[書評]のメルマガ

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[書評]のメルマガ vol.678

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■■ [書評]のメルマガ                2019.06.10.発行
■■                              vol.678
■■ mailmagazine of book reviews           [健全な社会 号]
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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<113>『空母いぶき』とミルクセーキ

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→96 ファンタジー世界

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第113回 歴史を理解するセンスを磨くためには・・・歴史との付き合い方

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<113>『空母いぶき』とミルクセーキ

 3月、スっ転んだ拍子に、左足甲にヒビが入った。ギプスを巻かれたので、
松葉杖生活を送っていた。
 ようやくに、あと1週間ほどでギプスも外せる、という4月下旬、松葉杖の
バランスを崩し、階段を転げ落ちた。
 「あちゃちゃ、こけちゃいましたよ」と、松葉杖を支えに、大丈夫な方の右
足で立ち上がろうとしたのだが、その右足に力が入らず、立ち上がれない。

 救急車を呼んでもらい、病院でレントゲン撮った結果が「折れてますね〜〜、
ポッキリと」だった。
 両足ギプスの有様となり、即刻入院。翌々日に、折れた右足の手術を受けた。

 入院当初は、自分のドジを呪い、絶望的な気分にも襲われたが、過ぎたこと
をクヨクヨしても始まらない。
 これもまた何かの縁と、入院生活をなんとか前向きに過ごすことにこれ努め
……とゆーても、結局は普段よりも若干多くの本を読み、普段見ないテレビを
よく見ていた、ってほどの入院生活だったのだが。

 おかげさまにて、テレビを通じて「令和」改元へのバカ騒ぎと、浮かれポン
チの皆様の行状も、あれこれと見ることが出来ました。
 安部チンゾー首相が、4月30日の「退位礼正殿の儀」において、退位する天
皇皇后に面と向かって、「早く死ね」と声高らかに申し上げるところも、つぶ
さに見ておりました。

 あれ、官邸としては「なかったこと」にしてるらしいが、「国民の代表」と
しての挨拶なのだから、きちんと訂正しておいた方が、後々のためにも「ええ
ンとちゃうン?」と老婆心ながら思ってしまう。
 映像は、そのまんまで後世に残るわけだし。

 入院してる間に、これまた総理アベチン絡みで、なにやらキナ臭い騒動が巻
き起こっていた。
 かわぐちかいじ原作になる『空母いぶき』が映画化され、その公開が迫る中、
主要キャストの一人で作中では「垂水首相」を演じる佐藤浩市のインタビュー
での発言が、「けしからん!」とプンスカ青筋立てて怒る人たちが大勢出現し、
おかげで佐藤浩市は、公開初日の舞台挨拶にも立てなかったらしい。

 どんな発言だったのだ? と退院後に当該の雑誌、ビッグコミックを買って
読んでみた。
 なんてことないインタビューである。
 佐藤は、映画の中で大きな決断を迫られる首相を演じるにあたって、「スト
レスに弱くて、すぐにお腹を下してしまう」という設定にしてもらった…とい
う、そのくだりが、実際に腸に持病を持つアベチンを彷彿させ、「現職総理を
揶揄している」と、ある種の人々の怒りを買い、主にネット上での攻撃にさら
されているらしいのだ。

 「すぐにお腹を下してしまう」設定は、現職のアベチンを念頭に置いたに違
いない、と思う。
 インタビュー時には、その同じ持病を持つ総理を、多少なりとも揶揄する気
持ちもあったと思う。

 しかし、である。
 いつから、この国では、現職の総理は「揶揄してはいけない」存在になった
のだ?
 アベチンは、もはやあの「偉大なる指導者将軍閣下」同様、不可侵の存在な
のか?

 この件で、つい思い出したのは、一昨年の「小学8年生」(小学館)炎上事
件だ。
 この中の連載漫画『まんがで読む人物伝』(藤波俊彦)が、「第4号」誌上
で「安倍晋三」を取り上げたところが、その描きようが「悪意に満ちている」
「作者の偏見が反映されている」と非難轟々、雑誌のツイッターが大炎上して
しまった、というもの。

 この時にも、「どんな漫画やったん?」と当該の第4号を、わざわざアマゾ
ンで取り寄せてみた。
 なるほど、この描きようは、間違いなく「悪意だ」と思った。
 悪意のある毒でアベチンを貶めながら、その少年時代から現在までを短くも
克明に描いている。
 しかし、きちんと最後まで読めば、悪意と毒をまぶされてはいるが、その悪
運の強さや、数々のスキャンダルにもめげず、厚顔で押し通すところなど、一
応はリスペクトもされているのがわかる。

 ご興味がある方は、「小学8年生・藤波俊彦・安倍晋三」と検索すれば、今
なお非難轟々のブログやツイッターやサイトが、沢山ヒットして、漫画の画像
も見られます。

 そもそも、悪意や毒があってこそ、漫画なのだ。
 これを批判する人たちの言に従えば、小学生向けの雑誌に、現職の総理大臣
を悪意でもって誹謗するような漫画は許されず、美辞麗句並べ立てて褒め称え
ねば「いけない」ようだが、ンな漫画、誰が読むのだ。
 小学生だって…というか小学生ならばこそ、ンなつまらん漫画にはソッポ向
くだろう。

 歴代総理は代々、それぞれの時代で風刺やパロディーやからかいの対象であ
り続けてきた。
 佐藤栄作は、赤瀬川原平『櫻画報』の中で、アメリカという鎖に繋がれてい
る、物欲しげな番犬のブルドッグに描かれた。
 及川正通…だっけな? 記憶が定かでないのだが、田中角栄は首相当時、パ
ロディー漫画の中で裸の下半身を露出して登場し、傍らに侍る半裸の妾に、尻
をぼりぼり掻きながら、卑猥な言葉を投げかけていた。

 中には、パロディーや風刺というよりも、単なるギャグ…が滑って下品に堕
ちたものも数あったが、人は、それを見て眉をひそめはしても、血相変えてそ
の作者を糾弾したり、ネットで…って当時ネットはなかったが、抗議に走った
りすることはなかった。

 総理大臣に限らず、権力は、江戸の昔からパロディーやギャグの対象とされ
てきたし、それができてこそ、健全な社会といえるのではないか。

 我がニッポンを含めて、今や世界中にポピュリズムの旋風が吹きまくってい
る。
 アベチンを揶揄することを許さないのも、この勢力だ。
 かつてヒットラーとナチスを熱狂的に迎え、軍国日本の進撃に狂喜していた
のもまた、ポピュリズム勢力だった。
 そんなポピュリズムの圧倒的な支持を得た権力が、次に繰り出したのが権力
に対する批判勢力の弾圧と言論封殺であり、そして、その後に何が起こったの
かを、我々は忘れてはならん、と思う。

 英国のポピュリズムは、EUからの「合意泣き離脱」に向かっているようだが、
今、これを声高に訴える指導者たちに、ミルクセーキをぶっかけることで、
「NO!」の意志を示す「ミルクセーキ運動」が、にわかに活発になっているそ
うだ。
 ミルクセーキ……なんともみっともなく、気弱で情けない「抵抗」ではある
が、間もなくある参院選挙(「ダブルかも」と言われてるが)では、我々もま
た、ミルクセーキを持って候補者の演説に臨むのも、一考かもしれない。

 ところで、映画『空母いぶき』だが、まだ見ていないのでなんともよう言わ
んが、原作からは、かなり改変されているとか。
 原作の漫画は、領有権を主張し、突如南西諸島への侵攻を開始した中国軍に
対して、外交交渉の決裂の後、首相が防衛出動を発令し、海上自衛隊で新造さ
れたばかりの空母「いぶき」を旗艦とする艦隊が、これを迎え撃つ……

 という内容なので、「9条改憲派」などには歓迎を持って迎える向きもある
らしい。
 しかし、作中の「垂水首相」、映画では佐藤浩市が演じているその首相は、
アベチンと違って、「改憲」のカの字も口にしない。
 あくまでも現行憲法の下で、専守防衛に徹して、戦いを進めようとする、そ
の姿勢は、現場の自衛官たちにも共通で、すなわちこれは、「護憲」漫画でも
あるのだ。

 かわぐちかいじは、デビュー以来、数々の作品の中で「日本と日本人」をテ
ーマとする作品を、多く手掛けてきた。
 初期のころの『血染めの紋章』や『黒い太陽』から、近年話題になった『沈
黙の艦隊』や『ジパング』に至るまで、その歴史観と政治的スタンスは、一貫
して変わることがなかった。
 『空母いぶき』は、そんなかわぐち史観と、日本及び日本人論の、集大成と
なる漫画になる、はずだと確信する。


太郎吉野(たろう・よしの)
阪神タイガースお膝元在住。右投げ右打ち。趣味は途中下車、時々寝過ごし乗
り越し、最長不倒距離は三重県名張。
ちなみに「阪神タイガース」の「阪神」は、「兵庫県阪神地方」を指します。

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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96 ファンタジー世界

 朽木祥さんは追いかけている作家のひとり。
 2年ぶりの書き下ろし作品とくれば飛びついてしまうのは私だけではないは
ず。

 『月白青船山(つきしろ あおふねやま)』(岩波書店)

 予定していた海外旅行がフイになり、兄弟ふたりで鎌倉の大叔父の屋敷で過
ごすことになるのだが、まずは、時をさかのぼる1188年のプロローグ。
 瑠璃の石を白猫に預ける若者について語られる。当然、深い事情が読み取れ
る。そして時は現代の鎌倉にうつり、主税(ちから)と兄の兵吾、そして大叔
父さんの近所に住む少女、静音の3人が一夏の異世界に足を踏み入れていく。

 端正な文章で、現代とプロローグの時代をいったりきたりするのだが、ごく
自然に過去と現代がつながり、それはまるで”時”を串にすっと刺してたかの
ようにすっきりしている。

 夏休みという子どもにとっての非日常に、瑠璃の謎というミステリ的要素も
あり、謎ときの冒険物語でもある。

 君野可代子さんの装画・さし絵もすばらしく、物語舞台の大事なシーンをよ
り印象づける。特に、枝垂れ桜の絵はハッとさせられた。

 現代に書かれた王道の児童文学なのだが、朽木さんの文章は古典のような落
ち着きがあるからか、大人の読み手にとっても、読みごたえがある。これから
の夏の季節に読むのもぴったりだ。

 さて、次に紹介するのはノンフィクション絵本。

 『ドーナツのあなのはなし』
 パット・ミラー 文 ヴィンセント・X・キルシュ 絵 金原瑞人 訳
 廣済堂あかつき

 ドーナツのあなはどうしてできたのか?
 これは、ドーナツのあなを発見した人のお話なのだ。

 ドーナツはあまりにも身近なおやつなので、最初から穴があるものかと思っ
ている人の方が多いのではないだろうか。

 私もこの絵本を読んで、初めてドーナツの穴のことを知ったひとり。

 1844年、13歳だったハンソン・グレゴリーが海で働くところから話ははじま
る。彼は16歳のときには船でコックの助手をしていた。船の朝食に出るのは、
毎日同じ。パン生地をまるめて、ラードであげたもの。それはいつも、なかの
方は生のままでベトベトしていて、水夫たちにとって美味しいとはいえないし
ろものだった。そこで、ハンソンは考えたのだ……。

 絵本では、おもしろい話が好きな水夫たちがつくったドーナツ発明話もいく
つか紹介され、ドーナツのうんちくを蓄え(!?)られる。

 また、巻末にある「その後のドーナツとグレゴリー船長」もへぇと唸る逸話
が書かれていて、最後の最後まで読ませる内容となっている。

 もちろん、読んだあとはドーナツが食べたくなることも必須だ。

 最後にご紹介するのはおフランスからのユニーク絵本。

 『はなくそ だいピンチ!』
 『はなくそ ゆうかいじけん』
 マルジック&モリー さく・え ふしみみさを やく 汐文社

 「とびだせ はなくそ!」シリーズで2冊まで刊行されていて、タイトルを
読んだだけで、え、はなくそってアノはなくそ?って頭に疑問符が。
 そう、まさにその「はなくそ」絵本。

 どの人の鼻にもあるものを、ユニークにデフォルメし、擬人化されたはなく
そたちが事件を起こす。

 小さい子どもたちが特に喜んで大笑いしそうなストーリーと、おまけについ
ているのは、はなくそ指人形や、「指」の指人形など、すみずみまでニヤニヤ
してしまう。

 なにより、一度読むと、はなくその存在感がとても強くて忘れられなくなる
絵本なのだ。


(林さかな)
会津若松在住。「本の雑誌」新刊めったくたガイド海外文学担当。
http://1day1book.strikingly.com/

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第113回 歴史を理解するセンスを磨くためには・・・歴史との付き合い方

 改元は新しい歴史の始まり、という気持ちがふつうに暮らす日本人の率直な
気持ちであろう。先々月から始まった天皇の退位と即位とそれに伴う改元、と
いう一連の流れは、日本人にとってかつて経験したことがないほどの祝祭に彩
られた日々であったと思う。その中にどっぷりと浸かり、あるときはこの騒動
に呑み込まれ、皆と浮かれはしゃぐ。またあるときは一歩も二歩も外に出て、
この騒動を客観的に批判的に眺めている。そんな狂騒と嫌悪の2ヶ月間が過ぎ、
6月となる。どんなに盛り上がっても落ち込んでも時間は、時の刻みはあまね
くすべての存在に平等に与えられ、同じ速さで流れている。・・・・・こうし
て時が経ち、未来は今になり、今は過去になる。そして過去は歴史となってい
く。

 その歴史の見方、考え方を示す、ひとつの指標、しるべとなるような本が新
書として発刊されている。

『歴史という教養』(片山杜秀 著)(河出書房新社)(河出新書)
(2019年1月30日)

 「歴史」とはなんだろう? いつもそれを思っていた。歴史とは、単なる過
去の出来事だけではない、ということは理解できる。歴史とは、ほぼ無限に存
在しているクロニクルだけではないはずだ。それが証拠に、よく耳にし目にす
る言葉で「○○史観」、という表現がある。いろいろな考え、見方によって、
さまざまな歴史がある。むろんそれは、はるか昔の学生時代のときから理解し
ていたことではあるが、あらためて歴史における考え方の違いとはなんだろう、
と思ったのは、本書を書店で手に取ったときだった。

 本書の目次には、最初にこうある。「序章 「歴史」が足りない人は野蛮で
ある」。・・・・・なんとも挑発的なことばだ。本書の著者は、冒頭に20世紀
のドイツの哲学者テオドール・アドルノの箴言を載せている。アドルノ曰く、
“アウシュビッツ以後、詩作は野蛮である”。

 著者の片山杜秀氏は、“アウシュビッツを反芻しない脳天気な文化芸術上の
創作は、自らが野蛮人になりうる恐ろしさを、忘却し、うぬぼれているのだか
ら、それはもう「野蛮人の証明」である。”と、アドルノのこのことばを解説
した。・・・・・このあたりが本書の主題であり、著者が読者に考えてほしい
問題なのだろう。歴史を理解するには、苦しまなければならないのだ。歴史を
意識すればするほど、苦しむし、重たいし、つらい。しかしそれに耐えなけれ
ばならない。それに耐える力がない人は歴史を語る資格がない。ホロコースト
(アウシュビッツ)に目を背けていては、歴史を理解できない。徹底的に向き
合わなければ、歴史はわからないのだ。さしづめ、現在の日本ならば、「福島
第一原発」であろうか。福島第一原発に向き合わない文化芸術活動は野蛮人の
証明であろう。それはむろん文化芸術活動に留まらない。人間の活動すべてに
関わってくる。日本人なら「福島第一原発」のことを決して忘れてはいけない
のだ。歴史はそこで我々に教訓をもたらす。人類の手に負えないものに手を出
してはいけない。ところが、この国の指導者と商人たちは、性懲りもなく、教
訓を無視して原子力発電所を維持しようとしている。これを野蛮人と云わずに
なんと云うのだろうか。

 閑話休題。

 歴史を学ぶには、それに向き合うだけの体力と気力がないといけないのであ
るが、ではどのような態度で歴史に向き合えばよいのか? それが第一章の
「「温故知新主義」のすすめ」の内容となる。「温故知新」=故きを温ねて新
しきを知る。片山杜秀氏はこの「温故知新」を荻生徂徠の解釈が妥当であろう、
として論を進めている。

 歴史を学ぶ。あらゆることを知ろうとする、ということが「温故」。その上
で新しい出来事に新しい発想で対処することが「知新」である。つまり、“歴
史を学んで今を生きる力を養うこと”が大切だという。歴史を学ぶ。それを基
に今を生きる。歴史から導き出されたもので未来を予想する。進むべき道を選
ぶ。

 たぶん、道を選んでもその道は、人によって違うのであろう。歴史を学んで
もその学び方、結論によって解釈が違う。だから選んだ道が違う。そしてそれ
がこそが、その選び方が「○○史観」、あるいは歴史の「○○主義」となるの
であろう。

 第二章以下は、この歴史の解釈の違いに注目する。歴史の解釈はさまざまあ
ることを紹介している。「保守主義」「復古主義」「ロマン主義」「啓蒙主義」
「ファシスト」「反復主義」「ユートピア主義」・・・・・。

 著者はそれぞれを端的なことばで云い表す。「保守主義」=石橋を叩いて漸
進する。「啓蒙主義」=考える理性の進歩。「復古主義」=失われた過去に懸
ける情熱。「ロマン主義」=いろいろな過去を懐かしんではため息をつくぬる
い態度。「ファシスト」=今の固有性に賭けて過去も未来も忘れてしまう熱狂。
「反復主義」=古いことも新しいことも何もない。・・・等々。

 それらの歴史の見方の違い、それぞれの主義者の考えも理解した上で、著者
は「温故知新主義」を掲げる。「温故知新主義」とは、“歴史の一回一回の独
自性に学んで不断に「知新」を積み重ねていく姿勢”という。謙虚さが大切だ
し、感受性と想像力が大事なのだ。心が動かない歴史は歴史とは云えない。そ
してここで読者は、本書の最初の箴言を思い起こす。
 “アウシュビッツ以後、詩作は野蛮である”。

 最後に著者は、その「温故知新主義」を実践するための6つのヒントを紹介
している。1.歴史の道は似たもの探し・・・「既視感」が大切。2.歴史小説は
愛しても信じない・・・「似たもの」に喜んではいけない。3.「偉人」を主語
にしてはいけない・・・歴史のカメラがピンぼけする。4.ものさし変えれば意
味変わる・・・歴史は複眼でみなければいけない。5.歴史を語る汝が何者であ
るかを知れ・・・自分が歴史のなかにどういう願望を投影しているか、それを
自覚すること。6.歴史は「炭坑のカナリア」である・・・歴史を学び参照項を
増やしてリスクを回避する。・・・・・このヒントはとてもわかりやすいと思
う。大切なことは、人のことばをすぐに信じてしまわずに自分で考えることな
のだ。

 歴史から自由にはなれない。歴史に縛られている。だからと云って不自由な
のか、と云えばそうではない。歴史は運命や宿命ではない。歴史は偶然性であ
る。歴史は偶然だから自由なのだ。・・・・・本書はそう云って論を終わりに
している。

 新書版なのに、読み応えのありすぎる書物だった。

多呂さ(梅雨に入りました。今年はどんな災害がどこに発生するのでしょう)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ― 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510

・『支え合い・学び合いで育つ「わたし」』(エディット・パルク)
  http://web.kyoto-inet.or.jp/people/cogito/%8Fo%94%C5%88%C4%93%E0/%8Ex%82%A6%8D%87%82%A2%81E%8Aw%82%D1%8D%87%82%A2.html

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1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
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 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

 〒142-0041 東京都品川区戸越5-4-3 アズ品川ビル4階
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 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
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 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
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 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

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 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 梅雨が始まりましたー。(あ)

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★「トピックス」
→ トピックス募集中です

★「音楽本専門書評 BOOK’N’ROLL」/おかじまたか佳
→ #106『ソロ』

★「目につく本を読んでみる」/朝日山
→ 『脱税の世界史』大村大次郎 宝島社

★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→ 『俺か、俺以外か ローランドという生き方』

★【募集中】献本読者書評のコーナー
→ 献本お待ちしています!

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#106『ソロ』

 ブルガリアから連想するものは、なんですか?

 ヨーグルト。
 ……
 あ、あと、随分昔、『ブルガリアン・ヴォイス』というCDが話題になったっ
け。ブルガリアの民族音楽で、女性ばかりのコーラス。これが西欧的な和声と
はまるで異質な、野性味溢れる不協和なハーモニーで、新鮮だった。
 それから
 ……


 ぼくにとって、ブルガリアから出てくるのはこれだけ。
 大多数の日本人にとっても、そんなに変わらないのでは?


 そんな、正直縁遠いブルガリアを舞台に、ブルガリア人が主人公の小説を、
なぜかイギリス人が書いた。しかも彼は、インド人とイギリス人のハーフ、い
わゆるインド系英国人だという。
 妙にややこしく国籍アイデンティティが錯綜する小説。
 それがラーナー・ダスグプタの『ソロ』である。


 ぼくはもともと、多様性こそ豊かさのカギだと思っている。もちろん多様で
あるほど軋轢も生じる。それが戦争の原因にも、離婚の原因にもなる。しかし
それでも、多様性を捨てることは、意見を異にする人間を暴力で封じ込めるフ
ァシズムへの道なんじゃないか。
 それに、みんなが同じになってしまえば、進歩も生まれず、その集団に未来
はない以上、困難であっても多様性を、むしろ積極的に生み出していく方がい
い。


 十代の頃から、そんな考えがあって、主流から外れた、周辺に位置する音楽
文化に惹かれてきた。
 いまはポピュラー・ミュージックの王道と言えるロックも、70年代にはまだ
カウンター・カルチャーであり、周辺文化だった。矢沢永吉率いるキャロルが、
お茶の間カルチャーの象徴たるテレビに出た時など、ちょっとした事件だった
くらいである。ニューヨークで生まれたサルサという、まさに周辺的なラテン
音楽にもはまった。その影響で大学ではスペイン語を学んだ。
 要は、あまのじゃくというだけかも知れないが。


 そういうぼくにとって、「ブルガリア」「インド系」というキーワードは魅
惑的である。そこにどんな物語が語られるのか、本書を手に取らずにはいられ
なかった。


 さてこの小説、当欄で取り上げる以上、もちろん音楽本である。
 時々やるように無理矢理結びつけなくとも、音楽は重要なモチーフになって
いる。
 その証拠に、本書は2部構成になっているが、通常「第1部」と表記される
ところを「第1楽章」、「第2部」を「第2楽章」としているのである。
 もちろん、ストーリーの中でも、音楽が重要な役割を占めている。


 第1楽章の主人公はウルリッヒ。ドイツ風の名前だが、ブルガリア人だ。物
語は2001年という設定で、彼は100歳の誕生日を目前にした盲目の老人である。
 貧しく不自由な生活を耐え忍びながら、過去への追憶に浸る日々。その心象
風景に添うことで、われわれは彼の人生を辿る。
 そして、ほぼ20世紀に重なるこの物語を通して、ブルガリアの現代史をも知
ることになるのである。


 ブルガリア史にまったく疎いぼくは、まずこの国が、オスマントルコ帝国の
領土だったと知って、へーっと思う。
 ついで独立するも、今度はナチス・ドイツが占領。
 第二次大戦後は、ソ連の衛星国家として共産国に。
 そして、ソ連崩壊によって資本主義化し、今日に至るという、波乱と激動の
歴史を持つ国なのだ。


 ヨーグルトをつくって、余暇には村のおばちゃんがコーラスを楽しんでいる、
のどかで牧歌的なイメージが覆る。


 ウルリッヒは、曖昧になった記憶をランダムに追いかけながら、相次ぐ社会
の激変に呑まれ、翻弄されてきた自らの人生を思う。
 音楽に惹かれた幼いウルリッヒがジプシーの後について回る、というエピソ
ードなどは、音楽本として興味深く、また第2楽章への伏線ともなっている。


 さて、その第2楽章は、一転して群像劇となる。
 まず、最初に登場する人物がウルリッヒではない。ボリスという少年だ。舞
台も現代、すなわち21世紀である。
 さらに、第1楽章が回想録に特有の静謐で淡々とした語り口だったのに対し、
第2楽章ではストーリーの起伏が激しくなるからだろうか、文体もダイナミッ
クになる。
 一瞬、別の小説が始まったのかと思うほど、趣が変わるのだ。


 しかし、初めに登場する少年ボリスは、結局ウルリッヒの、社会的動乱によ
って生き別れになった息子だとわかってくる。
 この絆が、第1楽章と第2楽章を結ぶ唯一のリンクだ。


 ボリスはウルリッヒの血を引いたか、やはり幼い頃からジプシーの音楽に惹
かれた。ウルリッヒは父親の猛反対で音楽を諦め化学者への道を歩んだが、ボ
リスは興味の赴くままヴァイオリンを弾き始める。
 やがて社会の混乱の中で一切の係累を失い、一人孤独に暮らしながら腕を磨
く。


 そんな彼が、ニューヨークの音楽プロデューサー、プラスティック・ムナリ
に見出され、スターとなる過程が、第2楽章の主軸ではある。
 だが、それとはまったく別に、やはりソ連崩壊で混乱の極にあるグルジア
(現在のジョージア)が舞台となって、没落した上流家庭の娘ハトゥナや、彼
女の夫となるグルジア・マフィアの大ボスや、彼女の弟で詩人のイラクリなど、
魅力的な人物がそれぞれの物語を紡いでいく。
 そしてすべての登場人物は、911のテロを経たニューヨークで合流し、ひ
とつの物語に収斂するのである。


 そんな特異な構成を持つこの小説を読んで、ぼくが最も驚嘆したのは、「音
楽性」であった。


 小説で「音楽性」というのも変だが、音楽で使われる固有の手法を文学に応
用することで、新しい表現を生み出しているという意味に取ってほしい。


 第1楽章で応用される手法は、「転調」である。


 交響曲のタイトルには大体その曲の調が記されている。
 例えば有名なベートーヴェンの『第九』。これは「ニ短調」


 でも、え?と思わないだろうか。
 短調といえば、暗くもの悲しい雰囲気のはず。
 でも「第九」って、「歓びの歌」でしょ? あれってめちゃ明るくない?


 その通り。
 実は交響曲のような長い曲で、最初から最後まで同じ調ということはあり得
ない。それでは退屈で、聴衆が飽きてしまうからだ。
 それに、ロマン派の音楽は紆余曲折を経て最後にクライマックスを迎える劇
的な構成を特徴とする。その紆余曲折が、さまざまな調を経ることで表現され
るのだ。
 そのため、『第九』でいえば第1楽章だけでも、二短調→変ロ長調→ト短調
→ハ長調→ト短調→変ロ長調とめまぐるしく調が変わっている。短調と長調が
交互に出てくるところにご留意あれ。


 このように、調を変える作曲技法が転調なのだが、ぼくは、ウルリッヒの人
生を襲う体制の激変こそ、この小説における「転調」だと思うのだ。


 音楽において、調はその曲の背景となり、全体の雰囲気を支配する世界観で
ある。
 世界ががらっと変わるのが転調だとすれば、オスマントルコの帝国主義に始
まり、ナチス・ドイツのファシズム、ついで共産主義、さらにソ連崩壊による
資本主義と、国家の体制が根本から変わることは、まさに社会の「転調」と言
っていい。
 そしてウルリッヒのような個人の人生が、転調に翻弄されるメロディーであ
る。


 よく、日本もいま激動の時代にある、などと言うけれど、体制の根本が変わ
ることに比べたら、何ほどのこともない。戦後の日本は、結局同じ「調」の中
で歴史を重ねてきた。世紀の変わり目を挟むように巨大災害という「転調」は
あったものの、それは天変地異としてひとまずおく。


 とはいえ、ブルガリアが経験した、激しい「転調」は対岸の火事なのか。
 いや、日本もいつどうなるかわからない。
 実際、太平洋戦争の敗戦では、多くの日本人が「転調」を経験している。そ
れまで教えられてきたことがすべて否定され、虚構となった衝撃がいかにすさ
まじかったかは、われわれ戦後世代にとって想像の埒外にある。


 それでも、もし、再びそんな時代が来てしまってもうろたえないように、フ
ィクションを通じて世界の崩壊を疑似体験しておくことは、なにがしかの準備
になるだろう。


 一方、第2楽章は、「対位法」という手法を応用して書かれた、とぼくは思
う。


 交響曲の前、バッハの時代にはまだ主旋律という考え方は希薄だった。
 むしろ、複数のメロディを同時に重ねて、そのもつれあう様を楽しむ方法が
主流だった。
 これを対位法の音楽という。


 群像劇は、まさに対位法である。
 一人一人の登場人物がメロディーであり、彼らが重なり合い、もつれあって、
やがてひとつの物語を織り上げていくのだから。


 ではどうしてこの小説は、第2楽章で全く異なる「対位法」を選択したのか?


 その答えは、21世紀の今日、ウルリッヒの人生=ブルガリア現代史のように、
もはや一人の人生に現代史を象徴させることが出来なくなったからだと思う。
 
 複数の人生が折り重なって、初めて歴史というタペストリーが織り上がる時
代。
 それは、冒頭に書いたように、多様性の結果であり、ぼく自身はよいことだ
と考える。


 だからと言って物語自体がハッピーエンドとは限らないのだが、それでもこ
の小説を悲劇と読むかどうかは、人それぞれだろう。


 ウルリッヒには、遠い子供時代に本で知ったある日本語の、不思議な官能性
に惹かれた記憶があるのだが、言葉自体は忘れてしまっている。だがラストで、
親子の名乗りをしないまま息子ボリスの旅立ちを見送る時、不意にその言葉を
思い出すのだ。


 それは、「ソイネ(添い寝)」という日本語である。


 ここでぼくは、この小説が『ソロ』というタイトルであったことを思い起こ
す。


 ソロとは、一人という意味であり、音楽用語では独奏だ。
 ウルリッヒは離婚し、息子とも生き別れになり、年老いた両親に死なれてか
らは、孤独なソロの人生を歩んできた。
 ボリスもまた家族を亡くし、ジプシーの仲間ともはぐれて、たった一人で生
き延びながらヴァイオリンを独学、独奏で弾いてきた。
 血で繋がったふたつのソロは運命に引き裂かれ、そして運命に導かれて再会
するのだが、すぐにまた別れてしまう。作者はここで、安易な家族の再生は歌
わない。
 それでも、二人の距離感には、淡いようだが、この上ない官能性に満たされ
た深い何かが漂っている。
 それがまさに「添い寝」の感覚であるのだろう。
 
 人は独りである。そして、だからこそ独りではない。
 そのやるせないぬくもりを思いながら、ぼくはため息と共にページを閉じる。


ラーナー・ダスグプタ
西田英恵 訳
『ソロ』
二〇一七年一二月一五日 印刷
二〇一八年一月一〇日 発行
白水社


おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
壊れたラジカセ、使わなくなったプリンターとエフェクター類を、ハードオフ
に持って行きました。ラジカセは10円。プリンターは50円。エフェクター類は
スイッチが300円、VOXのアンプ・シュミレーターが900円、エレアコ用のプリ
アンプが3,000円。なんか、ちょっと嬉しい。また、行こ。(宣伝にあらず)

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『脱税の世界史』大村大次郎 宝島社

 大村大次郎というと、元国税庁で節税の専門家として多くの本を出している
方だが、こんな本も出していたとは知らなかった。

 内容はタイトル通りで、古くは古代エジプトや古代ギリシャの時代から、新
しいところではパナマ文書やGAFAまでの脱税史のトリビア本という感じである。

 多くの時代、多くの国を扱っているので、ひとつ一つのトピックを深く解説
しているわけではないものの、とても分かりやすい文体で書かれている。こう
いうところは、節税の本を大量に書いているうちに培われた能力かも知れない。

 だって節税の本を読むのはたいてい普段本を読まない人たちだろうから、そ
ういう人向けにややこしい税制のことを上手にわかりやすく説明しなければな
らないはずなので、必然的に文章も磨かれる。そんな感じがした。

 「はじめに」の冒頭には、「国家とは税金である」とある。そのココロは、
国の盛衰には必ずといっていいほど税金がからんでいるわけで、世界史に登場
する、強国・大国はどこも優れた税制を持っていたという。

 「民が疲弊しないように効率的に税を徴収し。それをまた効率的に国家建設
に生かす」これができていなければ国が興隆することはできない。逆に言えば
税制が政治腐敗や時代の変化などで劣化する時が、国家が滅びるきっかけとな
るのだと言う。

 で、脱税と言うのは、基本払う税金を減らしたいと思って細工することが多
い。これは古今東西どこでも一緒である。しかし「圧政、重税に対する抵抗と
して、民衆が結託して、課税逃れに走ると言う場合もあります。また富裕層や
貴族などが特権を活用し合法的に税を逃れるということもあります」

 「いずれにせよ、脱税がはびこる時は、社会は大きな変動が起きます。武装
蜂起、革命、国家分裂、国家崩壊などには。必ずといっていいほど『脱税』と
『税システムの機能不全』が絡んでいるのです」

 すなわち、脱税を見ていれば社会の変化、潮目が分かると言うことなのだろ
う。

 そして、「これまでとは違った立体的なイメージ」がわいてきて、「不可解
に思えていた出来事のつじつまがくっきりと見えてきたりする」のだそうだ。
早速読んでいく。

 最初に来るのは古代ギリシャと古代エジプトの税金史。古代ギリシャに税金
はなかったが、アンチドシスと言う必要な時に金持ちから寄付を募る制度かあ
った。これは指名されたら金持ちは半強制的に戦費などをカネを払わされる。
しかし、指名されていない、自分より金持ちがいたらその人を指名して自分は
指名から外れることもできた。指名された人は求められたカネを出すか、指名
してきた人と財産を交換することがどちらかを選ぶことができた。

 たとえばAという人が一番カネ持っているなら出すしかない。しかしAはB
の方が金持ちだと指名することができるのだ。Bは本当にその通りならAの代
わりに金を払う。Bが「いや、Aくん、キミの方が金持ちだろ?」と拒否すれ
ばAから財産の全交換を求められる。

 もしBの方が本当にAより金持ちなら、財産を全交換したらAは儲かる。B
の言う通りAの方が金持ちだったら、立場が逆転してBの方が金持ちになる。
要は金持ち同士の財産情報が上手に制度化・活用されて前金のように機能して
いた。

 とはいえ、基本税金を取るのは当時から簡単なことではなく、間接税や関税
をメインにせざるを得なかった。しかも、関税をごまかす者は昔からいた。

 徴税請負人と言う職業もあった。税金を徴収する仕事と引き換えに手数料を
もらう仕事である。たとえば国から100万円分の税金を集めて、そのうち20万
円をもらって80万円を国に納める。

 この方法は請負人が税金を集めるので徴収コストが安くなる反面、腐敗の温
床になってしまうことが多い。古代エジプトなど、そうした事情がよく分かっ
ていて腐敗を防ぐ優れた仕組みを持っていたが、それでも腐敗を避けることは
できなかった。

 そんなところから始まって、ユダヤ人の世界放浪はもともと重税を割けるた
めだったとか、イスラム教に改宗すると税金の割引があったとか、清教徒革命
はたった1人がたった20シリングの船舶税の支払いを拒否したのをきっかけに
始まったなどなど、古今東西の税金と脱税の興味深い話が続いていく。源泉徴
収がナチスドイツの発明だとかも、初めて知った。

 とはいえ最も量的に多いのは現代のトピックで、タックスヘイブンやGAFA、
(Google Amazon Facebook Apple)の逃税など、現在進行形の問題に多くのペ
ージが割かれている。

 中でもプーチンについて触れているところで、ソ連が崩壊したから世界は格
差社会になったという指摘は鋭い・・・。ライバルがいなくなったから資本主
義は堕落したというわけですね。

 これは面白いと思って他の大村さんの本を調べてみると、税金関係だけでな
く「おカネの流れ」で歴史を読み解くような内容の本がいくつか見つかった。
節税本なんか読まない人でもこういう本は興味がわくだろう。税金本の著者は、
いつの間にか、お金の歴史の専門家になっていた。

(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)
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■「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
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けっこういいヤツ。カリスマホストのローランド
『俺か、俺以外か ローランドという生き方』(ローランド・著 KADOK
AWA)

 今回紹介するのは『俺か、俺以外か ローランドという生き方』です。帯に
は「読めばわかる。ボクがなぜ、コイツを弟と呼ぶのか」というGACKT様
の推薦文が書いてあります。

 「前にキャバクラ嬢の本を紹介して、今回はホストかい」とおっしゃる皆さ
ま、すみません。だって本が売れないこの御時勢、売れているのはキャバ嬢と
ホストの本しかないんですもの。小説なんて実売1800部しか・・・あ、すみま
せん炎上しちゃう。(わからない方は「ネット見ろ!」BYアンジャッシュ・
渡部)

 ローランドとは、東京は新宿の歌舞伎町のホストで、1日の売り上げが300
万にもなるほどのカリスマホストです。メディアに積極的に出て、上から目線
の名言をかまし、それがちょっと笑えて、トークも芸人さん並に上手なことか
ら最近、話題になっていますね。かつて城崎仁なんて人もいて今は通販番組で
がんばっているようですが、それとはまた違うビジュアル系で女子のファンも
多いよう。おばちゃまが最初に見たのは動画でしたがたしかにオーラがありま
した。

 そのローランド様の名言を集めたのがこの本。
「無様に勝つぐらいなら美しく負ける。まあ、俺は美しく勝つんだけど(笑)」
とか、
「ローランドが下を向くときは、出勤時に靴をはくときだけさ」
 というタカビーな発言でクスリと笑える。

 でも一番有名なのが、
「世の中には2種類の男しかいない、
俺か、
俺以外か」
ですね。

 すごい!って一瞬思うんですが、よく考えてみたら、この世の人はだれでも
俺か俺以外、私か私以外ですよね。なあんだ。
 でもまあ面白いですね。このセンスはどこで培われたのかの秘密が本に書い
てあります。

 それは帝京高校サッカー部。

 バリバリの全国出場をめざすこの部にいたというからサッカーの精鋭ですね。
ここでの先輩や同級生、後輩とのやりとりからとっさにおもしろいことを言う
センスが磨かれたらしい。そう、木梨憲武を輩出した帝京サッカー部はサッカ
ー選手だけでなく、タレントもおのずと育成する養成所だったんですね。

 そして、この人のもうひとつの魅力というのが、フツーにいいヤツというこ
と。タカビー発言からちょこちょこ見え隠れするフツー感が笑える。

 それが一番顕著なのが、

「俺以上におまえを幸せにできるヤツがいる?彼氏なんて作らなくていい」
っていう章。

 これ彼女じゃなくて妹に言った言葉で、妹さんに彼ができてヤキモキしたと
いう、なんや、一般家庭の微笑ましい話やないかい!ってところがね、爆笑で
なんや、普通のええヤツやないかいと読めます。(出だしが「大好きな大好き
な妹へ」だよ。)

 これがギャップ萌えを誘導する話ならまたすごいんですが、結局、まだ20代
半ばの青少年。なんか若いのよ、したたかさが足りないのよ。

 キャバ嬢のほうは、歌舞伎町の愛沢えみりと、名古屋・錦の小川えりが引退
を発表して、すでに北新地の門りょうも引退して、今後が不透明ですので、ホ
スト界はローランド1人でがんばっていただきたい。もう2〜3人ビッグなホ
ストが出ると活気づくんだけどね。

 ちなみにこの本の印税は、カンボジアの子どもたちの育成と、東日本大震災
をはじめとする日本各地の復興のために使われるとのことです。やっぱり、い
いヤツや〜。

大友舞子(おおとも・まいこ)
昭和20年代生まれのフリー編集&ライター。関東生まれで関西在住。

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 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ─ 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
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・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
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 またすぐ、10日号でお会いしましょう!(あ)

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★トピックス
→トピックス募集中です。


★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→95 なんども読み返す物語

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第112回 災害と万葉集と歴史と日本人

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→今回はお休みです

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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95 なんども読み返す物語

 誰もが有限の時間で生活している。
 このあたりまえすぎることを、年を重ねるごとに思う。
 生活のために働く時間が一日の大半なため、本を読む時間を捻出するのが、
ことのほか難しい。時間だけでなく、加齢で体力も落ちているのも原因のひと
つ。

 時間がないので、読み返したいと思っても、いままで読んだことのない本を
読みたい欲望が勝ってしまう。

 そんななかでも、タイミングよく再読しているのが『オズの魔法使い』。

 早川文庫から出ている「オズの魔法使い」シリーズは高校生の時に少しずつ
買いそろえて楽しんでいた。それがひょんなことから、仕事にもつながり(復
刊ドットコムからオズシリーズ全15巻の編集)、なんども深く読み返すことに
なる。仕事の参考にと、複数の訳も読み比べもした。どの訳もすばらしく、読

たびに新鮮に面白さく夢中になってしまう。

 そしてまたあらたに訳された本が出たのはうれしい限り。

 『すばらしいオズの魔法使い』
 L・F・ボーム 作 R・イングペン 絵 杉田七重 訳 西村書店

 西村書店のカラー新訳豪華版は、本当に豪華で読みごたえがある。
 既刊の『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』『楽しい川辺』もイング
ペンの挿絵と杉田七重さんの訳で楽んだ。本書も同コンビなので、期待が膨ら
む。
 
 たくさん出ているオズの本の面白さは訳文と共に挿絵の存在も大きい。
 どの本の挿絵も、画家のイマジネーションに唸らされ、ページをぐいぐい繰
る楽しみがある。

 イングペンの絵は、人間味あるドロシーや仲間たちを描き、引きこまれる。
目立って特徴的に描くのではなく、どちらかというと個性をおさえて、存在だ
けを強調する、とでもいおうか。写実的に描かれたドロシーたちは、ファンタ
ジー世界の住人というより、ご近所さんの雰囲気を感じるほどだ。

 杉田さんの訳も質のいい文章で、声に出して読んでも黙読でも、ストーリー
を豊かにイメージできる。

 作者ボームが「ただ面白さを求めて物語を読めばいい」と物語のはじめに書
いているとおり、そして訳者の杉田さんが『すばらしいオズの魔法使い』を読
む体験は「面白さいの極み」とあとがきに書かれているとおり、ふたりの言葉
に大きくうなずく。

 オズシリーズを読んだ人であれば、ぜひとも本書でオズの仲間たちと再会し
て欲しい。

 さて、1900年に書かれた古典ファンタジーを楽しんだあとは、
 現代に描かれた絵本を紹介する。

 『ひみつのビクビク』
 フランチェスカ・サンナ 作 なかがわちひろ 訳 あかつき

 作者のデビュー作『ジャーニー 国境をこえて』(きじとら出版)もこのメ
ルマガで紹介しているが、2作目にあたる本作もよい。

 「わたし」のひみつのともだちビクビクは、いつも「わたし」を守ってくれ
ている。守ってくれているから安心、心地よい、、はず??
 最初は小さかったビクビクが「わたし」を守ってくれるたびに、大きくなっ
ていき、身動きがとれなくなってしまう。
 そんな時、別の子のビクビクと出会い……。

 どの子も心にもっている心配が形になったビクビク。新しい環境では誰もが
抱く気持ちを視覚化し、大丈夫だよと背中を押してくれる存在になっていく様
子が丁寧にやさしく描かれている。

 4月から新しい学校生活がはじまった子どもたちに、寄り添ってくれる絵本。
 

 最後に紹介する絵本はまた古典にもどり、アンデルセンの「おやゆびひめ」。
 松井るり子さんによる再話ですべてひらがなで書かれている。

 『おやゆびひめ』
 アンデルセン 作 カンタン・グレバン 絵 松井るり子 再話
 岩波書店

 カンタン・グレバンの絵はやわらかく雄大。
おやゆびひめの低い視点で描かれていたり、高いところから俯瞰するように描
かれていたりと、視点の動きがダイナミックで面白さい。

 松井さんのやわらかな語り口は、おやゆびひめの、はかない可愛さと、運命
のいたずらで起こるできごとに引きこませ、なんども読みたくなる。

 そう、絵本はなんども読んでこそ面白さいのだ。
 短い時間で豊かに楽しめる絵本は、大人にもオススメ。


(林さかな)
会津若松在住。「本の雑誌」新刊めったくたガイド海外文学担当。
http://1day1book.strikingly.com/

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第112回 災害と万葉集と歴史と日本人

 新元号が発表された4月1日以降、平成最後の日々であった4月中にすっか
り時の人となった万葉集学者の中西進先生。そして、改元騒動お祭りだったこ
の10連休中、メディアに引っ張りだこだった歴史学者の磯田道史先生。このお
ふたりの対談を新書化した本が本屋で平積みになっていた。

『災害と生きる日本人』(中西進・磯田道史 著)(潮出版)(潮新書)
(2019年3月20日)

 タイトルをみて本書を買ってしまった。執筆子にとっては、まさにこのタイ
トルが8年前からのテーマと云える。さまざまな災害に遭いながらこの島国で
生きていく日本人。災害と隣り合わせに一緒に行き続けなければならない運命
にある日本人。それこそ、わたしたち日本人の特色だと思っている。

 そして話題のふたり。新元号 令和を提案したとされる中西さん。天皇の退位、
平成の終焉、令和の到来、新天皇の即位。この祝祭の日々においてメディアに
出ずっぱりだった磯田さん。このふたりが日本や日本人、日本の歴史について
それぞれの薀蓄を披露し、語り合う。相当にタイムリーな本だと思った。

 さらに、売り方がうまい。本書のタイトルをテーマにおふたりが対談するの
は第1章のみ。2章以降は災害がテーマではない。本書はこの国の歴史をひも
解いて、その中で日本人のものの考え方や行動様式をさぐっている。どうやら
それがテーマなのだが、タイトルは災害に特化している。「災害と生きる日本
人」。このタイトルでは、災害や防災に関心のある人へのアピールとなるし、
話題のふたりの対談本なので、歴史に興味のある人へのセールにもなる。

 第1章「天災と人災の中で」。大地震が起こる。そのあと人々は、震災の後
だから、そのときを震災後、という。しかしこの日本列島に住む私たちは、実
は震災後ではない。地震をはじめあらゆる災害が頻発するこの土地では、災害
後という概念で考えてはいけない。何も起こらず、災害がないときでも実は災
害と災害の間を過ごしている。私たちはそんな「災間」を生きているのだ。こ
のことは肝に命じておかないといけない。またどこかで何かが起こる。今年も
今年も梅雨が始まる。日本列島は6月から10月いっぱいは水害のシーズン。ど
こでどんな形で大雨が降り続くかわからない。土地土地に伝承されたもの、石
碑などがあればそれを大事にして、過去の被害を教訓に対策を立てなければい
けない。

 第2章以降は、災害がテーマではないが、とても興味深い内容となっている。
万葉集で詠われたたくさんの詩から当時の人々の生命感人生観をあぶり出す。
恋と死と生命が主題であり、それが現代の我々とどうつながっているか、また
断絶したものはなにかをさぐる。しかし、話は万葉集だけでは終わらない。古
典と歴史の専門家は日本の歴史を俯瞰していく。

 中西先生によると、日本の歴史を大きく三つに分けて考えるとわかりやすく
なるという。三つの分岐点。第一の切れ目は5世紀。大陸から新しい思想(儒
教)が入ってきた時代。第二は12世紀。武家政権(鎌倉時代)の始まりであり、
日本の仏教が完成したとき。そして三番目の分岐点は近代が始まった19世紀。
19世紀になってやっと、日本にキリスト教が入ることができた。

 本書は歴史を学ぶ手がかりになる。歴史を学ぶためのさまざまな手段を開陳
してくれる。それは宗教や思想、経済問題など多岐にわたる。
 本書は歴史を考えていくためのいいヒントがたくさん詰まった素晴らしい小
品である。

多呂さ(時代の区切りのお祭りは終わりました。新しい時代の新鮮な空気が漂
っているうちに自分の居場所を確保したいと思っています)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ― 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510

・『支え合い・学び合いで育つ「わたし」』(エディット・パルク)
  http://web.kyoto-inet.or.jp/people/cogito/%8Fo%94%C5%88%C4%93%E0/%8Ex%82%A6%8D%87%82%A2%81E%8Aw%82%D1%8D%87%82%A2.html

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

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1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
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       ビズナレッジ株式会社内 [書評]のメルマガ 献本 係

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンや楽天などのオンライン
 書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。つまり
 は当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願いしま
 す。(あまりにも短いものは書評とは呼べませんので、文字数の条件を設け
 ました。書評は500字以上でお願い致します。)

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 10連休明け、なぜか体調を崩されている方が多いような印象です。休むのに
疲れたのか、働きたくなくなったのか…。

 お子さんたちには素敵なお休みになったことと思います。

 というわけでもないんですが、執筆陣も2人お休みでちょっと寂しい今号と
なりました。(あ)

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[書評]のメルマガ vol.676

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■■ mailmagazine of book reviews [世界はインタビューでできている 号]
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■コンテンツ
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★「トピックス」
→ トピックス募集中です

★「音楽本専門書評 BOOK’N’ROLL」/おかじまたか佳
→ #105『屋上のウインドノーツ』

★「目につく本を読んでみる」/朝日山
→ 『懐中時計礼賛』武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科研究室

★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→ 困ったときはお仕事本。ピンチに読んだ3冊の本。

★【募集中】献本読者書評のコーナー
→ 献本お待ちしています!

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
└──────────────────────────────────

 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#105『屋上のウインドノーツ』

 数年前ぐらいだったか、やたら吹奏楽部をテーマにした小説が出てくんなー、
と思った時期があった。アクロバティックなマーチングをしながら演奏する吹
奏楽がテレビで取り上げられた影響か。漫画で『けいおん』がヒットしたから
次はブラバンという安直な発想か。

 ま、確実に音楽本ではあるし、その内どれか読んでみようと思いつつ、棚上
げにしていた。

 この4月は、例の改元騒ぎ。桜も、花開いた途端に寒くなった影響で却って
長持ち。おかげで、いつも以上に妙な新年度感・新学期感がして、気づくと額
賀澪『屋上のウインドノーツ』を手に取っていた。
 
 管楽器のことを、英語でウインド・インストルメントと言う。シエナ・ウイ
ンド・オーケストラというのもある。
 ウインド、すなわち風、だ。
 いいネーミングだと思う。
 吹くことで音が鳴る楽器。だから、それは正確には風ではなく、息だ。
 でもそれを、風と呼ぶ。

 現実の風というより、風という言葉が好きだ。
 小田和正もそうらしく、歌詞によく「風」が出てくる。昔インタビューでも
言っていた。「俺は風さえあればいいんだ」と。「でもみんなが、また風です
か、って言うから、無理やり他のものにしてるんだよね」

 それで、そのものズバリ、『ブラバン』というタイトルの津原泰水作品では
なく、「ウインド」という言葉の入った本書に手が伸びたのかもしれない。

と言いつつ、実は主人公の担当楽器は管楽器ではなく、ドラムなのだ。
ウインドじゃないじゃん。

 舞台は茨城県。この微妙な田舎感が、本書を成功させた要因のひとつ。東京
にほどよく近く、でも田園風景豊かなロケーション。案外暮らしの中で生きて
いる方言。
 もっとも著者略歴を見ると、自分のふるさとを舞台に選んだだけのようだが。

 物語は幼稚園から始まる。主人公の一人、志音は極端な人見知りで友達が出
来ない。そこへ瑠璃ちゃんという子が手を差し伸べてくる。一緒に鬼ごっこし
よう。すると志音は答える、「おれ、足、遅いけど……」
 ここで、えっ?となる。志音って、女の子だとばかり思ってたけど、男の子
だったんだ、と誤解するわけである。

 しかし、その後になって、この地方の方言で、女性も「おれ」と言うことが
説明される。もっとも、そう言うのは年配の女性と子供だけで、ある程度の年
齢になると「私」と言うようになる。ところが、志音はいまさら一人称を変え
ることに抵抗があり、中学、高校になっても「おれ」で通す変わり者だ。

 引っ込み思案で、自己主張が出来ないくせに、そういうところだけ変に意固
地。
 この設定はリアルで巧み。

 もう一人の主人公は、大志。こちらはれっきとした男子。
 中学の時、吹奏楽部の部長だったが、部員たちとうまく行かなかったトラウ
マがある。高校でも吹奏楽部には入るものの、三年になって部長に指名される
が、頑なに拒否しているというところからの登場。

 そんな大志が、高校一年になっても相変わらず孤独な志音と出会い、半ば強
引にブラバンに入れる。志音は次第に心を開き、仲間たちと高校吹奏楽部のコ
ンテストを目指して猛練習するようになる、とまあ、ストーリーはありきたり
だ。

 大志が中学の時に経験したトラウマも、そんな精神病理用語で呼ぶにはあま
りにも可愛く、児童虐待やら性的暴行やらが当たり前に出てくる昨今の小説や
映画に慣れた目には、大したことがないように見える。
 志音の孤独も、父親がいないとはいえ、極端に貧しいわけでもなく、母親と
もまあまあうまく行ってるわけで、さほど悩むことかい、と突っ込みたくもな
る。

 でもね、その「大したことない悩み」に、死ぬほど悩むのが青春なんだよな
ー、とこの著者は思わせてくれる。何度か、思わず目頭が熱くなってしまいも
する。決してこちらが年取ったせいだけではない(と思いたい)。
 著者が実際にブラバンにいたんじゃないかと思わせるほど、演奏シーンや練
習シーンの随所にきらめく的確な描写。
 部員を始めとする登場人物の、明確な書き分け。
 エンターテイメント文学としての足腰がしっかりしているから、物語世界の
中に素直に入っていけるし、だからこそつい涙腺も緩むのだろう。

 大人になってしまえば、ああ、そんなこともあったっけ、と笑い飛ばせるよ
うなことが、人生の一大事に思える季節。
 それだけ、「いまがすべて」と思える年代。

 もちろん、「いまがすべて」というのは青春時代だけじゃない、いつだって
真実なのだ。確実に「在る」と言えるのは、この現在の一瞬だけであり、人は
過去も未来も、在った/在るだろうと信じるしかない。
 でも、なぜか大人になると、明日は確実に来ると思うようになる。過去の確
かさも疑わなくなる。
 ただ、青春と呼ばれる時期にだけ、ぼくらは「いま」を生きることにせいい
っぱいで、だからこそ「いまがすべて」という人生の真理を生きることが出来
るのだ。

 その意味では、彼らの方がちゃんと「わかっている」のだ。

 それでも、コンテストが終わり、物語が大団円を迎えた後――エピローグに
当たる終章では、あれだけ悩み、苦しみ、悲しんだのに、時が経てばやっぱり
音楽を続けている二人がいる。

 だからと言って、「ほら、結局、この、高校一年生であるたった一年、それ
だけが人生のすべてじゃなかったでしょ。それが過ぎてしまえば、何もかも終
わるわけではなかったでしょ」としたり顔で諭すのが著者の意図ではないはず
だ。

 その瞬間には、「いま」がすべて。
 そういう風に生きられるからこそ、青春は特別な輝きをまとっている。

 悩む若者に、そんなのは後から思えば大したことじゃなくなると言って済ま
せる、そういう大人には、なるまい。

 って、もういい加減大人なんだけど。


額賀澪
『屋上のウインドノーツ』
二〇一五年六月三〇日 第一刷発行
文藝春秋

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
令和の意味について、あーだこーだ説明されてますが、いくら言われても「法
令」とか「律令」の「令」でしょ、という第一印象が拭えない。ルールを守れ
よ、お前ら、と言われている気がして仕方ない。そのルールの中のルール、憲
法を変えようとしている人たちの気配がちらつく。ソクラテスは「悪法もまた
法なり」とは言ったが、さて、どんな「令和」になるのだろうか? いや、ぼ
くらがどんな「令和」にするのだろうか?

----------------------------------------------------------------------
■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『懐中時計礼賛
 The Shape of Timelessness ;The Book of Antique Timepiece』
 武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科研究室

 近年私は時計に凝っている・・・といっても何十万・何百万もするようなの
は買えないので、せいぜい雑誌を眺めて「あ〜これ欲しい」と思う程度でしか
ないのだがw

 そんなわけで懐中時計にも興味が出てきて本を探してみると、懐中時計の本
が全くといっていいほど無いのに気が付いた。欧米にはこの関係の専門書があ
って、相当深くまで研究や調査がされているようなのだが、日本にはそんな本
がないようだ。たぶんマーケットがないんだろう。

 で、この本である。しかし縦27センチ、横16.5センチと言う変形版でカバー
もついていない。書店に並んでもいない。

 売っているのは、マサズ・パスタイムという懐中時計マニアなら誰しも知っ
ているアンティーク時計の店だけだ。武蔵野美術大学が出版していると言って
も、実際は自費出版みたいな感じである。

 内容は、18世紀から20世紀初頭までのアンティーク懐中時計の写真集。それ
だけでは芸がないので蘊蓄エッセイも多数掲載されていると言うべきか、蘊蓄
が大量だからそれだけ多くの時計の写真が必要になったのか・・・よくわから
ないが、そういう本である。

 注文すると、本と一緒に販売店のマサズ・パスタイムのパンフレットと、同
社が紹介された数本のテレビ番組を収めたDVDがついてくる。今を逃すと、こ
ういう本はしばらく出ないだろうから、興味がある人は今のうちに買っておく
べきだろう。ちなみに表紙の色は2種類あるが、どちらも内容は一緒である。
http://antique-pastime.com/kaityuudokeireisan/

 最初に登場するのは18世紀のジョン・ハリスン、ジョージ・グラハム、ジョ
ン・アーノルドというイギリスの時計師たちの黄金時代の懐中時計。当時は遠
洋航海で自分の位置を測定するのに、緯度は測れたが、経度は測れなかった。
これを測れるようするには正確な時計が必要だと言うことで、彼らが時計の歴
史に残る多くの機構を作った。そして実際に作られた時計の精度は、今のクオ
ーツ時計にも匹敵する。

 しかし、当時の懐中時計など、庶民には手の届かない高価なものでもあった
わけで、ましてや当時のクロノメーター(高精度)クロノグラフ(ストップウ
オッチ)、ミニッツリピーター(時間を音で知るチャイム)付きなどさらに高
価なものである。

 作っている時計師たちも、当時のハイテクの最前線にしたことを自覚してい
たし、自分たちの作る時計が何代も受け継がれることを知っていたのだろう。
豪華な彫刻を施された金時計は、ちょっとこれ何なんだと思うくらい写真でも
すごさが分かる。

 次に出てくるのは、マリー・アントワネットの依頼を受けて超複雑時計を作
ったことで知られるアラン・ルイ・ブレゲの時計が出てきて、最後の方はスイ
ス・ドイツ、アメリカのメーカーの時計が出てくる。一万円札の渋沢栄一が使
っていたプレミアマキシマも出てくる。

 そうした時計の解説の間に挟み込まれているエッセイも興味深いが、特に見
るべきはマサズ・パスタイムの店主である中島正晴氏の開業を始めるきっかけ
から始まるエッセイだ。

 もともといい加減な気持ちでアンティーク時計の商売を始めたものの、売っ
ている時計が動かなくなったとクレーム続出。それで修理業者に出したら直せ
ないと言われる時計の多いことに呆然とした。

 ならば自分で修理をやるしかないと独学で修理技術を学んでいって、今や日
本を代表するアンティーク時計の修理技術を持つ人になったと言うからすごい。

 それもフュージーと呼ばれる鎖引き(チェーンで駆動力を伝える機構)の修
理までできる人は日本だけではなく、世界的にも少ないようで、欧米からも修
理依頼があるそうだ。

 それにしても、こういうのを読むと、アンティーク時計が欲しくなるから困
る(笑)。アンティーク時計が今の時計とは全く違う、工芸品としての価値が
あると言われる理由が分かるからだ。工業製品として大量に作られるようにな
ったウォルサムなどの懐中時計でさえ、すごい。ムーブメントの美しさは、今
同じものを創ろうとしたら100万円程度の価格ではすまないだろう。それが今
では半額どころかずっと安く買えるのだ・・・もっともマサズ・パスタイムの
時計は万全の整備がなされているので、ちと高価なものが多いようだけど。

 私など、若い時はクオーツ信者だった。精度こそ時計の良し悪しを決める絶
対的な指標だと思っていたから、セイコークオーツよりロレックスを買ってい
る人など理解できなかった。言い換えると、機械式時計を使っている人はアホ
じゃないだろうかと思っていた。

 しかし年食ってくると考えも変わる。多少精度が悪くても、毎日時間調整し
たりゼンマイ巻かなきゃいけなきゃ止まるような不便なものを「世話する」こ
とが楽しくなったりする。言い換えれば、生物ではないペットを飼っているよ
うなものだ。

 今は防水性の良い時計が多いので、機械式時計でもチクタクと時を刻む音が
聞こえなくなっている昨今、こういう古い懐中時計の音を聴きながらの読書も
なかなか雰囲気が出て良いものですよ。

(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)
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■「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
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困ったときはお仕事本。ピンチに読んだ3冊の本。
『インタビュー』(木村俊介)
『インタビュー術!』(永江朗)
『3秒で心をつかみ10分で信頼させる聞き方・話し方』(小西美穂)

 皆さんは今の仕事に就いて何年目ですか? おばちゃまはね〜、書籍や雑誌
に文章を書くという仕事をしてかれこれ30年〜40年になるかな? これほどや
ってると、力も手も抜く術を身に着けてしまって、まあなんとかなるだろう的
な日和見主義者になっちゃうのよね。でも、先日、そんな私をあざ笑うかのよ
うな恐ろしい仕事があったの。

 それはごくフツーの、若手研究者の話を聞いて800字でまとめるというもの。
「楽勝」って思ってました。それが、企画主旨や媒体や分野が漠然としていて、
私の準備不足もあり、まあ、とりとめのない取材になりいの、原稿化する段に
なったらどっちの方向で書いたらいいのかわからない、狃颪韻覆き畩態にな
ったわけです。作家じゃないから0から1を生み出すわけじゃなく、おばちゃ
まの仕事は原料(情報)に手を加えて商品(原稿)にするという加工業なわけ
で才能は関係なし。それでも書けないのよ。書けないとき、たった800字でも
ワード画面はまるで荒涼とした原野のよう。その前にたたずんで唖然とするし
かない私であった・・・。

 そんなとき、溺れる者はアマゾンをつかむとばかり、検索購入したのがこの
3冊のインタビューについて書かれた本。今まで、インタビューについて書い
た本なんて何の意味があるの?「人それぞれにやりゃあいいじゃん」と思って
いたのが嘘のよう。今日はそのアットランダムに選んだインタビュー本につい
て書きますね。

 最初に読んだのが『インタビュー』(木村俊介)。版元がミシマ社なので購
入。(売れ行きのことばっかり考えてる出版関係者にはミシマ社コンプがある
のよね)。300p超。たくさん仕事をしている人らしいのですが、偉そうでは
ないところに好感。インタビュー後の録音を聞いて、「ああ、沈黙がこわくて、
相手の発言をさえぎってしまってるよな」「この段階で、出てきた固有名詞を
自分が知らないということを、それとなく伝えておいたほうが良かったな。」
と思うとか、マジ、共感できる発言があちこちにあって、「あ〜私だけじゃな
かったんだ」と嬉しくなったりして肩の力が抜けました。インタビューは、単
なる情報の提供に終わる場合もあるけれど、一歩深いその人の本音を引き出す
と成功だけれど、それはなかなか難しいということも読み取れました。

 その次に読んだのが、『インタビュー術!』(永江朗)。インタビュー本の
定番です。冒頭、「あらゆるところにインタビューはある。世界はインタビュ
ーでできている」とカマして始まるこの本は、ロングセラーだけに内容は古い
!カセットレコーダーとテープなんて書いてあります。雑誌やPR誌が世の中
にたくさんあって、仕事量もライターもいっぱいいた時代の話です。共感した
のは「インタビューイーに何を聞きたいのか何も考えていない編集者が意外に
多い」ってとこ。そうそうそれそれ! 

 この2冊に共通するのは、どんなインタビューでも録音して、録音を起して
から原稿にしていること。いわゆる「テープ起こし」の重要性に触れているこ
とは「ちゃんとやろう」って勉強になりました。若いころはメモだけで原稿さ
らりと書けたけれど、記憶力低下の昨今は「忘れている」という理由のみで、
テープ起こしをしている私ですが、結果的にそれが王道だったらしいです。

 そしてラストが『3秒で心をつかみ10分で信頼させる聞き方・話し方』(小
西美穂)。その場で終わる一発勝負のテレビと帰宅してごそごそテープ起こし
をして原稿を書く印刷媒体では方法がまったく違うから参考にならないんじゃ
ないかと思ったのですが、おばちゃま、この本、おもしろかったです。限られ
た時間で必要な情報を届けながら、しかも一歩深い心情を吐露させるために何
をしたらいいのか、その切った張ったのせめぎ合いがカッコイイ。あとインタ
ビュアーが徹底的に裏方なのに対し、インタビュアーも演者として画面に映る
ので自分の見せ方にも心を配る必要があるってたいへんだなあと思いました。

 みんな苦労してるんだねとわかったところで、気持を切り替えて仕事に取り
組めた私。インタビューって学校があるわけじゃないし(あるの?)、インタ
ビュー検定なんて聞いたことがないから、やり方は基本、独学で個人個人で違
うんでしょう。(もし、私がインタビュー本を書くとしたら、第1章は「手土
産の選び方」になると思う。)

 この3冊を参考にしながら、「私もがんばるよ」と心に誓った次第です。
 困りはてていた800字のインタビューは四苦八苦して納品したら、すんなり
OKになりました(逆に、「なんでや!」)。

 それも含めてインタビューはおもしろい! まだまだ、がんばるぞ〜。だっ
て世界はインタビューでできているんですから。

大友舞子(おおとも・まいこ)
昭和20年代生まれのフリー編集&ライター。関東生まれで関西在住。

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

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■あとがき
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 配信が遅れました。

 あと一週間で平成も終了ですが、4月も終了なんですねぇ。

 GW前でばたばたされている方の一服の清涼剤に、どうぞ。(あ)

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[書評]のメルマガ vol.675

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■■ [書評]のメルマガ                2019.04.10.発行
■■                              vol.675
■■ mailmagazine of book reviews    [「平成35年」て、いつだ!? 号]
■■------------------------------------------------------------------
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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<112>伊藤重夫の神戸を、令和から振り返る

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第111回 悲しみのフクシマ 故郷と心の喪失(柳美里の芝居)

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→94 おもしろい本を読みたい

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
└──────────────────────────────────

 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
----------------------------------------------------------------------
<112>伊藤重夫の神戸を、令和から振り返る

 大阪市内の路上で激しくスっ転んだのは、3月中旬だった。ビル敷地と舗道
との間にあった段差に気づかず、足を踏み外してしまったのだ。
 その場はなんとか立ち上がり、痛みに耐えつつ電車に乗って家に帰ったのだ
が、一向に痛みは引かず、見ると足の甲あたりが腫れ上がってもいる。
 痛む足を引きずりながら病院へ出向いて、レントゲンを撮ってもらうと、足
の甲の骨にひびが入っていた。

 即刻ギプスを嵌められて、松葉杖で帰った。
 どうやら足を踏み外した時に、甲の片側に全体重をかけてしまったらしい。
 ギプスは、取り外しのできる半ギプスで、足先を浮かせて踵だけを使うと、
なんとか歩くことができたので、そうやって出かけてもいたのだが、1週間後
に再検査したところ、「ヒビが広がっている」とのことで、絶対に足をつけな
い完全ギプスと相成ってしまった。

 もはや松葉杖なしでは動くことも叶わず、外出は必要最低限にとどめて、養
生に相務めているうちに、平成の次の元号が「令和」と決まった。
 初めて聞いたときには、「令」の字に、なにやら安倍内閣の「黒い意図」が
含まれてるような気がして、違和感というか、いや〜〜な感じにもとらわれた
が、考え過ぎか?

 新元号は、世界でもあちこちで話題になってるようだが、中国のネットには、
次のような書き込みがあったとか。

明治養士(明治は士を養い)
大正養国(大正は国を養い)
昭和養鬼(昭和は鬼を養い)
平成養豚(平成は豚を養い)
令和養老(令和は老人を養う)

 思わず「うまい!」と唸ってしまいましたですよ。さすが、漢字の本家本元。

 しかし、今回の「令和」は、初めてその典拠が中国の古典ではなく国書から
採られた、とか言うてますけど、ならばいっそ、読みも中国語由来の音読みで
はなく、大和言葉の訓読みにしても良かったんじゃないか?
 令和を訓読みだと、「よしかず」…では名乗り読みだな、「よきなごみ」?
 「よきなごみ元年」、いいではないか。今からでも、こっちにしない?

 にしても、昭和、平成、令和とくると、ますます西暦との「変換」が難しく
なってくる。
 ようやくここへきて、運転免許証には、元号と西暦併記、と決まったそうだ
が、「遅いわ!」と言いたい。
 わしの次の更新年、「平成35年」て、いつだ!?

 新元号も決まり、平成もあと1か月。メディアでは「平成を振り返る」企画
が目立ってきた。
 そんなとき、ネットで見つけたのが、伊藤重夫の漫画が復刊された、との情
報だった。

 伊藤重夫の漫画が読みたいのに、古本屋でもなかなか手に入らない、という
状況に業を煮やしたファンが集結し「復刊委員会」を結成、クラウドファンデ
ィングを起ち上げて、既に一昨年の2017年、その第一弾『踊るミシン』を復刻
し、2018年にその第二弾が発売された、と言うではないか。
 この情報を知ったのが3月。既に残り部数が少ない、とのことで、即刻注文
しましたよ、『ダイヤモンド/因数猫分解』(アイスクリームガーデン・刊)
定価税別1990円。

 伊藤重夫は、神戸出身、今も在住の漫画家でデザイナー。
 1972年、林静一や鈴木翁二等、いわゆる「ガロ系」作家も多く執筆陣に名を
連ねた伝説の漫画同人誌「跋折羅」で漫画家としてデビューした。
 「跋折羅」は、刊行当時のリアルタイムで、何冊か買った記憶もあるのだが、
伊藤重夫という名と作品を初めて見たのは、もう少し後の、「夜行」(北冬書
房)で、だったと思う。
 確か、神戸・垂水を舞台にした漫画で、今回の単行本に収録された『塔をめ
ぐって』と同じトーンの作品だったと記憶する。

 当時は東京に暮らしていたので、神戸が舞台、しかもその神戸でも全国的に
はあまり知名度の高くない西の端っこの垂水が舞台、ということで、女の子の
キャラクターが何やらはかなげで印象深いその絵柄とともに、強く記憶に残っ
た。

 伊藤重夫は、1980年代に至ってメジャーの商業誌でもその名をぽつぽつと見
るようになり、1990年から、“伝説の漫画雑誌”「A・ha」に、オールカラー
の漫画を連載する。
 伊藤重夫の経歴には、「伝説の」とか「幻の」が、やたらとついてまわるの
だが、「A・ha」は、アート系コミックを目指した、というとても斬新な雑誌
で、これがもし成功していたなら、後の日本の漫画シーンも、今日とはまた違
った方向で発展していた可能性もあるのだが、一般の雑誌の形態ではなく、発
行元は石油会社の「ESSO」で、系列のガソリンスタンドでのみ売られていた…
ので、一部の好事家の間では話題になりこそすれ、その存在が一般に知られる
ことはまずなかった…のだった。

 今回の復刻版『ダイヤモンド/因数猫分解』に収録された『ダイヤモンド』
が、「A・ha」に連載された漫画で、これが今回は連載時と同じオールカラー
で収録されているのも、また嬉しい…って、実は雑誌自体は、当時その存在を
知っていた…というか「伝説」として見聞していただけで、実際に見たことは
なかったのだけど。

 今回の復刻版の「あとがき」に伊藤重夫自身が書いているが、作品の完成度
にとてもこだわる性格の故に、商業誌のペースでは、なかなか思うように作品
をつくれなかったようだ。
 「あとがき」では、「某大出版社」から5回の連載を依頼されたものの、1
回目が掲載された直後に「失敗作」と認識し、自らその後の連載を断った、と
いうエピソードも披露されている。
 それ故かどうか、伊藤重夫は90年代以降、神戸でデザイン事務所を開いて後
は、漫画からも遠ざかり、彼自身が「幻」で「伝説」の漫画家となった。

 今回の本では、「A・ha」に連載されたオールカラーの『ダイヤモンド』が
最初に収録されている。
 前述のように、これは今回初めて読む作品だったのだけど、驚いてしまった
のは、発表から30年近くが経っているのに、まるで「古びてない」ということ。
 「古びてない」どころか、まるきり「新しい」のである。
 今どきの漫画家で、街を、こんなに活き活きと、ポップに描写できる作家は、
まずいない、と思う。

 そうなのだ。伊藤重夫が描いた神戸。
 これぞ、神戸だ。
 まだ震災前の、元気だったころの、全国に向けて流行を発信していたころの
神戸と、その街中を縦横無尽、昼に夜に、おもろいことを求めて全力で駆け回
る男女が、カラーの画面から踊りながら飛び出して来る。
 東京にいたころ、月に一度神戸への出張があったのだけど、毎月毎月、この
元気な神戸を見るにつけ、「帰りたいな」との意を強くしていった…というこ
とを思い出しもした。

 今回、改めて伊藤重夫の漫画をじっくりと読み、その背景、ことに街景の描
き方が、同じ神戸出身の佐々木マキに、似ている、というんじゃなくて、なん
か同じ空気観を醸してるように見えた。
 女性、ことに少女の描写では、絵柄はまったく違うのだけど、その肢体のし
なやかさには、思わず林静一を彷彿してしまった。
 「ガロ系」の系譜、というよりも、伊藤重夫は、「アート系漫画」の正しい
継承者、と思うのだが、できたら「新作」も読みたい、というのは、贅沢に過
ぎるかな。

 その『ダイヤモンド』では、今回の本への収録に当たって、冒頭に「第4話」
を持ってきて、その後に「1」「2」「3」「5」と続けられている。
 説明的な描写の多い「第1話」を後ろに持ってくることで、「いきなり」な
唐突感を演出してあって、この作り方には「なるほど!」と唸ってしまいまし
た。

 今回の本、『ダイヤモンド』以外の所収作の、そのいくつかは、かつて雑誌
等の初出で読んだ覚えがある。
 …のだけど、ここでもユニークな試みがなされていて、収録作の三作目、
『ワルキューレ・塔をめぐってよりReMIX』は、『因数猫分解』『コートにす
みれ』『1922年のアインシュタイン』『ワリュキューレ』『塔をめぐってより』
という、全く別々の5作品を、それぞれのトビラ頁を取っ払うことで、強引に
ひとつに繋げてしまっているのだ。

 なので、当初は、読んでいて「あれ?」となるのだが、気を取り直して読み
進むうち、1920年代の神戸で、既に卒業して東京に暮らす「タルホ先輩」の後
継者たらんと、行きずりの女学生への恋心を胸に秘めつつ、ヒコーキの自作に
執念を燃やす旧制中学生たちと、自主製作の映画撮影に情熱を燃やしながら、
オンナにもウツツを抜かす、あるいは去ってしまった友と幼なじみの少女の間
で心を震わせる、1980年代の、神戸・垂水の不良少年たちの青春群像が、きっ
ちりと1本に繋がってくるのである。

 結構な時間をかけて1冊を読み終えて、ふと顔をあげたとき、漫画の中に
「風」を、感じながら読んでいたことに気付いた。
 それは、神戸北野町に夕暮れから吹いてくる六甲おろしの風だったり、大正
時代の三宮元町に吹いていた、港からの風だったり、舞子海岸の松林を通りす
ぎる風だったり、伊藤重夫の漫画には、それぞれの場所、それぞれの時代に吹
く風が、きっちりと描き分けられているのである。

 昭和平成を過ごし、まもなく令和を迎えるにあたって、伊藤重夫の漫画こそ
が、まさしく、正しい「神戸漫画」だと断言したい。
 もっとたくさんの人に、この漫画を読んでほしい、あのころの神戸を知って
ほしい、と切に願う。
 今回の復刻版は1990円、と結構なお値段ではあるけれど、それだけの価値は、
充分にある、ので、是非、是非!
 クラウドファンディングでは、かなりな資金が集まったようでもあり、重版、
も期待してしまう令和元年目前なのだった。

太郎吉野(たろう・よしの)
阪神タイガースお膝元在住。右投げ右打ち。趣味は途中下車、時々寝過ごし乗
り越し、最長不倒距離は三重県名張。
ちなみに「阪神タイガース」の「阪神」は、「兵庫県阪神地方」を指します。

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第111回 悲しみのフクシマ 故郷と心の喪失(柳美里の芝居)

 芥川賞作家の柳美里は、福島県南相馬市で書店を経営しながら、地元高校の
演劇部と芝居をしている、という記事が新聞に載ったのは、昨年の秋だった。
彼女の戯曲で高校生が演技するその芝居は南相馬市で上演されたという。南相
馬市は福島第一原発の北に位置しているので、もし東京からこの芝居を果敢に
観に行こうとするならば、常磐線の不通区間を迂回するので、東北本線経由で
行かなければならない。時間的に無理がある、とその時は、芝居の鑑賞を早々
に諦めた。柳美里は作家よりも先に演劇人(役者・演出家)として出発したよ
うだ。演劇に挫折しかけたときに小説を書き、その分野で成功を収め、小説家
として多忙を極めていたときに東日本大震災が発生した。・・・・・ここにも
あの震災によって人生が変わった人がいる。

 そしてその柳美里の芝居が昨秋と同じ福島県立ふたば未来学園高等学校の演
劇部の出演よって、この3月に東京で上演されることになった。その芝居を北
千住のとある小屋で観た。そして、その芝居が載っている柳美里のサイン本を
買った。

『町の形見』(柳美里 著)(河出書房新社)(2018年11月30日 初版)

 「町の形見」、「静物画2018」、「窓の外の結婚式」という三つの戯曲
が載っている。そして、本書の核となる「静物画2018」が高校生による芝
居であり、この芝居には女性版と男性版のふたつの戯曲があり、同じ展開であ
るが、役者が男性だけのものと役者が女性だけのものがある。まさにこの「静
物画2018」が3月に北千住で上演された芝居なのだ。

 主要な登場人物は6名。その6名の名前は“りょう”、“なお”、“はる”、
“まこと”、“さつき”、“あゆむ”と男女どちらでも可能な名前になってい
る。演じている高校生と同じ境遇の6名。津波と原発で家と故郷を失った高校
生。震災当時は小学生だった。彼らがどんな経験をしたか、どんなことを思い、
考えているか、どういう行動を取ったか、等身大の同じ高校生によって、フク
シマの現実を描写している。というより、これは完全なるあて書きだと思った。
彼ら福島浜通りの高校生がそこにいて、柳美里は彼らのことを想いながら、こ
の「静物画」という以前からある自分の戯曲を彼らのために大幅に改訂したの
だろう。

 この芝居は一言で云えば悲しみの芝居なのだ。みんな余計なことを喋ってい
るけど、心の中にはそれぞれ悲しみとそして苦しみを抱えている。別れをたく
さん経験し、身近に思い通りにいかない人々がいて、差別もあり、自分の将来
も見えず、沈黙が支配する、この世の中で、どう生きていかなければならない
か。それはいたいけな高校生には少し重すぎる命題なのだ。残酷なことに時は
流れる。待ってはくれない。立ち止まっているうちにどんどん進んでいく。取
り残された自分に気がつき、焦ってみてもどうしようもない。やっぱり時は進
んでいくのだ。客観と主観の間にあって、この時間だけが冷徹にその主義主張
を貫き通している。我々人間は、その冷徹な時間に支配され、その主客は絶対
に逆転することはないのだ。

 そうはいいながらも、流れ続けていて決して止まることがない時間を、我々
は切り取ることはできる。それが思い出とか、あの時あの瞬間、とか、記憶と
かいうもの。そしてあの震災。震災後8年が過ぎても、我々日本人は、あのと
き、何をしていたか、はひとりひとりがはっきり記憶している。2011年・平成
23年3月11日金曜日午後2時46分、あなたは何をしていましたか? 当時を生
きていたほとんどの日本人がこの質問に答えられる。そして、その記憶がこの
芝居を生んでいる。

 すべての始まりは、この質問と各自の答えにある。“あの日あの時、なにを
していたか。”

 人が違えば経験が違い、その経験は人の数だけ存在する。あの時の記憶をひ
とつひとつ丁寧に紡ぐとき、福島の浜通りでは、悲しみと沈黙しか残らなかっ
たのだろう。その紡いだ悲しみと沈黙を柳美里は芝居にして、それを被災者で
あり、同時進行の高校生に演じさせた。演じた高校生は、おそらく悲しみと沈
黙から少し解き放たれた。・・・・・だろう。そして芝居を観た我々は、立ち
止まり、思いを受け止め、彼らが抱えていたそれが予想外に重いものだったこ
とに愕然とする。しかしそれを受け止めることが我々の使命だと気づき、その
ままそれを受け止め続けようとする。少なくとも執筆子であるやつがれはそれ
を手放すことはしない。したくない。


多呂さ(平成の御代は戦争はなくても災害とテロが喧しかった。昭和の御代は
戦争があっても生きる活力に溢れていた。・・・・・では次の令和の御代はど
んな御代になるのか。悲しみを抱え続ける御代になるのだろうか。)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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94 おもしろい本を読みたい

 『ぬけ穴の首 西鶴の諸国ばなし』廣末 保 岩波少年文庫

 1972年に、平凡社で刊行されたものが、岩波少年文庫で読めるようになりま
した。

 江戸時代の作家、井原西鶴の話を種としてつくられた7編が収録されていま
す。作者廣末さんのあとがきによると、西鶴の作品では四百字詰の原稿用紙4
枚から7枚程度のものを、廣末さんの作品では3倍から8、9倍の長さになっ
ているそうです。

 江戸時代に書かれた内容なので、もちろん時代ものですが、めっぽう読みや
すく、話の種からきれいに花が咲いたもの(物語)を鑑賞させてもらえます。

 タイトルにもなっている「ぬけ穴の首」はぞくりとさせる怪談話のよう。

 判右衛門の兄はささいなことで殺害され、兄嫁から仇討ちを依頼されました。
気はすすまないものの、断ることもできず、息子をつれて相手を斬りに行くの
ですが……。

 殺害される理由が髑髏によって語られるシーンもあり、終始怖さがつきまと
います。それでいて、世の理をみているのだと納得させられるところもあるの
ですが、最後は本当に怖い。

「わるだくみ」は、知恵と才覚で一介のお茶販売から、茶問屋の主へと一財産
を築いた利助の話。本来は金儲けよりも、おもしろいことをするのが好きだっ
た利助なのですが、儲けが大きくなるにつれ、お金に魅力を感じ……。

 人の欲について書かれた話は、昨今、ニュースにもなる会社の不正とよく似
てます。この話のおもしろさは、利助が死んだ話のあと話も短篇のように書か
れているところで、最後の最後まで、ひっぱられます。

 いつか西鶴の作品そのものも読んでみなくては。

 さて、次にご紹介する絵本も、作者は亡くなっており、その作者スキャリー
さん生誕100年に邦訳されたものです。

 『スキャリーおじさんのとってもたのしいえいごえじてん』
 リチャード・スキャリー さく ふみみさを やく
 松本加奈子 英語監修 BL出版

 絵本作家として活躍したスキャリーさんはアメリカ・ボストン生まれ。出版
された絵本の発行部数は2億冊を超えたともいわれています。

 作者紹介を引用すると、スキャリーさんのことばに「どんなものにも教育的
な面がある。でもぼくが伝えたいのはおかしさだ」と語ったそうです。

 そのとおり、スキャリー絵本はどれも楽しいものばかり。

 本書は英単語を楽しく覚えられるもので、英単語に意味とともにカタカナで
の読み方がついています。

 このカタカナの読み方が工夫されていて、アクセントを強くするところは太
字で大きく、文字も大小組み入れて、英語の音に近い読み方ができるようにな
っているのです。

 文字も並べているだけではなく、「えをかこう、いろをぬろう」「おもちゃ」
「どうぐ」「くうこう」など、様々な場面にたくさんの動物を登場させて、い
きいきとした雰囲気の中、英単語がおかれています。

 家の本棚にこの絵本があれば、子どもが一人読みで楽しく英語にふれられそ
うです。

 最後にご紹介するのは、
 名探偵 テスとミナシリーズで最新刊は3巻。

『名探偵テスとミナ みずうみの黒いかげ』
 ポーラ・ハリソン 作 村上利佳 訳 花珠 絵 文響社

 ふたごみたいにそっくりな2人テスとミナ。
 けれど、立場は正反対(!?)
 ひとりはメイド、ひとりはプリンセス。年は同じ10歳です。

 かわいらしいテスとミナが表紙のソフトカバーなつくりは、小学校中学年く
らいの子が楽しめそうです。

 ふたりのいるお城で事件がおきると、立場を入れ替えながら、解決していく
ミステリーでもあり、メリハリある展開で謎解きの吸引力はかなり強く、おも
しろいのです。

 巻末にはファッションコーデの特別ページもつけられていたり、3巻ではオ
リジナルアイテムとしてブックマークやポストカード、時間割表もついている
という豪華さ。(時間割表、なつかしい!)

 知人の小学5年生の女の子に紹介したところ、毎晩夢中になって読んでいる
とのこと。次の巻は7月発売予定。


 さて、本を読んでおもしろい!と思うのは本読みにとって至福のときですが、
このよく使う「おもしろさ」。
『ぬけ穴の首』には町田康さんが古典の「おもしろみ」という文章を寄せてお
り、そこでこう書いています。

「多くの人は、おもしろいことはただひたすらにおもしろいだけ、と信じてい
るが、実はおもしろさには二種類のおもしろさがある。」

 この二種類のおもしろさの話がまた「おもしろい」のでぜひご一読を。


(林さかな)
会津若松在住。「本の雑誌」新刊めったくたガイド海外文学担当。
http://1day1book.strikingly.com/

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ― 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510

・『支え合い・学び合いで育つ「わたし」』(エディット・パルク)
  http://web.kyoto-inet.or.jp/people/cogito/%8Fo%94%C5%88%C4%93%E0/%8Ex%82%A6%8D%87%82%A2%81E%8Aw%82%D1%8D%87%82%A2.html

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
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 をご記入の上、下記までメールください。

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 皆さんのご応募、お待ちしております。

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1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
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 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 配信遅くなりました。ちなみに、私は「令和」の発表を、歯医者で歯を削ら
れながら聞きました。(あ)

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★「トピックス」
→ トピックス募集中です

★「音楽本専門書評 BOOK’N’ROLL」/おかじまたか佳
→ #104『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』

★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→ ストップ・ザ・味噌汁の神格化!

★「目につく本を読んでみる」/朝日山
→ 『カイロ大学』浅川芳裕 ベスト新書

★【募集中】献本読者書評のコーナー
→ 献本お待ちしています!

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#104『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』

 前回も書いたが、音楽療法で効果があったり、胎教によかったり、聴かせる
と植物がよく育ったりする、というと、なぜか頻繁に出てくるのがモーツァル
ト。
 しかし、映画『アマデウス』を見てクラシック音痴ながら興味を惹かれ、い
くつか聴いてみたが、通して聴くとぼくには退屈だったモーツァルト。

 そのモーツァルトをジャングルで演奏する話か、とタイトルからは想像され
るが、まったく違う。アメリカでドラマ化されているらしいから、ご存知の方
も多いかもしれないが、ここで言うモーツァルトは象徴であって、意味はいわ
ゆるクラシック音楽。ジャングルは、生き馬の目を抜く大都会ニューヨークの
ことである。
 
 すわなち、ニューヨークのクラシック音楽業界の内幕を暴いた、オーボエ奏
者にして音楽ジャーナリストである著者ブレア・ティンドールの自伝なのであ
る。

 副題に『セックス・ドラッグ・クラシック』とある。もちろん、ジャニス・
ジョップリンをモデルにした映画『ローズ』の中で歌われた曲『セックス・ド
ラッグ・ロックンロール』のパロディだ。
 これだけで、この「ジャングル」がどんなものか、大方の察しはつく。

 だが、本書はさまざまに読むことが出来る。

 スキャンダラスな暴露本として。

 あるいは、ブレアが経験したいくつかのラブ・ストーリーとして。
 分けても、父親ほど年の離れたピアニスト、サムとの物語として。

 だがぼくは、クラシックの演奏家という、知られているようで実はまったく
知られていない、特殊な仕事の実態を描いた、「職業」の物語として、さらに、
そこから脱却しようとした一人の女性の「キャリア」の物語として読んだ。

 もちろん、現在のぼく自身が会社を早期退職して、次のキャリアを模索して
いる状況だからだ。

 地方出身のブレアは小学校の時、「音楽をやってみたい子は?」と訊かれて
手を挙げた一人であった。この時、目の前に並べられた楽器から、一人一人や
りたいものを取っていったのだが、名字のアルファベット順だったため、ティ
ンドールという姓が災いして、もはやろくな楽器が残っておらず、仕方なくオ
ーボエを選んだという。

 うちの甥っこは小学校に上がる前、親に連れられてコンサートに行き、クラ
リネットに興味を示したらしい。終演後の質問コーナーで「何歳になったらク
ラリネットが出来ますか?」と訊き、「小学校二年生くらいからかな」という
答えを得た。それから数年して、みなそのことを忘れていた時、「二年生にな
ったからクラリネットがやりたい」と言い出したそうだ。以来、高校くらいま
で練習に通っていた。

 だが、ブレアにとってオーボエは自分の意志とは無関係な、不毛の選択だっ
たのである。
 もっとも、もしZで始まる姓だったら、カスタネットになっていただろう、
とも書いている。オーボエでも、まだましだったわけだ。

 ところが、始めてみるとこの楽器、地味でやり手が少ないので競争もあまり
なく、目立ちたがりで勉強嫌いという性格には合っていた。そしてそのまま彼
女は、音楽学校に進学した。いや、後の展開を考えれば、してしまった、と言
うべきか。

 地方とは言え音楽学校であり、それなりに生徒たちはアーティスト気質であ
る。自然にブレアは、副題の最初のふたつを経験することになる。
 卒業すると、ニューヨークの音楽大学に進み、やがてプロの道を辿るのだが、
そこでも常にこのふたつは付いて回る。

 冒頭に、音楽仲間の家へ遊びに行くシーンがあるが、コカインを決めて大音
量で音楽を流し、ハイになるのはロック界と変わらない。
ただ、曲がニルヴァーナではなく、ワーグナーだというだけだ。

 男性遍歴もめまぐるしいが、これには「ジャングル」特有の事情もある。

 クラシックの場合、オーケストラの一員に雇われるか、フリーランスで仕事
を取るかの二択であるという。前者の方が生活は安定するが、生憎席は限られ
ており、一旦メンバーになると相当な高齢になるまで引退しないので、なかな
か次の人の番が回ってこない。

 そこでブレアは、フリーランスの道を行く。

 オーボエは奏者の数も少なく、その点では有利ではあるが、逆に必要な人数
も限られていて、やはり仕事を取るのは生半可なことではない。
 この世界はオーディションよりコネがものを言うこともあって、彼女はさま
ざまな先輩オーボエ奏者たちとつきあい、彼らから仕事を回してもらうことに
なる。
 最後の方で人生を振り返り、結局寝た男からしか仕事を取れなかった、と回
想している。

 しかし、そうしたドラッグとセックスにまつわる業界暴露よりも、ぼくが面
白いと思うのは「職業としてのクラシック音楽演奏」の実態である。

 フリーになる前、もちろんブレアもいろいろなオーケストラのオーディショ
ンを受けた。
 彼女がまだ若かった80年代後半は、アメリカにクラシックの音楽文化を、と
いう社会的風潮があり、景気もよかったので、新しいオーケストラが全米各地
に生まれ、チャンスも多かった。しかし、前述のようにオーディションの壁は
厚く、二十何連敗。旅費は自腹なので、広いアメリカでは飛行機代やホテル代
もバカにならず、そうこうする内に景気も減速。多くのオーケストラが経営難
に陥る。

 この辺りはジャーナリストらしく、具体的な数字をさまざまに上げ、リアル
に業界の厳しさを感じさせる。
 また、オーケストラやコンサートホールを運営する団体の上層部が、演奏家
以上の高給を取っており、助成金も市民の寄付もここに吸い取られて失速して
いるという実態も暴かれる。

 話は逸れるが、以前当欄で取り上げた佐々木忠次『オペラ・チケットの値段』
でも、東京初台にある新国立劇場に、ろくな仕事もしない余剰役人が群がる実
態が書かれていたことを思い出す。日本もアメリカも、役人天国に変わりはな
いのか。

 オーケストラもだめ、フリーも厳しい。こうした状況に限界を感じ、ブレア
はブロードウェイのミュージカルに手を出すようになる。

 「手を出す」って何か悪いことみたい、と思われるだろうが、アメリカでさ
えクラシック音楽の世界ではミュージカルが一段低く見られ、ブロードウェイ
の仕事を引き受けると、仲間内で「あいつも落ち目だ」と囁かれたそうだ。
 これにはぼくもちょっと驚いたが、しかし、その仕事の現場をつぶさに語ら
れると、なるほど確かにひどい労働環境である。
 つまり「ブラック」だ。
 それも『ミス・サイゴン』とか『レ・ミゼラブル』のような大ヒット作でも
そうなのだ。

 それでも好きなことでお金が稼げるなら幸せではないか、と外野席は思って
しまうが、単調な音階練習に明け暮れる日々、本番でも同じ曲の繰り返し、そ
れがとても知的で創造的な生活とは言えない、と指摘されれば、う〜んとうな
らざるを得ない。

 昔テレビで、オーケストラの高名な打楽器奏者を取り上げたドキュメンタリ
ーを見た。打楽器は必ずしも出番が多い楽器ではない。長い交響曲などの場合、
待ち時間に彼は捕り物帖を読んでいた。
 番組では、本を読んでいても自分の出番がちゃんとわかるのはすごい、と言
っていたが、ぼくは違う感想を持った。クラシックなんて、いい加減なもんだ
な、と。

 しかし、ミュージカルでも同じだった。というか、もっとひどかった。
 クラシックと違い、オーケストラは地下のピットに押し込められるから客席
から見えない。それをいいことに、譜面台の上には楽譜だけではなく、長い待
ち時間の暇潰しが乗せられているのだという。本だったりクロスワード・パズ
ルだったり。いまならスマホやゲームなんだろう。
 ブレアが演奏家に見切りをつけ、キャリア・チェンジを目指した時は、そこ
に数学の教科書が乗っていた。転職を試みても、普通高校を出ていない彼女に
は、例えば数学の基礎もまるでなく、その勉強から始めなければならなかった
のである。

 それでも文章を書く天分があることに気がつき、自分の経験を生かした音楽
ジャーナリストとして道を切り拓くこが出来た彼女は、まだしも幸運な部類に
入るのだろう。
 しかも、音楽の演奏をまったく捨てたのではなく、それまでよりゆとりを持
って、オーボエを吹くことを楽しめるようになったと言う。

 いや、ほんと、キャリア・チェンジは難しい。それはこの一年弱でぼくも実
感した。だからこの辺りは、身につまされる。

 ともあれ、スター級の音楽家の伝記はたくさんあるが、ブレアのような、彼
らを支える側の演奏家、それもオーケストラの一員にもなれない、フリーラン
スの演奏家の自伝というのはこれまでなかったと思う。

 ぼくも高校の時は、音楽の才能があると思っていた。だが、大学に入って、
自分より遥かにうまい先輩たちが、普通に就職していくのを見て、あえなく挫
折。
 でも、本書を読むと、あそこで挫折してよかったのかな、と思ってしまう。
 夢のない話だけど。


ブレア・ティンドール
柴川さとみ訳
『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル 〜セックス・ドラッグ・クラシック』
(上・下)
2016年12月10日 初版発行
ヤマハミュージックメディア

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
この一年、読書量が格段に落ちました。通勤電車という図書室がなくなったか
ら。仕事中も移動の多い職種だったので、その間も電車で本を読んでいたし。
まあ、家で読めばいいんですが、電車に揺られていると、なぜか読書って捗り
ません?

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■「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
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ストップ・ザ・味噌汁の神格化!
『医者が考案した「長生きみそ汁」』(アスコム)
『はなちゃんのみそ汁』(文芸春秋)

 前に、庶民は権威に弱いと書いたことがあったと思います。

 権威とはたとえば、「医者」とか「東大」とか「富豪」とか「官僚」とかか
でしょうか。だから「医者がすすめる」と名前がつくとみんなよく考えもしな
いで手を出しちゃうよね。(あと最近は「AI」。「なんかわからんけどすご
いらしい」って理由もなくあがめてるよね)。

 「偉い」ことを「権威A」と名前をつけるとしたら、これとは「自然」とか
「清貧」も一種の権威になっていませんか。「名もなく貧しく美しく」って。
あと「母」ね。これはマリア信仰から来るからけっこう根深い。これは「権威
B」と名づけましょう。いろんなベクトルの権威の中で私たちは生きているん
だ。

 だから、「医者が考案した『長生きみそ汁』という本のタイトルを見たとき、
「権威がAとB、2つも入っとる!」とおばちゃまは驚嘆しましたよ。売れな
いはずはない!案の定、売れてて新刊本の広報テレビ番組となっている「世界
一受けたい授業」でも取り上げてます。

 中を見てみると、なんということはないみそ汁のつくり方を書いたみそ汁カ
タログです。ポイントは具とみそをまるめて冷凍して「みそ玉」をつくるとい
うところですが、これもまあ、作り置き系の料理研究家ならだれでもやってい
ることで特に新しいことではないのに、「医者がすすめる」ってだけで「糖尿
が治った」「血圧が下がった」と大騒ぎです。

 「みそ」というのは「自然」系なので「権威B」、そしてノルタルジックな
「母のイメージ=権威B」もあります。

 おばちゃま、決してみそ汁を批判しているわけではありませんよ。おばちゃ
まだって2日に1度は必ずみそ汁つくって飲んでるから、みそ汁は大好きって
か日常。でもねえ、なんか、妙に神格化されていることが気に入りません。神
格化されているということは、それだけ一般社会の暮らしから遠のいているっ
てことで、みそ汁がなんかあがめられる存在になってしまっている。それって
みそ汁にとってはというか食生活にとっては、損じゃないの?

 だいたい、少し前までみそ汁は塩分過多の日本食の悪しき象徴だった。日本
人に脳梗塞が多いのは味噌汁に代表される塩分の多い食事のせいだって言われ
てませんでした? それがまあ、いつのまにか神格化ですよ。これって食の右
傾化? みそ汁の向こうにでんとそびえる価値観がなんかイヤ。ついでに食育
って言葉も嫌い。食育の向こうに家父長制度が見える・・・(私はフェミニス
トではありませんよ)。

 と毒づいたところで、もう1冊「はなちゃんのみそ汁」。これがまあ、批判
しにくい感動を呼ぶ大絶賛本です。絶賛されているだけに批判もされているみ
たいなのでさくっとだけ。

 あるお母さんが若くして乳がんになりますが、子どもを出産。余命いくばく
もないと知った母は、残された子どもが自分で生きていけるように、家事を教
えるんですが、その代表が「みそ汁作り」なんですね。このとき、娘さんは5
歳とか6歳の就学前。それなのに朝6時に起きてみそ汁をつくって玄米のご飯
を炊くんですよ。朝、6時って暖かい九州でも寒いでしょう。日が昇るのが遅
いから冬は外は暗いんじゃないのかしら。そのとき、父はどうしているのか書
いてないけど、あのう、お湯をそそぐとできる「クノールカップスープ」じゃ
だめですか?「クノール高い?」じゃ、「スジャータ」なら少しは安いよ。ど
うしてもみそ汁じゃないといけないなら「アマノフーズ」のフリーズドライで
は? だめなんだろうなあ。自然のものでないとだめなんだろうなあ。無添加
にこだわって5歳の娘が朝6時に起きてみそ汁をつくらなくてはいけない理由
をだれか教えてほしいでした。

 どうか、みそ汁が必要以上にあがめられて権威を持つことなく、みそ汁本来
の姿で日常の食卓にのぼり、みそ汁の「中の人」が自分らしく生きる(みそ汁
の「中の人」って何?)ことができるように祈っています。


大友舞子(おおとも・まいこ)
昭和20年代生まれのフリー編集&ライター。関東生まれで関西在住。

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『カイロ大学』浅川芳裕 ベスト新書

 2010年に『日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率』という本
を出して話題になった人である。その後も農業関係の本をたくさん出されてい
るが、もともとこの方、カイロ大学出身である。

 で、ひょっとしたら何度も蒸し返される小池百合子都知事のカイロ大卒業疑
惑の関係で出されたのかも知れないが、そんなことはどうでもよろしい。

 まずカイロ大学は、どんな人材を輩出してる大学なのかといえば、PLOのア
ラファト議長に、イラクのフセイン大統領に、アルカイダの指導者ザワヒリ、
オイルショックで世界を震撼させたヤマニ石油相や国連を率いたガリ国連事務
総長、IAEAのエルバラダイ事務局長、2011年のエジプト革命のリーダー、アハ
マド・マヘルほか、どっさりと大物がならぶ。

 清濁関係なしに世界を動かしてきた中東の大物が多い。変わり種と言っては
何だが、ネットセキュリティの技術SSLの生みの親、タヘル・エルガマル博士
もカイロ大出身だし、元大相撲力士大砂嵐もカイロ大学出身だ。

 日本人出身者は少ないが、小池百合子、中田考をはじめとして、有名な人も
多い。そんな人たちを輩出し続けるカイロ大学は、「混乱と闘争」が学風とい
うむちゃくちゃなところ。

 エジプトの首都カイロは、日本人が思っているよりもずっと治安がよく平和
な街でなのだが、カイロ大学の中だけは別世界だとか。学生運動が盛んで、い
つ逮捕され投獄されるか分からない。学内に秘密警察まで拠点を置いている。
逮捕投獄はもちろん、下手すりゃ殺されることもそう珍しいことではない。学
内の治安は最悪である。

 そんなところだから、サダム・フセインは卒業試験の時にピストルを横にお
いて試験を受けていたという。卒業させなかったらどうなるか、試験官に圧力
かけていたたわけで・・・むちゃくちゃ。

 そんなところで揉まれるわけだから、カイロ大学出身者は基本「乱世」に強
い。何があっても驚かないし、何としても生き残っていく力を持っている。そ
していざという時の行動も大胆だ。確かにそう言われてみれば、小池百合子も
中田考も、そして浅川氏もそんな雰囲気をただよわせる人物である。

 そもそも建学した人たちからして1人ではない。非宗教的な欧州(というか
フランス流)の大学に比肩する大学にしようとした人もいれば、女性の地位向
上を目指した人。逆にイスラムの枠組みを大事にした人もいれば、中東がダメ
になったのは腐敗したカリフやウラマーのせいで、イスラム教徒は原典を読む
べきとした人もいた。

 そうした思想的にバラバラな源流を持つからというわけでもないのだろうけ
ど、多様な学生を生み出す大学なのは確かなようである。で、そうした大学の
解説に多く費やされた後に、日本人のためのカイロ大学入学ガイドに1章が割
かれている。

 この1章、一部の読者にとてもインパクトがある内容のようで、文春の記事
によれば、この本を読んでカイロ大学で学びたいと言う声が浅川氏の元にいく
つか届いているようだ。ひょっとしたら、この本のおかげでカイロ大の日本人
学生は何倍も増えるかも知れない・・・もともと数が少ないしね。

https://bunshun.jp/articles/-/6411

 一番面白かったのは、最終章で浅川氏が何を考えてカイロ大学で学ぼうとし
たのか、いったいどんな学生生活を過ごしていたのかを語っているところだ。

 もともと外交官志望だった浅川氏は、アメリカのジョージタウン大学に行く
つもりだったが、湾岸戦争でイラクがクウェートに侵攻し、アメリカとの戦争
も辞さなかったことにショックを受けて、イラクを知りたいと考えた。

 それてバクダット大学に行こうとしたが、戦争の混乱の中イラク政府は「危
ないから」とビザを出してくれない。対応してくれた大使館員ですら「帰りた
くない」という状況なんだから仕方ない。

 さてどうしたものかと思っていると、偶然知り合ったユダヤ系アメリカ人か
ら、カイロ大学を勧められた。しかしいきなりカイロ大学に行くのはさすがに
無謀だと思ってまずは英語が使えるカイロ・アメリカン大学に入り、そこから
カイロ大学に移った。

 入ったのは文学部のセム語学科のヘブライ語専攻。要するにアラブ世界では
イスラエルが使う敵性言語だ。同専攻出身者は、アラブの諜報機関に入る人も
多く、浅川氏も将来のスパイたちと肩を並べて学ぶことになるのだが、同時に
警戒もされるようになる。

 こいつはイスラエルのスパイではないかと疑われて、秘密警察から目をつけ
られたのだ。当時のカイロ大にはアフガン帰りの元ムジャヒディンの学生がう
ようよしている上に、反ムバラクの学生運動も盛んに行われていてたわけで、
いつものように騒然としていた。

 そんな中、浅川氏は学生運動に多大な貢献をして、イスラエルにも行くこと
になる。

 そんなことしてたらタダではすまんぞと思って読んでいたら、やっぱりタダ
ではすまなかった・・・もちろんそんなことになるのは浅川氏も分かっていた
はずだが、それでも動かずにはおれなかったんだろう。

 そんな人が、どういうわけか現在、全くお門違いに見える農業専門誌の編集
長になっている理由も書かれているが、いやはや、すごい人生だ。

 カイロ大学自体は中東のハーバードとも言われる学問的にも実績のある大学
だが、日本で考えられている大学の枠組みとは全く外れた教育(もちろんそれ
は大学側が意図している教育だけではなく、混乱の中で生きる能力を含む)を
受けるということは、とても得難い経験になるのは確かなようだ。もっとも。
下手すりゃ命を落とす危険もあるが、こんな学生生活もありかもしれない。


(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ─ 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510


 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
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 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

 〒142-0041 東京都品川区戸越5-4-3 アズ品川ビル4階
       ビズナレッジ株式会社内 [書評]のメルマガ 献本 係

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 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンや楽天などのオンライン
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 は当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願いしま
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 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 配信が遅れました。

 出張シーズンが終わって少し落ち着くかと思いきや、積み残していた仕事に
追われております。

 4月になれば、ちょっとは落ち着くかな。(あ)

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[書評]のメルマガ vol.673

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■■                              vol.673
■■ mailmagazine of book reviews  [じっくりと腰を据えて読みたい 号]
■■------------------------------------------------------------------
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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<111>東本昌平『雨は これから』は、じっくり読む漫画、と決めた

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第110回 刑事事件の用語とシェイクスピアの戯曲

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→93 生活と物語と現実と

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
└──────────────────────────────────

 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<111>東本昌平『雨は これから』は、じっくり読む漫画、と決めた

 以前、この欄で「47都道府県擬人化漫画」、『うちのトコでは』(もぐら・
著)というのを紹介した。

 https://comic.pixiv.net/works/3534

 先日、神戸の某駅に降り立つと、その『うちのトコでは』の県民性擬人化キ
ャラクターのうち、「兵庫県」のキャラクター5人が、一人ずつポスターにな
って、ずらずらと並べられていた。

 『うちのトコでは』は、47都道府県をそれぞれ一人のキャラクターに擬人化
した漫画なのだが、兵庫県だけは、例外的にキャラが5人いるのだ。
 すなわち、「神戸」「播磨」「丹波」「但馬」「淡路」。

 そのキャラクターたちが、それぞれの地域をアピールするポスターが、ずら
ずらと5枚並んで、さらに、県名まで「変える」と言うておるではないか。

 兵庫県は、気候風土から言葉や生活慣習までまったく違う5国を、時の政府
の都合によって、無理やりにひとつの県にしてしまったので、おそらくは日本
一「県民意識」の低い県と成り果てた。
 同じように複数の国を無理からにひとつにまとめた旧・ユーゴスラビアにな
ぞらえて、「ヒョーゴスラビア」と呼ばれることもあった。
 なので、『うちのトコでは』でも、兵庫県だけは一人ではなく、5人のキャ
ラクターで構成されていたのだ。

 わしもそうだが、他府県で出身地を訊かれると、「兵庫県」と言うのに、か
なり抵抗があるのは、全県民に共通だ。
 で、今回は、県自らが音頭を取って、「もう兵庫県と言わないでいいです」
と、県名変更に踏み切った、ということらしい。
 新しい県名は、「兵庫5国連邦(U5H=United 5koku of Hyogo)」と、いき
なりに「県」じゃなく「国」に昇格してしまっている。

 今後は、「神戸・阪神」「播磨」「丹波」「但馬」「淡路」、の5国それぞ
れで独立性を高め、「連邦」としてゆるくまとまった上で、それぞれに独自色
を打ち出していこう、ということらしい。

 https://u5h.jp/

 ↑と、こんなサイトも開設し、連邦5か国の住民からそれぞれの「お国自慢」
を募り、それをもぐらさんによる漫画に展開していこう、という試みも、これ
から予定されているそうだ。

 なんだか楽しみで、わしも何度か…つーより、もう既に何度も、しつこいく
らいの頻度で投稿してしまった……

 目下の楽しみと言えば、もうひとつ、ちかごろ「じっくり」と読ませる漫画
が増えてきた…というよりか、「見つけた」と言った方が正解か。
 前々回紹介した、川勝徳重や、Q.B.B.の『古本屋台』なども、「じっくり」
読みたい漫画ではあるのだけど、今回見つけてしまったのは、東本昌平。

 東本昌平は、「はるもと・しょうへい」と読む。
 80年代に『キリン』という、バイクとバイク乗りをテーマにした漫画で一世
を風靡した作家だ。
 作者ご本人もまたバイク狂で、愛機を駆っては首都高速湾岸線で200km/h超、
という伝説も持っているらしい。
 その東本昌平が描くのは、中年を過ぎ老年に差し掛かってなお、バイクに魅
せられ、バイクに乗り続ける男の物語。

 「松ちゃん」こと松永は、57歳。
 思うところあって勤め先のテレビ局を定年を間近にして退職し、漫画家を目
指すも、持ち込んだ原稿を若い女編集者にけちょんけちょんにけなされた帰り
道、やみくもに愛車・ヤマハSR400を乗り回しているうち、行きついた町で廃
業したドライブインを見つけ、妙に気になったそこを借り受け、住みついてし
まう。

 人里離れたそこを棲家と定め、晴耕雨読ならぬ、晴バイク雨漫画の日々を送
るはずが、絶ちきったと思っていたシガラミは未だにしつこくついてまわり、
さらに望んでもいなかった新しいシガラミも次々に出現し、松ちゃんの晴耕雨
読は、風前の灯である。

 この「松ちゃん」が、やたらとカッコいいのである。
 その「カッコよさ」というのが、ただただ二枚目的にカッコいいのではなく
て、かつての原田芳雄や松田優作が演じていたような、「カッコ悪いのがカッ
コいい」感じ、なのである。

 タイトルも「雨は これから」と、「雨は」と「これから」の後ろが半角空
けになっているところも、かなりのこだわりようだが、一話ごとのサブタイト
ルも、「やめとけと 声がする」「冬の雷娘にモカ・ハラーを」「ウソをつく
なら木曜日」「たどり着けたら接吻を」等々…
 「Want you 俺の肩を…」と、その背後から南佳孝のシャウトが聞えてきそ
うではないか。

 この『雨は これから』、コマ繋ぎの構成がかなり不親切で、うっかり読み
飛ばしていると、展開が分からなくなったり。
 なので、じっくりと腰を据えて、丹念に読みこんでいくのが、また楽しい漫
画でもある。
 絵柄も、バロン吉本×かわぐちかいじ×大友克洋…といった感じで、わしら
世代にはとても馴染やすく、実にすんなりと作品世界に入っていけるのだ。

 これ、たまたまネットでその存在を知ったのだが、今まで知らなかったのは、
連載誌が漫画誌ではなく、さらに一般誌でもなく、「ミスター・バイクGB」と
いうバイク雑誌だったこともあるようだ。
 版元が「モーターマガジン社」で、単行本は、通常のコミック本同様、雑誌
扱いで流通しているのだが、その雑誌コードが、「4」で始まるコミックコー
ドではなく、「6」で始まるムックコードなのである。
 なるほど、モーターマガジン社、コミックコードなんて、持ってないだろう
しな……

 しかも、なのだ。
 このイマドキに、この漫画は、電子版が発売されてない。
 なので、読むには紙版、しかないのである。
 ということも、なんだか嬉しく思えてしまう。

 単行本は、ただ今は4巻まで発売されているのだが、じっくりと腰を据えて
読みたいので、月に1巻ずつ取り寄せて読むことにしている『雨は これから』
で、実はこれから、「3巻」を注文するところ、なのです。


太郎吉野(たろう・よしの)
阪神タイガースお膝元在住。右投げ右打ち。趣味は途中下車、時々寝過ごし乗
り越し、最長不倒距離は三重県名張。
ちなみに「阪神タイガース」の「阪神」は、「兵庫県阪神地方」を指します。

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第110回 刑事事件の用語とシェイクスピアの戯曲

 以前から気になって仕方がない本があり、今回ようやくその本を読むことが
できた。というよりも、すこし前に買ったけれど、そのまま本棚の片隅に埋も
れていた本書の存在に気づき、ようやく手に取ることができた。・・・・・と
かくこのうな状況(買ったけどそのままになっている書籍)はたくさんある。
通称“つんどく”。今回日の目をみることができて本当によかった。

『未必のマクベス』(早瀬 耕 著)(早川書房)
(ハヤカワ文庫)(2017年9月25日 第1刷)

 「未必の故意(みひつのこい)」という言葉がある。刑事事件の用語で、
“自分の行為によって犯罪が発生するかもしれないが、それもしかたがない、
犯罪が発生してもいい、と思っている状態”・・・・・という意味だという。
たとえば、車を運転していて、ここで人が飛び出したらぶつかる、轢いてしま
う、と思っていても速度を落とさず走行しているような状態だと思えば身近で
わかりやすいかもしれない。

 「マクベス」。シェイクスピアの戯曲で四大悲劇の一角を占める作品。悪魔
のような森の妖精から自分の未来を聞いたマクベスは、国王を殺し自分が国王
になる。そして国王の下で同僚だった重臣も殺してしまう。しかし結局、その
子に討たれる。

 この刑事事件の言葉とシェイクスピアの戯曲が組み合わさった奇妙なタイト
ルにとても惹かれた。当時の自分の気分はよく覚えているのだが、この本の紹
介にシェイクスピアのことはあまり出てこない。恋愛小説であり、犯罪小説で
ある、という調子の紹介文しか出てこなかった覚えがある。マクベスという滅
びる王のことに絡めた紹介はあまりなかった。

 それでもやはりタイトルに「マクベス」という名称がある以上、このシェイ
クスピアの戯曲がなんらかで関係があるだろうし、またこの「マクベス」は悲
劇(人がほとんど死んでしまう内容)なのだから、少なくとも主人公たちは死
んでしまうのだろう、また恋愛小説、ということなので、恋人と死別してしま
う悲恋を描いた小説なのだろうということは想像がついた。

 という訳で、いつか読もうと思って文庫になるのを待ち、文庫になってから
買っておいた本なのだが、ついにこのたびページをめくることができた。

 ばかばかしさとおもしろさが背中合わせになって同居しているような本だっ
た。・・・・・これが読みながら常に思っていた本書の印象だった。
 荒唐無稽なストーリーと精妙巧緻な細部の描写。あり得ない展開に度肝を抜
かれ、まるで知らない世界を緻密に描かれているこのありさまがとても新鮮だ
った。
 そして、宣伝どおりに巧妙な恋愛小説になっている。高校の同級生だった3
人の主要登場人物が、その時の印象をそのまま持ちながら、物語が回転し進行
していくのだ。が、その進み方があり得ないし、まるで納得できない。お話だ
から、物語だから、どんな展開になってもいいのだが、おとぎ話や空想小説な
らともかく、本書は私たちが生きて過ごしている、まさにこの現実の社会が舞
台なのに、この展開はどういうことなんだろう。理解を超えてしまうのだ。

 で、執筆子はようやく気づいた。だから、「マクベス」なのだ。そもそもこ
の「マクベス」もその展開があり得ない。舞台は現実の中世スコットランド王
国なのだが、森の中で魔女に出会い、予言を受け、その通りに行動するマクベ
ス。そして自分の進む道を確かめるために、再度魔女に会い、さらに予言を受
けるマクベス。つまらない予言なんかを信じなければ、真に受けなければ何も
起こらず、国王の下で重臣として幸せな人生を送っていたであろうマクベスは
自分の頭で物事を考えず、自分の行動を他の力に頼ってしまうものだから、結
局自分自身の弱さを露呈して、破滅してしまう。本書の主人公はそんなマクベ
スとは少し違うが、それでも自分で考えず、なりゆきと人の意見に左右された
生きざまのままだったから、最後は破滅してしまう道を選んだ。

 本書の登場人物たちは、よく人を殺す。しかし人を簡単に殺してしまうこと
に対する後悔とか贖罪とか、そういう感情がまるでない。そもそもそういう感
情があるのなら、本書は存在しない。本書の中では人を殺すことが単なる手段
であり、目的ではない。だから、殺人に対する後悔はあってはならないのだ。
云ってみれば、戦争と同じ。戦争における殺人はそれが目的ではなく、勝つた
めに殺すので、殺人は手段に過ぎない。優秀な将軍であるマクベスは戦におけ
る殺人にはなんとも思わないが、主君を殺してしまったとき、彼は凄まじい狼
狽ぶりをみせる。が本書の登場人物たちは、ロボットのように人を殺す。そう
か、これはハードボイルド小説なんだ、ということにも途中から気づく。チャ
ンドラーの小説は感情が入らない。

 主人公は途中から、自分と自分を取り巻く状況が「マクベス」の戯曲のまま
なことに気づく。自分が王に代わることを自覚した時、彼は破滅の道を選んで
しまったわけだ。本書における魔女は誰なんだろう。

 中井優一、伴浩輔、鍋島冬香。この主要な3人の登場人物のまわりに配置さ
れる数々の人たち。人物の描写やその会話が自然でとても上手い。主人公の中
井がマクベスで、伴がバンクォーなのは、本書の中で再三再四表現されている
から疑う余地がないのであるが、ではマクベス夫人はだれなんだろう?という
疑問が最後まで残る。「マクベス」ではマクベスよりもマクベス夫人の方が早
く死んでしまう。しかし本書では鍋島冬香は死んでいない。少なくとも死亡は
確認されていない。李という亡命人がいる。彼がある国の支配者の長男である
ことに気づいたときがこの物語の最初のクライマックスであり、そこから物語
が始まる。この亡命人がマクベス夫人なのかもしれない。

 主人公の中井は、それが犯罪になるかもしれないけど、物語に乗っかってし
まった。やらなくてもよかったのにやってしまった。そして振り返れば「マク
ベス」をなぞっていた。

 だから「未必のマクベス」なのだ。


多呂さ(東京大空襲から74年目を迎えた3月10日です。そして私たちはあす3
月11日であの震災から8年目迎えます。何もかも元に戻ってしまった印象があ
ります。この国はどうなるのでしょうか)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/


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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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93 生活と物語と現実と

 美しい本が刊行されました。

 『バレエシューズ』
 ノエル・ストレトフィールド 朽木祥 訳 金子恵 画 福音館書店

 1936年にイギリスで刊行されベストレセラーになった物語で、日本で紹介さ
れたのは1957年。訳者の朽木さんも少女時代に愛読していたそうです。

 瀟洒な表紙を開いて読み始めると、あっという間に1930年代のロンドンにタ
イムスリップしたかのように入り込みました。

 学者のマシューがひょんなことから、身寄りのない赤ちゃんを3人続けて引
き取ることになります。マシューは気まぐれ(?)に期間を決めないで家をあ
けることがままるため、姉妹を育てたのはマシューの親戚のシルヴィアとシル
ヴィアの乳母であるナナでした。

 マシューは大叔父マシュー(Great Uncle Matthew)の頭文字でGUM(ガム)
と呼ばれています。生活はガムがみており、長い旅に出ている間はきちんとお
金はおいていきました。けれど今までにない長期間の不在にシルヴィアたちの
生活は苦しくなっていきます。

 その頃には成長した姉妹が家計を助けるべく舞台芸術学校に入学。また、空
き部屋に下宿人をおくことにし、結果、とてもいい人たちが住むことになり、
姉妹の支えにもなってくれるのです。

 さて、この物語は細部の描写がとても深く、3姉妹がくったくなく毎日を過
ごす様子から、いつかは自分の名前を歴史に残そうという野心をみせてくれる
など、彼女たちの動向に目が離せません。ポーリィン、ペトローヴァ、ポゥジ
ーは、大きい順から、舞台芸術学校で学び、自立し生活の糧を得るのですが、
どの公演でいくらもらえるかという具体的な数字がかなり出てきますので、家
計簿をみながら姉妹らの生計を応援しているような気持ちにもなりました。

 かといって貧困が描かれるわけではなく、生きていく上での山有り谷有りが、
子どもの視線で描かれ、女優として成功しつつあるポーリィンの奢りや、才能
があっても、見た目で判断される社会の厳しさも見せてくれます。周りの大人
たちが、子どもたちを支える姿もすてきで、子どもも大人も、読むと前を向い
て生きていく活力をもらえる物語、古典の底力を感じます。


 『わたしは女の子だから
  世界を変える夢をあきらめない子どもたち』
     文:ローズマリー・マカーニー ジェン・オールバー
       国際NGO プラン・インターナショナル 
     訳:西田佳子
     西村書店

 帯に6つのマークが印字されているのを、高校生の娘がみて、これ学校で見
た!と教えてくれました。

 2030年に向けて世界が合意した「持続可能な開発目標」がそれです。
 本書にあてはまるものは、この5つでした。

 1 貧困をなくそう
 4 質のいい教育をみんなに
 5 ジェンダー平等を実現しよう
 6 安全なトイレを世界中に
 10 人や国の不平等をなくそう

 タイトルにある「Because I am a Girl」「わたしは女の子だから……」は、
女の子を取りまくリスクから護り、彼女たちが生きる力を発揮できる世界をめ
ざして、国際NGOプラン・インターナショナルが展開しているグローバルキ
ャンペーン名からきています。

 少女8人は、自分らが経験した奴隷(カムラリ)、早婚、貧困などについて
語ります。写真も豊富に掲載され、意志の強い目力を感じる彼女らの体験は、
過酷で、学ぶ権利、教育も奪われている中で、自分たちが生き延びるために必
要なものを取得するために、努力している姿を見せてくれます。

 西村書店はいままでも“世界の今を知る写真絵本”を刊行し、私達読者に、
知らない世界をみせてくれました。

 本書は絵本より文章量があり、情報も多く、だからこそ、少女達の強さがよ
り伝わってきます。教育を受け、職業訓練を受け、未来を切り開いていくのに
何が必要かを読者に教えてくれます。

 日本の多くの少年少女たちに読んでほしいです。

 そして、“世界の今を知る写真絵本”『私はどこで生きていけばいいの?』
『すごいね! みんなの通学路』も手にとってほしい。

 目の前のことにいっぱいいっぱいの時期だからこそ、視野をぐいっと広げて
くれるはずです。

(林さかな)
会津若松在住。「本の雑誌」新刊めったくたガイド海外文学担当。
http://1day1book.strikingly.com/

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・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
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 またあの日がやってきました。いろいろな人の人生を変えた一日。今日はゆ
っくりと過ごしたいものです。(あ)

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★「音楽本専門書評 BOOK’N’ROLL」/おかじまたか佳
→ #103『生命の暗号を聴く』

★「目につく本を読んでみる」/朝日山
→ 『消えた警官 ドキュメント菅生事件』坂上遼 講談社

★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→ 「嵐」が活動休止と聞いて、「方丈記」を読んでみた

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#103『生命の暗号を聴く』

 マキタスポーツとスージー鈴木の痛快楽曲分析本を前回はご紹介したが、音
楽理論に基づいているとはいえ、基本は、言葉の面白さを駆使した文系の楽曲
分析であった。

 では、それに対して、

 理系の楽曲分析ってあるのか?

というと、あるんだな、これが。それも、最先端の科学的研究をベースにした
すごいのが。

 音楽療法とか、植物に音楽を聴かせると成長が早いといった研究があるけれ
ど、いずれも経験値的なものばかりで、あれこれ試したらこの曲がいいみたい、
といった域を出ず、なんか、やたらモーツァルトばかりが「効果あり」という
結論になるな、という漠然とした印象しかなかったのだが、実は「タンパク質
の音楽」なるものが存在し、そこからある程度理論的に、音楽の持つ「効果」
が説明できる、ということを知ったのである。

 本書『生命の暗号を聴く 名曲に隠されたタンパク質の音楽』は、その理論
に基づく楽曲分析によって、どの曲にどんな効果があるかを明らかにした本で
ある。
 著者の深川洋一は東京大学大学院理学系研究科修了。現在はタンパク質の音
楽を用いた「音薬(楽ではなく薬。おんやく、と読むのでしょう)療法」の啓
蒙、普及活動にがんばっておられるようだが、ともあれ、タンパク質の音楽っ
て一体何?

 タンパク質というと筋肉、のイメージだが、体にいろんな機能をもたらすホ
ルモンや各種酵素なんかもタンパク質で、その種類は膨大である。
 しかし、すべてのタンパク質の原料はアミノ酸で、こちらは僅か二十種類し
かない。このアミノ酸が、細胞の中にあるリボゾームという、いわば工場に運
ばれてきて、日々遺伝子の設計図に従って組み合わされ、タンパク質となって
体の必要な箇所に送り出されている。

 重要なのは、アミノ酸がリボゾームに運ばれてくる時、である。
 この時アミノ酸は、「着いたよー」という合図に、振動波を発するのだそう
だ。当然その周波数は、アミノ酸の種類によって異なっている。そうでないと、
どのアミノ酸が来たのかがわからないからだ。

 ところで、振動波である限り、それは鼓膜に届けば音になるのだが、アミノ
酸の到着合図は周波数がめちゃくちゃ高く、人間の可聴範囲を超えているから、
76オクターブ下げないとわれわれには認識できない。
 もっとももし聞こえたら、始終体の中でいろんな音がしているわけで、もう
気が散ってしょうがないと思うが。

 しかし、聞こえなくても、音が鳴っていることは確かである。
 すると、タンパク質が合成される時、遺伝子の設計図に従って、順番に次々
と到着するアミノ酸は、連続してそれぞれ固有の音程の振動波を発しているこ
とになる。
 連続して、さまざまな高さの音が鳴る。
 そう、つまり、メロディなのだ。

 つまり、タンパク質ごとに、決まったメロディが奏でられていることになる。

 ここでぼくが思い出したのは、天体の音楽だった。
 かつてヨーロッパでは、星がそれぞれ固有の音を発しながら宇宙空間を回っ
ていると考えられていたことを、以前この欄でも紹介したと思う。これが「天
体の音楽」である。

 一方、マクロ・コスモスとミクロ・コスモスの照応という思想もあった。こ
れは、宇宙が巨大世界(マクロ・コスモス)であるのと同様に、人もしくは人
体は極小世界(ミクロ・コスモス)であり、両者はリンクしているという考え
方で、そこから生まれたのが占星術である。宇宙と人が対応しているからこそ、
宇宙で起こった天体の運動を見れば、地上で起こる人間の運命が予測できるわ
けだ。

 同様に、天体の音楽があれば、ミクロの細胞世界には、タンパク質の音楽が
ある、というのは、こうした文脈に置いてみると、非常に納得できる、と思っ
たのだ。

 ただ、天体の音楽はファンタジーだが、こちらは厳密に科学的な事実。
 それに、天体の音楽は単音だが、タンパク質の音楽は複数の音の連なり。先
に書いたように、メロディである。

 タンパク質1種類につき、ひとつのメロディが対応している。
 まあ、正確に言うと、さほど長いものではないので、フレーズとかモチーフ
と呼ぶべきかもしれない。
 だが、ひとつひとつの音程は、物理学的に厳密に計算できる。したがって、
その短いフレーズは、ちゃんと楽譜にすることが出来るのである。

 そこで、ひとつの着想が生まれる。
 もし、ある楽曲のメロディに、あるタンパク質のフレーズが含まれていた場
合、その曲を聴くと対応するタンパク質が活性化して、人体に何らかの効果を
及ぼすんじゃないか。

 だとすれば、これで音楽療法は理論的に説明できるかもしれない。

 さらに著者は、ある曲が名曲となり、ある曲がそうならずに埋もれていくの
は、作曲家の感性が時代の求めるタンパク質を無意識に感じ取り、そのタンパ
ク質のフレーズを使ってメロディをつくるからではないかと考え、具体的にさ
まざまな曲を分析していく。

 ただし、ふたつほど注意点がある。

 ひとつは、あるタンパク質のフレーズと、ある曲の一部分が、完全に一致す
ることはない、という点だ。
 もし一致するなら、楽譜を見れば誰でも一目瞭然なのだが、残念ながらそこ
まで都合よくはいかない。
 「似てる」「似てない」という印象による判断になるため、どの曲がどのタ
ンパク質に対応するかには慎重な判断が必要であり、この作業に習熟した専門
家でないと難しいらしい。

 もうひとつは、フレーズにはタンパク質の合成を「促進」するものと「抑制」
するものがある、ということだ。ここも慎重にどちらかを見極めないと、逆効
果になってしまう。

 さて、以上を踏まえて、ここでは、誰もが知る『上を向いて歩こう』の分析
をご紹介しよう。

 まず、この曲のどこにタンパク質の音楽が使われているかというと、歌い出
しである。「うえをむい」という部分(「て」は含まない)。そして続く「あ
るこ」の部分。(「う〜〜」と下がってくるところは含まない)。
 ちょっと微妙な切り取り方だが、ま、それはおいといて、このフレーズは、
PPARγというタンパク質の合成を<抑制>するメロデイに似ていると言う。

 PPARγは、脂肪の蓄積を促進する機能を持つタンパク質である。
 その合成を抑制するのだから、その逆、脂肪の蓄積を妨げることになる。
 なんと『上を向いて歩こう』、実はダイエット・ソングだったのである。

 さらに、ここからが本書の面白いところだが、ではなぜ、この効果を持つ曲
があの時代に大ヒットしたのか、という分析に著者は入っていく。

 そもそも人類の歴史は飢餓との戦いであり、飽食の時代になったのはつい最
近のことに過ぎない。だから、ずっと長い間、脂肪の蓄積を促進してくれるPP
ARγくんは人類の味方であった。
 日本でも、戦中から戦後にかけて食料不足が続き、人々は慢性的な飢餓状態
にあった。それが一転するのは、高度成長を経て、胃袋が満たされ、人々の欲
望がテレビや洗濯機やらクーラーに向かい、経済白書が「もはや戦後ではない」
と高らかに宣言した頃である。

 そのひとつの例証として著者が引くのは、糖尿病による死亡率のグラフだ。
 20世紀の前半には微増しているが、戦前から戦後にかけて一気に減っている。
しかし、1960年頃を境に急激な上昇に転じ、そのまま増え続けて世紀の終わり
には5〜6倍に達し、もはや国民病とまで言われているのはご存知の通り。

 では、『上を向いて歩こう』の発売がいつか、と見てみると……

 これがどんぴしゃ、1961年! まさに糖尿病患者の増加が始まった時だった!

 まるで、細胞レベルで脂肪の蓄積に警戒信号が出され、それを本能的に感知
した人類が、無意識にPPARγの合成を「抑制」する曲に飛びつき、大ヒットし
た、と考えられるわけだ。

 そうなるとこの歌が、当時日本以上に高カロリー食だったアメリカでも大ヒ
ットしたことの説明もつくし、それ以降同様の日本製ヒットがアメリカで生ま
れなかったことも納得できる。
 しかも、そのアメリカ版のタイトルが高カロリー和食の『スキヤキ』!
 この事実には単なる偶然を超えたものがある、という著者の主張には深く頷
いてしまうのであった。

 他にも、ベートベンの『運命』やら、映画『バグダット・カフェ』の主題歌
『コーリング・ユー』やら、黒人霊歌やら、多彩なジャンルの名曲がタンパク
質の音楽として解析されている。

 ちなみに、この音薬療法、やたらたくさん聴けばいいものではなく、適量を
守らないと逆効果になることも。
 正月太りが未だ解消せず、ダイエット中のみなさん、くれぐれも『上を向い
て歩こう』のヘビロテに走りませんように。


深田洋一
『生命の暗号を聴く 名曲に隠されたタンパク質の音楽』
2007年8月14日 初版第一刷発行
小学館

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
記録的に寒い北海道へ、またぞろ行ってきました。もちろん目当ては月光グリ
ーンのライブなんですが、今回もうひとつ楽しみが出来ました。すすきのにス
リラーナイトという怪談BARなるものがあって、初めて行ったのですが、い
や、これ、ほんと面白かった! 演出も最高だし、語り部の匠平さん、怪談も
さることながら人柄も素敵。夏の宵ではなく、零下10度の雪道を踏みしめて怪
談を聞きに行くのも、乙なもんです。

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『消えた警官 ドキュメント菅生事件』坂上遼 講談社

 冤罪事件が後を絶たない。だいたい何かの事件があって、被害者の周辺にい
た人の中で怪しそうな人か逮捕されて、自供を強いられるのがパターンだろう。
しかし警察が自ら事件を作り上げて冤罪と分かっている者を逮捕させるなんて
ことはないと思っていた。

 それがあった・・・それがこの本に書かれている菅生事件である。

 1952年正月、大分国警本部に戸高公徳という警官が呼ばれ、身分を隠して大
分県菅生村に潜入することを命じられる。要するにスパイである。目的は当地
にいる共産党員の監視だ。

 この当時の共産党は50年にコミンフォルム批判と言って、平和裏に革命を起
こそうとしていた日本共産党に対し、ソ連や中国の共産党が生ぬるいと批判し
武装革命をやれと批判したことで、これに従うか否かで党が割れていた。

 そんな中、武装闘争をやろうとした人たちが山村工作隊や中核自衛隊を編成
し、武装闘争の訓練や破壊活動をやろうとしていた。有名どころでは若き日の
小松左京もその1人だった。

 菅生村はそんな武装闘争の拠点になる怖れがあった。菅生村は大分県で農地
改革が最も遅れた地域で、不在地主や一部の地主が農業委員と結託して農地や
県から開拓農協に出る資金を横領していた。これに共産党の後藤秀生が気づい
て不当に搾取された財産を返せと運動を始めていた。党も重要活動拠点と位置
づけて活動家を送り込んでいた。

 潜入命令があった直後の一月には、菅生村一番の顔役で酒店と製材所を経営
していた松井波津生らが、暴力グループを雇って高橋の家を襲い、不在だった
高橋の代わりに父親の彦馬に全治三ヶ月の重傷を負わせた。これで舞台がアメ
リカ西部だったら、マカロニウエスタンの定番映画が撮れるだろう。

 警察は本当に菅生村から武装闘争が始まり日本中に波及することを恐れてい
た。事実、当時の共産党大分県委員長だった都留忠久は、「もう3ヶ月、いや
1ヶ月警察が待っていれば。冤罪、でっちあげ事件ではない、本当の菅生事件
が起きていたと思う」と述べている。そんな状況下、スパイとして戸高が送り
込まれた。

 同年三月、戸高は市木春秋と名乗り、松井の製材所に経理の仕事をすると言
う名目で入った。松井も戸高がスパイだと知っていて経理の仕事などさせずに
好きにさせた。

 戸高は後藤に取り入り、共産党に入党したいとまで言っていた。そんな戸高
を後藤も信頼していた。そこまで工作をしたところで、警察は後藤らにワナを
仕掛ける。

 戸高は、スパイとしてきちんと仕事をしていたのだろう。そして、共産党が
武装闘争に立ち上がる日は近いと報告を上げたのだろう。警察は共産党を恐れ
て、とにかく大事になる前に芽を摘み取ろうと焦った。もう少し待っていたら
良かったのに、待てなかった。だから共産党をワナにはめることを決断した。

 6月1日夜(正確には2日0時過ぎ)、市木がカンパすると称して、中学校
の手洗い場に後藤ら共産党員2人を呼びだした。中学校は県道を挟んで向かい
に派出所があった。カンパを受け取った2人は、市木と別れて駐在所のある方
向とは逆の方向に歩き出した。その時に派出所が爆破され、直後にどこからか
十数人の警官が飛び出してきて2人を現行犯逮捕した。その後、2人と共謀し
たとされた3人が逮捕された。

 6月3日の新聞には、駐在所の警官大戸三郎の妻みち子が「私は爆弾が投げ
込まれるのを知っていた」という証言が掲載された。夫の三郎から派出所が襲
撃されると知らされていたが、犯人に気付かれるといけないので「死ぬ気でが
んばった」として妊娠6ヶ月の身にもかかわらず逃げなかった証言し、美談と
して報道された。これに対して不審感を抱く人がほとんどいなかったのは、不
思議である。

 後藤らは、市木に呼び出されただけだと主張したが、当然市木(戸高)は姿
をくらませている。目撃者は周囲を張り込んでいた警官たちだけだから、当然
分が悪く、彼らは有罪判決を受けて服役した。

 しかし、これに疑念を持つ者たちがいた。共産党や地元の記者たちが動き出
し、消えた戸高を探そうと努力していた。そして市木の正体が大分国警の警官
戸高だと突き止めた。しかし、戸高がどこにいるのか全く分からない。

 しかし、執念の調査の結果、とうとう戸高の居場所が突き止められ、事件は
急展開を見せる・・・ものすごく面白い、ぞくぞくする実話である。

 戦前に弾圧され、獄に繋がれていた多くの幹部が出てきて終戦直後の日本は
「革命前夜」の雰囲気があったとはよく言われることだけども、それも道理だ。
こんな分かりやすい構図で警察が悪役やっておれば、そりゃ革命がおきても不
思議ではないなという感じである。

 残念なのは、現在絶版状態で、電子書籍でしか手に入らないことだ。もとも
と2009年発行で、文庫化もされているのだが、あまり話題になっていた記憶が
ない。なんでこんなに面白いのに話題にならなかったのか、不思議でしょうが
ない。

 しかし、電子書籍になっているからこそ紙の本としては絶版になっても、こ
うしていつでも手に入れることができる。良い時代になったものだ。


(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)

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■「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
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「嵐」が活動休止と聞いて、「方丈記」を読んでみた

角川ソフィア文庫 ビギナーズ・クラシックス日本の古典
『方丈記(全)』鴨長明 武田友宏編


 いや、ジャニオタってすごいね。(※ジャニオタとは、ジャニーズのファン
のことです。)

 2020年12月31日をもって「嵐」活動休止の報に際して、おばちゃまみたいな、
薄っすーい、ほぼお茶の間ファンのところにも、「大丈夫ですか」「気を落と
さないでね」なんていう励ましのメールがあちこちから届くんですから。一番、
気遣ってくれたキンキキッズのファンの50代女性は、3年前に、友人のスマッ
プのファンの傷心をサポートした経験があるんだって。だから、薄いお茶の間
ファンでも放っておけなかったみたい。もうね、プロのカウンセラー以上に
「聞く技術」を持ってた。驚く!(いや、ありがたいですよ。人という字は支
え合って生きる姿なんだね・・・)

 私は、大丈夫ですよ。今回の決定はベストな選択だと思うし。

 でも、いろいろ思うことも多いですなあ。

 で、こういう意外な事態に遭ったときは、ホームポジションに戻るのがいい
と思いました。おばちゃまのホームポジションは一応、古典文学なんで、「方
丈記」を読んでみました。日本古典の入門書としては一番!と思う角川ソフィ
ア文庫・ビギナーズクラシックス日本の古典『方丈記(全)』(武田友宏編)
で読みました。

 最初にあまりにも有名な世の無常をうたった文章がガツンときます。

「ゆく川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうた
かたはかつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。」
 
(川の流れは一瞬も休まない。それどころか、河の水は後ろの水に押されてつ
ねに前に進み、元の位置に留まることはない。(略)流れていないように見え
る淀みもそうだ。無数の泡が留まることなく浮かんでは消えて、元の形を保つ
という話は聞かない)

 つまり、同じように見えるものや人も日々変化しているのです。毎週同じに
見えるバラエティもよく見ると違うし、毎年のコンサートも変化している。嵐
のメンバーだって、ファンだって日々、変化している。加齢もするし、気持も
うつろうわけですよ。休みたくなるし、やっていることとは違うことをしたく
なる。まさにもとの水にあらずな状態ですね。その小さな変化が積もり積もっ
て大きな変化を呼ぶことになったのが今回の活動休止なわけで、それは生きて
いる人の人生にも起きていることなんですね。おばちゃま、納得したですよ。

 「ゆく川の流れは絶えず、かあ・・・」もうこの冒頭の名フレーズは年齢を
重ねれば重ねるほど、心に迫るものがあります。
 
 折角なので後の章も読んでみました。

 すると。長明が生きた時代は都市災害があいついだ時代で、その記述がまあ、
今の日本に酷似していることに驚愕しました。安元の大火、治承のつじ風、養
和の飢饉、元暦の大地震・・・これが長明が実際に体験した災害です。

 これを体験しても無常観を肌で感じたでしょう。

 そして長明自身も、親族との権力闘争に敗れるという挫折を味わっていて、
そこがこの著作が古典として長く生きてこられた裏づけになっていると思われ
ます。読むと、54歳で都の郊外に庵を結んで隠遁生活したことへの、自負とは
裏腹な負け惜しみみたいな記述もあって、これはこれで人間臭い。

 編者の武田さんはこう言っています。

「鴨長明というと、河の流れを眺めながら「無常」にひたっている引きこもり
型のおじいさんを想像しがちです。しかし、実際は「無常」に積極的に立ち向
かい、前向き人生の改革をはかった人物です。『方丈記』も、世をはかなむ無
常感一色に塗りつぶされた作品ではなく、我々現代人にとって参考になる生活
ヒントをたくさん盛り込んでいます」

 引きこもりのおじいさんって!(笑)

 人生に挫折した。災害は次々にやってくる。
 世は無常で、嵐は活動休止する。

 そんな状況の中で、無常と理解しながら捉われる執着心に、「じゃ、あなた
はどうする?」と問いかけているのが「方丈記」なのではないでしょうか? 
それも上から目線ではなく、「オレもこれでかなりキツイのよ」という気持ち
がチラチラと見える部分があるから共感でき、約800年の時を永らえる古典に
なったのだと思います。

 文庫本にして注釈と現代語訳含めて約150ページと薄くて読みやすいのも
「方丈記」の良い点。ぜひご一読を!(特に嵐ファンの方)。 


大友舞子(おおとも・まいこ)
昭和20年代生まれのフリー編集&ライター。関東生まれで関西在住。

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[書評]のメルマガ vol.671

■■------------------------------------------------------------------
■■ [書評]のメルマガ                2019.02.10.発行
■■                              vol.671
■■ mailmagazine of book reviews     [世の中、そうは甘くない 号]
■■------------------------------------------------------------------
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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<110>『ウーパ!』は、昭和的中高年オトコのアコガレ体現漫画

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→92 本はいいよ

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第109回 歴史は繰り返し、結局人は学ばない

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→すいません、ほぼ日の経営。(2018/10/22 川島蓉子著 日経BP社)

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
└──────────────────────────────────

 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<110>『ウーパ!』は、昭和的中高年オトコのアコガレ体現漫画

 二月だというのに、温かい日が続いている。

 天気予報でも、「四月上旬並み」とか「三月中旬の暖かさ」という文言をよ
く聞く今日この頃。
 温暖化ってやつですか? 冬なのに、こうも温かい日が続くと、ホンマに地
球は大丈夫なんかいな、とかなり本気で北極のシロクマさんが心配になってき
たり。

 以前住んでいた神戸市北区は、神戸市内唯一の「積雪区」で、この冬にも既
に何度か雪が積もったようだが、それでも、せいぜいが2〜3センチの積雪で、
以前に比べると格段に積雪量は少なくなっている。

 神戸市北区は、わしの故郷でもあるのだが、わしが小学生から中学生のころ
…だから昭和の30年代末から40年代ころには、雪が積もる日というのは、ひと
冬の間に、今よりもっと頻繁にあったし、毎年1回〜2回ほどは「大雪」も記
録して、積雪量は30センチほどに達したりもした。

 その小学生のころ、家の裏手を流れていた川は、冬になると「凍る」のが当
たり前で、浅い流れの上に白くて薄い氷が幾層にも重なるそれは、さながらミ
ルフィーユのようで、これを足で蹴って割ると、「しゃくしゃく」ととても小
気味よかった。

 裏山を少し入ったところにあった落差3メートルほどの滝は、冬には全体が
凍りつき、あちこちにつららを下げた氷瀑となった。
 この氷柱に石を投げて突き崩すのも、冬の子どもの遊びの定番だった。
 大きいものでは直径30センチほどだったか、上下がつながった氷柱を、石を
投げたり棒でたたいては突き崩し、「戦利品」の先のとがった氷柱を持ち帰っ
ては、得意げにそれを舐めていると、「汚い!」と母親にどつかれた。
 確かに、滝の上流には集落があって、その生活排水もそこには流れ込んでい
るのだった。

 山の棚田の中にあった溜池にも、冬になると厚い氷が張って、その厚さを足
で踏んでは確かめつつ、向こう岸まで氷の上を歩いて渡るのも、男の子の冒険
遊びの定番だった。
 経験的に、池の縁に近い方は氷が厚く、真ん中に行くほど薄くなるのは知っ
てたので、慎重に足で探りながら、踏み出した足の先で「ピシッ」とか「メキ
ッ」という音が聞えたら、急いで撤退するのもまた、男の子の勇気なのだ。

 昭和40年代、神戸市北区には、相次いで団地や新興住宅地が開発された。そ
こへ神戸や西宮の街場から越してきた子どもたちは、初めて体験する冬の雪や
氷に興奮するのか、溜池に張った氷に、おそるおそる乗ってみると、これが割
れないのをいいことに、「わ〜〜い!」と一気に走っては、真ん中あたりで
「ずぼん」と池に落ち、氷の下で水死する…というような事故も、幾度か報告
された。

 が、この近年…って、ずっと住んではなかったので、何年前くらいからなの
かはわからないのだが、雪が積もっても30センチにもなることはまずないし、
川も凍らず、池に氷は張っても、とてもそこに乗ろうとは思えない、薄い氷で
しかない。

 滝が凍る様も、この何十年か、地元では見たことがない。

 小学生のころ、雪が積もると山の中で、立木や灌木を「柱」にして、雪で壁
と天井を造った「かまくら」風の、当時わしらの間では「いえ」と称していた
秘密基地をつくるのが楽しみだった。
 自作の竹スキーやそり遊びに興じた後、持ち寄った食い物を「いえ」で分け
合って食ったり、持ち込んだ漫画を読んだり。

 冬でなくとも、「いえ」は常に仲間で作っていた。
 やはり山の中で、立木を中心として笹や灌木を周りに立てかけた原始時代竪
穴住居風のものやら、川が崖を穿った窪みを砦風に仕立てたもの、休耕田をひ
たすらに掘っては、灌木や笹で屋根を拭いた上にカモフラージュの土をかぶせ
たトーチカ様のものとか、果ては電車の線路わきに積んであった枕木と、製材
所から失敬してきた材木を使って、ツリーハウスを建設しようと試みたことも
あった。

 山の中などを徘徊中に、自分たち以外が作った「いえ」を発見すると、これ
は徹底的に破壊するのが「掟」でもあったので、わしらの「いえ」も、完成か
ら数週間、早い時には数日後には、たいてい誰かによって破壊されるのが常だ
った。

 「いえ」すなわち「秘密基地」遊びは、かつて男の子だった人なら、だれに
も経験があると思うのだが、これを大人になってから再びやってしまった顛末
記が、先ごろ「モーニング」での連載を終えた、守村大『ウーパ!』である。
 この漫画、「まんが新白河原人」とのサブタイトルのとおり、元は同じ「モ
ーニング」に連載された絵付きコラム、「新白河原人」が好評につき、その漫
画版として連載がスタートしたもの。

 2005年、連載作品を完結させた守村が、次の作品の構想を練るうち、自身が
疲れ果てていることに気づき、「モノ、カネに縛られる生活は、もうイヤだ!」
と一念発起。家族の反対を押し切り、福島県白河に買った山林で、自給自足の
生活を始める。ときに守村大、47歳。

 自力で山林の樹木を伐採し、開墾した土地にやはり自力の見様見真似でログ
ハウスを建設し、そこを拠点として畑を造り、鶏を飼っては卵と肉を確保した
り、炭焼き小屋を造っては燃料の炭を焼いてみたり、ゲストハウスのツリーハ
ウスやサウナ小屋まで自作してしまったり、震災で瓦礫と化していた大屋石を
譲り受けては、パン焼き窯まで自製してしまったり。

 もちろん、すべてがすんなりと運んだわけではなく、その過程は失敗と挫折
と試行錯誤の連続で、当初の完全時給自作の目標も、電気や水洗トイレはやは
り必要、と現実と妥協してみたり、なのではあるが、その生活の中での様々な
人たち…炭焼きを教えてくれた地元の爺さんや、猪肉を分けてくれるやはり地
元の猟師さん、あるいは守村が「師匠」とも「親分」とも呼ぶ、釣りとその釣
竿及びルアー作りの名人、等々…との出会いと交流が、読んでいるととても羨
ましく思えてくる。

 それを現実に実行できるかどうかは別にして、『ウーパ!』は、男子なら誰
しも、「いいなあ…」という羨望と共に、ガキのころのノスタルジーを掻き立
てられる漫画なのだ。

 と思っていたら、ふと立ち寄った本屋で、これまた男の子の「秘密基地」願
望を著しく刺激する漫画を見つけてしまって、本稿ではこれにも言及する予定
だったのだけど、今月はちょっと野暮用が混んでいて時間がない。
 なので、そちらは、また来月のココロ、なのだった。


太郎吉野(たろう・よしの)
阪神タイガースお膝元在住。右投げ右打ち。趣味は途中下車、時々寝過ごし乗
り越し、最長不倒距離は三重県名張。
ちなみに「阪神タイガース」の「阪神」は、「兵庫県阪神地方」を指します。

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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92 本はいいよ

『ぼくは本を読んでいる。』
 ひこ・田中 講談社

 タイトルが物語すべてを表しています。
 そう、これは「ぼく」が本をひたすら読んでいるお話です。

 「ぼく」(ルカという少年です)の家には両親が「本部屋」と呼んでいる部
屋があり、そこには、壁一面に本棚があり、テーブルとイスも置いてある、読
書には最適の部屋です。

 ルカはかつて幼い頃はそこでよく絵本を読んでもらっていましたが、
 小学5年生になったいまは、もう親に本を読んでもらう年齢ではありません。

 そうして、いつのまにか「本部屋」に入らなくなっていたのですが、
 ひょんなことから、久しぶりに入ったその部屋で、
 ちょっとそそられる本をみつけました。
 
 本の奥付をみると、どうやら両親のどちらかが子どもの頃に読んでいた本ら
しく、ルカは親に内緒でその本を読みたくなります。

 その本は岩波少年文庫の『小公女』。

 タイトルがわかったとき、思わず興奮してしまいました。
 子どもの頃、私も大好きだった本なのです。
 最初に読んだのはいつだったかは思い出せないのですが、
 おそらく小学生だったように思います。

 ルカの読書を追っていくのは、e.o.プラウエンの『おとうさんとぼく』に描
かれているコマ漫画のようです。それは、ぼくが読んでいる本をおとうさんが
背中越しに読んでいるうちに、おとうさんの方が夢中になって、いつのまにか
二人が交代している内容で、私もまさにその状態になっているおとうさんの気
持ちでした。

 ルカが『小公女』に夢中になったおかげで、転校生の読書好き少女カズサと
も仲よくなり、好きな本について語れる仲間がいる喜びも伝わってきます。

 この物語は子ども時代の楽しさが、熱量高すぎず、さらりと書かれており、
その適温は大人にも読みやすいものになっています。

 現役の小学生に、図書館や学校の図書室で出会って欲しい物語です。


 次にご紹介するのは絵本です。
 
 『数字はわたしのことば 
    せったいにあきらめなかった数学者ソフィー・ジェルマン』

      シェリル・バードー 文 バーバラ・マクリントック 絵 
                    福本友美子訳 ほるぷ出版

 実在した数学者ソフィー・ジェルマンの伝記絵本です。

 ソフィーは幼い頃から勉強することが大好きでした。
 少女時代、パリはフランス革命さなかだったため、外は危ないと家の中で過
ごす時間が多くありました。
 その時間を使って、ソフィーは数学の勉強をし続け、気づくのです。
 

   ”数学者が数字をつかうのは、詩人がことばをつかうのと同じだ、
   とソフィーは気づきました。”


 ソフィーは数学者になりたい、数学を自分の言葉にしたいと強く思うように
なります。

 時代的に女性が勉強を志すのは難しく、教授も女性に教えようとは思わない、
それでも、ソフィーはあきらめず、大学の数学の課題を入手できたときは、男
性名でレポートを送るなど、粘り強く自分の学問を深めていきました。

 あきらめないソフィーの強さを、バーバラ・マクリントックは繊細に描き、
見ごたえがあります。特に勉強に集中しているソフィーの眼差しは印象に残り
ました。

 学ぶことが大変な時代に、穴をこじあけていくのは、数学が好きだという強
い気持ち。進学などで将来を考えている中高校生にもおすすめしたい絵本です。

 最後にブックガイドをご紹介します。

 『スポーツするえほん』中川素子 岩波書店

 絵本研究の第一人者による、スポーツを描いた絵本60冊を様々な切り口で紹
介しています。

 目次をみてみましょう。

 体を動かす楽しさ
 動きの美しさ
 運動会からオリンピックまで
 コミュニケーションが生まれる
 自分にうちかつ
 伝統の力
 運動の技術
 スポーツに必要なこと
 スポーツと社会
 スポーツ・ファンタジー
 
 登山やバレエなど、スポーツを広くとらえ、ゆるやかなくくりになっている
ところがおもしろいガイドになっています。

 このメルマガでもご紹介した絵本も数冊入っていて、なるほど、スポーツと
いう枠で読むとみえてくるものに新鮮なものを感じました。

 読みたいと思っている一冊は、このガイド本の著者である中川素子さんの絵
本。

 『スタシスさんのスポーツ仮面』(岩崎書店)はリトアニア生まれでポーラ
ンド在住のアーティスト、スタシス・エイドリゲーヴィーチュスが絵を描いて
いて、スポーツを「深く多様に」紹介しているようで興味津々です。

 絵本の世界も広い。
 ガイドを読んでいるだけで、スポーツしたくなってきます。
 

(林さかな)
会津若松在住。「本の雑誌」新刊めったくたガイド海外文学担当。
http://1day1book.strikingly.com/

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第109回 歴史は繰り返し、結局人は学ばない

 カズオ・イシグロはいったん休憩にしよう。でも、いまもまだしっかり読ん
でいるので、来月以降になるが、小欄で紹介していこうと思っている。
 今月は、楽に行こう。すぐ読めてしまう本を紹介する。それでも表題の如く、
テーマは重たい。重たいけど、どうしようもないと思わずに、なんとかしよう
と前向きに考えていきたい。それができていれば、人類はとっくに争いのない
世界を構築しているのだけど・・・・・・。
 明治時代について考えて、現代を見つめ直す、という作業をするための本。

『行きづらい明治社会 −不安と競争の時代』(松沢裕作 著)(岩波書店)
(岩波ジュニア文庫)(2018年9月20日 第1刷)

 本書は、「ジュニア文庫」というくらいだから、読者層を小中学生向けにし
てあるが、大人も読める本である。むしろ大人が読むべき本である。書いてあ
る内容が経験値のあるなしで、理解の速度が速くなるかゆっくりになるか・・
・。自分にも当てはまることが書かれていれば、理解は早い。歴史学とは過去
を研究し、現代に生かす学問であるならば、本書は明治時代を研究して、それ
を我々が生きている今、現代と比較しているわけで、さまざまなことを既に経
験している大人にこそ読んでほしい本になっている。

 四民平等、殖産興業、富国強兵等々のスローガンの下、明治維新という革命
を経て、まったく新しい政府を作り、近代化に邁進し、日清日露とふたつの対
外戦争に勝ち、ほぼすべての制度や様式がアジア初となり、国際的にも重要な
地位に上った日本という国家が、明治という時代である。いまを生きている我
々にとって100年以上前になってしまった明治時代とは、明るく元気な印象
があり、若さ溢れるまさに青春の時代であろう。坂の上の雲。

 しかし、本書では、明治時代とは決して明るい時代ではなかった、というこ
とを伝えている。題名が、『行きづらい明治社会』なのだ。

 著者は、まず明治時代の社会を想像する。そして、長く続いた江戸時代と比
較して、明治時代とは、社会が不安定であり、ひとりひとりはとても不安を持
って生活していたのではないか、と仮説を立てる。江戸時代までの封建社会で
は、身分が固定され、生まれた社会から逸脱することはできなかった。決めら
れた範囲の中で生きていくしかできない社会だった。百姓の子は決して武士に
はなれない。現代の我々からみれば、それは不合理であり、理不尽なことと映
るかもしれない。しかし、想像をすこしたくましくしてみれば、それは逆に生
きやすい社会であるのではないか。つまりある一定の範囲で生きていけばいい
わけで、血のにじむような努力をしなくてもよかったということだろう。

 明治維新後、日本は身分制が取っ払われた。百姓の子も大臣や博士、大将に
なれる。立身出世。末は博士か大臣か。・・・という社会が、曲がりなりにも
実現された。人々は努力が奨励され、頑張ることが推奨される。

 努力すれば、必ずそれが報われるのであれば、何の問題もない。しかし世の
中、そうは甘くない。頑張っても報われないことの方が多いかもしれない。

 著者は、この“頑張れば報われる”ということが、実はある種の「わな」=
罠、であると云い切る。
 “頑張れば報われる。報われずに貧乏のままでいるのは、その人の努力が足
りない”という考え方が、明治以降の日本を覆う。それを歴史学の世界では
「通俗道徳」と呼んでいるそうだ。勤勉に働くこと、倹約をすること、親孝行
をすること、そういうことを実践すれば、必ず報われるという。明治の人たち
はその“通俗道徳のわな”に嵌まってしまっていた、というわけだ。しかしこ
れが妄想であることは、その後の歴史が実証している。我々は努力しても必ず
しも報われないことをよく知っている。

 明治時代は、現代のように、生活保護の制度はない。さらに国民皆保険制度
もない。病気や怪我で働けなくなったら、それでおしまい。ゲームオーバー。
また低賃金で貯蓄の余裕もない働いて働いて働いても最下層民たちは貧民窟か
ら抜け出せない。
 末は博士か大臣か、という言葉はある一定の階層以上の人たちだけに云える
ことであり、大多数の人々は義務教育である尋常小学校が終了すれば、社会に
出て働かざるを得ない。それ以上の学校へ行こうと思えば、膨大な学費がかか
る。下層階級にその余裕はない。
 明治という時代は実はとても生きづらい社会だったわけだ。

 明治時代は、近代化を急ぐ過程において、そうした下層階級から意図的に目
をそむけていた節がある。財源は国家を建設する設備(道路鉄道港湾学校軍隊
など)に廻さなければならなかった。貧民対策をしている余裕はない。病気に
なったり運悪く財産をなくしてしまったりしたときに、それに助ける施策、困
っている人に手をさしのべることは、世の中全体として許されることではなか
った。まさに、お国のために、であり、滅私奉公の社会であった。

 翻って現代はどうだろう。

 我々は、弱い人たちを助けているだろうか。立派な憲法を持ち、それに基づ
き生活保護制度が完備され、国民皆保険制度が充実している。しかし、「自己
責任」という言葉で弱き者たちや一定の道から外れてしまった人たちを区別し
ていないだろうか。

 よくわかっているように現代も明治時代に劣らず、不安定な社会となってい
る。それは誰もが認めている。みんな生きていくことにとても不安なのだ。
 人が生きていくことにそれほど不安を覚えずに生活するためにどうすればい
いのだろうか。100年前の明治時代に学び、我々は何をどう考えて、実行し
ていけばいいのだろうか。

 ますます、考え込んでしまう一冊だった。


多呂さ(あれだけの不祥事を抱えていて、どうして誰も責任を取らないのでし
ょうか。安倍内閣は。云いたい放題で無責任な副総理がその原因なのでしょう
か)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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■「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
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すいません、ほぼ日の経営。(2018/10/22 川島蓉子著 日経BP社)

 私がいる会社では、昨年末に採用ホームページのリニューアルが決定し、現
在、企画制作が進んでいます。リニューアルの最大の目的は、売り手市場が進
む新卒採用対策です。うちの会社はIT系企業なのですが、現時点でITに興味の
ない学生でも、業界や会社に興味を持つきっかけとなるような、そしてそこか
ら応募につながるようなページづくりを目標に、企画がスタートしました。

 検討の開始当初、企画の参考にするため、他社の採用ホームページを何社も
見ていたのですが、とある業務用機器のメーカーさんのページで、これはとい
うものを見つけました。

 その会社の採用ホームページでは、「部門紹介」というページが設けられて
いるんですね。開いてみますと、製品が工場内でどのような人の手を経て作ら
れているか、そして社内のどのような部署がそれに関与して、最終的にお客さ
んの元へと届くのか、すべて流れ図をつかって説明されていたのです。

 図の所々には、部署の名前や社員の写真が表示されており、そこをクリック
すると、社員のインタビューがでてきます。つくっているのが業務用機器とい
うこともあり、一般消費者にはまったく馴染みのない商品なのですが、これな
ら予備知識がない学生でも、その会社のイメージがつかめるなと感じたのです。

 そうとなれば、この方法を自社でも応用できないか、さっそく試作してみる
ことにしました。私が勤めているのは、いわゆるシステムインテグレーター。
顧客企業の業務を理解してシステムを提案し、実際につくり、運用する、とい
った一連の流れをすべて手掛けています。そこで、会社にある部署をすべて紙
に書きだし、それらの部署が仕事でどのように繋がっているかを、実線で結ん
でいったのですが・・・これがなかなか難しい。

 たとえば「システムをつくる」と言っても、その中には開発する部署の他に、
インフラを構築する部署や、セキュリティをチェックする部署、品質を担保す
る部署など、様々な組織が絡みあっています。また1つの部署=1つの役割、
ではないため、結ぶ線の数も、その分増えていくのです。なんとか完成させた
図を見てみると、部署間の関係性を正確に表現しようとしたあまり、パッと見
て複雑で、この上なくわかりにくいシロモノに。。。

 もっと簡略化した図にできないかと思い、誰かにヒントをもらおうと、現場
の部署の方にも相談してみたところ、意外にも「いいじゃん、これ」という反
応が。ただ、新たな課題も提示されてしまいました。本来の組織図は、すべて
の部署が同列になっているんだから、この図もそのへん気を遣ってよ、とのこ
と。つまり、システム開発の会社を図にすると、どうしても開発をやる部門が
真ん中に配置されてしまい、間接部署は脇に追いやられてしまうんですね。開
発が偉いわけじゃないんだから、それをどうにかしろと。

 いきなり妙案が浮かぶわけでもなく、あれこれと考えていた時、仕事帰りに
立ち寄った書店で、なんとなく手にとったのが本書でした。最初はまったく買
う気はなかったのですが、目次の中に「人体模型のような組織図」という項目
があり釘付けに。その項を立ち読んだ後、すぐレジに持っていったのでした。

 この本は、かの有名なコピーライターでもある糸井重里氏が設立し、ジャス
ダック上場も果たしている「株式会社ほぼ日」についての解説本です。著者の
川島氏と糸井氏の対談形式で、話は進んでいきます。

 さて、人体模型のような組織図とは何ぞや?と申しますと、ほぼ日で社内向
けに作っているという、ヒトの内臓を模した組織図のことなのです。人間の体
内には様々な臓器があるけれど、すべてがつながって初めて人体になっている
から、腎臓より心臓のほうが偉いということはない。それは会社でも同じで、
どの部署がえらい、さらにどの役職がえらいということもないから、人体を模
した組織図を作っている・・・と。公表されていませんが、実際の組織図には
社員の名前も明記されているらしいのです。

 よく「フラットな組織づくり」を標榜する会社は、特にベンチャーに多いで
すが、経営層も含め全社員がフラットな状態を目指そうとする組織は、なかな
かないのではと思います。

 この件も含め本書の読後に抱いた感想は、ほぼ日という会社(というか糸井
重里という経営者)は、自らがどうありたいかというポリシーを明確に持って
いるんだなということ。そして、それを社内外の人たちに、いかにわかりやす
く伝えるか、表現するかを追求しているんだなということでした。

 本書はほぼ日における、事業、人、組織、上場、そして社長という全5章で
構成されています。対談形式なので、肩の力を抜いて読むことはできるのです
が、すべての項において企業の、または社長としてのポリシーがはっきりとし
ているんですね。とてもじゃないけど、糸井氏がまともな就職をしたことがな
いという話が信じられないくらいに。
 
 また、会社運営にコピーライターとしての技量を発揮されているのも面白い
と感じた点です。中でも、「やさしく、つよく、おもしろく」というほぼ日の
行動指針がどのような経緯で生まれ、今に至っているかが書かれていた件。社
長が理念や指針を作っても、それが浸透しなければ意味がないわけですが、何
度も言葉を紡いで出来上がったという話はリアリティがありました。社員が本
当に、この言葉を大事にしながら仕事してるんだろうなと。

 正直なところ、第4章で語られる、ほぼ日が株式を上場した理由のところだ
けは、読み手により賛否両論ありそうだなとは思いましたが、会社にとっての
ステークホルダーに対してのスタンスが明確で、世の中においてどのような存
在でありたいかまでをわかりやすく語る糸井氏は、「すいません」と謝る必要
がないくらい、立派な経営者であると思ったのでした。

 さて、自分の会社の組織を、知らない人にどう表現していくか。ほぼ日の真
似をして、人体模型のような図を書くこともできるんでしょうけど、結局、そ
れをもって何を伝えたいのかがわからないと、意味がないですね。自社の存在
意義や価値とは何か。根本的なところが明確に表現できれば、組織の表現方法
のヒントも出てきそうな気がしています。

----------------------------------------------------------------------
■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ― 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510

・『支え合い・学び合いで育つ「わたし」』(エディット・パルク)
  http://web.kyoto-inet.or.jp/people/cogito/%8Fo%94%C5%88%C4%93%E0/%8Ex%82%A6%8D%87%82%A2%81E%8Aw%82%D1%8D%87%82%A2.html

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
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 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
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6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 配信遅くなりました。ある程度まで発行準備が出来たところで外出したら、
その間にパソコンの更新がかかり、それまでの作業がフイになってしまいまし
た。それで、しばし、脱力してました…。

 まあ、保存してなかったのが悪いんだけどさ。

 二度目の作業なので、きっとクオリティアップでお送りしております。……
多分。(あ)

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[書評]のメルマガ vol.670

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★「トピックス」
→ トピックス募集中です

★「音楽本専門書評 BOOK’N’ROLL」/おかじまたか佳
→ #102『カセットテープ少年時代』

★「目につく本を読んでみる」/朝日山
→ 『鮨職人 VS 堀江貴文』堀江貴文 ぴあ

★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→ 『愛し続ける私』(十朱幸代著・集英社刊)

★【募集中】献本読者書評のコーナー
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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#102『カセットテープ少年時代』

 テレビで見る有名人と、街中で偶然出くわしたりすると、やっぱりちょっと
驚きますよね。
 でも、知人とか友人が、たまたま見たテレビ番組に出ているのを見た時の方
が、何倍もびっくりしません?

 いや、実は昨年そういう経験をしたんですよ。
 何気なく見ていたBS12チャンネル。日曜の夜でした。
『超ムーの世界』という、超常現象やらUFOやらを扱うオカルト番組を見て
いて、終わってからもそのままチャンネルを変えずにいたら、『ザ・カセット
テープ・ミュージック』という音楽番組が始まったんです。

 と言ってもミュージシャンは出て来なくて、スタジオにおじさん二人が座っ
てくっちゃべってる。アシスタントに元アイドリングの女子が一人ついてまし
た。失礼ながらいかにもBSな感じのチープなつくりの絵面。
 でもまあ音楽番組らしいので、見るともなしに流していました。

 すると、どうもおじさんたちの声に聞き覚えがあるんですね。
 ちょっと高い声の方は、あ、これ、マキタスポーツかな、と思って、画面を
見たら、そう、確かにマキタスポーツでした。
 そしたら、もう一人の方は?

 よくよく見ると、あれ、この眼鏡の風貌、低めの関西弁……ってこれ、会社
の後輩じゃん! と気がついたわけです。
 厳密に言うと去年の三月で早期退職したので、「かつての後輩」なんですけ
ど。

 と言っても、それほど密に仕事をしていたわけではなく、何かの折にちょっ
と一緒になったぐらいだった気がする。
 プライヴェートでは、会社の先輩が組んでいるバンドのライブで顔を合わせ
たことがあったっけ。ぼくが前座で出て、彼もゲストとしてそのバンドと一緒
に2曲ほど演奏していました。テレキャスを弾いてたな、確か。

 だから彼が、実は音楽評論家としても著書を何冊も上梓しているとは露知ら
ず、ましてテレビで活躍しているとはねぇ、のスージー鈴木であったのです。
あ、そう言えば彼、会社でもスージーって呼ばれてました。

 内容はいたってシンプルで、回ごとにテーマがあり、それに即してスージー
とマキタスポーツがそれぞれ選曲。カセットテープに録音して持ち寄ったもの
を聴きながら、その曲を選んだ理由をあれこれしゃべる、というだけ。ちなみ
に元アイドリングの女子は、ラジカセのボタンを押す係で、後はおっさん二人
に音楽的無知を突っ込まれる無邪気なボケ役です。
 もともと深夜枠で放送されていたものが、日曜9時台にのし上がったらしい。

 その深夜時代の内容が、なんと書籍化までされていると知ったのは、ちょう
ど番組を偶然見て暫く経った頃。紀伊国屋書店笹塚支店で、ひっそりと棚に眠
っているのを発見しました。
 それが本書、マキタスポーツ×スージー鈴木『カセットテープ少年時代』な
んです。

 早速、購入。

 番組のタイトルは先述の通り『ザ・カセットテープ・ミュージック』なんで
すが、本の方はなぜか『カセットテープ少年時代』になっており、サブタイト
ルもついてまして、こちらは『80年代歌謡曲解放区』です。

 といっても取り上げる音楽はかなりアバウトで、必ずしも歌謡曲に限らず、
当時ニューミュージックと呼ばれていたフォーク、ロック系までを含めた日本
のポピュラー・ミュージック全般。時代も80年代が中心ではあるものの、60年
代から90年代くらいまでOKにしている模様。

 マキタスポーツには既に『すべてのJ−POPはパクリである』という挑戦
的なタイトルの著書があって、音楽的に細かい楽曲分析をする人であることは
知っていました。
 その曲のコード進行はどうなっているか、それはなぜか、あるいは何を表現
したかったからなのか、歌詞との関係は、など、かなり専門的に突っ込んで調
べていくのが楽曲分析ですが、ここにスージー鈴木がさらに深い考察を加えて
いくのが、最大の特徴でしょうね。

 それに、マキタスポーツはもっぱらメロディやコード進行に着目するのに対
し、スージーはより歌詞へのこだわりを見せる。
 この二人のコンビによって、分析が立体的になり、より面白くなっている所
以です。

 ジャズとかクラシックでは当たり前に行われている楽曲分析。それがニュー
ミュージックはまだしも、歌謡曲に対して行われることはあまりなかったんじ
ゃないかな。
 ややもすると、音楽的には軽視されがちなジャンルですし。
 って言うかぼくも若い頃は洋楽志向で、軽視してました……ってことは前回、
山口百恵のところでも書きましたね。

 楽曲分析である以上、音楽用語は頻出します。
 番組内でもマキタスポーツが時々「メジャーセブンスとかディミニッシュと
か平気で出てくる音楽番組、ないよ」と言っていますが、確かにその辺容赦な
い。

 しかし怯む必要はありません。
 この二人が独特な言語感覚で、わかりやすく翻訳してくれるからです。これ
が従来のくそまじめな楽曲分析になかった画期的な面白さですね。

 また、よく泣くんです。
 初めてその曲を聴いた時の感動が蘇ったりして。
 年を取ると、脳の中の感情を抑制する機能が衰えるので、涙もろくなったり
笑い上戸になったり怒りっぽくなったりするそうですが、まさにおっさんなら
ではの味。
 なので、気楽に楽しめて、ちょこっと音楽理論もわかった気になれるという、
実にお得な一冊なんですよ、奥さん(ここ、マキタスポーツ調)。

 ところで、彼ら及び番組スタッフには、音楽的評価という点でこれまでスポ
ットライトが当たってこなかったアーティストに光を、という気持ちが強いよ
うで。

 例えば日本語ロックの創始者ははっぴいえんど、といのがほぼ定説で、日本
のロック史では彼らばかりに光が当たっている。
 しかし、そういう点ではサザン・オールスターズの貢献ももっと語られるべ
きではないか、という問題意識(?)のもと、本書ものっけからサザンに一章、
つまり番組で言えば一回分を割いています。
 ついで、その衝撃的な歌唱力についてあまり触れられない松田聖子が一章。
音楽的な深さについてあまり語られないチェッカーズにも一章。てな具合。

 既存の音楽史を先入観念としない、その自由さたるや良し。

 この番組に遭遇してから、ほぼ毎週見ております。
 新春一発目は「あけましておメジャーセブンス」という素晴らしくくだらな
いテーマで、メジャーセブンスというモダンでおしゃれなコードがいかに日本
のポピュラー音楽に取り入れられ定着していったかを歴史的に振り返るという、
新年と何ら関係ないんですが、非常に濃い内容でした。

 本書ともども番組の方も強くご推薦しまして、新年のご挨拶に代えさせてい
ただきます。

 本年もよろしくお願い申し上げます。


マキタスポーツ×スージー鈴木
『カセットテープ少年時代』
2018年6月1日 第1刷発行
KADOKAWA

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
「平成最後」という言葉が乱舞した年末でしたが、別に「平静」な気分のわた
くし。ただ、今年還暦なので、「新元号元年=60歳」ですから、少なくとも向
こう十年間は自分の年齢の下一桁に1を足せばよいので、いままでのように
「あれ、今年って平成何年だっけ?」と混乱することはなさそうです。ただし、
自分の年齢を忘れなければ、ですが(笑)。

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『鮨職人 VS 堀江貴文』堀江貴文 ぴあ

 その昔、ホリエモンが、寿司職人が何年も修業するのはバカだとだと言って
話題になった。寿司職人をバカにしていると捉えた人も多かったようで、この
意見の賛成派、反対派のやり取りもそれなりに興味深かった。
https://www.j-cast.com/2015/11/02249615.html?p=all

 それから三年、今ごろになってこんな本が出た。

 ホリエモンが、全国の若手の寿司職人にインタビューしていく内容で「すし
屋に修業は必要か?」と来るから、いかにも面白そうではないか。帯について
いるキッチコピーの「この本は本当に面白い!」は余計だけどもw

 一読して思ったのは、件のホリエモン発言は元々寿司職人をバカにした発言
ではなさそうだということ。上記J-castの記事から引用すると、もともと

「今時、イケてる寿司屋はそんな悠長な修行しねーよ。センスの方が大事」
「そんな事覚えんのに何年もかかる奴が馬鹿って事だよボケ」

 という発言から始まったようだ。しかし、そうした発言が出てくる背景には、
若手のセンスのよい寿司職人を何人も知っていて、彼らを見ていての発言であ
ったように思えた。というのも、ホリエモン、ここに出てくる寿司職人さんの
店に何度も通ったり、一緒に海外に行ったりといった付き合いをしているよう
なのだ。いつ初めて店に行ったかは書いてはないのだけども、おそらく3年以
上の付き合いはあるのだろう。

 要するに、若手の寿司職人の姿を見て、寿司職人の世界も変って来つつある
のだということを言いたかった。それがホリエモンだとああいう言いかたにな
ったということだ。

 そんなわけで、都合8人の新進気鋭の寿司職人にホリエモンがインタビュー
している。だいたい15,000円から30,000からスタートする高級店である。東京
の店が多いが、福岡や札幌の店もある。職人さんたちの年齢は30〜40代で、昔
の、入っても何年も寿司を握らせてもらえない、しごきを知る最後の世代であ
るとのこと。今では、そういうことを続けていると誰も入ってこない・・・要
は、とうの昔に寿司職人の世界は変っていた・・・なるほどね。

 その上、彼らはインスタグラムなど、ネットも使いこなしている。宣伝ツー
ルとして使うのはもちろんだが、仕入れのツールとしても使う。LINEで業者か
ら写真を送ってもらい、これはという魚をLINEで注文したりする。実物見ない
で大丈夫かと思うが、魚の目利きに自信があるからこそできることなのだろう。
もちろん他の職人の仕事を見ることもできるから勉強にもなる。

 そして、自分の店や寿司に対するこだわりも人一倍あるのである。たとえば
普通飲食店をやろうとすると人通りの多いにぎやかなところでやろうとするの
が定石だと思うが、あえて人通りがほとんどないところを選んで店を開いたり
する。店を出た時「現実に引き戻されない静かな場所」でないと、食べた後の
余韻が良くないという判断だろう。

 またカウンターのL字だと客に自分たちの足が見えてしまうのは良くないだ
ろうとI型のカウンターの店にするとか、従業員の修業用に個室カウンター
(個室で職人がついて寿司を握る)を作るとか、人によっていろいろなこだわ
りがある。

 もちろん苦労話もあって、客が来ないのに10年握り続けていた人には驚いた。
他にも最初から客の機嫌が悪いことを察知して今日入っている魚の最高の部位
出すとか全力を傾けてもてなしたのに、食べログで酷評されてムダに終わって
凹んだとか・・・あ〜あるよな、こんなこと。

 そんなコネタも書いてあるけども、読んで一番思ったのは、修業よりも「セ
ンスの方が大事」だということはこういうことかと・・・。もちろん努力を否
定するわけではないけども、寿司職人としての適性のある人がやってこそ成功
するんだろうなと。それがこの本のメインの主張なのだろう。

 魚を見る目が典型的なのだけど、良い寿司職人はセンスがいい。魚を見ただ
けで、これが良い魚かどうか分かる。その、良いか、悪いかの基準がべらぼう
に高い。だから安い魚を使った寿司でも、高い。だって安い魚でも、良いもの
は高いのだから。

 海外の寿司屋で働いていた人の話も興味深かった。かつてアメリカの初期の
寿司ブームの際、ネタはアメリカで水揚げされていたものだった。日本と違っ
て昔から魚を捕っていた国じゃないので、日本では乱獲されてほとんどいなく
なっているようなよい魚がアメリカでは容易な手に入ると報道されていたのを
覚えている。

 しかしここに出てくる方の話を聞くと、日本から持ってくるネタの方がいい
らしい。とはいえアメリカだと日本から空輸している間に鮮度が落ちるから、
やはりおいしい寿司を食えるのは日本だという。

 そんなわけで、本当に美味い寿司を食いたい外国人は、どうしても日本に来
て食べざるを得ないのだそうだ。だから寿司目当てに日本に来る人もいる。も
てなす方もがんばってる・・・そんな感じで、ホリエモンは日本の寿司業界の
未来を楽観的に見ている。

 最後に思ったこと。ネットの炎上案件を見て尻馬に乗ることがいかに愚かな
ことか・・・この本を読むと、それがよくわかる。

(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)


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■「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
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十朱幸代という生き方がカッコイイ!
『愛し続ける私』
(十朱幸代著・集英社刊)

 昨年、西城秀樹さんが亡くなって、メディアで彼の人生を振り返ることが多
く、そのときに決まって耳にしたのが女優、十朱幸代さんの名前でした。

 西城秀樹さんの未亡人が手記を出版した直後に十朱幸代さんも自らの半生を
綴った本を出版。一部では、西城秀樹未亡人本にかぶせてきたと言われました
が、まあ出版社的にそれもあるかと思います。

 ただ、十朱幸代さんを西城秀樹と熱愛した女優とだけくくってしまうのは、
もったいなく、彼女は女優としても女性としても豊富な半生を過ごしてきたと
思います。なので、隠れ十朱ファンのおばちゃま、思わず、1700円+税の高い
本をポチってしまいましたとさ。

 十朱幸代さんの女優としての功績は置いておいて(置いておくんかい!)、
恋愛遍歴で忘れてはいけないのがは西城秀樹ではなく、歌手、小坂一也です。
小坂一也、WHO?と言う人がほとんどかも。昭和は遠くなりにけり。(もう
じき平成も遠くなりにけりだけど)。ロカビリー全盛時代、ステージで紙テー
プだらけになりながら歌う彼(昔は舞台で歌う歌手に紙テープを投げてた。目
にあたって負傷した歌手がいたことから廃れていった)をテレビで見た記憶が
あるっておばちゃまもどんだけ、遠くなりにけり?(なんなら、十朱幸代デビ
ュードラマ「バス通り裏」もリアタイで見ております)。

 今でいうアイドルの彼と隠れもせずに堂々とつきあっていたのが十朱幸代さ
んで、これは約50年前はすごく新しいことでした。

 覚えているのは、「私は彼の家に行っても掃除や洗濯はしないの。それは奥
さんの仕事だから。私は彼の恋人なので家事はしないの」と言っていたこと。
当時は女性は家事をする女中みたいな位置づけだったから、これは新鮮で新鮮
で、この男女の対等な恋愛という感覚は今でもおばちゃまの恋愛観の基本にな
っておりますよ。

 残念なことに、小坂一也さんとの恋愛の思い出の中に、この「家事はしない」
は書かれてなかったのですが、17歳から始まって32歳で相手の心変わりで終わ
った大恋愛は読みごたえありました。彼が出て行った後にやはり苦しくて「1
日だけでいいから戻ってきて」と電話して拒否されるなんてリアルな話も書か
れていて、正直すぎると思う一方で、この恥も外聞もなく恋人にあたっていく
姿は感動的と思いました。

 で、32歳で小坂と別れてからは濃い恋愛をたくさんするんですね。そのあた
りの男性名はイニシャルで紹介されていますが、

「恋愛って魂と魂がぶつかりあうような感じですよね。そのときの気持は本人
にしかわからない。」
「私はいつも結婚を申し込まれるたびに女優という仕事のほうを選んでしまう。
たいていはそこでお別れがきてしまいます」

 カッコイイ!

 そんな後、40代で出会ったのが12歳年下の西城秀樹ですね。
 私が覚えているのは、彼女が公演中、劇場に併設されたホテルに彼が泊まっ
て、翌朝、突撃インタビューを受けたけど、堂々と、
「わかっていることは今、僕は十朱幸代さんに夢中だということです」
って堂々と宣言していたことかなあ。堂々と宣言させる女性なんですね、十朱
幸代さんて。

 そして、もう婚約会見寸前というところまで行って破局するわけですよ。
「迷いを振り切ってでも結婚するという覚悟が私にないと知って彼は去ってい
ったのです」と書いてありますが、その覚悟は彼のほうにもなかったのかもし
れません。その後、秀樹は十朱幸代との結婚に反対していた実姉がおぜん立て
した女性と結婚して子どもができるわけですね。
 子どもが生まれたとき、「こんな幸せが自分に待っているとは思わなかった」
というコメントを覚えていますが、数々のヒットに恵まれ、栄光に輝く歌手で
さえ、こう思うわけですから、結婚とか出産って男にとって重いのだなあと感
慨深いです。

 恋愛したのもよかったし、別れたのもお互いにとってよかったとおばちゃま
は思いますよ(あんた、だれ?)。

 現在76歳。この本の出版プロモーションを兼ねているのか、最近、バラエテ
ィ番組への出演が増えている十朱さん。ある番組を見てたら、30代の国民的ア
イドルの1人ともほどよく絡み、アイドルの行動に素直に驚き褒め、腕を組ん
で見せてもいやらしくなく、可愛いことこの上なし! で、アイドルの方もま
んざらじゃない感があってすごかった! ちょっとドキドキしましたね。
「私は独り身ですし、親兄弟がみんな逝ってしまいましたので、誰にも気兼ね
がありません。だから思い切り自由です。そして孤独です。孤独と自由は背中
合わせ。セットになっているんです。その現実をどう受け止めるかで、今の自
分は決まるのではないかしら」

 最後に。こんな声に触れると、よく言われるのが「こんな76歳になりたい」、
ってフレーズですが、バカ言うなと言いたい。なれるわけがないだろうと言い
たい! 一般人とは顔も形も姿勢も生き方もちがうんですよ。一般人はそのへ
んで、適当な男となりゆき&妥協でくっついたのを愛だとすり替え、適当な仕
事をして生きていけばいいの! おばちゃまはこんな76歳にはなれないとわか
っているので、そこは潔く、身の丈に合った老後を送ることにします(って何
の宣言?)。

 今年もよろしくお願いいたします。


大友舞子(おおとも・まいこ)
昭和20年代生まれのフリー編集&ライター。関東生まれで関西在住。

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ─ 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510


 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

----------------------------------------------------------------------

 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

 〒142-0041 東京都品川区戸越5-4-3 アズ品川ビル4階
       ビズナレッジ株式会社内 [書評]のメルマガ 献本 係

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
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■あとがき
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 今日はセンター試験2日目だそうで、受験生の皆様、頑張ってくださいね。
(ってこれ読んでちゃダメだけど。)

 私は一浪しているので、試験は2回受けたはずなんですが、ほとんど記憶に
残っていません。大学入試の記憶はちらほらと残っているんですけどね。

 不思議です。(あ)

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