[書評]のメルマガ

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[書評]のメルマガ vol.675

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■■ [書評]のメルマガ                2019.04.10.発行
■■                              vol.675
■■ mailmagazine of book reviews    [「平成35年」て、いつだ!? 号]
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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<112>伊藤重夫の神戸を、令和から振り返る

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第111回 悲しみのフクシマ 故郷と心の喪失(柳美里の芝居)

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→94 おもしろい本を読みたい

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<112>伊藤重夫の神戸を、令和から振り返る

 大阪市内の路上で激しくスっ転んだのは、3月中旬だった。ビル敷地と舗道
との間にあった段差に気づかず、足を踏み外してしまったのだ。
 その場はなんとか立ち上がり、痛みに耐えつつ電車に乗って家に帰ったのだ
が、一向に痛みは引かず、見ると足の甲あたりが腫れ上がってもいる。
 痛む足を引きずりながら病院へ出向いて、レントゲンを撮ってもらうと、足
の甲の骨にひびが入っていた。

 即刻ギプスを嵌められて、松葉杖で帰った。
 どうやら足を踏み外した時に、甲の片側に全体重をかけてしまったらしい。
 ギプスは、取り外しのできる半ギプスで、足先を浮かせて踵だけを使うと、
なんとか歩くことができたので、そうやって出かけてもいたのだが、1週間後
に再検査したところ、「ヒビが広がっている」とのことで、絶対に足をつけな
い完全ギプスと相成ってしまった。

 もはや松葉杖なしでは動くことも叶わず、外出は必要最低限にとどめて、養
生に相務めているうちに、平成の次の元号が「令和」と決まった。
 初めて聞いたときには、「令」の字に、なにやら安倍内閣の「黒い意図」が
含まれてるような気がして、違和感というか、いや〜〜な感じにもとらわれた
が、考え過ぎか?

 新元号は、世界でもあちこちで話題になってるようだが、中国のネットには、
次のような書き込みがあったとか。

明治養士(明治は士を養い)
大正養国(大正は国を養い)
昭和養鬼(昭和は鬼を養い)
平成養豚(平成は豚を養い)
令和養老(令和は老人を養う)

 思わず「うまい!」と唸ってしまいましたですよ。さすが、漢字の本家本元。

 しかし、今回の「令和」は、初めてその典拠が中国の古典ではなく国書から
採られた、とか言うてますけど、ならばいっそ、読みも中国語由来の音読みで
はなく、大和言葉の訓読みにしても良かったんじゃないか?
 令和を訓読みだと、「よしかず」…では名乗り読みだな、「よきなごみ」?
 「よきなごみ元年」、いいではないか。今からでも、こっちにしない?

 にしても、昭和、平成、令和とくると、ますます西暦との「変換」が難しく
なってくる。
 ようやくここへきて、運転免許証には、元号と西暦併記、と決まったそうだ
が、「遅いわ!」と言いたい。
 わしの次の更新年、「平成35年」て、いつだ!?

 新元号も決まり、平成もあと1か月。メディアでは「平成を振り返る」企画
が目立ってきた。
 そんなとき、ネットで見つけたのが、伊藤重夫の漫画が復刊された、との情
報だった。

 伊藤重夫の漫画が読みたいのに、古本屋でもなかなか手に入らない、という
状況に業を煮やしたファンが集結し「復刊委員会」を結成、クラウドファンデ
ィングを起ち上げて、既に一昨年の2017年、その第一弾『踊るミシン』を復刻
し、2018年にその第二弾が発売された、と言うではないか。
 この情報を知ったのが3月。既に残り部数が少ない、とのことで、即刻注文
しましたよ、『ダイヤモンド/因数猫分解』(アイスクリームガーデン・刊)
定価税別1990円。

 伊藤重夫は、神戸出身、今も在住の漫画家でデザイナー。
 1972年、林静一や鈴木翁二等、いわゆる「ガロ系」作家も多く執筆陣に名を
連ねた伝説の漫画同人誌「跋折羅」で漫画家としてデビューした。
 「跋折羅」は、刊行当時のリアルタイムで、何冊か買った記憶もあるのだが、
伊藤重夫という名と作品を初めて見たのは、もう少し後の、「夜行」(北冬書
房)で、だったと思う。
 確か、神戸・垂水を舞台にした漫画で、今回の単行本に収録された『塔をめ
ぐって』と同じトーンの作品だったと記憶する。

 当時は東京に暮らしていたので、神戸が舞台、しかもその神戸でも全国的に
はあまり知名度の高くない西の端っこの垂水が舞台、ということで、女の子の
キャラクターが何やらはかなげで印象深いその絵柄とともに、強く記憶に残っ
た。

 伊藤重夫は、1980年代に至ってメジャーの商業誌でもその名をぽつぽつと見
るようになり、1990年から、“伝説の漫画雑誌”「A・ha」に、オールカラー
の漫画を連載する。
 伊藤重夫の経歴には、「伝説の」とか「幻の」が、やたらとついてまわるの
だが、「A・ha」は、アート系コミックを目指した、というとても斬新な雑誌
で、これがもし成功していたなら、後の日本の漫画シーンも、今日とはまた違
った方向で発展していた可能性もあるのだが、一般の雑誌の形態ではなく、発
行元は石油会社の「ESSO」で、系列のガソリンスタンドでのみ売られていた…
ので、一部の好事家の間では話題になりこそすれ、その存在が一般に知られる
ことはまずなかった…のだった。

 今回の復刻版『ダイヤモンド/因数猫分解』に収録された『ダイヤモンド』
が、「A・ha」に連載された漫画で、これが今回は連載時と同じオールカラー
で収録されているのも、また嬉しい…って、実は雑誌自体は、当時その存在を
知っていた…というか「伝説」として見聞していただけで、実際に見たことは
なかったのだけど。

 今回の復刻版の「あとがき」に伊藤重夫自身が書いているが、作品の完成度
にとてもこだわる性格の故に、商業誌のペースでは、なかなか思うように作品
をつくれなかったようだ。
 「あとがき」では、「某大出版社」から5回の連載を依頼されたものの、1
回目が掲載された直後に「失敗作」と認識し、自らその後の連載を断った、と
いうエピソードも披露されている。
 それ故かどうか、伊藤重夫は90年代以降、神戸でデザイン事務所を開いて後
は、漫画からも遠ざかり、彼自身が「幻」で「伝説」の漫画家となった。

 今回の本では、「A・ha」に連載されたオールカラーの『ダイヤモンド』が
最初に収録されている。
 前述のように、これは今回初めて読む作品だったのだけど、驚いてしまった
のは、発表から30年近くが経っているのに、まるで「古びてない」ということ。
 「古びてない」どころか、まるきり「新しい」のである。
 今どきの漫画家で、街を、こんなに活き活きと、ポップに描写できる作家は、
まずいない、と思う。

 そうなのだ。伊藤重夫が描いた神戸。
 これぞ、神戸だ。
 まだ震災前の、元気だったころの、全国に向けて流行を発信していたころの
神戸と、その街中を縦横無尽、昼に夜に、おもろいことを求めて全力で駆け回
る男女が、カラーの画面から踊りながら飛び出して来る。
 東京にいたころ、月に一度神戸への出張があったのだけど、毎月毎月、この
元気な神戸を見るにつけ、「帰りたいな」との意を強くしていった…というこ
とを思い出しもした。

 今回、改めて伊藤重夫の漫画をじっくりと読み、その背景、ことに街景の描
き方が、同じ神戸出身の佐々木マキに、似ている、というんじゃなくて、なん
か同じ空気観を醸してるように見えた。
 女性、ことに少女の描写では、絵柄はまったく違うのだけど、その肢体のし
なやかさには、思わず林静一を彷彿してしまった。
 「ガロ系」の系譜、というよりも、伊藤重夫は、「アート系漫画」の正しい
継承者、と思うのだが、できたら「新作」も読みたい、というのは、贅沢に過
ぎるかな。

 その『ダイヤモンド』では、今回の本への収録に当たって、冒頭に「第4話」
を持ってきて、その後に「1」「2」「3」「5」と続けられている。
 説明的な描写の多い「第1話」を後ろに持ってくることで、「いきなり」な
唐突感を演出してあって、この作り方には「なるほど!」と唸ってしまいまし
た。

 今回の本、『ダイヤモンド』以外の所収作の、そのいくつかは、かつて雑誌
等の初出で読んだ覚えがある。
 …のだけど、ここでもユニークな試みがなされていて、収録作の三作目、
『ワルキューレ・塔をめぐってよりReMIX』は、『因数猫分解』『コートにす
みれ』『1922年のアインシュタイン』『ワリュキューレ』『塔をめぐってより』
という、全く別々の5作品を、それぞれのトビラ頁を取っ払うことで、強引に
ひとつに繋げてしまっているのだ。

 なので、当初は、読んでいて「あれ?」となるのだが、気を取り直して読み
進むうち、1920年代の神戸で、既に卒業して東京に暮らす「タルホ先輩」の後
継者たらんと、行きずりの女学生への恋心を胸に秘めつつ、ヒコーキの自作に
執念を燃やす旧制中学生たちと、自主製作の映画撮影に情熱を燃やしながら、
オンナにもウツツを抜かす、あるいは去ってしまった友と幼なじみの少女の間
で心を震わせる、1980年代の、神戸・垂水の不良少年たちの青春群像が、きっ
ちりと1本に繋がってくるのである。

 結構な時間をかけて1冊を読み終えて、ふと顔をあげたとき、漫画の中に
「風」を、感じながら読んでいたことに気付いた。
 それは、神戸北野町に夕暮れから吹いてくる六甲おろしの風だったり、大正
時代の三宮元町に吹いていた、港からの風だったり、舞子海岸の松林を通りす
ぎる風だったり、伊藤重夫の漫画には、それぞれの場所、それぞれの時代に吹
く風が、きっちりと描き分けられているのである。

 昭和平成を過ごし、まもなく令和を迎えるにあたって、伊藤重夫の漫画こそ
が、まさしく、正しい「神戸漫画」だと断言したい。
 もっとたくさんの人に、この漫画を読んでほしい、あのころの神戸を知って
ほしい、と切に願う。
 今回の復刻版は1990円、と結構なお値段ではあるけれど、それだけの価値は、
充分にある、ので、是非、是非!
 クラウドファンディングでは、かなりな資金が集まったようでもあり、重版、
も期待してしまう令和元年目前なのだった。

太郎吉野(たろう・よしの)
阪神タイガースお膝元在住。右投げ右打ち。趣味は途中下車、時々寝過ごし乗
り越し、最長不倒距離は三重県名張。
ちなみに「阪神タイガース」の「阪神」は、「兵庫県阪神地方」を指します。

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第111回 悲しみのフクシマ 故郷と心の喪失(柳美里の芝居)

 芥川賞作家の柳美里は、福島県南相馬市で書店を経営しながら、地元高校の
演劇部と芝居をしている、という記事が新聞に載ったのは、昨年の秋だった。
彼女の戯曲で高校生が演技するその芝居は南相馬市で上演されたという。南相
馬市は福島第一原発の北に位置しているので、もし東京からこの芝居を果敢に
観に行こうとするならば、常磐線の不通区間を迂回するので、東北本線経由で
行かなければならない。時間的に無理がある、とその時は、芝居の鑑賞を早々
に諦めた。柳美里は作家よりも先に演劇人(役者・演出家)として出発したよ
うだ。演劇に挫折しかけたときに小説を書き、その分野で成功を収め、小説家
として多忙を極めていたときに東日本大震災が発生した。・・・・・ここにも
あの震災によって人生が変わった人がいる。

 そしてその柳美里の芝居が昨秋と同じ福島県立ふたば未来学園高等学校の演
劇部の出演よって、この3月に東京で上演されることになった。その芝居を北
千住のとある小屋で観た。そして、その芝居が載っている柳美里のサイン本を
買った。

『町の形見』(柳美里 著)(河出書房新社)(2018年11月30日 初版)

 「町の形見」、「静物画2018」、「窓の外の結婚式」という三つの戯曲
が載っている。そして、本書の核となる「静物画2018」が高校生による芝
居であり、この芝居には女性版と男性版のふたつの戯曲があり、同じ展開であ
るが、役者が男性だけのものと役者が女性だけのものがある。まさにこの「静
物画2018」が3月に北千住で上演された芝居なのだ。

 主要な登場人物は6名。その6名の名前は“りょう”、“なお”、“はる”、
“まこと”、“さつき”、“あゆむ”と男女どちらでも可能な名前になってい
る。演じている高校生と同じ境遇の6名。津波と原発で家と故郷を失った高校
生。震災当時は小学生だった。彼らがどんな経験をしたか、どんなことを思い、
考えているか、どういう行動を取ったか、等身大の同じ高校生によって、フク
シマの現実を描写している。というより、これは完全なるあて書きだと思った。
彼ら福島浜通りの高校生がそこにいて、柳美里は彼らのことを想いながら、こ
の「静物画」という以前からある自分の戯曲を彼らのために大幅に改訂したの
だろう。

 この芝居は一言で云えば悲しみの芝居なのだ。みんな余計なことを喋ってい
るけど、心の中にはそれぞれ悲しみとそして苦しみを抱えている。別れをたく
さん経験し、身近に思い通りにいかない人々がいて、差別もあり、自分の将来
も見えず、沈黙が支配する、この世の中で、どう生きていかなければならない
か。それはいたいけな高校生には少し重すぎる命題なのだ。残酷なことに時は
流れる。待ってはくれない。立ち止まっているうちにどんどん進んでいく。取
り残された自分に気がつき、焦ってみてもどうしようもない。やっぱり時は進
んでいくのだ。客観と主観の間にあって、この時間だけが冷徹にその主義主張
を貫き通している。我々人間は、その冷徹な時間に支配され、その主客は絶対
に逆転することはないのだ。

 そうはいいながらも、流れ続けていて決して止まることがない時間を、我々
は切り取ることはできる。それが思い出とか、あの時あの瞬間、とか、記憶と
かいうもの。そしてあの震災。震災後8年が過ぎても、我々日本人は、あのと
き、何をしていたか、はひとりひとりがはっきり記憶している。2011年・平成
23年3月11日金曜日午後2時46分、あなたは何をしていましたか? 当時を生
きていたほとんどの日本人がこの質問に答えられる。そして、その記憶がこの
芝居を生んでいる。

 すべての始まりは、この質問と各自の答えにある。“あの日あの時、なにを
していたか。”

 人が違えば経験が違い、その経験は人の数だけ存在する。あの時の記憶をひ
とつひとつ丁寧に紡ぐとき、福島の浜通りでは、悲しみと沈黙しか残らなかっ
たのだろう。その紡いだ悲しみと沈黙を柳美里は芝居にして、それを被災者で
あり、同時進行の高校生に演じさせた。演じた高校生は、おそらく悲しみと沈
黙から少し解き放たれた。・・・・・だろう。そして芝居を観た我々は、立ち
止まり、思いを受け止め、彼らが抱えていたそれが予想外に重いものだったこ
とに愕然とする。しかしそれを受け止めることが我々の使命だと気づき、その
ままそれを受け止め続けようとする。少なくとも執筆子であるやつがれはそれ
を手放すことはしない。したくない。


多呂さ(平成の御代は戦争はなくても災害とテロが喧しかった。昭和の御代は
戦争があっても生きる活力に溢れていた。・・・・・では次の令和の御代はど
んな御代になるのか。悲しみを抱え続ける御代になるのだろうか。)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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94 おもしろい本を読みたい

 『ぬけ穴の首 西鶴の諸国ばなし』廣末 保 岩波少年文庫

 1972年に、平凡社で刊行されたものが、岩波少年文庫で読めるようになりま
した。

 江戸時代の作家、井原西鶴の話を種としてつくられた7編が収録されていま
す。作者廣末さんのあとがきによると、西鶴の作品では四百字詰の原稿用紙4
枚から7枚程度のものを、廣末さんの作品では3倍から8、9倍の長さになっ
ているそうです。

 江戸時代に書かれた内容なので、もちろん時代ものですが、めっぽう読みや
すく、話の種からきれいに花が咲いたもの(物語)を鑑賞させてもらえます。

 タイトルにもなっている「ぬけ穴の首」はぞくりとさせる怪談話のよう。

 判右衛門の兄はささいなことで殺害され、兄嫁から仇討ちを依頼されました。
気はすすまないものの、断ることもできず、息子をつれて相手を斬りに行くの
ですが……。

 殺害される理由が髑髏によって語られるシーンもあり、終始怖さがつきまと
います。それでいて、世の理をみているのだと納得させられるところもあるの
ですが、最後は本当に怖い。

「わるだくみ」は、知恵と才覚で一介のお茶販売から、茶問屋の主へと一財産
を築いた利助の話。本来は金儲けよりも、おもしろいことをするのが好きだっ
た利助なのですが、儲けが大きくなるにつれ、お金に魅力を感じ……。

 人の欲について書かれた話は、昨今、ニュースにもなる会社の不正とよく似
てます。この話のおもしろさは、利助が死んだ話のあと話も短篇のように書か
れているところで、最後の最後まで、ひっぱられます。

 いつか西鶴の作品そのものも読んでみなくては。

 さて、次にご紹介する絵本も、作者は亡くなっており、その作者スキャリー
さん生誕100年に邦訳されたものです。

 『スキャリーおじさんのとってもたのしいえいごえじてん』
 リチャード・スキャリー さく ふみみさを やく
 松本加奈子 英語監修 BL出版

 絵本作家として活躍したスキャリーさんはアメリカ・ボストン生まれ。出版
された絵本の発行部数は2億冊を超えたともいわれています。

 作者紹介を引用すると、スキャリーさんのことばに「どんなものにも教育的
な面がある。でもぼくが伝えたいのはおかしさだ」と語ったそうです。

 そのとおり、スキャリー絵本はどれも楽しいものばかり。

 本書は英単語を楽しく覚えられるもので、英単語に意味とともにカタカナで
の読み方がついています。

 このカタカナの読み方が工夫されていて、アクセントを強くするところは太
字で大きく、文字も大小組み入れて、英語の音に近い読み方ができるようにな
っているのです。

 文字も並べているだけではなく、「えをかこう、いろをぬろう」「おもちゃ」
「どうぐ」「くうこう」など、様々な場面にたくさんの動物を登場させて、い
きいきとした雰囲気の中、英単語がおかれています。

 家の本棚にこの絵本があれば、子どもが一人読みで楽しく英語にふれられそ
うです。

 最後にご紹介するのは、
 名探偵 テスとミナシリーズで最新刊は3巻。

『名探偵テスとミナ みずうみの黒いかげ』
 ポーラ・ハリソン 作 村上利佳 訳 花珠 絵 文響社

 ふたごみたいにそっくりな2人テスとミナ。
 けれど、立場は正反対(!?)
 ひとりはメイド、ひとりはプリンセス。年は同じ10歳です。

 かわいらしいテスとミナが表紙のソフトカバーなつくりは、小学校中学年く
らいの子が楽しめそうです。

 ふたりのいるお城で事件がおきると、立場を入れ替えながら、解決していく
ミステリーでもあり、メリハリある展開で謎解きの吸引力はかなり強く、おも
しろいのです。

 巻末にはファッションコーデの特別ページもつけられていたり、3巻ではオ
リジナルアイテムとしてブックマークやポストカード、時間割表もついている
という豪華さ。(時間割表、なつかしい!)

 知人の小学5年生の女の子に紹介したところ、毎晩夢中になって読んでいる
とのこと。次の巻は7月発売予定。


 さて、本を読んでおもしろい!と思うのは本読みにとって至福のときですが、
このよく使う「おもしろさ」。
『ぬけ穴の首』には町田康さんが古典の「おもしろみ」という文章を寄せてお
り、そこでこう書いています。

「多くの人は、おもしろいことはただひたすらにおもしろいだけ、と信じてい
るが、実はおもしろさには二種類のおもしろさがある。」

 この二種類のおもしろさの話がまた「おもしろい」のでぜひご一読を。


(林さかな)
会津若松在住。「本の雑誌」新刊めったくたガイド海外文学担当。
http://1day1book.strikingly.com/

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ― 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510

・『支え合い・学び合いで育つ「わたし」』(エディット・パルク)
  http://web.kyoto-inet.or.jp/people/cogito/%8Fo%94%C5%88%C4%93%E0/%8Ex%82%A6%8D%87%82%A2%81E%8Aw%82%D1%8D%87%82%A2.html

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

 〒142-0041 東京都品川区戸越5-4-3 アズ品川ビル4階
       ビズナレッジ株式会社内 [書評]のメルマガ 献本 係

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンや楽天などのオンライン
 書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。つまり
 は当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願いしま
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 ました。書評は500字以上でお願い致します。)

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 配信遅くなりました。ちなみに、私は「令和」の発表を、歯医者で歯を削ら
れながら聞きました。(あ)

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[書評]のメルマガ vol.674

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★「トピックス」
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★「音楽本専門書評 BOOK’N’ROLL」/おかじまたか佳
→ #104『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』

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→ ストップ・ザ・味噌汁の神格化!

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→ 『カイロ大学』浅川芳裕 ベスト新書

★【募集中】献本読者書評のコーナー
→ 献本お待ちしています!

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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#104『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』

 前回も書いたが、音楽療法で効果があったり、胎教によかったり、聴かせる
と植物がよく育ったりする、というと、なぜか頻繁に出てくるのがモーツァル
ト。
 しかし、映画『アマデウス』を見てクラシック音痴ながら興味を惹かれ、い
くつか聴いてみたが、通して聴くとぼくには退屈だったモーツァルト。

 そのモーツァルトをジャングルで演奏する話か、とタイトルからは想像され
るが、まったく違う。アメリカでドラマ化されているらしいから、ご存知の方
も多いかもしれないが、ここで言うモーツァルトは象徴であって、意味はいわ
ゆるクラシック音楽。ジャングルは、生き馬の目を抜く大都会ニューヨークの
ことである。
 
 すわなち、ニューヨークのクラシック音楽業界の内幕を暴いた、オーボエ奏
者にして音楽ジャーナリストである著者ブレア・ティンドールの自伝なのであ
る。

 副題に『セックス・ドラッグ・クラシック』とある。もちろん、ジャニス・
ジョップリンをモデルにした映画『ローズ』の中で歌われた曲『セックス・ド
ラッグ・ロックンロール』のパロディだ。
 これだけで、この「ジャングル」がどんなものか、大方の察しはつく。

 だが、本書はさまざまに読むことが出来る。

 スキャンダラスな暴露本として。

 あるいは、ブレアが経験したいくつかのラブ・ストーリーとして。
 分けても、父親ほど年の離れたピアニスト、サムとの物語として。

 だがぼくは、クラシックの演奏家という、知られているようで実はまったく
知られていない、特殊な仕事の実態を描いた、「職業」の物語として、さらに、
そこから脱却しようとした一人の女性の「キャリア」の物語として読んだ。

 もちろん、現在のぼく自身が会社を早期退職して、次のキャリアを模索して
いる状況だからだ。

 地方出身のブレアは小学校の時、「音楽をやってみたい子は?」と訊かれて
手を挙げた一人であった。この時、目の前に並べられた楽器から、一人一人や
りたいものを取っていったのだが、名字のアルファベット順だったため、ティ
ンドールという姓が災いして、もはやろくな楽器が残っておらず、仕方なくオ
ーボエを選んだという。

 うちの甥っこは小学校に上がる前、親に連れられてコンサートに行き、クラ
リネットに興味を示したらしい。終演後の質問コーナーで「何歳になったらク
ラリネットが出来ますか?」と訊き、「小学校二年生くらいからかな」という
答えを得た。それから数年して、みなそのことを忘れていた時、「二年生にな
ったからクラリネットがやりたい」と言い出したそうだ。以来、高校くらいま
で練習に通っていた。

 だが、ブレアにとってオーボエは自分の意志とは無関係な、不毛の選択だっ
たのである。
 もっとも、もしZで始まる姓だったら、カスタネットになっていただろう、
とも書いている。オーボエでも、まだましだったわけだ。

 ところが、始めてみるとこの楽器、地味でやり手が少ないので競争もあまり
なく、目立ちたがりで勉強嫌いという性格には合っていた。そしてそのまま彼
女は、音楽学校に進学した。いや、後の展開を考えれば、してしまった、と言
うべきか。

 地方とは言え音楽学校であり、それなりに生徒たちはアーティスト気質であ
る。自然にブレアは、副題の最初のふたつを経験することになる。
 卒業すると、ニューヨークの音楽大学に進み、やがてプロの道を辿るのだが、
そこでも常にこのふたつは付いて回る。

 冒頭に、音楽仲間の家へ遊びに行くシーンがあるが、コカインを決めて大音
量で音楽を流し、ハイになるのはロック界と変わらない。
ただ、曲がニルヴァーナではなく、ワーグナーだというだけだ。

 男性遍歴もめまぐるしいが、これには「ジャングル」特有の事情もある。

 クラシックの場合、オーケストラの一員に雇われるか、フリーランスで仕事
を取るかの二択であるという。前者の方が生活は安定するが、生憎席は限られ
ており、一旦メンバーになると相当な高齢になるまで引退しないので、なかな
か次の人の番が回ってこない。

 そこでブレアは、フリーランスの道を行く。

 オーボエは奏者の数も少なく、その点では有利ではあるが、逆に必要な人数
も限られていて、やはり仕事を取るのは生半可なことではない。
 この世界はオーディションよりコネがものを言うこともあって、彼女はさま
ざまな先輩オーボエ奏者たちとつきあい、彼らから仕事を回してもらうことに
なる。
 最後の方で人生を振り返り、結局寝た男からしか仕事を取れなかった、と回
想している。

 しかし、そうしたドラッグとセックスにまつわる業界暴露よりも、ぼくが面
白いと思うのは「職業としてのクラシック音楽演奏」の実態である。

 フリーになる前、もちろんブレアもいろいろなオーケストラのオーディショ
ンを受けた。
 彼女がまだ若かった80年代後半は、アメリカにクラシックの音楽文化を、と
いう社会的風潮があり、景気もよかったので、新しいオーケストラが全米各地
に生まれ、チャンスも多かった。しかし、前述のようにオーディションの壁は
厚く、二十何連敗。旅費は自腹なので、広いアメリカでは飛行機代やホテル代
もバカにならず、そうこうする内に景気も減速。多くのオーケストラが経営難
に陥る。

 この辺りはジャーナリストらしく、具体的な数字をさまざまに上げ、リアル
に業界の厳しさを感じさせる。
 また、オーケストラやコンサートホールを運営する団体の上層部が、演奏家
以上の高給を取っており、助成金も市民の寄付もここに吸い取られて失速して
いるという実態も暴かれる。

 話は逸れるが、以前当欄で取り上げた佐々木忠次『オペラ・チケットの値段』
でも、東京初台にある新国立劇場に、ろくな仕事もしない余剰役人が群がる実
態が書かれていたことを思い出す。日本もアメリカも、役人天国に変わりはな
いのか。

 オーケストラもだめ、フリーも厳しい。こうした状況に限界を感じ、ブレア
はブロードウェイのミュージカルに手を出すようになる。

 「手を出す」って何か悪いことみたい、と思われるだろうが、アメリカでさ
えクラシック音楽の世界ではミュージカルが一段低く見られ、ブロードウェイ
の仕事を引き受けると、仲間内で「あいつも落ち目だ」と囁かれたそうだ。
 これにはぼくもちょっと驚いたが、しかし、その仕事の現場をつぶさに語ら
れると、なるほど確かにひどい労働環境である。
 つまり「ブラック」だ。
 それも『ミス・サイゴン』とか『レ・ミゼラブル』のような大ヒット作でも
そうなのだ。

 それでも好きなことでお金が稼げるなら幸せではないか、と外野席は思って
しまうが、単調な音階練習に明け暮れる日々、本番でも同じ曲の繰り返し、そ
れがとても知的で創造的な生活とは言えない、と指摘されれば、う〜んとうな
らざるを得ない。

 昔テレビで、オーケストラの高名な打楽器奏者を取り上げたドキュメンタリ
ーを見た。打楽器は必ずしも出番が多い楽器ではない。長い交響曲などの場合、
待ち時間に彼は捕り物帖を読んでいた。
 番組では、本を読んでいても自分の出番がちゃんとわかるのはすごい、と言
っていたが、ぼくは違う感想を持った。クラシックなんて、いい加減なもんだ
な、と。

 しかし、ミュージカルでも同じだった。というか、もっとひどかった。
 クラシックと違い、オーケストラは地下のピットに押し込められるから客席
から見えない。それをいいことに、譜面台の上には楽譜だけではなく、長い待
ち時間の暇潰しが乗せられているのだという。本だったりクロスワード・パズ
ルだったり。いまならスマホやゲームなんだろう。
 ブレアが演奏家に見切りをつけ、キャリア・チェンジを目指した時は、そこ
に数学の教科書が乗っていた。転職を試みても、普通高校を出ていない彼女に
は、例えば数学の基礎もまるでなく、その勉強から始めなければならなかった
のである。

 それでも文章を書く天分があることに気がつき、自分の経験を生かした音楽
ジャーナリストとして道を切り拓くこが出来た彼女は、まだしも幸運な部類に
入るのだろう。
 しかも、音楽の演奏をまったく捨てたのではなく、それまでよりゆとりを持
って、オーボエを吹くことを楽しめるようになったと言う。

 いや、ほんと、キャリア・チェンジは難しい。それはこの一年弱でぼくも実
感した。だからこの辺りは、身につまされる。

 ともあれ、スター級の音楽家の伝記はたくさんあるが、ブレアのような、彼
らを支える側の演奏家、それもオーケストラの一員にもなれない、フリーラン
スの演奏家の自伝というのはこれまでなかったと思う。

 ぼくも高校の時は、音楽の才能があると思っていた。だが、大学に入って、
自分より遥かにうまい先輩たちが、普通に就職していくのを見て、あえなく挫
折。
 でも、本書を読むと、あそこで挫折してよかったのかな、と思ってしまう。
 夢のない話だけど。


ブレア・ティンドール
柴川さとみ訳
『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル 〜セックス・ドラッグ・クラシック』
(上・下)
2016年12月10日 初版発行
ヤマハミュージックメディア

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
この一年、読書量が格段に落ちました。通勤電車という図書室がなくなったか
ら。仕事中も移動の多い職種だったので、その間も電車で本を読んでいたし。
まあ、家で読めばいいんですが、電車に揺られていると、なぜか読書って捗り
ません?

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■「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
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ストップ・ザ・味噌汁の神格化!
『医者が考案した「長生きみそ汁」』(アスコム)
『はなちゃんのみそ汁』(文芸春秋)

 前に、庶民は権威に弱いと書いたことがあったと思います。

 権威とはたとえば、「医者」とか「東大」とか「富豪」とか「官僚」とかか
でしょうか。だから「医者がすすめる」と名前がつくとみんなよく考えもしな
いで手を出しちゃうよね。(あと最近は「AI」。「なんかわからんけどすご
いらしい」って理由もなくあがめてるよね)。

 「偉い」ことを「権威A」と名前をつけるとしたら、これとは「自然」とか
「清貧」も一種の権威になっていませんか。「名もなく貧しく美しく」って。
あと「母」ね。これはマリア信仰から来るからけっこう根深い。これは「権威
B」と名づけましょう。いろんなベクトルの権威の中で私たちは生きているん
だ。

 だから、「医者が考案した『長生きみそ汁』という本のタイトルを見たとき、
「権威がAとB、2つも入っとる!」とおばちゃまは驚嘆しましたよ。売れな
いはずはない!案の定、売れてて新刊本の広報テレビ番組となっている「世界
一受けたい授業」でも取り上げてます。

 中を見てみると、なんということはないみそ汁のつくり方を書いたみそ汁カ
タログです。ポイントは具とみそをまるめて冷凍して「みそ玉」をつくるとい
うところですが、これもまあ、作り置き系の料理研究家ならだれでもやってい
ることで特に新しいことではないのに、「医者がすすめる」ってだけで「糖尿
が治った」「血圧が下がった」と大騒ぎです。

 「みそ」というのは「自然」系なので「権威B」、そしてノルタルジックな
「母のイメージ=権威B」もあります。

 おばちゃま、決してみそ汁を批判しているわけではありませんよ。おばちゃ
まだって2日に1度は必ずみそ汁つくって飲んでるから、みそ汁は大好きって
か日常。でもねえ、なんか、妙に神格化されていることが気に入りません。神
格化されているということは、それだけ一般社会の暮らしから遠のいているっ
てことで、みそ汁がなんかあがめられる存在になってしまっている。それって
みそ汁にとってはというか食生活にとっては、損じゃないの?

 だいたい、少し前までみそ汁は塩分過多の日本食の悪しき象徴だった。日本
人に脳梗塞が多いのは味噌汁に代表される塩分の多い食事のせいだって言われ
てませんでした? それがまあ、いつのまにか神格化ですよ。これって食の右
傾化? みそ汁の向こうにでんとそびえる価値観がなんかイヤ。ついでに食育
って言葉も嫌い。食育の向こうに家父長制度が見える・・・(私はフェミニス
トではありませんよ)。

 と毒づいたところで、もう1冊「はなちゃんのみそ汁」。これがまあ、批判
しにくい感動を呼ぶ大絶賛本です。絶賛されているだけに批判もされているみ
たいなのでさくっとだけ。

 あるお母さんが若くして乳がんになりますが、子どもを出産。余命いくばく
もないと知った母は、残された子どもが自分で生きていけるように、家事を教
えるんですが、その代表が「みそ汁作り」なんですね。このとき、娘さんは5
歳とか6歳の就学前。それなのに朝6時に起きてみそ汁をつくって玄米のご飯
を炊くんですよ。朝、6時って暖かい九州でも寒いでしょう。日が昇るのが遅
いから冬は外は暗いんじゃないのかしら。そのとき、父はどうしているのか書
いてないけど、あのう、お湯をそそぐとできる「クノールカップスープ」じゃ
だめですか?「クノール高い?」じゃ、「スジャータ」なら少しは安いよ。ど
うしてもみそ汁じゃないといけないなら「アマノフーズ」のフリーズドライで
は? だめなんだろうなあ。自然のものでないとだめなんだろうなあ。無添加
にこだわって5歳の娘が朝6時に起きてみそ汁をつくらなくてはいけない理由
をだれか教えてほしいでした。

 どうか、みそ汁が必要以上にあがめられて権威を持つことなく、みそ汁本来
の姿で日常の食卓にのぼり、みそ汁の「中の人」が自分らしく生きる(みそ汁
の「中の人」って何?)ことができるように祈っています。


大友舞子(おおとも・まいこ)
昭和20年代生まれのフリー編集&ライター。関東生まれで関西在住。

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『カイロ大学』浅川芳裕 ベスト新書

 2010年に『日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率』という本
を出して話題になった人である。その後も農業関係の本をたくさん出されてい
るが、もともとこの方、カイロ大学出身である。

 で、ひょっとしたら何度も蒸し返される小池百合子都知事のカイロ大卒業疑
惑の関係で出されたのかも知れないが、そんなことはどうでもよろしい。

 まずカイロ大学は、どんな人材を輩出してる大学なのかといえば、PLOのア
ラファト議長に、イラクのフセイン大統領に、アルカイダの指導者ザワヒリ、
オイルショックで世界を震撼させたヤマニ石油相や国連を率いたガリ国連事務
総長、IAEAのエルバラダイ事務局長、2011年のエジプト革命のリーダー、アハ
マド・マヘルほか、どっさりと大物がならぶ。

 清濁関係なしに世界を動かしてきた中東の大物が多い。変わり種と言っては
何だが、ネットセキュリティの技術SSLの生みの親、タヘル・エルガマル博士
もカイロ大出身だし、元大相撲力士大砂嵐もカイロ大学出身だ。

 日本人出身者は少ないが、小池百合子、中田考をはじめとして、有名な人も
多い。そんな人たちを輩出し続けるカイロ大学は、「混乱と闘争」が学風とい
うむちゃくちゃなところ。

 エジプトの首都カイロは、日本人が思っているよりもずっと治安がよく平和
な街でなのだが、カイロ大学の中だけは別世界だとか。学生運動が盛んで、い
つ逮捕され投獄されるか分からない。学内に秘密警察まで拠点を置いている。
逮捕投獄はもちろん、下手すりゃ殺されることもそう珍しいことではない。学
内の治安は最悪である。

 そんなところだから、サダム・フセインは卒業試験の時にピストルを横にお
いて試験を受けていたという。卒業させなかったらどうなるか、試験官に圧力
かけていたたわけで・・・むちゃくちゃ。

 そんなところで揉まれるわけだから、カイロ大学出身者は基本「乱世」に強
い。何があっても驚かないし、何としても生き残っていく力を持っている。そ
していざという時の行動も大胆だ。確かにそう言われてみれば、小池百合子も
中田考も、そして浅川氏もそんな雰囲気をただよわせる人物である。

 そもそも建学した人たちからして1人ではない。非宗教的な欧州(というか
フランス流)の大学に比肩する大学にしようとした人もいれば、女性の地位向
上を目指した人。逆にイスラムの枠組みを大事にした人もいれば、中東がダメ
になったのは腐敗したカリフやウラマーのせいで、イスラム教徒は原典を読む
べきとした人もいた。

 そうした思想的にバラバラな源流を持つからというわけでもないのだろうけ
ど、多様な学生を生み出す大学なのは確かなようである。で、そうした大学の
解説に多く費やされた後に、日本人のためのカイロ大学入学ガイドに1章が割
かれている。

 この1章、一部の読者にとてもインパクトがある内容のようで、文春の記事
によれば、この本を読んでカイロ大学で学びたいと言う声が浅川氏の元にいく
つか届いているようだ。ひょっとしたら、この本のおかげでカイロ大の日本人
学生は何倍も増えるかも知れない・・・もともと数が少ないしね。

https://bunshun.jp/articles/-/6411

 一番面白かったのは、最終章で浅川氏が何を考えてカイロ大学で学ぼうとし
たのか、いったいどんな学生生活を過ごしていたのかを語っているところだ。

 もともと外交官志望だった浅川氏は、アメリカのジョージタウン大学に行く
つもりだったが、湾岸戦争でイラクがクウェートに侵攻し、アメリカとの戦争
も辞さなかったことにショックを受けて、イラクを知りたいと考えた。

 それてバクダット大学に行こうとしたが、戦争の混乱の中イラク政府は「危
ないから」とビザを出してくれない。対応してくれた大使館員ですら「帰りた
くない」という状況なんだから仕方ない。

 さてどうしたものかと思っていると、偶然知り合ったユダヤ系アメリカ人か
ら、カイロ大学を勧められた。しかしいきなりカイロ大学に行くのはさすがに
無謀だと思ってまずは英語が使えるカイロ・アメリカン大学に入り、そこから
カイロ大学に移った。

 入ったのは文学部のセム語学科のヘブライ語専攻。要するにアラブ世界では
イスラエルが使う敵性言語だ。同専攻出身者は、アラブの諜報機関に入る人も
多く、浅川氏も将来のスパイたちと肩を並べて学ぶことになるのだが、同時に
警戒もされるようになる。

 こいつはイスラエルのスパイではないかと疑われて、秘密警察から目をつけ
られたのだ。当時のカイロ大にはアフガン帰りの元ムジャヒディンの学生がう
ようよしている上に、反ムバラクの学生運動も盛んに行われていてたわけで、
いつものように騒然としていた。

 そんな中、浅川氏は学生運動に多大な貢献をして、イスラエルにも行くこと
になる。

 そんなことしてたらタダではすまんぞと思って読んでいたら、やっぱりタダ
ではすまなかった・・・もちろんそんなことになるのは浅川氏も分かっていた
はずだが、それでも動かずにはおれなかったんだろう。

 そんな人が、どういうわけか現在、全くお門違いに見える農業専門誌の編集
長になっている理由も書かれているが、いやはや、すごい人生だ。

 カイロ大学自体は中東のハーバードとも言われる学問的にも実績のある大学
だが、日本で考えられている大学の枠組みとは全く外れた教育(もちろんそれ
は大学側が意図している教育だけではなく、混乱の中で生きる能力を含む)を
受けるということは、とても得難い経験になるのは確かなようだ。もっとも。
下手すりゃ命を落とす危険もあるが、こんな学生生活もありかもしれない。


(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ─ 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510


 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

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■あとがき
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 配信が遅れました。

 出張シーズンが終わって少し落ち着くかと思いきや、積み残していた仕事に
追われております。

 4月になれば、ちょっとは落ち着くかな。(あ)

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[書評]のメルマガ vol.673

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■■ mailmagazine of book reviews  [じっくりと腰を据えて読みたい 号]
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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<111>東本昌平『雨は これから』は、じっくり読む漫画、と決めた

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第110回 刑事事件の用語とシェイクスピアの戯曲

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→93 生活と物語と現実と

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
└──────────────────────────────────

 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<111>東本昌平『雨は これから』は、じっくり読む漫画、と決めた

 以前、この欄で「47都道府県擬人化漫画」、『うちのトコでは』(もぐら・
著)というのを紹介した。

 https://comic.pixiv.net/works/3534

 先日、神戸の某駅に降り立つと、その『うちのトコでは』の県民性擬人化キ
ャラクターのうち、「兵庫県」のキャラクター5人が、一人ずつポスターにな
って、ずらずらと並べられていた。

 『うちのトコでは』は、47都道府県をそれぞれ一人のキャラクターに擬人化
した漫画なのだが、兵庫県だけは、例外的にキャラが5人いるのだ。
 すなわち、「神戸」「播磨」「丹波」「但馬」「淡路」。

 そのキャラクターたちが、それぞれの地域をアピールするポスターが、ずら
ずらと5枚並んで、さらに、県名まで「変える」と言うておるではないか。

 兵庫県は、気候風土から言葉や生活慣習までまったく違う5国を、時の政府
の都合によって、無理やりにひとつの県にしてしまったので、おそらくは日本
一「県民意識」の低い県と成り果てた。
 同じように複数の国を無理からにひとつにまとめた旧・ユーゴスラビアにな
ぞらえて、「ヒョーゴスラビア」と呼ばれることもあった。
 なので、『うちのトコでは』でも、兵庫県だけは一人ではなく、5人のキャ
ラクターで構成されていたのだ。

 わしもそうだが、他府県で出身地を訊かれると、「兵庫県」と言うのに、か
なり抵抗があるのは、全県民に共通だ。
 で、今回は、県自らが音頭を取って、「もう兵庫県と言わないでいいです」
と、県名変更に踏み切った、ということらしい。
 新しい県名は、「兵庫5国連邦(U5H=United 5koku of Hyogo)」と、いき
なりに「県」じゃなく「国」に昇格してしまっている。

 今後は、「神戸・阪神」「播磨」「丹波」「但馬」「淡路」、の5国それぞ
れで独立性を高め、「連邦」としてゆるくまとまった上で、それぞれに独自色
を打ち出していこう、ということらしい。

 https://u5h.jp/

 ↑と、こんなサイトも開設し、連邦5か国の住民からそれぞれの「お国自慢」
を募り、それをもぐらさんによる漫画に展開していこう、という試みも、これ
から予定されているそうだ。

 なんだか楽しみで、わしも何度か…つーより、もう既に何度も、しつこいく
らいの頻度で投稿してしまった……

 目下の楽しみと言えば、もうひとつ、ちかごろ「じっくり」と読ませる漫画
が増えてきた…というよりか、「見つけた」と言った方が正解か。
 前々回紹介した、川勝徳重や、Q.B.B.の『古本屋台』なども、「じっくり」
読みたい漫画ではあるのだけど、今回見つけてしまったのは、東本昌平。

 東本昌平は、「はるもと・しょうへい」と読む。
 80年代に『キリン』という、バイクとバイク乗りをテーマにした漫画で一世
を風靡した作家だ。
 作者ご本人もまたバイク狂で、愛機を駆っては首都高速湾岸線で200km/h超、
という伝説も持っているらしい。
 その東本昌平が描くのは、中年を過ぎ老年に差し掛かってなお、バイクに魅
せられ、バイクに乗り続ける男の物語。

 「松ちゃん」こと松永は、57歳。
 思うところあって勤め先のテレビ局を定年を間近にして退職し、漫画家を目
指すも、持ち込んだ原稿を若い女編集者にけちょんけちょんにけなされた帰り
道、やみくもに愛車・ヤマハSR400を乗り回しているうち、行きついた町で廃
業したドライブインを見つけ、妙に気になったそこを借り受け、住みついてし
まう。

 人里離れたそこを棲家と定め、晴耕雨読ならぬ、晴バイク雨漫画の日々を送
るはずが、絶ちきったと思っていたシガラミは未だにしつこくついてまわり、
さらに望んでもいなかった新しいシガラミも次々に出現し、松ちゃんの晴耕雨
読は、風前の灯である。

 この「松ちゃん」が、やたらとカッコいいのである。
 その「カッコよさ」というのが、ただただ二枚目的にカッコいいのではなく
て、かつての原田芳雄や松田優作が演じていたような、「カッコ悪いのがカッ
コいい」感じ、なのである。

 タイトルも「雨は これから」と、「雨は」と「これから」の後ろが半角空
けになっているところも、かなりのこだわりようだが、一話ごとのサブタイト
ルも、「やめとけと 声がする」「冬の雷娘にモカ・ハラーを」「ウソをつく
なら木曜日」「たどり着けたら接吻を」等々…
 「Want you 俺の肩を…」と、その背後から南佳孝のシャウトが聞えてきそ
うではないか。

 この『雨は これから』、コマ繋ぎの構成がかなり不親切で、うっかり読み
飛ばしていると、展開が分からなくなったり。
 なので、じっくりと腰を据えて、丹念に読みこんでいくのが、また楽しい漫
画でもある。
 絵柄も、バロン吉本×かわぐちかいじ×大友克洋…といった感じで、わしら
世代にはとても馴染やすく、実にすんなりと作品世界に入っていけるのだ。

 これ、たまたまネットでその存在を知ったのだが、今まで知らなかったのは、
連載誌が漫画誌ではなく、さらに一般誌でもなく、「ミスター・バイクGB」と
いうバイク雑誌だったこともあるようだ。
 版元が「モーターマガジン社」で、単行本は、通常のコミック本同様、雑誌
扱いで流通しているのだが、その雑誌コードが、「4」で始まるコミックコー
ドではなく、「6」で始まるムックコードなのである。
 なるほど、モーターマガジン社、コミックコードなんて、持ってないだろう
しな……

 しかも、なのだ。
 このイマドキに、この漫画は、電子版が発売されてない。
 なので、読むには紙版、しかないのである。
 ということも、なんだか嬉しく思えてしまう。

 単行本は、ただ今は4巻まで発売されているのだが、じっくりと腰を据えて
読みたいので、月に1巻ずつ取り寄せて読むことにしている『雨は これから』
で、実はこれから、「3巻」を注文するところ、なのです。


太郎吉野(たろう・よしの)
阪神タイガースお膝元在住。右投げ右打ち。趣味は途中下車、時々寝過ごし乗
り越し、最長不倒距離は三重県名張。
ちなみに「阪神タイガース」の「阪神」は、「兵庫県阪神地方」を指します。

----------------------------------------------------------------------
■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
----------------------------------------------------------------------
第110回 刑事事件の用語とシェイクスピアの戯曲

 以前から気になって仕方がない本があり、今回ようやくその本を読むことが
できた。というよりも、すこし前に買ったけれど、そのまま本棚の片隅に埋も
れていた本書の存在に気づき、ようやく手に取ることができた。・・・・・と
かくこのうな状況(買ったけどそのままになっている書籍)はたくさんある。
通称“つんどく”。今回日の目をみることができて本当によかった。

『未必のマクベス』(早瀬 耕 著)(早川書房)
(ハヤカワ文庫)(2017年9月25日 第1刷)

 「未必の故意(みひつのこい)」という言葉がある。刑事事件の用語で、
“自分の行為によって犯罪が発生するかもしれないが、それもしかたがない、
犯罪が発生してもいい、と思っている状態”・・・・・という意味だという。
たとえば、車を運転していて、ここで人が飛び出したらぶつかる、轢いてしま
う、と思っていても速度を落とさず走行しているような状態だと思えば身近で
わかりやすいかもしれない。

 「マクベス」。シェイクスピアの戯曲で四大悲劇の一角を占める作品。悪魔
のような森の妖精から自分の未来を聞いたマクベスは、国王を殺し自分が国王
になる。そして国王の下で同僚だった重臣も殺してしまう。しかし結局、その
子に討たれる。

 この刑事事件の言葉とシェイクスピアの戯曲が組み合わさった奇妙なタイト
ルにとても惹かれた。当時の自分の気分はよく覚えているのだが、この本の紹
介にシェイクスピアのことはあまり出てこない。恋愛小説であり、犯罪小説で
ある、という調子の紹介文しか出てこなかった覚えがある。マクベスという滅
びる王のことに絡めた紹介はあまりなかった。

 それでもやはりタイトルに「マクベス」という名称がある以上、このシェイ
クスピアの戯曲がなんらかで関係があるだろうし、またこの「マクベス」は悲
劇(人がほとんど死んでしまう内容)なのだから、少なくとも主人公たちは死
んでしまうのだろう、また恋愛小説、ということなので、恋人と死別してしま
う悲恋を描いた小説なのだろうということは想像がついた。

 という訳で、いつか読もうと思って文庫になるのを待ち、文庫になってから
買っておいた本なのだが、ついにこのたびページをめくることができた。

 ばかばかしさとおもしろさが背中合わせになって同居しているような本だっ
た。・・・・・これが読みながら常に思っていた本書の印象だった。
 荒唐無稽なストーリーと精妙巧緻な細部の描写。あり得ない展開に度肝を抜
かれ、まるで知らない世界を緻密に描かれているこのありさまがとても新鮮だ
った。
 そして、宣伝どおりに巧妙な恋愛小説になっている。高校の同級生だった3
人の主要登場人物が、その時の印象をそのまま持ちながら、物語が回転し進行
していくのだ。が、その進み方があり得ないし、まるで納得できない。お話だ
から、物語だから、どんな展開になってもいいのだが、おとぎ話や空想小説な
らともかく、本書は私たちが生きて過ごしている、まさにこの現実の社会が舞
台なのに、この展開はどういうことなんだろう。理解を超えてしまうのだ。

 で、執筆子はようやく気づいた。だから、「マクベス」なのだ。そもそもこ
の「マクベス」もその展開があり得ない。舞台は現実の中世スコットランド王
国なのだが、森の中で魔女に出会い、予言を受け、その通りに行動するマクベ
ス。そして自分の進む道を確かめるために、再度魔女に会い、さらに予言を受
けるマクベス。つまらない予言なんかを信じなければ、真に受けなければ何も
起こらず、国王の下で重臣として幸せな人生を送っていたであろうマクベスは
自分の頭で物事を考えず、自分の行動を他の力に頼ってしまうものだから、結
局自分自身の弱さを露呈して、破滅してしまう。本書の主人公はそんなマクベ
スとは少し違うが、それでも自分で考えず、なりゆきと人の意見に左右された
生きざまのままだったから、最後は破滅してしまう道を選んだ。

 本書の登場人物たちは、よく人を殺す。しかし人を簡単に殺してしまうこと
に対する後悔とか贖罪とか、そういう感情がまるでない。そもそもそういう感
情があるのなら、本書は存在しない。本書の中では人を殺すことが単なる手段
であり、目的ではない。だから、殺人に対する後悔はあってはならないのだ。
云ってみれば、戦争と同じ。戦争における殺人はそれが目的ではなく、勝つた
めに殺すので、殺人は手段に過ぎない。優秀な将軍であるマクベスは戦におけ
る殺人にはなんとも思わないが、主君を殺してしまったとき、彼は凄まじい狼
狽ぶりをみせる。が本書の登場人物たちは、ロボットのように人を殺す。そう
か、これはハードボイルド小説なんだ、ということにも途中から気づく。チャ
ンドラーの小説は感情が入らない。

 主人公は途中から、自分と自分を取り巻く状況が「マクベス」の戯曲のまま
なことに気づく。自分が王に代わることを自覚した時、彼は破滅の道を選んで
しまったわけだ。本書における魔女は誰なんだろう。

 中井優一、伴浩輔、鍋島冬香。この主要な3人の登場人物のまわりに配置さ
れる数々の人たち。人物の描写やその会話が自然でとても上手い。主人公の中
井がマクベスで、伴がバンクォーなのは、本書の中で再三再四表現されている
から疑う余地がないのであるが、ではマクベス夫人はだれなんだろう?という
疑問が最後まで残る。「マクベス」ではマクベスよりもマクベス夫人の方が早
く死んでしまう。しかし本書では鍋島冬香は死んでいない。少なくとも死亡は
確認されていない。李という亡命人がいる。彼がある国の支配者の長男である
ことに気づいたときがこの物語の最初のクライマックスであり、そこから物語
が始まる。この亡命人がマクベス夫人なのかもしれない。

 主人公の中井は、それが犯罪になるかもしれないけど、物語に乗っかってし
まった。やらなくてもよかったのにやってしまった。そして振り返れば「マク
ベス」をなぞっていた。

 だから「未必のマクベス」なのだ。


多呂さ(東京大空襲から74年目を迎えた3月10日です。そして私たちはあす3
月11日であの震災から8年目迎えます。何もかも元に戻ってしまった印象があ
ります。この国はどうなるのでしょうか)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/


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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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93 生活と物語と現実と

 美しい本が刊行されました。

 『バレエシューズ』
 ノエル・ストレトフィールド 朽木祥 訳 金子恵 画 福音館書店

 1936年にイギリスで刊行されベストレセラーになった物語で、日本で紹介さ
れたのは1957年。訳者の朽木さんも少女時代に愛読していたそうです。

 瀟洒な表紙を開いて読み始めると、あっという間に1930年代のロンドンにタ
イムスリップしたかのように入り込みました。

 学者のマシューがひょんなことから、身寄りのない赤ちゃんを3人続けて引
き取ることになります。マシューは気まぐれ(?)に期間を決めないで家をあ
けることがままるため、姉妹を育てたのはマシューの親戚のシルヴィアとシル
ヴィアの乳母であるナナでした。

 マシューは大叔父マシュー(Great Uncle Matthew)の頭文字でGUM(ガム)
と呼ばれています。生活はガムがみており、長い旅に出ている間はきちんとお
金はおいていきました。けれど今までにない長期間の不在にシルヴィアたちの
生活は苦しくなっていきます。

 その頃には成長した姉妹が家計を助けるべく舞台芸術学校に入学。また、空
き部屋に下宿人をおくことにし、結果、とてもいい人たちが住むことになり、
姉妹の支えにもなってくれるのです。

 さて、この物語は細部の描写がとても深く、3姉妹がくったくなく毎日を過
ごす様子から、いつかは自分の名前を歴史に残そうという野心をみせてくれる
など、彼女たちの動向に目が離せません。ポーリィン、ペトローヴァ、ポゥジ
ーは、大きい順から、舞台芸術学校で学び、自立し生活の糧を得るのですが、
どの公演でいくらもらえるかという具体的な数字がかなり出てきますので、家
計簿をみながら姉妹らの生計を応援しているような気持ちにもなりました。

 かといって貧困が描かれるわけではなく、生きていく上での山有り谷有りが、
子どもの視線で描かれ、女優として成功しつつあるポーリィンの奢りや、才能
があっても、見た目で判断される社会の厳しさも見せてくれます。周りの大人
たちが、子どもたちを支える姿もすてきで、子どもも大人も、読むと前を向い
て生きていく活力をもらえる物語、古典の底力を感じます。


 『わたしは女の子だから
  世界を変える夢をあきらめない子どもたち』
     文:ローズマリー・マカーニー ジェン・オールバー
       国際NGO プラン・インターナショナル 
     訳:西田佳子
     西村書店

 帯に6つのマークが印字されているのを、高校生の娘がみて、これ学校で見
た!と教えてくれました。

 2030年に向けて世界が合意した「持続可能な開発目標」がそれです。
 本書にあてはまるものは、この5つでした。

 1 貧困をなくそう
 4 質のいい教育をみんなに
 5 ジェンダー平等を実現しよう
 6 安全なトイレを世界中に
 10 人や国の不平等をなくそう

 タイトルにある「Because I am a Girl」「わたしは女の子だから……」は、
女の子を取りまくリスクから護り、彼女たちが生きる力を発揮できる世界をめ
ざして、国際NGOプラン・インターナショナルが展開しているグローバルキ
ャンペーン名からきています。

 少女8人は、自分らが経験した奴隷(カムラリ)、早婚、貧困などについて
語ります。写真も豊富に掲載され、意志の強い目力を感じる彼女らの体験は、
過酷で、学ぶ権利、教育も奪われている中で、自分たちが生き延びるために必
要なものを取得するために、努力している姿を見せてくれます。

 西村書店はいままでも“世界の今を知る写真絵本”を刊行し、私達読者に、
知らない世界をみせてくれました。

 本書は絵本より文章量があり、情報も多く、だからこそ、少女達の強さがよ
り伝わってきます。教育を受け、職業訓練を受け、未来を切り開いていくのに
何が必要かを読者に教えてくれます。

 日本の多くの少年少女たちに読んでほしいです。

 そして、“世界の今を知る写真絵本”『私はどこで生きていけばいいの?』
『すごいね! みんなの通学路』も手にとってほしい。

 目の前のことにいっぱいいっぱいの時期だからこそ、視野をぐいっと広げて
くれるはずです。

(林さかな)
会津若松在住。「本の雑誌」新刊めったくたガイド海外文学担当。
http://1day1book.strikingly.com/

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ― 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510

・『支え合い・学び合いで育つ「わたし」』(エディット・パルク)
  http://web.kyoto-inet.or.jp/people/cogito/%8Fo%94%C5%88%C4%93%E0/%8Ex%82%A6%8D%87%82%A2%81E%8Aw%82%D1%8D%87%82%A2.html

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 またあの日がやってきました。いろいろな人の人生を変えた一日。今日はゆ
っくりと過ごしたいものです。(あ)

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★「音楽本専門書評 BOOK’N’ROLL」/おかじまたか佳
→ #103『生命の暗号を聴く』

★「目につく本を読んでみる」/朝日山
→ 『消えた警官 ドキュメント菅生事件』坂上遼 講談社

★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→ 「嵐」が活動休止と聞いて、「方丈記」を読んでみた

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#103『生命の暗号を聴く』

 マキタスポーツとスージー鈴木の痛快楽曲分析本を前回はご紹介したが、音
楽理論に基づいているとはいえ、基本は、言葉の面白さを駆使した文系の楽曲
分析であった。

 では、それに対して、

 理系の楽曲分析ってあるのか?

というと、あるんだな、これが。それも、最先端の科学的研究をベースにした
すごいのが。

 音楽療法とか、植物に音楽を聴かせると成長が早いといった研究があるけれ
ど、いずれも経験値的なものばかりで、あれこれ試したらこの曲がいいみたい、
といった域を出ず、なんか、やたらモーツァルトばかりが「効果あり」という
結論になるな、という漠然とした印象しかなかったのだが、実は「タンパク質
の音楽」なるものが存在し、そこからある程度理論的に、音楽の持つ「効果」
が説明できる、ということを知ったのである。

 本書『生命の暗号を聴く 名曲に隠されたタンパク質の音楽』は、その理論
に基づく楽曲分析によって、どの曲にどんな効果があるかを明らかにした本で
ある。
 著者の深川洋一は東京大学大学院理学系研究科修了。現在はタンパク質の音
楽を用いた「音薬(楽ではなく薬。おんやく、と読むのでしょう)療法」の啓
蒙、普及活動にがんばっておられるようだが、ともあれ、タンパク質の音楽っ
て一体何?

 タンパク質というと筋肉、のイメージだが、体にいろんな機能をもたらすホ
ルモンや各種酵素なんかもタンパク質で、その種類は膨大である。
 しかし、すべてのタンパク質の原料はアミノ酸で、こちらは僅か二十種類し
かない。このアミノ酸が、細胞の中にあるリボゾームという、いわば工場に運
ばれてきて、日々遺伝子の設計図に従って組み合わされ、タンパク質となって
体の必要な箇所に送り出されている。

 重要なのは、アミノ酸がリボゾームに運ばれてくる時、である。
 この時アミノ酸は、「着いたよー」という合図に、振動波を発するのだそう
だ。当然その周波数は、アミノ酸の種類によって異なっている。そうでないと、
どのアミノ酸が来たのかがわからないからだ。

 ところで、振動波である限り、それは鼓膜に届けば音になるのだが、アミノ
酸の到着合図は周波数がめちゃくちゃ高く、人間の可聴範囲を超えているから、
76オクターブ下げないとわれわれには認識できない。
 もっとももし聞こえたら、始終体の中でいろんな音がしているわけで、もう
気が散ってしょうがないと思うが。

 しかし、聞こえなくても、音が鳴っていることは確かである。
 すると、タンパク質が合成される時、遺伝子の設計図に従って、順番に次々
と到着するアミノ酸は、連続してそれぞれ固有の音程の振動波を発しているこ
とになる。
 連続して、さまざまな高さの音が鳴る。
 そう、つまり、メロディなのだ。

 つまり、タンパク質ごとに、決まったメロディが奏でられていることになる。

 ここでぼくが思い出したのは、天体の音楽だった。
 かつてヨーロッパでは、星がそれぞれ固有の音を発しながら宇宙空間を回っ
ていると考えられていたことを、以前この欄でも紹介したと思う。これが「天
体の音楽」である。

 一方、マクロ・コスモスとミクロ・コスモスの照応という思想もあった。こ
れは、宇宙が巨大世界(マクロ・コスモス)であるのと同様に、人もしくは人
体は極小世界(ミクロ・コスモス)であり、両者はリンクしているという考え
方で、そこから生まれたのが占星術である。宇宙と人が対応しているからこそ、
宇宙で起こった天体の運動を見れば、地上で起こる人間の運命が予測できるわ
けだ。

 同様に、天体の音楽があれば、ミクロの細胞世界には、タンパク質の音楽が
ある、というのは、こうした文脈に置いてみると、非常に納得できる、と思っ
たのだ。

 ただ、天体の音楽はファンタジーだが、こちらは厳密に科学的な事実。
 それに、天体の音楽は単音だが、タンパク質の音楽は複数の音の連なり。先
に書いたように、メロディである。

 タンパク質1種類につき、ひとつのメロディが対応している。
 まあ、正確に言うと、さほど長いものではないので、フレーズとかモチーフ
と呼ぶべきかもしれない。
 だが、ひとつひとつの音程は、物理学的に厳密に計算できる。したがって、
その短いフレーズは、ちゃんと楽譜にすることが出来るのである。

 そこで、ひとつの着想が生まれる。
 もし、ある楽曲のメロディに、あるタンパク質のフレーズが含まれていた場
合、その曲を聴くと対応するタンパク質が活性化して、人体に何らかの効果を
及ぼすんじゃないか。

 だとすれば、これで音楽療法は理論的に説明できるかもしれない。

 さらに著者は、ある曲が名曲となり、ある曲がそうならずに埋もれていくの
は、作曲家の感性が時代の求めるタンパク質を無意識に感じ取り、そのタンパ
ク質のフレーズを使ってメロディをつくるからではないかと考え、具体的にさ
まざまな曲を分析していく。

 ただし、ふたつほど注意点がある。

 ひとつは、あるタンパク質のフレーズと、ある曲の一部分が、完全に一致す
ることはない、という点だ。
 もし一致するなら、楽譜を見れば誰でも一目瞭然なのだが、残念ながらそこ
まで都合よくはいかない。
 「似てる」「似てない」という印象による判断になるため、どの曲がどのタ
ンパク質に対応するかには慎重な判断が必要であり、この作業に習熟した専門
家でないと難しいらしい。

 もうひとつは、フレーズにはタンパク質の合成を「促進」するものと「抑制」
するものがある、ということだ。ここも慎重にどちらかを見極めないと、逆効
果になってしまう。

 さて、以上を踏まえて、ここでは、誰もが知る『上を向いて歩こう』の分析
をご紹介しよう。

 まず、この曲のどこにタンパク質の音楽が使われているかというと、歌い出
しである。「うえをむい」という部分(「て」は含まない)。そして続く「あ
るこ」の部分。(「う〜〜」と下がってくるところは含まない)。
 ちょっと微妙な切り取り方だが、ま、それはおいといて、このフレーズは、
PPARγというタンパク質の合成を<抑制>するメロデイに似ていると言う。

 PPARγは、脂肪の蓄積を促進する機能を持つタンパク質である。
 その合成を抑制するのだから、その逆、脂肪の蓄積を妨げることになる。
 なんと『上を向いて歩こう』、実はダイエット・ソングだったのである。

 さらに、ここからが本書の面白いところだが、ではなぜ、この効果を持つ曲
があの時代に大ヒットしたのか、という分析に著者は入っていく。

 そもそも人類の歴史は飢餓との戦いであり、飽食の時代になったのはつい最
近のことに過ぎない。だから、ずっと長い間、脂肪の蓄積を促進してくれるPP
ARγくんは人類の味方であった。
 日本でも、戦中から戦後にかけて食料不足が続き、人々は慢性的な飢餓状態
にあった。それが一転するのは、高度成長を経て、胃袋が満たされ、人々の欲
望がテレビや洗濯機やらクーラーに向かい、経済白書が「もはや戦後ではない」
と高らかに宣言した頃である。

 そのひとつの例証として著者が引くのは、糖尿病による死亡率のグラフだ。
 20世紀の前半には微増しているが、戦前から戦後にかけて一気に減っている。
しかし、1960年頃を境に急激な上昇に転じ、そのまま増え続けて世紀の終わり
には5〜6倍に達し、もはや国民病とまで言われているのはご存知の通り。

 では、『上を向いて歩こう』の発売がいつか、と見てみると……

 これがどんぴしゃ、1961年! まさに糖尿病患者の増加が始まった時だった!

 まるで、細胞レベルで脂肪の蓄積に警戒信号が出され、それを本能的に感知
した人類が、無意識にPPARγの合成を「抑制」する曲に飛びつき、大ヒットし
た、と考えられるわけだ。

 そうなるとこの歌が、当時日本以上に高カロリー食だったアメリカでも大ヒ
ットしたことの説明もつくし、それ以降同様の日本製ヒットがアメリカで生ま
れなかったことも納得できる。
 しかも、そのアメリカ版のタイトルが高カロリー和食の『スキヤキ』!
 この事実には単なる偶然を超えたものがある、という著者の主張には深く頷
いてしまうのであった。

 他にも、ベートベンの『運命』やら、映画『バグダット・カフェ』の主題歌
『コーリング・ユー』やら、黒人霊歌やら、多彩なジャンルの名曲がタンパク
質の音楽として解析されている。

 ちなみに、この音薬療法、やたらたくさん聴けばいいものではなく、適量を
守らないと逆効果になることも。
 正月太りが未だ解消せず、ダイエット中のみなさん、くれぐれも『上を向い
て歩こう』のヘビロテに走りませんように。


深田洋一
『生命の暗号を聴く 名曲に隠されたタンパク質の音楽』
2007年8月14日 初版第一刷発行
小学館

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
記録的に寒い北海道へ、またぞろ行ってきました。もちろん目当ては月光グリ
ーンのライブなんですが、今回もうひとつ楽しみが出来ました。すすきのにス
リラーナイトという怪談BARなるものがあって、初めて行ったのですが、い
や、これ、ほんと面白かった! 演出も最高だし、語り部の匠平さん、怪談も
さることながら人柄も素敵。夏の宵ではなく、零下10度の雪道を踏みしめて怪
談を聞きに行くのも、乙なもんです。

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『消えた警官 ドキュメント菅生事件』坂上遼 講談社

 冤罪事件が後を絶たない。だいたい何かの事件があって、被害者の周辺にい
た人の中で怪しそうな人か逮捕されて、自供を強いられるのがパターンだろう。
しかし警察が自ら事件を作り上げて冤罪と分かっている者を逮捕させるなんて
ことはないと思っていた。

 それがあった・・・それがこの本に書かれている菅生事件である。

 1952年正月、大分国警本部に戸高公徳という警官が呼ばれ、身分を隠して大
分県菅生村に潜入することを命じられる。要するにスパイである。目的は当地
にいる共産党員の監視だ。

 この当時の共産党は50年にコミンフォルム批判と言って、平和裏に革命を起
こそうとしていた日本共産党に対し、ソ連や中国の共産党が生ぬるいと批判し
武装革命をやれと批判したことで、これに従うか否かで党が割れていた。

 そんな中、武装闘争をやろうとした人たちが山村工作隊や中核自衛隊を編成
し、武装闘争の訓練や破壊活動をやろうとしていた。有名どころでは若き日の
小松左京もその1人だった。

 菅生村はそんな武装闘争の拠点になる怖れがあった。菅生村は大分県で農地
改革が最も遅れた地域で、不在地主や一部の地主が農業委員と結託して農地や
県から開拓農協に出る資金を横領していた。これに共産党の後藤秀生が気づい
て不当に搾取された財産を返せと運動を始めていた。党も重要活動拠点と位置
づけて活動家を送り込んでいた。

 潜入命令があった直後の一月には、菅生村一番の顔役で酒店と製材所を経営
していた松井波津生らが、暴力グループを雇って高橋の家を襲い、不在だった
高橋の代わりに父親の彦馬に全治三ヶ月の重傷を負わせた。これで舞台がアメ
リカ西部だったら、マカロニウエスタンの定番映画が撮れるだろう。

 警察は本当に菅生村から武装闘争が始まり日本中に波及することを恐れてい
た。事実、当時の共産党大分県委員長だった都留忠久は、「もう3ヶ月、いや
1ヶ月警察が待っていれば。冤罪、でっちあげ事件ではない、本当の菅生事件
が起きていたと思う」と述べている。そんな状況下、スパイとして戸高が送り
込まれた。

 同年三月、戸高は市木春秋と名乗り、松井の製材所に経理の仕事をすると言
う名目で入った。松井も戸高がスパイだと知っていて経理の仕事などさせずに
好きにさせた。

 戸高は後藤に取り入り、共産党に入党したいとまで言っていた。そんな戸高
を後藤も信頼していた。そこまで工作をしたところで、警察は後藤らにワナを
仕掛ける。

 戸高は、スパイとしてきちんと仕事をしていたのだろう。そして、共産党が
武装闘争に立ち上がる日は近いと報告を上げたのだろう。警察は共産党を恐れ
て、とにかく大事になる前に芽を摘み取ろうと焦った。もう少し待っていたら
良かったのに、待てなかった。だから共産党をワナにはめることを決断した。

 6月1日夜(正確には2日0時過ぎ)、市木がカンパすると称して、中学校
の手洗い場に後藤ら共産党員2人を呼びだした。中学校は県道を挟んで向かい
に派出所があった。カンパを受け取った2人は、市木と別れて駐在所のある方
向とは逆の方向に歩き出した。その時に派出所が爆破され、直後にどこからか
十数人の警官が飛び出してきて2人を現行犯逮捕した。その後、2人と共謀し
たとされた3人が逮捕された。

 6月3日の新聞には、駐在所の警官大戸三郎の妻みち子が「私は爆弾が投げ
込まれるのを知っていた」という証言が掲載された。夫の三郎から派出所が襲
撃されると知らされていたが、犯人に気付かれるといけないので「死ぬ気でが
んばった」として妊娠6ヶ月の身にもかかわらず逃げなかった証言し、美談と
して報道された。これに対して不審感を抱く人がほとんどいなかったのは、不
思議である。

 後藤らは、市木に呼び出されただけだと主張したが、当然市木(戸高)は姿
をくらませている。目撃者は周囲を張り込んでいた警官たちだけだから、当然
分が悪く、彼らは有罪判決を受けて服役した。

 しかし、これに疑念を持つ者たちがいた。共産党や地元の記者たちが動き出
し、消えた戸高を探そうと努力していた。そして市木の正体が大分国警の警官
戸高だと突き止めた。しかし、戸高がどこにいるのか全く分からない。

 しかし、執念の調査の結果、とうとう戸高の居場所が突き止められ、事件は
急展開を見せる・・・ものすごく面白い、ぞくぞくする実話である。

 戦前に弾圧され、獄に繋がれていた多くの幹部が出てきて終戦直後の日本は
「革命前夜」の雰囲気があったとはよく言われることだけども、それも道理だ。
こんな分かりやすい構図で警察が悪役やっておれば、そりゃ革命がおきても不
思議ではないなという感じである。

 残念なのは、現在絶版状態で、電子書籍でしか手に入らないことだ。もとも
と2009年発行で、文庫化もされているのだが、あまり話題になっていた記憶が
ない。なんでこんなに面白いのに話題にならなかったのか、不思議でしょうが
ない。

 しかし、電子書籍になっているからこそ紙の本としては絶版になっても、こ
うしていつでも手に入れることができる。良い時代になったものだ。


(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)

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■「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
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「嵐」が活動休止と聞いて、「方丈記」を読んでみた

角川ソフィア文庫 ビギナーズ・クラシックス日本の古典
『方丈記(全)』鴨長明 武田友宏編


 いや、ジャニオタってすごいね。(※ジャニオタとは、ジャニーズのファン
のことです。)

 2020年12月31日をもって「嵐」活動休止の報に際して、おばちゃまみたいな、
薄っすーい、ほぼお茶の間ファンのところにも、「大丈夫ですか」「気を落と
さないでね」なんていう励ましのメールがあちこちから届くんですから。一番、
気遣ってくれたキンキキッズのファンの50代女性は、3年前に、友人のスマッ
プのファンの傷心をサポートした経験があるんだって。だから、薄いお茶の間
ファンでも放っておけなかったみたい。もうね、プロのカウンセラー以上に
「聞く技術」を持ってた。驚く!(いや、ありがたいですよ。人という字は支
え合って生きる姿なんだね・・・)

 私は、大丈夫ですよ。今回の決定はベストな選択だと思うし。

 でも、いろいろ思うことも多いですなあ。

 で、こういう意外な事態に遭ったときは、ホームポジションに戻るのがいい
と思いました。おばちゃまのホームポジションは一応、古典文学なんで、「方
丈記」を読んでみました。日本古典の入門書としては一番!と思う角川ソフィ
ア文庫・ビギナーズクラシックス日本の古典『方丈記(全)』(武田友宏編)
で読みました。

 最初にあまりにも有名な世の無常をうたった文章がガツンときます。

「ゆく川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうた
かたはかつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。」
 
(川の流れは一瞬も休まない。それどころか、河の水は後ろの水に押されてつ
ねに前に進み、元の位置に留まることはない。(略)流れていないように見え
る淀みもそうだ。無数の泡が留まることなく浮かんでは消えて、元の形を保つ
という話は聞かない)

 つまり、同じように見えるものや人も日々変化しているのです。毎週同じに
見えるバラエティもよく見ると違うし、毎年のコンサートも変化している。嵐
のメンバーだって、ファンだって日々、変化している。加齢もするし、気持も
うつろうわけですよ。休みたくなるし、やっていることとは違うことをしたく
なる。まさにもとの水にあらずな状態ですね。その小さな変化が積もり積もっ
て大きな変化を呼ぶことになったのが今回の活動休止なわけで、それは生きて
いる人の人生にも起きていることなんですね。おばちゃま、納得したですよ。

 「ゆく川の流れは絶えず、かあ・・・」もうこの冒頭の名フレーズは年齢を
重ねれば重ねるほど、心に迫るものがあります。
 
 折角なので後の章も読んでみました。

 すると。長明が生きた時代は都市災害があいついだ時代で、その記述がまあ、
今の日本に酷似していることに驚愕しました。安元の大火、治承のつじ風、養
和の飢饉、元暦の大地震・・・これが長明が実際に体験した災害です。

 これを体験しても無常観を肌で感じたでしょう。

 そして長明自身も、親族との権力闘争に敗れるという挫折を味わっていて、
そこがこの著作が古典として長く生きてこられた裏づけになっていると思われ
ます。読むと、54歳で都の郊外に庵を結んで隠遁生活したことへの、自負とは
裏腹な負け惜しみみたいな記述もあって、これはこれで人間臭い。

 編者の武田さんはこう言っています。

「鴨長明というと、河の流れを眺めながら「無常」にひたっている引きこもり
型のおじいさんを想像しがちです。しかし、実際は「無常」に積極的に立ち向
かい、前向き人生の改革をはかった人物です。『方丈記』も、世をはかなむ無
常感一色に塗りつぶされた作品ではなく、我々現代人にとって参考になる生活
ヒントをたくさん盛り込んでいます」

 引きこもりのおじいさんって!(笑)

 人生に挫折した。災害は次々にやってくる。
 世は無常で、嵐は活動休止する。

 そんな状況の中で、無常と理解しながら捉われる執着心に、「じゃ、あなた
はどうする?」と問いかけているのが「方丈記」なのではないでしょうか? 
それも上から目線ではなく、「オレもこれでかなりキツイのよ」という気持ち
がチラチラと見える部分があるから共感でき、約800年の時を永らえる古典に
なったのだと思います。

 文庫本にして注釈と現代語訳含めて約150ページと薄くて読みやすいのも
「方丈記」の良い点。ぜひご一読を!(特に嵐ファンの方)。 


大友舞子(おおとも・まいこ)
昭和20年代生まれのフリー編集&ライター。関東生まれで関西在住。

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・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
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■あとがき
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 方丈記と平家物語ってときどき混ざりませんか?(あ)

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[書評]のメルマガ vol.671

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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<110>『ウーパ!』は、昭和的中高年オトコのアコガレ体現漫画

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→92 本はいいよ

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第109回 歴史は繰り返し、結局人は学ばない

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→すいません、ほぼ日の経営。(2018/10/22 川島蓉子著 日経BP社)

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<110>『ウーパ!』は、昭和的中高年オトコのアコガレ体現漫画

 二月だというのに、温かい日が続いている。

 天気予報でも、「四月上旬並み」とか「三月中旬の暖かさ」という文言をよ
く聞く今日この頃。
 温暖化ってやつですか? 冬なのに、こうも温かい日が続くと、ホンマに地
球は大丈夫なんかいな、とかなり本気で北極のシロクマさんが心配になってき
たり。

 以前住んでいた神戸市北区は、神戸市内唯一の「積雪区」で、この冬にも既
に何度か雪が積もったようだが、それでも、せいぜいが2〜3センチの積雪で、
以前に比べると格段に積雪量は少なくなっている。

 神戸市北区は、わしの故郷でもあるのだが、わしが小学生から中学生のころ
…だから昭和の30年代末から40年代ころには、雪が積もる日というのは、ひと
冬の間に、今よりもっと頻繁にあったし、毎年1回〜2回ほどは「大雪」も記
録して、積雪量は30センチほどに達したりもした。

 その小学生のころ、家の裏手を流れていた川は、冬になると「凍る」のが当
たり前で、浅い流れの上に白くて薄い氷が幾層にも重なるそれは、さながらミ
ルフィーユのようで、これを足で蹴って割ると、「しゃくしゃく」ととても小
気味よかった。

 裏山を少し入ったところにあった落差3メートルほどの滝は、冬には全体が
凍りつき、あちこちにつららを下げた氷瀑となった。
 この氷柱に石を投げて突き崩すのも、冬の子どもの遊びの定番だった。
 大きいものでは直径30センチほどだったか、上下がつながった氷柱を、石を
投げたり棒でたたいては突き崩し、「戦利品」の先のとがった氷柱を持ち帰っ
ては、得意げにそれを舐めていると、「汚い!」と母親にどつかれた。
 確かに、滝の上流には集落があって、その生活排水もそこには流れ込んでい
るのだった。

 山の棚田の中にあった溜池にも、冬になると厚い氷が張って、その厚さを足
で踏んでは確かめつつ、向こう岸まで氷の上を歩いて渡るのも、男の子の冒険
遊びの定番だった。
 経験的に、池の縁に近い方は氷が厚く、真ん中に行くほど薄くなるのは知っ
てたので、慎重に足で探りながら、踏み出した足の先で「ピシッ」とか「メキ
ッ」という音が聞えたら、急いで撤退するのもまた、男の子の勇気なのだ。

 昭和40年代、神戸市北区には、相次いで団地や新興住宅地が開発された。そ
こへ神戸や西宮の街場から越してきた子どもたちは、初めて体験する冬の雪や
氷に興奮するのか、溜池に張った氷に、おそるおそる乗ってみると、これが割
れないのをいいことに、「わ〜〜い!」と一気に走っては、真ん中あたりで
「ずぼん」と池に落ち、氷の下で水死する…というような事故も、幾度か報告
された。

 が、この近年…って、ずっと住んではなかったので、何年前くらいからなの
かはわからないのだが、雪が積もっても30センチにもなることはまずないし、
川も凍らず、池に氷は張っても、とてもそこに乗ろうとは思えない、薄い氷で
しかない。

 滝が凍る様も、この何十年か、地元では見たことがない。

 小学生のころ、雪が積もると山の中で、立木や灌木を「柱」にして、雪で壁
と天井を造った「かまくら」風の、当時わしらの間では「いえ」と称していた
秘密基地をつくるのが楽しみだった。
 自作の竹スキーやそり遊びに興じた後、持ち寄った食い物を「いえ」で分け
合って食ったり、持ち込んだ漫画を読んだり。

 冬でなくとも、「いえ」は常に仲間で作っていた。
 やはり山の中で、立木を中心として笹や灌木を周りに立てかけた原始時代竪
穴住居風のものやら、川が崖を穿った窪みを砦風に仕立てたもの、休耕田をひ
たすらに掘っては、灌木や笹で屋根を拭いた上にカモフラージュの土をかぶせ
たトーチカ様のものとか、果ては電車の線路わきに積んであった枕木と、製材
所から失敬してきた材木を使って、ツリーハウスを建設しようと試みたことも
あった。

 山の中などを徘徊中に、自分たち以外が作った「いえ」を発見すると、これ
は徹底的に破壊するのが「掟」でもあったので、わしらの「いえ」も、完成か
ら数週間、早い時には数日後には、たいてい誰かによって破壊されるのが常だ
った。

 「いえ」すなわち「秘密基地」遊びは、かつて男の子だった人なら、だれに
も経験があると思うのだが、これを大人になってから再びやってしまった顛末
記が、先ごろ「モーニング」での連載を終えた、守村大『ウーパ!』である。
 この漫画、「まんが新白河原人」とのサブタイトルのとおり、元は同じ「モ
ーニング」に連載された絵付きコラム、「新白河原人」が好評につき、その漫
画版として連載がスタートしたもの。

 2005年、連載作品を完結させた守村が、次の作品の構想を練るうち、自身が
疲れ果てていることに気づき、「モノ、カネに縛られる生活は、もうイヤだ!」
と一念発起。家族の反対を押し切り、福島県白河に買った山林で、自給自足の
生活を始める。ときに守村大、47歳。

 自力で山林の樹木を伐採し、開墾した土地にやはり自力の見様見真似でログ
ハウスを建設し、そこを拠点として畑を造り、鶏を飼っては卵と肉を確保した
り、炭焼き小屋を造っては燃料の炭を焼いてみたり、ゲストハウスのツリーハ
ウスやサウナ小屋まで自作してしまったり、震災で瓦礫と化していた大屋石を
譲り受けては、パン焼き窯まで自製してしまったり。

 もちろん、すべてがすんなりと運んだわけではなく、その過程は失敗と挫折
と試行錯誤の連続で、当初の完全時給自作の目標も、電気や水洗トイレはやは
り必要、と現実と妥協してみたり、なのではあるが、その生活の中での様々な
人たち…炭焼きを教えてくれた地元の爺さんや、猪肉を分けてくれるやはり地
元の猟師さん、あるいは守村が「師匠」とも「親分」とも呼ぶ、釣りとその釣
竿及びルアー作りの名人、等々…との出会いと交流が、読んでいるととても羨
ましく思えてくる。

 それを現実に実行できるかどうかは別にして、『ウーパ!』は、男子なら誰
しも、「いいなあ…」という羨望と共に、ガキのころのノスタルジーを掻き立
てられる漫画なのだ。

 と思っていたら、ふと立ち寄った本屋で、これまた男の子の「秘密基地」願
望を著しく刺激する漫画を見つけてしまって、本稿ではこれにも言及する予定
だったのだけど、今月はちょっと野暮用が混んでいて時間がない。
 なので、そちらは、また来月のココロ、なのだった。


太郎吉野(たろう・よしの)
阪神タイガースお膝元在住。右投げ右打ち。趣味は途中下車、時々寝過ごし乗
り越し、最長不倒距離は三重県名張。
ちなみに「阪神タイガース」の「阪神」は、「兵庫県阪神地方」を指します。

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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92 本はいいよ

『ぼくは本を読んでいる。』
 ひこ・田中 講談社

 タイトルが物語すべてを表しています。
 そう、これは「ぼく」が本をひたすら読んでいるお話です。

 「ぼく」(ルカという少年です)の家には両親が「本部屋」と呼んでいる部
屋があり、そこには、壁一面に本棚があり、テーブルとイスも置いてある、読
書には最適の部屋です。

 ルカはかつて幼い頃はそこでよく絵本を読んでもらっていましたが、
 小学5年生になったいまは、もう親に本を読んでもらう年齢ではありません。

 そうして、いつのまにか「本部屋」に入らなくなっていたのですが、
 ひょんなことから、久しぶりに入ったその部屋で、
 ちょっとそそられる本をみつけました。
 
 本の奥付をみると、どうやら両親のどちらかが子どもの頃に読んでいた本ら
しく、ルカは親に内緒でその本を読みたくなります。

 その本は岩波少年文庫の『小公女』。

 タイトルがわかったとき、思わず興奮してしまいました。
 子どもの頃、私も大好きだった本なのです。
 最初に読んだのはいつだったかは思い出せないのですが、
 おそらく小学生だったように思います。

 ルカの読書を追っていくのは、e.o.プラウエンの『おとうさんとぼく』に描
かれているコマ漫画のようです。それは、ぼくが読んでいる本をおとうさんが
背中越しに読んでいるうちに、おとうさんの方が夢中になって、いつのまにか
二人が交代している内容で、私もまさにその状態になっているおとうさんの気
持ちでした。

 ルカが『小公女』に夢中になったおかげで、転校生の読書好き少女カズサと
も仲よくなり、好きな本について語れる仲間がいる喜びも伝わってきます。

 この物語は子ども時代の楽しさが、熱量高すぎず、さらりと書かれており、
その適温は大人にも読みやすいものになっています。

 現役の小学生に、図書館や学校の図書室で出会って欲しい物語です。


 次にご紹介するのは絵本です。
 
 『数字はわたしのことば 
    せったいにあきらめなかった数学者ソフィー・ジェルマン』

      シェリル・バードー 文 バーバラ・マクリントック 絵 
                    福本友美子訳 ほるぷ出版

 実在した数学者ソフィー・ジェルマンの伝記絵本です。

 ソフィーは幼い頃から勉強することが大好きでした。
 少女時代、パリはフランス革命さなかだったため、外は危ないと家の中で過
ごす時間が多くありました。
 その時間を使って、ソフィーは数学の勉強をし続け、気づくのです。
 

   ”数学者が数字をつかうのは、詩人がことばをつかうのと同じだ、
   とソフィーは気づきました。”


 ソフィーは数学者になりたい、数学を自分の言葉にしたいと強く思うように
なります。

 時代的に女性が勉強を志すのは難しく、教授も女性に教えようとは思わない、
それでも、ソフィーはあきらめず、大学の数学の課題を入手できたときは、男
性名でレポートを送るなど、粘り強く自分の学問を深めていきました。

 あきらめないソフィーの強さを、バーバラ・マクリントックは繊細に描き、
見ごたえがあります。特に勉強に集中しているソフィーの眼差しは印象に残り
ました。

 学ぶことが大変な時代に、穴をこじあけていくのは、数学が好きだという強
い気持ち。進学などで将来を考えている中高校生にもおすすめしたい絵本です。

 最後にブックガイドをご紹介します。

 『スポーツするえほん』中川素子 岩波書店

 絵本研究の第一人者による、スポーツを描いた絵本60冊を様々な切り口で紹
介しています。

 目次をみてみましょう。

 体を動かす楽しさ
 動きの美しさ
 運動会からオリンピックまで
 コミュニケーションが生まれる
 自分にうちかつ
 伝統の力
 運動の技術
 スポーツに必要なこと
 スポーツと社会
 スポーツ・ファンタジー
 
 登山やバレエなど、スポーツを広くとらえ、ゆるやかなくくりになっている
ところがおもしろいガイドになっています。

 このメルマガでもご紹介した絵本も数冊入っていて、なるほど、スポーツと
いう枠で読むとみえてくるものに新鮮なものを感じました。

 読みたいと思っている一冊は、このガイド本の著者である中川素子さんの絵
本。

 『スタシスさんのスポーツ仮面』(岩崎書店)はリトアニア生まれでポーラ
ンド在住のアーティスト、スタシス・エイドリゲーヴィーチュスが絵を描いて
いて、スポーツを「深く多様に」紹介しているようで興味津々です。

 絵本の世界も広い。
 ガイドを読んでいるだけで、スポーツしたくなってきます。
 

(林さかな)
会津若松在住。「本の雑誌」新刊めったくたガイド海外文学担当。
http://1day1book.strikingly.com/

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第109回 歴史は繰り返し、結局人は学ばない

 カズオ・イシグロはいったん休憩にしよう。でも、いまもまだしっかり読ん
でいるので、来月以降になるが、小欄で紹介していこうと思っている。
 今月は、楽に行こう。すぐ読めてしまう本を紹介する。それでも表題の如く、
テーマは重たい。重たいけど、どうしようもないと思わずに、なんとかしよう
と前向きに考えていきたい。それができていれば、人類はとっくに争いのない
世界を構築しているのだけど・・・・・・。
 明治時代について考えて、現代を見つめ直す、という作業をするための本。

『行きづらい明治社会 −不安と競争の時代』(松沢裕作 著)(岩波書店)
(岩波ジュニア文庫)(2018年9月20日 第1刷)

 本書は、「ジュニア文庫」というくらいだから、読者層を小中学生向けにし
てあるが、大人も読める本である。むしろ大人が読むべき本である。書いてあ
る内容が経験値のあるなしで、理解の速度が速くなるかゆっくりになるか・・
・。自分にも当てはまることが書かれていれば、理解は早い。歴史学とは過去
を研究し、現代に生かす学問であるならば、本書は明治時代を研究して、それ
を我々が生きている今、現代と比較しているわけで、さまざまなことを既に経
験している大人にこそ読んでほしい本になっている。

 四民平等、殖産興業、富国強兵等々のスローガンの下、明治維新という革命
を経て、まったく新しい政府を作り、近代化に邁進し、日清日露とふたつの対
外戦争に勝ち、ほぼすべての制度や様式がアジア初となり、国際的にも重要な
地位に上った日本という国家が、明治という時代である。いまを生きている我
々にとって100年以上前になってしまった明治時代とは、明るく元気な印象
があり、若さ溢れるまさに青春の時代であろう。坂の上の雲。

 しかし、本書では、明治時代とは決して明るい時代ではなかった、というこ
とを伝えている。題名が、『行きづらい明治社会』なのだ。

 著者は、まず明治時代の社会を想像する。そして、長く続いた江戸時代と比
較して、明治時代とは、社会が不安定であり、ひとりひとりはとても不安を持
って生活していたのではないか、と仮説を立てる。江戸時代までの封建社会で
は、身分が固定され、生まれた社会から逸脱することはできなかった。決めら
れた範囲の中で生きていくしかできない社会だった。百姓の子は決して武士に
はなれない。現代の我々からみれば、それは不合理であり、理不尽なことと映
るかもしれない。しかし、想像をすこしたくましくしてみれば、それは逆に生
きやすい社会であるのではないか。つまりある一定の範囲で生きていけばいい
わけで、血のにじむような努力をしなくてもよかったということだろう。

 明治維新後、日本は身分制が取っ払われた。百姓の子も大臣や博士、大将に
なれる。立身出世。末は博士か大臣か。・・・という社会が、曲がりなりにも
実現された。人々は努力が奨励され、頑張ることが推奨される。

 努力すれば、必ずそれが報われるのであれば、何の問題もない。しかし世の
中、そうは甘くない。頑張っても報われないことの方が多いかもしれない。

 著者は、この“頑張れば報われる”ということが、実はある種の「わな」=
罠、であると云い切る。
 “頑張れば報われる。報われずに貧乏のままでいるのは、その人の努力が足
りない”という考え方が、明治以降の日本を覆う。それを歴史学の世界では
「通俗道徳」と呼んでいるそうだ。勤勉に働くこと、倹約をすること、親孝行
をすること、そういうことを実践すれば、必ず報われるという。明治の人たち
はその“通俗道徳のわな”に嵌まってしまっていた、というわけだ。しかしこ
れが妄想であることは、その後の歴史が実証している。我々は努力しても必ず
しも報われないことをよく知っている。

 明治時代は、現代のように、生活保護の制度はない。さらに国民皆保険制度
もない。病気や怪我で働けなくなったら、それでおしまい。ゲームオーバー。
また低賃金で貯蓄の余裕もない働いて働いて働いても最下層民たちは貧民窟か
ら抜け出せない。
 末は博士か大臣か、という言葉はある一定の階層以上の人たちだけに云える
ことであり、大多数の人々は義務教育である尋常小学校が終了すれば、社会に
出て働かざるを得ない。それ以上の学校へ行こうと思えば、膨大な学費がかか
る。下層階級にその余裕はない。
 明治という時代は実はとても生きづらい社会だったわけだ。

 明治時代は、近代化を急ぐ過程において、そうした下層階級から意図的に目
をそむけていた節がある。財源は国家を建設する設備(道路鉄道港湾学校軍隊
など)に廻さなければならなかった。貧民対策をしている余裕はない。病気に
なったり運悪く財産をなくしてしまったりしたときに、それに助ける施策、困
っている人に手をさしのべることは、世の中全体として許されることではなか
った。まさに、お国のために、であり、滅私奉公の社会であった。

 翻って現代はどうだろう。

 我々は、弱い人たちを助けているだろうか。立派な憲法を持ち、それに基づ
き生活保護制度が完備され、国民皆保険制度が充実している。しかし、「自己
責任」という言葉で弱き者たちや一定の道から外れてしまった人たちを区別し
ていないだろうか。

 よくわかっているように現代も明治時代に劣らず、不安定な社会となってい
る。それは誰もが認めている。みんな生きていくことにとても不安なのだ。
 人が生きていくことにそれほど不安を覚えずに生活するためにどうすればい
いのだろうか。100年前の明治時代に学び、我々は何をどう考えて、実行し
ていけばいいのだろうか。

 ますます、考え込んでしまう一冊だった。


多呂さ(あれだけの不祥事を抱えていて、どうして誰も責任を取らないのでし
ょうか。安倍内閣は。云いたい放題で無責任な副総理がその原因なのでしょう
か)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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■「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
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すいません、ほぼ日の経営。(2018/10/22 川島蓉子著 日経BP社)

 私がいる会社では、昨年末に採用ホームページのリニューアルが決定し、現
在、企画制作が進んでいます。リニューアルの最大の目的は、売り手市場が進
む新卒採用対策です。うちの会社はIT系企業なのですが、現時点でITに興味の
ない学生でも、業界や会社に興味を持つきっかけとなるような、そしてそこか
ら応募につながるようなページづくりを目標に、企画がスタートしました。

 検討の開始当初、企画の参考にするため、他社の採用ホームページを何社も
見ていたのですが、とある業務用機器のメーカーさんのページで、これはとい
うものを見つけました。

 その会社の採用ホームページでは、「部門紹介」というページが設けられて
いるんですね。開いてみますと、製品が工場内でどのような人の手を経て作ら
れているか、そして社内のどのような部署がそれに関与して、最終的にお客さ
んの元へと届くのか、すべて流れ図をつかって説明されていたのです。

 図の所々には、部署の名前や社員の写真が表示されており、そこをクリック
すると、社員のインタビューがでてきます。つくっているのが業務用機器とい
うこともあり、一般消費者にはまったく馴染みのない商品なのですが、これな
ら予備知識がない学生でも、その会社のイメージがつかめるなと感じたのです。

 そうとなれば、この方法を自社でも応用できないか、さっそく試作してみる
ことにしました。私が勤めているのは、いわゆるシステムインテグレーター。
顧客企業の業務を理解してシステムを提案し、実際につくり、運用する、とい
った一連の流れをすべて手掛けています。そこで、会社にある部署をすべて紙
に書きだし、それらの部署が仕事でどのように繋がっているかを、実線で結ん
でいったのですが・・・これがなかなか難しい。

 たとえば「システムをつくる」と言っても、その中には開発する部署の他に、
インフラを構築する部署や、セキュリティをチェックする部署、品質を担保す
る部署など、様々な組織が絡みあっています。また1つの部署=1つの役割、
ではないため、結ぶ線の数も、その分増えていくのです。なんとか完成させた
図を見てみると、部署間の関係性を正確に表現しようとしたあまり、パッと見
て複雑で、この上なくわかりにくいシロモノに。。。

 もっと簡略化した図にできないかと思い、誰かにヒントをもらおうと、現場
の部署の方にも相談してみたところ、意外にも「いいじゃん、これ」という反
応が。ただ、新たな課題も提示されてしまいました。本来の組織図は、すべて
の部署が同列になっているんだから、この図もそのへん気を遣ってよ、とのこ
と。つまり、システム開発の会社を図にすると、どうしても開発をやる部門が
真ん中に配置されてしまい、間接部署は脇に追いやられてしまうんですね。開
発が偉いわけじゃないんだから、それをどうにかしろと。

 いきなり妙案が浮かぶわけでもなく、あれこれと考えていた時、仕事帰りに
立ち寄った書店で、なんとなく手にとったのが本書でした。最初はまったく買
う気はなかったのですが、目次の中に「人体模型のような組織図」という項目
があり釘付けに。その項を立ち読んだ後、すぐレジに持っていったのでした。

 この本は、かの有名なコピーライターでもある糸井重里氏が設立し、ジャス
ダック上場も果たしている「株式会社ほぼ日」についての解説本です。著者の
川島氏と糸井氏の対談形式で、話は進んでいきます。

 さて、人体模型のような組織図とは何ぞや?と申しますと、ほぼ日で社内向
けに作っているという、ヒトの内臓を模した組織図のことなのです。人間の体
内には様々な臓器があるけれど、すべてがつながって初めて人体になっている
から、腎臓より心臓のほうが偉いということはない。それは会社でも同じで、
どの部署がえらい、さらにどの役職がえらいということもないから、人体を模
した組織図を作っている・・・と。公表されていませんが、実際の組織図には
社員の名前も明記されているらしいのです。

 よく「フラットな組織づくり」を標榜する会社は、特にベンチャーに多いで
すが、経営層も含め全社員がフラットな状態を目指そうとする組織は、なかな
かないのではと思います。

 この件も含め本書の読後に抱いた感想は、ほぼ日という会社(というか糸井
重里という経営者)は、自らがどうありたいかというポリシーを明確に持って
いるんだなということ。そして、それを社内外の人たちに、いかにわかりやす
く伝えるか、表現するかを追求しているんだなということでした。

 本書はほぼ日における、事業、人、組織、上場、そして社長という全5章で
構成されています。対談形式なので、肩の力を抜いて読むことはできるのです
が、すべての項において企業の、または社長としてのポリシーがはっきりとし
ているんですね。とてもじゃないけど、糸井氏がまともな就職をしたことがな
いという話が信じられないくらいに。
 
 また、会社運営にコピーライターとしての技量を発揮されているのも面白い
と感じた点です。中でも、「やさしく、つよく、おもしろく」というほぼ日の
行動指針がどのような経緯で生まれ、今に至っているかが書かれていた件。社
長が理念や指針を作っても、それが浸透しなければ意味がないわけですが、何
度も言葉を紡いで出来上がったという話はリアリティがありました。社員が本
当に、この言葉を大事にしながら仕事してるんだろうなと。

 正直なところ、第4章で語られる、ほぼ日が株式を上場した理由のところだ
けは、読み手により賛否両論ありそうだなとは思いましたが、会社にとっての
ステークホルダーに対してのスタンスが明確で、世の中においてどのような存
在でありたいかまでをわかりやすく語る糸井氏は、「すいません」と謝る必要
がないくらい、立派な経営者であると思ったのでした。

 さて、自分の会社の組織を、知らない人にどう表現していくか。ほぼ日の真
似をして、人体模型のような図を書くこともできるんでしょうけど、結局、そ
れをもって何を伝えたいのかがわからないと、意味がないですね。自社の存在
意義や価値とは何か。根本的なところが明確に表現できれば、組織の表現方法
のヒントも出てきそうな気がしています。

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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
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 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ― 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510

・『支え合い・学び合いで育つ「わたし」』(エディット・パルク)
  http://web.kyoto-inet.or.jp/people/cogito/%8Fo%94%C5%88%C4%93%E0/%8Ex%82%A6%8D%87%82%A2%81E%8Aw%82%D1%8D%87%82%A2.html

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 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 配信遅くなりました。ある程度まで発行準備が出来たところで外出したら、
その間にパソコンの更新がかかり、それまでの作業がフイになってしまいまし
た。それで、しばし、脱力してました…。

 まあ、保存してなかったのが悪いんだけどさ。

 二度目の作業なので、きっとクオリティアップでお送りしております。……
多分。(あ)

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[書評]のメルマガ vol.670

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■コンテンツ
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★「トピックス」
→ トピックス募集中です

★「音楽本専門書評 BOOK’N’ROLL」/おかじまたか佳
→ #102『カセットテープ少年時代』

★「目につく本を読んでみる」/朝日山
→ 『鮨職人 VS 堀江貴文』堀江貴文 ぴあ

★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→ 『愛し続ける私』(十朱幸代著・集英社刊)

★【募集中】献本読者書評のコーナー
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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#102『カセットテープ少年時代』

 テレビで見る有名人と、街中で偶然出くわしたりすると、やっぱりちょっと
驚きますよね。
 でも、知人とか友人が、たまたま見たテレビ番組に出ているのを見た時の方
が、何倍もびっくりしません?

 いや、実は昨年そういう経験をしたんですよ。
 何気なく見ていたBS12チャンネル。日曜の夜でした。
『超ムーの世界』という、超常現象やらUFOやらを扱うオカルト番組を見て
いて、終わってからもそのままチャンネルを変えずにいたら、『ザ・カセット
テープ・ミュージック』という音楽番組が始まったんです。

 と言ってもミュージシャンは出て来なくて、スタジオにおじさん二人が座っ
てくっちゃべってる。アシスタントに元アイドリングの女子が一人ついてまし
た。失礼ながらいかにもBSな感じのチープなつくりの絵面。
 でもまあ音楽番組らしいので、見るともなしに流していました。

 すると、どうもおじさんたちの声に聞き覚えがあるんですね。
 ちょっと高い声の方は、あ、これ、マキタスポーツかな、と思って、画面を
見たら、そう、確かにマキタスポーツでした。
 そしたら、もう一人の方は?

 よくよく見ると、あれ、この眼鏡の風貌、低めの関西弁……ってこれ、会社
の後輩じゃん! と気がついたわけです。
 厳密に言うと去年の三月で早期退職したので、「かつての後輩」なんですけ
ど。

 と言っても、それほど密に仕事をしていたわけではなく、何かの折にちょっ
と一緒になったぐらいだった気がする。
 プライヴェートでは、会社の先輩が組んでいるバンドのライブで顔を合わせ
たことがあったっけ。ぼくが前座で出て、彼もゲストとしてそのバンドと一緒
に2曲ほど演奏していました。テレキャスを弾いてたな、確か。

 だから彼が、実は音楽評論家としても著書を何冊も上梓しているとは露知ら
ず、ましてテレビで活躍しているとはねぇ、のスージー鈴木であったのです。
あ、そう言えば彼、会社でもスージーって呼ばれてました。

 内容はいたってシンプルで、回ごとにテーマがあり、それに即してスージー
とマキタスポーツがそれぞれ選曲。カセットテープに録音して持ち寄ったもの
を聴きながら、その曲を選んだ理由をあれこれしゃべる、というだけ。ちなみ
に元アイドリングの女子は、ラジカセのボタンを押す係で、後はおっさん二人
に音楽的無知を突っ込まれる無邪気なボケ役です。
 もともと深夜枠で放送されていたものが、日曜9時台にのし上がったらしい。

 その深夜時代の内容が、なんと書籍化までされていると知ったのは、ちょう
ど番組を偶然見て暫く経った頃。紀伊国屋書店笹塚支店で、ひっそりと棚に眠
っているのを発見しました。
 それが本書、マキタスポーツ×スージー鈴木『カセットテープ少年時代』な
んです。

 早速、購入。

 番組のタイトルは先述の通り『ザ・カセットテープ・ミュージック』なんで
すが、本の方はなぜか『カセットテープ少年時代』になっており、サブタイト
ルもついてまして、こちらは『80年代歌謡曲解放区』です。

 といっても取り上げる音楽はかなりアバウトで、必ずしも歌謡曲に限らず、
当時ニューミュージックと呼ばれていたフォーク、ロック系までを含めた日本
のポピュラー・ミュージック全般。時代も80年代が中心ではあるものの、60年
代から90年代くらいまでOKにしている模様。

 マキタスポーツには既に『すべてのJ−POPはパクリである』という挑戦
的なタイトルの著書があって、音楽的に細かい楽曲分析をする人であることは
知っていました。
 その曲のコード進行はどうなっているか、それはなぜか、あるいは何を表現
したかったからなのか、歌詞との関係は、など、かなり専門的に突っ込んで調
べていくのが楽曲分析ですが、ここにスージー鈴木がさらに深い考察を加えて
いくのが、最大の特徴でしょうね。

 それに、マキタスポーツはもっぱらメロディやコード進行に着目するのに対
し、スージーはより歌詞へのこだわりを見せる。
 この二人のコンビによって、分析が立体的になり、より面白くなっている所
以です。

 ジャズとかクラシックでは当たり前に行われている楽曲分析。それがニュー
ミュージックはまだしも、歌謡曲に対して行われることはあまりなかったんじ
ゃないかな。
 ややもすると、音楽的には軽視されがちなジャンルですし。
 って言うかぼくも若い頃は洋楽志向で、軽視してました……ってことは前回、
山口百恵のところでも書きましたね。

 楽曲分析である以上、音楽用語は頻出します。
 番組内でもマキタスポーツが時々「メジャーセブンスとかディミニッシュと
か平気で出てくる音楽番組、ないよ」と言っていますが、確かにその辺容赦な
い。

 しかし怯む必要はありません。
 この二人が独特な言語感覚で、わかりやすく翻訳してくれるからです。これ
が従来のくそまじめな楽曲分析になかった画期的な面白さですね。

 また、よく泣くんです。
 初めてその曲を聴いた時の感動が蘇ったりして。
 年を取ると、脳の中の感情を抑制する機能が衰えるので、涙もろくなったり
笑い上戸になったり怒りっぽくなったりするそうですが、まさにおっさんなら
ではの味。
 なので、気楽に楽しめて、ちょこっと音楽理論もわかった気になれるという、
実にお得な一冊なんですよ、奥さん(ここ、マキタスポーツ調)。

 ところで、彼ら及び番組スタッフには、音楽的評価という点でこれまでスポ
ットライトが当たってこなかったアーティストに光を、という気持ちが強いよ
うで。

 例えば日本語ロックの創始者ははっぴいえんど、といのがほぼ定説で、日本
のロック史では彼らばかりに光が当たっている。
 しかし、そういう点ではサザン・オールスターズの貢献ももっと語られるべ
きではないか、という問題意識(?)のもと、本書ものっけからサザンに一章、
つまり番組で言えば一回分を割いています。
 ついで、その衝撃的な歌唱力についてあまり触れられない松田聖子が一章。
音楽的な深さについてあまり語られないチェッカーズにも一章。てな具合。

 既存の音楽史を先入観念としない、その自由さたるや良し。

 この番組に遭遇してから、ほぼ毎週見ております。
 新春一発目は「あけましておメジャーセブンス」という素晴らしくくだらな
いテーマで、メジャーセブンスというモダンでおしゃれなコードがいかに日本
のポピュラー音楽に取り入れられ定着していったかを歴史的に振り返るという、
新年と何ら関係ないんですが、非常に濃い内容でした。

 本書ともども番組の方も強くご推薦しまして、新年のご挨拶に代えさせてい
ただきます。

 本年もよろしくお願い申し上げます。


マキタスポーツ×スージー鈴木
『カセットテープ少年時代』
2018年6月1日 第1刷発行
KADOKAWA

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
「平成最後」という言葉が乱舞した年末でしたが、別に「平静」な気分のわた
くし。ただ、今年還暦なので、「新元号元年=60歳」ですから、少なくとも向
こう十年間は自分の年齢の下一桁に1を足せばよいので、いままでのように
「あれ、今年って平成何年だっけ?」と混乱することはなさそうです。ただし、
自分の年齢を忘れなければ、ですが(笑)。

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『鮨職人 VS 堀江貴文』堀江貴文 ぴあ

 その昔、ホリエモンが、寿司職人が何年も修業するのはバカだとだと言って
話題になった。寿司職人をバカにしていると捉えた人も多かったようで、この
意見の賛成派、反対派のやり取りもそれなりに興味深かった。
https://www.j-cast.com/2015/11/02249615.html?p=all

 それから三年、今ごろになってこんな本が出た。

 ホリエモンが、全国の若手の寿司職人にインタビューしていく内容で「すし
屋に修業は必要か?」と来るから、いかにも面白そうではないか。帯について
いるキッチコピーの「この本は本当に面白い!」は余計だけどもw

 一読して思ったのは、件のホリエモン発言は元々寿司職人をバカにした発言
ではなさそうだということ。上記J-castの記事から引用すると、もともと

「今時、イケてる寿司屋はそんな悠長な修行しねーよ。センスの方が大事」
「そんな事覚えんのに何年もかかる奴が馬鹿って事だよボケ」

 という発言から始まったようだ。しかし、そうした発言が出てくる背景には、
若手のセンスのよい寿司職人を何人も知っていて、彼らを見ていての発言であ
ったように思えた。というのも、ホリエモン、ここに出てくる寿司職人さんの
店に何度も通ったり、一緒に海外に行ったりといった付き合いをしているよう
なのだ。いつ初めて店に行ったかは書いてはないのだけども、おそらく3年以
上の付き合いはあるのだろう。

 要するに、若手の寿司職人の姿を見て、寿司職人の世界も変って来つつある
のだということを言いたかった。それがホリエモンだとああいう言いかたにな
ったということだ。

 そんなわけで、都合8人の新進気鋭の寿司職人にホリエモンがインタビュー
している。だいたい15,000円から30,000からスタートする高級店である。東京
の店が多いが、福岡や札幌の店もある。職人さんたちの年齢は30〜40代で、昔
の、入っても何年も寿司を握らせてもらえない、しごきを知る最後の世代であ
るとのこと。今では、そういうことを続けていると誰も入ってこない・・・要
は、とうの昔に寿司職人の世界は変っていた・・・なるほどね。

 その上、彼らはインスタグラムなど、ネットも使いこなしている。宣伝ツー
ルとして使うのはもちろんだが、仕入れのツールとしても使う。LINEで業者か
ら写真を送ってもらい、これはという魚をLINEで注文したりする。実物見ない
で大丈夫かと思うが、魚の目利きに自信があるからこそできることなのだろう。
もちろん他の職人の仕事を見ることもできるから勉強にもなる。

 そして、自分の店や寿司に対するこだわりも人一倍あるのである。たとえば
普通飲食店をやろうとすると人通りの多いにぎやかなところでやろうとするの
が定石だと思うが、あえて人通りがほとんどないところを選んで店を開いたり
する。店を出た時「現実に引き戻されない静かな場所」でないと、食べた後の
余韻が良くないという判断だろう。

 またカウンターのL字だと客に自分たちの足が見えてしまうのは良くないだ
ろうとI型のカウンターの店にするとか、従業員の修業用に個室カウンター
(個室で職人がついて寿司を握る)を作るとか、人によっていろいろなこだわ
りがある。

 もちろん苦労話もあって、客が来ないのに10年握り続けていた人には驚いた。
他にも最初から客の機嫌が悪いことを察知して今日入っている魚の最高の部位
出すとか全力を傾けてもてなしたのに、食べログで酷評されてムダに終わって
凹んだとか・・・あ〜あるよな、こんなこと。

 そんなコネタも書いてあるけども、読んで一番思ったのは、修業よりも「セ
ンスの方が大事」だということはこういうことかと・・・。もちろん努力を否
定するわけではないけども、寿司職人としての適性のある人がやってこそ成功
するんだろうなと。それがこの本のメインの主張なのだろう。

 魚を見る目が典型的なのだけど、良い寿司職人はセンスがいい。魚を見ただ
けで、これが良い魚かどうか分かる。その、良いか、悪いかの基準がべらぼう
に高い。だから安い魚を使った寿司でも、高い。だって安い魚でも、良いもの
は高いのだから。

 海外の寿司屋で働いていた人の話も興味深かった。かつてアメリカの初期の
寿司ブームの際、ネタはアメリカで水揚げされていたものだった。日本と違っ
て昔から魚を捕っていた国じゃないので、日本では乱獲されてほとんどいなく
なっているようなよい魚がアメリカでは容易な手に入ると報道されていたのを
覚えている。

 しかしここに出てくる方の話を聞くと、日本から持ってくるネタの方がいい
らしい。とはいえアメリカだと日本から空輸している間に鮮度が落ちるから、
やはりおいしい寿司を食えるのは日本だという。

 そんなわけで、本当に美味い寿司を食いたい外国人は、どうしても日本に来
て食べざるを得ないのだそうだ。だから寿司目当てに日本に来る人もいる。も
てなす方もがんばってる・・・そんな感じで、ホリエモンは日本の寿司業界の
未来を楽観的に見ている。

 最後に思ったこと。ネットの炎上案件を見て尻馬に乗ることがいかに愚かな
ことか・・・この本を読むと、それがよくわかる。

(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)


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■「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
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十朱幸代という生き方がカッコイイ!
『愛し続ける私』
(十朱幸代著・集英社刊)

 昨年、西城秀樹さんが亡くなって、メディアで彼の人生を振り返ることが多
く、そのときに決まって耳にしたのが女優、十朱幸代さんの名前でした。

 西城秀樹さんの未亡人が手記を出版した直後に十朱幸代さんも自らの半生を
綴った本を出版。一部では、西城秀樹未亡人本にかぶせてきたと言われました
が、まあ出版社的にそれもあるかと思います。

 ただ、十朱幸代さんを西城秀樹と熱愛した女優とだけくくってしまうのは、
もったいなく、彼女は女優としても女性としても豊富な半生を過ごしてきたと
思います。なので、隠れ十朱ファンのおばちゃま、思わず、1700円+税の高い
本をポチってしまいましたとさ。

 十朱幸代さんの女優としての功績は置いておいて(置いておくんかい!)、
恋愛遍歴で忘れてはいけないのがは西城秀樹ではなく、歌手、小坂一也です。
小坂一也、WHO?と言う人がほとんどかも。昭和は遠くなりにけり。(もう
じき平成も遠くなりにけりだけど)。ロカビリー全盛時代、ステージで紙テー
プだらけになりながら歌う彼(昔は舞台で歌う歌手に紙テープを投げてた。目
にあたって負傷した歌手がいたことから廃れていった)をテレビで見た記憶が
あるっておばちゃまもどんだけ、遠くなりにけり?(なんなら、十朱幸代デビ
ュードラマ「バス通り裏」もリアタイで見ております)。

 今でいうアイドルの彼と隠れもせずに堂々とつきあっていたのが十朱幸代さ
んで、これは約50年前はすごく新しいことでした。

 覚えているのは、「私は彼の家に行っても掃除や洗濯はしないの。それは奥
さんの仕事だから。私は彼の恋人なので家事はしないの」と言っていたこと。
当時は女性は家事をする女中みたいな位置づけだったから、これは新鮮で新鮮
で、この男女の対等な恋愛という感覚は今でもおばちゃまの恋愛観の基本にな
っておりますよ。

 残念なことに、小坂一也さんとの恋愛の思い出の中に、この「家事はしない」
は書かれてなかったのですが、17歳から始まって32歳で相手の心変わりで終わ
った大恋愛は読みごたえありました。彼が出て行った後にやはり苦しくて「1
日だけでいいから戻ってきて」と電話して拒否されるなんてリアルな話も書か
れていて、正直すぎると思う一方で、この恥も外聞もなく恋人にあたっていく
姿は感動的と思いました。

 で、32歳で小坂と別れてからは濃い恋愛をたくさんするんですね。そのあた
りの男性名はイニシャルで紹介されていますが、

「恋愛って魂と魂がぶつかりあうような感じですよね。そのときの気持は本人
にしかわからない。」
「私はいつも結婚を申し込まれるたびに女優という仕事のほうを選んでしまう。
たいていはそこでお別れがきてしまいます」

 カッコイイ!

 そんな後、40代で出会ったのが12歳年下の西城秀樹ですね。
 私が覚えているのは、彼女が公演中、劇場に併設されたホテルに彼が泊まっ
て、翌朝、突撃インタビューを受けたけど、堂々と、
「わかっていることは今、僕は十朱幸代さんに夢中だということです」
って堂々と宣言していたことかなあ。堂々と宣言させる女性なんですね、十朱
幸代さんて。

 そして、もう婚約会見寸前というところまで行って破局するわけですよ。
「迷いを振り切ってでも結婚するという覚悟が私にないと知って彼は去ってい
ったのです」と書いてありますが、その覚悟は彼のほうにもなかったのかもし
れません。その後、秀樹は十朱幸代との結婚に反対していた実姉がおぜん立て
した女性と結婚して子どもができるわけですね。
 子どもが生まれたとき、「こんな幸せが自分に待っているとは思わなかった」
というコメントを覚えていますが、数々のヒットに恵まれ、栄光に輝く歌手で
さえ、こう思うわけですから、結婚とか出産って男にとって重いのだなあと感
慨深いです。

 恋愛したのもよかったし、別れたのもお互いにとってよかったとおばちゃま
は思いますよ(あんた、だれ?)。

 現在76歳。この本の出版プロモーションを兼ねているのか、最近、バラエテ
ィ番組への出演が増えている十朱さん。ある番組を見てたら、30代の国民的ア
イドルの1人ともほどよく絡み、アイドルの行動に素直に驚き褒め、腕を組ん
で見せてもいやらしくなく、可愛いことこの上なし! で、アイドルの方もま
んざらじゃない感があってすごかった! ちょっとドキドキしましたね。
「私は独り身ですし、親兄弟がみんな逝ってしまいましたので、誰にも気兼ね
がありません。だから思い切り自由です。そして孤独です。孤独と自由は背中
合わせ。セットになっているんです。その現実をどう受け止めるかで、今の自
分は決まるのではないかしら」

 最後に。こんな声に触れると、よく言われるのが「こんな76歳になりたい」、
ってフレーズですが、バカ言うなと言いたい。なれるわけがないだろうと言い
たい! 一般人とは顔も形も姿勢も生き方もちがうんですよ。一般人はそのへ
んで、適当な男となりゆき&妥協でくっついたのを愛だとすり替え、適当な仕
事をして生きていけばいいの! おばちゃまはこんな76歳にはなれないとわか
っているので、そこは潔く、身の丈に合った老後を送ることにします(って何
の宣言?)。

 今年もよろしくお願いいたします。


大友舞子(おおとも・まいこ)
昭和20年代生まれのフリー編集&ライター。関東生まれで関西在住。

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■あとがき
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 今日はセンター試験2日目だそうで、受験生の皆様、頑張ってくださいね。
(ってこれ読んでちゃダメだけど。)

 私は一浪しているので、試験は2回受けたはずなんですが、ほとんど記憶に
残っていません。大学入試の記憶はちらほらと残っているんですけどね。

 不思議です。(あ)

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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<109>川勝徳重とその他若干を中之島で「発見」した夜のこと

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→91 見える世界を広げよう

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第108回 伝統あるイギリスの執事が最も大切にしていること

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<109>川勝徳重とその他若干を中之島で「発見」した夜のこと

 皆様、新年あけましておめでとうございます。
 本年もまた、本や漫画のことやら、はたまた全然関係ない愚痴や駄法螺を、
ここで披露させていただきますが、どうぞ懲りずにお付き合いくださいますよ
う、よろしくお願い申し上げます。

 で、新年早々の愚痴を、まずイッパツ。

 京都の大学から帰宅する際、たいていいつもは嵐電‐阪急−阪神なのだけど、
ごく時たま、JR嵯峨野線の嵯峨嵐山駅から京都駅まで出て、そこからJR京都線
で大阪まで、というルートを使って帰ることがある。

 その際にいつも感じるのが、JR嵯峨野線…かつての山陰線は、京都駅の中で、
一番オミソにされている、ということ。

 京都駅は、烏丸口の改札を入ったところが「0番線」ホームで、そこから南
に向かって整然と2〜10番線ホーム、それぞれがびわこ線、京都線、奈良線と
並んでいて、各ホームは地下道と橋上デッキで連絡し、その先、デッキよりも
一段高い高架に上がった11番から14番線までが新幹線。
 ちなみに「1番線」にはホームが無くて線路だけ、というのは、よくクイズ
にもなる「京都駅トリビア」なのだった。

 このように、0番線から14番線までは北から南に向かって、きれいに整列し
てるのだが、ひとり嵯峨野線だけは、駅の北西の隅っこ…「え?ここって、も
う駅の外なんじゃ…?」とも思えてしまう端っこの方に、「端頭式」というら
しい行き止まりのホームが、「おまけ」のように、ひっそりと佇んでいるのだ。
 その疎外感たるや、ちょっと半端ない。
 京都駅にあっては、嵯峨野線のホームにだけは、なぜか「31〜34番線」とい
う番外地のような番号が振られているので、ますます疎外感。

 なので、このホームから他の線に乗り換えようとすると、もう大変。
 電車を降りると、出口及び乗換口は端頭式ホームのその先にしかないので、
降りた乗客が一斉に同方向に流れ出す。狭いホームは一時的に人であふれて、
なかなか進まない。
 このホームが、なぜか昼間でも妙に薄暗いので、進まない行列に、余計イラ
イラする。

 やっとホームの端にたどり着き、広いコンコースに出るのだが、ここから乗
り換えのための2階デッキにあがる階段が、またけっこう遠い…しかも、そこ
もまた列車を降りたばかりの人で、いつも込み合う。
 ようやくデッキにあがって、京都線下りの5番線ホームに着くまで、かれこ
れおよそ10分ほどでしょうか?
 一番南の端で、さらに高架上の新幹線なんかだと、もっと時間がかかること
になる。

 その昔の国鉄時代にも、当時の「山陰線」を利用したことがあるのだが、あ
のころも今と同じ場所にホームはあって、やはり「なんで?」と思った記憶が
ある。

 調べてみると、後の国鉄山陰線は、元は「京都鉄道」という私鉄で、国鉄京
都駅の隅っこに「間借り」する形で、終点のホームが作られたらしい。
 その後国有化された後も、そのホームはそのままに残されて、なので、この
ような変則的な配置になった由。

 「なるほど」と分かったのだが、しかし、ですね…
 京都駅は90年代に、奇抜なデザインで景観論争を巻き起こした駅ビルを筆頭
とする、大規模リニューアル工事をやらかしている。
 その際に、誰が見ても不便な場所にある山陰線のホームを、もっと便利な場
所に移転しようとはしなかったのか?
 リニューアルされた駅ビルには、デザインが奇抜なだけに「無駄」とも思え
るスペースもいっぱいあって、やろうと思えば、山陰線のホームをここらに持
って来ることもできたろうに、と思うのだが…

 やはり、山陰線…ただ今の嵯峨野線は、仲間外れのオミソにされている、と
しか思えない。

 昨年12月の某日、そのオミソの嵯峨野線から、在来線では一番遠い奈良線に
乗り換え、東福寺で京阪電車に乗り換えて、大阪は渡辺橋駅まで行った。
 そんなややこしい経路を辿らずとも、地下鉄東西線で三条京阪まで行き、そ
こで乗り換えた方が簡単だし早かった、と気づいたのは、京阪電車に乗ってか
らだった…。

 地下3階にホームがある京阪中之島線・渡辺橋駅の地下1階には、「アートエ
リアB1」というコミュニティー&ギャラリースペースがある。
 ここで大阪大学主催の「マンガカフェ」というトークイベントが定期的に開
催されていて、この日はこれに参加するために、わざわざやいこしー経路で行
ったのだ。

 「マンガカフェ」では例年、「今年のマンガ界をふり返るぞ!」というテー
マのイベントを年末に開催していて、カフェマスターの大阪大・金水敏教授が、
精華大学と京都国際マンガミュージアムの研究者たちをパネリストに招き、そ
れぞれの「今年の一冊」について、大いに語り合うのが恒例なのだ。

http://artarea-b1.jp/

 パネリストたちが「今年の一冊」を発表の後、会場の参加者たちの銘々が
「一冊」を披露して、わしも、当欄でも取り上げたことのある2点、2018年に
シリーズを完結させた山本直樹『レッド』シリーズ全巻を「平成の一冊」とし
て、吉本浩二『ルーザーズ』を「今年の一冊」として、それぞれ発表させて頂
いた。

 パネリストの一人、京都国際マンガミュージアムの研究員・雑賀忠宏さんが
紹介したのが、川勝徳重『電話・睡眠・音楽』(リイド社)だった。

 川勝徳重の名は、webマガジン「トーチ」を通して以前から知っていたし、
その「トーチ」に発表された(単行本表題作でもある)『電話・睡眠・音楽』
も読んでいたのだが、そのフランスのBD(バンド・デシネ)風の世界観と作品
全体を覆う不安というか、読む者の頭の隅っこをなにやら「かりかり」とひっ
かいていくような不条理な何か、が妙に気になってはいたのだが、告知されて
いる単行本を買おうという気にまでは、正直至っていなかった。

 が、雑賀さんが話しながら見せてくれたその単行本で、その作風が、70年代
「ガロ」風…すなわち、つげ義春や安部慎一、鈴木翁二や菅野修らの模倣から
出発していると知って驚いた。

 聞けば川勝は「1992年生れ」という。
 リアルタイムの「ガロ」を知らない世代が、70年代「ガロ」的世界に憧れて、
その作風を模倣し、自分の中に取り込もうとしている、のが嬉しくて、その翌
日、早速に手に入れたのだ、『電話・睡眠・音楽』定価1300円+税。
 同時に、単行本の発売に合わせて「トーチ」に掲載されていた斎藤潤一郎と
の「特別対談」を読んだのだけど、なんと川勝徳重、元は「架空」同人にして、
西野空男の後を継いで、編集責任者にもなっていたと知り、不明を恥じました、
はい。

 改めて単行本をじっくりと読んでみるにつけ、これは、川勝徳重という作家
の、変遷の軌跡だ、と気づいた。
 70年代「ガロ」風から始まって、次第に変化しながら、「トーチ」編集長に
「ヌーヴェル・ヴァーグをやる」と、宣言して描いたのが『電話・睡眠・音楽』
だったそうだ。
 BD風に左綴じで描かれたこれ、単行本でもこの作品だけが「左から右」に読
むようになってるんだが、これ、すごい。

 若い一人暮らしの女…といっても、どうやら本人は「もうそんなに若くない」
のを自覚している風でもある女が、風呂とシャワーで身支度を整えて夕方から
街に出かけて、行きつけらしいクラブで一夜を遊び、翌朝、朝の白けた街の中
を帰っていく…それだけなのだけど、全体を覆う気だるさの中に、なにかわけ
のわからない焦燥や鬱屈が、そこここから垣間見え、不穏な読後感に襲われる
…そんな作品だ。

 川勝徳重、70年代的「ガロ」から出発して、このBD風の作風が終着点か、と
いうとそうでもなくて、同じ単行本収録作で、発表順で言えば、これよりも新
しい『冬の池袋、午後5時から6時まで』など読むと、『電話〜』よりもさらに
進化していると見て取れる。
 これからまた、どんな風に「進化」を遂げていくのか、とても楽しみなのだ。

 「ガロ」つながりでは、精華大学の吉村和真教授が紹介した、Q.B.B『古本
屋台』(集英社)もまた、「お! メモメモ!」の一冊だった。
 こちらは、当初「彷書月刊」に連載され、同誌の休刊後は「小説すばる」に
掲載誌を移して連載を継続し、2018年に単行本化。
 東京都内らしきあちこちに出没する屋台の古本屋をめぐる、一話2ページの
漫画。

 「屋台の古本屋」というのは、これ以前にも、森元暢之が「ガロ」に発表し
た漫画に登場するのだけど、久住昌之・卓也兄弟のQ.B.B.が作り出す、独特の
「間」が、とてもいい。
 古本屋ながら、「一杯限り」とのお約束で、芋焼酎・さつま白波のお湯割り
も出す古本屋…わしも出会ってみたい、と思うぞ。

 吉村さんは、毎晩、一杯のお湯割り焼酎(もちろん、「白波」だそうだ)の
アテとして、この漫画を一話ずつ、じっくりと味わいながら読むと、これがま
た味わい深い! と力強く宣言されていたが、それ、わしも本を入手してから
真似させていただきました

 わしの場合は、焼酎が苦手なので燗酒なのだけど。

 「彷書月刊」に連載されていたゆえか、岡崎武志さんや荻原魚雷さんなど、
古本界の有名人がキャラクターとして登場するのもまた、Q.B.B.ならでは。

 12月の「マンガカフェ」では、この他にも、ゴトウユキコが漫画化したこと
でも話題の『夫のちんぽが入らない』は、「おとちん」と略すと、人までも口
にできる、ということや、豊中市の阪急岡町駅周辺でただ今、手塚治虫生誕地
として「手塚治虫ロード」を造ろう、という機運が高まりつつある、という情
報も得たり、非常に有意義な一夜を過ごすことができた。
 良かった、良かったと頷きながら、折から「光の饗宴」と銘打ったイルミネ
ーションイベント真っ最中の中之島を、後にしたのだった。

 ところで、「Q.B.B.」という久住兄弟のユニット名。この名を初めて「ガロ」
に見たとき、当時は兄弟のユニット名だとは知らなかったので、この人は「神
戸出身?」と思ってしまった。
 「Q.B.B.」は、神戸に本社がある「六甲バター株式会社」のブランド名で、
ことにチーズが有名だけど、神戸近辺のスーパーならどこでも置いてあるし、
神戸の小学生なら、給食のパンに必ず「Q.B.B.」のマーガリンがついてきたの
を覚えているはずだから、そこから採ったペンネームかな? と思ったのだっ
た。


太郎吉野(たろう・よしの)
阪神タイガースお膝元在住。右投げ右打ち。趣味は途中下車、時々寝過ごし乗
り越し、最長不倒距離は三重県名張。
ちなみに「阪神タイガース」の「阪神」は、「兵庫県阪神地方」を指します。

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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91 見える世界を広げよう

 年が明けました。
 2019年がもどうぞよろしくお願いいたします。
 平和な一年になりますように。


 『ジュリアが糸をつむいだ日』
  リンダ・スー・パーク 作
  ないとうふみこ 訳 いちかわなつこ 絵 徳間書店

 2002年『モギ ちいさな焼きもの師』(片岡しのぶ訳/あすなろ書房)でニ
ューベリー賞を受賞したリンダ・スー・パークが書いた物語です。

 主人公のジュリアは7先生。親友のパトリックと一緒に、〈楽しい農業クラ
ブ・プレーンフィールド支部〉略して「楽農クラブ」に入りました。一年に一
度、クラブの生徒たちは自由研究のテーマを決め、半年ほどかけて研究し、発
表します。優秀な生徒は州の品評会で発表することができるので、それを目標
にみな頑張ります。

 2人はジュリアのお母さんの提案もありカイコの飼育をテーマにするのです
が、ジュリアはあまり気乗りがしませんでした。しかし一緒に研究するパトリ
ックと共に、カイコの飼育がはじまると、だんだん愛着が増してきます。生き
物を育てる楽しみに目覚めるジュリアです。

 カイコを飼育された方なら、カイコの魅力をご存知でしょう。私もその一人。
卵から成長していくカイコの姿にずっと寄り添っていると、かわいらしくてた
まらなくなります。

 餌となる桑の葉を集めるのは飼育の柱です。しかし、ジュリアたちが探すも
簡単には見つかりません。ようやく、桑の木のある家のディクソンさんと関わ
りをもてるようになるのですが、ディクソンさんとの出会いは、カイコの事だ
けではなく、ジュリアたちの世界をも広げるきっかけになります。

 ジュリアがカイコの飼育を通して視野が広がっていく成長物語は、
 カイコ好きにとって(私です・笑)たまらない物語です。


 『ぼくたちは幽霊じゃない』
 ファブリツィオ・がッティ 作 関口英子 訳 岩波書店

 ティーンの喜びや悩みをつづった作品シリーズであるSTAMP BOOKSの一冊。

 物語は実際の体験談がもとになったもので、アルバニア人のヴィキがイタリ
アに渡り、どのような暮らしをしていたかが描かれています。

 苦労してイタリアに渡ったものの、難民のヴィキたち家族は、滞在許可証が
おりるまでは不法滞在なため、町なかを歩くときは警察の職務質問を受けずに
すむよう注意が必要です。ヴィキは母親にイタリアに行けばいい暮らしができ
るって言ってたじゃないかと問うのですが、状況がすぐに変わることはありま
せんでした。

 訳者あとがきによると、イタリアには「学校はすべての人に開かれる」と憲
法に明記されているそうです。だからこそ、ヴィキたちも、公立小学校に通っ
ている間は、イタリアに住んでいても、いないものと扱われる幽霊扱いではな
く、一人の人間として勉強を教わり学び続けることができます。

 丹念に描かれる泥地でのバラック生活や日々の不安定さは物語の最後まで続
き安易なカタルシスで終わっていません。

 それでも、未来への希望をもって毎日を生きるヴィキと出会うことで、知ら
なくてはならないことをまた一つ教わります。


 次に紹介するのは絵本です。

 『キツネのはじめてのふゆ』
  マリオン・デーン・バウアー 作 リチャード・ジョーンズ 絵
  横山和江 訳 すずき出版

 親から離れてはじめての冬を迎えたキツネ。冬がきたら何をしたらいいのか、
さまざまな動物たちに教えてもらいます。

 けむし、カメ、コウモリ、リス、ガン、カンジキウサギ、クロクマ。

 たとえばカメはこう教えてくれました。

 「しっぽを そらにむけて、あたまから とびこむんだ。
 みずの そこへ むかってね。
 それから、ひんやりした どろに からだを つるりと うずめるのさ」

 キツネと動物たちのやりとりは、
 言葉は詩的で、暖色系の絵は言葉をつつみこむようにやわらかです。

 しかし、いろいろ教えてもらっても、キツネにはピンときません。

 そんなキツネが最後に出会ったのは――。
 
 絵本にはめずらしく訳者あとがきがついていますが、それがキツネの行動を
よく理解させてくれます。

 冬の季節に親子で楽しめる絵本です。


 もう一冊絵本をご紹介します。

 『ぼくはなにいろのネコ?』
 ロジャー・デュボアザン さく 山本まつよ やく 子ども文庫の会

 1974年にニューヨーク科学アカデミーの児童書部門賞を受賞した作品。

 版元紹介によると「(印刷に)使える色数が少なければ少ないほど、力を試
される」と語るデュボアザンが、さまざまに混ざり合っている美しい色の世界
を子どもにわかりやすく伝えるものになっています。

 黄色、青、緑などそれぞれの色が自分たちの色がいかにすばらしいか彩りを
みせて読者に語りかけます。そこに子ネコのマックスが、色に対して意見をは
さみ、色への理解を深める助けをしてくれます。

 一つの色での美しさ、重なり合うことによる美しさ。色のもたらす不思議さ
がわかりやすく描かれ、科学の絵本としてもおすすめです。 


(林さかな)
会津若松在住。「本の雑誌」新刊めったくたガイド海外文学担当。
http://1day1book.strikingly.com/

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第108回 伝統あるイギリスの執事が最も大切にしていること

 今月もノーベル賞作家、カズオ・イシグロの本を読む。カズオ・イシグロの
本は小欄においてこれで4作目となる。

 先々月の本『遠い山なみの光』、先月の本『浮世の画家』は戦後間もない日
本が舞台であるが、今回の本は英国が舞台となっている。そして我々、英国人
ではない、外国人が英国をみて、最も英国的なる制度だと思われている、貴族
と屋敷と執事に代表される使用人の物語なのだ。

『日の名残り』(カズオ・イシグロ 著)(土屋政雄 訳)(早川書房)
(ハヤカワepi文庫)(2001年5月31日 文庫初版)
  (『THE REMAINS OF THE DAY』(Kazuo Ishiguro)(1989))

 本書は、カズオ・イシグロの第3作目の長編小説である。そして、本書は英
国出版界における権威ある賞、ブッカー賞を受賞している。

 主人公は大邸宅の執事。おおよそ執事とは最も英国的な職業と云えるかもし
れない。執事がなんたるかを知らなかった人も執事がどのような仕事をするの
か、本書を読めばよくわかる。執事とは、使用人のトップであり、主人に対し
て言葉を交わせる唯一の使用人であり、他の使用人の任免権を持っている使用
人なのだ。男性の使用人はおしなべて皆、執事をめざす。使用人の最高ポスト
たる執事は庶民の出世のあがりとなる。使用人がご主人の立場になることはで
きない。英国は完全な身分制なのだ。執事の下に副執事がいるし、従者がいる。
そして下僕がいる。他に庭師や運転手がいる。これらは男性の仕事。女性たち
はどうか、女性使用人の最高ポストは女中頭。他に厨房を任された料理長がい
るし、女中たちがいる。女中の任免権も執事にあるが、執事も女中頭の意見は
無視できない。ご主人一家にすがたを見せることがない女中もいる。彼女たち
は最も下層の女中である。主人と同じ階級の来客があり、その時の給仕は男性
の仕事であり、食器の管理も男性の仕事になっている。使用人のスペースは使
用人だけのフロアと食堂がある。使用人の食堂の主人は執事であり、食事の合
図は執事が取り仕切る。

 長々と書いたが、これほど本書の中に使用人の説明があるわけではない。実
を云えば、これらは本書よりもむしろ、TV番組の「ダウントン・アビー」が
ネタ元なのだ。およそこの「ダウントン・アビー」ほど、英国の上流階級と使
用人階級のことがよくわかる物語はない。

 閑話休題。
 「日の名残り」である。
 主人公はダーリントン・ホールという大きなお屋敷で執事をしているスティ
ーブンス。

 時代は1950年代であり、やや老いたスティーブンスが1930年代の最も屋敷が
華やかだった時代を回想して進む。50年代のスティーブンスは、ひとり車で旅
に出る。この旅で、昔を回想するのだ。物語は現在(50年代)と過去(30年代)
を行きつ戻りつしながら話が進む。このあたりは前二作同様、主人公の心と思
考が自由に動き回っている。カズオ・イシグロの物語の大きな特徴だ。

 スティーブンスは、常に“よき執事とは何か?” “偉大な執事とは何か?”
を探究している。その命題を考えるとき、必ず立ちふさがる難問は、何か? 
それこそが、主人との関係にある。スティーブンスはそうは云っていないが、
彼を悩ます問題は最終的には、いつもこの“主人との関係”に行き着く。すな
わちそれは、主人に対する忠誠心であり、その忠誠心の発露はどのような場合
に発揮されるのか、ということを考察している。本書を読みながら、誠にステ
ィーブンスことが、よき執事であり、偉大な執事であろうと、読者は皆感じる
はずなのだ。

 過去の時代が30年代で、現在が50年代、というその時代に注目してほしい。
第二次世界大戦の前と後である。英国は戦勝国であるが、戦争の影響は甚大な
のだ。ダーリントン・ホールの主人である、ダーリントン卿は外交問題に熱心
に取り組んでいる。30年代のヨーロッパにおける最大の外交問題とは、まちが
いなく対ドイツ問題であり、ナチス・ドイツに対してどう接するか、に尽きる。
ダーリントン卿は時のチェンバレン首相や外相ハリファックス卿たちと同じく
ドイツに対する宥和政策を推進する立場で行動している。

 我々読者は、歴史を知っている。対ドイツ宥和政策は破綻し、ヒトラー率い
るナチスにヨーロッパが蹂躙されることになってしまった。

 戦後のダーリントン卿の立場は推して知るべし。具体的にはあまり書いてい
ないが、人々に罵られながら失意のうちに死んだ。そしてスティーブンスの職
場であるダーリントン・ホールはアメリカの富豪の所有となり、スティーブン
スはその富豪ファラディ氏に仕えることになった。気取らずおおらかなアメリ
カ人を主人にいただき、スティーブンスの心も少し融ける。

 主人のファラディ氏から車を借りてスティーブンスは、30年代にダーリント
ン・ホールで女中頭をしていたミス・ケントンに会いに行く旅に出る。
 本書は人間ドラマであるが、恋愛ドラマなのだ。スティーブンスはミス・ケ
ントンに好感情を抱いている。しかしそれ以上にミス・ケントンがスティーブ
ンスに恋をしているのが読者はよくわかる。スティーブンスの回想の中でも、
ミス・ケントンとの場面は偉大な執事について考える場面と双璧をなす程、多
くを割いて書かれている。スティーブンスを前に虚勢を張ったり、ヒステリッ
クに振る舞ったり、あるいはとてもやさしくしてみたり。概ね女性の方が積極
的なのだ。30年代の英国では、おそらく感情を表に出す女性が珍しい存在なの
は文脈からわかる。執事のスティーブンスはミス・ケントンに翻弄されながら
も、彼女の高い能力によって屋敷の運営がうまくいっていることもよく理解し
ている。過去の回想では、ふたりの関係は概ねそのように進んでいった。

 50年代の旅をするスティーブンスは、彼がミス・ケントンに恋をしているこ
とは、読者にもあからさまではないにしろ、隠していないようにみえる。英国
人の気質をよく表しているスティーブンスはまったく、愛だの恋だのというよ
うな言葉も態度もないのだが、行間からミス・ケントンへの想いがよくわかる。
30年代の英国では、使用人があからさまな態度に出ることはタブーだったが、
50年代ではそれが緩んできたようだ。それにスティーブンスの主人は今や自由
なアメリカ人なのだ。

 スティーブンスとミス・ケントンが何十年ぶりに邂逅して会話して別れる。
もちろん劇的なことは何も起こらない。読者はこのふたりの恋愛が何の進展も
なく終わってしまったことに深い失望と淡い安堵を持ちながら、物語を読み終
わるのだ。

 カズオ・イシグロの前二作の長編と同様に、本書もまた価値観の転換につい
ていけない者たちの物語だった。スティーブンスは感情のおもむくまま行動す
ることなく、偉大な執事として過ごし、ミス・ケントンもまた、冒険をしない
英国の20世紀の女性使用人だった。
 この物語は、ふたりの出逢いと別れの物語なのである。

 本書は映画化されている。1993年イギリス映画。ジェームズ・アイヴォリー
監督作品。主演はアンソニー・ホプキンス(スティーブンス)、エマ・トンプ
ソン(ミス・ケントン)。とても素晴らしい映画であり、本書と併せて観るこ
とを勧める。


多呂さ(あっという間に一年がめぐり、大相撲初場所が始まります。稀勢の里
さま。頑張ってください。よい結果になることをお祈りしております)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ― 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510

・『支え合い・学び合いで育つ「わたし」』(エディット・パルク)
  http://web.kyoto-inet.or.jp/people/cogito/%8Fo%94%C5%88%C4%93%E0/%8Ex%82%A6%8D%87%82%A2%81E%8Aw%82%D1%8D%87%82%A2.html

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

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 皆さんのご応募、お待ちしております。

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1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
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 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

 〒142-0041 東京都品川区戸越5-4-3 アズ品川ビル4階
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2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
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 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 新年早々、やや発行遅れてしまいましたが、本年もよろしくお願い致します。
(あ)

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#101『宵待草殺人事件』

 前回は#100に因もうとあれこれ悩んで、山口「百」恵に到達したわけだが、
実はもうひとつアイデアがあった。
 100年前、という切り口である。

 いまから100年前、音楽的には何があったのか調べてみたのだ。こういう段
になると、ネットというのは本当に便利ではある。

 100年前といえば、1918年。

 この年ロシアでは、前年に起こった革命の結果、ストラヴィンスキーが財産
の殆どを失った。彼はヨーロッパに逃れたが、そこでもまだ第一次世界大戦が
戦われていた。戦乱の中、社会全体が音楽どころではなく、経済的にも逼迫し
ていたため、最小限のキャストと舞台装置で上演できるという条件でつくった
のが、音楽劇『兵士の物語』だったそうだ。あのストラヴィンスキーでさえ、
低予算に苦しみながら作曲したことがあったんだなあ。親近感。

 同じロシアの作曲家プロコフィエフは、この年ペトログラードで『束の間の
幻影』を自らのピアノで初演しているが、やはりアメリカへの亡命を決意し、
まず日本へ渡った。そしてアメリカ行きの船を待つ間に、この曲を披露。おか
げで世界初演と日本初演が同年という珍しい事態となった。

 フランスでは女流作曲家のブーランジェが亡くなり、スペインではインフル
エンザが猛威を振るい、スペイン風邪と呼ばれた。イギリスでは大陸からドー
バー海峡を隔てていたためか、戦争や伝染病の猛威を横目に、ホルストが組曲
『惑星』を発表する余裕があった。

 さらに大西洋を渡ったアメリカでも、自国の兵士をヨーロッパに送り込んで
いたものの、戦禍遥かに遠く、大分ゆとりがあったと見える。まさに対岸の火
事。そのおかげか、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で、イタリアのオペ
ラ王プッチーニが一幕物三作を一晩で一気に上演する試みを行っており、これ
は後に『三部作』と通称されることになった。

 そのアメリカを代表する作曲家ガーシュインも、この年『ザ・リアル・アメ
リカン・フォークソング』を初演している。

 この辺り、やはり第一次世界大戦があったため、非常にドラマチックな時代
で、探せばいい本もありそうな気配がするが、その前にわが日本の状況を見て
おこうと思った。

 1918年は大正7年に当たる。社会的事件として米騒動が筆頭に挙げられる暗
い時代。調べてみると、ベートヴェンの第九の日本初演が行われていた。しか
し当欄でもこれまでに第九絡みの本は幾度か取り上げている。
 そこでクラシックを離れ、当時の巷で、どんな歌が流行ったかを見てみた。

 そもそも蓄音機が日本で普及するのは1920年以降。ラジオ放送が始まるのが
1925年だから、まだ流行歌と言ってもメディアではなく、口から口を通じて伝
えられた素朴な時代である。それだけに売る側のプロモーション戦略などでは
なく、本当に人心を捉えた曲ばかりだったと言えるかも知れない。

 そんな純粋ヒット曲として、『新深川節』、『ノンキ節』、『ディアボロの
唄』、『森の娘』、『女心の唄』などがあった。
 またこの年には、児童文学の新しい潮流を生み出した雑誌『赤い鳥』が創刊
されていて、今日に残る名作童謡の数々がここから生まれている。

 しかし、あ、これがこの年の流行歌だったのか、とぼくの目に止まったのは
『宵待草』であった。

待てど暮らせど来ぬ人の
宵待草のやるせなさ

 竹久夢二作詞のこの歌ほど、「やるせなさ」を蠱惑的に表現した音楽を他に
知らない。
 これだ、と思って、関連する本を探してみると、なかなかの珍品が釣れた。
 本書、近藤富枝『宵待草殺人事件』である。

 そこで今回は、#101ではあるけれど、前回に引き続き「100」に因んで、こ
の本をご紹介したい。

 著者は一昨年、93歳で没したというから、生まれは1922年、東京。『宵待草』
のヒットから4年の後である。
 民族衣裳文化普及協会という団体の理事だったそうで、着物や布に関するエ
ッセイが文筆の仕事の中心であるが、一方、明治・大正文学の調査研究も行っ
ており、その余技のような形で、当時の文学者たちが活躍するミステリー短編
をいくつもものした。それを集めたのが本書である。

 そのタイトルを眺めるだけで、わくわくしてしまう。曰く、

 宵待草殺人事件
 たけくらべ殺人事件
 あこがれ殺人事件
 枕草子殺人事件
 葵の上殺人事件

 『たけくらべ』はもちろん樋口一葉が探偵役。『あこがれ』は石川啄木の処
女歌集のタイトルで、その出版に奔走する彼を襲う陰謀譚。本格ではないが軽
快なテンポで物語が疾駆し、好みから言えばこれが一番いい。そして残りは平
安時代が舞台で、『枕草子』はもちろん清少納言、『葵の上』は紫式部がヒロ
インである。

 実在した歴史上の人物を主人公にするミステリーには、内外を問わず多くの
先例がある。ドイツ留学中の森鴎外を探偵役にした海藤英祐『伯林一八八八年』、
イギリス留学中の夏目漱石がシャーロック・ホームズと共に怪事件に挑む島田
荘司『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』、シオドア・マシスンの『名探偵群像』に
なると短編集で、それぞれアレクサンダー大王、ダ・ヴィンチ、セルバンテス、
クック船長、ナイチンゲールなどなど、錚々たるメンツが探偵になる。

 しかし、先人たちの作品群を超える本書の最大の美点は、その文体にある。
 大正の終わりから昭和の初めにかけて、主に雑誌『新青年』に発表された探
偵小説。あの雰囲気が横溢した文体なのである。
 とても1984年に発行されたとは思えない、いい意味でのアナクロニズム。こ
れがあの頃の探偵小説を偏愛する、ぼくのような人間の頬を緩ませる。

 そう、「探偵小説」!
 戦後、「偵」の字が当用漢字から外されたのをきっかけに、戦前の探偵小説
が持つおどろどろしさを払拭し、近代的な合理精神の表現という新しいイメー
ジを前面に出そうと、木々高太郎が「推理小説」というネーミングを提唱した。
これが受け入れられ、以後「探偵小説」は消えた。

 それと同時に、江戸川乱歩や久生十蘭、小栗虫太郎、夢野久作らの諸作に通
底する、あの独特なロマンの匂いが失われてしまった。
 島田荘司を嚆矢とし、綾辻行人の登場をもってブームとなった新本格にはそ
の名残があるものの、やはり文体は近代的に乾いている。
 ところが、独特に湿ったあの探偵小説の文体が、バブル期の始まりの日本に
奇跡のように蘇っていたのだ。知らなかったなぁ。

 ただ、悪い意味でも、あの頃の探偵小説に似たところがある。
 それは、解決の慌ただしさだ。

 当時の探偵小説は短編が中心だった。その短さという制約の中で、犯人が誰
か容易に悟られまいとすると、登場人物が多くなってしまう。一人一人の書き
込みも、どうしても浅い。筋立ても物語の規模の割に錯綜しているので、最後
に謎が解かれても、誰が誰やらいまひとつピンと来なかったり、解決に多少の
無理を感じたり、何より複雑な謎が一気に解決されるので、説明自体がややこ
しくなりがち。
 『宵待草殺人事件』にも、ややその弊を見る。が、しかし、好きというのは
不思議なもので、そうした欠点すら何やら愛おしく思えてしまうのである。

 さて、このタイトル作。探偵役は実のところ竹久夢二ではない。
 文豪、谷崎潤一郎である。
 殺人事件が起こる舞台は本郷菊富士ホテルで、ホテルと言いながら実質は下
宿屋。客は旅人ではなく、ここを定宿として一定期間住む者が殆どだった。そ
のメンバーの中に夢二がおり、谷崎がいた。

 ちなみにこの本郷菊富士ホテルは実在し、その経営者の長男の嫁が著者の叔
母にあたる。また、著者は『本郷菊富士ホテル』という本も上梓。これによっ
て日本文芸大賞を受賞した。

 このホテルのすぐ傍に長泉寺という寺がある。その境内でカフェーの女給が
殺され、犯人としてホテルの従業員・源ちゃんが警察に引っ張られるのが発端。
ところが、被害者が夢二の描いた枕絵、いわゆる春画を持っていたため、彼も
また事件との関連を疑われる。さらに、事件の前後に現場近くで源ちゃんが聞
いたというのが『宵待草』で、陰陰滅滅たる女の低い声だったという。この辺
の怪談じみた趣向も、やはりあの時代の探偵小説を彷彿とさせるが、ともあれ
警察の疑いはますます夢二に傾く。

 そこへ、源ちゃんが殺されかける事件が起こり、偶然その急場を助けたのが
谷崎潤一郎だった。当時の彼は、後に乱歩がインスパイアされて名作『赤い部
屋』を書くことになるミステリー的短編『途上』を発表したばかり。その流れ
で強い探偵的興味を持つ人物として、事件の解決に乗り出す。
 さすがに時代考証はしっかりしており、当時のいわゆる高等遊民のライフス
タイルが克明に描かれ興趣は尽きない。

 あの時代の探偵小説は、日本独特の文化である。
 クリスマスが過ぎると誰もが急に日本人らしくなる、年末年始。この季節に
似つかわしい一冊だと思う。

近藤富枝
『宵待草殺人事件』
一九八四年一月二十六日 第一刷発行
講談社

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
今月は2日に学生時代の音楽サークルのOBOGライブ、9日にヴォーカル・
スクールの発表会。共に3曲ずつではありますが、アマチュア・ミュージシャ
ンにしては多忙な前半。このメルマガが配信される頃には、またぞろ月光グリ
ーンのライブを見に、札幌へ行っているはず。なんか、すごい雪みたい。みな
さんもよいお年を!

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『「右翼」の戦後史』安田浩一 講談社新書

 右翼という人たちは、左翼の反対なのだろうが、よく分からない人たちだと
思うのは私だけだろうか?

 左翼は、マルクス・レーニンを源流とする点で共通し、理論をどう解釈する
か、現実とどう付き合うかで流派が別れてきたのは知っている。これに対し、
右翼はマルクス・レーニンに相当する源流があるのか、実はよく知らない。

 すなわち、右翼には理論がないように見える。なので、読んでみようと思っ
た。著者は「ネットと愛国」の安田浩一氏である。

 まずは戦前史から。大アジア主義を唱えていた玄洋社が源流のようだが、右
翼イメージを作り上げてきたのは、血盟団事件だとする。特に血盟団の親玉で
あった井上日召という満鉄出身で茨城県大洗町の立正護国寺の住職の「国家改
造」がある。私利私欲に走る支配階級の打倒と万民平等社会を目指す。

 これは当時の左翼も目指していたことだが、井上は左翼の階級闘争史観
(「人類の歴史は階級闘争の歴史である」とする共産党宣言の言葉)を否定し、
闘争を目的としていると批判する。

 自分たちの運動は天皇を取り巻く独裁体制を打破して、天皇親政による国家
主義体制を目指した。そのためには自分が犠牲となっても腐敗した支配階級の
要人を殺し多くの民を救う「一殺多生」を唱えた。

 これは当時の庶民の信条に寄り添ったもので、それなりの支持を得たが、テ
ロリズムの頻発も招いて、自由にものを言えない不自由な社会体制を作り上げ
ることにもなった。そして反共の旗印に呼応して国家権力と共に左翼の弾圧に
協力していた右翼も、最後には弾圧されるのである。

 戦後、天皇の人間宣言が右翼に衝撃を与え、ぼう然としているうちにGHQは
右翼潰しを行い、有力な人は公職追放され、右翼団体の多くは解散命令を受け
て消滅した。

 そこから戦後右翼の歴史が始まるのだが、最初に来るのは、戦前右翼の壊滅
である。

 終戦直後から徹底抗戦を唱えて、愛宕山に篭城し、警官隊が突入したら手り
ゅう弾をお互いに投げて自決した尊攘同志会。尊攘同志会に触発され島根県松
江でクーデターを起こそうとして失敗した皇国義勇軍など、戦前右翼は次々と
壊滅していく。

 しかし、戦後の混乱期、共産党の伸長を警戒した政府やGHQは右翼にも生き
る場所をあたえ、共産党に対する防波堤として使った。そんな中、協和党とい
う石原莞爾直系の、今ではリベラルがやりそうな理想を掲げた団体が注目され
たが、不発に終わる。

 以来、右翼の世界は政治や暴力団と結びつき、そこからの反発として新右翼
が出現し、「背広を着た右翼」である日本会議の登場を経て、現在はネトウヨ
が跋扈する。

 そうした戦後史の記述には、児玉誉士夫や三島由紀夫、町井久之など、大物
が続々と登場し、鈴木邦男のような今も現役の人も出てくる。どのような歴史
的経緯で、彼らがどう動いたのかが書かれているので、彼らがどんな歴史のポ
ジションにいるのかもよくわかる。個人的にはココが一番の収穫だった。

 最後に出てくるのは、ネトウヨで、中でも代表的なのは在特会だ。安田氏は
「ネットと愛国」の著者でもあり、ここに一番力を注ぐであろうと思えたが、
意外とあっさりした感じである。そうなるのは、在特会の力が衰えたというの
もあるのだろうけど、それ以上に日本の右翼化が進んでいるという認識に立っ
ているからだ。

「もう、在特会なんか要らない。社会の一部は充分に極右化している。右翼の
主体は街宣車を走らせる右翼でもなれば、在特会でもない。極右な気分に乗せ
られた一般人なのだ」

 個人的にはそうかなぁ?と思う。確かにヘイトスピーチなどが完全に撲滅さ
れたわけではないが、そんなもの撲滅しようとしても無理な話だし、影響力を
殺ぐことができればそれで充分ではないかと思う。

 また、この世が右傾化しているというより、実際は左翼が弱体化しているだ
けではないかといった疑問もある。

 それはともかく、これが結論なのかと思っていると、最後には右翼の希望も
見えてくる。なかなかよい読了感を与える本である。

 かくも良い右翼の本を書く安田氏には、ぜひ日本の左翼というか、リベラル
についても書いてもらいたい。左翼は安田氏にとって勝手知ったるフィールド
だし、自身もヘイトスピーチのカウンターたちと密な関係にあるのはよく知ら
れていることだ。

 現在の左翼やリベラルといわれる人たちの評判も、かつての在特会ほどとは
言わないが、あまりよくない。そして天皇や国体をどう見るか以外は、右翼も
左翼もイデオロギーにそう大きな違いはない。

 そのせいか、右翼も左翼も行動は似通っている。時には「この人が右翼(左
翼)なのかと驚くほどそっくりなこと言うこともある。言い換えれば、右翼の
美点や問題点は、そのまま左翼の美点や問題点に通じるのだ。

 そのあたりの突っ込みをできる人はそう多くないが、安田氏ならできるので
はないか・・・そんなことを思った。

(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)

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 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 いよいよ年末年始モード。今年はいつもより慌ただしい感じがするのは気の
せいでしょうか?

 平成最後の年末、あっという間に過ぎそうです。(あ)

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[書評]のメルマガ vol.667

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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<108>「箕面」問題と、あのころの「アクション」

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→90 豊かで複雑な雑多な世界

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第107回 浮世=Flaoting World・・・そのまんまの妙

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<108>「箕面」問題と、あのころの「アクション」

 2025年万博の開催地が大阪に決まった。

 1970年以来55年ぶりに再び大阪で、ということらしいが、これ…2020年の東
京オリンピックが決まったときにも、同じ感慨を持ったのだが、半世紀ほども
前に開催したのと同じ都市で、再び開催することに、果たして意味があるんで
しょうか?

 1970年の万博は、戦後の復興期を経た後、ホップ、ステップ、ジャンプで築
き上げてきた高度成長の総決算として、確かに意味があったと思う。
 1964年の東京オリンピック、70年の大阪万博を経て、ようやく世界は、日本
を「先進国」の仲間に入れてくれたのだ。
 だからこそ中国もまた、北京オリンピック、上海万博と、日本と同じ道を踏
襲して、先進国の仲間入りを果たしたのだ。

 しかし、東京オリンピックにしろ大阪万博にしろ、「二回目」に、どんな意
味があるのか、甚だ疑問だぞ……と思いながら、70年万博の会場をかすめる名
神を走っていたら、妙な表記に気がついた。

 道路の上に掲げてある案内標識に、「箕面」とある…のはいいのだが、問題
はその下。そこには英文字で「MINO」とあるではないか。
 思わず、「ちーがーうーだろォっ!」と、ハンドルを持ったまま、どこかの
元代議士のように叫んでしまった。

 その後注意して見ていると、一般道でも「箕面」には、「MINO」あるいは
「MINOH」の英文字が当てられているのに気がついた。
 これまた両方とも「違う!」と思う。

 箕面の「箕」は、一字では「み」と読む。
 「箕」とは、竹で編んだ、塵取りをでかくした形状の農具で、主に穀物を篩
うのに使用され、我が家でもそうだったが、関西では「みィ」と呼ばれること
が多い。
 「面」は「おもて」あるいは「おも」で、「箕面」ではこれを短縮して「お」
と読ませている。
 すなわち「箕面」は、「みお」、なのだが、発音しづらいので、間に助詞
「ノ」を置いて「みノお」と読むのである。「箕ノ面」なのだ。

 「箕」のつく地名は、「箕面」に限らず、「箕谷(みのたに)」「箕輪(み
のわ)」「箕島(みのしま)」等々、たいてい間に「ノ」を置いて呼称される
ので、この読みを「みの」だと誤解している人も多いが、「蓑」と混同するの
かな?
 さっき調べてみると、茨城県には、「箕町」と書いて「みちょう」という地
名もあるそうだ。

 「箕」は「み」で、「みの」ではない。
 「箕面(みのお)」の「の」は、「三宮(さんのみや)」「西宮(にしのみ
や)」の「の」と同じなのだ。
 なので、それを「MINO」と表記するのは、「西宮」を「NISHINO」と表記し
てしまうようなもの。

 同様に、「MINOH」表記もまた、水泳の池江選手を「IKEH」と表記するような
もんじゃなかろうか?
 こないだテレビ見てたら、池江選手は「IKEE」と表記されていた。

 阪急電車の箕面駅では「MINO-O」と表記してるが、これが一番正しい表記だ
と、わしは思う。

 そのMINO-Oの隣のSUITAで開かれていた万博に、3月から9月の閉会まで都
合6回ほども通ったその5年後に、月曜から土曜日までの週6日、世田谷区船
橋の下宿から千代田区鍛治町へ通っていた。
 その春に入った大学の夏休みが明けた秋から、国電神田駅近くの串焼き居酒
屋で、バイトをしていたのだ。
 結構大きな店で、一階二階あわせて100席ほどもあったろうか、近隣のサラ
リーマン、OLさんが主な客層で、夕方6時から夜11時まで、主に皿洗い、と
きにホールで接客、というのが仕事だった。

 仕事を終え、神田駅から、既に快速運転は終わって各駅停車だけになった中
央線の赤い電車に乗る。
 この電車が飯田橋駅を出ると、右手に外堀が見えてきて、その対岸には「週
刊漫画アクション」「週刊大衆」という電飾看板が、当時の双葉社のビル屋上
に煌々と、やたらとドでかく、灯っていたのだった。
 ああ、あのアクションは、ここで作っているのか…と、毎晩眺めていたのだ
が、三階建てとビル自体はちっこいくせに、やけに看板ばかりが目立つその建
物に、それから数年後に出入りすることになろうとは、当時はまだ夢にも思わ
なかった。

 神田という土地柄ゆえか、国電神田駅の前にあった雑誌スタンド…構内では
なく、外にあったから、KIOSKではなく私設のスタンドだったと思う…には、
バイトを終えて帰る時間帯になると、翌日発売の週刊誌を既に売っていて、こ
こで「漫画アクション」を買って帰ることもままあった。

 あのころの「アクション」は、社会現象にもなった『同棲時代』やアニメで
人気を博した『ルパン三世』は既に連載を終えていたが、『子連れ狼』が連載
のクライマックスを迎えていて、『がんばれタブチくん』と『嗚呼!!花の応援
団』が部数を牽引する人気作だった。
 あがた森魚が緑魔子とのデュエット曲に仕上げた、バロン吉本の『柔侠伝』
シリーズもまた、この時期の人気作だった。
 https://www.youtube.com/watch?v=irABYHEKvEA

 当時すでに「青年向け」と言われる漫画雑誌は、「ビッグコミック」はじめ
数々発売されていたが、1967年創刊の「週刊漫画アクション」は、青年向け漫
画雑誌の草分けでもあり、さらに日本で初めての「青年漫画週刊誌」だったの
だ。

 それ以前にも、「週刊漫画ゴラク」や「週刊漫画タイムス」等、「大人向け」
の漫画週刊誌、というのは存在したのだが、それらはあくまで「大人」向けで、
誌名に「漫画」と謳ってはいても、あくまで漫画は「添え物」に過ぎず、主体
は娯楽記事。
 その添え物だった「漫画」にしても、ストーリー漫画ではなく、4コマを中
心としたコマ漫画が主流だった。

 「大人」ではなく、10代後半から20代という「青年」層に向けてのストーリ
ー漫画主体の雑誌というのは、だからまったく新しい発想で、「漫画アクショ
ン」を嚆矢として、その後「ヤングコミック」(少年画報社)、「ビッグコミ
ック」(小学館)、「プレイコミック」(秋田書店)と、これに追随した各社
から、続々と創刊されることになる。

 さきに挙げた『嗚呼!!花の応援団』や『がんばれ!タブチくん』もそうだっ
たのだが、「漫画アクション」は、人気作の連載が終了し部数が落ち込んで危
機を迎えるたび、「神風」的な人気作が登場して部数を回復する、とよく言わ
れて、これ以後も、低迷を迎えるたび、『博多っ子純情』『じゃりん子チエ』
『クレヨンしんちゃん』と、神風的作品が登場して、部数低迷の危機を脱して
きた。

 モンキーパンチ、いしいひさいち、大友克洋、谷口ジロー、等々、その後の
漫画界に「革命的」影響を与える漫画家の発掘に熱心だったのも「アクション」
だ。
 もっとも、「革命的」新人漫画家を育てて売れっ子に仕立てても、最後には
その作家を大手に引っさらわれていくのが常で、「漫画アクション」は、「漫
画界の広島カープ」とも呼ばれていたのだった。

 80年代から90年代にかけては、関川夏央、呉智英、堀井憲一郎、阿奈井文彦、
村上知彦らによるコラムのページに漫画誌では異例のページ数を割き、「アク
ションは、漫画よりもコラムが面白い」と言われた時期もあった。
 ちなみにこの手法は、現在「ビッグコミックオリジナル」が、まんま真似を
している。

 が、1990年代末から2000年代に至って「漫画アクション」は、『クレヨンし
んちゃん』以後「神風」にとんと見放され、いったん休刊したのち隔週刊で復
活はしたものの、出版不況の波をもろにかぶって、部数は低迷したまま、編集
方針も二転三転しているようだ。

 その「漫画アクション」で今、とても興味深い連載作品が進行している。
 『ルーザーズ〜日本初の週刊青年漫画誌の誕生〜』、作者は、以前当欄でも
取り上げたことのある吉本浩二だ。
 「漫画アクション」初代編集長であり、後の双葉社社長でもある清水文人を
主人公として、青年漫画誌の嚆矢「漫画アクション」の誕生までとその後を描
く…らしい漫画だ。

 「らしい」というのは、ただ今発売中の1巻では、主人公・清水文人は、
「週刊大衆」の別冊的位置づけにある「大人」漫画誌「漫画ストーリー」の編
集長であり、彼が傾倒する文学を漫画の中に表現したいという野望を内に秘め
ながら、新しい漫画と漫画雑誌の方向性を模索している最中で、「アクション」
はまだ創刊されてもないから、この漫画が、どこまで「アクション」の歴史を
描いていくことになるのか、見当もつかないからだ。

 これもまた、以前の当欄で触れたことだが、日本の漫画の歴史を、漫画を使
って描く試みは、これまでさまざまになされてきているが、そのいずれもが、
作家、あるいはその作品を軸に展開されるものが殆どで、特定の「雑誌」を中
心に据えたこの視点は、とても斬新だし、「青年漫画」というジャンルにスポ
ットを当てた取り組みも、「漫画史漫画」としては、初めてではなかろうか。

 「ルーザーズ(負け犬たち)」というタイトルは、当時の双葉社が、大手出
版社への就職がかなわず、「しかたなく」ここに入社してきた編集者たち…す
なわち「敗者」の吹きだまりであったことに由来する。
 60年代末から70年代初頭という、世界的な価値観の変革期の中で、その「敗
者」たちが大手に先駆けて、それまでになかった漫画雑誌を作っていく様は、
まさにあの時代の熱気とダイナミズムを、そのままに体現する出来事だったと
思う。

 「敗者」たちが、自分たちを袖にした大手出版社への屈折した思いを胸に秘
めながら、「なにくそ」魂で新しい雑誌を作っていく物語は、吉本浩二の泥臭
い絵柄に、「ぴたり」とハマる。
 今後の展開がとても気になるのだが、この12月の末に、待望の「2巻」が発
売予定だそうで、アマゾンで予約もしてしまったのだった。

 この上は、小学館でも、「ビッグコミック誕生秘話」などを、あの「ガロ」
買収計画の顛末とともに、当のビッグコミックあたりで漫画化してくれんかな、
などと夢想するこの頃です。


太郎吉野(たろう・よしの)
阪神タイガースお膝元在住。右投げ右打ち。趣味は途中下車、時々寝過ごし乗
り越し、最長不倒距離は三重県名張。
ちなみに「阪神タイガース」の「阪神」は、「兵庫県阪神地方」を指します。

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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90 豊かで複雑な雑多な世界

 いよいよ今年最後のメルマガ記事になります。
 みなさんにとって2018年はどんな一年だったでしょうか。
 もう来月は新しい年!

 今年をしめくくる本としてどれを紹介しようかと読んでいたら、どれもこれ
もアタリばかりでうれしくなったので、できる限りご紹介します!

 トップバッターはこちら。

 『変化球男子』
 M・G・ヘネシー 作 杉田七重 訳 すずき出版

 おもしろいタイトルに惹かれて読み始めたら、ものすごい吸引力!
 ロサンゼルスの中学校に通う男子、シェーンが主人公。野球部で活躍し、ジ
ョシュという大親友もいて、学校生活をエンジョイしています。
 思春期まっただなかのシェーンには悩みもあり、それはなかなか人にはいえ
ないもので、親友にも秘密にしています。
 さて、その秘密とは――。

 シェーンの悩みとは、女の子の身体なのに、心は男の子ということ。離婚し
ている両親のうち一緒に暮らしている母親は理解しているのですが、父親は手
術を受けて身体も男の子になりたいシェーンの気持ちをまるごと受け入れるこ
とができません。悩みを軸に、家族、親との関係、友情などたくさんのことが
語られていて、シェーンの悩みはどう着地するのか。このテーマ、悩んでいる
日本の子どもたちにも届いてほしい本です。


 『明日のランチはきみと』
 サラ・ウィークス/ギーター・ヴァラダラージャン 作
 久保陽子訳 フレーベル館

 アメリカ人作家、サラ・ウィークスと、インド人でアメリカ在住の小学校教
師、ギーター・ヴァラダラージャンの2人で執筆した作品です。
 主人公のラビはインドからアメリカに引っ越してきた小学5年生。インドで
は優秀だったので、アメリカでも勉強に遅れをとることはないと思っていたの
ですが、インド式計算もクラスの先生には受け入れてもらえず、いままで優等
生のスタンスでいたがゆえに、落ちこぼれのレッテルを貼られてしまうギャッ
プに苦しみます。
 もう一人の主人公はジョー。「聴覚情報処理障害」という聴く能力に問題が
あり、自分に自信がもてず学校では消極的です。
 
 物語はこの2人のシチュエーションが交互に語られます。お互いのバックグ
ラウンドはかなり違うのですが、少しずつ打ち解けていき、一週間も過ぎると
2人はぐっと近しくなっていきます。

 文化の違う国に転校するハードルの高さ、それを超える大変さがユーモアも
交えて書かれていて読後感が爽やかです。


 『サイド・トラック
  走るのニガテなぼくのランニング日記』
 ダイアナ・ハーモン・アシャー作 武富博子訳 評論社

 主人公の少年フリードマンは「注意欠陥障害」を抱えています。運動音痴に
も関わらず、新しくできた陸上部に入り、クロスカントリー競走に挑戦するこ
とに。

 スポーツ物語とくれば、中心にすえられるのは、スポーツ得意な人物が多い
ですが、今回はそうではありません。サブタイトルにあるように、走るのニガ
テなぼくのランニング日記なのです。

 登場する人物で魅力的なのは、フリードマンを支えるのは79歳のおじいちゃ
ん。高齢者住宅〈ひだまりの里〉にいたのだが、ある事がきっかけでフリード
マンの家で同居することになるのです。フリードマンのよき理解者であるおじ
いちゃんは、クロスカントリーに挑むことを誰よりも応援します。

 そしてもう一人、転校生の女子ヘザーも、フリードマンのよき友だちになり、
2人の友情も物語の柱です。

 最初は望まなかったクロスカントリー走、フリードマンはどんな風に走るの
か、本書でぜひみてください。


 『シロクマが空からやってきた』
 マリア・ファラー 作 ダニエル・リエリー 絵 杉本詠美 訳
 あかね書房

 シロクマシリーズ第二弾。とはいえ、前巻を読んでいなくても気にしなくて
大丈夫です。

 主人公ルビーの母親は、父親と離婚して以来、仕事も手につかず、幼い弟の
世話もルビーに任せることが多くなっていました。ルビーは必死で母と弟を支
えますが、そうはいってもまだ子どもなのです。

 そんなルビーの前に、シロクマがあらわれます。たくさん食べる(つまり、
食費もかかる)体の大きなシロクマを住んでいるマンションョンに連れていく
わけにはいきません。けれど、なりゆきでマンションの下の階に住んでいるモ
レスビーさんの助けもあり、シロクマとの生活がはじまります。

 言葉は発しないシロクマですが存在感と行動力はあります。ルビーも次第に
シロクマと打ち解けていき、母親の問題も解決に向かっていきます。

 ものいわず寄り添ってくれる(静かにではないですが)シロクマの存在感が
伝わってきて、ルビーの心がほぐれていくのにほっとします。親が病気になっ
た時、子どもは大人の役目も担わされることがあります。そんな子どもたちの
ことはヤングケアラー(若い介護者)と呼ばれ、日本にも少なくない子どもた
ちが同じ立場にいます。

 物語のあったかさと子どもの問題をやんわりしっかり伝えてくれる好著です。


 さて、12月といえばクリスマス!
 贈り物におすすめの絵本、
 ストレートにクリスマスを楽しめる絵本をご紹介します。

 まずはこちらから。

 『クリスマスのおかいもの』
 ルー・ピーコック ぶん ヘレン・スティーヴンズ え こみや ゆう やく
 ほるぷ出版

 ペン画に水性の色をのせた、あたたかい雰囲気のクリスマス絵本。

 男の子のノアはママと赤ちゃんの妹メイの3人でクリスマスプレゼントの買
い出しに出かけます。

 ママは小さい子ども2人と一緒なので、ノアたちに目をくばりながら、プレ
ゼントの買い物に集中していきます。ノアは大事なオリバー(ゾウのぬいぐる
み)と一緒にメイと遊んで待っています。


 買い物が終わり、一息ついたとき、ノアは気づくのです。オリバーがいない!
大変! 買い物の次はオリバー探し……。

 オリバーの存在の大事さをママがしっかり受けとめているからこそのラスト。
クリスマスの幸福感に満ちています。


 贈り物絵本でおすすめはこちらの3冊。

 『ゴッホの星空 フィンセントはねむれない』
 バーブ・ローゼンストック 文 メアリー・グランプレ え 
 なかがわちひろ 訳 ほるぷ出版

 この絵本では、画家になるまえのゴッホが描かれます。子どもの頃から、夜
中に何度も目を覚ましていたこと、夜でも嵐でもひとりで散歩に出かけていた
ことを、私はこの絵本で初めて知りました。


 その時に感じた心持ちが後に夜空を描くときに塗り込められたのでしょうか。
 ゴッホの絵といえば、ひまわりもすぐ思いつきますが、夜空の絵も強い印象
を残します。我が家の高校生の娘っこにゴッホの絵で何がすぐ思いつく?と聞
いたところ、星空が独特だよね、とこたえてくれました。

 夜なかなか眠れなかったゴッホが、画家になり、「色彩をつかって夜の闇を
えがくこと」を自身の課題とし、独特な夜空を描いていく過程を本書でじっく
り楽しめます。

 『ねむりどり』
 イザベル・シムレール 作 河野万里子 訳 フレーベル館

 『シルクロードのあかい空』
 イザベル・シムレール 文・絵 石津ちひろ訳 岩波書店

 シムレールの絵本は、とにかく強いインプレッションを読み手に与えてくれ
ます。

 ひっかいたような細い線で幾重にも色を重ね、その繊細さの重なりがハッと
させる美しさにつながっているのがシムレールの絵。

 『ねむりどり』では羽毛のふわふわさが、紙の上からもリアルに感じられ、
ついつい手がのびて紙の上からなでてしまいます。

 『シルクロードのあかい空』では山裾にしずむまっかな夕陽の明るさととも
に、強い目力をもつ子どもも印象に残ります。

 贈り物にもぴったりですし、
 直接手にとって時間をかけてみて欲しい絵本です。


(林さかな)
会津若松在住。「本の雑誌」1月号より新刊めったくたガイド海外文学担当。
http://1day1book.strikingly.com/

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第107回 浮世=Flaoting World・・・そのまんまの妙

 今月も昨年のノーベル賞作家、カズオ・イシグロの本を読む。
 先月の本、『遠い山なみの光』(『A PALE VIEW OF HILLS』)と同じ時代背
景であり、価値観がひっくり返った戦前世代と戦後世代の相克をテーマとして
いるのも同じである。

『浮世の画家』(カズオ・イシグロ 著)(早川書房)
(ハヤカワepi文庫)(2006年11月30日 文庫初版)(2015年12月25日 六刷)
  (『AN ARTIST OF THE FLOATING WORLD』(Kazuo Ishiguro)(1986))

 完全な一人称小説である。語り手の私は日本の画家であり、戦前は大勢の弟
子たちに囲まれ、政府の委員もしていたような大家である。
 奥さんはもう死んでいる。娘がふたりいて、長女は既に嫁に出し、男の子が
一人。次女は未婚で、父親の私と同居していて、彼女の婚約が解消されたあた
りからこの物語が始まる。婚約が破棄された理由が、私である父親にあるよう
な印象になっている。状況説明は一人称の私が人に語ったり、自分で呟いたり、
独白したり、思考したりしているときに、なんとなくわかるだけで、しっかり
とした説明は一切ない。終戦何年後のことか、そして舞台となっているのは、
日本のどこかもわからない。画家の私は小野益次という名前であり、長女は節
子。その夫は素一。二人の間の子は一郎。次女は紀子。戦死したと思われる長
男の名は賢治。死んだ妻の名は道子。主人公の絵の師は森山先生。私の一番弟
子は黒田という名であり、もうひとり名前を出している弟子は信太郎といい、
口論もするが終生の友人は松田という。

 物語は終始、小野益次という人間の一人称であり、彼以外の人が何を考え、
それをどう考えているのかは、我々読者は知る由もない。小野益次が考えたこ
とを我々は常になぞるだけなのだ。したがって、私である小野益次が考えない
ことは、我々も考えることができないのである。
 このような完全な一人称の世界にどっぷりはまって物語の世界に分け入って
いくのは、とても不思議な気分である。
 我々読者は、小野益次ではないので、読みながら彼の考え方に異を唱えるこ
とはできるが、しかし、読者は最後まで小野益次の考えに付き合っていかなく
てはならないのだ。小野益次に感情移入できなければ、本書を投げ出すしかな
い。したがって、ほとんどの読者は、小野益次の考え方に一定の理解を与えた
上で、嫌でも応でも彼に添っていくしかないのである。

 執筆子が最初に思ったのは、本書の題名である、「浮世」ってなんだ?とい
うことなのだが、読んでいくうちに、浮世が何かはおぼろにわかってくる。本
書で云う「浮世」とは、女性が侍る酒宴の様子であり、そこにいる自分たちの
ことなのである。それを描くのが画家の本分である、とはっきりとは書かれて
いないが、本書を読み通せば、そういうことになるようだ。

 本書の原題は『AN ARTIST OF THE FLOATING WORLD』。この「THE FLOATING 
WORLD」が「浮世」になるのだが、とても不思議な気がしたのは、「THE 
FLOATING WORLD」は「浮世」の直訳じゃん、ということだ。英語圏の人たちは
この「THE FLOATING WORLD」ということばがどういう状態のことなのか、わか
るのだろうか? 我々日本人は「浮世」がどんな意味なのかはわかる。「浮世」
とは、この世の中のことであり、儚い世の中のことであり、変わりやすい世間
のことであり、男女の享楽の世界であり、まさに今この一瞬のことである。そ
れが「THE FLOATING WORLD」ということばで英語圏の人たちにこの「浮世」が
理解されるのだろうか?
 わからないから、本書を最後まで読んで、「THE FLOATING WORLD」が何かを
理解するのだろうか? ・・・そうとしか考えられないのだが。

 ・・・・・と、ここまで考えた処で、待てよ、ちょっと調べてみよう、と
Webを覗いてみた。そうしたら、なんてことない。まったく本書で定義され
た「浮世」そのままの説明が載っているのだった。

 Wikipedia曰く。「Floating World」=“Ukiyo, the urban lifestyle, 
especially the pleasure-seeking aspects, of Edo-period Japan
 (1600-1867)”

 近世日本文化研究家の中では周知のことばなのだろう。それを理解していれ
ば、英語圏の読者は本書の敷居がずっと低くなるだろう。

 日本語を理解しない英国籍の日本人が、幼児期に過ごした日本の印象の断片
とその後に知った当時の日本の印象をつなぎ合わせて、価値が転換してしまっ
た敗戦国である日本について、老画家の目を通してときにつらく、ときに明る
く表現した作品なのだ。

 作者は、戦前の価値観を持った老画家に語らせることによって、敗戦後の価
値の転換をよりダイナミックに描こうということに挑戦しているような気がす
る。
 そこにいる自分が努力しつつも、運命に翻弄され、自分が信じていたものが、
目の前でがたがたと崩れ去ってしまう。そんな不幸な瞬間に立ち会ってしまっ
た人を描く。それがカズオ・イシグロの物語なのだ。うまく云えないが、本書
は価値の転換期を生きのびてしまった不幸な人たちの話なのである。


多呂さ(山手線の新駅が「高輪ゲートウェイ駅」だって・・・・・。ばかじゃ
ないの?と思っている人の方が圧倒的多数であることを望みます。)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ― 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510

・『支え合い・学び合いで育つ「わたし」』(エディット・パルク)
  http://web.kyoto-inet.or.jp/people/cogito/%8Fo%94%C5%88%C4%93%E0/%8Ex%82%A6%8D%87%82%A2%81E%8Aw%82%D1%8D%87%82%A2.html

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

 〒142-0041 東京都品川区戸越5-4-3 アズ品川ビル4階
       ビズナレッジ株式会社内 [書評]のメルマガ 献本 係

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンや楽天などのオンライン
 書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。つまり
 は当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願いしま
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 ました。書評は500字以上でお願い致します。)

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
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 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 完全に時事ネタだと思うので敢えて触れておきますが、山手線の新駅の名称
が「高輪ゲートウェイ」となり、あちこちで騒ぎになっています。JRが不動
産事業に本気に乗り出した感があって、駅という公共なイメージとの違和感が
あって、心理的抵抗があるんでしょうかね。もし、名前で不動産価値が上がる
のであれば、JRさんもどんどん駅名の改名をしてくれると、路線図が面白い
ことになりそうです。

 ふと思ったんですが、「池袋ウエストゲートパーク」と言えば「池袋西口公
園」ってことですよね。ってことは、「高輪ゲートウェイ」は「高輪口道」っ
て意味なんでしょうか。あるいは、英語の「ゲートウェイ」で「入り口」とい
う意味もあるようなので、こっちを採用すれば「高輪入口」でしょうか。

 海外の人が英語で見たら、何で騒いでるのかわかんないでしょうね。

 この際、ビターバレー、ナイチンゲールバレー、ブラックアイズ、ホワイト
アイズ、アッパーフィールド、ゴッドライスフィールド、とか、他の駅名の英
語名も、漢字から訳し直しちゃえばいいんじゃないでしょうか?

 あ、そうなると新宿は、ニューホテル?(あ)

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[書評]のメルマガ vol.666

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■■ mailmagazine of book reviews   [熱量を収容するのに相応しい 号]
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■コンテンツ
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★「トピックス」
→ トピックス募集中です

★「音楽本専門書評 BOOK’N’ROLL」/おかじまたか佳
→ #100『山口百恵は菩薩である』

★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→ 『医者が教える食事術』(牧田善二著 ダイヤモンド社)

★「目につく本を読んでみる」/朝日山
→ 今回はお休みです

★【募集中】献本読者書評のコーナー
→ 献本お待ちしています!

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#100『山口百恵は菩薩である』

 というわけで、今回が#100。

 せっかくだから何か100に因んだ本を、と思ったのだが、まず浮かんだのは
ベスト100系のディスク・ガイド。これはいろいろ出ている。
 しかしディスクの紹介なので資料としての側面が強く、書評するというもの
でもない。そのCD入れるなら、むしろこっちだろ、みたいな盤の選択に難癖
つけるくらいが関の山だ。
 ちょっと変わった切り口のディスク・ガイドというものもあって、例えばウ
チには『ひとり』という本があり、これは一人で聴くのに相応しいディスクば
かりを集めた本。このタイプならそのコンセプトが評価の対象にもなるけれど、
残念ながら特に100にこだわっていなかったりする。

 あるいは、100年、というのもある。
 同じく手元にある本だと、まさに『日本レコード100年史』というタイトル
が目につくのであるが、これも資料的には面白いけれど、本としてどうか、と
言われると疑問がある。

 そこでふと、100を「百」と漢字にしてみた。すると!

 われわれ世代の必然により、するすると「百恵」という名前が浮かんでくる。
もちろん、山口百恵である。

 そうか、この手があったか、と山口百恵に関する本を思い起こせば、やはり
本人の自伝『蒼い時』もしくは、本書、平岡正明『山口百恵は菩薩である』に
止めを刺すだろう

 平岡正明は、左翼思想家であり、ジャズ評論家であった。
 ぼくが中高生の頃にはまった筒井康隆の交友圏内におり、ジャズ・ピアニス
ト山下洋輔やタモリらと共に、さまざまな活動をしていた。とりわけ全日本冷
やし中華連盟・略称、全冷中が印象深い。
 真冬に中華屋へ入った時、誰かがふと冷やし中華が食いたい、と言い出した
が、もちろん夏しかやってないと断られ、ならば冬でも冷やし中華を食える日
本にせねばならぬ、と決起され、やがて冷やし中華の歴史的研究だの、冷やし
中華における階級闘争だの、と暴走、拡大、ついには日比谷の野外音楽堂で全
冷中の大会まで開くに至った、まだ学生闘争の余塵くすぶるあの時代ならでは
の壮大なムーヴメントであった。

 また、以前当欄で、急死の報に触れて取り上げた音楽評論家・中村とうよう
の主宰した雑誌『ニューミュージックマガジン』後に改称して『ミュージック
マガジン』でも、平岡正明の名を見ることがあった。
 ごりごりのモダン・ジャズを信奉し、六十年代の学生運動の熾火を永遠に燃
やし続けた硬派の論客の文章は、異彩を放っていた記憶がある。

 その平岡正明が、山口百恵を論ずる、というより礼賛する本を出した。1979
年のことである。『山口百恵は菩薩である』という刺激的なタイトルであった。

 けれど、読むには至らなかった。
 十代の小僧にとって仏教は敷居が高いというか、正直抹香臭くて縁遠く、ま
た山口百恵は時代のスーパースターであり、いくつかの歌は好きだった上に、
「プレイバックPart2」が入ったアルバムを持っていたにも関わらず、そこま
で真剣に聴き込む対象とも思えなかったからである。
 まあ、あれはテレビで見るもんでしょ、という歌謡曲軽視、ロック重視の若
気の至りだ。
 結局、未読のままいまに至った。

 だが、こちらもいい加減大人になって仏教にも多少の関心を持ち、歌謡曲の
すごさも理解できるようになっている。そろそろ本書を読んでもいい頃だろう
と思い探してみると『山口百恵は菩薩である 完全版』というものが出ていた。

 原著の出版は先述の通り1979年。この時まだ山口百恵は現役で、最新シング
ルは「しなやかに歌って」であった。
 文庫版は1983年。この時はもう三浦友和と結婚、芸能界からすっぱり身を引
いており、その引退フィーヴァーまでの期間に発表された原稿が増補されてい
る。
 しかし、それ以降も平岡正明の百恵熱は去らなかったと見え、さらにいくつ
かの文章を書き、対談もしていた。それらを四方田犬彦の編集で網羅したのが、
この完全版なのだという。
 弁当箱のように分厚い本だが、この容積こそ、平岡正明の言葉の熱量を収容
するのに相応しい。

 冒頭いきなり著者は、108もの数に上る、山口百恵に関するテーゼを読者に
突きつけてくる。

 その結論はタイトル通り、「山口百恵は菩薩である」なのだが、重要なのは、
ここで言う菩薩が「地涌(じゆ)の菩薩」であることだ。
 天から降臨するのではなく、文字通り地面から涌いて出てくる菩薩。末法の
世には、無数の菩薩が地から現れ、衆生を救済するという教えがあるのだそう
だ。
 山口百恵は母子家庭に育ち、生活保護を受けながら貧しい暮らしを送ってい
た。つまり、プロレタリアート階級の生まれである。14歳でオーディションに
応募し、歌手を目指した動機も、明確に生活のためだった。
 この階級を、著者は「地」になぞらえ、そこから出現した山口百恵が、いま
や自らの生活を支えるだけでなく、その優れた歌で同じプロレタリアート大衆
の魂を浄化し、救済していると主張する。
 ゆえに、山口百恵は「地涌の菩薩」なのである。

 このことを著者は理論で積み上げたのではなく、直感した。だから、本書の
冒頭は証明を省き、断定のみを列挙するテーゼのスタイルで書かれているのだ。
ライプニッツの『モナド』やヴィトゲンシュタインの『論理哲学論考』と同じ
形式である。

 そしてそれに続く章で、詳細な音楽的分析や歴史的な検証を後から施し、テ
ーゼを裏付けていくのであるが、舌を巻くのはその視野の広さだ。

 まず空間的に、グローバルな認識がある。
 世界革命の戦略が論じられていた時期だからか、取り上げられる歌手は日本
国内に留まらず、韓国・香港・台湾と東アジア全域に及んでいる。

 さらに時間的には、戦前戦後の歌謡史を一望している。
 大雑把にまとめるなら、中山晋平らによる大正演歌の時代の後、韓国メロデ
ィーを導入した古賀政男による艶歌の時代が訪れ、それが美空ひばりを得て戦
後の歌謡界を支配するのだが、その後を襲うはずだった西田佐知子と李成愛が
道半ばにして結婚引退、その空白を埋めるように山口百恵が登場して歌謡界の
新たな女王となった、という流れである。

 また、同時代認識も周到だ。
 山口百恵のライバルとしてピンク・レディーを措定し、彼女たちのことも詳
細に分析している。結構ピンク・レディーの、それもケイちゃんのファンであ
ったりもする。しかし、かつて古賀政男と組んだ美空ひばりが、服部良一と組
んだブギの女王・笠置シズ子との対決に勝利したように、百恵はピンク・レデ
ィーに勝利する、と捉えている。
 さらに、70年代当時を「女性原理の時代」と見て、こうした時代に男はどう
あるべきかというと、もう三枚目になるしかない、として、その意味でサザン
オールスターズは大きな可能性を秘めていると見抜いている。

 音楽的にも実に多様なジャンルに言及している。
 そもそもの本領であるジャズからは、ジョン・コルトレーンのシーツ・オブ
・サウンド奏法を引き合いに出し、これが山口百恵の唱法と同じだと断じる。
 いくつかの曲のアレンジや曲想が、ジョン・レノンも注目したジャマイカの
レゲであることに注目し、ひばりのマンボに対し百恵はロックンロールを完璧
に消化しているとも述べている。

 とはいえ、左翼革命思想を歌謡曲論に重ね合わせる独特の論法は、やはりあ
の時代ならではのもので、古臭さを感じるのは確かだ。
 例えば、当時歌謡曲が芸能界の体制派だったのに対し、フォークやロックの
世界から反体制として現れたのがニューミュージックだったと思うのだが、こ
れを著者は、中産階級のプチブル的自己欺瞞として切って捨てている。オフコ
ースのコピーに結構な時間を費やしたぼくの青春はどうしてくれる、と言いた
い。
 大体ぼく自身は中産階級の生まれであり、プチブルであって、貧しきプロレ
タリアートにしか優れた表現が出来ないのだとすると立つ瀬がない。やたら闘
争的なものの考え方も相容れない。だから、当時から階級論には必ずしも共感
しなかった。

 にもかかわらず面白いと思ったのは、「I CAME FRON 横須賀」という曲の分
析で、これは四方田犬彦の解説にも触れられている。百恵自身と思われる横須
賀に住む少女が東京へ恋人に会いに行く、その車中を歌っているのだが、さて
この時、彼女は何線に乗っていたか、と著者は問うのだ。
 自由が丘、田園調布がある東横線だろうか? いや、それは中産階級の乗り
物だ。鎌倉、由比ガ浜などかつての別荘地を通る横須賀線? それじゃ特権階
級だ。東海道線なら中立だが、やはりプロレタリアートの菩薩である以上、百
恵は京急線を使ったに違いない。これが著者の結論である。
 なぜなら京急線は歴史の最も古い私鉄で、運賃が安いからだ。これこそがつ
ましいプロレタリアートの少女のお小遣いに相応しい乗り物である。

 なるほど!と唸らざるを得ない。もっともこの後百恵は、「いい日旅立ち」
で国鉄のキャンペーンを担うんだけどね。

 いまはとんとお目にかからなくなった、階級なる言葉。それが、あの頃はま
だ生き残っていた。
 そして続く80年代。
 なんとなくクリスタルになった日本人は、バブルに向かって好景気を貪る内
に、いつか忘れていった。

 しかしいま、世の中は格差社会だという。
 はっきり階級社会だという声もある。
 海の向こうのアメリカでも、反トランプ陣営に、これまで社会主義的として
拒絶されてきた国民皆保険などの政策を掲げる政治家が登場しているという。

 かくて時代は巡った。年が明ければ、1月生まれの「山口百恵は還暦である」。

平岡正明
四方田犬彦・編
『山口百恵は菩薩である 完全版』
二0一五年六月九日 第一刷発行
講談社

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
来月、ヴォイストレーニング教室の発表会があるんですが、そこで「いい日旅
立ち」を歌う生徒さんがいて、ギターの伴奏を頼まれました。不思議に山口百
恵づいているこの頃です。ちなみにこの曲、平岡正明の評価も高いです。「秋
桜」はぼろくそだけど。

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■「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
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健康本を読むためには「読者リテラシー」が必要
『医者が教える食事術』(牧田善二著 ダイヤモンド社)

 前からうすうす思っていたのですが、一般人は医者という言葉に弱くないで
すか? 権威に弱いのは衆生の常。現在、衆生がひれふす権威をあげるなら、
そうねえ、IT、AI、東大、そして医者かな。テレビを見ていると健康番組
で白衣を着た医者がやれヨーグルトを食えとかオリーブオイルを垂らせとか言
ってますが、「ほんまかいな」とおばちゃまは思うの。同じ油なのに、なんで
菜種はだめでオリーブならいいのかさっぱりわかりません。同じ砂糖なのに茶
色はいいもんで白は悪魔・・・なんでやねん!

 医者の健康常識を疑うようになったのは、ある医者と雑談していて、次の2
つを聞いたから。1つめは「エビデンスなんて作れるんですよ」というもの。
最初からこのデータが欲しいと思ってそのように実験したら、欲しいデータは
出てくるものだとそのドクターは言いました。そうなん? 

 もう1つが「医者は栄養の知識はないんですよ」という別のドクターの発言。
「医学部の授業に『栄養学』はありませんからね」。そういえばそうかも。み
なさん試しにどこでもいいから医学部のHPを開いてカリキュラムを見てごら
んさい。英語から解剖までびっしりですが、栄養学はない(健康科学はある)。
それに医者ってたいてい進学校出身だから家庭科なんて適当に履修しているで
しょ? もしかすると元良妻賢母系の女子校で高3になっても家庭科系の科目
を週3で取ってたおばちゃまよりも、栄養の知識って無いんじゃない?と疑っ
てしまいます。

 さて、それで読んだのが「医者が教える食事学」といいうベストセラー。
「ちまたの健康情報はうそだらけ。生化学×最新医療データ×統計データから
医学的エビデンスに基づいた本当に正しい食事法を1冊に網羅」(帯より)し
て60万部突破。

 最初に言いますが、これは嘘くさい本ではありません。著者は糖尿病が専門
のドクターなので、「血糖値」を手がかりにして病気や健康を考えるというス
タンス。カロリーや脂質を軸にした考え方とは別のアプローチをしていて、そ
のへんを読むと説得力があり「なるほどね」と納得できます。ここの軸がしっ
かりしてるから60万いったのね。

 病気になる原因の9割は血糖値にあるから血糖値が高かったり、急激に上下
すると体にダメージを与えるそうです。ふむふむ。

 しかし、食事学を網羅しようとするあまり、本の後半になると、おばちゃま
のほんまかいなを刺激する文章が続々出てきます。

 その1つが白ワイン。「白ワインはやせる」という論文が2004年にドイツで
出てそれは白ワインには酒石酸がたくさん含まれているからで、「私も夕食時
には白ワインをのんでいるが翌朝の血糖値がかなり低くなることは私自身が実
感としてわかっています」とまさかの1人エビデンスを展開。このあたりにな
ると専門外のネタ(ネタって・ww)が混在してきて「ほんまかいな」です。
でもこれは、たくさんの情報を網羅したいという編集側のもくろみでしょうけ
れどね。わかるよ、わかるよ。

 この本を読んでわかったことは、血糖値を上げることと上下させることはよ
くないこと、缶コーヒーやジュースを過剰に摂るのはよくないことなどの健康
情報が1つ。
 そして、多くの健康情報の中から、納得できるものだけを選んで実行するリ
テラシーが読者にも必要ということです。

 この本の最終章で著者は、いいことを言っています。それは患者にもリテラ
シーが必要ということ。
・腕のいい料理人とそれほどでもない料理人がいるように、医者もピンキリ。
・糖尿病医なのにアルブミンの検査をしないのはありえないように、外科や内
科も広い視野で判断することが今は必要。
・大きな病院にいい医者がいるとは限らない。大学病院には研修医がいっぱい。
ほんとにそのとおりです。

 これそのまま、健康本にも言えます。

 患者と同じように、読者も本に書いてあることをうのみにしないで、何がホ
ントで何が嘘くさいかを取捨選択する「読者リテラシー」が必要。この本で実
感しました。


大友舞子(おおとも・まいこ)
昭和20年代生まれのフリー編集&ライター。関東生まれで関西在住。
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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ─ 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510


 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

 〒142-0041 東京都品川区戸越5-4-3 アズ品川ビル4階
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2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
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3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
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 書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。つまり
 は当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願いしま
 す。(あまりにも短いものは書評とは呼べませんので、文字数の条件を設け
 ました。書評は500字以上でお願い致します。)

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 ここ1年くらい、あるメンバーでオンラインの読書会をやっているのですが、
これがなかなか面白い。先日は知人の著者を招いて行いました。

 オンライン読書会はひとりでは絶対読み切れそうにない本を読めるのと、ネ
タ切れにならないのが良いところですね。(あ)

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