[書評]のメルマガ

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[書評]のメルマガ vol.667

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■■ [書評]のメルマガ                2018.12.10.発行
■■                              vol.667
■■ mailmagazine of book reviews     [ちーがーうーだろォっ! 号]
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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<108>「箕面」問題と、あのころの「アクション」

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→90 豊かで複雑な雑多な世界

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第107回 浮世=Flaoting World・・・そのまんまの妙

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<108>「箕面」問題と、あのころの「アクション」

 2025年万博の開催地が大阪に決まった。

 1970年以来55年ぶりに再び大阪で、ということらしいが、これ…2020年の東
京オリンピックが決まったときにも、同じ感慨を持ったのだが、半世紀ほども
前に開催したのと同じ都市で、再び開催することに、果たして意味があるんで
しょうか?

 1970年の万博は、戦後の復興期を経た後、ホップ、ステップ、ジャンプで築
き上げてきた高度成長の総決算として、確かに意味があったと思う。
 1964年の東京オリンピック、70年の大阪万博を経て、ようやく世界は、日本
を「先進国」の仲間に入れてくれたのだ。
 だからこそ中国もまた、北京オリンピック、上海万博と、日本と同じ道を踏
襲して、先進国の仲間入りを果たしたのだ。

 しかし、東京オリンピックにしろ大阪万博にしろ、「二回目」に、どんな意
味があるのか、甚だ疑問だぞ……と思いながら、70年万博の会場をかすめる名
神を走っていたら、妙な表記に気がついた。

 道路の上に掲げてある案内標識に、「箕面」とある…のはいいのだが、問題
はその下。そこには英文字で「MINO」とあるではないか。
 思わず、「ちーがーうーだろォっ!」と、ハンドルを持ったまま、どこかの
元代議士のように叫んでしまった。

 その後注意して見ていると、一般道でも「箕面」には、「MINO」あるいは
「MINOH」の英文字が当てられているのに気がついた。
 これまた両方とも「違う!」と思う。

 箕面の「箕」は、一字では「み」と読む。
 「箕」とは、竹で編んだ、塵取りをでかくした形状の農具で、主に穀物を篩
うのに使用され、我が家でもそうだったが、関西では「みィ」と呼ばれること
が多い。
 「面」は「おもて」あるいは「おも」で、「箕面」ではこれを短縮して「お」
と読ませている。
 すなわち「箕面」は、「みお」、なのだが、発音しづらいので、間に助詞
「ノ」を置いて「みノお」と読むのである。「箕ノ面」なのだ。

 「箕」のつく地名は、「箕面」に限らず、「箕谷(みのたに)」「箕輪(み
のわ)」「箕島(みのしま)」等々、たいてい間に「ノ」を置いて呼称される
ので、この読みを「みの」だと誤解している人も多いが、「蓑」と混同するの
かな?
 さっき調べてみると、茨城県には、「箕町」と書いて「みちょう」という地
名もあるそうだ。

 「箕」は「み」で、「みの」ではない。
 「箕面(みのお)」の「の」は、「三宮(さんのみや)」「西宮(にしのみ
や)」の「の」と同じなのだ。
 なので、それを「MINO」と表記するのは、「西宮」を「NISHINO」と表記し
てしまうようなもの。

 同様に、「MINOH」表記もまた、水泳の池江選手を「IKEH」と表記するような
もんじゃなかろうか?
 こないだテレビ見てたら、池江選手は「IKEE」と表記されていた。

 阪急電車の箕面駅では「MINO-O」と表記してるが、これが一番正しい表記だ
と、わしは思う。

 そのMINO-Oの隣のSUITAで開かれていた万博に、3月から9月の閉会まで都
合6回ほども通ったその5年後に、月曜から土曜日までの週6日、世田谷区船
橋の下宿から千代田区鍛治町へ通っていた。
 その春に入った大学の夏休みが明けた秋から、国電神田駅近くの串焼き居酒
屋で、バイトをしていたのだ。
 結構大きな店で、一階二階あわせて100席ほどもあったろうか、近隣のサラ
リーマン、OLさんが主な客層で、夕方6時から夜11時まで、主に皿洗い、と
きにホールで接客、というのが仕事だった。

 仕事を終え、神田駅から、既に快速運転は終わって各駅停車だけになった中
央線の赤い電車に乗る。
 この電車が飯田橋駅を出ると、右手に外堀が見えてきて、その対岸には「週
刊漫画アクション」「週刊大衆」という電飾看板が、当時の双葉社のビル屋上
に煌々と、やたらとドでかく、灯っていたのだった。
 ああ、あのアクションは、ここで作っているのか…と、毎晩眺めていたのだ
が、三階建てとビル自体はちっこいくせに、やけに看板ばかりが目立つその建
物に、それから数年後に出入りすることになろうとは、当時はまだ夢にも思わ
なかった。

 神田という土地柄ゆえか、国電神田駅の前にあった雑誌スタンド…構内では
なく、外にあったから、KIOSKではなく私設のスタンドだったと思う…には、
バイトを終えて帰る時間帯になると、翌日発売の週刊誌を既に売っていて、こ
こで「漫画アクション」を買って帰ることもままあった。

 あのころの「アクション」は、社会現象にもなった『同棲時代』やアニメで
人気を博した『ルパン三世』は既に連載を終えていたが、『子連れ狼』が連載
のクライマックスを迎えていて、『がんばれタブチくん』と『嗚呼!!花の応援
団』が部数を牽引する人気作だった。
 あがた森魚が緑魔子とのデュエット曲に仕上げた、バロン吉本の『柔侠伝』
シリーズもまた、この時期の人気作だった。
 https://www.youtube.com/watch?v=irABYHEKvEA

 当時すでに「青年向け」と言われる漫画雑誌は、「ビッグコミック」はじめ
数々発売されていたが、1967年創刊の「週刊漫画アクション」は、青年向け漫
画雑誌の草分けでもあり、さらに日本で初めての「青年漫画週刊誌」だったの
だ。

 それ以前にも、「週刊漫画ゴラク」や「週刊漫画タイムス」等、「大人向け」
の漫画週刊誌、というのは存在したのだが、それらはあくまで「大人」向けで、
誌名に「漫画」と謳ってはいても、あくまで漫画は「添え物」に過ぎず、主体
は娯楽記事。
 その添え物だった「漫画」にしても、ストーリー漫画ではなく、4コマを中
心としたコマ漫画が主流だった。

 「大人」ではなく、10代後半から20代という「青年」層に向けてのストーリ
ー漫画主体の雑誌というのは、だからまったく新しい発想で、「漫画アクショ
ン」を嚆矢として、その後「ヤングコミック」(少年画報社)、「ビッグコミ
ック」(小学館)、「プレイコミック」(秋田書店)と、これに追随した各社
から、続々と創刊されることになる。

 さきに挙げた『嗚呼!!花の応援団』や『がんばれ!タブチくん』もそうだっ
たのだが、「漫画アクション」は、人気作の連載が終了し部数が落ち込んで危
機を迎えるたび、「神風」的な人気作が登場して部数を回復する、とよく言わ
れて、これ以後も、低迷を迎えるたび、『博多っ子純情』『じゃりん子チエ』
『クレヨンしんちゃん』と、神風的作品が登場して、部数低迷の危機を脱して
きた。

 モンキーパンチ、いしいひさいち、大友克洋、谷口ジロー、等々、その後の
漫画界に「革命的」影響を与える漫画家の発掘に熱心だったのも「アクション」
だ。
 もっとも、「革命的」新人漫画家を育てて売れっ子に仕立てても、最後には
その作家を大手に引っさらわれていくのが常で、「漫画アクション」は、「漫
画界の広島カープ」とも呼ばれていたのだった。

 80年代から90年代にかけては、関川夏央、呉智英、堀井憲一郎、阿奈井文彦、
村上知彦らによるコラムのページに漫画誌では異例のページ数を割き、「アク
ションは、漫画よりもコラムが面白い」と言われた時期もあった。
 ちなみにこの手法は、現在「ビッグコミックオリジナル」が、まんま真似を
している。

 が、1990年代末から2000年代に至って「漫画アクション」は、『クレヨンし
んちゃん』以後「神風」にとんと見放され、いったん休刊したのち隔週刊で復
活はしたものの、出版不況の波をもろにかぶって、部数は低迷したまま、編集
方針も二転三転しているようだ。

 その「漫画アクション」で今、とても興味深い連載作品が進行している。
 『ルーザーズ〜日本初の週刊青年漫画誌の誕生〜』、作者は、以前当欄でも
取り上げたことのある吉本浩二だ。
 「漫画アクション」初代編集長であり、後の双葉社社長でもある清水文人を
主人公として、青年漫画誌の嚆矢「漫画アクション」の誕生までとその後を描
く…らしい漫画だ。

 「らしい」というのは、ただ今発売中の1巻では、主人公・清水文人は、
「週刊大衆」の別冊的位置づけにある「大人」漫画誌「漫画ストーリー」の編
集長であり、彼が傾倒する文学を漫画の中に表現したいという野望を内に秘め
ながら、新しい漫画と漫画雑誌の方向性を模索している最中で、「アクション」
はまだ創刊されてもないから、この漫画が、どこまで「アクション」の歴史を
描いていくことになるのか、見当もつかないからだ。

 これもまた、以前の当欄で触れたことだが、日本の漫画の歴史を、漫画を使
って描く試みは、これまでさまざまになされてきているが、そのいずれもが、
作家、あるいはその作品を軸に展開されるものが殆どで、特定の「雑誌」を中
心に据えたこの視点は、とても斬新だし、「青年漫画」というジャンルにスポ
ットを当てた取り組みも、「漫画史漫画」としては、初めてではなかろうか。

 「ルーザーズ(負け犬たち)」というタイトルは、当時の双葉社が、大手出
版社への就職がかなわず、「しかたなく」ここに入社してきた編集者たち…す
なわち「敗者」の吹きだまりであったことに由来する。
 60年代末から70年代初頭という、世界的な価値観の変革期の中で、その「敗
者」たちが大手に先駆けて、それまでになかった漫画雑誌を作っていく様は、
まさにあの時代の熱気とダイナミズムを、そのままに体現する出来事だったと
思う。

 「敗者」たちが、自分たちを袖にした大手出版社への屈折した思いを胸に秘
めながら、「なにくそ」魂で新しい雑誌を作っていく物語は、吉本浩二の泥臭
い絵柄に、「ぴたり」とハマる。
 今後の展開がとても気になるのだが、この12月の末に、待望の「2巻」が発
売予定だそうで、アマゾンで予約もしてしまったのだった。

 この上は、小学館でも、「ビッグコミック誕生秘話」などを、あの「ガロ」
買収計画の顛末とともに、当のビッグコミックあたりで漫画化してくれんかな、
などと夢想するこの頃です。


太郎吉野(たろう・よしの)
阪神タイガースお膝元在住。右投げ右打ち。趣味は途中下車、時々寝過ごし乗
り越し、最長不倒距離は三重県名張。
ちなみに「阪神タイガース」の「阪神」は、「兵庫県阪神地方」を指します。

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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90 豊かで複雑な雑多な世界

 いよいよ今年最後のメルマガ記事になります。
 みなさんにとって2018年はどんな一年だったでしょうか。
 もう来月は新しい年!

 今年をしめくくる本としてどれを紹介しようかと読んでいたら、どれもこれ
もアタリばかりでうれしくなったので、できる限りご紹介します!

 トップバッターはこちら。

 『変化球男子』
 M・G・ヘネシー 作 杉田七重 訳 すずき出版

 おもしろいタイトルに惹かれて読み始めたら、ものすごい吸引力!
 ロサンゼルスの中学校に通う男子、シェーンが主人公。野球部で活躍し、ジ
ョシュという大親友もいて、学校生活をエンジョイしています。
 思春期まっただなかのシェーンには悩みもあり、それはなかなか人にはいえ
ないもので、親友にも秘密にしています。
 さて、その秘密とは――。

 シェーンの悩みとは、女の子の身体なのに、心は男の子ということ。離婚し
ている両親のうち一緒に暮らしている母親は理解しているのですが、父親は手
術を受けて身体も男の子になりたいシェーンの気持ちをまるごと受け入れるこ
とができません。悩みを軸に、家族、親との関係、友情などたくさんのことが
語られていて、シェーンの悩みはどう着地するのか。このテーマ、悩んでいる
日本の子どもたちにも届いてほしい本です。


 『明日のランチはきみと』
 サラ・ウィークス/ギーター・ヴァラダラージャン 作
 久保陽子訳 フレーベル館

 アメリカ人作家、サラ・ウィークスと、インド人でアメリカ在住の小学校教
師、ギーター・ヴァラダラージャンの2人で執筆した作品です。
 主人公のラビはインドからアメリカに引っ越してきた小学5年生。インドで
は優秀だったので、アメリカでも勉強に遅れをとることはないと思っていたの
ですが、インド式計算もクラスの先生には受け入れてもらえず、いままで優等
生のスタンスでいたがゆえに、落ちこぼれのレッテルを貼られてしまうギャッ
プに苦しみます。
 もう一人の主人公はジョー。「聴覚情報処理障害」という聴く能力に問題が
あり、自分に自信がもてず学校では消極的です。
 
 物語はこの2人のシチュエーションが交互に語られます。お互いのバックグ
ラウンドはかなり違うのですが、少しずつ打ち解けていき、一週間も過ぎると
2人はぐっと近しくなっていきます。

 文化の違う国に転校するハードルの高さ、それを超える大変さがユーモアも
交えて書かれていて読後感が爽やかです。


 『サイド・トラック
  走るのニガテなぼくのランニング日記』
 ダイアナ・ハーモン・アシャー作 武富博子訳 評論社

 主人公の少年フリードマンは「注意欠陥障害」を抱えています。運動音痴に
も関わらず、新しくできた陸上部に入り、クロスカントリー競走に挑戦するこ
とに。

 スポーツ物語とくれば、中心にすえられるのは、スポーツ得意な人物が多い
ですが、今回はそうではありません。サブタイトルにあるように、走るのニガ
テなぼくのランニング日記なのです。

 登場する人物で魅力的なのは、フリードマンを支えるのは79歳のおじいちゃ
ん。高齢者住宅〈ひだまりの里〉にいたのだが、ある事がきっかけでフリード
マンの家で同居することになるのです。フリードマンのよき理解者であるおじ
いちゃんは、クロスカントリーに挑むことを誰よりも応援します。

 そしてもう一人、転校生の女子ヘザーも、フリードマンのよき友だちになり、
2人の友情も物語の柱です。

 最初は望まなかったクロスカントリー走、フリードマンはどんな風に走るの
か、本書でぜひみてください。


 『シロクマが空からやってきた』
 マリア・ファラー 作 ダニエル・リエリー 絵 杉本詠美 訳
 あかね書房

 シロクマシリーズ第二弾。とはいえ、前巻を読んでいなくても気にしなくて
大丈夫です。

 主人公ルビーの母親は、父親と離婚して以来、仕事も手につかず、幼い弟の
世話もルビーに任せることが多くなっていました。ルビーは必死で母と弟を支
えますが、そうはいってもまだ子どもなのです。

 そんなルビーの前に、シロクマがあらわれます。たくさん食べる(つまり、
食費もかかる)体の大きなシロクマを住んでいるマンションョンに連れていく
わけにはいきません。けれど、なりゆきでマンションの下の階に住んでいるモ
レスビーさんの助けもあり、シロクマとの生活がはじまります。

 言葉は発しないシロクマですが存在感と行動力はあります。ルビーも次第に
シロクマと打ち解けていき、母親の問題も解決に向かっていきます。

 ものいわず寄り添ってくれる(静かにではないですが)シロクマの存在感が
伝わってきて、ルビーの心がほぐれていくのにほっとします。親が病気になっ
た時、子どもは大人の役目も担わされることがあります。そんな子どもたちの
ことはヤングケアラー(若い介護者)と呼ばれ、日本にも少なくない子どもた
ちが同じ立場にいます。

 物語のあったかさと子どもの問題をやんわりしっかり伝えてくれる好著です。


 さて、12月といえばクリスマス!
 贈り物におすすめの絵本、
 ストレートにクリスマスを楽しめる絵本をご紹介します。

 まずはこちらから。

 『クリスマスのおかいもの』
 ルー・ピーコック ぶん ヘレン・スティーヴンズ え こみや ゆう やく
 ほるぷ出版

 ペン画に水性の色をのせた、あたたかい雰囲気のクリスマス絵本。

 男の子のノアはママと赤ちゃんの妹メイの3人でクリスマスプレゼントの買
い出しに出かけます。

 ママは小さい子ども2人と一緒なので、ノアたちに目をくばりながら、プレ
ゼントの買い物に集中していきます。ノアは大事なオリバー(ゾウのぬいぐる
み)と一緒にメイと遊んで待っています。


 買い物が終わり、一息ついたとき、ノアは気づくのです。オリバーがいない!
大変! 買い物の次はオリバー探し……。

 オリバーの存在の大事さをママがしっかり受けとめているからこそのラスト。
クリスマスの幸福感に満ちています。


 贈り物絵本でおすすめはこちらの3冊。

 『ゴッホの星空 フィンセントはねむれない』
 バーブ・ローゼンストック 文 メアリー・グランプレ え 
 なかがわちひろ 訳 ほるぷ出版

 この絵本では、画家になるまえのゴッホが描かれます。子どもの頃から、夜
中に何度も目を覚ましていたこと、夜でも嵐でもひとりで散歩に出かけていた
ことを、私はこの絵本で初めて知りました。


 その時に感じた心持ちが後に夜空を描くときに塗り込められたのでしょうか。
 ゴッホの絵といえば、ひまわりもすぐ思いつきますが、夜空の絵も強い印象
を残します。我が家の高校生の娘っこにゴッホの絵で何がすぐ思いつく?と聞
いたところ、星空が独特だよね、とこたえてくれました。

 夜なかなか眠れなかったゴッホが、画家になり、「色彩をつかって夜の闇を
えがくこと」を自身の課題とし、独特な夜空を描いていく過程を本書でじっく
り楽しめます。

 『ねむりどり』
 イザベル・シムレール 作 河野万里子 訳 フレーベル館

 『シルクロードのあかい空』
 イザベル・シムレール 文・絵 石津ちひろ訳 岩波書店

 シムレールの絵本は、とにかく強いインプレッションを読み手に与えてくれ
ます。

 ひっかいたような細い線で幾重にも色を重ね、その繊細さの重なりがハッと
させる美しさにつながっているのがシムレールの絵。

 『ねむりどり』では羽毛のふわふわさが、紙の上からもリアルに感じられ、
ついつい手がのびて紙の上からなでてしまいます。

 『シルクロードのあかい空』では山裾にしずむまっかな夕陽の明るさととも
に、強い目力をもつ子どもも印象に残ります。

 贈り物にもぴったりですし、
 直接手にとって時間をかけてみて欲しい絵本です。


(林さかな)
会津若松在住。「本の雑誌」1月号より新刊めったくたガイド海外文学担当。
http://1day1book.strikingly.com/

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第107回 浮世=Flaoting World・・・そのまんまの妙

 今月も昨年のノーベル賞作家、カズオ・イシグロの本を読む。
 先月の本、『遠い山なみの光』(『A PALE VIEW OF HILLS』)と同じ時代背
景であり、価値観がひっくり返った戦前世代と戦後世代の相克をテーマとして
いるのも同じである。

『浮世の画家』(カズオ・イシグロ 著)(早川書房)
(ハヤカワepi文庫)(2006年11月30日 文庫初版)(2015年12月25日 六刷)
  (『AN ARTIST OF THE FLOATING WORLD』(Kazuo Ishiguro)(1986))

 完全な一人称小説である。語り手の私は日本の画家であり、戦前は大勢の弟
子たちに囲まれ、政府の委員もしていたような大家である。
 奥さんはもう死んでいる。娘がふたりいて、長女は既に嫁に出し、男の子が
一人。次女は未婚で、父親の私と同居していて、彼女の婚約が解消されたあた
りからこの物語が始まる。婚約が破棄された理由が、私である父親にあるよう
な印象になっている。状況説明は一人称の私が人に語ったり、自分で呟いたり、
独白したり、思考したりしているときに、なんとなくわかるだけで、しっかり
とした説明は一切ない。終戦何年後のことか、そして舞台となっているのは、
日本のどこかもわからない。画家の私は小野益次という名前であり、長女は節
子。その夫は素一。二人の間の子は一郎。次女は紀子。戦死したと思われる長
男の名は賢治。死んだ妻の名は道子。主人公の絵の師は森山先生。私の一番弟
子は黒田という名であり、もうひとり名前を出している弟子は信太郎といい、
口論もするが終生の友人は松田という。

 物語は終始、小野益次という人間の一人称であり、彼以外の人が何を考え、
それをどう考えているのかは、我々読者は知る由もない。小野益次が考えたこ
とを我々は常になぞるだけなのだ。したがって、私である小野益次が考えない
ことは、我々も考えることができないのである。
 このような完全な一人称の世界にどっぷりはまって物語の世界に分け入って
いくのは、とても不思議な気分である。
 我々読者は、小野益次ではないので、読みながら彼の考え方に異を唱えるこ
とはできるが、しかし、読者は最後まで小野益次の考えに付き合っていかなく
てはならないのだ。小野益次に感情移入できなければ、本書を投げ出すしかな
い。したがって、ほとんどの読者は、小野益次の考え方に一定の理解を与えた
上で、嫌でも応でも彼に添っていくしかないのである。

 執筆子が最初に思ったのは、本書の題名である、「浮世」ってなんだ?とい
うことなのだが、読んでいくうちに、浮世が何かはおぼろにわかってくる。本
書で云う「浮世」とは、女性が侍る酒宴の様子であり、そこにいる自分たちの
ことなのである。それを描くのが画家の本分である、とはっきりとは書かれて
いないが、本書を読み通せば、そういうことになるようだ。

 本書の原題は『AN ARTIST OF THE FLOATING WORLD』。この「THE FLOATING 
WORLD」が「浮世」になるのだが、とても不思議な気がしたのは、「THE 
FLOATING WORLD」は「浮世」の直訳じゃん、ということだ。英語圏の人たちは
この「THE FLOATING WORLD」ということばがどういう状態のことなのか、わか
るのだろうか? 我々日本人は「浮世」がどんな意味なのかはわかる。「浮世」
とは、この世の中のことであり、儚い世の中のことであり、変わりやすい世間
のことであり、男女の享楽の世界であり、まさに今この一瞬のことである。そ
れが「THE FLOATING WORLD」ということばで英語圏の人たちにこの「浮世」が
理解されるのだろうか?
 わからないから、本書を最後まで読んで、「THE FLOATING WORLD」が何かを
理解するのだろうか? ・・・そうとしか考えられないのだが。

 ・・・・・と、ここまで考えた処で、待てよ、ちょっと調べてみよう、と
Webを覗いてみた。そうしたら、なんてことない。まったく本書で定義され
た「浮世」そのままの説明が載っているのだった。

 Wikipedia曰く。「Floating World」=“Ukiyo, the urban lifestyle, 
especially the pleasure-seeking aspects, of Edo-period Japan
 (1600-1867)”

 近世日本文化研究家の中では周知のことばなのだろう。それを理解していれ
ば、英語圏の読者は本書の敷居がずっと低くなるだろう。

 日本語を理解しない英国籍の日本人が、幼児期に過ごした日本の印象の断片
とその後に知った当時の日本の印象をつなぎ合わせて、価値が転換してしまっ
た敗戦国である日本について、老画家の目を通してときにつらく、ときに明る
く表現した作品なのだ。

 作者は、戦前の価値観を持った老画家に語らせることによって、敗戦後の価
値の転換をよりダイナミックに描こうということに挑戦しているような気がす
る。
 そこにいる自分が努力しつつも、運命に翻弄され、自分が信じていたものが、
目の前でがたがたと崩れ去ってしまう。そんな不幸な瞬間に立ち会ってしまっ
た人を描く。それがカズオ・イシグロの物語なのだ。うまく云えないが、本書
は価値の転換期を生きのびてしまった不幸な人たちの話なのである。


多呂さ(山手線の新駅が「高輪ゲートウェイ駅」だって・・・・・。ばかじゃ
ないの?と思っている人の方が圧倒的多数であることを望みます。)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ― 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510

・『支え合い・学び合いで育つ「わたし」』(エディット・パルク)
  http://web.kyoto-inet.or.jp/people/cogito/%8Fo%94%C5%88%C4%93%E0/%8Ex%82%A6%8D%87%82%A2%81E%8Aw%82%D1%8D%87%82%A2.html

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
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・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

 〒142-0041 東京都品川区戸越5-4-3 アズ品川ビル4階
       ビズナレッジ株式会社内 [書評]のメルマガ 献本 係

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンや楽天などのオンライン
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 は当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願いしま
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 ました。書評は500字以上でお願い致します。)

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 完全に時事ネタだと思うので敢えて触れておきますが、山手線の新駅の名称
が「高輪ゲートウェイ」となり、あちこちで騒ぎになっています。JRが不動
産事業に本気に乗り出した感があって、駅という公共なイメージとの違和感が
あって、心理的抵抗があるんでしょうかね。もし、名前で不動産価値が上がる
のであれば、JRさんもどんどん駅名の改名をしてくれると、路線図が面白い
ことになりそうです。

 ふと思ったんですが、「池袋ウエストゲートパーク」と言えば「池袋西口公
園」ってことですよね。ってことは、「高輪ゲートウェイ」は「高輪口道」っ
て意味なんでしょうか。あるいは、英語の「ゲートウェイ」で「入り口」とい
う意味もあるようなので、こっちを採用すれば「高輪入口」でしょうか。

 海外の人が英語で見たら、何で騒いでるのかわかんないでしょうね。

 この際、ビターバレー、ナイチンゲールバレー、ブラックアイズ、ホワイト
アイズ、アッパーフィールド、ゴッドライスフィールド、とか、他の駅名の英
語名も、漢字から訳し直しちゃえばいいんじゃないでしょうか?

 あ、そうなると新宿は、ニューホテル?(あ)

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[書評]のメルマガ vol.666

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■コンテンツ
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★「トピックス」
→ トピックス募集中です

★「音楽本専門書評 BOOK’N’ROLL」/おかじまたか佳
→ #100『山口百恵は菩薩である』

★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→ 『医者が教える食事術』(牧田善二著 ダイヤモンド社)

★「目につく本を読んでみる」/朝日山
→ 今回はお休みです

★【募集中】献本読者書評のコーナー
→ 献本お待ちしています!

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#100『山口百恵は菩薩である』

 というわけで、今回が#100。

 せっかくだから何か100に因んだ本を、と思ったのだが、まず浮かんだのは
ベスト100系のディスク・ガイド。これはいろいろ出ている。
 しかしディスクの紹介なので資料としての側面が強く、書評するというもの
でもない。そのCD入れるなら、むしろこっちだろ、みたいな盤の選択に難癖
つけるくらいが関の山だ。
 ちょっと変わった切り口のディスク・ガイドというものもあって、例えばウ
チには『ひとり』という本があり、これは一人で聴くのに相応しいディスクば
かりを集めた本。このタイプならそのコンセプトが評価の対象にもなるけれど、
残念ながら特に100にこだわっていなかったりする。

 あるいは、100年、というのもある。
 同じく手元にある本だと、まさに『日本レコード100年史』というタイトル
が目につくのであるが、これも資料的には面白いけれど、本としてどうか、と
言われると疑問がある。

 そこでふと、100を「百」と漢字にしてみた。すると!

 われわれ世代の必然により、するすると「百恵」という名前が浮かんでくる。
もちろん、山口百恵である。

 そうか、この手があったか、と山口百恵に関する本を思い起こせば、やはり
本人の自伝『蒼い時』もしくは、本書、平岡正明『山口百恵は菩薩である』に
止めを刺すだろう

 平岡正明は、左翼思想家であり、ジャズ評論家であった。
 ぼくが中高生の頃にはまった筒井康隆の交友圏内におり、ジャズ・ピアニス
ト山下洋輔やタモリらと共に、さまざまな活動をしていた。とりわけ全日本冷
やし中華連盟・略称、全冷中が印象深い。
 真冬に中華屋へ入った時、誰かがふと冷やし中華が食いたい、と言い出した
が、もちろん夏しかやってないと断られ、ならば冬でも冷やし中華を食える日
本にせねばならぬ、と決起され、やがて冷やし中華の歴史的研究だの、冷やし
中華における階級闘争だの、と暴走、拡大、ついには日比谷の野外音楽堂で全
冷中の大会まで開くに至った、まだ学生闘争の余塵くすぶるあの時代ならでは
の壮大なムーヴメントであった。

 また、以前当欄で、急死の報に触れて取り上げた音楽評論家・中村とうよう
の主宰した雑誌『ニューミュージックマガジン』後に改称して『ミュージック
マガジン』でも、平岡正明の名を見ることがあった。
 ごりごりのモダン・ジャズを信奉し、六十年代の学生運動の熾火を永遠に燃
やし続けた硬派の論客の文章は、異彩を放っていた記憶がある。

 その平岡正明が、山口百恵を論ずる、というより礼賛する本を出した。1979
年のことである。『山口百恵は菩薩である』という刺激的なタイトルであった。

 けれど、読むには至らなかった。
 十代の小僧にとって仏教は敷居が高いというか、正直抹香臭くて縁遠く、ま
た山口百恵は時代のスーパースターであり、いくつかの歌は好きだった上に、
「プレイバックPart2」が入ったアルバムを持っていたにも関わらず、そこま
で真剣に聴き込む対象とも思えなかったからである。
 まあ、あれはテレビで見るもんでしょ、という歌謡曲軽視、ロック重視の若
気の至りだ。
 結局、未読のままいまに至った。

 だが、こちらもいい加減大人になって仏教にも多少の関心を持ち、歌謡曲の
すごさも理解できるようになっている。そろそろ本書を読んでもいい頃だろう
と思い探してみると『山口百恵は菩薩である 完全版』というものが出ていた。

 原著の出版は先述の通り1979年。この時まだ山口百恵は現役で、最新シング
ルは「しなやかに歌って」であった。
 文庫版は1983年。この時はもう三浦友和と結婚、芸能界からすっぱり身を引
いており、その引退フィーヴァーまでの期間に発表された原稿が増補されてい
る。
 しかし、それ以降も平岡正明の百恵熱は去らなかったと見え、さらにいくつ
かの文章を書き、対談もしていた。それらを四方田犬彦の編集で網羅したのが、
この完全版なのだという。
 弁当箱のように分厚い本だが、この容積こそ、平岡正明の言葉の熱量を収容
するのに相応しい。

 冒頭いきなり著者は、108もの数に上る、山口百恵に関するテーゼを読者に
突きつけてくる。

 その結論はタイトル通り、「山口百恵は菩薩である」なのだが、重要なのは、
ここで言う菩薩が「地涌(じゆ)の菩薩」であることだ。
 天から降臨するのではなく、文字通り地面から涌いて出てくる菩薩。末法の
世には、無数の菩薩が地から現れ、衆生を救済するという教えがあるのだそう
だ。
 山口百恵は母子家庭に育ち、生活保護を受けながら貧しい暮らしを送ってい
た。つまり、プロレタリアート階級の生まれである。14歳でオーディションに
応募し、歌手を目指した動機も、明確に生活のためだった。
 この階級を、著者は「地」になぞらえ、そこから出現した山口百恵が、いま
や自らの生活を支えるだけでなく、その優れた歌で同じプロレタリアート大衆
の魂を浄化し、救済していると主張する。
 ゆえに、山口百恵は「地涌の菩薩」なのである。

 このことを著者は理論で積み上げたのではなく、直感した。だから、本書の
冒頭は証明を省き、断定のみを列挙するテーゼのスタイルで書かれているのだ。
ライプニッツの『モナド』やヴィトゲンシュタインの『論理哲学論考』と同じ
形式である。

 そしてそれに続く章で、詳細な音楽的分析や歴史的な検証を後から施し、テ
ーゼを裏付けていくのであるが、舌を巻くのはその視野の広さだ。

 まず空間的に、グローバルな認識がある。
 世界革命の戦略が論じられていた時期だからか、取り上げられる歌手は日本
国内に留まらず、韓国・香港・台湾と東アジア全域に及んでいる。

 さらに時間的には、戦前戦後の歌謡史を一望している。
 大雑把にまとめるなら、中山晋平らによる大正演歌の時代の後、韓国メロデ
ィーを導入した古賀政男による艶歌の時代が訪れ、それが美空ひばりを得て戦
後の歌謡界を支配するのだが、その後を襲うはずだった西田佐知子と李成愛が
道半ばにして結婚引退、その空白を埋めるように山口百恵が登場して歌謡界の
新たな女王となった、という流れである。

 また、同時代認識も周到だ。
 山口百恵のライバルとしてピンク・レディーを措定し、彼女たちのことも詳
細に分析している。結構ピンク・レディーの、それもケイちゃんのファンであ
ったりもする。しかし、かつて古賀政男と組んだ美空ひばりが、服部良一と組
んだブギの女王・笠置シズ子との対決に勝利したように、百恵はピンク・レデ
ィーに勝利する、と捉えている。
 さらに、70年代当時を「女性原理の時代」と見て、こうした時代に男はどう
あるべきかというと、もう三枚目になるしかない、として、その意味でサザン
オールスターズは大きな可能性を秘めていると見抜いている。

 音楽的にも実に多様なジャンルに言及している。
 そもそもの本領であるジャズからは、ジョン・コルトレーンのシーツ・オブ
・サウンド奏法を引き合いに出し、これが山口百恵の唱法と同じだと断じる。
 いくつかの曲のアレンジや曲想が、ジョン・レノンも注目したジャマイカの
レゲであることに注目し、ひばりのマンボに対し百恵はロックンロールを完璧
に消化しているとも述べている。

 とはいえ、左翼革命思想を歌謡曲論に重ね合わせる独特の論法は、やはりあ
の時代ならではのもので、古臭さを感じるのは確かだ。
 例えば、当時歌謡曲が芸能界の体制派だったのに対し、フォークやロックの
世界から反体制として現れたのがニューミュージックだったと思うのだが、こ
れを著者は、中産階級のプチブル的自己欺瞞として切って捨てている。オフコ
ースのコピーに結構な時間を費やしたぼくの青春はどうしてくれる、と言いた
い。
 大体ぼく自身は中産階級の生まれであり、プチブルであって、貧しきプロレ
タリアートにしか優れた表現が出来ないのだとすると立つ瀬がない。やたら闘
争的なものの考え方も相容れない。だから、当時から階級論には必ずしも共感
しなかった。

 にもかかわらず面白いと思ったのは、「I CAME FRON 横須賀」という曲の分
析で、これは四方田犬彦の解説にも触れられている。百恵自身と思われる横須
賀に住む少女が東京へ恋人に会いに行く、その車中を歌っているのだが、さて
この時、彼女は何線に乗っていたか、と著者は問うのだ。
 自由が丘、田園調布がある東横線だろうか? いや、それは中産階級の乗り
物だ。鎌倉、由比ガ浜などかつての別荘地を通る横須賀線? それじゃ特権階
級だ。東海道線なら中立だが、やはりプロレタリアートの菩薩である以上、百
恵は京急線を使ったに違いない。これが著者の結論である。
 なぜなら京急線は歴史の最も古い私鉄で、運賃が安いからだ。これこそがつ
ましいプロレタリアートの少女のお小遣いに相応しい乗り物である。

 なるほど!と唸らざるを得ない。もっともこの後百恵は、「いい日旅立ち」
で国鉄のキャンペーンを担うんだけどね。

 いまはとんとお目にかからなくなった、階級なる言葉。それが、あの頃はま
だ生き残っていた。
 そして続く80年代。
 なんとなくクリスタルになった日本人は、バブルに向かって好景気を貪る内
に、いつか忘れていった。

 しかしいま、世の中は格差社会だという。
 はっきり階級社会だという声もある。
 海の向こうのアメリカでも、反トランプ陣営に、これまで社会主義的として
拒絶されてきた国民皆保険などの政策を掲げる政治家が登場しているという。

 かくて時代は巡った。年が明ければ、1月生まれの「山口百恵は還暦である」。

平岡正明
四方田犬彦・編
『山口百恵は菩薩である 完全版』
二0一五年六月九日 第一刷発行
講談社

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
来月、ヴォイストレーニング教室の発表会があるんですが、そこで「いい日旅
立ち」を歌う生徒さんがいて、ギターの伴奏を頼まれました。不思議に山口百
恵づいているこの頃です。ちなみにこの曲、平岡正明の評価も高いです。「秋
桜」はぼろくそだけど。

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■「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
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健康本を読むためには「読者リテラシー」が必要
『医者が教える食事術』(牧田善二著 ダイヤモンド社)

 前からうすうす思っていたのですが、一般人は医者という言葉に弱くないで
すか? 権威に弱いのは衆生の常。現在、衆生がひれふす権威をあげるなら、
そうねえ、IT、AI、東大、そして医者かな。テレビを見ていると健康番組
で白衣を着た医者がやれヨーグルトを食えとかオリーブオイルを垂らせとか言
ってますが、「ほんまかいな」とおばちゃまは思うの。同じ油なのに、なんで
菜種はだめでオリーブならいいのかさっぱりわかりません。同じ砂糖なのに茶
色はいいもんで白は悪魔・・・なんでやねん!

 医者の健康常識を疑うようになったのは、ある医者と雑談していて、次の2
つを聞いたから。1つめは「エビデンスなんて作れるんですよ」というもの。
最初からこのデータが欲しいと思ってそのように実験したら、欲しいデータは
出てくるものだとそのドクターは言いました。そうなん? 

 もう1つが「医者は栄養の知識はないんですよ」という別のドクターの発言。
「医学部の授業に『栄養学』はありませんからね」。そういえばそうかも。み
なさん試しにどこでもいいから医学部のHPを開いてカリキュラムを見てごら
んさい。英語から解剖までびっしりですが、栄養学はない(健康科学はある)。
それに医者ってたいてい進学校出身だから家庭科なんて適当に履修しているで
しょ? もしかすると元良妻賢母系の女子校で高3になっても家庭科系の科目
を週3で取ってたおばちゃまよりも、栄養の知識って無いんじゃない?と疑っ
てしまいます。

 さて、それで読んだのが「医者が教える食事学」といいうベストセラー。
「ちまたの健康情報はうそだらけ。生化学×最新医療データ×統計データから
医学的エビデンスに基づいた本当に正しい食事法を1冊に網羅」(帯より)し
て60万部突破。

 最初に言いますが、これは嘘くさい本ではありません。著者は糖尿病が専門
のドクターなので、「血糖値」を手がかりにして病気や健康を考えるというス
タンス。カロリーや脂質を軸にした考え方とは別のアプローチをしていて、そ
のへんを読むと説得力があり「なるほどね」と納得できます。ここの軸がしっ
かりしてるから60万いったのね。

 病気になる原因の9割は血糖値にあるから血糖値が高かったり、急激に上下
すると体にダメージを与えるそうです。ふむふむ。

 しかし、食事学を網羅しようとするあまり、本の後半になると、おばちゃま
のほんまかいなを刺激する文章が続々出てきます。

 その1つが白ワイン。「白ワインはやせる」という論文が2004年にドイツで
出てそれは白ワインには酒石酸がたくさん含まれているからで、「私も夕食時
には白ワインをのんでいるが翌朝の血糖値がかなり低くなることは私自身が実
感としてわかっています」とまさかの1人エビデンスを展開。このあたりにな
ると専門外のネタ(ネタって・ww)が混在してきて「ほんまかいな」です。
でもこれは、たくさんの情報を網羅したいという編集側のもくろみでしょうけ
れどね。わかるよ、わかるよ。

 この本を読んでわかったことは、血糖値を上げることと上下させることはよ
くないこと、缶コーヒーやジュースを過剰に摂るのはよくないことなどの健康
情報が1つ。
 そして、多くの健康情報の中から、納得できるものだけを選んで実行するリ
テラシーが読者にも必要ということです。

 この本の最終章で著者は、いいことを言っています。それは患者にもリテラ
シーが必要ということ。
・腕のいい料理人とそれほどでもない料理人がいるように、医者もピンキリ。
・糖尿病医なのにアルブミンの検査をしないのはありえないように、外科や内
科も広い視野で判断することが今は必要。
・大きな病院にいい医者がいるとは限らない。大学病院には研修医がいっぱい。
ほんとにそのとおりです。

 これそのまま、健康本にも言えます。

 患者と同じように、読者も本に書いてあることをうのみにしないで、何がホ
ントで何が嘘くさいかを取捨選択する「読者リテラシー」が必要。この本で実
感しました。


大友舞子(おおとも・まいこ)
昭和20年代生まれのフリー編集&ライター。関東生まれで関西在住。
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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ─ 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510


 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
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 表題【読者書評参加希望】
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 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

 〒142-0041 東京都品川区戸越5-4-3 アズ品川ビル4階
       ビズナレッジ株式会社内 [書評]のメルマガ 献本 係

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンや楽天などのオンライン
 書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。つまり
 は当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願いしま
 す。(あまりにも短いものは書評とは呼べませんので、文字数の条件を設け
 ました。書評は500字以上でお願い致します。)

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 ここ1年くらい、あるメンバーでオンラインの読書会をやっているのですが、
これがなかなか面白い。先日は知人の著者を招いて行いました。

 オンライン読書会はひとりでは絶対読み切れそうにない本を読めるのと、ネ
タ切れにならないのが良いところですね。(あ)

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[書評]のメルマガ vol.665

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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<107>すべての「中」は、秘境である

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→89 芸術の贈り物

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第106回 英国と長崎。パラダイムの違いを考える小説

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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・ワック株式会社 営業部 武田善様より、下記の本を献本いただきました!

 渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

 ありがとうございます!

 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<107>すべての「中」は、秘境である

 のちに映画化もされ、第五回“手塚治虫文化賞辞退作”でもある花輪和一
『刑務所の中』は、著者自身の「獄中記」漫画である。
 単行本が青林工藝舎から発売されたとき、そのオビには、この漫画の舞台で
ある刑務所を指して「ニッポン最後の秘境」という文字が躍っていた。
 本が刊行された2000年当時は、「なるほどな…」と思った惹句だった。

 が、この度、各務葉月『食品工場の中の人たち』(KADOKAWA/エンターブレ
イン)を読んで、刑務所のみならず、すべての「中」あるいは「現場」という
のは、たいていの人にとって「秘境」なのではないか? と思えてきた。

 『工場の中の人たち』は、著者の各務さんが、実際に食品工場…デパ地下で
店舗展開する洋菓子工場だったそうだ…で現場の作業員としてして働いた、そ
の体験を事細かなルポ漫画に仕立てて、これをコミティアなどの同人誌イベン
トで販売していたところ、出版社の目にとまり、改めて加筆、描き下ろしを加
えて一冊にまとめられたもの。

 各務さんは、おそらくは女性だと思うのだけど、その各務さんの「分身」で
ある主人公は、なぜか「市井くん」という男性。
 市井くんは、在学中に就職が決まらず、その後アルバイトでも不採用が続き、
とりあえずの「無職」脱出のために、「他人が応募しなさそう」かつ「きつく
なさそう」なアルバイトを物色した結果、洋菓子の製造工場に応募し、採用さ
れる。

 「とりあえず」のつもりで選んだ職場だったのだが、そこでのルールや価値
観は…ことに「衛生管理」と「安全」に関しての、過剰とも思える規則が事細
かに取り決められており、まるで別世界。
 実は、わしも1日単位で計5回ほどだが、某コンビニチェーンの弁当及び惣
菜を製造する工場に派遣で入ったことがあるので、読み進めるうちに、「そう
そう、そうなのよ」「あ〜〜、やっぱり」と共感する部分がとても多かったの
だった。

 市井くんが、工場に入ってまず戸惑ったのが、服装。
 上下真っ白の制服にエプロン、頭にはネット付きの帽子、足元は消毒済みの
白長靴、作業場に入ったらマスクは絶対にはずせない。
 わしが経験した工場も、これと同様だった。
 まあ、そのまま街を歩くには、ちょっと勇気のいる恰好で、市井くんは、
「この服で作業するんだよな…」と若干へこんだようですが、わしは、それ以
前にもっと「変」な制服の現場を経験してたので、割と平気だった。

 わしが経験した中では、食品工場や製粉工場の、穀物や粉のサイロを専門に
清掃する業者…そもそもそんな業種があるのも、派遣で行って初めて知ったの
だけど、そこの「制服」が凄かった。
 よくテレビのコント番組で見るボディタイツのような、真っ白の身体にぴっ
ちりした上下。足元はこれまた真っ白なズック靴で、頭にはやはりネット付き
帽子で、これも白。
 高所に昇るときには、これに白いヘルメットを被って、腰に安全帯を装着す
る。
 サイロへの梯子を昇りながら、「暗黒舞踊かよ…」と思っていたのだった。

 サイロ内部には、ロープと「ブランコ」と呼ばれる器具を使って入る。もち
ろん、わしら派遣にはそんな危険な作業は割り振られなかったが、ここでもや
はり、安全管理は徹底していて、サイロやタンクの中に入る前には、必ず測定
器を下ろして、酸素濃度を確認してから入っていた。
 現場の工場に着くと、作業に入る前に工具や器具を全てシート上に並べ、一
点ずつホワイトボードに記載して、作業終了後には再び工具と器具を並べて、
ホワイトボードと照らし合わせ、紛失や忘れ物がないか確認してから引き揚げ
ていて、これまた安全管理の一環。とにかく徹底していた。

 ここの職人さんに聞いた「一番しんどかった現場」というのは、チョコレー
ト工場のカカオのタンクだそうで、全身ドロドロになった上に、帰ってシャワ
ーを浴びた後も、全身からチョコレートの匂いが発散してたそうだ。

 某有名製粉会社の巨大な工場では、やや天井が低く、その階全体が一室とい
うだだっ広いフロアがあって、その広い室内いっぱいに、直径50センチから1
メートルほどのパイプが縦横ナナメうねうね曲がりくねって絡み合い、その内
部を穀物や粉が高速で流れる音が「ごーーーっ」「がーーーっ」「ずざざざ〜
〜〜っ」と空気を震わせながら轟きわたっていて、なんだか、巨大な生物の内
臓を見ているようだった。

 この工場の内部も、かなり広いうえにどの階のどの部屋も同じような景色で、
何度か迷ったのだが、「市井くん」もまた、勤め始めた当初は、工場内でよく
迷ったみたいだ。
 わしが経験したコンビニの総菜工場でも、それぞれ一日だけの勤務だったこ
ともあり、休憩に出たのち、元の作業場がどこだかわからなくなって焦る…と
いうことが、一再ならずあった。

 「市井くん」も当初は戸惑ったようだが、作業場へ入室する際の「手洗い」
「消毒」「粘着クリーナー(コロコロ)」「エアシャワー室」という手順も、食
品工場に独特だ。
 「市井くん」の工場では、エアシャワー室では「体を4回転」というルール
もあったようだが、わしが経験したところでは、そこまでの取り決めはなかっ
た。

 「トイレ」もまた、食品工場では厳密に管理されていて、トイレに入る際に
は、「前室」でまず長靴を脱ぎ、専用の履物に履き替えるのは当然なのだが、
用を足し、手を洗っていざ出ようとすると、ドアが開かない。
 押しても引いてもびくともしなくて焦る間に、トイレのドアを内部から開け
る際には、備え付けの消毒スプレーを手に噴霧してからでないと「開かへんか
らね」と言われていたのを、ようやく思い出した。
 消毒スプレーを作動させるのが、ロックの解除スイッチになってるのですね。
 「市井くん」の工場でも同様だったようで、どうやらこの仕様は、食品工場
ではスタンダードのようだ。

 衛生管理では、「市井くん」の工場では、毎月2度の「検便」が義務付けら
れていたようだが、わしの場合はいずれも1日限りだったので、これはなかっ
たけど、長期契約になると、やはり同じように義務付けられていたかと思う。
 わしが経験した工場では、着替えが終わって作業場に入る前、廊下の一隅に
机を構えた係員によるチェックがあった。
 服装がきちんとしているか点検された上で、手に出血を伴う怪我が無いか確
認される。
 作業では必ず手袋をするのだが、それでも、怪我をした手で作業をするのは
NGらしくて、手に傷があるのが理由で、その場から帰された人もいた、とは、
同じく派遣で入った人から聞いた。

 わしの場合、ここでいつも引っかかっていたのが「ヒゲ」だった。
 わしは、口髭と顎髭を伸ばしているのだが、これは本来なら「NG」だそう
で、毎回、「う〜〜〜ん…」と難しい顔をされながら、1日限りだから、とい
うことで「マスクは絶対に外すな」という条件付きでOKをもらっていた。

 『食品工場の中の人たち』の序文で、作者の各務さんは、

 「総菜工場勤務の方からは、「こんなになまやさしくない!」と思われるか
もしれません」

 と書いていたが、確かに、各務さん…「市井くん」が勤務した工場は、夜勤
もなく、製品が「ケーキ」ということもあるのか、かなり優し気な雰囲気だっ
たようだ。
 わしが経験した総菜工場は、24時間体制の交代制で、ことに深夜勤などの場
合、工場のあちこちから、なにやら「ぴりぴり」「ぎすぎす」という空気が流
れてきた。

 「市井くん」の工場にも、「日本語のわからない」労働者がある程度いたよ
うだが、わしが行った工場は、むしろ日本人より外国人の方が多い職場だった。
 最寄りの駅から送迎バスで工場へ行くのだが、そのバスの中からすでに、各
種の注意事項がすべて「日本語」「中国語」「ポルトガル語」併記で書かれて
いて、これは工場内でもそうだった。
 バスに乗っている人たちのほとんどは、中国語あるいはポルトガル語らしき
言葉で声高に喋っていて、日本語はどこからも聞こえてこない。

 ある時、わしが「ここに入って」と言われた弁当のラインは、主に中国人の
グループに任されていて、そのリーダーらしき人から、「あんた、中国語、わ
かるか?」と訊かれ、「いいえ…」と答えると、「ち」と小さく舌打ちされた。

 注意して見てみると、どうやらラインごとに、中国人だけ、ブラジル人だけ、
という風に割り振られていることが多いようで、その方がお互いのコミュニケ
ーション面からも、作業効率が高いんだろう。
 が、「民族間対立」もあるようで、ことに深夜の時間帯など疲れからくるイ
ライラもあるのだろう、お互いの作業の進め方をめぐって、中国人グループと
ブラジル人グループの間で、言い争いから殴り合いにまで発展することもある
…とは、やはりわしと同じ会社から派遣されていて、過去に何度もここに入っ
ている人から聞かされた。

 やはり食品関係なのだけど、神戸港内にある倉庫会社…主に輸入品および国
産の野菜や果物を扱っていたが、ここが持っていた保税倉庫の中で、中国から
輸入した生姜の「土を落とす」という作業にも、従事した。
 1000ケース以上は倉庫内に積み上げられていたと思うのだが、この生姜は食
用ではなく「種生姜」で、中国で船積みされる前に洗浄されてケースに詰めら
れたのだが、その洗浄が不十分で、「土が付いている」と、全ケースが検疫所
から差し戻された品なのだった。

 周知のとおり、「土」を国外から持ち込むのは、量の多少にかかわらず防疫
法により絶対的NGで、なので、法的にはそこはまだ「国内」ではない保税倉
庫内で作業する必要があったのだった。
 しかし、保税倉庫内とは言え、この生姜にこびりついた土を水で洗い流して
しまうと、その土は下水から国内に「不法侵入」することとなり、できない。

 で、どうしたかと言うと、5台ほど並べた作業台にクダンの生姜を、段ボー
ルのケースからどさっと広げて、1台の作業台あたり5〜6人が取り付いては、
ひたすら生姜の土を、手にはめた軍手で拭って落とす。
 生姜ってのはでこぼこで、あちこち出っ張ったところの隙間に土が入り込ん
でいるので、これは「ぱきっ」と折ってこする。
 ぱきりと折って擦る、折っては擦る、をひたすら繰り返す。
 食用ではない種生姜なので、小さく折っても全然問題ないのだった。

 生姜は、作業が終わったものからケースに戻していき、全部の生姜を処理し
終えると、ケースをガムテープで封印し、次のケースにかかる。
 作業台の上に落とした土は、作業に使った軍手ともどもかき集め、ビニール
袋に封入して、これも生姜とともに後日検疫所に提出する。

 わしは毎日通っていたわけではないが、人海戦術で都合5日間ほどもかかっ
て、すべてのケースを処理し終えたようだった。
 一緒に行った派遣の同僚は、一日目が終わった時点で「もう、生姜の匂いを
嗅ぐのも、イヤ…」と言っていたが、わしは、普段まず入れない保税倉庫の中
をあれこれ見られて、結構面白かった。

 この倉庫会社では、こちらは国産だったが、玉ねぎを、ひたすら3個ずつの
ネット詰めにしては段ボールに詰めていく…という作業もやったが、これは、
かなりきつかったです、はい。
 3個入りネットが…あれはいくつくらい入っていたのか、とにかく入るだけ
詰め込んだ段ボールは、かなり重くてパレットに摘むのも一苦労だし、しかも
その量が半端ないんだ……
 特大の段ボールに箱詰めされた玉ねぎは、パレット20台以上だったと思うの
だけど、某大手スーパーに納品されたそうだ。

 倉庫会社では、段ボールの大きさと形状から、一番適切なパレットへの積み
方を、一目見ただけで「ぱぱっ」と決めていく社員の人たちを、「プロやなあ
…」と眺めていたのだが、いずれの職場でも、その職場独自の「プロの技」と
いうのがあって、派遣のおかげでいろいろな職種でそれぞれの「技」を垣間見
ることができて、いちいち感心もしたのだった。

 前回に言及した曽根富美子の『レジより愛をこめて』しかり、また『いちえ
ふ』しかり、そして各務葉月さんもまた、そんな「技」に新鮮な驚きを感じた
のが、それを漫画化しようとするきっかけになっているのだと思う。

 我々が、普段何気なく使ったり食ったりしている量産品は、その裏側で過剰
とも思える厳密な衛生管理と安全管理のもとに製造されていて、それこそが、
いわゆる「ニッポンのモノ造り」を支える原点なんじゃないか、とも思えてき
た。
 大量生産の、その製造現場というのは、日本最大の「秘境」であるのは、間
違いない。
 その「現場」をルポするお仕事漫画、これはもっといろんな業種のそれを、
読んでみたいぞ。

 ちなみに、わしが経験した「現場」では、宇宙ロケットや原子力発電プラン
トも製造している財閥系造船所での経験も、なかなかに興味深かったのだが、
こちらはまた別の機会に語らせていただきたい、と思う次第であります。


太郎吉野(たろう・よしの)
 2011年に神戸から西宮へ引っ越して、ただ今のホームグラウンドは甲子園。
右投げ右打ち。掛布二軍監督はひとつ年上の同級生。

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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89 芸術の贈り物

 『ルイーズ・ブルジョワ 糸とクモの彫刻家』
  エイミー・・ノヴェスキー 文 イザベル・アルスノー 絵
  河野万里子 訳 西村書店

 イラストレーター、イザベル・アルスノーの作品をひとめみたときから、こ
れは追いかけて読みたい絵本作家だと注目してきました。グラフィック・ノベ
ル『ジェーンとキツネとわたし』も2015年にメルマガで紹介しています。

 今回の絵本は彫刻家ルイーズ・ブルジョワの生涯を描いたもので、エイミー
・ノヴェスキーが文章を書いています。

 芸術家の評伝と絵本はとても相性がよく、ルイーズの芸術の本質が別のアー
ティストによって違う色彩で輝き、印象づけられます。

 母親はタペストリーの修復を仕事としており、ルイーズは12歳になると、母
親の仕事をおぼえはじめ、修復の線や下絵を描くようになります。修復が必要
なタペストリーのすその部分だったので、必然的にすその部分――人の足を描
くのが上手になったそうです。

 母と一緒に修復の作業をしたことは、ルイーズの原点となり、大学では数学
を専攻したにもかかわらず、母親が亡くなったあとは、修復する――つなぎあ
わせ、完全なかたちにもどす――ことを仕事にしていきます。

 しかし、母の死はルイーズの未来を変えました。

 絵を描き、織物を織っても、母に会いたい気持ちはおさまらず、
 彫刻でそれはそれは大きなクモをつくるようになります。
 ブロンズや鉄など様々な素材でクモをつくり、題を「ママン(おかあさん)」
とつけました。

 32歳のときにタペストリーの個展をひらき、6年後に初の彫刻作品を発表。
71歳のときに、ニューヨーク近代美術館(MOMA)で開催した回顧展でとう
とう世界的に認められたのです。

 ルイーズは子ども時代の思い出が、創作におけるインスピレーションの源と
語っており、なぜ「クモ」を題材にしているかも絵本で紹介されています。

 アートを強く感じる本書は子どもにも大人にも刺激を受ける一冊としておす
すめです。


 『せん』
  スージー・リー 岩波書店

 そぎ落とされたシンプルな線で描かれた絵本。
 スージー・リーは、デッサンの線から豊かな物語を絵で語りかける作家です。

 赤い帽子をかぶった少女はスケートでリンクに美しい線をつけていきます。

 見開きの白いページで少女はすべるのですが、あら、スケートリンクだと思
っていたのは紙??と疑問符がよぎる、少しトリッキーな展開のあとは「せん」
のもたらす妙味に唸らされるのです。

 サイレントムービーのように言葉なく「せん」のみで描く少女のスケート世
界の豊かさに、みているだけで満足感がこみあげます。


 最後にご紹介するのは、うれしい復刊絵本。

 『オレゴンの旅』
  ラスカル 文 ルイ・ジョス 絵 山田兼士 訳 らんか社

 セーラー出版で刊行されていた『オレゴンの旅』が復刊です。
 (ご存知と思いますが、らんか社は2013年にセーラー出版から名前が変更に
なった版元です)

 星のサーカス団でデュークはオレゴンという名のクマと友だちになります。
 オレゴンはデュークに大きな森に連れていってほしいとお願いします。

 デュークはクマのオレゴンが口をきけることに驚くものの、願いをかなえる
べく、ふたりでサーカス団を離れることに同意します。

 デュークはピエロでした。そしてピエロの恰好のまま、オレゴンと旅をしま
す。

 ヒッチハイクをしたとき、運転手のスパイクはデュークになぜ赤いハナつけ
おしろいをぬっているのかたずねます。


 「顔にくっついてとれないんだ。小人(こびと)やってるのも楽じゃないん
だよ…」 
 「じゃあね、世界一でかい国で黒人やってるのは、楽だと思うかい?」


 どのページもタブローのような完成度で、
 少しもの悲しさをただよわせる旅の空気感がリアルです。

 オレゴンとの約束を果たしたあとのデュークがとてもかっこいいので、見て
ほしい。

 10代の本棚におすすめしたいとらんか社さんからのメッセージなので、我が
家の高校生の娘っこと一緒に読んだところ、

 「かっこいいー!」

 オレゴンの旅の絵本が放つメッセージをひとりの高校生には伝わったようで
す。


(林さかな)
会津若松在住
http://1day1book.strikingly.com/

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第106回 英国と長崎。パラダイムの違いを考える小説

 昨年のノーベル賞作家の本を読む。カズオ・イシグロ。彼の本は何年か前に
小欄で『私を離さないで』を取り上げた。今回は彼の長編処女作。
 読んでいる最中、どう読んでいいのか、わからなかったし、読み終わった今、
どう読んだのか、これまたよくわからない。不思議な作品だった。

『遠い山なみの光』(カズオ・イシグロ 著)(早川書房)
(ハヤカワepi文庫)(2001年9月15日 文庫初版)
(2015年12月25日 九刷)
  (『A PALE VIEW OF HILLS』(Kazuo Ishiguro)(1982))

 原爆投下と敗戦の傷も癒えぬ戦後の長崎と豊かで静かな現代の英国の田園地
帯を行ったり来たりして物語が進行している。

 常に一人称で語られており、その一人称の悦子さんは戦後の長崎で生活して
る悦子さんであり、現代の英国に住んでいるエツコさんであり、同じ人物であ
ることが、読んでいてもどうしてもつながらないのだ。

 それは、あまりにも環境が違い過ぎているからなのだが、長崎で日本人とし
て生きている身重の悦子さんと英国の田園地帯で子どもも成長している英国籍
になっているであろうエツコさんが重ならない。

 一人称で語る物語なので、なぜ長崎にいた日本人の悦子さんが年を経て英国
で英国人として生きているのか、わからない。周辺情報がすくない。

 長崎での悦子さんには日本人の緒方二郎という夫がいる。しかし英国でのエ
ツコさんには夫がいる様子はない。おそらくエツコさんの夫は英国人であり、
死別か離別しているのだろう。

 むろん長崎の悦子さんも二郎と死別か離別した後、英国人と結婚し、その間
に生まれたハーフの女の子、ニキ。英国サイドで登場するのは、エツコとニキ
だけ。

 そして、ニキの上にもうひとり娘がいて、彼女の名前が景子。日本人。

 ということは、景子は緒方二郎との間の子であり、長崎サイドでは悦子さん
のお腹の中にいた子、ということになる。

 しかも驚くべきことに景子は、英国で引きこもりから自殺してしまった。ニ
キは景子の妹。ニキが景子のことをどう思っているかは、注意深く読まないと
わからない。姉として肉親の情愛は感じているだろうが、なにか他人行儀なと
ころがある。

 それは母親のエツコさんにも云えるのだ。娘の死、しかも自死した娘に対し
てエツコさんは冷静すぎる。

 英国のエツコさんは物事の見方が斜めであり、ニヒリズム的なのだ。

 長崎の悦子さんは、本当に日本の女性を感じさせる。一歩下がり夫と義父を
立てる日本の女性。

 長崎サイドでは、悦子さんの傍らにふたりの女性が登場する。佐和子と万里
子。佐和子は母であり、万里子は娘。この母娘が不思議な母娘であり、万里子
の父親は誰なのかは語られていない。戦後の日本だから、夫は戦死しているか
もしれない。

 いずれにしても英国のエツコさんと同様に佐和子は夫と死別か離別かしてい
て夫がいない。叔父の家で居候するか、アメリカ人のボーイフレンドと一緒に
アメリカに行くか、迷っている佐和子は悦子さんに比べるとよほど行動的では
あるし、戦後の一時期の日本女性のひとつの典型であろう。誤解を恐れずに書
いてしまえば、佐和子はパン助なのである。

 本書を読み進めて、最終盤にかかる頃、たぶん読者は誰でもこう思うだろう。

 もしかしたら、長崎の佐和子は英国のエツコであり、自死した景子は、万里
子なのではなかろうか、と。

 そう考えるとすべての辻褄が合う。英国のニヒルなエツコは、長崎の佐和子
のものだし、精神的に不安定な万里子は、物語の中で最後まで、外国に行きた
くない、と云っていた。そして孤独な景子は英国で自殺した。

 そうなると、悦子さんは誰なのか? エツコさんの創作なのか、それともエ
ツコさんこそが佐和子による創作なのか。なにがなんだかわからなくなる。

 しかし、あくまでもエツコさんは悦子さんだったわけで、佐和子とは別人と
して物語は終わるのだ。

 戦争と敗戦で、日本の中で価値観が変わった。きのうの価値はきょうの無価
値になる。まして、原子爆弾で何もかもすっかりなくなってしまった長崎では、
過去のものは何もかもなくなってしまった。1945年に日本は大きなパラダイム
の変換が行われた。それが本書の主題なのだろうと思う。

 英国籍を取得した長崎生まれの著者は、ニキなのか、それとも景子なのか。
自分の意志で英国に渡ったわけではない、カズオ少年は英国に行った当初、ど
んなにか心細かったことか。負け戦の日本、しかも原爆で丸裸になってしまっ
た長崎の記憶を胸に幼いカズオ少年は何を思っていたのだろう。そしてどうい
う気持ちでこの物語を紡いだのだろう。

 ますますカズオ・イシグロという作家に興味が湧いてくる一冊だった。


多呂さ(日曜日から九州場所が始まりますね。モンゴルの二横綱が休場する今
場所では、稀勢の里はどんな成績でしょうか? 優勝は誰になるでしょうか? 
もしかして栃ノ心かな? いずれにしても興味が尽きない納めの場所になりま
すね。)
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さい。

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・『ヒューマン ― 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
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・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
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  http://web.kyoto-inet.or.jp/people/cogito/%8Fo%94%C5%88%C4%93%E0/%8Ex%82%A6%8D%87%82%A2%81E%8Aw%82%D1%8D%87%82%A2.html

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6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 ここのところ一日の寒暖差が大きいですね。乾燥も気になる年頃です。(あ)

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★「音楽本専門書評 BOOK’N’ROLL」/おかじまたか佳
→ 『燃える男』

★「目につく本を読んでみる」/朝日山
→ 『トラクターの世界史』藤原辰史 中公新書

★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→ どうしたニッポン!キャバ嬢の著作が揃ってベストセラーに

★【募集中】献本読者書評のコーナー
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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#99『燃える男』

 多くの方にとってどうでもいい話ではありますが、実は前回も、#99でした。
なんで#99回が2回続くのかといえば、今回で#100だと思って、念のためこれま
でのファイルを確認していたら、なんと#54が飛ばされていたのです。

 #52『音の力 沖縄』#53『禁じられた歌』と来て、#55『風の歌を聴け』とな
っている。
 理由は定かではありませんが、まあ、単純なミスですね。
 ということで、キリ番の#100が2回続くのも、と思い、#99を2回にして、次
から気持ちも新たに#100とさせていただきます。

 さて、今月の本題。
 ぼくの好きな作家に、スコットランドのイアン・バンクスという人がいる。
彼のユニークな点は、一作ごとにジャンルをまったく変えるということだ。

 デビュー作の『蜂工場』は、この題で邦訳があり、日本ではサイコ・ホラー
の秀作として紹介された。主人公は、無人島で父と二人暮らしの少年。だが、
彼には兄がおり、精神病院に入れられている。その脱走を報じるニュースが入
って、次第に狂った兄が島へ近づいてくる予感に怯える物語だ。

 しかし、その後に同じ傾向のものはない。
 昔ながらの自給自足を旨とする新興宗教。その信者だけが住む、田舎のコミ
ューンで生まれ育った少女が、単身ロンドンに派遣されることになり、初めて
見る文明に驚くミステリー仕立ての冒険物語。
 ロック・バンドが成功を収め、スターになり、ドラッグやら三角関係やらで
凋落していく姿を描いた音楽青春小説。
中世を舞台にした歴史戦争物。
 世界的な大企業の重役たちが繰り広げる権力闘争を描いたビジネス小説。
 どこからどこに架かっているのかすらわからないほど巨大な橋の上で、人が
一生を送る異世界を舞台にしたシュールなSF。
 さらに、イアン・M・バンクスという微妙に紛らわしい別名義で、なぜかこ
ちらは壮大なスペース・オペラばかりを書いている。

 この人もぜひ紹介はしたい作家なのだが、残念ながら翻訳が殆どない。

 そこで、本書の著者A・J・クィネルの登場となった。
 この人も、冒険小説というジャンルの枠内ではあるものの、作品ごとに作風
を大きく変えているからである。

 KGBとCIAが対決する本格的なスパイ小説があるかと思えば、実際に起
こった軍事的事件を描いたノンフィクション・ノベルがあり、遭難した息子の
生存を信じる母親が決死の搜索に乗り出す海洋冒険小説がある。

 そしてデビュー作『燃える男』は、傭兵あがりの男とマフィアの壮絶な死闘
を描いている。

 原書は1980年に発表されているので、物語の舞台となるのは1970年代後半と
思われるイタリアである。
 この国では当時、赤い旅団という極左テロ組織が、爆弾テロなど、一連の事
件を引き起こし、国際的にも有名になっていた。いまで言えばアルカイダとか
イスラム国に当たる存在である。特に、彼らによる要人誘拐事件が、日本でも
盛んに新聞紙面を賑わせた記憶がある。

 しかし、誘拐事件の中には、政治目的ではなく、身代金目当ての営利誘拐も
少なくなかった。
 マフィアによる、金持ちの子弟の誘拐である。

 本書では、そんな背景を受けて、富豪の一人娘ピンタに、傭兵あがりのクリ
ーシィというボディガードがつくところから幕が開く。

 この主人公クリーシィの設定がユニークなのは、50歳という年齢にある。
 若い頃に傭兵稼業に身を投じ、以来各地の戦争を転々として、一度も家庭を
持ったことがない孤独な男。
 それが、自分の生き方にふと虚しさを感じ、傭兵を辞めてしまうのである。
 これまでの稼ぎが潤沢にあり、生活には困らない。とはいえ、他にするべき
ことも、したいことも、ない。

 そう、冒険小説の主人公には珍しく、中高年鬱の状態にある人物なのだ。

 ぼく自身も50代。欝とまではいかないし、既に会社は早期退職しているもの
の、クリーシィの心境にはいちいち思い当たるところがある。
 正直言って冒険小説の主人公に、中高年の読者が、かっこいいなとは思って
も共感することはあまりないと思うのだが、本書はそこが違うのである。

 そんなクリーシィにも、同じ傭兵として長年コンビを組んできた唯一の親友
がおり、無聊を持て余す彼を見かねて、ボディガードの仕事を紹介する。
 かくして、クリーシィはピンタのお守役となった。

 ボディガードというロマンチックな存在に興味津々の少女は、この無口で無
骨な中年男に質問の嵐を浴びせるが、無愛想な拒絶に会ってへそを曲げてしま
う。
 しかし、ピンタの明るい好奇心はその程度のことでは怯みもせず、少女らし
い策略をもって、クリーシィの心を開こうとする。

 徐々にピンタと打ち解け始め、生まれて初めて愛情というものを経験するク
リーシィの驚き。
 過酷な戦場を生き延び、人間の暗黒面を見すぎた男が、その対局にある、人
間の明るい日差しを浴びた部分だけを持つ無邪気な少女によって、大きく人生
観を変えていくさまが、清新な感動をもって描かれていて、読む者の胸に忘れ
がたい刻印を残す。

 そうしたクリーシィの、心の変化を象徴するのが、音楽なのだ。

 テネシー州出身のアメリカ人であるクリーシィは、久しぶりに懐かしいカン
トリー・ミュージックを聴き始めるのである。
 いくら傭兵でも、生まれた時から裏切りと殺戮の生活を送っていたわけでは
ない。将来自分がそんな風になるとは、まだ夢にも思わない思春期の頃には、
人並みに音楽に心を預けた時間があったのだ。そのことを、ピンタとのふれあ
いが彼に思い出させた。
 クリーシィはラジカセを手に入れ、一日の仕事を終えて自室でくつろぐ時に
音楽をかけるようになる。それが、ジョニー・キャッシュであり、ドクター・
フックであり、リンダ・ロンシュタットの『ブルー・バイユー』なのだった。

 単にカントリーというだけなく、この三人の名前が繰り返し現れる。
 しかも、他の二人についてはアーティスト名だけなのに、リンダ・ロンシュ
タットだけが曲名を指定されているのが気になる。

 理由のひとつは、この曲が収録されたアルバム『夢はひとつだけ』のリリー
スが1977年で、物語の時代に近いからだろう。

 しかし、それだけだろうか?

 バイユーは流れの遅い小川のことで、アメリカ南部の低湿地帯に多く存在す
る。そこに生息するザリガニは、南部料理の代表的な食材だ。
 歌の主人公は、そのバイユーに、いつの日か帰ることを夢見る、孤独な放浪
者なのである。

 ♪あたしは寂しく、不安におののいている
  恋人を水青きバイユーに置き去りにしてしまってから、ずっと
  日が暮れるまで働き、小銭を貯めて、いつかバイユーに帰るわ
  愛しい人がいて、楽しい人々が集っている、あのバイユーに

 リンダ・ロンシュタットの鼻にかかった声で歌われる、懐かしい故郷アメリ
カ南部。バイユーはその象徴として、クリーシィの心の中をたゆたうように流
れていく。
 そこで過ごした、まだ戦場という地獄を知らず、人間らしい心を失っていな
かった頃の優しい感情が、ピンタの無邪気な愛らしさとこの歌を通して蘇る。

 クリーシィがカセットテープで聴くこの歌を、ぼくも偶然、本書を読む少し
前によく聴いていた。残念ながらウチにあるラジカセは随分前に壊れて、カセ
ットを聴く術がないので、CDではあるのだが。
 そして改めて本書を読んだ後に『ブルー・バイユー』をかけてみると、目に
浮かぶのはアメリカ南部ではなく、物語の主要な舞台となる南イタリア。かつ
て二度ほど訪れたことがある、ナポリやシチリアの情景であった。

 果たしてクリーシィは、少女ピンタをマフィアの魔手から守れるのか。
 ぜひ本書をお楽しみください。


A・J・クィネル
大熊栄訳
『燃える男』
昭和59年7月25日 第一刷
集英社文庫

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
学生の頃、音楽サークルに所属していました。ある日部室へ練習に行くと、前
のバンドがまだ練習中で、リンダ・ロンシュタットの『It’s so easy』をや
っていたのですが、ヴォーカルの女性がめちゃくちゃ上手くてびっくりしまし
た。その後何年もして、テレビから彼女の歌声が流れてきたのです。ドラマ
『金曜日の妻たちへ』の主題歌『恋に落ちて』でした。そう、あの女性は小林
明子さんだったんですね。やはり上手い人はアマチュアの頃からレベルが違い
ます。

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『トラクターの世界史』藤原辰史 中公新書

 サブタイトル「人類の歴史を変えた『鉄の馬』たち」ということで、珍しい
トラクターの歴史の本である。トラクターはどんな形態の農業でも使えること
が多い。それゆえ農業の機械化のシンボルになる存在感を持っている。

 トラクターの機構そのものは単純である。エンジンに走行装置とPTO(Power 
Take-Off)と呼ばれるエンジン駆動力をとりだす口ががあるだけである。しか
しPTOから取り出せる力はロータリーなどを動かして田畑を耕したり、脱穀機
などを動かす動力になる。もちろん作物や肥料なども運べる。要するに万能機
だ。

 当初は蒸気機関で開発が行われ、実際に使われることもあったが、蒸気機関
では使うこと自体が大変だった。しかし内燃機関(エンジン)を動力源にする
と使い物になるようになった。

 日本では時々しか見かけない履帯(りたい。キャタピラ、クローラともいう)
で駆動するトラクターもできていて、これが元になって世界最初の戦車が作ら
れる。言い換えれば、トラクターと戦車は技術的に同根で、トラクターを作れ
る工場は戦車の生産に切り替えるのは容易なのだ。

 そんな解説をしておいたあと、各国史に入る。まずは大国アメリカである。
ジョン・フローリッチという人が1892年に最初の内燃機関トラクターを開発し
たがほとんど売れなくて会社は潰れた。しかし再建された会社がそこそこ成功
し、農機具メーカー「ディア」社が買収するのだが、これがアメリカでよく見
かける緑のトラクター「ジョン・ディア」の始まりだ。

 競合社もいろいろ出てきたが、ディアとインターナショナル・ハーベスター
社(IH社)がぬきんでてきたところに、自動車の巨人フォードが大量生産シス
テムをひっさげて「フォードソン」トラクターで参入してくる。

 貧農出身のフォードとしては、子供の頃から農家の仕事がラクになるものを
作りたいという願望があった。クルマよりもこちらをメインにやりたかったの
だろうが、クルマ事業が大きくなったのでそうもいかなかったのだろう。自動
車同様、フォードが値段をガクンと下げてきたことでトラクターの普及が進ん
だのは間違いない。

 しかし他のメーカーも黙ってみていない。IH社が先に挙げたPTOを開発、フ
ァーモールと呼ばれる中耕に適した設計思想のトラクターをつくれば、ディア
は農家のフィードバックを得てより使いやすいものにしたし、新参メーカーの
アリス・チャルマーズという会社がゴムタイヤのトラクターを作ってトラクタ
ーの乗り心地を改善した。

 そんな他メーカーの攻勢で、しばらく歯が立たなかったフォードは革新的な
3点リンクで逆襲する。3点リンクとは地面の情況によって油圧制御で自動的
に作業機を上げ下げする機構のこと。たとえば波打った農地でも均等に同じ深
さで耕作できるようにする。いや〜読んでたらこのまま「トラクター戦争」と
か歴史ドキュメントができそうだ。

 そんなトラクターもよいことばかりではなかった。当時の技術ではエンジン
の音も振動も大きく、乗り心地が最悪で使うと相当疲れる代物であった。だか
ら乗り心地をよくすることが大変な競争力を持ったのだ。

 また馬のように毎日エサをやらなくていい代わりに堆肥は取れないし、燃料
を買えないとトラクターは動かせないので石油会社の動向に農業が左右される
こともあった。そして驚いたのが、トラクターの普及が戦車乗務員の育成につ
ながったということ。

 考えれば当たり前のことだが、戦車もトラクターも設計が同じようなものだ
から運転の方法も似ている。だから農家を集めたら戦車兵の大量育成がやりや
すかったのだ。そしてトラクターによってより少ない人数で、あるいは高齢者
や女性農地を回せるようになれば、たくさんの農民は要らないから、国家は工
業化を行う上で充分大量の労働者を確保できた。これはそのまま日本の三ちゃ
ん農業ではないか。

 当然そうした変化には逆らいたくなる人たちも多いわけで、そのあたりは読
んでのお楽しみということにしよう。特に土壌の流亡関係は注目だ。

 アメリカのほかにもソ連やドイツなどにも多くのページが割かれている。ポ
ルシェもフォルクスワーゲンならぬ「フォルクストラクター」作ってたなんて、
この本読んで初めて知った。

 また、こうした国ほどではないが他の国の状況も一生懸命調べてある。この
あたりの記述が少ないのはまあ仕方がない。ただ、個人的には各国でトラクタ
ーが受け入れられ、普及していく過程がそれぞれ違ってて興味深かった。お国
柄と言ってしまえばそれまでかも知れないが、農業の多様性も背景にあるのだ
ろう。

 そして最終章が日本だ。アメリカのトラクターの歴史に匹敵する、多大な努
力が日本でも払われてきたのがよくわかる。特に岡山県は日本トラクターのふ
るさとみたいなとこらしい。そんな豆知識もつくというか、トラクター以外に
も岡山で開発された農機具って存在感のあるのがあったりもするんだよなぁな
どと「あの機械も岡山のメーカーのだっよな」なんて思い出しながら読んだ。

 トラクターなど農家以外は普通関心を持つとは思えないが、こういう本を読
むと確かにトラクターは人類の歴史を変える機械である。トラクターを見る目
が、ちょっと変わる。


(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)

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■「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
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どうしたニッポン!
キャバ嬢の著作が揃ってベストセラーに

 愛沢えみり、門りょう、小川えり、進撃のノア、・・と聞いてこれらが何の
名前なのかがすぐにわかったら、あなた、遊び人またはバブルリッチまたは超
のつくヲタクです。

 これらはすべて、今、人気のキャバクラ嬢の名前。愛沢えみりが東京・歌舞
伎町、門りょうと進撃のノアが大阪は北新地、小川えりが名古屋の錦と現代ニ
ッポンの主な繁華街を代表するキャバ嬢が、少し前ぐらいから続々と本を出し
ていてそれがみなベストセラーになっているという、世の中どうなっちゃって
るねんなトレンドなわけです。

 本が売れているということはですよ、その前提として各地を代表する繁華街
にカリスマと呼ばれるキャバ嬢が出現したということになります。

 これまでも、立花胡桃なんていうキャバ嬢がテレビで政治文化の領域までコ
メントするということはあったにせよ、4人出てきているというのが昨今の特
徴で、これってやっぱり景気がいいの?アベノミクスが成功しているの?と勘
違いしそうな傾向です。

 おばちゃまの調査によると、愛沢えみりは東京の地の利を生かして深夜番組
のアシスタントとしてテレビ出演、門りょうはタカビーキャラと全盛期に寿引
退するという離れ業をして女子を胸キュンさせていて、進撃のノアは若さとそ
のネーミングと留学経験というなんかお嬢様なの?という妄想を掻き立ててや
はり女子ファンをつかんでいます。この3人がピアス、派手メーク、カラコン
というキャバ嬢の装備をフル完備しているのに対し、ピアスもネイルも整形も
カラコンもしないでありのままな30歳と実質本位な接客を前面に押し出してい
るのが名古屋の小川えりというように、各地の県民気質を反映されているのが
おもしろいですね。

 で、肝心の本の内容です。愛沢えみり著『キャバ嬢社長愛沢えみりとしての
生き方』、門りょう著『ナンバーワンキャバ嬢の仕事と男とお金のホンネ』、
小川えり著『日本一売り上げるキャバ嬢の指名され続ける力』、進撃のノア著
『好かれる力』と勢ぞろいですが、はっきり言ってどれも、似たり寄ったりで、
接客術や恋愛観、これまでの人生を語っていて特にどれがすごいということは
ありません。読者は圧倒的に女子が多いというのもゲンダイっぽいです。

 あと、こっちはホストですが歌舞伎町にローランドというカリスマが出現し
ていて、こっちも太い女客が一晩で数百万円単位のお金を使ってます。

 ほんま世の中どうなっとるんや〜。風俗業界が活気あふれるばかりというこ
とは日本経済も元気いっぱいなのでしょうか。

 やっぱり消費税を10%にしても自民党は安泰なのかもね〜。


大友舞子(おおとも・まいこ)
昭和20年代生まれのフリー編集&ライター。関東生まれで関西在住。
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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・『ヒューマン ─ 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510

・『支え合い・学び合いで育つ「わたし」』(エディット・パルク)
  http://web.kyoto-inet.or.jp/people/cogito/%8Fo%94%C5%88%C4%93%E0/%8Ex%82%A6%8D%87%82%A2%81E%8Aw%82%D1%8D%87%82%A2.html

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
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 表題【読者書評参加希望】
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 『燃える男』と「トラクター」は偶然の一致です。(あ)

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[書評]のメルマガ vol.663

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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<106>私漫画、エッセー漫画、ルポ漫画、そして「お仕事漫画」

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→88 移動する、その先にあるもの

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→「無名×中小企業」でもほしい人材を獲得できる 採用ブランディング

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第105回 演技をする、とは自分を知るための探索の旅である

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
└──────────────────────────────────

 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<106>私漫画、エッセー漫画、ルポ漫画、そして「お仕事漫画」

 先月紹介した山本直樹の『レッド あさま山荘の10日間』を読み終えた後、
その余韻が残るうちに、と桐野夏生『夜の谷を行く』も読んだのだった。

 『レッド』が描いたのと同じ連合赤軍事件の山岳アジトから、「総括」を逃
れるために逃亡し、その後逮捕された女性が主人公。
 今は刑期を終えて出所し、世間から隠れるようにひそやかに暮らしていた彼
女が、永田洋子の獄死を機として、事件当時のことを聞かせてほしいという女
性ライターから執拗に迫られ、忘れようとしていた事件と向き合っていくこと
になる物語。

 主人公の女性は、どうやら完全な架空の人物のようだが、彼女が過去と向き
合う過程で再会することになる当時の関係者は、あくまで架空の人物として描
かれてはいても、『レッド』と併せ読むと、これはあの人、こっちはこの人、
とモデルが特定できる。

 「東電OL事件」をモデルに描いた『グロテスク』や、谷崎潤一郎と佐藤春夫
の間にあった「細君譲渡事件」に翻弄された娘の視点から、二人の父親とその
家族を描いた短編『浮島の森』(短編集『アンボス・ムンドス』所収)も、桐野
作品では『夜の谷を行く』と同じ系譜の作品かと思う。

 おそらく、なのだけど、桐野夏生は、これらのモデル小説を書くにあたって、
文献的資料は集めたと思うのだが、当事者をはじめ関係者に会って取材する、
ということはせず、あくまで想像力の中で人物を構築し、その心情を探ってい
ったのだと思う。

 そして、あくまで“フィクション”として小説を構成した…にも関わらず、
これらの中の人物像は、リアリティと実在感に満ちている。
 「東電OL事件」については、いくつかのノンフィクションも読んだのだけど、
それらノンフィクションよりも、桐野が想像で描いた(フィクションであるは
ずの)『グロテスク』の方が、実際の人物像と事件の真相に迫っているんじゃ
…と思わせる力があった。

 『夜の谷を行く』では、物語中に直接的に登場しない関係者はすべて実名が
使われていたが、山本直樹の『レッド』では、関係者名はすべて仮名で通され
ている。
 なので、読み進めるにあたって、わしは、漫画の人物名に実際の事件の人物
名を当てはめる「一覧」を自作し、時折これを参照しながら読んでいた。

 桐野夏生の小説は、実際の事件や人物に取材してはいても、あくまでフィク
ションの「モデル小説」であるのに対して、山本直樹『レッド』は、知りえた
事実ひとつひとつを積み重ねることによって、当事者たちの心情を、その事実
の隙間から絞り出すように描いている。
 小説で言えば吉村昭の手法に近いんではなかろうか。
 なので、登場人物すべて「仮名」であっても、これは記録小説的漫画である、
と断言できると思う。

 事実に即して描く、ということで言えば、「私小説」という文芸のジャンル
が、この国ではある時期から盛んになって、日本独自の文学世界を醸成してき
た。

 永島慎二『漫画家残酷物語』は、この私小説の手法を、漫画に最初に取り入
れた嚆矢じゃないかと思うが、私小説的漫画「私漫画」はその後、自身、葛西
善三や正宗白鳥、宇野浩二らの私小説世界に傾倒していたつげ義春から、主に
「ガロ」誌上で、安部慎一、鈴木翁二らに受け継がれていった。

 小説の世界で私小説が下火になるのと軌を一にして、漫画の世界でもこの分
野はしぼんでいくのだけど、漫画界においては、「私漫画」を親としてその後
に生み出されたのが「エッセイ漫画」だ、とこれは我が自説。

 以前、ここで取り上げた、細川貂々『ツレがうつになりまして』や『日帰り
旅行は電車に乗って』、さらに、やはり以前取り上げた矢部太郎『大家さんと
僕』などが、このエッセイ漫画の範疇に入る。

 私小説、あるいは活字のエッセイがそうであるように、私漫画やエッセイ漫
画でも、必ずしも事実そのまま、ありのままに書かれるとは限らず、ある程度
の脚色あるいは創作が挿入されるのは許容範囲だ。
 ことにネットで、たまに見かけるのだが、活字にしろ漫画にしろ、エッセイ
に書かれたことが「事実と違う」と目くじら立てるのは、だから完全なスジチ
ガイである、とわしは思う。
 昔、山口瞳が「週刊新潮」に連載していた名エッセイ『男性自身』を愛読し
ていたのだけど、あれにしても、かなりの「創作」が入っていると、これは当
時から思っていた。
 エッセイだって「創作」の一形態なのだ。

 その意味では、その昔に滝田ゆうが文芸雑誌に連載し、その後単行本にまと
められた『泥鰌庵閑話』(現在はちくま文庫で読めます)は、実に楽しい私漫
画であり、同時にエッセイ漫画でもあった。

 さらに近年では、エッセイ漫画から派生した一形態として、ルポルタージュ
を漫画で著す、というのも、決して珍しいことではなくなってきた。
 取材で得た事実をそのままに伝えるルポなればこそ、ビジュアルを使える漫
画には、活字よりもより正確、具体的に伝える力があるようだ。

 また、取材ではなく、漫画家本人が(主に生活のために)就いた仕事のこと
を、事細かにルポ風に描いた漫画は「お仕事漫画」として、既にいちジャンル
として定着しているようだ。

 1992年発表の、故郷・北海道室蘭の遊廓の女たちを描いた漫画「親なるもの
 断崖」が最近になって電子書籍でリバイバルヒットしたことで話題になった
曽根富美子は、数年前に、漫画の収入が落ち込んで逼迫した生活の打開策とし
て、自宅近くのスーパーでレジ係としてアルバイトを始めた。
 いつも買い物に利用しているスーパーだから…という気安さと、明言はされ
てないが、「(スーパーのレジくらいなら)できるだろう」という、軽くナメ
た気持ちも、おそらくはあったのだろう。
 が、普段「客」として見ていた職場は、その反対側に回ってみると、まるで
世界が違っていて、何から何まで「初めて」尽くし。

 これ、わしもずっと昔だけど、学生時代に、普段友人たちとよく通っていた
居酒屋に、「知ってる店だから気安いや」とノーテンキに構えてバイトで入っ
たところが、そのあまりのきつさと覚えることの多さに愕然とした覚えがある
のだが、曽根富美子もまた、同じ思いをしたようだ。

 ともかく、50歳を超えてレジデビューした曽根富美子は、その覚えることの
あまりの多さと煩雑さ、慣れないレジスターや周辺機器の操作に振り回されな
がら、ふた回り以上年下の「教育係」の薫陶を受けつつ、しかし、年齢ゆえの
覚えの悪さ、体の融通の利かなさから失敗を重ねながらも、一人前のレジ係と
して成長していく。
 50歳を超えて初めて体験したスーパーのレジと、その体験を通して見た、そ
れ以前は客として何気なく通っていた店の、その裏側の世界が、彼女にはとて
も新鮮かつ驚きに満ちたものだったのだろうことは、想像に難くない。
 その体験と顛末をそのままに漫画にして、雑誌「モーニング」に連載してし
まったのである。
 タイトルは『レジより愛をこめて 〜レジノ星子〜』。
 現在は単行本で読むことができる。

 これと同じころに、同じ「モーニング」に連載された、竜田一人『いちえふ』
もまた、著者自身が体験した福島第一原発の廃炉作業に従事した体験を、見聞
きしたことそのままを漫画にしたもので、当欄でも以前に取り上げたことがあ
るのだが、これもまた、ルポ漫画、あるいは「お仕事漫画」の範疇に入るもの
だろう。

 活字の世界ではかつて、取材の一環として、つまり、その後にルポルタージ
ュ、あるいはノンフィクションとして原稿化するために、特定の職場に身分を
偽って入り込む、ということがよくあったようだが、これら「お仕事漫画」は、
漫画を描くために仕事に従事したわけでは決してなく(『いちえふ』の場合は、
その色気も若干はあったようだが…)、まずは「(生活のための)仕事ありき」
である。

 したがって、その仕事を描く作業は、作者自身の「生活」を赤裸々に描き出
すことでもある。
 となると、これは「私漫画」ともいえるのではないか…とふと思ってしまっ
たりも、するのである。

 などと考えていたところに、先日、ネットを通じて、思い切り「私漫画」的
な「お仕事漫画」を見つけてしまったのだ。
 作者は、各務葉月、漫画のタイトルを『食品工場の中の人たち』というそれ
に、ふと興味を惹かれて早速読んでみた。
 すると、読み進めるうち、「ああ、そうだったよなあ…」「そうそう、そう
なのよ」と、わしもかつて「派遣」で経験したあちこちの職場での様々な経験
が、鮮明に蘇えってきたのである。

 この漫画と、わしがかつて経験した職場の相関については、次回にまた詳細
を語らせていただきたい、と斯様に思う次第でありまして、今回は、これまで、
とさせていただきまする。


太郎吉野(たろう・よしの)
 2011年に神戸から西宮へ引っ越して、ただ今のホームグラウンドは甲子園。
右投げ右打ち。掛布二軍監督はひとつ年上の同級生。

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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88 移動する、その先にあるもの

 『ジャーニー 国境をこえて』
 フランチェスカ・サンナ 作
 青山 真知子 訳
 きじとら出版

 描かれているのは、
 どこの国かを特定せずに、
 戦争がきっかけで、自分の国から「安心してくらせる」よその国へ旅に出る
 親子。

 夏になると家族そろって海を楽しんでいた暮らしは、戦争でかきけされ、め
 ちゃくちゃにされました。

 デフォルメされた中間色の絵の中で、戦争の暗い影だけは濃い黒でぬられ、
 その色をもってして残酷さが際立ちます。

 黒い影の手から離れるために、
 親子を含め多くの人がいままでの暮らしを後ろに残して、
 本当は望まない長い長い旅に出なくてはならない状況を絵が訴えます。

 絵本では「安心してくらせる」よその国にたどりつくところは描いていませ
 ん。たどりつこうと動いている進行形がそこにあるだけです。

 帯の言葉を書いているのは、自分の国を離れて8歳のときに日本にきた女優
 のサヘル・ローズさん。
 育ての親と2人で来日してからも生活はすぐに軌道にのらず、きびしい生活
 が長く続いたそうです。

 サヘル・ローズさんが帯に書かれた言葉には体験の重みを感じます。


   「ただいま」といえる故郷はありますか?
   戦争が奪うのは命だけじゃない、笑顔も居場所も奪った。
   それでも彼らは、そして私も生きようとしている。


 絵本を刊行したきじとら出版では、本書を題材にして人権を学べるように、
 ワークシートをHPで公開していますのでぜひ下記を参照ください。

 http://kijitora.co.jp/
 「本のご紹介」>「ジャーニー 国境をこえて」からダウンロード

 次にご紹介するのは、自分たちの土地で野菜を育てる絵本です。

 『ソフィーのやさいばたけ』
 ゲルダ・ミューラー 作 ふしみ みさを 訳  BL出版

 オランダ生まれ、現在はパリで生活しているゲルダ・ミューラー。彼女の描
 く自然に私はとても惹かれます。花や野菜についている土がリアルに感じる
 からです。

 87歳の絵本作家が描いたのは、夏休みに田舎の祖父母宅に遊びに行ったソフ
 ィーです。ソフィーは祖父から、畑道具と、自分の好きなものを植えていい
 畑をもらいます。

 虫がいるおかげで、花は実をつけることを、ソフィーは祖母に絵をかいても
 らいながら教えてもらいます。
 
 お日様の下にある畑だけでなく、夜空の下でも育っている野菜、
 夏からはじまり、秋、冬、春と季節がめぐる様子、
 
 作者ゲルダ・ミュラーは、ソフィーの祖父母のように、私たち読者に野菜の
 育ちみせてくれます。

 キャベツ、エンダイブ、ズッキーニ、ケール、パセリ、トマト、
 セイヨウミツバチ、クマバチ、オニグモ、ヨトウガ、かたつむり。

 生き物がたくさんいる畑の豊かさが絵本に満ちています。

 最後に紹介する絵本にもおばあちゃんが登場します。

 『わたしたちだけのときは』
  デイヴィッド・アレキサンダー・ロバートソン 文
  ジュリー・フレット 絵 横山和江 訳 岩波書店

 遊びにきた孫娘が祖母にいろいろ質問します。

 「ねえ、どうしてそんなにきれいないろの、ふくをきてるの?」
 「どうして、かみの毛をながくのばしているの?」

 「それはね……」

 子どもの頃は自分の好きな服が着られず、みな同じ服を着なければいけなか
 ったこと等、先住民族の同化政策を、孫娘にとどく言葉で語ります。

 それは、どれほど同化政策を押しつけても、心は自由と幸せを求めていた祖
 母の言葉でした。

 深みのある色合いで、時代に抵抗することの厳しさを超えて、自由にくらせ
 るいまを生きている祖父母たちが描かれ、余韻が長く残りました。


 『ジャーニー 国境をこえて』の親子が、ソフィーや『わたしたちだけのと
 きは』の祖父母や孫娘のように安心してくらせる所にいつか落ち着けますよ
 うに。


(林さかな)
会津若松在住
http://1day1book.strikingly.com/

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■「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
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「無名×中小企業」でもほしい人材を獲得できる 採用ブランディング
(深澤了著 幻冬舎 2018/1/16)

 経団連が新卒採用において、会社説明会や面接の解禁時期などを定めた、い
わゆる“採用ルール”を廃止するというニュースがメディアで報じられました。

 現在、大学生の就職活動の解禁日は3年次の3月1日、選考開始日が大学4
年次の6月1日となっているのを、2020年卒の学生の代を最後に、廃止すると
の内容です。

・・・とはいえ、ここ数年、着々とルールの形骸化が進んでいたと感じます。

 大学3年次の夏休み期間に、あきらかに採用活動を見越したインターンシッ
プ(就業体験)を開催する企業が増加した他、外資系やIT系企業を中心に、
6月を待たずにフライングで選考を開始するところも多く存在していますので、
経団連ルールもいつかはなくなる日が来るんだろうな、とは思っていたのです。

 今後は政府主導の下で新たなルールを策定し、経団連もその決定に従うと報
じられていますが、そこで決定した新ルールもどれだけの企業が守ろうとする
のやら。。。就職活動の形が今後どうなるか、まったく先が読めません。

 この問題、これから就職活動に臨もうとする学生さん側に一定の影響が出る
のは必至ですが、同じように困るのが、私のような知名度のない企業の人事担
当者です。

 新卒採用という仕事は、終わりのない、いや切れ目のない仕事だと思います。

 たとえば10月という今の時期ですと、活動のピークは過ぎているものの、夏
に開催した大学3年生向けインターンシップの総括をしつつ、次は冬のインタ
ーンシップの企画や準備を進めながら、今年の内定者(現4年生)のフォロー
活動として、内定者事前研修などを同時並行で実施したりしています。今から
4年生に内定辞退でもされたら、たまったものじゃないですからね(笑)。

 これが春夏の活動ピーク時になりますと、本当に大変です。

 売り手市場と言われる中、学生から知名度のない会社はWebの求人広告な
どに馬鹿にならないコストを投下して、1人でも多くの応募者を集めなきゃい
けない、集めた学生を様々な角度から選考していかなきゃいけない、そして、
一定の内定辞退者がでることを見越して、内定者数を多めに出すなどコントロ
ールもしなきゃいけない。ちなみにこのコントロールに失敗すると、今の時期
でも採用活動を継続しなきゃいけません(私の会社は今年はセーフ)。毎日神
経をすり減らしながら、あっという間に時が流れていく、それが人事視点で見
た新卒採用活動であると感じます。

 経団連によるルール撤廃、政府による新ルール策定の結果を受けて、世の採
用活動の動向は変化しますので、その中で自社はどんな戦略を立てて今後活動
していく必要があるのか、結構気が気ではなかったりするのです。

 人事にとっては、かけるパワーが大きい新卒採用活動ですから、それに関連
する書籍で気になったものは、一通り目を通すようにしています。その中で、
特に印象深かった一冊が、今回の本「採用ブランディング」です。

 著書が元々CMプランナーなどを経験している方なので、メディアの活用の
仕方など、採用におけるハウツーが書いてあるのかなと思って読み進めたので
すが、内容はまったく想定外のものでした。

 本書の中で著者は、「採用の基本は『理念への共感』である」と述べていま
す。

 企業には必ず理念があり、自分達が実現したい理念を達成するために、共感
してくれる人を採用し、共に歩んでいく必要があると。つまり企業の理念に共
感してくれた人を採用するという発想を根底に持つべきであり、応募者の母集
団形成も「ただ人を集める」のではなく、「理念に共感してくれる人を集める」
ことが重要で、採用フローの組み立ても、その視点から行われるべきであると
。。。なるほど。

 今回の経団連指針の撤廃に限らず、採用環境は日々変化します。スケジュー
ルが変わることで、当然打つべき施策は変化しますが、それ以前にやるべきこ
とがあるだろうと、本書の中で筆者は説いています。スケジュール云々以前に、
日本は少子高齢化が進みますので、これまでと同じ方法で応募者が集められる
時代ではなくなっていると。

 私などがそうなのですが、採用活動がピークの時期って、常に応募者を何人
集められているか、その中で現在選考ラインに乗っている学生が何人いるかな
ど、人事は数ありきで考えてしまうクセがついているんですね。

 数打ちゃ当たるの感覚で多数の応募者を集めるのに労力を使うのではなく、
自社に共感してもらうためのメッセージを明確化して打ち出し、学生から選ん
でもらえる企業になるかを考えていく。そして、選考の過程の中でより共感度
を高めていくほうが、選考もスムーズになるし、辞退数も減る可能性が高い。
まずはこの感覚を身につけることが重要になりそうです。

 つい先日には、スマホのフリマアプリで急成長しているメルカリが、国内の
IT系学生の獲得競争が激しい中、インドのIT系学生32名を新卒採用したと
いうニュースが報じられていました。スケジュール以外にも、採用環境の変化
を物語る出来事は数多く起こっていますが、それら1つ1つのニュースに惑わ
されず、まずはじっくりと足場固めからと思っております。

show-z
某IT企業で人事担当者として勤務。千葉県在住。

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第105回 演技をする、とは自分を知るための探索の旅である

 なぜ、いまこの本を選んだか、それを忘れてしまった。読んで発表しようと
思っている本は、数ヶ月まえから、なんとなく決めているが、今月のこの本に
ついては、いつ、どのような状況で読もうと思ったのか、すっかり忘却してし
まった。ただ、夏は執筆子の中では、シェイクスピアの季節。シェイクスピア
の芝居はなぜか夏に多い気がする。今年も7月8月9月と3ヶ月間シェイクス
ピアの芝居を観に行った。
 それで、今月はシェイクスピアの『リア王』が主役の本なのだ。

『俳優のノート』(山崎努 著)(文藝春秋)(2013年10月10日 文庫新装版)

『リア王』(松岡和子 訳)(ちくま文庫)(筑摩書房)
(1997年12月4日第1刷発行)

 シェイクスピアの作品『リア王』が新国立劇場のこけら落としとして1998年
1月に上演される。そのときの脚本は、松岡和子さんが書き下ろしで訳したも
のだった。書き下ろしの脚本は脚本が完成したその直後(1997年12月)に文庫
で本になっている。この新国立劇場こけら落としでは、この松岡版『リア王』
を使用して、鵜山仁・演出、山崎努・主演で上演された。

 主演(リア王)の山崎努は、準備期間中から、独自の公演日記をつけている。
山崎努は舞台や映画を問わず、覚えのノートを作っている、という。この「リ
ア王」でも山崎はノートをつけていて、それは1997年7月14日の役者、演出家、
制作、主演が揃うミーティングから始まる。以後、公演の千秋楽の1998年2月
3日まで、綿密な記述が続く。この個人的なノートを印刷して本にしてしまっ
た。怪優と云われ、演技力に定評があり、さまざまな監督や演出家から声が掛
かる、一代の名優、山崎努の演技のノート。若い役者にとってはまさに教科書
となり、執筆子のような演劇好きの好事家にとっては演劇という世界をさらに
知り、ますます観劇が楽しくなるための一冊となること請け合いなのだ。

 本書は、松岡版『リア王』(ちくま文庫)も併せて読むことを薦める。とい
うか、役者なら別かもしれないが、一般人はこの松岡版『リア王』が手元にな
いと、山崎努の『俳優のノート』はほとんど意味がない。1998年1月に新国立
劇場で上演された『リア王』の“俳優のノート”だから、その脚本がないと
『俳優のノート』は理解できない。脚本がないと、本書を読んでいてもおもし
ろくない。

 まずは『リア王』を読む。その後『俳優のノート』を読む。『俳優のノート』
を読みながら『リア王』を参照する。だから読み終わるのに結構時間が掛かる。
それでも『リア王』があるとないとでは内容の理解が違う。両書籍を読むこと
についての、欠点をひとつだけ挙げるとすれば、それはこの1998年の『リア王』
を観ることができなかったことに尽きる。読み終わった今、あの芝居を観るこ
とができなかった悔いだけが残った。

 さて、『俳優のノート』である。冒頭にこんな一節がある。長くなるが引用
する。

“俳優にとって、技術の蓄積は貴重である。しかし、その技術が、訳を表現す
る上で障害になることもある。よく通る声、巧みなせりふ廻し、華麗な動きは
たしかに心地よいが、さて役の人物はというと、何も見えてこない。舞台の上
には、得々と演技を披露している俳優がいるだけ、ということがよくある。し
かし観客が見たいのは、俳優ではない。観客は、劇場という非日常の世界で、
今、正にそこに生き生きと息づいている劇中の人物が観たいのだ。”

 俳優とは演技が巧けりゃいいってもんじゃあない、・・・・・らしい。その
俳優は、劇中のその人物になりきらないといけない。あの俳優が演じているん
だ、と観客に思わせてはいけない、と云っている。古今東西、さまざまな巨匠
や伯楽が同じようなことを云っているが、執筆子は本当にそうなのか、と常々
感じていた。しかしながら、現役の俳優が、そう云っているし、この文章は、
なんと早くも本文の2ページ目に書かれているのだ。どうやら、本当のことで、
嘘ではないらしい。

 しかし、それが難しいことは、観客の我々にだってよくわかる。その俳優が
演じているのではなく、劇中のその人がそこに現れていなくてはいけない。我
々観客は俳優にそんなことまで、要求をしているのだろうか。執筆子は、そう
ではない、と思っている。

 我々観客は、あの人の○○が観たい、という出発点があるのだ。わかりやす
い例として、歌舞伎がある。歌舞伎では、その劇中人物を何人もの俳優が演じ
る。そして演じるその俳優によって演じる際の型が違っていたりして、少しず
つその役の印象が違ったものになる。團十郎の大星由良之助がよい人もいれば、
吉右衛門の由良之助を贔屓にしている人もいる。だから歌舞伎は劇中の登場人
物はむろん大切だが、より大切なのは、誰が演じたか、ということだと思うの
だ。実際に執筆子は歌舞伎ではそういう見方をしている。

 一方、歌舞伎ではない演劇(新劇と云ってもいいし、最近はその枠に収まら
ない演劇が多いので歌舞伎以外、というべきか)では、演出家や俳優によって、
演出方法や演じ方がまったく違ってしまうし、伝えるテーマが異なってしまう
場合だってあるわけだ。人はよく「化学反応」という言葉で変化することを表
現する。人が変われば同じ芝居でも変わる。A氏とB氏の会話もB氏の替わり
にC氏になれば、同じ会話でも違った印象になる。そういうのを「化学反応」
というのだろうと思うが、まさにその「化学反応」なのだろう。相手が違えば
リアの演技も違ってくるだろう。ゴネリルやリーガンが范文雀と余貴美子でな
かったら、山崎リアも違ったリアになるに違いない。

 そんなことを思いながら、本書を読み進めていく。

 山崎努は、12月から始まる稽古を前にたっぷりと時間を取って、リアと向き
合い、リアを噛みしめている。饒舌と云ってもいいほど、さまざまな思いを書
き連ねいている。

“リアは捨てていく男である”

“演技すること、芝居を作ることは、自分を知るための探索の旅をすることだ
と思う”

“リアは耄碌しているのだ。・・・順を追ってリアは狂ってゆくが、実は最初
から耄碌しているのである”

“俳優が役を作るときに犯す間違いは、キャラクターに統一をとろうとするこ
とである。辻つまを合わそうとすることである。老人リア・・・、その心の動
きは、かなり脈絡のないものなのである。・・・我々はどうしようもなく統一
のとれない存在なのだ”

“役を生きることで、自分という始末に負えない化け物の正体を、その一部を
発見すること”

“唯我独尊のリアは、長い旅の中で他者を発見し、人が「生まれ落ちる」こと
の悲惨さ、世界の脈絡のなさを知った”

“「牢へ行こう。二人きりで―」とコーディリアと再び一体化することでリア
の旅は終わるのだ”

“しかし、―リアはにたりと笑った。馬鹿め、「何か」なんてあるわけがない
だろう。「何もない」(nothing)。俺は振り出しに戻っただけだ。”

・・・・・

 山崎努は、リアをして、何もないところから始まらせ、そしてあれこれ加え
させしめたが、それもどんどん捨させ、最後はまた何もなくならしめた。そん
なリアを表現してみたのだ。

 本書には、たくさんの人たちが登場する。共演者、制作スタッフ、家族、友
人知人・・・。登場するすべての人たちが山崎努を中心にした同心円状に存在
している。そしてそれら数多の人たちはむろん、それぞれその人の同心円があ
り、それらが互いに影響しあいながら、それぞれを支え合っている。芝居は、
人生は、ひとりでは作れない、ということが執筆子の読後最初の感想だった。

 俳優が、繊細で感受性が豊かで語彙が豊富な人たちだ、ということはよく知
っていた。本書はとても鋭い。人間の営みを月のひかりにもきらっと輝くよう
な鋭利な大鎌で一刀両断にスパッとやってしまい、その本性をむき出しにさせ
てしまうような、そんな鋭さが本書にはある。人間を観察し尽くし、自分の肉
体を使って、人間の本性を白日の下に晒してしまう、俳優という仕事の恐ろし
さをあらためて知った。


多呂さ(輪島が逝ってしまいました。本当に昭和の大相撲が終わってしまった、
そんな感慨に浸っています。)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

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・『支え合い・学び合いで育つ「わたし」』(エディット・パルク)
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 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 最近、書評の魅力ってなんじゃろな、と考えていたのですが、やはりそれは、
自分がこれまで関心の無かった世界に触れるきっかけになるのかな、と思った
りしました。

 本でもいいのですが、いきなり全く知らない世界の一冊を選んで読むという
のは抵抗があります。

 今回のメルマガでは、今まで触れる機会のなかった演劇の世界に興味を持ち
ました。シェイクスピアの戯曲は、戯曲として本では読んだことがありました
が、舞台はそういえば、『真夏の世の夢』のアレンジ入ったバージョンしか観
たことがなかったなぁ、と。しかも大学生の頃ですから、ほぼ20年前…。

 特に今回、取り上げられている『リア王』は、黒澤映画「乱」のイメージが
強すぎて、原典もあまり覚えていない状態です。

 ばたばたと仕事ばかりの毎日ですが、再読、あるいは舞台を見る機会をつく
れば、自分も「リア充」になれるかな、とちょっと思いました。(ちがう?)
(あ)

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#99『ぐうたら人間学』

 中学の同窓に、詩人・谷川俊太郎氏の長男がいる。現在ジャズ・ピアニスト、
作曲家として活躍しているようだ。
 当時、彼とぼくに後もう二人を加えた四人、小説の好きな連中が、もそもそ
と中学生男子らしく集まって、くだらないことを話したり、やったりしていた。

 二年生の夏休みだったか。このメンバーで、軽井沢にある谷川家の別荘にお
邪魔することになった。
 その行きか帰りかは忘れたが、電車の旅のつれづれに「小説の定義とは何か」
という、これまた実に中坊らしいややこしい論議が始まったのである。
 諸説入り乱れた後に、一人が、これでどうだ、という決定打を放った。それ
がどんな定義だったかも覚えていないが、みんなそれにほぼ納得した。いい加
減疲れてめんどくさくなっていたのかもしれない。
 ところがそれを発案した本人が、「あ、でも、これだと狐狸庵エッセイが小
説になっちゃう」と言い出して、ふりだしに戻ってしまった。

 いまはもう、「狐狸庵エッセイ」で通じるのも、ぼくから上の世代だけにな
ったのだろうか。
 小説家・遠藤周作が、雅号を狐狸庵と称し、身辺雑記や回想を綴ったエッセ
イのことである。

 ところが、エッセイと銘打ちながら、かなりの確率でフィクションが混ざる。
というか、嘘が多いのだ。
 そもそも、狐狸庵という人物が、等身大の遠藤周作というよりは、多分に誇
張されたキャラクターなのである。その証拠に、表紙のイラストに描かれた狐
狸庵先生は、白髪白髯、和服の老人として描かれており、どこか横丁の隠居の
風情で、ご本人より大分年長に見える。
 それで、エッセイと言いながら、半ば小説のような部分があって、定義が難
しかったわけだ。

 七十年代に大人気を博して、シリーズ化。タイトルに「ぐうたら」という言
葉がキーワードとして使われていたが、それがまさに六十年代の「モーレツ」
に疲れきった時代の気分にマッチしていた。
 田舎道をヒッピーたちがガス欠のクルマを押して歩く石油会社のCMで流れ
た「♪のんびり行こうよ 俺たちは 焦ってみたってむだなこと」という歌や、
「狭い日本 そんなに急いでどこへ行く」というスローガンが人の口の端に上
っていた頃である。

 いま、某カルチャースクールで文章教室の講師をやっていて、今期は随筆を
テーマに、いろいろな本を分析しているのだが、その一冊として、懐かしい
『ぐうたら人間学』を再読した。

 しかし、遠藤周作といえば、エッセイストというよりまず小説家である。
 少し前にマーチン・スコセッシが監督した映画『サイレンス』。その原作で、
江戸時代のキリシタン弾圧に材を取った小説、『沈黙』の方が、読んだのは狐
狸庵エッセイより先だったと思う。

 中学の時、『ジーザス・クライスト・スーパースター』と『ゴッドスペル』
というロック・ミュージカル映画が同時期に公開され、ロック少年でもあった
ぼくは大変な衝撃を受けた。どちらもイエス・キリストの生涯を描いているの
だが、「いや、イエスってかっこいいなぁ」と思ったのである。
 そんな流れで興味を持ったのか、『沈黙』もこの頃に読み、タイトルの意味
を知って深い感動を覚えた。

 その後、『白い人』『黄色い人』『海と毒薬』などを読み、その一方で狐狸
庵エッセイがベストセラーになって、ネスカフェ・ゴールドブレンドのCMに
「違いのわかる男」として作者本人が登場するに至った。

 『沈黙』の遠藤周作と、エッセイやCMの遠藤周作は、とても同一人物には
思えないが、ぼくはあまり違和感がなく、素直に受け入れていたように思う。
 しかし、著者はこの二重人格的な行動の意図について、『ぐうたら人間学』
の中で、若干言い訳っぽく触れている。
 いわく、三年に一度くらいのペースで、深刻かつ小難しい小説を書いている
ので、作者本人もさぞ哲学的でさまざまな問題に悩んでいる人間と思われがち
だが、実際にはくだらないことに喜んでいる俗な男であって、そのことを読者
に知らせたいと思い、狐狸庵エッセイを書き始めたのだそうだ。

 そんな『ぐうたら人間学』であるが、音楽本としては、ふたつのエッセイが
該当する。

 ひとつめは、「私と唄」。
 自分がひどい音痴であることから語り起こし、三浦朱門と組んで唄をつくる
話が紹介されている。

 作家の三浦朱門が作曲をする、というのも意外だったが、もっと驚いたのは、
その歌をつくるきっかけだ。
 狐狸庵先生、ある時テレビを見ていると、「素人が作詩、作曲したものをプ
ロが歌って、それを採点する番組」なるものをやっていて、審査委員に旧知の
曽野綾子が出ていたので、彼女に電話したという。「ぼくも応募しようかなあ」
と言ったら曽野綾子に、「しなさいよ。そして作曲はうちの亭主(三浦朱門)
がしたら面白いわよ」とけしかけられたのだそうだ。

 素人の作った曲をプロが歌う。そんな番組があったのだ。
 シンガーソングライターというものが登場して、職業作家のつくる唄とは違
う、シンプルな音楽がヒットしたことを受けての企画だったのではないだろう
か。
 プロの作詞家や作曲家は、さぞ不愉快だったと思う。
 時代を非常に感じる企画である。

と言いながら、実はいまも、こうしたことは普通に起こっている。インターネ
ットの登場で、素人の楽曲が流通し、そこから新しいソングライターが生まれ
ているからだ。
 その典型が、ボカロPである。

 ボカロは、以前紹介した初音ミクの本にも出てきたが、ボーカロイドの略。
歌詞とメロディを入力してやると、合成音声で歌ってくれるソフトウエアだ。
作曲や編曲はやりたいが自分の歌には自信がないという人のために開発された。
これを使って曲を作り、ネットで公開する人たちを、プロデューサーのPをつ
けて、ボカロPと呼ぶ。
 彼らの中から、AKBに代表されるアイドルたちに楽曲を提供する作家が次
々に現れた。
 いつの時代も、アマチュアからスタートし、プロに育っていく回路は存在す
るのだろう。

 さて、ふたつめは、「パンツの話」である。
 このタイトルから音楽に関係するエッセイとはとても思えないが、実はこの
パンツ、ビートルズのパンツなのである。

 ビートルズが来日した時、ぼくはまだ小学生でまったく関心がなかったが、
ぼくの上のいわゆるビートルズ世代で、武道館に行った人はいまでもそれを自
慢にしている。
 そして、意外なことに、遠藤周作もまた、あの時武道館の客席にいた一人だ
ったのだ。

 もっとも彼はビートルズ・ファンでも何でもない。新聞社から切符をもらっ
て行ったのだ。流行作家というものには、こんな余録があるんだなぁ。
 ただ、このエッセイによると、遠藤周作は自らをミーハー体質と認じ、もし
自分が女だったら、日劇ウエスタンカーニバルに行って、キャーキャーわめき、
テープを投げていたと思う、と書いている。このテープを投げるというのにも、
時代を感じる。

 だが、男に生まれた狐狸庵先生が、武道館で注目したのはビートルズではな
く、ファンの女の子たちだった。
 彼女たちが、始まる前から汗をかき、それが化粧の匂いと混じって眩暈がし
そうなほどだったこと。その汗を拭くのが、「あのトランプの王さまのような
連中(引用者注;ビートルズのこと)の似顔をかいたハンカチ」であること。
ライブが始まるや、女の子たちは「おのが髪をひっぱり、目をつりあげ、もう
精神病院にいる感じだった」こと。終演後も立てない子たちが続出したが、そ
れは興奮のあまりおしっこを洩らしたからであったこと。
 作家の観察力で事細かに見ているが、ビートルズにも演奏にも一言も触れて
いない。

 その後、某新聞に『ビートルズを見る』という随筆を書いた狐狸庵先生は、
ちょっとしたいたずらを仕掛けておく。文末に「私はビートルズたちの泊った
ホテルのボーイと親しいので彼等からビートルズが部屋に忘れたパンツをもら
った。もらったものの、私としては始末に困っている」と書いたのである。も
ちろん、真っ赤な嘘。

 案の定、数日して女の子から電話がかかってきた。

「あの……」
 蚊の鳴くような声で彼女は言った。
「そのパンツ、わたしたち欲しいんですけど」

 狐狸庵先生がどう答えたか。
 それは本書に譲る。


遠藤周作
『ぐうたら人間学』
1976年2月15日第1刷発行
2010年5月14日第53刷発行
講談社文庫

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
先日フェイスブックに、学生時代所属していた音楽サークルの先輩が、「谷川
俊太郎氏に会った」と投稿していました。お元気のようでなにより。息子の方
も元気かな。話は違いますが、ある企業の就職試験で、学科があり、多分40年
ぶりぐらいに割り算を筆算(!)でやりました。目眩がするほど懐かしかった。
きっと計算間違いしてると思うけど。でも、このスキル、いま、要る?

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■「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
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糖質制限時代だから読みたい
炭水化物礼賛本
『ごはん通』
(嵐山光三郎著・平凡社・平凡社ライブラリー)

 最近、おばちゃまが嘆いていること、それは糖質制限。

 テレビの健康番組ではどこも「糖質を減らしてダイエットしましょう」って
言ってる。糖質の代表がなぜか炭水化物になっていて、ご飯を減らせば痩せら
れると本でも雑誌でも言ってます。

 (前にも言ったかもしれませんが)、あのねえ、昔、私たちは狩りにいって
イノシシや兎をしとめて食べてたんぱく質を摂り、どんぐりや栗を拾って炭水
化物を摂って命をつないでいたんですよ。でも、それは不安定な栄養摂取で、
弥生時代になって安定して栄養が摂れるようになったのは稲作のおかげと小学
校で習わんかったんかい!

 それがたった2000年たった今、もう食物が溢れかえっているせいか、お米を
食べないようにしようだって。この恩知らずめが!

 だいたい、生活をしていくことを「糊口をしのぐ」と言いますね。「口に糊
する」とも。この糊とは何あろう、ご飯(お粥)のことなんですね。貧乏でも
やっとお粥が食べられれば生きていけた、その象徴がご飯=炭水化物=糖質な
んですよ。糖質制限なんて言ってるヤツはそのうちバチがあたる・・・・
そんなときに目にしたのがこの本です。

 作者は嵐山光三郎さん。
 嵐山光三郎さんはこの本を出版した平凡社の元社員だそうです。凱旋本って
言っていいのかな?

 昭和軽薄体の代表である嵐山さんが書くご飯の本なので、きっと、「ごはん
がおいしいのでR」なんて軽い感じでご飯のおいしさについて述べているのか
なと思ったんですが、いやいや、本100冊を持って山形の秘湯旅館に泊まり込
んで書いただけあって、内容は「どの米がうまいか」「おにぎりとおむすびの
違い」「粥と雑炊の違い」「ピラフとパエリア」など話がワールドワイドにも
なってて、意外に社会学的っていうか読んでためなり知識が増える系の作品で
した。

 また、よくあるグルメエッセイみたいに、銀座のどこどのの寿司がうまいと
かそこの主人はこういう偉い人だみたいなうんちくも書いてないので、だれで
もラクに読めます。

 ちなみに著者は、「おにぎり」という言い方より「おむすび」が好きで、

「おむすびは、神結びから来た言葉で、人間が両手に米粒を持って、それを心
をこめて結ぶものなのである。むすびの中に霊魂が入り、むすびの中で自然神
と人はむすばれた。(略)それを食する人の身の安全を日本古来の自然神に祈
ったものである」

 そうそう、その通り。おむすびはただの携行食ではなくて、一粒一粒に食べ
る人の愛が込められた魂の食べ物なんですよね。
 だから、母がつくるおむすびはありがたくも、かしこいものなんですよね。

 だから、お米でつくる食品を軽んじたり、制限したりしてはいけないんです
よ。わかったか、現代の日本人!

 「日本人は米の微妙な味がわかる世界有数の民族である。このことは先祖に
感謝しなくてはならない。また、世界一うまい米を生産する民族である。
 ごはんを炊いて蓋を取ると、ふんわり湯気が立ち上り、ほのかに甘く、かぐ
わしい香りがする」

 まあ、1996年発刊の本なのでこのころはまだ、日本にたくさんの外国人が住
んで米食をしていなかったためか、多少、民族主義的な匂いがするのはしかた
ありません。

 しかし、ごはんに関するおもしろい話がたくさん入っているので、もうね、
ぜひ読んで炭水化物に感謝して、炭水化物ダイエットはやめて、明日からごは
んをたっぷり食べていただきたい!とおばちゃまは思うのでした。


大友舞子(おおとも・まいこ)
昭和20年代生まれのフリー編集&ライター。関東生まれで関西在住。

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『東大教授の「忠臣蔵」講義』 山本博文 角川新書

 20年以上前、朝によく泉岳寺にある赤穂浪士の墓に参っていた。東京出張の
定宿にしていたホテルがすぐ近くだったので、朝ホテルを出て行くときについ
でに参っていたのである。

 そこで知ったのは「赤穂浪士の墓には線香の煙が絶えることがない」と言わ
れるのがウソだと言うこと。朝早く出て行くことが多かったからかも知れない
が、線香の煙はよく絶えていたw

 ということで、この本である。帯のタイトルは「時代劇はウソだらけ」「大
石内蔵助は敵をあざむくために祇園遊びをしたのか?」とか、赤穂浪士の討ち
入りの真相を教えますというもの。忠臣蔵が実話を元にして脚色された作品な
のは誰でも知っているが、どこまで真実なのかを知ろうとするのに良い感じの
本である。

 著者の山本氏は東京大学史料編纂所の教授で、江戸時代が専門のようだ。史
料の信頼性も踏まえて書かれていて、おそらく学術的にもこれが定説になって
いるのだろう。

 また、浅野内匠頭が切腹したのは今の新橋四丁目のここだとか、討ち入った
吉良邸と赤穂浪士の監視所であった美作屋善兵衛(神崎与五郎)の店は両国の
ここですよとか、忠臣蔵の重要シーンが行われた場所を地図入りで書いてある
ので、忠臣蔵の名跡を訪ねるのにも便利だ。

 もっとも一部の人には、帯にある「あなたの『忠臣蔵』観がガラリと変わる」
というのは、少々誇張に見えるかも知れない。忠臣蔵が大好きで、忠臣蔵をテ
ーマにした文学作品や映画、テレビ番組をたくさん読んで、見ている人には
「いや、それくらい知ってるよ」と言いたくなるようなところもそれなりにあ
るだろう。

 というのは、忠臣蔵作品をいろいろ見ていると、この本を参考にしているの
ではないかと思える作品がいくつか思い浮かぶからだ。あとがきによると、も
ともと2003年に中経出版から出ていた「忠臣蔵のことが面白いほどわかる本」
の全面的に改稿した本だと書いてある。ここ15年ほどの忠臣蔵が、この本の影
響を受けていても不思議ではない。

 とは言うものの、忠臣蔵を何度も見ている人でも内容の半分くらいは初めて
知ることも多いのではないか?ここを突っ込めば今までとは違う忠臣蔵が描け
るだろうとおぼしきことが少なからず書いてあるのだ。

 個人的に、忠臣蔵で史実とは違う内容として知られているのは、

・浅野内匠頭は名君ではなかった。むしろ吉良の方が慕われていた。
・増上寺の畳替えや垣見五郎兵衛のエピソードなどは史実ではない。
・討ち入り当日に雪は降っていなかった

など・・・他にもいくつかはあると思う。

 しかし、たとえば名君ではなかったと言っても、家臣から嫌われていたなん
て初耳である。江戸家老すら松の廊下の話を聞いて、内匠頭に会いに行こうと
しなかった。だから内匠頭切腹の折、江戸家老は出てこなくて、下っ端の側用
人である片岡が忠臣蔵に出てくるのである。

 内匠頭辞世の句も、でっち上げらしい・・・。んなバカなと思うが、史料を
精査するとそうなるようだから、たぶんこれが正しいのだろう。何よりびっく
りするのは、討ち入りが忠義のためではなかったと言うところだろう。

 当時の武士は太平の世であったとは言え、まだヤクザみたいな気風が残って
いた。赤穂城明け渡しで揉めたのは内匠頭への忠誠心が高かったからではなか
った。

 別に忠義をつくすふりをして再就職を有利にしようとしたとか言うのではな
い。単に武士のメンツを潰されたことに怒っていた。武士たる者、メンツを潰
されて黙っていられるか。たとえ負けるとわかっていたところで戦うしかなか
ろう。相手が幕府?上等だ!とことん暴れて死んでやるわ!

 幕府も淺野家の家臣たちがそんなことを思っているだろうと容易に想像でき
たのだろう。だから赤穂城明け渡しには浅野家の親類にあたる大名を差し向け
ている。他の大名を差し向けたら、血の雨が降るとわかっていたわけだ。

 ほかにも内蔵助の祇園遊びが芸者遊びではなく単なる花見程度のものであっ
て、別に女遊びをしていたわけでもなかったというのも初耳だ。したがってス
パイを欺そうと放蕩していたというのも事実に反する。

 とはいえ大石内蔵助はやはり優秀な家臣であったのは確かなようで、一度と
った血判状をバラバラにして「討ち入りはあきらめた」とウソ言って、怒った
者だけ信用して本当のことをしゃべるとか、芸が細かい。

 そして、なぜあのタイミングで討ち入りをしたのかの言及は、「○○忠臣蔵」
みたいな作品が出るときに使えるだろうなんて妄想したりする・・・誰か書き
ませんかね?

 ま、それはともかくとして、こういうの読むと、忠臣蔵一つをとっても、ま
だまだいろんな解釈ができて、いろんな忠臣蔵を書く余地があるのだとわかる。

 赤穂浪士のやったことは、単なるテロである。赤穂浪士はテロリストである。
忠臣蔵はテロリストを美化しすぎなのかも知れないけども、それはそれで大衆
の琴線に触れるものがあったから今日まで廃れずにいる。

 そんな作品の素材となった人たちの実際について知ることは、ある種自分の
願望を否定されることかも知れない。等身大の赤穂浪士は、自分たちとそれほ
ど変わらない人たちだったのだ。それがわかるようになるだけでも、読む価値
はあろう。


(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)

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 急に気温が下がったのか、室内着を長袖長ズボンに切り替えました。暑さ寒
さも彼岸まで、と言いますが、彼岸を待たずにこれから寒くなるのでしょうか。

 庭では咲き残った朝顔達が、困っている様子です。(あ)

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[書評]のメルマガ vol.661

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■■                              vol.661
■■ mailmagazine of book reviews         [とんでもない夏 号]
■■------------------------------------------------------------------
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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<105>2018年夏の「総括」

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→87 日常と非日常

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第104回 巡礼と殉教。殉教するために聖地を巡礼した(?)日本人

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです。

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

----------------------------------------------------------------------
■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
└──────────────────────────────────

 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

----------------------------------------------------------------------
■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
----------------------------------------------------------------------
<105>2018年夏の「総括」

 この夏は、とんでもない夏だった。
 夏のしょっぱな、6月にはまず、地震があった。

 地震発生時、わしは戸外にいたのだけど、何やら体がふらふらとして、「お
や?」とまずは自分の脳がどうにかなった、と思ったのだが、ふと見ると傍ら
の電柱が揺れ、電線がビュンビュンとしなっているのに、「あ、地震…」と気
がついた。

 阪神大震災で「震度7」を経験しているので、これくらいなら大したことは
ない(うちの辺りは「震度5弱」だった)、と判断ついて、しばらくじっとし
ていたら揺れも収まったのだが、その後、ニュースなど見ると、大阪、とくに
北摂方面がえらいことになっていた。

 本格的な夏に突入すると、今度は猛暑だ。
 「あっつ〜〜! アッツイぞ〜〜〜っ!」と過ごすうち、大雨は来るわ、台
風は、妙な方向からの奴も含めて続けざまにやってくるわ、富田林の警察は、
とんでもないヤツを信じられんようなポカで逃がしてしまうわ、その最中にま
たやって来た台風は、我が家を直撃しやがって、ベランダからいろんなものを
攫って行きやがるわ、あげくに昼ごろから停電と相成り、すぐに復旧するだろ
うとタカをくくってたら、結局夜の9時頃まで蝋燭で過ごす羽目になったり。
 その後に聞けば、朝まで電気が復旧しなかったところも、近在にはあったら
しい。

 いやはや大変な、ここ2、3日でしたね、と朝のコーヒーを飲もうとすると、
今度は北海道で地震が起こったというニュースが飛び込んできた。
 朝の時点では詳細がよくわからなかったが、時間が経つにつれ、次第にその
被害状況が明らかになってきた。
 震源地付近では「震度7」を記録したらしい。
 被害に遭われた方には、心よりお見舞いを申し上げます。

 災害以外でも、訃報もまたよく聞いた夏だった。

 さくらももこが亡くなったのは、病気だという情報もなかったので、とても
突然でびっくりした。

 さらに、その直後に「大家さん」の訃報を聞いたときには、矢部太郎『大家
さんと僕』(新潮社)を読んだ直後でもあったので、やはり突然で驚いた。

 矢部太郎という芸人をわしは知らなかったのだけど、テレビなどにはちょく
ちょく出てはいるが、あまり売れてない芸人さんらしい。
 その彼が、たまたま新宿区らしい都内の一軒家で二階を間借りすることにな
り、その「大家さん」である93歳の老婆との交流を描いたのが、この漫画。

 わざわざタクシー呼んで伊勢丹まで晩のおかずを買いに行ったり、挨拶が
「ごきげんよう」だったりする大家さんを、人との距離の取り方が苦手だった
こともあり、当初はむしろ避けていた矢部が、最初はぎこちなく、やがて加速
度的に仲良くなって、ついには一緒に旅行にいくまでになる…その過程がほの
ぼのかつ淡々と綴られて、やけに「ほっこり」とした気分にさせてくれるエッ
セイ漫画だ。

 矢部太郎は、「小説新潮」に連載したこの漫画で、手塚治虫文化賞を受賞し
ており、本職の漫画家以外がこれを受賞したのは、おそらく初めてだったんじ
ゃなかろうか。

 以前この欄で取り上げた『サラリーマン山崎シゲル』の田中光もまた本職の
漫画家ではなく芸人だったが、芸人さん、さすがに「間」の取り方がうまい。
 これからもまた、新たな「芸人漫画家」さんが登場するのでは? とも思う。

 鶴谷香央理『メタモルフォーゼの縁側』(角川書店)もまた、老人と若者の
交流を描いた漫画だ。
 市野井雪・75歳は、ある日ふと立ち寄った書店で、「久しぶりに漫画でも読
もう」と、1冊の漫画を買うのだが、「表紙の絵がきれい」という理由だけで、
中身を見ずに買ったそれは、あろうことかBLで、“そういう”漫画の存在すら
知らなかった雪はびっくりするのだが、読み進むうち次第にのめりこみ、すっ
かりハマってしまう。

 雪がBL漫画を買った店のアルバイト・佐山うららは、ややコミュ症気味な女
子高生。
 いわゆる“腐女子”でもあり、自分もその世界にのめりこんでいるBL漫画を
買った雪が、とても気になっているのだが、なかなか声をかけられない。

 が、やがてこの二人が近づき、BLを通して親密なお付き合いをすることにな
っていくのだが、矢部太郎の『大家さんと僕』同様に、世代も価値観も違う二
人が、度々「ズレ」を起こしながらも、ある共通の事象を通じて親密になって
行く過程が、すごく面白い。

 『メタモルフォーゼな〜』では、一話ごとに、例えば一人暮らしの自宅で書
道教室を開いている雪さんだが、ただ今は外国人と結婚し、パリと思しきヨー
ロッパに住んでいる娘がいることや、うららの両親は離婚していて、現在は母
親と二人暮らしなこと、父親とは月に一度「デート」する関係みたいだ、等々、
双方のバックグラウンドが、「ちょこ」「ちょこ」と小出しに開示されてきて、
ますますこの二人への興味が募る趣向。ただ今は「1巻」だけなのだが、早く
も2巻の発売が待ち遠しいのである。

 「異世代交流」は、これからの漫画で、一種の「トレンド」になっていきそ
うな気もする。

 と、この夏の漫画に関する話題を「総括」してきたわけだが、タイトルも含
めて、「総括」とカッコで括ったのが、実は本題への伏線なのだった。

 ワタクシ的に、この夏最大の「事件」は、山本直樹『レッド 最終章 あさ
ま山荘の10日間』(講談社)が発売になり、これで12年間に及んだ『レッド』の
シリーズが完結したこと、これに尽きる。

 1969年の「羽田闘争」から、「山岳ベース」での活動により、4人目の犠牲
者が出る「1971年12月31日」までを描いた『レッド』(全8巻)。
 そして、「総括」という名の壮絶なリンチによって、さらに犠牲者を増やし
ながら、山岳拠点を転々とするも、遂に警察の網にかかり、最高幹部を含む4
名が逮捕された後、山岳を放棄し残ったメンバーで「あさま山荘」に向かおう
とする「1972年2月17日」までが『レッド 最後の60日間そしてあさま山荘へ』
(全4巻)。

 2006年、講談社「イブニング」で連載を開始して以来、12年の時をかけて、
30人以上のメンバーたちをひとり一人、事実と時系列に沿って、愚直なまでに
地道にコツコツと、4年間に及ぶその群像の行動を追ってきた。
 その最後の「10日間」」を描いた「最終章」は、しかし、だからと言って物
語が高揚する部分もなく、これまでと同じく淡々と事実関係に沿って物語が進
み、淡々と人が死に、淡々と終結を迎えて終わる。

 『レッド』シリーズでは、作中でキャラクターに付された「1〜15」の番号
が、物語中で死ぬ順番を示していたのだが、これまで「15」までしかなかった
それが、『あさま山荘』に至って、いきなり「16」が登場し、さらに山荘を取
り巻く機動隊員に「17」「18」の番号が付されてあるのを見て、「はっ」とし
た。

 「15」以降の人物にも、同じ続き番号を付すことで、山本直樹は、若松孝二
の映画『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』とも違う、そして当然、元警
察官僚の佐々淳行原作の『突入せよ!あさま山荘事件』とも違う、独自の立ち
位置と視点を確保したのではなかろうか。
 すなわち、警察に代表される官憲、「犯人」側の連合赤軍、どちらの「側」
にもつくことなく、あくまで客観としての「事実」だけを並べていく。

 『あさま山荘の10日間』巻末には、当時のメンバーの一人、「岩木こと植垣
康博」が、「この作品のすごいところは、事実を無視した創作が持ち込まれて
いないことである。」との文章を寄せているが、それは、この作品への最大の
賛辞であり、また、これがきわめて良質な「記録漫画」である証しである。

 この作品が、平成最後の年に完結した、というのも、何か意味がありそうに
思えてくるのだが、ともかく『レッド』は、平成時代の漫画界が生んだ最高傑
作であるのは、まず間違いがない。

 とくに、若い世代には、ぜひともにこれを読んで欲しい、と思っている。
 彼らが「山岳ベース」の中でやっていたことは、現在の「なにか」と同じ構
図だと、少し読み込めば容易に見えてくるだろう。

 『レッド』、100年後にも読み継がれて欲しい漫画、でもある。


太郎吉野(たろう・よしの)
 2011年に神戸から西宮へ引っ越して、ただ今のホームグラウンドは甲子園。
右投げ右打ち。掛布二軍監督はひとつ年上の同級生。

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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87 日常と非日常

 豪雨、台風、酷暑、そして地震。立て続けに日本のあちこちを襲う災害、被
災地のみなさまに心からお見舞いを申し上げます。これからの復興に向けて、
心身共に疲れがでてくると思います。休めるひとときが少しでも長くあります
ように。

 大きな災害がおきると、当事者ではなくても何かできることはないだろうか、
こんな事が起きるなんてと心を寄せる人は何かしら共に傷ついていると思いま
す。

 今年2月に地元の博物館で「語りがたきものに触れて」というクロストーク
イベントに参加しました。そのとき、久保田翠さん(認定NPO法人クリエイ
ティブサポートレッツ理事長)が、東日本大震災で傷つかなかった人がいるの
でしょうかと話をされ、ああ、そうだと深く納得しました。

 私は震災から数年にわたって、本を以前のように読めなくなりました。心に
すっと入らなくなり、読むのに時間もかかるようになりました。

 なので、今回はどの本について書こうかいろいろ悩みました。
 思いついたのがこの本です。

 このメルマガでは8年前にも一度ご紹介したe.o.プラウエンのマンガが、今
年、岩波書店から新装版で刊行されました。

 『おとうさんとぼく』e.o.プラウエン 岩波少年文庫

 1985年に2冊組で刊行されたものを、内容を一部変更し1冊の形になってい
ます。

 言葉のないコママンガです。
 おとうさんとぼくの2人の何気ない日常が描かれ、言葉がなくてもやりとり
の意味はよくわかるものばかりで、読んでいるとクスクス笑いがこぼれます。

 おとうさんはぼくが大好きで、ぼくもおとうさんが大好き。
 仲良しのときもあればケンカするときもある。

 ぼくが読んでいた本をおとうさんが背中ごしに読み、そのうち夢中になった
おとうさんが、本を手によみはじめ、いつしか、ぼくがおとうさんの背中ごし
に本を読んでいます。立場が逆転してしまうほど、夢中になるおとうさんはま
るで子どものようです。

 夏休みをスペシャルなものにしようと、眠っているぼくをどこかに連れ出す
おとうさんも、何より自分が楽しみたいのではとそのワクワクぶりが伝わって
きます。

 どのエピソードも、ユーモアたっぷり、愛情たっぷり。
 
 いつ読み返しても夢中になれる、大好きなこの本を高校生の時以来、30年以
上何度も読んできました。心がざわついたときに読むとすっと落ち着けます。

 新装版にも上田真而子さんの解説が掲載され、それに加え、エーリヒ・ケス
トナーによるプラウエンについた書いたエッセイも入りました。どちらの文章
もこのマンガが書かれた背景について深く考えさせられます。

 プラウエンはナチスの時代に生きた作家です。
 上田さんの解説にはこう書かれています。

「世の中が刻々ナチスのかぎ十字とかっ色の制服にぬりつぶされていったあの
暗い時代に、いっときにしろ、自然に、自由に、心の底から笑えるものに出会
ったよろこびを、いまも回顧する年配のドイツ人が少なくありません。『おと
うさんとぼく』は全体主義の中で人間性をおしつぶされていた1人1人が、ほ
んとうの人間に出会えてほっと一息つけるオアシスでした」

 プラウエンの『おとうさんとぼく』が私にとって特別な本になったのは、上
田さんの文章があったからでもあるのです。
 その上田さんも昨年暮れに逝去され、さみしい限りですが、翻訳された本や
解説を書かれたを本を含め、これからも読み継がれていくことでしょう。

(林さかな)
会津若松在住
http://1day1book.strikingly.com/

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第104回 巡礼と殉教。殉教するために聖地を巡礼した(?)日本人

 朝日新聞の土曜日別刷版「Be」6面から7面に「みちものがたり」という
エッセー記事がある。さまざまな道について、そこを歩いた特定の人物やそこ
に伝わる伝説などを紹介している。今年の6月のある土曜日の「みちものがた
り」は、「ペトロ岐部、殉教への道 大分県「司祭になる」一路ローマへ」と
いう見出しで、17世紀に大分県国東半島出身のペトロ岐部という人が、はるば
る海を越え砂漠を渡りエルサレムを巡礼し、そしてローマで司祭に叙任され、
再び海路日本へ戻り、最期は火刑に処せられた、という内容が書かれていた。

 執筆子は不勉強で、このペトロ岐部という人のことをこの記事を読むまで知
らなかった。彼はとてつもない苛酷な人生を送った人だった。

『銃と十字架』(遠藤周作 著)(小学館P+D BOOKS)(小学館)
(2015年11月13日電子書籍版発行)
『殉教者』(加賀乙彦 著)(講談社)(2016年4月25日発行)

 両書籍ともペトロ岐部を扱った小説である。著者はふたりともカトリックの
洗礼を受けたクリスチャンである。

 徳川家が政権を握り、統一政権を樹立した時代に、キリスト教は禁制であり、
キリシタンは追放される。ペトロ岐部も日本から追放されたのち、はるばる聖
地エルサレムの巡礼を成し遂げ、さらにカトリックの総本山たるローマまでた
どり着き、司祭に叙任され、殺されることがわかっている日本へ戻る。そして
実際に処刑された。

 ペトロ岐部カスイ(本名:岐部茂勝)。
 1587年(天正15年)豊後国国東郡にて豪族の長男として出生。両親ともにキ
リシタン。
 1600年(慶長5年)、13歳の時に有馬のセミナリオに入学。
 1612年(慶長17年)と1613年の江戸幕府による禁教令により、日本国内での
布教は全面的に禁止。
 1614年、ポルトガル領マカオに追放される。
 1616年、マカオを発つ。翌1617年にポルトガル領インドのゴアに到着。
 1619年の年初に、エルサレムへの巡礼を経て、ローマに向かうべくゴアを出
発。同年5月、聖都エルサレム着。
 1620年、大都ローマに到着。このローマでカトリック司祭に叙任された。
 1623年、リスボンから喜望峰を回り、1624年にゴアに辿り着く。
 1625年、ゴアからマニラへ向かい、さらにマカオに到着。
 1627年、マカオからシャムのアユタヤに向かう。
 1629年、アユタヤからマニラへ。
 1630年、マニラから日本へ出発する。7月中旬、薩摩国坊津着。さらに長崎
へ。
 1633年、陸奥国伊達藩へ移動。
 1639年、捕縛。江戸へ護送ののち、同年7月4日腹を火で炙られ殉教。享年
52歳。

 このように淡々と彼の行動を記載してみて、そこにさまざまなドラマがある
だろうということは想像できるが、それが実際にどんな様子だったのかは、残
された資料がすくないこともあり、想像するしかない。
 しかし、ものがたりを紡ぐ小説家は、彼、ペトロ岐部カスイの人生を想像の
帆を膨らませて、見事に再現した。

 遠藤氏の『銃と十字架』では、キリスト教が西洋諸国による植民地支配の尖
兵となっていることとそれでも純粋に信仰心を持って教えに殉じようとする日
本人の姿。そのふたつの要素をあぶり出している。バテレン追放令によって、
日本からマカオに脱出したことの負い目。日本に残って布教活動をしている仲
間はたくさんいたが、彼、岐部は結局、迫害から逃げたわけであり、その汚名
をそそぐためにローマまで行き、司祭叙階され、日本に戻り殉教する。彼の殉
教は、その負い目ばかりではない。西洋の植民地拡張主義とキリスト教が同じ
ではない。ということを証明しようとして日本に戻ったのだ。キリスト教は純
粋な宗教であり、日本人でも信仰を持って殉じることができる、ということを
訴えるために殺されることがわかっている日本に戻った。題名の銃は植民地拡
張主義の象徴であり、十字架は純粋な信仰の象徴である。

 加賀氏の『殉教者』は純粋な信仰心を全面に出して、さまざまな差別や迫害
に耐えて本物の信仰心を持っていることを証明しようとした主人公、岐部の姿
を描いた。マカオのイエズス会では、日本人だから、という理由で叙階を拒否
された。ならばローマで叙階してもらおうと壮大な計画を立てて、実行してし
まう。17世紀に日本からローマまで自力で行った日本人はそれほど多くはない。
そして岐部をしてそれをさせたもうたのは、ひとえに信仰心であろう。マカオ
での辛酸やゴアでの憔悴。そして砂漠を越えてエルサレムや死海での高揚感。
さらにローマでの安堵と静謐な勉学の日々。さらに帰国を決めてリスボンから
の帰途での苦労。その帰途は筆舌に尽くしがたいものだったようだ。海と密林
と砂漠と都市と。異文化の中に身を置きながらも自分を忘れずに、日本で待っ
ている信徒たちと共に生きていきたい岐部の精神力が日本まで彼を辿り着かせ
た。九州での布教が難しくなると、彼は仲間とともに奥州仙台藩に潜入して布
教活動をしている。しかし1637年(寛永14年)の島原の乱が国内で残ったキリ
シタンたちにとって致命的な出来事になってしまった。単純な農民による一揆
がキリスト教と結びついていると幕府は早合点をして、さらに念には念を入れ
た大弾圧を行った。仙台藩でも同様。捕まるのは時間の問題となり、ついに密
告により捕まってしまった。江戸に送られ壮絶な拷問の末、岐部は腹を火で炙
るという残酷極まりない刑罰で処刑された。

 なによりも優先される信仰心とは一体なんなのだろう? 生き続けることよ
りも殉教することに価値を置かなければならなかったこの時代に生まれてしま
った不幸、ということだけで片付けてしまうことはできないほど、このテーマ
は重い。


多呂さ(すごい夏でしたね。暑さはともかく、災害がこんなに身近に感じられ
るとは。)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 こちら、今日は何やら曇天で涼しい一日なのですが、大雨でも降るのではな
いかと少し警戒してしまいますね。

 台風や地震以外にも、うちの近所では今年は雷雨が多く、瞬間的な停電を何
どか経験しました。

 今年はこれからの台風や大雪にも、警戒が必要かもしれませんね。(あ)

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[書評]のメルマガ vol.660

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★「音楽本専門書評 BOOK’N’ROLL」/おかじまたか佳
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★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→ 『泣いた赤おに』(浜田広介・著)

★「目につく本を読んでみる」/朝日山
→ 『みんなちがって、みんなダメ』中田考 ベストセラーズ

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#98『音楽はなぜ人を幸せにするのか』

 前回『透明人間の告白』を取り上げ、窮地に立たされた主人公がハイドンを
聴いたことに違和感を覚えたと書いた。そんな時にハイドン、聴くかなぁ、と。

 とはいえ、じゃあ、自分だったら何を聴くだろう、と考えてみれば、案外答
えるのが難しく、「少なくともハイドンじゃない」としか言えない。
 それは、そもそもどうして音楽を聴くのかが曖昧だからではないのか、とい
う気がした。

 そこで、本書『音楽はなぜ人を幸せにするのか』を手に取ってみた。

 ほとんどタイトルだけのチョイス。著者・みつとみ俊郎についてもまったく
知らない。本書の紹介によると、青山学院大学卒、渡米して南イリノイ大学と
ミシガン州立大学で音楽を学び、帰国後はスタジオ・ミュージシャン、作曲家
として活動しているという。

 読んでみると、文章的に少々問題もあるし、いろいろな問いを設定するもの
の、結局その答えがわかりづらかったりもする。
 しかし、逆に言えば、音響学的な視点、心理学的な視点、音楽史的な視点、
医学的な視点、脳生理学的な視点と、実に多彩な知識を駆使して、広範な角度
から音楽を聴く理由について考察しているがゆえのわかりにくさでもある。

 そうなのだ。一口に音楽を聴く理由と言っても、こんなに多様なアプローチ
があるのだ。本書を読んで一番心に残ったのは、実はこれだった。

 音楽療法のように、具体的なメリットを期待して研究する人たちがいる。
 新しい音楽を創造しようとする、音楽家たちの哲学的な問いかけがある。
 音だけではなく、匂いや触覚も含めて、人間の感覚や認知機能に迫ろうとす
る学者もいる。
 それだけ、音楽は謎の深いものなのかもしれない。

 そうした議論の筋道は、本書を辿っていただくとして、ここで一足飛びに、
ぼく自身の問い――人はなぜ音楽を聴くのか――に対する、著者の結論を書い
てしまうと、「音楽は異世界への鍵だから」ということになる。

 あのー、最近NHKでやっている『チコちゃんに叱られる』という番組、ご
存知?
 永遠の5歳という設定の少女キャラ・チコちゃんが、大人に素朴な質問をす
る。大人たちはあまりにも素朴すぎて答えられず、「ボーッと生きてんじゃね
ぇよ!」と叱られる、という番組だが、じゃあ、答えは何?という段になって、
チコちゃんは常に判じ物めいた答え方をする。もちろん、視聴者の「え? ど
ういうこと?」という好奇心を煽り、回答VTRに繋いでいくレトリックなわ
けだが、この「音楽は異世界への鍵だから」という答えも、それに類する判じ
物めいたところがある。

 くわしく見ていこう。

 まず著者は、「異世界」にはふたつの意味があると言う。

 ひとつは、恐ろしい世界。死の予感を孕んだ不浄の世界である。
 しかし、そこへどうしても行かなければならない時が、人間にはある。そう
いう場合、人はどうするか?
 自らを鼓舞するために、歌うのである。

 その端的な例として著者は、子供の頃、夜、トイレにひとりで行くのが怖か
った経験を挙げる。その恐怖を克服するために、歌をうたったと。
 確かに、夜のトイレが怖かった覚えはぼくにもあるが、しかし歌ったという
記憶はない。だって、他の人が起きちゃうでしょう。

 まあ、それでも言わんとするところは理解できる。
 トイレは不浄の場所であり、忌避される。そこには根源的な恐怖がある。だ
から学校の怪談で、花子さんがいるのはトイレでなければならない。
 しかし、そこは同時に、行かなくてはならない場所でもある。特に夜、おね
しょを避けるためにはどうしても行かなくてはならない。
 そこで、自らを励ますために歌をうたう。その気持ちはわかる。

 そう言えば、景山民夫のホラー小説にも、主人公たちが怪物と対決するため
に、深夜のプールに行くシーンがあった。ちなみにアメリカのホラー映画でも、
最終対決の場所がプールというのは実に多い。江戸時代の幽霊が出没したのも、
川縁の柳の下だ。異形のものは湿気を好む。これは洋の東西を問わず、真実な
のかもしれない。

 それはさておき、いざ出陣という時、既にいい大人の主人公たちは、歌をう
たうのである。
 しかも、曲は『ミッキー・マウス・マーチ』。
 能天気なほど明るいあの歌が、彼らに怪物と対峙する勇気をくれるのだ。

 つまり、人は恐ろしい異界に敢えて立ち向かう時、音楽を必要とするわけだ。
これはまさに、『透明人間の告白』の主人公がハイドンに求めたものだろう。
 舞台となるニューヨークはごく普通の都会であるが、自分が異分子である透
明人間になった瞬間に、そこは異界へ変貌する。
 だから、この街でなお生きていこうとする勇気を、主人公はハイドンに求め
たということだ。
 さほどハイドンを聴いていないけれど、例えば『トランペット協奏曲』辺り
であれば、辛うじて『ミッキー・マウス・マーチ』的な鼓舞する力はあるかも
しれない。

 一方、もうひとつの異界とは、祝祭的な儀礼空間である。
 古代から、ハレの儀式に音楽は欠かせないものだった。中国では礼楽が整備
され、それが日本に伝わって雅楽となった。ヨーロッパではグレゴリオ聖歌が
キリスト教的な天国の表現として発展し、クラシック音楽の礎になっている。
 神的な異世界へ通じる扉を開けるために、音楽が必要だったのである。

 現代でも、大掛かりなロックフェスは、ひとつの祝祭空間と言っていい。宗
教を失いつつある現代人は、宗教儀礼の代わりにフェスを生み出したのかもし
れない。

 そもそも、音楽の起源には、神秘の感覚が横たわっていると思う。
 洞窟で声を出した時、思いがけず複雑に反響したり、小さな骨の欠片を叩い
た時、予期しないほど綺麗な音がしたり。そんな経験は古代人にとって、ひど
く神秘的に響いたのではないだろうか。

 そして、その感覚は今でも生きている。ぼくもギターを何気なくいじってい
て、思いがけず不思議な和音を探り当てたりすると、ちょっと神秘を感じるこ
とがある。
 そうした、音そのものの魅惑が音楽の根底にはあり、そこから宗教儀礼まで
はほんの一歩の距離なのだ。

 しかし、音楽が「怖い世界」と「神秘的な世界」ふたつの異世界への鍵だと
しても、やはりある人生の瞬間に、誰のどの曲を必要とするかは人によるし、
そのメカニズムはやはりわからない。

 音楽は謎であり、だからこそ魅惑的なのだろう。


みつとも俊郎
『音楽はなぜ人を幸せにするのか』
発行 2003年5月15日
新潮選書

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
4月頃、8月くらいには再就職先も決まっているんじゃないかと根拠なく思っ
ていましたが、未だ浪人中。でも、いつしかこの生活にも慣れてきて、焦りは
まったくありません。いいことなのかどうか。先月は人のバッキングを頼まれ
て、『愛燦燦』のギターを弾いたのですが、Youtubeの映像を流しながら練習
していて、驚いたのは美空ひばりのタイム感。バックの演奏に対して相当遅い
のですが、まったくモタることがない。ちょっとビリー・ホリディを連想しま
した。改めて、すごい歌手だなあ。

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■「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
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失ってからわかる大事なこと
『泣いた赤おに』(浜田広介・著)

 元スマップの中居正広君が「BEST FRIEND」を歌うと泣いてしま
うように、だれにも触れるとなぜだか泣いてしまうコンテンツがあるのではな
いでしょうか? おばちゃまの場合は童話の『泣いた赤おに』(浜田広介)で
す。理由はわかりませんがなぜか最後のシーンになると必ず涙腺が緩みます。
最近、おばちゃま、自分が青鬼になるかも・・・なシチュエーションが起きた
こともあり、久々にこの作品を読み返してみました。

 『泣いた赤おに』のストリーはご存じですよね。ある村に赤鬼が住んでいて
人間と仲良くしたいのに、村人は鬼というだけで恐れて近寄ろうとしない。へ
こんでいると、友だちの青鬼が来てプレゼンする。それは青鬼がわざと村人に
乱暴をして、それを赤鬼が助けることで、村人の信頼を得ようという作戦。作
戦はうまくいって赤鬼は村人と仲良くなれるのですが、ある日、ふと青鬼が心
配になって彼の住処に行ってみると、だれもいなくて「あなたと仲良くすると
村人に作戦がばれるから僕は長い旅に出る。君は村人といつまでも仲良くして
ください」という手紙が残してありましたというお話。

 正直言いますね。今回、読むたびに泣いていたのに泣きませんでした。年齢
を重ねてもう涙も乾いてしまったのか、私。もう感情さえも干上がってしまっ
たのかと不安になりましたよ。

 でも別の面も見えてきました。若いころこの話を読むたびに泣いていたのは、
強いて言えば青鬼の友だちを思う気持に共鳴して感情が揺さぶられたのだと思
います。仲良しの鬼の窮地を身を呈して救い、自分は姿を消すという自己犠牲
精神に泣けたのだと分析するわけですが、今回読んだら、赤鬼の心情に共鳴し
てしまいました。

 赤鬼、不器用なんですよね。村人と仲良くなりたいのにうまくなれない。そ
の前に、鬼なのに人と仲良くなりたいと望んでいる。おもてなしのセンスやイ
ンテリアの知識があり、高級なお茶やお菓子を用意する財力がある。(財源ど
こ? 他からの略奪?笑)。このアンバランスな望みを傍で見ている青鬼はた
ぶん、人と仲良くしようとも思わず、自分のテリトリーで行動しようとする常
識人だと思います。

 しかし、赤鬼にあふれるばかりの友情を持っていて、もしかしたら心のどこ
かで彼自身も村人との異種コミュニケーションを望んでいて、友だちの身の丈
に合わない望みをかなえようとしたのではないでしょうか。では、なぜ青鬼は
赤鬼に二度と会えないように長い旅に出たのか、それがこの童話の最大のポイ
ントですね。

 青鬼はたぶん、友だちを助ける力量があるぐらいなので、人間力というより
鬼力がありますから、遠い町でもやっていけるでしょう。

 しかし、赤鬼はそれができません。そして若干、無理な背のびをしている。
今回読んで一番気になったのは赤鬼のムリなコミュニケーションですね。
 
 赤おには自分でお茶をだしてきました。おかしも自分で運んできました。な
んとおいしいお茶でしょう。なんとおいしいおかしでしょう。
 これまでこんなにおいしいおかしをたべたというものが、ただのひとりもい
ませんでした。
 
とあります。「え?村人、お茶とおかしが目当て?」 長い目で見たら赤鬼の
不器用なコミュ力がもつかどうかは疑問です。それでも人と仲良くなりたい赤
鬼の心情もせつないのですが、もっとせつないのは、自分を思ってくれる本当
の友だちは青鬼であるとわかったときにはもう、その人はいないということで
すね。

 これは人と人が(鬼と鬼が)別れていく物語。

 そして、本当に大事なことは失ってからわかる。

 赤おには、だまってそれ(手紙)を読みました。
 二ども三ども読みました。戸に手をかけて顔をおしつけ、しくしくとなみだ
をながして泣きました。

・・・いろいろ思い、やはり今回も涙腺が緩んでしまいます。


大友舞子(おおとも・まいこ)
昭和20年代生まれのフリー編集&ライター。関東生まれで関西在住。

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『みんなちがって、みんなダメ』中田考 ベストセラーズ

 サブタイトル「身の程を知る劇薬人生論」である。「身の程を知る」と「劇
薬人生論」って矛盾しているじゃ?なんて事も思うが、書いているのは、あの
中田考センセである。

 イスラム法学者にしてカリフ制復興を主張するアジテーター。そして公安が
周囲をうろうろする「危険人物」が書いているのだ。ひとくせも、ふたくせも
ある内容に決まっている。

 果たして内容は、冒頭いきなり。「人間はみなダメです」と書いてある。た
とえぱ、「炊事場の奥にしまってあった、わさび茶漬けの素を食い散らかした
憎きネズミが今どこにいるのか、どうすれば退治できるか」こんなことすらわ
からないと言う。

 そのこころは、「私たちは自分が本当に知りたいことを、何か一つでも知っ
ているでしょうか?」ということ。すぐそばにいるネズミ相手でもろくな対処
ができないのに、社会がぁとか言ってるのってアホちゃうかというか、アホだ
ろということ。

 だからいって、人間はダメな存在なのかというと、そうではない。ネズミに
は微分方程式も万有引力の法則も知らないが、どうやって生きていけばいいの
かは知っている。しかし人間は、ネズミも知っていることを知らない。知るべ
き事を知らない者はどんだけ知識を持っていようがバカであると中田先生は言
うのである。要は生きて行く方法だけは知っておけってことですね。それだけ
分かっていれば、賢く生きて行ける。

 で、だったら賢くなる方法を教えてくれるのかというと、さにあらず。そう
ではなくて、ダメなりの生き方を教えようとするのが、この本の内容だ。

 結論を言ってしまうと、一部の天才肌の人は別として、人は「周囲の真似を
して」「親分についていく」のがいいという。いわゆるリベラルが嫌う生き方
だ。なぜそんな生き方がいいのかと言えば、自己承認要求などを持たず、身の
程を知る生き方が平安に生きる最もよい方法だからである。

 そうした考えの背景にあるのは、中田先生のことであるからイスラムの教え
なのだけども、同時にリベラル、ないしは自己啓発に対する猛烈な反発がある。
リベラルは能力のない者に「あなたは有能だ」とささやいて人を不幸にしてい
る。たとえばミミズに「おまえは蛇だ」と吹き込んで、蛇同様に土の中から地
表に出て行けと言う。そのことばを信じて地表に出たミミズは蛇に喰われる。
そんな風になるくらいなら、地中に隠れてろよというわけ。

 もう、夢も何もあったもんじゃないけども、筋は通っている。で、ここで納
得してしまうと、「あなたが不幸なのはバカだから」とか「教育(学校)は洗
脳だ」とか「ヤズィーディ教徒は滅んでもかまわない(滅ぼすべきだと言って
いるのではない)」とか刺激的な文章が並ぶ。民主主義とか自由にも批判的だ。

 そして、最後に、おそらくはセールス上の要請からだと思うが、ベストセラ
ーになっている「きみたちはどう生きるか」を読むとバカになると断じるので
ある。

 コペルニクスになれそうもない連中にコペルニクスになれというのは人を不
幸にすることだ・・・そもそも、この本の書かれていた時代と今は違う。にも
かかわらず、自己啓発としてこういう本を発掘してくるのはよくないと断じる。
要は承認要求なんて持たずにいるほうが幸せだと言うことだ。当然自己実現な
ど不要である。

 読んでいて、こいつは何を言い出すんだと思う人も出てくると思うが、実際
そういう生き方をしていて幸せな人は世の中にたくさんいる。いや、ほとんど
がそうだと言ってもいいかもしれない。

 日々の仕事を人並みにこなし、本などほとんど読むことないから、モノを考
えることもない。仕事を終えたらテレビのワイドショーやレンタルビデオなど、
そのへんに転がっている娯楽を楽しむ。

 周囲と同じことをしていたら、波風は立たないし、難しいことは「えらい人」
が考えてくれるから精神的にもラクである。

 もっとも、これを突き詰めれば、周囲や上の言うことに疑問をもたない人間
になることこそ良い生き方になる。となると、周囲や上が悪ければエルサレム
のアイヒマンみたいな凡庸な悪に染まってしまうことも危惧されるのだけど、
今の日本でそんなことになるとは思えない。過激行動に出る者は、思想が何で
あれ排除されるからだ。

 そんなことを考えると、いわゆる向上心を持つことが人に不幸を強いること
になるというのは、確かに一定の説得力はあるように思う。

 しかし、そうであるなら、本を読むことに何の意味があるだろうとも思うけ
ど、現実には向上心のある人は本なんて読まなくても向上心を満たすべく努力
はしているだろう。

 と、そこまで考えて気が付いた。自分が出来ることをするのは良いのだ。し
かし自分の能力を超えた向上を目指そうとするからしんどくなる。要は身の程
を知れと言うことなんだなと思っていたら、よく読めばそう書いてある。

 向上心を否定しているようで、実際は向上心を持ってもいいが、無理なレベ
ルまで目指すなということ。自己啓発を否定しているようで、実際はそうでは
ない。

 「劇薬人生論」ということだが、実際は正統派の人生論の本である。


(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・『ヒューマン ─ 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510

・『支え合い・学び合いで育つ「わたし」』(エディット・パルク)
  http://web.kyoto-inet.or.jp/people/cogito/%8Fo%94%C5%88%C4%93%E0/%8Ex%82%A6%8D%87%82%A2%81E%8Aw%82%D1%8D%87%82%A2.html

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
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 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

 〒142-0041 東京都品川区戸越5-4-3 アズ品川ビル4階
       ビズナレッジ株式会社内 [書評]のメルマガ 献本 係

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンや楽天などのオンライン
 書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。つまり
 は当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願いしま
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■あとがき
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 お盆あけたらずいぶん涼しくなりました。暑さが恋しいなんてことはないで
すが、このまま一気に秋になるのでしょうか?

 季節の変わり目、体調も崩しやすいかと思います。御自愛ください。(あ)

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[書評]のメルマガ vol.659

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■■ [書評]のメルマガ                2018.08.10.発行
■■                              vol.659
■■ mailmagazine of book reviews     [例年になく暑さが厳しく 号]
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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<104>「関西りゃくご」についての一考察

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→86 空は高く青く、夜空には星がまたたく

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第103回 読書をする意味。人はなぜ読書をしなければならないのか。

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→人事の超プロが明かす評価基準(西尾太著 三笠書房 2015/11/18)

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 人間総合科学大学 金子様、井上様より、下記の書籍の献本を頂戴しました。

 久住眞理/久住 武・著『ヒューマン ― 私たち人類の壮大な物語』
 (発売:紀伊國屋書店  発行:人間総合科学大学)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<104>「関西りゃくご」についての一考察

 年年歳歳、夏という季節への「イヤ!」度が増してくる。
 「夏」とか「夏休み」というフレーズに胸躍らせ、ワクワクしていた時代も、
確かにあった。確かにあった…が、それはすでに遠い昔の記憶だ。

 いつごろからですかねえ? 夏が、一年で一番イヤな季節になったのは……

 今年はまた、例年になく暑さが厳しく、最高気温「40℃超」という地域が続
々と出現しているし、京都では、「最高気温38℃以上」という日が、7日間に
わたって続くという異常事態が出来した。
 大阪でも神戸でも、天気予報で「猛暑日」のマークがつかない日はない、と
いうこの7月から8月。

 ふと思い出してみたのだが、わしらが幼少のみぎり、気温が30℃を超えると、
「ふえ〜〜〜っ! 30℃!」と皆でたまげていたのだ、確かに。
 あの頃は、30℃が「暑さの限界点」で、それを超えて「35℃」とかになると、
それはもう限界を超えた「異常な暑さ」と認識されていた、と思う。

 「日射病」というのはあったが、「熱中症」というのは、認識されてなかっ
たし、そもそもそんな「病名」すらも存在しなかった…と思うのだけど…あっ
たのかな?

 その暑いさなかに、今年もまた甲子園では夏の高校野球が開幕した。
 今年は「100回記念大会」とのことで、史上最多56校が出場して、賑々しく
も始まった開会式では、式典の途中で「熱中症対策」もとられていたようだ。
 しかし、わざわざ式を中断して「給水タイム」設けるくらいなら、壇上での
お偉方の挨拶をこそ、短縮、あるいは省略してやれよ…と思ったのは、わしだ
けでしょうか。

 その開会式があった日に、甲子園駅で電車を待っていた時のこと。
 「あの、三宮へ行きたいんですが?」
 と、関東イントネーションで駅員に問う男性がいた。
 「三宮やったら、次の次の直通特急が一番早いです」
 と駅員は、ホームの屋根からぶら下がっているディスプレイを指して答える。
 「ああ、この姫路行き、ですか?」
 「え……? あ、そうです、それに乗ってください…」

 この会話で、最後の駅員の答えが、「え?」と一拍間が空いたのは、関東お
じさんの「姫路」が、一瞬わからなかった故だ。
 全国から人が集まってくる高校野球のこの時期、この「姫路」は、駅で電車
で、実によく耳にする。

 関東の人に多いのだけど、「姫路」を、標準語の「姫」につづけて「ジ」と
発音する。
 すなわち「ヒめじ」、竹久夢二の「夢二」、または「テレビ」と同じアクセ
ントで発音するので、駅員もまた「え?」となるのだ。

 「姫路」は、「ひメじ」と、「しめじ」「夢路」と同じアクセントで発音す
るのが、正しい。

 70年代にスマッシュヒットした↓この曲、歌詞に「姫路」が出てきますが、
きちんと「ひメじ」と発音されています。

 https://www.uta-net.com/movie/215520/

 この東西でのアクセントの違いは、会話の中で思わぬ誤解を生むこともある。
 東京時代、同僚と二人、車で仕事先に向かっていたときのこと。
 「雲が出てきたなァ…」と、フロントガラスから空を見上げてつぶやいたわ
しに、「どこ…? おいおい、蜘蛛なんてどこにもいねーよ!」と、板橋生ま
れの彼は返すのだった。

 学生時代、あれは国語国文学の授業でだっけか、壇上の先生が「この中に関
西出身の人、います?」と言うので手を挙げた。
 「じゃ、あなた、これを読んでみて」
 と先生が黒板に書いたのは、「雲」「蜘蛛」「橋」「箸」。
 先生はさらに、東京出身者を指名して、わしと交互に「くも」「くも」「は
し」「はし」と読ませると、わしの「蜘蛛」は彼の「雲」だし、彼の「橋」は、
わしの「箸」なのだった。

 と、上記同僚との車中で、そんなことを唐突に思い出したりも、した。

 日本全国画一化が言われて久しいが、関東・関西の間には、まだまだ深い川
がある。

 やはり70年代、わしが学生の頃なのだけど、何かの雑誌で、誰だか忘れたけ
ど、近頃…って、つまりその頃の、東京におけるある風潮を憤っている文章に
接したことがある。

 彼が憤っていたのは、そのころ開通した「環状七号線」「環状八号線」とい
う道路の略称だった。
 既に一般に浸透していた「環七(かんなな)」「環八(かんぱち)」という呼称
を、彼は「東京らしくない!」と、激しく憤っていて、それを「関西の悪い影
響だ」と断定していた。

 言われてみれば確かに、「かんなな」「かんぱち」は、「うえろく(上本町
六丁目)」、「てんろく(天神橋筋六丁目)」、「たによん(谷町四丁目)」、
「がもよん(蒲生四丁目)、等々に通じる、大阪的な略し方かな? とも思え
る。

 その文章では、「正統的な東京風略称」では、「環状七号線」「環状八号線」
は、それぞれ「環状線」あるいは「七号線」「八号線」と略されなければ「な
らない」と断じているのであった。

 さらに彼は、伝統的な東京風地名省略形として、「新宿=ジュク」、「池袋
=ブクロ」、「渋谷=ブヤ」、「新宿二丁目=二丁目」というのを列挙してい
たのだけど、わしは、十と数年間東京に住んでいて、「二丁目」はともかく、
「ジュク」「ブクロ」、あるいは「ブヤ」と呼称する人には、とんと遭遇の機
会を得なかった。

 東西の略称の違いとしてよく提示されるのが、「マクドナルド」と「ユニバ
ーサル・スタジオ・ジャパン」だ。
 すなわち、東の「マック」「USJ」に対して、西の「マクド」「ユニバ」。

 これについては、先日、偶然見ていたテレビで、言語学者の金田一秀穂氏が、
実に明確な解説をしてくれていて、おもわず「なるほど!」と膝を打ってしま
ったのだった。

 それによると、関西弁というのは「母音をはっきり発音する」言語で、だか
ら「まァくゥどォ」「ゆゥにィばァ」ならしっくり発音できるのだけど、間に
促音や長音の入る「マック」「ユーエスジェー」では、「まァッく」「ゆゥう
えすじェえ」と、とても発音しづらい、なので、「マクド」「ユニバ」で定着
した、というのである。

 言われてみれば、「長音省略」もまた、伝統的な関西的略語の方法だ。
 「天王寺」→「てんのじ」や、「阪神高速」の省略形である「阪高」を、
「はんこ」と呼ぶのもまた、その一例だろう。
 落語の笑福亭松鶴一門の芸名には、この長音省略形が多用されている。
 「松鶴」→「しょかく」が、そもそもそうだし、「鶴光」→「つるこ」、
「鶴瓶」→「つるべ」等々。

 昔、鶴光や鶴瓶らが東京へ進出したころ、大阪のラジオでキダ・タローが、
東京のテレビが彼らの名を「つるこう」「つるべい」と呼ぶのを、「ちゃんと
呼んだらんかい!」と、かなり激しく憤っていたのを、聴いた覚えもある。

 ちなみに、阪神高速の略称「はんこ」は、「判子」ではなく、「鶴光(つる
こ)」と同じアクセントである。

 やや変則的な略語としては、「中間音省略→促音+拗音化」というのがあっ
て、「松屋町=まっちゃまち」、「一番=いっちゃん」などが、これにあたる。

 「略語」ではないのだけど、語調を整えるための「撥音挿入」という例は、
「馬場町(ばんばちょう)」などの読みに見られる。
 明石の「魚の棚商店街」は、表記にわざわざ平仮名の「の」が入っているに
も関わらず、もっぱら「うおンたな」と読まれている。

 そんな関西弁を文字表記する際、そのままで表記すると、やたらと「もっさ
り」してしまうのである。
 たとえば、「めっちゃおもろうて、わろたわろた」とすべて平仮名で表記す
ると、なにやらそれは狂言のようで、妙に間延びがするし、ひらがな表記では、
イマイチ意味が通じにくい。

 なので、わしの場合は、これを、「面白ォて」とした上で、「おもろ」とル
ビを打ち、「笑ろた笑ろた」と表記するようにしている。
 「笑うた」と表記すると、ますます「狂言」になってしまって、テンポのい
い関西弁になってくれないのである。

 田辺聖子は、関西弁を文字表記する際、「なにしとんねン」「あかんねン」
と、カタカナの「ン」表記で、「もっさり」を抑止してテンポのいい関西弁を
表現している。

 先日、西加奈子の小説『ふる』(河出文庫)を読んだのだ。
 西加奈子は、『こうふく みどりの』(小学館文庫)を読んだとき、そのリ
アル版「じゃりんこチエ」的世界観の中で、大阪弁、それも「もっさり」では
ない、とてもテンポのいい大阪弁の表現が「うまいな」と感心したのだけど、
今回読んだ『ふる』は、大阪出身でただ今は東京に暮らす「池井戸花しす(28
歳)」が主人公。

 小学生のころのあだ名が「どォやん」で、現在は、東京の小さな会社で、ア
ダルトビデオの女性器にモザイクをかける仕事をしている現在は、「イケちゃ
ん」とか「池井戸さん」と呼ばれる彼女は、東京でも相変わらず大阪弁を喋っ
ていて、そんな彼女が人に感謝を示すときに発する言葉が、「ありがとう」で
はなく、「ありがとぉ」と表記されるのだ。

 この表記を見たとき、「おおっ!」と思った。
 「ありがとう」ではなく、「ありがとぉ」と表記すると、「アりがとう」と
いう標準語イントネーションではなく、「ありがトォ」という、尻上がりの関
西イントネーションに、ごくごく自然に読めてしまうではないか。

 黒川博行もまた、関西弁のニュアンスをテンポよく文章に表現するのに長け
ているけど、女性作家なら、ただ今現在では、まず西加奈子だな、と改めて思
ってしまったのだった。

 ちなみに、「ラジオ」「テレビ」という外来語もまた、関西弁では標準語と
アクセントを異にしていて、「ラじお」ではなく「らジお」、「テれび」では
なく「てレび」と発音するのだが、その昔の「ナショナル(松下電器)」のCM
ソングでは、正しく関西アクセントでもって「らジお」「てレび」と歌われて
いる。

https://www.youtube.com/watch?v=-4ZQxmb6unc


太郎吉野(たろう・よしの)
 2011年に神戸から西宮へ引っ越して、ただ今のホームグラウンドは甲子園。
右投げ右打ち。掛布二軍監督はひとつ年上の同級生。

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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86 空は高く青く、夜空には星がまたたく

 酷暑が続き、各地で最高気温を記録しています。
 豪雨被害の被災地ではまだまだ生活再建に時間がかかり本当に大変ですが、
休めるときは少しでもゆっくりできますように。

 さて、夏休みの季節になり、涼しい部屋で本を読む時間をもてているでしょ
うか。
 最初にご紹介する絵本は、7つの国、それぞれで暮らす子どもたちが描かれ
ています。

 『わたしのくらし 世界のくらし
   地球にくらす7人の子どもたちのある1日』
       マット・ラマス 作・絵 おおつかのりこ 訳 汐文社


 イタリア・日本、イラン、インド、ペルー、ウガンダ、ロシア、これら7つ
の国に住んでいる子どもたちの様子が見開きいっぱいに紹介されます。

 子どもたちの表情、学校に着ていく服、授業の様子、学校の先生、名前の書
き方、放課後の過ごし方――。

 見開きに複数の国の子どもが紹介されているので、様子の違いがひとめでわ
かります。どんな洋服を着ているのか、どんな遊びをするのか、食べ物はどう
いうものを食べているのか。丁寧に描かれた絵から、その先にある生活のリア
ルさが感じられます。

 作者のマット・ラマスさんは、この子どもたちが、その国や文化の代表だと
はいえませんと説明を加えています。代表ではなくても、自分たちの国以外の
生活をみることは、世界を広げてくれます。違っているところ、似ているとこ
ろ、知るのは楽しい読書体験です。
 それに鳩や猫、馬なども描かれているのですが、動物は各国ほとんど同じで
す。私は鳩が食べ物をついばむ小さなシーンが大好きです。どのシーンも、何
が描かれているのか観察し、発見があります。

 巻末には用語集もあり、例えば、ごはんのページに登場する料理がどんなも
のか教えてくれるので、食べたことがなくてもイメージがわきます。

 そしてなにより私がこの絵本でハッとしたのは7つの国の子どもたちの共通
点です。互いの国で同じにみえるものがあることに、あらためて感動し近しさ
を感じます。
 ぜひみてみてください。

 次にご紹介するのはいまの季節にぴったりの絵本。

 『すいかのプール』
 アンニョン・タル 作 斎藤真理子 訳 岩波書店

 今年は韓国文学がにぎやかで、翻訳者の斎藤さんのお名前をよく見かけます。
絵本にも活躍の場が広がっていて、うれしいかぎり。

 本文を引用します。


 「まなつのお日さま あっつあつ。
  すいかはすっかり じゅくしてます。

  すいかのプールの プールびらきです。」


 すいかプールの管理人さんでしょうか。大きな麦わら帽子をかぶった白髪の
おじさまが、すいかプールをチェックします。


  「うーむ、きもちいい

 プールびらきを知った子どもたちは、走ってプールに向かいます。

  たっ たっ たっ たっ たっ たっ」


 足音が聞こえてきそうです。

 この足音にはじまり、絵本には音がいっぱい登場します。
 すいかプールに入る音、ちゃぽーん。
 さっく さっく さっく さっく
 足でぴちゃぴちゃすれば、すいかジュースもたまります。

 子どもだけでなく、妙齢の大人も楽しんでいるのに、ニヤニヤします。
 暑いですからね。

 プールのまわりの出店も味があります。

 夜になり、最後の子どもが帰ると、すいかプールも店じまい。

 絵本の中に入りこみたくなる、引き込み力抜群のお話です。
 夏の間にぜひ読んでください。

 続いて、こちらもいまの季節にぴったりの絵本。

 『おやすみなさい トマトちゃん』
     エリーザ・マッツォーリ 文
          クリスティーナ・ペティ 絵
             ほし あや 訳 きじとら出版

 今年の東京都板橋区いたばしボローニャ子ども絵本館主催、
 いたばし国際絵本翻訳大賞〈イタリア語部門〉受賞作品です。

 きじとら出版では、翻訳受賞作の絵本を刊行しており、本作は今年受賞した
ものです。

 表紙で大泣きしているのは、主人公のアニータ。
 トマトが大嫌いでいつも残しているので、とうとうおかあさんはトマトを食
べ終わるまで、トマトと一緒に部屋にいるようアニータに言いました。

 アニータはいつか気が変わって呼んでくれると、楽観的にかまえていました
が、なかなかそうならず、おなかはすくばかり。

 他にすることもないので、トマトを相手におかあさんごっこをはじめます。
 アニータはおかあさん役。
 あやして、遊ばせて、寝かしつけて、そして……。

 トマトはリアルな写真がコラージュされ、思わず指でさわってみたくなるほ
ど赤くてピカピカきれいです。

 アニータがおかあさんごっこで、トマトちゃんと近くで過ごしているうちに
芽生えてくる感情にふふふと笑いがこみ上げてきます。

 赤くておいしそうなトマトちゃん。
 どこでねんねしているかな。

 さて、今号最後にご紹介する骨太絵本はこちらです。
 
 『この計画はひみつです』
  ジョナ・ウィンター 文 ジャネット・ウィンター 絵
     さくまゆみこ 訳 すずき出版

 ジャネット・ウィンターは、伝記や実際にあったことを描いた作品を多くつ
くっている絵本作家です。文章を書いているのは、息子。ノンフィクション絵
本を手がけています。

 この2人が描いたのは、核です。

 1943年3月、アメリカ合衆国政府は、科学者を集めて、ひみつの計画をスタ
ートさせました。科学者たちが作り出したものは、最初の「原子爆弾」です。
1945年7月16日、ニューメキシコ州南部の砂漠で、最初の核実験が行われたの
です。

 ジャネット・ウィンターの絵は、マットな色調とやわらかな線で描き、率直
にできごとを伝えてくれます。

 世界で最初に行われた核実験の影響は、2018年現在も続いており、アメリカ
政府は2014年になって、その当時住んでいた人たちの健康調査をはじめました。
70年過ぎてからです。

 私は最初にこの絵本を読み間違えていました。この実験の後に日本に2度核
爆弾投下されることについて書いているのかと勘違いしたのです。

 しかし、この絵本を読んだ2週間後、ノーマ・フィールドさん(※)の学習
会に参加する機会を得て、このトリニティ実験について詳しく知ることができ、
絵本をあらためて読み直しました。

 大人がした愚かな行為を、子どもにわかるように絵本の形で伝えていること
は意義があると思います。強い印象を残す、実験後のキノコ雲の絵、そしてラ
ストのページの意味することを、これからも大人は伝えていかなくてはいけな
いのです。

 絵本の著者あとがきと、訳者あとがきも読みごたえがあります。

 知らなくてはいけないことが描かれている大事な絵本です。

 (※)ノーマ・フィールド
 日本で生まれ、米国シカゴ大学で日本文学を教えてきた。
 原爆投下や原発事故の「被ばく者」に寄り添いながら、日本社会に発言を続
 けている。(2016年4月26日朝日新聞の紹介文より)
 http://digital.asahi.com/articles/ASHD66560HD6PTIL00P.html


(林さかな)
会津若松在住
http://1day1book.strikingly.com/

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第103回 読書をする意味。人はなぜ読書をしなければならないのか。

 読書することが、すなわち人生であり、生きていくことである。少なくとも
自分はそう思っているし、読書が自分の人生を切り開いていった、と思ってい
る、という人の本。

 敏腕編集者として超のつくほど有名な幻冬舎の見城徹氏の本。
 この自信に満ちあふれた名編集者は、どんな読書遍歴をしてきたのか? そ
の読書に裏打ちされた編集者という仕事をどのように果たしてきたのか? と
いうことに純粋に興味があった。

『読書という荒野』(見城徹 著)(幻冬舎)(2018年6月5日第1刷発行)

 「読書という荒野」という一見乱暴に感じるタイトル。表紙には本が無造作
に積まれているデスクであの見城氏がじろりとこちらを睨んでいる写真。そし
て本の帯には、“血で血を洗う読書という荒野を突き進め!”と挑発的な文言。

 中身はすべてにおいて、自信に満ち溢れている。しかしながら、それは功成
り名遂げた人が自分の歩んだ道を振り返り、自慢するのとは違う。本の中で著
者の見城氏は「自己検証、自己嫌悪、自己否定」があってこそ人間は進歩でき
る、と最初に書いている。

 自分の愚かさや狡さ、浅はかさを自分自身が理解している、ということがわ
かっている、ということが自己検証であり、自己検証して愚かな自分というも
のが存在していることに自己嫌悪に陥る。が、そんな狭量な自分の立ち位置を
否定させしめる行為こそが、自己否定である。

 そのネガティブな3つの行為をしていくことが、生きている証であり、生き
ることに他ならない、と云っている。自分の生き方を否定してこその人生。そ
んな苛酷な環境の中で戦うことが人生なのだ。見城氏はそうやって戦い続け、
人生を生きているのだ。戦う彼の人生を読書という行為、本を読むというフィ
ルターを通して、表現しているのが本書であり、そうやって戦っている自分の
軌跡を後輩たちに伝えている。綺羅星のような成功例であるが、それは執筆子
も含めてたいがいの人には真似はできない。やってもいないうちから、できな
いと云ってしまうが、本書を読む限りたいへん壮絶な努力をしている。凡人の
執筆子はそんなことはできない。はじめから白旗を上げてしまうのだ。

 なぜできないのか? 本書で使われている言葉で考えてみた。

 人間は言葉で考える。思考する。自己検証・自己嫌悪・自己否定は言葉によ
って認識することができる。そしてそのネガティブな行為の中で、それこそ血
で血を洗う壮絶な戦いをして、自己肯定の世界へと立ち上がっていく。そのた
めの手段、最も有効な武器が読書なのだ。

 読書を手段に3つのネガティブを認識することができる人は、認識者である。
そして、そこから自己肯定の高みへ行こうと格闘し戦う人こそ実践者となる。
凡人は認識者止まりである。認識者にすらなれない人は大勢いるだろう。読書
をしない人たちのことだ。読書をしても、読んで何が書かれているかを知るだ
けでそこから何を得たか、どう感じたか、を考えない人たちだって、著者の見
城氏に因れば、認識者になれない。認識者になるためには読書という行為が必
要なのだが、実践者になるためにはその読書を武器として、戦わなければなら
ない。戦う人こそ実践者なのだ。戦士=実践者。そしてこの実践者は、何を実
践する人なのだろう。なんのために戦っているのか? それは自己実現するた
めに戦っているのだろう。自己否定で終わらずに自己肯定し、自己実現のため
に血を流しながら戦うのだ。見城氏は本の編集者なので、身近な実践者は、作
家たちということになる。戦っている実践者は、つまり世間的には才能ある人
たちのことなのである。表現者としてたくさんの共感者を得た一握りの人たち
のことを我々は才能のある人たちと呼んでいる。それが見城氏の表現では実践
者となるのだ。

 戦うための根気とか克己心とか我慢とか努力とか、そういうことを厭わずに
実行することがすなわち才能なのだろう。面倒くさがらず実践者する人のこと
を才能がある人というわけだ。かくして、怠け者、ぐず、面倒くさがりは実践
者になれずに、才能なしのレッテルを貼られる。

 そもそも実践者は、少しでも面倒くさいと思っているのだろうか?・・・・
・否、思っていまい。たぶん楽しいと思っているに違いない。面倒なことを楽
しいと思ってしまえることが、すなわち、才能なのだろう。

 読書とはなんだろう?

 自分が経験できないこと、経験していないことを読書によって獲得する。読
書によって違う世界をみることができる。そしてそれを自分のものにするため
に考える。自分にない部分を恥じる。そして貪欲に取り入れようとする。その
ために考える。思考する。たぶん最初は空洞なのだ。読書によって空洞がすこ
しずつ埋まってゆく感じ。

 一方で、読書するによって世の中のことについて疑問が生まれる。読書は矛
盾や差別の存在を先鋭的に我々に突きつける。その矛盾や差別に対峙するエネ
ルギーを読書からもらう。読書は矛盾と差別に向き合うためのエネルギーの供
給源なのだ。

 本書は読書がもつ意味をさまざま、我々に突きつける。それは、あらためて
自分の無能さに気づかされてしまい、グズなことが露呈してしまったことで、
傷つく。さながら諸刃の刃のような本だ。


多呂さ(こんな酷暑は感じたことがありません。こんな炎暑の中で我々はこれ
から生きていけるのでしょうか)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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■「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
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人事の超プロが明かす評価基準(西尾太著 三笠書房 2015/11/18)

 つい先日、読売新聞の朝刊を眺めていたところ、毎週連載されている「就活
ON!」というコーナーにこんな記事が載っているのを見つけました。

人事評価に不満 6割

 大手人材サービスのアデコが2月、20〜60歳代の就業者1356人から回答を得
た調査では勤務先の人事評価制度に「不満」「どちらかというと不満」と答え
た人は6割を超えた。
 不満の理由を複数回答で聞いたところ、「評価基準が不明確」が最も多く、
「評価者によってばらつきが出て不公平」「フィードバックや説明が不十分、
もしくはその仕組みがない」が続いた。

 記事では6割となっていますが、私の肌感覚としては7割、いや8割といっ
ても過言ではないような気が。人事評価って、社員の給料やら出世やらに直結
するものですからね。

 何年前かは忘れましたが、第一生命が毎年発表しているサラリーマン川柳の
入選作に『成果主義 最終評価は 好き嫌い』と出た時には、あまりに的を得て
いて思わず笑ってしまったのですが、働いている人間にとっては人事評価って
そのくらい曖昧であり、人事側も運用するのが難しい代物だと思うのでありま
す。

 今回の本は、まさにその人事評価をメインテーマとしたもの。著者は様々な
企業の人事部門を経て、現在は人事コンサルタントとしてご活躍されている方
になります。

 この本で紹介されているのは、「あらゆる企業に共通する普遍的な評価基準」
についてです。

 著者によると、会社の規模や業界に関係なく、運用されている人事制度の根
底にあるものや原型はほぼ同じ形をしており、この普遍的な評価基準を知り、
仕事の中で実行することができれば、どんな会社でも業界でも、通用する人材
になれる、とのことです。

 ここで評価基準として著者が取り上げているのが「コンピテンシー」という
キーワード。「会社の中で活躍する人に共通する特徴的な行動や考え方」のこ
となのですが、著者は新入社員から役員まで、一般的な会社内の職位を6つの
クラスに分け、それぞれに求められるコンピテンシーがどのようなものかにつ
いて、明らかにしていきます。

 たとえば課長クラスであれば、どんな行動がOKで、何がNGなのか。そし
てそれを達成するために必要な行動や学びとは何か。1つ上の部長クラスにな
ったら何が違ってくるかなど、各クラスごとにかなり具体的に記述されている
ので、会社の評価基準が曖昧だと感じている人にとっては、納得感のある内容
ではないかと思います。

 実はコンピテンシーというキーワード自体は、人事の中では比較的メジャー
な存在です。そのため、長く人事をやっている人がこの本を読んだとしたら、
内容はうまくまとまっているけど特に目新しさはない、と感じる人がいるかも
しれません。

 しかし私が思うに、この本の一番の価値は「一般のビジネスパーソン向けに
書かれていること」だと思うのです。

 評価制度に限らず、人事に関連する書籍のほとんどは、人事の実務担当者向
けです。人事は自社で課題になっていることがあったら、関連する書籍を購入
し、内容を理解したうえで、自社に落とし込んだらどうなるかを、あれこれ考
え始めます。

 制度や仕組みを変えるのには、いろいろと難しいことが発生するのですが、
特に難しいのは、制度を作ること以上に、社員にポイントを理解してもらうこ
と、そして円滑に運用させることなのです。

 人事が会社のため、社員のためを思い、これまでにない制度を作り上げたと
しても、全社員がもろ手を挙げて賛成!なんて状況は、、、残念ながらまず起
こりません。

 社員の側としては、今の制度に不満を持ってはいても、仕組みが変わること
に対する抵抗感が生じるんですね。人事は口先でメリットを強調してるけど、
逆にどんなデメリットが生じるんだとか、何か制度を変える裏があるんじゃな
いか、とかとか。

 新制度をスムーズに運用していくためには、まずはスタート時点で懇切丁寧
に説明していくしかないわけですが、これ本当に辛いです。あれこれと説明し、
それに対して寄せられる質問を聞いていくと、やっぱり人事ってブラックボッ
クスのような捉え方をされるんだなと悲しくなったり。

 その意味で、「人事向けではない人事本」というのがもっと増えていってほ
しいと切に願います。人材採用の分野では、その手の本を見かけることはある
ものの、特に人事制度に関するものは皆無です。

 もし評価制度を変えようとしている会社で、社員がこの本を読んでいたなら
ば、新しい制度に単にケチをつけるのではなく、社員と人事の間で、建設的な
議論の空気が生まれるのではないかと。そうなると、社員がもっと人事につい
て考えてくれるきっかけにもなりますし、会社も良い方向へと変わっていくの
ではないかと思います。

 では、実際にこの本を社員に読ませてみてはどうかという考えが、頭の中を
よぎったものの一瞬で消え去りました。それこそ、どんな裏があるんだと勘ぐ
られるのは嫌なので(笑)。

show-z
某IT企業で人事担当者として勤務。千葉県在住。

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・『ヒューマン ― 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510

・『支え合い・学び合いで育つ「わたし」』(エディット・パルク)
  http://web.kyoto-inet.or.jp/people/cogito/%8Fo%94%C5%88%C4%93%E0/%8Ex%82%A6%8D%87%82%A2%81E%8Aw%82%D1%8D%87%82%A2.html

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
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 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
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 皆さんのご応募、お待ちしております。

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1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
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 〒142-0041 東京都品川区戸越5-4-3 アズ品川ビル4階
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 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

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 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

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 は当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願いしま
 す。(あまりにも短いものは書評とは呼べませんので、文字数の条件を設け
 ました。書評は500字以上でお願い致します。)

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 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

----------------------------------------------------------------------
■あとがき
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 とにかく毎日、暑い日が続きますね。このメルマガでの原稿にも「暑」とい
う字がちらつきます。

 私もできるだけ水分をとり、部屋の冷房も消さないようにと心掛けています
が、仕事の生産性が落ちるのだけは致し方ないという感じです。

 涼しくなる秋を待って、頑張るのはそれからにしようかな、とも思っていま
す。

 皆様も、御自愛ください。(あ)

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→ 『透明人間の告白』

★「目につく本を読んでみる」/朝日山
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★【募集中】献本読者書評のコーナー
→ 献本お待ちしています!

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
└──────────────────────────────────

 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
----------------------------------------------------------------------
#97『透明人間の告白』

♪とーめーにんげん、あらわるあらわるぅ

 ある世代には懐かしい、ピンクレディーの『透明人間』。
 この歌の主人公は、自分の意思で消えることのできる透明人間で、そういう
意味ではお気楽なものだけど、不慮の事故で透明人間になってしまい、元に戻
れない体になってしまった時、人はどんな運命に見舞われるのだろう。

 この疑問を、極めてリアルにシュミレーションしてみるという画期的なアイ
デアで、かつてベストセラーになり、映画化された小説がある。
 H・F・セイントの『透明人間の告白』だ。

 ちょっと前にスティーブン・L・トンプソンの『A−10奪還チーム 出動せ
よ』を再読して、改めてその文体に感心したのだが、それって原作者の文体が
いいのか、翻訳がいいのかと思い、同じ訳者による本書を、これまた再読して
みた。
 こちらの方は文体的にさほど感心するものでもなかったので、やっぱりトン
プソンがすごいんだな、と結論したのだが、内容的にはこの『透明人間の告白』、
評判を呼んだだけあって、改めてよく出来ていると思う。

 主人公は証券アナリスト。新商品を出しますとか、新しい技術を開発しまし
たといった企業の広報発表を取材し、投資先として有望かどうかを判断する仕
事だ。
 その日も、とある新技術についての発表を聞きに、ニューヨーク郊外の研究
所に出かけていくのだが、その核エネルギーに関する新技術は、実は未完成。
研究をさらに進めるため追加の投資を募る必要があり、見切り発車で発表する
ことになったのである。
 その無理がたたって事故が発生、大爆発が起きる。
 ほとんどの人は爆発前に避難するが、ただ一人建物内に取り残された主人公
はその影響をもろに受け、透明人間になってしまう。

 もちろん、人間だけが透明になったわけではない。
 研究所の建物も透明、そこにあった家具も透明、機械類も、絨毯も、果ては
飼われていた猫まで透明になってしまう。

 いち早くこの異常な事態を知った政府の秘密機関が、研究所を封鎖し、調査
を始める。
 とはいえ、その状況は奇妙なものだ。
 防護服を着た男たちが二階に上がれば、何もない空間に浮かんでいるように
しか見えない。調べるにしてもすべてが透明だから、どこに何があるかわから
ず、しょっちゅう家具にぶつかって悲鳴を上げる。

 そんな彼らに、はじめは救いを求めようとする主人公。だが、よくよく考え
てみると、透明になった自分には学術的にも、軍事的にも、とてつもない価値
がある。当然政府は彼を元に戻すことよりも、透明人間として活用しようとす
るだろう。
 スパイとしてどこかに送り込まれるかもしれないし、同じような透明人間を
たくさん生み出すべく、貴重なモルモットとして研究しようとするかもしれな
い。
 いずれにしても、もう自分勝手には生きられない。それだけはいやだ、と主
人公は思う。このあたり、何よりも自由意志を尊ぶアメリカ人らしい価値観と
言える。

 ところが、彼の存在を秘密機関は察知してしまい、捕獲しようとする。
 ぐるりを即席の壁と鉄条網で包囲された研究所から、見えないメリットを活
かして、どう脱出するか。本書は上・下二巻に分かれた大部の小説だが、上巻
のハイライトがこの脱出劇である。

 下巻は、ニューヨークに戻った主人公が、いかに秘密機関の追求を交わすか
の逃亡劇となる。
 ここが非常にリアルで、周到に考え抜かれているのだ。

 例えば、透明人間が物を食べたらどうなるか。真剣に考えてみたことがある
だろうか。
 人は透明でも、食べ物は透明ではない以上、その咀嚼、嚥下、消化の過程は
丸見えになるのである。
 それは実に、奇怪にしておぞましい光景だ。
 簡単に言えば、中空にゲロが浮かんでいるわけだから。

 あるいは、雑踏を歩くことがいかに困難であるか。
 人は無意識に他人の動きを見ながら、巧みに交わし合うことで雑踏を歩く。
そのことは、新宿西口の地下広場を歩く時などに実感する。
 あそこは地下鉄丸の内線、JR、小田急線、京王線の改札口が集中し、西口
方面、南口方面、都庁方面、東口方面と、さまざまな方向に向かう群衆が乱雑
に交錯する場所。だから、透明でないぼくでさえ、まっすぐ歩くのには苦労す
る。
 特に、人の動きにまったく関心を払わない地方出身者や外国人観光客が平然
と突っかかってきたり、スマホしか見ていない連中がのろくさと行く手を遮っ
たりするのである。
 あれ、ひょっとしてぼくの姿は見えてないのかな、と不安になるくらい、近
頃の雑踏を歩く人は自分のことしか意識にないようでもある。

 それでも、本当に透明だったら、その困難は何十倍にもなるだろう。

 公園のベンチで一休みするわけにもいかない。
 誰もいないと思った別の人間が、いつ座りに来るか分からないからだ。

 自分のアパートに入るのにも気を遣う。
 ドアを開けるところを誰かに見られたら、どうなるか。その人の目には、ド
アが勝手に開いて閉まるように見えるのだから。

 食事、移動、休憩、帰宅。
 ごくごく当たり前に誰もがやっている細かな生活の些事が、ただ「透明にな
る」という一事をもって、これほどまでに危険な試練に変貌するとは。
 本書が現れるまで、そこに思い当たった人は一人もいないだろうが、言われ
てみればまったくその通りで、こういう点が優れたアイデアの見本なのである。

 また、主人公を追う秘密機関の側にも、リアリティがある。
 ジェームズ・ボンド型の大人のファンタジーでは無尽蔵に経費が使われるが、
ここではワシントンから厳しい会計監査が入り、秘密機関のリーダーも透明と
いう機密を守りながら、予算獲得に奔走する。

 エンターテイメントにありがちな、ご都合主義的ハッピーエンドを避けてい
るのも、本書にユニークな読後感を与えている。
 大体この手の話では、主人公は最後、無事元に戻るものだが、本書ではそう
ならない。
 と言って、絶望のまま終わるわけでもない。
 ハッピーでもアンハッピーでもない、これも現実の肌合いを感じさせる、秀
逸なエンディングだ。

 さて、ここまで読んでくれた方は、そろそろ疑問に思うだろう。
 これのどこが、音楽本なの?と。
 まさか、ピンクレディーに引っ掛けただけなの?と。

 もちろん、そんなことはない。ぼくにとって本書が音楽本である理由は、
「追い詰められた時、人はどんな音楽を聴くのか」ということについて考えさ
せられたからである。

 自宅にやっとたどり着いた翌朝。
 ほっとする間もなく、上述のような生活にまつわる困難の数々に少しずつ気
づいていく主人公。仕事のことも気になるし、やがては金にも困るだろう。
 さまざまな不安に押し潰され、彼はうつ状態になる。

 その時彼は音楽を聴くのだ。しかも、ハイドンを!

 え、ハイドン?
 と、ぼくは思った。

 確かに、主人公はクラシック好きという設定だ。
 この後、バカンスで出かけている家に侵入してアジトにするのだが、ついク
ラシックをかけてしまい、隣人に「留守のはずなのに音楽が聴こえる」と不審
がられ、秘密機関にバレてしまうシーンもある。
 だから、鬱屈した時に彼がクラシックをかけるのは、まあいい。

 だが、ハイドンなのか?

 しかも、他の箇所では「クラシック音楽」としか書かれていない。
 ここだけ、明確に「ハイドン」と指定されているのである。
 そこには何か意味があるはずだ。

 ベートーヴェンだと、将来への不安に打ちのめされた時に重すぎるのはわか
る。しかし、なぜバッハでもなく、モーツァルトでもなく、ハイドンなのか。
 ハイドンと言えば「交響曲の父」だ。有名でもある。
 しかし……

 うまく説明は出来ないが、この選択にぼくは違和感を覚えたのである。

 そこでぼくは考えた。
 じゃあ、自分だったら何を聴くだろうか、と。
 不慮の事故で透明人間になってしまい、この先さまざまな不安を抱えて、一
生孤独な人生を歩まなければならないと思ったら。
 10代から親しんできたビートルズだろうか。
 いま大好きな月光グリーンだろうか。

 そこで気がついた。これ、「無人島に持って行く一枚のレコード」に匹敵す
る、案外面白い問題じゃないか、と。
 そんな問題提起をしてくれた本書だからこそ、ぼくの基準では立派な音楽本
なのである。

 では、改めて問いましょう。
 もし透明人間になったら、あなたはどんな音楽を聴きますか?


H・F・セイント
高見浩訳
『透明人間の告白』
平成四年五月二十五日 発行
平成四年六月二十五日 二刷
新潮文庫

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
相変わらず、再就職活動中です。先日は、クラシックのコンサートを企画・運
営する会社の面接を受けました。採用には至らず、続けて、図書館長とかコン
ベンション・ホールの館長とか、演劇の舞台美術制作とか、世の中にはいろん
な仕事があるもんだなー、と感心しつつ、楽しみながら回っています。

----------------------------------------------------------------------
■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『スキャンダル除染請負人』田中優介 プレジデント社
 
 いわゆる企業スキャンダルをどうやって沈静化させるのかという「リスクマ
ネジメント」の実際を描く小説の連作集。主人公は、元警察のエリート官僚だ
ったキァリアをもつ、ダメージコントロールブレーン (DCB)社の危機管理コン
サルタント橘沙希と部下の穂積孝一。2人のコンビが、企業が直面するスキャ
ンダルの沈静化の仕事を受けて問題解決に挑んで行く物語。一章が一短編とな
っており、全部で八つの連作短編集だ。
 
 書いているのは、危機管理コンサルタントの親監修、息子が書いている。と
いうか、最初父親が書いているのを息子が読んで、これは小説になってないと
小説好きの息子が全面的に書き直したものらしい(笑)
 
 スタートは企業の社長がスポンサーとなっている女子サッカーチームの選手
と不倫しようとしていたところを週刊誌に写真を撮られて、どうしましょうか
と相談に来るところから始まる。実際はやる寸前でやってもいない「未遂」だ
が、マスコミ対処はこのようにやるのだとする見本のような展開を見せられる。
 
 三つ目で、橘沙希がどうして警察に入ろうとしたのか、どうして期待されて
いた職場を捨てて、危機管理コンサルタントになったのかが語られる。高校生
の時、ストーカーに狙われていたことから父親に相談すると、父親は友人であ
る警官、水野を紹介し、水野に沙希は助けられる。
 
 この経験から沙希は警察官を志望し、合格し、水野にあいさつしようとする
とそっけない対応をされた。警察は階級社会。キャリア採用とは言え、学校出
た手のぺえぺえとすでに何十年も勤務し、ノンキャリ最高クラスまで出世して
いる水野とでは、「階級」が違うのである。
 
 だったら出世してやるとがんばって、将来女性初の警視総監かと言われるほ
どにまでなったところで彼女の人生はひっくり返ることになる。
 
 なぜそうなったのかは、読んでいただくとして、読んでいて思ったのは、こ
の世界はイメージよりも人としてのあり方が問われる仕事のようだ。
 
 スキャンダルを沈静化させる仕事と言うと、たとえば反対情報を出してある
事件の告発者を不当に貶めるディスインフォメーションを連想してしまうのだ
けど、そういう話は出てこなかった。むしろ、クレーマーと、そうでない人の
判別法など、人の観察眼を問われる話ばかり出てくる。
 
 某病院で、看護師が自殺した。いわゆる過労死のように見えた。とはいえ多
少オーバーワーク気味ではあったが、それが原因だとは思えない。むしろかわ
いがっていた子供の患者が相次いで亡くなったことにショックを受けていたよ
うで、むしろそっちの方が自殺の原因のように思えた。しかし世間はそうは見
ないだろう。
 
 亡くなった看護師の夫は、当然怒っている。そんな中、初期対応をしっかり
とやり、夫に寄り添う形で自殺原因を探って行く姿勢は、ディスインフォメー
ションの話を期待していた私としては拍子抜けすると同時に、この仕事を「汚
れ仕事」だと思っていた認識を改めさせられた。むしろ人をどれほど理解でき
るのかが、この商売の成否を決めるらしい。
 
 もちろん、謀略じみたテクニックを披露されている章もある。会社の取締役
に送られてくる怪文書を一切開封させず、取締役会ではじめて公開する手法な
ど典型例だろう。
 
 これは怪文書を送ってきたのは、取締役の誰かだという確信があってのテク
ニックで、怪文書をすべて公開せず、きりのいいところで切って取締役会に提
出し取締役の反応を見る。「これは続きがあるんじゃないか?」と言ってきた
取締役・・・そいつこそが怪文書を送ってきた張本人だ!まだ続きがあると知
っているのは、犯人だけなのだから。
 
 そんな感じで一章読んでいくごとに小説を読みながら企業のリスク管理の手
法が理解できるようになっている。しかもご丁寧なことに、橘沙希の前に立ち
塞がる敵は、リスク管理の良くない事例の紹介に使われているから、何をやっ
てはいけないかもわかる。知識を得るビジネス小説として、とても良くできて
いる本だと思う。
 
 一つ苦言を言っておくと、あとがきに、この本のネタ本として「克危論」と
いう著者の父の書いた本のことが書いてあるのだけど、これがネットで検索し
ても出てこない。
 
 著者の父親である田中辰巳名義の本はいくつか見つかるのだが、おそらくは
父親の主著であろう「克危論」だけが出てこないのは、私家版か何かなのだろ
うか?
 こういう、本の存在が示唆されていて、読みたいのに、見つからないのはち
ょっとしたストレスであった。
 
 とはいえ、これから続編が出てくる期待もある(そういう終わり方をしてい
る)。この本は元々「克危論」全25章のうち、8章をネタに使っているという
ことだから、三冊シリーズで完結という予定なのかも知れない。
 
 今後に期待しよう。

(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)

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■「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
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世田谷の「細雪」、それぞれの心情
『サザエさんの東京物語』長谷川洋子・著(文春文庫)

 書店で見て気楽に読める夏の時間潰し本としては最適と思って購入、寝転び
ながら読んて半刻・・・おばちゃま、ガバっと起き上がって正座しましたよ。
(すぐにまた寝転んだけども)。

 今から半世紀も前、母が「すごくおもしろい、もうおなかを抱えて笑える漫
画」と言って買ってくれて読んだのがサザエさんを読んだ最初でした。

 そのあと、サザエさんのメーキングともいうべき「サザエさんうちあけばな
し」も読みました。実をいえば、私、サザエさんのおもしろさというのがよく
わからなくて、(サザエさんを全巻揃えている人っているけど、それにちょっ
とした権威主義も感じてしまっていて・・・)でも、「うちあけばなし」は楽
しくて、何回も読み返してきました。

 サザエさんは「フツウの庶民の暮らし」を描いていると言われていますが、
それは誤解で、「昭和のホワイトカラーの暮らし」を描いているというのが正
しいですね。

 おばちゃまは私はこの東京山の手の中流階級の暮らしが今でも羨ましくてね〜。
それはフツウに見えて実はフツウではなく、手に届きそうでなかなか届かない
世界だからだと思います。

 この本は、サザエさんの著者、故・長谷川町子の妹が描いたファミリーの話。
「うちあけばなし」でわかるように、両親、3人の娘と福岡で平和に暮らして
いた家族は、父の死去とともに上京、母が3人の娘を育て、それぞれに才能を
磨くうちに次女が漫画を描いて成功し、長女がその漫画の出版社を経営し、妹
が手伝うという鉄板の女系家族の暮らしが続きます。

 つまり、「働く細雪」なんですね、この家族は。働くといっても被雇用者で
はなく、会社経営者+文化人で、時代を先取りしております。

 「細雪」の姉妹たちが一見、穏やかに暮らしているように見えて、危うさを
はらんでいるように、末の妹が描いた母や姉も、家の中では人見しりでわがま
まで暴君だったという描写は、さもありなんと思って、読んでいたのですが。

 ガバッと起き上がったのは、文庫本で187ページ「別れ」からの章。サザエ
さんの連載が終了し、姉が新しい家を建て末娘に、「あなたも同じ敷地に家を
建てたらいいわ」と誘うのだが、逡巡した結果、古い家にとどまると決意して
姉たちに手紙を送ると、姉たちは驚愕して、一切の交際を絶ってくるのです。
著者が淡々と書くだけに、それぞれの心情を考えると、なんだか芯から恐ろし
く文章の合い間を何度も読むのですが、手がかりはなく・・・読者である私は
途方に暮れるのでありました。ただ、

「生まれたときから末っ子の味噌っかすで、機関車に引かれる貨物列車同様、
姉達の引いたレールの上を走ってきた。おもしろいこと、楽しいこと、心強い
こともたくさんあった。でも、自分で考えて自分で決めて、自分の足で歩いて
こその人生ではないだろうか」

 著者の心情はこの文章に尽きるでしょう。その基盤には、元の家の名義が著
者だったこと、3姉妹の中でこの人だけに子どもがいるということも見逃せな
い要素だと思います。(昭和25年、桜新町に母が買った土地を「この土地は洋
子ちゃんにあげましょう。きっと役に立つときがくるから」と買ってもらった
土地が坪2000円。「この芋畑が50年後に何百倍になっているとは誰も思わなか
った時代で」とあります)。

 この遅すぎる末っ子の反抗期に上2人の姉は国交断絶で応戦します。その激
しさは、長谷川町子さんが亡くなったときに知らせないばかりか、「洋子には
ぜったい知らせてはいけない」との言葉が聞こえてくるほど。そして遺産相続
の放棄の依頼と受諾、上の姉が亡くなったときも知らせないという激しさです。

(1つわからなかったのは、著作権がだれにあるかということ。この本の表紙
は「サザエさんうちあけ話」から取っているみたいですが、遺産放棄したのな
ら著作権はどこに?)

 怒りを生きるエネルギーにするような命の燃やし方はすさまじいばかりであ
ると同時に、わかる気もします。妹が溜めてきた無意識の不満について、家族
を牽引してきた姉はどう思うのか、もはや誰も聞くことができません。

 日本の復興、高度成長期に合わせて連載された「サザエさん」はまことに巨
大なコンテンツです。そのメーキングが平穏で平凡・・・なわけはありません。
才能と才覚に恵まれた女ばかりの家族のそれぞれの心情は、そこにいた人にし
かわからないものだと感じ入りました。

 だからこそ、「サザエさん」が成立したのだと感銘を受けました。

大友舞子(おおとも・まいこ)
昭和20年代生まれのフリー編集&ライター。関東生まれで関西在住。

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510

・『支え合い・学び合いで育つ「わたし」』(エディット・パルク)
  http://web.kyoto-inet.or.jp/people/cogito/%8Fo%94%C5%88%C4%93%E0/%8Ex%82%A6%8D%87%82%A2%81E%8Aw%82%D1%8D%87%82%A2.html

・『追憶 下弦の月』(パレードブックス)
  http://books.parade.co.jp/category/genre02/978-4-434-23989-2.html

・『元アイドルのAVギャル瀬名あゆむ、アイドルプロデューサーになる』
 (コアマガジン)
 http://www.coremagazine.co.jp/book/coreshinsho_024.html

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
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 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
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 書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。つまり
 は当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願いしま
 す。(あまりにも短いものは書評とは呼べませんので、文字数の条件を設け
 ました。書評は500字以上でお願い致します。)

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

----------------------------------------------------------------------
■あとがき
----------------------------------------------------------------------

 暑い暑いと冷房の中にずっといたら、体が冷えてしてしまいました。こうい
うときは熱中症にならないように水分を取って、敢えて窓を開けてだらだらと
汗を流しながらお昼寝をする、なんてのも体調回復に良いようです。

 というわけで、ちょっと、おやすみなさいませ。(あ)

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