[書評]のメルマガ

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[書評]のメルマガ vol.682

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■■ [書評]のメルマガ                2019.08.10.発行
■■                              vol.682
■■ mailmagazine of book reviews    [振り返るには生々しすぎる 号]
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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<115>ウランバーナの八月

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→97 せかいに広がる楽しいこと

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第115回 平成という時代、この30年間のこと

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<115>ウランバーナの八月

 小池一夫氏の訃報を知ったのは、今年四月に骨折で入院して早々だった。
 享年83。人づてに入院中とは聞いてはいたが、「まさか」と思ったのは、も
っと長生きする人だと思っていたから。
 少なくとも、水木しげると同じくらいには長生きする人だ、と勝手に決めつ
けてもいた。

 1979年、23歳でわしは、小池一夫氏が社長を務める(株)スタジオ・シップに
入社した。
 その辺の経緯は、昔「何の雑誌」に、「就職先は冥府魔道」と題して書いた
こともある。

 漫画が好きで、大学を卒業して就職先を探すに際して、漠然と漫画に携わる
仕事がしたいと思い、出版社の試験をあちこち受けるも、全て落とされて…っ
て、当たり前ですね、「漠然と」「なんとなく」そんな仕事がしたい、と思っ
てるような人間、要りませんね。
 わしが採用担当でも、落とします。

 そんなわしを、出版部門も持っていたスタジオ・シップは拾ってくれたのだ
が、面接の席で「いつから来られる?」と訊かれて、「あ、もう今日からでも!」
と勢いよく答えたら、「じゃ、とりあえず、そこでうちの本読んで、どんなの
作ってるか見といて」と先輩社員に言われたとおり、応接室にこもって壁いっ
ぱいの本棚に並べられた小池一夫作品を、片っ端から読んだ…のだけど、それ
っきりで、誰もやってこない。

 時計を気にしながら、言われた通りに本を読んでたのだが、午前1時頃、ド
アが開いて、「あ? まだ居たんだ? ごめん、ごめん、もう帰っていいよ」
 と言われても、もう電車も動いていない。
 「あ、だったら、仮眠室があるから」と言われて、入社初日からわしは、会
社に泊まりこんだのだった。

 それから1987年の暮れまで、当初は「マネージャー課」で後に「秘書課」と
名称が変更された部署で、「オメーは、ホントに使えねー奴だな」と言われな
がら、小池氏の秘書…的な仕事を主に務めてきた。
 仕事は、「社長」こと小池氏の身の回りの世話から担当編集との連絡、原稿
の受け渡し等々で、マネージャー課、後の秘書課には、常時5〜6人がいたの
だけど、入れ替わりもかなり激しかった。

 入社した1979年から1980年代半ばにかけては、小池氏の仕事量もピークの時
代で、連載も、週刊誌に常時5〜6本、隔週誌・月二誌にも6〜7本、その他
月刊誌などをあわせると、連載本数は20本を軽く超えていた。
 この連載本数をこなすため、小池社長はたいていホテルに籠りきりで、1週
間、月曜から日曜日まで、休みなくほぼ毎日、1日あたり「2本」の原作原稿
をあげていかなければ追いつかない、というスケジュールが常態だった。

 おおむね、午後に1本、夜から深夜にかけて1本、というルーティンで、原
稿があがる目途が立つと、「来といてくれ」という電話があり、ロビーで待機。
その後、「出来た」という電話が会社にあると、会社からロビーに待機する班
(たいていは二人組だった)に、ホテルのフロント通して部屋に上がるよう伝
言してもらう。
 携帯電話のない時代、連絡はかようにややこしかった。
 待機班は、連絡受けるとすぐさま部屋に走り、出来上がった原稿を受け取り、
「素材」と呼んでいた、前回までのゲラを綴じたものや「キャラクター帳」と
いう、ページごとにその作品の主人公以下、登場人物の顔を貼りつけて、その
特徴や人称を描きこんだノート、その他資料類を、次にかかる作品のものに入
れ換える。

 さらに、社長と接触できるのは、1日の内にこの機会だけなので、会社から
持ってきた決裁書類や郵便物などを手渡す。
 わしらが一番緊張したのがこの時で、何ごともなければ、そのまま会社へ原
稿を持ち帰り、コピーを取った上で、編集者、あるいは同じ社内の漫画家に手
渡す。
 が、ここで何らかのミス…必要な「素材」の一部がなかったり、会社から持
ってきた書類の説明がうまくできなかったり…があると、たちまち社長の逆鱗
に触れることになる。
 なにせ、1日に2本…1本あたりは16ページ〜24ページの漫画シナリオなの
で、原稿用紙で約20〜30枚を1日に2度書き上げるのだ。
 常に「ピリピリ」と神経張りつめてるし、ストレスも常に頂点にある。なの
でちょっとなにかがあると、「ぴきん」と切れてしまうのですね。

 いったん切れてしまうと、もう取集がつかなくて、ミスしたわしらを怒鳴り
散らして…あれはもう叱言というより言葉の暴力に近かった。
 で、さんざ怒鳴り散らした挙句に、「もう今日は仕事する気分でなくなった」
と言い残し、「気分転換」と称して夜の銀座方面へ出かけて行くことも、まま
あった。
 わしらは「ぷっつん」と呼んでいたが、この状態になってしまうと、もうそ
の日は絶対に原稿は上がらないので、担当編集に電話をして謝る。社内作家の
場合は、たいていは社内の仕事場で原稿を待っているので、直接出向いて謝る。
 その際には絶対に、「我々のせいで」原稿が進まなくなった、と「きちんと」
経緯を説明せねばならず、さもなければ、また再びの逆鱗となるのであった。

 普段からギリギリの状態で入稿しているので、1本が遅れると、しわ寄せは
その後のスケジュールに影響して、さらにタイトになっていく。
 漫画原作の場合は、そのシナリオを漫画家がネームに起こし、さらにそれを
原稿にする。すなわち、ネームコンテのとおりに枠線・フキダシ→下絵→ペン
入れ→仕上げ、との行程経て初めて「完成」となる。
 常にスケジュールがタイトな小池一夫作品の場合、漫画家にシナリオが渡っ
てから、多くて4日、平均するとおよそ3日間が、漫画家に残された校了まで
のリミットで、上記のような理由でこれが遅れると、時間はさらに圧迫された。

 このしわ寄せによって、漫画家に原作シナリオが渡ったのが校了前日、とい
うこともあった。
 このとき、小島剛夕さんは、16ページの原稿を、なんと24時間で仕上げてし
まったのだが、おそらくは、ネームを切った後、原稿はもう下描きなしで、い
きなりペンで絵を入れていったのだと思う。
 翌日届いた完成原稿のコピーには、きちんと背景も入っていて、「ほえ〜〜
っ!」と、ただただ驚いた。

 勤務にあたっては、課員で早番遅番のシフトを組んで、早番で終了がおよそ
夜の8時頃、遅番だとたいていは深夜0時乃至2時3時、という勤務状態で、
もちろん土日も出勤。休日はシフトの合間でおよそ週に1日。ヘタするとそれ
も吹っ飛んだ。
 今なら、完全な「ブラック企業」だわ。

 わしは、今もそうなのだが、若いころから「うっかり」や「ポカ」や忘れ物
のとても多い人間で、そのせいで小池社長を「ぷっつん」に陥らせることも、
とても多かった。
 おそらく、歴代のマネージャー、秘書の中でも、社長を怒らせ「ぷっつん」
させた回数では、ベスト5には入ると思う。
 なにせ、小池社長の訃報を聞いたときにも、思い出すことと言えば、怒られ
ているシーンばっか、だったもの。

 小池社長は、講演や付き合いなどで地方へ出張することも度々だったのだが、
連載をこなすためには、その行き先にも仕事を持って行くのは当然で、行き先
には関西が多かったのだが、「地元だから地理に明るいだろう」という理由で、
わしが同行することが多かった。
 同行、と言っても、一緒に行くわけではなく、まずは仕事の「素材」や、着
道楽の小池先生の着替え等、2泊3日ほどなのに、なぜか大型トランク3つ4
つばかりの大荷物を、まずは航空便に託してこれと同じ便に乗り、行き先の空
港で借りたレンタカーに荷物を積んでホテルに先乗りする。小池社長が到着後
すぐに仕事を始められるよう、予め部屋を設えておくのだ。

 小池社長は新幹線利用で、ホテルの部屋を設えた後に駅に迎えに出ると、た
いていの場合、その車内で既に1本原稿をあげていて、受け取ったそれをホテ
ルからファクスで送信した後は、次の原稿があがるまで自室で待機、というの
が概ねいつものパターンだった。
 わしが入社する2年前から始めていた「小池一夫劇画村塾」の、神戸校を開
塾して後は、毎月1回、その開催日を挟んで3〜4日は神戸滞在、というのが
恒例化した。

 わしは、元「ガロ」少年で、だから入社してしばらくは、ケレン味たっぷり
な大舞台で大風呂敷なストーリーを展開するエンターテインメントな作風には、
なかなか馴染むことができなかったのだけど、出張に同行することで、「劇画
村塾」でいつも強調していた「キャラクター論」の講義を、いわばマンツーマ
ンで受けることが出来た。

 「ストーリー」は、作者が作るんじゃなくてキャラクターが動いた、その軌
跡がすなわちストーリー、とか、読者は「物語」に感動するんじゃない、キャ
ラクターと一体となり、その悲しみや怒りや笑いに「同調」して初めて、キャ
ラクターとともに、泣いたり笑ったりするんだ、だから、まずは「キャラクタ
ーを起てる」ことが何より重要、などなど。
 これらの教えは、今も実践するとともに、漫画のみならず、小説や映画シナ
リオにも応用して、学生たちに伝えてもいる。

 小池社長とは、その後も縁があって、書店を閉店した後、なにか仕事はない
ですかね、と、当時教授職だった大阪芸大に訪ねて行くと、「じゃ、俺の仕事
を手伝え」と言われて、2004年から約4年間、関西駐在秘書という形で、芸大
の仕事を手伝わせてもらった。

 作家の団鬼六さんは、投機欲と事業欲の大変に旺盛な人で、生前には作家活
動のかたわら、投機や事業への投資に血道をあげていたそうだが、小池社長に
も、これと似た“山師”的な性向があった。
 そもそも、さいとうプロダクションで脚本の仕事に就く以前は、雀ゴロまが
いの生活もしていたらしいし、晩年には、事業欲と投機熱が嵩じて、周囲に軋
轢を生じさせもした、というウワサも耳にしたが、それもまた「あの先生らし
いな」と、別段驚きはなかった。

 今回は、八月、ウランバーナ(盂蘭盆会)にあたって、小池一夫氏と、昨年
に亡くなった「劇画村塾」出身の狩撫麻礼氏、さらに著者物故後の今年5月に
「遺書」とも言える『全身編集者』が発売された元「ガロ」編集者の白取千夏
雄さん、そしてその妻でやはり物故者のやまだ紫さんにも言及するつもりが、
紙数が足りなくなってしまった…ので、来月もまたウランバーナのこころ、な
のだった。

 が、それら既に亡くなった人たちに、ひと言だけ言っておきたいのは、どう
か「安らかになど眠らないでください」ということ。

 生前に物語を紡いできた人たちには、死後もまた「幽霊」となって、生きて
る人間に刺激を与え続けて欲しい、と思う。
 そしてそれが、創作者の使命であり、宿命なのだ、と思うココロなのだった。


太郎吉野(たろう・よしの)
阪神タイガースお膝元在住。右投げ右打ち。趣味は途中下車、時々寝過ごし乗
り越し、最長不倒距離は三重県名張。
ちなみに「阪神タイガース」の「阪神」は、「兵庫県阪神地方」を指します。

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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97 せかいに広がる楽しいこと

 山中湖にある喫茶店「あみん」から23年間の営業を閉じたという葉書をいた
だきました。子どもたちが小さいとき、一度だけ家族5人で遊びに行ったこと
があるのです。もう一度うかがいたかったなあ。

「あみん」の樋口範子さんは、高校卒業と同時にイスラエルに渡り、2年間キ
ブツ(集団農場)で働き、帰国後は山中湖畔にある児童養護施設の保育士、パ
ン屋を経て、喫茶店経営に。そして現在はヘブライ文学の翻訳をライフワーク
にされていると、訳者紹介にあります。

 2003年にさ・え・ら書房より刊行された『もうひとりの息子』を読み、やま
ねこ翻訳クラブのメープルストリートという新刊紹介ページで紹介しました。(※)
それがきっかけで、編集者の方から樋口さんを紹介され、会いに出かけたので
した。いま日付を確認すると、16年も前のこと。

(※)『もうひとりの息子』紹介ページ
http://www.yamaneko.org/maplestreet/p/saera/2002.htm#musuko

 さて、今年5月にその樋口さんの翻訳された絵本がこちら。

 『もりのおうちのきいちごジュース』
 ハヤ・シェンハヴ 文 タマラ・リックマン絵 徳間書店

 色鮮やかな黄色の表紙絵にいるのは、ライオンとキリン。
 真っ赤な色をした屋根の家、そこに「きちいごジュース」とかかれた木札。
 ライオンとキリンはだれが住んでいのだろうかと訪ねることにします。

 ドアベルをならし、誰なのかたずねても、「ぼくは〈きいちごジュース〉」
とこたえるばかり。そこでドアが開くまで待っていると、ぴょんと飛び出して
きたのは……。

 1970年に出版された原書はイスラエルのロングセラー。鮮やかで魅力的な色
彩は目を見張る美しさ! のびやかに描かれる動物たちはいきいきしています。

 真夏のじりじりするような暑さの中、この絵本を読みながら「あみん」で飲
んだジュースを思い出しました。
 

 次にご紹介する絵本は「いたばし国際絵本翻訳大賞」受賞作です。
 板橋区では、1994年より外国語絵本の翻訳コンテストを行っており、受賞し
た作品をきじとら出版さんが刊行されています。

 第25回いたばし国際絵本翻訳大賞(英語部門)で最優秀翻訳大賞を受賞した
翻訳作品がこちらです。

 『てつだってあげるねママ!』
      ジェーン・ゴドウィン&ダヴィーナ・ベル さく 
      フレヤ・ブラックウッド え  小八重 祥子 やく

 パパのお誕生日の準備で、ママは朝から大忙し。
 お姉ちゃんのハティもママのお手伝い。
 ところが、昼寝をしたママが起きないので、
 疲れているからママは寝ているんだろうと、そのまま起こさずに
 ハティはひとりで誕生日パーティの準備をはじめます。

 ママがパーティに必要なことを口にしていたのを思い出しながら、
 せっせと準備していくハティのはたらきのすばらしいこと!
 
 わたしの好きなシーンは、家の中をお花で飾るところ。
 花を飾るといえば、花瓶に生けることしか思いつかないのは大人の頭でしょ
うか。ハティが飾る場所のそれぞれセンスがよく感心してしまいます。
 ぜひ絵本をひらいて、みてみてください。
 
 この絵本では小さいお姉ちゃんが手伝いしてくれていますが、
 どこの家でも子どもが手伝ってくれると、うれしいものですよね。
 疲れきってソファで眠ってしまったとき、高校生の娘が受験勉強の手を休め
て洗濯物を干してくれたときはうれしかったなあ。


 最後にご紹介するのは、物語。
 夏休みのような長い休みのとき、図書室でたくさん本を貸りるのが何よりの
楽しみだったことを思い出しました。

 『貸出禁止の本をすくえ!』
      アラン・グラッツ 作 ないとうふみこ 訳 ほるぷ出版

 主人公、エイミーアンは9歳。家では小さい妹たちがうるさいので、好きな
本をゆっくり読める図書室が憩いの場所です。

 ある日、自分のお気に入り本が図書室から消えていてびっくりします。

 保護者数人が小学校の図書室にふさわしくないと判断した本に対し、教育委
員会も同意したため、その本が貸し出されなくなったのです。

 エイミー・アンは引っ込み思案で、自分の気持ちを家族にすらなかなか伝え
られないのですが、大好きな本が読めなくなることに対して、立ち上がります。

 エイミー・アンがいいたいことをいえない描写が続くので、もどかしく、い
つ言葉にしていくのだろうと、貸出禁止の本の行方以上にハラハラしました。

 本では、声に出していない心の声を知ることができるので、よけいもどかしさ
が募ります。けれど、「声に出せばいいじゃない」と簡単に思いがちなことを実
行にうつす難しさがリアルに描かれているので、エイミー・アンに気持ちが近づ
き、がんばれ!と応援したくなるのです。

 それにしても、この物語に出てくる禁止本は、過去30年間にアメリカの図書館
で少なくとも1度は実際に異議申し立てや貸出禁止措置を受けたことのある本だ
ということには驚きです。

 世の中にはさまざまな価値観の人がいるからこそ、意見の違うことについて、
自分の頭で考えて話をしていく必要性が多くあります。
 
 内気なエイミー・アンが大好きな本を守るためにとった行動は、意志を自分の
言葉で伝える強さが大事なことを教えてくれるのです。

 エイミー・アン、ありがとう。


(林さかな)
会津若松在住。「本の雑誌」新刊めったくたガイド海外文学担当。
http://1day1book.strikingly.com/
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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第115回 平成という時代、この30年間のこと

 令和の時代になって3ヶ月が過ぎた。
 時間は一定に流れている。しかしその一定に流れる時間の中で、日本人は元
号というしくみを作り、それを制度として千年以上続けている。特に約150
年前の明治から、天皇陛下の代替わりに伴い、元号も改まるという制度になっ
てからは、はっきりと元号が時代を表わすことばになっていく。明治時代、大
正時代、昭和時代・・・と続き、ついに元号が令和になった途端、いよいよ平
成時代が一括りで誕生した。平成元年(1989年)〜平成31年(2019年)。この
30年間のひとつの時代は、未来においてどんな時代だったか、と総括されるの
だろうか。30年間という長さはひとつの時代としてみた場合、長いと感じる人
もいれば短いと感じる人もいるだろう。

 振り返るには近すぎる。
 また、振り返るにはまだ熱すぎる。
 さらに、振り返るには生々しすぎる。
 いずれにしても今、わたしたちはこの平成時代を生き抜いたわけだ。
 そして、早くも平成という時代を総括しようという動きが見えだした。

『街場の平成論』(内田 樹編)(晶文社)(2019年1月30日)

 編者の内田樹氏を含めて、9人の執筆者による平成時代への思いの書。登場
順に、内田樹(フランス文学者・哲学者)、平田オリザ(劇作家)、ブレイデ
ィみかこ(保育士・ライター・コラムニスト)、白井聡(思想史家・政治学者)、
平川克美(実業家・文筆家)、小田嶋隆(コラムニスト・テクニカルライター)、
仲野徹(病理学者)、釈撤宗(宗教学者・浄土真宗住職)、鷲田清一(哲学者)。
現在のこの国において、どちらかというと野党的立場の論客たちのエッセイ集
と思えばよいか。それぞれの専門分野でわかりやすく、それぞれの“平成”を
振り返っている。

 はしがきで内田樹氏は、1989年の時点で感じていた不安や期待やときめきを
思い出し、そして30年経った今の現実の世界を並べてみてほしい、と云う。30
年前の予測が劇的に外れてしまったことについて考えよう、と云う。

 そして引き続き、内田氏は自己の文章で、戦後史五段階区分説を展開し、こ
の日本という国が衰退していることを証明してみせる。アメリカと対等になれ
そうでなれなかった。アメリカから真の独立を勝ち取ろうとして負けた、と云
う。いまはもう涅槃の時になっている。もう何も語らない。日本は衰退してい
る。

 続く平田オリザ氏は、この30年間の日韓関係を解説する。両国の関係は、ま
るでジェットコースターのようだ。従軍慰安婦問題、サッカーワールドカップ
共催、韓流ブーム、靖国&竹島問題、K−POP、そして徴用工問題。この微
妙な両国の問題はどこにあるか。日本はアジア唯一の先進国の座から滑り落ち
たことを認めたがらず、韓国は先進国入りしたことにまだ慣れていない、と云
うところに帰着する、と平田氏は看過する。

 三番目のブレイディみかこ氏は、この30年間の男女の関係を“セクハラに始
まり、セクハラに終わる”と見なした。現在の日本において最も怒りを多く持
っているのは女性であろう、と云う。“ガールズパワー”は、女性が自分で道
を切り開くそのエネルギーを指すが、“女子力”となると男性に気を配る女性
の作法、になってしまう。みかこ氏はこのジェンダーギャップの差が大きい日
本で女性たちよ、もっと頑張れ、と吠えるのである。

 次の白井聡氏は、『永続敗戦論』や『国体論』の著者であり、本書でも持論
を存分に展開している。平成が始まったとともに三つの終わりがあった。1昭
和の終わり 2東西冷戦の終わり 3戦後日本の高度成長の終わり。そして時
代はポストヒストリー時代となり、人々は歴史的な方向感覚を見失った、と看
過する。また「成熟の拒否」=感情が成熟せずに単純化する、と云う。白井氏
は平成という時代を極めて学者的に見事に分析してみせる。

 さて、平川克美氏は、昭和の終わりのころ(昭和63年の秋以降)を描写し、
あの雰囲気を読者に思い起こさせる。自粛のご時勢だった。そして東日本大震
災。平川氏はこのふたつをみた後、消費者の観点から平成を見直した。市場原
理に忠実な消費者としての個人は、まったく自由がきかない。結婚年齢が30年
間で7歳も上がったことがその大きな証明となる。本当の個人へと脱皮しない
とこのほつれは解けないと平川氏は云う。

 小田嶋隆氏の論はとてもわかりやすい。インターネットという別の脳を持っ
たゆえに、みな互いに手の内を知ってしまった。そして人との違いを何に求め
るかと云えば、偏見と独断こそが武器になる、と云う。さらにSNSにより、
人は自分が何をしたいのか、何を欲しているのか、という問いよりも、人にど
う見られているか、どう見られたいか、人は自分に何を期待しているか、を真
っ先に考えるようになってしまった、と云う。群れの中でしか生きられない。
小田嶋氏は人のいわし化が始まった、と総括した。

 病理学者の仲野徹氏は、この30年間の生命科学の進歩を総括する。人のゲノ
ムが予想以上に早く解析された。ヒトゲノムは解析され、遺伝子改変は容易に
できるようになり、核移植クローンは霊長類でも成功してしまった。生命科学
の分野ではこの30年間に進歩しかなかった。しかし、まもなく、生命科学も他
の分野と同じく進歩が止まることになるに違いない、と仲野氏は予言する。

 釈撤宗氏は宗教についての30年間を振り返る。云うまでもなくオウム真理教
とイスラムの波が二大事件であった。「排他主義」がキーワードになろうか。
そこに暴力が存在するのである。そして宗教の問題はそれによって、まったく
他人事ではなく、無関係でも傍観者ではいられなくなる。そこに難しさがある。
伝統宗教は何千年かという時間を掛けて鍛錬に鍛錬を重ねてきた。その伝統宗
教はこの事態に対して何かをなさなければならないだろうと釈氏は結ぶ。

 最後に哲学者の鷲田清一氏は、この30年でふつうの人の所在が不明になった、
と云う。ひとつの行動規範、「常識=コモンセンス」がなくなり、当たり前が
そうでなくなる。そういう当たり前のことをしていたふつうの人がいなくなっ
たのだ。やはりここは人に頑張ってもらい、自分で考えないといけないだろう。

 総じて、平成の30年間で人は皆、考えなくなった。わかりやすい方、耳に心
地のよい方を簡単に選び、調べることはインターネットに任せてきた。それが
進化なのか、どうかは執筆子にはわからないが、それが進化ならそんな進化は
お断りだ。

 そして本書を読んで、感じたことはタフな頭でタフに考えないと令和の御代
は乗り切れない、ということだ。滅びるか生き延びるかは、まさに考えるか考
えないか、それにかかっている。


多呂さ(連日の猛暑、酷暑、炎暑。ご自愛ください)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ― 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510

・『支え合い・学び合いで育つ「わたし」』(エディット・パルク)
  http://web.kyoto-inet.or.jp/people/cogito/%8Fo%94%C5%88%C4%93%E0/%8Ex%82%A6%8D%87%82%A2%81E%8Aw%82%D1%8D%87%82%A2.html

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
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・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

 〒142-0041 東京都品川区戸越5-4-3 アズ品川ビル4階
       ビズナレッジ株式会社内 [書評]のメルマガ 献本 係

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンや楽天などのオンライン
 書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。つまり
 は当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願いしま
 す。(あまりにも短いものは書評とは呼べませんので、文字数の条件を設け
 ました。書評は500字以上でお願い致します。)

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 発行が遅れました。まさにお盆まっさい中ですね。
 
 台風も心配ですね。(あ)

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■コンテンツ
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★「トピックス」
→ トピックス募集中です

★「音楽本専門書評 BOOK’N’ROLL」/おかじまたか佳
→ #108『桃山ビートトライブ』

★「目につく本を読んでみる」/朝日山
→ 『アンゴルモア 元寇合戦記』むたかぎ七彦 角川書店

★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→ 今回はお休みです

★【募集中】献本読者書評のコーナー
→ 献本お待ちしています!

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#108『桃山ビートトライブ』

 音楽をテーマやモチーフにした小説は、音楽ミステリー、音楽SFを何度か
取り上げてきたが、音楽時代小説というのはなかなかない。

 以前紹介した、夢枕獏の『陰陽師』シリーズから生まれたCDブック、『蝉
丸 陰陽師の音』に収められた短編「蝉丸」ぐらいだろうか。

 本書は、その希な例であり、しかも短編ではなく堂々たる長編である。少し
前の作品だが、極めて貴重な一冊なので、ご紹介したい。

 タイトルは『桃山ビートトライブ』。桃山と言えば安土桃山時代。そこから
辛うじて歴史ものとわかるが、後半はカタカナ。しかも耳慣れない「トライブ」
なんて言葉が出て来る。

 一見正体不明のこの小説、天野純希が小説すばる新人賞を受賞したデビュー
作である。

 トライブは「部族」という意味だから、ビートトライブは「ビート族」と言
うことになる。一瞬、アレン・ギンズバーグやらジャック・ケルアックやら、
ビート派詩人を連想してしまうが、それとは何の関係もない。

 第一、桃山時代は豊臣秀吉が天下を取った時代。無論、当時の音楽にビート
なんて概念はない。

 しかし、激しいリズムの音楽はあったかも知れない。そしてそれは、後のビ
ートに近いものであり得たかも知れない。

 そんな大胆極まる空想を手がかりに、その時代の音楽にまつわる史実を巧み
にちりばめることで、著者は説得力に満ちた架空のビート・ミュージックを言
葉で紡ぎ出すことに成功している。

 演奏する「ビート族」は、こんな面々だ。

 まず、藤次郎。人様の物を盗むことで、辛うじて生き延びてきた孤児である。
それがひょんなことから、三味線を手に入れた。その頃時代の最先端だったこ
の楽器にはまった彼は、日本一の三味線弾きを目指す。

 次いで、小平太。父親は笛をつくる職人だったが、自分は笛を吹く笛役者を
目指し、家を出奔。出雲のお国の一座に入る。お国のモデルは、もちろん、実
在の人物であり、歌舞伎踊りの創始者とされる、出雲の阿国だ。

 そして、弥助。この男、和名だが、なんとアフリカ人である。モザンビーク
の漁村に生まれたが奴隷商人に捕まり、インドへ。そこで宣教師に買われ、日
本にまで辿り着いた。新し物好きの織田信長に引き取られたが、本能寺の変以
後、堺商人の下で通詞として働く。その時、やはりはるばるアフリカから流れ
着いた太鼓を手に入れ、子供の頃に習い覚えた本場仕込みのパーカッション・
プレイを聴かせるようになる。

 最後に、ちほ。童女の頃に出雲のお国を見て、自らも独学の踊りを始める。
また、喧嘩の達人でもあり、パンチとキックで男といえども簡単になぎ倒す。
十代になってある一座で踊るようになるが、当時の踊り子は娼婦でもあり、庇
護する武士や金持ちの夜伽を申し付けられて、大暴れ。一座を飛び出してしま
う。

 この四人が出会い、ビートトライブ、つまり、バンドを結成するのだ。

 しかも、いまで言うなら、フリー・インプロのジャム・バンドなのである。
フリー、すなわち自由。インプロ、すなわち即興。ジャム・セッションのよう
に決め事は何もなく、その場でひらめいたフレーズを応酬することで、ひとつ
の音楽を創り上げるスタイルだ。

 弥助の叩き出す強靭なアフリカン・リズムの上に、藤次郎の激しい三味線の
低音リフが絡み、小平太の笛が高い音域で奔放に跳ね回ると、そのサウンドに
合わせてちほが狂ったように踊る。

 この、画期的な音楽は、たちまち評判を呼ぶのだが……

 さて、物語にはふたつの対抗軸がある。

 ひとつは、ビートトライブ内の葛藤。それは笛役者の小平太と、残り三人の
対立である。

 小平太は家出などした割には小心な性格で、きちんと決められた譜面通りに
演奏することを好む。

 だから、始まったらどんな曲になるか、ミュージシャン自身にもわからない
自由な即興には居心地の悪さを覚えるのだ。

 これは著者が実際に音楽をやっているからこそ生まれた発想だろう。

 確かにミュージシャンは、自由に演奏したいと思いながらも、完全に自由だ
と不安になるものだ。

 不自由な音楽の典型はクラシックである。ほぼすべての音があらかじめ作曲
家によって決められている。それでも、同じ曲をポリーニとアルゲリッチとル
ビンシュタインが演奏すれば、それぞれ個性があるように、解釈の余地は存在
する。その微妙な差の創出に、音楽家生命を賭ける人たちがいる。

 一方、オーネット・コールマンが創始したフリー・ジャズのように、極力決
め事を排し、自由な、その場限りの即興にすべてを賭ける人たちもいる。

 もちろん、その両方の要素を持ち、不自由さと自由さの間を振り子のように
揺れながら、自分の音楽を創るミュージシャンが一番多いのだが。

 ともあれ、音楽的葛藤はバンド物の小説につきもので、『桃山ビートトライ
ブ』もまた、そのセオリーをきちんと踏襲しているわけだ。

 もうひとつの対抗軸は、彼らミュージシャンと、権力者との対立である。

 これは、時代小説ならではの葛藤と言っていい。

 悪役は石田三成。豊臣方の武将であり、戦よりも権謀術数に長けた能吏とし
て描かれている。

 秀吉が天下を取り、ようやく戦国の世が終わって平和が訪れたのはいいのだ
が、新政権は検地を行って農民を土地に縛り付け、刀狩りで抵抗の手段を奪い、
重税によって庶民を苦しめた。

 そうした政策の実行者が、石田三成だった。

 彼は戦乱の混沌から決別し、下克上のような無法が二度と起こらない、管理
され統制された社会を目指した。その一環として、ミュージシャンを忌み嫌っ
たのである。

 当時、音楽や芸能を生業とする人々は河原者と呼ばれたが、それは京都であ
れば鴨川の河原に小屋を掛けて、芸を披露し金を稼いでいたからだ。そしてそ
の河原という場所は、誰の所有地でもなく、時の支配者の権力すら及ばない治
外法権であった。

 当然、河原者は税を払わない。賦役にも応じない。戦があっても参加しない。

 そのような連中がはびこっているのが、三成にとっては目障りだったのであ
る。

 かくして三成が代表する豊臣家と、河原者たちの対立が生まれる。

 物語はふたつの葛藤を絡めながら、ビートトライブたちの運命を描いていく。

 しかし、こうして見ると、ふたつの葛藤は、結局「自由」をめぐる葛藤なの
だ、ということに気がつく。

 音楽における「自由」をめぐる、小平太vs.藤次郎、弥助、ちほの対立。

 そして、体制による支配からの「自由」をめぐる、豊臣家vs.河原者の対立。

 自由になりたい。

 訊かれれば、誰しもそう答えるだろう。

 不自由より、自由がいいに決まってる。

 しかし、自由は時として孤独を意味することもある。

 すべての責任が、我が身に降りかかってくることでもある。

 それは甘い幻想のような柔らかいものではなく、ひりひりするような苛烈さ
と厳しさを人に要求する。

 社会に守られることなく、野垂れ死ぬ自由もまた自由なのだ。

 それでも、そのようにしか生きられない人たちがいる。

 そんな彼らの名こそが、「河原者」であり、「ビートトライブ」なのである。

天野純希
『桃山ビートトライブ』
集英社文庫
2010年9月

おかじまたか佳

素人書評家&アマチュア・ミュージシャン

自由。そう言えば、現在の政権与党も、党名にこの言葉を掲げていますね。そ
の後に「民主」と続く以上、決して「自分たちの好き勝手に政治をする」とい
う自由ではないはずだが、どうも怪しい気がする。この号が出る頃は参院選。
あなた、投票に行きましたか?

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『アンゴルモア 元寇合戦記』むたかぎ七彦 角川書店

 日本のコミックの豊饒さは前から何度も指摘しているけども、これもその一
つと言えるだろう。文永の役を描いているのも異色なら、戦いの舞台が対馬な
のもこれまた異色である。今も続いている続編では、北九州が舞台になってい
るが、対馬の分の10巻だけで完結しても全く問題がない。

 元の軍隊は福岡に上陸する前に壱岐、対馬を襲っている。記録が残されてい
るのは、地頭の宗助国が討ち取られたということと、主人公の朽井迅三郎の由
来になっている人物がいたというだけで、あとは全て作者の創作らしい。

 スタートは玄界灘の嵐の中を行く囚人移送船。移送されているのは対馬に島
流しになった囚人たちだ。嵐に翻弄され、今にも転覆しそうな移送船の囚人た
ちは手を縛られている。このまま転覆したら助からないと役人に手枷を外して
ほしいと懇願する囚人たち。

 迷った末、役人は囚人の手枷を解いた。囚人の一人、朽井迅三郎は「オレな
ら外さない」とつぶやく。手枷足枷を外された囚人は、すぐさま反乱を起こし
て役人を海に放り出して逃げようとした。

 嵐が過ぎ、対馬に着くと、意外にも領主の娘、輝日姫がやってきて歓迎して
くれる。いったいなぜ歓迎されるかと訝る囚人たちは、間もなく対馬に蒙古が
やって来ることを知らされる。要は戦うために彼らは派遣されてきたのだった。

 とはいえ、犯罪者数十人程度では屁の突っ張りにもならない。対馬の領主と
その家来たちも、囚人たちなどたいした役には立たないと思っていた。そんな
夜に、密かに対馬に入っていた蒙古の先遣隊が輝姫を襲う。朽井は蒙古先遣隊
を撃退するが、先遣隊リーダーは「義経流」の使い手だった。朽井も義経流の
使い手である。

「なぜ蒙古に義経流の使い手がいるのか」そんな謎を残しつつ、物語は進んで
いく。対馬の様子を見にきていた福岡太宰府の主の息子少弐景資は、7日で援
軍を連れて戻ってくるから、朽井になんとか7日間、この島を守ってほしいと
依頼し、対馬を後にした。

 とはいえ、元の軍隊は強大で、対馬の手勢は200人もいない。勝てっこない。
そのため、いかに元の軍隊の侵攻を遅らせるか、彼らが日本本土侵攻に向かう
日まで持ちこたえることが戦略目的となる。地頭の家来たちと囚人たち、そし
て刀伊祓と呼ばれる防人の末裔たちの「一所懸命」の戦いが続く。

 そう、このコミックのテーマは、「一所懸命」なのである。対馬は島だから、
どこにも逃げ道はない。自分の居場所を守るために、今、生きているこの場所
を守るために全力を尽くす。このテーマがストーリーを貫いているから、誰も
かれもが死んでいく負け戦の陰惨な物語を最後まで読ませるのである。

 そんなことを書いていて、ふと思い出したのは、ハンニバル戦争である(紀
元前219年から紀元前201年)。ハンニバル戦争とも呼ばれる第二次ポエニ戦争
で、アルプスを越えてやってきたハンニバルはトレビアの戦い、トラシメヌス
湖畔の戦い、そしてカンネーの戦いで大勝利を収めた。共和政ローマは。とど
めを刺されたも同然となった。特にカンネーの戦いの敗北はひどいもので、こ
の戦いで多くの若者が殺されてローマに青年がほとんどいなくなった。

 そんな中でも、ローマは降伏しなかった。青年男子がいないなら奴隷を兵士
にして対抗する。年寄りだって女だって剣を持つ。それほど士気は高かった。
百戦錬磨のハンニバルの軍隊がローマの郊外までやってきてもそうだった。

 ハンニバルがこのタイミングでローマ市内を攻めていたらローマは滅んでい
たと言われる。ハンニバルもそれは分かっていただろう。しかしハンニバルは
ローマ市内を攻めることなく転戦していく。このときのハンニバルの判断ミス
が第二次ポエニ戦争の趨勢を決めたと言われる。

 なぜこのとき、ハンニバルがローマ市内を攻めなかったのかは謎に包まれて
いるが、強烈な抵抗を予想していたのは疑いない。一所懸命に畏れをなしたの
かもしれない・・・

 いや、待てよ。元とハンニバルを入れ替えたら、元寇合戦記は、日本のハン
ニバル戦争記みたいなものだとも言えるじゃないかと気がついた。

 文永の役(1274)というと、日本はやられ放題で神風に救われたと言われて
いるが、近年の研究では。実際は相当頑強に抵抗していたらしい。第二次元寇
となる弘安の役(1281)では、当時世界最大の艦隊が日本を襲ったが。日本側
の防備が堅かったため、ちょっとやそっとのことでは上陸できなかった。

 作者がどう思っていらっしゃるのかは知らないけども、そういう史実を鑑み
れば、「アンゴルモア 元寇合戦記」が、本当に日本版ハンニバル戦争記に見
えてくる。

 ハンニバル戦争を描いたリウィウスやポリピオスに匹敵する作品が日本で、
コミックとして生まれるかも知れない・・・・作者がこれ読んでたら、相当な
プレッシャーをかけるかもしれないが、そう思っているのだから仕方がない。
いや。圧力かけようと思ってるわけじゃないけどもw

(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)

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・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
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→<114>鉄と漫画と遠い昭和と

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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<114>鉄と漫画と遠い昭和と

 いしいひさいちの漫画に時たま登場する「セキカワ先生」をご存知だろうか。

 大学の先生であるセキカワ先生は、稚気と無邪気な我が儘に溢れる人で、学
会で出張するに際して、新幹線の切符どうしましょう? と尋ねてきた助手に
向かって、「席は窓際な。そして隣には、三十代半ばの人妻だ、これは絶対!」
と無理難題を押し付ける。

 そのセキカワ先生こと関川夏央の『汽車旅放浪記』(中公文庫)を、最近読ん
だ。
 既に中年を過ぎ老年に差し掛かった著者が、以前から鉄道趣味があったこと
を「含羞をこめて」告白し、小説や映画の中の「鉄道」シーンを通してその作
品を語ったり、あるいはそこへ出かけて行ったり、というエッセイ集。

 夏目漱石の「三四郎」が福岡県行橋から帝大入学のために上京するに際して、
行橋を「9時57分発」の列車に乗って、門司から連絡船で下関、「午後2時40分
発」の京都行列車で翌朝「6時25分」神戸着。
 終着の京都まで行かなかったのは、神戸始発の列車で座席を確保したいがた
めで、8時間後の「午後2時30分発」名古屋行きに乗車。
 この列車内で乗り合わせた女と、名古屋の旅館で同宿する羽目になる。その
翌朝、「あなたは余っ程度胸のない方ですね」と呆れる女と別れて東京行きの
客となり、夜の「8時02分」、ようやくに新橋に到着する。
 行橋を出てから丸々3日間の行程である。

 と、このように、夏目漱石はじめ、内田百痢太宰治、林芙美子や松本清張、
宮脇俊三などの文芸作品を、あるいは黒澤明や小津安二郎の映画を、「鉄道」
という視点で捕えて、読み解いていく。
 中でもセキカワ先生は、自らと同じく「含羞をもって」鉄道趣味を語る宮脇
俊三の視点がお好みのようで、その後の、やはり「鉄道」を軸にした著作『寝
台急行「昭和」行』(NHK出版)では、宮脇俊三その人になりきろう、としたフ
シも見える…ように思える。

 『汽車旅放浪記』でも触れていて、同じセキカワ先生の他の著作でも触れら
れていたのが、松本清張原作になる1958年の松竹映画『張込み』(野村芳太郎
監督)だ。

 指名手配の殺人犯が立ち回るはずの、彼の故郷に先回りして待ち伏せの張込
みに向かうべく、夜の横浜駅ホームに駆け上がってきた刑事二人が、すでに動
き始めている九州行きの列車に飛び乗る。
 警視庁の刑事二人が、始発の東京駅ではなく、わざわざ横浜から乗車したの
は、新聞記者たちの目をそらすためで、まんまと作戦は成功したが、途中駅か
らの乗車では、すでに座席は満席で、二人は、流れる汗をぬぐいながら、満員
の列車で座席と座席の間の通路に座り込み、揺れる車内の蒸し暑い一夜を過ご
す。
 夜が明けて、京都付近でようやく座席が空いて、刑事二人はほっと息をつく
のだが、まだまだ先は長い。
 列車は、山陽路をひた走り、関門トンネルを抜け、夜も遅くにようやく、目
的地の佐賀に到着する。

 この丸一昼夜の行程が、映画の冒頭、しかもタイトル前に、かなりの時間
(10分以上はあったと思う)を割いて延々と描写されるのだ。
 もちろん当時のこと、列車に冷房などはなく、二人の刑事も周りの乗客も男
性は皆、上着はおろかワイシャツまで脱いでランニングシャツ一枚となり、パ
タパタと扇子を煽いでは、暑さに耐える。乗客の中には、ズボンまで脱ぎ捨て
てステテコ一枚の親父も混じっている。
 天井の扇風機が、そんな車内の空気を気怠く掻きまわしては、長旅の憂鬱を
募らせる。

 この映画の、その冒頭シーンは、わしも30年くらい前のテレビ深夜映画で初
めて見て、強く記憶に残っていた。
 1950年代、東京から九州までの移動が、『三四郎』の時代ほどではなかった
にしろ、まだまだ大仕事だったことを実感させるシーンで、このシーンがある
ので、その後の「張込み」シーンもまた、強烈なリアリティを持ってくる。

 90年代に、この映画がTVドラマにリメイクされたものを見たのだが、そちら
は、九州佐賀ではなく、張込み先は栃木県に変更されていて、東京からやって
きた刑事二人は、東武電車で張込み先の町に降り立つのだ。
 思わず、「ダメでしょ、それじゃ…」とつぶやいてしまった。

 セキカワ先生の指摘を待つまでもなく、小説や映画では、「鉄道」や「列車」、
あるいは「駅」が、それ自体がテーマではなくとも、重要な役割を果たしたり、
象徴的なシーンとして描かれることが多い。
 翻って、漫画では、どうだろうか? というのが、今回の主旨。

 漫画と鉄道…と考えて、今回真っ先に思い出したのは、『クッキングパパ』
だった。
 1985年の連載開始当初、荒岩パパは、料理の腕前を会社ではひた隠しにして
いて、自分で作って持ってくる弁当も、「うちの奴」のお手製だとごまかして
いたのは、男子が厨房に入ることを潔しとしない九州男児のDNAか、はたま
たセキカワ先生や宮脇俊三の鉄道趣味と同じ「含羞」からか。

 荒岩パパがその料理趣味を周囲にカミングアウトして以降は、漫画の路線も
がらりと変わっていくのだが、まだそれを隠していた時期、荒岩パパは、勤め
先の「金丸産業」東京支社へ出張に赴く。
 飛行機が苦手な荒岩は、博多から東京まで、敢えて新幹線で向かうのだが、
この延々6時間に及ぶ車内での様子が、結構なページ数を割いて描かれていて、
やや疲労感をにじませながら、ようやくたどり着いた東京駅で安堵のため息を
漏らす荒岩に、ふと前述の映画『張込み』を彷彿したりも、したのだった。

 東京支社では、そんな荒岩の来訪を社員一同待ちかねていて、支社に到着し
た荒岩は、早速に「厨房をお借りします」と断ると、車内の湯沸かし室にこも
り、予て用意の博多豚骨ラーメンを手早く調理して、故郷の味に飢えていた支
社の皆に振る舞うのだ。
 この時にも確か、持参した半調理済みのラーメンは「女房が用意してくれた」
とわざわざ断りを入れていたと記憶する。

 このシーンもやはり、延々6時間かけてわざわざ、という描写がまずあった
ればこそ、ラーメンのシーンが引き立つのである。

 谷口ジロー『遥かな町へ』では、冒頭、二日酔いの主人公が、京都駅で東京
へ帰る新幹線と倉吉行きの特急を乗り間違えたことから、運命の歯車が回り出
す。
 いくら二日酔いで「ぼーっ」としていても、高架のホームから出る新幹線と、
古びた平面のホームから発車するディーゼル特急を乗り間違えることは、「ま
ずない」とも思えるが、それを不自然に感じさせずにすんなり読ませてしまう
のは、やはり谷口ジローの画力と構成力に負うところ大、と思う。

 つげ義春の漫画でも、鉄道は、印象的なシーンに描かれる。
 『ねじ式』の、漁村の狭い路地を「ゴッゴゴゴ」と突き進む機関車は、あま
りにも有名なシーンだ。

 『やなぎ屋主人』では、作者本人と思しき主人公は、新宿のヌードスタジオ
を出た直後、夜の街に流れていた高倉健の「網走番外地」に触発され、「房総
行の列車に飛び乗って」しまうのだ。
 あてもなく降り立った漁村の駅で紹介された寂れた旅館の、戦争未亡人であ
る女将を犯す妄想に耽った挙句、翌朝早くに旅館を出るのだが、その一年後、
この旅館を再訪し、彼のことなど覚えてもいない女将と言葉を交わした後、海
岸で猫と戯れる…というだけの物語だが、夜を行く車窓から見る黒い海や、通
過する小さな駅の木造駅舎の明かり、たどり着いた漁村の駅のすがれた風情、
海沿いの線路を轟音立てて行くディーゼル列車、等々が細密なペンタッチで効
果的に配されて、主人公のあてどなく行き場のない心情を暗喩する。

 実はこの漫画を読むまで、房総行きの列車が新宿から出る、ということを知
らなくて、その後東京に住み始めたころ、新宿駅のホームに、既に電車になっ
てはいたが、「館山行」急行列車がひっそりと佇んでいるのを偶然に見かけて、
「あ、これかァ!」と一人カンゲキに耽ったのだった。

 房総といえば、安西水丸がその少年時代をモチーフとした「千倉」シリーズ
でも、海の見える草原の向こうを驀進する列車が、象徴的に描かれていた。

 で、その他に…と考えてみたのだが、思いつかない。
 鉄道そのものをテーマにした漫画はあるのだが、そうじゃなくて、となると、
おそらくはあるのだろうけど、その数は極端に少ないのは、確か。
 映画や小説、あるいは歌謡曲なら、即座に思い浮かぶのだけどね。

 ちなみに、ちあきなおみの歌う「喝采」の一節、「動き始めた汽車に一人飛
び乗った」という部分。
 あれ、今の若い人の感覚では、動き始めた列車を、なんらかの方法で止めて、
車掌にドアを開けさせた上で「飛び乗った」と解釈するみたい。
 そもそも「機関車の曳く客車」が今やレアだし、「ドア開けっ放しのデッキ」
など見たこともないから、そうとしか解釈できないんだろうな。

 歌謡曲では、ザ・ピーナッツの「ふりむかないで」の「今ね、靴下直してる
のよ」というのも、ここでの「靴下」は「ストッキング」のことで、バックシ
ームがずれてるのを、スカートをちょっとたくし上げて直してる、といちいち
説明しないと分からないのだ。

 わしらの昭和は、加速を続ける列車の後方彼方に、ずんずんと置き去りにさ
れていってるのですね。

太郎吉野(たろう・よしの)
阪神タイガースお膝元在住。右投げ右打ち。趣味は途中下車、時々寝過ごし乗
り越し、最長不倒距離は三重県名張。
ちなみに「阪神タイガース」の「阪神」は、「兵庫県阪神地方」を指します。

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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96 生きていくために見つけなくはいけないもの

『ヒキガエルがいく』
申 明浩/広松由希子 訳 岩波書店

 力強い画風の絵本作家、伊藤秀男さんが題字を書かれている。
 文字からも気迫が伝わり、主人公(?)のヒキガエルは表紙にでんといて、
読者をじっとみている。強烈な表紙だ。
 
 本文の言葉はただ太鼓の音だけ。

 訳者の説明書きによると、韓国の仏教では、鐘は人間のため、太鼓は動物の
ため、木魚は昆虫のために鳴らすといわれているそう。

 カエルのための太鼓の音は、タン タタン だったり、トントントントン
だったり、ドンドン ダンダンだったり。音が腹に響く感じ。何匹ものヒキガ
エルが絵本の中で蠢いている。

 生の実感ある絵が続くので、緊張感がある。

 カエルといえば、我が家の前に広がる田んぼにもカエルがいっぱいいて、い
すぎて、3人の子どもたちは皆、苦手になってしまった。

 田んぼに水が入った日のカエルの鳴き声は毎年聞いても、驚くほどに厚みが
あり飽きることがない。昨日までどこにいたのだろう思うほどの賑やかさなの
だ。カエル嫌いの娘ですら、確かにすごいと聞いている。あの声には、生きて
いるエネルギーがあり、聞いているだけでも強く感じるものがある。

 この絵本は、そういうエネルギーのライブ感に満ちている。
 音や振動が聞こえてきそうで、ぜひ読んで感じてほしい。

 次に紹介するYA小説も強烈。

『ゴースト』
ジェイソン・レイノルズ ないとうふみこ訳 小峰書店

 帯文は「銃声がきこえたら、走れ!」

 ゴーストは走るのが得意な中学生。バスケをやろうと思っていたが、陸上チ
ームのコーチに誘われ、走りを選ぶ。

 もともと走るが速いのだ。
 特別な練習をしているわけではない。トレーナーについてもいない。
 しいていえば、こわい人のせいだとゴーストは思っている。
 こわい人から逃げるために走った3年前から、自分が早く走れることを自覚
した。

 チームの新人食事会には伝統がある。チームメートが知らない自分の秘密を
話すのだ。それぞれ、重ための秘密を抱え吐露することで、いい距離感がうま
れる。

 秘密は口に出すことで、相手との距離を縮めることがある。
 そうやって人と近づき、信頼がうまれるのはうれしいもの。

 厄介事をいろいろ抱えるゴーストが、走ることで、変化していく。

 大人目線ではコーチもかっこいい。
 いい大人が出てくる小説は、大人もたっぷり楽しめる。

 そして、次の紹介本、すずき出版の児童文学シリーズ「この地球を生きる子
どもたち」の新刊は安定の読ませる力をもっている。

『11番目の取引』
アリッサ・ホリングスワース作 もりうちすみこ訳 みうらし〜まる装画

 アフガニスタン難民のサミの物語。
 サミが難民になった背景として描かれるのは18年前の9・11の事件、家族の
中で生き残ったのは、サミと祖父の2人だけ。祖父はサミと共に、アメリカの
ボストンに渡る。

 祖父は有名なルバーブ奏者だったが、アメリカでは路上で演奏することしか
できない。演奏で得る金もアフガニスタンで得ていたものには比べることもで
きないくらいほんの少しだ。

 そんな経済と心の拠り所のルバーブが、ある日盗まれてしまい、祖父は慣れ
ない仕事をすることになる。サミはなんとかルバーブを取り返そうと、探し出
したものの、ギター店に売り出され700ドル稼がないと手元に戻ってこない。

 ついていないことだらけのサミだが、何かを失うときは、何かを得ること。
サッカー上手のサミに、友だちができ、彼らの助けをかりながら700ドルを目
標に動き始める。

 サミと祖父にとって何より大事なルバーブが手元にもどってくるのか、700
ドルもの大金が果たして一か月でつくれるのか。

 友人らの協力は現実的で、ネットの使い方もうまく、徐々に目標額に近づい
き、友情も深まっていく。

 作者はアフタニスタンに行き、自らの感じたこと、出会った人を物語に投影
した。翻訳されたことで、私たちが出会える世界があることに感謝したい。

 最後にご紹介するのは、季節の行事を楽しめる日本の物語。

 『とねりこ通り三丁目 ねこのこふじさん』
 山本和子 作 石川えりこ 絵 アリス館

 ねこのこふじさんは、職場でのイジメで心が疲れ、部屋でひきこもり。こふ
じさんのおばあさんは、自分の研究で世界一周に出かけるのを機に、留守番が
てら、こふじさんを住まわせることに。家賃は「月に一度、その月らしい行事
をすること」

 いっぴき暮らしを楽しもうとしていたこふじさんに、既にネズモリというネ
ズミさんも戸だなの中で暮らしていて、なんとなく同居暮らしがはじまる。

 4月のお花見にはじまり、七夕、花火……。よく知っている年中行事に、ネ
ズモリさんの豆歳時記コラムがおもしろくて、季節をあらためて見直してしま
う。

 四季を楽しめる生活の豊かさ、毎日仕事に追われていると、それは夢物語に
も思えてしまうけれど、疲れているときは、立ち止まって周りを見渡すことも
大事と素直に思える。

 さっぱりした甘くない絵も、物語にぴったりで、ねこのこふじさんという知
り合いができて楽しい気分になる。つかれている時に読みたくなる物語だ。


(林さかな)
会津若松在住。「本の雑誌」新刊めったくたガイド海外文学担当。
http://1day1book.strikingly.com/

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第114回 日本の歴史では、何が勝者を決めるのか

 今月も先月に引き続き、歴史の解説書、入門書をお届けする。

 日本の歴史を戦い、争い=価値観の衝突、利益の相反。という部分でみてい
く面白い入門書がある。

 そもそも日本の戦いの名称はおかしな名前が多い。「○○の戦い」や「□□
の乱」ならわかるが、「△△の変」「●●の役」となるとおかしくなってくる。
小学生のときから日本の歴史は勉強していて、子どものときは疑問も持たずに
教えてもらったことをそのまま鵜呑みするから、そのような呼び名でも特段に
おかしい、変だ、とは思わなかった。そしてそのような不思議な名称でも云い
慣れてしまい、使い慣れてしまうと疑問にも思わなくなる。あえて云えば、人
の名前のようなものだ。疑問に思わない。しかし、この名称をあらためて思っ
たとき、それらはなんと不思議な名称なのだろう、と考え始めた。本書のタイ
トルを目にしたとき、そんなことを思ったわけだ。

 天下分け目は「関ヶ原の戦い」であり、室町時代の内乱は「応仁の乱」。織
田信長が殺されたのは「本能寺の変」であり、奥州での争いは「前九年の役・
後三年の役」という名称になっている。いったい、その差はなにか、戦いの規
模か、それとも後世への影響力の大きさか。

 今回紹介する書物は、このような日本史上の戦いの名称に対する疑問から始
まり、その戦いが日本史のターニングポイントになったのではないか、という
ものを選んで、その戦いを俯瞰した上で、歴史上の影響をみていく、という作
業している。

『乱と変の日本史』(本郷和人 著)(祥伝社)(祥伝社新書)
(2019年1月30日)

 著者は、気鋭の中世史の研究者。その著者、本郷和人さんに因れば、本来戦
いの分類は厳密に学術的に行えばよかったが、そうはなされず、多分に感覚的
になっている、という。執筆子もそのとおりだと考える。そして、本郷さんの
感覚では、戦いの規模で、名称を分類するのならば、「戦争」→「役」→「乱」
→「変」→「戦い」の順番で規模が小さくなっていくようだ、と云っている。

 本書では、日本史上の代表的な戦いの名称である「乱」と「変」の名称の付
く、戦いを考察して、それが日本史上にどのような影響を及ぼしたかをみてい
く。
 紹介している戦いは以下の10こ。
 「平将門の乱」「保元の乱、平治の乱」「治承・寿永の乱」「承久の乱」
「足利尊氏の反乱」「観応の擾乱」「明徳の乱」「応仁の乱」「本能寺の変」
「島原の乱」。

 それぞれに特徴があり、その戦いが起こった理由、そしてその戦い後の様子
をみて、日本の歴史がどのような道をたどったかを考えている。将門の乱で律
令制が崩れ、武士の勢力を無視することが困難となり、保元平治、で武士が主
役の時代が始まり、治承寿永で政権は都以外に置かれることになった。尊氏は
政権を都に戻したが、権力が分散していたため政権が不安定であり、政権に権
威と統率力がないため、室町期を通じて様々な戦いが行われる。最大の内乱で
ある応仁の乱後は土地の排他的所有という概念が生まれた。天下統一を目指し
た信長は人の持つ土着性や郷土愛を蹂躙したので暗殺された。島原の乱はキリ
シタン一揆というよりも、平和と平等の争いであり、平和を求める人々の思い
が平等を求めた一揆側を凌いだ、ということだという。

 こうしてみると、日本史上の戦いは、その時、その時代において、社会的に
より高い利益を生むと思われる側が勝利している。武士の時代が到来したその
ときには平清盛は輝いていたが、平家は守旧派の朝廷に同化して、武士の利益
を代弁しなくなった時点で歴史の表舞台から退場した。揺れ戻しは不可能とい
うことが自覚され(承久の乱)、その後の300年くらいは互いに権力闘争によ
り不安定期となる。どちらが時流に乗っているかはわからないくらい混沌とし
た時代が長く続いた。それでもずっと武士の時代は変わらなかった。統一政権
後の混乱を収め、武士の時代は続くが、その武士の時代を終わらせたのは、
1877年(明治10年)の西南戦争、ということになる。

 歴史では、必要とされた者が勝ち、用済みの者が負ける。それが歴史の必然
なのだ。
 あざやかなタッチでぐいぐいと読者を日本史の世界に引きずり込んでいく。
とにかく面白かった。一気に読める。

 日本の歴史は、この国の国土が豊かで外敵の侵入がすくないため、穏やかに
ゆっくりと進む、と云う。天皇制は1000年以上前から不変だ。それでも、国内
でこれだけの戦いが繰り広げられている。
 歴史はとてもおもしろい。


多呂さ(参議院選挙。皆さん投票はしましょう)
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さい。

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・『ヒューマン ― 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510

・『支え合い・学び合いで育つ「わたし」』(エディット・パルク)
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越されてる感が満載です。もう、びゅんびゅんです。(あ)

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#107『ひとり』

 前回の小説『ソロ』に続き、今月は『ひとり ALTOGETHER ALONE』。

 一人つながりではあるが、でも、小説ではない。一風変わったディスク・ガ
イドである。

 帯にこう書いてある。

「ひとりでつくられたおんがく

 ひとりのふんいきをもつおんがく

 さらにはひとりとは?をといかけるおんがくのほん」

 編・著はGAZETTE4。かつて「あまりの行き過ぎに世の中から無視された音楽!
アーティストの思い入れが強すぎて、既成のジャンルからはみ出した音楽!」
(チラシ・コピーより引用)を<モンド・ミュージック>と括って紹介し、こ
の言葉を音楽好きの間に定着させたチームである。

 それがここでは、「ひとり」をテーマにディスクを選び、短いコメントをつ
けて一冊の書物をつくった。

 さほど大きな本ではないのに、1ページに4枚もディスクを詰め込んでいる
から、コメントは本当に短い。しかも、ストレートに音楽の内容を紹介してい
る文章ばかりではない。

 例えば、

「父さん窓の補強に余念がない台風上陸1時間前。突然の停電で真っ暗闇。用
意しておいたロウソクに火を灯してじっとする。バタンバタン。外では何やら
エライことになってるらしいけど、ここだけは安全。キャッキャとハシャぐ子
どもたち。揺らめく影絵。ふと気付けば台風通過。ふと気付けば父さん、焼酎
片手にベロンベロン。」

 これがTHE BLACK HEART PROCESSIONというミュージシャンの『2』というア
ルバムのコメント全文である。

 どんな音楽なのか、まるでわからない。「ひとり」とも関係ないようだ。だ
って家族と一緒だし。

 しかし、こういう台風の夜、妙に心が躍った経験は誰しもある。いや、昭和
世代だけ? ま、ともあれ、その時のことを思い出すと、あれはやはり世界か
ら隔絶された「孤立」の経験だったなぁ、と思う。

 ポイントは、「外では何やらエライことになってるらしいけど、ここだけは
安全。」という一文にある。家の中に閉じこもることで、世界を切り離してし
まう。しかしそれは決して恐ろしいことでも、寂しいことでもなく、むしろ何
やら楽しい。ワクワクする。だから子どもたちはハシャぎ、父さんはベロンベ
ロン。

 「ひとり」には確かにそういう一面もあり、この、日本語で「黒い心の行列」
という名のバンドらしき人たちの音楽には、まさにそんな、ときめく孤立の感
覚があるのだろう。

 あるいは、

「打ち捨てられた廃屋。そっと忍び込むと、そこにはチューニングの狂ったア
ップライト・ピアノが1台。フワフワと浮かぶ埃は、外から入ってくる陽の光
に切り取られる。掛かっているカレンダーは去年の物。そこには誰もいない。
無音。耳鳴り。そのままじっとしていると聴こえてくる歌がある。それはこん
なレコードかもしれない。」

 こちらはぐっとわかりやすい。なぜなら、ここに描写された廃屋の情景は、
ジャケット写真を言葉にしたものだから。最後の一文で、音楽の中身にも一応
着地している。

 ひとり忍び込んだ廃屋。誰もいない無人の空間。でも、かつてそこに人が暮
らしていた気配だけが、未練がましく漂っている。

 そんな廃屋の空気は、どういうわけか、ひんやりしているイメージがある。
熱帯の国にも廃屋はあるはずなのに。

 廃屋マニアなら、このディスク、ぜひ聴いてみたいと思うだろう。

 ちなみに、THYMME JHONESの『CAREER MOVE』というアルバムである。

 ひとり論に終始して、直接そのディスクの音楽的内容に触れていないコメン
トもある。

「他人が一生懸命、自分について歌ったものを聴いて「何が面白いんだ」と言
うひとが本当にいる。それは、そうかもしれない。けれど寂しいひとだ。他人
の人生を自分の人生に照らしあわせて「ひとりではない、ああ、みんなひとり
なのだ」と思うことで、少しでもやってゆけるのに。センスある生き方だ。そ
れを知っているひとは…。」

 ひとり論と書いたが、これはリスニング論でもある。音楽の聴き方に関する
ひとつの考察という意味で。

「「何が面白いんだ」と言うひとが本当にいる。」

 この「本当に」が、いい。自分とは音楽の聴き方がまるで違う人がいること
を知った、驚きがある。

 それでも、このコメントが添えられたNATALIE MERCHANTの『OPHELIA』とい
うアルバムが、「自分について歌ったもの」であることは十分伝わる。そして
「センスある生き方」を知る人は、これを読めばこのアルバムに心惹かれるだ
ろう。

 全体は3部に分かれている。

 SWEET,MILD,BITTER

 ひとりの「甘さ」と「柔らかさ」と「苦さ」をテーマに、ディスクが分類さ
れている。

 USA、カナダ、ブラジル、フランス、ドイツ、そして日本。主にはそんな国々
のディスクたち。

 聴いたことのないミュージシャンから、シカゴとかビートルズとか、メジャ
ーなアーティストまで。

 一気に通読する本ではない。

 毎日、2、3ページずつ、ちびちびと読む。

 たまに、持っているディスクが登場すると、棚から引っ張り出して、聴いて
みたりする。

 大半の、持っていないディスクの音は、想像する。

 どうしても気になったら、Youtubeで探したりする。

 すると、「ひとり」の多面性が、少しずつ少しずつ、心に浸透していく。

 

GAZETTE4編・著
『ひとり ALONE TOGETHER』
1999年12月15日 第1版第1刷発行
アスペクト

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン

カンニングをしてしまいました! と言っても、いまさら大学受験をしたわけ
ではなく。またもや月光グリーンの話題で恐縮ですが、彼らの『夢の粒』とい
う曲がやりたくてCDを繰り返し聴いたのに、どうしても一部のコードがわか
らず、適当に合うやつで誤魔化そうか、とも思ったけど、ライブに行った時本
人たちにダメもとで訊いてみたら、いやいやそれは企業秘密だから、と断られ
るかと思えば、懇切丁寧にばっちり教えてくれたというお話。

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■「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
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妻子ってそんなに偉いの?と思ったときに読みたい
『恋愛達人の世界史』(中央公論ラクレ新書 上村くにこ・著)

 最近、テレビを見る時間が少なくなっているおばちゃまですが、それでもチ
ラ見すると、不倫疑惑?っていうの? 二股っていうの? そういう、家庭が
ありながらほかの異性と関係を持つ有名人を糾弾するワイドショーが目につき
ますね。

 なんか、大の大人が泣きながら謝って「妻子に悪いことをした」って言って
るの。まあね、貞節は結婚の条件ですから悪いことは悪いのは間違いない。

 でも、ごめんなさいごめんなさいって泣いて謝っている姿を見ると思うのよ、
妻子ってそんなに偉いの?って。おばちゃまも妻だったり子だったりするから
パートナーや親が不倫したら怒るとは思うけれど、こんなに河原に引き出され
て世間から石つぶてを投げられるような仕打ちを受けないといけないの?って
思います。

 で、思い出したのがこの本『恋愛達人の世界史』です。実は私もかかわって
たので今回はPRになるけれども、2006年発刊の古い本だから許してね。

 この本の中の4章に「ロマンチックラブ誕生」という章があります。18世紀
のヨーロッパで誕生した、小説の中で展開される理想主義的な恋愛=ロマンチ
ックラブは、変遷して「恋愛とセックス、結婚は一致しなくてはいけない」と
いうルールとともに確立され、20世紀には人としてあたりまえのパターンにな
りました。今は、形骸化しているとはいえ、しっかりインプットされているの
です。

(私が思うに、恋愛とセックス、結婚の三位一体に加えて、結婚を由来とする
出産とか育児も一体化しているからさらにややこしくて、タイトに人を縛るよ
ね)。

 このロマンチックラブの成立をもって、結婚するには恋愛が必要で政略結婚
などはもってのほか。セックスは恋愛したカップルにのみ許されそして恋愛し
たらそのゴールは結婚でなくてはいけないというルールが確立したわけです。

 この思想はアメリカに渡って恋愛した2人が障害を乗り越えて結婚するハリ
ウッド映画になり、日本のカップルは、「自分と排他的にデートして持続的に
セックスしひょっとしたら結婚を視野に入れてほしい」という意味で告白して
つき合うスタイルを維持するわけです。(だから恋人ひいては夫や妻が浮気す
ると死ぬほど怒るってか、怒る権利があるんですね)。

 そもそも恋愛とは、スタンダールに言わせると「崖に咲いている花を摘み取
ろうとする命がけの行為」であって日常生活とは相いれないものです。

 著者は別の本で、恋愛の最高潮は最初にキスする直前で、それ以降はだらだ
らと日常に下りていくだけと言っています。つまり、門限の5秒前にキスする
カップルを描いた広末涼子の「マジで恋する5秒前」は正しい恋愛のあり方と
いうわけ。竹内まりあ、わかってますね。

 著者(上村くにこさん)は言います。

「恋愛を家庭の中に持ち込み、家庭の要とし、人が永遠に家庭で日常生活を営
みながら恋愛を持続する理念を考え出したのが恋愛結婚です。一瞬の命がけの
行為と日常生活を両立させようとする試みですから、それはまるで氷を油で揚
げようとするようなものです」

 氷を油で揚げるって……言い方!(笑)

 つまり、恋愛結婚して永遠の恋を誓い、日常生活を営む中でも恋愛を継続す
るのはムリちゅうもんやと言うわけで、ある種、あったりまえのことですね。
ロマンチックラブがいかに人の本性と相反するものかがわかります。

 このように恋愛と結婚の歴史をたどっていくと、今、私たちが信じこんでい
る結婚制度とか恋愛至上主義とかの歴史が浅く、人生を賭けて守らないといけ
ないルールですらないことがわかって興味深いです。

 「妻子に申し訳ない」と泣いて謝る有名人もすごい罪悪人ではないことを伝
えるためにこの本をプレゼントしてあげたいですね。

 この本では、ギリシャ時代には恋愛は突然の災難だと受け止められていたと
か、キリスト教においては信仰の妨げ、中世ヨーロッパでは恋愛は修業と捉え
られていたとか、その修業という考え方が韓流ドラマの根底に流れていとかお
もしろい話がいっぱいですよ。恋愛に悩む人を解放してくれると思うのでご一
読くださいって…結局宣伝かい! よろしく〜。

大友舞子(おおとも・まいこ)
昭和20年代生まれのフリー編集&ライター。関東生まれで関西在住。

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『ストーカーとの七〇〇日戦争』内澤旬子 文芸春秋

 内澤旬子氏とは、多少縁がある。2002年に出した拙著『農業に転職する』の
イラストレーターが、内澤氏だった。会ったことはない。

 ま、それはそれとして、後にイラストレーター、ライターとして有名になら
れるのは想定内だったのだけど、ストーカー事件の当事者になられるのは想定
外である。手記が週刊文春に連載されていたのは知っていたので、書籍化され
たと同時に買った。

 一般にストーカーと言うと、知らないうちに目をつけられて尾行され、密か
に住所や電話番号、メールアドレスなどを入手されて「あなたのことずっと見
てます」とか「今日は何色のパンティーはいてるの?」とか、姿を見せずに気
色悪いことを言う奴だと思っていたのだけども、内澤氏が対峙するストーカー
はそんなのではなかった。

 もともと付き合いがあった人が、別れ話を持ち出すとストーカーになってし
まった。それも気味悪いだけでなく、周囲の他人も巻き込むと脅すものだから、
さらに質が悪い。

 それで警察に相談するのだが、最初は痴話げんかだと見たのか、やる気が見
えなかった警察。それが、急に顔色を変えて、持って来たのがマグショット
(逮捕された時に撮られる上半身の写真。アメリカのがよく知られるが日本で
もあるらしい)。マグショットを見せられて内澤氏は、ストーカーにそれまで
偽名を使われていたことを知るのである。犯罪歴もあった。

 これは通らない。内澤氏から一方的に別れを切り出されても文句は言えない
と普通の人なら考える。しかし、ストーカーは違うのだ。とはいえ、普通は警
察が注意したら事足りる。というか、大部分はそれでストーカー行為も止まる
ものなのだが、内澤氏の場合は止まらなかった。

 それで、いったんストーカーは逮捕されるのだが、この時内澤氏は和解を希
望してしまう。実刑をくらうとストーカーは出所した時に恨みを募らせてまた
やってくる可能性があるから、恨みを買わないために「許した」のである。

 しかし、そんな努力は全く無駄だった。和解条項として付けていた条件は簡
単に破られた。そしてネット上で大量の誹謗中傷を書き込まれる。もちろん契
約違反だから賠償請求が出来るわけだが、生活保護受けているから取れないよ
とうそぶく始末。そのうえ弁護士も(面倒な)仕事がおわったと言うことで、
賠償請求もしてくれない・・・

 これ、ホントですか?と思えるほど、ひどい話である。そこから本格的に内
澤氏の戦いが始まる。読み進めていくにつれて、ストーカー対策について、制
度が追いついていないというか、まだまだ未整備なのがよくわかるようになっ
ているのは、さすがプロの仕事であるといっていい。

 もっとも、遅々としてでも整備は進んいるようで、この事件の期間中にもS
NSの書き込みもストーカー犯罪の対象にならなかったのが、なるようになっ
ている。

 しかし読んでいて気になるのは、内澤氏、なんだかんだと言っても人が優し
いのが弱点になったのではないかと私には思えた。読んでいて、あの時もう少
し丁寧に別れ話をもちかけていればとか、もう少し話し合いを丁寧していれば
こうはならなかったののではないかといった内澤氏の後悔の言葉がちょくちょ
く出てくる。

 けど、もしそんな努力がうまくできていても、こうなることは避けられなか
ったのではないかと思う。言い換えれば、優しいからつけ入られるのであって、
冷酷な人の方が、かえって自分を守れる。しかしそんなこと、冷酷な人にしか
見えないことだし、できることではない。

 メンタルに問題がある人は、私も何度かかかわったことがあるけども、丁寧
な話し合いとかしようとしても、あるいはしても無駄なことがままある。むし
ろ頭から押さえつけた方が良いケースもあった。

 しかしそれでも押さえつけることができたのは私が男で、基本「強者」だか
らであって、同じことを女の内澤氏に要求など無理である。内澤氏はできる限
りの努力をして、ベストを尽くしたように思えた。しかし、そんな努力が通用
する相手じゃないなら、努力は無駄骨に終わる。

 かくて内澤氏の戦いは続き、結局ストーカーはまた逮捕され、刑務所に入る
ことになった。そして今は刑期を終えて出所している。内澤氏は「小早川先生」
という盾を得て、現在は以前よりは精神的にラクになっている。とはいえ、ス
トーカーがまた活動を始める可能性は消えておらず、今も恐怖と折り合いをつ
けて生活していかざるを得ない。

 特に内澤氏のような知名度のある人は、ストーカーから隠れることが基本的
に難しい。住所を隠したりはできなくもないが、限度がある。一般人のように
姿を隠すことが基本できないから、たとえば読者イベントなどで姿を見せる時
には、待ちぶせされる危険性もある。

 内容が内容だけに、読後感のよい本ではない。しかし考えさせられることが
多い本である。

(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)

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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
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・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ─ 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510


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 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンや楽天などのオンライン
 書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。つまり
 は当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願いしま
 す。(あまりにも短いものは書評とは呼べませんので、文字数の条件を設け
 ました。書評は500字以上でお願い致します。)

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 恋愛とストーカーが共存する今号のメルマガは、ジューンブライドでお馴染
みの6月にお送りしております。

 そういえば、山ちゃんと蒼井優の婚約は、令和最初の衝撃でしたね。(あ)

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[書評]のメルマガ vol.678

■■------------------------------------------------------------------
■■ [書評]のメルマガ                2019.06.10.発行
■■                              vol.678
■■ mailmagazine of book reviews           [健全な社会 号]
■■------------------------------------------------------------------
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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<113>『空母いぶき』とミルクセーキ

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→96 ファンタジー世界

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第113回 歴史を理解するセンスを磨くためには・・・歴史との付き合い方

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<113>『空母いぶき』とミルクセーキ

 3月、スっ転んだ拍子に、左足甲にヒビが入った。ギプスを巻かれたので、
松葉杖生活を送っていた。
 ようやくに、あと1週間ほどでギプスも外せる、という4月下旬、松葉杖の
バランスを崩し、階段を転げ落ちた。
 「あちゃちゃ、こけちゃいましたよ」と、松葉杖を支えに、大丈夫な方の右
足で立ち上がろうとしたのだが、その右足に力が入らず、立ち上がれない。

 救急車を呼んでもらい、病院でレントゲン撮った結果が「折れてますね〜〜、
ポッキリと」だった。
 両足ギプスの有様となり、即刻入院。翌々日に、折れた右足の手術を受けた。

 入院当初は、自分のドジを呪い、絶望的な気分にも襲われたが、過ぎたこと
をクヨクヨしても始まらない。
 これもまた何かの縁と、入院生活をなんとか前向きに過ごすことにこれ努め
……とゆーても、結局は普段よりも若干多くの本を読み、普段見ないテレビを
よく見ていた、ってほどの入院生活だったのだが。

 おかげさまにて、テレビを通じて「令和」改元へのバカ騒ぎと、浮かれポン
チの皆様の行状も、あれこれと見ることが出来ました。
 安部チンゾー首相が、4月30日の「退位礼正殿の儀」において、退位する天
皇皇后に面と向かって、「早く死ね」と声高らかに申し上げるところも、つぶ
さに見ておりました。

 あれ、官邸としては「なかったこと」にしてるらしいが、「国民の代表」と
しての挨拶なのだから、きちんと訂正しておいた方が、後々のためにも「ええ
ンとちゃうン?」と老婆心ながら思ってしまう。
 映像は、そのまんまで後世に残るわけだし。

 入院してる間に、これまた総理アベチン絡みで、なにやらキナ臭い騒動が巻
き起こっていた。
 かわぐちかいじ原作になる『空母いぶき』が映画化され、その公開が迫る中、
主要キャストの一人で作中では「垂水首相」を演じる佐藤浩市のインタビュー
での発言が、「けしからん!」とプンスカ青筋立てて怒る人たちが大勢出現し、
おかげで佐藤浩市は、公開初日の舞台挨拶にも立てなかったらしい。

 どんな発言だったのだ? と退院後に当該の雑誌、ビッグコミックを買って
読んでみた。
 なんてことないインタビューである。
 佐藤は、映画の中で大きな決断を迫られる首相を演じるにあたって、「スト
レスに弱くて、すぐにお腹を下してしまう」という設定にしてもらった…とい
う、そのくだりが、実際に腸に持病を持つアベチンを彷彿させ、「現職総理を
揶揄している」と、ある種の人々の怒りを買い、主にネット上での攻撃にさら
されているらしいのだ。

 「すぐにお腹を下してしまう」設定は、現職のアベチンを念頭に置いたに違
いない、と思う。
 インタビュー時には、その同じ持病を持つ総理を、多少なりとも揶揄する気
持ちもあったと思う。

 しかし、である。
 いつから、この国では、現職の総理は「揶揄してはいけない」存在になった
のだ?
 アベチンは、もはやあの「偉大なる指導者将軍閣下」同様、不可侵の存在な
のか?

 この件で、つい思い出したのは、一昨年の「小学8年生」(小学館)炎上事
件だ。
 この中の連載漫画『まんがで読む人物伝』(藤波俊彦)が、「第4号」誌上
で「安倍晋三」を取り上げたところが、その描きようが「悪意に満ちている」
「作者の偏見が反映されている」と非難轟々、雑誌のツイッターが大炎上して
しまった、というもの。

 この時にも、「どんな漫画やったん?」と当該の第4号を、わざわざアマゾ
ンで取り寄せてみた。
 なるほど、この描きようは、間違いなく「悪意だ」と思った。
 悪意のある毒でアベチンを貶めながら、その少年時代から現在までを短くも
克明に描いている。
 しかし、きちんと最後まで読めば、悪意と毒をまぶされてはいるが、その悪
運の強さや、数々のスキャンダルにもめげず、厚顔で押し通すところなど、一
応はリスペクトもされているのがわかる。

 ご興味がある方は、「小学8年生・藤波俊彦・安倍晋三」と検索すれば、今
なお非難轟々のブログやツイッターやサイトが、沢山ヒットして、漫画の画像
も見られます。

 そもそも、悪意や毒があってこそ、漫画なのだ。
 これを批判する人たちの言に従えば、小学生向けの雑誌に、現職の総理大臣
を悪意でもって誹謗するような漫画は許されず、美辞麗句並べ立てて褒め称え
ねば「いけない」ようだが、ンな漫画、誰が読むのだ。
 小学生だって…というか小学生ならばこそ、ンなつまらん漫画にはソッポ向
くだろう。

 歴代総理は代々、それぞれの時代で風刺やパロディーやからかいの対象であ
り続けてきた。
 佐藤栄作は、赤瀬川原平『櫻画報』の中で、アメリカという鎖に繋がれてい
る、物欲しげな番犬のブルドッグに描かれた。
 及川正通…だっけな? 記憶が定かでないのだが、田中角栄は首相当時、パ
ロディー漫画の中で裸の下半身を露出して登場し、傍らに侍る半裸の妾に、尻
をぼりぼり掻きながら、卑猥な言葉を投げかけていた。

 中には、パロディーや風刺というよりも、単なるギャグ…が滑って下品に堕
ちたものも数あったが、人は、それを見て眉をひそめはしても、血相変えてそ
の作者を糾弾したり、ネットで…って当時ネットはなかったが、抗議に走った
りすることはなかった。

 総理大臣に限らず、権力は、江戸の昔からパロディーやギャグの対象とされ
てきたし、それができてこそ、健全な社会といえるのではないか。

 我がニッポンを含めて、今や世界中にポピュリズムの旋風が吹きまくってい
る。
 アベチンを揶揄することを許さないのも、この勢力だ。
 かつてヒットラーとナチスを熱狂的に迎え、軍国日本の進撃に狂喜していた
のもまた、ポピュリズム勢力だった。
 そんなポピュリズムの圧倒的な支持を得た権力が、次に繰り出したのが権力
に対する批判勢力の弾圧と言論封殺であり、そして、その後に何が起こったの
かを、我々は忘れてはならん、と思う。

 英国のポピュリズムは、EUからの「合意泣き離脱」に向かっているようだが、
今、これを声高に訴える指導者たちに、ミルクセーキをぶっかけることで、
「NO!」の意志を示す「ミルクセーキ運動」が、にわかに活発になっているそ
うだ。
 ミルクセーキ……なんともみっともなく、気弱で情けない「抵抗」ではある
が、間もなくある参院選挙(「ダブルかも」と言われてるが)では、我々もま
た、ミルクセーキを持って候補者の演説に臨むのも、一考かもしれない。

 ところで、映画『空母いぶき』だが、まだ見ていないのでなんともよう言わ
んが、原作からは、かなり改変されているとか。
 原作の漫画は、領有権を主張し、突如南西諸島への侵攻を開始した中国軍に
対して、外交交渉の決裂の後、首相が防衛出動を発令し、海上自衛隊で新造さ
れたばかりの空母「いぶき」を旗艦とする艦隊が、これを迎え撃つ……

 という内容なので、「9条改憲派」などには歓迎を持って迎える向きもある
らしい。
 しかし、作中の「垂水首相」、映画では佐藤浩市が演じているその首相は、
アベチンと違って、「改憲」のカの字も口にしない。
 あくまでも現行憲法の下で、専守防衛に徹して、戦いを進めようとする、そ
の姿勢は、現場の自衛官たちにも共通で、すなわちこれは、「護憲」漫画でも
あるのだ。

 かわぐちかいじは、デビュー以来、数々の作品の中で「日本と日本人」をテ
ーマとする作品を、多く手掛けてきた。
 初期のころの『血染めの紋章』や『黒い太陽』から、近年話題になった『沈
黙の艦隊』や『ジパング』に至るまで、その歴史観と政治的スタンスは、一貫
して変わることがなかった。
 『空母いぶき』は、そんなかわぐち史観と、日本及び日本人論の、集大成と
なる漫画になる、はずだと確信する。


太郎吉野(たろう・よしの)
阪神タイガースお膝元在住。右投げ右打ち。趣味は途中下車、時々寝過ごし乗
り越し、最長不倒距離は三重県名張。
ちなみに「阪神タイガース」の「阪神」は、「兵庫県阪神地方」を指します。

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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96 ファンタジー世界

 朽木祥さんは追いかけている作家のひとり。
 2年ぶりの書き下ろし作品とくれば飛びついてしまうのは私だけではないは
ず。

 『月白青船山(つきしろ あおふねやま)』(岩波書店)

 予定していた海外旅行がフイになり、兄弟ふたりで鎌倉の大叔父の屋敷で過
ごすことになるのだが、まずは、時をさかのぼる1188年のプロローグ。
 瑠璃の石を白猫に預ける若者について語られる。当然、深い事情が読み取れ
る。そして時は現代の鎌倉にうつり、主税(ちから)と兄の兵吾、そして大叔
父さんの近所に住む少女、静音の3人が一夏の異世界に足を踏み入れていく。

 端正な文章で、現代とプロローグの時代をいったりきたりするのだが、ごく
自然に過去と現代がつながり、それはまるで”時”を串にすっと刺してたかの
ようにすっきりしている。

 夏休みという子どもにとっての非日常に、瑠璃の謎というミステリ的要素も
あり、謎ときの冒険物語でもある。

 君野可代子さんの装画・さし絵もすばらしく、物語舞台の大事なシーンをよ
り印象づける。特に、枝垂れ桜の絵はハッとさせられた。

 現代に書かれた王道の児童文学なのだが、朽木さんの文章は古典のような落
ち着きがあるからか、大人の読み手にとっても、読みごたえがある。これから
の夏の季節に読むのもぴったりだ。

 さて、次に紹介するのはノンフィクション絵本。

 『ドーナツのあなのはなし』
 パット・ミラー 文 ヴィンセント・X・キルシュ 絵 金原瑞人 訳
 廣済堂あかつき

 ドーナツのあなはどうしてできたのか?
 これは、ドーナツのあなを発見した人のお話なのだ。

 ドーナツはあまりにも身近なおやつなので、最初から穴があるものかと思っ
ている人の方が多いのではないだろうか。

 私もこの絵本を読んで、初めてドーナツの穴のことを知ったひとり。

 1844年、13歳だったハンソン・グレゴリーが海で働くところから話ははじま
る。彼は16歳のときには船でコックの助手をしていた。船の朝食に出るのは、
毎日同じ。パン生地をまるめて、ラードであげたもの。それはいつも、なかの
方は生のままでベトベトしていて、水夫たちにとって美味しいとはいえないし
ろものだった。そこで、ハンソンは考えたのだ……。

 絵本では、おもしろい話が好きな水夫たちがつくったドーナツ発明話もいく
つか紹介され、ドーナツのうんちくを蓄え(!?)られる。

 また、巻末にある「その後のドーナツとグレゴリー船長」もへぇと唸る逸話
が書かれていて、最後の最後まで読ませる内容となっている。

 もちろん、読んだあとはドーナツが食べたくなることも必須だ。

 最後にご紹介するのはおフランスからのユニーク絵本。

 『はなくそ だいピンチ!』
 『はなくそ ゆうかいじけん』
 マルジック&モリー さく・え ふしみみさを やく 汐文社

 「とびだせ はなくそ!」シリーズで2冊まで刊行されていて、タイトルを
読んだだけで、え、はなくそってアノはなくそ?って頭に疑問符が。
 そう、まさにその「はなくそ」絵本。

 どの人の鼻にもあるものを、ユニークにデフォルメし、擬人化されたはなく
そたちが事件を起こす。

 小さい子どもたちが特に喜んで大笑いしそうなストーリーと、おまけについ
ているのは、はなくそ指人形や、「指」の指人形など、すみずみまでニヤニヤ
してしまう。

 なにより、一度読むと、はなくその存在感がとても強くて忘れられなくなる
絵本なのだ。


(林さかな)
会津若松在住。「本の雑誌」新刊めったくたガイド海外文学担当。
http://1day1book.strikingly.com/

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第113回 歴史を理解するセンスを磨くためには・・・歴史との付き合い方

 改元は新しい歴史の始まり、という気持ちがふつうに暮らす日本人の率直な
気持ちであろう。先々月から始まった天皇の退位と即位とそれに伴う改元、と
いう一連の流れは、日本人にとってかつて経験したことがないほどの祝祭に彩
られた日々であったと思う。その中にどっぷりと浸かり、あるときはこの騒動
に呑み込まれ、皆と浮かれはしゃぐ。またあるときは一歩も二歩も外に出て、
この騒動を客観的に批判的に眺めている。そんな狂騒と嫌悪の2ヶ月間が過ぎ、
6月となる。どんなに盛り上がっても落ち込んでも時間は、時の刻みはあまね
くすべての存在に平等に与えられ、同じ速さで流れている。・・・・・こうし
て時が経ち、未来は今になり、今は過去になる。そして過去は歴史となってい
く。

 その歴史の見方、考え方を示す、ひとつの指標、しるべとなるような本が新
書として発刊されている。

『歴史という教養』(片山杜秀 著)(河出書房新社)(河出新書)
(2019年1月30日)

 「歴史」とはなんだろう? いつもそれを思っていた。歴史とは、単なる過
去の出来事だけではない、ということは理解できる。歴史とは、ほぼ無限に存
在しているクロニクルだけではないはずだ。それが証拠に、よく耳にし目にす
る言葉で「○○史観」、という表現がある。いろいろな考え、見方によって、
さまざまな歴史がある。むろんそれは、はるか昔の学生時代のときから理解し
ていたことではあるが、あらためて歴史における考え方の違いとはなんだろう、
と思ったのは、本書を書店で手に取ったときだった。

 本書の目次には、最初にこうある。「序章 「歴史」が足りない人は野蛮で
ある」。・・・・・なんとも挑発的なことばだ。本書の著者は、冒頭に20世紀
のドイツの哲学者テオドール・アドルノの箴言を載せている。アドルノ曰く、
“アウシュビッツ以後、詩作は野蛮である”。

 著者の片山杜秀氏は、“アウシュビッツを反芻しない脳天気な文化芸術上の
創作は、自らが野蛮人になりうる恐ろしさを、忘却し、うぬぼれているのだか
ら、それはもう「野蛮人の証明」である。”と、アドルノのこのことばを解説
した。・・・・・このあたりが本書の主題であり、著者が読者に考えてほしい
問題なのだろう。歴史を理解するには、苦しまなければならないのだ。歴史を
意識すればするほど、苦しむし、重たいし、つらい。しかしそれに耐えなけれ
ばならない。それに耐える力がない人は歴史を語る資格がない。ホロコースト
(アウシュビッツ)に目を背けていては、歴史を理解できない。徹底的に向き
合わなければ、歴史はわからないのだ。さしづめ、現在の日本ならば、「福島
第一原発」であろうか。福島第一原発に向き合わない文化芸術活動は野蛮人の
証明であろう。それはむろん文化芸術活動に留まらない。人間の活動すべてに
関わってくる。日本人なら「福島第一原発」のことを決して忘れてはいけない
のだ。歴史はそこで我々に教訓をもたらす。人類の手に負えないものに手を出
してはいけない。ところが、この国の指導者と商人たちは、性懲りもなく、教
訓を無視して原子力発電所を維持しようとしている。これを野蛮人と云わずに
なんと云うのだろうか。

 閑話休題。

 歴史を学ぶには、それに向き合うだけの体力と気力がないといけないのであ
るが、ではどのような態度で歴史に向き合えばよいのか? それが第一章の
「「温故知新主義」のすすめ」の内容となる。「温故知新」=故きを温ねて新
しきを知る。片山杜秀氏はこの「温故知新」を荻生徂徠の解釈が妥当であろう、
として論を進めている。

 歴史を学ぶ。あらゆることを知ろうとする、ということが「温故」。その上
で新しい出来事に新しい発想で対処することが「知新」である。つまり、“歴
史を学んで今を生きる力を養うこと”が大切だという。歴史を学ぶ。それを基
に今を生きる。歴史から導き出されたもので未来を予想する。進むべき道を選
ぶ。

 たぶん、道を選んでもその道は、人によって違うのであろう。歴史を学んで
もその学び方、結論によって解釈が違う。だから選んだ道が違う。そしてそれ
がこそが、その選び方が「○○史観」、あるいは歴史の「○○主義」となるの
であろう。

 第二章以下は、この歴史の解釈の違いに注目する。歴史の解釈はさまざまあ
ることを紹介している。「保守主義」「復古主義」「ロマン主義」「啓蒙主義」
「ファシスト」「反復主義」「ユートピア主義」・・・・・。

 著者はそれぞれを端的なことばで云い表す。「保守主義」=石橋を叩いて漸
進する。「啓蒙主義」=考える理性の進歩。「復古主義」=失われた過去に懸
ける情熱。「ロマン主義」=いろいろな過去を懐かしんではため息をつくぬる
い態度。「ファシスト」=今の固有性に賭けて過去も未来も忘れてしまう熱狂。
「反復主義」=古いことも新しいことも何もない。・・・等々。

 それらの歴史の見方の違い、それぞれの主義者の考えも理解した上で、著者
は「温故知新主義」を掲げる。「温故知新主義」とは、“歴史の一回一回の独
自性に学んで不断に「知新」を積み重ねていく姿勢”という。謙虚さが大切だ
し、感受性と想像力が大事なのだ。心が動かない歴史は歴史とは云えない。そ
してここで読者は、本書の最初の箴言を思い起こす。
 “アウシュビッツ以後、詩作は野蛮である”。

 最後に著者は、その「温故知新主義」を実践するための6つのヒントを紹介
している。1.歴史の道は似たもの探し・・・「既視感」が大切。2.歴史小説は
愛しても信じない・・・「似たもの」に喜んではいけない。3.「偉人」を主語
にしてはいけない・・・歴史のカメラがピンぼけする。4.ものさし変えれば意
味変わる・・・歴史は複眼でみなければいけない。5.歴史を語る汝が何者であ
るかを知れ・・・自分が歴史のなかにどういう願望を投影しているか、それを
自覚すること。6.歴史は「炭坑のカナリア」である・・・歴史を学び参照項を
増やしてリスクを回避する。・・・・・このヒントはとてもわかりやすいと思
う。大切なことは、人のことばをすぐに信じてしまわずに自分で考えることな
のだ。

 歴史から自由にはなれない。歴史に縛られている。だからと云って不自由な
のか、と云えばそうではない。歴史は運命や宿命ではない。歴史は偶然性であ
る。歴史は偶然だから自由なのだ。・・・・・本書はそう云って論を終わりに
している。

 新書版なのに、読み応えのありすぎる書物だった。

多呂さ(梅雨に入りました。今年はどんな災害がどこに発生するのでしょう)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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→ #106『ソロ』

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→ 『脱税の世界史』大村大次郎 宝島社

★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→ 『俺か、俺以外か ローランドという生き方』

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#106『ソロ』

 ブルガリアから連想するものは、なんですか?

 ヨーグルト。
 ……
 あ、あと、随分昔、『ブルガリアン・ヴォイス』というCDが話題になったっ
け。ブルガリアの民族音楽で、女性ばかりのコーラス。これが西欧的な和声と
はまるで異質な、野性味溢れる不協和なハーモニーで、新鮮だった。
 それから
 ……


 ぼくにとって、ブルガリアから出てくるのはこれだけ。
 大多数の日本人にとっても、そんなに変わらないのでは?


 そんな、正直縁遠いブルガリアを舞台に、ブルガリア人が主人公の小説を、
なぜかイギリス人が書いた。しかも彼は、インド人とイギリス人のハーフ、い
わゆるインド系英国人だという。
 妙にややこしく国籍アイデンティティが錯綜する小説。
 それがラーナー・ダスグプタの『ソロ』である。


 ぼくはもともと、多様性こそ豊かさのカギだと思っている。もちろん多様で
あるほど軋轢も生じる。それが戦争の原因にも、離婚の原因にもなる。しかし
それでも、多様性を捨てることは、意見を異にする人間を暴力で封じ込めるフ
ァシズムへの道なんじゃないか。
 それに、みんなが同じになってしまえば、進歩も生まれず、その集団に未来
はない以上、困難であっても多様性を、むしろ積極的に生み出していく方がい
い。


 十代の頃から、そんな考えがあって、主流から外れた、周辺に位置する音楽
文化に惹かれてきた。
 いまはポピュラー・ミュージックの王道と言えるロックも、70年代にはまだ
カウンター・カルチャーであり、周辺文化だった。矢沢永吉率いるキャロルが、
お茶の間カルチャーの象徴たるテレビに出た時など、ちょっとした事件だった
くらいである。ニューヨークで生まれたサルサという、まさに周辺的なラテン
音楽にもはまった。その影響で大学ではスペイン語を学んだ。
 要は、あまのじゃくというだけかも知れないが。


 そういうぼくにとって、「ブルガリア」「インド系」というキーワードは魅
惑的である。そこにどんな物語が語られるのか、本書を手に取らずにはいられ
なかった。


 さてこの小説、当欄で取り上げる以上、もちろん音楽本である。
 時々やるように無理矢理結びつけなくとも、音楽は重要なモチーフになって
いる。
 その証拠に、本書は2部構成になっているが、通常「第1部」と表記される
ところを「第1楽章」、「第2部」を「第2楽章」としているのである。
 もちろん、ストーリーの中でも、音楽が重要な役割を占めている。


 第1楽章の主人公はウルリッヒ。ドイツ風の名前だが、ブルガリア人だ。物
語は2001年という設定で、彼は100歳の誕生日を目前にした盲目の老人である。
 貧しく不自由な生活を耐え忍びながら、過去への追憶に浸る日々。その心象
風景に添うことで、われわれは彼の人生を辿る。
 そして、ほぼ20世紀に重なるこの物語を通して、ブルガリアの現代史をも知
ることになるのである。


 ブルガリア史にまったく疎いぼくは、まずこの国が、オスマントルコ帝国の
領土だったと知って、へーっと思う。
 ついで独立するも、今度はナチス・ドイツが占領。
 第二次大戦後は、ソ連の衛星国家として共産国に。
 そして、ソ連崩壊によって資本主義化し、今日に至るという、波乱と激動の
歴史を持つ国なのだ。


 ヨーグルトをつくって、余暇には村のおばちゃんがコーラスを楽しんでいる、
のどかで牧歌的なイメージが覆る。


 ウルリッヒは、曖昧になった記憶をランダムに追いかけながら、相次ぐ社会
の激変に呑まれ、翻弄されてきた自らの人生を思う。
 音楽に惹かれた幼いウルリッヒがジプシーの後について回る、というエピソ
ードなどは、音楽本として興味深く、また第2楽章への伏線ともなっている。


 さて、その第2楽章は、一転して群像劇となる。
 まず、最初に登場する人物がウルリッヒではない。ボリスという少年だ。舞
台も現代、すなわち21世紀である。
 さらに、第1楽章が回想録に特有の静謐で淡々とした語り口だったのに対し、
第2楽章ではストーリーの起伏が激しくなるからだろうか、文体もダイナミッ
クになる。
 一瞬、別の小説が始まったのかと思うほど、趣が変わるのだ。


 しかし、初めに登場する少年ボリスは、結局ウルリッヒの、社会的動乱によ
って生き別れになった息子だとわかってくる。
 この絆が、第1楽章と第2楽章を結ぶ唯一のリンクだ。


 ボリスはウルリッヒの血を引いたか、やはり幼い頃からジプシーの音楽に惹
かれた。ウルリッヒは父親の猛反対で音楽を諦め化学者への道を歩んだが、ボ
リスは興味の赴くままヴァイオリンを弾き始める。
 やがて社会の混乱の中で一切の係累を失い、一人孤独に暮らしながら腕を磨
く。


 そんな彼が、ニューヨークの音楽プロデューサー、プラスティック・ムナリ
に見出され、スターとなる過程が、第2楽章の主軸ではある。
 だが、それとはまったく別に、やはりソ連崩壊で混乱の極にあるグルジア
(現在のジョージア)が舞台となって、没落した上流家庭の娘ハトゥナや、彼
女の夫となるグルジア・マフィアの大ボスや、彼女の弟で詩人のイラクリなど、
魅力的な人物がそれぞれの物語を紡いでいく。
 そしてすべての登場人物は、911のテロを経たニューヨークで合流し、ひ
とつの物語に収斂するのである。


 そんな特異な構成を持つこの小説を読んで、ぼくが最も驚嘆したのは、「音
楽性」であった。


 小説で「音楽性」というのも変だが、音楽で使われる固有の手法を文学に応
用することで、新しい表現を生み出しているという意味に取ってほしい。


 第1楽章で応用される手法は、「転調」である。


 交響曲のタイトルには大体その曲の調が記されている。
 例えば有名なベートーヴェンの『第九』。これは「ニ短調」


 でも、え?と思わないだろうか。
 短調といえば、暗くもの悲しい雰囲気のはず。
 でも「第九」って、「歓びの歌」でしょ? あれってめちゃ明るくない?


 その通り。
 実は交響曲のような長い曲で、最初から最後まで同じ調ということはあり得
ない。それでは退屈で、聴衆が飽きてしまうからだ。
 それに、ロマン派の音楽は紆余曲折を経て最後にクライマックスを迎える劇
的な構成を特徴とする。その紆余曲折が、さまざまな調を経ることで表現され
るのだ。
 そのため、『第九』でいえば第1楽章だけでも、二短調→変ロ長調→ト短調
→ハ長調→ト短調→変ロ長調とめまぐるしく調が変わっている。短調と長調が
交互に出てくるところにご留意あれ。


 このように、調を変える作曲技法が転調なのだが、ぼくは、ウルリッヒの人
生を襲う体制の激変こそ、この小説における「転調」だと思うのだ。


 音楽において、調はその曲の背景となり、全体の雰囲気を支配する世界観で
ある。
 世界ががらっと変わるのが転調だとすれば、オスマントルコの帝国主義に始
まり、ナチス・ドイツのファシズム、ついで共産主義、さらにソ連崩壊による
資本主義と、国家の体制が根本から変わることは、まさに社会の「転調」と言
っていい。
 そしてウルリッヒのような個人の人生が、転調に翻弄されるメロディーであ
る。


 よく、日本もいま激動の時代にある、などと言うけれど、体制の根本が変わ
ることに比べたら、何ほどのこともない。戦後の日本は、結局同じ「調」の中
で歴史を重ねてきた。世紀の変わり目を挟むように巨大災害という「転調」は
あったものの、それは天変地異としてひとまずおく。


 とはいえ、ブルガリアが経験した、激しい「転調」は対岸の火事なのか。
 いや、日本もいつどうなるかわからない。
 実際、太平洋戦争の敗戦では、多くの日本人が「転調」を経験している。そ
れまで教えられてきたことがすべて否定され、虚構となった衝撃がいかにすさ
まじかったかは、われわれ戦後世代にとって想像の埒外にある。


 それでも、もし、再びそんな時代が来てしまってもうろたえないように、フ
ィクションを通じて世界の崩壊を疑似体験しておくことは、なにがしかの準備
になるだろう。


 一方、第2楽章は、「対位法」という手法を応用して書かれた、とぼくは思
う。


 交響曲の前、バッハの時代にはまだ主旋律という考え方は希薄だった。
 むしろ、複数のメロディを同時に重ねて、そのもつれあう様を楽しむ方法が
主流だった。
 これを対位法の音楽という。


 群像劇は、まさに対位法である。
 一人一人の登場人物がメロディーであり、彼らが重なり合い、もつれあって、
やがてひとつの物語を織り上げていくのだから。


 ではどうしてこの小説は、第2楽章で全く異なる「対位法」を選択したのか?


 その答えは、21世紀の今日、ウルリッヒの人生=ブルガリア現代史のように、
もはや一人の人生に現代史を象徴させることが出来なくなったからだと思う。
 
 複数の人生が折り重なって、初めて歴史というタペストリーが織り上がる時
代。
 それは、冒頭に書いたように、多様性の結果であり、ぼく自身はよいことだ
と考える。


 だからと言って物語自体がハッピーエンドとは限らないのだが、それでもこ
の小説を悲劇と読むかどうかは、人それぞれだろう。


 ウルリッヒには、遠い子供時代に本で知ったある日本語の、不思議な官能性
に惹かれた記憶があるのだが、言葉自体は忘れてしまっている。だがラストで、
親子の名乗りをしないまま息子ボリスの旅立ちを見送る時、不意にその言葉を
思い出すのだ。


 それは、「ソイネ(添い寝)」という日本語である。


 ここでぼくは、この小説が『ソロ』というタイトルであったことを思い起こ
す。


 ソロとは、一人という意味であり、音楽用語では独奏だ。
 ウルリッヒは離婚し、息子とも生き別れになり、年老いた両親に死なれてか
らは、孤独なソロの人生を歩んできた。
 ボリスもまた家族を亡くし、ジプシーの仲間ともはぐれて、たった一人で生
き延びながらヴァイオリンを独学、独奏で弾いてきた。
 血で繋がったふたつのソロは運命に引き裂かれ、そして運命に導かれて再会
するのだが、すぐにまた別れてしまう。作者はここで、安易な家族の再生は歌
わない。
 それでも、二人の距離感には、淡いようだが、この上ない官能性に満たされ
た深い何かが漂っている。
 それがまさに「添い寝」の感覚であるのだろう。
 
 人は独りである。そして、だからこそ独りではない。
 そのやるせないぬくもりを思いながら、ぼくはため息と共にページを閉じる。


ラーナー・ダスグプタ
西田英恵 訳
『ソロ』
二〇一七年一二月一五日 印刷
二〇一八年一月一〇日 発行
白水社


おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
壊れたラジカセ、使わなくなったプリンターとエフェクター類を、ハードオフ
に持って行きました。ラジカセは10円。プリンターは50円。エフェクター類は
スイッチが300円、VOXのアンプ・シュミレーターが900円、エレアコ用のプリ
アンプが3,000円。なんか、ちょっと嬉しい。また、行こ。(宣伝にあらず)

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『脱税の世界史』大村大次郎 宝島社

 大村大次郎というと、元国税庁で節税の専門家として多くの本を出している
方だが、こんな本も出していたとは知らなかった。

 内容はタイトル通りで、古くは古代エジプトや古代ギリシャの時代から、新
しいところではパナマ文書やGAFAまでの脱税史のトリビア本という感じである。

 多くの時代、多くの国を扱っているので、ひとつ一つのトピックを深く解説
しているわけではないものの、とても分かりやすい文体で書かれている。こう
いうところは、節税の本を大量に書いているうちに培われた能力かも知れない。

 だって節税の本を読むのはたいてい普段本を読まない人たちだろうから、そ
ういう人向けにややこしい税制のことを上手にわかりやすく説明しなければな
らないはずなので、必然的に文章も磨かれる。そんな感じがした。

 「はじめに」の冒頭には、「国家とは税金である」とある。そのココロは、
国の盛衰には必ずといっていいほど税金がからんでいるわけで、世界史に登場
する、強国・大国はどこも優れた税制を持っていたという。

 「民が疲弊しないように効率的に税を徴収し。それをまた効率的に国家建設
に生かす」これができていなければ国が興隆することはできない。逆に言えば
税制が政治腐敗や時代の変化などで劣化する時が、国家が滅びるきっかけとな
るのだと言う。

 で、脱税と言うのは、基本払う税金を減らしたいと思って細工することが多
い。これは古今東西どこでも一緒である。しかし「圧政、重税に対する抵抗と
して、民衆が結託して、課税逃れに走ると言う場合もあります。また富裕層や
貴族などが特権を活用し合法的に税を逃れるということもあります」

 「いずれにせよ、脱税がはびこる時は、社会は大きな変動が起きます。武装
蜂起、革命、国家分裂、国家崩壊などには。必ずといっていいほど『脱税』と
『税システムの機能不全』が絡んでいるのです」

 すなわち、脱税を見ていれば社会の変化、潮目が分かると言うことなのだろ
う。

 そして、「これまでとは違った立体的なイメージ」がわいてきて、「不可解
に思えていた出来事のつじつまがくっきりと見えてきたりする」のだそうだ。
早速読んでいく。

 最初に来るのは古代ギリシャと古代エジプトの税金史。古代ギリシャに税金
はなかったが、アンチドシスと言う必要な時に金持ちから寄付を募る制度かあ
った。これは指名されたら金持ちは半強制的に戦費などをカネを払わされる。
しかし、指名されていない、自分より金持ちがいたらその人を指名して自分は
指名から外れることもできた。指名された人は求められたカネを出すか、指名
してきた人と財産を交換することがどちらかを選ぶことができた。

 たとえばAという人が一番カネ持っているなら出すしかない。しかしAはB
の方が金持ちだと指名することができるのだ。Bは本当にその通りならAの代
わりに金を払う。Bが「いや、Aくん、キミの方が金持ちだろ?」と拒否すれ
ばAから財産の全交換を求められる。

 もしBの方が本当にAより金持ちなら、財産を全交換したらAは儲かる。B
の言う通りAの方が金持ちだったら、立場が逆転してBの方が金持ちになる。
要は金持ち同士の財産情報が上手に制度化・活用されて前金のように機能して
いた。

 とはいえ、基本税金を取るのは当時から簡単なことではなく、間接税や関税
をメインにせざるを得なかった。しかも、関税をごまかす者は昔からいた。

 徴税請負人と言う職業もあった。税金を徴収する仕事と引き換えに手数料を
もらう仕事である。たとえば国から100万円分の税金を集めて、そのうち20万
円をもらって80万円を国に納める。

 この方法は請負人が税金を集めるので徴収コストが安くなる反面、腐敗の温
床になってしまうことが多い。古代エジプトなど、そうした事情がよく分かっ
ていて腐敗を防ぐ優れた仕組みを持っていたが、それでも腐敗を避けることは
できなかった。

 そんなところから始まって、ユダヤ人の世界放浪はもともと重税を割けるた
めだったとか、イスラム教に改宗すると税金の割引があったとか、清教徒革命
はたった1人がたった20シリングの船舶税の支払いを拒否したのをきっかけに
始まったなどなど、古今東西の税金と脱税の興味深い話が続いていく。源泉徴
収がナチスドイツの発明だとかも、初めて知った。

 とはいえ最も量的に多いのは現代のトピックで、タックスヘイブンやGAFA、
(Google Amazon Facebook Apple)の逃税など、現在進行形の問題に多くのペ
ージが割かれている。

 中でもプーチンについて触れているところで、ソ連が崩壊したから世界は格
差社会になったという指摘は鋭い・・・。ライバルがいなくなったから資本主
義は堕落したというわけですね。

 これは面白いと思って他の大村さんの本を調べてみると、税金関係だけでな
く「おカネの流れ」で歴史を読み解くような内容の本がいくつか見つかった。
節税本なんか読まない人でもこういう本は興味がわくだろう。税金本の著者は、
いつの間にか、お金の歴史の専門家になっていた。

(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)
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■「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
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けっこういいヤツ。カリスマホストのローランド
『俺か、俺以外か ローランドという生き方』(ローランド・著 KADOK
AWA)

 今回紹介するのは『俺か、俺以外か ローランドという生き方』です。帯に
は「読めばわかる。ボクがなぜ、コイツを弟と呼ぶのか」というGACKT様
の推薦文が書いてあります。

 「前にキャバクラ嬢の本を紹介して、今回はホストかい」とおっしゃる皆さ
ま、すみません。だって本が売れないこの御時勢、売れているのはキャバ嬢と
ホストの本しかないんですもの。小説なんて実売1800部しか・・・あ、すみま
せん炎上しちゃう。(わからない方は「ネット見ろ!」BYアンジャッシュ・
渡部)

 ローランドとは、東京は新宿の歌舞伎町のホストで、1日の売り上げが300
万にもなるほどのカリスマホストです。メディアに積極的に出て、上から目線
の名言をかまし、それがちょっと笑えて、トークも芸人さん並に上手なことか
ら最近、話題になっていますね。かつて城崎仁なんて人もいて今は通販番組で
がんばっているようですが、それとはまた違うビジュアル系で女子のファンも
多いよう。おばちゃまが最初に見たのは動画でしたがたしかにオーラがありま
した。

 そのローランド様の名言を集めたのがこの本。
「無様に勝つぐらいなら美しく負ける。まあ、俺は美しく勝つんだけど(笑)」
とか、
「ローランドが下を向くときは、出勤時に靴をはくときだけさ」
 というタカビーな発言でクスリと笑える。

 でも一番有名なのが、
「世の中には2種類の男しかいない、
俺か、
俺以外か」
ですね。

 すごい!って一瞬思うんですが、よく考えてみたら、この世の人はだれでも
俺か俺以外、私か私以外ですよね。なあんだ。
 でもまあ面白いですね。このセンスはどこで培われたのかの秘密が本に書い
てあります。

 それは帝京高校サッカー部。

 バリバリの全国出場をめざすこの部にいたというからサッカーの精鋭ですね。
ここでの先輩や同級生、後輩とのやりとりからとっさにおもしろいことを言う
センスが磨かれたらしい。そう、木梨憲武を輩出した帝京サッカー部はサッカ
ー選手だけでなく、タレントもおのずと育成する養成所だったんですね。

 そして、この人のもうひとつの魅力というのが、フツーにいいヤツというこ
と。タカビー発言からちょこちょこ見え隠れするフツー感が笑える。

 それが一番顕著なのが、

「俺以上におまえを幸せにできるヤツがいる?彼氏なんて作らなくていい」
っていう章。

 これ彼女じゃなくて妹に言った言葉で、妹さんに彼ができてヤキモキしたと
いう、なんや、一般家庭の微笑ましい話やないかい!ってところがね、爆笑で
なんや、普通のええヤツやないかいと読めます。(出だしが「大好きな大好き
な妹へ」だよ。)

 これがギャップ萌えを誘導する話ならまたすごいんですが、結局、まだ20代
半ばの青少年。なんか若いのよ、したたかさが足りないのよ。

 キャバ嬢のほうは、歌舞伎町の愛沢えみりと、名古屋・錦の小川えりが引退
を発表して、すでに北新地の門りょうも引退して、今後が不透明ですので、ホ
スト界はローランド1人でがんばっていただきたい。もう2〜3人ビッグなホ
ストが出ると活気づくんだけどね。

 ちなみにこの本の印税は、カンボジアの子どもたちの育成と、東日本大震災
をはじめとする日本各地の復興のために使われるとのことです。やっぱり、い
いヤツや〜。

大友舞子(おおとも・まいこ)
昭和20年代生まれのフリー編集&ライター。関東生まれで関西在住。

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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ─ 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510


 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

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6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 配信が遅れました。っていうか月をまたいじゃいました。すみません。

 またすぐ、10日号でお会いしましょう!(あ)

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→95 なんども読み返す物語

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第112回 災害と万葉集と歴史と日本人

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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95 なんども読み返す物語

 誰もが有限の時間で生活している。
 このあたりまえすぎることを、年を重ねるごとに思う。
 生活のために働く時間が一日の大半なため、本を読む時間を捻出するのが、
ことのほか難しい。時間だけでなく、加齢で体力も落ちているのも原因のひと
つ。

 時間がないので、読み返したいと思っても、いままで読んだことのない本を
読みたい欲望が勝ってしまう。

 そんななかでも、タイミングよく再読しているのが『オズの魔法使い』。

 早川文庫から出ている「オズの魔法使い」シリーズは高校生の時に少しずつ
買いそろえて楽しんでいた。それがひょんなことから、仕事にもつながり(復
刊ドットコムからオズシリーズ全15巻の編集)、なんども深く読み返すことに
なる。仕事の参考にと、複数の訳も読み比べもした。どの訳もすばらしく、読

たびに新鮮に面白さく夢中になってしまう。

 そしてまたあらたに訳された本が出たのはうれしい限り。

 『すばらしいオズの魔法使い』
 L・F・ボーム 作 R・イングペン 絵 杉田七重 訳 西村書店

 西村書店のカラー新訳豪華版は、本当に豪華で読みごたえがある。
 既刊の『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』『楽しい川辺』もイング
ペンの挿絵と杉田七重さんの訳で楽んだ。本書も同コンビなので、期待が膨ら
む。
 
 たくさん出ているオズの本の面白さは訳文と共に挿絵の存在も大きい。
 どの本の挿絵も、画家のイマジネーションに唸らされ、ページをぐいぐい繰
る楽しみがある。

 イングペンの絵は、人間味あるドロシーや仲間たちを描き、引きこまれる。
目立って特徴的に描くのではなく、どちらかというと個性をおさえて、存在だ
けを強調する、とでもいおうか。写実的に描かれたドロシーたちは、ファンタ
ジー世界の住人というより、ご近所さんの雰囲気を感じるほどだ。

 杉田さんの訳も質のいい文章で、声に出して読んでも黙読でも、ストーリー
を豊かにイメージできる。

 作者ボームが「ただ面白さを求めて物語を読めばいい」と物語のはじめに書
いているとおり、そして訳者の杉田さんが『すばらしいオズの魔法使い』を読
む体験は「面白さいの極み」とあとがきに書かれているとおり、ふたりの言葉
に大きくうなずく。

 オズシリーズを読んだ人であれば、ぜひとも本書でオズの仲間たちと再会し
て欲しい。

 さて、1900年に書かれた古典ファンタジーを楽しんだあとは、
 現代に描かれた絵本を紹介する。

 『ひみつのビクビク』
 フランチェスカ・サンナ 作 なかがわちひろ 訳 あかつき

 作者のデビュー作『ジャーニー 国境をこえて』(きじとら出版)もこのメ
ルマガで紹介しているが、2作目にあたる本作もよい。

 「わたし」のひみつのともだちビクビクは、いつも「わたし」を守ってくれ
ている。守ってくれているから安心、心地よい、、はず??
 最初は小さかったビクビクが「わたし」を守ってくれるたびに、大きくなっ
ていき、身動きがとれなくなってしまう。
 そんな時、別の子のビクビクと出会い……。

 どの子も心にもっている心配が形になったビクビク。新しい環境では誰もが
抱く気持ちを視覚化し、大丈夫だよと背中を押してくれる存在になっていく様
子が丁寧にやさしく描かれている。

 4月から新しい学校生活がはじまった子どもたちに、寄り添ってくれる絵本。
 

 最後に紹介する絵本はまた古典にもどり、アンデルセンの「おやゆびひめ」。
 松井るり子さんによる再話ですべてひらがなで書かれている。

 『おやゆびひめ』
 アンデルセン 作 カンタン・グレバン 絵 松井るり子 再話
 岩波書店

 カンタン・グレバンの絵はやわらかく雄大。
おやゆびひめの低い視点で描かれていたり、高いところから俯瞰するように描
かれていたりと、視点の動きがダイナミックで面白さい。

 松井さんのやわらかな語り口は、おやゆびひめの、はかない可愛さと、運命
のいたずらで起こるできごとに引きこませ、なんども読みたくなる。

 そう、絵本はなんども読んでこそ面白さいのだ。
 短い時間で豊かに楽しめる絵本は、大人にもオススメ。


(林さかな)
会津若松在住。「本の雑誌」新刊めったくたガイド海外文学担当。
http://1day1book.strikingly.com/

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第112回 災害と万葉集と歴史と日本人

 新元号が発表された4月1日以降、平成最後の日々であった4月中にすっか
り時の人となった万葉集学者の中西進先生。そして、改元騒動お祭りだったこ
の10連休中、メディアに引っ張りだこだった歴史学者の磯田道史先生。このお
ふたりの対談を新書化した本が本屋で平積みになっていた。

『災害と生きる日本人』(中西進・磯田道史 著)(潮出版)(潮新書)
(2019年3月20日)

 タイトルをみて本書を買ってしまった。執筆子にとっては、まさにこのタイ
トルが8年前からのテーマと云える。さまざまな災害に遭いながらこの島国で
生きていく日本人。災害と隣り合わせに一緒に行き続けなければならない運命
にある日本人。それこそ、わたしたち日本人の特色だと思っている。

 そして話題のふたり。新元号 令和を提案したとされる中西さん。天皇の退位、
平成の終焉、令和の到来、新天皇の即位。この祝祭の日々においてメディアに
出ずっぱりだった磯田さん。このふたりが日本や日本人、日本の歴史について
それぞれの薀蓄を披露し、語り合う。相当にタイムリーな本だと思った。

 さらに、売り方がうまい。本書のタイトルをテーマにおふたりが対談するの
は第1章のみ。2章以降は災害がテーマではない。本書はこの国の歴史をひも
解いて、その中で日本人のものの考え方や行動様式をさぐっている。どうやら
それがテーマなのだが、タイトルは災害に特化している。「災害と生きる日本
人」。このタイトルでは、災害や防災に関心のある人へのアピールとなるし、
話題のふたりの対談本なので、歴史に興味のある人へのセールにもなる。

 第1章「天災と人災の中で」。大地震が起こる。そのあと人々は、震災の後
だから、そのときを震災後、という。しかしこの日本列島に住む私たちは、実
は震災後ではない。地震をはじめあらゆる災害が頻発するこの土地では、災害
後という概念で考えてはいけない。何も起こらず、災害がないときでも実は災
害と災害の間を過ごしている。私たちはそんな「災間」を生きているのだ。こ
のことは肝に命じておかないといけない。またどこかで何かが起こる。今年も
今年も梅雨が始まる。日本列島は6月から10月いっぱいは水害のシーズン。ど
こでどんな形で大雨が降り続くかわからない。土地土地に伝承されたもの、石
碑などがあればそれを大事にして、過去の被害を教訓に対策を立てなければい
けない。

 第2章以降は、災害がテーマではないが、とても興味深い内容となっている。
万葉集で詠われたたくさんの詩から当時の人々の生命感人生観をあぶり出す。
恋と死と生命が主題であり、それが現代の我々とどうつながっているか、また
断絶したものはなにかをさぐる。しかし、話は万葉集だけでは終わらない。古
典と歴史の専門家は日本の歴史を俯瞰していく。

 中西先生によると、日本の歴史を大きく三つに分けて考えるとわかりやすく
なるという。三つの分岐点。第一の切れ目は5世紀。大陸から新しい思想(儒
教)が入ってきた時代。第二は12世紀。武家政権(鎌倉時代)の始まりであり、
日本の仏教が完成したとき。そして三番目の分岐点は近代が始まった19世紀。
19世紀になってやっと、日本にキリスト教が入ることができた。

 本書は歴史を学ぶ手がかりになる。歴史を学ぶためのさまざまな手段を開陳
してくれる。それは宗教や思想、経済問題など多岐にわたる。
 本書は歴史を考えていくためのいいヒントがたくさん詰まった素晴らしい小
品である。

多呂さ(時代の区切りのお祭りは終わりました。新しい時代の新鮮な空気が漂
っているうちに自分の居場所を確保したいと思っています)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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 10連休明け、なぜか体調を崩されている方が多いような印象です。休むのに
疲れたのか、働きたくなくなったのか…。

 お子さんたちには素敵なお休みになったことと思います。

 というわけでもないんですが、執筆陣も2人お休みでちょっと寂しい今号と
なりました。(あ)

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★「音楽本専門書評 BOOK’N’ROLL」/おかじまたか佳
→ #105『屋上のウインドノーツ』

★「目につく本を読んでみる」/朝日山
→ 『懐中時計礼賛』武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科研究室

★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→ 困ったときはお仕事本。ピンチに読んだ3冊の本。

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#105『屋上のウインドノーツ』

 数年前ぐらいだったか、やたら吹奏楽部をテーマにした小説が出てくんなー、
と思った時期があった。アクロバティックなマーチングをしながら演奏する吹
奏楽がテレビで取り上げられた影響か。漫画で『けいおん』がヒットしたから
次はブラバンという安直な発想か。

 ま、確実に音楽本ではあるし、その内どれか読んでみようと思いつつ、棚上
げにしていた。

 この4月は、例の改元騒ぎ。桜も、花開いた途端に寒くなった影響で却って
長持ち。おかげで、いつも以上に妙な新年度感・新学期感がして、気づくと額
賀澪『屋上のウインドノーツ』を手に取っていた。
 
 管楽器のことを、英語でウインド・インストルメントと言う。シエナ・ウイ
ンド・オーケストラというのもある。
 ウインド、すなわち風、だ。
 いいネーミングだと思う。
 吹くことで音が鳴る楽器。だから、それは正確には風ではなく、息だ。
 でもそれを、風と呼ぶ。

 現実の風というより、風という言葉が好きだ。
 小田和正もそうらしく、歌詞によく「風」が出てくる。昔インタビューでも
言っていた。「俺は風さえあればいいんだ」と。「でもみんなが、また風です
か、って言うから、無理やり他のものにしてるんだよね」

 それで、そのものズバリ、『ブラバン』というタイトルの津原泰水作品では
なく、「ウインド」という言葉の入った本書に手が伸びたのかもしれない。

と言いつつ、実は主人公の担当楽器は管楽器ではなく、ドラムなのだ。
ウインドじゃないじゃん。

 舞台は茨城県。この微妙な田舎感が、本書を成功させた要因のひとつ。東京
にほどよく近く、でも田園風景豊かなロケーション。案外暮らしの中で生きて
いる方言。
 もっとも著者略歴を見ると、自分のふるさとを舞台に選んだだけのようだが。

 物語は幼稚園から始まる。主人公の一人、志音は極端な人見知りで友達が出
来ない。そこへ瑠璃ちゃんという子が手を差し伸べてくる。一緒に鬼ごっこし
よう。すると志音は答える、「おれ、足、遅いけど……」
 ここで、えっ?となる。志音って、女の子だとばかり思ってたけど、男の子
だったんだ、と誤解するわけである。

 しかし、その後になって、この地方の方言で、女性も「おれ」と言うことが
説明される。もっとも、そう言うのは年配の女性と子供だけで、ある程度の年
齢になると「私」と言うようになる。ところが、志音はいまさら一人称を変え
ることに抵抗があり、中学、高校になっても「おれ」で通す変わり者だ。

 引っ込み思案で、自己主張が出来ないくせに、そういうところだけ変に意固
地。
 この設定はリアルで巧み。

 もう一人の主人公は、大志。こちらはれっきとした男子。
 中学の時、吹奏楽部の部長だったが、部員たちとうまく行かなかったトラウ
マがある。高校でも吹奏楽部には入るものの、三年になって部長に指名される
が、頑なに拒否しているというところからの登場。

 そんな大志が、高校一年になっても相変わらず孤独な志音と出会い、半ば強
引にブラバンに入れる。志音は次第に心を開き、仲間たちと高校吹奏楽部のコ
ンテストを目指して猛練習するようになる、とまあ、ストーリーはありきたり
だ。

 大志が中学の時に経験したトラウマも、そんな精神病理用語で呼ぶにはあま
りにも可愛く、児童虐待やら性的暴行やらが当たり前に出てくる昨今の小説や
映画に慣れた目には、大したことがないように見える。
 志音の孤独も、父親がいないとはいえ、極端に貧しいわけでもなく、母親と
もまあまあうまく行ってるわけで、さほど悩むことかい、と突っ込みたくもな
る。

 でもね、その「大したことない悩み」に、死ぬほど悩むのが青春なんだよな
ー、とこの著者は思わせてくれる。何度か、思わず目頭が熱くなってしまいも
する。決してこちらが年取ったせいだけではない(と思いたい)。
 著者が実際にブラバンにいたんじゃないかと思わせるほど、演奏シーンや練
習シーンの随所にきらめく的確な描写。
 部員を始めとする登場人物の、明確な書き分け。
 エンターテイメント文学としての足腰がしっかりしているから、物語世界の
中に素直に入っていけるし、だからこそつい涙腺も緩むのだろう。

 大人になってしまえば、ああ、そんなこともあったっけ、と笑い飛ばせるよ
うなことが、人生の一大事に思える季節。
 それだけ、「いまがすべて」と思える年代。

 もちろん、「いまがすべて」というのは青春時代だけじゃない、いつだって
真実なのだ。確実に「在る」と言えるのは、この現在の一瞬だけであり、人は
過去も未来も、在った/在るだろうと信じるしかない。
 でも、なぜか大人になると、明日は確実に来ると思うようになる。過去の確
かさも疑わなくなる。
 ただ、青春と呼ばれる時期にだけ、ぼくらは「いま」を生きることにせいい
っぱいで、だからこそ「いまがすべて」という人生の真理を生きることが出来
るのだ。

 その意味では、彼らの方がちゃんと「わかっている」のだ。

 それでも、コンテストが終わり、物語が大団円を迎えた後――エピローグに
当たる終章では、あれだけ悩み、苦しみ、悲しんだのに、時が経てばやっぱり
音楽を続けている二人がいる。

 だからと言って、「ほら、結局、この、高校一年生であるたった一年、それ
だけが人生のすべてじゃなかったでしょ。それが過ぎてしまえば、何もかも終
わるわけではなかったでしょ」としたり顔で諭すのが著者の意図ではないはず
だ。

 その瞬間には、「いま」がすべて。
 そういう風に生きられるからこそ、青春は特別な輝きをまとっている。

 悩む若者に、そんなのは後から思えば大したことじゃなくなると言って済ま
せる、そういう大人には、なるまい。

 って、もういい加減大人なんだけど。


額賀澪
『屋上のウインドノーツ』
二〇一五年六月三〇日 第一刷発行
文藝春秋

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
令和の意味について、あーだこーだ説明されてますが、いくら言われても「法
令」とか「律令」の「令」でしょ、という第一印象が拭えない。ルールを守れ
よ、お前ら、と言われている気がして仕方ない。そのルールの中のルール、憲
法を変えようとしている人たちの気配がちらつく。ソクラテスは「悪法もまた
法なり」とは言ったが、さて、どんな「令和」になるのだろうか? いや、ぼ
くらがどんな「令和」にするのだろうか?

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『懐中時計礼賛
 The Shape of Timelessness ;The Book of Antique Timepiece』
 武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科研究室

 近年私は時計に凝っている・・・といっても何十万・何百万もするようなの
は買えないので、せいぜい雑誌を眺めて「あ〜これ欲しい」と思う程度でしか
ないのだがw

 そんなわけで懐中時計にも興味が出てきて本を探してみると、懐中時計の本
が全くといっていいほど無いのに気が付いた。欧米にはこの関係の専門書があ
って、相当深くまで研究や調査がされているようなのだが、日本にはそんな本
がないようだ。たぶんマーケットがないんだろう。

 で、この本である。しかし縦27センチ、横16.5センチと言う変形版でカバー
もついていない。書店に並んでもいない。

 売っているのは、マサズ・パスタイムという懐中時計マニアなら誰しも知っ
ているアンティーク時計の店だけだ。武蔵野美術大学が出版していると言って
も、実際は自費出版みたいな感じである。

 内容は、18世紀から20世紀初頭までのアンティーク懐中時計の写真集。それ
だけでは芸がないので蘊蓄エッセイも多数掲載されていると言うべきか、蘊蓄
が大量だからそれだけ多くの時計の写真が必要になったのか・・・よくわから
ないが、そういう本である。

 注文すると、本と一緒に販売店のマサズ・パスタイムのパンフレットと、同
社が紹介された数本のテレビ番組を収めたDVDがついてくる。今を逃すと、こ
ういう本はしばらく出ないだろうから、興味がある人は今のうちに買っておく
べきだろう。ちなみに表紙の色は2種類あるが、どちらも内容は一緒である。
http://antique-pastime.com/kaityuudokeireisan/

 最初に登場するのは18世紀のジョン・ハリスン、ジョージ・グラハム、ジョ
ン・アーノルドというイギリスの時計師たちの黄金時代の懐中時計。当時は遠
洋航海で自分の位置を測定するのに、緯度は測れたが、経度は測れなかった。
これを測れるようするには正確な時計が必要だと言うことで、彼らが時計の歴
史に残る多くの機構を作った。そして実際に作られた時計の精度は、今のクオ
ーツ時計にも匹敵する。

 しかし、当時の懐中時計など、庶民には手の届かない高価なものでもあった
わけで、ましてや当時のクロノメーター(高精度)クロノグラフ(ストップウ
オッチ)、ミニッツリピーター(時間を音で知るチャイム)付きなどさらに高
価なものである。

 作っている時計師たちも、当時のハイテクの最前線にしたことを自覚してい
たし、自分たちの作る時計が何代も受け継がれることを知っていたのだろう。
豪華な彫刻を施された金時計は、ちょっとこれ何なんだと思うくらい写真でも
すごさが分かる。

 次に出てくるのは、マリー・アントワネットの依頼を受けて超複雑時計を作
ったことで知られるアラン・ルイ・ブレゲの時計が出てきて、最後の方はスイ
ス・ドイツ、アメリカのメーカーの時計が出てくる。一万円札の渋沢栄一が使
っていたプレミアマキシマも出てくる。

 そうした時計の解説の間に挟み込まれているエッセイも興味深いが、特に見
るべきはマサズ・パスタイムの店主である中島正晴氏の開業を始めるきっかけ
から始まるエッセイだ。

 もともといい加減な気持ちでアンティーク時計の商売を始めたものの、売っ
ている時計が動かなくなったとクレーム続出。それで修理業者に出したら直せ
ないと言われる時計の多いことに呆然とした。

 ならば自分で修理をやるしかないと独学で修理技術を学んでいって、今や日
本を代表するアンティーク時計の修理技術を持つ人になったと言うからすごい。

 それもフュージーと呼ばれる鎖引き(チェーンで駆動力を伝える機構)の修
理までできる人は日本だけではなく、世界的にも少ないようで、欧米からも修
理依頼があるそうだ。

 それにしても、こういうのを読むと、アンティーク時計が欲しくなるから困
る(笑)。アンティーク時計が今の時計とは全く違う、工芸品としての価値が
あると言われる理由が分かるからだ。工業製品として大量に作られるようにな
ったウォルサムなどの懐中時計でさえ、すごい。ムーブメントの美しさは、今
同じものを創ろうとしたら100万円程度の価格ではすまないだろう。それが今
では半額どころかずっと安く買えるのだ・・・もっともマサズ・パスタイムの
時計は万全の整備がなされているので、ちと高価なものが多いようだけど。

 私など、若い時はクオーツ信者だった。精度こそ時計の良し悪しを決める絶
対的な指標だと思っていたから、セイコークオーツよりロレックスを買ってい
る人など理解できなかった。言い換えると、機械式時計を使っている人はアホ
じゃないだろうかと思っていた。

 しかし年食ってくると考えも変わる。多少精度が悪くても、毎日時間調整し
たりゼンマイ巻かなきゃいけなきゃ止まるような不便なものを「世話する」こ
とが楽しくなったりする。言い換えれば、生物ではないペットを飼っているよ
うなものだ。

 今は防水性の良い時計が多いので、機械式時計でもチクタクと時を刻む音が
聞こえなくなっている昨今、こういう古い懐中時計の音を聴きながらの読書も
なかなか雰囲気が出て良いものですよ。

(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)
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■「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
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困ったときはお仕事本。ピンチに読んだ3冊の本。
『インタビュー』(木村俊介)
『インタビュー術!』(永江朗)
『3秒で心をつかみ10分で信頼させる聞き方・話し方』(小西美穂)

 皆さんは今の仕事に就いて何年目ですか? おばちゃまはね〜、書籍や雑誌
に文章を書くという仕事をしてかれこれ30年〜40年になるかな? これほどや
ってると、力も手も抜く術を身に着けてしまって、まあなんとかなるだろう的
な日和見主義者になっちゃうのよね。でも、先日、そんな私をあざ笑うかのよ
うな恐ろしい仕事があったの。

 それはごくフツーの、若手研究者の話を聞いて800字でまとめるというもの。
「楽勝」って思ってました。それが、企画主旨や媒体や分野が漠然としていて、
私の準備不足もあり、まあ、とりとめのない取材になりいの、原稿化する段に
なったらどっちの方向で書いたらいいのかわからない、狃颪韻覆き畩態にな
ったわけです。作家じゃないから0から1を生み出すわけじゃなく、おばちゃ
まの仕事は原料(情報)に手を加えて商品(原稿)にするという加工業なわけ
で才能は関係なし。それでも書けないのよ。書けないとき、たった800字でも
ワード画面はまるで荒涼とした原野のよう。その前にたたずんで唖然とするし
かない私であった・・・。

 そんなとき、溺れる者はアマゾンをつかむとばかり、検索購入したのがこの
3冊のインタビューについて書かれた本。今まで、インタビューについて書い
た本なんて何の意味があるの?「人それぞれにやりゃあいいじゃん」と思って
いたのが嘘のよう。今日はそのアットランダムに選んだインタビュー本につい
て書きますね。

 最初に読んだのが『インタビュー』(木村俊介)。版元がミシマ社なので購
入。(売れ行きのことばっかり考えてる出版関係者にはミシマ社コンプがある
のよね)。300p超。たくさん仕事をしている人らしいのですが、偉そうでは
ないところに好感。インタビュー後の録音を聞いて、「ああ、沈黙がこわくて、
相手の発言をさえぎってしまってるよな」「この段階で、出てきた固有名詞を
自分が知らないということを、それとなく伝えておいたほうが良かったな。」
と思うとか、マジ、共感できる発言があちこちにあって、「あ〜私だけじゃな
かったんだ」と嬉しくなったりして肩の力が抜けました。インタビューは、単
なる情報の提供に終わる場合もあるけれど、一歩深いその人の本音を引き出す
と成功だけれど、それはなかなか難しいということも読み取れました。

 その次に読んだのが、『インタビュー術!』(永江朗)。インタビュー本の
定番です。冒頭、「あらゆるところにインタビューはある。世界はインタビュ
ーでできている」とカマして始まるこの本は、ロングセラーだけに内容は古い
!カセットレコーダーとテープなんて書いてあります。雑誌やPR誌が世の中
にたくさんあって、仕事量もライターもいっぱいいた時代の話です。共感した
のは「インタビューイーに何を聞きたいのか何も考えていない編集者が意外に
多い」ってとこ。そうそうそれそれ! 

 この2冊に共通するのは、どんなインタビューでも録音して、録音を起して
から原稿にしていること。いわゆる「テープ起こし」の重要性に触れているこ
とは「ちゃんとやろう」って勉強になりました。若いころはメモだけで原稿さ
らりと書けたけれど、記憶力低下の昨今は「忘れている」という理由のみで、
テープ起こしをしている私ですが、結果的にそれが王道だったらしいです。

 そしてラストが『3秒で心をつかみ10分で信頼させる聞き方・話し方』(小
西美穂)。その場で終わる一発勝負のテレビと帰宅してごそごそテープ起こし
をして原稿を書く印刷媒体では方法がまったく違うから参考にならないんじゃ
ないかと思ったのですが、おばちゃま、この本、おもしろかったです。限られ
た時間で必要な情報を届けながら、しかも一歩深い心情を吐露させるために何
をしたらいいのか、その切った張ったのせめぎ合いがカッコイイ。あとインタ
ビュアーが徹底的に裏方なのに対し、インタビュアーも演者として画面に映る
ので自分の見せ方にも心を配る必要があるってたいへんだなあと思いました。

 みんな苦労してるんだねとわかったところで、気持を切り替えて仕事に取り
組めた私。インタビューって学校があるわけじゃないし(あるの?)、インタ
ビュー検定なんて聞いたことがないから、やり方は基本、独学で個人個人で違
うんでしょう。(もし、私がインタビュー本を書くとしたら、第1章は「手土
産の選び方」になると思う。)

 この3冊を参考にしながら、「私もがんばるよ」と心に誓った次第です。
 困りはてていた800字のインタビューは四苦八苦して納品したら、すんなり
OKになりました(逆に、「なんでや!」)。

 それも含めてインタビューはおもしろい! まだまだ、がんばるぞ〜。だっ
て世界はインタビューでできているんですから。

大友舞子(おおとも・まいこ)
昭和20年代生まれのフリー編集&ライター。関東生まれで関西在住。

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■あとがき
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 配信が遅れました。

 あと一週間で平成も終了ですが、4月も終了なんですねぇ。

 GW前でばたばたされている方の一服の清涼剤に、どうぞ。(あ)

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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<112>伊藤重夫の神戸を、令和から振り返る

 大阪市内の路上で激しくスっ転んだのは、3月中旬だった。ビル敷地と舗道
との間にあった段差に気づかず、足を踏み外してしまったのだ。
 その場はなんとか立ち上がり、痛みに耐えつつ電車に乗って家に帰ったのだ
が、一向に痛みは引かず、見ると足の甲あたりが腫れ上がってもいる。
 痛む足を引きずりながら病院へ出向いて、レントゲンを撮ってもらうと、足
の甲の骨にひびが入っていた。

 即刻ギプスを嵌められて、松葉杖で帰った。
 どうやら足を踏み外した時に、甲の片側に全体重をかけてしまったらしい。
 ギプスは、取り外しのできる半ギプスで、足先を浮かせて踵だけを使うと、
なんとか歩くことができたので、そうやって出かけてもいたのだが、1週間後
に再検査したところ、「ヒビが広がっている」とのことで、絶対に足をつけな
い完全ギプスと相成ってしまった。

 もはや松葉杖なしでは動くことも叶わず、外出は必要最低限にとどめて、養
生に相務めているうちに、平成の次の元号が「令和」と決まった。
 初めて聞いたときには、「令」の字に、なにやら安倍内閣の「黒い意図」が
含まれてるような気がして、違和感というか、いや〜〜な感じにもとらわれた
が、考え過ぎか?

 新元号は、世界でもあちこちで話題になってるようだが、中国のネットには、
次のような書き込みがあったとか。

明治養士(明治は士を養い)
大正養国(大正は国を養い)
昭和養鬼(昭和は鬼を養い)
平成養豚(平成は豚を養い)
令和養老(令和は老人を養う)

 思わず「うまい!」と唸ってしまいましたですよ。さすが、漢字の本家本元。

 しかし、今回の「令和」は、初めてその典拠が中国の古典ではなく国書から
採られた、とか言うてますけど、ならばいっそ、読みも中国語由来の音読みで
はなく、大和言葉の訓読みにしても良かったんじゃないか?
 令和を訓読みだと、「よしかず」…では名乗り読みだな、「よきなごみ」?
 「よきなごみ元年」、いいではないか。今からでも、こっちにしない?

 にしても、昭和、平成、令和とくると、ますます西暦との「変換」が難しく
なってくる。
 ようやくここへきて、運転免許証には、元号と西暦併記、と決まったそうだ
が、「遅いわ!」と言いたい。
 わしの次の更新年、「平成35年」て、いつだ!?

 新元号も決まり、平成もあと1か月。メディアでは「平成を振り返る」企画
が目立ってきた。
 そんなとき、ネットで見つけたのが、伊藤重夫の漫画が復刊された、との情
報だった。

 伊藤重夫の漫画が読みたいのに、古本屋でもなかなか手に入らない、という
状況に業を煮やしたファンが集結し「復刊委員会」を結成、クラウドファンデ
ィングを起ち上げて、既に一昨年の2017年、その第一弾『踊るミシン』を復刻
し、2018年にその第二弾が発売された、と言うではないか。
 この情報を知ったのが3月。既に残り部数が少ない、とのことで、即刻注文
しましたよ、『ダイヤモンド/因数猫分解』(アイスクリームガーデン・刊)
定価税別1990円。

 伊藤重夫は、神戸出身、今も在住の漫画家でデザイナー。
 1972年、林静一や鈴木翁二等、いわゆる「ガロ系」作家も多く執筆陣に名を
連ねた伝説の漫画同人誌「跋折羅」で漫画家としてデビューした。
 「跋折羅」は、刊行当時のリアルタイムで、何冊か買った記憶もあるのだが、
伊藤重夫という名と作品を初めて見たのは、もう少し後の、「夜行」(北冬書
房)で、だったと思う。
 確か、神戸・垂水を舞台にした漫画で、今回の単行本に収録された『塔をめ
ぐって』と同じトーンの作品だったと記憶する。

 当時は東京に暮らしていたので、神戸が舞台、しかもその神戸でも全国的に
はあまり知名度の高くない西の端っこの垂水が舞台、ということで、女の子の
キャラクターが何やらはかなげで印象深いその絵柄とともに、強く記憶に残っ
た。

 伊藤重夫は、1980年代に至ってメジャーの商業誌でもその名をぽつぽつと見
るようになり、1990年から、“伝説の漫画雑誌”「A・ha」に、オールカラー
の漫画を連載する。
 伊藤重夫の経歴には、「伝説の」とか「幻の」が、やたらとついてまわるの
だが、「A・ha」は、アート系コミックを目指した、というとても斬新な雑誌
で、これがもし成功していたなら、後の日本の漫画シーンも、今日とはまた違
った方向で発展していた可能性もあるのだが、一般の雑誌の形態ではなく、発
行元は石油会社の「ESSO」で、系列のガソリンスタンドでのみ売られていた…
ので、一部の好事家の間では話題になりこそすれ、その存在が一般に知られる
ことはまずなかった…のだった。

 今回の復刻版『ダイヤモンド/因数猫分解』に収録された『ダイヤモンド』
が、「A・ha」に連載された漫画で、これが今回は連載時と同じオールカラー
で収録されているのも、また嬉しい…って、実は雑誌自体は、当時その存在を
知っていた…というか「伝説」として見聞していただけで、実際に見たことは
なかったのだけど。

 今回の復刻版の「あとがき」に伊藤重夫自身が書いているが、作品の完成度
にとてもこだわる性格の故に、商業誌のペースでは、なかなか思うように作品
をつくれなかったようだ。
 「あとがき」では、「某大出版社」から5回の連載を依頼されたものの、1
回目が掲載された直後に「失敗作」と認識し、自らその後の連載を断った、と
いうエピソードも披露されている。
 それ故かどうか、伊藤重夫は90年代以降、神戸でデザイン事務所を開いて後
は、漫画からも遠ざかり、彼自身が「幻」で「伝説」の漫画家となった。

 今回の本では、「A・ha」に連載されたオールカラーの『ダイヤモンド』が
最初に収録されている。
 前述のように、これは今回初めて読む作品だったのだけど、驚いてしまった
のは、発表から30年近くが経っているのに、まるで「古びてない」ということ。
 「古びてない」どころか、まるきり「新しい」のである。
 今どきの漫画家で、街を、こんなに活き活きと、ポップに描写できる作家は、
まずいない、と思う。

 そうなのだ。伊藤重夫が描いた神戸。
 これぞ、神戸だ。
 まだ震災前の、元気だったころの、全国に向けて流行を発信していたころの
神戸と、その街中を縦横無尽、昼に夜に、おもろいことを求めて全力で駆け回
る男女が、カラーの画面から踊りながら飛び出して来る。
 東京にいたころ、月に一度神戸への出張があったのだけど、毎月毎月、この
元気な神戸を見るにつけ、「帰りたいな」との意を強くしていった…というこ
とを思い出しもした。

 今回、改めて伊藤重夫の漫画をじっくりと読み、その背景、ことに街景の描
き方が、同じ神戸出身の佐々木マキに、似ている、というんじゃなくて、なん
か同じ空気観を醸してるように見えた。
 女性、ことに少女の描写では、絵柄はまったく違うのだけど、その肢体のし
なやかさには、思わず林静一を彷彿してしまった。
 「ガロ系」の系譜、というよりも、伊藤重夫は、「アート系漫画」の正しい
継承者、と思うのだが、できたら「新作」も読みたい、というのは、贅沢に過
ぎるかな。

 その『ダイヤモンド』では、今回の本への収録に当たって、冒頭に「第4話」
を持ってきて、その後に「1」「2」「3」「5」と続けられている。
 説明的な描写の多い「第1話」を後ろに持ってくることで、「いきなり」な
唐突感を演出してあって、この作り方には「なるほど!」と唸ってしまいまし
た。

 今回の本、『ダイヤモンド』以外の所収作の、そのいくつかは、かつて雑誌
等の初出で読んだ覚えがある。
 …のだけど、ここでもユニークな試みがなされていて、収録作の三作目、
『ワルキューレ・塔をめぐってよりReMIX』は、『因数猫分解』『コートにす
みれ』『1922年のアインシュタイン』『ワリュキューレ』『塔をめぐってより』
という、全く別々の5作品を、それぞれのトビラ頁を取っ払うことで、強引に
ひとつに繋げてしまっているのだ。

 なので、当初は、読んでいて「あれ?」となるのだが、気を取り直して読み
進むうち、1920年代の神戸で、既に卒業して東京に暮らす「タルホ先輩」の後
継者たらんと、行きずりの女学生への恋心を胸に秘めつつ、ヒコーキの自作に
執念を燃やす旧制中学生たちと、自主製作の映画撮影に情熱を燃やしながら、
オンナにもウツツを抜かす、あるいは去ってしまった友と幼なじみの少女の間
で心を震わせる、1980年代の、神戸・垂水の不良少年たちの青春群像が、きっ
ちりと1本に繋がってくるのである。

 結構な時間をかけて1冊を読み終えて、ふと顔をあげたとき、漫画の中に
「風」を、感じながら読んでいたことに気付いた。
 それは、神戸北野町に夕暮れから吹いてくる六甲おろしの風だったり、大正
時代の三宮元町に吹いていた、港からの風だったり、舞子海岸の松林を通りす
ぎる風だったり、伊藤重夫の漫画には、それぞれの場所、それぞれの時代に吹
く風が、きっちりと描き分けられているのである。

 昭和平成を過ごし、まもなく令和を迎えるにあたって、伊藤重夫の漫画こそ
が、まさしく、正しい「神戸漫画」だと断言したい。
 もっとたくさんの人に、この漫画を読んでほしい、あのころの神戸を知って
ほしい、と切に願う。
 今回の復刻版は1990円、と結構なお値段ではあるけれど、それだけの価値は、
充分にある、ので、是非、是非!
 クラウドファンディングでは、かなりな資金が集まったようでもあり、重版、
も期待してしまう令和元年目前なのだった。

太郎吉野(たろう・よしの)
阪神タイガースお膝元在住。右投げ右打ち。趣味は途中下車、時々寝過ごし乗
り越し、最長不倒距離は三重県名張。
ちなみに「阪神タイガース」の「阪神」は、「兵庫県阪神地方」を指します。

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第111回 悲しみのフクシマ 故郷と心の喪失(柳美里の芝居)

 芥川賞作家の柳美里は、福島県南相馬市で書店を経営しながら、地元高校の
演劇部と芝居をしている、という記事が新聞に載ったのは、昨年の秋だった。
彼女の戯曲で高校生が演技するその芝居は南相馬市で上演されたという。南相
馬市は福島第一原発の北に位置しているので、もし東京からこの芝居を果敢に
観に行こうとするならば、常磐線の不通区間を迂回するので、東北本線経由で
行かなければならない。時間的に無理がある、とその時は、芝居の鑑賞を早々
に諦めた。柳美里は作家よりも先に演劇人(役者・演出家)として出発したよ
うだ。演劇に挫折しかけたときに小説を書き、その分野で成功を収め、小説家
として多忙を極めていたときに東日本大震災が発生した。・・・・・ここにも
あの震災によって人生が変わった人がいる。

 そしてその柳美里の芝居が昨秋と同じ福島県立ふたば未来学園高等学校の演
劇部の出演よって、この3月に東京で上演されることになった。その芝居を北
千住のとある小屋で観た。そして、その芝居が載っている柳美里のサイン本を
買った。

『町の形見』(柳美里 著)(河出書房新社)(2018年11月30日 初版)

 「町の形見」、「静物画2018」、「窓の外の結婚式」という三つの戯曲
が載っている。そして、本書の核となる「静物画2018」が高校生による芝
居であり、この芝居には女性版と男性版のふたつの戯曲があり、同じ展開であ
るが、役者が男性だけのものと役者が女性だけのものがある。まさにこの「静
物画2018」が3月に北千住で上演された芝居なのだ。

 主要な登場人物は6名。その6名の名前は“りょう”、“なお”、“はる”、
“まこと”、“さつき”、“あゆむ”と男女どちらでも可能な名前になってい
る。演じている高校生と同じ境遇の6名。津波と原発で家と故郷を失った高校
生。震災当時は小学生だった。彼らがどんな経験をしたか、どんなことを思い、
考えているか、どういう行動を取ったか、等身大の同じ高校生によって、フク
シマの現実を描写している。というより、これは完全なるあて書きだと思った。
彼ら福島浜通りの高校生がそこにいて、柳美里は彼らのことを想いながら、こ
の「静物画」という以前からある自分の戯曲を彼らのために大幅に改訂したの
だろう。

 この芝居は一言で云えば悲しみの芝居なのだ。みんな余計なことを喋ってい
るけど、心の中にはそれぞれ悲しみとそして苦しみを抱えている。別れをたく
さん経験し、身近に思い通りにいかない人々がいて、差別もあり、自分の将来
も見えず、沈黙が支配する、この世の中で、どう生きていかなければならない
か。それはいたいけな高校生には少し重すぎる命題なのだ。残酷なことに時は
流れる。待ってはくれない。立ち止まっているうちにどんどん進んでいく。取
り残された自分に気がつき、焦ってみてもどうしようもない。やっぱり時は進
んでいくのだ。客観と主観の間にあって、この時間だけが冷徹にその主義主張
を貫き通している。我々人間は、その冷徹な時間に支配され、その主客は絶対
に逆転することはないのだ。

 そうはいいながらも、流れ続けていて決して止まることがない時間を、我々
は切り取ることはできる。それが思い出とか、あの時あの瞬間、とか、記憶と
かいうもの。そしてあの震災。震災後8年が過ぎても、我々日本人は、あのと
き、何をしていたか、はひとりひとりがはっきり記憶している。2011年・平成
23年3月11日金曜日午後2時46分、あなたは何をしていましたか? 当時を生
きていたほとんどの日本人がこの質問に答えられる。そして、その記憶がこの
芝居を生んでいる。

 すべての始まりは、この質問と各自の答えにある。“あの日あの時、なにを
していたか。”

 人が違えば経験が違い、その経験は人の数だけ存在する。あの時の記憶をひ
とつひとつ丁寧に紡ぐとき、福島の浜通りでは、悲しみと沈黙しか残らなかっ
たのだろう。その紡いだ悲しみと沈黙を柳美里は芝居にして、それを被災者で
あり、同時進行の高校生に演じさせた。演じた高校生は、おそらく悲しみと沈
黙から少し解き放たれた。・・・・・だろう。そして芝居を観た我々は、立ち
止まり、思いを受け止め、彼らが抱えていたそれが予想外に重いものだったこ
とに愕然とする。しかしそれを受け止めることが我々の使命だと気づき、その
ままそれを受け止め続けようとする。少なくとも執筆子であるやつがれはそれ
を手放すことはしない。したくない。


多呂さ(平成の御代は戦争はなくても災害とテロが喧しかった。昭和の御代は
戦争があっても生きる活力に溢れていた。・・・・・では次の令和の御代はど
んな御代になるのか。悲しみを抱え続ける御代になるのだろうか。)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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94 おもしろい本を読みたい

 『ぬけ穴の首 西鶴の諸国ばなし』廣末 保 岩波少年文庫

 1972年に、平凡社で刊行されたものが、岩波少年文庫で読めるようになりま
した。

 江戸時代の作家、井原西鶴の話を種としてつくられた7編が収録されていま
す。作者廣末さんのあとがきによると、西鶴の作品では四百字詰の原稿用紙4
枚から7枚程度のものを、廣末さんの作品では3倍から8、9倍の長さになっ
ているそうです。

 江戸時代に書かれた内容なので、もちろん時代ものですが、めっぽう読みや
すく、話の種からきれいに花が咲いたもの(物語)を鑑賞させてもらえます。

 タイトルにもなっている「ぬけ穴の首」はぞくりとさせる怪談話のよう。

 判右衛門の兄はささいなことで殺害され、兄嫁から仇討ちを依頼されました。
気はすすまないものの、断ることもできず、息子をつれて相手を斬りに行くの
ですが……。

 殺害される理由が髑髏によって語られるシーンもあり、終始怖さがつきまと
います。それでいて、世の理をみているのだと納得させられるところもあるの
ですが、最後は本当に怖い。

「わるだくみ」は、知恵と才覚で一介のお茶販売から、茶問屋の主へと一財産
を築いた利助の話。本来は金儲けよりも、おもしろいことをするのが好きだっ
た利助なのですが、儲けが大きくなるにつれ、お金に魅力を感じ……。

 人の欲について書かれた話は、昨今、ニュースにもなる会社の不正とよく似
てます。この話のおもしろさは、利助が死んだ話のあと話も短篇のように書か
れているところで、最後の最後まで、ひっぱられます。

 いつか西鶴の作品そのものも読んでみなくては。

 さて、次にご紹介する絵本も、作者は亡くなっており、その作者スキャリー
さん生誕100年に邦訳されたものです。

 『スキャリーおじさんのとってもたのしいえいごえじてん』
 リチャード・スキャリー さく ふみみさを やく
 松本加奈子 英語監修 BL出版

 絵本作家として活躍したスキャリーさんはアメリカ・ボストン生まれ。出版
された絵本の発行部数は2億冊を超えたともいわれています。

 作者紹介を引用すると、スキャリーさんのことばに「どんなものにも教育的
な面がある。でもぼくが伝えたいのはおかしさだ」と語ったそうです。

 そのとおり、スキャリー絵本はどれも楽しいものばかり。

 本書は英単語を楽しく覚えられるもので、英単語に意味とともにカタカナで
の読み方がついています。

 このカタカナの読み方が工夫されていて、アクセントを強くするところは太
字で大きく、文字も大小組み入れて、英語の音に近い読み方ができるようにな
っているのです。

 文字も並べているだけではなく、「えをかこう、いろをぬろう」「おもちゃ」
「どうぐ」「くうこう」など、様々な場面にたくさんの動物を登場させて、い
きいきとした雰囲気の中、英単語がおかれています。

 家の本棚にこの絵本があれば、子どもが一人読みで楽しく英語にふれられそ
うです。

 最後にご紹介するのは、
 名探偵 テスとミナシリーズで最新刊は3巻。

『名探偵テスとミナ みずうみの黒いかげ』
 ポーラ・ハリソン 作 村上利佳 訳 花珠 絵 文響社

 ふたごみたいにそっくりな2人テスとミナ。
 けれど、立場は正反対(!?)
 ひとりはメイド、ひとりはプリンセス。年は同じ10歳です。

 かわいらしいテスとミナが表紙のソフトカバーなつくりは、小学校中学年く
らいの子が楽しめそうです。

 ふたりのいるお城で事件がおきると、立場を入れ替えながら、解決していく
ミステリーでもあり、メリハリある展開で謎解きの吸引力はかなり強く、おも
しろいのです。

 巻末にはファッションコーデの特別ページもつけられていたり、3巻ではオ
リジナルアイテムとしてブックマークやポストカード、時間割表もついている
という豪華さ。(時間割表、なつかしい!)

 知人の小学5年生の女の子に紹介したところ、毎晩夢中になって読んでいる
とのこと。次の巻は7月発売予定。


 さて、本を読んでおもしろい!と思うのは本読みにとって至福のときですが、
このよく使う「おもしろさ」。
『ぬけ穴の首』には町田康さんが古典の「おもしろみ」という文章を寄せてお
り、そこでこう書いています。

「多くの人は、おもしろいことはただひたすらにおもしろいだけ、と信じてい
るが、実はおもしろさには二種類のおもしろさがある。」

 この二種類のおもしろさの話がまた「おもしろい」のでぜひご一読を。


(林さかな)
会津若松在住。「本の雑誌」新刊めったくたガイド海外文学担当。
http://1day1book.strikingly.com/

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ― 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510

・『支え合い・学び合いで育つ「わたし」』(エディット・パルク)
  http://web.kyoto-inet.or.jp/people/cogito/%8Fo%94%C5%88%C4%93%E0/%8Ex%82%A6%8D%87%82%A2%81E%8Aw%82%D1%8D%87%82%A2.html

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

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 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

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2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

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 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

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 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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 配信遅くなりました。ちなみに、私は「令和」の発表を、歯医者で歯を削ら
れながら聞きました。(あ)

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#104『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』

 前回も書いたが、音楽療法で効果があったり、胎教によかったり、聴かせる
と植物がよく育ったりする、というと、なぜか頻繁に出てくるのがモーツァル
ト。
 しかし、映画『アマデウス』を見てクラシック音痴ながら興味を惹かれ、い
くつか聴いてみたが、通して聴くとぼくには退屈だったモーツァルト。

 そのモーツァルトをジャングルで演奏する話か、とタイトルからは想像され
るが、まったく違う。アメリカでドラマ化されているらしいから、ご存知の方
も多いかもしれないが、ここで言うモーツァルトは象徴であって、意味はいわ
ゆるクラシック音楽。ジャングルは、生き馬の目を抜く大都会ニューヨークの
ことである。
 
 すわなち、ニューヨークのクラシック音楽業界の内幕を暴いた、オーボエ奏
者にして音楽ジャーナリストである著者ブレア・ティンドールの自伝なのであ
る。

 副題に『セックス・ドラッグ・クラシック』とある。もちろん、ジャニス・
ジョップリンをモデルにした映画『ローズ』の中で歌われた曲『セックス・ド
ラッグ・ロックンロール』のパロディだ。
 これだけで、この「ジャングル」がどんなものか、大方の察しはつく。

 だが、本書はさまざまに読むことが出来る。

 スキャンダラスな暴露本として。

 あるいは、ブレアが経験したいくつかのラブ・ストーリーとして。
 分けても、父親ほど年の離れたピアニスト、サムとの物語として。

 だがぼくは、クラシックの演奏家という、知られているようで実はまったく
知られていない、特殊な仕事の実態を描いた、「職業」の物語として、さらに、
そこから脱却しようとした一人の女性の「キャリア」の物語として読んだ。

 もちろん、現在のぼく自身が会社を早期退職して、次のキャリアを模索して
いる状況だからだ。

 地方出身のブレアは小学校の時、「音楽をやってみたい子は?」と訊かれて
手を挙げた一人であった。この時、目の前に並べられた楽器から、一人一人や
りたいものを取っていったのだが、名字のアルファベット順だったため、ティ
ンドールという姓が災いして、もはやろくな楽器が残っておらず、仕方なくオ
ーボエを選んだという。

 うちの甥っこは小学校に上がる前、親に連れられてコンサートに行き、クラ
リネットに興味を示したらしい。終演後の質問コーナーで「何歳になったらク
ラリネットが出来ますか?」と訊き、「小学校二年生くらいからかな」という
答えを得た。それから数年して、みなそのことを忘れていた時、「二年生にな
ったからクラリネットがやりたい」と言い出したそうだ。以来、高校くらいま
で練習に通っていた。

 だが、ブレアにとってオーボエは自分の意志とは無関係な、不毛の選択だっ
たのである。
 もっとも、もしZで始まる姓だったら、カスタネットになっていただろう、
とも書いている。オーボエでも、まだましだったわけだ。

 ところが、始めてみるとこの楽器、地味でやり手が少ないので競争もあまり
なく、目立ちたがりで勉強嫌いという性格には合っていた。そしてそのまま彼
女は、音楽学校に進学した。いや、後の展開を考えれば、してしまった、と言
うべきか。

 地方とは言え音楽学校であり、それなりに生徒たちはアーティスト気質であ
る。自然にブレアは、副題の最初のふたつを経験することになる。
 卒業すると、ニューヨークの音楽大学に進み、やがてプロの道を辿るのだが、
そこでも常にこのふたつは付いて回る。

 冒頭に、音楽仲間の家へ遊びに行くシーンがあるが、コカインを決めて大音
量で音楽を流し、ハイになるのはロック界と変わらない。
ただ、曲がニルヴァーナではなく、ワーグナーだというだけだ。

 男性遍歴もめまぐるしいが、これには「ジャングル」特有の事情もある。

 クラシックの場合、オーケストラの一員に雇われるか、フリーランスで仕事
を取るかの二択であるという。前者の方が生活は安定するが、生憎席は限られ
ており、一旦メンバーになると相当な高齢になるまで引退しないので、なかな
か次の人の番が回ってこない。

 そこでブレアは、フリーランスの道を行く。

 オーボエは奏者の数も少なく、その点では有利ではあるが、逆に必要な人数
も限られていて、やはり仕事を取るのは生半可なことではない。
 この世界はオーディションよりコネがものを言うこともあって、彼女はさま
ざまな先輩オーボエ奏者たちとつきあい、彼らから仕事を回してもらうことに
なる。
 最後の方で人生を振り返り、結局寝た男からしか仕事を取れなかった、と回
想している。

 しかし、そうしたドラッグとセックスにまつわる業界暴露よりも、ぼくが面
白いと思うのは「職業としてのクラシック音楽演奏」の実態である。

 フリーになる前、もちろんブレアもいろいろなオーケストラのオーディショ
ンを受けた。
 彼女がまだ若かった80年代後半は、アメリカにクラシックの音楽文化を、と
いう社会的風潮があり、景気もよかったので、新しいオーケストラが全米各地
に生まれ、チャンスも多かった。しかし、前述のようにオーディションの壁は
厚く、二十何連敗。旅費は自腹なので、広いアメリカでは飛行機代やホテル代
もバカにならず、そうこうする内に景気も減速。多くのオーケストラが経営難
に陥る。

 この辺りはジャーナリストらしく、具体的な数字をさまざまに上げ、リアル
に業界の厳しさを感じさせる。
 また、オーケストラやコンサートホールを運営する団体の上層部が、演奏家
以上の高給を取っており、助成金も市民の寄付もここに吸い取られて失速して
いるという実態も暴かれる。

 話は逸れるが、以前当欄で取り上げた佐々木忠次『オペラ・チケットの値段』
でも、東京初台にある新国立劇場に、ろくな仕事もしない余剰役人が群がる実
態が書かれていたことを思い出す。日本もアメリカも、役人天国に変わりはな
いのか。

 オーケストラもだめ、フリーも厳しい。こうした状況に限界を感じ、ブレア
はブロードウェイのミュージカルに手を出すようになる。

 「手を出す」って何か悪いことみたい、と思われるだろうが、アメリカでさ
えクラシック音楽の世界ではミュージカルが一段低く見られ、ブロードウェイ
の仕事を引き受けると、仲間内で「あいつも落ち目だ」と囁かれたそうだ。
 これにはぼくもちょっと驚いたが、しかし、その仕事の現場をつぶさに語ら
れると、なるほど確かにひどい労働環境である。
 つまり「ブラック」だ。
 それも『ミス・サイゴン』とか『レ・ミゼラブル』のような大ヒット作でも
そうなのだ。

 それでも好きなことでお金が稼げるなら幸せではないか、と外野席は思って
しまうが、単調な音階練習に明け暮れる日々、本番でも同じ曲の繰り返し、そ
れがとても知的で創造的な生活とは言えない、と指摘されれば、う〜んとうな
らざるを得ない。

 昔テレビで、オーケストラの高名な打楽器奏者を取り上げたドキュメンタリ
ーを見た。打楽器は必ずしも出番が多い楽器ではない。長い交響曲などの場合、
待ち時間に彼は捕り物帖を読んでいた。
 番組では、本を読んでいても自分の出番がちゃんとわかるのはすごい、と言
っていたが、ぼくは違う感想を持った。クラシックなんて、いい加減なもんだ
な、と。

 しかし、ミュージカルでも同じだった。というか、もっとひどかった。
 クラシックと違い、オーケストラは地下のピットに押し込められるから客席
から見えない。それをいいことに、譜面台の上には楽譜だけではなく、長い待
ち時間の暇潰しが乗せられているのだという。本だったりクロスワード・パズ
ルだったり。いまならスマホやゲームなんだろう。
 ブレアが演奏家に見切りをつけ、キャリア・チェンジを目指した時は、そこ
に数学の教科書が乗っていた。転職を試みても、普通高校を出ていない彼女に
は、例えば数学の基礎もまるでなく、その勉強から始めなければならなかった
のである。

 それでも文章を書く天分があることに気がつき、自分の経験を生かした音楽
ジャーナリストとして道を切り拓くこが出来た彼女は、まだしも幸運な部類に
入るのだろう。
 しかも、音楽の演奏をまったく捨てたのではなく、それまでよりゆとりを持
って、オーボエを吹くことを楽しめるようになったと言う。

 いや、ほんと、キャリア・チェンジは難しい。それはこの一年弱でぼくも実
感した。だからこの辺りは、身につまされる。

 ともあれ、スター級の音楽家の伝記はたくさんあるが、ブレアのような、彼
らを支える側の演奏家、それもオーケストラの一員にもなれない、フリーラン
スの演奏家の自伝というのはこれまでなかったと思う。

 ぼくも高校の時は、音楽の才能があると思っていた。だが、大学に入って、
自分より遥かにうまい先輩たちが、普通に就職していくのを見て、あえなく挫
折。
 でも、本書を読むと、あそこで挫折してよかったのかな、と思ってしまう。
 夢のない話だけど。


ブレア・ティンドール
柴川さとみ訳
『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル 〜セックス・ドラッグ・クラシック』
(上・下)
2016年12月10日 初版発行
ヤマハミュージックメディア

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
この一年、読書量が格段に落ちました。通勤電車という図書室がなくなったか
ら。仕事中も移動の多い職種だったので、その間も電車で本を読んでいたし。
まあ、家で読めばいいんですが、電車に揺られていると、なぜか読書って捗り
ません?

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■「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
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ストップ・ザ・味噌汁の神格化!
『医者が考案した「長生きみそ汁」』(アスコム)
『はなちゃんのみそ汁』(文芸春秋)

 前に、庶民は権威に弱いと書いたことがあったと思います。

 権威とはたとえば、「医者」とか「東大」とか「富豪」とか「官僚」とかか
でしょうか。だから「医者がすすめる」と名前がつくとみんなよく考えもしな
いで手を出しちゃうよね。(あと最近は「AI」。「なんかわからんけどすご
いらしい」って理由もなくあがめてるよね)。

 「偉い」ことを「権威A」と名前をつけるとしたら、これとは「自然」とか
「清貧」も一種の権威になっていませんか。「名もなく貧しく美しく」って。
あと「母」ね。これはマリア信仰から来るからけっこう根深い。これは「権威
B」と名づけましょう。いろんなベクトルの権威の中で私たちは生きているん
だ。

 だから、「医者が考案した『長生きみそ汁』という本のタイトルを見たとき、
「権威がAとB、2つも入っとる!」とおばちゃまは驚嘆しましたよ。売れな
いはずはない!案の定、売れてて新刊本の広報テレビ番組となっている「世界
一受けたい授業」でも取り上げてます。

 中を見てみると、なんということはないみそ汁のつくり方を書いたみそ汁カ
タログです。ポイントは具とみそをまるめて冷凍して「みそ玉」をつくるとい
うところですが、これもまあ、作り置き系の料理研究家ならだれでもやってい
ることで特に新しいことではないのに、「医者がすすめる」ってだけで「糖尿
が治った」「血圧が下がった」と大騒ぎです。

 「みそ」というのは「自然」系なので「権威B」、そしてノルタルジックな
「母のイメージ=権威B」もあります。

 おばちゃま、決してみそ汁を批判しているわけではありませんよ。おばちゃ
まだって2日に1度は必ずみそ汁つくって飲んでるから、みそ汁は大好きって
か日常。でもねえ、なんか、妙に神格化されていることが気に入りません。神
格化されているということは、それだけ一般社会の暮らしから遠のいているっ
てことで、みそ汁がなんかあがめられる存在になってしまっている。それって
みそ汁にとってはというか食生活にとっては、損じゃないの?

 だいたい、少し前までみそ汁は塩分過多の日本食の悪しき象徴だった。日本
人に脳梗塞が多いのは味噌汁に代表される塩分の多い食事のせいだって言われ
てませんでした? それがまあ、いつのまにか神格化ですよ。これって食の右
傾化? みそ汁の向こうにでんとそびえる価値観がなんかイヤ。ついでに食育
って言葉も嫌い。食育の向こうに家父長制度が見える・・・(私はフェミニス
トではありませんよ)。

 と毒づいたところで、もう1冊「はなちゃんのみそ汁」。これがまあ、批判
しにくい感動を呼ぶ大絶賛本です。絶賛されているだけに批判もされているみ
たいなのでさくっとだけ。

 あるお母さんが若くして乳がんになりますが、子どもを出産。余命いくばく
もないと知った母は、残された子どもが自分で生きていけるように、家事を教
えるんですが、その代表が「みそ汁作り」なんですね。このとき、娘さんは5
歳とか6歳の就学前。それなのに朝6時に起きてみそ汁をつくって玄米のご飯
を炊くんですよ。朝、6時って暖かい九州でも寒いでしょう。日が昇るのが遅
いから冬は外は暗いんじゃないのかしら。そのとき、父はどうしているのか書
いてないけど、あのう、お湯をそそぐとできる「クノールカップスープ」じゃ
だめですか?「クノール高い?」じゃ、「スジャータ」なら少しは安いよ。ど
うしてもみそ汁じゃないといけないなら「アマノフーズ」のフリーズドライで
は? だめなんだろうなあ。自然のものでないとだめなんだろうなあ。無添加
にこだわって5歳の娘が朝6時に起きてみそ汁をつくらなくてはいけない理由
をだれか教えてほしいでした。

 どうか、みそ汁が必要以上にあがめられて権威を持つことなく、みそ汁本来
の姿で日常の食卓にのぼり、みそ汁の「中の人」が自分らしく生きる(みそ汁
の「中の人」って何?)ことができるように祈っています。


大友舞子(おおとも・まいこ)
昭和20年代生まれのフリー編集&ライター。関東生まれで関西在住。

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『カイロ大学』浅川芳裕 ベスト新書

 2010年に『日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率』という本
を出して話題になった人である。その後も農業関係の本をたくさん出されてい
るが、もともとこの方、カイロ大学出身である。

 で、ひょっとしたら何度も蒸し返される小池百合子都知事のカイロ大卒業疑
惑の関係で出されたのかも知れないが、そんなことはどうでもよろしい。

 まずカイロ大学は、どんな人材を輩出してる大学なのかといえば、PLOのア
ラファト議長に、イラクのフセイン大統領に、アルカイダの指導者ザワヒリ、
オイルショックで世界を震撼させたヤマニ石油相や国連を率いたガリ国連事務
総長、IAEAのエルバラダイ事務局長、2011年のエジプト革命のリーダー、アハ
マド・マヘルほか、どっさりと大物がならぶ。

 清濁関係なしに世界を動かしてきた中東の大物が多い。変わり種と言っては
何だが、ネットセキュリティの技術SSLの生みの親、タヘル・エルガマル博士
もカイロ大出身だし、元大相撲力士大砂嵐もカイロ大学出身だ。

 日本人出身者は少ないが、小池百合子、中田考をはじめとして、有名な人も
多い。そんな人たちを輩出し続けるカイロ大学は、「混乱と闘争」が学風とい
うむちゃくちゃなところ。

 エジプトの首都カイロは、日本人が思っているよりもずっと治安がよく平和
な街でなのだが、カイロ大学の中だけは別世界だとか。学生運動が盛んで、い
つ逮捕され投獄されるか分からない。学内に秘密警察まで拠点を置いている。
逮捕投獄はもちろん、下手すりゃ殺されることもそう珍しいことではない。学
内の治安は最悪である。

 そんなところだから、サダム・フセインは卒業試験の時にピストルを横にお
いて試験を受けていたという。卒業させなかったらどうなるか、試験官に圧力
かけていたたわけで・・・むちゃくちゃ。

 そんなところで揉まれるわけだから、カイロ大学出身者は基本「乱世」に強
い。何があっても驚かないし、何としても生き残っていく力を持っている。そ
していざという時の行動も大胆だ。確かにそう言われてみれば、小池百合子も
中田考も、そして浅川氏もそんな雰囲気をただよわせる人物である。

 そもそも建学した人たちからして1人ではない。非宗教的な欧州(というか
フランス流)の大学に比肩する大学にしようとした人もいれば、女性の地位向
上を目指した人。逆にイスラムの枠組みを大事にした人もいれば、中東がダメ
になったのは腐敗したカリフやウラマーのせいで、イスラム教徒は原典を読む
べきとした人もいた。

 そうした思想的にバラバラな源流を持つからというわけでもないのだろうけ
ど、多様な学生を生み出す大学なのは確かなようである。で、そうした大学の
解説に多く費やされた後に、日本人のためのカイロ大学入学ガイドに1章が割
かれている。

 この1章、一部の読者にとてもインパクトがある内容のようで、文春の記事
によれば、この本を読んでカイロ大学で学びたいと言う声が浅川氏の元にいく
つか届いているようだ。ひょっとしたら、この本のおかげでカイロ大の日本人
学生は何倍も増えるかも知れない・・・もともと数が少ないしね。

https://bunshun.jp/articles/-/6411

 一番面白かったのは、最終章で浅川氏が何を考えてカイロ大学で学ぼうとし
たのか、いったいどんな学生生活を過ごしていたのかを語っているところだ。

 もともと外交官志望だった浅川氏は、アメリカのジョージタウン大学に行く
つもりだったが、湾岸戦争でイラクがクウェートに侵攻し、アメリカとの戦争
も辞さなかったことにショックを受けて、イラクを知りたいと考えた。

 それてバクダット大学に行こうとしたが、戦争の混乱の中イラク政府は「危
ないから」とビザを出してくれない。対応してくれた大使館員ですら「帰りた
くない」という状況なんだから仕方ない。

 さてどうしたものかと思っていると、偶然知り合ったユダヤ系アメリカ人か
ら、カイロ大学を勧められた。しかしいきなりカイロ大学に行くのはさすがに
無謀だと思ってまずは英語が使えるカイロ・アメリカン大学に入り、そこから
カイロ大学に移った。

 入ったのは文学部のセム語学科のヘブライ語専攻。要するにアラブ世界では
イスラエルが使う敵性言語だ。同専攻出身者は、アラブの諜報機関に入る人も
多く、浅川氏も将来のスパイたちと肩を並べて学ぶことになるのだが、同時に
警戒もされるようになる。

 こいつはイスラエルのスパイではないかと疑われて、秘密警察から目をつけ
られたのだ。当時のカイロ大にはアフガン帰りの元ムジャヒディンの学生がう
ようよしている上に、反ムバラクの学生運動も盛んに行われていてたわけで、
いつものように騒然としていた。

 そんな中、浅川氏は学生運動に多大な貢献をして、イスラエルにも行くこと
になる。

 そんなことしてたらタダではすまんぞと思って読んでいたら、やっぱりタダ
ではすまなかった・・・もちろんそんなことになるのは浅川氏も分かっていた
はずだが、それでも動かずにはおれなかったんだろう。

 そんな人が、どういうわけか現在、全くお門違いに見える農業専門誌の編集
長になっている理由も書かれているが、いやはや、すごい人生だ。

 カイロ大学自体は中東のハーバードとも言われる学問的にも実績のある大学
だが、日本で考えられている大学の枠組みとは全く外れた教育(もちろんそれ
は大学側が意図している教育だけではなく、混乱の中で生きる能力を含む)を
受けるということは、とても得難い経験になるのは確かなようだ。もっとも。
下手すりゃ命を落とす危険もあるが、こんな学生生活もありかもしれない。


(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)

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・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
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 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 配信が遅れました。

 出張シーズンが終わって少し落ち着くかと思いきや、積み残していた仕事に
追われております。

 4月になれば、ちょっとは落ち着くかな。(あ)

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