[書評]のメルマガ

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[書評]のメルマガ vol.689

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■■ [書評]のメルマガ                2019.11.20.発行
■■                              vol.689
■■ mailmagazine of book reviews     [創造とは、かくも神秘的 号]
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■コンテンツ
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★「トピックス」
→ トピックス募集中です

★「音楽本専門書評 BOOK’N’ROLL」/おかじまたか佳
→ #112『脳と音楽』

★「目につく本を読んでみる」/朝日山
→ 『天才を殺す凡人』北野唯我 日本経済新聞出版社

★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→ 今回はお休みです

★【募集中】献本読者書評のコーナー
→ 献本お待ちしています!

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#112『脳と音楽』
 
 前回、オペラを聴くために何時間も立っている老人の登場する小説を紹介し
たけれど、いくつになっても音楽を楽しみたいというのは、音楽ファンの切実
な願いだ。

 その点で不安なのは、耳が遠くなること。親世代の話を聞いていると、どう
も補聴器の進化は遅々として進まず、余分な雑音ばかり聞こえて肝心の声が聞
き取れないなど、不満たらたら。せっかく買ってもあまり使っていないらしい。
 
 音楽が聴こえなくなるのも困るが、一方で、世の中には聴こえてしまって困
っている人もいる。
 音楽幻聴、という病である。
 文字通り、実際には音楽など鳴っていないのに、聴こえてしまう現象。
 懐かしい童謡やクラシックの名曲。中には、エディット・ピアフのシャンソ
ンが聞こえる、とか、演奏者が特定されるケースもある。
 
 音楽がただで聴こえるなら、いわば脳の中にApple musicやGoogle playや
Spotifyがあるようなもので、かえって便利な気もするが、あいにく選曲がま
まならない、という問題がある。

 聴きたくもない曲が聴きたくもない時に何度も何度も鳴ったら、それは確か
にうんざりするだろう。そう言えば昔、隣のピアノがうるさいという理由で殺
人事件が起きたこともあった。
 そろそろクリスマス商戦だが、この季節、ショッピング・モールで働く人は
一日中流されるクリスマス・ソングに気が狂いそうにならないのかな、と他人
事ながら心配である。
 
 逆に、失音楽症という病もある。
 音楽を聴いても、メロディとして認識できず、何の曲かわからなくなる病気。
いや、そもそも音楽に聴こえない、という病気だ。
 これも、恐ろしい。
 
 こうした病気は、脳に原因がある。脳腫瘍や脳梗塞、あるいは頭部に受けた
外傷によって、脳機能の一部が損なわれると発症するのだ。
 本書『脳と音楽』は、音楽愛好家にして神経内科医の岩田誠が、クラシック
の有名作曲家と脳、そして音楽幻聴や失音楽症について書いた本である。
 
 二十代の頃、著者の本を一冊読んでいる。言葉に関する機能が、脳の言語野
という場所にあることを知り、ふと興味を持って手に取った、『脳とコミュニ
ケーション』という本で、いまでも本棚にある。

 横書きの、いかにも医大で使われる教科書然とした体裁のハードカバーだっ
たが、案外に面白く読めた。というのも、教科書らしく事実を淡々と記述する
中に、妙に個人的な感想めいたものや、体験談が不意に現れ、それが赤瀬川源
平によってスポットライトをあてられた国語辞典、新明解国語辞典的なユニー
クさを持っていたからだ。
 
 その岩田誠に『脳と音楽』という本があると知ったのは、タワーレコードで
配布されているフリーペーパー『intoxicate』のブック・レビュー欄だった。
こちらはより一般向けのソフトカバーで、縦書き。『BRAIN MEDICAL』という
雑誌に連載された記事をまとめたものである。
 
 第1章には、バッハが登場する。死後、その墓の所在がわからなくなってい
たが、いくつもの骨の中からその遺骨を推定し、医学的分析を行った記録を紹
介している。
 第2章は名曲『ボレロ』を書いたモーリス・ラヴェル。実はラヴェルは失語
症にかかり、作曲にも支障をきたした。そこで脳外科手術を受けたのだが、か
えってそのために死亡しているという。
 第3章は、失語症と音楽の関係をテーマにした、さまざまな医学者による研
究史。
 第4章は、音楽能力を失ってしまう、失音楽症に関する研究史。
 第5章は、『ラプソディー・イン・ブルー』や、スタンダードとなった名曲
「サマータイム」を含むオペラ『ポギーとベス』、さらに数々のミュージカル
・ナンバーで知られるガーシュインが、脳梗塞で亡くなった顛末を語る。
 第6章は、脳のどの場所に、音楽に関する機能があるのかを明らかにしよう
とした、これも研究史。
 
 そして最終章、第7章の主人公がシューマンだ。
 
 シューマンは子どもの頃から音楽幻聴に悩まされていた。それが大人になっ
てからも度々再発し、終生彼を苦しめたのだそうだ。
 とうとう最後には、その苦痛に耐え切れず自殺未遂を引き起こす。そして精
神病院に収監されるが、それから2年を経て死亡した。享年、46歳。
 
 音楽幻聴の患者は、一般の人の場合、既存の、本人もよく知っている曲の幻
聴が現れる。しかし、音楽家がこの病を患うと、未知のメロディを聴くことも
あるそうだ。
 
 ただ、必ずしも美しいメロディとは限らないらしい。不快な和音だったりす
ることもある。
 だが、逆に言えば、きちんとした曲になっていることもあるわけだ。
 
 ここで、著者は面白い問題提起をする。
 
 シューマンのような作曲家が音楽幻聴を発症し、美しいメロディが聴こえた
場合、それは「幻聴」なのか、「インスピレーション」なのか、という問題だ。
 
 確かに、メロディが天啓のように降りて来る、という話はある。
 典型的なのは、夢に見る、というか、夢で聴く、というパターンだ。
 
 例えばポール・マッカートニーも、ある朝起きたら、夢で聴いたメロディが
頭の中でリフレインしていた。とりあえず、その日の朝食にちなんで「スクラ
ンブル・エッグ」と名づけ、いろんな人にそのメロディを聴かせた。

 というのも、こういう風にすらすらと曲が出来た場合、無意識に他人の曲を
パクっている可能性があるからだ。
 しかし、誰に聴かせても、聴いたことのない新しいメロディだという。
 そこで、これなら大丈夫だろうと歌詞をつけた。それがかの名曲「イエスタ
デイ」である。
 
 こういう風に、インスピレーションとしてのメロディも、幻聴として作曲家
を悩ませるメロディも、どこからかいきなり振って来るという点では変わらな
い。
 だとすると、美しいメロディが頭の中で鳴った時、本人が「おっ、インスピ
レーション、キターーーーーー」と思えばインスピレーションであり、「くそ
っ、なんてうるせー幻聴だ」と思えば幻聴、という主観の問題でしかないのだ
ろうか。

 それとも、インスピレーションを認知する脳の場所は、幻聴を認知する脳の
場所とは違うとか、何かしら客観的な差があるものなのか。
 
 残念ながらこの疑問、現代の大脳生理学をもってしても、未だ謎のままだそ
うだ。
 創造とは、かくも神秘的、ということだろう。

 ちなみにこの第7章、いみじくも「創造と幻覚」と題されている。
 
 
岩田誠
『脳と音楽』
2001年5月30日 初版第1刷発行
2001年11月15日 初版第2刷発行
メディカルレビュー社
 
おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
下北沢は我が家から徒歩20分。微妙な距離ですが、好きな街なのでよく出かけ
ます。小田急線が地下に潜った影響で、このところずっと駅周辺は工事中。そ
れが徐々に形になって、だいぶ変わりました。その内温泉まで出来るとか。湧
いたわけではなく、箱根から運んで来るそうですが、好きな街が変わってしま
うのが寂しくもあり。

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『天才を殺す凡人』北野唯我 日本経済新聞出版社

 何よりタイトルがいい!サブタイトル「職場の人間関係に悩む全ての人へ」。
帯の文句は「なぜ才能はつぶされてしまうのか?」。なんだか、虐げられた天
才が会社で逆襲して行くようなことが書いてあるように思えた。

 実際の中身は全く違っていて、天才と秀才と凡人が併存する会社(や社会)
で、どういうポジションで生きていけばいいのかを問うストーリー形式のビジ
ネス書であった。もともとネットで話題になっていた「凡人が、天才を殺すこ
とがある理由」というblogを書籍化したものだそうだ。

 主人公はテクノロジー企業CANNAの広報部門で働く青野トオル。社員番号3
番で創業者の上納アンナの天才ぶりにほれ込んで入社して10年になる。社長の
腰ぎんちゃくと呼ばれつつも楽しかった創業期は過ぎて、今の企業の業績はよ
くない。会社を牛耳るのはもはや上納ではなくなった。秀才である外資系から
転職してきた神崎秀一CFOや上山経理財務部長が仕切っている。

 この会社にいてもつまらない。会社の業績が悪いからか上納アンナも精彩を
欠き、社員からも相手にされなくなって来つつある。上納アンナは依然として
天才で、まだ死んじゃいない。そう信じている青野の旗色は悪かった。凡人に
天才が殺されていくのは見ていられない。

 そんな絶望感に打ちひしがれ、渋谷のハチ公前に立っていた青野は「どうか
私に力を与えてください」とハチ公に祈る。すると不思議なことに目の前の銅
像からOKが出た。翌日、朝起きたら、微妙に東北弁の混じった関西弁をしゃべ
る秋田犬がいた。渋谷ではハチ公が消えたと大騒ぎになっている。

 ここで象を思い出す人もいるかも知れない。動物が先生やるのはこの手の本
のお約束なのだろう。この秋田犬(名前はケン)がカウンセラーかコンサルタ
ントかコーチなのか知らないが、要は青野の指導者として才能の活かし方を伝
授していく。

 ケンいわく、人間の悩みのほとんどは、自分ではコントロールできないこと
を無理やりコントロールしようとするから生まれる。そして人間が最もコント
ロールしたがるが、一番悩みの元になるのは「自分の才能」であるという。自
分に才能がないからと悩むのが一般的だが、多くの場合、才能はないのではな
く、自分がどんな才能があるのか気が付いていないからだという。

 そこから、秋田犬ケンは、人を天才(創造性をもつ)と秀才(再現性に優れ
る)と凡人(共感で動く)の3タイプに分類し、どうして天才が凡人に殺され
るのかなど組織におけるそれぞれのタイプの関係を解説して行く。

 当初は創造性あふれる天才タイプが創業した会社でも、成長して大きくなる
と凡人の多数決で物事が決められるようになり、天才は殺される。

 経営はアートとサイエンスとクラフトの組み合わせで、これが上手に組み合
わさっていると強い経営になる。ここでアートが出て来たのは近年の流行です
ね。

 話を戻すと。そうした組織の仕組みの解説と並行しながら、物語の上ではテ
クノロジー企業CANNAは次第に追いつめられて行く。上納アンナのやることが
成功しなくなり、会社の止血のためには、上納アンナが会社から追放される可
能性も濃厚になってきた。神崎秀一CFOや上山経理財務部長は、すでにその方
向で動いていた。

 そんななか、凡人青野は、会社を、そして天才上納アンナを守るため、創業
期の会社のワクワク感を取り戻すため動き始める。凡人の「才能」をフルに生
かした青野の挑戦は成功するのか・・・

 いわゆる自己啓発ものでは、「誰でも、こうすれば成功できる」とやるのが
お約束だ。この本もそうした系譜に連なる一冊と言えると思うが「誰でも成功
できる」はその通りでも、天才、秀才、凡人と3タイプに人を分けで、自分が
どのタイプなのかを知り、自分に合ったやり方で自分にできることを行えば成
功すると言っている。要は成功と言うゴールはあるにしても、ルートや行き先
は人によって異なるというのである。

 すなわち、人は自分の才能がどこにあるのかを見極めて、その才能が活かせ
るように行動すべきということだ。しかし、自分の才能がどこにあるのかは案
外わからない。たとえば自分は営業向きだと思っていても、実際の営業は業種
や会社の進化の途上によっても違う。創業間もない頃の新規開拓メインの営業
と創業100年の会社の顧客を維持する営業は同じ営業でも全く違う。

 自分の才能と仕事の性質がドンピシャと嵌まればいいが、そういうことはな
かなかない。職場の人間関係が苦しくなる理由の多くはここにある。

 この本はそうした理由の提示だけで、解決法まで提示しているわけではない
が、それでも職場で苦しむ人の中には、この本を読んで救われる人も多いだろ
うなと思う。

 努力しても報われない理由は、努力不足にあるとは限らない。いわゆる「自
己責任」だけで自分の運命が変わるわけでもないからだ。


(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ─ 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510


 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

 〒142-0041 東京都品川区戸越5-4-3 アズ品川ビル4階
       ビズナレッジ株式会社内 [書評]のメルマガ 献本 係

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンや楽天などのオンライン
 書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。つまり
 は当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願いしま
 す。(あまりにも短いものは書評とは呼べませんので、文字数の条件を設け
 ました。書評は500字以上でお願い致します。)

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 しれっと、10日号と20日号を同じ日に配信。

 いや、あれですよ。合併号的な何かですよ。

 子どもの頃、合併号っていうなら厚さが倍になっていないのはおかしいって
思ってませんでしたか?

 私だけ?(あ)

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[書評]のメルマガ vol.688


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■■ mailmagazine of book reviews [訃報に接する機会がまことに多く 号]
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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<118>『ハコヅメ』は、警察漫画の金字塔

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第118回 熊本地震で被災した福祉施設はどう災害を乗り切ったか

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→100 つながる時間

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<118>『ハコヅメ』は、警察漫画の金字塔

 前回まで、3回連続で追悼稿になってしまった。

 前にも書いたことだけど、この数年、訃報に接する機会がまことに多く、つ
まりは自分もまた、それだけ「齢をとった」ということなんだな、と改めて実
感。

 今月は気分を改めて、最近のお気に入り漫画について、ちょいと語ってみた
い、と思うのであった。

 近頃、気になっている漫画、いくつかあるのだが、そのひとつが、『ハコヅ
メ〜交番女子の逆襲〜』

 作者は、泰三子(やす・みこ)。「週刊モーニング」連載中で、単行本も現
在は「10巻」までが発売中

 タイトルのとおり、とある地方都市の、交番に勤務する若い女性警察官が主
人公で、警察官としてはまだ新人の彼女が「警察」という特殊な組織の中で、
様々な経験を積み、時に失敗もしながら、「ペア長」である先輩女性警官の指
導を受けて、日々成長していく姿がスラップスティックな展開の中で描かれる。

 警察を舞台とし、さらに女性が主人公という漫画は、過去にも例があると思
うし、交番を舞台とするスラップスティックと言えば、あの『こち亀』もそう
なのだが、この『ハコヅメ』は、それらの先行作品とは、明らかにおもむきが
違う。
 どこが違う、と言って一番の違いは、「ディテール」だ。
 警察という組織内部の描写、ことに、上司と部下、あるいは同僚でも先輩と
後輩、その上下関係の間に漂う空気が、とても濃密に描写されていて、ナニゲ
にリアルなのである。

 実は、わしの妹のダンナというのが警察官で、その彼が酒を飲むたびに愚痴
ってたこと…要人警備に駆り出されたとき、冬の雨が辛くて、通りすぎる車列
に向かって「早よ行けや〜〜っ!もう!」と心で毒づいてた、ことや、まもな
く勤務が終わる、という時に発生した事案の犯人を取り調べなくてはならなく
なって、「思わず、殴ったろか思った」こととか、徹底した減点主義のこと、
とかが、この作中にもエピソードとしてふんだんに登場するのだ。

 リアルなはずで、この作者の泰三子さんは、漫画家になる前は、10年間、某
県警(本名とともに秘密、らしいのだが、どうやら鹿児島県警らしい、とはも
っぱらの噂だ)で警察官として実際に勤務していた、のだから。

 漫画の主人公と同じ交番勤務を振り出しに、あちこちの部署を経験し、広報
課勤務の時、広報誌の中で、警察の活動を漫画で紹介したい、と考えて上司に
訴え出たところが却下され、「ならば商業誌で独自に」と考えて、「モーニン
グ」に持ち込んだらしい。

 警察勤務の中で、似顔絵の担当もしていたので、「漫画もいけるだろう」と
考えたそうだ。

 さらに、モーニングに作品を持ち込み、何度かのリテイクを経て、「じゃ、
ぼちぼち連載を」という時期に、担当編集者の制止も聞かず、連載のために10
年務めた警察を辞め…つまり、安定した公務員の生活を棒に振って漫画に専念
宣言、という大胆不敵、というか無謀というか、編集部は、かなり慌てたらし
い。

 連載開始当初こそ、伝えたいとの思いが強くて、ややぎくしゃくしたところ
もあったのだが、連載を重ねるにつれ、主人公の河合や、そのペア長である
「セクシー女優の容姿とマウンテンゴリラの魂を持つ女」藤部長のキャラクタ
ーも際立ってきて、さらに捜査課の「モジャツンコンビ」こと源・山田のコン
ビをはじめ、脇役キャラもその濃さを増し、絶妙なギャグの合間に、警察とい
う組織が持つ独特な雰囲気や、その悲喜こもごもな日常などが、うまく調和し
てきて、いまや絶好調、なのである。

 ちなみに、交番勤務のことだけでなく、刑事課の捜査や鑑識、交通課の取り
締まりや、生活安全課の補導事案、などなどの描写も、ディテールが正確でと
てもリアルなのは、泰三子さん自身が、10年の間に実際に勤務した経験がある
から、なんだとか。

 つい最近、兵庫県警の女性警官が、駅のトイレに拳銃を置き忘れる、という
不祥事が発覚し、さらに、その警察官がホストクラブに通いつめ、その資金を
捻出するために風俗でアルバイトしていた事実もまた同時に発覚、という事件
があった。

 以前だったら、「なんだよ、それ…?」とか「なにやってんだか」でスルー
していた事件だったろう。
 が、『ハコヅメ』を読んだ後では、この事件もまた、「日頃の務めが激務で、
さらに女性が女性として扱われない職場で、よほどストレスがたまってたんだ
ろうな」と、思わず同情してしまうのである。

 『ハコヅメ』は、既に各方面で話題になっていて、熱烈なファンの間では、
ドラマ化の要望も強い、らしい。

 わしも、これ、昔の映画『警察日記』の現代版の感じで実写ドラマにしたら
面白いと思うのだけど、「河合」と「藤部長」、誰を配役すると、ぴったりく
るでしょうね?


太郎吉野(たろう・よしの)
阪神タイガースお膝元在住。右投げ右打ち。趣味は途中下車、時々寝過ごし乗
り越し、最長不倒距離は三重県名張。
ちなみに「阪神タイガース」の「阪神」は、「兵庫県阪神地方」を指します。

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第118回 熊本地震で被災した福祉施設はどう災害を乗り切ったか

 2016年(平成28年)4月に起こった熊本地震は、4月14日の夜に発生した震
度6の地震が前震で、その後16日の未明に発生した震度7の地震が本震という
ことになり、前後して2度も大きな地震があった希有な地震であった。ほんの
3年前のことなので、皆さんの記憶に新しいものだと思う。

 最初の14日の地震でかなりの被害があり、被災地となった熊本であるが、28
時間後にそれを上回る大きな地震が発生した。人々の動揺と不安と焦燥と疲労
はいかばかりのことであったか。想像することすら、なかなか難しい。

 そして、その熊本地震に関する書籍はあの東日本大震災関連本に比べると圧
倒的に少ない。東京の本屋では、ほとんど見つけることができない。東京にお
いて、震災の風化に熊本地震が巻き込まれた。

 でも、最近、執筆子は繋げてくれる人がいて、熊本地震の体験者と知り合う
ことができた。そして、今回ご紹介する書籍に巡り会った。

『熊本地震 命を守る! 全証言I』(吉本洋 著)(マネジメント社)
(2018年12月1日初版第一刷)
『熊本地震 復旧から復興へ 全証言II』(吉本洋 著)(マネジメント社)
(2019年2月1日初版第一刷)
『熊本地震 未来への提言 全証言III』(吉本洋 著)(マネジメント社)
(2019年5月1日初版第一刷)

 著者の吉本氏は、「老人総合福祉施設 グリーンヒルみふね」の施設長であり、
この施設は熊本県益城郡御船町にある。熊本地震で被災した福祉施設の長によ
る体験記なのだ。

 3冊で1セットになっている本。1巻が発災時から1週間の記録であり、最
も困難な状況をどのように乗り切ったか。2巻はそれから発災50日目にあたる
6月1日まで。この日にグリーンヒルみふねは復興宣言をした。3巻はその後
にさまざまな防災啓発活動を行い、全国の福祉施設と連携していくさまを描い
ている。

 著者の吉本氏の行動力が凄い。そして施設の職員が凄い。責任感と使命感に
感動する。

 熊本は地震が来ない、という迷信をふつうに信じていた熊本県民は、だから
地震の備えなどということはほとんどしていなかった。熊本の役所も同じ。台
風を筆頭に風水害と火災についてのマニュアルはあるが、地震についてはなに
も準備していなかった。8年前の東日本大震災の映像を見ても、それは対岸の
火事でしかなかった。しかし、巨大地震はこの地震空白地域であった熊本で起
こってしまった。

 施設では、どうしていたかは本書を読まれたし。職員はそれぞれ担当を割り
振り、避難所となった施設を懸命に運営していく。しかし水も食糧もない。備
蓄はほとんどなく、民間施設なので公的援助も期待できない(つまり行政は公
平性を最も尊ぶので、どこかひとつへ、ということは絶対にしない)。施設長
の吉本氏が、渉外担当となり、自身のSNSを通じて全国へ支援の要請を発信
した。その効果は徐々に現れ、物資が届くようになり、人的応援も得られるよ
うになる。氏のSNSをみた人がメディアにつなぎ、取材の申し込みがあり、
その模様が全国に放映された。テレビの影響力は絶大なのだ。それからは支援
物資や人的支援が急激に増えた。被災した当事者による手記。それもひとりも
欠けることなく生存していかなければならない、という責任ある立場の人の手
記には迫力がある。

 氏は云う、「私ができること。それは、こういう時期だからこそ、皆で乗り
越えなくてはないけない。ひとり欠けると五人のお年寄りの世話ができなくな
る。つまり、この状況下では誰ひとりとして欠けることは許されないのだ。」

 福祉施設を運営する立場の人として悲壮な決意なのである。

 施設長の吉本氏は、しかし悩むのであった。施設入居者を守ることと家族を
守ること。どちらを優先すべきか。軽重を天秤に掛けることはできない。氏は
そのジレンマ、葛藤に悶える。それを正直に書いてしまう。かくして読者であ
る我々は、その葛藤を自分のこととして氏とともにその問題につきあうことに
なる。

 悩みは解決したわけではないが、この熊本地震に対峙するにあたり、氏はひ
とつの結論にたどり着いた。「記録が大切」。

 思い出したくもない記憶でも、後世につなげていかなくては意味がない。だ
から記録する作業が大切なのだ。と。そしてその一環として本書3部作がある
のだ。

 3巻目の「未来への提言」が実はもっとも大切なことを訴えている。被災当
事者として施設を運営した著者がさまざまな問題を考察しているのがこの巻な
のだ。行政との関係。物資の配付の不平等について。SNSで発信することの
光と影。被災地でのイベントの是非。災害時における社会福祉施設が担う役割。
利用者の安全確保はどうする。・・・・・矢継ぎ早に問題を提起してそこに切
り込む。氏の想いを語る。ぜひ読んでほしい。

 そして、氏はこの災害を経験して、災害を乗り越えるために大切なことは三
つある、ということに気づいた。本当は本書を読まれることが望ましいが、敢
えてここに記載する。

 1 自分のモチベーションを維持し続ける
 2 情報を発信し続ける
 3 ネットワークを広く持つ

 グリーンヒルみふねの施設長である本書の著者、吉本氏がご自身で経験され
たことに基づいて考えるに至ったその到達点がこの三つなのである。ある集団
を率いなければならないリーダーが災害に直面したときの心得、とでも云うべ
き事柄。それでも3のネットワークを広く持つ、というのは、平時からしてお
かないと。災害後に行おうとしても、それは不可能だ。

 ・・・・・という訳で、リーダーたる者、ふだんから地域活動や地域外のネ
ットワークに積極的に関わらなければならない。

 この3部作はこのことが云いたいための書籍であり、この結論に至る過程が
書かれた記録書である。

 今月もいい本にであった。


多呂さ(台風15号・19号・21号。関東でこんなトリプル台風にやられるとは、
まったく災害は“あすは我が身”なのですよ)

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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100 つながる時間

 先日、家族に入院する者が出たことで、久しぶりに子どもたちが勢ぞろいし
ました。

 子どもも成人し独立してしまうと、帰省もそれぞれになり、なかなか一同に
そろうことがなくなっていましたが、救急搬送の入院だったこともあり、本当
に思いもよらない時間がもたらされました。

 一番は生まれた時以来に会う孫のS君です。新生児のとき以来に会うS君は
9か月になり、よく笑い、よく食べ、それはそれはかわいくなっていました。
久しぶりに抱く小さい子どもの愛らしさ、あたたかさは、看病の疲れを忘れさ
せてくれ、自分の子どもが、今度は親になったのだとしみじみ不思議な感覚を
味わいました。

 一緒に布で遊んだり、わらべうたを歌ったりしたのですが、もう少ししたら
絵本を楽しんでくれるかなと、その時を楽しみにしています。


 前置きが長くなりました。今回は絵本をまとめてご紹介します。

 『みーんな、ねちゃった?』
 オードレイ・プシエ 作 ふしみ みさを 訳 BL出版

 おやすみなさい絵本です。
 ねむる時間になっても、すっとねむれないおとこのこ。
 気になることがあるのです。
 そこでママにたずねます。

 「ママ、みーんな ねちゃったの?」

 みーんなって誰のことでしょう。
 それは、ひよこだったり、お花だったり、おひさまだったり、おつきさまだ
ったり。
 ママは丁寧にこたえていきます。

 やわらかいタッチの絵柄は、みているとリラックスできます。
 子どもはちっとも眠くないのに、一緒にいるママは一日の疲れが出る夜なの
ですから、質問に回答しているうちにどうなるかは想像できますね。
 
 読んでいると、子どもたちを寝かしつけていた夜を思い出しました。
 いつかS君にも読んであげたいな。


 『スモン スモン』
 ソーニャ・ダノウスキ文・絵 新本史斉 訳 岩波書店

 ドイツの絵本です。
 独特なかわいさオーラが表紙から出ていてに心をわしづかみにされました。
 
 ゴンゴン、ロンロン、ストンストン、クロンクロン、などなど、
 不可思議な音で表現される食べ物や仲間。
 音の示すものは絵で解明されるのですけれど、
 ん?ん?と思い、言葉の意味するものの答えあわせを絵でしていると、
 なんだかすっかり「スモンスモン」の世界にはまるのです。

 ファンタジックな世界を甘くなく、写実的かつ独特なタッチで描き、大人を
も魅了します。

 ぜひ手にとってスモンスモンと出会ってください!!


 詩人伊藤比呂美さんが訳された「きみのきもちによりそう絵本」もお勧め。

 『かなしみがやってきたらきみは』
 エヴァ・イーランド いとうひろみ訳 ほるぷ出版

 イギリス在住のオランダ人作家によるはじめての絵本。
 
 思えば、かなしみはいつも予告なしにやってきます。
 スマホでアラームがなることもなく、いきなりおそってきます。

 少し太めのシンプルな線画で、おとこのこと物体化されたかなしみを描き、
かなしみがやってきたときの対処方法を、淡々を伝えてくれます。

 感情とのつきあい方は、子どもだけでなく大人も知りたいこと。
 そんな知りたいことが描かれている絵本です。


 さてさて、今年の残り週は一桁になったことに気づいていますか。
 クリスマスだってもう来月の話です。

 『クリスマスマーケットのふしぎなよる』
 たなか鮎子 講談社

 たなかさんの絵は、おもちゃ箱につまっている嬉しさがぎゅっとつまってい
るようなキラキラ感があります。つまりクリスマスにぴったり。

 クリスマスマーケットに出かけたヨハンは、どこかのツリーからおちたお星
さまを見つけます。元の場所に戻そうとヨハンはクリスマスマーケットのなか
またちの力を借り……。

 マーケットにはいろんな人たちがいて、買い物をしている人たちの様子も細
やかに描かれ、じっくりみているとヨハンたち以外の物語もみえてくるようで
す。

 初回限定ポストカードつきですから、早めの入手を!

 もう一冊クリスマス絵本を。
 『もりのおくのクリスマスツリー』
 ユーヴァル・ゾマー作 石津ちひろ 訳 ほるぷ出版
 
 イギリス発、木が主人(木)公のクリスマス物語。

 種からじっくり育った木なのですが、周りをみると少し斜めに育っています。
 それほど高さもありません。
 そんな見ばえのせいか、クリスマスの時期にツリー用に切られていく木の中
で最後まで誰にも切られません。

 けれど、一本残った木に、森の仲間たちが近づいてきます……。

 木として存在することの意味が、クリスマスの時期ならではで語られ、やさ
しい気持ちになります。

 大判でクリスマス雰囲気たっぷりの絵本は贈り物に最適です。
 プレゼント候補にぜひいれてください。


(林さかな)
会津若松在住。「本の雑誌」新刊めったくたガイド海外文学担当。
http://1day1book.strikingly.com/

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ― 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510

・『支え合い・学び合いで育つ「わたし」』(エディット・パルク)
  http://web.kyoto-inet.or.jp/people/cogito/%8Fo%94%C5%88%C4%93%E0/%8Ex%82%A6%8D%87%82%A2%81E%8Aw%82%D1%8D%87%82%A2.html

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 〒142-0041 東京都品川区戸越5-4-3 アズ品川ビル4階
       ビズナレッジ株式会社内 [書評]のメルマガ 献本 係

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 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
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6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
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 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 「訃報に接する機会がまことに多く」とは、まさに最近、実感していること。
つい最近も知人が還らぬ人となりました。

 11/30は看取りの日。とわかりやすいゴロですが、なぜか厚生労働省は違う名
称にしたとのこと。変な感じですね。

 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02615.html

 これにかこつけて、ちょっと宣伝です。関わっている団体が下記のようなイ
ベントを行います。

 NHK「プロフェッショナル」でも紹介された「看取り」のエキスパートで
ある、エンドオブライフ・ケア協会 代表理事の小澤竹俊先生が登壇されます。

 ちょっとメッセージのやりとりをしていますが、とっても善い方です。

 ファシリテーターは、京都造形芸術大学副学長、NPO学習学協会代表理事
の本間正人さんです。

 EMS特別体験講座
 「現在の医療は看取りの本質をどのように見つめるべきか?」
 令和元年11月27日(水)19時〜21時
 http://ems-event191127.mystrikingly.com/

 B-5「aguni原口の紹介」で、2,500円で参加できます。Zoomでも同時配信で、
世界のどこからでも参加できます。

 ご興味あれば是非。

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[書評]のメルマガ vol.687

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★「トピックス」
→ トピックス募集中です

★「音楽本専門書評 BOOK’N’ROLL」/おかじまたか佳
→ #111『ママは何でも知っている』

★「目につく本を読んでみる」/朝日山
→ 『絶望の林業』 田中淳夫 新泉社

★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→ 認知行動療法の本に救いを求めてみました

★【募集中】献本読者書評のコーナー
→ 献本お待ちしています!

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#111『ママは何でも知っている』

 スクワットを一日おきにやるようになって、1年半ほどになる。

 退職してほぼ家にいるようになっていいことは、この種の健康対策が続けら
れることだ。これまでは少し仕事が暇になるとあれこれ始めて、すぐにまた忙
しくなって止めてしまうことの繰り返しだった。

 だから毎日でもできるのだが、筋トレはむしろ休みを入れる方が効果的らし
く、なので一日おき。確かに、お尻に肉がついてきた。

 加えてこのスクワットには目的がある。オール・スタンディングのライブを
楽しむために、下半身の体力をつけなければならないのだ。
 
 この欄の最後、自己紹介のところに、いつも日記替わりに近況を書いている。
そこまでつぶさに読んでくださる方はご記憶かも知れないが、札幌を拠点とす
るロック・バンド月光グリーンにはまり、ライブに通っている。会場はほぼラ
イブハウス。当然、オール・スタンディング。つまり立ち見のみで椅子席がな
い。

 まず、開場の15分ほど前に到着。路上に並んで待つ。そうしないと、せっか
く若い整理番号をゲットしていても前の方で聴けないからだ。

 もっとも、前から一列目とか二列目だと、バンドとの距離が近く、一体感が
増す反面、爆音が鼓膜を直撃。細かい部分は潰れて聴き取りにくい。会場の中
程か、後ろの方が、PAスピーカーから適度に離れるし、そもそも音をつくる
ミキサーは一番後ろにいるので、そこに近い方がサウンド的にはいい。

 したがって、前で一体感を楽しむか、後ろで音を楽しむかは悩ましい二択な
のだが、他のバンドなら音を取るけれど、月光グリーンに関しては、一体感を
選んでしまう。「汗ダク感情ロック」をキャッチフレーズとする彼らの熱いラ
イブは、なるべくステージの傍で楽しみたいからだ。

 だから15分路上で待って、中に入る。そこから開演まで、公式には30分。だ
が、殆どの場合、10分ぐらい遅れて始まる。ここまでで既に55分立ちっぱなし
である。

 かくして始まったライブは、アンコールまで含めて約2時間。この間は、た
だ突っ立っているわけではなく、踊りまくる。
 終演後は物販に並ぶ。次のライブのチケットを手に入れるためだ。通う内に
顔なじみになったバンドのメンバーと軽く立ち話するのもファンにとっては嬉
しいひと時。これに20分は費やす。

 計3時間15分。家からの往復を1時間半とすれば、4時間45分の間、立つか
踊るか歩いている計算になる。電車ではなるべく座るようにしているとはいえ、
映画を2本立ち見する以上の時間、足腰を酷使する。

 しかもこれはワンマンライブの場合。対バンがある時、月光グリーンは大体
トリなので、最初のバンドから見始めるとさらに長丁場。だったら、最後だけ
見ればいいようなものだが。せっかく行くなら他にもいいバンドがあるかもと、
つい最初から会場入りしてしまうのだ。

 若い頃ならいざ知らず、年を食ってくると、やはり思う。
「これ、いつまで続けられるかなぁ」

 ところが先日、大阪で月光グリーンを見た時、明らかに遥か年上らしき女性
客が一人いたのだ。周りの客に「わたし、今年80なのよ」と自慢そうに吹聴。
え〜、すごぉい〜、と言われてご満悦だった。

 80かぁ、さすがナニワの女性、と感心したが、しかしフィクションではある
が、ニューヨークの老人たちも侮れないのを思い出した。

 安楽椅子探偵ものの短編シリーズとしてミステリー・ファンには有名な、ジ
イムズ・ヤッフェ『ママは何でも知っている』の一篇、「ママ、アリアを唱う」
に、オペラを聴くためなら何時間でも立ち続ける労を厭わない、元気な老人た
ちが登場するのである。

 このシリーズは、ニューヨーク市警の刑事であるユダヤ系アメリカ人の主人
公が、毎週金曜日、妻を連れてブロンクスに住むママの家へ行き、夕食の席を
囲むのだが、その時担当事件のあらましを話すと、ママが謎めいた質問を3つ、
4つしただけで、鮮やかに解決してしまう、というものである。

「ママ、アリアを唱う」は、ママがオペラ・ファンであることから、最近メト
ロポリタン・オペラハウスで起きた殺人事件の話題になる。

 この劇場には、入場料の安い立ち見席がある。前売りはなく、当日券のみ。
立ち見の中でも前の方で見ようと思えば、発売の3時間前には並んでいなけれ
ばならない。
 いくら高額なオペラが安く見られるとはいえ、これに群がるのは、貧乏な音
大の学生とか、体力のある若い音楽ファンかと思えばそうではなく、オペラを
こよなく愛する年金暮らしの老人たちなのだった。

 この立ち見常連の老人グループに、筋金入りのオペラ・マニアが二人いる。
共に一人暮らしの男だが、どういうわけだか音楽的にはしょっちゅう意見が対
立する。特に歌手の評価では、まず一致したことがない。折しもマリア・カラ
スとレナータ・テバルディが連続して公演をすることになったが、どちらが偉
大なソプラノ歌手かで大論争となった。

 老人特有の頑固さも手伝って、カラス・ファンの男は、テバルディが『トス
カ』に出演する夜、彼女のアリアの一番いいところを邪魔してやる、と言い放
つ。

 もちろん、テバルディを暗殺するとか、劇場を爆破するというわけではない。
 そんなことをしなくても、ロックのように爆音ではないクラシック音楽は、
脆いガラス細工なのである。曲の一番いいところで、派手なくしゃみでもすれ
ば、もうそれですべては台無しに出来る。
 実際、クラシックのコンサートで、客の咳払いが気になって絞め殺したくな
ったことのあるファンは多いだろう。

 いよいよ公演が始まる。テバルディ・ファンの男は、隣にいるカラス・ファ
ンが何をしでかすか気が気でない。ところが彼は、まさにそのテバルディの聴
かせどころで、沈黙を守った。だが、オペラは予告通り台無しになった。

 彼自身がアリアの途中で倒れ、死んでしまったのである。

 大騒ぎになって警察が呼ばれ、死因は毒殺だと判明する。ここまでのいきさ
つからすれば、犯人は犬猿の仲だったテバルディ・ファンで決まりだ。しかし、
ママは違うと言う。「それは音楽ファンの心理をわかっていない」と。

 ネタバレになるが、その理由だけ明かすと、もし、テバルディ・ファンの男
が犯人なら、彼は大好きな歌手の一番の聴かせどころを、自ら台無しにしたこ
とになる、というのだ。
 これはファン心理としてあり得ない。むしろ彼は、カラス・ファンの男が、
そのタイミングで大きな雑音を立てるとか、ブーイングすることを恐れていた
はずだ。
 しかも、テバルディがそのシーズンに『トスカ』で主役を張るのは、その公
演一度きりだった。そんな貴重な機会を自ら破壊するとしたら、その男はテバ
ルディ・ファンとは言えないし、だとしたらそもそも殺人の動機がなくなる。
 もし殺すなら、オペラの後にするか、せめて、アリアの後にするはずだ。
 これは、音楽ファンなら誰もが深く首肯するロジックだろう。

 かくしてママが指摘する真犯人については、本書をぜひチェックしていただ
きたいが、しかし、この短い話を読んで思うのは、やはり謎解きの見事さより、
ニューヨークの老人たちの立ち見を厭わぬタフさであり、乏しい年金をやりく
りしてでもオペラに通う音楽愛の深さである。ちなみにこの立ち見常連グルー
プには、女性もいるのですよ。

 券を買うのに3時間。上演が3時間。計6時間! 4時間45分ごときでたじ
ろいでいてはいけない。

 決意も新たに、スクワットに励むのである。


ジェイムズ・ヤッフェ
小尾芙佐訳
『ママは何でも知っている』
二0一五年六月十日 印刷
二0一五年六月十五日 発行
ハヤカワ・ミステリ文庫

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
先月は札幌で月光グリーンのライブ。スクワットの成果を発揮するつもりが、
なんと台風! 迷った末、前日に飛行機とホテルをキャンセルしました。さら
に今月も、台風。さらに、これを書いているいま、またぞろ熱帯性低気圧発生
とな!

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『絶望の林業』 田中淳夫 新泉社

 本人いわく、「日本唯一の森林ジャーナリスト」の手になる現代日本林業の
絶望的状況を描いたノンフィクションである。

 現在、林業界隈はわりと景気が良いように思われている。背景にあるのは多
額の補助金を使った林業振興にあるのだが、こうした振興策が林業の本当の振
興になっていないどころか、むしろ森を破潰する結果になっているというのが、
この本の趣旨だ。

 書名からして容易に想像できるように、前書きからいきなり絶望的な状況が
語られる。日本唯一の森林、そして林業ジャーナリストであるから「最近林業
盛り上がってますよね?」と取材やテレビの出演依頼がよく来るのだが、現状
を話すと依頼が全て消えて行く。

「ここで私はテレビ番組に出演できなかったとか、情報を提供したのにギャラ
が支払われないと文句を言いたいのではない(少しは言いたい)。私の彼らの
認識の差に暗澹とした気分に浸るのだ」

「少しは言いたい」と半分茶化して若干ソフトに書いているのは、その後に続
く暗澹とする話の前に多少の予告のつもりかも知れない。

 林業に興味を持った学生も訪ねてくる。一般に言われている林業の姿と筆者
の言う姿が違うから、話を聞きたいと言ってくる。そして忸怩たる思いに駆ら
れる。こんな希望を持って林業に取り組みたいと思う若者たちの思いに応える
ことができないからだ。

 新規就農ならぬ、新規就林したい人は、これ読んだら林業やろうとは思わな
いだろう。

「補助金で木材生産は拡大しているが、木材の使い道が充分にない。市場でだ
ぶついて木材価格を下落させる。利益が薄くなるから、量で稼ごうと伐採量を
増やす。しかし木材の使い道は増えず、また価格が落ちる・・・」

「伐れる木のある山は有限で、再造林には及び腰。働き手も減少の一途。
 山主も働き手も、費やした資金や労力に見合う見返りがあるとは言いがたい
からだ。近い将来、伐れる木がなくなり林業継続の意欲が失われることで、そ
の地域の林業は破綻するだろう」

 そんな地域がたくさんあると言うのだ。そこからいろいろな絶望的状況が描
かれていく。あまりにいろいろあるのでとてもじゃないが全てを要約するのは
不可能だけど、いくつか挙げてみよう。

 世界の木材の供給は、熱帯雨林の過剰伐採などで悪くなりつつある。日本で
は戦後の大造林によって1000万ヘクタールの人工林を作った。その多くが植え
付けから50年を経て、良質の木が「使える大きさ」に育ってきている・・・と、
一見、未来は明るそうだ。というか、なぜこんな状況で絶望しなきゃならない
のか?

 なぜか。国産材では足りなかった時代に入ってきた輸入木材の流通ルートが
整備されているので、国産材の流通ルートが整備されていない。バブル崩壊や
阪神淡路や東北の震災、人口減少による住宅着工件数の減少と、先々月紹介し
たいわゆるソロエコノミーと言うか、独身者が増えているせいか、一戸あたり
住宅の面積も減少しているので需要が増えない。

 そして補助金が悪用される・・・。林業とは山主(要するに木のオーナー)
や組合、伐採業者などが関係者として出てくるのだが、補助金はたいてい伐採
業者に入る。伐採業者は木を切るのが仕事であるからどんな品質の木材でもか
まわない。

 大型の林業機械によって「効率化」をすすめようとすると、一本一本、木を
見て間伐をするなどの手間はかけられない。すると何でもいいから一ヶ所でで
きるだけ大面積で木を切ろうとする。だから安く叩かれる。

 そして林業は事故が多く、知識や経験がない人がやると、とても危険な職業
なのに熟練者がどんどん減っていなくなっている。

 だから下手な林業機械の導入は山を傷つける・・・そんな「都合の悪い真実」
がてんこ盛り。ホントにそこまで状況はひどいのかと、にわかに信じがたいの
だが、著者はこの分野の日本唯一のジャーナリストだ。大げさに煽っているわ
けではないはずだと思う。

 最後にはもちろん、未来のモデルになりそうな例も書いてあるのだが、著者
は決して林業の未来を楽観視はしていない。

 第一次産業で、農業は花形になるのだろうか?わりと本も多いし、色々な人
が一般の人向けに書いている。漁業関係の本も、今探すと農業ほどではないが、
まだあるようだ。

 1次産業?と言えるかどうかわからないが、最近のジビエの流行のせいで本
屋には狩猟の本も結構並んでいる。林業の関係の本も実はそれなりにあるのだ
が、ここまで踏み込んだと言うか、主張のはっきりした批判本はちょっとない
のではないだろうか?


(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)

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■「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
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認知行動療法の本に救いを求めてみました
『マンガでわかる認知行動療法』(池田書店)
『今日から使える認知行動療法』(ナツメ社)

 おばちゃま、ここ数年、悩み事を抱えていまして。それは命にかかわること
でもなく法律が絡むものでもない、ささいな人間関係に関するもの。でもささ
いであればあるほど、悩みは深く抜け出せずにおりました。たぶん、小さなこ
とのようにみえて、おばちゃまのアイデンティティに関わり、心の奥底を揺さ
ぶる何かが含まれているのでしょう。

 困ったのはこの思い込みから脱出する方法が見つからない、つまり問題解決
の方法がわからないこと。むしろ、医療とか法律で解決できない、人に迷惑を
かけない人一人の胸の内にこもる問題こそがややこしいのだと痛感しました。

 そこで書店で買ったのが認知行動療法の本。『マンガでわかる認知行動療法』
(池田書店)と、『今日から使える認知行動療法』(ナツメ社)というバリバ
リ実用書なタイトルの本です。買ったのはつい先日です。

 認知行動療法とは、ストレスがかかったとき認知のゆがみによって判断に狂
いが生まれれ、つらくなったり不適切な行動をとってしまうということをなく
すためのスキルのこと。まあ、悩みを軽減して健康な心で過ごすためのアメリ
カ生まれの問題解決のスキルってことでいいのかな?

 購入時は藁をもすがる思いだったのが正直なところで、じっくり最初から読
み始めたのですが、認知のゆがみ云々の理論部分はわかるのですが、理論を基
にできる範囲でいいからちょっとずつ行動に移して解決策を見出すというのが
難しいと感じたのは、日本人だからなのか性格が原因なのか。

 たとえば、人見知りで孤独に悩むなら、人と話す練習をしましょうってあっ
て、◎カフェで店員に「今日は混んでますね」と言う。◎エレベーターでいっ
しょになった人と天気の話をする。◎パーティに参加して3人以上と話すとあ
るんですが、まあ、人見知りではない私でさえハードルが高いことばかり。

 夜遅く帰ってきた夫に、「こんな時間になによ」とは言わず「たいへんだっ
たわね。でも食事の支度もしてたから今度からは連絡してくれると助かるわ」
という・・・それができないから、困るのであって・・・・。

 認知行動療法のスピリットはわかるけど、シートに記入したり日記を書いた
りするのは、とてもたいへんでなんだか、もう1つ仕事をしている感じがハー
ドル高いかなと思いました。正しい解釈かどうかはわからないのですが、アメ
リカ的?っていうか、理論的だからこそ難しいかなと。

 といいつつ、今日アマゾンでまた認知行動療法の本を注文した私でした。
 もうちょっとこの分野を読んでみようと思います。

 で、私が数年かかえて、ここ最近はかなり心に負担がかかっていた悩みです
が、ひょんなことから一筋の道が見えてきたんです。それは1本のラインから
で、そのラインを見たときは、光が差して、固まっていた氷が溶け出した感じ
でした。

 実は認知行動療法のほかに、私を支えていた言葉が3つありました。

 1つはある高僧にそれとなく悩みを打ち明けたとき、「執着というものはい
つか必ず消える」と言われたこと。

 もう1つはある精神科のドクターの話で、「心も一病息災。1つ病気があっ
たほうが気をつけて長生きできるように、心に1つぐらい悩みがあるほうが心
は健康」みたいなことを言われたこと。

 そしてテレビのインタビューでの嵐の相葉雅紀さんのコメントにも助けられ
ました。嵐がブレイクしたときの心境について。「嵐がどんどん先に行くよう
で怖かった。不安でもがいた。でも、強い心を持って打ち勝つしかないと思っ
てやってきた」。

 この3つでがんばりました・・・って認知行動療法どこ行った?って話です
が。この経験から、もし誰か知り合いが何かで悩んでいたら、話をとことん聞
いてあげようと決心した私でした。

 ・・・さっきからうすうす私も感ずいていますが、今回のこの原稿、書評に
なってますか? なってませんね。すみません、ときにはこういう話もありと
いうことでご勘弁くださいませ。


大友舞子(おおとも・まいこ)
昭和20年代生まれのフリー編集&ライター。関東生まれで関西在住。
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 す。(あまりにも短いものは書評とは呼べませんので、文字数の条件を設け
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 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 台風が近づいてくると食欲が増すような気がするのは、私の気のせいでしょ
うか?(あ)

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[書評]のメルマガ vol.686

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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<117>追悼・うらたじゅん…遅くなってごめん

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→99 自分につながる糸

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第117回 因果と丈夫なこの身体・・・加藤武さん

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<117>追悼・うらたじゅん…遅くなってごめん

 60歳を越してから、身の回りで鬼籍に入る人が年々増えていくような気がし
てならない…というか実際にそうなのだ。
 最近LINEなども始めたので、これを通じて、かつての同級生の訃報を知った
りもする。

 今年は、自分もまた、病気ではないが、怪我で入院などもしたせいか、誰し
も、いつ何が起こるかわからないのだ、との思いを強くした。

 漫画家・うらたじゅんの訃報を知ったのは、今年の2月、ネットを通じて、
だった。
 あれは確か、2003年か2004年か、癌を患い手術されたと聞いていた。
 その後、順調に回復されて、漫画やイラスト以外にも、かなりアクティブに
活動されていたので、突然の訃報は意外でもあり、しばし呆然としてしまった。

 うらたさんとは、神戸の元町山手でやってた書店時代に、幻堂さんを通じて
知り合った。
 一見、磊落で、大口開けた豪快な笑い声が印象的なのだが、反面、繊細でナ
イーブな一面も持っていた。
 学年で言えば一学年上、という同世代でもあったので共通の話題も多く、か
なり気安くお付き合いもさせていただいた。

 漫画家としては寡作で、単行本は、『赤い実のなる木』(幻堂出版)、『真
夏の夜の怪人二十面相』(北冬書房)、『嵐電』(北冬書房)、『冬のプラネ
タリウム』(北冬書房)、の4冊の他に、ちくま文庫のアンソロジー『老境漫画』、
『ビブリオ漫画文庫』に、それぞれ作品が収録されている。

 漫画の作風は、おおきく二つに分かれていて、生まれ育った大阪・下町のオ
ッサン、オバハンの生態やら街のこと、家族の物語を、子ども視点でみつめた
ノスタルジックでユーモアあふれる、「やらかい作品」と、戦時中の出征学徒
の悲恋物語、あるいは、確かめたわけではないが、おそらく自身の体験であろ
う、でかいリュック背負って女ひとり、何か月にも渡ってヒッチハイクで日本
中を放浪するうちに、様々な人に出逢い、経験を積む女性の物語、といったや
や硬質な作品。

 わしは、どっちかと言うと、前者の「やらかい」方の作風が好きで、ことに、
単行本に収録されてないのがとても残念なのだが、「何の雑誌・第3号」(幻
堂出版)に掲載された『ちんちんばしら』は、うらたじゅん稀代の傑作、と思
っている。

 2008年から「読売新聞」紙上で、唐十郎の連載小説に挿絵を描いていて、そ
の縁からか、その後も同紙でカットなども描いていたらしい。
 その「読売」の挿絵の原画展が、読売新聞大阪本社であったのに、行こう行
こうと思っていた矢先に足を骨折してしまい、さらに、京都の「トランス・ポ
ップ」で開催された原画展と「偲ぶ会」もまた、開催を知ったときには既に終
わっていて、すれ違いばかり。

 でも生前のうらたさんとは、なぜか「ばったり」と鉢合わせすることが多く
て、ことに京都で開かれる古本のイベントや漫画展などで、よく出くわした。
 遭う度に、
「神戸くんだりから、なにしに来たン?」
「枚方の人間は、中書島からこっちの京都は、立ち入り禁止やで」
 と、憎まれ口を叩きあったのも、いまは懐かしい。

 反原発の活動にも参加し、デモや様々なイベントにも参加していた。
 京都では、とある句会にも、ほぼ毎回出席している、とも言っていた。
 その他、様々なイベントに、まめに顔を出していて、だから「ばったり」と
出会ったりもしていたのだが、そのアクティブさ、好奇心の旺盛さは、元・女
優という前歴にも、充分反映されていた。

 水上勉『五番町夕霧楼』の、その「五番町」や「五条楽園」、八幡の「橋本」
など、京都周辺の旧・遊廓を訪ね歩いては、写真を撮ったり、当時を知ってい
る人に話を聞いたり、もしていた。
 その辺を素材とした作品を構想していたのかも知れず、それが読めなくなっ
たのもまた、残念でならない。

 うらたじゅんに対してもまた、安らかに眠ってなどくれるな、と言いたい。
 ずっと幽霊となって、この世の漫画を見つめ続けてほしい、と願っている。

 ところで、『ちんちんばしら』は、ネットで検索すると、その一部は読める
…かもしれません。


太郎吉野(たろう・よしの)
阪神タイガースお膝元在住。右投げ右打ち。趣味は途中下車、時々寝過ごし乗
り越し、最長不倒距離は三重県名張。
ちなみに「阪神タイガース」の「阪神」は、「兵庫県阪神地方」を指します。

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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99 自分につながる糸

 広島国際アニメーションフェスティバルをご存知でしょうか。
 古い友人が初期から関わっていることもあり、いつか行ってみたいと長年思
っているのに、いまだ叶っていません。

 どんなアニメーションフェスティバルか、公式サイトの説明を引用します。

-----
 広島国際アニメーションフェスティバルは、2年に一度、広島市で8月に開
催される、国際アニメーションフィルム協会(Association Internationale du 
Film d' Animation - ASIFA) 公認の映画祭です。『愛と平和』の精神の下、
アニメーション芸術の発展を通した国際異文化交流を促進しながら、映像メデ
ィア文化の振興・発展に寄与しています。
 アヌシー、ザグレブ、オタワと共に、世界4大アニメーションフェスティバ
ルの一つとして知られ、米国アカデミー賞公認およびASIFAハリウッドのアニ
ー賞公認の映画祭でもあります。
-----
http://hiroanim.org/index.php

 前回の第17回フェスティバルで最優秀を受賞作品『わたしの糸』が絵本にな
りました。

 『わたしの糸』
 トーリル・コーヴェ 作 青木 順子 訳 西村書店

 たくさんの人の前に糸がさがっています。どこからおりてきている糸なので
しょう。

 少女は自分の糸だと思った赤い糸をひっぱってみます。

 すると、ぐいっと身体ごとひっぱられ、糸が空から世界を見せてくれます。
 深い森におろされてみると、そこには小さな女の子が一人ぼっちで座ってい
ました。

 一人で大丈夫?

 少女は女の子の世話をしはじめます。
 そしていつのまにか少女は……。

 シンプルな糸が人生の輪郭のように伸び縮みし、いつのまにか大人に成長し
ていき、女の子も大きくなっていく。

 線は視覚化された人と人の縁のようなもの。
 人の数だけ糸があり、糸の先にはまた人がいて。

 自分の糸は誰につながっているのかしら。
 するするとのびていく糸がみせてくれる人生の一片。

 アニメーションには言葉がありませんが、
 絵本では詩的な言葉が添えられています。

 公式サイトではアニメーションも視聴できますので、
 絵本とあわせてぜひ。

 https://www.nfb.ca/film/threads/
 
 2020年、来年が次に広島アニメーションフェスティバル。
 行けるかな、どうかな。
 
 次にご紹介する絵本は中国の絵本作家ワン・ユーウェイさんによる
 『ゆきのひにあえたら』
 長山さき 訳 ほるぷ出版

 ふわふわのネコのしっぽに眠る女の子の表紙。

 ん? しっぽで眠るってことは女の子は小さいのかしら。

 そう思ってページを繰ると、たしかに小さかかった。
 なにせ、雪の日、葉っぱの下で眠っていたのですから。
 それを絵描きのネコさんがみつけて、家につれて帰ったのがはじまり。

 芸術家の雰囲気を醸し出すネコさんの職業は絵描き。

 写実的に描かれているネコさんのふわふわの毛並みがとてもリアルです。
 表情も豊かで、突然始まった女の子との暮らしを楽しんでいるのが伝わって
きます。

 冬の話なのですが、暖色系のやさしいタッチの絵なのでほっこりあたたかい
気持ちになります。そう思わせる絵がとても魅力的。一枚一枚じっくり見入っ
てしまいます。

 ところで、ほるぷ出版は創業50周年ということで、品切れで手に入りづらか
った絵本が新版として3冊復刊されています。

 『ちいちゃな女の子のうた “わたしは生きてるさくらんぼ”【新版】』
 デルモア・シュワルツ ぶん バーバラ・クーニー え
 しらいしかずこ やく

 『なんにかわるかな【新版】』もじのないえほん
 パット・ハッチンス 作

 『くさいくさいチーズぼうや&たくさんのおとぼけ話【新版】』
 ジョン・シェスカ 文  レイン・スミス 絵  青山南 訳

 クーニーの絵本は本文のフォントを新しくし、デザインを整え、従来ピリオ
ドだった箇所は読点に置き換わっています。

 手に入りやすいいま、お手元に置かれるチャンスです!


(林さかな)
会津若松在住。「本の雑誌」新刊めったくたガイド海外文学担当。
http://1day1book.strikingly.com/

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第117回 因果と丈夫なこの身体・・・加藤武さん

 加藤武という役者をご存知だろうか。

 2015年(平成27年)7月31日に享年86歳で逝った名優。文学座所属で舞台俳
優であるが、テレビにも映画にもたくさん出演していた役者である。映画では
黒澤明監督作品、「隠し砦の三悪人」「蜘蛛巣城」「天国と地獄」「悪い奴ほ
どよく眠る」など。市川崑監督の「犬神家の一族」を皮切りに金田一耕助シリ
ーズの映画で橘警部ないし等々力警部。釣りバカ日誌シリーズでは秋山専務。
テレビではNHKの大河ドラマでは戦国時代を舞台にした作品で、武将役の常
連だった。
 彼の話を聞いて、それをまとめて「キネマ旬報」に連載が始まったのが2015
年秋から。本人が鬼籍に入ったのが、その年の夏。そして、それを単行本化し
た本書は加藤武の5年目の命日である2019年7月31日に初版発行となった。

『加藤武 芝居語り −因果と丈夫なこの身体』(市川安紀 著)(筑摩書房)
(2019年7月31日初版第一刷)

 加藤武さんの印象はまさに“丈夫”。映画やテレビの中で倒れたり転んだり
走ったりする役が多かった。老境に入って出演した大河ドラマ「風林火山」
(2007年)では、信玄の譜代家臣役で出演しており、それこそ倒れたり這いつ
くばったり走ったりしていた、その姿がやけに印象的だった。

 執筆子は10年ほど前に新宿の紀伊国屋で加藤武さんと遭遇している。まさに
遭遇ということばが相応しい会い方だった。地下からエレベータに乗って5F
か6Fに行こうとしていたら1Fで止まり、扉が開くとひょいと加藤武さんが
乗ってきた。箱の中の先客はやつがれひとり。操作ボタンの前に立っていたや
つがれは「何階ですか」と尋ねた。加藤武さんはじろりとやつがれを睨めつけ
「4Fね」と云う。「はい」と4Fボタンを押した。役者の加藤武さんだとい
うことは彼が箱に入ってきたときからわかっていたので、もいちど加藤武さん
を振り向き、にっこりと会釈した。そしたら加藤武さん、強面のその顔が一気
に破顔して、かわいい笑顔になったのであった。エレベータはあっという間に
紀伊国屋ホールのある4Fに到着し、そこで、「ありがとう」とのたまいなが
ら手を上げてさっと出ていった。その姿がとても印象的だった。執筆子はいま
もあの箱の中での破顔した加藤武さんの笑顔が忘れられないのである。

 閑話休題。本書について。
 加藤武さんの伝記、というものではない、交遊録の部分もあるが、それだけ
で収まらない。本人のさまざまな体験と苦労した話。それと交流のあった人た
ちの記憶。
 彼は、本書の中で云う。「生き残り組の使命」と。どういうことか?
 「・・・・・生き残りとしてとっても大切なことがあんの。ジジイがしゃべ
るときに気をつけなきゃいけないのは、やっぱりある歴史の断定権を持ってい
るでしょ?誰も知らないんだもの。・・・・・」ということである。「たとえ
ばの話、もし三船(敏郎)さんヒドい人だった、と云ったら、みんなそう思っ
ちゃう。・・・・・それは語り伝える側としての責任があるよね。
・・・・・」

 三船敏郎、黒澤明、市川崑、杉村春子、小沢昭一、北村和夫、フランキー堺、
西村晃、太地喜和子・・・・・。

 本書で加藤武さんが語る人々は、みんなもう既にこの世にはいない。だから
「生き残り組の使命」なのだ。悪口がそのままその人の評価になってしまう。
だから悪口は云わない。というよりもむしろ、嫌いな人の話はしない。好きだ
った人、尊敬している人のことを加藤武さんは喋りまくった。そして喋り尽く
して、86歳で逝ってしまった。もしかしたら喋り尽くしていなかったかもしれ
ない。

 本書は笑いが随所にある。加藤武さんの語りがおもしろいのもあるが、ライ
ターの筆力もあるだろう。加藤武、という役者からほとばしり出た、大きなエ
ネルギーをしっかりと受け止め、それを紙の上に文字として蘇らせている。そ
んな印象を持った。

 加藤武さんのエネルギー、そして彼が喋った人々からもエネルギーを感じ取
ることができる。それが、本書をしてぞくっとしたおもしろさに繋がりさせし
めているのだろう。

 本書は、一応加藤武さんの人生をなぞっている。生まれや家のこと。そして
かの泰明小学校のときのこと。歌舞伎や落語に幼少時から親しんだこと。そし
て戦争。麻布高校のこと。早稲田大学のこと。教員になって一年で辞めてしま
い、文学座の門をたたいたこと。杉村春子のこと。黒澤明のこと。三船敏郎の
こと。盟友・小沢昭一のこと。その他たくさんの友だちや役者のこと、監督の
こと。

 彼にとってすべてが宝物であり、すべてが自分を形作ったそのものだったの
だ。そういう幸せな人間関係を感じさせる。素晴らしい才能に囲まれて、素晴
らしい人生だったに違いない。そういうことをつらつらと感じるので、読んで
いてこちらまで幸せな心持ちになるのである。

 今月もいい本にであった。


多呂さ(台風19号。この原稿はあす台風がやってくる、という日の夜に脱稿し
ました)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ― 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510

・『支え合い・学び合いで育つ「わたし」』(エディット・パルク)
  http://web.kyoto-inet.or.jp/people/cogito/%8Fo%94%C5%88%C4%93%E0/%8Ex%82%A6%8D%87%82%A2%81E%8Aw%82%D1%8D%87%82%A2.html

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

 〒142-0041 東京都品川区戸越5-4-3 アズ品川ビル4階
       ビズナレッジ株式会社内 [書評]のメルマガ 献本 係

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

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■あとがき
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 配信が遅くなりました。台風19号は大きな被害をもたらし、去っていきまし
たが、引き続き、台風20号と21号が接近中とのこと。出来得る限りの対策を考
えておきたいところですね。(あ)

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[書評]のメルマガ vol.685


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■■ [書評]のメルマガ                2019.09.20.発行
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■■ mailmagazine of book reviews  [ガラケー派にとっては迷惑千万 号]
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■コンテンツ
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★「トピックス」
→ トピックス募集中です

★「音楽本専門書評 BOOK’N’ROLL」/おかじまたか佳
→ #110『八月の光』

★「目につく本を読んでみる」/朝日山
→ 『人生の勝率』の高め方 土井英司 角川書店

★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→ 『ジャニーズは努力が9割』(霜田明寛・著 新潮新書)

★【募集中】献本読者書評のコーナー
→ 献本お待ちしています!

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#110『八月の光』

 先月、ウィリアム・フォークナーの名作『八月の光』を読んだ。理由は八月
だったから。

 大部の書ではあるが、小説だし、再読だし、そんなに手こずらないと思った
のに、案外時間がかかった。再読とはいえかなり久しぶりでほとんど何も覚え
ておらず、読み始めてもまったく記憶が蘇らない。実質的には初読に等しかっ
たせいだろう。

 舞台は、アメリカ南部。行ったことはないが、その八月といえば、やはり暑
くて湿気が多いのだろうか。まして時代は1930年頃。冷房もない。

 物語の構造は複雑だが、中心にあるのはひとつの殺人放火事件である。それ
でこのアメリカ文学の古典が、昔のミステリー解説本ではベスト100に入って
いたりする。

 とはいえ、謎解きではない。犯人はクリスマスであると明かされている。

 もちろん、12月25日が人を殺し、家に火を放ったわけじゃない。ジョー・ク
リスマスという名前の男が犯人なのだ。彼はイエス生誕の日、孤児院に捨てら
れていた赤ん坊だったので、そんな変わった名を付けられた。一見白人だが、
実は白人の娘と黒人の男の間に生まれた混血児だった。このことの意味は1930
年代の南部アメリカではとても重い。

 養子にもらわれるが、厳格なクリスチャンだった養父の暴力的な支配に反抗
し、18歳で家出。以後、放浪の旅の末、33歳で物語の舞台であるジェファーソ
ンに流れ着く。

 そこで彼が出会ったのは、北部から移住して来た黒人解放論者で周囲から孤
立していた一家の、最後の生き残りである孤独な女性、ジョアナ・バーデン。
彼女の家の裏にある黒人小屋に住みつき、肉体関係を持つが、それは普通の恋
愛とは異なる歪つな形をとる。その結果、二人の錯綜した心理が、物語を殺人
放火という破局へ導くのである。

 この物語に覆いかぶさっているのは、重苦しい宗教の影だ。

 確かにジョー・クリスマスは、黒人の血が混じっているがゆえに人種差別を
受けるのだが、彼の人生を狂わせたのは、むしろキリスト教だという印象を受
ける。その名前といい、養父がクリスチャンだったことといい、物語当時33歳
という、キリストが十字架に掛けられた年齢と同じであることといい、随所に
宗教的刻印を押された人物でもある。

 いまでもこの地域はバイブル・ベルトと呼ばれ、原理主義のキリスト教徒も
多いそうだが、この時代、信仰は一層深く生活に根を下ろし、人々の思考を縛
っていた。

 宗教心があるのは悪いことではないが、キリスト教というのはユダヤ教以来
の怒れる神を戴いているせいか、イスラム教同様どうも血なまぐさくなりがち
だ。

 さらに、脇役ながら重要な人物であるハイタワーという男も、元牧師である。

 彼はジェファーソンの町に赴任してきたが、妻との間がうまく行かず、その
トラブルが原因で牧師の地位を追われる。だがそれでもこの町に住み続け、近
隣の人たちからも忌避されながら、孤独に老いを重ねている。

 この人物が登場する場面で、フォークナーは何度か「音楽」について言及し
ている。

 それはもちろん、ハイタワーが牧師だったからであり、教会に音楽はつきも
のだからだ。

 物語の終わり近く。ハイタワーは自分の家の窓辺で、暮れていく町を一人眺
めている。

 水曜である。当時は日曜の朝と夕、そして水曜の夜、人々は礼拝のために教
会へ集まった。だから彼は、まもなく町の人たちが近くの教会へやって来るの
を知っている。そして時間になれば、音楽が始まる。それはオルガンの音楽だ。
かつては数えきれないほど聴いた音楽。いまは教会を追われ、間近に聴くこと
が叶わなくなった音楽。

 しかしハイタワーは、その音楽を感動的だとは考えない。「あの熱狂的で厳
粛で深遠な十字架刑の姿と態度を再現する」ものだと思い、それは「冷酷で執
念深い性質を持ち、用心ぶかくて、我が身を犠牲にする情熱もなく、頼み、懇
願するのだが、それは生をではなく、死をこい願っているのであり、他の新教
音楽と同様、人々に生命を禁じるその高い調子は、まるで死が賜物であるかの
ように、死を請求している」と感じるのだ。

 そんな風に説明されると、誰も聴きたがらないのではと思ってしまうが、教
会に集まる会衆はそれを積極的に求める。つまり彼らは、死を受け入れ、讃え
るのである。

 なぜなら、自分たちがかくも哀れな姿に創造されたことに対し、造物主たる
神に復讐したいと願っているからだ。そうハイタワーは考える。

 平たく言えば、「神め、こんな惨めな人生をわれわれに与えやがって、これ
くらいなら死の方がましだ、くそ、死を讃えて歌ってやる、ざまーみろ」とい
うところだろうか。

 すなわち、讃美歌は復讐の歌なのである。

 しかも、このアクロバティックな論理展開を、彼はさらにもうひと捻りする。

 南部人は「喜びや陶酔に耐えられない」とし、「そこから逃避するために暴
力と酒と喧嘩と祈りを用い、破滅する時にも、また、同様に、きまって暴力を
用いるのだ」と断定する。「だから彼らの宗教も当然のことに、彼ら自身やお
互いを、十字架上に追いあげるようなものになるのだ」。

 しかし、現実に自分を十字架に追いあげる人間はいない。だから代わりに贖
罪をしてくれる、スケープゴートが必要になる。

 かつてそれはイエスであった。そして1930年のジェファーソンでは、黒人で
ありながら白人女性と姦通し、放火殺人の大罪を犯したジョー・クリスマスな
のである。

 かくして、その水曜日、教会に集まった善男善女は、ローマ総督ピラトの屋
敷に押しかけ、イエス・キリストの処刑を迫った群衆に重なり合う。

 ロック・オペラ『ジーザス・クライスト・スーパースター』ではこの場面で、
群衆が「Crucify him(彼を十字架に)!」と大合唱するのだが、あの叫びが
まさにこのオルガン音楽に共鳴している。

 とはいえ、この場面は静謐だ。会衆は黙ってミサに参加し、牧師の説教に耳
を傾けている。いや、厳密には、いるらしい。なぜならその様子を、教会から
追われたハイタワーは見ることが出来ないからだ。ただ、自宅の窓辺にじっと
座って想像している。

 しかし、静かな分、ある種の恐ろしさがある。敬虔な信仰の場で、人々が心
の底で願っているのが死であるというグロテスクなコントラスト。

 そう言えば、八月は日本がアメリカに敗戦した月でもある。あの戦争にこの
国を駆り立てたのは、実は国民自身だった、という説もある。米英討つべし、
の世論に押されて、政府は開戦せざるを得なかったというのだ。

 もしそれが一面の真実なら、『八月の光』の南部人たちが神への復讐として
死を望んだのに対し、昭和16年の日本人たちは天皇という現人神への愛として
鬼畜米英の死を望み、十字架にかけようとして返り討ちにあった、とも言える。

 ともあれ、名もなき大衆の暗黙の意志が、時に大きな破局へと歴史を進めて
いくことはままあることだ。大衆の一人として、その恐ろしさは常に噛み締め
ておきたい。

 さて、このように、音楽が重要なモチーフとして登場するフォークナーの
『八月の光』は、音楽本としても優れているのだが、一方、ひとつの疑問が湧
く。

 『八月の光』に登場する音楽は、ほとんどが白人の音楽なのだ。

 物語には脇役ながら黒人たちも登場する。彼らの生活もわずかだが描かれる。
そしてジョー・クリスマスは白人と黒人の混血である。

 なのに、黒人音楽にほとんど言及されていないのは、なぜか?

 フォークナー自身白人であり、当時は黒人のコミュニティに相当深く入り込
んで行かなければ、彼らの音楽を耳にする機会がなかったのだろうか?

 しかし、一ヵ所、黒人少年が歌を口ずさむ場面がある。

「彼は歌いはじめた、平たいメロディで、リズムに溢れ、節は単調だがはずん
だ調子だった。

 あの若い、黒んぼ女

 あの子のプディング、ほしいもの言ってみな、

 さあ

 隠しゃしないで、言ってみな」

 この黒人少年の歌を「単調なメロディだがはずむようなリズムがある」と記
しているのは、ブルースを彷彿とさせる特徴で、フォークナーがまったく黒人
音楽に無知だったとも思えない。

 実際、未読だが、「ある夕陽」(原題”That evening sun”)という短編が
あり、このタイトルはW.C.ハンディが作曲した「セントルイス・ブルース」の
一節「That evening sun goes down」から取られたという。

 だが、この短編と「セントルイス・ブルース」にはそれ以外に密接なつなが
りはなく、「フォークナーとブルースをゆるやかに結びつける批評はいくつか
あるにしても、タイトルとストーリーとの関連を掘り下げて論じ、成果を上げ
ているものは、まだ見当たらない。」(「「あの夕陽」とデルタの変容 フォ
ークナーのブルース」梅垣昌子)そうだ。

 この点に関しては、まだまだ、謎である。

ウィリアム・フォークナー
加島祥造訳
『八月の光』
昭和四十二年八月三十日 発行
昭和六十二年三月二十日 二十二刷
新潮文庫

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン

最近、イベントや演劇のチケットがスマホ・チケットになっています。ガラケ
ー派にとっては迷惑千万。紙にプリントすればOKなイベントもあれば、そう
でないのもあり。ややこしいことこの上ない。いやだけどいよいよスマホを持
たざるを得ないかと検討中。実に不愉快。さて、月光グリーンの6年ぶりの新
譜『We are GEKKO GREEN』が発売になりました。こちらは愉快痛快。毎日ヘビ
ロテしております。

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『人生の勝率』の高め方 土井英司 角川書店

 有名な出版エージェントの土井氏の新著。人生ではなくて、「6次産業」の
成功の確率の高め方には一言言いたいこともあるというか、あっちこっちでギ
ャーギャー言っている者としては、タイトルにある「確率の高め方」に反応し
てしまうわけである(^^;

 舞台は都内某所。「AI時代に勝ち残るビジネススキル講座」の終了直前、司
会者が講師のD氏への最後の質問として200人の中から20代とおぼしきスーツ
姿の男性を指名したところから始まる。

 スーツ姿の男性の質問は元アマゾンのカリスマバイヤーで「人生がときめく
片づけの魔法」のプロデューサーとしても有名なDさんが書評を書くとベスト
セラーになるという噂について、書評を書くコツがあるのか?というもの。

 ここでDさんが誰なのかバレるわけだが、答えは「僕が書評を書いたからベ
ストセラーになった」のではなくて、「ベストセラーになる素材を選んで書評
を書いている」のが実際であるという。

 そこから「人間は、うまくいったことの理由を個人の能力、努力、頑張りに
求めがちですが、実際には、『選択した時点』で、結果の9割は決まっていま
す」として、成功する確率の高い集団に属して、そこからに適切なものを選ぶ
力の重要性をストーリー形式で説く。

 そして、「努力よりも優先すべきなのは、選択です」言い換えれば「努力が
報われないのは『選択』が間違っているからです」とまで宣うのである。

 コンサル時代に何百人と経営者は見てきた。Aという経営者とBと言う経営
者を見ていて、たぶん誰が見てもAの方が優秀だと思うのに、業績はBの方が
いいとか、普通にあった。こうなる理由はいろいろあるのだけど、優秀な経営
者の会社の業績が悪いのは、単に営んでいる業種の環境が悪かったこともよく
あった。逆に急成長業種だと、オツムがよさそうでない人でもブイブイ言えて
いたりもしたのですね・・・昔の某外資系○○業界とか。

 ま、それはともかく成功した経営者で、よく自分の成功要因として「運が良
かった」という人が少なくないのも、そうした選択の運、不運が実際の経営を
大きく左右することを知っているからだろう。

 なので、この主張には全く異議はないのだけど、それにしても身もふたもな
いこと書くよな〜と思いながら読み進めていく。書かれているのは、タイトル
通り人生の勝率を上げるために、どのような選択をするのかのノウハウとして

2章「選択基準」を明確にする
3章「キーパーソン」を味方につける
4章 価値ある「情報」のつかみ方
5章「運」は戦略的に呼び込める

と続いていく。

 挙げられていくノウハウの一つ一つは、読書量が多い人ならどこかで聞いた
ことがある内容も多いだろう。しかし、先に挙げた目次を読んで、「よくある
内容だな」と思う人は、なおさら読んだほうがいい。一見陳腐なノウハウでも、
この本の文脈で読むからこそ、血肉となり、脳みそに刻まれる・・・そんな書
き方をこの本はしているからだ。

 なぜこう「すっと」この本の世界に入っていけるのか・・・大きな声では言
ってはいないが、この人は相当に苦労も失敗もしている。おそらくは人生の敗
者となる1歩手前まで行ったが、踏みとどまったといった経験を何度かしてい
る。

 敗者となる1歩手前まで行って、踏みとどまれるかどうかは、その人に「自
信」があるかどうかで決まる。人生は何度失敗してもいい。というか、どんな
に有能な人でも失敗しないなんてことはない。

 DeNAを見よ。マッキンゼーのパートナーを務めた、きわめて優秀なコンサル
タントの方が創業しても八年は鳴かず飛ばずだったし、大成功した直後にまた
大失敗したじゃないか!だから問題は失敗にあるのではなく、失敗しても堪え
ない、再びチャレンジを始められる意志を持てるかどうかであって、そんな意
志を持てるか否かは「自信」の有無による。

 その「自信」を読者につけてもらいたい。そう思って書いているのがありあ
りとわかる。だから、すっと内容が頭に入ってくる。

 もちろん初めて読む内容もある。この本には「自分の『変わる力』を信じる」
という目次があるのだけど、これなんか個人的にしびれる。そう、何度もくじ
けそうになりつつも踏みとどまった人には、このせりふは刺さるはすだ。

 そしてあきらめないことの大切さ・・・やはり目次に「師匠やメンターを追
い込め」と言わんばかりのことを書いてあるのは、ここであきらめて欲しくな
かった顧客(著者の本職は出版エージェントだから、クライアントだろう)を
繋ぎ止められなかったという後悔があるのだろう。繋ぎ止められていたらベス
トセラー作家に育てられたのに、できなかった。そんな後悔がなければ、こん
な文章書けないわ。

 出版エージェントとして有名な方だから、この本を読むのは出版に関心のあ
る人が多いと思うけども、そういう人だけの本にするにはもったいない。人生
に倦んでいる人は、だまされたと思って一度読んでもらいたい。たぶん、後悔
はしないはずだ。

(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)

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■「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
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努力でいける? いけない? を考えてみた
『ジャニーズは努力が9割』
(霜田明寛・著 新潮新書)


 この本のタイトルを見て、ミキの漫才を思い出した人、多いと思います。
ミキは大阪の若手漫才師で兄弟でコンビを組んでるんですね。
 弟が言います。

弟「兄ちゃん、送っといたから」
兄「何をや」
弟「履歴書」
兄「どこにや」
弟「だから、ジャニーズ事務所」
兄「なんでや!」
弟「だってジャニーズ事務所ってたいてい兄弟が履歴書を送ることから始まっ
  ているやん」と言い、小太りブサイクの兄が「なんでそんなことをしたん
  や。恥をかくだけや」と言われて
弟「だってお兄ちゃんは優しいから」
兄「優しさだけではジャニーズになれん!」
弟「だったら聞くけど、ジャニーズにはイケメンしか入れないんですかッ!?」
兄「(キレて)そうですッ!!!」

というネタです。(詳しくはネットで)

 外見を度外視して努力が9割なんて、大胆なタイトル。

 こういう本があるから、「どんな努力もします」という勘違いな人がオーデ
ィションを受けにきちゃうわけです。

 ジャニーズ・・・確かに10代でそう見栄えがよくなかった少年でも合格して
スターになっている例がないわけではありません。でもそれは、ジャニー喜多
川という、その少年の「20年後の姿が見える」という天才プロデュサーがいた
からこそで、それも例としては少なく、だいたいはイケメンが合格しているわ
けです。

 努力すれば何とかなると信じるか、努力だけではどうにもならない世界があ
ることを知るのが大事なのか・・・・うむむ、難しいよね、言いにくいよね。

 この本には、ジャニーズ所属タレント16人を取り上げそれぞれはどんな努力
したのかを書いてあります。実際に著者が会ったのは1人だけであとは芸能誌、
週刊誌などからの抜粋を基本にしたもの。つまり、いわゆる「資料書き」とい
うヤツですね。たぶん、ファンなら知っている事柄が書いてあって、コアなヲ
タなら、「これ書くならあのエピを書いてよ」ぐらいは言いそう。

 では、この本が読むに値しないのかというとそうでもありません。

 やはりたぐいまれなる資質を持った少年がさらに努力して切磋琢磨する姿は
美しく感動的。

 「アイドルは求められたところで最高の結果を出す『最強の存在』でなくて
はいけないと思うんです。音楽でも芝居でもキャスターでも、その筋の専門家
に囲まれる中で『できるね』と言わせるために、人より勉強して、人より多く
の時間を費やさなねばいけない」(亀梨和也)

 なんていうフレーズを読むと、「私も頑張ろう」って思えます。これは、ジ
ャニーズを媒体にした自己啓発本なんですね。

 あと、著者のがんばりにも敬意を表したいです。著者は実際にジャニーズの
オーディションを受けたけど、仕事に呼ばれないまま年を重ねている“ジャニ
ーさんからの電話を待っている組”(今はタッキーからの電話を待っていると
いうことになるのかな?)。30代半ばにしてライターとして数冊の著作をもの
にしつつ、がんばっている最中って感じですね。

 後半で少し、「努力が9割って書くのはムリがあるかなあ」とためらい弱気
になりつつも、そこはふんばって、最後まで「努力が9割」と言い切ったのは
お見事でした。ジャニーズに合格してもおかしくはない爽やかイケメン、いつ
か成功してテレビにコメンテーターとして出てジャニーズのだれかと共演でき
るといいね。

 大きな引き出しで同業者の私が著者に言えること、それは、

「ライターは努力が10割」。

がんばってね!

大友舞子(おおとも・まいこ)
昭和20年代生まれのフリー編集&ライター。関東生まれで関西在住。
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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ─ 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510


 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
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 表題【読者書評参加希望】
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 皆さんのご応募、お待ちしております。

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1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
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6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 結局、成功の秘訣は努力なんでしょうか。選択なんでしょうか。AIに仕事
が奪われるかというこの時代、何の分野で努力するかの選択が成功の要因なの
かもしれません。(あ)

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[書評]のメルマガ vol.684

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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<116>9月になってもウランバーナ

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→98 自由を感じる絵本のせかい

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第116回 黒澤明の贖罪

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
└──────────────────────────────────

 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<116>9月になってもウランバーナ

 小池一夫氏は、生前に数々のヒット作を生み出し、これを原作として映像化
された作品には、内外の映画監督らに影響を与えた作品も少なくない。
 クエンティン・タランティーノ監督の『キルビル』などは、映画版の『修羅
雪姫』のキャラクターと世界観を、そのまんまの形で、明治の東京から現代の
アメリカに移し換えた作品で、ラストシーンでは、ご丁寧にも『修羅雪姫』主
演の梶芽衣子が歌う主題歌まで流れてくる。

 『子連れ狼』は、やはり映画版が80年代アメリカで公開されるや、その斬新
なキャラクターと、スプラッターなアクションシーンが話題となってヒットし、
映画のヒットを受けて、原作漫画の英訳版も出版された。
 これが、アメリカで日本の漫画が翻訳出版された最初で、いわば「クールジ
ャパン」の先駆けとなった。
 また、その後アメリカで「サムライ」「ニンジャ」がブームとなったのも、
この作品がきっかけ、と言われている。

 だが、小池一夫が、漫画界に残した最大の功績は、『小池一夫劇画村塾』を
立ち上げ、数多くの才能を発掘したこと、これに尽きると思う。

 漫画原作者は、その「原作」を作画してくれる漫画家がいなければ、作品を
発表することができない。
 が、今でこそ、各社こぞって応募型の新人賞を設け、新人漫画家の発掘に余
念がないが、1970年代当時、そのようなシステムはなく、新人漫画家がデビュ
ーするのは、かなりの狭き門、だった。

 そんな状況の中で、発売されているほぼすべての漫画雑誌、及び一部の一般
週刊誌に連載を持っていると、勢い、タッグを組む漫画家は固定化してくる。
一つの連載が終わると、また同じ漫画家と組んで新しい連載が始まる、この繰
り返し。
 これでは、いずれ読者に飽きられる、できればフレッシュな新人漫画家とも
組んでみたい、と思っても、新人漫画家の発掘や育成は、今のようにシステム
化されておらず、なかなか出てこない。

 ならばいっそ、自らの手で新人漫画家を育成して、出版界に送り込もう、と
思い立ったのが、「劇画村塾」創設の直接的な動機だったそうだ。

 1977年春に「第一期」として開講された「小池一夫劇画村塾」は、業界で大
きな話題を呼んだ。
 今でこそ、大学や専門学校に「漫画学科」や「漫画コース」があるのは、別
に珍しくもなんともないが、当時、漫画を教える学校や塾、なんてものは、日
本中どこを探してもなかったのだ。

 しかも、その「日本初の漫画塾」で、塾頭として教壇に立つのが、絵を描か
ない「原作者」である、という点でも、大いに注目された。
 絵の描けない原作者が、どうやって漫画を教えるのか? と懐疑的な意見も、
当時の業界内には決して少なくはなかった。
 手塚治虫は、「絵の描けない小池さんが、どうやって漫画の描き方を、教え
るんでしょうね?」と、かなり冷ややかなコメントを発してもいた。

 が、開塾から1年後、一期生の中から、当時まだ女子大生だった高橋留美子
が「少年サンデー」でデビューし、その直後からデビュー作を元とする『うる
星やつら』の連載を開始。瞬く間に大ヒット作となる。
 さらにその後も、さくまあきら、堀井雄二、狩撫麻礼、山本直樹、とがしや
すたか、菊池秀行、板垣恵介、等々、続々と、しかも漫画界に留まらず、ゲー
ムや小説の世界にも人材を輩出するにつけ、世間の評価は一変した。

 「劇画村塾」には、わしも創設から2年後に「スタジオ・シップ」に入社し
て、その「第二期」から関わってきた。
 週に2回開催されていた授業にも、毎回付き合ってきた。

 その授業では、「絵の描きかた」など、一切教えることはなかった。
 どころか、「絵なんてなあ、ずっと描いてりゃ、そこそこ見られる絵は描け
るようになるんだ」と、塾生の作品を評価する際にも、画力や絵のテクニック
は一切問わなかった。
 さらに「描いても描いても、ずっと絵がヘタだったら、売れてから絵のうま
いスタッフを雇えばいい」とまで言っていた。

 では、ストーリーの作り方を教えていたのか、と言えば、それも違う。
 逆に、「ストーリーを作るな」と教えていた。

 教室で、自身の自慢話を交えながら、繰り返し繰り返し教えていたのは、
「読者が共感できるキャラクターを作れ」ということと、そのキャラクターを、
いかにして「起てるか」ということだった。
 まずはキャラクターを際立たせた上で、そのキャラが、何かになりたい、あ
るいは何かを成し遂げたい、ともがきながら動く、その「軌跡」が、すなわち
「ストーリー」であり、すなわち、ストーリーを作るのは、作者ではなくキャ
ラクターである、と教えていたのだった。
 砕いて言えば、要するに「俳優の育て方」と、その俳優の個性を活かす「演
出」ですね。

 そうやって、2年を1スパンとして2期、3期と回を重ね、1983年からは
「神戸校」も開講し、活動を一旦休止する1990年ころまでには、100人以上に
及ぶ様々な人材を、漫画、ゲーム、文芸の世界に輩出してきたのだった。

 劇画村塾で高橋留美子と同期の一期生だった狩撫麻礼は、30歳を過ぎてから
漫画原作者を志した変わり種だった。
 デビュー前には、主にレゲエを聴かせるロックバーを、小田急経堂の農大通
りで営んでいた。
 わしも当時は経堂に住んでいたので、コンクリートのガレージのような、穴
倉のようなその店に、度々お邪魔した。

 店は、デビューして連載を持つようになってからは手放したようだったが、
住まいがやはり経堂で、当時のわしの住まいからもごく近くだったので、夜、
ビールを買いに出かけたついで、あるいは散歩の途中に、こちらにもよくよく
お邪魔した。
 表通りから、世田谷区独特の入り組んだ路地を入ったところで、木造の、ア
パートなんだけど、なにやら福生あたりの米軍ハウスを思わせるような造りの、
いかにも「狩撫麻礼」な住まいだった。

 「こんばんは〜〜」と、相手の都合も考えずに訪ねて行くと、いつもイヤな
顔ひとつせずに、「いよ〜〜っ」と迎えてくれて、すぐに冷蔵庫からビールを
取り出す人だった。
 「仕事してたんだけど、ちょうど煮詰まってたとこでさ、ちょっと付き合っ
てよ」と、バドワイザーを注いでくれるのだった。

 ビール飲みながら、時には奥さんも交えて、漫画の話や映画の話、それに狩
撫さんの“信仰”の対象であり、ペンネームの由来でもあったボブ・マーレイ
を、熱く語る人だった。
 一見“コワモテ”で、近寄りがたいオーラを発している人だったが、一旦フ
トコロに入ってしまうと、とても気さくで、気遣いの人でもあった。

 あれは確か冬だったと思うのだが、朝、会社に向かおうと経堂駅のホームに
上がると、コートの身を丸めて、ベンチで寝ている狩撫さんを発見した。
 「狩撫さん、狩撫さん」と揺り起こすと、「…ん? あ、よ〜〜っ!」と起
き上がり、「何時?」と酒臭い息を吐きながら訊く。
 「8時半です」と答えると、「ん〜〜、じゃ、もうちょっと寝るわ。これか
ら会社? いってらっしゃ〜〜い」と、コートひっかぶり、またベンチに横た
わるのだった。

 どうやら、どっかで夜通し飲んで、始発で帰ってきて、そのままホームのベ
ンチで寝ていたらしい。
 狩撫麻礼は、自身の作品世界を、身を持って生活の中に体現していた人でも
あった。

 その狩撫さんが亡くなったのを知ったのは、昨年1月の逝去からかなり経っ
てのことだったのだけど、ここ何年、」いや何十年も会ってなかったにもかか
わらず、なにやら大きな喪失感に襲われた。
 あの経堂の部屋のことなど思い出しては、その夜一人で、ビールで献杯させ
ていただいた。

 あの経堂の部屋で、つげ義春の漫画が好きだと言うと、「これ、まだ読んで
なかったら、貸すよ」と、当時発売されたばかりだった晶文社『必殺するめ固
め』を借りて持って帰って、そのうちに返すつもりが、もう四十年も借りっぱ
なしになってしまったけど、狩撫さん、これは、形見としていただいておきま
す。


太郎吉野(たろう・よしの)
阪神タイガースお膝元在住。右投げ右打ち。趣味は途中下車、時々寝過ごし乗
り越し、最長不倒距離は三重県名張。
ちなみに「阪神タイガース」の「阪神」は、「兵庫県阪神地方」を指します。

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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98 自由を感じる絵本のせかい

 一度みたら忘れられない絵本。
『うっかりおじさん』
 エマ・ヴィルケ 作 きただいえりこ訳 朔北社

 絵本の中にいるおじさんが、読者に語りかけてきます。

「きみ、ちょうどいいところにきてくれた!
 めがねがみつからないんだ。みなかったかい?」

 ぎょろりとした目のおじさんが、めがねを探し、
 見つかると、また別の物を探し始め、
 自分で見つける気はサラサラなく、人まかせ。

 そんなうっかりおじさんが最後にうっかりしたものとは……。

 絵本の見開きページにもちょっとした仕掛けも施され、
 すみずみまでじっくり読む&見るが楽しめます。

 スェーデンのすぐれた絵本に贈られるエルサ・ベスコフ賞を受賞しており、
 ユーモア大好きな子どもや大人の方へのプレゼントにもぴったりです。

 もう一冊、朔北社の絵本をご紹介。
 『レナレナ』
 ハリエット・ヴァン・レーク 作 野坂悦子 訳 

 30年ぶりの復刊絵本。
 熱狂的なファンをもつこの絵本は復刊が長らく待たれていたもの。
 
 レナレナは不思議なことを自然体で受けとめる少女。
 
 高野文子さんの『るきさん』がお好きな方はきっとツボにはまるのでは。
 漫画ではありませんが、コマ割された絵はグラフィックノベルの雰囲気も感
 じます。

 ネズミに追いかけられて髪の毛を食べられても、びっくりせずに、ネズミが
 食べやすいようにさかだちするのがレナレナ。

 雨が降っているときは、雨を味見して雨茶(あまちゃ)を入れるレナレナ。

 レナレナを見ていると自然と気持ちがほぐれてくるので、休憩タイムにもっ
てこい。

 読んでいるとレナレナのマネしてみたくなりますよ、たぶん。

 『すてきってなんだろう?』
 アントネッラ・カペッティ 文 メリッサ・カストリヨン 絵
  あべけんじろう あべなお 訳 きじとら出版

 楽しみにしていたきじとら出版さんの新刊。
 第25回いたばし国際絵本翻訳大賞 最優秀翻訳大賞受賞作。

 ご夫婦の共同翻訳で見事、翻訳大賞を受賞されました。

 「すてき」ってどういうこと? どんなもの?
 「すてきないもむしさんね」
 と言われたいもむしは、
 初めて聞いたこの言葉の意味を知りたくて、
 熊やリスなど
 森で出合う仲間たちにたずねます。

 それぞれの「すてき」を聞きながらたどりついたのは……。

 シルクスクリーンを使った鮮やかな中間色がすてき(ふふ、こういう時にも
 使いますね)な雰囲気をつくっています。

 自分の「すてき」って何だろう。
 考える時間も心地よく楽しめます。

 『カルメラのねがい』
 マット・デ・ラ・ペーニャ作 クリスチャン・ロビンソン 絵
 石津ちひろ訳 すずき出版

 7歳の誕生日を迎えたカルメラ。お兄ちゃんと一緒に町に出かけられる年齢
 になったのが嬉しくてたまりません。

 一緒に町に出かけたときにカルメラがみつけたタンポポ。もう綿毛になって
 いたのですが、お兄ちゃんはわたげをふくときは願い事をするときだと教え
 てくれます。

 カルメラはどんな願い事をするのでしょう。
 あぁいいなぁと思えるラストが待っています。

 本書は『おばあちゃんとバスにのって』のコンビが描いた絵本第二弾。
 心を動かされるしっかりした物語に、コラージュを用い、デフォルメされた
 やわらかい色使いの絵がぴったりあっています。

『いっぽんのきのえだ』
 コンスタンス・アンダーソン 作 千葉茂樹 訳 ほるぷ出版

 木の枝からみえてくる自然を描いた科学絵本。

 一本の木の枝を、アジアゾウはハエたたきとして、うるさいハエを追い払い
 チンパンジーはスプーンとして使い、
 ダイサギはプレゼントとしてオスがメスに差し出し、巣作りをする。

 木の枝一本からみえてくる動物たちの暮らし、
 切り口ひとつで世界はまた新しく広がることを感じます。

 コラージュ、にじみ絵など様々な手法であたたかみのある写実的な絵が描か
 れ、ズームアップで描かれた動物たちがみな生き生きしています。

 最後にご紹介するのは伝記絵本です。

『「映画」をつくった人 世界初の女性映画監督アリ・ギイ』
 マーラ・ロックリフ 文 シモーナ・チラオロ 絵 杉本詠美 訳 汐文社

 映画史の研究者の中にはアリス・ギイではなく別の人物が最初に映画をつく
 ったという人もいるようですが、この絵本ではアリス・ギイが世界初の女性
 映画監督として描かれています。

 絵本では各エピソードのタイトルに、アリスが監督した映画の作品名を用い
 られ、それも劇場でみるようなタイトルの雰囲気で書かれ、映画の空気感を
 出しています。また、巻末には、映画それぞれの内容もダイジェストされて
 いるので、映画そのものにも興味がわきます。

 伝記絵本を多く手がけている作者は、今回も文字数に限りのある絵本の中で
 リズムよくアリスを紹介し、人物像を浮き彫りすることに成功しています。
 伝記絵本は絵と言葉の両方で語ることにより、その人となりが立体的にイメ
 ージできるので、幅広い年齢層が楽しめるのがうれしいところ。

 明るい色彩で描かれ、意志を感じるくりっとした目が印象的なアリス・ギイ。
 彼女のつくった映画をみてみたくなりました。
 

(林さかな)
会津若松在住。「本の雑誌」新刊めったくたガイド海外文学担当。
http://1day1book.strikingly.com/

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第116回 黒澤明の贖罪

 映画、それも黒澤明のことになると筆が進む。
 今月も黒澤明関連の書籍にお付き合い願いたい。

 ユニークな黒澤明論に出会った。しかし、論者の間では割と重要なテーマで
あり、さまざまな人が論評を加えているのだが、このことを黒澤明の中心に据
えたものは、執筆子にとって初めて出会ったものだ。
 そのテーマとは、“黒澤明はなぜ徴兵されなかったのか?”という問題であ
る。壮健な成人男子なら誰でも彼でも徴兵され、兵隊として何かしらの義務を
果たさねばならなかったあの時代において、終戦時に35歳であった黒澤明はな
ぜ徴兵されなかったのか? 180センチを越える身長を持っている偉丈夫だった
のに、どうして兵隊に取られなかったのか?

『黒澤明の十字架−戦争と円谷特撮と徴兵忌避−』(指田文夫 著)(現代企
画室)(2013年3月25日)

 著者の指田文夫氏は、2012年まで市役所に勤務しながらさまざまな評論やエ
ッセイを発表している文筆家であり、黒澤明についての評論も数多い。
 本書は指田氏による黒澤明が徴兵されなかったことについての評論である。

 本書では、まず東宝という映画会社について分析する。著者によれば、東宝
という映画会社は、円谷英二率いる特撮の専門家集団を所有していることによ
って、戦時中は軍部と特別なつながりを有していた。実際、山本嘉次郎監督作
品で円谷英二が特撮監督を務めた戦争映画『ハワイマレー沖海戦』(1942年)
では、戦後それを観た米軍が実際の海戦を撮ったと勘違いするほどの完成度の
高い特撮技術であった。その特撮集団は、戦争中に兵隊訓練用のフィルムを数
多く手がける。そのように軍部に協力することによって、他の映画会社よりも
より多くのフィルムの供給を受けていた。東宝は戦争遂行に協力しつつ、他社
よりも多いフィルムを使用して、直接戦争に関わる映画だけでなく、さまざま
な映画を制作した。

 むろん当時は、男女の色恋を描くことや反戦の映画が御法度であるから、映
画は程度の差こそあれ国民を鼓舞し戦争を賛美した映画を作らなければならな
かった。しかしそうであっても、国民の士気を高めるためであれば、戦場と兵
隊と銃後の守りだけの映画ではないものも作っている。黒澤明監督作品『姿三
四郎』(1943年)はその代表的な映画である。

 東宝は、特撮集団を使って戦争に協力しつつ、撮影や照明など映画作りのた
めの職人を徴兵から守った。戦争遂行のために最大限の協力することによって、
映画制作者たちの徴兵を免除してもらった。黒澤は監督という職人として、東
宝によって守られたのだった。

 それが著者、指田氏の考えである。

 そして、1945年(昭和20年)8月15日を迎える。この日を境に世の中は 180
度逆さまになった。東宝では戦争に協力したことによるその反動が、戦後最大
と云われる労働争議に発展した。

 さて、黒澤明である。黒澤明の本質は贖罪意識である。黒澤は、自分は戦争
に行かずに、国内で戦争賛美映画を作り、たくさんの若者を戦場に送り込み、
死なせてしまった・・・という罪を背負い、終生その想いを自己の中に培養し
ていた。黒澤は徴兵を逃れた、という贖罪意識で映画を作っていた。彼のまじ
めな性格は、一兵卒として出陣することにあった。しかし期せずして、会社に
守られて戦争に行かずに映画を作り続けることができた。だから戦後は、その
罪滅ぼしのために、贖罪のために映画を作り続けたという。

 著者がそういう想いを感じたのは「静かなる決闘」(1949年)を観たときで
あった、という。軍医として南方でけが人の手術をしていた医師(三船敏郎)
は、素手で患部に触れ、そのために梅毒に感染してしまう。戦争から戻った医
師には婚約者(三条美紀)がいる。医師は婚約者に梅毒に感染していることを
最後まで云わない。そして婚約者は去って行く。

 つまり、この医師は黒澤そのものなのである。すなわち、「自分の責任では
なく梅毒に罹った」=「自分から進んで徴兵を免れたわけではない」というこ
とである。

 黒澤は、自ら罪の告白をした。
 そしてその後も黒澤の贖罪は続く。著者によれば、その後の「野良犬」(19
49年)、「醜聞」(1950年)、「羅生門」(1950年)と“罪を背負った人間”
を描いている、という。そして、その“罪を背負った人間”がテーマである
「羅生門」は西欧人の心を奪い、ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を受賞した。

 ここまでは、いくつか首を傾げる処はあっても、まあ納得できる話だが、著
者によれば、かの「七人の侍」(1954年)も黒澤の贖罪意識による映画であり、
「赤ひげ」(1965年)も懺悔と許しの映画である、という理屈にはちょっとつ
いて行けなかった。素晴らしいこじつけに思えて仕方ない。詳細は本書を読ん
でみればよいだろう。

 黒澤明は、誰も戦争の責任を取らなかった戦後の日本において、自分の作品
の中で積極的に戦争の責任を取っている。と著者は云う。
 なるほど、そうかもしれない。でもそうではないかもしれない。黒澤に贖罪
意識はあったであろう。しかしそれだけが彼のあの作品群を制作する主なエネ
ルギーであったとは思えない。
 本書は黒澤明論として面白い展開を取っていると思った。

多呂さ(思えば、8月18日(月)を境に季節が変わりました。連日、雨が降る
季節になっています。ご自愛ください)
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#109『ドイツを読む愉しみ』

 以前この欄で「クラシックはあんなに長くないとダメなのか?」と書いたこ
とがある。
 本書に、その答えを見つけた。

 シューベルトの音楽は長い。
 いや、長いんだそうだ。
 つまり、シューベルトをちゃんと聴いたことがないのだが。

 ともあれ、その理由は従来、「構成力がなかったので、曲をうまく終結させ
られず、だらだら長くなってしまった」と説明されてきたと言う。
 要は、しまりのない作曲家なのか。女性と別れるのも下手で、ずるずる行っ
ちゃうタイプだろう。

 しかし、本書『ドイツを読む愉しみ』の著者、高橋英夫はこれに異を唱える。
 楽曲分析的にはそうなのかも知れないが、文学的に批評するなら、違う答え
が見い出せる、と言うのである。

 この人は、基本、ドイツ文学者。旧制一高から東大独文科という、かつての
文化系エリート・コースを歩み、評論家となった。しかし、ドイツ文学に留ま
らず、小林秀雄や西行を論じ、ドイツ=オーストリアのクラシック音楽につい
ても優れた文章を書いている。

 本書も、ドイツ文学を論じたものが大半で、かつタイトルも「ドイツを読む」
なのだが、冒頭に置かれたのは「音楽の中から」と題する一章で、「バッハ・
エスキス」「謎としてのモーツァルト」「内部(を/から)敲く音 ベートー
ヴェンを読む」「変幻のエントロピー シューベルトを読む」の音楽論4篇が
まとめられている。
 とはいえ、そこはやはり文学者の音楽批評なので、「楽曲分析的」ではなく、
「文学的に批評」することになるのだ。

 その最後の一篇で、「構成力がなかったから」などという残念な理由とはま
ったく異なる、シューベルトにおける長大さの意味が指摘されているのだが、
しかし、「変幻のエントロピー」とは何なのか?

 エントロピーは十九世紀、熱力学から生まれた概念。簡単に言うと、ある状
態がどれだけ混沌としているか、その程度を数学的に表す。したがって、エン
トロピーが増大する、と言えば、どんどん混沌としていく、ということ。そし
て熱力学の第2法則によると、「閉じた系では、エントロピーは増大する傾向
にある」とされる。つまり、自然はほっとくとどんどん混沌としていく、ので
ある。

 例えば風呂が熱すぎた時、水を入れる。もし自然が秩序だった状態を保つな
ら、熱い湯と冷たい水は分離したままであるはず。ところが、湯と水は混沌と
混ざり合い、湯でも水でもない、中間のぬるま湯に落ち着く。エントロピーが
増大して、平衡に達したわけだ。

 そしてこのエントロピーには、もうひとつ重要なポイントがある。「不可逆
性」だ。時間が決して後戻りしないように、エントロピーの増大も後戻りしな
い。ぬるま湯がその内また湯と水に分離することはないのである。

 この熱力学の考えが、二十世紀にはもっと広く捉えられるようになり、文明
論や社会システム論へ応用され、日常の混沌まで飲み込んでいく。挙句、あな
たのデスクの上が、ほっとくと雑多な物に占拠されて混沌となるのもエントロ
ピーの増大であり、自然なことなのだ、決してあなたがずぼらなせいではない、
ということになる。

 その先鞭をつけたのが小林秀雄で、ある友人は彼が現れると「エントロピー
が来た」と揶揄したらしい。それほどその頃の小林秀雄は、ことあるごとに
「エントロピー」「エントロピー」と言っていたんだろう。

 この混沌は、時間にも及んでいる、と著者は言う。
「生活や社会組織の中に設定される各種の会合の時間や過程の時間は限りなく
延長されており、個人、家、社会、世界のどのレヴェルでも生存のために必要
なもの、道具、諸条件が途方もなく膨れ上がっている。それに連動して、絶対
必要ではなく、あってもなくてもいいようなものも空間を圧迫し、あってもな
くてもいい時間が時間軸に絡みついている。寿命の延引、人口の増殖、本や資
料の累積、ごみや廃棄物の山積。すべてについて後戻りは成立しない状況が生
じ、人間を圧迫している」

 身につまされる。断捨離が流行るのも、こうした「空間の圧迫」から逃れよ
うとする抵抗なのかも知れない。働き方改革だの業務の効率化だのも「時間の
圧迫」に対する抵抗なのかも知れない。

 なぜ、われわれが自然の命ずるエントロピーの増大に抗うかと言えば、その
先に待っているのが破滅だからだ。
「適正人口の突破、環境汚染、自然破壊のはての存在すべての熱死状態が仮想
されたからである。現代、人の意識の一隅には無意識の皮膜にくるまれた形で
終末論が埋蔵されているのだ」

 それでも、自然の法則であるエントロピーの増大には逆らえない。
 そうした状況の中で、あってもなくてもいいようなものによる「空間」の圧
迫よりも、あってもなくてもいい「時間」の方が、人間はまだしも耐えやすい。
その「長大化する時間の表現」こそがシューベルトの長大な音楽である、とい
うのが著者の考えである。

 もちろん、シューベルト本人はエントロピーなど知らない。著者が勝手にシ
ューベルトの音楽にエントロピーの増大を聴き取っているだけだ。

「シューベルトのD九六0やハ長調の大交響曲、弦楽五重奏曲、ピアノ・トリ
オなどは、いつまでも微細な変幻に嬉戯しつづけており、そこに私は一切の喜
怒哀楽を浄化してしまったシューベルトを「聴く」。しかし同じ曲に私は、近
代という時代と、その中の人間がいかにしても避けたり廃棄したりしえない一
方進行のヴェクトル、つまりエントロピー的に増大してゆく長さを「読む」。」

 音楽を「読む」ということは、要するに作曲家の意図や技術・技法の分析を
超えて、作曲家の内部にはない何かを召喚する作業なのだろう。
 だから著者は、シューベルトの長さからエントロピーを読み取り、そこから
「エントロピーが来た」とからかわれた小林秀雄を召喚する。そして小林がD
960を聴いた時、「これは西行の歌――願はくは花のしたにて春死なんその
きさらぎの望月のころ――のような曲だ」と言ったエピソードを引いて、「こ
の直観ないし連想には打たれる」と書く。

 そしてこの文章は、こう閉じられる。
「シューベルトに照らし合わせて西行のあの歌が喚び出されたことによって、
長さはいつまでも鳴っていることができる。終わりはない。解決はない。ただ
音だけがある」

 野暮を承知でこれを敢えてほどくなら、季節の循環に自らの死を同化させる
ことで、生を永遠に引き伸ばそうとした西行のように、エントロピーを増大さ
せながらそこに解決を置かないシューベルトは、熱死という終末を永遠に引き
伸ばしてくれる、ということだろう。

 これは、単なる現実逃避なのか。
 それでも最後の言葉、「ただ音だけがある」には、何か宇宙的な響きを感じ
て、立ち去りがたい誘惑がある。
 ともあれ、シューベルト、いっぺんちゃんと聴いてみろよ、ってことか。


高橋英夫
『ドイツを読む愉しみ』
1998年9月25日 第1刷発行
講談社

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
再就職が決まらずに一年以上ぐずぐずしていたら、昔の同僚から誘われて、前
の仕事へフリーランスの形で舞い戻ることになりました。それでも、本格的に
フリーでやるぞ、というふんぎりもつかず、未だに名刺をつくっていません。
これもシューベルト的引き伸ばしか。いやいやただの優柔不断でしょ。

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『ソロエコノミーの襲来』荒川和久 ワニブックス

 いわゆる日本の少子高齢化については多くの人が論じている。その中で独身
者についてはあまり触れられては来ていない。

 家族を持たない、一人世帯はどんどん増え続けている。世日本の人口は減少
しつつあるが世帯数は増え続けている。すなわち、一世帯当たりの人口が減り
続けている。中でも増えているのが単身世帯だ。

 2018年の数字で単身世帯は全体の28%くらいだが、この比率がどんどん増え
続けていくと予想されている。当然経済主体としても単身主体は無視できない
大きさを持つようになってきている。ここに焦点を当てた本である。

 ちなみにソロとは、著者の定義としては「自由・自立・自給」の3要素を持
っている人で、たとえば夫と死別した高齢で寝たきりのおばあちゃんとかは含
まれない。

 読み進めて行くと分かるが。この著者は単に目先の購買層として独身者(ソ
ロ)を見ていない。これは私の解釈だが、著者はソロをこの世の一つの「触媒」
として世の中を動かして行く存在と見ているようだ。

 そういう前提の下、まず著者は、なぜ日本が未婚化、非婚化、それにともな
う少子化・高齢化に直面するに至ったかを説明する。まず1970年代に日本政府
が少子化を推進していたという事実がある。日本の人口は増えすぎているとし
て1974年に行われた日本人公会議では、子供は二人までという宣言を採択・・
その宣言から日本の人口は明らかなトレンドに入る。日本国民は、会議の宣言
に素直に従った。

 また1965年あたりから、恋愛婚がお見合い婚より多くなってくる。お見合い
婚の減少は、そのまま婚姻数の減少に比例している・・・すなわち少子高齢化
は50年ほど前から始まっている。恋愛結婚が主流となった今でも恋愛強者は3
割くらいしかいない。

 加えて収入の問題がある。男は貧乏だと結婚できないが、女は金持ちだと結
婚できなくなる。何よりも問題なのは、最も人口が多い東京で最も少子化が進
んでいると言うこと。要するに、人口が増える予測が出来そうな要素が全くな
い。

 この流れは今。即変わったとしても今後100年ほどは人口構造に大きな変化
を及ぼさない。すなわち状況は変わらないのだ。だから少子化はこれからも進
むことを前提として受け入れろという著者の主張は、一定の説得力をもつ。

 その上でソロの人たちが作り上げている市場の大きさや消費性向(たとえば
アイドルのおっかけに大金突っ込んでいるファンは、ファングッズよりも全国
を移動する交通費や宿泊費にカネを使っている)とか、世代論(70年代生まれ
とか90年代生まれとか)でソロの消費は似通ったりしない。独身者VS家族持ち
で何に金をかけるのかが全然違ってくるなど、ソロ市場の解説が続いていく。

 そんな中でも特筆すべきは、過去に日本で少子化が進んだ時代として江戸時
代を取り上げて詳細に分析しているところだ。江戸時代、日本は現代に負けず
劣らず独身者が多かった。そうした独身者を当て込んだ商売もよくあったのだ
けど、そうした商売の多くは、現代との共通性を持つ。

 ソロが多ければ外食が流行るし、江戸時代にも外食のはしりである屋台が出
現した。居酒屋の原形が出来たのも江戸時代だし、棒手振りと言う現代のフー
ドデリバリーに相当する商売もできていたなどなど、独身者を当て込んだビジ
ネスが江戸時代にも現代にも同じようにできていることを解説する。

 言い換えると、明治から現代までに日本の人口は4倍くらいに増えたが、む
しろそういう状態こと異常であって、少子化を前提として考えれば人口が4分
の1になってもせいぜい江戸時代レベルに戻ると言うことに過ぎないのだ。

 そして。ソロたちをどうやって動かす(物やサービスを買わせる)かに話が
進んで行くのだが、ここまで読んでいると、確かにそうだろうなとすんなり頭
に入って行く。

 そこで描かれている消費は、いわゆる家族を前提とした消費とは全く違う。
家族のつながりは消えることはないし、これからも存在し続ける。しかし、ど
んな商売をしていても家族とは別の存在である、ソロを市場として認識してお
く必要は確かにありそうだ。

(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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人との距離感をつかむのは一生の大問題
『友だち幻想 人と人とのつながりを考える』
(菅野仁・著 ちくまプリマリー新書)


 ベストセラーは誤解されてベストセラーになる・・・これがおばちゃまの持
論です。世のコンテンツは著者の真意とズレたポイントに読者が強い印象を持
って売れるケースが多いように思います。

 先日読んだ、少し前の話題作のこの本もその中のひとつかもしれません。

 私がこの本を知ったのは、テレビ番組でした。「小中学校時代の友だちなん
て卒業したら会わないもの」と有名予備校教師が言い、「だから学校時代に、
友だち関係で悩むなんて意味がない」と結論づけていました。おばちゃま、そ
れがとても新鮮で、「たしかにたしかにその通り」と思って、知人に話したら
「でも友だちいないとさみしいじゃん」と言われたんですが意に介せず、「友
だちなんていらないや」と思ってスッキリしたものです。

 多かれ少なかれ、周囲の人との人間関係を煩わしいと感じている人々にとっ
て、友だち関係なんて幻想に過ぎないと喝破してくれるこの本は、胃にもたれ
ていた何かを鮮やかに解消してくれる胃薬みたいなものと受け止められたと思
います。それが30万部の大ヒットにつながったのでしょう。

 でも、有名予備校教師がレクチャーするテレビ番組を見てから半年過ぎた先
日読んでみたら、また別の印象を受けました。

 著者はコミュニケーション論をテーマのひとつにする社会学者で、この本は
お嬢さんが小学校時代に友だち関係で悩んでいるのを見て書かれたとのことで
す。
 読んでいると、友だち関係の「同調圧力」や「同質性共同性」などで個人ら
しく生きるということが社会から認められない傾向について考察しています。
そしてあくまで私の主観ですが、著者のパーソナリティもどちらかといえば人
間関係からは距離を置きたい傾向にあると感じました。それがタイトルの「友
だち幻想」につながっているのかもしれません。

 著者はあとがきで「友だちをつくろうとすることなんてしょせん幻想にすぎ
ない、無駄なことだ」(中略)私はこのような寒々とした虚無的な主張がした
かったのではありません。「友だち」という言葉に象徴される、身近な人びと
との親しさや。情緒をともに共振させながら「生」を深く味わうためには、こ
れまでの常識をちょっと疑って、人と人との距離の感覚について少しだけ敏感
になった方がいいのでは、ということを述べたかったのです」と書いています。

 それなのにそれなのに、テレビでは「友だちなんて意味なし」みたいな結論
になってしまうのはどうして?(それはテレビが極めて大ざっぱなメディアだ
からです)。

 この本の残念な部分は、ではそうしたらいい?という具体論があまり書かれ
ていないところです。著者の紹介するエピソードは学生時代の思い出と大学生
同士のかかわりが少々で、今ひとつパンチがありません。(まあ、大学教員同
士のあれこれなんて書けないしね)。この点は、会社で上司や同僚との関係の
いざこざを経験したり、結婚してからは家族内のゴタゴタや近所づきあいや夫
の親族との関係でもまれにもまれているごく普通の女性と比べて経験値の少な
さが伺われて少し残念。

 おばちゃま、思うんですけど、人との距離って離れたり近づいたり、近づき
すぎて地雷を踏んで頭を抱えたり、離れすぎて見失ってしまって泣いたりの、
0から100の目盛りの中を泥まみれになって学んで、でも何歳になっても学びき
れずに右往左往するものなの。それが一生続くのよ。

 だから思春期の子どもたちに言いたいのは、こういう本を読んで勉強するの
も大切ですが、それよりも「事例研究を重ねるしかないね」ってこと。

 最後に個人的な話を1つ。おばちゃま、先日、中学校時代からの友人を亡く
しました。なぜか号泣することもなく、「まあ、最近はそれほど会うこともな
かったからなあ」と淡々としていたのですが、一か月ぐらい経ったある日、水
餃子を作ったのね。特に特徴のない餃子ですが、しいたけとニラなど野菜をた
っぷり入れて肉は少しで作るのよ。まあまあ、おいしい(自慢)。餃子の皮を
包みながら、「この餃子の作り方を教えてくれたのは彼女だった」と思い出し
たの。そうしたら、涙が止まらず、しばし餃子を包みながらさめざめと泣きま
した。

 よく、その人の体はその人が食べたもので作られていると言われますが、人
はそれまでに会った人たちによっても形作られているのです。だから、シニカ
ルにならず幻想と言われても、距離感0と100の間、地雷とI miss youの間を右
往左往しながら、これからも人とつきあっていきたいと思いました。

大友舞子(おおとも・まいこ)
昭和20年代生まれのフリー編集&ライター。関東生まれで関西在住。
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■あとがき
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 気づけば配信が10日も遅れてしまいました…。もう9月ですねー。(あ)

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[書評]のメルマガ vol.682

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■■ [書評]のメルマガ                2019.08.10.発行
■■                              vol.682
■■ mailmagazine of book reviews    [振り返るには生々しすぎる 号]
■■------------------------------------------------------------------
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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<115>ウランバーナの八月

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→97 せかいに広がる楽しいこと

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第115回 平成という時代、この30年間のこと

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
└──────────────────────────────────

 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<115>ウランバーナの八月

 小池一夫氏の訃報を知ったのは、今年四月に骨折で入院して早々だった。
 享年83。人づてに入院中とは聞いてはいたが、「まさか」と思ったのは、も
っと長生きする人だと思っていたから。
 少なくとも、水木しげると同じくらいには長生きする人だ、と勝手に決めつ
けてもいた。

 1979年、23歳でわしは、小池一夫氏が社長を務める(株)スタジオ・シップに
入社した。
 その辺の経緯は、昔「何の雑誌」に、「就職先は冥府魔道」と題して書いた
こともある。

 漫画が好きで、大学を卒業して就職先を探すに際して、漠然と漫画に携わる
仕事がしたいと思い、出版社の試験をあちこち受けるも、全て落とされて…っ
て、当たり前ですね、「漠然と」「なんとなく」そんな仕事がしたい、と思っ
てるような人間、要りませんね。
 わしが採用担当でも、落とします。

 そんなわしを、出版部門も持っていたスタジオ・シップは拾ってくれたのだ
が、面接の席で「いつから来られる?」と訊かれて、「あ、もう今日からでも!」
と勢いよく答えたら、「じゃ、とりあえず、そこでうちの本読んで、どんなの
作ってるか見といて」と先輩社員に言われたとおり、応接室にこもって壁いっ
ぱいの本棚に並べられた小池一夫作品を、片っ端から読んだ…のだけど、それ
っきりで、誰もやってこない。

 時計を気にしながら、言われた通りに本を読んでたのだが、午前1時頃、ド
アが開いて、「あ? まだ居たんだ? ごめん、ごめん、もう帰っていいよ」
 と言われても、もう電車も動いていない。
 「あ、だったら、仮眠室があるから」と言われて、入社初日からわしは、会
社に泊まりこんだのだった。

 それから1987年の暮れまで、当初は「マネージャー課」で後に「秘書課」と
名称が変更された部署で、「オメーは、ホントに使えねー奴だな」と言われな
がら、小池氏の秘書…的な仕事を主に務めてきた。
 仕事は、「社長」こと小池氏の身の回りの世話から担当編集との連絡、原稿
の受け渡し等々で、マネージャー課、後の秘書課には、常時5〜6人がいたの
だけど、入れ替わりもかなり激しかった。

 入社した1979年から1980年代半ばにかけては、小池氏の仕事量もピークの時
代で、連載も、週刊誌に常時5〜6本、隔週誌・月二誌にも6〜7本、その他
月刊誌などをあわせると、連載本数は20本を軽く超えていた。
 この連載本数をこなすため、小池社長はたいていホテルに籠りきりで、1週
間、月曜から日曜日まで、休みなくほぼ毎日、1日あたり「2本」の原作原稿
をあげていかなければ追いつかない、というスケジュールが常態だった。

 おおむね、午後に1本、夜から深夜にかけて1本、というルーティンで、原
稿があがる目途が立つと、「来といてくれ」という電話があり、ロビーで待機。
その後、「出来た」という電話が会社にあると、会社からロビーに待機する班
(たいていは二人組だった)に、ホテルのフロント通して部屋に上がるよう伝
言してもらう。
 携帯電話のない時代、連絡はかようにややこしかった。
 待機班は、連絡受けるとすぐさま部屋に走り、出来上がった原稿を受け取り、
「素材」と呼んでいた、前回までのゲラを綴じたものや「キャラクター帳」と
いう、ページごとにその作品の主人公以下、登場人物の顔を貼りつけて、その
特徴や人称を描きこんだノート、その他資料類を、次にかかる作品のものに入
れ換える。

 さらに、社長と接触できるのは、1日の内にこの機会だけなので、会社から
持ってきた決裁書類や郵便物などを手渡す。
 わしらが一番緊張したのがこの時で、何ごともなければ、そのまま会社へ原
稿を持ち帰り、コピーを取った上で、編集者、あるいは同じ社内の漫画家に手
渡す。
 が、ここで何らかのミス…必要な「素材」の一部がなかったり、会社から持
ってきた書類の説明がうまくできなかったり…があると、たちまち社長の逆鱗
に触れることになる。
 なにせ、1日に2本…1本あたりは16ページ〜24ページの漫画シナリオなの
で、原稿用紙で約20〜30枚を1日に2度書き上げるのだ。
 常に「ピリピリ」と神経張りつめてるし、ストレスも常に頂点にある。なの
でちょっとなにかがあると、「ぴきん」と切れてしまうのですね。

 いったん切れてしまうと、もう取集がつかなくて、ミスしたわしらを怒鳴り
散らして…あれはもう叱言というより言葉の暴力に近かった。
 で、さんざ怒鳴り散らした挙句に、「もう今日は仕事する気分でなくなった」
と言い残し、「気分転換」と称して夜の銀座方面へ出かけて行くことも、まま
あった。
 わしらは「ぷっつん」と呼んでいたが、この状態になってしまうと、もうそ
の日は絶対に原稿は上がらないので、担当編集に電話をして謝る。社内作家の
場合は、たいていは社内の仕事場で原稿を待っているので、直接出向いて謝る。
 その際には絶対に、「我々のせいで」原稿が進まなくなった、と「きちんと」
経緯を説明せねばならず、さもなければ、また再びの逆鱗となるのであった。

 普段からギリギリの状態で入稿しているので、1本が遅れると、しわ寄せは
その後のスケジュールに影響して、さらにタイトになっていく。
 漫画原作の場合は、そのシナリオを漫画家がネームに起こし、さらにそれを
原稿にする。すなわち、ネームコンテのとおりに枠線・フキダシ→下絵→ペン
入れ→仕上げ、との行程経て初めて「完成」となる。
 常にスケジュールがタイトな小池一夫作品の場合、漫画家にシナリオが渡っ
てから、多くて4日、平均するとおよそ3日間が、漫画家に残された校了まで
のリミットで、上記のような理由でこれが遅れると、時間はさらに圧迫された。

 このしわ寄せによって、漫画家に原作シナリオが渡ったのが校了前日、とい
うこともあった。
 このとき、小島剛夕さんは、16ページの原稿を、なんと24時間で仕上げてし
まったのだが、おそらくは、ネームを切った後、原稿はもう下描きなしで、い
きなりペンで絵を入れていったのだと思う。
 翌日届いた完成原稿のコピーには、きちんと背景も入っていて、「ほえ〜〜
っ!」と、ただただ驚いた。

 勤務にあたっては、課員で早番遅番のシフトを組んで、早番で終了がおよそ
夜の8時頃、遅番だとたいていは深夜0時乃至2時3時、という勤務状態で、
もちろん土日も出勤。休日はシフトの合間でおよそ週に1日。ヘタするとそれ
も吹っ飛んだ。
 今なら、完全な「ブラック企業」だわ。

 わしは、今もそうなのだが、若いころから「うっかり」や「ポカ」や忘れ物
のとても多い人間で、そのせいで小池社長を「ぷっつん」に陥らせることも、
とても多かった。
 おそらく、歴代のマネージャー、秘書の中でも、社長を怒らせ「ぷっつん」
させた回数では、ベスト5には入ると思う。
 なにせ、小池社長の訃報を聞いたときにも、思い出すことと言えば、怒られ
ているシーンばっか、だったもの。

 小池社長は、講演や付き合いなどで地方へ出張することも度々だったのだが、
連載をこなすためには、その行き先にも仕事を持って行くのは当然で、行き先
には関西が多かったのだが、「地元だから地理に明るいだろう」という理由で、
わしが同行することが多かった。
 同行、と言っても、一緒に行くわけではなく、まずは仕事の「素材」や、着
道楽の小池先生の着替え等、2泊3日ほどなのに、なぜか大型トランク3つ4
つばかりの大荷物を、まずは航空便に託してこれと同じ便に乗り、行き先の空
港で借りたレンタカーに荷物を積んでホテルに先乗りする。小池社長が到着後
すぐに仕事を始められるよう、予め部屋を設えておくのだ。

 小池社長は新幹線利用で、ホテルの部屋を設えた後に駅に迎えに出ると、た
いていの場合、その車内で既に1本原稿をあげていて、受け取ったそれをホテ
ルからファクスで送信した後は、次の原稿があがるまで自室で待機、というの
が概ねいつものパターンだった。
 わしが入社する2年前から始めていた「小池一夫劇画村塾」の、神戸校を開
塾して後は、毎月1回、その開催日を挟んで3〜4日は神戸滞在、というのが
恒例化した。

 わしは、元「ガロ」少年で、だから入社してしばらくは、ケレン味たっぷり
な大舞台で大風呂敷なストーリーを展開するエンターテインメントな作風には、
なかなか馴染むことができなかったのだけど、出張に同行することで、「劇画
村塾」でいつも強調していた「キャラクター論」の講義を、いわばマンツーマ
ンで受けることが出来た。

 「ストーリー」は、作者が作るんじゃなくてキャラクターが動いた、その軌
跡がすなわちストーリー、とか、読者は「物語」に感動するんじゃない、キャ
ラクターと一体となり、その悲しみや怒りや笑いに「同調」して初めて、キャ
ラクターとともに、泣いたり笑ったりするんだ、だから、まずは「キャラクタ
ーを起てる」ことが何より重要、などなど。
 これらの教えは、今も実践するとともに、漫画のみならず、小説や映画シナ
リオにも応用して、学生たちに伝えてもいる。

 小池社長とは、その後も縁があって、書店を閉店した後、なにか仕事はない
ですかね、と、当時教授職だった大阪芸大に訪ねて行くと、「じゃ、俺の仕事
を手伝え」と言われて、2004年から約4年間、関西駐在秘書という形で、芸大
の仕事を手伝わせてもらった。

 作家の団鬼六さんは、投機欲と事業欲の大変に旺盛な人で、生前には作家活
動のかたわら、投機や事業への投資に血道をあげていたそうだが、小池社長に
も、これと似た“山師”的な性向があった。
 そもそも、さいとうプロダクションで脚本の仕事に就く以前は、雀ゴロまが
いの生活もしていたらしいし、晩年には、事業欲と投機熱が嵩じて、周囲に軋
轢を生じさせもした、というウワサも耳にしたが、それもまた「あの先生らし
いな」と、別段驚きはなかった。

 今回は、八月、ウランバーナ(盂蘭盆会)にあたって、小池一夫氏と、昨年
に亡くなった「劇画村塾」出身の狩撫麻礼氏、さらに著者物故後の今年5月に
「遺書」とも言える『全身編集者』が発売された元「ガロ」編集者の白取千夏
雄さん、そしてその妻でやはり物故者のやまだ紫さんにも言及するつもりが、
紙数が足りなくなってしまった…ので、来月もまたウランバーナのこころ、な
のだった。

 が、それら既に亡くなった人たちに、ひと言だけ言っておきたいのは、どう
か「安らかになど眠らないでください」ということ。

 生前に物語を紡いできた人たちには、死後もまた「幽霊」となって、生きて
る人間に刺激を与え続けて欲しい、と思う。
 そしてそれが、創作者の使命であり、宿命なのだ、と思うココロなのだった。


太郎吉野(たろう・よしの)
阪神タイガースお膝元在住。右投げ右打ち。趣味は途中下車、時々寝過ごし乗
り越し、最長不倒距離は三重県名張。
ちなみに「阪神タイガース」の「阪神」は、「兵庫県阪神地方」を指します。

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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97 せかいに広がる楽しいこと

 山中湖にある喫茶店「あみん」から23年間の営業を閉じたという葉書をいた
だきました。子どもたちが小さいとき、一度だけ家族5人で遊びに行ったこと
があるのです。もう一度うかがいたかったなあ。

「あみん」の樋口範子さんは、高校卒業と同時にイスラエルに渡り、2年間キ
ブツ(集団農場)で働き、帰国後は山中湖畔にある児童養護施設の保育士、パ
ン屋を経て、喫茶店経営に。そして現在はヘブライ文学の翻訳をライフワーク
にされていると、訳者紹介にあります。

 2003年にさ・え・ら書房より刊行された『もうひとりの息子』を読み、やま
ねこ翻訳クラブのメープルストリートという新刊紹介ページで紹介しました。(※)
それがきっかけで、編集者の方から樋口さんを紹介され、会いに出かけたので
した。いま日付を確認すると、16年も前のこと。

(※)『もうひとりの息子』紹介ページ
http://www.yamaneko.org/maplestreet/p/saera/2002.htm#musuko

 さて、今年5月にその樋口さんの翻訳された絵本がこちら。

 『もりのおうちのきいちごジュース』
 ハヤ・シェンハヴ 文 タマラ・リックマン絵 徳間書店

 色鮮やかな黄色の表紙絵にいるのは、ライオンとキリン。
 真っ赤な色をした屋根の家、そこに「きちいごジュース」とかかれた木札。
 ライオンとキリンはだれが住んでいのだろうかと訪ねることにします。

 ドアベルをならし、誰なのかたずねても、「ぼくは〈きいちごジュース〉」
とこたえるばかり。そこでドアが開くまで待っていると、ぴょんと飛び出して
きたのは……。

 1970年に出版された原書はイスラエルのロングセラー。鮮やかで魅力的な色
彩は目を見張る美しさ! のびやかに描かれる動物たちはいきいきしています。

 真夏のじりじりするような暑さの中、この絵本を読みながら「あみん」で飲
んだジュースを思い出しました。
 

 次にご紹介する絵本は「いたばし国際絵本翻訳大賞」受賞作です。
 板橋区では、1994年より外国語絵本の翻訳コンテストを行っており、受賞し
た作品をきじとら出版さんが刊行されています。

 第25回いたばし国際絵本翻訳大賞(英語部門)で最優秀翻訳大賞を受賞した
翻訳作品がこちらです。

 『てつだってあげるねママ!』
      ジェーン・ゴドウィン&ダヴィーナ・ベル さく 
      フレヤ・ブラックウッド え  小八重 祥子 やく

 パパのお誕生日の準備で、ママは朝から大忙し。
 お姉ちゃんのハティもママのお手伝い。
 ところが、昼寝をしたママが起きないので、
 疲れているからママは寝ているんだろうと、そのまま起こさずに
 ハティはひとりで誕生日パーティの準備をはじめます。

 ママがパーティに必要なことを口にしていたのを思い出しながら、
 せっせと準備していくハティのはたらきのすばらしいこと!
 
 わたしの好きなシーンは、家の中をお花で飾るところ。
 花を飾るといえば、花瓶に生けることしか思いつかないのは大人の頭でしょ
うか。ハティが飾る場所のそれぞれセンスがよく感心してしまいます。
 ぜひ絵本をひらいて、みてみてください。
 
 この絵本では小さいお姉ちゃんが手伝いしてくれていますが、
 どこの家でも子どもが手伝ってくれると、うれしいものですよね。
 疲れきってソファで眠ってしまったとき、高校生の娘が受験勉強の手を休め
て洗濯物を干してくれたときはうれしかったなあ。


 最後にご紹介するのは、物語。
 夏休みのような長い休みのとき、図書室でたくさん本を貸りるのが何よりの
楽しみだったことを思い出しました。

 『貸出禁止の本をすくえ!』
      アラン・グラッツ 作 ないとうふみこ 訳 ほるぷ出版

 主人公、エイミーアンは9歳。家では小さい妹たちがうるさいので、好きな
本をゆっくり読める図書室が憩いの場所です。

 ある日、自分のお気に入り本が図書室から消えていてびっくりします。

 保護者数人が小学校の図書室にふさわしくないと判断した本に対し、教育委
員会も同意したため、その本が貸し出されなくなったのです。

 エイミー・アンは引っ込み思案で、自分の気持ちを家族にすらなかなか伝え
られないのですが、大好きな本が読めなくなることに対して、立ち上がります。

 エイミー・アンがいいたいことをいえない描写が続くので、もどかしく、い
つ言葉にしていくのだろうと、貸出禁止の本の行方以上にハラハラしました。

 本では、声に出していない心の声を知ることができるので、よけいもどかしさ
が募ります。けれど、「声に出せばいいじゃない」と簡単に思いがちなことを実
行にうつす難しさがリアルに描かれているので、エイミー・アンに気持ちが近づ
き、がんばれ!と応援したくなるのです。

 それにしても、この物語に出てくる禁止本は、過去30年間にアメリカの図書館
で少なくとも1度は実際に異議申し立てや貸出禁止措置を受けたことのある本だ
ということには驚きです。

 世の中にはさまざまな価値観の人がいるからこそ、意見の違うことについて、
自分の頭で考えて話をしていく必要性が多くあります。
 
 内気なエイミー・アンが大好きな本を守るためにとった行動は、意志を自分の
言葉で伝える強さが大事なことを教えてくれるのです。

 エイミー・アン、ありがとう。


(林さかな)
会津若松在住。「本の雑誌」新刊めったくたガイド海外文学担当。
http://1day1book.strikingly.com/
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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第115回 平成という時代、この30年間のこと

 令和の時代になって3ヶ月が過ぎた。
 時間は一定に流れている。しかしその一定に流れる時間の中で、日本人は元
号というしくみを作り、それを制度として千年以上続けている。特に約150
年前の明治から、天皇陛下の代替わりに伴い、元号も改まるという制度になっ
てからは、はっきりと元号が時代を表わすことばになっていく。明治時代、大
正時代、昭和時代・・・と続き、ついに元号が令和になった途端、いよいよ平
成時代が一括りで誕生した。平成元年(1989年)〜平成31年(2019年)。この
30年間のひとつの時代は、未来においてどんな時代だったか、と総括されるの
だろうか。30年間という長さはひとつの時代としてみた場合、長いと感じる人
もいれば短いと感じる人もいるだろう。

 振り返るには近すぎる。
 また、振り返るにはまだ熱すぎる。
 さらに、振り返るには生々しすぎる。
 いずれにしても今、わたしたちはこの平成時代を生き抜いたわけだ。
 そして、早くも平成という時代を総括しようという動きが見えだした。

『街場の平成論』(内田 樹編)(晶文社)(2019年1月30日)

 編者の内田樹氏を含めて、9人の執筆者による平成時代への思いの書。登場
順に、内田樹(フランス文学者・哲学者)、平田オリザ(劇作家)、ブレイデ
ィみかこ(保育士・ライター・コラムニスト)、白井聡(思想史家・政治学者)、
平川克美(実業家・文筆家)、小田嶋隆(コラムニスト・テクニカルライター)、
仲野徹(病理学者)、釈撤宗(宗教学者・浄土真宗住職)、鷲田清一(哲学者)。
現在のこの国において、どちらかというと野党的立場の論客たちのエッセイ集
と思えばよいか。それぞれの専門分野でわかりやすく、それぞれの“平成”を
振り返っている。

 はしがきで内田樹氏は、1989年の時点で感じていた不安や期待やときめきを
思い出し、そして30年経った今の現実の世界を並べてみてほしい、と云う。30
年前の予測が劇的に外れてしまったことについて考えよう、と云う。

 そして引き続き、内田氏は自己の文章で、戦後史五段階区分説を展開し、こ
の日本という国が衰退していることを証明してみせる。アメリカと対等になれ
そうでなれなかった。アメリカから真の独立を勝ち取ろうとして負けた、と云
う。いまはもう涅槃の時になっている。もう何も語らない。日本は衰退してい
る。

 続く平田オリザ氏は、この30年間の日韓関係を解説する。両国の関係は、ま
るでジェットコースターのようだ。従軍慰安婦問題、サッカーワールドカップ
共催、韓流ブーム、靖国&竹島問題、K−POP、そして徴用工問題。この微
妙な両国の問題はどこにあるか。日本はアジア唯一の先進国の座から滑り落ち
たことを認めたがらず、韓国は先進国入りしたことにまだ慣れていない、と云
うところに帰着する、と平田氏は看過する。

 三番目のブレイディみかこ氏は、この30年間の男女の関係を“セクハラに始
まり、セクハラに終わる”と見なした。現在の日本において最も怒りを多く持
っているのは女性であろう、と云う。“ガールズパワー”は、女性が自分で道
を切り開くそのエネルギーを指すが、“女子力”となると男性に気を配る女性
の作法、になってしまう。みかこ氏はこのジェンダーギャップの差が大きい日
本で女性たちよ、もっと頑張れ、と吠えるのである。

 次の白井聡氏は、『永続敗戦論』や『国体論』の著者であり、本書でも持論
を存分に展開している。平成が始まったとともに三つの終わりがあった。1昭
和の終わり 2東西冷戦の終わり 3戦後日本の高度成長の終わり。そして時
代はポストヒストリー時代となり、人々は歴史的な方向感覚を見失った、と看
過する。また「成熟の拒否」=感情が成熟せずに単純化する、と云う。白井氏
は平成という時代を極めて学者的に見事に分析してみせる。

 さて、平川克美氏は、昭和の終わりのころ(昭和63年の秋以降)を描写し、
あの雰囲気を読者に思い起こさせる。自粛のご時勢だった。そして東日本大震
災。平川氏はこのふたつをみた後、消費者の観点から平成を見直した。市場原
理に忠実な消費者としての個人は、まったく自由がきかない。結婚年齢が30年
間で7歳も上がったことがその大きな証明となる。本当の個人へと脱皮しない
とこのほつれは解けないと平川氏は云う。

 小田嶋隆氏の論はとてもわかりやすい。インターネットという別の脳を持っ
たゆえに、みな互いに手の内を知ってしまった。そして人との違いを何に求め
るかと云えば、偏見と独断こそが武器になる、と云う。さらにSNSにより、
人は自分が何をしたいのか、何を欲しているのか、という問いよりも、人にど
う見られているか、どう見られたいか、人は自分に何を期待しているか、を真
っ先に考えるようになってしまった、と云う。群れの中でしか生きられない。
小田嶋氏は人のいわし化が始まった、と総括した。

 病理学者の仲野徹氏は、この30年間の生命科学の進歩を総括する。人のゲノ
ムが予想以上に早く解析された。ヒトゲノムは解析され、遺伝子改変は容易に
できるようになり、核移植クローンは霊長類でも成功してしまった。生命科学
の分野ではこの30年間に進歩しかなかった。しかし、まもなく、生命科学も他
の分野と同じく進歩が止まることになるに違いない、と仲野氏は予言する。

 釈撤宗氏は宗教についての30年間を振り返る。云うまでもなくオウム真理教
とイスラムの波が二大事件であった。「排他主義」がキーワードになろうか。
そこに暴力が存在するのである。そして宗教の問題はそれによって、まったく
他人事ではなく、無関係でも傍観者ではいられなくなる。そこに難しさがある。
伝統宗教は何千年かという時間を掛けて鍛錬に鍛錬を重ねてきた。その伝統宗
教はこの事態に対して何かをなさなければならないだろうと釈氏は結ぶ。

 最後に哲学者の鷲田清一氏は、この30年でふつうの人の所在が不明になった、
と云う。ひとつの行動規範、「常識=コモンセンス」がなくなり、当たり前が
そうでなくなる。そういう当たり前のことをしていたふつうの人がいなくなっ
たのだ。やはりここは人に頑張ってもらい、自分で考えないといけないだろう。

 総じて、平成の30年間で人は皆、考えなくなった。わかりやすい方、耳に心
地のよい方を簡単に選び、調べることはインターネットに任せてきた。それが
進化なのか、どうかは執筆子にはわからないが、それが進化ならそんな進化は
お断りだ。

 そして本書を読んで、感じたことはタフな頭でタフに考えないと令和の御代
は乗り切れない、ということだ。滅びるか生き延びるかは、まさに考えるか考
えないか、それにかかっている。


多呂さ(連日の猛暑、酷暑、炎暑。ご自愛ください)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ― 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510

・『支え合い・学び合いで育つ「わたし」』(エディット・パルク)
  http://web.kyoto-inet.or.jp/people/cogito/%8Fo%94%C5%88%C4%93%E0/%8Ex%82%A6%8D%87%82%A2%81E%8Aw%82%D1%8D%87%82%A2.html

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

 〒142-0041 東京都品川区戸越5-4-3 アズ品川ビル4階
       ビズナレッジ株式会社内 [書評]のメルマガ 献本 係

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

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 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 発行が遅れました。まさにお盆まっさい中ですね。
 
 台風も心配ですね。(あ)

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[書評]のメルマガ vol.682

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★「トピックス」
→ トピックス募集中です

★「音楽本専門書評 BOOK’N’ROLL」/おかじまたか佳
→ #108『桃山ビートトライブ』

★「目につく本を読んでみる」/朝日山
→ 『アンゴルモア 元寇合戦記』むたかぎ七彦 角川書店

★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→ 今回はお休みです

★【募集中】献本読者書評のコーナー
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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#108『桃山ビートトライブ』

 音楽をテーマやモチーフにした小説は、音楽ミステリー、音楽SFを何度か
取り上げてきたが、音楽時代小説というのはなかなかない。

 以前紹介した、夢枕獏の『陰陽師』シリーズから生まれたCDブック、『蝉
丸 陰陽師の音』に収められた短編「蝉丸」ぐらいだろうか。

 本書は、その希な例であり、しかも短編ではなく堂々たる長編である。少し
前の作品だが、極めて貴重な一冊なので、ご紹介したい。

 タイトルは『桃山ビートトライブ』。桃山と言えば安土桃山時代。そこから
辛うじて歴史ものとわかるが、後半はカタカナ。しかも耳慣れない「トライブ」
なんて言葉が出て来る。

 一見正体不明のこの小説、天野純希が小説すばる新人賞を受賞したデビュー
作である。

 トライブは「部族」という意味だから、ビートトライブは「ビート族」と言
うことになる。一瞬、アレン・ギンズバーグやらジャック・ケルアックやら、
ビート派詩人を連想してしまうが、それとは何の関係もない。

 第一、桃山時代は豊臣秀吉が天下を取った時代。無論、当時の音楽にビート
なんて概念はない。

 しかし、激しいリズムの音楽はあったかも知れない。そしてそれは、後のビ
ートに近いものであり得たかも知れない。

 そんな大胆極まる空想を手がかりに、その時代の音楽にまつわる史実を巧み
にちりばめることで、著者は説得力に満ちた架空のビート・ミュージックを言
葉で紡ぎ出すことに成功している。

 演奏する「ビート族」は、こんな面々だ。

 まず、藤次郎。人様の物を盗むことで、辛うじて生き延びてきた孤児である。
それがひょんなことから、三味線を手に入れた。その頃時代の最先端だったこ
の楽器にはまった彼は、日本一の三味線弾きを目指す。

 次いで、小平太。父親は笛をつくる職人だったが、自分は笛を吹く笛役者を
目指し、家を出奔。出雲のお国の一座に入る。お国のモデルは、もちろん、実
在の人物であり、歌舞伎踊りの創始者とされる、出雲の阿国だ。

 そして、弥助。この男、和名だが、なんとアフリカ人である。モザンビーク
の漁村に生まれたが奴隷商人に捕まり、インドへ。そこで宣教師に買われ、日
本にまで辿り着いた。新し物好きの織田信長に引き取られたが、本能寺の変以
後、堺商人の下で通詞として働く。その時、やはりはるばるアフリカから流れ
着いた太鼓を手に入れ、子供の頃に習い覚えた本場仕込みのパーカッション・
プレイを聴かせるようになる。

 最後に、ちほ。童女の頃に出雲のお国を見て、自らも独学の踊りを始める。
また、喧嘩の達人でもあり、パンチとキックで男といえども簡単になぎ倒す。
十代になってある一座で踊るようになるが、当時の踊り子は娼婦でもあり、庇
護する武士や金持ちの夜伽を申し付けられて、大暴れ。一座を飛び出してしま
う。

 この四人が出会い、ビートトライブ、つまり、バンドを結成するのだ。

 しかも、いまで言うなら、フリー・インプロのジャム・バンドなのである。
フリー、すなわち自由。インプロ、すなわち即興。ジャム・セッションのよう
に決め事は何もなく、その場でひらめいたフレーズを応酬することで、ひとつ
の音楽を創り上げるスタイルだ。

 弥助の叩き出す強靭なアフリカン・リズムの上に、藤次郎の激しい三味線の
低音リフが絡み、小平太の笛が高い音域で奔放に跳ね回ると、そのサウンドに
合わせてちほが狂ったように踊る。

 この、画期的な音楽は、たちまち評判を呼ぶのだが……

 さて、物語にはふたつの対抗軸がある。

 ひとつは、ビートトライブ内の葛藤。それは笛役者の小平太と、残り三人の
対立である。

 小平太は家出などした割には小心な性格で、きちんと決められた譜面通りに
演奏することを好む。

 だから、始まったらどんな曲になるか、ミュージシャン自身にもわからない
自由な即興には居心地の悪さを覚えるのだ。

 これは著者が実際に音楽をやっているからこそ生まれた発想だろう。

 確かにミュージシャンは、自由に演奏したいと思いながらも、完全に自由だ
と不安になるものだ。

 不自由な音楽の典型はクラシックである。ほぼすべての音があらかじめ作曲
家によって決められている。それでも、同じ曲をポリーニとアルゲリッチとル
ビンシュタインが演奏すれば、それぞれ個性があるように、解釈の余地は存在
する。その微妙な差の創出に、音楽家生命を賭ける人たちがいる。

 一方、オーネット・コールマンが創始したフリー・ジャズのように、極力決
め事を排し、自由な、その場限りの即興にすべてを賭ける人たちもいる。

 もちろん、その両方の要素を持ち、不自由さと自由さの間を振り子のように
揺れながら、自分の音楽を創るミュージシャンが一番多いのだが。

 ともあれ、音楽的葛藤はバンド物の小説につきもので、『桃山ビートトライ
ブ』もまた、そのセオリーをきちんと踏襲しているわけだ。

 もうひとつの対抗軸は、彼らミュージシャンと、権力者との対立である。

 これは、時代小説ならではの葛藤と言っていい。

 悪役は石田三成。豊臣方の武将であり、戦よりも権謀術数に長けた能吏とし
て描かれている。

 秀吉が天下を取り、ようやく戦国の世が終わって平和が訪れたのはいいのだ
が、新政権は検地を行って農民を土地に縛り付け、刀狩りで抵抗の手段を奪い、
重税によって庶民を苦しめた。

 そうした政策の実行者が、石田三成だった。

 彼は戦乱の混沌から決別し、下克上のような無法が二度と起こらない、管理
され統制された社会を目指した。その一環として、ミュージシャンを忌み嫌っ
たのである。

 当時、音楽や芸能を生業とする人々は河原者と呼ばれたが、それは京都であ
れば鴨川の河原に小屋を掛けて、芸を披露し金を稼いでいたからだ。そしてそ
の河原という場所は、誰の所有地でもなく、時の支配者の権力すら及ばない治
外法権であった。

 当然、河原者は税を払わない。賦役にも応じない。戦があっても参加しない。

 そのような連中がはびこっているのが、三成にとっては目障りだったのであ
る。

 かくして三成が代表する豊臣家と、河原者たちの対立が生まれる。

 物語はふたつの葛藤を絡めながら、ビートトライブたちの運命を描いていく。

 しかし、こうして見ると、ふたつの葛藤は、結局「自由」をめぐる葛藤なの
だ、ということに気がつく。

 音楽における「自由」をめぐる、小平太vs.藤次郎、弥助、ちほの対立。

 そして、体制による支配からの「自由」をめぐる、豊臣家vs.河原者の対立。

 自由になりたい。

 訊かれれば、誰しもそう答えるだろう。

 不自由より、自由がいいに決まってる。

 しかし、自由は時として孤独を意味することもある。

 すべての責任が、我が身に降りかかってくることでもある。

 それは甘い幻想のような柔らかいものではなく、ひりひりするような苛烈さ
と厳しさを人に要求する。

 社会に守られることなく、野垂れ死ぬ自由もまた自由なのだ。

 それでも、そのようにしか生きられない人たちがいる。

 そんな彼らの名こそが、「河原者」であり、「ビートトライブ」なのである。

天野純希
『桃山ビートトライブ』
集英社文庫
2010年9月

おかじまたか佳

素人書評家&アマチュア・ミュージシャン

自由。そう言えば、現在の政権与党も、党名にこの言葉を掲げていますね。そ
の後に「民主」と続く以上、決して「自分たちの好き勝手に政治をする」とい
う自由ではないはずだが、どうも怪しい気がする。この号が出る頃は参院選。
あなた、投票に行きましたか?

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『アンゴルモア 元寇合戦記』むたかぎ七彦 角川書店

 日本のコミックの豊饒さは前から何度も指摘しているけども、これもその一
つと言えるだろう。文永の役を描いているのも異色なら、戦いの舞台が対馬な
のもこれまた異色である。今も続いている続編では、北九州が舞台になってい
るが、対馬の分の10巻だけで完結しても全く問題がない。

 元の軍隊は福岡に上陸する前に壱岐、対馬を襲っている。記録が残されてい
るのは、地頭の宗助国が討ち取られたということと、主人公の朽井迅三郎の由
来になっている人物がいたというだけで、あとは全て作者の創作らしい。

 スタートは玄界灘の嵐の中を行く囚人移送船。移送されているのは対馬に島
流しになった囚人たちだ。嵐に翻弄され、今にも転覆しそうな移送船の囚人た
ちは手を縛られている。このまま転覆したら助からないと役人に手枷を外して
ほしいと懇願する囚人たち。

 迷った末、役人は囚人の手枷を解いた。囚人の一人、朽井迅三郎は「オレな
ら外さない」とつぶやく。手枷足枷を外された囚人は、すぐさま反乱を起こし
て役人を海に放り出して逃げようとした。

 嵐が過ぎ、対馬に着くと、意外にも領主の娘、輝日姫がやってきて歓迎して
くれる。いったいなぜ歓迎されるかと訝る囚人たちは、間もなく対馬に蒙古が
やって来ることを知らされる。要は戦うために彼らは派遣されてきたのだった。

 とはいえ、犯罪者数十人程度では屁の突っ張りにもならない。対馬の領主と
その家来たちも、囚人たちなどたいした役には立たないと思っていた。そんな
夜に、密かに対馬に入っていた蒙古の先遣隊が輝姫を襲う。朽井は蒙古先遣隊
を撃退するが、先遣隊リーダーは「義経流」の使い手だった。朽井も義経流の
使い手である。

「なぜ蒙古に義経流の使い手がいるのか」そんな謎を残しつつ、物語は進んで
いく。対馬の様子を見にきていた福岡太宰府の主の息子少弐景資は、7日で援
軍を連れて戻ってくるから、朽井になんとか7日間、この島を守ってほしいと
依頼し、対馬を後にした。

 とはいえ、元の軍隊は強大で、対馬の手勢は200人もいない。勝てっこない。
そのため、いかに元の軍隊の侵攻を遅らせるか、彼らが日本本土侵攻に向かう
日まで持ちこたえることが戦略目的となる。地頭の家来たちと囚人たち、そし
て刀伊祓と呼ばれる防人の末裔たちの「一所懸命」の戦いが続く。

 そう、このコミックのテーマは、「一所懸命」なのである。対馬は島だから、
どこにも逃げ道はない。自分の居場所を守るために、今、生きているこの場所
を守るために全力を尽くす。このテーマがストーリーを貫いているから、誰も
かれもが死んでいく負け戦の陰惨な物語を最後まで読ませるのである。

 そんなことを書いていて、ふと思い出したのは、ハンニバル戦争である(紀
元前219年から紀元前201年)。ハンニバル戦争とも呼ばれる第二次ポエニ戦争
で、アルプスを越えてやってきたハンニバルはトレビアの戦い、トラシメヌス
湖畔の戦い、そしてカンネーの戦いで大勝利を収めた。共和政ローマは。とど
めを刺されたも同然となった。特にカンネーの戦いの敗北はひどいもので、こ
の戦いで多くの若者が殺されてローマに青年がほとんどいなくなった。

 そんな中でも、ローマは降伏しなかった。青年男子がいないなら奴隷を兵士
にして対抗する。年寄りだって女だって剣を持つ。それほど士気は高かった。
百戦錬磨のハンニバルの軍隊がローマの郊外までやってきてもそうだった。

 ハンニバルがこのタイミングでローマ市内を攻めていたらローマは滅んでい
たと言われる。ハンニバルもそれは分かっていただろう。しかしハンニバルは
ローマ市内を攻めることなく転戦していく。このときのハンニバルの判断ミス
が第二次ポエニ戦争の趨勢を決めたと言われる。

 なぜこのとき、ハンニバルがローマ市内を攻めなかったのかは謎に包まれて
いるが、強烈な抵抗を予想していたのは疑いない。一所懸命に畏れをなしたの
かもしれない・・・

 いや、待てよ。元とハンニバルを入れ替えたら、元寇合戦記は、日本のハン
ニバル戦争記みたいなものだとも言えるじゃないかと気がついた。

 文永の役(1274)というと、日本はやられ放題で神風に救われたと言われて
いるが、近年の研究では。実際は相当頑強に抵抗していたらしい。第二次元寇
となる弘安の役(1281)では、当時世界最大の艦隊が日本を襲ったが。日本側
の防備が堅かったため、ちょっとやそっとのことでは上陸できなかった。

 作者がどう思っていらっしゃるのかは知らないけども、そういう史実を鑑み
れば、「アンゴルモア 元寇合戦記」が、本当に日本版ハンニバル戦争記に見
えてくる。

 ハンニバル戦争を描いたリウィウスやポリピオスに匹敵する作品が日本で、
コミックとして生まれるかも知れない・・・・作者がこれ読んでたら、相当な
プレッシャーをかけるかもしれないが、そう思っているのだから仕方がない。
いや。圧力かけようと思ってるわけじゃないけどもw

(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ─ 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510


 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
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 表題【読者書評参加希望】
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 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

 〒142-0041 東京都品川区戸越5-4-3 アズ品川ビル4階
       ビズナレッジ株式会社内 [書評]のメルマガ 献本 係

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
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■あとがき
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 参議院選挙、終わりました。何が変わって何が変わんなかったのでしょうか。
とりあえず消費税は上がるんでしょうね。(あ)

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[書評]のメルマガ vol.680

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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<114>鉄と漫画と遠い昭和と

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→96 生きていくために見つけなくはいけないもの

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第114回 日本の歴史では、何が勝者を決めるのか

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<114>鉄と漫画と遠い昭和と

 いしいひさいちの漫画に時たま登場する「セキカワ先生」をご存知だろうか。

 大学の先生であるセキカワ先生は、稚気と無邪気な我が儘に溢れる人で、学
会で出張するに際して、新幹線の切符どうしましょう? と尋ねてきた助手に
向かって、「席は窓際な。そして隣には、三十代半ばの人妻だ、これは絶対!」
と無理難題を押し付ける。

 そのセキカワ先生こと関川夏央の『汽車旅放浪記』(中公文庫)を、最近読ん
だ。
 既に中年を過ぎ老年に差し掛かった著者が、以前から鉄道趣味があったこと
を「含羞をこめて」告白し、小説や映画の中の「鉄道」シーンを通してその作
品を語ったり、あるいはそこへ出かけて行ったり、というエッセイ集。

 夏目漱石の「三四郎」が福岡県行橋から帝大入学のために上京するに際して、
行橋を「9時57分発」の列車に乗って、門司から連絡船で下関、「午後2時40分
発」の京都行列車で翌朝「6時25分」神戸着。
 終着の京都まで行かなかったのは、神戸始発の列車で座席を確保したいがた
めで、8時間後の「午後2時30分発」名古屋行きに乗車。
 この列車内で乗り合わせた女と、名古屋の旅館で同宿する羽目になる。その
翌朝、「あなたは余っ程度胸のない方ですね」と呆れる女と別れて東京行きの
客となり、夜の「8時02分」、ようやくに新橋に到着する。
 行橋を出てから丸々3日間の行程である。

 と、このように、夏目漱石はじめ、内田百痢太宰治、林芙美子や松本清張、
宮脇俊三などの文芸作品を、あるいは黒澤明や小津安二郎の映画を、「鉄道」
という視点で捕えて、読み解いていく。
 中でもセキカワ先生は、自らと同じく「含羞をもって」鉄道趣味を語る宮脇
俊三の視点がお好みのようで、その後の、やはり「鉄道」を軸にした著作『寝
台急行「昭和」行』(NHK出版)では、宮脇俊三その人になりきろう、としたフ
シも見える…ように思える。

 『汽車旅放浪記』でも触れていて、同じセキカワ先生の他の著作でも触れら
れていたのが、松本清張原作になる1958年の松竹映画『張込み』(野村芳太郎
監督)だ。

 指名手配の殺人犯が立ち回るはずの、彼の故郷に先回りして待ち伏せの張込
みに向かうべく、夜の横浜駅ホームに駆け上がってきた刑事二人が、すでに動
き始めている九州行きの列車に飛び乗る。
 警視庁の刑事二人が、始発の東京駅ではなく、わざわざ横浜から乗車したの
は、新聞記者たちの目をそらすためで、まんまと作戦は成功したが、途中駅か
らの乗車では、すでに座席は満席で、二人は、流れる汗をぬぐいながら、満員
の列車で座席と座席の間の通路に座り込み、揺れる車内の蒸し暑い一夜を過ご
す。
 夜が明けて、京都付近でようやく座席が空いて、刑事二人はほっと息をつく
のだが、まだまだ先は長い。
 列車は、山陽路をひた走り、関門トンネルを抜け、夜も遅くにようやく、目
的地の佐賀に到着する。

 この丸一昼夜の行程が、映画の冒頭、しかもタイトル前に、かなりの時間
(10分以上はあったと思う)を割いて延々と描写されるのだ。
 もちろん当時のこと、列車に冷房などはなく、二人の刑事も周りの乗客も男
性は皆、上着はおろかワイシャツまで脱いでランニングシャツ一枚となり、パ
タパタと扇子を煽いでは、暑さに耐える。乗客の中には、ズボンまで脱ぎ捨て
てステテコ一枚の親父も混じっている。
 天井の扇風機が、そんな車内の空気を気怠く掻きまわしては、長旅の憂鬱を
募らせる。

 この映画の、その冒頭シーンは、わしも30年くらい前のテレビ深夜映画で初
めて見て、強く記憶に残っていた。
 1950年代、東京から九州までの移動が、『三四郎』の時代ほどではなかった
にしろ、まだまだ大仕事だったことを実感させるシーンで、このシーンがある
ので、その後の「張込み」シーンもまた、強烈なリアリティを持ってくる。

 90年代に、この映画がTVドラマにリメイクされたものを見たのだが、そちら
は、九州佐賀ではなく、張込み先は栃木県に変更されていて、東京からやって
きた刑事二人は、東武電車で張込み先の町に降り立つのだ。
 思わず、「ダメでしょ、それじゃ…」とつぶやいてしまった。

 セキカワ先生の指摘を待つまでもなく、小説や映画では、「鉄道」や「列車」、
あるいは「駅」が、それ自体がテーマではなくとも、重要な役割を果たしたり、
象徴的なシーンとして描かれることが多い。
 翻って、漫画では、どうだろうか? というのが、今回の主旨。

 漫画と鉄道…と考えて、今回真っ先に思い出したのは、『クッキングパパ』
だった。
 1985年の連載開始当初、荒岩パパは、料理の腕前を会社ではひた隠しにして
いて、自分で作って持ってくる弁当も、「うちの奴」のお手製だとごまかして
いたのは、男子が厨房に入ることを潔しとしない九州男児のDNAか、はたま
たセキカワ先生や宮脇俊三の鉄道趣味と同じ「含羞」からか。

 荒岩パパがその料理趣味を周囲にカミングアウトして以降は、漫画の路線も
がらりと変わっていくのだが、まだそれを隠していた時期、荒岩パパは、勤め
先の「金丸産業」東京支社へ出張に赴く。
 飛行機が苦手な荒岩は、博多から東京まで、敢えて新幹線で向かうのだが、
この延々6時間に及ぶ車内での様子が、結構なページ数を割いて描かれていて、
やや疲労感をにじませながら、ようやくたどり着いた東京駅で安堵のため息を
漏らす荒岩に、ふと前述の映画『張込み』を彷彿したりも、したのだった。

 東京支社では、そんな荒岩の来訪を社員一同待ちかねていて、支社に到着し
た荒岩は、早速に「厨房をお借りします」と断ると、車内の湯沸かし室にこも
り、予て用意の博多豚骨ラーメンを手早く調理して、故郷の味に飢えていた支
社の皆に振る舞うのだ。
 この時にも確か、持参した半調理済みのラーメンは「女房が用意してくれた」
とわざわざ断りを入れていたと記憶する。

 このシーンもやはり、延々6時間かけてわざわざ、という描写がまずあった
ればこそ、ラーメンのシーンが引き立つのである。

 谷口ジロー『遥かな町へ』では、冒頭、二日酔いの主人公が、京都駅で東京
へ帰る新幹線と倉吉行きの特急を乗り間違えたことから、運命の歯車が回り出
す。
 いくら二日酔いで「ぼーっ」としていても、高架のホームから出る新幹線と、
古びた平面のホームから発車するディーゼル特急を乗り間違えることは、「ま
ずない」とも思えるが、それを不自然に感じさせずにすんなり読ませてしまう
のは、やはり谷口ジローの画力と構成力に負うところ大、と思う。

 つげ義春の漫画でも、鉄道は、印象的なシーンに描かれる。
 『ねじ式』の、漁村の狭い路地を「ゴッゴゴゴ」と突き進む機関車は、あま
りにも有名なシーンだ。

 『やなぎ屋主人』では、作者本人と思しき主人公は、新宿のヌードスタジオ
を出た直後、夜の街に流れていた高倉健の「網走番外地」に触発され、「房総
行の列車に飛び乗って」しまうのだ。
 あてもなく降り立った漁村の駅で紹介された寂れた旅館の、戦争未亡人であ
る女将を犯す妄想に耽った挙句、翌朝早くに旅館を出るのだが、その一年後、
この旅館を再訪し、彼のことなど覚えてもいない女将と言葉を交わした後、海
岸で猫と戯れる…というだけの物語だが、夜を行く車窓から見る黒い海や、通
過する小さな駅の木造駅舎の明かり、たどり着いた漁村の駅のすがれた風情、
海沿いの線路を轟音立てて行くディーゼル列車、等々が細密なペンタッチで効
果的に配されて、主人公のあてどなく行き場のない心情を暗喩する。

 実はこの漫画を読むまで、房総行きの列車が新宿から出る、ということを知
らなくて、その後東京に住み始めたころ、新宿駅のホームに、既に電車になっ
てはいたが、「館山行」急行列車がひっそりと佇んでいるのを偶然に見かけて、
「あ、これかァ!」と一人カンゲキに耽ったのだった。

 房総といえば、安西水丸がその少年時代をモチーフとした「千倉」シリーズ
でも、海の見える草原の向こうを驀進する列車が、象徴的に描かれていた。

 で、その他に…と考えてみたのだが、思いつかない。
 鉄道そのものをテーマにした漫画はあるのだが、そうじゃなくて、となると、
おそらくはあるのだろうけど、その数は極端に少ないのは、確か。
 映画や小説、あるいは歌謡曲なら、即座に思い浮かぶのだけどね。

 ちなみに、ちあきなおみの歌う「喝采」の一節、「動き始めた汽車に一人飛
び乗った」という部分。
 あれ、今の若い人の感覚では、動き始めた列車を、なんらかの方法で止めて、
車掌にドアを開けさせた上で「飛び乗った」と解釈するみたい。
 そもそも「機関車の曳く客車」が今やレアだし、「ドア開けっ放しのデッキ」
など見たこともないから、そうとしか解釈できないんだろうな。

 歌謡曲では、ザ・ピーナッツの「ふりむかないで」の「今ね、靴下直してる
のよ」というのも、ここでの「靴下」は「ストッキング」のことで、バックシ
ームがずれてるのを、スカートをちょっとたくし上げて直してる、といちいち
説明しないと分からないのだ。

 わしらの昭和は、加速を続ける列車の後方彼方に、ずんずんと置き去りにさ
れていってるのですね。

太郎吉野(たろう・よしの)
阪神タイガースお膝元在住。右投げ右打ち。趣味は途中下車、時々寝過ごし乗
り越し、最長不倒距離は三重県名張。
ちなみに「阪神タイガース」の「阪神」は、「兵庫県阪神地方」を指します。

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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96 生きていくために見つけなくはいけないもの

『ヒキガエルがいく』
申 明浩/広松由希子 訳 岩波書店

 力強い画風の絵本作家、伊藤秀男さんが題字を書かれている。
 文字からも気迫が伝わり、主人公(?)のヒキガエルは表紙にでんといて、
読者をじっとみている。強烈な表紙だ。
 
 本文の言葉はただ太鼓の音だけ。

 訳者の説明書きによると、韓国の仏教では、鐘は人間のため、太鼓は動物の
ため、木魚は昆虫のために鳴らすといわれているそう。

 カエルのための太鼓の音は、タン タタン だったり、トントントントン
だったり、ドンドン ダンダンだったり。音が腹に響く感じ。何匹ものヒキガ
エルが絵本の中で蠢いている。

 生の実感ある絵が続くので、緊張感がある。

 カエルといえば、我が家の前に広がる田んぼにもカエルがいっぱいいて、い
すぎて、3人の子どもたちは皆、苦手になってしまった。

 田んぼに水が入った日のカエルの鳴き声は毎年聞いても、驚くほどに厚みが
あり飽きることがない。昨日までどこにいたのだろう思うほどの賑やかさなの
だ。カエル嫌いの娘ですら、確かにすごいと聞いている。あの声には、生きて
いるエネルギーがあり、聞いているだけでも強く感じるものがある。

 この絵本は、そういうエネルギーのライブ感に満ちている。
 音や振動が聞こえてきそうで、ぜひ読んで感じてほしい。

 次に紹介するYA小説も強烈。

『ゴースト』
ジェイソン・レイノルズ ないとうふみこ訳 小峰書店

 帯文は「銃声がきこえたら、走れ!」

 ゴーストは走るのが得意な中学生。バスケをやろうと思っていたが、陸上チ
ームのコーチに誘われ、走りを選ぶ。

 もともと走るが速いのだ。
 特別な練習をしているわけではない。トレーナーについてもいない。
 しいていえば、こわい人のせいだとゴーストは思っている。
 こわい人から逃げるために走った3年前から、自分が早く走れることを自覚
した。

 チームの新人食事会には伝統がある。チームメートが知らない自分の秘密を
話すのだ。それぞれ、重ための秘密を抱え吐露することで、いい距離感がうま
れる。

 秘密は口に出すことで、相手との距離を縮めることがある。
 そうやって人と近づき、信頼がうまれるのはうれしいもの。

 厄介事をいろいろ抱えるゴーストが、走ることで、変化していく。

 大人目線ではコーチもかっこいい。
 いい大人が出てくる小説は、大人もたっぷり楽しめる。

 そして、次の紹介本、すずき出版の児童文学シリーズ「この地球を生きる子
どもたち」の新刊は安定の読ませる力をもっている。

『11番目の取引』
アリッサ・ホリングスワース作 もりうちすみこ訳 みうらし〜まる装画

 アフガニスタン難民のサミの物語。
 サミが難民になった背景として描かれるのは18年前の9・11の事件、家族の
中で生き残ったのは、サミと祖父の2人だけ。祖父はサミと共に、アメリカの
ボストンに渡る。

 祖父は有名なルバーブ奏者だったが、アメリカでは路上で演奏することしか
できない。演奏で得る金もアフガニスタンで得ていたものには比べることもで
きないくらいほんの少しだ。

 そんな経済と心の拠り所のルバーブが、ある日盗まれてしまい、祖父は慣れ
ない仕事をすることになる。サミはなんとかルバーブを取り返そうと、探し出
したものの、ギター店に売り出され700ドル稼がないと手元に戻ってこない。

 ついていないことだらけのサミだが、何かを失うときは、何かを得ること。
サッカー上手のサミに、友だちができ、彼らの助けをかりながら700ドルを目
標に動き始める。

 サミと祖父にとって何より大事なルバーブが手元にもどってくるのか、700
ドルもの大金が果たして一か月でつくれるのか。

 友人らの協力は現実的で、ネットの使い方もうまく、徐々に目標額に近づい
き、友情も深まっていく。

 作者はアフタニスタンに行き、自らの感じたこと、出会った人を物語に投影
した。翻訳されたことで、私たちが出会える世界があることに感謝したい。

 最後にご紹介するのは、季節の行事を楽しめる日本の物語。

 『とねりこ通り三丁目 ねこのこふじさん』
 山本和子 作 石川えりこ 絵 アリス館

 ねこのこふじさんは、職場でのイジメで心が疲れ、部屋でひきこもり。こふ
じさんのおばあさんは、自分の研究で世界一周に出かけるのを機に、留守番が
てら、こふじさんを住まわせることに。家賃は「月に一度、その月らしい行事
をすること」

 いっぴき暮らしを楽しもうとしていたこふじさんに、既にネズモリというネ
ズミさんも戸だなの中で暮らしていて、なんとなく同居暮らしがはじまる。

 4月のお花見にはじまり、七夕、花火……。よく知っている年中行事に、ネ
ズモリさんの豆歳時記コラムがおもしろくて、季節をあらためて見直してしま
う。

 四季を楽しめる生活の豊かさ、毎日仕事に追われていると、それは夢物語に
も思えてしまうけれど、疲れているときは、立ち止まって周りを見渡すことも
大事と素直に思える。

 さっぱりした甘くない絵も、物語にぴったりで、ねこのこふじさんという知
り合いができて楽しい気分になる。つかれている時に読みたくなる物語だ。


(林さかな)
会津若松在住。「本の雑誌」新刊めったくたガイド海外文学担当。
http://1day1book.strikingly.com/

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第114回 日本の歴史では、何が勝者を決めるのか

 今月も先月に引き続き、歴史の解説書、入門書をお届けする。

 日本の歴史を戦い、争い=価値観の衝突、利益の相反。という部分でみてい
く面白い入門書がある。

 そもそも日本の戦いの名称はおかしな名前が多い。「○○の戦い」や「□□
の乱」ならわかるが、「△△の変」「●●の役」となるとおかしくなってくる。
小学生のときから日本の歴史は勉強していて、子どものときは疑問も持たずに
教えてもらったことをそのまま鵜呑みするから、そのような呼び名でも特段に
おかしい、変だ、とは思わなかった。そしてそのような不思議な名称でも云い
慣れてしまい、使い慣れてしまうと疑問にも思わなくなる。あえて云えば、人
の名前のようなものだ。疑問に思わない。しかし、この名称をあらためて思っ
たとき、それらはなんと不思議な名称なのだろう、と考え始めた。本書のタイ
トルを目にしたとき、そんなことを思ったわけだ。

 天下分け目は「関ヶ原の戦い」であり、室町時代の内乱は「応仁の乱」。織
田信長が殺されたのは「本能寺の変」であり、奥州での争いは「前九年の役・
後三年の役」という名称になっている。いったい、その差はなにか、戦いの規
模か、それとも後世への影響力の大きさか。

 今回紹介する書物は、このような日本史上の戦いの名称に対する疑問から始
まり、その戦いが日本史のターニングポイントになったのではないか、という
ものを選んで、その戦いを俯瞰した上で、歴史上の影響をみていく、という作
業している。

『乱と変の日本史』(本郷和人 著)(祥伝社)(祥伝社新書)
(2019年1月30日)

 著者は、気鋭の中世史の研究者。その著者、本郷和人さんに因れば、本来戦
いの分類は厳密に学術的に行えばよかったが、そうはなされず、多分に感覚的
になっている、という。執筆子もそのとおりだと考える。そして、本郷さんの
感覚では、戦いの規模で、名称を分類するのならば、「戦争」→「役」→「乱」
→「変」→「戦い」の順番で規模が小さくなっていくようだ、と云っている。

 本書では、日本史上の代表的な戦いの名称である「乱」と「変」の名称の付
く、戦いを考察して、それが日本史上にどのような影響を及ぼしたかをみてい
く。
 紹介している戦いは以下の10こ。
 「平将門の乱」「保元の乱、平治の乱」「治承・寿永の乱」「承久の乱」
「足利尊氏の反乱」「観応の擾乱」「明徳の乱」「応仁の乱」「本能寺の変」
「島原の乱」。

 それぞれに特徴があり、その戦いが起こった理由、そしてその戦い後の様子
をみて、日本の歴史がどのような道をたどったかを考えている。将門の乱で律
令制が崩れ、武士の勢力を無視することが困難となり、保元平治、で武士が主
役の時代が始まり、治承寿永で政権は都以外に置かれることになった。尊氏は
政権を都に戻したが、権力が分散していたため政権が不安定であり、政権に権
威と統率力がないため、室町期を通じて様々な戦いが行われる。最大の内乱で
ある応仁の乱後は土地の排他的所有という概念が生まれた。天下統一を目指し
た信長は人の持つ土着性や郷土愛を蹂躙したので暗殺された。島原の乱はキリ
シタン一揆というよりも、平和と平等の争いであり、平和を求める人々の思い
が平等を求めた一揆側を凌いだ、ということだという。

 こうしてみると、日本史上の戦いは、その時、その時代において、社会的に
より高い利益を生むと思われる側が勝利している。武士の時代が到来したその
ときには平清盛は輝いていたが、平家は守旧派の朝廷に同化して、武士の利益
を代弁しなくなった時点で歴史の表舞台から退場した。揺れ戻しは不可能とい
うことが自覚され(承久の乱)、その後の300年くらいは互いに権力闘争によ
り不安定期となる。どちらが時流に乗っているかはわからないくらい混沌とし
た時代が長く続いた。それでもずっと武士の時代は変わらなかった。統一政権
後の混乱を収め、武士の時代は続くが、その武士の時代を終わらせたのは、
1877年(明治10年)の西南戦争、ということになる。

 歴史では、必要とされた者が勝ち、用済みの者が負ける。それが歴史の必然
なのだ。
 あざやかなタッチでぐいぐいと読者を日本史の世界に引きずり込んでいく。
とにかく面白かった。一気に読める。

 日本の歴史は、この国の国土が豊かで外敵の侵入がすくないため、穏やかに
ゆっくりと進む、と云う。天皇制は1000年以上前から不変だ。それでも、国内
でこれだけの戦いが繰り広げられている。
 歴史はとてもおもしろい。


多呂さ(参議院選挙。皆さん投票はしましょう)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ― 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510

・『支え合い・学び合いで育つ「わたし」』(エディット・パルク)
  http://web.kyoto-inet.or.jp/people/cogito/%8Fo%94%C5%88%C4%93%E0/%8Ex%82%A6%8D%87%82%A2%81E%8Aw%82%D1%8D%87%82%A2.html

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
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 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 歳を取ると時の流れが速くなると言いますが、最近は、速くなりすぎて追い
越されてる感が満載です。もう、びゅんびゅんです。(あ)

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