[書評]のメルマガ

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[書評]のメルマガ vol.788

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■■ [書評]のメルマガ                2024.03.10.発行
■■                              vol.788
■■ mailmagazine of book reviews     [「ザックバラン」な精神 号]
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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<169>トンカちゃんのこと

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→150 伝えること

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→今回はお休みです。

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義 〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<169>トンカちゃんのこと

 “トンカちゃん”が、去年の五月に亡くなっていた、と知ったのは、この二
月半ばだった。
 久しぶりに神戸で時間が取れそうだったので、これまでまだ未訪問だった新
しいお店へ、寄ってみようかな、とネットで場所を再確認するつもりで検索し
て、その逝去を知った。
 享年44。あまりに早い。早すぎる。その事実を知ってしばらくは、呆然とな
った。

 トンカちゃんとは、神戸・元町の裏通りにある古書店「森花書林」の店主
(だった)森本恵さんのこと。
 彼女を知ったのは、今の場所に店名変更して移転する以前、元町山手のトア
ウェストにあった「トンカ書店」時代だった。

 もう20年ほど前だ。当時仕事場を借りていた山手からほど近いトアウェスト
に、ある日「ザックバランな古本屋 トンカ書店」との看板を見つけた。
 なんだ? と、ビルの二階のその店へ入ってみたところが、本やら雑誌やら
雑貨やらを雑然と並べた店内のカウンターに座って、にこにこと微笑んでいた
のが彼女だった。

 店は、まさしく「ザックバラン」を体現するかの如く、ジャンルも何も関係
なく、本に雑誌に雑貨モロモロが、所狭しと積み上げられ、片隅には、当時ま
だ製造が細々と継続されていた、神戸ローカル飲料「ネーポン」を飲ませるコ
ーナーもあった。
 ネーポンの製造所は兵庫にあって、高齢のおばちゃんが一人で製造を続けて
いたそこまで、週に一度、自転車で仕入れに行く、と言っていた。
 ネーポンのコーナーの傍ら、ソファが据えられた一角は、小さなギャラリー
スペースになっていて、その時は、写真家の永田収さんの写真が何枚か掲げら
れていた。

 「トンカ書店」との店名がとても珍しかったので、「どういう意味?」と訊
いたら、「わたしの名前です」と笑って答えてくれた。
 当時はまだ結婚前で、「頓花恵」さんなのだった。
 商品である本も雑貨も、基本、お客からの買い取りで賄っていたらしいが、
古本修業は、学生時代の元町「ちんき堂」での店番だった、というだけあって、
昭和というか、70年代テイストがあちこちに感じられる店内だった。

 そんな店内はとても魅力的で、それ以後、近くを通るたびに寄るようになっ
た。
 積み上げてある本や雑誌の中から、思わぬ「お宝」が出てくることもままあ
った。
 今、手元にあるものでは、昭和39年発行の「なかよし別冊・リボンの騎士」
や、同じく昭和39年の「カッパ・コミクス 鉄腕アトム」、「少年マガジン」
の1970年2月1日号
、「ヤングコミック」1973年3月14日号、等々は、この当時にトンカ書店で手
に入れたものだ。
 それ以外にも、特に漫画やサブカル系では、「元・ガロ少年」の琴線に触れ
るブツが、よく見つかる店でもあった。

 そんな店の店主だったトンカちゃんは、当時はまだ二十代だったが、笑顔が
素敵なとても気立てのいい子で、お客の、ことに「昭和」なおっさん達にはフ
ァンが多くて、自分もその一人だった。
 2冊しかない自分の著書も、「置きますよ」と気軽に委託扱いで置いてくれ
て、定価で販売してくれた売上金を律儀に封筒に入れ、店に行くたび渡してく
れた。

 トアウェストのトンカ書店は、2017年だったかに、入っていたビルが老朽化
のため建て替えとなり、今の元町裏路地に移転した。
 当時すでに結婚して名字も変わっていたので、新規に「花森書林」として再
オープンしたそこへは、いつか行こうと思いながら、なかなか時間が合わず、
行けずにいた。
 そして今年2月の某日、所用で神戸に行く用事ができて、時間が取れそうだ
から「寄ってみるかな」と、店の場所を再確認するためにネットで調べたとこ
ろが、そこで彼女の逝去を知ったのだった。

 花森書林は、トンカちゃんの生前から手伝っていた弟さんが店を引き継ぎ、
現在も営業を続けている。
 2月某日、訪れてお悔やみを述べてきた。
 彼女の存命中に新しい店に行けなかったのが、返す返すも残念だったのだが、
弟さんによると、病気のことは誰にも告げず、死の、かなり間際まで店に立ち
続けていたらしい。

 お店の様子は、以前の「トンカ書店」そのままだった。
 そして弟さんもまた、生前の彼女と同じように、肩ひじ張らずに無理もせず、
ごく自然体でもって、店をやっておられるようにお見受けした。

 神戸は、東京・神田に次いで、古本屋の密集度の高い街だ、とは、1970年代
の野坂昭如のエッセイにあった一節だ。
 しかし、かつては三宮・元町近辺のそこここにあった古本屋は、次々と廃業
し、三宮に限って言えば、今や古書店は「1軒きり」という状態だ。
 しかし、この「花森書林」のような「ニューウェーブ系」の古本屋もまた、
ぽつぽつと出現してきている。

 花森書林には是非ともに、肩ひじ張らない遊び精神でもって、トンカちゃん
の「ザックバラン」な精神を引き継いでいってもらいたい、との思いを強くし
ながら、小雨の元町を後にしたのだった。


太郎吉野(たろう・よしの)
阪神タイガースお膝元在住。右投げ右打ち。趣味は途中下車、時々寝過ごし乗
り越し、最長不倒距離は三重県名張。
ちなみに「阪神タイガース」の「阪神」は、「兵庫県阪神地方」を指します。

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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150 伝えること

 今年の冬はことのほか雪が少なかったので、少し降るだけでも冬はまだ存在
すると安心してしまうほどでした。私の住んでいるところでは、2月より3月
の方が雪が降っていると感じるほど、ここ最近は冬らしい天気が続いています。

 とはいえ、復旧途中の場所では寒さはこたえます。能登の復旧がすこしでも
すみやかにすすみますように。


 さて、先日オンラインでおもしろいトークイベント『科学を伝える絵本の舞
台裏』に参加しました。

「科学」「絵本」と、気になるワードが2つも入っているのですから、そそら
れます。オンラインでも参加できたのはうれしいことで、コロナによってオン
ラインがかなりすすんだおかげです。

 イベント主催は、科博SCAのワーキンググループ。
 科博SCAとは、国立科学博物館サイエンスコミュニケータ・アソシエーション
のこと。国立科学博物館サイエンスコミュニケータ養成実践講座の修了者有志
によって構成されています。同講座の「人々に知を伝え、人々の知をつなぎ、知
を社会に還元する」を共通の理念とし、修了生の実践活動をサポートすることを
目的に結成された会と、HPに紹介されていました。国立科学博物館とは独立
した団体です。

 https://kahakusca.edoblog.net/aboutus

 福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を3人の子どもたちが小さいときか
ら読んでいて、いまも私は読み続けているわけですが、それは書かれている内容
が大人でも興味深く、おもしろいからです。

 今回のトークイベントでも、「たくさんのふしぎ」の著者、編集者も参加され
ているとあったので、よけいに聞きたかったのです。

 最初の登壇者は、農学博士のイラストレーター、きのしたちひろさん。
「たくさんのふしぎ」では『なぜ君たちはグルグル回るのか、海の動物たちの謎』
のイラストを担当されています。

 自身が子どものときから生き物、特に海の生き物が好きで、博士にまでなった
きのしたさん。イラストは、海の生き物たちのことを伝えるすぐれたツールだと
いうお話をされていました。
 研究者ということで、あれこれ伝えたいことをもりこみすぎてしまうところを
編集者の客観的な指摘で整理されながら、『なぜ君たちはグルグル回るのか、〜』
が完成されていった話とともに、指摘前、指摘後の絵を実際にみせてくださり、
興味深く見入りました。

 次の登壇者は鈴木俊貴さん。動物言語学、とくにシジュウカラ科の鳥類の鳴き
声の意味や文法構造を研究され、絵本『にんじゃ シジュウカラのすけ』(世界
文化社)を監修されています。
 実際のシジュウカラの鳴き声を聞かせていただき、その文法を解説いただい
たのですが、本当に鳴き声が伝えたいことによって変わっていて、驚きました。
研究をもとに、絵本がつくられていて、ぜひ読まねばと思っています。

 最後の登壇者は福音館書店で「たくさんのふしぎ」を編集されている、北森芳
徳さん。きのしたさんの『なぜ君たちはグルグル回るのか〜』も編集されたそう
です。著者らとともに、様々な場所で一緒にいろいろ考えてつくられていくこと
をお話しくださり、なかでも印象に残っている作品として『うんこ虫を追え』
(舘野鴻)をあげられていました。本書は5月に、たくさんのふしぎ傑作集の一
冊として単行本で刊行されるようです。

 それぞれのお話の後、質問コーナーもあり、どんな子ども時代だったのかとい
う質問では、みなさん、ちょっと変わっていた、好きなことにとことん集中する
タイプだったそうなので、好きを追求していまの仕事をされているのだなと、過
去と現在がつながっていることが素直にすごいと思いました。

 編集の北森さんが、「たくさんのふしぎ」では写真絵本も多いのですが、写真
はやはり現地に行かれてのものなのでとても力があると仰っていて、実は私も購
入するものは、写真ものが多かったのですが、今回きのしたさんのお話や絵を拝
見して、さっそく取り寄せてみました。イラストだからこそ、細部まで紹介でき
ることもあると仰っていたきのしたさんの言葉は、絵をみるととても納得でした。

 続けてご紹介するのは、一般書ではありますが、鳥好きの方なら高校生くらい
からでも楽しめる本です。

『鳥が人類を変えた 世界の歴史をつくった10種類』
       スティーブン・モス 宇丹貴代実 訳 河出書房新社

 世界を変えた10の鳥として、
 ワタリガラス、ハト、シチメンチョウ、ドードー、ダーウィンフィンチ類、
 グアナイウ、ユキコサギ、ハクトウワシ、スズメ、コウテイペンギンがとりあ
げられ、人間と鳥の関係において、世界の歴史をつくっていったことが紹介され
ています。

 驚きます。

 特にグアナイウの糞を肥料として利用するために農業手法が劇的に変わり、す
さまじい影響をもたらせたことに、読んでいて思わず「え!」と声が出たほどで
す。
 個人的に鳥の糞といえば、上からぺちゃっと落ちてきて、車を汚すというくら
いのイメージだったのが、グアナイウの糞は、国家レベルであり、もたらす富と
ともに、採掘した中国人労働者の悲惨さには言葉がみつからないほどです。

 まさにタイトル通りの世界の歴史をつくった鳥たち。
 最後を締めるコウテイペンギンではきびしい環境危機が伝えられます。

 読んで終わりではなく、歴史を知りこれからどう行動していくことが未来につ
ながるのかを考え続ける本です。


 ノンフィクションが続いたので、物語もご紹介。


 『ナイチンゲールが歌ってる』
 ルーマー・ゴッデン 作 脇 明子 訳 網中いづる 絵
 岩波少年文庫

 以前、偕成社から『トウシューズ』(渡辺 南都子 訳)というタイトルで刊
行されていたものの、新訳です。

 ゴッデン自身もバレエの経験があり、バレエ教室も開いていたので、その経
験も下敷きになっているのでしょう。

 ひとりの才能ある少女ロッティの成長物語を起伏たっぷりに描きます。
 寄宿制の王立バレエ学校に入ることが決まってから、かわいらしい子犬と出
会うロッティ。しかし、その子犬と出会ったきっかけは、人に話せるものでは
ありません。プリンスと名づけたその子犬は、ロッティに光と影を与えます。

 バレエ学校での切磋琢磨の日々、一緒に学校に入ったアイリーンとの関係、
同じくバレエ・ダンサーを目指すサルヴァトーレとの出会い。

 小さなハプニングあり、大きな事件もあり、ゴッデンの緻密なストーリー展
開にひきこまれました。

 子どものときの欲しいものを手に入れたい執着心も思い出しました。
 欲しい、でも手に入れることはふつうだったら難しい。
 じゃあ、どうすれば手に入れられるのか。
 それはたいてい、よくない方法になってしまう。
 ゴッデンはそういう強い気持ちを丁寧に描いています。

 網中いづるさんの挿絵もどれもすてきでした。


 
(林さかな)
https://1day1book.mmm.page/main

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・三上敬 絵/稲田和浩 監修『ゼロから分かる!マンガ落語入門』世界文化社
 https://www.sekaibunka.com/book/exec/cs/21221.html

・格非 著/関根謙訳『桃源郷の幻』アストラハウス
 https://astrahouse.co.jp/2021/11/1008/

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)
 *送付先が変わりました!*

 〒104-0061 東京都中央区銀座6-6-1 銀座風月堂ビル5階
       一般社団法人日本支援対話学会内 支援対話図書館献本係

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンや楽天などのオンライン
 書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。つまり
 は当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願いしま
 す。(あまりにも短いものは書評とは呼べませんので、文字数の条件を設け
 ました。書評は500字以上でお願い致します。)

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 確定申告終わりました。しかし毎年毎年、ぎりぎりに大変な思いをしていて、
とはいえ、ちゃんとお金の管理をしようと思うのはこの時期だけですね。困っ
たもんです。(あ)

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| バックナンバー | 07:23 | comments(0) | -
[書評]のメルマガ vol.787

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■■ mailmagazine of book reviews      [徹底的に役に立つもの 号]
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■コンテンツ
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★「トピックス」
→ トピックス募集中です

★「音楽本専門書評 BOOK’N’ROLL」/おかじまたか佳
→ #165『モーツァルト』

★「目につく本を読んでみる」/朝日山
→ 『悩みのるつぼ〜朝日新聞社の人生相談より〜』岡田斗司夫、FREEex

★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→ 『紫式部ひとり語り』(山本淳子・著/角川ソフィア文庫)

★【募集中】献本読者書評のコーナー
→ 献本お待ちしています!

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#165『モーツァルト』

音楽をやる喜び。

それは、音楽を聴く喜びとは異なるであろう。

いい演奏、素晴らしい歌唱を味わうなら、優れたプロのパフォーマンスを聴く
に若くはない。ましていまはスマホで気軽に音楽が楽しめる時代だ。

にもかかわらず、敢えて拙いとわかっていながら自分で演奏を試みるのは、そ
こに別種の喜びがあるからだ。

例えば、人と一緒に演奏する時、それぞれが持つ固有のリズム感、固有の音程
が次第に合っていく。その一体感。それは喜びである。

そんな喜びのために、私もバンド仲間とライブをやろうと計画しており、それ
は学生時代から一緒にやっているビートルズ・バンドなのだが、しかし、幼い
頃を思い起こせば音楽は初めから楽しいものではまったくなかった。

それは、学校の授業という、採点される場でしか音楽をする機会がなかったか
らだろう。が、それにしても高校時代、軽音に入って初舞台を踏んだ時にも、
やはり足が震え、心臓は破れんばかり。いっそこの場から逃げ出したい、早く
終わってほしいとしか思わなかった記憶。

やはり、人前で演奏することは、観客の評価に晒されることであり、そこでい
い点を取ろうと思うと、途端に音楽は息苦しく、つらいものになるのだろう。

技術を磨く努力も、本来義務ではなく、難曲が弾けるようになる喜びのためで
あるべきなのだが、さりとて凡人には越えがたい障壁がある。

しかし、天才は別である。例えば、モーツァルトのような。

だから人は彼の音楽に、喜びを聴くと、吉田秀和は言う。

本書は音楽評論家・吉田秀和の代表作だ。しかしながら、長らく読むことはな
く、いわゆる「いつか本」のままであった。

本好きならきっとあるであろう、いつかは読もうと思いつつ、いろんな理由で
未だ手が出ない本。

その一冊が、この吉田秀和『モーツァルト』だったのだ。


私の理由は極めて簡単で、そもそも、モーツァルトの音楽自体をろくに聴いた
ことがないからに過ぎない。

音楽本書評などと銘打ちながら情けない話ではあるが、どうにも苦手なのがモ
ーツァルトとベートーベンなのだ。嫌いなのではない。ただ途中で必ず眠くな
って最後まで聴き通せないだけであり、すなわち好き嫌い以前の問題なのであ
る。

特にシンフォニーは余りにも長大で、出だしはいいと思っても、とても最終楽
章まで耐えられない。

映画『アマデウス』のサントラのように、おいしいところだけをつまみ食いの
ように聴くのが精々なのである。


ちなみにバッハも、一部を除いては苦手で、その一部というのは無伴奏バイオ
リン曲なのだが、千住真理子の名盤を一時愛聴していたことがある。また、か
の有名な「主よ人の望みの喜びよ」を、村治佳織にかぶれていた時期に、自ら
ギターで弾いてみた時、ただ聴いていただけでは得られなかった感興を覚え、
われながらたどたどしい演奏なのにどうしてだろう、と不思議に思ったものだ。

ともあれ、要するに私はロマン派がダメなのかも知れず、むしろ20世紀に入っ
たストラビンスキーとか、もっと下ってライヒ、グラス、武満徹の方が最後ま
で飽きずに聴き通せるのである。

あるいは逆にモーツァルト以前に遡り、ビバルディーなどのバロック音楽は好
きだったりする。


しかし、とにかく私はモーツァルトが聴けない。さすがに音楽そのものを聴か
ずに、評論だけ読んでも仕方がないだろう。そのため、名著であるとは知りな
がら、吉田秀和の『モーツァルト』を先送りし続けてきたわけだ。その内、モ
ーツァルトが聴き通せるタイミングが来るだろう。それから紐解いても遅くは
あるまい、と。


だがあいにく、その時は一向に訪れず、時間だけが経って行く中、私はふと、
こんなことを考えた。

かなり以前のことであるが、ドストエフスキーの『地下生活者の手記』を取り
上げた文学評論の本を読み、大変に感銘を受けたのだが、その当時『地下生活
者の手記』自体は未読であったのだ(その後、読んではみたものの、評論ほど
面白くはなかった)。


そう言えば、小林秀雄の『本居宣長』もそうだった。大変面白く読んだが、原
典である本居宣長の本はいまに至るまでなお未読。


すなわち、批評はその対象から独立して存在し得る表現形式なのではないか、
ということである。


文学評論が、それ自体で面白いことは確かにある。たとえ、自分にとって未読
の本を論じていてさえ。

ならば、音楽評論でも同じだろう。つまり、モーツァルトを聴かずとも、『モ
ーツァルト』を読んで構わないのである。
論語読みの論語知らずの逆バージョンとでも言えばよいだろうか。


こうしてようやく、私がこの「いつか本」を手に取る日がやって来た。

さて、前段が長くなったが、まず本書を通読して最も印象的だったのは、モー
ツァルト絡みの著者の体験談である。

例えば、ベルリンオリンピック。ナチスドイツ政権下のあの大会で、水泳の前
畑選手が金メダルを獲得した時、我を忘れたアナウンサーが「前畑がんばれ」
と絶叫を繰り返した伝説の実況放送を、故郷・小樽に帰省していた著者は、街
をそぞろ歩いていて、耳にした。

だが、その実況を差し置いて、彼の心を捉えたのは、モーツァルトだったのだ。

いまでもサッカーワールドカップでサムライジャパンが大健闘していても、全
く興味を持たない私のような天邪鬼がいるように、この時も国民的熱狂をよそ
に、ラジオではなくクラシック音楽をかけている店があり、そこから漏れ聴こ
えてきたモーツァルトに、吉田秀和は深く心を揺り動かされたと言う。


絵は、やはり美術館や画廊で見るものであり、小説は、自らページを開いて読
むものである。
すなわち、受け手が積極的に受容する態度を持って初めて、その表現は届く。

だが恐らく音楽だけが、勝手にこちらの心に入ってくることが可能なのである。
聴く気がないのに、聴こえてしまう。そして、不意打ちのように人の心を奪っ
ていく。

だから音楽は、聴いた時の状況と分かちがたく結びつくことがあり、その体験
はその人だけのものであるがゆえに、われわれは評論というよりエッセイとし
て、その面白さを味わえる。


次に、評論としての部分である。

何しろ冒頭に縷々述べた如く、私はモーツァルトを聴き通していない。随所に
引用されている楽譜も、単純なものならまだしも、スコア(総譜)となるとお
手上げだ。

だが、それでも著者の抜かりない楽曲分析には、素晴らしい説得力があり、こ
とに、なるほど、と膝を打ったのは、ワルツ王ヨハン・シュトラウスとの比較
であった。


著者はシュトラウスの音楽の魅力を認めつつ、だが、何度も聴くと飽きてしま
うと言う。しかし、モーツァルトは飽きることがなく、その理由を普通は、音
楽家の思想の深さの差だと説明するが、そうではない、それは作曲家自身の耳
の違いに過ぎない、と喝破する。


モーツァルトは複雑微妙な音を聴き分ける耳を持って生まれたが、シュトラウ
スはそれより単純な耳を持って生まれた。だから、モーツァルトは複雑な響き
でなければ我慢できなかったのに、シュトラウスはより単純な響きだけで充分
だった。

単にそれだけのことであって、モーツァルトの思想が高邁だというわけではな
いと主張するのである。


これを読んで私は、哲学者の池田晶子を想起した。彼女も、哲学者というのは
特に高邁なことを考えているわけではなく、単にそういう風にものごとを考え
てしまう脳の性向を持って生まれただけであると言い、そのことを「癖(へき)」
と表現したからである。


癖にせよ、耳にせよ、持って生まれたものは仕方がない。それは本人の手柄で
もなく、欠陥でもない。宿命と呼ぶと、それこそロマン主義的に大げさなこと
になるから、せいぜい「たまたま」ぐらいにしておけばいいのではないか。

そんな風に、池田晶子も吉田秀和も思っていたような気がする。

さて、さすがに名著である。非常に面白い本ではあった。

では、これを機会に、私はモーツァルトを聴くことになるのだろうか。

とりあえず、ライブに向けてビートルズを聴く方が優先されそうなのだが。


吉田秀和
『モーツァルト』
1990年12月10日 第一刷発行
講談社学術文庫

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
溶けた雪が、屋根から落ちる大音響にびびりました。


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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『悩みのるつぼ〜朝日新聞社の人生相談より〜』岡田斗司夫、FREEex

もともと幻冬舎から2012年に出ていた『オタクの息子に悩んでます 朝日新聞
「悩みのるつぼ」』の増補・改訂・改題版である。電子書籍しか出ていなくて、
分冊版と一冊版があるが、一冊版を選んだ。

悩み相談のマニュアル本である。寄せられてくる悩み相談について、どのよう
なアプローチをして回答を出してくるかの思考の方法が書かれている。内容の
一部はYouTubeやニコ生の無料配信でも出されているので雰囲気を知るには動
画を見てもいいかもしれない。

もともと朝日新聞で悩み相談をしていたそうで、当時他に車谷長吉、金子勝、
上野千鶴子(後に交代して美輪明宏)と岡田氏が担当していた。その中で岡田
氏が考えたのは四人の中で自分のポジション取りだった。

小説家の車谷さんには文章力で勝てない。合理的で実行可能なアドバイスは金
子さんがやるだろう。視点や切り口の鮮やかさでは上野さんにかなわないだろ
うということで、自分のポジションを読んで気持ちいいとか癒やされるみたい
なものではなく「徹底的に役に立つもの」を書こうと考えた。

そうした姿勢で第1回から取り組んでいて、相談者にとって役に立つ回答を導
き出す。最初に出てくる質問は「彼のケータイを盗み見たら・・・」質問者は
30代女性。相談内容は概略こんな感じ。使うテクニックは「分析」だ。

----------
一年半ほど前から付きあっている彼氏と別れた。様子がおかしいので、彼が風
呂に入っている時にケータイを盗み見たらどうみても自分と同じ、あるいはも
っと親しいかもしれない感じの女性のメールがどっさりあったので問い詰めた
ら、「お前を試したんだ。ケータイを盗み見るような女だとは思わなかった」
と言われた。個人商法の保護が叫ばれる時代に規範意識が無いとか言われて出
て行かれた・・・私は盗み見を謝るべきか、騙されているんでしょうか?
----------

普通に読んだら、どう見ても彼氏がウソついて、いいのがれしているのは明ら
かだが、それを返答したところでこの女性の役には立たない。すでに彼氏とは
別れてるのだから謝ったところで復縁もない。ならぱ、書いた人の気持ちを想
像しよう。本当に言いたいこと、聞きたいことが何かを「分析」するのだ。

おそらく彼女は自分の怒りをどこに持って行っていいのかわからない。彼に謝
る必要ないことくらいわかってる。しかし謝らなければならないかもしれない
と考えたのは、彼を信じたい気持ちがあるからだ。しかし信じるに値しない男
なのも本人はわかってる・・・。

そこまで分析を進めたところで、
・信じられないなら別れなさい
・信じたいなら、疑うな(ケータイにどんなメールが来ていても彼のことを信
じる)
の二つのどちらかを選んでくださいと結論を出すのである。要は、彼が信じら
れるかどうか、自分で結論を出せということだ。

心の奥底にある、本当の相談内容というか、求められている答えを見つける・
・・それが「役に立つ」回答だと言うことだ。

悩み相談として送られてくる相談は、文章のプロが書いているわけではないか
ら、基本読み解く努力が必要になる。その上、人は自分にオブラートをかけて
相談してくることもあるから、相談の文面に書いてあることをそのまま受け取
ってはいけないことも多い。

たとえは、壮絶な生涯を生きてきて、来月家賃が払えず家を放り出されるシン
グルマザーの相談があった。内容がものすごい体験の羅列で、読んでいると怯
みそうになるが、よくよく読むとこれまでの壮絶な生涯などいまさらひっくり
返すことなどできないので相談しても意味が無いと岡田氏は気がついた。

問題は来月家賃が払えなくなって家を追い出されることだけだ・・・だったら、
問題は瑣末なもの1つしかない。来月住むところを見つける・・・これだけが
本当の相談なのだからという感じである。

そんな感じで送られてきた相談文をベースにしつつ、「役に立つ回答」を書い
て行く時、どんなことを分析し、考えながら書いて行ったのか、舞台裏を綴っ
て行くのがこの本だ。

岡田氏は、自称サイコパスで他者への感情や思いやりと言ったものが欠如して
いる無責任野郎のはずなのだが、サイコパスがこんなに人の心の奥底まで分析
できるのかと突っ込みを入れたくなる。

いや、自称サイコパスでもここまでできるのに、我々にはここまで分析ができ
ないのか?実は岡田氏ではなく我々こそがサイコパスだと、書いてないけど主
張している本なのかもしれないと裏読みするのが正しいのかもしれないという
のは冗談である。

実際のところは、悩み相談とは読解力が試される・・・いわゆる国語の試験の
ように名文を分析するのではなく、市井の人の雑多な悩みを彼らの言葉から解
読する参考書と言うのが実際のこの本の内容なのかもしれない。


(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴三十うん年)

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■「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
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『紫式部ひとり語り』(山本淳子・著/角川ソフィア文庫)
紫式部と藤原道長の関係は恋なの?恋愛ごっこなの?ワンナイトなの?

 今年の「大河ドラマ」は平安時代を舞台にした『光る君へ』。紫式部の生涯
をたどるドラマです。企画意図が「女性の活躍」をテーマにしているため、紫
式部が宮廷でいろいろな困難を跳ね返して活躍して『源氏物語』を書く様子が
描かれています。1970年代半ば、「働く女性は美しい」とおだてられてホイホ
イと深夜残業していたおばちゃまからすると「女性の活躍」がテーマってなん
か逆に古くない?って思ってしまうのですがまあ、それほど女性は今も不平等
に苦しんでいるという設定なんでしょう。(違うと思うけどね)。

 今年は昨年とは打って変わって「史実と違う」との反論が聞こえないのはな
んでや? あまりにも古いのでわかっている人が少ないのか、資料が限られて
いるので自由に書いていいと書く方も見る方も許されているからなのか、光源
氏みたいに「私は何をしても許されているんだよ」とばかり、紫式部と清少納
言が道長などの上流貴族のお歴々がいる席に扇で顔も隠さず堂々と同席したり、
貴族の娘である紫式部が最下層の技芸集団にシナリオを書いたり、もうやりた
い放題です。まあいいか。

 そんな中で読み返したのがこの本。紫式部という人の自虐志向やその中に潜
むプライド(謙遜する人ほどプライド高いよね)、恋愛と結婚、女房としての
職業意識、そして道長との関係などが新進の研究者である山本淳子氏によって
述べられています。おばちゃまも山本先生の講座は何回か受講していますが、
キレ味は講座より著作の方がいい!

 その中で大河ドラマのテーマでもある道長と紫式部の関係性について述べら
れている章を今回、じっくり読みました。

 大河ドラマは道長と式部はお互いに思い合っているのに身分差や政治的背景
によって結ばれないそのジレンマが描かれる模様。基本は少女漫画の趣向です
ね。少女漫画の源流は中世ヨーロッパの騎士道物語で、男が憧れの女性に対し
て忠誠の限りを尽くして、その恋心を自分への成長への試金石にするというの
が基本。ですが中世のヨーロッパ貴族社会が決して女性を本当に尊重していな
くて、女性をあがめるフリをする一種の恋愛プレイだったように、実際の紫式
部と道長は権力を持つ上司とその使用人の関係。

 宮中に出仕するのも現代のキャリアウーマン的な華々しさはなく、戦前、仕
事をする女性を「職業婦人」として揶揄したそれ以上のかわいそうな身の上的
に位置づけられました。

 で、大河ドラマでは美しく描かれる道長との関係も紫式部の欄には「御堂関
白道長妾(しょう)」(尊卑分脈)とあるように、殿と召人(めしうど)の関
係であったと考えられています。召人というのは愛人、それも正妻が嫉妬さえ
しない下の身分のいつでも呼び出して関係を持つことができる都合がよすぎる
愛人です。

 『紫式部日記』には道長と式部の関係を描いた部分があります。

 ある夜、道長は式部の局を訪れ戸を叩きましたが、式部は恐ろしくて戸を開
けず、一夜まんじりもせず朝を迎えます。翌朝、道長から「昨日は拒否られて
僕は泣きましたよ」という歌が届き、式部は「どうせ気まぐれでしょう。よか
ったわ、戸を開けなくて」と返します。それが王朝風恋愛ごっこの定石だった
わけです。山本先生は、「私は局を訪れられたわけだが、主家の殿方がその気
となれば、そんな回りくどいことをする必要は、実はない。自分の御帳台に呼
びつければいいのだ。それがなされなかったのは、殿が『源氏の物語』に焚き
付けられ、光源氏を地でゆこうとしたということではないか。ならば私も一人
前の想われ人を気取って応対してよい」と述べておられます。(この本は式部
の一人称で書かれています)。

 山本先生は、主といかに才能があっても娘付きの女房兼家庭教師の間には超
えられない身分差があり、その「分」をわきまえて生きるしかすべがない女性
の悲しさを紫式部は「源氏物語」の中に描いたと考えています。

 では、式部は本当に道長の召人だったのか。式部には「紫式部日記」のほか
に私家集「紫式部集」がありますが、そこでは道長と式部の間に恋愛ごっこで
はない心の交流があったと匂わせる記述があると山本先生は指摘しています。
紫式部でさえ“匂わせ”をしたのかい!ここではやりとりを朝霧の中で2人き
りで逢って歌を詠みかわしたようにアレンジして、道長の式部への情熱をクロ
ーズアップさせています。

「日記と家集とどちらが真実かはいうまい。私は紫野の墓場までこの秘密を持
ってゆこう」

 家集が真実だと思われたいけどそうじゃないかもしれないし、真相は薮の中
で、これが匂わせなのかそうではないのかも不明ですが、1000年の時を経て紫
式部の肉声が聞こえてくる部分であることは間違いがないようです。


大友舞子(おおとも・まいこ)
昭和20年代生まれのフリー編集&ライター。関東生まれで関西在住。

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・三上敬 絵/稲田和浩 監修『ゼロから分かる!マンガ落語入門』世界文化社
 https://www.sekaibunka.com/book/exec/cs/21221.html

・格非 著/関根謙訳『桃源郷の幻』アストラハウス
 https://astrahouse.co.jp/2021/11/1008/

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
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・書評アップ先の媒体予定:
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 表題【読者書評参加希望】
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 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
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2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンや楽天などのオンライン
 書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。つまり
 は当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願いしま
 す。(あまりにも短いものは書評とは呼べませんので、文字数の条件を設け
 ました。書評は500字以上でお願い致します。)

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 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 今年は2月が一日多いですね。お得です。(あ)

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[書評]のメルマガ vol.786

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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<168>時代劇と方言についての一考察

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→149 野生動物の生態を知る

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→今回はお休みです。

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義 〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<168>時代劇と方言についての一考察

 「六条の御息所のお邸へ、お忍びで通たはったころ、内裏から出てツーッと
いく途中、乳母やったひとがえらい大病しはって、尼さんになったはる、てき
いた光君、五条あたりにあるその家を訪ねていかはんのん。」

 上は、いしいしんじ『げんじものがたり』の中の「夕がほ」の章、その冒頭
の一節。
 この「げんじものがたり」は、全編が上のように「現代京都弁訳」で展開さ
れるのである。

 これ、実は書店で見かけて「おもしろいな」と思って買ったのだけど、読ま
ずに「積ん読」状態になっていた。
 NHKの大河ドラマ『光る君へ』を見て、ふとこの「げんじ」のことを思い
出して読み始めたところだ。

 『光る君へ』は、自分の記憶に間違いがなければ、「大河」史上初めて、
「源平もの」以外で平安時代を舞台にする作品であり、しかも主人公が紫式部。
 これは、かなり斬新なのではなかろうか、と興味をもって見たのだ…が…

 ストーリー展開はともかく、現代標準語で展開される“平安絵巻”に、もの
すげー違和感を抱いてしまったのだ。
 しかも、その現代標準語が、かなりくだけていて、「大丈夫だわ」だの「失
礼しちゃうわ」とか…
 これでは、まるで「桃尻語訳」(覚えてらっしゃるでしょうか? 80年代に
一世を風靡した『桃尻娘』の作家・橋本治が著した『桃尻語訳・枕草子』を)
ではないか。
 冒頭にあげた「京都弁・げんじものがたり」のように、全て京都弁でやれ、
とは言わないが…もう少しやりようというのが「あるやろ」と思ってしまった。

 現代の京都弁というのは、概ね江戸時代に完成されたもので、平安のころは、
今とはまったく違う言葉だったと言われてはいるが、しかし、アクセントは、
今と変わらなかったと思うのだ。
 現代の標準語でやるにしても、「せめて関西アクセントにせんかいな」と思
った関西人は、自分ひとりではないと思う。

 映画やドラマでは、江戸期以降が舞台の場合、京都の公家や町人は京都弁を、
大阪人は大阪弁を喋っていることが多いが、戦国以前では、出身地に関係なく、
誰もかれもが同じ現代標準語で喋る、というのが一般的なように見える。

 大和和紀『あさきゆめみし』は、1979年から80年代にかけて連載された漫画
版の「源氏物語」だが、これもまた、作中の言葉は現代標準語だったけど、漫
画や小説では、言葉はあくまで「文字情報」であり、読者の側で勝手にアクセ
ントを置き換えることもできるから…かな? さほどの違和感は感じなかった。
 谷崎潤一郎や円地文子、田辺聖子等々、様々な著者のバージョンがある、
「現代語訳・源氏物語」などもまた、同様にさほど違和感を感じない。

 しかし、平安京の公家衆の、耳から入ってくる台詞を、現代の関東アクセン
トでやられると、なんだか、お尻の辺りがムズムズしてしまうのだ。
 先日見た回では、和歌を披露するシーンがあったのだが、これがなんと、関
東アクセントの、しかも「棒読みで語る」というシーンに仕立てられていて、
驚愕したぞ、わしゃ。
 これはもう、日本語と和歌の文化に対する暴挙であり、冒涜とも言える所業
だわ。
 和歌は、「歌」なんだから、そこは、きちんと歌わんとあかんでしょうが。

 時代劇で方言が使われるのは、幕末ものに圧倒的に多くて、「土佐弁の坂本
龍馬」「鹿児島弁の西郷隆盛」は、その双璧で、これに江戸っ子弁の新選組が
対する、という構図は、もはやおなじみだ。

 1980年代末に出版されるや、たちまちベストセラーとなった、津本陽『下天
は夢か』では、多分、これが初めてじゃなかったかと思うのだが、「尾張弁の
織田信長」が登場した。
 「たァけが、そら、おみゃアだぎゃァ」と喋る信長は、それまでの信長像と
違って、やたらとリアルに感じられた。

 これ以後、映画やドラマでも、信長や秀吉が尾張弁を喋るのが一般的になっ
ていった。

 先日ネットで、2019年公開の映画『決算! 忠臣蔵』(中村義洋・監督)を
見た。
 あの赤穂浪士の討ち入りを、それにかかる費用の捻出と「予算」という観点
で描いたのもユニークだが、堤真一演じる大石内蔵助以下、赤穂浪士たちのほ
ぼ全員が、台詞を関西弁で喋る、というユニークな演出が目を引いた。
 しかし、荒川良々演じる堀部安兵衛や、大名ゆえに江戸生まれで江戸育ちの
浅野内匠頭は、きっちりと関東弁、とメリハリもつけてある。

 この映画、松竹映画なのに、なぜか吉本興業が製作に参加していて、堤と
“ダブル主演”の岡村隆史以下、ほぼ「吉本オールスターキャスト」、なので
関西弁の台詞はごく当然、とも思えるが、江戸時代の赤穂の侍も、やはり関西
弁…というか、当然、播磨弁だったろうが…を喋っていたには相違なく、この
「忠臣蔵」、かなりリアルに感じられた。
 映画は全編、予算の捻出と決算に終始していて、肝心の討ち入りシーンが
「ない」という点でも、前代未聞の忠臣蔵映画だった。

 そう言えば、山田洋次監督の『たそがれ清兵衛』も、山形弁の台詞が、リア
ル感を増す効果を上げてましたっけね。

 ちなみに、司馬遼太郎の本で読んだのだけど、江戸時代、参勤交代で各地か
ら江戸に集まった侍たちは、他家の武士に対して、それぞれのお国言葉で喋り
かけても、到底通じない。
 そこで「共通語」として編み出されたのが、「書き言葉で喋る」という方法
だったんだとか。
 今に伝わる、「拙者」だの「さようしからば」「〇〇でござる」等々という、
いわゆる「武家言葉」は、地方出身者たちが、お互いの意思疎通を図るために
敢えて書き言葉で話していた、それが江戸における「侍言葉」として定着して
いった結果なんだそうだ。

 『決算! 忠臣蔵』は、一般的な関西弁で演じられていたのだけど、ふと、
これを、実際に今の赤穂あたりで使われている「播磨弁」でやったら、もっと
「ドスの利いた」忠臣蔵になったんじゃ…と、ふと思った。
 なにせ「播磨弁」、今や、あの河内弁や泉州弁を凌いで、「日本一ガラの悪
い方言」と認定されているのである。
 しかも、その播磨弁、神戸の垂水あたりから始まって、明石、加古川、高砂、
姫路、と西へ行くほどその「ガラの悪さ」というか荒っぽさは際立ってきて、
相生、赤穂あたりが「一番きつい」と言われているのだ。

 何年か前、自分は、姫路の網干あたりだったと思うのだけど、作業服姿の60
代と思しきおじさん二人の会話を、耳にした。

「おう! われ、どこ行っきょんど?」
「どこて、メシ行っきょんやないけ」
「今ごろメシかいや、どんならんの」
「じゃァっしゃ!ダボォ! おどれと違ごての、わしゃ忙しいんじゃ」
「ごうわくのォ、シバクぞわれェ、人をヒマ人みたいに言いくさって!」

 と、まあ、概略、こんな会話。
 おそらく他県人が聞いたら、この二人は喧嘩してるみたいに思えるだろうけ
ど、おじさん二人は、きわめてにこやかに仲良さげに、この会話を交わしてい
たのだった。
 あ、ちなみに「ダボ」は「どあほ」の最上級形、「ごうわく」は「むかつく」
の意です。

 映画でいえば、市川崑監督の『細雪』(1983年)もまた、四姉妹を、岸惠子、
佐久間良子、吉永小百合、古手川祐子、と4人が4人とも関東出身だったにか
かわらず、その大阪弁は、アクセントも完璧に仕上がっていた。
 この映画の場合は、谷崎の小説原稿の、大阪弁の台詞部分の校閲を担当して
いたという、松子未亡人(『細雪』の次女・幸子のモデルですね)が台詞校閲
をし、さらに女優陣に対しても、アクセント等、綿密に指導されていたらしい。

 NHK大河も、今からでも遅くはないから、そういう対応を、とった方がい
いんじゃないか…と老婆心の二月なのだった。


太郎吉野(たろう・よしの)
阪神タイガースお膝元在住。右投げ右打ち。趣味は途中下車、時々寝過ごし乗
り越し、最長不倒距離は三重県名張。
ちなみに「阪神タイガース」の「阪神」は、「兵庫県阪神地方」を指します。

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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149 野生動物の生態を知る

 大きな地震から一か月が過ぎ、まだまだ日常がもどってきていない様子です。
どうか、一日も早くあたたかくゆっくり過ごせる場所を取り戻せますように。


 今月最初にご紹介するのは、グラフィックノベルです。
 ベトナムの自然保護活動家チャン・グエンさんの自伝的物語。

 『ソリアを森へ マレーグマを救ったチャーンの物語』
 チャン・グエン 作 ジート・ズーン 絵 杉田七重 訳 鈴木出版

 A4横長の判型でソフトカバーの本。
 冒頭、見開きに描かれた森の様子は深い奥行きがあり、森の緑のさまざまな
濃淡さがかもしだす美しさには見惚れます。

 まず、主人公チャーンのフィールド・ノートが紹介され、どんな服装・持ち
物で森に入っていくのかが描かれ、マレーグマであるソリアが登場します。

 チャーンは、子どものころ、クマから胆汁を取り出しているのを目撃して以
来、自分はクマもほかの野生動物もひどい目にあわないよう、動物たちを守る
仕事をしようと、将来の目標を決めました。

 グラフィックノベルですので、クマが胆汁をとられている様子も描かれ、残
酷なできごとも視覚化されています。しかし、そのクマを助けようと自分の夢
を定め、まっすぐつきすすむチャーンの力強さもまた、こまかな表情まで描か
れることで、読者の心につよく届いてきます。

 野生動物を守るために、自分のすべきことを系統だててすすめていく姿は、
目標を達成するためのロールモデルをみているようです。必要な知識を得るた
めに、苦手な英語を習得するべく猛勉強をし、得意の絵を描くことでフィール
ドノートをつくり、野生動物のドキュメンタリー番組をみる、そして毎日運動
をして体力づくりにもいそしみます。すごいです。夢を定めたからこそのエネ
ルギーはかくも強いのかと圧倒されます。

 加えて毎年欠かさず野生動物保護センターのボランティアに受かるまで応募
しつづけ、「フリー・ザ・ベアーズ」のクマ救助センターでも働くようになる
のです。

 そこで出会ったのが、マレーグマのソリアです。
 チャーンはソリアを野生に戻すためにサポートする仕事につきました。

 野生動物が、野生で暮らすのはあたりまえですが、人間によって森から離さ
れ過酷な状況におかれてしまうと、弱ってしまい野生には戻れなくなってしま
うそうです。

 ソリアはまだ小さかったので、野生に戻せる可能性がありました。
 チャーンはどのように、野生に戻す道筋をつくっていくでしょうか。

 絵を描いたジート・ズーンは、本書で2023年カーネギー賞画家賞を受賞しま
した。熱帯雨林の濃厚な空気を感じるような絵は、緑、青、この一文字では表
現できない奥深さがあり、目を奪われます。物語とともに、このすばらしい表
現力で、野生に戻るとはどういうことなのかを伝えてくれます。

 そしてチャーンの情熱があってこそ、ソリアとの関係がつくれていることも、
言葉の端々からにじみ出ているのは、訳者である杉田七重さんの力量です。
 
 絵が物語を追うのを助けてくれる側面もあるからこそ、小さい子どもから、
大人まで読みごたえのあるものになっています。
 とっくに成人した娘にもすすめたところ、夢中になって読み、この本いい!
と熱量ある言葉がかえってきました。


 さて、子どもから大人まで楽しめる月刊誌としては「たくさんのふしぎ」も
おすすめです。入手もれしないよう、毎月チェックを欠かせません。

 最新刊の3月号「かっこいいピンクをさがしに」(なかむら るみ 文・絵)
は、刊行前にSNSで著者が書かれているのをみて、予約して到着を楽しみに
していました。

 ピンクはもともと好きな色なので、「かっこいい」ピンクを探すのに興味を
ひかれたのです。

 なかむらさんが本書をつくるきっかけとなったのは、新聞の投稿記事でした。
小学生の孫の男の子が選んだランドセルの色が濃いピンク色だったことが理解
できないという投稿でした。

 なかむらさんも同じ年頃の娘さんがいて、おばあさんの気持ちがわかるよう
な、でも、ピンクもいいじゃないと思う、自分のゆれ動く気持ちに気づかされ、
ピンクについて調べることにしたのです。

 ポップアートのピンクから、建築物、日本古来の着物の色からウガンダの小
学校では制服の色がピンクだということなど。なんていろいろあるのでしょう。

 単にピンク色のものを集めているだけではなく、たとえば、ウガンダの制服
がなぜピンクなのかも調べているので、知識欲を満たされます。
 この色に心を静める効果をもとめ、それを試すために、ある部屋の壁にピン
ク色が塗られていることも、不勉強ながら初めて知りました。

 読了後は、身の回りのかっこいいピンクさがしをしたくなります。
 付録のピンクポスターは、我が家のトイレに貼りました。
 家族からも好評です。


 最後にご紹介するのは、ピンクが印象的な表紙の絵本です。

 『きみが生きるいまのはなし』
 ジュリー・モースタッド作 横山和江 訳 文研出版

 時間ってなんだろうという哲学的な問いを、さまざまなものに置き換えて考
えます。

 時間は木なのかな。
 蜘蛛の巣なのかな。

 髪の毛ののびるのも時間の経過。

 時間そのものは見えないけれど、時間を視覚化するバリエーションを余韻を
感じる美しい絵で表現し、ピンクがいいアクセントになっています。

 ジュリー・モースタッドは、ここ数年続けて翻訳されている人気絵本作家で
私も大好きです。

 邦訳版は原書と違う絵が表紙になっていますが、インパクトは本書の方が、
手にとりたくなるオーラをもっているように感じました。
 https://juliemorstad.com/TIME-IS-A-FLOWER

 しめくくりもすてきなので、ぜひ読んでみてくださいね。

(林さかな)
https://1day1book.mmm.page/main

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■あとがき
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 最近、本ってなんだろう、出版ってなんだろうと改めて考えています。(あ)

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→ 『怪獣人間の手懐け方』箕輪厚介 クロスメディア・パブリッシング

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#164『竜笛嫋々』

 貴公、未だ覚えておられるか。
 本年が、辰年であることを。

 年の瀬、そろそろ賀状をと慌てる頃、はて来年は何年かと指を折り、ああ辰
年かと思うものの、覚えているのはせいぜい松の内。既に正月も下旬なれば、
忘れておっても無理はない。干支ももはや、儚いものよ。

 ともあれ、辰年。イヤー・オブ・ザ・ドラゴン……と、確かそんな映画もあ
ったが、音楽本書評子としては、龍に因んだ音楽がないかと頭を捻り、ぽんと
膝を打つ。

 竜笛。
 そう、確かそんな名の、雅楽で使われる楽器があった。

 そして、佐伯泰英に『竜笛嫋々』なる時代小説があった。

 佐伯泰英、当欄登場は実は2回目。前回取り上げたのはそのデビュー作で、
しかし、時代小説ではなく、全く畑違いのノンフィクションでござった。それ
もスペインで闘牛士を取材したもの。それが今回は時代小説。まぁ、どちらも
剣を振るうにしても、意外な取り合わせと普通は思う。かく言う書評子も、同
姓同名の別人かと思っておった。

 ノンフィクション作家としてデビューしたにもかかわらず、本はあまり売れ
ず、それではとフィクションに転じ、海外体験を活かして国際冒険小説を書い
た。ところが、その10年ほど後であれば、ハードボイルドや冒険小説が人気を
集めることになったのだが、ちと早すぎた70年代。
 これまた余り売れず、出版社から「ポルノか時代小説なら出してもいい」と
事実上の戦力外通告。そこで奮起し、初めて出した後者で遂に売れた。いまで
は人気作家となったといういきさつらしい。

 時代小説に転じてからは非常な多作で、中でも人気を集めているのが、「酔
いどれ小籐次留書」シリーズ。本書はその第八弾だが、もちろん、単独で読ん
でも十分楽しめることは言を待たぬ。

 舞台は江戸。
 長屋で刃物の研ぎ師として暮らす赤目小籐次は、齢五十。五尺の短躯ながら
剣豪にして、通り名の示すように無類の酒豪でもある。
 これが年甲斐もなく密かに想いを寄せる女性がおり、彼女の得意とする楽器
が竜笛という次第。

 さて、この女性が京都からやって来た名家の嫁にと所望される。しかし、本
能的に不審を抱き、小籐次に相手の身辺調査を頼むのが事の起こり。

 いろいろと探ってみれば、なるほど怪しい。京都の名家の裔という触れ込み
だが、周辺には奇怪な連中が跋扈。妖術を使うなど、黒い噂にも事欠かぬ。だ
が、小籐次が探索に時を費やす隙に、あろうことか当の女性がさらわれてしま
う。
 同時に小籐次も、公卿のような烏帽子の集団に度々襲われる。
 果たして敵の正体は?
 行方不明の女性の運命や如何に?

 そしてこの女性が嗜む竜笛の嫋々たる音色が、クライマックスで重要な役割
を果たす。

 それにしても、起伏に富んだ物語の面白さはもとより、暮から正月にかけて、
江戸庶民がいかに暮らしたかを丁寧に描いたその筆の運びの見事さよ。日本人
が日本人であることを思い出すこの季節に相応しい一書と言えるのではあるま
いか。

 小籐次は研ぎ師としてたつきを立てているが、日頃世話になっている店々や
長屋へ暮れの挨拶に回る。その中で、ごく自然にさまざまな商売の師走のせわ
しさが語られる。
 また、行く先々で酒を振る舞われ、食事をご馳走になるため、長屋住まいの
独り者である小籐次が、一度も自炊する場面がない。
 それだけ人と人との結びつきが温かく、細やかで、多分に理想化されてはい
るものの、素直にこちらも温かい気持ちになる。学生時代の友人が時代小説好
きで、「義理と人情が堪らない」と言っていたものだが、まさにその通り。
 まだ正月の内に、遠い江戸の同じ季節を味わい直しては如何?


佐伯泰英
『酔いどれ小籐次留書 竜笛嫋々』
平成19年9月15日 初版発行
平成20年1月31日 4版発行
幻冬舎文庫

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
本年もよろしくお願いたいします。

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『怪獣人間の手懐け方』箕輪厚介 クロスメディア・パブリッシング

 「怪獣」と付き合うことで有名な、幻冬舎の名物編集者の本である。何年か
前『死ぬこと以外はかすり傷』なんてタイトルの本を出していたが、同著に加
筆する形で『かすり傷も痛かった』なんて本を出すのだから面白い。

https://www.gentosha.co.jp/book/detail/9784344041677/

で、この本は、これまで彼が接してきた有能な人物・・・彼はそんな人を怪獣
と呼ぶのだが、その怪物相手の付きあい方マニュアルと言っていいだろう。

 本の惹句は、こうである。

・・・・・・・・・
「怪獣人間」とは、狂ったように目的だけを見て、成果を残していく人たちの
こと。
彼らは、凡人が積み重ねたプロセスなどはお構いなしに、革命を起こしていく。
「怪獣人間」と出会い、対峙し、仕事にすれば、あなたの人生は大きく変わる。
「怪獣人間」は、灼熱に燃える太陽みたいなものだ。
遠くにいれば、やさしく温かい存在だが、近づき過ぎると、焼き殺されてしま
う。

>>もしあなたに、そこに踏み込む勇気があるなら、この本を手に「怪獣人間」の
世界に飛び込んでいこう。人生が劇的に変わり、見たことのない景色が見れるは
ずだ。
・・・・・・・・・

 要するに平凡な自分達たちが、大きな仕事をしたいと思ったら、本当にすごい
人たちに近づき、一緒に仕事すればいい。しかしそういうすごい人(=怪獣)に
振り回されていてはダメ。だから付き合い方を知れという内容だ。


 著者が付き合っていた人たちは、堀江貴文や見城徹といった人から井川意高や
ガーシーまで、エリートから犯罪者まで多種多彩。共通点は怪獣であることだけ
だ。そりゃ興味がわく。

 読んでみて思うのは、読者対象は昭和生まれの人間ではないのだろう。なぜな
ら、昭和世代が読めば、これって昭和の話じゃないかと思い出すことが、かなり
たくさん書かれている。

 1番エキサイティングなところに1番金が集まるとか、ハイレベルの中に自分
を置けば成長するとか、相手の事をとことん考えるとか、むんむんと漂う昭和臭
が特徴だ。

 これが結構間違ってない(笑)個人的な体験を書いて恐縮だが、私は大学時代
の卓球でこれを思い知った。高校まではクラスで卓球はトップクラスに下手だっ
たのだが、大学に行ったら下手な卓球部出身を負かすほど私は卓球が上手かった。
なぜか?インターハイでベスト8か4だったかに入った奴が高校のクラスメイト
だったからだ。こいつがクラス全体のレベルを引き上げていたから、私のような
クラス1の下手くそでも高校卓球部員と勝負できるくらいまでレベルが引き上げ
られていたわけだ。

 そんな感じで、昭和に若者だった者が読むと、結構な既視感がある。そして、
そんなことは著者も編集者も承知だろう。それをなぜ、今、このタイミングで出
したのか?

 もちろん売れるからだろう。しかしもう一つ、私の勝手な思い込みかも知れな
いが、平成の若者たちが、あまりに昭和を学ばないことに対して、問題意識があ
ったのではないか?

 近年の若者は、学生時代からキャリアプランを立てている。大学卒業して就職
する会社に一生勤める気で入ったりしない。その会社で得られるスキルを得ると、
それを武器にして次の会社に移って活躍、そして2社目の会社でのスキルを得た
らまた三社目といったスキルアップの会社員人生を理想だと思っているらしい。
そんな計画を、学生のうちから立てている。もちろん究極の目的は、起業だろう。
・・・昭和のおっさんは、そんなにしっかりと人生計画考えなかったぞw

 ま、それはともかく、そんなことを企業の人事担当者も当然知っている。企業
の人事担当としては、一生勤めてくれる優秀な社員が欲しいのだけど、そんな人
はいないものとしてあきらめている。

 そんなわけで理想通りの採用はできないけども、縁があって採用した若者が自
社を辞めても活躍してくれることくらいは願っている人事担当者は少なくない。

 そんな企業の人事担当者が心配しているのは、平成の若者たちが昭和のノウハ
ウに耳を傾けようとしないことだ。平成の時代に昭和のおやじたちが活躍できな
かったのだから、無視されるのも当然だろう。

 でもね、でもね、そんなおやじたちでも、これだけは伝えたいってことがある
わけ。その多くが、この本に書いてある「怪獣」との付き合い方なんだ。時代の
最先端を行ってると思われている箕輪さん、実は昭和の古風な仕事をしているの
よ・・・・

 箕輪氏、スキャンダルなどもあって今は全盛期であるとは言えないかもだけど
も、だからと言ってこの本を読む価値が無いとは思わない。アラカン以上の年齢
の人は読まなくてもいいかもだけど、20代の人は読んどいた方がいいと思う。古
くさい昭和は、少なくとも箕輪氏が接する、最先端の世界では生き残っているの
だから。

(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴三十うん年)

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■「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
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2023年は徳川家康の推し活読書の年でした

『河内雑兵心得 足軽小頭仁義』(井原忠政・双葉社文庫)

 おばちゃま、昨年は“推し”の大河ドラマ主演という最初で最後(たぶん)
の大仕事でとっても忙しかった(まさかの所属事務所問題も起きたので精神的
にもざわついた)。

 予想外だったのは、推し活の途中で徳川家康が気になって気になって家康関
連本を買い込んで読んだということ。それは次のような本です。

『家康江戸を建てる』(門井慶喜)/『覇王の家』(司馬遼太郎)/『家康』
(一)安部龍太郎/『徳川家康の最新研究』(黒田基樹)/『徳川家の家紋はな
ぜ三つ葉葵なのか』(稲垣栄洋)/『落とした財布が世界で一番もどってくる
日本にしたのは徳川です』(磯田道史)/『家康の誤算』(同)と、ほかにフリ
マアプリで「匿名配送」して今はどこかでどなたかが読んでいるであろう数冊。

 おばちゃま、まさか今になって司馬遼太郎をまた読むことになるとは思いま
せんでした。(司馬遼太郎は「おもう」「ひと」「ながれる」のように文字を
開くね〜。ひらがなを多用して読みやすくして、やさしい子守唄のようにまた
は催眠術、「ハルメンの笛吹男」のように人を自分の世界に誘い込むね〜。)

 そしてたどり着いたのが、『河内雑兵心得 足軽小頭仁義』(井原忠政)シ
リーズ。これは誤って人を死なせてしまった知多半島の貧乏百姓の息子が村を
出て、ふとしたことから三河の弱小大名(徳川家康)の家臣(夏目広次)に仕
えていろんな戦いをして少しずつ出世していくある種のサラリーマン小説です。
一人の雑兵から見た戦国時代が描かれていてかなりおもしろい。

 どの本を読んでも戦の詳細は分かっても家康自身の人となりがわからなかっ
たのですが、この小説を読んで、こんな感じだったのかもなあと思えたのが収
獲。

 最初に家康が登場する場面(1冊読んで最後の最後にやっと出てくる。そり
ゃ足軽の話なので上の方の人はなかなか出てこない)では、

「こら平八!」
背後から、甲高い声が若武者を制した。
見れば、十騎ほどの騎馬武者を引き連れた、これまた若い武士だ。
痩せて神経質そうな男だが、目には光があり、口元は引き締まっている。(略)
この草深い三河の地で、国人領主より格上の武将がいるとすれば――松平家康
しかおるまい。

 天下を取るには大胆にして細かい部分もないがしろにしない気質が必要かと
思うので、「神経質そうで痩せている」のはなんか分かります。ここでやっと
家康本人に出会えた感がありました。

 そして戦場では勝敗もそうですけど、家臣のうちの誰を先峰にして戦功を立
てさせるかのバランスを気にしていることが描かれています。敵よりも味方の
家臣のプライドを損なわないように苦慮している様から組織におけるリーダー
には何が必要なのかが読みとれて、おもしろいし、天下を取った理由がなんか
わかる!

 ちなみにさきほどの冒頭の「こら平八!」の平八とは徳川四天王の一人、本
多忠勝のことです。作中では「馬鹿八」と呼ばれ、「どうやらあまり頭の回転
が速いほうではないらしい」と足軽にまで言われる人物ですがこの平八も魅力
的に描かれています。

 ここでカムアウトすると、シリーズ全部読んだわけではなく、これから伊賀
越えってところでストップしていますが、最後まで読むのがとても楽しみです。

 歴史は「勝てば官軍」。なので、今、豊臣秀頼がどんな人物でどんな発言を
したかはまったく残っていないそうです。全国民が徳川に忖度した結果ですね。
同じように江戸幕府瓦解後、幕藩体制が日本に残した弊害が言われるようにな
りました。曰く、身分制により人の活力が失われた。鎖国によりグローバル化
が遅れた。今の日本人がチマチマと細かくおおらかでないのは徳川幕府が作っ
た体制のせい・・・などなど。まあ薩長主導の政治になってから戦争ばっかり
だったけどねえ。

 でも、昨年、松平発祥の地・三河安城周辺に行ったのですが、この地はもの
作りの地域で、確かに派手さおしゃれさはないのですが、ありとあらゆる工場
があり、そこで1ミリ1ミクロン単位で工業製品が生まれています。そしてそ
れを代表するトヨタ自動車も三河から生まれたのは単なる偶然ではないように
思います。

 家康が作った江戸は今も首都で、この街は膨張し過ぎてこわいぐらいですが
(推しの個展を見るために先日、六本木に行ったのですが、東京タワーが周囲
のタワマンに埋もれてたのにはびっくり。江戸=東京も次の段階に来てるのか
もしれません)。

 あと、武士の世界でもモノを言うのは官位だったり、戦に明け暮れている大
名にも書物や能、歌などの教養が必要だったりして王朝文化は侮れないと感じ
たり、勉強することがいっぱいあると感じた1年間でした。

 そしておばちゃまが次に読む予定は「小栗上野介」に関する本です。「勝て
ば官軍」の中で消し去られた幕府の優秀な官僚は徳川安城譜代(徳川幕府の中
でも一番古い、徳川家に古くから仕えていた家)。痺れます!

大友舞子(おおとも・まいこ)
昭和20年代生まれのフリー編集&ライター。関東生まれで関西在住。

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・三上敬 絵/稲田和浩 監修『ゼロから分かる!マンガ落語入門』世界文化社
 https://www.sekaibunka.com/book/exec/cs/21221.html

・格非 著/関根謙訳『桃源郷の幻』アストラハウス
 https://astrahouse.co.jp/2021/11/1008/

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
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・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

 〒104-0061 東京都中央区銀座6-6-1 銀座風月堂ビル5階
       一般社団法人日本支援対話学会内 支援対話図書館書評献本係

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンや楽天などのオンライン
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 は当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願いしま
 す。(あまりにも短いものは書評とは呼べませんので、文字数の条件を設け
 ました。書評は500字以上でお願い致します。)

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
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 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 年末からの体調不良は熱なしの喉の不調ですが、なにげにまだ続いています。
喋る量を減らして文章を書く活動を増やしていますが、なにげにこっちの方が
生産性高くね?と思ったりもしています。(あ)

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[本]のメルマガ vol.884

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■CONTENTS------------------------------------------------------------

★トピックス
→ トピックスをお寄せください

★味覚の想像力−本の中の食物 / 高山あつひこ
→ その88 「変身したら何食べる?」その1.竜

★ホンの小さな出来事に / 原口aguni
→ 土用期間について思ったこと

★声のはじまり / 忘れっぽい天使
→ 今回はお休みです

★「[本]マガ★著者インタビュー」
→ インタビュー先、募集中です!

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■トピックス
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■トピックスをお寄せください
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 出版社の皆様、あるいは出版業界の皆様より、出版関係に関わるトピックス
(イベント、セミナー、サイン会、シンポジウム、雑誌創刊、新シリーズ刊行
など)の情報を、広く募集しております。

 情報の提供は、5日号編集同人「aguni」hon@aguni.com まで。

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■味覚の想像力−本の中の食物 / 高山あつひこ
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その88 「変身したら何食べる?」その1.竜

 今年の干支にちなんで、龍についていろいろ考えていたのだが、東洋の「龍」
はとてもありがたい神的な存在だけれど、西洋の「竜」というのはそうでもな
いような気がする。竜というのは、なんとなく恐竜と入り交じっているような、
は虫類の進化形のような動物のイメージがある。若い女を生け贄に欲しがって、
騎士にやっつけられるようなところなどダメダメな感じがある。もちろん日本
の八岐大蛇なんていうのは、若い女の生け贄を欲しがるし、酒好きのくせに酒
に弱いとかダメダメな感じがあるから、これも下等な竜なのだろう。

 そんなことを思っていたら、物語の中で自分が竜になったら、何を食べたら
いいのだろうかとつい考えてしまった。人身御供をかじるわけにもいかないし、
竜は本当に人間しか食べないんだったけ? そこで、少々記憶をたどっている
と、ありました!変身して竜になってものを食べる場面が。それは、ナルニア
国のあの話『朝びらき丸、東の海へ』に出てくる竜。この物語は『ライオンと
魔女』で始まるペペンシー兄妹四人が主人公で、ナルニア国という不思議な世
界に行く物語なのだが、この話はそのシリーズの三番目に当たり、兄妹のうち
末の二人のエドモンドとルーシィと、いとこのユースチスがナルニア国で冒険
する物語だ。実は私は、この話が少々苦手だ。最初はいい。いとこで不平屋の
ユースチスの家に泊まりに来た二人が、壁に掛かっているナルニアの船にそっ
くりな船が海に浮かんでいる絵を見るうちに絵の中に、引き込まれていく。海
から助けられて乗った船が、偶然カスピアン王の船で、彼は冒険に出かけてい
るところだったなんて、実に楽しそうじゃないか! でもその旅が、昔王位を
簒奪した叔父が追い払った七人の騎士を探すための旅だというのが妙に楽しく
ないのだ。この旅の最終目的とか、行方不明の七人の運命とかが、何かすべて
暗くて高揚感がないのだ。彼らが何でこんな目に遭ったのかが、わからなくて
気持ちが悪いのだ。

 さて、船に乗ってからずーっと、不満を言い続け、すべてを悪く取るいとこ
のユースチス。この情けない卑怯者で嘘つきの男の子は、全然ファンタジー世
界になじめないでいる。彼に奇妙な罰が下るのは、まあ当然という感じなのだ
が、それにしても相当重い罰に思える。それはある日、彼がいきなり竜になっ
てしまうという罰なのだ。この本を読んだ子供の頃から、もし自分がファンタ
ジー世界に行ってなじめず、気がついたら竜になるという罰を下されたらたま
らないと思い続けている。けれど、この物語で一番面白くナルニアらしいのは、
この竜に変身するところでもあるのだ。

 ユースチスは、嵐になってボロボロになった船がたどり着いた島で、修理を
しようと話し合うみんなから抜け出して一人山に登って行ってしまう。そして、
そこで年老いた竜が死んで行くところに行き会うのだ。大雨になり仕方なく竜
の出てきた洞穴に入ると、そこは竜が集めた宝の山!喜んだユースチスは、ポ
ケットにダイヤを詰め、金の腕輪をはめ、金貨を敷き詰めた上で眠り込んでし
まう。いや、私だってそんな宝の山に出会ったら同じことをするだろう。とこ
ろが、ユースチスはその罰に? というかそのせいで竜になってしまうのだ。
目が覚めるとすっかり竜になっていたのだ。そうなったら、何を食べて生きてい
くのだろう?ユースチスが何をしたかというと、まず水を飲み、次に死んだ竜
を食べたのだ。竜ほど死んだ竜の肉を好きなものはいないのだと著者は言うの
だ。死んだ竜の肉は、一体どんな味だったのだろう? 一度竜の肉とはどんな
物だろうと調べたことがあるのだが、酢に漬けると七色に変わるとかいろんな
説があるのだが、味については書かれた物が見つからなかった。けれど、トー
ルキンの『農夫ジャイルズの冒険』では、昔は宮廷ではクリスマスに竜の尾を
食べたが、そうそう毎年竜も出てこないし騎士も捕まえに行かないので、今で
は「まがいものの竜の尻尾」というお菓子を出すとあった。「堅い粉砂糖でう
ろこをつけたカステラとアーモンドでできたお菓子」とあるから、そんな風に
甘い味なのかもしれない。もし、竜の肉が甘いなら、求肥のようなお菓子の方
が、なんとなくイメージに合う気がするけれど、どうだろう。

 とにかく、ユースチスはその後みんなのところに戻り、なんとか自分である
ことをわかってもらおうとする。けれど、竜に驚いたみんなが一斉に剣を抜い
て立ち向かおうとするので怖くて泣いてしまう。そんな情けない竜の様子を見
て、みんなが怖がらずにその正体についていろいろ質問をしてくれたおかげで、
自分がユースチスだと、わかってもらえたのだ。

 それからは心を入れ替えていいやつになった竜のユースチスは、みんなのた
めに一生懸命働いた。折れたマストの代わりになるような大きな松の木を運ん
できたり、野生の豚や山羊を殺して持ってきたりするのだ。でも、竜はみんな
と一緒に焼いたその肉を食べたりはできない。竜が食べられるのは、血も滴る
豚や山羊の肉なのだ。困るなあ、私は普段からレアのステーキを食べられない
からなあ等と思ってしまい、ここで想像力の翼がはたと止まるのだ。

 物語では、一人島に残る覚悟を決めた竜のユースチスの前に、奇跡のように
アスランが現れ、ユースチスは何重にもかぶった竜の皮を裂いてもらって元に
戻り、みんなと共に船に乗って島に別れを告げるのだ……。

 夢の中で、あるいは物語の中で変身して、いろいろな動物や、不思議な生き
物になってみたいと誰もが思うだろう。だが、そこで何を食べるかが、私にと
っては大問題なのだ。大抵私は物語を読みながら主人公の気持ちになってその
変身に付き合うのだが、竜になるのは少々向かいないなと思っている。

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『朝びらき丸東の空へ』 C.S.ルイス著 瀬田貞二訳 岩波少年文庫
『農夫ジャイルズの冒険』J.R.R.トールキン著 吉田新一訳 
『トールキン小品集』評論社
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高山あつひこ:好きなものは、幻想文学と本の中に書かれている食物。なので、
幻想文学食物派と名乗っています。
著書に『みちのく怪談コンテスト傑作選 2011』『てのひら怪談庚寅』他

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■ホンの小さな出来事に / 原口aguni
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土用期間について思ったこと

 2024年1月15日から土用期間に入ります。明けは2月4日。つまりは節分で
旧暦の新年ですね。今回は、この土用期間について、思ったことがありました
ので記録しておきます。

 もともと土用期間というのは日本で発達した暦法の九星気学の考え方に基づ
いています。なんで九星気学が日本だけで発達したかというと、日本には四季
があるから。そしてこの土用期間というのは、とても四季の考え方と結びつき
やすい考え方です。

 そもそも「土用」の「土」というのは、中国の五行思想から来ています。木
火土金水の五行は、日本では曜日の名前になるほど溶け込んでいますが、実は
季節もこの五行に分けられていて、春=木、夏=火、秋=金、冬=水 と当てはめ、
余った「土」を季節の変わり目に割り当て「土用」と呼んだところから始まっ
ています。つまり、土用は年4回あるのです。

 ですから、無用に土用を特殊な期間として怖れる必要はなく、ひとつの季節
と考えることができるのです。

 でも、土用期間には、してはいけないとされていることもたくさんあります。

・大きな決断・契約
・引っ越し、転職
・結婚・離婚
・旅行

などなど。これはなんでか、と言いますと、単純に、季節の変わり目、だから
ですね。

 日本人なら大抵、感じているとは思うのですが、「暑さ寒さも彼岸まで」と
いう言葉はありつつも、季節というのは〇月〇日からすぱっと切り替わったり
はしません。そんなデジタルなものではなく、あくまでもアナログに、じわじ
わ、じわりと変わっていく。

 例えば、今回の土用は冬から春への切り替わりの土用なわけですが、冬と春
って全然、違う季節じゃないですか。これがじわじわと切り替わっていくとき
に、何か大きな判断をするのは危険だ、という考えに基づいているのではない
かと思われます。

 例えば、服を買うのだって、冬に欲しい服と春に欲しい服は全然違います。
でも、切り替わりの時期にはどっちを買うのが正解なのか、意思決定に迷う、
ということなのです。

 西洋の思想では、人間にとって自然は脅威であり、克服して屈服すべき対象
ですから、人も自然の影響を受けないように石の壁を築き、その中で生きよう
とします。しかし東洋の思想では、人は天の気の影響も地の気の影響も受ける
存在。この土用期間は、天の気、地の気も切り替わりますから、人もやや不安
と言いますか、不安定になる、という考え方になっているのです。

 では、土用期間は悪いものなのか?
 いえいえ、そんなことはないでしょう。

 大きな意思決定をしない方がいい期間、というのは、逆に、いろいろ試行錯
誤するのに向いている期間とも言えます。ですから、これまでの人生でどこか
壁にぶち当たっていたり、出口の見えない迷路に迷い込んでしまったように感
じていた人は、むしろ、この期間があることがチャンスかもしれません。この
時期は浮気とか不倫とかも増えると言います。別れたい彼氏とかが居る場合に
は、彼氏が浮気して縁を切る、なんてことにはチャンスの時期かもしれません。

 あるいはメンテナンスの時期、と捉えることもプラスかもしれません。大き
な意思決定というのは外の世界に目を向けることですが、そこは現在は不安定
なので、むしろ、自分とか自分の身の回りに目を向け、季節の変化に備える、
という過ごし方が、様々な方が推奨している過ごし方のようにも思えます。

 いろいろ余計なことも書きましたが、土用期間をむやみに恐れるのではなく、
季節の変化を感じながら、自分をメンテナンスしたり、新しい自分の可能性を
探ったりして、プラスの意識で過ごせば、きっと良い期間になるのではないか
な、と思ったので、メモとして書かせていただきました。

note
https://note.com/bizknowledge/n/n8109936bc81d

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■「[本]マガ★著者インタビュー」:
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 メールにて、インタビューを受けていただける著者の方、募集中です。
 【著者インタビュー希望】と表題の上、
 下記のアドレスまでお願い致します。
 5日号編集同人「aguni」まで gucci@honmaga.net

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■あとがき
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 配信、またまた遅くなりました。本年もよろしくお願い致します。(あ)

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おり、広告は随時募集中です。詳細はメールにて編集同人までお尋ね下さい。
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[書評]のメルマガ vol.786

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■■ [書評]のメルマガ                2024.01.10.発行
■■                              vol.786
■■ mailmagazine of book reviews         [ご自愛ください 号]
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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<167>大城小蟹、「ジャケ買い」の僥倖

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第158回 政治小説&陰謀小説・・・現実小説?

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→148 おはなしをとどける

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義 〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<167>大城小蟹、「ジャケ買い」の僥倖

 皆さん、あけましておめでとうございます…なのだけど、元旦早々に能登半
島で大地震が発生したというニュースに驚愕してるうちに、翌2日には、羽田
空港で飛行機同士の衝突炎上事故と、立て続けに大事件が勃発し、お屠蘇気分
に浸る間もなく、波乱万丈の年明けとなった2024年。
 地震と津波の被災地の皆さんには、一日も早く安寧と安心を取り戻せますよ
う、お祈りいたします。

 そんな年明けになるとは思いもしなかった年末、ふと書店を覗くと、平台に
積まれたとある漫画本が目についた。
 『うみべのストーブ』というタイトルが、まず目を引いた。
 作者は、大白小蟹…「たいはく? おおしろ? こがに?」名前の読み方も
わからないその作家のことは、全然知らなかった。
 しかし、初めて見る作家だけど、表紙のイラストも、なんだかいい感じだ。
 中身は…残念ながらシュリンクされているので、内容は確認できない。
 いつもなら、シュリンクを外してもらって中を確認するのだが、なんだかこ
の漫画は、すごく好みに合いそうな、そんな気がして、中は確認せず、そのま
まレジに持って行った。

 買った書店は京都で、帰りの電車で早速読み始めたのだが、この“ジャケ買
い”は、大正解だった。
 読み切り短編集で、表題作の『うみべのストーブ』が「第一話」なのだけど、
いきなり、やられてしまったのだ。

 慌てて奥付を見ると、なんとこの本は2022年12月が初版で、わしが買ったも
のは2023年12月の「第4刷」ではないか。
 しかも初出は、この欄でも度々取り上げてきたwebマガジンの「トーチ」だ
という。
 人に「面白いよ」と薦めながら、自分自身ではここしばらく「トーチ」をチ
ェックしていなかった不明を、激しく恥じた。
 ちなみに、その奥付で、作者の名前の読みは「おおしろ・こがに」だと分か
った。

 表題作でもある『うみべのストーブ』は、とても不器用な男の子の失恋譚。
 「スミオくん」は、一緒に住んでいた彼女のことがとても好きでたまらなか
ったのだけど、無口で口下手なスミオくんは、自分の「好き」を彼女にうまく
伝えられず、彼女は、そんなスミオくんが、とうとうわからなくて、不安にな
って、出て行ってしまう。
 彼女が出ていってからというもの、部屋で泣き暮らしていたスミオくんに声
をかけたのは、彼女と二人の生活を見守ってきた電気ストーブだった。
 ストーブは、毎日毎日泣いてばかりのスミオくんを見るに見かねて、とうと
う声をかけてしまったのだ。ストーブもまた、彼女のことが好きで、彼女がい
なくなってしまったのは、ストーブもまた悲しかったのだ。

 突然人語を喋り出したストーブに驚愕するスミオくんだが、ストーブの提案
で、彼女が以前行きたがっていた冬の海へ、彼女を誘って行くことにする。
 彼女にLINEを送り、ストーブと二人、冬の海へ行き、彼女が来るのを待ち続
ける…のだが、結局、翌朝になっても彼女は来ず、スミオくんのかたわらで、
電源がないにもかかわらず、なぜか点火したストーブが、懸命にスミオくんを
温めたにかかわらず、スミオくんは風邪をひいてしまう。

 と、概略こういうお話なのだが、これが、沁みるしみる、もうなんとも言え
ず沁みるのだ。

 2話目の、トラックドライバーの女性が、雪道で出会った雪女の「ユキちゃ
ん」と仲良くなって、夏に冷蔵車に乗せて、花火を見に連れてってあげる話も、
「さらり」とした読後感が、とてもいい。

 これら、全7話が収録されていて、大半は「トーチ」に所載されたものだが、
後半の2話は、著者が自費出版したものと、ツイッター(現X)に掲載したも
のだそうだ。
 表題作『うみべのストーブ』こそ男性主人公だが、他はすべて女性が主人公
の物語だ。
 なにより、この彼女たちが、すごく「ナマ」で等身大なのが、いい。
 そこには、確実に「生活」があって、過剰でない感情があり、日本のどこか
に、こんな風に毎日を過ごしている女たちが、いるに違いない…いや、いて欲
しい、という思いを抱かせる、七つの物語なのだった。

 調べると、『うみべのストーブ』は、大白小蟹、初の単行本で、この本が注
目されたのをきっかけに、最近はウェブマガジンの「SINRA」と「路草」で、
新しい連載を始めたらしい。
 「SINRA」連載の『周回するわたしたち』は、二人の女性それぞれの過去と
現在を追う物語で、現在2回まで連載が進んでいる。

 「路草」の『みどりちゃんあのね』は、沖縄出身の作者自身の少女時代を題
材にしたもののようで、「みどりちゃん」は、主人公「静」の叔母で、東京住
まい。
 この叔母が、いきなり沖縄へやって来ては、旧弊な封建的家風に縛られてい
た靜の家族に新風を吹き込む、とても痛快な物語。

 いずれもこれからが楽しみな連載だ。
 前々回紹介した「おぷうのきょうだい」とともに、「追っかけリスト」に
「大白小蟹」を追加した昨年暮れなのだった。

 ところで、単行本『うみべのストーブ』には、各篇の最終ページの後ろに1
ページをとって、ここに作者自作の短歌が一首ずつ挿入されている。

 『雪を抱く』に添えられた

<ダ、ダ、ダ、ダ、ダ、はだかのからだ抱きしめてセンター街走る女たち>

 というのと、『海の底から』の

<平凡でおもしろい人生今日はイルカにトスされたような日だ>

 というのが、とても気にいった。


太郎吉野(たろう・よしの)
阪神タイガースお膝元在住。右投げ右打ち。趣味は途中下車、時々寝過ごし乗
り越し、最長不倒距離は三重県名張。
ちなみに「阪神タイガース」の「阪神」は、「兵庫県阪神地方」を指します。

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第158回 政治小説&陰謀小説・・・現実小説?

 数カ月前に島田雅彦氏の『パンとサーカス』を紹介した。
 2024年幕開けの今月号は、同じようなジャンルの小説を紹介したい。

 1年半前、2022年7月に奈良県で安倍元首相が背後から銃で撃たれ死亡した
事件があった。このテロは世間を震撼させ、また政界の奥深くまで根を生やし
ていた統一教会問題を一気に表面化させた。山上という犯人は元自衛官で、統
一教会信者の母親のせいで一家がばらばらになった、ということで安倍を襲撃
したと供述しているが、彼の単独犯なのか、彼の背後にもっと大きな組織が介
在しているのか、よくわからない。

 今回紹介するのは、この事件をモチーフにした小説である。

『小説・日本の長い一日』
(本郷矢吹 著)(ART NEXT)(2023年3月22日初版)

 著者の本郷矢吹氏は本書に紹介されている経歴によると警察官だったようで
ある。警視庁や神奈川県警ではない、外事公安担当の警察官として県警本部の
外事課に長く在籍していたそうである。そんな経歴の持ち主が警察や諜報機関
の内幕を描写する小説を書いた。この作品が本郷矢吹氏のデビュー作である。

 初めに云っておくが、文章が洗練されておらず、読みにくい。したがってす
らすらと読むことができず、結果としておもしろくない。島田雅彦氏の『パン
とサーカス』と雲泥の差である。ストーリー展開も稚拙さは否めず、文章中の
主語が何なのか、誰なのか、またその発言の主は誰なのかわからなくなる場面
がたびたびある。職業としての作家が書いた小説(パンとサーカス)は素晴ら
しい完成度であるが、本作はかなりレベルが低い。同じモチーフで島田雅彦氏
が書いたら絶対にベストセラーになるであろう。

 ではなぜ、この駄作と云っていい作品を紹介するといえば、この作品には著
者の考えがしっかり書き込まれており、そこを読者は受け止めた方がいい、と
考えるからである。

 著者の考え、著者が本作を書いた意図はなにか、と云えば、あとがきに紹介
されているとおり、“自分の頭で考える”ということに尽きる。80年前、日本
は政府とメディアにより負けることが分かっている戦をしていた。時の政府と
一心同体だったメディアにより、国民は戦争に巻き込まれ、結果として、数知
れないほどの悲劇が起こった。政府が主導して、メディアを使って情報を操作
し、国民を洗脳して戦争へと突き進み、日本は自滅した。一番悪いのは政府に
間違いはないが、それを助長しお先棒を担いだ報道機関の責任も重大である。
しかしながら、もっともいけないのは、当時の国民一人ひとりなのだ。つまり
誰も“自分の頭で考え”ておらず、報道と発表を鵜呑みにしていたから、あの
戦争があった、ということである。また、戦後も同じように情報操作と洗脳に
より、日本は米国の半植民地となっている。日米安保条約が日本国憲法より上
位の法規になっていることがまさにその証左であろう。かように、戦前は政府
により、戦後は米国により、国民の頭の中は操作され、洗脳を受けている、と
いうことだ。・・・・・・これが本書の著者の意見であるが、執筆子も首肯す
る処は大である。洗脳云々という文言はともかく、“自分の頭で考える”とい
うことはとても大事だと思っているからだ。したがって、執筆子は本書につい
て、一人ひとりが自分でしっかり考えて行動しよう、ということを啓蒙する小
説だと判断した。

 そういうわけなので、多少拙くても我慢して最後まで読むことを勧める。例
えば、本文の中にこんな一節がある。主人公が自宅のPCでキーワードを入力
して検索してみる場面。

 「山田(注:主人公)は改めてSNSの情報量に驚かされたが、結局は自分
に情報がなければ、そして知識がなければ「陰謀論」にしかならないことに気
が付いた。」

 そこにある有象無象の情報を鵜呑みにするのではなく、自分の頭で考えた情
報収集と自分の頭で考えた分析と自分の頭で考えた判断が絶対に必要なのだ。

 さて、本書について。冒頭で元総理が襲撃され死亡する。犯人は元自衛官。
そして宗教法人の献金問題も絡みつき・・・。という実際にこの国で2022年に
起きたことをなぞるように展開していく。犯人の元自衛官は留置中に自殺して
しまい、この元自衛官が単独で行ったのか、それとも組織が関係しているのか、
調べられなくなってしまう。すべての証拠は単独犯を差しているが、大きな組
織が動いているという状況証拠もあり、警察庁と防衛省に在籍しているふたり
の主人公は、相談しながら、巨大な組織に立ち向かうべく、日本にも新たな組
織が必要である、ということで一致し、その新組織の設立のために仲間を増や
しながら奮闘する、という物語。ここでいう既存の巨大な組織とは、本書では
“3文字”の組織ということで、表現されているが、つまりは米国のCIAを
指している。日本での新組織の設立とは、現在日本にはないいわゆる諜報組織
(JCIA)を作ろうということだ。既得権益を守ろうとする役所や米国を相
手にたいへんな努力をしながら、話は進んでいく。

 日本にも諜報機関が必要かどうかは、判断が分かれるところであろう。本書
の著者は明解に、日本にも諜報機関が必要だ、という考えで本書を執筆したわ
けだ。

 なぜ、諜報機関が必要かと云えば、日本の国益のためにはたとえ同盟国であ
っても同盟国の内部を調べなくてはならないが、現在の日本にはそれをする組
織がない、ということのようだ。そういうことを承知して本書を読み進めれば、
本書は意外に面白い。

 問題意識のある方には、ぜひ一読を勧めたい。


多呂さ(能登半島での出来事には心が痛みます。心は被災地の皆さんと一緒で
す。ご自愛ください。)

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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148 おはなしをとどける

 年があらたまりました。
 本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 いつもと同じように寝て起きてはじまるその日に、大きなできごとがおき、
心おちつかなくなっていることと思います。みなさまが深く呼吸をしてあたた
かく過ごせますよう。いつもの日常が早く戻りますように。

 そんな折、小野和子さんを紹介するテレビ番組をみました。
 小野和子さんは半世紀以上、東北の村々で民話をあつめてこられた民話採訪
者です。

 村の方々の語りを聴いていると、むしょうに民話を読みたくなり、小野和子
さんの民話集をさがしました。

『みちのく民話の深い森:古老の語りと小野和子のあと語り』で、民話につい
てこう書かれています。

 (引用ここから)

 わたしたちの先祖が年月かけて生み出し、育ててきた口伝えの物語、それが
民話です。
 作者もなく、いつ生まれたのかもわかりません。けれども、山の村や海辺の
町で、たくさんの人の口をとおして、ずっと語り継がれてきました。人々の喜
びや悲しみ、慰めや苦悩などを、まるでとろ火で煮詰めるようにし味付けされ
た話たちの群れなのです。

 (引用ここまで)

 本にはよく「あとがき」がありますけれど、小野さんは、民話の周辺を彩る
エピソードを「あと語り」と名づけ、本書では、ひとつの民話のあとに、その
「あと語り」を入れる構成になっています。

「のんびり卵」は、のんびりやの兄ちゃんが縁側で昼寝しているときに、風が
吹いて、着てるものもぜんぶたなびいて、だいじなチンチンコまで出してしま
い、あろうことか、玉がぽたぽた縁の下におとしてしまうのです。
 母ちゃんがニワトリの卵とりしたときに、縁の下に見かけない卵を2つ見つ
けます。えらく黒いその卵は、ふつうの卵より何日もかかって真っ黒なヒヨコ
がでてきたそうです。チンチンチンとしか鳴かないヒヨコは、練習してようや
く「グーグリフ グーグリフ」と鳴くようになり、母ちゃんはびっくり。
 まわりのニワトリがコケコッコーと鳴けるようになったとき、黒ドリ二羽は
なんと鳴いたでしょう。

 グリフの意味をご存じの方は笑いが出るでしょうか。
 私は最初にわからず、へぇとなってしまいました。

 この話を語ってくださった方は、自分のじいちゃんから、毎夜のように昔話
を語ってもらっていたそうです。「のんびり卵」は、小学校にあがって、はじ
めて作文の宿題がでた時、「作文」がなにかをわからず、「のんびり卵」の話
を書き、それを前に出て発表したところ、先生が困った顔をしたそうです。

 小野さんはこう「あと語り」に書かれています。

 (引用ここから)

 小便臭い民話――なるほど、そういう話ならたくさんあるし、そういう話の
妙味ということでいえば、日本民話の独断場といってよいかもしれません。

 (引用ここまで)

 そして、たとえ話を教えてくれます。
 なんにもなくなり、明日は死ななくてはと追い詰められたお年寄り夫婦。夜
に小便したくなったけれど、便所まで行くのもたいへんと、庭で小便をします。
その音をじっと聞いて楽しんでいた爺さまに、はっと思い浮かぶものがありま
す。それを実行したら、福しく暮らすことができたという話です。

 人間のシモを大切に扱って、福の原点をみているのはすごいと小野さんは語
ります。

 もう1冊読みました。

 『おさないひとたちのためのむかしばなし みやぎ民話の会叢書』
 
 こちらではタイトルのとおり、ちいさい人たちに向けた昔話がおさめられて
います。

 どのお話も読んでいるうちに、いつのまにか声に出して読んでいました。
 リズムがあって、読んでいると心が喜びます。

 この本のまえがきもいいのです。

 (引用ここから)

 むかしむかしのおはなしは、おじいさんおばあさんのむかしから、口から耳
へ、耳から口へと、とどけられてきたものです。みなさんのところへもおとど
けします。どうぞ、うけとってください。
 そして、みなさんがすんでいるこの世のなかには、たのしいことや、ふしぎ
なことや、おもしろいことがいっぱいつまっているんだなってことをしってく
ださい。それからにんげんじゃなくて、どうぶつもしょくぶつも、みんないの
ちをもって、にんげんといっしょにこの世のなかに生きているんだってことも、
あなたのこころでかんじてくださったなら、ちいさいちいさいおはなしたちは、
ぴょんぴょんはねてよろこぶにちがいありません。

 (引用ここまで)

 おはなしたちのように、読んだ私の心もぴょんぴょんはねました。


(林さかな)
https://1day1book.mmm.page/main


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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・三上敬 絵/稲田和浩 監修『ゼロから分かる!マンガ落語入門』世界文化社
 https://www.sekaibunka.com/book/exec/cs/21221.html

・格非 著/関根謙訳『桃源郷の幻』アストラハウス
 https://astrahouse.co.jp/2021/11/1008/

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)
 *送付先が変わりました!*

 〒104-0061 東京都中央区銀座6-6-1 銀座風月堂ビル5階
       一般社団法人日本支援対話学会内 支援対話図書館献本係

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンや楽天などのオンライン
 書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。つまり
 は当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願いしま
 す。(あまりにも短いものは書評とは呼べませんので、文字数の条件を設け
 ました。書評は500字以上でお願い致します。)

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 この[書評]のメルマガの創刊は2000年1月31日。というわけで、まもなく
25年目に入ります。読者の皆様に感謝しつつ、ちょっと怖いですねw(あ)

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[書評]のメルマガ vol.785

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★「トピックス」
→ トピックス募集中です

★「音楽本専門書評 BOOK’N’ROLL」/おかじまたか佳
→ #163『ブエノスアイレス午前零時』

★「目につく本を読んでみる」/朝日山
→ 『瓜を破る』板倉梓 週刊マンガタイムスコミックス

★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→ 今回はお休みです。

★【募集中】献本読者書評のコーナー
→ 献本お待ちしています!

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#163『ブエノスアイレス午前零時』

 このタイトルは、タンゴの革命児ピアソラの名曲と同じ。そして物語は、社
交ダンスがモチーフ。

 なのに、本編の中でこの曲は流れないのです。

「遠くかすかに、ジョニー・マチスの歌うムーン・リバーがかかっていて、カ
ザマは息をゆっくり吹き上げた。次はゴッド・ファーザー・ワルツだ。その次
は、メイ・イーチ・デイ。ゴールデン・タンゴ。エル・ポリト。ア・ワンダフ
ル・ガイ。オ・ザット・フィーリング。マイ・カインド・オブ・ガール……。
耳が腐るほど、聴かされた。」

でも、「ブエノスアイレス午前零時」はかからない。

 いや、待てよ、社交ダンスにはとんと疎いですが、この曲、そんな場合に流
れるんですかね?
 その昔、フィギュアスケートで使われていたのはうっすら覚えているけど、
いわゆる典型的なタンゴではないし、踊るとなると結構難しいのでは?

と、少々先走りましたが、藤沢周が芥川賞を受賞した本作の舞台は、東京から
雪深い故郷にUターンした青年カザマが勤める、古びた温泉ホテル。スキー場
から微妙に遠く、冬場は客足がすっかり遠のくため、だだっ広いホールがある
こと、オーナー夫妻自身の趣味でもあることから、社交ダンスのパックツアー
に活路を見出しています。

 五十代、六十代の男女が、恐らく東京からバスで乗りつけ、社交ダンス三昧
を楽しむ。カザマ初め従業員も、通常の仕事の他に夜はレコード係やダンスの
お相手を務めさせられる。

 ある時、そんな客の中に、カザマは一人の老女を見出します。初め、「珍し
く若い女がいるな」と思うのですが、サングラスのその女性ミツコは、実はこ
の場でも高齢の方。しかも、糖尿病で視力を失っている上に、痴呆症――いま
で言う認知症でもあるらしい。

 そんな二人を軸にした物語ですが、もちろん、ありふれた年の差恋愛なんか
にはなりませんから、ご安心。

 それにしても、ダンスがモチーフである以上、これは当然音楽にも深くかか
わっているわけですが、実は、聴覚よりも、むしろ嗅覚の小説である、という
印象なのが面白い。

 例えば、社交ダンスの時間になって、ホールに人が集まると、「ポマードと
化粧品のにおいでむせ返るほど」になる。「そして、ドレスにしみついたナフ
タリンのにおい。」
 この、ポマード、化粧品、ナフタリンの3点セットは、繰り返し現れます。

 もうひとつは、「温泉卵のにおい」。
 目の見えないミツコが、カザマの体に温泉卵のにおいがしみついていること
を指摘し、以降、彼を識別する度に言及するのです。
 これは、カザマの毎朝一番の仕事が、朝食に出す温泉卵をつくることだから
で、それがいつの間にかしみついている。それだけ東京から戻って日が経つこ
とを示しているわけです。

 しかし、重要なのは、ミツコがそのにおいを嫌がってはいない、むしろ好き
だということ。
「あなた……温泉卵の、いいにおいがするわ」
 それは、亡くなった彼女の夫が煙草を吸うのに、いつもマッチを擦っていた
から。その時にリンが燃える硫黄臭を思い出すからなのです。
 そしてカザマはラストで、これまでのやりとりをすっかり忘れた認知症のミ
ツコに、
「あなたは……何をなさってるの……お仕事」
と再び訊かれて、
「温泉卵をつくっている」
と即答します。

 ポマードと化粧品とナフタリン。
 温泉卵。
 ふたつの匂いは対照されているのでしょうか。

 ミツコは「……ほら、ドレスの音と、靴の音と……、白粉のにおいと、ね、
それと……樟脳の、においが好きなのよ。変でしょう?
ドレスに染みついた樟脳のにおいが好きなの……」とも言います。

 しかし、社交ダンスに興じる男女は、カザマの目にはっきりと「俗物」とし
て映っています。
 女たちは、化粧を分厚く塗りたくり、ダンスパーティーというより仮装パー
ティーにしか見えない。恐らく一張羅であろうドレスが、ほんの少しでも汚れ
ようものなら、怒り狂い、ヒステリックに喚き散らす。
 男たちは、薄い髪をポマードでてかてかに光らせ、自分は建設省の役人だな
どとカザマにまで肩書をひけらかす。ミツコのことを「昔本牧で娼婦だった女
らしい」と憶測し、「そんな女をこういう場に連れて来るのはいかがなものか」
と大所高所から批判する。

 こうした醜いスノビズムを象徴するものとして、ポマード・化粧品・ナフタ
リンはあるように思えます。

 こういう場合、普通小説では対応する匂いが出てきて、それはわかりやすく
「俗」に対する「聖」を象徴するはずですが、カザマの匂いは、ミツコが好き
な温泉卵の匂いであり、それは彼女の夫が「地球の、奥のにおいがする」と言
った、硫黄の匂いなのです。
 どうも、「聖なる匂い」とは言えそうにありませんが、しかし、「地球の奥
の匂い」という表現には、物乞いや頼病患者が「卑」の最底辺から翻って「聖」
に転じるという逆説的な意味での聖性が感じられないでしょうか。
 やはりこれは、非常に屈折した、ひとつの対照関係だと考えるべき……かな?

 そして実はタンゴという音楽が、ブエノスアイレスの貧しい下町で生まれた
卑俗な音楽でありながら、ピアソラの天才をもって遥かな芸術としての高みに
達したことも、タイトルからの連想で思い起こされるのです。

 さらにこのタイトル、「ブエノスアイレス」と「午前零時」から成っている
こと、すなわち「場所」と「時間」から成っていることにも注目です。
 なぜなら、認知症というものは、その「場所」と「時間」を忘れてしまうこ
とであり、それはむしろ、時空を自在に往還しているとも言える立場だからで
す。

 ミツコはしきりに、ブエノスアイレスにいるらしいネストル・ブラガードな
る男に電報を打たなければ、と言います。送金が遅れる、と伝えるために。

 その時、彼女の心は恐らく日本のかた田舎の温泉ホテルにはない。華やかな
都会に暮らしていた若い頃にある。そしてブラガードという男に度々金を送っ
ていたのも、その遠い過去の出来事なのでしょう。
 だから認知症患者ミツコは、「時空の旅行者」――「時をかける老女」なの
です。

 さて、今年もまた暮れて行きます。
 行き交う年もまた旅人なり。人生の旅もひとつのタイムトラベル。ただし、
片道切符ではあるけれど。
 皆さまも、どうぞ、新しい年にお乗り遅れなく、よい旅をお楽しみください。
バヤ・コン・ディオス。


藤沢周
『ブエノスアイレス午前零時』
一九九九年九月二五日 初版印刷
一九九九年一〇月四日 初版発行
河出文庫

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
本年もおつきあいただき、ありがとうございました!


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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『瓜を破る』板倉梓 週刊マンガタイムスコミックス

 来年ドラマ化されるコミックのようだが、知ったのはSNSの広告が流れてき
たからだ。コミック第一巻の惹句は、こうなってる。

「30代処女が抱える性的コンプレックスの行方とは…!? ごく普通の会社員・
まい子には人に知られたくない悩みがあった。それは30歳を超えても性体験が
ないこと。劣等感に悶々とする彼女は自分を変えるべく行動を起こす。誰もが
心当たりがありそうな、言葉にならない思いをあぶり出す現代の冒険譚」

 まい子が主人公なのだが、サブキャラも負けないくらいの存在感を放ってい
て、実際は群像劇と見た方がいいだろう。

 スタートは、同僚の結婚に複雑な思いを抱えるまい子。30歳超えているのに
性体験がないことに焦りを覚えているが、会社の切れ者上司味園美由紀も自分
と同じではないかと考え、彼氏はいるかと聞くと、10年同棲している聞いてま
すます落ち込む。

 いわゆる女性用風俗に行こうかと思ったが、愛のないセックスなどしたくな
い。そんな時に同窓会の案内がやってきて、この人ならと思える人に初体験の
相手をして欲しいと頼む。

 そんな時、切れ者上司味園は、長年同棲していたパートナーに家出される。
仕事のストレスがたまっている上に、大嫌いだった元同僚の辻が子育てから開
放されたと再入社してくることにイライラして、思わずパートナーを叱責して
しまった。

 パートナーの真は、美由紀が疲れていると思って気晴らしにタイに行こうと
勧めただけなのだが、怒られたのがショックだったのか、荷物をまとめて出て
いってしまう。勤務先に聞くと、長期休暇を取ってタイに行ったと言う。大切
な人になんてことをしたのかと後悔する。

 味園美由紀を、ある意味精神的に追い込んだ辻も、実は味園美由紀と昔は仲
良しだったが袂を分かった。再入社してきたのは、まい子や美由紀とはまた違
った挫折感を持っていて、まい子と付き合うことになる男、鍵谷もまた・・・
という群像劇。

 彼らはそれぞれ自分の殻を破ろうとする・・・と書くとキツすぎると作者は
思ったのだろうか。一応、処女喪失を「破瓜を破る」と言うが、「瓜を破る」
というタイトルにした理由は、それだけではないような気がする。

 社会の常識、あるいはイメージ通りの人生を過ごそうとして、おいてきぼり
をくらった人たちの物語なのだと思った。30歳処女、カッコはいいがストレス
たまりまくりで息抜きのできないキャリアウーマン、求められる場所を失った
り、同じことを繰り返すしか人生を過ごしてこれなかった人・・・

 学校を出て、会社に入り、適当な時期に結婚して、希望あふれる未来に着々
と歩を進めるキャリアを積んでいくという、世間ではモデル人生みたいに考え
られている生き方から、彼らは外れた存在だ。そんな人たちが相互に影響しな
がら瓜をどうやって破っていくのかが、この作品のテーマなのだろう。

 テレビドラマになるのもさもありなん。こういう社会の常識、あるいはイメ
ージ通りの人生から微妙に外れている人は少なくない。たとえば結婚など、も
はや誰でもできることではなくなった。

 生涯未婚率が上昇していることは多く方がご存知だろう。以前なら、恋愛弱
者でもお見合いのようなシステムに乗ることらよって結婚はできた。しかし今
はそんな基盤はない。

 だから生涯未婚率は上昇し、結果として少子化が進む。結婚してしまうと子
供は2人は欲しいと思うが普通で、実際に結婚したカッブルの出生率は2を上
回る。婚姻数が少ないから、既婚カッブルの“貯金”を全て吐き出しても足り
ず、少子化が進む。

 お見合いの代わりに婚活アプリがあるじゃないかといった反論は無意味だ。
独身評論家・荒川和久氏によれば、婚活アプリに登録してもモテる奴は持てる
しモテない人はモテないことに変わりはない。なので、荒川氏は婚活アプリと
はモテる奴だけかトクをすると断じるのだ。

 そんな現実を前に、登場人物たちは希望を成就することができるのか?おそ
らく、この作品を好む人は、自分の人生を振り返りながら、自分に近い登場人
物に自分を重ね合わせて読んでるはずだ。

 そんな読者の期待に、作者はどう答えるのか?8巻まで出ているコミックの
4巻までしか読んでいない私にはわからない。作品のメッセージが「何歳にな
っても人生あきらめるな!」になるのか、「人の考える人生でなくても。自分
が満足ならいいじゃないか」になるのか、あるいは全く別のメッセージになる
のか?のどれかになるとは思っているけども、今のところ着地点がどこになる
のかは見えない。

 一読者としては、どれが着地点になるのか、わくわくしながら読んでいくの
が正解なのだろう。


(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴三十うん年)

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 年末から体調不良で配信遅れました。すみません。(あ)

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[書評]のメルマガ vol.784

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■■ mailmagazine of book reviews      [設定が、もはや「SF」 号]
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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<166>「アレ」と「旧」の一年なのだった

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→147 思い出といっしょに読むこと

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第157回 歴史の分岐点としての関東大震災

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
└──────────────────────────────────

 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義 〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<166>「アレ」と「旧」の一年なのだった

 2023年も、そろそろまた暮れようとしておりますが、皆さま、今年は如何な
年だったでありましょうか。
 振り返ってみれば、今年、2023年という年は、「アレ」と「旧」につきた一
年だった、と思うのです。

 「アレ」は、もう言わずもがな、AREでありまして、11月には「アレのアレ」
なる派生語も生まれて、ついには流行語大賞にも選ばれてしまった。
 そうですね、我が阪神タイガースの、18年ぶりのリーグ制覇と、そしてこち
らは38年ぶりとなる日本一の達成です。
 奇しくも、パ・リーグの覇者はオリックスバファローズで、日本シリーズは、
「59年ぶり」の関西対決ともなったのでした。

 ちなみにバファローズは、「バッファローズ」と誤表記されることがままあ
るらしく、球団もかなり神経を尖らせていて、公のメディアで誤表記された場
合など、結構厳しく抗議するらしい。

 今年の日本シリーズは、双方とも関西球団というだけでなく、その本拠地球
場が、どちらも阪神電車の沿線にある、という点でも特異だった。
 甲子園球場は、言うまでもなく阪神本線・甲子園駅が最寄りで、オリックス
の京セラドームは、阪神なんば線のドーム前駅。
 双方の駅を電車が直通していて、所要約20分。
 阪神電車によって「なんば線シリーズ」と命名されたシリーズは、第7戦ま
でもつれ込こんだこともあって、関西ではことに、大いに盛り上がったのであ
りました。

 この「関西対決」をめぐって、わしの周辺では「かつてのアレが現実になっ
た」と、もうひとつの「アレ」をめぐって、俄かに盛り上がったのです。
 その「アレ」とは、1974年に発表された、かんべむさしのSF小説『決戦・日
本シリーズ』だ。
 その年、パ・リーグでは阪急ブレーブス、そしてセ・リーグでは阪神タイガ
ースが、ともに破竹の進撃を続け、ペナントを制する。

 ともに関西球団、しかもその親会社は、創業以来のライバル関係にある、阪
急電車と阪神電車。
 双方のファンによる応援も、それぞれの沿線住民も巻き込んでの大騒動とな
る。
 ブレーブスの本拠地である西宮球場とタイガースの甲子園は、ともに西宮市
内というだけでなく、阪急電車の今津線を介して、奇しくも線路がつながって
いる。
 その故に「今津線シリーズ」と名付けられた日本シリーズは、両球団の話し
合いにより、シリーズを制した方が、相手の線路に自社の電車を乗り入れ、パ
レードをすることとなった。

 双方のファンのボルテージも上がりまくり、試合前の球場では、小競り合い
が絶え間ない。
 警備にあたる警察官が、暴走するファンを制止しようとすれば、「うるさい!
 お前は、どっちのファンやねん!」と問い詰められる始末。
 警官が「ほ、本官は、どっちでもない。巨人ファンである!」と叫ぶや、
「けっ! 家帰って卵焼きでも食うとけ!」
 と、このくだりには、大いに笑った。

 小説は、シリーズ前の大騒動が描かれた後、シリーズ開始後はページが上下
二段に分かれ、それぞれ「阪急勝利バージョン」「阪神勝利バージョン」と上
下二本立てで進行するのであった。

 これのどこが「SFなのだ?」と疑問が湧く方もいらっしゃるだろうが、この
当時、阪急ブレーブスは、確かに日本シリーズの常連だったのだが、阪神タイ
ガースが日本シリーズに進む、というその設定が、もはや「SF」だったんであ
る。
 当時のタイガースは、毎年毎年「ダメ虎」街道まっしぐら。日本シリーズど
ころか、Aクラスも覚束なく、『裏声で唄へ六甲おろし』などというミュージ
カルまで上演されていたのだ。

 その「SF」が、この度やや形を変えて実現してしまったのだが、今や、かつ
ての「阪急ブレーブス」は、金融屋さんに身売りして「オリックスブルーウェ
イブ」となり、更にその後、近鉄バファローズを吸収合併して「オリックスバ
ファローズ」となる一方、タイガースの親会社もまた、阪急と合併して「阪急
阪神」となってしまう…などと、あのころの誰が想像できたろうか。
 まさに、現在のこの事実こそが、あのころからしたらよっぽど「SF」だ。

 そして、もうひとつの「旧」。
 こちらもまた、「今年の漢字」に選ばれてもおかしくないほど、この一年間、
いたるところに溢れていた。
 曰く、「旧ツイッター」、「旧ジャニーズ事務所」、「旧統一教会」、各メ
ディアの報道で、およそこの「旧」の字を見ない日が、あったろうか?

 わざわざ括弧で括ってまで「旧」と表記するのは、「新」のほうの名称が浸
透してないゆえだが、「旧統一教会」なんて、それ自体がすでに名称と化して
いて、誰も「新」のほうを知らない、という逆転現象。
 います? 旧統一教会の新しい名前をソラで言える人。
 わしは、覚えてません。

 「X」ってのも…なんですか、これは?
 およそセンスのかけらも感じられないネーミングだし、日本語の文中にただ
「X」と入っていても、俄かには意味が通じない…ゆえの「旧ツイッター」と
の但し書きなんだろうが、これ、いつまで続けるんだろう。
 せめて、アルファベットじゃなくて「エックス」と、かな表記にした方が意
味が通じ易いと思うのだが、「X」でないと「ダメ!」という、イーロン・マ
スクからの要請でもあるんでしょうか?

 そうこう言うてるうちに、なにやら、「旧日本大学」とか「旧宝塚歌劇団」
なんてことになりそうな事件が勃発している年末なんだけど、来年は、さてど
んな年になりますことやら。

 皆様方におかれましても、どうか無事に「旧」を乗り越えて、よき新年を迎
えられんことを祈念して、今年最後の稿を締めさせていただきます。


太郎吉野(たろう・よしの)
阪神タイガースお膝元在住。右投げ右打ち。趣味は途中下車、時々寝過ごし乗
り越し、最長不倒距離は三重県名張。
ちなみに「阪神タイガース」の「阪神」は、「兵庫県阪神地方」を指します。

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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 最初に前号での誤字についてお詫びします。

『カタリン・カリコの物語』
 デビー・ダディ 絵 ジュリアナ・オークリー 訳 竹内薫 訳
 医学監修 山内豊明

> 本書の翻訳は竹内薫さんとなっていますが、竹内さんが校長をつとめられて
>YESインターナショナルスクールの生徒さんたちが、国語のプロジェクト授業
>で翻訳、それを、翻訳家の竹内さとみさんと竹内薫さんとので最終調整して仕
>上げたそうで、訳文にも注目です。

 竹内さとみさん ⇒ 竹内さなみさん

 申し訳ございませんでした。
 
----------------------------------------------------------------------

147 思い出といっしょに読むこと

 読んでいて、ねこは飼っていないのですが、自分のまわりにねこがいるよう
な感覚をもちました。

『ねこもおでかけ』朽木祥 作 高橋和枝 絵 講談社

 小学生の男の子、信くんが飼っている犬のダンと公園で散歩していたときに
茶トラの子ねこと出会います。

 野球帽にすっぽり入るくらいの子ねこを、そのまま公園にはおいておけず、
信くんは家に連れ帰ります。

 ねこも飼いたいなと思っていたお母さんは大喜び。ところが、同じく動物好
きのお父さんは、元いた場所に戻してきなさいといいます。なぜでしょう。

 しかし、いろいろあって、信くんの家で飼えることになり、名前もトラノス
ケと名付けられます。

 この物語は、トラノスケと信くんの物語です。

 名前をつける大変さ、もとからいたラブラドール犬のダンもトラノスケとの
生活、家族が増えたことにより、いままでダンにだけ注がれていたものが、分
け合いになること、外に出るようになったトラノスケはどんなことをしている
のか。

 そしてトラノスケの存在はいままでとは違う人とのつながりをもたらせてく
れ、ひとつひとつのエピソードが、なんともいえない、やわらかみのある言葉
で語られて、ねことの生活がくっきり見えてきます。

 読み終わったあと、家のなかにねこの気配を感じました。不思議な読後感で
す。

 余談ですが、我が家のねこにまつわる思い出は、娘が小学校1年生のとき、
夏休みの計画で一日のスケジュールをつくったときのことです。先生から自分
の好きなように考えていいといわれ、娘はねことさんぽする時間をいれました。
私はそれをみた時、ねこを飼っていないのになぜ?と思ったのですが、好きに
書いていいといわれたので、やってみたいことを書いたと教えてもらいました。
ねことさんぽするのは、なかなかいいなと思い、いまでも覚えています。

 次に紹介する本も小学校低学年からにおすすめする、あったかい物語。

『赤いめんどり』
 アリソン・アトリー 作 青木由紀子 訳 山内ふじ江 絵 福音館書店

 一人暮らしのおばあさんには、身よりも友だちもいません。
 毎日、畑しごとや家の片付けでいそがしくしていましたが、冬になると外仕
事もできなくなるので、ひとりぼっちをさみしく感じていました。
 そんなとき、赤いめんどりが家にやってきます。やせこけていためんどりに
おばあさんは、ミルクにひたしたパンをあげ、心地よいねどをつくってやりま
した。

 赤いめんどりの元の持ち主は、いじわるな夫婦でした。男はめんどりを夕食
の材料にしようと探し出し、おばあさんの家にもやってきます。

 なんとか、男を追い払い、おばあさんと赤いめんどりは一緒に暮らすように
なり、それぞれ得意なことで働き、生活にゆとりも生まれるようになりました。
しかし、そんな矢先、また男がめんどりを取り戻そうとし……。

 この後、赤いめんどりがどんな活躍をしたのかはお楽しみ。

 山内ふじ江さんの絵も物語にぴったりです。おばあさんのさびしい生活は表
情からしみじみ伝わり、ゆとりがでて明るくなっていく様子は読んでいるこち
らまで笑顔になります。細い線画と中間色を活かしたぬくもりのある絵はふか
い余韻をのこします。

 次にご紹介するのは絵本です。
 
 岩波の子どもの本創刊70年の記念新刊の一冊は、チェコのわらべうた。

 『きつねがはしる チェコのわらべうた』
 ヨゼフ・ラダ 絵 木村有子

 3人の子どもたちは、わらべうたをよく歌う保育園に通っていたので、親も
覚えてよくうたいました。声域が子どもののどに負担なく、楽しいうたなので
大人になったいまも、そらでうたえるものがあります。

 わらべうたは、子どもの心を楽しませてくれるもの。
 この絵本を読んでいても、知らずのうちに声に出して読んでいて、小さい子
どもがいるときのように、読んでいるこちらまで朗らかな気持ちになりました。

 ヨゼフ・ラダのユニークで愉快な絵をみながら、わらべうたを口にだしてみ
ませんか。「シーソー」の冒頭をご紹介すると、

 シーソー

 ぎったん ばったん ぎったん ばったん
 よわむし こわがり どこにいる

 というように、リズミカルで次々うたいたくなります。

 最後にご紹介するのも絵本です。

 『みんな、空をとべる』
 ジャクリーン・ウッドソン 作 ラファエル・ロペス 絵 都甲幸治 訳 
汐文社

 訳者、都甲さんの日本語版解説に「人は空を飛べる」は黒人奴隷たちの古い
知恵だと書かれています。

 作者、ジャクリーン・ウッドソンは、子どものころ、奴隷にされる恐ろしさ
を人々はどう生き延びたのだろうかと思っていたと、絵本の最後に書いていま
す。物語という「翼」をつかって、自分の世界に「飛んで」いくことで、つら
い時期をのりこえたのではと。

 絵本では、子どもたちがつまらないと感じたときや、周りとうまくなじめな
いときに、おばあちゃんから教わった言葉が響きます。

 2本のうでを上げ、
 ふたつの目をとじて、
 ふかくいきをすいこみ、
 しんじるの。

 そして、子どもたちは空を飛べるようになるのです。
 
 おばあちゃんは、自分より前にここにきた人たちに、空の飛び方を教わりま
した。大きな船で運ばれ、手首や足首に鉄の鎖につながれてきた人たちから。

 ジャクリーン・ウッドソンは物語のあとに、あらためてこう書いています。

 ときには、変化への第一歩とは、ふたつの目をとじ、ふかくいきをすって、
べつのありかたをおもいうかべてみることだ。
 
 今年のおすすめ絵本です。


(林さかな)
https://1day1book.mmm.page/main


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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第157回 歴史の分岐点としての関東大震災

 100年前の関東大震災は、1923年(大正12年)の出来事で、その14年後の1937
年(昭和12年)の盧溝橋事件から日中戦争となり、さらにその4年後の1941年
(昭和16年)に太平洋戦争が始まる。

 関東大震災は、日本が近代化、西欧化に向けて邁進していく坂道の途中で起
こった大災害であり、この首都を襲った大災害がその後の日本の運命を変えた
ターニングポイントになった、という論調の本が出版された。

 災害を自然の猛威とか、復旧復興、医療福祉、土木建築など、現在云われて
いる災害後のさまざまに論じられている諸問題とは別に大きな歴史のうねりの
中でこの大災害を論じている、という点で優れた視点だと思った。

『関東大震災 その100年の呪縛』(畑中章宏 著)(幻冬舎)(幻冬舎新書)
(2023年7月25日初版)

 前回に紹介した書物(『災害の日本近代史 −大凶作、風水害、噴火、関東
大震災と国際関係−』(土田宏成 著))では、“災害の上書き”というフレ
ーズで日本におけるさまざまな災害を俯瞰していたが、本書は関東大震災をそ
の後の歴史の始まりと位置付けている。

 どういうことだろう?

 関東大震災は、表層的にも根本的にも東京を“更地”にするほどの大災害で
あったが、それにもかかわらず、東京において、また都市において、建築とか
土木とかそういう表層的な景観的な変化だけでなく、社会制度や社会政策など、
またそこに住む人の考え方や生活様式を変えることはできなかった。東京への
一極集中は続き、格差の是正はなされぬまま、日本は戦争に突入してしまうの
だった。つまり、関東大震災は、変化の大チャンスであったが、その千載一遇
の機会を日本と日本人は逃してしまった、ということが本書の主題なのである。

 本書は云う。「関東大震災はリスボン地震がその後の近代的啓蒙思想の勃興
に寄与したような文明史的転換のきっかけに、なぜならなかったのか。・・・
関東大震災は日本人の災害観、自然観を強化、固定化したばかりで、それらに
対する反省、検証を怠ってしまったのだ。・・・問題の軽視はナショナリズム
を呼びおこし、戦争への道を開いていったのだ。」

・・・と断言している。

 具体的な例を挙げれば、地震の後の朝鮮人の虐殺から続く、官による戒厳令
の布告、そして治安維持令の公布、それゆくゆく治安維持法へと拡大していく
わけである。地震後の治安維持を優先するあまり、人々の人権を軽視してしま
った。郷土への愛着を愛国心にすり替えたのは、国家の巧妙な戦略といってい
いだろう。

 まもなく発生してから13年が経つ東日本大震災においても、日本は関東大震
災後と同じように変わることができなかったのは明白である。結局原子力発電
を手放すことができなかったこの国に、もはや変化は望めない。

 大地震は社会を変えるほどの力があるが、日本にはそれが通用しないのだ。
それはなぜだろう。本書によれば、日本ではなにかが起こったときの原因・責
任の曖昧さにその原因がある、という。近代の大地震では、自然災害の域を超
えるような大きな被害が生じる。関東大震災では、10万人が犠牲になったとい
う火災があるが、これは過密で可燃性の高い都市の構造が原因である。またよ
く議論になるが、戦争責任が曖昧なまま、もうすぐ敗戦から80年になってしま
う。そして東日本大震災での福島第一原子力発電所の事故では、誰がどこが責
任を取ったのだろうか。

 東京オリンピック。あの2020は、「復興五輪」という名目で開催されたが、
その理屈が誰の目にも笑止千万なものであることは疑う余地がないのだが、そ
れでもこの国はそれを大上段に振りかぶって、このオリンピックを無観客で開
催してしまったのだ。

 災害を自然現象として片づけてしまうのではなく、社会現象として問題化し
なければならないのだ。そうでないと、いつまでもこの国は同じことを繰り返
し続けることになる。


多呂さ(暖かい師走です。それでも寒波はきっとやってくるでしょう。ご自愛
ください。)

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 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンや楽天などのオンライン
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 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 いつもながら、メルマガの配信、遅くなりました。あと2週間で今年も終わ
りますね。信じられません。(あ)

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[書評]のメルマガ vol.783


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■コンテンツ
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★「トピックス」
→ トピックス募集中です

★「音楽本専門書評 BOOK’N’ROLL」/おかじまたか佳
→ #162『論理哲学論考』

★「目につく本を読んでみる」/朝日山
→ 『料理研究家のくせに「味の素」を使うのですか?』リュウジ 河出新書

★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→ 『自分の考えをパッと80文字で論理的に書けるようになるメソッド R80』

★【募集中】献本読者書評のコーナー
→ 献本お待ちしています!

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#162『論理哲学論考』

 いや、見事にチンプンカンプンですわ。もう、笑っちゃうくらい。
 でも、たまには頭を悩ませながら本を読むのもいいのでは。特に秋の夜長…
…ってか、今年はいきなり冬?

 ともあれ、哲学史上に隠れもないレジェンド、ウィトさまの『論理哲学論考』、
ぜっんぜんっ、わかんない。のに! 3回も読んだのです。

 それは、わかんないのに、ところどころ、はっと刺さるかっこいいフレーズ
があるから。

 一番有名なのは、最後の命題。「語りえぬことには沈黙せよ」とかってやつ
だと思いますが、これなんかも、「おおっ」と感動(本稿の最後で正確に引用
してます)。
 禅で言う「不立文字」? 小田和正の言う「言葉にできない」?
 しかし、禅僧が修業を通じて一気に到達するところに、ウィトゲンシュタイ
ンの『論理哲学論考』はひたすら論理を積み重ねて昇り詰めるのですよ。それ
が凄いというか、何とも凄まじい。そら、ちょっと頭、おかしくもなるよね。

 本書は一連の文章ではなく、短いテーゼを並べていく方法で書かれてます。
スピノザとかと一緒。
 だから、チンプンカンプンでも、ある一行に突如びびっと反応してしまうと
いうことが起こり得るのです。
 つまり、一種の箴言集、名言集としても読めちゃう。邪道ですよね、きっと。
でもそこは、読む自由というやつで。

 とにかく本は一旦世に出たら、もはや読者のものなのだ、わはは、ざまを見
ろ(ここ、筒井康隆調)。

 とはいえ、ここで提起されている写像理論は、朧気ながら、ちょこっとわか
るんです。なぜなら、芝居を見たから。

 そう、なんと、ウィトゲンシュタインを主人公にして、彼が写像理論を思い
つくところを描いた、日本人による演劇があったんですよ(タイトルは長すぎ
て失念)。

 それは、戦争中のこと。従軍したウィトゲンシュタインは夜、テーブルに置
いたパンやらソーセージやらを山とか敵軍に見立てて、翌日決行する作戦のシ
ミュレーションをしている。その時、はっと気づく。
 これはパンなのに、いまは山だ! これはソーセージなのに、いまは敵軍だ! 
どうしてこのようなことが起こるんだ?
 しかも、これは自分一人に起こっているのではなく、いまここにいる戦友た
ちも、同じようにパンを山、ソーセージを敵軍と理解して、話が通じている!
これは、なんと不思議なことではないか!

 このように、凡人が「え、そんなの当たり前じゃん」とスルーしてることに、
改めて驚くことができる、いっそ驚愕すらできる、ということが哲学者の資格
なのですね。

 言葉というものには、こうして現実を、ある方法で写し取ることができる。
それをウィトゲンシュタインは「写像」と呼び、その性質について深く思索を
始めるんですが、この時、連想するのが「楽譜」なのです。

 これはもちろん、『論理哲学論考』にも出てくるんですが、音というものを、
紙の上に記号を用いて「写像」したのが、楽譜である、と。なるほど、そう言
われれば、この「写像」ってかなりわかりやすくなる。

4・011
一見したところ、例えば紙上に印刷されているような命題は、それが関わる現
実の像であるとは思われない。しかし楽譜も一見したところでは音楽の像であ
るとは思われず、我々の音声記号の表記やアルファベットも我々の音声言語の
像であるとは思われない。
しかしながらこれらの記号言語は日常の意味でも、それが描出することの像で
あることが、明らかとされるのである。

4・014 
レコード盤、音楽の思想、楽譜、音波、これら全ては相互に、言語と世界との
間に存する写像の内的な関係をなしている。

4・0141
それによって音楽家が総譜から交響曲を読み取ることができ、又人がレコード
盤上の条から交響曲を導出でき、更には最初のようにして総譜を導出できる、
といったような一般的規則が存在する。まさにこの点にこれらの見かけ上はか
くも全く異なった諸形態の内的な類似が存在しているのである、そしてこの規
則が交響曲を楽譜の言語に射影する射影の法則である。それは楽譜の言語から
レコードの言語への翻訳の規則である。

 このことに関連して、ちょっと思い出したことがります。

 ウィンドウズが現れる前。まだ一部マニアのものだったパソコン、DOS−
Vって言ってましたけど、そいつで音楽制作の真似事を始めたことがありまし
た。
 当時は「レコンポーザー」というソフトが定番で、いわゆる打ち込み方式。
パソコンのキーボードで入力していくと楽譜がつくれ、音源を繋ぐと再生でき
る。
 これでつくったデータをフロッピーに記録させるんですが、ある人に「フロ
ッピーも磁性体でしょ?
 カセットテープも同じ磁性体。カセットって古くなると音が悪くなるけど、
フロッピーはどうなの?」と訊かれて、「え?」となった。
 そうね、確かにどっちも磁性体なら、フロッピーも劣化するのかな……

 しかし、よく考えてみると、カセットに録音されているのは「音そのもの」
ですよね。でも、フロッピーに入っているのは「音」ではなく、「楽譜」なん
です。つまり、パソコンが鳴らす音は「録音」ではなくて、その楽譜=演奏指
示情報に従った「生演奏」なわけ。ただ、人間と違って、毎回全く同じ演奏に
なるので、結果的に「録音」と変わらず、聴いている人には区別がつかないの
です。

 だから、フロッピーに「音質劣化」はありません。
 もちろん、紙に書かれた楽譜が長い年月を経て、黄ばんだり汚れたりして読
みにくくなるように、フロッピーに入った楽譜も磁性体の劣化で読み取りが困
難になることはあるかも知れませんけど。

 そんなことを思い出しつつ、さて本題に戻ると、音楽という「現実」に対し
て、楽譜という「像」がある。だから、楽譜の読み方を知る者は、そこから音
楽を汲み取ることができる。そういうことにウィトゲンシュタインは気づいた。
そして驚いた(これ、大事)。

 確かに、楽譜が読めない人間からすると、これはひとつの魔法です。どうし
てあんなオタマジャクシの連なりから、こんなにも美しいメロディーが紡ぎ出
されるのでしょう。
 もし楽譜を知らない人間なら、きっと驚くに違いない。
 したがって、ウィトゲンシュタインの「びっくり加減」もむべなるかな、で
すよね。

 そして、もうひとつ驚くことがあります。
 そう、これ、音楽本じゃん!

 かくてこの『論理哲学論考』、めでたく音楽本になったのです!

 では最後に、「写像理論」以外にもいくつかかっこいいフレーズがあるので、
それをご紹介してみましょう。

2・012 
論理においては何ものも偶然ではない。ものが事態の中に現れうるならば、事
態の可能性はものにおいて既に前以て決定されていなければならない。

3・01 
真なる思想の総計が世界の像である。

3・031
神は全てのものを創造しうるが、しかし論理法則に反するものだけは例外であ
る、とかつて語られた。というのも「非論理的な」世界についてそれがどうみ
えるかを我々は語りえないからである。

4・001 
命題の総計が言語である。

4・1212 
示されうることは、語られることができない。

5・62 
唯我論が考えている(言わんとする)ことは全く正しい。ただそのことは語ら
れることができず、自分を示すのである。
世界が私の世界であることは、唯一の言語(私が理解する唯一の言語)の限界
が私の世界の限界を意味することに、示されている。

5.621 
世界と生とは一つである。

5・63 
私は私の世界である(ミクロコスモス)。

6・41 
世界の意義は世界の外になければならない。

6・43 
幸福な人の世界は不幸な人の世界とは別の世界である。

6・431 
また同じく、死に際しても世界が変わるのではなく、世界が終わるのである。

6・431・1 
死は生の出来事ではない。人は死を体験しない。

6・44 
神秘的なのは世界がいかにあるかではなく、世界があるということなのである。

6・5 
表明できない解答に対しては、その問も表明することができない。
謎は存在しない。
いやしくも問を立てることができるのなら、その問に答えることもできるので
ある。

6−521 
生の問題の解決を人が認めるのは、この問題が消え去ることによってである。

6・522 
だがしかし表明しえぬものが存在する。それは自らを示す。それは神秘的なも
のである。

6・54
私の命題は、私を理解する人がそれを通り、それの上に立ち、それをのり越え
ていく時に、最後にそれが無意義であると認識することによって、解明の役割
を果たすのである。(彼は梯子をのり越えてしまった後には、それをいわば投
げ棄てねばならない。)
彼はこれらの命題を克服せねばならない。その時彼は世界を正しく見てとるで
あろう。

7 
話をすることが不可能なことについては、人は沈黙せねばならない。

……はい、ではそろそろ黙ります。


ウィトゲンシュタイン
奥雅博 訳
『ウィトゲンシュタイン全集1 論理哲学論考 他』
1975年4月1日 初版発行
1986年11月1日 七版発行
大修館書店

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
文章教室の講師をしているのですが、先日初めて生徒さんたちと、講義の後、
昼飲み会をしました。聞いてみると、受講の動機っていろいろあるんですね。
文章教室に通っていながら、「小説は読まない」という人も意外と多くてびっ
くり。

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『料理研究家のくせに「味の素」を使うのですか?』リュウジ 河出新書

 いやね、こういう挑発的なタイトル大好きです!

 よく知らないが、著者のリュウジ氏は簡単レシピで有名な料理研究家らしい。
「できるだけ大勢の人においしいと思ってもらいたい」「料理の工程をできる
だけシンプルにしたい」をコンセプトに“バスレシピ.com”を運営している。
 https://bazurecipe.com

そんな料理界の成功者が
「【料理研究家のくせに味の素を使うのですか?】
と言われて早7年、「人殺し」や「悪魔崇拝者」と罵られても何故この調味料
を使うのか本気で書きました。

 何故世の中が味の素を批判してきたのか、料理研究家が使わないのか、全て
わかります。炎上覚悟、魂の一冊です」

と言うくらいだから、面白くないはずなかろうw!
https://twitter.com/ore825/status/1707896218360349069

 彼の料理の原点は高校生の時、病弱だった母を気づかって弁当を買っていた
が、自分で作ればいいじゃんと思って鶏胸肉のソテーを作ったら母から喜ばれ
たのが原点だ。

 そこから料理が好きになって、将来シェフになろうとかは思わなかったのが、
まず面白い。それで趣味として料理を作っていた。彼曰く、料理オタクだった。
この頃は、だしを昆布やかつお節とか素材からとるのが当たり前で、「味の素
を使う奴なんて、料理好きを名乗るな!」とまで思っていた。

 そんな彼を転向させたのは、中華料理の素養のある祖父が作ってくれた納豆
にあった。とてもおいしくて一人暮らしするようになってから自分で作るよう
になったが、どうしても祖父の納豆のように、おいしくならない。

 で、どうやって作ってるのかと祖父に聞いたら、「リュウジ!味の素入れて
ないだろ。味の素を入れなかったら味がないに決まってる。」・・・これがフ
ァーストインパクト

 高校を中退してホテル勤務を経て、人気イタリア料理店に入ると、そこでは
味の素をぱんぱん使っていた。最初は、とんでもないところに入ったと思った
が、趣味とはいえ料理を知識がない人ではない。よくよく考えたら味の素なし
でこの味を作れと言われたら、どんだけ大変かに気がついた。これがセカンド
インパクト。

 そして思った。「うま味調味料を使わないと決めていたのは、自分の無知と
勝手な思い込みに過ぎないのではないか」・・・この原体験があるから、こん
な本書く気になった。これが第1章

 2章は「うまみ調味料とは何か?」ということで、科学的視点から味の素の
材料であるグルタミン酸や、イノシン酸などの紹介をする。

 3章はバズレシピの中で選りすぐったのであろうメニューの紹介で、味の素
だけでなくハイミーやアジシオなども使ったレシピが並ぶ。その中にちょくち
ょく小技や調味料の上手な使い方などが組み込まれている。簡単な料理が並ぶ
ので、なるほどこれで人気が出た方なんだなとわかった。

 第4章はうま味調味料の歴史ということで味の素の歴史をメインに競合他社
の動向やマーケティングの話などで、企業としての味の素のまじめな社風がよ
くわかる。昔、味の素を入れた料理を食べると頭が良くなるみたいな風説があ
ったそうなのだが、これを企業として公式に否定するとか・・・これを機会に
売りまくろうとは思わないのですね。

 石油から味の素を作る技術もある。石油から作る味の素の「安全性に絶対の
自信」を持っているが、これをネタにして騒ぐ輩がいるだろうと言うことで生
産に使うことを見送っていたり・・・味の素の歴史は、風説の流布との戦いも
長かったのだ。

 5章はリスク評価(味の素は体に毒なのか?)の解説。6章は、うま味は世
界に誇る食文化と題されているが、個人的には最後の料理コミックの紹介が刺
さった。大ヒット作である「美味しんぼ」を横目に見つつ、真実はこうだと抗
う漫画家が、味の素の誤解を解こうとがんばってきたことに敬意を持たれてい
るようだ。

 誤解がないように言っておくが、味の素を代表とする化学調味料を使わない
料理を著者は否定しているわけではない。化学調味料を使わない料理を作る困
難や、化学調味料を使わないがゆえの素晴らしさを彼は否定しているわけでは
ない。

 よくもてはやされる有機農業にしても、日本のトップクラスの有機農家は慣
行栽培を否定したりはしないし、有機農業が慣行栽培よりも安全だなどどは絶
対に言わないのと同じだ。

 それにしても、こんな本が出てくるのは化学調味料に限らず、化学と名がつ
くものを忌み嫌う風潮は、もう終末期に来ているのかも知れない。


(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴三十うん年)

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■「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
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「簡単に文章を書く方法」。答えの1つが出た
『自分の考えをパッと80文字で論理的に書けるようになるメソッド R80』
(飛鳥新社・刊)

 ライター業を続けて何十年のおばちゃま。ベテランちゃあベテランですが、
時々、この文章でいいのか疑問に思って途方に暮れる時があります。編集者出
身ゆえに業務の1つとしてやってきたことを営業品目にしたため系統立ててラ
イティングを学んだわけではないし(てか、系統立てて学べるとこあるの?)、
署名原稿を書くわけではないからニーズに従って文体は変幻自在、曖昧模糊の
加工業。作家じゃないんだから気楽にやればいいけど、クライアントから原稿
が赤字いっぱいで戻ってきたりすると急に自信をなくすわけです。

 そんな年に1度か2度か3度(多いな)、読むのが「文章の書き方」の本で
す。ほとんど参考にならなくて斜め読みしてメルカリるのが常ですが、新聞広
告で見たこの本は「イケるかも」と思って手に取りました。

 著者は長年、公立高校で日本史を教えてきた元教師の方。授業に定評があり、
教えていた中堅進学校で、生徒のセンター試験での日本史の平均点が県内1位
だったという実績があるそう。そしてアクティブラーニングの時代になって
(出た!アクティブラーニング!笑)、生徒たちが書く機会が増えたことから、
簡単に論理的文章が書けるようにと編み出したのが「R80」というメソッド。
これは書くのが嫌いな生徒にも効果抜群、たちまち文章が書け、学力が上がる
魔法のメソッドだそうです。

 ではどう書くのか。
 
 RはReflection(振り返り)とRestructure(再構築)、80は文字数です。
「(1) 40文字書く(振り返り)→(2) 接続詞を入れる→(3) 40文字書く(再
構築)」たったこれだけ。たとえば、授業を振り返って書くならば(授業を振
り返って文章を書かないといけないんですね、最近の子は)、
(1) で習った内容を書く
(2) 接続詞(したがって、しかし、また、一方、つまり、なぜなら)を入れる
(3) 感想を述べる
で完成!
 この公式に従えば、次のような筋道が通った論理的文章が作成できます。

「多数決によっても必ずしも民意の反映されない今の投票は、完璧ではない。
しかし、私たちはそれを踏まえた上で投票に行き、自分たちが国政に参加する
ことから始めるべきだ」(公民科の授業を受けた後の高校3年生の文章)

 なるほどね〜。

 いきなり書きにくい場合は、人にしゃべってから書くといい、独り言でもい
いとあり、それは賛成。(「2人1組になって話し合うのがいい」と書いてあ
るのはいかにも学校の先生らしい感覚と思いました)

 ただ例文を全部読みましたが、接続詞の使い方これでいいの?と思う部分、
また、接続詞要らないんじゃね?と思う例文もありました。
 このルールに従うと小論文も書けるし、自己紹介も、読書感想文もお茶の子
さいさい。
 ここまで読んで、思い出したのがおばちゃまが新聞社がやっている情報紙で
記事書きのバイトしていたときのこと。
 新聞社から天下りしてきた上司が記事の書き方を指南してくれたのですが、
それは新聞的な5W1Hを述べ、さらに (1) 過去 (2) 現在 (3) 未来を書け
ばどんな記事も書けるということでした。たとえば、NPOみたいな団体があ
る活動をしている場合(こんなのが多かった)、「いつどこでだれが○○を実
施した」の後に「○○さんはこういう経歴の人でこういう動機と目的がある。
今はこんな活動をしている。将来はこうしたいと思っている」で完了。

 でその通りに書いてたのですが、なんかおもろないと思ったのも事実。報道
は一刻を争うので紋切型の記事が都合がよくて伝わりやすいのはわかりますが、
その外にある人の感情とかなんというかもやっとしたものは表現できないと感
じました。公式のある文章の唯一の不足点と言うべきでしょう。

 同じことがR40にも言えるのではないかと思いますが、文章が苦手な人がと
りあえず書ける、そして大学に合格したり、就職して自分の道を歩み始めるた
めには有益な公式だと思いました。特に教育困難校の生徒たちがすらすらと80
文字を書け、文章を書くことが苦にならなくなったという記述は胸アツでした。

 この本は納得7割ですが、もやもや感が3割の読後感。もうちょっと読み込
んで主旨を理解するためにメルカリるのは先にしようと思います。

大友舞子(おおとも・まいこ)
昭和20年代生まれのフリー編集&ライター。関東生まれで関西在住。

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・三上敬 絵/稲田和浩 監修『ゼロから分かる!マンガ落語入門』世界文化社
 https://www.sekaibunka.com/book/exec/cs/21221.html

・格非 著/関根謙訳『桃源郷の幻』アストラハウス
 https://astrahouse.co.jp/2021/11/1008/

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

 〒104-0061 東京都中央区銀座6-6-1 銀座風月堂ビル5階
       一般社団法人日本支援対話学会内 支援対話図書館書評献本係

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
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 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
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■あとがき
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 月末ぎりぎりでの配信になってしまいました。(あ)

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[書評]のメルマガ vol.782

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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<165>猫漫画の系譜

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→146 忘れない

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→今回はお休みです。

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義 〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<165>猫漫画の系譜

 子供のころ、『黄色いカバン』というアメリカ製のテレビアニメを、よく見
ていた。
 原題は、『Felix the Cat』。
 「フェリックス」という名の黒猫が、なんにでも変身してくれる魔法のカバ
ンを持って、あちこちに出没しては、魔法のカバンを使って悪戯したり、人を
おちょくったり、あるいはごく稀には人助けをしたり、というアニメ。
 その来歴はかなり古くて、日本の『のらくろ』と同じころに誕生したキャラ
クターなんだそうだ。

 あのころ…って、1960年代ですが、テレビのアニメはアメリカ製がほとんど
で、1963年の『鉄腕アトム』を嚆矢として、国産アニメもぽつぽつ放映される
ようにはなっていたが、それでもやはり数量的には、アメリカ製アニメが圧倒
的だった。

 そのアメリカ製アニメには、「フェリックス」をはじめとして猫のキャラク
ターが、数多く登場するのだった。
 『トムとジェリー』もそうだし、『シルベスター』なんてのも、いましたっ
け。
 ニューヨークと思しき大都会の裏横丁で、ゴミ缶をそれぞれの住まいとする
野良猫軍団が「大将」と呼ばれるボスを中心に、彼らを目の敵にする警官と丁
々発止の対決を繰り返す『ドラネコ大将』てのも、結構好きでほぼ毎週見てい
た。

 アメリカアニメのキャラクターとしての猫は、大抵の場合、狡猾でずる賢く、
時に間抜けな失敗はするものの、他人に阿ることなく自由気ままに悪さを重ね
る、そんなキャラクターに仕立てられていた。

 そんなアメリカアニメの猫キャラクターを踏襲して生まれたのが、赤塚不二
夫の「ニャロメ」ではなかったろうか。
 「ニャロメ」は、「ドラネコ大将」や「シルベスター」と同じく、悪賢くて
狡猾で、しかし、その狡猾さゆえに最後にしっぺ返しを食う、というキャラク
ターだった。

 1980年代に登場した小林まこと『ホワッツ・マイケル?』もまた猫が主人公
だったが、この「マイケル」は、それまでの猫キャラクターとは一線を画すキ
ャラだった。
 なぜなら「マイケル」は、「猫」そのもの、だったのである。
 アメリカアニメの猫も「ニャロメ」も、全て擬人化されたキャラだった。
 彼らは、人語を解し、人と同様二足歩行で歩いては、人間社会の中で人と係
わっていたのだが、「マイケル」は、まったくの「猫」として描かれていたの
である。
 お気に入りのライオネル・リッチーやマイケル・ジャクソンの音楽に合わせ
て踊る時こそ二足歩行なのだが、通常は、その本能のまま、猫本来の動きと嗜
好と行動様式で、彼を見る人間を困らせたり困惑させたり、可愛さに身悶えさ
せたり、してしまうのである。

 「ホワッツ・マイケル?」は、たちまち人気作となり、アニメ化もされて大
ブームを引き起こす。
 そして、これ以後、リアルな「猫」を描く漫画は一種のブームとなり、「猫
漫画」の専門誌まで登場することとなり、漫画の中で「猫漫画」というひとつ
のジャンルを形成して、今に至っているのである。

 その猫漫画に近頃、特異なキャラクターが登場した…というか、「登場」し
たのはかなり前なんだけど、わしが知ったのが最近、てことなんですがね。
 『俺、ツシマ』という漫画がそれで、作者は「おぷうのきょうだい」という
兄妹ユニットだ。
 元々は、妹が文章とストーリーを、兄が作画を担当して、猫ブログを展開し
ていたらしいのだが、2017年から旧ツイッターで、この猫漫画をスタートさせ
たところが評判が評判を呼び、フォロワーも爆発的に増えて、ついには小学館
から単行本化、さらにはアニメ化となった…らしい。

 「ツシマ」は、野良猫なのだが、一時一人暮らしの「ジジイ」の家に住んで
いたことがあり、このジジイからツシマヤマネコに似ている、という理由から
「ツシマ」と名付けられた。
 ジジイは、ツシマと一緒に暮らすことで、その孤独が癒され、荒んでいた心
にも平穏が訪れるのだが、やがて死んでしまう。

 ジジイの死後、ゴミを漁っていたツシマを家に連れ帰ってくれたのは「おじ
いさん」で、現在は、この「おじいさん」と先住の他の猫と同居の状態だ。
 ツシマは「おじいさん」と認識しているのだが、実際には「おじいさん」は、
「そこそこの年齢の女性」であるらしい。

 ツシマは、人語を解し、なんと人語を喋ってしまったりもするのだが、その
行動様式は、まんま「猫」で、その本能の赴くまま、勝手気まま、わがまま放
題に暮らしていて、元野良ゆえの習性か、時に家出をして、何日も帰らなかっ
たりもする。
 が、どんなに我がままでも勝手気ままでも、その「猫そのまんま」の姿が、
「おじいさん」には愛おしくて堪らず、彼なしでは生きていけない体になって
しまっている…というあたり、「マイケル」の後継者、とも言えるかな?

 この「おぷうのきょうだい」が、ただいまは「ビッグコミック」誌上で、や
はり猫漫画である『モンちゃんと私』を連載している。
 「モンちゃん」、本名「モンブラン」は、やはり人語を話す猫。
 野良猫なのだが、相棒の「チョモ」こと「チョモランマ」と一緒に、ホーム
レスの「おいさん」の小屋に寄宿している。

 この二匹と一人がある日、不思議な能力を有する猫である「ナゾちゃん」と
出会い、さらに、かねてモンちゃんの知り合いだった、派遣OLの「ミキ」の部
屋で同居することとなり、ミキのダメンズ彼氏「ユウイチ」も巻き込んで、猫
三匹、人間三人の奇妙な同居生活が始まる。

 猫たちによって、それまであまりいい目を見てこなかった、ミキやおいさん
の心は癒され、さらに「ナゾちゃん」の不思議な力を利用することで、三人は
経済的にも大きな財力を得ることになって…
 と、その辺りから、かなりシリアスな展開になっていくのだが、物語は、11
月25日発売号で、ひとまず「最終回」を迎えるそうで、単行本になったら、改
めて読んでみたいと思っている。

 この『モンちゃんと私』、派遣OLとして働くミキの不遇ぶりや、「おいさん」
のホームレス生活等々の描写には、「令和的」リアルが溢れていて、加えて、
「モンちゃん」や「チョモ」の猫っぷりがまたリアルなんである。
 「おぷう兄」が担当しているらしい絵もまた、毛並みや顔立ち、その仕草も
また、リアルに「猫」で、同じ茶トラということもあり、わしは、勝手に「リ
アル・マイケル」と位置付けたりもしております。

 「おぷうのきょうだい」、この「次」には、どんな猫を登場させてくれるの
か、とても楽しみなのです。
 あ、「猫」以外のキャラクター描写でも、「ミキ」は、いかにも幸薄そうな
容貌だし、ホームレスの「おいさん」や、ミキのダメンズ彼氏「ユウイチ」に
しても、「いかにも」な容貌であり、「兄」の画力、秀逸です。


太郎吉野(たろう・よしの)
阪神タイガースお膝元在住。右投げ右打ち。趣味は途中下車、時々寝過ごし乗
り越し、最長不倒距離は三重県名張。
ちなみに「阪神タイガース」の「阪神」は、「兵庫県阪神地方」を指します。

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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146 忘れない

 疲れていると頭が働かず、いろんなことを忘れていくような気がします。
 そんなときに読んだ『モノクロ街の夜明けに』はガツンときました。
 忘れてはいけないことに気づかなくては。


 歴史を題材にしたフィクション『モノクロ街の夜明けに』(ルータ・セペテ
ィス作 野沢佳織訳 岩波書店)は、1989年、ルーマニアでの圧制下を17歳の
視点で描いています。

 1989年、この年はルーマニアの歴史が動いた年です。
 長年の独裁政治により、人々の不満が爆発し、とうとうニコラエ・チャウシ
ェスクと妻のエレナを射殺へと追い込んだのです。

 いまから37年前のこの時の映像を私もいまだに覚えています。
 聞くだに過酷な独裁政治をしていた当の本人の最後はこういうものなのかと
強い印象が残りました。

 本書の主人公は17歳の少年、クリスティアン・フロレスク。
 誰もが誰かを見張っているかのような時代、誰を信じ、誰に何の話をしたら
いいのか、自由なときはまったくない日々を送らねばならなかった青春時代が
語られます。

 ルーマニア人の五十人にひとりは、秘密警察、セクリターテの諜報員といわ
れ、とうとうクルスティアンも取り込まれていかざるを得なくなります。

 家族のためであり、自分のために情報を秘密警察に提供する、けれど、自分
の心すべてを差し出すわけではありません。どこかに心の自由はもっていられ
るはず、そう願いながら、日常生活を過ごしていたのですが……。

 クリスティアンの緊張に満ちた毎日を読んでいると、独裁政治の恐ろしさに
身震いしました。そして、自分は家にいたら安心、家族といたら安心という自
分基準の安心があることに、あらためて気づかされました。

 チャウシェスクは、国民を孤立させることに注力し、独裁政治をすすめまし
た。国民どうしを監視させ、秘密警察による弾圧をひたすら強めていったので
す。

 章ごとに、極秘の秘密警察宛の公式報告書が挿入され、誰が書いたのかはわ
からない報告書に記されている内容が、日々の監視を実感させます。

 作者はあとがきでこう書いています。

 「歴史は、世界全体の物語、人間の物語への入口です。歴史を題材にしたフ
ィクションを読むことで、わたしたちはあまり注目されてこなかった出来事を
探求し、世界地図上の様々な国に光を当てることができます。」

 クリスティアンの物語を読むことで、ルーマニアの歴史にふれられます。


 次に紹介するのは、きくちちきさんの絵本2冊です。

 『はしれー』福音館書店 こどものとも012 12月号
 『やまをとぶ』岩波の子どもの本 

 いま、注目の絵本作家の作品が続けて刊行されています。

 0歳からの読み聞かせでも楽しめるこの012は、厚紙でとても丈夫なつく
り。見開きの明るい絵に、シンプルで短いことば。目も心もひかれます。

 『はしれー』では、ひたすらひたすら、子どもたちといろいろな動物たちが
走っています。はしれー、はしれーの文字も走っているような動きを感じ、絵
本全体から、走るって気持ちいいよーという声が聞こえてきます。

 心を無にして、草っぱらを走り回りたくなりました。


 『やまをとぶ』は1953年12月に創刊された絵本シリーズ〈岩波の子どもの本〉
70周年を記念した新刊絵本です。

 広い空、大きな山を舞台に、鳥や子どもたちがのびのびと描かれます。
 きくちさんの描く絵は、線がダイナミックで生き生きしていて、静止画なの
に、鳥が飛んでいるときやそれをみあげる子どもの表情が、目の前にいるかの
ような臨場感があります。

 青い広い空に飛んでいる鳥の絵は、本当に美しい。

 深い呼吸ができる絵本です。大人にも子どもにもおすすめ。


 最後に紹介するのは、いつも旬な絵本を届けてくださる西村書店の伝記絵本。
2023年ノーベル生理学・医学賞を受賞したカタリン・カリコ博士の物語です。

 デビー・ダディ 絵 ジュリアナ・オークリー 訳 竹内薫 訳
 医学監修 山内豊明

 副題に「ぜったいにあきらめない mRNAワクチンの科学者」とありますよう
に、ここ数年、世界を苦しませた新型コロナ感染症のワクチン開発の道筋をつ
くったひとりが、カタリン・カリコ博士なのです。

 ハンガリーで生まれたカタリンは小さい頃から、生物に興味をもち、細胞と
いう小さなかたまりで自分たちどころか、あらゆる生きものができていること
に強い興味をもちます。そして家族に「科学者になりたい」と夢を語ります。

 家族は応援し、カタリンは一生懸命勉強し、ハンガリー化学アカデミーセゲ
ド生物学研究所ではじめてmRNAに着目します。

 結婚し子どもが生まれた後に博士号を取得。研究を続け、アメリカに渡りま
す。順風満帆ではなく、大学での仕事を失ったり、次の大学でも降格されたり
不遇な時代もありましたが、ドリュー・ワイスマン博士との出会いから一緒に
研究することになり、2人であきらめずにmRNAの研究を活かす方法を見つける
べく、実験を続け、ワクチン開発への道筋をつくったのです。

 ワイスマン博士は「この技術の研究をはじめたときから、パンデミックが起
きた場合に必ず役立つだろうとわかっていました。この技術を使えばとても早
く簡単にワクチンが作れるからです」と語っているそうです。

 本書の翻訳は竹内薫さんとなっていますが、竹内さんが校長をつとめられて
YESインターナショナルスクールの生徒さんたちが、国語のプロジェクト授業
で翻訳、それを、翻訳家の竹内さとみさんと竹内薫さんとので最終調整して仕
上げたそうで、訳文にも注目です。

 (林さかな)
 https://twitter.com/rumblefish

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・三上敬 絵/稲田和浩 監修『ゼロから分かる!マンガ落語入門』世界文化社
 https://www.sekaibunka.com/book/exec/cs/21221.html

・格非 著/関根謙訳『桃源郷の幻』アストラハウス
 https://astrahouse.co.jp/2021/11/1008/

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)
 *送付先が変わりました!*

 〒104-0061 東京都中央区銀座6-6-1 銀座風月堂ビル5階
       一般社団法人日本支援対話学会内 支援対話図書館献本係

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンや楽天などのオンライン
 書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。つまり
 は当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願いしま
 す。(あまりにも短いものは書評とは呼べませんので、文字数の条件を設け
 ました。書評は500字以上でお願い致します。)

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
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■あとがき
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 いつもながら、メルマガの配信、遅くなりました。(あ)

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