[書評]のメルマガ

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[書評]のメルマガ vol.655

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■■ [書評]のメルマガ                2018.06.10.発行
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■■ mailmagazine of book reviews         [この国の中心は 号]
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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<102>「旅行」とは、「電車に乗ること」と見つけたり

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→84 微細に描かれた絵本の楽しみ

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第101回 「国体」ということばで日本の姿を説明する

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです。

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 株式会社三楽舎プロダクション 小林様より、下記の献本を頂戴しました。
ありがとうございます。

・森安政仁著『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510
 
 この書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<102>「旅行」とは、「電車に乗ること」と見つけたり

 細川貂々『日帰り旅行は電車に乗って 関西編』(ミシマ社)を読んだのだ。

 映画やドラマにもなったベストセラー『ツレがうつになりまして』の貂々さ
んの最新刊は、鉄道コミックエッセイ。
 鬱から寛解し、ただいまは専業主夫を務める「ツレ」さんと、一人息子の
「ちーとくん」と三人(正しくは、毎回もれなく同行するミシマ社の担当女史
「ミッキー」さんを加えた4人)で、関西あちらこちらの電車に乗りに行った、
その顛末記。

 元々は、貂々さんもツレさんも、電車や鉄道にはまるで関心がなかったらし
い。
 が、息子のちーとくんが、2歳ころから電車に異様に興味を示し、まずは家
事及び育児担当のツレさんが、息子に引きずられる形で「テツ」化し、その後
貂々さんも巻き込んで、最初は息子の欲求を叶えるためだった首都圏電車旅の
あれこれを、2012年には『親子テツ』(朝日新聞出版)というコミックエッセイ
にまとめてしまったらしい。
 …「らしい」というのは、そちらはまだ未読だから。

 そして、一家で関西に移住した後、家族ぐるみの「テツ」化はさらに加速し、
『親子テツ』では、自宅最寄りの地下鉄東西線を中心に、あくまでなんらかの
用事があって、たまたま乗った電車を取り上げることが多かったようなのだが、
「関西編」では一変、「電車に乗る」ことをまずは第一の目的として家族で出
かけた日帰り旅の、その時々あちこちの様子が描かれている。

 いや、その「日帰り」範囲の広いこと、広いこと。京阪神は言うに及ばず、
関西一円に広がっていて、目次を見るとたまげます。
 やはり、初めての土地に移り住んで、何処へ行っても物珍しく、勢い、その
活動範囲も広がったのだと思う。

 わしもまた、学生時代、東京に住み始めた当初、さすがに電車目的ではなか
ったが、暇を見つけては、あちこち、「寅さん」の葛飾柴又や、鈴木翁二の調
布とか仙川、深大寺、つげ忠男の利根川とか、安部慎一の阿佐ヶ谷、神代辰巳
の映画でよく見た新宿歩行者天国、これも映画によく出てきた神田界隈やら、
はては横浜、横須賀あたりまで、あちこち「見物」に出かけたものだ。

 当然のこと、その行き帰りには電車を利用するのだが、初めて見る東京の電
車は、70年代のその当時、関西のそれに比べると、駅や車両や設備その他、す
べてにおいてなにやら垢抜けなくてドン臭く、電車は古くてボロい上に冷房も
なくて、小田急や京王線の新宿駅とか東急渋谷駅や西武池袋駅といった私鉄タ
ーミナルもまた、どこもやたらとショボいのに、「な〜〜んや、こんなモンか
い」と妙な優越感を抱いたりも、した。

 『日帰り旅行は電車に乗って』では、神戸電鉄とか山陽電車、能勢電鉄、北
条鉄道といった、関西人にとってもマイナーな路線もピックアップされていて、
神鉄沿線生まれ、神鉄使って三田まで通学し、北播磨はお友達エリア、能勢電、
山陽電車は遠足電車でした、なわしには、個人的にとても嬉しかった。

 ただ今の自宅最寄駅でもある阪神電車・武庫川駅を、ちーとくんが「すごい
よ」とリスペクトしてくれてんのも、うれしかったです、はい。
 わしも、この駅に最初に降り立ったときには、びっくりして、思わず笑い出
してしまいましたですよ、ちーとくん。

 何年か前まで、京阪神一円の書店をまわる、出版営業代行をしていた。
 そのお仕事で、普段はあまり乗る機会のない京阪電車や南海電車、近鉄南大
阪線などに乗るときには、仕事ではあったが、なんだか旅行気分で少し「わく
わく」して、駅の様子や車窓など、必要以上にきょろきょろとあちこち見回し
てたりもしていた。
 京阪電車には、編成の1両ずつにもれなく「成田山」の交通安全のお札が張
り付けてある、というのも、この時に「発見」した。

 通勤などで通い慣れた路線でも、たまに降りたことのない駅に途中下車して
みると、これまた即席の非日常、束の間の旅行気分が味わえて、これはただ今
もなお、ときどきやらかしております。

 「旅」すなわち非日常空間は、わざわざ遠くへ行かなくても、ちょいと視点
を変えてみるだけで、たちどころに現れる、ということを、貂々さんの『日帰
り旅行』は思い出させてくれた。

 ずっと昔の我が家では、毎年夏休みと暮れから正月にかけての年2回、一泊
ないし二泊の家族旅行が恒例だった。
 この恒例行事が始まったのが1965年の夏で、わしは小学4年生。
 この時は、前年に開通したばかりの新幹線で名古屋へ行った。
 名古屋城を見物した後、名鉄の赤い電車で熱田神宮から犬山の木曽川畔へ回
ってここで一泊、翌日、これまたオープンしたばっかりだった明治村を見て、
やはり前年に開通したばかりの名神高速を走るバスで帰ってきた。

 その年の暮れには、富士山を見に行った。
 新幹線の「こだま」を静岡で降り、東海道線で沼津まで普通電車に乗った。
オレンジと緑のツートンカラーの電車は、前面が二枚窓の、その少し前まで大
阪や神戸にも走っていた、旧型の湘南電車だった。
 「しみず」「おきつ」「かんばら」「ふじかわ」「ふじ」「よしわら」と、
駅に停まるごとに駅名票を読み上げていったのだけど、駿河湾に沿って走る駅
や沿線が、やたらにほのぼのと長閑な光景だったのを、今もよく覚えている。

 この時の宿泊先は御殿場のホテルで、沼津で乗り換えた御殿場線では、「気
動車」というのに生まれて初めて乗った。
 「ゴーゴー」と唸るエンジン音や油っぽい車内の臭いもそうだったが、乗客
が手動で開け閉めするドアが、とても物珍しかった。
 一泊二日の旅で、翌日は御殿場から箱根を周遊したのだが、あいにくの雨降
りで、前日も曇っていたので、結局富士山は見られなかった。

 岡山に向かうために、朝早くに神戸駅から乗った急行列車は、東京から夜を
徹して走ってきた客車列車で、車内の人達の多くがまだ眠っていた。
 岡山から倉敷を回って、帰りの急行は電車だったが、途中の姫路駅で立ち売
りの「そば」を買ってもらって、いざ食べようとしたら、開けっ放しの窓から
吹きこんでくる風に煽られ七味唐辛子が目に入り、神戸駅で下車した後も、ず
っと痛かった。

 大阪弁天埠頭を夜に出航して四国松山経由で別府に向かう関西汽船は、年末
の帰省客でごった返していて、船底の入れ込み座敷風三等船室は言うに及ばず、
食堂や通路、トイレや、はてはシートで風よけされた甲板にまで、船客が毛布
にくるまって寝ていた。

 わしが小学4年の時に始まった家族の慣例はその後も続いて、わしが高校2
年になるころまで、律儀に年に2回繰り返され、四国・山陽方面から北陸、飛
騨高山、伊勢志摩、南紀、山陰等々、結構あちこちへ連れて行ってもらったの
だが、どこでなにを見て、どこに泊まって何を食べた、というのはほとんど覚
えていないのに、何に乗って、どこからどこまで移動した、というのは、その
車窓の風景も含めて、鮮明に覚えている。

 宿泊を伴う旅行でなくとも、うちの場合は父親が、会社のイベントのハイキ
ングとかなにかの催しとか、あるいは休日出勤の会社に、よく連れ出してくれ
たのだが、その途中では、かならずナニガシかの鉄道薀蓄を聞かせてくれた。
 大阪の地下鉄は3分ごとに電車がやってくる、とか、阪急電車の車内の「木
目調プリント鉄板」は、「父ちゃんが大学に通った戦前にはもう採用されとっ
た」とか、「近鉄は日本一大きな鉄道会社なんやで」とか、開通前の新幹線の
線路を「いっときは阪急電車が走っとったんやァ」とか。

 その場合もまた、行った先での出来事は、ほとんど覚えていないのに、そこ
へ行く電車の中の景色は、鮮明に覚えていて、旅行とか旅というのは、つまる
ところが「移動」の過程こそが、一番重要で、それこそが旅のキモ、なんでは
なかろうか、と、貂々さんの『日帰り旅行』で改めて思い出し、そして実感で
きたのだった。

 この漫画は、ミシマ社のウェブサイトでの連載を単行本化したものなのだが、
足かけ3年(だったっけ?)に及ぶ連載が進むにつれ、両親をテツの道に引き
込んだちーとくんが成長し、彼の鉄道熱が徐々に冷めていくという過程もまた、
描かれている。
 そうですよね。男の子には「電車好き」が、やけに子供じみて、なにやら恥
ずかしくなる年ごろ、というのが必ずあるのですね。
 しかも、家族連れでゾロゾロと、ただ電車に乗りに行く、それを母が漫画に
描く…男の子的にはもう、「頼むからヤメテくれ〜〜!」な状況ですよね。

 そんなちーとくんも、両親とともにわざわざ乗りに行った鉄道の「旅」の記
憶は、深いところに鮮烈に、そしてとても印象深く残って、ずっと遠い先のど
こかで、ふと思い出しては、記憶を遡ってもう一度辿ってみたくなったり…が、
たぶんきっとあると思う。
 …というのは、実はわしの実体験だったり、するのだが。

 貂々さんご一家が関西移住を決めたのは、東日本大震災がきっかけで、ちー
とくんのためにも「もっと暮らしやすいところ」を模索した結果、ヅカファン
な貂々さんと、中学まで大阪に在住していて関西に思い入れが深かったツレさ
んの思惑が一致。
 来てみれば、ツレさんの記憶の通りに関西は「電車天国」、ちーとくんも夢
中になって…と、この本が出来上がったようだ。

 震災をきっかけに関西、それも阪神間に移住…というと、なにやら谷崎潤一
郎なども彷彿してしまうのだが、関西に移住後、その文化にどっぷりとハマっ
た谷崎のように、貂々さんもまた、ヅカ及び関西を満喫しつつ、今後は「電車」
以外の分野でも、関西あちこち、できればできるだけマイナーなスポットをル
ポしていただきたい、と勝手なお願いなどもしてみたり…

 ところで、『日帰り旅行』中で、ツレさんが一行にぜひとも見せたかったの
に、見せられなかった「大阪のスゴイゴミすてば」というのは、おそらく、
↓これのことだと思うのだが、

http://www.hetgallery.com/semba_b13.html

 これ、阪神高速の湾岸線からは、実にくっきりはっきり良く見えるのだが、
ニュートラムと地下鉄からは、ちょっと遠すぎて、まず見えない思います、は
い。

太郎吉野(たろう・よしの)
 2011年に神戸から西宮へ引っ越して、ただ今のホームグラウンドは甲子園。
右投げ右打ち。掛布二軍監督はひとつ年上の同級生。

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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84 微細に描かれた絵本の楽しみ

 福音館の月刊誌絵本のひとつ「たくさんのふしぎ」が今月号で400号を迎え
 ます。節目の絵本は、大好きな西村繁男さんによるものです。

 「絵で読む子どもと祭り」西村繁男 作
 月刊たくさんのふしぎ 2018年7月号(第400号)福音館書店

 2014年から4年かけて取材された、子どもが参加している地域のお祭りを9
 つ紹介されています。
 
 西村繁男さんの絵本といえば、たくさんの人と共に周りの様子も微細に描か
 れているのが特徴です。

 本書は「絵で読む」とタイトルにあるように、絵の読みごたえがたっぷりで
 す。お祭りの見所を双眼鏡でみるかのように、ところどころズームアップも
 されています。

 当初、西村さんは、祭りの絵本を提案されたとき、ご自身が子どもの時に経
 験がなく、その後も積極的に参加したことがないので、祭りを執り行う人た
 ちの思いや情熱を描けるか自信がなかったそうです。

 しかし、いままでのように、たくさんの人々を観察し祭りの現場をみて人を
 描いていけば絵本にできるのではと、時間をかけてできあがったのが本書で
 す。

 春から始まり冬にかけて、9つの場所でのお祭りはたくさんの人が登場して
 います。

 視界に入るものをくまなく描き出した、その世界はにぎやか。子どもたち、
 観客、ただ通り過ぎる人も含め、様々な人が絵本の中にいっぱいです。

 中でも印象に残ったのは3つのお祭り。

 11月第3日曜日 神奈川県川崎市で開催されるのは「さくらもとプンムルノ
 リ」。

 日本や朝鮮半島、中国、東南アジア、南米などにルーツをもつ子どもが参加
 するお祭りで、プンムルノリというのは、韓国・朝鮮の伝統的な踊りです。
 1990年から商店街の祭りで踊りが披露されるようになり、踊りと楽器の練習
 は1年を通して行われています。

 踊りの横では、各国の食べ物が出店されている様子もみえ、美味しそうな料
 理にも見入ってしまいます。

 2月9日から11日にかけて行われるのは高知県吾川郡仁淀川町の「秋葉まつ
 り」

 過疎化でこの集落では30年以上子どもが住んでいないそうです。200年以上
 続いているお祭りを絶やさないために、近くの小学生が参加し、祭りをもり
 あげています。

 「神楽」「太刀踊り」「鳥毛ひねり」の披露にはたくさんの観客が集まって
 いて壮観です。

 2月中旬に行われるのは、福島県福島市と双葉郡浪江町の「安波祭(あんば
 まつり」
 
 もともとは福島県浪江町でおこなわれてきた豊作と豊漁を祈るお祭りですが、
 2011年の東日本大震災で、浪江町の住民は避難生活を余儀なくされました。
 福島市でおこなわれた、子どもたちによる「田植え踊り」の後ろには、仮設
 住宅が連なっています。

 昨年2017年の夏には、震災から6年ぶりに、浪江町の神社があった場所で、
 「田植え踊り」が奉納されたそうで、その時の様子も描かれています。
 
 お祭りは少子化、震災など、その時々によって乗りこえていかなければ続か
 ない現状もあらわしているのです。

 それでも、いつの時も大人たちは子どものお祭りが続いていくよう尽力してい
 ます。

 ハレの日の象徴ともいえるお祭りがこれからも長く続いていきますように。

 さて、2冊目も福音館の「こどものとも」。こちらは先月の6月号です。

 「しりとり」安野光雅 さく/え
 月刊こどものとも 2018年6月号 福音館書店

 安野さんもまた、繊細な絵を描かれる方で、代表作でもある「旅の絵本」シ
 リーズでは、世界各地、ひとつの国を舞台に、昔話など、物語のモチーフが
 随所に描かれ、それらを探しながら風景を楽しめるもので、私も子どもの頃
 から愛読しています。(新作はスイスを舞台にしたもので、今月15日に刊行
 です!)

 その安野さんがどんな「しりとり」を描いたのか。

 しりとりは、
 あいす→すずめ→めだか、というように最後の音で次の単語をつないでいく
 言葉遊び。「ん」がでたらおしまいです。
 
 安野さんの「しりとり」は、見開きに10数種類ほどの絵が描かれ、その中か
 ら好きな絵で自分のしりとりをはじめます。

 いちまいめは、さる きびだんご しるこ こあら けんびきょう 等々。

 たとえば、「さる」を選んでみます。
 「る」が次の単語のはじまりです。

 次の見開きのページに描かれている絵から「る」ではじまるものを見つけ出
 します。「る」は、るーれっと。

 そうやって、自分で次の言葉を選びながら最後のページにたどりつきます。
 そこで「ん」のつく言葉で終わるとおしまい。
 もし、最後が「ん」以外であれば、最初のページにもどって、しりとりは続
 くのです。

 ぬすびとはぎ、じんちょうげなどの可愛い花や、わまわし、みちしるべ、ち
 ょうちんなど、ふだんの生活ではあまり見かけないものなど、どの絵もやさ
 しいタッチで心ひかれるものがあります。

 子どもと一緒でも、大人が一人で遊んでも、おもしろい。

 我が家の小さい子どもたちが大きくなり、定期的な月刊誌が届かなくなって
 からは書店や図書館でチェックし、気になったものはいまも購入しています。

 今回ご紹介した2冊も購入して何度も読み返しています。
 最近では気に入ったものは複数冊購入して、あの人なら気に入りそうという
 方に贈っています。

 月刊誌は児童書を手厚くおいている書店ですとバックナンバーもおいていま
 すし、単品の注文は書店でも受け付けています。

 最後にご紹介するのも絵本です。
 
 『ちょうちょのために ドアをあけよう』
 ルース・クラウス 文 モーリス・センダック 絵 木坂涼 訳 岩波書店

 大人の手のひらくらいの大きさの絵本に、
 世界を楽しく生きるために覚えておくといいことがつまっています。
 子ども視点で子どものための便利帖みたいなのですが、けっこう大人にも響
 きます。

 たとえば、

 「おおごえで うたう うたを
 ひとつくらい おぼえておくと いいよ
 ぎゃーって さけびたくなる ひの ために」

 「そんなに つかれたって いうなら
 つかれを ポイって すてちゃえば いいのよ」

 詩人、木坂さんの言葉は、同じく詩人であるルース・クラウスの言葉をぴっ
 たりに伝えてくれます。

 センダックの絵は、細いペン画で子どもたちのユーモアさや可愛さを余すこ
 となく描いています。

 最初から順に読んだあとは、好きなページを開いて声に出して読んでみるの
 もおすすめです。


(林さかな)
会津若松在住
http://1day1book.strikingly.com/

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第101回 「国体」ということばで日本の姿を説明する

 『永続敗戦論−戦後日本の核心』(2016年)は一度、ここでも紹介した。そ
の著者の白井聡氏が再び一般大衆にも読みやすい新書で日本の姿を表現する作
品を上梓した。

 『永続敗戦論』では、戦後の日本はアメリカの最重要同盟国となり、戦争に
敗北したことを曖昧にすることによって(“敗戦の否認”)、永続的にアメリ
カに従属しなければならなくなり、際限なくアメリカに従属をし続ける限り、
ずっと敗戦を否認していかなければならない。という論法で、我々に衝撃を与
えた。敗戦の否認が今も続く米軍基地問題や賠償問題になっているということ
だ。
 今回、紹介する本は、その“永続敗戦レジーム”を一歩進めて、実は戦前の
日本と戦後の日本はパレラルに同じ流れを辿っている、ということを訴えてい
る。そのキーワードが「国体」ということばだとういう。

『国体論 菊と星条旗』(白井 聡著)(集英社新書)
(発行:集英社)(2018年4月22日初版発行)

 戦後の日本は「国体」ということばと縁を切った、と大多数の国民は思って
いる。しかし、著者の白井氏に拠れば、「国体」は戦後も脈々と生きている。
1945年に一度仮死状態になったものの、実は復活している、という。現代日本
の状況を唯一説明できることばが「国体」という概念なのだ。

 明治維新からこっち、日本は天皇制とともに近代化の道を歩んできたが、一
度1945年に歴史は断絶した。

 明治維新 1868年
 敗戦   1945年
 現在   2018年

 維新と敗戦の間は77年。そして敗戦と現在は73年。明治維新から現在までの
時間の流れの中で、敗戦を分岐点とするならば、そろそろ戦前と戦後は同じ期
間になりつつある。

 敗戦前の歴史では天皇がすべての物事の中心に存在していた。すなわち、そ
れ自体が「国体」であった。天皇が真ん中にある、ということ、そしてすべて
の国民ひとりひとりが天皇と直接つながっている状態がこの国の「国体」であ
った。

 1945年の敗戦から現在まで、この国は何を中心にしているのだろう。

 執筆子は、それは憲法だと思っていた。大多数の人も同じ意見であろう。こ
の国の中心は「日本国憲法」である。

 しかしながら、この国はひとつだけ様子が違うのだ。実は憲法より上位に
「日米安保条約」がある。実に安保条約が憲法に優先しており、憲法は安保条
約に違反しない限りにおいて有効なのである。我々は沖縄を中心にしてたびた
び起こる、米軍関係の事件や事故の処理時にそのことを苦い思いで思い知る。
安保条約に付随した地位協定という悪夢のような規程の存在が、安保条約が憲
法より上位に存在している、ということの証左にほかならない。

 ここまでで、もうおわかりかと思うが、本書のサブタイトルが「菊と星条旗」
とある通り、1945年からこんにちまでの、この国の中心はアメリカ合衆国なの
だ。アメリカを中心にしてこの国は存在している。それがこんにちの「国体」
である。

 親米保守政権(主に自民党政権、と云ってよいだろう)は、積極的にアメリ
カに追従する道を選び、それがいまや既得権益化している。それはいまの安倍
政権をみれば一目瞭然。アメリカが云ったことをそのままなぞることしかしな
い。アメリカが北朝鮮との対話路線に舵をきれば、安倍政権も金正恩との会談
を模索します、とかの国の大統領に申し上げた、というニュースがあった。

 以前から、執筆子は、日本はアメリカの植民地だ、という感想を漠然と感じ
ていた。ときに尊大なアメリカの高官たちの振る舞いに憤りを感じていた。参
勤交代のようにワシントンに行く日本の首相がそこで、さまざまな約束をさせ
られているのをみて、日本がアメリカの属国の印象を強く持っていた。

 しかしながら、7年前のあのとき(東日本大震災)、執筆子は“これで日本
は変わる。日本は真の独立国になれる”のではないか、と淡い期待を持ったの
も確かである。原子力発電の廃止を時の政権は掲げた。が、親米保守政権にな
った途端に原発存続の方針に振り子が戻ってしまった。政権は既得権益を守る
ことを選んだ。既得権益=親米路線なのである。

 いまや完全にアメリカにすがることしかないこの政権のもと、私たちはそれ
によってもたらされる不利益を甘んじて受けなければならない。日本は結局自
らの力では何も変わらない。何も変えられない。

 それもこれもこの国の中心にアメリカがあるからなのだ。アメリカが国体で
ある。まさに「アメリカの日本」。

 筆者の白井氏は、まず一昨年8月の天皇陛下の「お言葉」に関することから、
本書を書き始めている。彼はあのお言葉に強い衝撃を受けた。このかたちを一
緒に考えようと、いう文脈で陛下は、あのお言葉を発したという感想を持った、
というが執筆子もまさにそのとおりだと思う。執筆子も陛下による与えられう
る限り最大の抵抗。現政権が進める、憲法を無視した政策への反旗であると受
け止めた。集団的自衛権容認。共謀罪の導入。そして民主主義を明らかに踏み
にじっている、文書改竄問題の放置。なにもかもが憲法をないがしろにしてい
る。

 本書は怒りの書である。

多呂さ(痛恨の一回とばし。5月が抜けたことをいまだに悔やんでいます。二
ヶ月ぶりの書評です。)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510

・『支え合い・学び合いで育つ「わたし」』(エディット・パルク)
  http://web.kyoto-inet.or.jp/people/cogito/%8Fo%94%C5%88%C4%93%E0/%8Ex%82%A6%8D%87%82%A2%81E%8Aw%82%D1%8D%87%82%A2.html

・『追憶 下弦の月』(パレードブックス)
  http://books.parade.co.jp/category/genre02/978-4-434-23989-2.html

・『元アイドルのAVギャル瀬名あゆむ、アイドルプロデューサーになる』
 (コアマガジン)
 http://www.coremagazine.co.jp/book/coreshinsho_024.html

・『ミスなくすばやく仕事をする技術』(秀和システム)
 http://www.shuwasystem.co.jp/products/7980html/5125.html

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

 〒142-0041 東京都品川区戸越5-4-3 アズ品川ビル4階
       ビズナレッジ株式会社内 [書評]のメルマガ 献本 係

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンや楽天などのオンライン
 書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。つまり
 は当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願いしま
 す。(あまりにも短いものは書評とは呼べませんので、文字数の条件を設け
 ました。書評は500字以上でお願い致します。)

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 またまた、ちょっと遅れての発行となりました。(あ)

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→<101>紅いマントと正義の味方

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→『切り捨てSONY リストラ部屋は何を奪ったか』(清武英利・著 講談社)

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→今回はお休みです。

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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83 絵本の広くて深い世界

 自分のよく知らないことを調べるにはガイドブックがもっとも近道。
 もちろん、自分の勘だけで見つける楽しみもありですが、
 ガイドされることで深いところにたどりつけるんです。

 『13歳からの絵本ガイド YAのための100冊』
            金原瑞人/ひこ・田中 監修 西村書店

 本書のガイドさんは編集者、書店員、翻訳者、評論家、作家の14人。
 タイトルに13歳からとあえて掲げているように、小さいこどもが読む絵本
 とはまた違う切り口で紹介しています。

 知らなかった絵本で読みたくなったナンバー1はこちら。

 『天女銭湯』
 作 ペク・ヒナ 訳 長谷川義史 ブロンズ新社

 粘土細工の人形で天女さんを造形し、銭湯で出会う少女と天女さんとのやり
 とりが描かれています。

 天女さんと少女の表情が独特でパワフルも感じられ、これは買って読まねば
 と思ってます。

 そして既に読んでいた絵本で私もすすめたくなった絵本は2冊。

 『レ・ミゼラブル ファンティーヌとコゼット』
 原作 ビクトル・ユゴー 再話 リュック・ルフォール
 絵 ジェラール・デュボワ 訳 河野万里子 小峰書店

 長編の原作を再話したもので、文章もかなり多い絵本です。
 原作の魅力を活かしつつ、絵と共に重厚な仕上がりで、これは本当におすすめ。

 『宮澤賢治 「旭川。」より』
 文・画 あべ弘士 BL出版

 恥ずかしながら、この絵本で知った詩「旭川。」
 「旭川で暮らす絵本作家が、この詩を絵本化したのも必然と言えるでしょう」
 の紹介文に納得。道産子の私は、旭山動物園であべさんの絵を初めて見て以来
 この画家のファンなのです。
 詩とともに、あべさんの絵に深いところにつれていってもらえました。

 どの絵本も中高校生が読んだらどんなふうに感じるのか楽しみなものばかり。
 学校の図書室にぜひおいてもらいたいガイドブックです。


 さて、引き続き私からも絵本をご紹介していきます。

 『いっしょにおいでよ』
 ホリー・M・マギー 文 パスカル・ルメートル 絵 
 ながかがちひろ 訳 廣済堂あかつき

 ながかわちひろさんの訳者あとがきによると、
 この絵本は「自由なくらしを手放さないこと、外国のたべものや文化を楽し
 むことも、テロやヘイトスピーチへの意思表示」と思った作者と画家の2人
 がつくりました。

 おんなのこはテレビでニュースをみてこわくなります。
 たくさんの人たちがにらみ合い怒りをみせている。
 この国から出て行けと怒鳴っている。

 お父さんにたずねます「こんなのっていやだ、どうしたらいいの?」と。
 「いっしょにおいで」とお父さんはおんなのこと外出します。

 おんなのこはお母さんにもたずねます。
 お母さんとも外出しました。

 両親と外出して感じたことで、
 今度はおんなのこはひとりで出かけます。
 途中で友だちのおとこのこといっしょになります。

 「いっしょにおいでよ」

 そんな一言で、勇気を出してみる。行動してみる。
 世界をよくしていくには、最初の一歩を踏み出すこと。

 平易な言葉で、自分のくらしを手放さないためにどうするかが伝わってきま
 す。

 絵本のなかにいるおんなのこは、時に、私たち読み手を見つめていて、その
 目をみていると、自分も襟を正す気持ちになりました。

 メッセージ力を実現させているのは、翻訳者なかがわさんの力でもあります。
 http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=25

 ブログには、この絵本を訳されることについて興味深いことも書かれていま
 すので、ぜひぜひ読んでみてください。

 次にご紹介するのは、これから暑くなる季節に食べたくなるアイスクリーム
 のワクワクする絵本。

 『ぼくはアイスクリーム博士』
 ピーター・シス さく たなか あきこ やく 西村書店

 絵本のうれしいところは、文章とともに豊富な絵のおかげで知りたいことが
 わかりやすく理解できる点にあると思います。

 本書はアイスクリームの起源、どんなふうにつくるのか、様々な国のアイス
 クリームの歴史などが、主人公のジョー少年の視点から描かれます。

 ジョー少年はおじいちゃんから、どんな夏休みを過ごしているのか手紙をも
 らいました。
 
 ジョーの夏休みはこんな感じです。
 アイスクリームの本を読み、ピスタチオなど知らない言葉を覚え、
 アイスクリームを使って計算問題を解いてみたり、
 アイスクリームでアメリカや中国などの歴史も勉強したりします。

 つまり大好きなアイスクリーム三昧の夏なのです。
 カラフルなアイスクリームがどのページにも登場し、
 私自身、初めて知ることがいろいろありました。

 5月9日はアイスクリームの日だということも教えてもらい、
 肌寒い日ではあったのですが、マンゴープリン〜ココナッツミルク仕立て〜
 のアイスを食べました。おいしい!

 今年の夏はこの絵本を読みながら、いろんなアイスを食べようと思っていま
 す。

 最後にご紹介する絵本は、小さなお子さんにぴったりの小さな絵本。

 「もりのこえほん」シリーズとして全4冊の内2冊をご紹介します。

 『サーカスくまさん』
 『もりのたんじょうびパーティ』
 エリザベス・イワノフスキー 作 ふしみみさを 訳 岩波書店

 シリーズの原書は1944年にベルギーで刊行され、シリーズ名はフランス語で
 「心配なく お気軽に」という意味。

 絵本の説明によると、刊行時は戦時のため、紙を手に入れるのが難しく、壁
 紙の試し刷り用の紙を使い、絵本サイズも小さくしたそうです。

 原画はグワッシュ(不透明な水彩絵絵具)を用い5つの色で絵本の登場人物
 たちを色鮮やかに描いています。

 『サーカスくまさん』では、タイトルにあるように、くまさんがサーカスで
 すごい技とおちゃめなところをみせてくれます。

 『もりのたんじょうびパーティ』では、森の生き物たちのダンスやパレード
 など楽しい出し物がいろいろでてきます。

 小さいお子さんとの読み聞かせだけでなく、
 デザイン性の高い絵本ですのでじっくり鑑賞する楽しみもあり、贈り物にも
 いいですね。
 楽しみは様々。

 ぜひ手にとってみてください。

(林さかな)
会津若松在住
http://1day1book.strikingly.com/

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<101>紅いマントと正義の味方

 教室で、学生が「バットマン」のクリアファイルを持っていたので、「それ、
わしらも子供のころに、よくテレビで見てた」と言うたところが、「ええええ
えっ!?」と大層にびっくりされて、こちらが驚いてしまった。

 コミック版の「バットマン」は、わしらが子供のころどころか、それよりず
っと前、戦前の1930年代から存在してたのだ、と教えるとさらに「えええっ!?」
とびっくりされた。

 バットマンクリアファイルの彼は、戦前の同じころに日本で生まれた「黄金
バット」は知らなかったようなので、戦前の、ほぼ同じころに太平洋を挟んだ
日米で、偶然にも同じ「コウモリ」をモチーフとする超人ヒーローが生まれた
逸話などを紹介した。

 「バットマン」と「黄金バット」、双方に共通する「覆面&マント」という
スタイルは、おそらくはそれより前に生み出されていた「怪傑ゾロ」のスタイ
ルを踏襲したんではないかな? という自説も開陳したところが、その「怪傑
ゾロ」を誰も知らなくて、説明にとても苦労した。

 スーパーヒーロー繋がりで、「スパイダーマン」もまた、1970年代の「少年
マガジン」誌上で、池上遼一・画によって日本版に翻案されて連載されていた、
と紹介したのだが、これもまた、ただ今の学生諸君には、イマイチ想像できな
かったようだ。

 あの「覆面&マント」、とりわけ「マント」というのは、ヨーロッパ中世の
騎士の装束にルーツがあるようだが、黄金バットやバットマン、スーパーマン
に月光仮面もマイティ・マウスも、はてはパーマン、ガッチャマンも、皆、長
いマントをたなびかせ、自慢の乗り物で、あるいは自らが飛翔して、颯爽と登
場するのである。

 「まぼろし探偵」や「サイボーグ009」なんかが首に巻いていた長いマフ
ラー、あれは、「マントの省略形」だったんだろうな。

 風に吹かれてはたはたと、雄々しくかつしなやかにたなびくナニガシか……
それは、悪に敢然と立ち向かうヒーローには、不可欠なアイテムだったのだ…
と思う。
 言うたらまあ、武将が戦場で掲げる「旗印」のようなもの?
 「母衣武者」の、あの「母衣」てのは、元来は背中に打ちかけられる矢を防
ぐものらしいが、あれが馬上ではためく様、てのも、なかなかにカッコいいで
すもんね。

 アニメ版に先駆けて放映されていた実写版の『鉄腕アトム』では、アトムは、
原作漫画にはない「マント」を身にまとっており、やはり、これをたなびかせ
ながら、足からジェット気流噴出させて飛翔するのである。

 ちなみに、実写版『アトム』では、主人公・アトムを演じていたのは当然な
がら人間の俳優で、その「頭」は、どう見ても「角の生えたヘルメット」にし
か見えなくて、後年、アニメ版が始まった後も、わしはずっとアトムの頭の
「黒いところ」は、ヘルメットだと思い込んでいた。

 えーと、どこかに映像が……

 https://www.youtube.com/watch?v=DHs_ajbiIA0

 ね、「ヘルメット」でしょ。

 授業の中で、この実写版「アトム」や、日本アニメ黎明期の映像を流すこと
があるのだが、今の学生さんは、アニメの主題歌の中に、歌詞として「♪グリ
コ、グリコ、グ〜〜リ〜〜コ〜〜(鉄人28号)」とか、「♪サンヨー、サンヨー、
サンヨー電機!(ジャングル大帝)」という風に、スポンサー名があからさまに
挿入されることが衝撃的なようで、なんでかそこで大笑いになる、ということ
がよくある。

 当時のアニメは、ほとんどが一社提供であり、そのスポンサーもまた、自社
製品を売らんがためのマーケティング戦略としてアニメをスポンサードしてお
り、わしらには、ごく「当たり前」だったんですけどね。

 明治製菓の「アトム」、グリコの「鉄人28号」は、それぞれに、自社のお菓
子を売るためのアイテムだったし、森永のココア缶には「狼少年ケン」のステ
ッカーが入っていた。
 アニメ版「エイトマン」のスポンサーは、「のりたま」の丸美屋。
 当時、ふりかけは一種のブームで、各社からいろんな製品が発売されていた
のだが、わしは、丸美屋製品に入っている「エイトマン・シール」が欲しくて、
いつもここの製品をねだっていた。

 スーパーヒーローものではないが、昭和40年ころ「少年マガジン」で連載さ
れた柔道漫画『ハリス無段』(梶原一騎・吉田竜夫)は、当時のカネボウハリス
とのタイアップ作品で、連載と同時に、毎号「ハリス・チューインガム」の広
告が同誌に掲載されていた。

 この後に連載された、ちばてつや『ハリスの旋風(かぜ)』もまた、同じタイ
アップ作品で、こちらは、カネボウハリス提供でテレビアニメ化もされたのだ
った。

 実写版「アトム」と同じころに放映されていた「ナショナルキッド」もまた、
「覆面にマント」な伝統的スタイルの超人が悪人と対決する特撮ヒーローだっ
たが、こちらもまたタイトルからしてあからさまに、スポンサー丸出しなのだ
った。

 提供はもちろん「松下電器」。
 オープニングは、↓こうだ。

 https://www.youtube.com/watch?v=kcDLEQtsWkU

 ね、あっけらかんと、あからさまでしょ。

 『バットマン』、『スパイダーマン』の例に倣って、日本でも、この『ナシ
ョナルキッド』を現代風にアレンジしてリメイクしても、面白いんじゃないか、
とも思うのだが、その場合はやはり『パナソニックキッド』になるのだろうか?


太郎吉野(たろう・よしの)
 2011年に神戸から西宮へ引っ越して、ただ今のホームグラウンドは甲子園。
右投げ右打ち。掛布二軍監督はひとつ年上の同級生。

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■人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える/SHOW−Z
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リストラされるのは辛いが、するほうも辛い。
『切り捨てSONY リストラ部屋は何を奪ったか』(清武英利・著 講談社)

 春というのは人事にとって、1年の中でもっとも慌ただしくなる季節になり
ます。会社には学卒の新入社員が入社してきて、彼らの新入社員研修がスター
トしつつ、その裏では来年度の新卒採用がピークを迎え、そして3月末決算の
会社ならば、前年度の人事評価もゆるりと始まったりします。

 人事のお仕事は、ヒトにかかわるものすべてが対象です。経営の意向を受け
て、組織のため、社員のために、採用、教育、給与、労務、そして人事制度企
画などを遂行していきます。どれもそれぞれに、難しさあり、やりがいあり、
といったところなのですが、その中でどうしても、できれば敬遠したい業務が
あります。それは、社員の退職にかかわるお仕事です。

 退職といっても、定年退職者や自己都合で去っていく方々の対応ではないで
すよ。退職を勧奨する、端的に言ってしまえば、自分が悪者になって、社員の
首を切る仕事です。そりゃ、誰だってやりたくはないですよね?

 1990年代にバブル景気が崩壊すると、それまで一般的だった終身雇用制
度を見直し、米国式のリストラクチャリングを導入する企業が増えました。リ
ストラとは本来、「事業や組織の再編成・再構築」を意味する言葉です。しか
し日本では整理解雇としての意味合いが強く、誰もが「首切り」とか、「解雇」
というイメージを抱きます。これまでに多くの企業でリストラが行われ、それ
が大手で名の通った企業の場合は、都度ニュース等でも報道されてきました。

 本書は日本を代表する家電メーカー・ソニーの中で行われてきたリストラの
裏側を取材したドキュメント。著者は過去に読売巨人軍の球団社長だったこと
でも知られている、清武英利氏です。

 ソニーでは1996年12月に「セカンドキャリア支援」という名目で希望
退職者の募集が始まりました。それ以後、これまでに数度の大量リストラを断
行しています。この本では、リストラを宣告された社員が送り込まれるリスト
ラ部屋の実態、その中でもがきながらも、次のキャリアに向けて歩んでいく社
員のストーリーが紹介されています。そして「出る杭は打たれない」という人
事ポリシーを持っているはずのソニーが、尖った人材を切り捨てることで、ソ
ニーらしさを失っていく実態が、生々しく描かれています。

それだけでも読み物として十分に面白いのですが、この手の他の本と大きく
違ったのは、リストラを実施する人事担当者に焦点を当てた章が存在すること
でした。

 第5章に登場する吉松こころさん。他の社員はすべて実名なのに対し、彼女
だけは仮名です。人事担当として、リストラの対象となった社員と1人ずつ面
談し、罵声を浴びせられようが、泣きつかれようが、一切表情を変えず、かつ
相手の目から視線は外さずに、残された選択肢を淡々と伝えます。ソニー社内
で「リストラ担当」と呼ばれ、「あの人事は容赦ない」とも言われる、人事の
プロです。

 しかしその裏側では、きつい仕事と良心との間で苦しむ、1人の人間として
の姿が描かれているんですね。特に印象深かった文章を、引用してみます。

ストレスで下痢が続き、首や耳の奥が強く痛む。
(中略)
彼女は起き抜けに自分の頭に手をやることがある。
髪の毛が生えていることを確かめるのだ。

それは管理職と言い争った翌朝のことだった。
うつらうつらと見た夢で彼女は、ストレスのために落ち武者風に頭頂部が
すっかりとハゲ上がってしまっていた。
目が覚め、頭に手をやって、つぶやいてしまった。
「良かった。あった。夢だったのね」

 人事のプロとして長年やってきている方でも、これだけ追いつめられてしま
う辛さ。想像しただけで自分の髪が大丈夫かと、思わず触っちゃいましたよ。

 最終的に彼女はソニーを去る決断をします。ある一定の期日までに退職すれ
ば早期退職プログラムが適用され、通常の退職金に加え、退職加算金が上積み
されるにもかかわらず、彼女はその時期を外して辞表を提出するんです。私は
これ、人事っぽい去り方だよなぁと感じたんですね。自分の利益を優先せず、
ギリギリまで責任を果たしての退職。経営に近いところで仕事をする人の特性
が出ているのではと思ったのでした。

 人事は経営の意向を受けて、様々な施策を実施します。それが故に、その仕
事の内容によっては経営と社員との間で、板挟みになってしまうジレンマが。
これはリストラに限った話ではなく、社員に何かしらの変化を求めたり、不利
益な事実を伝えなければならない事案ならば他でもありえる、人事業務の性質
です。人事になって10年以上が経つ私も、いろいろと経験を積んできたつも
りではありますが、さすがにここまでえぐい経験はないですね。まだ青二才な
のかなぁと思ったりもするのでした。

 ちなみに先々月、とある大学内で開催された新卒採用の合同企業説明会で、
私の会社の同じ列にソニーがブースを構えており、多くの学生に取り囲まれて
おりました。そこには声を張り上げて会社説明をする、人事と思しき担当の方
が数名。にこやかに自社の魅力を語りながらも、実は過去に同じような辛い状
況を経験されているとか? 同じ人事として、尊敬の念に堪えません。。。

show-z
某IT企業で人事担当者として勤務。千葉県在住。

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・『支え合い・学び合いで育つ「わたし」』(エディット・パルク)
  http://web.kyoto-inet.or.jp/people/cogito/%8Fo%94%C5%88%C4%93%E0/%8Ex%82%A6%8D%87%82%A2%81E%8Aw%82%D1%8D%87%82%A2.html

・『追憶 下弦の月』(パレードブックス)
  http://books.parade.co.jp/category/genre02/978-4-434-23989-2.html

・『元アイドルのAVギャル瀬名あゆむ、アイドルプロデューサーになる』
 (コアマガジン)
 http://www.coremagazine.co.jp/book/coreshinsho_024.html

・『ミスなくすばやく仕事をする技術』(秀和システム)
 http://www.shuwasystem.co.jp/products/7980html/5125.html

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

 〒142-0041 東京都品川区戸越5-4-3 アズ品川ビル4階
       ビズナレッジ株式会社内 [書評]のメルマガ 献本 係

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンや楽天などのオンライン
 書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。つまり
 は当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願いしま
 す。(あまりにも短いものは書評とは呼べませんので、文字数の条件を設け
 ました。書評は500字以上でお願い致します。)

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 ちょっと遅れての発行となりました。(あ)

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→ 『健康を食い物にするメディアたち』

★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→ 『「老人」のウソ』

★【募集中】献本読者書評のコーナー
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#94『魂の旋律』&『ペテン師と天才』

 なんと、ウチの近所の図書館に、この2冊の本が並んでいた。

 1冊は、『魂の旋律 佐村河内守』。
 もう1冊は、『ペテン師と天才 佐村河内事件の全貌』。

 広島出身の被爆二世であり、全聾の作曲家として話題を集め、クラシックの
新作としては異例の大ヒットを出した佐村河内守が、実は全聾でもなく、作曲
もできず、長年にわたってゴーストライターに曲を書かせていたことが明らか
になったスキャンダルはまだ記憶に新しいが、その暴露の「前」と「後」に書
かれた2冊の本が、図書館の本棚に仲良く並んでいるというのが、どうにもシ
ュールで、思わず両方とも借り出してしまった。

 『魂の旋律』は、NHKスペシャルで放送された同タイトルのドキュメンタ
リーの裏舞台を、制作したディレクター古賀淳也が書いた本で、東北大震災の
被災者たちの傷ついた心と、亡くなった人たちの魂を慰めるべく、佐村河内守
がレクイエムを作曲する過程に密着している。もちろん出版は、まだゴースト
ライター新垣隆の存在が明るみに出る前だ。

 一方『ペテン師と天才』は、佐村河内が全聾でもなく作曲家でもないスキャ
ンダルを週刊文春で暴いた、ジャーナリスト神山典士の著作。ペテン師とは言
うまでもなく佐村河内であり、天才とは新垣を指している。

 佐村河内はゲーム音楽や映画音楽の仕事からスタートし、やがて壮大な交響
曲を発表。これが話題となって一躍時の人となった。

 学校で習ったように、西洋音楽には「調」という概念がある。ハ短調とかイ
長調というときの、あの「調」であり、英語では「キー」。よくカラオケで
「キーが高いから下げてくれ」などというときの、あの「キー」である。

 しかし、20世紀に入ると、「調」を持たない「無調」の音楽が、シェーンベ
ルクという作曲家によって創造され、これが次第に主流になっていく。その結
果、現代音楽では、18世紀のベートーベンのような「調」のある音楽、それも
交響曲が書かれることは非常に稀になった。

 そんなところへ、突如として現れたのが佐村河内の『交響曲第1番HIROSHIMA』
だったのである。

 タイトルが示す通り、この曲は被爆二世である佐村河内が、原爆の悲劇を描
いたものとされ、初演も広島で行われている。
 しかも、晩年耳の聞こえなくなったベートーベンさながら、全聾のハンディ
を背負い、轟音のような耳鳴りに苦しみながら、絶対音感を頼りに作曲すると
いうのである。
 その物語性がメディアによって喧伝されたことで、佐村河内は有名になるの
だが、それがすべて嘘で、実際には別人に報酬を払って作曲させていた、とい
うのが事件の概要である。

 『魂の旋律』を読み始める前は、著者の古賀淳也が、まったく真相を知るこ
となく、佐村河内の作曲過程を記録したのかと思っていた。
 しかし、神山典士の『ペテン師と天才』には、強烈な古賀批判が書かれてい
て、うすうすわかっていたのではないか、という印象を与える。

 神山本には、佐村河内が自分のことを「マエストロ」と呼ばせ、ドキュメン
タリーの撮影スタッフにも尊大な態度を取ったとある。
 しかし古賀本には、そんな記述は一切なく、激しい耳鳴りから来る苛立ちは
描かれていても、取材には協力的で、真実を伝えてほしいということ以外、何
も望まない真摯な芸術家像だけが描かれている。

 もちろん、どちらが本当なのかは当事者にしかわからない。

 ただ、テレビと雑誌という媒体の違いはあれど、両者の取材に対する取り組
み方が対照的であることは言える。
 古賀は対象への密着、という一点に、自身のドキュメンタリーの価値を見出
しているようだが、それは逆に言えば周辺取材や裏取りを怠っているというこ
とでもある。
 一方神山は、自分だけではなく週刊文春の取材チームを率いて、佐村河内、
新垣それぞれの実家はもちろん、友人、恩師、関係者など、当たれる限りの証
言者に当たり、多角的に真相に迫っている。
 そもそものきっかけが、ゴーストライターであった新垣隆自身の告白だった
のに、それが本当なのか、二人がこのようなことをした背景や動機は何なのか、
人物像に迫るための分厚い取材を行っているのである。

 また古賀は、実際はともかく、佐村河内に心酔しているように見える。ジャ
ーナリストとしての客観性が、この本からはまったく感じられない。
 しかし神山は、ことが表現者の倫理に関わる問題であるだけに、事件そのも
のを自分事化している。彼自身、ゴーストライターの仕事をしたことがあり、
それが一概に否定されるべきなのかを自問しているからだ。

 この二冊を読んで、改めて佐村河内事件を考えた時、ゴーストライターの是
非は本質的な問題ではない、と思った。

 何かを評価するときに、われわれがそれ自体と直接関係のない「物語」を必
要としてしまうということ。
 それこそが、真の問題なのではないか。

 例えば、『交響曲第一番』も、当初のタイトルは『現代典礼』だったという
事実がある。つまり、広島とも被爆とも関係のないものとして、新垣の手によ
って作曲された。
 ところが佐村河内がさまざまに動いたにもかかわらず、曲が出来てからなか
なかレコーディングの話が進まない。そんな折、スタンドプレイで有名な当時
の広島市長が、被爆二世の作曲家による交響曲があると知り、これをG8議長
サミットの時に演奏する、というアイデアを得る。そこで、曲が完成した後か
ら、タイトルをHIROSHIMAに差し替え、初めから反核のために作曲したという
「物語」をまとわせているのだ。『広島』ではなく『HIROSHIMA』にしたのも、
サミットが念頭にあったからだろう。

 あるいは、自身の全聾という「物語」でも足りずに、義手でヴァイオリンを
弾く少女を見つけ出すや、彼女に作品を献呈するという形で近づき、その「障
害に打ち勝って音楽の道に進む女の子」という「物語」をも重層させていく。
もちろん、その献呈作品もゴーストライターのペンになるのだが。

 佐村河内は、さまざまな物語で、音楽を覆い尽くす。
 交響曲が、さまざまな楽器の奏でるメロディを重ね合わせて、巨大なハーモ
ニーをつくりあげるように。
 蜘蛛が獲物を狙って、幾重もの糸を重ねて網を張るように。

 しかし、それもこれも、われわれが音楽作品そのものを純粋に享受し、評価
することができないからだ。

 特にクラシックの交響曲には、原則として言葉がない。
 抽象的な表現であるために、多様な解釈を許す。
 本来なら、その解釈は聴き手に委ねられているのだが、そんな面倒なことを
しようと思う人は、現代人の中ではもはや少数派なのだろう。

 また、素人がいくら聴き込んでも正しい評価ができるとも思えず、結局専門
家などの権威によって承認されたものばかりが消費されることになる。

 だからクラシックのコンサートでは、声価の確立した古典レパートリー、そ
れこそベートーベンやらモーツァルトやらバッハやらが幅を利かせ、新作はめ
ったに聴くことができない。

 そうした閉塞状況が、新垣にゴーストライターをさせた一因でもある。
 彼は「頼まれたら嫌と言えない性格」もあるだろうが、それ以上に、「こん
な時代に、調のある音楽、それも交響曲が書けて、それが実際に演奏されるの
を聴くことができるかもしれない」という夢にそそのかされて、佐村河内の依
頼を引き受けてしまったのだ。

 どうしてわれわれは、「物語」がないと、音楽を評価できないのだろう。
 それくらい、音楽なんて、どうでもいいものだからなのか。

 いや、音楽に限らない。
 先ごろ開催されたパラリンピックにも、「障害との戦い」という物語が影を
差しているかもしれない。
 マーケティングの世界にも「物語消費」というのがある。例えばビックリマ
ンチョコというお菓子では、おまけに「悪魔vs.天使シール」が入っており、
集めて行くとさまざまな悪魔や天使が複雑に絡み合う壮大な物語が垣間見えて
来る。それが知りたくて、子供たちがチョコに殺到し大ヒットになったのであ
る。

 いずれも、スポーツやチョコレートという「本体」ではなく、そこにまとわ
された「物語」が人の心を惹きつけている。

 小説が売れない、という。
 つまり、物語そのものは、商品として売れなくなっている。
 なのに、他の商品が物語をまとうと、それはヒットするのである。
 実に不思議だ。


古賀淳也
『魂の旋律−佐村河内守』
2013(平成25)年10月25日 第一刷発行
NHK出版

神山典士
『ペテン師と天才 佐村河内事件の全貌』
2014年12月15日 第1刷発行
文藝春秋

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
先月、長年勤めた会社を早期退職。現在は職探しの日々。先日、人生初のハロ
ーワーク・デビューも果たしました。意外に若い女性が多いんですね。後はぼ
くと同年代のおじさん族。その昔、山崎努が「ご同輩、近頃夢を見ておられる
か?」と呼びかけるCMがありましたが、そんな気分で声をかけたくなる四月
です。

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『健康を食い物にするメディアたち』朽木誠一郎 ディスカヴァー携書

 いわゆるWELQ事件をきっかけにした。信用できない健康メディアに関する論
考である。著者はBuzzFeed MEDICALの朽木誠一郎氏。WELQ事件の火付け役にな
った方で、医学部卒業するときに自分が医師になっていいのかと逡巡してライ
ターになった方だそうだ。

 だいたいこういう本を読む人は、根拠のない健康情報や健康食品に踊らされ
ることがない人で、本来読まねばならない欺されている人たちはまず手に取ら
ないと思う。読むのは、本文中にも書いてあるが、健康情報に踊らされる「両
親、子ども、友人、会社の同僚」の姿を見て心を痛めていたり、そういう人が
うるさく「健康に・・」と言ってくるのに辟易している人だろう。

 しかし表紙をめくると折り返しに書いてあるのは

「健康や医療についてのウソや不正確な情報に欺されない人なんてたぶんいま
せん」

 おやおや、なかなか挑戦的ではないか・・・朽木さんは医学部で教育を受け
てきた人だし、医者ならたいてい見破れるんじゃないのかと思ったが、そうで
もないらしい。

 実は朽木さん本人も見破れるつもりだったが「今や、その手口は複雑になり、
その数が驚くほど増えている」また「欺す人の手口が多様化したことで、情報
の真偽が非情にわかりにくくなっている」らしい。そうなのか・・・見てない
から知らなかった。

 背景にあるのはネットの普及だ。それゆえに「ネット時代の医療情報との付
き合いかた」を考え直す必要があるということで書かれた。

 まず指摘されるのは情報格差だ。「情報に詳しい人と詳しくない人がいる」
その差が医療の世界では大きな格差となっていて悪意を持って欺す人はそこに
つけ込んでデマを流すし、知識不足による嘘つきや不正確な情報も、この格差
から生まれる。

 経済合理性の問題もある。「ラクに、簡単に」を求めるのは人情だから、そ
ういう記事や原稿を書いた方が売れる、儲かる。食事を減らして最低でも十五
分以上多少負荷のかかる運動しろなんて正論を言ってもコンテンツは売れない。

 いや、そんなことはわかってる・・・だからと言って医師の言うことを聞け
ばいいのかと言えば「不確実性の限界」がある。たとえば、この病気治ります
かと聞かれて、確実に治りますという医師はインチキだ。十中八九治りますが、
一部にはこんな副作用が・・・なんて言われたら患者は不安になる。それが医
師として最も誠実な態度であってもだ。

 その上不幸にも、運悪くワクチンの副作用なんかに当たったら患者は医療不
信に陥る。そうなったら誰がなんと言っても怪しい医療を信用してしまう人が
出てくるし、「自分の知った真実」を世間に広めたいという気になる。そして
それがセンセーショナルなほど世間の耳目を集める。

 そんなところから偽情報の見分け方やフィルターバブル(ネットなどで自分
の関心があることだけを伝えようとするシステムを使うことに安住して反論が
見られなくなること)の問題など、さまざまな視点から問題を考察する。

 中でも感心したのは健康詐欺に引っかかる人には自己承認要求があるとする
くだり。どういうことかは本を読んで確かめてもらいたいが、要するに健康に
ついて人にいろいろ教えたがる人は承認要求が満たされていないということだ。

 これ、私もなんとなく気がついていた。しかし、もやもやとした感じで、ど
う言葉に表せばいいのかわからなかったのだけど、この本を読んで「そうか、
これは承認要求なのか!」と気がつくことが出来た。これか個人的には本を読
んだ最大の収穫である。

 ただ、だからとうすればいいのかは書かれていないがこれは仕方が無いだろ
う。そういう人たちの承認要求を満たすために主張を認めるわけにはいかない。
だが認めてやらないとデマを信じる人は心を開かないわけで、説得は困難を極
めるからだ。

 もう一つ、調べることのコストに言及しているところも、個人的には唸って
しまった。私は基本調べるのが好きだが、世間の一般の人はそうではない。賢
くなろうと勉強するのは疲れる。調べてもすくわれるかどうかわからないこと
を調べるのは個々人にとってコストの持ち出しであるという主張はその通りな
のだが、だったら健康デマに欺される連中は自業自得だろと思ってしまう。

 しかし、そう考えてしまえば、デマを流して不当な利益を搾取する連中を野
放しにすることになるわけで、それが誠実な態度かと言われたら反論できない。

 健康デマを信じるのは愚かなことなのは自明である。だからと言って、した
り顔をしていれば事足りると思っている人は、こういう本に関心は持たないか
も知れない。でも一度読んでみることをおすすめする。そんな人でも、意外と
発見することがあると思う。少なくとも私はそうだった。


(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)

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■「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
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台風の日におじいさんが田んぼに行くのはなぜかがわかった
『「老人」のウソ』(武田邦彦・著 産経新聞出版)

 実用書ってそう役に立たない、また昨今、それほどいい本は見当たらない…
と思っていたおばちゃま。
 でも、それは本への期待値が高くなりすぎているせいであって、あまり深く
考えず、本の中に少しでも参考になる項目が1つか2つあればそれでいいのだ
と考えを変えました。

 きっかけになったのがこの本です。
 著者は「ホンマでっか?!テレビ」などにも出演している工学の先生で「人
はどのように老いたらいいか」というのがこの本の主旨。「老人という分類は
ないので年をとってもがんばって」という励ます系の本です。
 
 中にハタと膝を打つエピソードがありました。

 よく台風の日に、豪雨の中、用水路や田んぼのようすを見に行って足を滑ら
すかなんかして流されて亡くなる男性の高齢者がいるのはなぜかという話です。

 前から気になっていたんですよね。

 豪雨ですよ、台風ですよ。家にいたらいいじゃないですか。見に行っても雨
が止むわけでも田んぼの増水がおさまるわけでもありません。

 なのに、いくらおばあさんが引き止めても言うことを聞かずに出て行くのは
なぜなのか。それがおばあさんではなく、決まっておじいさんであるのはなぜ
か?

 それは、ヒトは50歳以上は生物としての役割を終えるが、今の日本人はその
あと同じぐらいだけ生きる時間が残されている。
 女=メスは子どもや孫や見ず知らずの人でもお世話するという役割を生きる。
男=しかし、オスは生きる意味がよくわからない。でも、推測として社会のた
めに役立とうとする、それでわが身を挺して田んぼを見に行くのだと著者は考
察しています。

 「社会のために役に立とうと思って死ぬ。これは50歳以上の男性の素晴らし
い生き方です。」
と書いてありました。

 「極端に言えば。こういう『仲間に貢献する』献身的な行為が、50歳以上の
男性の重要な役割の1つではないかと思われます。つまり、社会の役に立つこ
とをするのが生きている意味と考えられます」

 細かいことを言って申し訳ありませんが、川や用水路を見に行くのは公共の
ためかもしれませんが、田んぼは自分の領地なわけですから社会のためとは言
い切れないとは思うんですが、まあ、家族=社会と拡大解釈してもいいかもし
れませんね。
 前から気になってた爐じいさん嵐の日に田んぼを見に行って流されるある
ある瓩鵬奮愿根拠があることがわかって、1300円+税払ってよかったと思い
ました。

 もう1つ参考になるエピソードが。

 ヒトは年齢と共に自分と社会の常識がかい離してくる。
 たとえば、子どもが恋人と旅行に行くことにもやもやするのは、過去の社会
の規範と今の規範がずれているためであると、グラフを取り上げて解説してい
ます。
 高齢者が正しいと思っていることと、若者が正しいと思っていることは違う
のに、お互いに正しいと思っているのでぶつかるのだと。

 ある意味、あたりまえのことですが、お恥ずかしい話、これまさに今、おば
ちゃまが直面している大問題です! それは理論的に解説してくださって納得
しました(頭ではね。気持的にはもやもやは止まらないけどな・笑)。

 あと、遺産相続できょうだいがもめるのは当たり前であることを遺伝子的に
説明している項目もあり、なかなか勉強になります。

 ホントにそれが正しい科学なのかと言われるとよくわからない部分もあるん
ですが、一時でも納得して本を閉じる、これが実用書の1300円+税の効果だと
思いました。(きょうだいが遺産相続でもめるのは、それぞれが家庭を持つな
どで違う環境で長く生きた結果、同じ屋根の下で暮らしていた時期とは価値観
や気質が変化したからだとおばちゃまは思いますよ)。

 毛嫌いしないでもっと本(実用書)を読もうと思いました。


大友舞子(おおとも・まいこ)
昭和20年代生まれのフリー編集&ライター。関東生まれで関西在住。


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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。
・『支え合い・学び合いで育つ「わたし」』(エディット・パルク)
  http://web.kyoto-inet.or.jp/people/cogito/%8Fo%94%C5%88%C4%93%E0/%8Ex%82%A6%8D%87%82%A2%81E%8Aw%82%D1%8D%87%82%A2.html

・『追憶 下弦の月』(パレードブックス)
  http://books.parade.co.jp/category/genre02/978-4-434-23989-2.html

・『元アイドルのAVギャル瀬名あゆむ、アイドルプロデューサーになる』
 (コアマガジン)
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 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

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■あとがき
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 ちょっと遅れての配信となりました。むうすぐGWですねー。(あ)

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■■ mailmagazine of book reviews       [連載が100回となった 号]
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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<100>歌の風景、漫画の風景

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→82 声をあげること

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第100回 死んでしまった子どもたちと生き残ってしまった大人たち

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです。

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

----------------------------------------------------------------------
■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
└──────────────────────────────────

 京都の出版社、エディット・パルク様より、下記の書籍の献本を頂戴しまし
た。

・高木和子『支え合い・学び合いで育つ「わたし」』(エディット・パルク)
  http://web.kyoto-inet.or.jp/people/cogito/%8Fo%94%C5%88%C4%93%E0/%8Ex%82%A6%8D%87%82%A2%81E%8Aw%82%D1%8D%87%82%A2.html

 書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
----------------------------------------------------------------------
<100>歌の風景、漫画の風景

 つい先日のことだ。

 自宅で風呂に入っているとき、ある歌のフレーズがふと浮かんできて、その
後ずっと頭を離れずになり続けていたのだ。

 その後もまた、ふとした折にそのフレーズが脳内に鳴り響く状態が続いたの
だけど、そのフレーズが頭に鳴り響くたび、朝ぼらけの中、京都・百万遍の交
差点のカーブを、小ぬか雨に濡れた一番電車がレールを軋ませながら曲がって
くる景色…などが同時に再生されたりするんである。背景の時代はもちろん、
70年代だ。

 それが昔の荒井由実の歌だというのはわかっていたのだが、タイトルがどう
しても思い出せなくて、「ん〜〜〜〜っ!」だったのだ。

 ふと思い立って、googleでその歌の歌い出しのフレーズ、「夜明けの雨はミ
ルク色」と検索をかけてみたところ、それは、荒井由実、1973年のビューアル
バム「ひこうき雲」に収録された『雨の街を』という曲だ、というのがたちど
ころに判明した。

 そうだった。↓これだ、これです。

 https://www.youtube.com/watch?v=X1TrMI2P-HQ

 ネットは、実に便利ですね。

 この歌が、「ひこうき雲」に収録されていた、というのも同時にわかって、
70年代の京都の景色が脳内再生される訳もまた、深く納得がいったのであった。

 それはもちろん、とても個人的な体験に根差しているのだけど、ある歌、あ
るいは曲が、個人的なある風景やシチュエーションに結びついていて、歌と同
時に脳内映像が再生されて、思わず身もだえしてしまう…というのは、誰しも
によくあることだと思う。

 たとえば、わしで言うとこれ以外にも、シカゴの『サタデー・イン・ザ・パ
ーク』と、なぜかセットで記憶されているクリーデンス・クリアウォーター・
リバイバル『雨を見たかい』なら、高校時代の、夏の陽炎に校庭の松が揺れて
いる風景だ。

 風に巻き上げられた砂ぼこりの匂いもまた、同時に湧きあがってくる。

 『少年』とか『引越し』といった浅川マキの歌を思い出すたび、世田谷経堂
の、外の通りをバスが通ると揺れた下宿の、開け閉めの度にガタピシ軋んでい
た窓から見ていた夕陽や、バイト先の居酒屋から帰る夜の商店街の風景が、鮮
やかに蘇えってくる。

 前回の稿では、かわぐちかいじ『黒い太陽』はじめ、初期作品にみられる風
景の抒情性に触れたのだが、「風景」というのは、人それぞれに、個人的な体
験や記憶に強く結びついてもいて、歌の場合は、その歌を聴いていたころの記
憶に繋がって、実際の風景や状況を想起させ、思わず身悶えもしてしまうのだ。

 漫画の中に描かれた風景を見て、その風景の中に自分を置いてみたい、ある
いは行ってみたい、と思わせる漫画が、確かにある…というか、かつては、た
くさんあった。

 前回に取り上げたかわぐちかいじの初期作品の中で「地面にへばりついたよ
うな町」というのを、実際にモデルになったろう関東の地方都市を通過する列
車の中から、「あ! これだ!」と気づいたときには、無性にうれしかった。

 つげ忠男の漫画に描かれた利根川河畔の乾いた光景を実際に見たくて、用も
ないのに常磐線に乗ったこともあった。

 やはり用事もないのに、調布仙川の甲州街道や、深大寺の境内に立ってみた
のは、そこがある意味を持つ「風景」として、鈴木翁二の漫画に描かれていた
からだ。

 他にも、たとえば安部慎一の漫画に描かれた筑豊の風景、つげ義春の温泉場
や宿場町、勝又進の農村風景、等々には、単なる「背景」に留まらない、強烈
なインパクト、あるいは抒情性を持って、見る者に迫ってくる力があった。

 そして、時としては、その漫画の中で、その「風景」こそが、登場人物たち
よりもなお雄弁な「キャラクター」として、存在していたりもするのである。

 それに比して、ちかごろの漫画の中での背景というのは、あくまで「背景」
であってそれ以上でも以下でもなく、単なる「パース」に堕している例が、あ
まりに多い、と思わず悲嘆してしまった春の23時34分。

 しかし、と、気を取り直して、つらつらと思い出し、考えてみるに現代の作
家でも、たとえば『この世界の片隅に』のこうの史代、たとえば『Sunny Sunny
 Ann!』の山本美希、あるいは『あれよ星屑』の山田参助、『茄子』の黒田硫
黄、そうだ、うらたじゅんだって、いるじゃないか。

 彼らの作品の中には、きちんと、それ自体で何かを「語る」風景が、背景と
して描きこまれている。

 まだ新人ながら、西村ツチカがその作品中で背景として描く風景は、なんだ
か微妙に不安定で、その作品世界を形作る重要な要素ともなっている。

 https://comics.shogakukan.co.jp/book?isbn=9784091897640

 ↑ と、こんな感じに。

 わしが関係している専門学校や大学もそうだが、授業の中で漫画の「背景」
に関しては、まずは「パース」を徹底する。

 アナログでの作画の場合は必ず定規を使い、絵を描くというよりも「製図」
の要領で背景を描くことを覚えこまされる。

 もちろん、それは必要だし、量産するにはその方法が一番ベストなのだけ
ど、単なる背景ではなく、それ自体で何かを訴えかけてくる「風景」という
のは、そこからもう一歩も二歩も進んだ先に見えてくるんではなかろうか。

 日本漫画の「元祖」というのは、わしは江戸期の浮世絵だと思っているの
だが、その浮世絵は、広重しかり北斎しかり、「風景」そのものに語らせた
作品が、実に多い。

 ちかごろめっきり停滞気味とも言われる日本の漫画ではあるが、人物だけ
ではなく、キャラクターとして語りかけてくる「風景」を意識することが、
漫画表現の領域を広げ、さらなる高みに押し上げることにもなるんでは? 
と思ってしまった春の深夜なのだった。


太郎吉野(たろう・よしの)
 2011年に神戸から西宮へ引っ越して、ただ今のホームグラウンドは甲子園。
右投げ右打ち。掛布二軍監督はひとつ年上の同級生。

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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82 声をあげること

 アメリカのフロリダ高校でまたも銃による悲しい事件がおき、
 当事者である高校生たちが声をあげ、大規模なデモ行進をしたことはネット
 動画でも多くとりあげられました。

 中でも、エマ・ゴンザレスさんの沈黙も含んだスピーチは、
 動画をみた多くの人の心を動かしたのは間違いないでしょう。
 私はこの動画を高校生の娘と一緒にみました。

 彼女はスピーチの英語を理解する前に、
 ゴンザレスさんの言葉のもつ力を受け取り、
 いつのまにか涙を流しながら聞いていました。
 そしてそれ以来、ツイッターでフォローし、銃規制の必要性を強く感じるよ
 うになっています。

 言葉が届くということを目の当たりにした後に読んだ、
 当事者が声をあげることについて、2冊の本をご紹介します。

 『ザ・ヘイト・ユー・ギヴ あなたがくれた憎しみ』
 アンジー・トーマス作 服部理佳 訳 岩崎書店

 本書は昨年2017年アメリカで話題になった社会派YA。
 デビュー作にして、世界30か国で刊行されている作品です。

 主人公は治安が悪くギャングもはびこる街に暮らす、女子高校生スター。
 ある日、パーティから一緒に帰った幼なじみのカリルが、白人警官に呼びと
 められ、スターの目の前で射殺されてしまいます。
 目撃者はスターただひとり。

 最初は事実はひとつなのだから、自分が証言しなくても警官は裁かれると思
 っていたスターでした。しかし、事実とは異なる報道が重なり、スターは、
 いまはもう口を開けないカリルの為に、無実を証言する決意をするのです。

 元ラッパーである作者は大学で創作を学び、在学中から本作を執筆したそう
 です。タイトルも伝説のラッパーであるトゥパックの言葉からとられており、
 彼も銃で命を落としています。

 ザ・ヘイト・ユー・ギヴについてカリルはスターにこう説明します。

「The Hate U、UはアルファベットのU、Give Little Infants Fucks Everybody、
 頭文字を取って、T-H-U-G L-I-F-Eだよ。つまり、おれたちがガキのころ
 社会に植えつけられた憎しみが、やがて噴きだして、社会に復讐するって
 意味だ」

 その話を聞いた後、スターとカリルは警官に呼びとめられたのでした。

 スターは12歳のとき両親から、警官に呼びとめられたときにはどうすればいい
 かということについて教えられました。白人警官に対して黒人がとらなくては
 いけない態度についてです。

 「いいか、スター。とにかく連中のいわれたとおりにするんだ。手は見える
 ところに出しておけ。いきなり動いたりするんじゃないぞ。むこうから話し
 かけられないかぎり、口は開くな」

 警察を怖がるよう教えるのではなく、うまくたちまわる術です。

 カリルはいきなり動いた為に撃たれました。ただカリルは撃たれるような事
 は何もしていません。

 事件後、カリルは撃たれて当然であるように報道され続けました。
 事実とは違う報道がされるには、複雑な背景もあります。
 カリルはヤクの売人をしていたこともあり、偏見にもさらされ、スターの証
 言もヤクにからんだギャングからの脅かしもありました。

 果敢に立ち向かい声をあげるスターはまだ16歳。両親、親戚(伯父は白人警
 官のひとりでもあります)そしてボーイフレンド、親しい友人はしっかりと
 支えます。

 作者のリアリティある描写は、社会を変えていこうとする若い世代の強さを
 伝えてきます。

 本作は白人と黒人という人種対立だけでなく、黒人どうしでもギャングの抗
 争で殺し合いが起こることも含め社会の複雑さを詳細に描き出しています。

 スターの両親の人間性も生々しく、ケンカをしたときに、ヤケをおこした、
 父親が浮気をしその結果、スターには異母兄がいることも、それを受け入れ
 ている母親も、なぜ父親を許し一緒にいるかを説得力をもって教えてくれま
 す。

 ずっしりと重たい話ではあるのですが、嫌いな人とはどうつきあっていくか
 など、人生のライフハックもさりげなくもりこまれていて、細部まで読みご
 たえがありました。

 映画化も決定されているそうですが、撮影が終わった後に、スターのボーイ
 フレンドという重要な役柄の俳優が降板になり(その理由が過去に人種問題
 を助長させるようなジョークをYouTubeにあげていたのがわかり炎上した為)
 ようやく最近違う俳優で撮り直しが決まったようです。
 日本でも公開されたらぜひ見てみたいです。


 『パンツ・プロジェクト』
 キャット・クラーク作 三辺律子 訳 あすなろ書房

 こちらは、中学校に入学したリヴが服装規定によりスカートをはかなくては
 いけないことに、強い違和感をもち、パンツでも通学できるように「パンツ・
 プロジェクト」を友人らと立ち上げる物語。

 そう、本書もまた自分の違和感を声に出し、学校を変えていこうとする話で
 す。

 リヴは最初は簡単にできることだと思っていました。
 周りの中学ではパンツでもいいところはあるし、
 スカートにこだわる理由はないと思っていたからです。

 しかし、なぜパンツじゃなきゃいけないの?という声もあがりました。
 校長先生にも話をしましたが、将来的に考えるとして緊急の課題にはならな
 いとすぐの検討はしてくれません。

 前回のメルマガでご紹介した『いろいろいろんなかぞくのほん』(メアリ・
 ホフマン文/ロス・アスクィス絵/杉本 詠美訳/少年新聞社)に出てきた
 家族のように、リヴにはお母さんが2人います。

 パンツをはきたいリヴは自分のセクシュアリティについても考えるところが
 あり、お母さんが2人いる家の子はパンツをはきたがるわけ?とはいわれた
 くないことと、母親のひとりが既に心配事を抱えていたこともあり、親には
 秘密でプロジェクトをすすめます。

 自分らしくいられる服装を自分で選ぶリヴの行動は、読んでいてすがすがし
 く、ごく当たり前の行動に思えました。けれど、声をあげるには自然体だけ
 ではなく、やはり勇気が必要です。

 いろいろな人がいることについて、100%理解しなくても、受け入れていく
 心の柔らかさを意識させられました。

 まずは気負わず読んで欲しい。
 フリーペーパー「BOOKMARK」の装丁もしているオザワミカさんが描いたシャ
 ープな装画は手に取りたくなるかっこよさがあります。
 

 さて、最後に、
 この2冊に登場した彼らの声が、彼らのゴールにたどりついたら、
 10代ならではの、ただ楽しむ時間もつくって欲しいと願います。


(林さかな)
会津若松在住
http://1day1book.strikingly.com/

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第100回 死んでしまった子どもたちと生き残ってしまった大人たち

 連載が100回となった。2010年1月から始まっているので9年目にして100回。
震災の前から始まっていたのが少し驚きなのだ。今回も震災関連の本を読む。

 大川小学校。以前にも大川小学校について書かれた本を紹介したことがあっ
た。子どもたちだけで74人も犠牲になったこの小学校について考えるとき、そ
の犠牲になった子どもたちのことについて考えざるを得ない。あの子たちはど
んな想いで津波に呑まれてしまったのだろうか?そして残された親たちはどん
な想いで今を生きているのだろうか。

 それを西洋人が本にした。取材して考えて本にした。

『津波の霊たち 3・11 死と生の物語』(リチャード・ロイド・パリー著)
(濱野大道訳)(発行:早川書房)(2018年1月25日初版発行)

『GHOSTS OF THE TSUNAMI Death and Life in Japan's Disaster Zone』
(Richard Lloyd Parry)

 リチャード・ロイド・パリーは『ザ・タイムズ』の東京支局長。7年前の震
災の時にも東京に住んでいて在日歴は20年以上になるというジャーナリスト
である。彼が震災直後から東北で取材を続け、さまざまにそれを世界に向けて
発信している。そして、このたび、自身が取材したものの集大成として、特に
悲劇的な大川小学校をテーマにしたものを発表した。

 本書の特徴は大きく三つある。

 ひとつ目は、云うまでもなく外国人の視点で震災を表現している、という点
だ。外国人ならではの表現。またなかなか外国人には理解できない日本人の特
性を正直にわからない、としながらも独自のアプローチで解明しようと努力し
ている。

 二つ目は、震災の犠牲者の霊魂の問題に言及している点を挙げたい。無念の
死を迎えてしまい、さまよう霊魂。時に生きている人に乗り移り、訴えかける。
そんな霊魂に接した人たちを登場させている。

 そして三つ目の特徴は、これも外国人ならではと思うのだが、生き残った人
たちのやり場のない怒りや無念の気持ちを日本の制度やしくみ、システムとい
うような、この国を形作っているものに対する疑問を呈しながら、どこに問題
の本質があるか、ということを探ろうとしている点である。大川小学校の犠牲
について、どこに責任があるのか、をあらためて強く問うている。

 本書は、津波で子どもを亡くした親たちのその後を丹念に追い、津波に遭遇
したが、幸いにも生還した大人たちの話から犠牲となった子どもたちが呑み込
まれた津波の威力を表現し、そして犠牲者の霊魂に踏み込み、生と死。死と生。
なかんずく、日本人の死生観を書き表そうと努力している。そしてあれほどの
犠牲者が出たにもかかわらず、責任を認めようとしない行政全般(それは、大
事故となってしまったのに、再稼働しようとしている原発を推進しようとする
勢力も視界に入っていると思われる)について批評している。大きな非難はし
ていない。しかし擁護はまったくしていない。批判的に日本のシステムを表現
している。

 津波による破壊を目の当たりにした生存者。震災の犠牲者のさまよえる魂。
責任を取らないシステム。・・・・・震災、災害つながりではあるが、一見、
関係のないこれらの命題がころころと入れ替わり立ち替わりフェイドイン、フ
ェイドアウトする。

 ノンフィクションのルポルタージュなのだが、上質のミステリーを読んでい
るような感覚に襲われる。

 それでも本書が最もページを割き、読む側も一番エネルギーを費やさなけれ
ばならない処は、残された親たちの生きざまが書かれた部分であろう。地震の
朝まで元気にしていた子どもが、数日後に遺体となって戻ってくる。生き残っ
てしまった自分たち。死んでしまった我が子。親は苦しい。とても苦しい。さ
まざまな親たちを登場させて、その苦しみをさまざまに表現している。乗り越
えようとする親。時間がそこで止まってしまい何もできない親。行政を相手に
戦いを挑む親。それを迷惑と考えている親。子どもの数だけ親がいて、その数
だけ悲しみと苦しみがある。読むのがつらくなるほどだ。

 日本人は生の反対は死ではない。死は生の変形だ。・・・・・こう表現され
た箇所があるが、どうやらこのあたりが本書の主題ではないだろうか。自分が
ここにいるのは、過去にずっと遡って存在するご先祖さまのお蔭であり、自分
は彼らに生かされている。そして彼らはいつも自分と一緒に存在している。死
とは、存在しないことという定義だとしたら、死はそんな死ではない。死は見
えないけど存在しているものなのだ。親たちにとっては、ふつうに子たちは存
在している。いつも自分たちと共にいるのだ。


多呂さ(今年の桜は早かったですねぇ。あっという間に北へ去って行きました。
すでにつつじが咲き誇っていますよ)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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・『元アイドルのAVギャル瀬名あゆむ、アイドルプロデューサーになる』
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 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 今回、献本いただいたエディット・パルクさんは、著者兼出版社の社長のよ
うで、出版の世界もだんだんそうなっていくのではないかな、と思いました。
そういえば、ハリーポッターの静山社さんも、もともと、翻訳者兼出版社の社
長でした。

 先日、知人が、元、私が本屋さんだと言ってあったのですが、てっきり出版
社の社員だったと勘違いしていたことが判明。それも、店頭に立っていた、と
言って初めて本屋さんと出版社の違いを認識したそうな。

 一般の人から見たら、同じ世界なのかもしれませんね。(あ)

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『老人の取扱説明書』平松類 ソフトバンク新書

「お年寄りを大切に」と言われて反対する人はそういない。しかし最近は、ど
うも高齢者に対して風当たりが強くなって来つつある。「暴走老人」なんて本
が以前話題になったが、昔のように年寄は性格穏健でおとなしいと言うイメー
ジとはかけ離れた人が出てきている。

 個人的には、この手の暴走老人は、単にそういう世代の人が老人になってき
たからだと思っていた。昔は今では許されないことが普通にまかり通ってきた
時代だから、その頃の感覚で今を生きようとするから問題とされるのだろうと
思っていた。今では絶対に問題にされ、日本中から叩かれるに違いないような
ことが、昔は普通にまかり通っていたのだ。もちろん、認知症になっているこ
ともあるだろう。

 この本、ただいま10万部超えのベストセラーだとか。書いているのは眼科医
の人である。最初に書いてあるのは「老人の困った行動の数々。実は認知症や
性格によるものではなく」老化による体の変化だという。なぜか?

 例を挙げる。高齢者が赤信号でも平気で渡ったり、信号が赤になっても平然
と渡り続けることはよくある。これを「ぽけちゃってる」とか「クルマの方が
止まってくれるから平気だと思っているのでは?」といった風に見るのは間違
いだ。これは老化による体の変化でやむなく起こっていることでボケや性格と
は無関係だと著者は言うのである。

 理由は、老化するとまぶたが下がってくる上に腰が曲がっていることが多い
から、信号機のある上の方がよく見えないのと、転ぶことを心配して下ばかり
見ているから。そして日本の信号は高齢者が歩くスピードで渡り切れないよう
に作られている。だから仕方がないのだと言うのである。

 まぶたが下がってくるのは眼瞼下垂という病気で、軽いなら訓練で直せるが
普通は手術で治すもの。まぶたが下がると視野が狭くなり、30度になると信号
機は7m、20度になると10.5m離れないと信号機は見えない。

 高齢者が歩くスピードで渡り切れないように作られているというのは、日本
では一秒1メートルの速度で歩けば渡れるように作ってあるが、老人は1秒に
0.6〜0.7mしか歩けないから渡り切れないと言うこと。

 アメリカでは日本の黄色にあたる点滅が始まってから渡っても渡れるように
赤になるまでの時間をとっているし、イギリスでは横断歩道に人がいなくなっ
ているのを確認してから変わるようになっている信号樹も出てきているそうで
ある。

 そんな感じで、高齢者の行動でムカッと、イラッとくる例を16例挙げて、そ
れがボケや性格の悪さによるものではないことと、対策の取り方を解説してい
る。また自分もそうならないように老化を出来るだけ遅らせる方策も書かれて
いるのもポイントが高いだろう。

 瞼の問題は、コンタクトレンズやまつ毛メイクをしていると起きやすいから
できるだけ控える。足を速くするのは、机に手を置いて座ったイスから立ち上
がる動作を連続5回するといいそうだ。それでダメならシルバーカー。シルバ
ーカーを押す動作は、かえって遅くなりそうだが実際は18%ほど歩く速度が速
くなるらしい・・・これは高齢者にも役立つが、高齢者になる前の世代の役に
立つ。

 著者曰く、高齢者のトラブルの多くは「老化の正体」が知られていないから、
高齢者のために善かれと思ってすることが実は間違いで、努力が空回りするこ
とが多いのだとか。そしてそんなことに気が付くようになったきっかけがまた
素晴らしい。

 著者は右利きだが、手術がうまくなりたくて、しばらく左利きの生活をして
いた。左で箸を持ち、左手でものをつかんだりしていたが、それで気が付いた
のは、この世は右利きが前提でつくられていることだった。自動改札は左利き
には使いにくい。一見左右の差がなさそうなハサミでも右利き用が多い。ラー
メン屋でラーメン食べようとしたら、左手が左側の人のひじに当たりそうにな
る・・・

 左利きだけでもこれだけ苦労するのだ。だったら老人はもっと不便を感じる
のではないかと考えたのがこの本を書いた動機だという。

 お年寄りは大切にしようと考え、そのように接していても実際はそうなって
いない。それは老人に接する人が怠けていたりするのではなく、「老化」とは
具体的にどんなことなのかが知られていない。だから老人と接する人たちは苦
労が多い。

「老化の正体」を知り、老人になることはどういうことかを知れば、社会はも
っと老人に優しくなり、今の若い人が老人になった時には、もっと優しい社会
になっているだろうという筆者の意見は納得である。

 もっとも、この本に書いてある通りにしたら必ず状況を改善できるわけでも
ないだろう。解決策の中には、それなりに老人と接する者の忍耐力を要するこ
とも書いてある。しかし、かなりの部分は、この本を読むことで解決できるの
ではないだろうか? そんな風に思えるくらいの説得力は間違いなく持ってい
る本である。


(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)

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■「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
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『踏みにじられた未来 御殿場事件、親と子の10年闘争』
(長野智子著・幻冬舎 2011年発刊)

 前にも言ったかと思いますが、わたくし、お茶の間ですが、「嵐」ファンで
ございます。そこで今回はこの2月にオンエアされたドラマ「99・9刑事専門弁
護士 シーズン2」第5話を見て読んだ本を紹介します。

 最初にドラマの紹介をしますが、「99・9」は松本潤さんが扮する変わり者
の弁護士が事件を解決するお話。刑事事件は起訴されると99.9%が有罪になる
が残り0.1%の無実を求めて奔走するわけですね。このシリーズでは、検察と
弁護人、裁判官の3つが絡む司法の闇を描いているわけですが、各話とも実際
にあった事件を部分的に取り入れていると思われる 部分があり、特に第5話
では、実際にあった「御殿場事件」を下敷きにして脚本が書かれています。

「御殿場事件」とは、2001年、御殿場市で女子高校生がレイプ未遂にあい、数
日後に近所の少年たちが逮捕された事件。しかし、少年には確かなアリバイが
あり、やがて被害者と思われる少女は、同じ時間に出会い系サイトで知り合っ
た会社員と会っていたこともわかります。これで被告人は無罪が証明され、事
件は解決したかと思われたのに、なんと、「犯行日は別の日でした」と訴因変
更が認められ、少年たちに有罪判決が下され収監されます。この事件を追った
のが、テレビ朝日「報道発ドキュメンタリー宣言」という番組で、その後、キ
ャスターの長野智子が取材内容をまとめたのがこの本です。 

 私はこの番組をリアタイで見ていた記憶があり、酷いことだと怒ったものの、
歳月とともに忘れていたのですが、99・9をきっかけに思い出しこの本を読ん
だ次第。テレビのチカラはまだまだすごいですね。

 ドラマでは当然、松本潤さんの弁護士が、裁判の矛盾をつき見事に無罪を勝
ち取るのですが、実際には起訴された4人は有罪になり1年6ヶ月服役します。
ドラマでは、女子高校生は虚偽の証言をしていたことを謝りますが、実際には
証言台で「ただただ泣くばかり」だったそうです。また、ドラマでは加害者と
された少年の1人が別の事件を起こし、それをカムフラージュするために罪を
認めたことになっていますが、これはドラマ放送直後に、長野智子さんがドラ
マと混同される危険を恐れてSNSを通して発言したように、少年による別の
犯罪もありません。

 この本を読んで震撼したことは、長野智子が判決を下した裁判長に直撃取材
して会い話をきく場面。「とりあえずこれでいきましょう」と訴因変更を認め
た高橋裁判長は、長野智子の問いかけに、あくまで裁判は合議制であると自分
の非を認めません。

 当然、怒りを覚えますが、おばちゃまいろいろ考えましたよ。私がこの人だ
ったらどうしただろうって。これと似たことを私もしてないと言い切れるのだ
ろうかって。  

 本人なりの組織なりの慣例に従って仕事をして、昨日と同じ今日と明日、そ
れを人は日常と呼び、安定と呼びます。しかし、その安定が人を傷つける原因
になり、嘘を呼ぶことになる。裁判という人の一生を左右する仕事が、慣例や
内部の人間関係の安定のために左右されることがそら恐ろしいと感じました。
それが権力の本性なのか、誤った判決は誤差と見過ごされるのだろうか。どこ
かで引き返せなかったのか、引き返すポイントがあったのに、だれもが他人事
としてうかうかと通り過ぎてしまったのか。それはなぜなのか。裁かれた人側
からより、裁く側からも考えた次第でした。

 ドラマでは(すみませんね、ドラマの話ばかりで)弁護士のキメ台詞があり、
それは「事実は1つだけ」ですが、今、冤罪事件がいくつもあり、財務省の書
き換え問題が言われているけれど、たしかに起きた事実は1つなわけですから
解明してスッキリしたいものです。(ここ、「事実」であって「真実」ないと
こがポイントと思う。名探偵コナン君は「真実はいつも1つ」っていうけど
「真実」ってときに主観的で嘘が入るからね〜。私が思うに「真実」は文科系
的、「事実」は理科系的…違いますかね)。

 あともう1ついいですか?この本でおやっと思ったのが192p「御殿場事件に
関していえば現段階では冤罪事件とはいうことはできないが」という一文。え
? 違うの? これは再審請求されていなくて確定された判決だから冤罪とは
言えないという意味? わかりにくかったです。

 今回はファン目線の書評ですみませんでした。さあ、次は「ブラックペアン」
海堂尊を読むぞ!(アマゾンで「ナラタージュ」と検索すると「この本を読ん
だ人は次の本も購入しています」というリストに「忍びの国」「ラストレシピ」
とまったく分野が違う本があがっているのが笑えます。知らない人からしたら、
なんで恋愛小説を好む人が忍者小説と料理小説? なんかの間違い? って思
うかもですが、すべて嵐メンバー出演作の原作です。)

大友舞子(おおとも・まいこ)
昭和20年代生まれのフリー編集&ライター。関東生まれで関西在住。

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#93『誰が音楽をタダにした?』

 実はこの3月で、長年勤めた会社を退職することになった。

 4月からは転職というのか、再就職というのか、とにかくいわゆるシューカ
ツに35年ぶりに取り組むのである。

 どんな業界で、どんな働き方をするか、いまはまだ完全に白紙だが、そのせ
いか、転職エージェントや転職サイトの広告が目について仕方がない。

 実際に一度、転職エージェントの無料相談というのも受けてみた。
 その時聞いた話。

 商社マンで長年海外勤務だったが、50歳になったのを潮に日本に帰りたくな
り、転職を考えているという人が相談に来たという。
 趣味がドラムなので、音楽業界はどうか、と訊かれて、転職エージェントは
こう答えたそうだ。
 あの業界はもはや斜陽で、とてもお勧めできません。それより、趣味を活か
すなら、楽器業界はどうですか?
 商社マン氏はこの提案を、なるほどと受け入れ、結局静岡にある某楽器メー
カーに落ち着いたらしい。

 この話、ぼく自身の関心事としては、「そうか、趣味を活かすという手もあ
ったか」という発見が主であり、前向きな話ではあったのだが、一音楽ファン
としてはちょっと暗澹たる気分にもなった。

 そうか、音楽業界は、もはや転職エージェントにとって「とてもお勧めでき
ない業界」になってしまったのか、と。

 その原因は何か?
 もちろん、本書のタイトルにあるように、「音楽がタダになったから」に他
ならないだろう。

 本書の主人公は、ドイツのコンピューター技術者と、世界市場を牛耳るアメ
リカの音楽業界のドン、そしてアメリカの音楽「海賊」。つまり、テクノロジ
ー、ビジネス、犯罪の三つの側面から、音楽がタダになるまでを追ったドキュ
メントである。

 まずはテクノロジー。
 ドイツの国営研究所で、カールハインツ・ブランデンブルグという技術者が、
音楽データを、よりコンパクトに圧縮する技術の開発に取り組んでいた。

 一般的に、データが大きいほど、音質はよく聞こえる。データの大きい画像
ほど、鮮明に見えるのと同じ理屈だ。
 しかし、あまりにデータ量が大きいと、この話が始まる1990年代後半の機器
では処理に膨大な時間がかかってしまう。
 そこで、音質を損なわずに、音楽データをできるだけ圧縮する技術が求めら
れていた。

 ブランデンブルグの方法は、彼の師匠に当たる人物が長年研究してきた、音
響心理学の成果を駆使することだった。

 例えば、高い音と低い音では、人間は低い音を優位に聴く。
 そのため、バイオリンとチェロの合奏なら、チェロのデータを多く残し、バ
イオリンのデータは間引いてしまっても、ほとんど気づかれない。チェロの音
が豊かであれば、バイオリンの音が貧弱でも構わないのである。

 あるいは、大きな衝撃音が流れると、面白いことにその「前」に鳴らされた
音が認識されない。
「後」の音がかき消されるのは直感的にわかるが、「前」に聴いた音も、後か
ら鳴った衝撃音の影響で忘れられてしまう、というのはなかなか驚きで、人間
と言うものの不思議さを改めて感じるが、この知見から、交響曲でシンバルが
ジャーン!と鳴った場合、その「後」のデータのみならず「前」のデータも間
引いてよい、ということになる。

 このように人間の耳に音質が劣化したと気づかれないように、データを節約
する方法をいくつも用いて、それを自動的にコンピュータ上で計算させるアル
ゴリズムを書く。
 案外シンプルだが、これがブランデンブルグと彼のチームが取り組んでいた
研究だった。
 夜な夜な、上記のような知見に基づき、データを削っては聴いてみて、本当
に音質が劣化して聞こえないか、果てしなく検証を繰り返す、地道な作業の連
続。
 その結実こそ、いまわれわれが音楽データを扱う時、ごく普通に使用してい
るmp3なのである。

 しかしmp3は、初めからグローバル・スタンダードとなったわけではない。
 市場に受け入れられるまでに、長い紆余曲折があった。

 ライバルが存在したからだ。

 それは、CDの特許の一部を保有することで知られる、オランダの大手電機
メーカー、フィリップスが開発を支援したmp2という技術である。

 一般の人によるCDとの聴き比べ調査ではmp3が圧倒的に評価されたにもか
かわらず、一流メーカーの面子と巨額の開発費をかけたフィリップスが、政治
力を駆使して強引にプッシュしたために、業界標準規格にmp2が選ばれてしま
う。

 とはいえ、その後mp3が最終的に勝つことを、われわれは知っている。

 そこに至るまでにも、ナップスターの登場で一躍有名になったP2P技術や、
ビットトレント技術などのテクノロジーの変遷があり、これだけでも十分に読
み応えのあるドラマだ。

 ここに、アメリカの音楽業界が、デジタル技術の進歩にも、インターネット
時代の夜明けにも気づかず、後の凋落を防ぐための手立てを打たなかった経緯
が絡んでくる。
 主人公は、ダグ・モリスだ。

 60年代にアレサ・フランクリンやオーティス・レディングといったソウル、
70年代はレッド・ツェッペリンなどのハード・ロック・バンドを擁して音楽史
にその名を刻むアトランティック・レコードの総帥アーメット・アーディンガ
ンの元で修業し、後にユニバーサルのトップとなった音楽業界のドン。

 彼がのし上がっていく過程を追いながら、その時々のヒット曲史が紡がれて
いく。

 そして、黎明期のサイバー・スペースで活躍した、音楽「海賊」。こちらの
主人公は、恐らく三人の中で最も知名度の低い、デル・グローバーである。

 彼はCDをプレスし、パッケージに詰め、完成品として流通に送り出す工場
の従業員だった。アルバイトから始め、真面目に働いて、正社員に取り立てら
れ、管理職にまでなる。
 その市井の一市民が、自分の立場を利用して、発売前の新作CDを工場から
持ち出し、違法コピーしてネットで公開する音楽「海賊」だったのである。

 もちろん工場は、警備員を雇い、金属探知機を設置して、CDの持ち出しを
防ごうとする。しかしグローバーはそうした警備の間隙を縫って音楽を盗み出
すのだが、その大胆な手口は本書に譲る。
 ヒントだけ言うと、工場はアメリカ合衆国南東部に位置するノースカロライ
ナ州のど田舎にあり、工員たちはみな南部人らしく、白人も黒人もこぞって、
ある共通のファッション・アイテムを愛用していた。それがCDを隠すのに持
って来いだったのである。

 こうして盗んだ音楽を、グローバーはCD−Rに焼いてこっそり売り捌いて
いたのだが、やがてインターネット時代が本格的に到来すると、「シーン」と
呼ばれる、音楽海賊たちの世界にはまり始める。
 この「シーン」を支えるモチベーションは、経済的な利益ではなく、名誉で
あった。
 それは、誰よりも早く音楽をアップロードするゲームだったのだ。特に、ま
だ発売前で店にも並んでいない新作は「ゼロデー」と呼ばれ、これをアップロ
ードすることは「リークする」と呼ばれて、特別の尊敬を集めた。
 この賞賛という報酬を得るために、海賊たちは腕を競った。

 早いだけでなく、それが人気アーティストのニュー・アルバムであることも
重要だ。誰も欲しがらないものをリークしても、敬意は払われない。
 グローバーが2002年までにリークしたアルバムは500枚を超え、その中には
ドクター・ドレーの『2001』があり、クイーン・オブ・ザ・ストーン・エイジ
の『レイテッドR』があり、さらにビョークがあり、アシャンティがあり、ネ
リーがあった。
 2002年に一番売れたアルバム、エミネムの『ザ・エミネム・ショウ』を発売
25日前にリークした時は、そのせいでこのラップ界の大スターがツアー・スケ
ジュールの変更を余儀なくされた。

 こうして実績を積み上げたグローバーは、やがて「シーン」の中核メンバー
に迎えられ、極めて貴重なレア音源や、一般へのリークよりも早い内輪だけの
リークを手に入れる特権を与えられ、スター「海賊」になっていく。

 しかし、当然ながら、海賊行為の隆盛は、司法の取り締まり強化を招いた。
 FBIに専門の捜査チームが結成され、まるで映画のように「バッカニア作
戦」「ファストリンク作戦」「アークロイヤル作戦」などと麗々しく名付けら
れた捜査プロジェクトが展開される。
 囮のフェイク・サイトを用いたり、特殊な技術でIPアドレスを特定したり、
携帯電話の通話記録から仲間を炙り出したり、あの手この手の捜査技術が繰り
出される内、さしもの海賊たちも次第に追い詰められ……

 という、このスリリングな物語、「まるで映画のように」と書いたが、あと
がきによると、本当に映画化が決まったらしい。

 映画も結構だが、しかし本書はぜひ、原作にも当たってほしい。その内容ば
かりでなく、文体がまた素晴らしいからだ。
 これが著者の初めての著作なのだが、その、キビキビとして皮肉なユーモア
に溢れた文体は、優れた訳文ともあいまって、実に痛快だ。ここには、アメリ
カのジャーナリズムが育んできた、豊かな語りの伝統が生きていると思う。

 かくして音楽はタダになり、レコード業界は、最高益を出した2000年から僅
か十数年で、その半分の規模にまで落ち込み、もはや転職エージェントが「と
てもお勧めできない」業界になってしまった。

 海賊行為がある程度音楽の売り上げを下げたのも事実だろう。タダで手に入
るものに、人はお金を払わない。
 しかし、それを言うなら、ぼくが子供の頃には、ラジオでかかる音楽をカセ
ットテープに録音する「エアチェック」が盛んで、そのための情報誌もあった。
 NHK FMでは確か日曜の午後の番組で、アルバム1枚をまるごと放送していた。
アナウンサーが全曲のタイトルを紹介し、「では、どうぞ」と言うと、一切し
ゃべりも被せず、途中からフェイドアウトもせず、完全な形で放送するのだ。
その「では、どうぞ」を待ち構えて、カセットデッキの録音ボタンを素早く押
す時の、ドキドキする感じは今でも覚えている。

 MTVの時代になって音楽が映像化されると、後を追うように家庭用ビデオレ
コーダーが登場して、ここでもタダで音楽が手に入るようになった。
 いや、既にアメリカでラジオ放送が始まった20世紀前半にはもう、ラジオは
音楽をタダにし、音楽業界を殺すという非難があったそうだ。

 では、これまでの「音楽の危機」と、現在の危機の違いは、どこにあるのか。

 ひとつは、曲数という意味での規模だろう。もはやない曲はないのではない
か、と思われるほどの。Youtubeのアーカイヴ力は、やはり昔とは比べ物にな
らない。
 また、アナログ時代には、複製の度にある程度は必ず劣化した音質や画質が、
デジタル技術の進歩によって、オリジナルとの差を消失させたことも大きい。

 しかしそれよりも、われわれ音楽ファンにとっての、音楽の意味の変容こそ
が、より深刻なのではないか、とぼくは思う。

 例えば、いま盛んに登場してきている定額制のストリーミング・サービス。
 確かに定額とはいえ無料ではない。その分まし、という考え方もあるだろう。
しかし、ストリーミング・サービスは人の音楽との接し方を根本から変えるか
もしれない。
 ある特定の楽曲なりアーティストなりを「求めて聴く」ものから、その場の
状況や気分に合わせて「流す」ものに変わるからである。
 その結果、人は主体的に音楽に関わろうとはしなくなる。

 もちろん、選曲をAIに委ねることで、未知の音楽との出会いが生じ、新しい
ジャンルに耳を開かれ、より深く掘ろうとする人も現れるだろう。

 問題は、そのどちらが優勢となるかだ。

 とある調査によると、いまの小学生は生まれた時から、「コンテンツはタダ」
と認識していると言う。
 そして、Youtubeで何かを見る場合でも、自分で検索して面白いものを探す
のではなく、サイトからのリコメンドを素直に眺めているだけで、中には「も
う検索の仕方を忘れた」という子までいるようだ。

 音楽に対して人が完全に受動的になった時、一体「音楽をつくりたい」と思
う人はまだ存在しているのだろうか?
 音楽をつくる人がいなくなれば、我々はアーカイヴに埋葬された死んだ音楽
を消費するだけになってしまう。

 音楽を殺してしまうのは、われわれ一人一人の音楽ファンであるのかもしれ
ない。


スティーヴン・ウィット
関美和訳
『誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち』
2016年9月20日 初版印刷
2016年9月25日 初版発行
早川書房

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
今月は送別会で、いろんな人たちと改めて思い出を語り、回顧モード。来月か
らは再就職に向けて、前を向こうと思います。

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 今回も読みごたえのある3本が揃いました。そういえば、出版業界も「お勧
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 あ、このメルマガも無料でしたね…。(あ)

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[書評]のメルマガ vol.649

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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<99>青い山脈、黒い太陽

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→81 考える先にあるもの

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第99回 災害避難所のスタッフ

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです。

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<99>青い山脈、黒い太陽

 阪神電車で神戸へ向かうと、西宮を過ぎ、香櫨園を通過するころから、右手
前方遥かに見えていた六甲連山が、電車が西に進むにつれ、ぐんぐんと迫って
くる。

 香櫨園から芦屋に向かって電車は、徐々に高架から地上に降りて行くのだが、
芦屋界隈には建築規制によって西宮や神戸のようなタワーマンションが皆無な
ので、阪急、JR、阪神の阪神間三線のうち、もっとも海側を走る阪神電車か
らも、低い家並の向こうに山なみがはっきりと捉えられる。

 電車の中で本など読んでいて、ふと顔をあげ、車窓一杯に山なみが迫ってい
るのに気づくと、ことに新緑の季節、山肌のあちこちから野放図にむくもくと
新緑が盛り上がっていたりすると、不意を打たれたように、思わず「はっ」と
することが度々ある。

 その昔に西條八十は、神戸から大阪へ向かう電車の車窓から、これと同じ景
色を見て、「青い山脈」の歌詞を着想した、と聞いたことがあって、電車から
この山なみを眺めるたび、「わかくあかるいうたごえに……」と、あの歌のフ
レーズが脳内に鳴り響いたりもするのであった。

 ところが、今回このエピソードをマクラにしようと思って、改めて調べてみ
たところが、違っていた。

 まず「主人公」が、西條八十ではなく、作曲者の服部良一だった。
 しかも、神戸から大阪へ向かう電車ではなく、大阪から京都へ向かう電車な
のだった。

 服部良一は、戦後の混乱期のさなか、大阪と京都を仕事で行き来していて、
食料を買い出しに行く人たちで満員すし詰めの省線電車の車窓から、沿線の山
の連なりを眺めているうち、ふとこの曲のメロディーが湧いてきて、窮屈な車
内で苦労しながらも、ありあわせの紙に鉛筆でそのメロディーを書きとめた、
ということだったようだ。

 となると、この「山脈」もまた、六甲連山ではなく北摂山塊だったわけで、
いったいどこでどう勘違いして記憶していたのか、40年以上も前からそう思い
込んでいたのだった。

 勘違いと言えば、その「青い山脈」と「リンゴの唄」を、よく取り違える。
 どちらの歌も、わしが生まれる前の戦後復興期に流行した歌として、「ごっ
ちゃ」に記憶してるせいで、そうなるのだと思う。

 そして、「リンゴの唄」といえば、かわぐちかいじ『黒い太陽』の、「第二
部・戦後編」で、主人公「鉄」が歩く横浜の闇市の、ガーガーピーピーと音質
の悪いスピーカーから、のべつ幕なしに流れていたのが、その歌なのだった。

 そうなのだ。ふと思い立って、かわぐちかいじ『黒い太陽』を、改めて読み
直してみたのだ。
 我が家にあるのは、2001年、ソフトマジックから復刻刊行された、「第一部
・戦前編」「第二部・戦後編」が1冊にまとめられた、総頁数1000ページ超の、
広辞苑みたいな版。

 初出は、少年画報社「ヤングコミック」で、1972年から74年にかけて連載さ
れた。
 主人公「鉄」と「ジャコ万」は、ともに広島の旧制中学で番を張るバンカラ
学生で、常に敵対するケンカライバル。
 この血気盛んな二人が、ともに海軍の予科練に入り、航空兵を目指すのは、
昭和18年。
 戦局は既に劣勢が明白だが、国民にはまだその事実は知らされない。

 予科練に入ってもなお、ケンカ上等で血気盛んな鉄だが、戦争という現実の
中で、次第に虚無に包まれてゆく。
 やがて、戦局の影響で繰り上げ卒業となった鉄は、実戦部隊に配属された後、
操縦の腕を買われ、特攻機の護衛の任を与えられ、仲間が特攻で散っていくの
を見送りながら、終戦を迎える。

 一方のジャコ万は、予科練での適性検査によって通信課への配属が決まった
ものの、前線での戦闘をあきらめきれず、特攻兵器「回天」搭乗員を志願し、
瀬戸内海での厳しい訓練を経て出撃、太平洋上で敵艦隊に突入する。

 そして「戦後編」では、横浜の闇市を仕切るヤクザ組織に身を置いた鉄が、
「新橋戦争」や「松川事件」等、戦後の裏面史を彩る闇の渦中で蠢きながら、
自身が戦うべき「敵」を発見し、死を賭した戦いに望んでゆく。
 さらに「戦後編」後半では、死んだと思われていたジャコ万が実は生還して
いて、広島県警の刑事となって登場し、鉄の戦いに絡んでくる。

 これ、今読んでもなお、素晴らしい。傑作だと思う。1000ページ超だが、一
気に読んでしまった。
 以前に読んでいて、途中の経過も結末も知っているのだけど、それでもなお、
「鉄」と「ジャコ万」の生き様、さらに彼らに絡んでくる人物たちの動向に、
はらはらドキドキさせられる。

 かわぐち作品といえば、『沈黙の艦隊』の海江田艦長に代表される、ナニゴ
トが起こっても動じない、クールかつ冷静沈着、悟りきったようなキャラクタ
ーが特徴的なのだが、『黒い太陽』の主人公「鉄」は、それとは真逆の発展途
上、常に熱く、考えるより先に体が反応する、ただ今のかわぐち作品と比べる
と、とても異色な主人公なのだ。

 そしてなにより、今回『黒い太陽』を読み返して、強く感じたのが、「背景」
の抒情性なのだった。
 コマの中で、キャラクターのバックに描かれた背景…それは、単なる「背景」
ではなく、一個の「風景」として、見る者に何ごとかを語りかけてくるのであ
る。

 だからこそ、「リンゴの唄」も、その風景の中に歌詞の一節の手書き文字が
あるだけで、音のない漫画なのに、実際に質の悪いレコードが、粗悪なスピー
カーから割れた音で流れてくるのが「聞こえて」くるのだ。

 「鉄」「ジャコ万」という名前は、おそらくは映画『ジャコ萬と鉄』から採
られたのだと思う。
 1949年に黒澤明・脚本、谷口千吉・監督で、三船敏郎、月形龍之介がそれぞ
れ「鉄」「ジャコ万」を演じた東宝作品と、これを東映でリメイクした1964年
の深作欽二作品では、高倉健、丹波哲郎が、鉄とジャコ万を演じている。

 今回読み直したソフトマジック版では、巻末に作者・かわぐちのインタビュ
ーが付されていて、それによると当初の構想では、戦後の闇市を舞台に「特攻
帰りのヤクザ」を描くことが主眼で、なので、「戦前編」は、ほんの数話で終
わる筈が、当時の予科練の資料などを渉猟するうち、数話で終わらせては「も
ったいない」し、さらに戦後ヤクザとなる「鉄」のバックボーンの核は戦争体
験であるはずだし、これを疎かにしては人物像が薄まってしまう、との思いか
ら、「とても長いプロローグ」としての第一部、となったそうだ。

 かわぐちかいじの初期の単行本に、『死風街』『風狂えれじい』という2冊
がある。
 いずれも北冬書房・刊で、それぞれ1973年、1974年の刊行。
 流れ者のヤクザが主人公の連作短編で、主人公の造形や作品全体に流れる空
気は、鈴木清順の映画世界を思わせる作品である。

 そして、これらの作品でもまた、人物たちのバックにある「風景」が、とて
も抒情的で、人物が描きこまれていない風景だけでも、たとえば、走る列車か
ら垣間見える、だだっ広い平野の片隅に「牡蠣のようにへばりついた町」や、
夜の操車場から「シュボッ」と汽笛を響かせ、前照灯をぎらつかせて動き出す
汽車、あるいは、どぶ川に向いて窓が開いた安アパートの風情…等々、等々、
まるでそれだけで、何ごとかを語りかけるように、画面から迫ってくる。

 古いかわぐち作品を読み返してみて、そういえば最近は(近頃のかわぐち作
品を含めて)漫画の中に描かれた「風景」が、何かを訴えかけてくるような経
験って、久しく「ないな…」と思い至った。

 できればこの風景の中で、ジャコ万と鉄の「その後」を、再び見てみたい、
と思ってしまった再読なのだった。
 見てみたいな、『黒い太陽・朝鮮戦争後編』、あるいは『昭和30年代編』。
 やってくれんかな、「モーニング」あたりで。

 あ、そうそう、かわぐちかいじといえば、「女」が、「イマイチ」とよく言
われるのだけど、この初期の頃の女は、今より目も小さくてとてもアジア人的
キャラクターなのだけど、わしは、好き。
 今のかわぐち作品の女たちよりも、よほど艶っぽく仇っぽい、と、これはひ
そかにずっと思ってた。
 もし『黒い太陽』続編があるなら、「女」はぜひとも、こっちでいっていた
だきたい、とも思うのであった。

太郎吉野(たろう・よしの)
 2011年に神戸から西宮へ引っ越して、ただ今のホームグラウンドは甲子園。
右投げ右打ち。掛布二軍監督はひとつ年上の同級生。

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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81 考える先にあるもの

 小冊子「ミューレン」をご存知ですか。

 小さい文字ぎっしりの記事とセンスある写真たっぷりの読みごたえある冊子
 です。

 最新号 vol.22 (2018 January)の特集は「岩波少年文庫」

 児童書好きにも話題になっています。

 編集人である若菜晃子さん選の岩波少年文庫10冊にはじまり、
 冒険の世界、百年前の暮らし、世界をまわろう、生きものの気持ちと
 カテゴリ分けも魅力的で、選ばれた本もディープ。
 私も手にしたことのないものも多く、読んでみたい本だらけです。

 石井桃子さんによる「『岩波少年文庫』創刊のころ」のインタビュー記事は、
 初出「図書」(1980年)のもので、『石井桃子のことば』(新潮社 とんぼ
 の本)にも掲載されたもの。
 『石井桃子のことば』は編集人の若菜さんも執筆に関わっている本で、こち
 らも読みごたえあります。「ミューレン」にもぜひこの本を併せてご覧下さ
 いとすすめていますので、ぜひぜひ。

 「岩波少年文庫の今」では、岩波書店児童書編集長の愛宕さんのインタビュ
 ー記事が掲載されています。
 現在の少年文庫の書目はどのような前提で選んでいるのか、新訳に変えてい
 くことについて、装丁についてなど、「今」の少年文庫についてのお話はと
 ても興味深いです。

 「ミューレン」サイト
 http://www.murren612.com/

 さて、愛宕さんがインタビューでおすすめの少年文庫の一冊にあげられてい
 たのは、オランダの作家トンケ・ドラフト『王への手紙』(西村由美訳)で
 す。

 ドラフトさんの作品を初めて読んだときは、そのおもしろさにびっくりした
 ものです。評価のかたまった作家作品が多い少年文庫の中で、初めて紹介さ
 れる作家の名前は強烈にインプットされました。

 しかしそれもそのはず、訳者西村さんのあとがきを読めば納得でした。

 『王への手紙』の初版刊行は1962年。表紙絵も挿絵も作者自身が描き、翌年
 には、現在の「金の石筆賞」の前身にあたる賞に選ばれ、それ以来のロング
 セラー本、オランダのこどもたちに長く読まれていた本だったのです。

 そのドラフトさんの最新訳書、岩波少年文庫の『青い月の石』(西村由美訳)
 を今回ご紹介いたします。

 主人公ヨーストは森で魔法が使えるという噂があるおばあちゃんと2人暮ら
 し。ひょんなことから、イアン王子と出会い、一緒に地下世界の王であるマ
 ホッヘルチェと対峙することになります。
 マホッツヘルチェの元に行くまでもが一筋縄ではいかず、たどりついたら、
 今度は難問をつきつけられ、クリアした後にも、更に難しい局面にたたされ
 ることになります。
 ヨーストと共に冒険するのは、現実世界ではヨーストをいじめていたヤン、
 どんなときもヨーストを支える幼なじみフリーチェです。

 それぞれの人物造形がしっかりしていて、どんな場所で困難なことに立ち向
 かうのかがテンポよく描かれ、物語に吸引力があります。対立、協力、葛藤、
 難しい相手との対峙など、どの場面にも心を動かされます。

 挿絵もドラフトさんが描いていて、物語をいっそう引き立てます。
 小学校中学年くらいから楽しめる冒険物語、こどもはもちろん、大人の方に
 もオススメです。

 さて次にご紹介するのは、イギリスの作家デイヴィッド・アーモンド『ポケ
 ットのなかの天使』(山田順子訳 東京創元社)です。

 カーネギー賞・ウィットブレッド賞を受賞した『肩胛骨は翼のなごり』の邦
 訳で知られるようになった作者アーモンドですが、今回の作品は心あたたま
 るファンタジー。

 バスの運転手をしているバートは、定年間近でその日を待ちわびながら仕事
 をしていました。ところがある日、バートのポケットに天使が入っていたの
 です。いったいこの天使は誰なんだろうと思いながら、バートは自宅に連れ
 帰り、妻のベティに紹介します。ベティも大喜びで、こどもには教育が必要
 と自分の勤務先である学校に、天使を連れて行きます。すぐさま生徒たちに
 受け入れられ、大人気になりますが、黒ずくめの男が若者が天使に目をつけ……。

 アンジェリーノと名付けられた天使の男の子がとてもかわいいのです。しょ
 っちゅう、おならをするも愛嬌。黒ずくめの若者が何かしでかすのではない
 かとハラハラするのですが、物語に流れている優しさの心地よさがたまりま
 せん。日常におきるファンタジーにしっかりとリアリティをもたらせている
 作者の筆致はさすがの腕前。松本圭以子さんの装画・挿絵も素敵です。

 このメルマガ1月10日配信号で紹介したパディントンの作者マイケル・ボン
 ドさんが書いたモルモットのお話、『オルガとボリスとなかまたち』にも出
 てきた料理「あなのなかのヒキガエル」。それが本書にも出てきています。
 イギリスで長く親しまれている料理だからですね。

 最後にご紹介するのは絵本です。

 『いろいろいろんなかぞくのほん』
 メアリ・ホフマン ぶん ロス・アスクィス え すぎもと えみ やく
 少年新聞社

 家族の形は、お父さんとお母さん、そしてこどもたちという組み合わせが
 いわゆる普通といわれていますが、世の中にはいろいろな家族があること、
 少しずつ浸透していっていますよね。

 この絵本はそれをわかりやすく描いています。

 家族の形にはじまり、住むところ、学校、仕事、休みの日の過ごし方、食べ
 物など、様々なカテゴリで家族の姿をみせていきます。

 お父さんだけの家もあれば、
 お母さんだけの家もある、
 そのどちらもいなく、祖父母と暮らすこどももいれば、
 お母さんがふたりとこども、
 お父さんがふたりとこども、
 養子や里子と暮らす家族もいます。

 意識してみると、どんな家族にも個性があり、いろいろです。
 どのページもたっぷりの絵がそれを表現していて、
 素敵なのは、家族も流動的だということが書かれているところ。
 
 確かに、時間の経過と共に変わることもあります。
 その時それぞれの家族を、この絵本で読んでみませんか。

 いまの自分がみえてきます。

  
(林さかな)
会津若松在住
http://1day1book.strikingly.com/

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第99回 災害避難所のスタッフ

 まもなく、あの日から7年目を迎える。
 あらためて、あの震災について考えている。そして、いまだに大災害が起こ
っていない首都圏において、もし大災害が起こったら、どうなるのか、を想像
している。
 首都直下型地震が起こったとしたら・・・・・。おそらく想像の埒外の事態
になるであろう。発災直後の阿鼻叫喚の巷を乗り越え、避難所に落ち着いたと
して、そのときその避難所はどんな状況になっているのだろう。そういうこと
を想像し始めるとキリがなくなる。
 自分の命を守る。家族の命を守る。守れた命は、自宅がなくなったとき、避
難所に行くしかない。大災害が起こったとき、人は避難所に入ることになる確
率は限りなく高いのだ。
 災害避難所について考えたい。災害はこちらの意図に関係なく起こってしま
う。しかしその後の処理は、人々が人智を使って協力し合えば、必ずいい結果
が得られるはず。ヒントは以前に起こった大災害にある。
 ヒントを存分に提供してくれるいい本を見つけた。

『南三陸発!志津川小学校避難所 −59日間の物語 〜未来へのメッセージ〜』
(編者:志津川小学校避難所自治会記録保存プロジェクト実行委員会
 志水宏吉・大阪大学未来共生プログラム)
(発行:明石書店)(2017年3月11日発行)

 本書がどういう経緯で完成したかは、あとがきに詳しい。被災地でボランテ
ィアとして支援した人がいて、被災地の復興をテーマに研究している大学のチ
ームがあって、そして実際に被災して避難所を運営していた人たちがいて、そ
れらが協働して本書を作っている。

 本書は3部構成になっている。もっともページを割いているのは第1章の日
記形式で書かれた避難所での日々についての物語。そして続く第2章では、こ
の避難所での物語からどのような教訓を得られるか、内容を客観的に整理した
もの。最後の第3章は、この地(志津川)の未来への展望を記述している。

 目次の次に「登場人物」という項目があって、この志津川小学校避難所を運
営していた自治会のメンバーの名簿が載っている。呼び名をカタカナで表記し
ている。読者は本書を読むとき、この「登場人物」欄に戻って、誰のことかを
確認するのだ。

 大災害を経験した直後に生き残った人たちが、高台で津波の被害を免れた小
学校に集まった。震災の3日後に避難所を運営していく自治会が結成された。
避難所に身を寄せている人たちが自主的に運営する組織をつくらないと早晩行
き詰まると考えた人がいた。避難所にいた町役場の職員である。彼は役所が率
先して運営したのでは、必ず行き詰まるとみていた。避難者は役所に頼り切っ
てしまう。だから自主的な組織ができればいいと思い、自治会を立ち上げよう
と根回しをした。

 なんでもそうであるが、会長の人事が大切なのだ。穏やかで責任感のある人。
しかし厳しい処もある人。長老たちから認められ、若い人たちからも人望があ
る人。それぞれの仕事はスタッフに任せ、何かあったときに判断できる人。そ
れがこの避難所では“タカチョー”さん。町の老舗味噌醤油屋店主で、呼び名
は屋号。

 しかし本書ではあまり会長のタカチョーさんは登場しない。タカチョーさん
の下で実際に運営している副会長以下のメンバーの奮闘ぶりが、この物語のメ
インなのだ。

 避難所は運営スタッフだけでは運営できない。医療スタッフもいる。校長や
教頭など学校の関係者。行政(町役場の職員)も欠かせない。各地から来る支
援ボランティアたち。マスコミ。そして自衛隊。そういう人や集団に支えられ
て災害避難所を運営する日々が59日間続いた。59日間が起承転結になっている。

 発生と混乱の最初の3日間。それを承けて組織が立ち上がり、役割を明確化
にして仕事を軌道に乗せた6日間。数々の問題を解決しながら、展開していく
22日間。最後に人が減っていき、避難所に充てられたスペースを徐々に縮小し
ていき、最終的に避難所を閉鎖して、学校に返還していく28日間。避難所運営
に興味があれば、すらすら読める。人間同士のぶつかり合いもあるし、思いや
りとやさしさに包まれるときもある。第2章には「災害ユートピア」という項
目があるが、志津川小学校避難所は確実に一時期、災害ユートピア化していた。

 避難所が閉鎖され、それぞれ仮設住宅やみなし仮設などに移った自治会メン
バーたちは、避難所運営で何を得たのか。これについての回答は興味深いが、
すぐに想像がつく答えである。この場にはあえて記載しないが、避難所が都会
にあろうが田舎にあろうが、漁村だろうが山村だろうが、立地場所には関係な
い答えが用意されている。

 しかしながら、一方で本書の舞台となった南三陸町は過疎化に悩んでいる。
この震災が追い打ちを掛けている。残された人たち、そして生きるための奮闘
していた人たちは、いまそのことが次の課題になっているのだ。人口減少によ
り、町づくりをどうするのか、という命題にみんな悩んでいる。

 傷ついた町とそこに残された人たち。その地をこれからどうするか、そして
人はその地でどう生きていくか。それは他人事でも、対岸の火事でもない。災
害に見舞われていないが確実に災害が発生するこの日本に住んでいる我々全員
に突きつけられた課題なのだ。


多呂さ(三寒四温。でもまもなく本格的な春がやってきますね。梅は満開。菜
の花が咲きました。)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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[書評]のメルマガ vol.648

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★「トピックス」
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★「音楽本専門書評 BOOK’N’ROLL」/おかじまたか佳
→ 『初音ミクはなぜ世界を変えたのか』

★「目につく本を読んでみる」/朝日山
→ 『ゲノム編集の衝撃「神の領域」に迫るテクノロジー』

★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→ 『シャーデンフロイデ 他人を引きずりおろす快感』

★【募集中】献本読者書評のコーナー
→ 献本お待ちしています!

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#92『初音ミクはなぜ世界を変えたのか』

 細馬宏通は前回取り上げた『うたのしくみ』に収められた論考、「歌を育て
たカナリアのために 初音ミク」の中で、コンピューターに人間のように歌わ
せるテクノロジーを開発する過程で、人間は歌うことに対して、さらに自覚的
になったと語った。

 初音ミクに関しては、このようにテクノロジーとして語る文章がある一方で、
日本に固有のキャラクター文化や、アイドル、特にヴァーチャル・アイドルの
系譜に位置づけて語る文章もたくさんある。

 しかし、なぜか「音楽」あるいは「音楽文化」としての側面について、まと
まったものは書かれていない。それが本書の著者、柴那典(しば・とものり)
の問題意識である。

 かくして生まれた『初音ミクはなぜ世界を変えたのか』は、そのコンセプト
を、「初音ミクは第3のサマー・オブ・ラヴである」という極めて魅惑的な見
立てに置いている。これこそ本書の核心であり、革新である。

 まず「サマー・オブ・ラヴ」について、おさらいしておこう。

 1967年、サンフランシスコの小さな街ヘイト・アシュベリー地区に、奇妙な
ファッションをまとい、髪を長く伸ばした若い男女が集まり始めた。彼らは街
角で花を撒き、音楽を鳴らし、香を焚いて、当時はまだ合法だったLSDを吸
ってトリップした。
 俗に言う、ヒッピーである。
 泥沼化していたベトナム戦争への批判から、「兵役」に象徴される既存の社
会体制を拒否し、自由な生き方を求めて、コミューンと呼ばれる集団での自給
自足の生活を実践しようとした。

 こうしたヒッピーたちの登場は、フラワー・ムーヴメントとも呼ばれたが、
よりキャッチーな「サマー・オブ・ラヴ」というコピーで世界に喧伝された。
 その磁力に引かれるように、ビートルズ解散間近のジョージ・ハリスンや、
フォーク・クルセイダーズを解散したばかりの加藤和彦が、このサンフランシ
スコのちっぽけな街を訪れた。何か素晴らしいことが起こっているのではない
かという、強烈な予感に導かれて。

 しかし残念なことに、サマー・オブ・ラヴは69年のウッドストック・フェス
ティヴァルを頂点に、失速してしまう。原因についてはこれまた多くの説があ
るが、なかでも当時実際にコミューンで暮らした人物が「誰もトイレ当番をし
たがらなかったからさ」と答えていたのが、印象に残っている。

 トイレ当番といっても、掃除程度のことではない。何しろ自給自足の、ほぼ
野外生活だ。いわゆる肥溜めを掘ったり埋めたりの汚れ仕事のことである。
 この発言を読んだのは、中学生くらいの時。多分、音楽雑誌の記事の一節だ
ったと思うのだが、なるほど、ラヴ&ピースとか反資本主義・反帝国主義とか
の高邁な理想が、こうした現実的な問題で崩壊していくのは、人間というもの
の悲しい矛盾だなぁとしみじみした覚えがある。
 とはいえぼくだって、音楽やドラッグを楽しむのはいいけれど、肥溜めは願
い下げだ。水洗便所が欲しい。いや、ウォシュレットも必要だ。

 そんなサマー・オブ・ラヴではあったが、音楽的には豊かな実りを残した。
 ジョージ・ハリスンはヘイト・アシュベリーでの体験を元に、ビートルズ解
散後、土臭い匂いに満ちた音楽性で名曲揃いのソロ・アルバムを発表したし、
加藤和彦もサディスティック・ミカ・バンドを結成して、ロキシー・ミュージ
ックの前座とはいえ日本のロック・バンドとして初の海外公演を実現した。
 もちろん当のアメリカでも、70年代には多様なロックが花開いた。

 そして奇しくも20年後の1987年。四人のイギリス人DJが休暇でスペインの
イビサ島を訪れたことで、第2のサマー・オブ・ラヴが起こる。

 その時彼らが目撃したのは、極めて享楽的なムードと快楽主義的なダンス・
ミュージックのスタイルだった。もちろん最初のサマー・オブ・ラヴにLSD
が付き物だったように、ここでもスピードという最新のドラッグが享楽と快楽
を加速させていた。だから、その衝撃をイギリスに持ち帰った四人が始めた、
彼らなりのダンス・ミュージックを、ドラッグを表すもうひとつの言葉アシッ
ドを冠して、アシッド・ハウスと呼ぶ。

 音楽を楽しむ場所も変わった。都会の狭いクラブを飛び出し、より開放的な
空間を目指して、野外で行われるレイヴや、倉庫で行われるウェアハウス・パ
ーティーのような、新しいスタイルへと広がっていった。

 こうした新たなクラブ・シーンは世界中に広がり、音楽も大きく変化した。
元となるサウンドはその名が示すようにハウス・ミュージックであるが、それ
だけに留まらず、やがてテクノ・ミュージックやヒップホップを巻き込んで、
巨大な潮流に成長していった。
 これが著者の言う、第2のサマー・オブ・ラヴである。

 さて、ではそこから20年後の2007年に何が起こったか?

 そう思って歴史を振り返れば、そこに初音ミクが微笑んでいる。2007年8月
31日、ボーカロイド・ソフト『初音ミク』の発売である。

 まず最初の2週間で3500〜4000本という予想以上の数を売り上げ、欠品状態
となった。
 すると、そのことを揶揄して、MEIKO という、少し前に出ていたボーカロイ
ド・ソフトでつくられた歌『初音ミクが来ないのでスネています』の動画が登
場し、これがネット住民の間で大きな話題に。
 これに煽られ、ミク人気はさらに加熱して、結果、1ヶ月少々で15,000本を
超える大ヒットとなったのである。

 1967年、1987年と、20年周期で音楽文化に訪れたサマー・オブ・ラヴ。
 その第3回目こそ、この2007年の初音ミクではないのか。
 著者の見立ては、なるほどという説得力と、ぞくぞくする刺激に満ちている。

 さらに、著者の問は続く。

 先に書いたように、MEIKO というボーカロイド・ソフトは初音ミク以前にも
あった。しかし、それらはあまり売れず、ユーザーの間にも、特に新たなボー
カロイドが待望されていた節もない。
 それなのになぜ、初音ミクはこのような大成功を収めることが出来たのか?

 タイトル『初音ミクはなぜ世界を変えたのか』は、まさにそのことを言って
いる。しかし厳密に言うなら、この文章は正しくない。
 これではまるで、初音ミクが世界を変えたいと思っていたかのようだ。
 しかしもちろん、ソフトウェアである初音ミクに固有の動機はない。
 動機を持つのは、いつでも人間である。
 したがって正しくは、『初音ミクはなぜ世界を変えることになったのか』な
のであるが、まあ、長すぎるのでこうなったんでしょうね。

 ともあれ、問題はここだ。
 どうして初音ミクだけが成功し得たのか?

 もちろん、技術的にそれまでのボーカロイドがまだまだ未成熟で、ユーザー
の期待に応えられなかった、という部分はあるだろう。
 しかし、ではミクが完璧かというと、そこまででもない。
 実際本書の中で開発者自身が、技術的な成熟は「まだまだこれから」と語っ
ている。

 だとすると……

 いや、この問への答は本書に譲ろう。
 ここで明かしてしまうのは、ミステリィの書評で犯人を教えてしまうような
ものだ。

 とにかく約束できるのは、本書を当たっていただければ、同時代を生きてい
たにもかかわらず、ぼくなどが全く知らずにいた「2008年のサマー・オブ・ラ
ヴ」という熱狂を追体験できるということだ。

 そして、その結果、冨田勲の『イーハトーブ交響曲』や、渋谷慶一郎の『TH
E END 』といった、現代を代表する斬新なオペラのプリマドンナとなって、東
京のオーチャードホールやパリのシャトレ座で大成功を収めるに至る初音ミク
の物語は、あなたに深い感動を与えるだろう。

 ぼくはといえば、本書を読了して、感動もあったが、それ以上にショックだ
った。

 というのも、中学生の頃は、第1のサマー・オブ・ラヴの1967年に、自分が
まだ小学生で何もわからなかったことを残念に思い、後10年早く生まれていた
ら、と悔やんだものだが、実は大人になっていた80年代にもサマー・オブ・ラ
ヴがあったのに、全く素通りしてきたからだ。

 もちろん音楽は好きだから、アシッド・ハウスだのレイヴだの、言葉は聴い
ていた。しかしじゃああの頃、何してたんだっけと考えてみると、まあとにか
くひたすら働いていた。東京に住んでいて、クラブ・シーンにも近かったのに、
会社を含む仕事場を行き来していた記憶しかない。とてもサマー・オブ・ラヴ
の渦中にいたとは言い難い。

 まして、00年代のサマー・オブ・ラヴの現場は、インターネットというヴァ
ーチャルな空間だ。もはや地理的制約もない。なのにぼくはまたしても、そん
なことが起きているのに気づきもしなかった。

 だとすると、仮に10年早く生まれていても、遠いアメリカのサンフランシス
コで起こっていることにはまるで気づかず、ただ目の前のことにあくせくして
いただけかも知れないな、と絶望的な気持ちになってしまったのである。

 しかしその一方、本書で語られているあるエピソードが、ぼくの気持ちを和
ませてくれた。

 内山田洋とクール・ファイヴの名曲『長崎は今日も雨だった』の作曲家、彩
木雅夫。いまや80代の大御所が、初音ミクを使っているというのだ。しかも主
治医によると、ミクを使うようになってから彩木先生の健康診断の数値がよく
なった、と言うのである。
 これが本当なら、初音ミクには人を健康にする力があることになる。

 初音ミクに癒される老作曲家。
 なんだか映画の一コマになりそうな、いい話ではないか。

 ぼくも買ってみようかな、初音ミク。


柴那典
『初音ミクはなぜ世界を変えたのか』
2014年4月8日初版発行
2014年6月4日二刷発行
太田出版

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
大好きなバンド月光グリーンが、去年いっぱいで所属事務所を離れたそうです。
そのことの意味は、プロ経験のないぼくにはピンと来ませんが、彼らの音楽活
動が衰えることにならないのを祈るばかり。月光には、まだまだいい音楽をつ
くってほしい。届けてほしい。あ、そうか、もしかするとぼくにとってのサマ
ー・オブ・ラヴは、月光グリーンなのかもしれません。頑張れ、月光!

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『ゲノム編集の衝撃「神の領域」に迫るテクノロジー』
NHK「ゲノム編集」取材班 NHK出版

 最初の遺伝子組み換え作物が市場に出てきてから20年以上経つ。日本では未
だに実験場以外では栽培されていないが、外国でとれた遺伝子組み換え作物は
たくさん入ってきている。

 日本で遺伝子組み換え作物の栽培に関する国の許認可は全てとられている。
しかし実際に遺伝子組み換え作物の種が売られることはないままだ。そうなる
のは反遺伝組み換えを標榜する環境団体などの反発を恐れてのことだと思うが、
世界はすでにポスト遺伝子組み換え技術の世界に突入している。

 それがゲノム編集という技術だ。そのゲノム編集の可能性について書かれた
本がこれである。元々NHKがゲノム編集をテーマにした番組(クローズアッ
プ現代)を作っていたスタッフの作である。帯には山中伸弥センセの「この25
年の中で最も画期的な生命科学技術」とあるのが目を引く。

 遺伝子組み換え作物は、簡単に言えば、必要な形質をもつ遺伝子を対象とな
る遺伝子に組み込んで作られるのだが、必要な形質は遺伝子の必要なとこころ
に組み込まれないといけない。

 しかし、それが簡単ではない。単に必要遺伝子を対象となる遺伝子に入れて
も必要なところに組み込める確率は、宝くじで億単位の金を当てる、あるいは
それ以上に低い確率でしかないからだ。

 だから、「当たる」まで気の遠くなるほどの失敗を重ねなければならず、開
発にものすごい手間がかかる。その上遺伝子組み換え作物を市場に出せるよう
にするまでの許認可を得るのがまた大変だ。そのため事実上モンサントやシン
ジェンタ、バイエルといった世界的な規模の大企業でないと事実上参入できな
い。

 それがゲノム編集になると「ガイドRNA」と呼ばれる遺伝子のどの部分に
組み込めばいいのかを示すガイドと、「クリスパー・キャス9」と呼ばれるD
NAを切断するカッターを使って、必要な場所に必要な遺伝子を組み込めるよ
うになった。

 もちろん失敗もあるのだろうが、遺伝子組み換え技術のような気が遠くなる
ほど失敗を重ねる必要はない。もっと簡単に、安いコストで従来では考えられ
ないほど早く必要となる形質を遺伝子に組み込めるのだ。

 ゲノム編集された作物や動物はまだ市場には出てきていないが、大学や企業
の研究所ではすでに実用化寸前のものが多数ある。この本で最初に出てくるの
は魚のゲノム編集で、従来の品種改良なら100年、あるいは200年かかってもで
きないかも知れない改良が数年でできると言う。

 動物実験を減らす目的で、代わりにメダカを使おうと言うことで、鬱病の研
究のために鬱病のメダカが作られたり、生まれてから繁殖できるまでに3年か
かるマダイを6ヶ月で繁殖できるようにしたり、一匹から多くの切り身を作れ
るように筋肉を増やしたマダイを作っている。当然、植物や動物にも同じ手を
使える。

 他にもゲップを出さない(メタンを出さない)牛とか、角のない牛(飼育す
る人が人間がケガしなくなる)とか、ソラニン(青くなったジャガイモに存在
する毒素)を持たないジャガイモ、燃料となる油を効率的に生産する裳など、
そんな例がたくさん書かれている。エイズなど難病治療にも役立つ。良いこと
ずくめである。

 いずれもゲノム編集によって作り出される生物は、地球環境の保全や、ひっ
迫するであろう食料増産などの問題を解決するために開発が進められている。

 先に挙げたように開発コストが安くつくので、大企業でなくてもゲノム編集
には参入でき、ベンチャー企業でも充分にやれるから、よく言われる「モンサ
ントの独占」などやろうとしても不可能だ。

 そんな中、今でも残っているのが、我々国民が持っている遺伝子組み換え技
術などに対してもっている悪いイメージが立ちはだかる可能性がある。今でも
糖尿病用のインシュリンなど遺伝子組み換えで作られているのばかりだし、も
うすでに遺伝子組み換え作物の恩恵は既に我々は受けているが、そんなことは
反遺伝子組み換え論者には関係ない。

 ゲノム編集は「遺伝子組み換えではない」という考え方もあって、今後どの
ように評価されるのかは予断を許さないのだが、山中伸弥センセがこの本の序
文も書いていて、この技術がどれほど素晴らしいものかと同時に、それゆえに
諸刃の刃となる側面を指摘している。

 生命科学の世界は、もうトンでもない領域まで進んでいる。それを肯定する
にせよ批判するにせよ、こういう本を読んで、とりあえずどんなものかくらい
は知っておいた方が良いだろう。

(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)

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■「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
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妬みは本能なのか、社会的必要悪なのか
『シャーデンフロイデ 他人を引きずりおろす快感』
(中野信子著 幻冬舎新書)

 昔読んだジョーク集に、「あるところに貧乏人と金持ちが隣り合わせて住ん
でいた。ある日、神さまが貧乏人に願いを1つだけかなえてあげると言った。
貧乏人は「金持ちを貧乏にしてください」と願った」という一章がありました。

 若かったおばちゃま、「いやそこは『自分も金持ちにしてください』だろう」
と思いましたが、あれから幾星霜、ここだけの話、「隣も貧乏に」って気持、
リアルにわかるようになってきました。生きるって汚れるってことなのね。苦
い思いをかみしめております。

 さて、この本を要約します。「シャーデン」は、損害、毒という意味で、フ
ロイデは「歓喜」。ほら、ベートーベンの第9交響曲の4楽章も「フロイデ」
ですよね。つまり、「シャーデンフロイデ」とは「毒の喜び」という意味です。

 この感情はオキシトシンというホルモンと関わりがあるとのこと。母が子供
に注ぐ愛情にかかわるのがオキシトシンで、これがあるから子供は親から愛を
もらって生きることができ、別名、愛と絆のホルモンと呼ばれています。が〜、
これが逆に働くと、「かわいさ余って憎さ100倍」とはよく言ったもので、
子どもを束縛して、流行り言葉で言う毒母、心理学用語でいうグレートマザー
になっちゃうわけですね。うん、よくわかるよ。

 そして、それが他人に向かうことがあると。たとえば、何もかも条件がそろ
った恋人とつきあっていた友人が恋人から捨てられたという場合。内心「ザマ
ーみろ」と叫ぶ。ネットスラングでメシウマ(他人の不幸で飯がうまい)とい
うのだそうですが、これがシャーデンフロイデだというのです。わかり過ぎま
す。自分が金持ちになるんじゃなくて隣の人も貧乏にって例ですね。

 この感情の源になっているのは「正義感」「制裁」だそうですが、ではこの
フロイデはなぜあるのかというと、集団の中に突出した人がいた場合、足並み
がそろわなくなり集団として効率よく動けないために、その異分子を潰すこと
が必要だからというのです。

 つまり社会にとって制裁は必要悪であるというわけですね。この展開はちょ
っと不思議。このへんがこの本自体の危うさですが、さらに先に進むと、ユー
ロとアジアだと、アジア人の方が集団的で人の不幸を喜びがちで、それは、ヨ
ーロッパは小麦だけどアジアは米が産物で育てるには手間がかかる分、協力し
ないといけないからだとか、災害がたびたびやってくるので協調性が必要とか、
まあこのへんはちょっと昔っぽい社会学になってしまっていて、ちょっと待て
よ、オキシトシンどこ行ったな感じです。

 後半でも、いかに人は弱い存在で、正義の名のもとに平気で制裁を加えるこ
とができるという実験例が列挙されています。

 最後に、「娘を支配しようとする母もネットで誰かを攻撃する人も、よかれ
と思って制裁を加えます、(略)しかし、時には美しい愛という正義によって
曇らされているかを感じて見る必要があるのではないでしょうか」とあります。

 あれ?これが結論? 最後まで読んで思ったことは、内容をビミョウに今の
問題方向にずらしたタイトルで売れた本だなということです。特に「他人を引
きずり下ろす快感」というサブタイトルの「引きずり下ろす」という言葉は本
に1か所しか出てきません。でもほら昨今、あの事件やこの事件で人をひきず
りおろすことばかりじゃないですか。これをすかさずタイトルにした編集は偉
い!と思うわけでありました。

 でもこの著者の本はもう現代のテーマをもろに突いていて、お見事です。だ
っておばちゃま、この本といっしょに同じ著者の「サイコパス」って本を買っ
てしまいましたからね。「サイコパス」もおもしろいテーマですが、これって
レッテル貼りにならないの?と危惧しながら読書中です。次回はこの本を紹介
しますね。


大友舞子(おおとも・まいこ)
昭和20年代生まれのフリー編集&ライター。関東生まれで関西在住。


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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・『追憶 下弦の月』(パレードブックス)
  http://books.parade.co.jp/category/genre02/978-4-434-23989-2.html

・『元アイドルのAVギャル瀬名あゆむ、アイドルプロデューサーになる』
 (コアマガジン)
 http://www.coremagazine.co.jp/book/coreshinsho_024.html

・『ミスなくすばやく仕事をする技術』(秀和システム)
 http://www.shuwasystem.co.jp/products/7980html/5125.html

・『マンガでわかるグーグルのマインドフルネス革命』(サンガ)
 http://www.samgha-ec.com/SHOP/300870.html

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

 〒142-0041 東京都品川区戸越5-4-3 アズ品川ビル4階
       ビズナレッジ株式会社内 [書評]のメルマガ 献本 係

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
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■あとがき
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 1日遅れの配信となりました。まだまだ寒い日が続きますが、やや春の気配
を花粉に感じています…(あ)

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[書評]のメルマガ vol.647


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■■ [書評]のメルマガ                2017.02.10.発行
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■■ mailmagazine of book reviews     [下司で下品ででたらめな 号]
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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<98>「大砲」の使いみち、のお話し

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→80 カラフルな色の世界

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第98回 すもうがすきなのに・・・(仮題)

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→平成版の“男の作法”?

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 パレードブックスの御担当下牧しゅう様より、下記の書籍を献本いただきま
した。ありがとうございます!

 『追憶 下弦の月』
  尾原重男
  四六判・362頁(ハードカバー)
  ISBN 978-4-434-23989-2
  2017年11月発行
  http://books.parade.co.jp/category/genre02/978-4-434-23989-2.html

 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<98>「大砲」の使いみち、のお話し

 昔、書店をやってたとき、当時やたらと信者を増やしていた新興宗教があっ
た。
 この宗教団体は出版部門も持っていて、その書籍を「ぜひとも置いてくれ」
と、ほぼ毎日のように「営業」にやってくる20代らしい男性信者に、やや辟易
した経験がある。

 ンな胡散臭い本を置くつもりもなかったので、いつも適当にあしらってお帰
りいただいていたのだけど、懲りずに毎日やってきては、教祖の「素晴らしい
教え」が満載の本のことや、自分がこれを読み、この教団に入って「いかに救
われたか」を、得々と語るのであった。

 そんなとき、ある週刊誌がこの教団の教祖のスキャンダルを掲載し、これに
憤った信者たちが徒党を組み、出版社に抗議に押しかける、という事件が起こ
った。
 信者たちの先頭に立って抗議行動を起こしていたのが、有名作家と女優とい
う著名人だったこともあって、当時のテレビや新聞でも盛んに報道された。
 それからしばらくは、この宗教団体と出版社は全面対決の様相となり、かな
り長く訴訟合戦が続いたと記憶する。

 そんな時に、またぞろやって来た件の営業クンは、この週刊誌がいかにでた
らめで嘘八百並べているか、さらに掲載された記事は悪意でもって捏造された
ものだ、と滔々と述べ立ててから、

「こんな下司で下品ででたらめな雑誌を置いていると、お店の品位を落とすば
かりだ。ぜひともお宅の店頭から除くことをお勧めします」

 と力説する。
 教団は、抗議活動と裁判と同時に、信者を使ってこの雑誌と出版社の不買運
動も進めていたのであった。

 申し出は、もちろん断った。
 何を置いてなにを置かないかを、他人に口出しされる覚えはないし、なによ
り雑誌ジャーナリズムというのは、「雑(あれこれ)誌(しるす)」の字義の
とおり、下世話な話題から政治経済国際問題芸術エンターテインメント及びス
ポーツまで、あまねくネタを拾い上げ、さらに対象に正面から切り込む新聞・
テレビなどとは違う「ナナメ下方35度」の角度から、やらしく粘着質にえぐり
こむのがその役目だと、これは当時から思っていて、営業クンにもそう伝える
と、翌日から彼はぴたりと来なくなったのだった。

 今も「雑誌」に対するこの考えは変わってないのだけど、しかし昨今、こと
に週刊誌など見てると、「下世話」方面にベクトルが傾き過ぎているキライが
ある、と思う。

 誰と誰が密会しようが不倫であろうが、どうぞご勝手に、である。
 ついでに言えば、芸能人などが不倫関係暴き立てられた末の「謝罪会見」と
いうのも、非常に不愉快だ。
 「ごめんなさい」は、当事者同士でやりあってればいい話で、世間に対して
「謝罪」する必要性がどこにあるのか、どうにもよくわからない。
 だいたいからして、当事者同士意外には、誰にも迷惑はかかってないはずな
のに、誰に対して、なにを「謝罪」せいというのだ?

 「〇〇の娘」や「××の息子」が、なんらの事件を起こしたに際して、わざ
わざその親が出て来ての「謝罪会見」もまた、非常に不愉快だ。
 江戸時代の「縁座」じゃあるまいし、成人した男女が起こした事件に対して、
その親を糾弾し「謝罪」に引きずり出すのは、行き過ぎどころか、とても危険
な行為だと思う。

 最近で言えば、秋篠宮家の婚儀に関して、長女・真子さんの婚約者の家庭問
題が、根掘り葉掘りあれこれ暴露されているようで、これは、この婚約をよろ
しく思わない現政権の某所が、陰で動いているとの説もあるそうだが、そうな
ると、大正時代の「宮中某重大事件」の再現ではないか。
 誰だ? 平成の山縣有朋は? 同じ「長州閥」のアベちゃんその人か?

 上はあくまで「噂」ではあるが、しかし、このところの雑誌ジャーナリズム
には、「政権寄り」の記事が目に余る、と思うのはわしだけだろうか?

 ナンタラ砲とか言われてるそうだが、政権に阿り、「弱い者いじめ」の暴露
記事にばかり、その「砲」の照準が向けられるのなら、そんなメディアは百害
あって一利なし、即刻廃刊していただきたい。

 政権とは一線を画し、あくまで「反権力」に立地して「雑(あれこれ)」を
暴いていくのが、正しい雑誌の在り方だと思うのは、過剰な期待だろうか?
 せっかくの「砲」ならば、その照準はもっと大きなものにこそ、向けていた
だきたい、と思うのである。

 …と、今回は、前振りだけにしとこうと思った話題が、ことのほか字数を食
ってしまったので、漫画の話題はなんもなし。
 今回書こうと思った漫画の話は、次回のココロ、なのだった。

太郎吉野(たろう・よしの)
 2011年に神戸から西宮へ引っ越して、ただ今のホームグラウンドは甲子園。
右投げ右打ち。掛布二軍監督はひとつ年上の同級生。

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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80 カラフルな色の世界

 今年は各地で雪のニュースが続いています。
 日常生活が可能な限り早くもどりますように。
 早くもどすために尽力くださっている方々に感謝します。
 
 会津でも白い空、白い地面の世界が例年以上に長いです。気温も低くあまり
とけないからでしょうか。色のある世界が恋しくなります。

 なので今回はカラフルな色を楽しむ絵本を中心にご紹介します。

 『クレヨンで描いたおいしい魚図鑑』
  加藤 休ミ 晶文社

 『きょうのごはん』『おさなかないちば』など、既においしい食べ物を描い
た絵本をつくってきた加藤さんですが、今回は鮭の塩焼き、焼きたらこ、金目
鯛の煮付けなどなど、料理となった魚たちの図鑑です。

 クレヨン、クレパスで描かれている魚たちの美味しそうなことったらありま
せん。「シズル感」たっぷりです。小学校の図工で使っていたクレヨンでこれ
だけ美味しい絵が描けるなんてすごい。

 また図鑑なので魚の知識ももりこまれています。系統樹として魚料理の種類
を「仲間」としているものでは、太陽と塩の時代、しょうゆ時代、冷蔵庫時代
と、それぞれの時代の魚料理が分けられていて興味をひきます。

 およそ1800年前の邪馬台国では、なんと既に干物と塩焼き、汁ものがあった
そうで、初めて知りました。いたみやすい魚を日持ちさせるための知恵はずい
ぶん前からあったのですね。

 描かれている魚料理は17種類。ししゃもの一夜干しは本当にリアルで、紙の
上から何度もさわってしまいました。金目鯛の煮付けは、特においしい目の玉
あたりをクローズアップしていて、食欲をそそります。

 親バカ(?)ですが、魚料理が大好きで魚の食べ方がものすごくきれい(つ
まりほとんど残さない)な高校生の娘も、この絵本をみて「おなかすくね、魚
食べたくなるね、目の玉おいしいんだよね」とうっとり眺めていました。

 クレヨンでおいしく描かれた魚料理は一見の価値があります。ぜひ。


 『ネルソンせんせいがきえちゃった!』
  ハリー・アラード 文 ジェイムズ・マーシャル 絵
  もりうちすみこ訳 朔北社

 書影をネットでみた瞬間、「これはおもしろい絵本!」とアンテナにひっか
かりました。
 もちろんその時はまだ中身をまったく知りません。
 ただ表紙に描かれた子ども達の教室の雰囲気にひかれたのです。

 ネルソン先生の生徒たちは、いつもしゃべったり、動いたり、うるさくして
ばかり。先生の注意など聞く耳を持ちません。とうとう先生は学校に来なくな
りました。それでも生徒たちは、これ幸いとばかりに遊ぼうとするのですが、
代わりにきたスワンプ先生の怖さに震えます。そこでネルソン先生にもどって
きてもらおうと策を練りはじめるのですが……。

 子どもたちの表情は小悪魔のようだったり、天使のようだったり、どちらも
かわいく、気持ちが素直に表情にでているのが楽しめます。

 子どもたちに読み聞かせすれば、やさしいネルソン先生ときびしいスワンプ
先生の対応を楽しんでくれるに違いありません。

 本書は1977年にアメリカで刊行され、いまもロングセラーを続けているそう
です。ユーモアな文章と洒落た雰囲気の絵は飽きのこない何度も読みたくなる
魅力があります。 


 『ごちそうの木 タンザニアのむかしばなし』
   ジョン・キラカ 作 さくま ゆみこ 訳 西村書店

 タンザニアの南西に住むフィパという人たちに伝わる昔話を、画家のキラカ
さんが語り部を見つけて聞き取りをしたものです。

 昔々、日照りが長く続き作物がとれない時期がありました。動物たちは腹ぺ
こです。乾いた大地に不思議な木が一本生えていました。その木はおいしそう
な実がいっぱいなっています。しかし、ゆすってもたたいても実はとれません。
どうやったら実がとれるのか、からだの大きなゾウとスイギュウが賢いカメに
相談に行くと……。

 訳者さくまさんのあとがきによると、アフリカにはまだ農業が天気に左右さ
れているため、日照りで飢える人もでる地域があるそうです。この昔話にでて
くる「ごちそうの木」は日照りの時にあってほしい願いのようなものなのでし
ょうか。

 キラカさんの絵は、濃くはっきりした色調が鮮やかなポップアート。白い雪
の日が続いているときに、この絵本を開くと、うれしい気持ちになれます。

 実をとるための動物たちの試行錯誤も愉快で、おいしい実の味を想像しなが
ら読みました。

 訳者のさくまさんは「アフリカ子どもの本プロジェクト」の活動をされてお
り、この絵本もそのプロジェクトが関わっています。

 サイトはこちら http://africa-kodomo.com/

 このプロジェクトは3つの目的があり、

1)アフリカに設立したドリーム・ライブラリー(現在2館)を継続的に支え
  る。
2)識字や楽しみのための本を必要としているアフリカの子どもたちがいれば、
  そこに本を届ける。
3)日本の子どもたちに、アフリカの文化やアフリカの子どもたちのことを伝
  える。

 『ごちそうの木』の作者キラカさんが昨年来日したときも、このプロジェク
トで講演会やワークショップを開催されました。

 それでは最後にご紹介する本も目をひく表紙です。

 『マルコとパパ ダウン症にあるむすことぼくのスケッチブック』
   グスティ 作 宇野和美 訳 偕成社

 作者グスティはアルゼンチン出身のイラストレーター。ダウン症のある息子
マルコとの日々をスケッチしたものが本書です。

 グスティはマルコが生まれてきたとき、最初はダウン症であることを、
「こんなのうけいれられない」と率直に表明し、その時の困惑ぶりを描きます。
母親のアンヌはなんのこだわりもなく受け入れたことも、女性から学ぶことが
たくさんあると、アンヌとのやりとりを細かく書いています。

 「いいんだ! この子はこのままで!」

 マルコをマルコのまま受け入れたグスティの描く絵は、子どもへの愛しさが
たっぷりです。ペンでざっくり描いたもの、水彩で色をのせたもの、詳細に描
写されたもの、家族の生活が目の前で繰り広げられ、読んでいるとどんどんマ
ルコが身近にいるように感じられてきます。

 マルコにはテオというお兄さんもいるのですが、テオもマルコを「せかいい
ちのおとうと」とかわいがります。父親のグスティはテオから学んだことも多
いのです。

 遊びや学校生活、日常生活をしやするための手術も描かれ、それらは障害の
ある子どもとの暮らし――「受け入れる」とはを見せてくれます。

 さて、様々な本には最後に作者による謝辞が書かれています。
 この本には「ありがとう」というページにたくさんの人がでてきます。
 私はたいてい謝辞は読み飛ばすことが多いのですが、
 「ありがとう」は熟読し、何度も読み返しもしました。
 グスティの声が聞こえてくるようだったからです。

 今月、来月と刊行記念トークイベントも開催されるので、お近くの方は足を
運ばれてはいかがでしょう。

 ★刊行記念トークイベント開催予定★

 ○2月27日(火)19:30〜BOOKS 青いカバ(駒込)
 「日本語版『マルコとパパ』ができるまで〜翻訳とデザインと」
  宇野和美さん(翻訳家)x 鳥井和昌さん(デザイナー)
 https://www.kaiseisha.co.jp/news/24156

 ○3月20日(火)18:30〜ブックハウスカフェ(神保町)
 世界ダウン症の日記念トークイベント
 宇野和美さん(翻訳家) x 関口英子さん(翻訳家)
 https://goo.gl/xuF86A

 
(林さかな)
会津若松在住
http://1day1book.strikingly.com/

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第98回 すもうがすきなのに・・・(仮題)

 角界が喧しい。
 問題点としては2点ある。

 ひとつは、土俵上の取り組みに対する批評ではなく、大相撲を主催している
公益財団法人日本相撲協会に対しての批判や意見である。それらが世間に入り
乱れている。その運営方法や管理能力に対して、さまざまな人たちがさまざま
な意見を吐き散らかしている、という印象。そのような外からのたくさんの批
判や意見に対して、日本相撲協会はしっかりそれらに向き合っている、という
印象はない。はぐらかしている、とまでは云わないが、黙っていればそのうち
収まる、と考えているのではないか、という態度のような感じ。それから、素
人が伝統ある大相撲のことにとやかく口を出すな、という上から目線の横柄な
態度も隠しているような気になってしまうのは、私だけではないはずだ。

 もうひとつは、関取たちに直接、投げかけたい事柄。弱い横綱。強すぎてオ
レ様になっている横綱。故障を押して出場するから、さらに悪化させ故障が長
引いてしまう関取たち。そもそも関取たちに故障者が多すぎること。・・・そ
ういう関取たちに対する物言いもたくさん噴出している。
 とにかく、長年の相撲ファンとしては、この処のおすもうを巡るごたごたが
もどかしくて歯がゆくて仕方ない。

『のこった −もう、相撲ファンを引退しない−』(星野智幸 著)
(発行:ころから)(2017年11月17日発行)

 著者の星野智幸氏は、日本を代表する小説家である。今回、本書が刊行する
にあたり新聞に載ったその紹介記事には、星野智幸氏は幼少時より熱烈な大相
撲ファンであり、2003年に貴乃花が引退したときに、一度はきっぱりと大相撲
を観なくなった。と書いてある。そして約10年のブランクを経て、2014年に久
しぶりに大相撲を観始めたら、相撲の会場も相撲を観ている世間も10年前とは
様変わりしており、様子が違っていることに著者は驚き、憤慨している。

 本書は、星野智幸氏がどういう経緯で大相撲を観ることを止めたか、また再
びどうして観始めることになったか、そして古くからの大相撲ファンである星
野智幸氏が大相撲を巡る現状をどう考えているか、が丁寧に書かれているエッ
セーである。本書の最後に星野智幸氏の最初の小説(相撲小説)が掲載されて
いる。この作品は氏が始めて文学賞に応募した作品であり、落選している小説
である。まさにおまけとして楽しく読める作品である。

 相撲は国技だ。と云われている。が、「国技」ってなんだろう。「国技」と
いう言葉が大相撲を観戦するときに不必要なナショナリズムを煽っているので
はないか。ここ10年以上に渡ってモンゴル人力士が大相撲の土俵を席巻してい
る。日本人関取による幕内優勝が望まれ続け、ついに三年前(2015年)の初場
所で琴奨菊が優勝した。これにより、大相撲におけるナショナリズムは最高潮
に盛り上がり、以後、場所中の雰囲気は、日本人力士を過度にたたえ、たくさ
んの声援を送り、反対に外国人力士(主にモンゴル人力士)には、声援を送ら
ない(実際に執筆子は彼らに対して歓声が極端に少ない状況をたくさん目撃し
ている)のだ。

 相撲は土俵で一対一の勝負をする、孤独な競技だ。個人競技の極みと云って
よい。素晴らしい勝負、いい相撲に対する大声援ではなく、力士の出身地で声
援を区別していることがそもそもマナー違反なのだ。そのような相撲の見方は
邪道である。
 本書は、出身国によって差別せず、技や土俵での態度を観る純粋な相撲観戦
を是とし、現状を憂いている。

 そして大相撲が八百長問題や暴力事件に揺れていたとき、ひとり横綱として、
土俵に立ち続けていた白鵬を讃えている。白鵬の評価はさまざまであるが、あ
の大相撲の危機のときに、かれは大相撲を支えていたし、また数々の記録を塗
り替えた彼の相撲を同時代に観られたことを喜んでいる。

 大相撲に関してはさまざまな意見がある。本書はその中のひとつの意見であ
る。でもその意見はとても傾聴に値するいい意見だと思う。

 この原稿は、2月2日の日本相撲協会理事選挙の後に書き始めた。その後、
2月7日に民放で渦中の貴乃花親方に対する単独インタビューが放送された。
土俵の外が喧しすぎる。


多呂さ(立春を過ぎてもなお、今年は寒い日が続きます。日本は自然災害の多
い国です。豪雪地帯の皆さまにはお見舞いを申し上げます。)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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■人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える/SHOW−Z
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平成版の“男の作法”?
『男子の作法』 (SB新書) 弘兼憲史

「もし無人島に一冊だけ本を持っていくとしたら?」と問われたら、僕は間違
いなく、池波正太郎の“男の作法”と答えます。何もない無人島で、男の粋に
ついて読んでどうするんだというツッコミをもらいそうですが、大人になって
から読んだ本の中で、今でも気付いたら読み返している本といえば、僕の中で
はこれなのです。

 てんぷら屋に行く時は腹をすかして行って、親の敵にでも会ったように揚げ
るそばからかぶりつく・・・とは有名な一節ですが、たとえ食べられるものが
ない状況下であっても、男の粋とは、ダンディズムとは何かについて、無人島
であれこれ妄想してみたいなと思ったりします。本気で。

 先日、会社帰りに立ち寄った駅構内の書店にて、平台にうずたかく積まれて
いた書籍の中に、今回ご紹介する“男子の作法”はありました。弘兼憲史とい
えばビジネスマンガ“島耕作”の作者として有名な方です。この本の表紙にも、
島耕作風の中年男性のイラストが描かれ、目を引きます。私自身、島耕作シリ
ーズも社長編の前半くらいまでは読んでいたこともあって興味を持ち、その場
で購入、帰りの電車内で読み始めました。

 まえがきには、「美学やダンディズムは内に秘めていたほうが格好いいが、
自分の好き嫌いや趣向を肩の力を抜いて、親しい後輩に語りかけるような気分
で書いた」と、弘兼先生の思いが綴られておりました。

 本編は食・酒、人間関係、仕事、旅・イベント、モノ・趣味、家庭、自己・
人生、と7つの章に分かれています。池波先生の話したことをそのまま文章に
してまとめた本家・男の作法は章立てに計算がないので、タイトルが似通って
いるだけで、本のイメージ自体はだいぶ異なりますね。ただ、スタートを“食
・酒”にしたのは、寿司屋の話で始まる本家に敬意を表したからなのか、それ
とも本のタイトルも含め、編集者の意図が入っているからなのか。本家を意識
しているのがわかります(笑)。

 肩の力を抜いて・・・という言葉通り、1つ1つのテーマには重めの内容も
含まれているものの、疲れを感じることもなく、サクサク読み進める事ができ
ます。さすがに本家とは書かれた時代が違うので、ワークライフバランス、プ
ラス思考、ビジョンといったワードが取り上げられるのは今風なものの、万年
筆やチップ(心付け)、女(妻)など、本家にも出てくる話題について、弘兼
先生が語っているのは嬉しくなりました。あ、このへんのテーマのチョイスも、
編集者の意図だったりして。

 そんな感じで読み進めていきますと、第3章「仕事」あたりから、ほんの少
しですが違和感を覚え始めました。僕が島耕作シリーズをある程度読んでいた
からなのか、はたまた表紙のイラストのせいなのか。言葉を発しているのが弘
兼先生ではなく、島耕作その人へと、入れ替わったような感じを受けたのです。

 弘兼先生は大学卒業後、新卒で松下電器(現在のパナソニック)に入社、3
年間の勤務の後、退職して漫画家の道に進まれました。つまり、実質的な組織
の中でのご経験って、この3年だけなんですね。

 本書では、この会社員時代にご経験されているエピソードが多く紹介されて
いて、それ自体は面白く読むことができるのですが、上司との付き合い方、仕
事でのアピールの仕方、そして派閥の考え方にまで話が及ぶと、これは社会人
3年の経験値で語れるものとは到底思えない。一方で、実はスーパーサラリー
マン・島耕作自身が語っているとしたら、、、もうこれがすんなりと、受け入
れられるんですよ。受け入れるというより、あ、これは島耕作が書いているん
だろうと錯覚してしまうような。

 その後の章では徐々に島耕作の香りも薄れていき、弘兼先生ご自身が、また
顔を出してきます。島耕作は弘兼先生が生み出したので、ある意味、先生の分
身と捉えることもできるのでしょうが、これだけ有名なキャラクターですので、
読者からすれば人格は別物。その辺の線引きが明確にあれば、読みやすさの中
にもっと説得力のあるエッセイになったのかなと思うんですよね。40代前後の
サラリーマンには興味深い話題が多いだけに、少し残念な感が残ったのでし
た。

 あと本書の中で「20代の女性が50代の男を恋愛対象にするか否か」「相手に
依存しない自立した恋愛とは」について語られるところが出てくるのですが、
この手の話題こそ、弘兼先生ではなく、島耕作の十八番ネタ(笑)。色魔とし
ても有名で、読者からも賛否両論ある島耕作の考えを、ぜひ読んでみたかった
ところです。もちろん実際の書き手である「中の人」は、弘兼先生で構わない
んですけどね。

show-z
某IT企業で人事担当者として勤務。千葉県在住。

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・『追憶 下弦の月』(パレードブックス)
  http://books.parade.co.jp/category/genre02/978-4-434-23989-2.html

・『元アイドルのAVギャル瀬名あゆむ、アイドルプロデューサーになる』
 (コアマガジン)
 http://www.coremagazine.co.jp/book/coreshinsho_024.html

・『ミスなくすばやく仕事をする技術』(秀和システム)
 http://www.shuwasystem.co.jp/products/7980html/5125.html

・『マンガでわかるグーグルのマインドフルネス革命』(サンガ)
 http://www.samgha-ec.com/SHOP/300870.html

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

 〒142-0041 東京都品川区戸越5-4-3 アズ品川ビル4階
       ビズナレッジ株式会社内 [書評]のメルマガ 献本 係

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンや楽天などのオンライン
 書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。つまり
 は当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願いしま
 す。(あまりにも短いものは書評とは呼べませんので、文字数の条件を設け
 ました。書評は500字以上でお願い致します。)

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 最近、これまで読まなかったような本を読む機会が多くなっています。知ら
なかった世界を知るのは楽しいですね。

 人から勧められて、ということが多いのですが、もちろん、流行の本などで
はなく、人知れずロングセラーな本ばかり。

 本が売れない時代ではありますが、なんとかこういう良い本を後世に継いで
いって欲しいと思います。(あ)

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★「目につく本を読んでみる」/朝日山
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★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
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★【募集中】献本読者書評のコーナー
→ 献本お待ちしています!

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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#91『うたのしくみ』

 いつの間にか、ボイストレーニングを受け始めて、今年で7年になる。

 歌い手にとっては、自分の体が楽器なのだが、同時にギタリストでもあるせ
いか、あまりそういう感覚がなかった。声の出し方、響かせ方を、ことさら意
識したこともなかった。せいぜい音程とリズムを正確にしようと気を遣うくら
い。

 ボイストレーニングを受けて、一番変わったのは、そこだと思う。
 自分の体を楽器として認識すること。声の出し方、響かせ方に意識を向ける
こと。

 でも、まだまだ甘いというか、もっともっと細かく「声」に着目し、深く分
析する人がいるんだなあ、と感心したのが本書である。これに比べたら、自分
など、ごく大雑把な意識の仕方に留まっているんだ、と目を開かれた。特に印
象に残ったのが、かの有名な荒井由実の『やさしさに包まれたなら』を分析し
た章だった。

 この曲の歌い出しの歌詞は「小さい頃は神様がいて」である。
 著者は、この「小さい」に与えられたメロディに注目する。

 普通「ちいさい」と歌う時は、「ちーさい」と歌っている。
 例えば『小さい秋みつけた』が、その典型だ。メロディは、「ち」と「い」
で同じ音程である。だから、人は「ち」と「い」に分けるのではなく、「ちー」
とひとつの塊として発音している。

 しかるに、『やさしさに包まれたなら』は、どうか?

 最初の「ち」に対して、次の「い」は、同じ音程どころか、1オクターブも
高くなっている。
 こうしたメロディの跳躍は、通常サビのように盛り上がるところに来る。し
かし、この曲では冒頭いきなりなのだ。
 そのため、歌い手は「ちー」とは歌えない。はっきりと2音に区切って「ち」
「い」と歌う。いやそれどころか、1オクターブという大きな跳躍のために、
「い」の前に「っ」を助走として挟まなければならない。
 実際、よく聴いてみれば、ユーミンもこの歌い出しを「ちっいさい」と歌っ
ている。

 さらに著者は、後半の「さい」にも注目する。

 ここでユーミンは、少し早いタイミングで「さ」を歌っている。音楽用語で
「食う」と言うのだが、本来の楽譜通りのタイミングより、気持ち早く歌いだ
すことで、そこにアクセントを乗せるのだ。

 なぜ、「さ」を、そんな風に強調するかというと、実は日本語におけるサ行
が、特別な音だからだ。

 日本語は、ローマ字を見ればわかるように、母音のみのア行と「ん」を除け
ば、すべて母音+子音で出来ている。だから、長く伸ばすと、母音に変わって
しまう。
 例えば、「く」を伸ばしてみると、「くーーーーうっ」と途中で「う」にな
っていることに気づくだろう。
 ところが、サ行だけは、母音にならず、子音shのまま、息が続く限り伸ばせ
るのだ。

 この特性があるために、サ行は耳に特徴的に響く。

 ぼくも若い頃、作詞のアルバイトをしていたことがあって、サ行は、イコラ
イザーが乗りやすい、と教わった。だから、音を伸ばす箇所で歌詞がサ行だと、
レコーディングの時、ここに印象的な効果をつけることができるのだ、と。

 そう思うと、忌野清志郎の歌詞は、語尾を伸ばすところに「さ」とか「ぜ」
が来るような気がする。
♪甲州街道はもう秋なのさー
とか
♪とんでもないぜーっ
とか。
 サディスティック・ミカ・バンドの『タイムマシンにお願い』は
♪さあーっ! 不思議な夢と
と「さ」のロングトーンから始まる。しかも敢えてブレイクを1拍置いて、2
拍目にアクセントが来る変則的な歌い出しだ。

 『やさしさに包まれたなら』の「ちいさい」に登場する「さ」は、このふた
つの例と並べれば、もっとずっとささやかな「さ」ではある。しかし、そのこ
との意味は大きく、作者であるユーミンは、十分自覚的に「さ」を用いている。
 なぜなら、「小さい頃は」と歌ったすぐ後に、またもや「さ」が現れるから
だ。

「かぁみっさまがいてぇ」
 この「み」と「さ」の間も、メロディは1オクターブではないが、少しジャ
ンプしている。だから「っ」が入る。そして「ちいさい」の「さ」と同様 に、
ユーミンはほんの少し「食う」タイミングで、「かみさま」の「さ」を歌う。

 さらに、「ふしぎに夢をかなえてくれた」には「し」、「やさしい気持ちで
目覚めた朝は」には「さ」と「し」。
 その後の歌詞にも要所要所でサ行が使われている。

 止めはラストだ。
 もともとこの曲はCMソングとして書かれていて、その時点では「目に映る
すべてのことは きみのもの」だったそうだ。
 それが自分のオリジナル曲としてレコーディングされた時には、「きみのも
の」がこう変わった。

「メッセージ」

 原詞にはなかった、サ行の「セ」が加わっているのである。

 こうした、発音へのこだわりが、優れた歌には仕組まれている、と著者は指
摘する。
 なるほどー!と唸ってしまう。

 しかし、歌う時以上に、日本語の発音に意識的になる場合がある。
 コンピューターに歌わせる時だ。

 著者は別の章で、初音ミクを取り上げ、この問題を掘り下げている。

 合成音声で歌う初音ミクだが、元となっているのは人間の声である。しかし、
より自然な発音にするためには、多様なパラメーターを設定して、ユーザー一
人一人が自分なりのミクの声を創造しなければならない。
 だから、著者はこう言う。
「「初音ミク」は、「歌」を育てるソフトだ、と思う」と。

 ここで著者が「歌」を育てる、とし、「声」を育てる、としなかったのは、
あくまで歌う声としての育成であるからだ。

 それでも、ミクの歌声は、やはり人間の歌声とは違う。
 人間が無意識にやっている発音が、途方もない量のデータ処理作業だからで
ある。

 人間がこのことに気づいたのは、初音ミクが現れたからこそだ。それ以前に
は、あまりに無意識に話しているために、言葉を発音する行為の複雑さに誰も
思い至らなかった。

 今後、人間の歌い手に、初音ミクの歌声を「育て」るノウハウを応用するこ
とで、これまでにない新しい表現が獲得されていくかもしれない……著者の指
摘に感心している内に、そんな妄想を抱いた。
 テクノロジーが人間に追いつこうとする。だが、まるでそれをかわすように、
人間もまた変質していく。
 そんなSF的な事態が、ここでも起ころうとしているのかもしれない。

 もちろん本書は、声のみにまつわる本ではない。
 例えばビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・
バンド』が初期ジャズの名曲『アレクサンダーズ・ラグタイム・バンド』の遠
い子孫であると見抜いたり、ブルースが最初の歌詞を2回繰り返す理由を解き
明かしたり、チャック・ベリーの有名なダック・ウォークが音楽のグルーヴに
影響していることを検証したり。実に多彩な切り口で、歌の仕組みについて考
えを巡らしている。

 そんな本書のタイトルは、そのままズバリ、『うたのしくみ』。
 著者は、細馬宏通といって、滋賀県立大学の教授だそうだ。

 1年通じてジャズ本縛りになってしまったので取り上げなかったが、実は去
年手に入れた音楽本の中で一番の収穫だった本書を、今年最初にご紹介します。

 本年もいい本を楽しみましょう。よろしくお願いします!


細馬宏通
『うたのしくみ』
2014年4月1日 初版発行
ぴあ株式会社関西支社

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
正月から北朝鮮絡みが騒がしいですが、個人的には今年、ちょっと新しい展開
がありそうで楽しみです。

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『時計の科学 人と時間の5000年の歴史』織田一朗 講談社ブルーバックス

 私が大学進学を意識した頃、高校の勉強で得意科目も苦手科目もなかった。
文系を選ぶか理系を選ぶかでまず困ったのだが、そんな頃に出できたのがセイ
コーのテレビウォッチだった。

 ウルトラセブンでウルトラ警備隊が使っていた「ビデオシーバー」という腕
時計テレビを見て育った者としては、そんなSF世界のモノが自分の生きてい
る間にできるとは思っていなくて驚いた。それで「こんな進化の早い世界には
ついて行けない」と絶望して文系を選択したのだった。

https://www.youtube.com/watch?v=4nKhimBiLLA
http://www.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0405/14/news002.html

 そんな時計の世界は、今や Apple Watch に代表されるスマートウォッチに
まで進化しているわけだが、そんな時計の歴史をコンパクトにまとめた本であ
る。

 最初の前書きでまずびっくりするのは、クオーツ出現前の時計事情である。
機械式時計はまだ精度が悪く、高級品をのぞけば1日15秒から20秒の誤差が出
るのは当たり前だった(実は今でも仕様上はそうなってるが、今の機械式時計
はそんなに狂わない)。そのため数日時間合わせしてないと分単位で狂う。そ
んな事情を誰もが知っていたので、遅刻の言い訳に「時計が遅れていたので電
車に乗り遅れてまして・・・」が通用していた。

 腕時計よりひどかったのは目覚まし時計で、目覚まし時間の誤差が30分くら
いあるのが普通だった。もっとコストをかければいいものは作れたが、当時の
消費者は1000円くらいの安物しか買わず、精度の良い3000円くらいの時計は見
向きもされないのでメーカーも困っていたそうな。今では遅刻の理由を時計に
求めたりしたら「馬鹿野郎」で終わってしまう。

 そんな出だしから、古代の日時計から現代の原子時計までの歴史を概観して
いくのだが、まだ機械式時計が出現していない古い時代、日時計や水時計だけ
でなく砂時計や線香までも時計に使われていたという。そして今なおローテク
の時計として花時計があるとか。

 ここで言う花時計とは、観光地にある花で文字盤をあしらった時計のことで
はない。開花時間が花によって朝6時とか9時とか違うことを利用して、どの
花が開花したかを見ることで時間を見る時計なのだ。

 そしておなじみの機械式時計の技術の進化に入っていくのだが、個人的には
クオーツ時計の黎明期の話がとても興味深かった。

 機械式時計にかわる電気仕立ての時計はブローバが開発した音叉時計から始
まったが、ライセンスを同社が出さず自社で独占しようとした。そのため日本
やスイスなどの他のメーカーはクオーツに目を向け、いち早く商品化したセイ
コーは他メーカーにクオーツを供給して「味方づくり」を行って市場を奪って
いった・・・IBMがPC互換機を認めてパソコン市場をアップルから奪い取
ったやり方は、その20年以上前にセイコーのやったことの真似に過ぎないので
ある。

 とはいえ、クオーツの開発は省電力との戦いであった。今のスマートウォッ
チのバッテリーは一日持てばいいくらいでしかないが、1960年代の時計にはそ
んなことは許されなかった。懸命に省電力化に取り組んだものの、どうしても
1.5Vのボタン電池で三ヶ月以上は動かせなかったのである。

 そこでひらめいたのは、ステップ運針だ。ステップ運針というのは秒針が動
いて止まり、まだ動いては止まるクオーツ時計に見られる機構で、機械式時計
のように滑らかに秒針が止まらず回るのをスイープ運針という。

 スイープ運針させるだけのエネルギーがどうしても確保できないので、針を
動かすモーターを一瞬動かして休ませ、また一瞬動かして休めることで省電力
化を図ったのである。

 しかし、アイディアは良かったが現実にステップ運針をさせようとするとま
た難題が持ち上がり・・・プロジェクトXでクオーツ開発のテーマで番組やっ
てたのか知らないが、出てきても不思議のない困難をいくつもくぐり抜けてク
オーツ時計は発売された。クオーツ時計は瞬く間に世界に普及し、時計の遅れ
を遅刻の理由にはできなくなった。

 その後もソーラー時計や人間の体温で発電する機構など、バッテリー関係と
GPSや標準電波を受信して時刻修正するほとんど狂わない電波時計など開発は
進んでいく。原子時計は300億年に一秒の誤差になっているそうだ。

 残念なところは昨年12月出版なのにスマートウォッチについて触れられてい
ないこと。もっともアレは時計じゃないと言われたらそれまでのような気もす
るし、進化も早いから書くと本がすぐ古くなるので避けたのかも知れない。

 ともあれ安いモノなら100円で買える正確無比な時計が誰にでも手に入るよ
うになるまでに、人類は5000年の時を費やした。ケータイ電話が出てきだした
頃からケータイやスマホを時計代わりにして腕時計をつけないような人も増え
ている。そんな時代に、人と時計の5000年に思いをはせるのもいいかもしれな
い・・・実際は時計の好きな人しか読まないだろうけどw


(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)

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■あとがき
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 発行が遅れている間に関東は大雪になってしまいました。おかげで発行時間
が確保できました。

 今年最初の20日号です。今年もよろしくお願いします。(あ)

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[書評]のメルマガ vol.645


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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<97>天皇陛下はアマンドピンク

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→79 共に生活する楽しみ

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第97回 二人の巨匠の対談(黒澤明と宮崎駿)

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

----------------------------------------------------------------------
■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
└──────────────────────────────────

 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<97>天皇陛下はアマンドピンク

 皆様、明けましておめでとうございます。

 「平成カウントダウン」な今年ですが、本年もまた相変わらずのダボラ話に
お付き合いのほどを、よろしくお願い申し上げます。

 しかし、その「平成」、来年4月で終了と決まったそうですが、この元号っ
ての、そろそろ「やめ」にしてもいいんじゃないでしょうか。
 いや、別にあってもいいんだけど、あくまで「裏」…というか副次的に使っ
ていただいて、公的にこれを使うのはやめていただきたい、と、これはつとに
そう思ってた。

 わしの免許証には、「平成32年の誕生日まで有効」と書いてあるんです。
 でも、その「平成32年」は、もう絶対に訪れることのない「架空の年」なの
だ。
 公文書に架空の年、あるいは「空想上の年代」が使われるのって「如何なも
のか」と思うのだけど、どうだろうか?

 少なくとも公文書は、西暦表示か併記にしてほしいと思う。

 だいたいが、ですね、「昭和53年」とか「昭和31年」と言われて、それが何
年前だか、とっさに答えられます? 
 ちなみに「昭和31年」は、わしの生まれた年ですが、さて、わしは現在何歳
でしょうか? わしも、わかりません。
 生年月日を元号で覚えてる限り、自分の年齢だってあやふやになってくる。

 昭和の頃にはまだ「元号が変わる」というのが現実として想像できなかった
ので、「昭和75年完成予定」なんて表記も、全然気にならなかったんだけどね。

 と、正月2日の皇居一般参賀のニュースを見ながら、そんなこんなに思いを
馳せていたお正月。
 あ、そうそう、その一般参賀のニュースの中で、小学生らしき男の子が参賀
の感想を訊かれていたのだが、その答えに、いささかたまげた。

「天皇陛下のお言葉を聞いて、ぼくも頑張ろうという気持ちになりました」

 と、まあ、概略そういうようなことを言ってたのだけど、「天皇陛下」「お
言葉」という言葉は、間違いなく口にしていた。
 昭和戦前の、大日本帝国の、「陛下の赤子たる」汝臣民少国民か、君は!? 
それとも産〇新聞の回し者か!?

 と、思わずテレビに向かって毒づいてしまったですよ。

 小学生までが、「天皇陛下」なんて呼び方をする社会、あるいは、そういう
呼称を強要する教育てのは、間違いなく不健全だと思う。
 皇室関連の話題になると途端にトーンが変わり、大仰な尊称と敬語を乱発す
る(〇経新聞を筆頭とする)メディアの責任も大だと思う。
 えーかげんにしとかんと、えらいことになりまっせ、正味。

 その昔…っても80年代ころ…田辺聖子は、エッセイの中で「天皇はん」と呼
んでいたのだけど、それくらいのスタンスが「ちょうどいい」と思う。
 それより前には、テレビでも、ワイドショーだったと思うけど、「天皇さん」
という呼称を、ごく親しみを込めた形で使っているのを、確かに聞いた覚えが
ある。
 あんまり関係ないかもしれんが、今年86歳になる我が老母もまた、いつも
「天皇はんと美智子はん」という呼び方をする。

 70年代ころには天皇を指して「天ちゃん」という呼称も、割と一般的だった。
 これもまた、若干揶揄する気配もなきにしろ非ずだったけど、親しみを込め
た呼び方だったことは間違いない。

 そもそも江戸時代ころの京都では、もっぱら「みかどはん」とか「御所はん」
と呼ばれていたはずなのだ。
 江戸をはじめ、京阪圏以外の人々には、その存在すら忘れ去られていたのが
「天皇」なのだ。

 それが「尊王攘夷」で政治利用されるようになってから、雲行きが怪しくな
り、あれよあれよと「陛下」になって、「畏くも」で「汝臣民」で直立不動強
要で教育勅語で、「陛下」を神輿にかついで侵略戦争に突き進んでしまって、
挙句の果てが原爆投下と全国的焦土で『この世界の片隅に』で『火垂るの墓』
なのだ。

 今の「象徴」という天皇の位置は、江戸時代のそれにごく近いんじゃないか
と思う。
 それを、最近の風潮…テレビのニュースやら、天皇や皇室関連の話題に関す
るネットの反応、あるいはアベちゃんの言動等々…を見ていると、天皇を「象
徴」から明治〜昭和戦前の「現人神」に戻そうとしているように思えてならな
い。

 そういう風潮を危うく思ったがゆえに、現天皇は「生前退位」を選び、記者
会見などでも、ことさらに「象徴」という言葉を使い、それを強調しているの
では? と思えてならない。

 わしが記憶する限り、昭和天皇は、その在位中に「象徴」という言葉を、こ
とさらに発することはなかった。
 なぜなら、それは「当たり前」で、ことさら口にする必要がなかったから。

 その昭和の末期、バブルも真っ盛りの80年代末、赤星たみこ・作になる『恋
はいつもアマンドピンク』(単行本は双葉社刊)という漫画があった。
 映画化、TVドラマ化もされたヒット作だ。
 ちなみに、映画版は樋口可南子が主演した。

 当時の、バブルに浮かれた社会を背景に、20代の男女の「恋愛至上主義」的
な日常を描いた漫画で、言うたらまあ、漫画版の『男女7人夏物語』かな?

 この中に、愛を求めて都会の夜をさすらう主人公のOLと、なんだかんだが
あった後、結婚することになる男性キャラクターが登場する。
 主人公OLの周囲にいる、常に最先端の流行を追いかけ、ファッションも遊
びも「イケてる」男たちに比べて、流行に疎く洋服もダサいけど、育ちの良さ
を感じさせる物腰と、深い教養を備えている…のだが、しかし、空気を読むこ
とを知らず、いつも周囲から浮いている、そんなキャラクターで、その名も
「広野宮彦」。

 「昭和」な方なら、「ヒロノミヤヒコ」という名前で「ぴん」ときたと思う
のだが、そのキャラクターは、ただ今の皇太子、当時の浩宮徳仁親王、その人
そっくりに造形されていたのだった。
 映画版では、川野太郎が「広野宮彦」を演じた。
 そうです、映画でも、またドラマでも、「広野宮彦」という役名は、そのま
ま使われたのです。

 これ、今やるとおそらく「大炎上」必至だと思う。
 産〇新聞とか〇賣新聞が大騒ぎするのが、目に見えそうだ。

 そのころ…って、『恋はいつもアマンドピンク』が連載された時代、あたり
までだろうか? 皇室や天皇が、ギャグやパロディの「ネタ」になり得ていた
のは。

 昭和天皇の独特な抑揚での喋りようは、物まねやパロディのネタになってた
し、いつだか忘れたが、テレビ(ラジオだったかも知れない)で天皇のモノマネ
を見て(聞いて、かな?)大笑いしていた覚えが、確かにある。

 現天皇もまた、自らがギャグやパロディのネタとしてさらされても、笑いこ
そすれ、決して怒ることはないと思う。
 「笑い」のネタにできるというのは、天皇と皇室が決して政治利用されない
という平和の「象徴」だ。
 それが許されない空気のある現在は、とても危険な領域に差し掛かっている
と思う。

 さきに引いた田辺聖子の「天皇はん」のエッセイは、首都機能の移転や分散
化が謂われたころのもので、「ならばいっそ、天皇はんと皇居を京都に戻して
やって」という文脈だった。

 今こそ、それが必要かも、と思う。
 皇居と天皇を政治の中心たる東京から切り離し、距離を置くことで、江戸時
代同様に「象徴」の位置が保たれるのでは? と思ってしまった新年なのだっ
た。


太郎吉野(たろう・よしの)
 2011年に神戸から西宮へ引っ越して、ただ今のホームグラウンドは甲子園。
右投げ右打ち。掛布二軍監督はひとつ年上の同級生。

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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79 共に生活する楽しみ

 2018年が始まりました。
 年末年始のハレの日が過ぎ、日常が戻っているころでしょうか。
 

 さて今年最初にご紹介するのはシリーズ2作。

『モルモット オルガの物語』
『オルガとボリスとなかまたち』

 マイケル・ボンド 作 おおつかのりこ 訳 いたやさとし 絵 PHP研究所

 作者は「くまのパディントン」シリーズを書かれたマイケル・ボンドさん。
さみしいことに昨年亡くなられ、日本語に訳された本はみていただくことは叶
わなかったそうです。

 本書は娘のカレンさんが飼っていたモルモットをモデルに、空想力ゆたかな
オルガが愉快に動き回る物語。

 表紙のモルモットたちの愛らしさにまず惹かれ、
 一巻目の冒頭からこれはおもしろそうだとわかりました。
 
 ――オルガ・ダ・ポルがはまちがいなく、とくべつなモルモットです。

 とくべつなモルモットの話!

 オルガは自分の名前を飼い主のカレンにどのように伝えたか。
 ネコのノエルとはどのようにわかりあったか。
 空想が紡ぐめくるめくお話。
 などなど
 
 オルガの躍動感が読み手に伝わってきて、ワクワクというか、次は何をする
のかなという楽しみが読んでいる間中続きます。

 おおつかさんの翻訳は言葉がやわらかく、詩的で、物語にとてもあっていま
す。オルガやまわりの友だちの言葉は時に深淵で哲学的でもあり、大人が読ん
でも、はっとします。

 私の好きな言葉は、ハリネズミのファンジオによるもの。

 ファンジオはオルガに自分な好きな場所“天国が原”の話をし、オルガもそ
の場所に行きたくなります。なんとか、囲いから抜け出し、ファンジオと出か
けます。しかし、“天国が原”はオルガにとってはよくわからない場所でした。

 そんなオルガにファンジオはこういいます。

「美は、みるものの目にやどる。おいらのまどからは、すてきな場所にしかみ
えないけどな」

 うんうん、ファンジオのいうこと、よくわかります。

 小学校低学年から楽しめる物語。 
 周りのお子さんにすすめてみてください。
 動物好きだとなお喜ばれるでしょう。

 訳者おおつかさんによる、オルガのブログもぜひ。
 作中に出てくる料理、その名も”あなのなかのヒキガエル”もブログで紹介
され、つくりたくなりました。
 

 「もっと もっと モルモット オルガ」
 https://olga-da-polga.muragon.com/


 もう一冊はうれしい復刊児童書

『バイバイわたしのおうち』
 ジャクリーン・ウィルソン 作 ニック・シャラット 絵 小竹由美子 訳
 童話館出版

 本書は2000年に偕成社より刊行されていたものの復刊。翻訳は全面的に見直
されています。

 刊行された当時読んでいたので、久しぶりの再読です。
 ジャクリーン・ウィルソンさんの作品は1995年に翻訳家の小竹さんが訳され
た『みそっかすなんていわせない』(偕成社)を皮切りに、日本でもファンが
広がりました。イギリスで大人気の作家、ジャクリーン・ウィルソンは複雑な
家庭環境下の子どもの気持ちをよくすいとっていて、なんでわかるの?と聞き
たくなるほどリアルです。

 私自身、中学のときに両親の離婚を経験していますが、まわりの友だちには
相談できず本にずいぶん救われました。

 ひこ・田中さんの『お引越』や今江祥智さんの『優しさごっこ』がそうでし
たが、ウィルソンさんの本を初めて読んだときは、もっと早く読みたかった!
とくやしく思ったほどです。

 さて、この物語のいちばんの魅力は語り口が湿っぽくないところです。
 親の離婚は子どもにとっては不幸なことが多いですが、だからって暗く重た
く書く必要はなく、からりと悲しさやしんどさを語ってほしいのです。

 『バイバイわたしのおうち』はパパとママとアンディーの3人で桑の木のあ
る一軒家で暮らしていたのが、両親の離婚によって、1週間事に双方の家を行
ったり来たりする暮らしを強いられるようになった物語。

 両親の仲が破綻していても、子どもとの関係は破綻していないのだから、ア
ンディーにとっては、どうにかやり直せないか、また一人っ子に戻りたいと願
うのはとっても理解できます。

 双方ともに異母兄弟がいて、落ち着く場所がなく、ストレスをため続けるア
ンディー。そんなアンディーの親友はシルバニア・ファミリーのうさぎ人形、
ラディッシュ。

 ラディッシュのおかげで、アンディーはもう一つの居場所も得ることができ
るので、そのあたりはぜひ本を手にとって読んでみてください。

 子どもの選択肢は少ないゆえに、逃げ場がなかなか見つからない。家、学校
以外の居場所は大事です。

 アンディーにラディッシュがいてよかった。

 ニック・シャラットのイラストも物語にぴったり。子どもも大人も表情がい
い、仕草がいい。みんな憎めない人物に描いています。

 ウィルソンさんの物語を必要とする子どもたちにこの本が届きますように。
 大人も読んで広めましょう!


 それでは、今年もよろしくお願いいたします。

 
(林さかな)
会津若松在住
http://1day1book.strikingly.com/

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第97回 二人の巨匠の対談(黒澤明と宮崎駿)

 黒澤明監督の遺作となった『まあだだよ』は、1993(平成5年)4月に公開
されている。この後黒澤は、『海は見ていた』のシナリオを書き、1995年(平
成7年)に『雨あがる』のシナリオを書いている時、怪我を負い、そのまま床
に伏す生活となり1998年(平成10年)に逝去する。

 一方の宮崎は、ナウシカ(1984年)、ラピュタ(1986年)、そして1988年の
トトロ、さらに『魔女の宅急便』が1989年。1993年時点での最新作は『紅の豚』
(1992年)であり、アニメーション映画監督として、第一人者の地位を確立し
ていた。

 1910年(明治43年)生まれの黒澤は、1993年当時、83歳。そして、1941年
(昭和16年)生まれの宮崎は、52歳。ふたりの年齢差はおよそ30歳である。

 このふたりが1993年(平成5年)のとある日にテレビで対談した。今回紹介
する本は、その時の模様を文字にした対談集である。

『何が映画か −「七人の侍」と「まあだだよ」をめぐって−』
(黒澤明 宮崎駿 著)(編集発行:スタジオジブリ)(発売:徳間書店)
(1993年8月31日初版発行)

 本書は、黒澤作品の『まあだだよ』が公開された1993年の5月に宮崎駿が御
殿場にある黒澤明の別荘を訪ねて対談をする、というテレビ番組が基になって
いる。その対談を文字に起こした。そして後日、スタッフがスタジオジブリを
訪ねて宮崎駿に黒澤との対談に関しての単独インタビューをし、それも後半に
登載されている。さらに付録というかおまけとして、『七人の侍』の助監督を
務めた廣澤榮氏のエッセーが巻末を飾っている。このエッセーが爆発的に面白
い。

 順を追って確認していこう。

 黒澤明監督待望の新作『まあだだよ』が前月4月に封切られたので、対談は
この『まあだだよ』の話題が中心になる。そして宮崎駿自身が日本映画最高峰
の作品と考えている『七人の侍』についてもたくさんのページを割いている。

 対談部分の章見出しは「ちゃんとした映画を作るには・・・・・」。

 映画の監督業とは、何をしているのか、ということから解きほぐしている。
実写の映画監督とアニメーションの映画監督のやることにはたくさんの違いが
あるのだが、まずは基本として“こだわる”ことが大切なのだ、ということで
ふたりの意見は一致する。

 対談というスタイルは、互いが対等な立場で対話していく姿が正しいのだろ
うが、黒澤明と宮崎駿。このふたりが対等であるはずがない。宮崎が敬愛して
やまない巨匠・黒澤に対して教えを請う、という姿勢であるため、宮崎は質問
し、黒澤が答える、という対談の姿になっている。黒澤はほとんど宮崎には質
問をしない。宮崎はインタビュアーになっている。インタビュアーとしての宮
崎の質問がとても的を射ているので、本書は読んでいる我々としても、とても
わかりやすい黒澤映画の解説書になっているのである。

 そして写真が多い。もしかすると本文ページの半分は写真かもしれない。黒
澤映画の場面場面の写真が載っている。三船がいる。志村喬がいる。そして最
新作の『まあだだよ』の写真もふんだんに掲載され、それとともに黒澤監督か
ら場面場面の制作秘話を聞く。実に贅沢な書籍なのである。

 この二人の対談において、特に『七人の侍』と『まあだだよ』を使い、映画
の作り方の講義を受けている、と云えばよいか。・・・・・そんな内容の対談
になっている。

 対談の最後に宮崎駿は、時代劇をやってみたい。と語る。是非おやりになり
なさい、と云う黒澤。そして宮崎駿は、この対談の4年後、黒澤の死の前年に
なる1997年(平成9年)に『もののけ姫』を完成させた。だから本書は、この
『もののけ姫』も『千と千尋の神隠し』もまだ影も形もないときの内容なのだ。
宮崎駿のこの2本を黒澤明は観ていない。もし観ていたら、そして元気であっ
たなら、黒澤はどんな感想をもったのであろう。宮崎駿は、黒澤明の作品から
たくさんの示唆やヒントを得て、それらを作ったに違いない。そういうことを
考えると何か不思議な感じがしてならない。

 最後にの付録のような「『七人の侍』のしごと」という廣澤榮氏のエッセー
が抜群である。助監督による『七人の侍』の制作ノートだ。黒澤映画ファンに
はたまらない一文である。と共に映画制作を志している人たちにもいい経験談
だと思うのだ。

 全体として、本書は映画作りを志望している若い人たちにこそ読んでほしい
一冊だ。映画がどのように作られるか。・・・・・ということを考える本だ。
どのように脚本を書くか、どのようにロケ地を選ぶか、どのようにセットを作
るか、どのように道具を揃えるか、どのように撮影するか、どのように役者を
その気にさせるか、どのように編集するか・・・・・。そういう映画作りのノ
ウハウがぎっしり詰まっている本になっている。


多呂さ(毎日お寒うございます。寒中お見舞い申し上げます。今年もよろしく
お願いします。)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・『元アイドルのAVギャル瀬名あゆむ、アイドルプロデューサーになる』
 (コアマガジン)
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・『ミスなくすばやく仕事をする技術』(秀和システム)
 http://www.shuwasystem.co.jp/products/7980html/5125.html

・『マンガでわかるグーグルのマインドフルネス革命』(サンガ)
 http://www.samgha-ec.com/SHOP/300870.html

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
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 表題【読者書評参加希望】
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 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 〒142-0041 東京都品川区戸越5-4-3 アズ品川ビル4階
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2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
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 書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。つまり
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6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 新年最初の号ですが、少し遅れました。すみません。

 本年もよろしくお願い致します。(あ)

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