み重ね、ついに桑田佳祐に辿り着いた。

 ちなみに、このシリーズにインスパイアされた、別の著者による『ももクロ
を聴け!』もこの欄で取り上げた記憶がある。

 中山康樹は2015年に亡くなったので、本書に登場するアルバムは、サザンオ
ールスターズ1978年のデビュー作『熱い胸さわぎ』から、2007年『キラー・ス
トリート』まで。またサザンに限らず、ソロや、別プロジェクトも網羅してお
り、シングルと企画盤が最後の一章にまとめられている。

 まずプロローグで、われわれは著書の、桑田に対する熱い胸さわぎならぬ、
熱い思いに触れることになる。

 子供の頃、中山少年はロックを熱心に聴くようになったが、ひと度自分の部
屋を出てお茶の間に行くと、そこはテレビから流れる演歌や歌謡曲の洪水だっ
た。そうした状況を彼は嫌悪し、「困ったものだ」と思っていたが、実は一番
困ったのは、不覚にも耳に入って来る演歌や歌謡曲に、ふっと感動してしまう
自分がいることだったと言う。

 この辺り同世代的に激しく共感する。もっとも日本のいわゆる四畳半フォー
クにも感動していた口なので、そんなに洋楽至上主義者でもなかったんだけど。

 ともあれ、これではいかん、と思っていた著者の前に現れたのが、サザンオ
ールスターズだった。テレビで歌った「勝手にシンドバッド」。それは洋楽を
崇め、邦楽を下に見ていた著者の常識を覆すシロモノだった。

 日本の伝統であるラテン歌謡のサウンドと、ロック的な激しいビート&しゃ
がれ声のヴォーカル。そこでは洋楽と邦楽が奇妙にして絶妙なバランスで混然
一体となっていたのである。

 かくして桑田佳祐に大いなる共感を抱き、その音楽を聴き込んできた中山康
樹は、何となくその方が自分の想像する人物像に近い気がするという理由で彼
を「クワタ」と表記し、解説の全曲制覇に乗り出すのである。

 のっけからデビュー曲「勝手にシンドバッド」(『熱い胸さわぎ』所収)の
評が、こう始まる。

「冒頭「ラララ〜ラララ」の天晴なまでの強引さは、いやがる彼女をラブホに
連れ込み押し倒すピンクの鼻息、その疾走感は「あれ? もう朝?」の満ち足
りた虚脱感」

 これは、「クワタが成し遂げた革新のひとつに”エロをエロと感じさせない
エロの確立”がある」と語った著者の、クワタ的歌詞世界に憑依したエロ的批
評言語の確立と言えるだろう。

 洋楽、邦楽にわたる多様な先行楽曲を自在に組み合わせる曲づくりについて
も、「クワタの場合、ありがちなパクリ批判は見当違い甚だしく、その”発見”
こそがオリジナルであるという点に注意を向けたい」と提言。

「クワタは、まず第一にヒントや他力を自力に転化させる手法を発明した音楽
界におけるお茶の水博士であり、それはコピーという次元をはるかに超越、日
本人ならではのオリジナリティとして成立している」

「クワタの全身は巨大なスポンジでできているが、たんに吸収するだけでなく
研究に研究を重ね(含むヒストリー)、しかもその対象は歌謡曲や洋楽はむろ
ん、さらに民族音楽からジャズまでと、およそクラシックを除く全ジャンル・
全方位に及び、それは音楽評論家が裸足で逃げ出すほど」

 いやもう、絶賛じゃん。

 意味不明のでたらめな歌詞についても、同様。

『NUDE MAN』所収の「来いなジャマイカ」評では「マンコ・ディレクション 
ボッキー・エレクション パイパン・セレクション」「Rolling stonesは愛き
ょうでLondon」といった歌詞や「パイパーン」「マイターイ」という囃し言葉
のでたらめさに触れ、「おそらくこの曲はいまなお「問題あり」とされ、「ふ
ざけるにもほどがある」と眉をひそめられるのだろう。だがクワタが日本の音
楽にもたらしたものとはまさしく「これ」であり、それは天才科学者お茶の水
博士の発明に匹敵する」と、再びお茶の水博士を持ち出す。

 余談だが、アトムを発明したのはお茶の水博士の親友、天馬博士だったはず。
お茶の水博士って、何を発明したんだっけ……弟のコバルトや妹のウランか?

 ま、それはさておき、こう抜き出してみると、一冊まるごと絶賛の嵐に思え
てしまうが、もちろんそうじゃない。辛口の批判もガンガン飛んで来る。

 特にサザン史の後半になるとよく出てくるのが、「セルフ・コピーの問題」。

 つまり、既存の洋楽邦楽ではなく、過去の自分の作品に似たものをつくって
しまう、という点である。

 これは以前、近田春夫も『考えるヒット』で指摘していた。いい加減、自分
で自分をコピーするのはやめなさいと誰か桑田佳祐に言ってやればいいのに、
という趣旨だった。

 だが、中山康樹はセルフ・コピー自体を否定していない。クワタはファンに
も気を配る体質であり、アルバムの中で「そろそろみんなサザンらしいサザン
が聴きたいんじゃないか」と思われるタイミングでセルフ・コピーを入れてく
るのはよしとしている。

 その反面、どうもサザンらしいサザンをクワタが無理してやっているように
感じる場合があり、そういう時に採点が辛くなるのだが、では、よいセルフ・
コピーと悪いセルフ・コピーの境界線がどこにあるかと言うと、かなり曖昧な
印象批評。簡単に言うと、著者の独断と偏見なのだ。

 でも、音楽批評において、独断と偏見をなくしたら、ちっとも面白くない。

 実は中山、本書を桑田佳祐に一度も会わないで書いている。まったくインタ
ビューをしていないのだ。ただひたすら音源そのものとだけ向き合い、自由に
妄想を膨らませ、クワタの人となりについても、ファンにも気を配る体質だと
勝手にシンドバッド、心配性の小心者とまで言い切る。

 つまり、本書に描き出されたカタカナの「クワタ」は、現実の桑田とはまた
別に存在する、中山康樹の脳内世界の人物なのだ。

 でも、実際に会ったところで、他人の真実なんかわからない。ましてたかだ
か数時間のインタビューでわかった風なことを書かれるより、ここまで作品を
聴き込み、詳細に解析される方が、ミュージシャン冥利に尽きるんじゃないか。

 この労作を片手に、改めてサザンをじっくりと聴く。そんな大晦日もいい。

中山康樹
『クワタを聴け!』
二〇〇七年二月二一日 第一刷発行
集英社新書

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン

先日、会社の同期数人と食事して、その時初めて今年が厄年だったと知りまし
た。でも、知らない内にもう終わりが近いなんて、何か得した気分。

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■「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
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『聡明な女は料理がうまい』を再読してみた(文春文庫)

 この本の初版発刊日は昭和51年。おばちゃまが社会人としてうぶ声を上げた
年です。

 記憶が間違っていなければ同年に集英社から「MORE」という働く女性の
ための雑誌が華々しく創刊されました。新人としてびくびくして会議に出席し
ていたおばちゃまの隣に先輩の独身女性が座り、私の耳元で「私みたいな女の
ための雑誌ができるのよ」と囁いたことを昨日のように思い出します。

 そう、当時はキャリウーマン時代到来と言われた時代。それまで女はクリス
マスケーキと同じで25歳(日)過ぎたら価値がなくなると言われ、女子アナウ
ンサーの定年が25歳だったのに、社会が成熟したというのか、消費マーケット
を拡大しようともくろんだヤツがいたのか、「働く女性は美しい」という言葉
とともに独身を謳歌する女性たちが一斉に遊びだしたわけです。

 おばちゃま、それに約3年はノリました。3年たって「なんかちゃうかも」
と思うまで、ケッコンなんか意味ないわ、それよりも仕事をして自分で稼いで
遊ぶのよ、私は自由よ、少しも寒くないわ〜(あら?「アナと雪の女王」にな
ってる)と思ってました。

 ただね、そうは思っていても、急激にそれまで培ってきた価値観を変えるの
は難しかった。

 だって、「働く女性は美しい」といっしょに「飛んでる女」ってフレーズも
刷り込みにかかってきてて、どうもこれからは、セックスもフリーでなくては
いけないらしく、カップルは同棲しなくてはいけないらしく、「コスモポリタ
ン」(これも集英社)には、たとえば大学院生同士の同棲生活が紹介され、こ
れぞ新しい男女関係なんて書いてあったっけ。

 でも、バリバリの専業主婦に育てられて自宅通勤のおばちゃまにはそれはキ
ツい。そこまでできない、なんなら、仕事をバリバリするのさえ状況的に難し
いよお・・・・と多くの同世代が漠然と思っていたときに、出たのが「聡明な
女は料理がうまい」というアジテーションでした。

 今読むと、当時としては新しく、今のグルメやおしゃれを楽しむライフスタ
イルの原点になったのがこの本(ともう1冊が伊丹十三の「女たちよ!」)だ
と思います。

 ただ、ここそこに昭和が見えるのがおもしろく、「ある友人は最近、ぶどう
酒に凝っている」なんて書いてあります。昭和51年当時はワインとは言わなか
ったんですね。ぶどう酒ですらおしゃれだったわけです。ああ、昭和は遠くな
りにけり〜。

 この本では、料理こそ人として大事なことであるから、おしゃれな料理をさ
さっと作れるのがいいオンナだと述べています。
 「働く女性は美しい」「飛んでる女性」なんていう言葉にちょこっとした不
安を抱えていた私たちはここに食いつきましたね。
 「仕事・・・働く女性=最近流行の女性」の対極にあるのが「料理・・・従
来型の女性=流行おくれ」だとしたら、前者を取り入れるのはコワイ、でも後
者みたいなライフスタイルには絶対に(プライドが邪魔して)戻りたくないと
いう女性たちは、
「そうだ。だったら仕事もして料理もうまい女性になればいいじゃ〜ん」
とある意味、ほっとしたわけです。

 で、どうなったかというと、「仕事も料理もできる女性」という時間的に能
力的に物理的にありえないテーマを自分に課して四苦八苦、歯を食いしばるハ
メに陥ったわけです。

 仕事をして帰宅してご飯をつくってなんなら子どもを育てた女性がなんと多
かったことでしょう。この本を読むと、著者の意図とは違った解釈をして自分
を生きようとした女性たちのことを思って、なんだか胸がざわついてしまいま
す。

 女性たちの味方のようでいて、実は女性たちにさらなるテーマを与えたとい
う意味で、おばちゃま、この本を読むとほろ苦さを感じるのであります。

 そして、そのどっちもがんばる、またはどっちもがんばりたい、がんばらさ
れている状況って、だいぶ変化はしているとはいえ、基本的に40年経った今で
も変わってないんじゃないかって思うんですよね。(だって、「アナと雪の女
王」の歌詞が沁みるぐらいですから)。昔も今も、女性たちは料理も仕事も両
方してたいへんなのに、「少しも寒くないわ」と言いながら氷の山の中を歩い
ているんじゃないかなと思います。

 おばちゃまは声を大にしてツッコミたい! 

「いや、寒いやろ〜!」

大友舞子(おおとも・まいこ)
昭和20年代生まれのフリー編集&ライター。関東生まれで関西在住。
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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『「もしドラ」はなぜ売れたのか?』岩崎夏海 東洋経済新報社

 今から10年前の2009年12月、通称「もしドラ」が発売された。正式タイトル
は、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読
んだら』で、300万部に達するメガヒット作になった。

 それから五年たった2014年・・・「もしドラ」がどんなきっかけ構想され、
書かれ、売れたのか?書いた本人が残しておこうとして書かれた本である。も
ともとblogの連載だったようだが、書籍化された。

 「もしドラ」は、大学でドラッカーをやっていた私から見てもとってもよく
できた作品で、それまで経営に関心がある人にしか知られていなかったドラッ
カーの名を一躍日本中に知らしめたと言ってもいいだろう。

 当時、私が「もしドラ」を知ったのは本屋の平台に積んであったのを見たの
が最初だったと記憶している。これを読んでドラッカーに関心を持つ人が増え
るだろう。ドラッカーの本も売れるに違いないと思っていたが、まさにその通
りになった。それにしても、300万部も売れるとは思わない。しかし、本が出
る前から岩崎氏は200万部売れると確信していたそうだ。その根拠は何なのだ
ろう?

 ということで読んでいく。いきなり来るのは岩崎氏が会社からクビを宣告さ
れるところ。岩崎氏はAKB48などのプロモーションで知られる秋元康氏の会社
で放送作家などをしていたが、仕事がなくなって「明日からはおれの運転手に
なれ。それができないなら辞めてもらう」と秋元氏に言われてしまう。

 自分に才能がないのはわかっていた。しかしどうすればいいのか考えること
なく馬齢を重ねてきた。本人いわく、そのツケが回ってきた。とはいえ、この
段階までに「もしドラ」の構想は立ててあった。秋元康氏から女子高生を主人
公にした映画の企画を立ててくれと言われて作ったのだが却下されていたのだ。

 で、なぜ女子高生とドラッカーという組み合わせが出てきたのかと言うと

1.「ダ・ビンチ・コード」のヒットで学問とエンタテイメントの組み合わせが
 ヒットする時代が来たと考えた。それもメガヒットする時代が来ている!
2.ゲーム、ファイナルファンタジーに夢中になった頃、ネットゲーム内の指揮
 者として組織運営ノウハウが必要となり、この時にドラッカーを読んでいた。
3.女子高生キャラは、男だけでなく女の人にも好まれる。
4.「がんばれ!ベアーズ」のストーリーが王道だろう。舞台は高校野球!

などと考えているうちに、何も知らない野球部の女子高生マネージャーが、マ
ネージャーの仕事について知ろうとして本屋に行ってドラッカーの『マネジメ
ント(エッセンシャル版)』と出会い、その通りに野球部を変えていくという
アイディアが出てきたと言う。

 しかし、却下されたのだから仕方ない。このアイディアは、しばらくハード
ディスクの肥やしになっていた。

 クビか運転手か?迫られた岩崎氏は自分の人生が失敗だった、これまで大人
としての責任や覚悟を引き受けてこなかった自分が悪いと認めて運転手を選ん
だ。「自分は虫けらだ」と自覚して自分の主張を一切せずに、人の話を聞くだ
けにした。すると、それまで全くダメだった人間関係があれよあれよと好転す
る。それで、自分がいかに子供だったか痛感した。

 自分は「大人」になりつつある。しかし、そのことに秋元氏は気が付かなか
ったため、秋元氏から独立する決心をする。独立と言っても別の会社に勤め出
したということで、尊敬する秋元氏に依存する会社員生活はやめたと言うこと
だ。

 そうこうしているうちに匿名blogを書くようになり、ある日、女子高生とド
ラッカーの小説の構想を書いてネットにアップして好評を得た。アップしてか
ら数ヶ月後。ダイヤモンド社の編集者を名乗る者からメールが来た。メールを
出したのは、言わずと知れた、もしドラの編集者、加藤貞顕氏だ。今はピース
オブケークスの創業経営者である。ドラッカー生誕100周年を前に、ダイヤモ
ンド社として何か企画をと思っていたところに岩崎氏の企画がひっかかったの
だ。

 岩崎氏は多いに喜んだが、自分には小説家として才能がないと思っていた。
小説は書きたかったが、せいぜい日曜作家レベルで書き続けられたらと思って
いた程度だった。そのため、ダイヤモンド社の本はビジネスに振った内容にす
べきだと思っていたが、ダイヤモンド社の加藤氏の考えは、小説メインで「小
説書けますか?」と提案された。

 かくて「もしドラ」制作がスタートする・・・岩崎氏はこの本は200万部売
れると確信していた。実際は300万部を越えたわけだが、ベストセラーにする
までにどんなことを考え、実行してきたのかが読みどころだ。

 いやはや、読後感は、まるで小説みたい・・・とはいえ、これは小説ではな
く現実にベストセラーを書いた人の体験記なのだから、「事実は小説より奇な
り」どころか、小説より面白い!小説として同じこと書いても、この本ほどに
は面白くはなかろう。事実だから面白さが2倍にも3倍にもなるのだ。

 「もしドラ」発売5年も経ってからの本で、全くと言っていいほど話題にな
った記憶はないが、なかなかの掘り出し物である。


(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ─ 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510


 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
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■あとがき
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 さて、2019年最後の発行です。

 今年もお世話になりました。

 2020年はどんな年になりますでしょうかね?(あ)

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[書評]のメルマガ vol.690


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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<119>『赤狩り』と漫画の良心

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第119回 黒澤明 その創造の秘密

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→101 本からもらう力

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<119>『赤狩り』と漫画の良心

 『赤狩り』は、山本おさむの「ビッグコミックオリジナル」での連載作品だ。
 以前からこの欄で取り上げようと思っていたのだが、思っているうちに連載
は進み、単行本も既に6巻まで刊行されている。

 サブタイトルに、「THE RED RAT IN HOLLYWOOD」と付くこの作品は、1940年
代から50年代に吹き荒れたアメリカのマッカーシズムの下、当時の映画界を襲
った「赤狩り」に翻弄された人々を描く群像劇である。
 映画にもなった『遥かなる甲子園』や『どんぐりの家』、また『我が指のオ
ーケストラ』などで聴覚障害者の置かれている現状や社会参画の取り組み、ま
た聾教育の歴史を描いてきた社会派漫画家の面目躍如たる、骨太の大作である。

 実を言うと、この連載の前、同じ「ビッグオリジナル」で山本おさむが連載
していたのが、店舗を持たない流れの蕎麦職人が主人公の薀蓄グルメ漫画で、
「ああ、あの山本おさむが…」と、ややずっこけ気味な失望感を持っていたの
で、この連載が始まった時にも、「今度は映画の二番煎じ?」と、やや懐疑的
イケズな目線を投げかけてしまったのだ。
 というのも、この連載が始まる以前に、同じテーマを扱ったアメリカ映画
『トランボ〜ハリウッドに最も嫌われた男〜』が公開され、話題にもなってい
たから。

 今回調べてみてわかったのだけど、実はこの連載を企画しているその真っ最
中に映画が公開され、山本おさむと編集部は、一時「聞いてないよ〜〜!」的
パニックに陥ったらしい。
 当初の案では、この『赤狩り』もまた、ダルトン・トランボを中心に据えて
描く予定だったらしいのだが、同じ主題の映画が先に公開されてしまったため、
路線の変更を余儀なくされたんだそうだ。

 それが、功を奏した部分が大きいんじゃないかと思う。
 映画と被ることを避けるため、トランボ以外にも視野を広げ、この悪名高き
「レッドパージ」に関わり、パージする側される側双方の一人ひとりを丁寧に
描く、一種の群像劇にしたこと、そして、連載ではただ今、その「トランボ篇」
の真っ最中なのだが、ここでも、映画とはまた違った別の視点を加えることで、
物語と登場人物はより輻輳的に混迷し、重厚な人間ドラマとなっている。

 …などと偉そーに言うておきながら、実はわし、アメリカの「赤狩り」につ
いては、あった、ということを知ってる程度だったのが、この漫画に教えられ
て「え!? そうだったのか」となるケース、多々。
 ニクソンとロナルド・レーガンは、さもあろう、と思えたのだが、ウォルト
・ディズニーやゲーリー・クーパー、ジョン・ウェインといった「偉人」級の
人々が、この政策において実に唾棄すべき役割を果たしていたことなどは、初
めて知って不明を恥じた。

 エリア・カザンが、当初は厳然と「反対」の立場をとりながらも、やがて、
自らのスキャンダルに乗じた当局の巧みな罠の陥穽に陥り、愛する映画への情
熱を全うするために、あえて密告者となる苦悩を描いた回など、シェークスピ
アを思わせる重厚さで読み応えがあった。
 同時に、国家権力が手段を問わない「本気」を出したときの恐ろしさを、痛
いくらいにビシバシと思い知らされ、思わず震撼となるエピソードでもあった。

 映画の『トランボ』が、あの大統領の治世下で公開され、そして、あの首相
が長期政権をもって君臨する我がニッポンで、この『赤狩り』が連載中である、
ということ。 これは決して偶然ではない、と思う。
 「ボヤボヤしてたら、またこうなるんだよ」という警告として、この漫画は、
もっと話題になって、もっとたくさんの人に読まれるべきだ、と思うのだ。

 それにつけても、「ビッグコミックオリジナル」、かたや『赤狩り』を連載
しながら、同じ誌面では『昭和天皇物語』(能條純一)も連載しているのだ。
 「オリジナル」では、『刑事ゆがみ』(井浦秀夫)と『フルーツ宅配便』
(鈴木良雄)も、個人的に注目してる連載で、毎回楽しみにしている。

 「オリジナル」は、十と数年前には、読者のうち、一番厚い年齢層が40〜50
代と聞いたことがあるのだけど、今は、もっと上がってんじゃなかろうか?
 50代以下の読者って「いないんじゃないか」とも思えるのだが、上に挙げた
『フルーツ宅配便』なんか殊にそうなのだけど、この年齢に達して初めてわか
る、という奥の深い漫画が多いのも確か。

 以前にも書いたことがあるのだけど、この「オリジナル」と「ビッグコミッ
ク」、「モーニング」、「漫画ゴラク」といった“一般漫画誌”は今や、かつ
ての大衆文芸誌及び中間文芸誌に替わって、その役割を担ってる、と確信する
年の瀬なのであった。


太郎吉野(たろう・よしの)
阪神タイガースお膝元在住。右投げ右打ち。趣味は途中下車、時々寝過ごし乗
り越し、最長不倒距離は三重県名張。
ちなみに「阪神タイガース」の「阪神」は、「兵庫県阪神地方」を指します。

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第119回 黒澤明 その創造の秘密

 今月も黒澤明。9月以来3ヶ月ぶりの黒澤明もの。それにしても、黒澤明に
ついて書かれた書物の多さと云ったら・・・・・。とてもすべてを読み切れる
ものではない。没後20年経ってもなお、続々と新刊書が発刊される。黒澤明、
本人はもういないので、彼の書いたものは「黒澤明全集」がある。そしてスタ
ッフや脚本家、家族のような周りに居た人たちのもの。さらに出演した俳優た
ちが書いているもの。そして評論家の書。主観とか客観とかそういう区別をす
れば、評論家の書いたものが最も客観的に論じられていると思うだろう。

 今回ご紹介するものは、評論家の書ではあるが、黒澤明本人が書いたものも
含めたさまざまな文献を逍遙し、引用して書かれた書物なので、主観と客観が
入り乱れている。とんでもないわがままな独裁者が、結果的に素晴らしい作品
をたくさん産んだ。ということが結論になっている書物なのだ。

『人間黒澤明の真実 −その想像の秘密−』(都築政昭 著)(山川出版社)
(2018年7月31日)

 著者の都築政昭氏は、長年NHKの番組制作者であったが、その後大学の教
壇に立ちながら映画の評論家として、たくさんの黒澤論を書いている人である。

 本書はさまざまな文献を紹介しながら、黒澤明の想像に迫っている評論であ
る。
 本書ではまず、黒澤明の生い立ちを簡単に追う。その中で、人間黒澤明を作
ったふたりの恩人に触れている。兄の黒澤丙午と映画監督の山本嘉次郎。黒澤
明は、兄の丙午から物語のおもしろさを教えてもらう。そして映画をはじめ落
語講談音曲浪花節などさまざまなジャンルの芸をみることを教わった。おそら
くほとんどの人は、何かを鑑賞する、という行為において人に連れられたり誘
われたりしないと行かないのではないか。黒澤明は兄に連れられて将来の糧と
なるものに触れていった。そして、山本嘉次郎監督。東宝に入社してついた監
督が山本嘉次郎。黒澤明は監督に映画作りのノウハウを伝授され、脚本を書く
ことの大切さを教わる。激務の助監督業をこなしながら脚本を書き続け、さま
ざまなコンクールに入選したという。昼は撮影、夜は脚本とタフな生活を送っ
ていた。

 助監督を6年務め、黒澤は監督に昇格する。異例の出世なのだそうだ。戦前
の作品は3作品。そして、戦後は復員兵四部作が登場する。すなわち『素晴ら
しき日曜日』(1947年)、『酔いどれ天使』(1948年)、『静かなる決闘』
(1949年)、『野良犬』(1949年)。主人公たちはみな復員兵だった。命令で
戦場に行き、戦死せずに帰ってきた復員兵は、黒澤にとって格好の材料だった。
青春を戦争によって奪われたが、戦後の混沌の中で積極果敢に生きている彼ら
を描くことで、黒澤はこれからの時代を表現したかった。

 その後、黒澤はヴェネツィア映画祭で金獅子賞に輝いた『羅生門』(1950年)
を大映で撮ったのち、いよいよ最盛期、豊穣期に入る。『生きる』(1952年)、
『七人の侍』(1954年)、『蜘蛛巣城』(1957年)、『隠し砦の三悪人』(19
58年)、『悪い奴ほどよく眠る』(1960年)、『用心棒』(1961年)、『天国
と地獄』(1963年)、そして『赤ひげ』(1965年)。

 迫力の映像、丁寧な人物描写、しっかりとして脚本、笑いとユーモア・・・。
すべてが飛び抜けている。黒澤明の映画によって、日本映画は世界に誇れる文
化にまで昇華していく。

 黒澤明の映画は、脚本も彼が書いている。彼は自分で考えているような筋
(目論見)に固執しない。彼は小国英雄や橋本忍のような一流の脚本家と一緒
に共同執筆する。共同執筆している人数分だけ、ストーリーの展開が異なり、
人物がそれぞれさまざまな動きをする。その中で議論をして登場人物に納得の
いく行動をさせる。したがって、監督が自分の思うままに都合のいい方向に引
っ張り込むことを防ぐ。筋に無理がないので、観客は納得し、映画に集中する
ことができるわけだ。

 とは云うものの、映画を撮り終わると、いつも不満足であり、納得できない、
という思いがあると黒澤本人は云っている。その思いが、彼をして完全主義者
たらしめているようだ。撮影中の修羅場はスタッフ、キャスト皆が異口同音に
云っている。納得のいくまで演技を繰り返させるのは、まあ当たり前としても、
怒鳴り散らす、ものに当たり散らす、挙げ句に絵コンテをビリビリに破き捨て
る・・・・・、ということは日常だったようだ。周りもたいへんだが、本人が
一番つらい。産みの苦しみ。いいものを作ろうと思ってもそれができていない
もどかしさは表現者としては、苦痛を通り越して、生きている価値の問題にな
っていくのである。まさに狂気と想像は紙一重。神と悪魔が一緒にいる状態で
ある。おそらく黒澤明、彼だけに聞こえる声があり、彼にだけ見えるものがあ
ったのだろう。それが現実の映画の中で表現できないとき、彼は爆発したのか
もしれない。

 黒澤明の映画作りは狂気に満ちたものではあるが、しかしその映画の内容は、
常に無上の愛を描いている。「限りなく優しい魂」。彼はそんな表現をして、
自分の映画のテーマを伝えている。逆境の中でも人間の人間たる本質、美しい
心、限りないヒューマニズムを描く。人間を肯定的いにみるのが黒澤明監督作
品の大きな特徴だ。

 そして彼の集大成という映画『乱』(1985年)が完成する。彼はこの映画を
“神の視点”で撮った。曰く「店の視点から、人間のやっていることを、俯瞰
の目で描きたい。人間そのものがもっている業みたいなもの。どうしても切り
離せない人間の悲劇みたいなもの、それがテーマだろう」(「黒澤明『乱』語
録」キネマ旬報1985年7月上旬号)。

 本書はさまざまな媒体、さまざまな証言から黒澤明という人間に迫り、あの
珠玉の映画群を作ったその舞台裏を再現する、という試みである。本書の読者
は、読後、黒澤明という天才をどう評価するのか、それは人それぞれの判断で
あるように思われる。


多呂さ(日本ではインフルエンザが日を追うごとにその患者数を増加させてい
るとき、中村哲医師がアフガニスタンの地で散ってしまいました)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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101 本からもらう力

 長い台風のシーズンが過ぎ去りましたが、被災されたところがすべて現状復
帰したわけではなく、まだまだ時間がかかりそうです。
 私の住んでいる隣街の水害もかなりひどく、声をかけてもらい、絵本を少し
送りました。

 本は力になります。
 言葉が心に残り、前を向く力を与えてくれます。

『ビーナスとセリーナ テニスを変えた伝説の姉妹』
 リサ・ランサム 文 ジェイムズ・ランサム 絵 日本語版監修 飯田藍 
 松浦 直美 訳 西村書店

 テニス選手大坂なおみさんの憧れはセリーナ選手だそうです。
 この絵本ではビーナスとセリーナ、2人の姉妹が世界的な名プレーヤーにな
るまでが描かれています。

 小さいときは、夜明け前に起床し、父親と一緒にコートを掃いて、割れた瓶
やゴミを片付け、太陽が出て明るくなるとすぐに練習をはじめます。
 父親は有名なテニス選手を育てると公言し、周りからは失笑をかいます。ぶ
っそうな町に住み、ギャングの銃音がすれば練習をやめてコートで身をひそめ
ながらの練習を続け、力をつけていきました。

 厳しい環境で育ち、いまのふたりの名選手がいることに素直に感嘆しました。

「なりたい自分のすがたを、まず心のなかに思い描きなさい」と母親からいつ
もいわれていたそうです。

 トップに立てるのは一握りの選手ですが、そこに至るまでの努力、力強さを
コラージュを多用した鮮やかな色合が引き立てます。(ちなみに文章と絵を描
いた2人は夫婦です)
 
 なりたい自分になるために、背中を押してくれる絵本です。

『うちの弟、どうしたらいい?』
エリナー・クライマー 文・絵 小宮由 訳 福田利之 装画 岩波書店

 父親が亡くなり、母親すらも子ども2人を置いて家を出ていきました。
 残された12歳のアニーは、父方の祖母と弟スティーヴィーの3人暮らしです。

 母親は出て行くとき、アニーに「弟をたのむわね」と言いました。
 
 8歳の弟はやんちゃで、大人のいうことをあまりききません。
 祖母も孫2人の面倒をみることに、苛立ちを隠しません。

 まだたったの12歳なのに、毎日をおもしろ楽しく過ごしたい時に、かなり厳
しい環境になってしまい、アニーのストレスも日々高まります。

 そんな中、手を差し伸べてくれたのは、学校のストーバー先生でした。
 先生も里親に育てられた背景をもち、アニーの気持ちをより理解してくれた
のです。

 子どもは親の都合で生活がいかようにも変わってしまいます。
 近くにいる大人は不安定になっている子どもの支えになれれば、どんなに救
いになるでしょう。

 公共の図書館に本があることも、助けになるひとつだと思います。
 学校の図書室もそうでしょう。

 この物語は、大変な状況を乗りこえていく様子が描かれ、そこに前を向いて
生きていくためのヒントがあります。

 必要とする子どもに届いて欲しい一冊です。

『ほら、ここにいるよ このちきゅうでくらすためのメモ』
オリヴァー・ジャファーズ さく tupera tupera やく ほるぷ出版

 この世界に生まれたばかりの赤ちゃんに、地球がどんなところなのか、壮大
な話を軽やかに、きれいに見せてくれる絵本。

 この星へようこそと、宇宙、太陽系、陸、海、そこに住む人間、動物のこと。
 朝がきて、昼がきて、夜がきて。
 時間は休むことなく過ぎていくこと。

 あたりまえに生活しているあれこれを、ちょっと俯瞰して見せてくれます。

 たくさんの人がいるから、ひとりになっても、誰か助けてくれる人がいる、
 安心して、という世界の広さとあったかさが伝わってきて、赤ちゃんの誕生
のお祝いと未来の祈りを感じます。

 出産祝いにもすてきな絵本です。

 さて、今年最後にご紹介する絵本はこちらです。

『月でたんじょうパーティをひらいたら』
 ジョイス・ラパン 文 シモーナ・チェッカレッリ 絵 原田勝 訳
 監修 縣 秀彦 廣済堂あかつき

 12月12日は今年最後の満月、ゴールドムーン。

 月の光をあびていると、あそこまで行けたらすごいだろうなと想像します。

 この絵本は、アメリカで月探査50周年を記念して刊行されたもので、誕生パ
ーティの会場が月だったら、どんなんだろうと楽しい世界を見せてくれます。

 月は地球から38万キロ離れていて、宇宙船に乗れば3日で着きます。

 重力が地球の6分の1しかないので、6倍も長い時間浮いていられます。
 月面でボールを投げると、地球での6倍遠く飛びます。

 月の一日は地球の30日分もあるので、
 やりたいことをする時間はたっぷり。

 月の「海」に行ったり、月の「ちり」の上に寝そべったり、
 たっぷり遊べそうです。

 科学的な解説コラムもついているので、大人が読んでも勉強(?)になりま
す。クリスマスプレゼントにも喜ばれそうです。いかがでしょう。


 今年も読んでくださりありがとうございました。
 来年も楽しい本を紹介していきたいと思っていますので、
 どうぞよろしくお願いいたします。

 みなさまがあたたかい年を迎えられますように。

(林さかな)
会津若松在住。「本の雑誌」新刊めったくたガイド海外文学担当。
http://1day1book.strikingly.com/

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ― 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510

・『支え合い・学び合いで育つ「わたし」』(エディット・パルク)
  http://web.kyoto-inet.or.jp/people/cogito/%8Fo%94%C5%88%C4%93%E0/%8Ex%82%A6%8D%87%82%A2%81E%8Aw%82%D1%8D%87%82%A2.html

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
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 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

 〒142-0041 東京都品川区戸越5-4-3 アズ品川ビル4階
       ビズナレッジ株式会社内 [書評]のメルマガ 献本 係

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 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
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 には、60日後に古本屋に売却します。)

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 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンや楽天などのオンライン
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 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 ちょっと意味不明な忙しさの中で、発行がすっかり遅くなってしまいました。

 このあと、20日号も発行します。

 年末のお楽しみにどうぞ!

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[書評]のメルマガ vol.689

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★「トピックス」
→ トピックス募集中です

★「音楽本専門書評 BOOK’N’ROLL」/おかじまたか佳
→ #112『脳と音楽』

★「目につく本を読んでみる」/朝日山
→ 『天才を殺す凡人』北野唯我 日本経済新聞出版社

★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→ 今回はお休みです

★【募集中】献本読者書評のコーナー
→ 献本お待ちしています!

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#112『脳と音楽』
 
 前回、オペラを聴くために何時間も立っている老人の登場する小説を紹介し
たけれど、いくつになっても音楽を楽しみたいというのは、音楽ファンの切実
な願いだ。

 その点で不安なのは、耳が遠くなること。親世代の話を聞いていると、どう
も補聴器の進化は遅々として進まず、余分な雑音ばかり聞こえて肝心の声が聞
き取れないなど、不満たらたら。せっかく買ってもあまり使っていないらしい。
 
 音楽が聴こえなくなるのも困るが、一方で、世の中には聴こえてしまって困
っている人もいる。
 音楽幻聴、という病である。
 文字通り、実際には音楽など鳴っていないのに、聴こえてしまう現象。
 懐かしい童謡やクラシックの名曲。中には、エディット・ピアフのシャンソ
ンが聞こえる、とか、演奏者が特定されるケースもある。
 
 音楽がただで聴こえるなら、いわば脳の中にApple musicやGoogle playや
Spotifyがあるようなもので、かえって便利な気もするが、あいにく選曲がま
まならない、という問題がある。

 聴きたくもない曲が聴きたくもない時に何度も何度も鳴ったら、それは確か
にうんざりするだろう。そう言えば昔、隣のピアノがうるさいという理由で殺
人事件が起きたこともあった。
 そろそろクリスマス商戦だが、この季節、ショッピング・モールで働く人は
一日中流されるクリスマス・ソングに気が狂いそうにならないのかな、と他人
事ながら心配である。
 
 逆に、失音楽症という病もある。
 音楽を聴いても、メロディとして認識できず、何の曲かわからなくなる病気。
いや、そもそも音楽に聴こえない、という病気だ。
 これも、恐ろしい。
 
 こうした病気は、脳に原因がある。脳腫瘍や脳梗塞、あるいは頭部に受けた
外傷によって、脳機能の一部が損なわれると発症するのだ。
 本書『脳と音楽』は、音楽愛好家にして神経内科医の岩田誠が、クラシック
の有名作曲家と脳、そして音楽幻聴や失音楽症について書いた本である。
 
 二十代の頃、著者の本を一冊読んでいる。言葉に関する機能が、脳の言語野
という場所にあることを知り、ふと興味を持って手に取った、『脳とコミュニ
ケーション』という本で、いまでも本棚にある。

 横書きの、いかにも医大で使われる教科書然とした体裁のハードカバーだっ
たが、案外に面白く読めた。というのも、教科書らしく事実を淡々と記述する
中に、妙に個人的な感想めいたものや、体験談が不意に現れ、それが赤瀬川源
平によってスポットライトをあてられた国語辞典、新明解国語辞典的なユニー
クさを持っていたからだ。
 
 その岩田誠に『脳と音楽』という本があると知ったのは、タワーレコードで
配布されているフリーペーパー『intoxicate』のブック・レビュー欄だった。
こちらはより一般向けのソフトカバーで、縦書き。『BRAIN MEDICAL』という
雑誌に連載された記事をまとめたものである。
 
 第1章には、バッハが登場する。死後、その墓の所在がわからなくなってい
たが、いくつもの骨の中からその遺骨を推定し、医学的分析を行った記録を紹
介している。
 第2章は名曲『ボレロ』を書いたモーリス・ラヴェル。実はラヴェルは失語
症にかかり、作曲にも支障をきたした。そこで脳外科手術を受けたのだが、か
えってそのために死亡しているという。
 第3章は、失語症と音楽の関係をテーマにした、さまざまな医学者による研
究史。
 第4章は、音楽能力を失ってしまう、失音楽症に関する研究史。
 第5章は、『ラプソディー・イン・ブルー』や、スタンダードとなった名曲
「サマータイム」を含むオペラ『ポギーとベス』、さらに数々のミュージカル
・ナンバーで知られるガーシュインが、脳梗塞で亡くなった顛末を語る。
 第6章は、脳のどの場所に、音楽に関する機能があるのかを明らかにしよう
とした、これも研究史。
 
 そして最終章、第7章の主人公がシューマンだ。
 
 シューマンは子どもの頃から音楽幻聴に悩まされていた。それが大人になっ
てからも度々再発し、終生彼を苦しめたのだそうだ。
 とうとう最後には、その苦痛に耐え切れず自殺未遂を引き起こす。そして精
神病院に収監されるが、それから2年を経て死亡した。享年、46歳。
 
 音楽幻聴の患者は、一般の人の場合、既存の、本人もよく知っている曲の幻
聴が現れる。しかし、音楽家がこの病を患うと、未知のメロディを聴くことも
あるそうだ。
 
 ただ、必ずしも美しいメロディとは限らないらしい。不快な和音だったりす
ることもある。
 だが、逆に言えば、きちんとした曲になっていることもあるわけだ。
 
 ここで、著者は面白い問題提起をする。
 
 シューマンのような作曲家が音楽幻聴を発症し、美しいメロディが聴こえた
場合、それは「幻聴」なのか、「インスピレーション」なのか、という問題だ。
 
 確かに、メロディが天啓のように降りて来る、という話はある。
 典型的なのは、夢に見る、というか、夢で聴く、というパターンだ。
 
 例えばポール・マッカートニーも、ある朝起きたら、夢で聴いたメロディが
頭の中でリフレインしていた。とりあえず、その日の朝食にちなんで「スクラ
ンブル・エッグ」と名づけ、いろんな人にそのメロディを聴かせた。

 というのも、こういう風にすらすらと曲が出来た場合、無意識に他人の曲を
パクっている可能性があるからだ。
 しかし、誰に聴かせても、聴いたことのない新しいメロディだという。
 そこで、これなら大丈夫だろうと歌詞をつけた。それがかの名曲「イエスタ
デイ」である。
 
 こういう風に、インスピレーションとしてのメロディも、幻聴として作曲家
を悩ませるメロディも、どこからかいきなり振って来るという点では変わらな
い。
 だとすると、美しいメロディが頭の中で鳴った時、本人が「おっ、インスピ
レーション、キターーーーーー」と思えばインスピレーションであり、「くそ
っ、なんてうるせー幻聴だ」と思えば幻聴、という主観の問題でしかないのだ
ろうか。

 それとも、インスピレーションを認知する脳の場所は、幻聴を認知する脳の
場所とは違うとか、何かしら客観的な差があるものなのか。
 
 残念ながらこの疑問、現代の大脳生理学をもってしても、未だ謎のままだそ
うだ。
 創造とは、かくも神秘的、ということだろう。

 ちなみにこの第7章、いみじくも「創造と幻覚」と題されている。
 
 
岩田誠
『脳と音楽』
2001年5月30日 初版第1刷発行
2001年11月15日 初版第2刷発行
メディカルレビュー社
 
おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
下北沢は我が家から徒歩20分。微妙な距離ですが、好きな街なのでよく出かけ
ます。小田急線が地下に潜った影響で、このところずっと駅周辺は工事中。そ
れが徐々に形になって、だいぶ変わりました。その内温泉まで出来るとか。湧
いたわけではなく、箱根から運んで来るそうですが、好きな街が変わってしま
うのが寂しくもあり。

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『天才を殺す凡人』北野唯我 日本経済新聞出版社

 何よりタイトルがいい!サブタイトル「職場の人間関係に悩む全ての人へ」。
帯の文句は「なぜ才能はつぶされてしまうのか?」。なんだか、虐げられた天
才が会社で逆襲して行くようなことが書いてあるように思えた。

 実際の中身は全く違っていて、天才と秀才と凡人が併存する会社(や社会)
で、どういうポジションで生きていけばいいのかを問うストーリー形式のビジ
ネス書であった。もともとネットで話題になっていた「凡人が、天才を殺すこ
とがある理由」というblogを書籍化したものだそうだ。

 主人公はテクノロジー企業CANNAの広報部門で働く青野トオル。社員番号3
番で創業者の上納アンナの天才ぶりにほれ込んで入社して10年になる。社長の
腰ぎんちゃくと呼ばれつつも楽しかった創業期は過ぎて、今の企業の業績はよ
くない。会社を牛耳るのはもはや上納ではなくなった。秀才である外資系から
転職してきた神崎秀一CFOや上山経理財務部長が仕切っている。

 この会社にいてもつまらない。会社の業績が悪いからか上納アンナも精彩を
欠き、社員からも相手にされなくなって来つつある。上納アンナは依然として
天才で、まだ死んじゃいない。そう信じている青野の旗色は悪かった。凡人に
天才が殺されていくのは見ていられない。

 そんな絶望感に打ちひしがれ、渋谷のハチ公前に立っていた青野は「どうか
私に力を与えてください」とハチ公に祈る。すると不思議なことに目の前の銅
像からOKが出た。翌日、朝起きたら、微妙に東北弁の混じった関西弁をしゃべ
る秋田犬がいた。渋谷ではハチ公が消えたと大騒ぎになっている。

 ここで象を思い出す人もいるかも知れない。動物が先生やるのはこの手の本
のお約束なのだろう。この秋田犬(名前はケン)がカウンセラーかコンサルタ
ントかコーチなのか知らないが、要は青野の指導者として才能の活かし方を伝
授していく。

 ケンいわく、人間の悩みのほとんどは、自分ではコントロールできないこと
を無理やりコントロールしようとするから生まれる。そして人間が最もコント
ロールしたがるが、一番悩みの元になるのは「自分の才能」であるという。自
分に才能がないからと悩むのが一般的だが、多くの場合、才能はないのではな
く、自分がどんな才能があるのか気が付いていないからだという。

 そこから、秋田犬ケンは、人を天才(創造性をもつ)と秀才(再現性に優れ
る)と凡人(共感で動く)の3タイプに分類し、どうして天才が凡人に殺され
るのかなど組織におけるそれぞれのタイプの関係を解説して行く。

 当初は創造性あふれる天才タイプが創業した会社でも、成長して大きくなる
と凡人の多数決で物事が決められるようになり、天才は殺される。

 経営はアートとサイエンスとクラフトの組み合わせで、これが上手に組み合
わさっていると強い経営になる。ここでアートが出て来たのは近年の流行です
ね。

 話を戻すと。そうした組織の仕組みの解説と並行しながら、物語の上ではテ
クノロジー企業CANNAは次第に追いつめられて行く。上納アンナのやることが
成功しなくなり、会社の止血のためには、上納アンナが会社から追放される可
能性も濃厚になってきた。神崎秀一CFOや上山経理財務部長は、すでにその方
向で動いていた。

 そんななか、凡人青野は、会社を、そして天才上納アンナを守るため、創業
期の会社のワクワク感を取り戻すため動き始める。凡人の「才能」をフルに生
かした青野の挑戦は成功するのか・・・

 いわゆる自己啓発ものでは、「誰でも、こうすれば成功できる」とやるのが
お約束だ。この本もそうした系譜に連なる一冊と言えると思うが「誰でも成功
できる」はその通りでも、天才、秀才、凡人と3タイプに人を分けで、自分が
どのタイプなのかを知り、自分に合ったやり方で自分にできることを行えば成
功すると言っている。要は成功と言うゴールはあるにしても、ルートや行き先
は人によって異なるというのである。

 すなわち、人は自分の才能がどこにあるのかを見極めて、その才能が活かせ
るように行動すべきということだ。しかし、自分の才能がどこにあるのかは案
外わからない。たとえば自分は営業向きだと思っていても、実際の営業は業種
や会社の進化の途上によっても違う。創業間もない頃の新規開拓メインの営業
と創業100年の会社の顧客を維持する営業は同じ営業でも全く違う。

 自分の才能と仕事の性質がドンピシャと嵌まればいいが、そういうことはな
かなかない。職場の人間関係が苦しくなる理由の多くはここにある。

 この本はそうした理由の提示だけで、解決法まで提示しているわけではない
が、それでも職場で苦しむ人の中には、この本を読んで救われる人も多いだろ
うなと思う。

 努力しても報われない理由は、努力不足にあるとは限らない。いわゆる「自
己責任」だけで自分の運命が変わるわけでもないからだ。


(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ─ 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510


 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

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2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンや楽天などのオンライン
 書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。つまり
 は当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願いしま
 す。(あまりにも短いものは書評とは呼べませんので、文字数の条件を設け
 ました。書評は500字以上でお願い致します。)

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 しれっと、10日号と20日号を同じ日に配信。

 いや、あれですよ。合併号的な何かですよ。

 子どもの頃、合併号っていうなら厚さが倍になっていないのはおかしいって
思ってませんでしたか?

 私だけ?(あ)

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[書評]のメルマガ vol.688


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■■ [書評]のメルマガ                2019.11.10.発行
■■                              vol.688
■■ mailmagazine of book reviews [訃報に接する機会がまことに多く 号]
■■------------------------------------------------------------------
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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<118>『ハコヅメ』は、警察漫画の金字塔

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第118回 熊本地震で被災した福祉施設はどう災害を乗り切ったか

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→100 つながる時間

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<118>『ハコヅメ』は、警察漫画の金字塔

 前回まで、3回連続で追悼稿になってしまった。

 前にも書いたことだけど、この数年、訃報に接する機会がまことに多く、つ
まりは自分もまた、それだけ「齢をとった」ということなんだな、と改めて実
感。

 今月は気分を改めて、最近のお気に入り漫画について、ちょいと語ってみた
い、と思うのであった。

 近頃、気になっている漫画、いくつかあるのだが、そのひとつが、『ハコヅ
メ〜交番女子の逆襲〜』

 作者は、泰三子(やす・みこ)。「週刊モーニング」連載中で、単行本も現
在は「10巻」までが発売中

 タイトルのとおり、とある地方都市の、交番に勤務する若い女性警察官が主
人公で、警察官としてはまだ新人の彼女が「警察」という特殊な組織の中で、
様々な経験を積み、時に失敗もしながら、「ペア長」である先輩女性警官の指
導を受けて、日々成長していく姿がスラップスティックな展開の中で描かれる。

 警察を舞台とし、さらに女性が主人公という漫画は、過去にも例があると思
うし、交番を舞台とするスラップスティックと言えば、あの『こち亀』もそう
なのだが、この『ハコヅメ』は、それらの先行作品とは、明らかにおもむきが
違う。
 どこが違う、と言って一番の違いは、「ディテール」だ。
 警察という組織内部の描写、ことに、上司と部下、あるいは同僚でも先輩と
後輩、その上下関係の間に漂う空気が、とても濃密に描写されていて、ナニゲ
にリアルなのである。

 実は、わしの妹のダンナというのが警察官で、その彼が酒を飲むたびに愚痴
ってたこと…要人警備に駆り出されたとき、冬の雨が辛くて、通りすぎる車列
に向かって「早よ行けや〜〜っ!もう!」と心で毒づいてた、ことや、まもな
く勤務が終わる、という時に発生した事案の犯人を取り調べなくてはならなく
なって、「思わず、殴ったろか思った」こととか、徹底した減点主義のこと、
とかが、この作中にもエピソードとしてふんだんに登場するのだ。

 リアルなはずで、この作者の泰三子さんは、漫画家になる前は、10年間、某
県警(本名とともに秘密、らしいのだが、どうやら鹿児島県警らしい、とはも
っぱらの噂だ)で警察官として実際に勤務していた、のだから。

 漫画の主人公と同じ交番勤務を振り出しに、あちこちの部署を経験し、広報
課勤務の時、広報誌の中で、警察の活動を漫画で紹介したい、と考えて上司に
訴え出たところが却下され、「ならば商業誌で独自に」と考えて、「モーニン
グ」に持ち込んだらしい。

 警察勤務の中で、似顔絵の担当もしていたので、「漫画もいけるだろう」と
考えたそうだ。

 さらに、モーニングに作品を持ち込み、何度かのリテイクを経て、「じゃ、
ぼちぼち連載を」という時期に、担当編集者の制止も聞かず、連載のために10
年務めた警察を辞め…つまり、安定した公務員の生活を棒に振って漫画に専念
宣言、という大胆不敵、というか無謀というか、編集部は、かなり慌てたらし
い。

 連載開始当初こそ、伝えたいとの思いが強くて、ややぎくしゃくしたところ
もあったのだが、連載を重ねるにつれ、主人公の河合や、そのペア長である
「セクシー女優の容姿とマウンテンゴリラの魂を持つ女」藤部長のキャラクタ
ーも際立ってきて、さらに捜査課の「モジャツンコンビ」こと源・山田のコン
ビをはじめ、脇役キャラもその濃さを増し、絶妙なギャグの合間に、警察とい
う組織が持つ独特な雰囲気や、その悲喜こもごもな日常などが、うまく調和し
てきて、いまや絶好調、なのである。

 ちなみに、交番勤務のことだけでなく、刑事課の捜査や鑑識、交通課の取り
締まりや、生活安全課の補導事案、などなどの描写も、ディテールが正確でと
てもリアルなのは、泰三子さん自身が、10年の間に実際に勤務した経験がある
から、なんだとか。

 つい最近、兵庫県警の女性警官が、駅のトイレに拳銃を置き忘れる、という
不祥事が発覚し、さらに、その警察官がホストクラブに通いつめ、その資金を
捻出するために風俗でアルバイトしていた事実もまた同時に発覚、という事件
があった。

 以前だったら、「なんだよ、それ…?」とか「なにやってんだか」でスルー
していた事件だったろう。
 が、『ハコヅメ』を読んだ後では、この事件もまた、「日頃の務めが激務で、
さらに女性が女性として扱われない職場で、よほどストレスがたまってたんだ
ろうな」と、思わず同情してしまうのである。

 『ハコヅメ』は、既に各方面で話題になっていて、熱烈なファンの間では、
ドラマ化の要望も強い、らしい。

 わしも、これ、昔の映画『警察日記』の現代版の感じで実写ドラマにしたら
面白いと思うのだけど、「河合」と「藤部長」、誰を配役すると、ぴったりく
るでしょうね?


太郎吉野(たろう・よしの)
阪神タイガースお膝元在住。右投げ右打ち。趣味は途中下車、時々寝過ごし乗
り越し、最長不倒距離は三重県名張。
ちなみに「阪神タイガース」の「阪神」は、「兵庫県阪神地方」を指します。

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第118回 熊本地震で被災した福祉施設はどう災害を乗り切ったか

 2016年(平成28年)4月に起こった熊本地震は、4月14日の夜に発生した震
度6の地震が前震で、その後16日の未明に発生した震度7の地震が本震という
ことになり、前後して2度も大きな地震があった希有な地震であった。ほんの
3年前のことなので、皆さんの記憶に新しいものだと思う。

 最初の14日の地震でかなりの被害があり、被災地となった熊本であるが、28
時間後にそれを上回る大きな地震が発生した。人々の動揺と不安と焦燥と疲労
はいかばかりのことであったか。想像することすら、なかなか難しい。

 そして、その熊本地震に関する書籍はあの東日本大震災関連本に比べると圧
倒的に少ない。東京の本屋では、ほとんど見つけることができない。東京にお
いて、震災の風化に熊本地震が巻き込まれた。

 でも、最近、執筆子は繋げてくれる人がいて、熊本地震の体験者と知り合う
ことができた。そして、今回ご紹介する書籍に巡り会った。

『熊本地震 命を守る! 全証言I』(吉本洋 著)(マネジメント社)
(2018年12月1日初版第一刷)
『熊本地震 復旧から復興へ 全証言II』(吉本洋 著)(マネジメント社)
(2019年2月1日初版第一刷)
『熊本地震 未来への提言 全証言III』(吉本洋 著)(マネジメント社)
(2019年5月1日初版第一刷)

 著者の吉本氏は、「老人総合福祉施設 グリーンヒルみふね」の施設長であり、
この施設は熊本県益城郡御船町にある。熊本地震で被災した福祉施設の長によ
る体験記なのだ。

 3冊で1セットになっている本。1巻が発災時から1週間の記録であり、最
も困難な状況をどのように乗り切ったか。2巻はそれから発災50日目にあたる
6月1日まで。この日にグリーンヒルみふねは復興宣言をした。3巻はその後
にさまざまな防災啓発活動を行い、全国の福祉施設と連携していくさまを描い
ている。

 著者の吉本氏の行動力が凄い。そして施設の職員が凄い。責任感と使命感に
感動する。

 熊本は地震が来ない、という迷信をふつうに信じていた熊本県民は、だから
地震の備えなどということはほとんどしていなかった。熊本の役所も同じ。台
風を筆頭に風水害と火災についてのマニュアルはあるが、地震についてはなに
も準備していなかった。8年前の東日本大震災の映像を見ても、それは対岸の
火事でしかなかった。しかし、巨大地震はこの地震空白地域であった熊本で起
こってしまった。

 施設では、どうしていたかは本書を読まれたし。職員はそれぞれ担当を割り
振り、避難所となった施設を懸命に運営していく。しかし水も食糧もない。備
蓄はほとんどなく、民間施設なので公的援助も期待できない(つまり行政は公
平性を最も尊ぶので、どこかひとつへ、ということは絶対にしない)。施設長
の吉本氏が、渉外担当となり、自身のSNSを通じて全国へ支援の要請を発信
した。その効果は徐々に現れ、物資が届くようになり、人的応援も得られるよ
うになる。氏のSNSをみた人がメディアにつなぎ、取材の申し込みがあり、
その模様が全国に放映された。テレビの影響力は絶大なのだ。それからは支援
物資や人的支援が急激に増えた。被災した当事者による手記。それもひとりも
欠けることなく生存していかなければならない、という責任ある立場の人の手
記には迫力がある。

 氏は云う、「私ができること。それは、こういう時期だからこそ、皆で乗り
越えなくてはないけない。ひとり欠けると五人のお年寄りの世話ができなくな
る。つまり、この状況下では誰ひとりとして欠けることは許されないのだ。」

 福祉施設を運営する立場の人として悲壮な決意なのである。

 施設長の吉本氏は、しかし悩むのであった。施設入居者を守ることと家族を
守ること。どちらを優先すべきか。軽重を天秤に掛けることはできない。氏は
そのジレンマ、葛藤に悶える。それを正直に書いてしまう。かくして読者であ
る我々は、その葛藤を自分のこととして氏とともにその問題につきあうことに
なる。

 悩みは解決したわけではないが、この熊本地震に対峙するにあたり、氏はひ
とつの結論にたどり着いた。「記録が大切」。

 思い出したくもない記憶でも、後世につなげていかなくては意味がない。だ
から記録する作業が大切なのだ。と。そしてその一環として本書3部作がある
のだ。

 3巻目の「未来への提言」が実はもっとも大切なことを訴えている。被災当
事者として施設を運営した著者がさまざまな問題を考察しているのがこの巻な
のだ。行政との関係。物資の配付の不平等について。SNSで発信することの
光と影。被災地でのイベントの是非。災害時における社会福祉施設が担う役割。
利用者の安全確保はどうする。・・・・・矢継ぎ早に問題を提起してそこに切
り込む。氏の想いを語る。ぜひ読んでほしい。

 そして、氏はこの災害を経験して、災害を乗り越えるために大切なことは三
つある、ということに気づいた。本当は本書を読まれることが望ましいが、敢
えてここに記載する。

 1 自分のモチベーションを維持し続ける
 2 情報を発信し続ける
 3 ネットワークを広く持つ

 グリーンヒルみふねの施設長である本書の著者、吉本氏がご自身で経験され
たことに基づいて考えるに至ったその到達点がこの三つなのである。ある集団
を率いなければならないリーダーが災害に直面したときの心得、とでも云うべ
き事柄。それでも3のネットワークを広く持つ、というのは、平時からしてお
かないと。災害後に行おうとしても、それは不可能だ。

 ・・・・・という訳で、リーダーたる者、ふだんから地域活動や地域外のネ
ットワークに積極的に関わらなければならない。

 この3部作はこのことが云いたいための書籍であり、この結論に至る過程が
書かれた記録書である。

 今月もいい本にであった。


多呂さ(台風15号・19号・21号。関東でこんなトリプル台風にやられるとは、
まったく災害は“あすは我が身”なのですよ)

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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100 つながる時間

 先日、家族に入院する者が出たことで、久しぶりに子どもたちが勢ぞろいし
ました。

 子どもも成人し独立してしまうと、帰省もそれぞれになり、なかなか一同に
そろうことがなくなっていましたが、救急搬送の入院だったこともあり、本当
に思いもよらない時間がもたらされました。

 一番は生まれた時以来に会う孫のS君です。新生児のとき以来に会うS君は
9か月になり、よく笑い、よく食べ、それはそれはかわいくなっていました。
久しぶりに抱く小さい子どもの愛らしさ、あたたかさは、看病の疲れを忘れさ
せてくれ、自分の子どもが、今度は親になったのだとしみじみ不思議な感覚を
味わいました。

 一緒に布で遊んだり、わらべうたを歌ったりしたのですが、もう少ししたら
絵本を楽しんでくれるかなと、その時を楽しみにしています。


 前置きが長くなりました。今回は絵本をまとめてご紹介します。

 『みーんな、ねちゃった?』
 オードレイ・プシエ 作 ふしみ みさを 訳 BL出版

 おやすみなさい絵本です。
 ねむる時間になっても、すっとねむれないおとこのこ。
 気になることがあるのです。
 そこでママにたずねます。

 「ママ、みーんな ねちゃったの?」

 みーんなって誰のことでしょう。
 それは、ひよこだったり、お花だったり、おひさまだったり、おつきさまだ
ったり。
 ママは丁寧にこたえていきます。

 やわらかいタッチの絵柄は、みているとリラックスできます。
 子どもはちっとも眠くないのに、一緒にいるママは一日の疲れが出る夜なの
ですから、質問に回答しているうちにどうなるかは想像できますね。
 
 読んでいると、子どもたちを寝かしつけていた夜を思い出しました。
 いつかS君にも読んであげたいな。


 『スモン スモン』
 ソーニャ・ダノウスキ文・絵 新本史斉 訳 岩波書店

 ドイツの絵本です。
 独特なかわいさオーラが表紙から出ていてに心をわしづかみにされました。
 
 ゴンゴン、ロンロン、ストンストン、クロンクロン、などなど、
 不可思議な音で表現される食べ物や仲間。
 音の示すものは絵で解明されるのですけれど、
 ん?ん?と思い、言葉の意味するものの答えあわせを絵でしていると、
 なんだかすっかり「スモンスモン」の世界にはまるのです。

 ファンタジックな世界を甘くなく、写実的かつ独特なタッチで描き、大人を
も魅了します。

 ぜひ手にとってスモンスモンと出会ってください!!


 詩人伊藤比呂美さんが訳された「きみのきもちによりそう絵本」もお勧め。

 『かなしみがやってきたらきみは』
 エヴァ・イーランド いとうひろみ訳 ほるぷ出版

 イギリス在住のオランダ人作家によるはじめての絵本。
 
 思えば、かなしみはいつも予告なしにやってきます。
 スマホでアラームがなることもなく、いきなりおそってきます。

 少し太めのシンプルな線画で、おとこのこと物体化されたかなしみを描き、
かなしみがやってきたときの対処方法を、淡々を伝えてくれます。

 感情とのつきあい方は、子どもだけでなく大人も知りたいこと。
 そんな知りたいことが描かれている絵本です。


 さてさて、今年の残り週は一桁になったことに気づいていますか。
 クリスマスだってもう来月の話です。

 『クリスマスマーケットのふしぎなよる』
 たなか鮎子 講談社

 たなかさんの絵は、おもちゃ箱につまっている嬉しさがぎゅっとつまってい
るようなキラキラ感があります。つまりクリスマスにぴったり。

 クリスマスマーケットに出かけたヨハンは、どこかのツリーからおちたお星
さまを見つけます。元の場所に戻そうとヨハンはクリスマスマーケットのなか
またちの力を借り……。

 マーケットにはいろんな人たちがいて、買い物をしている人たちの様子も細
やかに描かれ、じっくりみているとヨハンたち以外の物語もみえてくるようで
す。

 初回限定ポストカードつきですから、早めの入手を!

 もう一冊クリスマス絵本を。
 『もりのおくのクリスマスツリー』
 ユーヴァル・ゾマー作 石津ちひろ 訳 ほるぷ出版
 
 イギリス発、木が主人(木)公のクリスマス物語。

 種からじっくり育った木なのですが、周りをみると少し斜めに育っています。
 それほど高さもありません。
 そんな見ばえのせいか、クリスマスの時期にツリー用に切られていく木の中
で最後まで誰にも切られません。

 けれど、一本残った木に、森の仲間たちが近づいてきます……。

 木として存在することの意味が、クリスマスの時期ならではで語られ、やさ
しい気持ちになります。

 大判でクリスマス雰囲気たっぷりの絵本は贈り物に最適です。
 プレゼント候補にぜひいれてください。


(林さかな)
会津若松在住。「本の雑誌」新刊めったくたガイド海外文学担当。
http://1day1book.strikingly.com/

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・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
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・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
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・『支え合い・学び合いで育つ「わたし」』(エディット・パルク)
  http://web.kyoto-inet.or.jp/people/cogito/%8Fo%94%C5%88%C4%93%E0/%8Ex%82%A6%8D%87%82%A2%81E%8Aw%82%D1%8D%87%82%A2.html

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■あとがき
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 「訃報に接する機会がまことに多く」とは、まさに最近、実感していること。
つい最近も知人が還らぬ人となりました。

 11/30は看取りの日。とわかりやすいゴロですが、なぜか厚生労働省は違う名
称にしたとのこと。変な感じですね。

 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02615.html

 これにかこつけて、ちょっと宣伝です。関わっている団体が下記のようなイ
ベントを行います。

 NHK「プロフェッショナル」でも紹介された「看取り」のエキスパートで
ある、エンドオブライフ・ケア協会 代表理事の小澤竹俊先生が登壇されます。

 ちょっとメッセージのやりとりをしていますが、とっても善い方です。

 ファシリテーターは、京都造形芸術大学副学長、NPO学習学協会代表理事
の本間正人さんです。

 EMS特別体験講座
 「現在の医療は看取りの本質をどのように見つめるべきか?」
 令和元年11月27日(水)19時〜21時
 http://ems-event191127.mystrikingly.com/

 B-5「aguni原口の紹介」で、2,500円で参加できます。Zoomでも同時配信で、
世界のどこからでも参加できます。

 ご興味あれば是非。

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[書評]のメルマガ vol.687

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■コンテンツ
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★「トピックス」
→ トピックス募集中です

★「音楽本専門書評 BOOK’N’ROLL」/おかじまたか佳
→ #111『ママは何でも知っている』

★「目につく本を読んでみる」/朝日山
→ 『絶望の林業』 田中淳夫 新泉社

★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→ 認知行動療法の本に救いを求めてみました

★【募集中】献本読者書評のコーナー
→ 献本お待ちしています!

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#111『ママは何でも知っている』

 スクワットを一日おきにやるようになって、1年半ほどになる。

 退職してほぼ家にいるようになっていいことは、この種の健康対策が続けら
れることだ。これまでは少し仕事が暇になるとあれこれ始めて、すぐにまた忙
しくなって止めてしまうことの繰り返しだった。

 だから毎日でもできるのだが、筋トレはむしろ休みを入れる方が効果的らし
く、なので一日おき。確かに、お尻に肉がついてきた。

 加えてこのスクワットには目的がある。オール・スタンディングのライブを
楽しむために、下半身の体力をつけなければならないのだ。
 
 この欄の最後、自己紹介のところに、いつも日記替わりに近況を書いている。
そこまでつぶさに読んでくださる方はご記憶かも知れないが、札幌を拠点とす
るロック・バンド月光グリーンにはまり、ライブに通っている。会場はほぼラ
イブハウス。当然、オール・スタンディング。つまり立ち見のみで椅子席がな
い。

 まず、開場の15分ほど前に到着。路上に並んで待つ。そうしないと、せっか
く若い整理番号をゲットしていても前の方で聴けないからだ。

 もっとも、前から一列目とか二列目だと、バンドとの距離が近く、一体感が
増す反面、爆音が鼓膜を直撃。細かい部分は潰れて聴き取りにくい。会場の中
程か、後ろの方が、PAスピーカーから適度に離れるし、そもそも音をつくる
ミキサーは一番後ろにいるので、そこに近い方がサウンド的にはいい。

 したがって、前で一体感を楽しむか、後ろで音を楽しむかは悩ましい二択な
のだが、他のバンドなら音を取るけれど、月光グリーンに関しては、一体感を
選んでしまう。「汗ダク感情ロック」をキャッチフレーズとする彼らの熱いラ
イブは、なるべくステージの傍で楽しみたいからだ。

 だから15分路上で待って、中に入る。そこから開演まで、公式には30分。だ
が、殆どの場合、10分ぐらい遅れて始まる。ここまでで既に55分立ちっぱなし
である。

 かくして始まったライブは、アンコールまで含めて約2時間。この間は、た
だ突っ立っているわけではなく、踊りまくる。
 終演後は物販に並ぶ。次のライブのチケットを手に入れるためだ。通う内に
顔なじみになったバンドのメンバーと軽く立ち話するのもファンにとっては嬉
しいひと時。これに20分は費やす。

 計3時間15分。家からの往復を1時間半とすれば、4時間45分の間、立つか
踊るか歩いている計算になる。電車ではなるべく座るようにしているとはいえ、
映画を2本立ち見する以上の時間、足腰を酷使する。

 しかもこれはワンマンライブの場合。対バンがある時、月光グリーンは大体
トリなので、最初のバンドから見始めるとさらに長丁場。だったら、最後だけ
見ればいいようなものだが。せっかく行くなら他にもいいバンドがあるかもと、
つい最初から会場入りしてしまうのだ。

 若い頃ならいざ知らず、年を食ってくると、やはり思う。
「これ、いつまで続けられるかなぁ」

 ところが先日、大阪で月光グリーンを見た時、明らかに遥か年上らしき女性
客が一人いたのだ。周りの客に「わたし、今年80なのよ」と自慢そうに吹聴。
え〜、すごぉい〜、と言われてご満悦だった。

 80かぁ、さすがナニワの女性、と感心したが、しかしフィクションではある
が、ニューヨークの老人たちも侮れないのを思い出した。

 安楽椅子探偵ものの短編シリーズとしてミステリー・ファンには有名な、ジ
イムズ・ヤッフェ『ママは何でも知っている』の一篇、「ママ、アリアを唱う」
に、オペラを聴くためなら何時間でも立ち続ける労を厭わない、元気な老人た
ちが登場するのである。

 このシリーズは、ニューヨーク市警の刑事であるユダヤ系アメリカ人の主人
公が、毎週金曜日、妻を連れてブロンクスに住むママの家へ行き、夕食の席を
囲むのだが、その時担当事件のあらましを話すと、ママが謎めいた質問を3つ、
4つしただけで、鮮やかに解決してしまう、というものである。

「ママ、アリアを唱う」は、ママがオペラ・ファンであることから、最近メト
ロポリタン・オペラハウスで起きた殺人事件の話題になる。

 この劇場には、入場料の安い立ち見席がある。前売りはなく、当日券のみ。
立ち見の中でも前の方で見ようと思えば、発売の3時間前には並んでいなけれ
ばならない。
 いくら高額なオペラが安く見られるとはいえ、これに群がるのは、貧乏な音
大の学生とか、体力のある若い音楽ファンかと思えばそうではなく、オペラを
こよなく愛する年金暮らしの老人たちなのだった。

 この立ち見常連の老人グループに、筋金入りのオペラ・マニアが二人いる。
共に一人暮らしの男だが、どういうわけだか音楽的にはしょっちゅう意見が対
立する。特に歌手の評価では、まず一致したことがない。折しもマリア・カラ
スとレナータ・テバルディが連続して公演をすることになったが、どちらが偉
大なソプラノ歌手かで大論争となった。

 老人特有の頑固さも手伝って、カラス・ファンの男は、テバルディが『トス
カ』に出演する夜、彼女のアリアの一番いいところを邪魔してやる、と言い放
つ。

 もちろん、テバルディを暗殺するとか、劇場を爆破するというわけではない。
 そんなことをしなくても、ロックのように爆音ではないクラシック音楽は、
脆いガラス細工なのである。曲の一番いいところで、派手なくしゃみでもすれ
ば、もうそれですべては台無しに出来る。
 実際、クラシックのコンサートで、客の咳払いが気になって絞め殺したくな
ったことのあるファンは多いだろう。

 いよいよ公演が始まる。テバルディ・ファンの男は、隣にいるカラス・ファ
ンが何をしでかすか気が気でない。ところが彼は、まさにそのテバルディの聴
かせどころで、沈黙を守った。だが、オペラは予告通り台無しになった。

 彼自身がアリアの途中で倒れ、死んでしまったのである。

 大騒ぎになって警察が呼ばれ、死因は毒殺だと判明する。ここまでのいきさ
つからすれば、犯人は犬猿の仲だったテバルディ・ファンで決まりだ。しかし、
ママは違うと言う。「それは音楽ファンの心理をわかっていない」と。

 ネタバレになるが、その理由だけ明かすと、もし、テバルディ・ファンの男
が犯人なら、彼は大好きな歌手の一番の聴かせどころを、自ら台無しにしたこ
とになる、というのだ。
 これはファン心理としてあり得ない。むしろ彼は、カラス・ファンの男が、
そのタイミングで大きな雑音を立てるとか、ブーイングすることを恐れていた
はずだ。
 しかも、テバルディがそのシーズンに『トスカ』で主役を張るのは、その公
演一度きりだった。そんな貴重な機会を自ら破壊するとしたら、その男はテバ
ルディ・ファンとは言えないし、だとしたらそもそも殺人の動機がなくなる。
 もし殺すなら、オペラの後にするか、せめて、アリアの後にするはずだ。
 これは、音楽ファンなら誰もが深く首肯するロジックだろう。

 かくしてママが指摘する真犯人については、本書をぜひチェックしていただ
きたいが、しかし、この短い話を読んで思うのは、やはり謎解きの見事さより、
ニューヨークの老人たちの立ち見を厭わぬタフさであり、乏しい年金をやりく
りしてでもオペラに通う音楽愛の深さである。ちなみにこの立ち見常連グルー
プには、女性もいるのですよ。

 券を買うのに3時間。上演が3時間。計6時間! 4時間45分ごときでたじ
ろいでいてはいけない。

 決意も新たに、スクワットに励むのである。


ジェイムズ・ヤッフェ
小尾芙佐訳
『ママは何でも知っている』
二0一五年六月十日 印刷
二0一五年六月十五日 発行
ハヤカワ・ミステリ文庫

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
先月は札幌で月光グリーンのライブ。スクワットの成果を発揮するつもりが、
なんと台風! 迷った末、前日に飛行機とホテルをキャンセルしました。さら
に今月も、台風。さらに、これを書いているいま、またぞろ熱帯性低気圧発生
とな!

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『絶望の林業』 田中淳夫 新泉社

 本人いわく、「日本唯一の森林ジャーナリスト」の手になる現代日本林業の
絶望的状況を描いたノンフィクションである。

 現在、林業界隈はわりと景気が良いように思われている。背景にあるのは多
額の補助金を使った林業振興にあるのだが、こうした振興策が林業の本当の振
興になっていないどころか、むしろ森を破潰する結果になっているというのが、
この本の趣旨だ。

 書名からして容易に想像できるように、前書きからいきなり絶望的な状況が
語られる。日本唯一の森林、そして林業ジャーナリストであるから「最近林業
盛り上がってますよね?」と取材やテレビの出演依頼がよく来るのだが、現状
を話すと依頼が全て消えて行く。

「ここで私はテレビ番組に出演できなかったとか、情報を提供したのにギャラ
が支払われないと文句を言いたいのではない(少しは言いたい)。私の彼らの
認識の差に暗澹とした気分に浸るのだ」

「少しは言いたい」と半分茶化して若干ソフトに書いているのは、その後に続
く暗澹とする話の前に多少の予告のつもりかも知れない。

 林業に興味を持った学生も訪ねてくる。一般に言われている林業の姿と筆者
の言う姿が違うから、話を聞きたいと言ってくる。そして忸怩たる思いに駆ら
れる。こんな希望を持って林業に取り組みたいと思う若者たちの思いに応える
ことができないからだ。

 新規就農ならぬ、新規就林したい人は、これ読んだら林業やろうとは思わな
いだろう。

「補助金で木材生産は拡大しているが、木材の使い道が充分にない。市場でだ
ぶついて木材価格を下落させる。利益が薄くなるから、量で稼ごうと伐採量を
増やす。しかし木材の使い道は増えず、また価格が落ちる・・・」

「伐れる木のある山は有限で、再造林には及び腰。働き手も減少の一途。
 山主も働き手も、費やした資金や労力に見合う見返りがあるとは言いがたい
からだ。近い将来、伐れる木がなくなり林業継続の意欲が失われることで、そ
の地域の林業は破綻するだろう」

 そんな地域がたくさんあると言うのだ。そこからいろいろな絶望的状況が描
かれていく。あまりにいろいろあるのでとてもじゃないが全てを要約するのは
不可能だけど、いくつか挙げてみよう。

 世界の木材の供給は、熱帯雨林の過剰伐採などで悪くなりつつある。日本で
は戦後の大造林によって1000万ヘクタールの人工林を作った。その多くが植え
付けから50年を経て、良質の木が「使える大きさ」に育ってきている・・・と、
一見、未来は明るそうだ。というか、なぜこんな状況で絶望しなきゃならない
のか?

 なぜか。国産材では足りなかった時代に入ってきた輸入木材の流通ルートが
整備されているので、国産材の流通ルートが整備されていない。バブル崩壊や
阪神淡路や東北の震災、人口減少による住宅着工件数の減少と、先々月紹介し
たいわゆるソロエコノミーと言うか、独身者が増えているせいか、一戸あたり
住宅の面積も減少しているので需要が増えない。

 そして補助金が悪用される・・・。林業とは山主(要するに木のオーナー)
や組合、伐採業者などが関係者として出てくるのだが、補助金はたいてい伐採
業者に入る。伐採業者は木を切るのが仕事であるからどんな品質の木材でもか
まわない。

 大型の林業機械によって「効率化」をすすめようとすると、一本一本、木を
見て間伐をするなどの手間はかけられない。すると何でもいいから一ヶ所でで
きるだけ大面積で木を切ろうとする。だから安く叩かれる。

 そして林業は事故が多く、知識や経験がない人がやると、とても危険な職業
なのに熟練者がどんどん減っていなくなっている。

 だから下手な林業機械の導入は山を傷つける・・・そんな「都合の悪い真実」
がてんこ盛り。ホントにそこまで状況はひどいのかと、にわかに信じがたいの
だが、著者はこの分野の日本唯一のジャーナリストだ。大げさに煽っているわ
けではないはずだと思う。

 最後にはもちろん、未来のモデルになりそうな例も書いてあるのだが、著者
は決して林業の未来を楽観視はしていない。

 第一次産業で、農業は花形になるのだろうか?わりと本も多いし、色々な人
が一般の人向けに書いている。漁業関係の本も、今探すと農業ほどではないが、
まだあるようだ。

 1次産業?と言えるかどうかわからないが、最近のジビエの流行のせいで本
屋には狩猟の本も結構並んでいる。林業の関係の本も実はそれなりにあるのだ
が、ここまで踏み込んだと言うか、主張のはっきりした批判本はちょっとない
のではないだろうか?


(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)

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■「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
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認知行動療法の本に救いを求めてみました
『マンガでわかる認知行動療法』(池田書店)
『今日から使える認知行動療法』(ナツメ社)

 おばちゃま、ここ数年、悩み事を抱えていまして。それは命にかかわること
でもなく法律が絡むものでもない、ささいな人間関係に関するもの。でもささ
いであればあるほど、悩みは深く抜け出せずにおりました。たぶん、小さなこ
とのようにみえて、おばちゃまのアイデンティティに関わり、心の奥底を揺さ
ぶる何かが含まれているのでしょう。

 困ったのはこの思い込みから脱出する方法が見つからない、つまり問題解決
の方法がわからないこと。むしろ、医療とか法律で解決できない、人に迷惑を
かけない人一人の胸の内にこもる問題こそがややこしいのだと痛感しました。

 そこで書店で買ったのが認知行動療法の本。『マンガでわかる認知行動療法』
(池田書店)と、『今日から使える認知行動療法』(ナツメ社)というバリバ
リ実用書なタイトルの本です。買ったのはつい先日です。

 認知行動療法とは、ストレスがかかったとき認知のゆがみによって判断に狂
いが生まれれ、つらくなったり不適切な行動をとってしまうということをなく
すためのスキルのこと。まあ、悩みを軽減して健康な心で過ごすためのアメリ
カ生まれの問題解決のスキルってことでいいのかな?

 購入時は藁をもすがる思いだったのが正直なところで、じっくり最初から読
み始めたのですが、認知のゆがみ云々の理論部分はわかるのですが、理論を基
にできる範囲でいいからちょっとずつ行動に移して解決策を見出すというのが
難しいと感じたのは、日本人だからなのか性格が原因なのか。

 たとえば、人見知りで孤独に悩むなら、人と話す練習をしましょうってあっ
て、◎カフェで店員に「今日は混んでますね」と言う。◎エレベーターでいっ
しょになった人と天気の話をする。◎パーティに参加して3人以上と話すとあ
るんですが、まあ、人見知りではない私でさえハードルが高いことばかり。

 夜遅く帰ってきた夫に、「こんな時間になによ」とは言わず「たいへんだっ
たわね。でも食事の支度もしてたから今度からは連絡してくれると助かるわ」
という・・・それができないから、困るのであって・・・・。

 認知行動療法のスピリットはわかるけど、シートに記入したり日記を書いた
りするのは、とてもたいへんでなんだか、もう1つ仕事をしている感じがハー
ドル高いかなと思いました。正しい解釈かどうかはわからないのですが、アメ
リカ的?っていうか、理論的だからこそ難しいかなと。

 といいつつ、今日アマゾンでまた認知行動療法の本を注文した私でした。
 もうちょっとこの分野を読んでみようと思います。

 で、私が数年かかえて、ここ最近はかなり心に負担がかかっていた悩みです
が、ひょんなことから一筋の道が見えてきたんです。それは1本のラインから
で、そのラインを見たときは、光が差して、固まっていた氷が溶け出した感じ
でした。

 実は認知行動療法のほかに、私を支えていた言葉が3つありました。

 1つはある高僧にそれとなく悩みを打ち明けたとき、「執着というものはい
つか必ず消える」と言われたこと。

 もう1つはある精神科のドクターの話で、「心も一病息災。1つ病気があっ
たほうが気をつけて長生きできるように、心に1つぐらい悩みがあるほうが心
は健康」みたいなことを言われたこと。

 そしてテレビのインタビューでの嵐の相葉雅紀さんのコメントにも助けられ
ました。嵐がブレイクしたときの心境について。「嵐がどんどん先に行くよう
で怖かった。不安でもがいた。でも、強い心を持って打ち勝つしかないと思っ
てやってきた」。

 この3つでがんばりました・・・って認知行動療法どこ行った?って話です
が。この経験から、もし誰か知り合いが何かで悩んでいたら、話をとことん聞
いてあげようと決心した私でした。

 ・・・さっきからうすうす私も感ずいていますが、今回のこの原稿、書評に
なってますか? なってませんね。すみません、ときにはこういう話もありと
いうことでご勘弁くださいませ。


大友舞子(おおとも・まいこ)
昭和20年代生まれのフリー編集&ライター。関東生まれで関西在住。
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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ─ 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510


 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

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 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 台風が近づいてくると食欲が増すような気がするのは、私の気のせいでしょ
うか?(あ)

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