[書評]のメルマガ

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[書評]のメルマガ vol.639

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■■ [書評]のメルマガ                2017.10.10.発行
■■                              vol.639
■■ mailmagazine of book reviews    [クマは結局どうするのかな 号]
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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→田亀と参助、“男”漫画の復権

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→WEB上のクラブ やまねこ翻訳クラブ20周年

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→戦争から生還した人々の生きてきた道・・・米国人が聞いてみた

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→20年早かったインターネットサービス?の誕生

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 コアマガジンWeb事業部副編集長 稲野辺達也様より、下記の書籍を献本い
ただきました。

・『元アイドルのAVギャル瀬名あゆむ、アイドルプロデューサーになる』
 http://www.coremagazine.co.jp/book/coreshinsho_024.html

 ちょっとびっくりしましたが、ありがとうございます!

 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<94>田亀と参助、“男”漫画の復権

 「Bromance(ブロマンス)」という言葉を、最近知った。

 アメリカで生まれた造語で、「brother」と「romance」を組み合わせたその
言葉は、友情というよりもなお濃い信頼関係で結ばれてはいるが、その関係性
は恋愛関係ではなく、したがって肉体関係もない男同士の友人、と、まあ、平
たく言うとそんな意味らしい。

 ただ今は、かつてのいわゆる「バディ・ムービー」のいくつかが、「ブロマ
ンス・ムービー」として、再定義がなされているそうだ。

 で、我がニッポン漫画の世界で、この「ブロマンス」を、ただ今もっとも熱
く体現していると評判なのが、山田参助『あれよ星屑』だ、とネットで検索を
繰り返すうち、知った。

 作家も作品も全然知らなかったので、「どんなンかなァ?」と、電子書籍の
「試し読み」で1巻の冒頭部数十ページを読んでみた。衝撃を受けた。これま
でこの作品と作家を知らなかった不明を恥じた。

 翌日、書店へ走って、エンターブレインから出ている、その1巻を即購入。

 主人公・黒田門松は、中国戦線から復員してきた、髭もじゃでクマのような
大男。
 その黒田が復員後に立ち寄った東京の闇市で、戦時中に上官だった川島と再
会。黒田は、ふとした行きがかりから、川島の闇市での商売を手伝うこととな
り、直情型で力自慢、バイタリティ溢れる黒田と、なにやら厭世的でインテリ
な川島とのコンビは、闇市やパンパン、それらを取り仕切るヤクザ組織と関わ
りながら、戦後の混乱期を逞しく生き抜いていく……という物語だと思うのだ
が、まだ2巻までしか読んでないので、物語がこの先どういう風に流れていく
のかは、わからない。

 単行本は、ただいま6巻まで出てるそうなのだが、全巻一気に読んでしまう
よりは、1巻ずつ、じっくりあじわいつつ読もうと思い、月に2巻ずつ買うこ
とに決めたのだった。

 映画『兵隊やくざ』シリーズでの、勝新と田村高廣を彷彿する(多分、この
コンビを念頭にキャラ造形したんじゃないかな?)、黒田・川島、二人の人物像
が、まず「いい!」のだ。

 このコンビを取り囲む人々の造形もまた、そのバックボーンも含めてすごく
丁寧に緻密に作りこまれている。
 さらに、人物だけでなく、彼らがその棲家とする戦後闇市の世界もまた、ま
るで見てきたようにリアルに再現されている。

 買ってきた1巻を読み進むうち、ふと、以前この欄で触れた黒岩重吾の『さ
らば星座』と、バロン吉本『昭和柔侠伝』を思い出した。
 ともに、同じ時代とモチーフだというのもあるが、バロン吉本に関しては、
よく見ると全然似てないのだけど、やたらと「昭和」な絵柄と画面全体の空気
が、妙に似通っているのだ。

 絵柄でいうと、そのバロン吉本に「かわぐちかいじ」を混ぜ込み、「つげ義
春」の風味をつけた…と言ったらイメージしてもらえる…かな?
 変形コマと裁ち切りをほとんど使わない、とても古風でオーソドックスなコ
マ割りもまた、わしら世代の漫画読みには、とても優しい。

 その古風な構成と絵柄で、主人公である黒田・川島はじめ、男たちの造形も
見事で、黒田・川島が、勝新・田村高廣とすると、戦死した彼らの戦友の兄で、
なにかと面倒見のいいヤクザの「金子」は、さしずめ成田三樹夫か松方弘樹?

 さらに、女たちの造形がまた、ひとりひとりの個性が際立っていて、すこぶ
るにいい。
 同じく昭和の銀幕スターに喩えれば、そこには、健気な倍賞千恵子がいる。
勝ち気で男勝りな京マチ子もいれば、鉄火肌な江波杏子、生意気で小悪魔な加
賀まりこ、おきゃんな松島トモ子もいて、実に多彩なのだ。

 この漫画ではまた、黒田と川島の中国戦線での出会いや、その戦中のエピソ
ードが、折に触れ回想として語られるのだが、黒田やその兵隊仲間が、外出日
に「ピー屋(慰安所)」へ行くくだりでは、片言の日本語を操る朝鮮人と思し
き慰安婦が、大挙して押しかける兵たち相手に分刻みで客を取る様もまた、臆
面もなく描かれている。

 朝鮮人慰安婦たちが相手を務める「ピー屋」に行列する兵たちの姿は、水木
しげる『総員玉砕せよ!』でも描かれていたが、『あれよ星屑』では、中国人
捕虜の虐待もまた、作中で淡々と描かれる。
 事実を事実としてありのままに描く姿勢もまた、この漫画の骨格を逞しくし
ている、と思う。

 山田参助は、1972年生まれ。大阪芸大在学中にゲイ雑誌である「さぶ」への
投稿をきっかけとして、その後「さぶ」やその他ゲイ雑誌に漫画やイラストを
描くかたわら、自主製作映画に関わったり、風俗情報誌でのレポートや、吉本
興業のチラシのイラスト、はては児童向け絵本の作画まで手掛けていたそうだ。

 今回、この山田参助がかつてゲイ雑誌に連載した作品を集めた『十代の性典』
(太田出版)も、取り寄せて読んでみた。
 この本は、かつて同じ太田出版から『若さでムンムン』というタイトルで発
売された短編集を、『あれよ星屑』のヒットを受け、これに便乗する形で、新
作を加えて復刻したものらしい。

 帯に「これは、BLなのか…!?」との惹句が踊るその漫画は、確かに男子×男
子の恋愛を扱ってはいても、女子好みのいわゆる「BL」とはほど遠い、汗臭く、
毛むくじゃらの高校生たちが、やけにリアルなペニスからほとばしるザーメン
をまき散らしながら、想いを寄せる男子をめぐって、悶えに悶える漫画だ。

 これは、山上たつひこ、70年代の名作『喜劇新思想大系』(ご存知でしょう
か? その後の『がきデカ』の原点とも言えるギャグ作品です)のゲイ版だな、
と思ったのだった。

 毛むくじゃらで「ぽっちゃり」な大男、あるいは筋骨たくましいゲイ・キャ
ラクターを、斯界では「クマ系」と呼ぶ…というのも、いろいろ調べてるうち
に、初めて知った。

 山田参助と同じく、主にゲイ雑誌で、漫画やイラストを発表してきた田亀源
五郎は、ご本人もまた、その容貌はまさに「クマ系」で、自らゲイであること
を公言しているそうだ。

 その田亀が、初めてゲイ雑誌以外の一般誌に連載した『弟の夫』(「月刊ア
クション」連載、単行本は双葉社刊で全4巻)は、立派なエンターテインメン
トでありながら、現代の日本に、ゲイの立場から問題を提起する社会派漫画で
もある。

 主人公・弥一はバツイチで10歳の娘と二人暮らしの中年男性。10年前にカナ
ダに渡り、ほとんど音信不通だった双子の弟が亡くなり、その「夫」が彼を訪
ねてくる。弟はゲイで、かの地で男同士で結婚していたのだった。

 初めて会った「弟の夫」は、むくつけき「クマ系」白人で、ゲイである彼と、
どう接したらいいのか弥一は混乱し、悩むのだが、10歳の娘は、初対面から打
ち解け、父の弟の夫、すなわち自分にとっては「叔父さん」ということも、す
んなりと、素直に理解してしまう。

 そんな娘を見るにつけ、弥一のこころも次第に打ち解け、やがて、弟がカナ
ダへ「逃避」し、その後ほとんど音信不通になったのは、弟にゲイだと打ち明
けられた後の、自分の態度にあったのではないかと思い至るようになる。

 ゲイに対する差別や偏見は、自分では「ない」つもりではあったが、しかし、
心の奥底に確かにあったと今は思える「恐れ」を、弟は敏感に察したのではな
いか、と。

 「弟の夫」である「マイク」は、かつて弟から「日本には、ゲイに対する差
別はない」と聞かされていた、と弥一に語るのだが、それを聞いて弥一は、複
雑な感情を持つ。

 井田真木子のルポルタージュ『もうひとつの青春 同性愛者たち』(文春文
庫)に、その弥一が感じた「複雑な感情」が語られている。
 確かに、欧米と違って、同性愛が宗教的タブーだったり、犯罪だったりした
歴史は、日本にはない。

 欧米では、だから同性愛者たちは、そのタブーを打ち破り、自分たちの存在
権を主張するために立ち上がり、声をあげねばならなかったのだが、日本では
ずっと「陰」の存在として認識されていて、たとえば男同士のカップルを街で
目撃しても「見なかった」ことにされ、確かにそこに存在するのに「なかった」
ことにされる、それが一番つらい、と井田さんが取材した彼らは語っていた。

 『弟の夫』作中でも、弥一の娘「夏菜」が、「大好きな叔父さん」を仲良し
の同級生たちに紹介するために彼らを自宅に招くのだが、彼がゲイであると知
ったその母親が、婉曲に招待を断ってくる、というエピソードが描かれている。

 自分の阿呆をさらしてしまうが、実は、この漫画読むまで「ホモ」というの
が、全世界的に差別用語である、ということを知らなかった。
 でも、それは、おおかたの日本人の認識でもあると思う。

 現にどっかのテレビ局が、80年代のバラエティ番組で人気だった「ホモ田ホ
モ男」とかというキャラクターを復活させて、大顰蹙を買ってるそうだが、
「差別用語」に敏感なはずのテレビ局がこうなのだから、なにをかいわん、で
ある。

 その意味で、この『弟の夫』は、LGBTに対する入門書の趣もあり、全4巻読
んでみて、わしも少しは利口になったと思う。

 いずれにしても、田亀源五郎と山田参助、ちかごろずっと「女性勢力」に押
され気味だった漫画界に、久々に「男、おとこ」した作風、しかも妙に70年代
チックな画風の漫画が登場し、わし的にはとても嬉しい。

 この二人がともに、ゲイ雑誌から出現してきた、というのも決して偶然では
ないと思う。

 80年代、漫画専門誌ではないエロ雑誌から、新しい表現を切り開く才能が次
々と出現し、漫画に新風を吹き込んでくれた。
 あのときと同じような風が、今度はゲイ雑誌から吹き始めているのかもしれ
ない、と、妙にワクワクする今日この頃です。


太郎吉野(たろう・よしの)
 2011年に神戸から西宮へ引っ越して、ただ今のホームグラウンドは甲子園。
右投げ右打ち。掛布二軍監督はひとつ年上の同級生。

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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76 WEB上のクラブ やまねこ翻訳クラブ20周年

 WEB上で活動している、やまねこ翻訳クラブをご存知でしょうか。

 http://www.yamaneko.org/

 1997年に発足し、翻訳児童書を軸にWEB上で翻訳勉強会をしたり読書会をし
たり、メールマガジンを発行するなどの活動をしているクラブです。

 私は産休時に、このクラブの存在を知り入会。
 ニフティのフォーラム時代から参加しています。
 地方にいても子どもが小さくても、自分の好きな時間にアクセスして大好
きな本の話ができる場は夢のような場所でどっぷりはまりました(笑)。

 今年2017年、やまねこ翻訳クラブは20周年を迎えました。
 私自身、メールマガジン「月刊児童文学翻訳」の編集長も2年ほど務め、
 出版社、翻訳者の方々のインタビュー、企画をたてて記事を書くことなど、
 ただ翻訳児童書好きの(翻訳者志望ではない)私にも勉強になることばかり
でした。

 いまは時間がなかなかとれず、会員らしいことができていないのですが、 
 20周年記念に今回はやまねこ翻訳クラブ会員の訳書をご紹介します。

 一冊めは、
 翻訳者も出版社もやまねこ翻訳クラブ会員によるものです。
 絵本の帯には、やまねこ20周年のロゴと共に、会員による推薦文も掲載され
います。

 『サンドイッチをたべたの、だあれ?』
 ジュリア・サーコーン=ローチ 作 横山 和江 訳 エディション・エフ

 森にすむクマが、いいにおいに誘われて、人間が収穫した木イチゴが積まれ
ているトラックに乗ってしまいます。たらふく食べてぐっすり眠って起きた場
所は森ではなく、人間の住む街でした。

 クマにとっては初めてみるものばかりの街の中、歩き回って公園にたどりつ
き、ベンチにあったサンドイッチを発見。さてさて、サンドイッチをクマは食
べたのでしょうか!?

 描かれるタッチはおてんとさまの陽射しを感じるようなあたたかさがありま
す。

 クマは結局どうするのかなと思って読んでいくと、へえ!と思うラストに、
まさにタイトルどおりと納得です。このひねり具合は、にやりとしますよ。

 さあ、はたして食べたのは誰でしょう!?

 絵も文章もアメリカ、ニューヨーク在住のジュリア・サーコーン=ローチが
描いています。学生時代はアニメーションを学び、その後絵本作家としてデビ
ュー。本書は4作目にあたり、2016年絵本作家に贈られるエズラ・ジャック・
キーツ賞の次点に選ばれています。

 訳者の横山和江さんは山形在住。読み物も絵本の訳書も出されていますが、
目利きの横山さんが刊行されるものはどれも読ませます。やまねこ翻訳クラブ
会員歴も長く、翻訳のほか、読み聞かせの活動もされています。

 刊行したエディション・エフは京都にあるひとり出版社。「手と心の記憶に
残る本づくり」をされていて、HPの会社概要は一読の価値あり。
 http://editionf.jp/about/
 
 二冊めは、

 『発明家になった女の子マッティ』
 エミリー・アーノルド・マッカリー 作 宮坂 宏美 訳 光村教育図書

 ノンフィクション絵本です。
 19世紀末のアメリカで活躍した女性発明家、マーガレット・E・ナイトを描
いたものです。

 マッティ(マーガレットの愛称)は、子どもの頃からの発明好きでした。
 2人のお兄さんのために、おもちゃや凧、そりをつくり、
 お母さんのためには、足をあたためる道具をつくりました。

 家は貧しく、マッティは小学校の教育しか受けていませんが、発明に必要な
力量を備えていたので、働きながら最終的にはプロの発明家として、22の特許
を取得し、90を超える独創的な発明を行ったそうです。

 作者は、聡明な彼女を繊細な線画で表現し、彼女の発明したものの図面も描
いています。

 女性であることの偏見をはねのけ、発明家として自立していく姿は、子ども
たちに、未来を切り開いていく具体的な力を見せてくれます。

 訳者の宮坂さんは、やまねこ翻訳クラブ創立メンバーのひとりです。マッテ
ィのように、とことん調べ物をし、やらなければならない事を的確に迅速にこ
なし、見事、翻訳家になりました。

 三冊めは、

 『クリスマスを救った女の子』
 マット・ヘイグ 文 クリス・モルド 絵 杉本 詠美訳 西村書店

 昨年のクリスマスにご紹介した
 『クリスマスとよばれた男の子』シリーズ第2弾です。

 杉本さんの訳文はとてもふくよかです。言葉がやわらかく、読みやすく、杉
本さんが訳したものは物語の中にすっと入り込めます。なので、こういう魔法
の話はぴったりかもしれません。

 さて、物語です。
 サンタクロース(ファーザー・クリスマス)が誕生して、人間界の子どもた
ちにプレゼントを配ってから1年がたち、またクリスマスの季節がやってきま
した。

 一番最初にサンタを信じた少女アメリアは絶対に叶えてほしいクリスマスの
願い事をしてサンタクロースを待っていました。しかし、その年、サンタは誰
のところにも来なかったのです。
 サンタに大変なことが起きてしまったために……。

 クリス・モルドの挿絵は甘くなく、厳しい現実やつらい出来事も、いじわる
な人もリアルに描き、トロルやエルフまでもが絵空事ではない雰囲気を出して
います。

 マット・ヘイグのクリスマス物語は、決して型にはまったものではなく、願
うこと、望むこと、その気持ちが魔法を生む力になるというメッセージがまっ
すぐ伝わってきます。

 つらいことばかりが続くと、未来に対して前向きになるのがしんどくなりま
すが、アメリアやサンタクロースの逆境をはねのけていく姿から、願うことは
魔法の力につながると思えてくるのです。
 
「幸福。それに笑い。遊び。この三つは、人生をつくるのになくてはならない
ものだ」とサンタクロースはいいます。

 12月には少し早いですが、
 この三つを忘れずに、今年のクリスマスにはすてきな贈り物がみなさんに届
きますように!
 
(林さかな)
会津若松在住。
http://1day1book.strikingly.com/

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第94回 戦争から生還した人々の生きてきた道・・・米国人が聞いてみた

 戦後72年。戦争を経験した人々はどんどん減っている。直接の語り部が消滅
しかけている。それならば、今後は若い人がその代わりを務めなければならな
い。戦争体験者から直接聞くことは不可能でも、それを直接聞いた人から話を
聞くことは今後も可能だ。むろんその場合、聞いた人の考えや感情が入り込む。
しかしそれもよし、としなければならない。年月は容赦なく過ぎていき、すべ
ての出来事が歴史の遠い遠い彼方に去ってしまう。戦争とか災害とかそういう
ことは、忘れてしまってはいけないのだ。我々は常に戦争の惨状、災害の惨禍
を語り継ぎ、教訓にしていかなければいけない。

 そういう意味で、今回取り上げる書物はとても興味深いものである。なにし
ろ戦争体験者から聞いているのは、米国人なのだから。聞き役が勝利者の米国
人という処がとてもおもしろい。

『知らなかった、ぼくらの戦争』(アーサー・ビナード 編著)(小学館)
(2017年4月2日初版発行)

 本書は、ラジオの文化放送の番組「アーサー・ビナード『探してます』」の
うち、23名の戦争体験談を採録し、加筆・修正をして再構成したものであり、
聞き手はアーサー・ビナード氏。

 アーサー・ビナード氏は、1967年にミシガン州で生まれた。大学の時に日本
語と出会い、1990年23歳のときに単身、来日。以来27年間、日本に住み続け、
日本語で本も書いている詩人だ。

 本書には23名の“体験者”=“語り部”が登場する。全員、ビナード氏がイ
ンタビューをしている。
 軍国少女、真珠湾攻撃時の飛行士、日系米国人、北方領土在住者、兵器工場
勤労動員、BC級戦犯、戦艦武蔵の生き残り、硫黄島生き残り、海軍特別少年
兵、満州在住者、沖縄出身者、疎開せずに東京にいた噺家、広島生存者、長崎
生存者、空襲の語り部、GHQ在籍者・・・・・。

 登場するすべての人たちが、まさに輝かしい経歴を持っている。そしてこの
人たちを選んだビナード氏や関係者に敬意を表する。インタビューはおよそ2
年前の2015年に行われたものであるが、2017年9月現在、この中でもかなりの
方が鬼籍に入られた。

 ビナード氏の揺るぎない視点は、真珠湾攻撃が米国の策略で実行された、と
いうものだ。米国が連合国として第二次世界大戦に参戦するためには、米国市
民が犠牲となる何かしらの事件がなくてはならないと、米国政府は考えていた。
そしてそのために対日交渉を途中で打ち切り、日本が米国へ攻撃を仕掛けるよ
うに仕向け、実際にその試みは成功した、という視点。ビナード氏はかたくこ
の考えを信じている。そしてその意見を補完するように真珠湾攻撃に参加した
元戦闘機乗りにインタビューをして次の台詞を引き出した。曰く「空母は何隻
いたのか?」

 日本は米国太平洋艦隊の本拠地である真珠湾への奇襲攻撃を食わらしたが、
そこには戦艦が数隻しか停泊しておらず、航空母艦は一隻もなかった。もし本
当に不意打ちの奇襲攻撃だったなら、空母は必ず停泊していたはずだ、という。
米国政府は日本の攻撃を事前に察知していて、空母をすべて出港させていた。
偽装の奇襲において、さすがに空母を犠牲にするわけにはいかない、というこ
とだ。しかし、それは本当にそうなのか? 米国が参戦するために自国民を何
千人も犠牲にするのか。自国民をそんなに簡単に裏切ることができるのだろう
か。

 確かに、以後日本憎しの世論が形成され、米国民は一丸となって戦争への道
を歩み、圧倒的な物量で枢軸国に圧勝した。広島長崎も一般市民を標的にした
度重なる都市への空襲も卑怯な日本人に鉄槌を下す、という乱暴な論法で正当
化ししているし、米国に住み、米国市民権を持っている日系人を収容所に入れ
る蛮行、さらに占領した日本に対する態度など、もしかしたらすべてが米国政
府のシナリオどおりなのかもしれない。しかしそれではあまりにも悲しすぎる
し、第一に歴史を一面しか見ていないような気がするのである。

 本書はビナード氏が生存者にインタビューをして、そしてそれぞれのインタ
ビュー掲載後に彼の考えを述べているものであるが、この米国政府陰謀説をバ
ックボーンにして解釈しているのに、やっぱいすこし違和感を覚えるのだ。

 そうは云いつつも、さすがにビナード氏は詩人だけあって、ことばに対する
鋭さが違うのである。彼らの吐いた何気ないことばに反応し、それを手がかり
に想像力を働かせて戦争を表現しているのはさすがなのだ。一例を挙げる。

 BC級戦犯としてスガモプリズンに収容されていた元兵士にインタビューを
した時、ビナード氏は彼から「君は「狭間」ということばを知っているか?」
と聞かれた。そしてビナード氏は次のように応えた。

「国家がいっていることとやっていることがかみ合わない中で、自分が国を愛
してやったことが、犯罪として裁かれる。とんでもない話だと思います。責任
者の国家が責任回避に明け暮れて、飯田さん(元兵士)は個人として責任を背
負わされた。そしてそれを果たしつづけてきたんですね。」・・・・・この部
分で執筆子のわたしは泣いた。

 日本では「戦後」ということばは、1945年以降を指すことばであるが、米国
では「postwar」は必ずしも第二次世界大戦が終わってから後のことを指すわ
けではない。なぜかと云えば、その後も米国は世界中のあちこちで戦争をして
いるからだ。ビナード氏は日本に来てはじめて日本語の「戦後」に遭遇した。
米国は「戦後のない国」だから。そしてビナード氏は、この戦争体験の話がそ
の枠に収まらず、戦後をつくることにつながっていることに気づき、そして実
は彼自身の生き方にも多大な影響を与えていると、あとがきで正直に吐露して
いる。

 翻って、我が身に置き換える。戦争を知っている身内がどんどんいなくなっ
ているが、それでも若い時に祖母や伯父伯母、そして両親からさまざまな戦争
の話を聞いてきた。主に東京での戦争体験であるが、父の経験した3月10日の
東京大空襲の体験記は今思い出しても鳥肌が立つ。父が生き残ってくれたお蔭
でこの身がいまここに存在するわけで、社会の中に居場所を得て、こうして人
々に囲まれて生きているのである。そういうことに思い至ったとき、これが自
分の戦後なのか、と思わざるを得なかった。


多呂さ(総選挙ですよ。びっくり。なにが国難突破解散なんでしょうか)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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■人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える/show-z
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20年早かったインターネットサービス?の誕生

『社長失格  僕の会社がつぶれた理由』
板倉雄一郎著 日経BP社 1998年11月

「世界の広告市場は今年、ネット広告がテレビ広告を抜く見込み」というニュ
ースが、先月の日本経済新聞朝刊に掲載されていました。なんでも、電通など
大手広告代理店が、デジタル媒体へのシフトに手間取っている間に、サイバー
エージェントをはじめとするインターネットベンチャーが力をつけ始め、、、
といった内容でした。

長らく広告といえば、テレビがその主役にありました。この10年ほどで、紙媒
体の広告なんかは、だいぶネットに置き換わってきた印象があるのですが、年
間の市場規模が2兆円(!)あるというテレビ広告にも、遂にネットが肩を並
べる時代になるとは。。。

日本におけるインターネットは、1995年に発表されたウィンドウズ95、そして
その3年後のウィンドウズ98により、急速に広まっていきました。

その当時、大学生になりたてだった僕も、自宅にパソコンが欲しくてしょうが
なかったのですが、1台20万円程度するパソコンは、時給900円のアルバイト
学生にとって高嶺の花。そこで授業の空き時間があると、大学内に1つだけあ
ったパソコンルームへとせっせと通い、パソコンをいじる日々を過ごしていま
した。

そういえば当時のインターネットって、まだ接続するのにダイヤルアップ回線
を使っていた時代です。今じゃギガなんて単位が普通に使われていますが、そ
れどころかメガにすらなっていない、キロの時代。接続クリックをすると、ま
ずパソコンから電話番号のプッシュ音が鳴って、その後に、ガガガ・・・ピー
ーって接続音がして。それが鳴りやんでから、無事につながってくれるのを、
画面を見ながらじっと待ったものです。

そんなインターネット草創期、国の規制緩和をはじめとするベンチャー優遇政
策が次々と打ち出され、日本では多くのネットベンチャー企業が生まれました。
“第三次ベンチャーブーム”として、括られる時代です。

本書は、そんなベンチャーブームが沸き起こる中で誕生した、ちょっと異色な
企業の末路までを描いたノンフィクション。ベストセラーとなった本ですので、
ご記憶に残っている方も多くいらっしゃるのではと思います。

著者であり、この物語の主人公でもある板倉氏は、1991年に株式会社ハイパー
ネットを創業。はじめは電話を利用した通信ビジネスなどを手掛けていたもの
の、95年9月“ハイパーシステム”というまったく新しい事業の構想に至りま
す。

ハイパーシステムは、ネット広告を活用した無料のインターネットプロバイダ
ー事業でした。会員ユーザーがこのサービスを使ってインターネットに接続し
ている間は、メインのブラウザとは別のところに小窓が出て、自動的に広告を
配信するシステムです。企業から1件あたりいくらの広告料を取ることで、会
員ユーザーはプロバイダーを無料で利用できるーーーそんなビジネスモデルが
脚光を浴び、96年10月には“ニュービジネス大賞”を受賞しています。

しかし日本を飛び越え、一気に米国ナスダックでの上場まで目指していたハイ
パーネットは、銀行の無担保過剰融資、その後のBIS規制による貸し渋りな
ど、当時の世相の影響をモロに受けることで、翌97年末には37億の負債を出し
て破産、板倉氏自身も自己破産に至ります。

創業者社長の視点で、事業構想の経緯、資金のやりくり、その調達先である銀
行やVCとの生々しいやりとり、そして著者の元を離れていく社員の話などが、
小説と見まがうほどリアルに描写されているのが本書最大の特長です(しかも
企業名、個人名ともにすべて実名なのがすごい・・・)。今回、久しぶりに手
に取ってみたのですが、話の展開に引き込まれ、2日間ほどで一気に読み進め
てしまいました。

で、読み終えて思ったのは、、、インターネット広告がようやくテレビ広告を
抜くほどの規模感となった今の状況を、著者はどう受け止めているんだろうか、
ということです。

ハイパーシステムが稼働し始めた96年は、インターネット広告自体、まだ黎明
期。Yahoo! JAPANが始まったのが同年のことですし、グーグルが創業するのは、
それからさらに2年後のことです(日本への進出はさらにその先)。当時多く
の起業家が、インターネットは間違いなく新しいメディアになると確信し、熱
に浮かされるような形で様々な企業、そしてサービスが生み出されたものと思
います。しかしその中で、どのくらいのスピードでインターネットが普及し、
どのくらいの規模のビジネス市場が生まれるかを、冷静に予測した起業家は皆
無だったのではないかと。

世の中でネット広告という市場自体が、これから形成されていくという時期に、
さらにそこにプロバイダーを組み合わせ、他より一歩先を行く事業を展開しよ
うとしたことは、ビジネスとして、あまりに早すぎたと言わざるを得ません。
結果的に、ネットがテレビに追いつくまでには20年かかったという事実を、
当時の起業家としてどう感じるか、気になるところです。

ただ、インターネット広告市場が成熟した現時点においても、ハイパーネット
と類似したビジネスモデルって見あたらないんですよね。ということは、市場
規模の拡大スピードを正確に予測できたとしても、ハイパーシステムは成功し
なかったかも・・・?勿論、ビジネスにタラレバの話はナンセンスではあるも
のの、事業構想とは、本当に難しいものと感じます。


show-z
某IT企業で人事担当者として勤務。千葉県在住。

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

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 10月になりましたが、暑い日も涼しい日もあり、初秋の趣です。今年もあと
3カ月、早いものです。(あ)

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[書評]のメルマガ vol.638


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■コンテンツ
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★「トピックス」
→ トピックス募集中です

★「音楽本専門書評 BOOK’N’ROLL」/おかじまたか佳
→ 『ジャズィな手法』

★「目につく本を読んでみる」/朝日山
→ 『バッタを倒しにアフリカへ』前野 ウルド 浩太郎 光文社新書

★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→ 『浪費図鑑―悪友たちのないしょ話―』(劇団雌猫・著 小学館)

★【募集中】献本読者書評のコーナー
→ 献本お待ちしています!

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#87『ジャズィな手法』

 建築に、さほどの興味はない。

 本格ミステリによくある、館もの。そこでは、恐らくポーの『アッシャー家』
の影響だろう、ゴシック様式の広壮な大邸宅が決まって惨劇の舞台となるが、
そのゴシック様式なるものも、漠然としか知らない。

 それにしても、なぜ本格ミステリでは、あんなに館が頻出するのか。
 事件現場を広範囲に渡らせない方が、純然たる推理で犯人を絞り込むのに都
合がいいが、かと言ってあまりにも狭いと連続殺人が起きる余地がない。その
点、だだっ広い屋敷なら、限られた世界でありながら、適度な複雑さがあり、
周辺の森も含めて、殺人現場は選り取りみどりだからかもしれない。

 島田荘司の『斜め屋敷の犯罪』は、タイトル通りわざと斜めに傾けて建てら
れた屋敷が舞台で、しかもその屋敷自体がひとつの大トリックを形成する。
 綾辻行人などは、ある架空の建築家が遺したさまざまな屋敷がひとつずつ登
場し、それぞれで殺人事件が起きるというシリーズものまで書いている。

 まあ、それはさておき建築だ。

 建築と音楽にも特に関係はないようだが、しかし、とある建築家が自らの手
法を「ジャズィ」と呼んでいると知れば、好奇心はそそられる。

 その建築家は日本人。名を、石井和絋という。

 丸善が出している「日本の建築家」というシリーズがある。巻末の発刊の辞
によれば、「各建築家の作品の底を流れる思想と作品を支える手法を解明しよ
うとするもの」だそうだ。
 そして、石井和絋という建築家を取り上げた第2弾のサブタイトルが『ジャ
ズィな手法』なのである。

 数人の書き手が寄せた石井論と、本人とグラフィック・デザイナー奥村靫正
の対談、そして田中宏明による写真などから構成されている。

 音楽本書評として見逃せないのは、冒頭の石井論の書き手が、音楽評論家の
相倉久人である点だ。

 相倉はジャズ評論から出発したが、ディープ・パープルの来日公演に衝撃を
受け、ロック評論に転じた。ちょうどぼくが中学から高校の頃、読み漁ってい
た音楽雑誌に健筆を揮っていたから、その名前は懐かしい。

 では、なぜ建築家について、音楽評論家が書くことになったのか。

 相倉は、「ジャズ」という言葉が、音楽用語を離れて、社会的なキーワード、
時代の季語として使われたことが、過去に二度あるという。
 初めは今年の当欄でもよく取り上げている、1920年代。いわゆる「ジャズ・
エイジ」だ。もうひとつは、先進国に大きな嵐が吹いた1960年代である。
 どちらの時代も、それまでの価値観が崩壊し、新しい何かが起こって社会が
混乱した時代。その新しい何かを象徴する言葉として、「ジャズ」があった。
 そして、本書が上梓された1985年もまた、ポスト・モダンが流行り言葉とな
り、やはりそれまでの「重厚長大」な文化が、一転して「軽薄短小」をもては
やすようになる大きな価値観の転倒期であった。

 しかし、退廃の色濃い20年代の「ジャズ」でも、第三世界に代表される勃興
する力を象徴した「ジャズ」でも、この新たな混乱は捉えきれなかった。
 そこで、「ジャズィ」という言葉がキーワードとして提唱されるのだ。

 したがって相倉は「ジャズ」と「ジャズィ」を、厳密に区別する。

 相倉によれば、1985年の混乱は情報化社会がもたらした混乱であり、それは
煎じ詰めれば二分法の崩壊である。「白か黒か」「右か左か」そうした政治的、
思想的色を持った二分法が崩壊し、すべてのものが両義性どころか多義性すら
帯び始めた時代。
 これは一般には虚無的な状況と解釈されている。相倉も「現代人は(中略)
いささか破産気味で生きている」と書く。

 しかし、若い世代にはそうした混沌を駆け抜ける方法論が芽生えている。そ
れを相倉は「ジャズィ」と呼ぶのだ。
 それは「一見すると事象の多様化の流れにまかせ、軽さを身上としながら点
的な存在感をもって移動すること」だと定義されている。
 その方法論を具体化したものののひとつが、石井和絋の建築だと言うわけだ。

 一方石井和絋本人は、アメリカに行って「ジャズィ」という言葉が日常的に
多用されていて驚いた、と対談で語っている。

「ちょっと具合の悪そうなものとか、アンバランスなものとか、ちょっと目に
障るとか」
「硬直しつつある生活の危機感と「懐体してゆく時代」の中にあって、この時
代をどう超えてゆくかのキーになるようなイメージ」

 石井本人が語る「ジャズィ」は、そうした言葉である。

 相倉の言う「軽さ」についても、石井は「状況は決して軽くない」と断じる。

「重苦しい空気は常にあるんです。だから、その重苦しさを不断に軽さに換え
ていかなければ(後略)」

 そうした石井が、日本の伝統建築を学んでいて、「数奇屋」に出会った。

 安土桃山時代。格式張った意匠や豪華なばかりの装飾を嫌った茶人たちが、
「好きなように」建てた茶室。それが数奇屋だ。

 そこには自由な発想があり、硬直した価値観を揺るがす、奔放さがあった。
これこそ「ジャズィ」だと、石井は思ったと言う。

 石井和絋は自身アマチュアのサックス・プレイヤーであるらしい。
 実際本書を開くとすぐ、サックスを手にした石井の写真が目に飛び込んでく
る。

 こんな建築家が創った建物を、編集者の伊藤公文は、人を「苛立たせる」建
築だと書いている。そして彼が本書のために書いた文章のタイトルに、「不協
和音はなぜ美しいのか」と付けるのである。

 しかし、いくら言葉を費やしても、実際に石井和絋がどんな建築を建てたの
かは想像がつかないだろう。

 彼の代表作は直島にある。

 そう、今ではアートの島として有名になった、あの瀬戸内海の島だ。
 そこに建てられている、小学校、幼児学園、町民体育館・武道館、中学校、
保育所、そして町役場。このすべてが石井の作品である。

 本書を手に取り、モノクロの写真で想像をさらに逞しくするか。
 それとも、いっそ船に乗り、直島に出向くか。


日本の建築家編集部
『日本の建築家2 石井和絋 ジャズィな手法』
昭和六十年五月三十日発行
丸善

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
今月はまた札幌へ。月光グリーンのライブを見に行って来ました。去年の同じ
時期にも行ったのですが、札幌の郊外、新琴似という街で毎年行われ、今回で
3回目という新琴似音楽祭。そこに月光グリーンが出るので、飛行機で飛んだ
のです。新琴似はごく普通の住宅街で、特に賑わっているわけではありません。
その普通の公園で、ロック・バンドが出るフェスが住民の手作りで行われてい
る。そこにちゃんと街の人たちが楽しみにやってくる。そういう環境が素晴ら
しいと思います。学生のラップグループのパフォーマンスを、地元のおばあち
ゃんが指でリズムを取りながら楽しそうに聴いている姿が印象的でした。真の
音楽文化の豊かさを見た、と思います。東京ではなく、むしろ地方に、暮らし
に根ざした本当の音楽があるのかもしれません。

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『バッタを倒しにアフリカへ』前野 ウルド 浩太郎 光文社新書

 まず表紙をごらんいただきたい。怪しさ満点w
 http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334039899

 著者は、子供の頃ファーブルに憧れて昆虫学者になるべく大学院まで行った。
14年バッタ研究していたせいか、バッタに触れるとじんましんが出るアレルギ
ーになった。にもかかわらず子供の頃の夢は「バッタに食べられたい」で、今
もそうありたいと思っているらしい。とっても変な人である。

 そんな人がアフリカで大発生して大きな災厄をもたらすサバクトビバッタを
研究しに行った体験記。バッタに食べられたくてというのは冗談で実際は昆虫
学者として大学や研究所の職が欲しかったからだ。いわゆるアカデミックポス
トが空いていなくて、職にあぶれたオーバードクターがたくさんいるのは知ら
れているが、前野氏もその1人だったわけだ。

 アカデミックポストをゲットしたい著者の前野氏、バッタ関係の論文をいろ
いろ読んでいて、あることに気がついた。バッタ研究者の圧倒的多数は実験室
内で研究して論文を書いていて、実際のフィールドに出て研究する人はほとん
どいないというのだ。

 だったらフィールドに出て研究して論文書いたらアカデミックポストを得ら
れるのではないかと思って、モーリタニアに行く。モーリタニア国立サバクト
ビバッタ研究所に行って、自分で研究助手を雇ったりしながら研究を始めるの
だが、前野氏モーリタニアの公用語であるフランス語が全く分からない。

 にもかかわらずフランス語を全く勉強しようとしない。助手に雇ったティジ
ャニという人とは二人しか分からない即興言語で意志疎通をはかる。大丈夫か
い、この人?

 とはいえ、やはり現場に来てはじめて分かることも多い。それでサバクトビ
バッタ研究所所長のパパ氏に自分の思いを伝えると、バッタ問題を解決しよう
としない研究者が多いことに辟易していたババ氏は感動して、前野氏に「ウル
ド」というミドルネームを与えた。

 ウルド(Ould)はモーリタニアで最高の敬意を払われるミドルネーム。この
名前に恥じない研究をしなければならないと誓う前野氏の前に次々と襲いかか
るトラブルの山が、この本の大きな部分を占める。

 いきなり来たトラブルは、バッタがいない!前野氏が行った年は、たまたま
モーリタニアは大干ばつになっていて、大発生はおろかバッタがほとんどいな
い年だったのだ。そのため、バッタを探すのに苦労する羽目になった。バッタ
を見たぞと言う話を聞けば飛んでいくが、それでも採集の仕事は遅々として進
まない。

 それで地元の子供にお金を出してバッタを集めてもらったら、さらに大変な
ことになる・・・このあたりの抱腹絶倒のエピソードは読んで楽しんでいただ
こう。バッタがいないので、一時別の虫に研究対象を切り替えたり、いやはや、
大変である。

 そんなこんなとトラブルは続くが、欧米の研究者がめったに来ない現場にい
ると、色々なことが見えてくる。前野氏は次々とサバクトビバッタの生態につ
いて新発見を続けていくのだ。

 そしてやって来る、バッタの大発生。まさにこの時を待っていた前野氏、小
躍りして喜び、バッタの大群を観察しつつ移動していく。行く手には世界一長
い列車で有名なモーリタニア唯一の鉄道の線路が走っている。それを越えて行
こうとしたら止められた。レールの向こうは地雷原。昔戦争があって今も地雷
が埋まっていると言う・・・まぁフィールドに出ると言うのはこうしたトラブ
ルと無縁でいることは出来ないのだろうけども、地雷に遭遇する経験はそうそ
うない。

 そんな前野氏の活動を暖かく見ていたパパ所長が本の最後に特大プレゼント。

 バッタの大群が発生し、このままでは首都に到達する。首都にバッタの大群
が入ると国家の威信にかかわる。そんな大群を前野氏のために生かしておいて
くれた。バッタの大群が発生したら、普通は研究所のスタッフが総出で駆除に
あたる。サバクトビバッタ研究所は駆除機関でもあるのだ。

 国家の威信がかかっているから、失敗すれば所長のクビが飛ぶかもしれない。
そんなリスクを冒して、バッタの大群が首都に迫る最後の最後までバッタの大
群を生かしておいて前野氏に観察させたのである。このクライマックス、人に
よっては涙が出るのではないかと思う面白さ。

 しかし、物語はここで終わらない。前野氏には昆虫学者としてアカデミック
ポストをゲットするという最終目的があるのだ。もちろんアカデミックポスト
はめでたくゲットしたわけだが、その過程も読みごたえがある。読後、人との
出会いがどれだけ大切か身に染みる人も多いのではないだろうか。

 それにしても、21世紀になっても、まだこんなフロンティアがあったんだ・
・・サバクトビバッタがアフリカで大きな災厄をもたらしていることは世界的
に知られているし、それだけに多くの人が研究していると思っていた。しかし
ほとんどの研究者が現場に行かず実験室内でバッタの駆除や被害軽減に関係な
い研究をしているとは知らなかった。

 だからこそ前野氏がパイオニアになれたわけだが、他にもそんなフロンティ
アはあちこちに残っているかも知れない。

(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)

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■「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
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『浪費図鑑―悪友たちのないしょ話―』(劇団雌猫・著 小学館)

ヲタ活動にはまって落ちて、溶けるお金の話

 まあまあ長い間生きてきておばちゃまが思うこと、それは、

 「愛にお金をかけるのが最高の快感」

 ということ。食べもの、家賃やローン、生活必需品への消費はおいといて、
お金を何に使うかとなったとき、趣味とか旅行とか服とかの自分のためになる
ものに使うのはまあまあの消費。でも、愛する他人に使うのが一番贅沢でムダ
で快感なんだと思います。だからダメ男に貢いで会社のお金を着服して東南ア
ジアに逃げる女の話が妙に人気になるのよね。

 リアルな他人に貢ぐ機会がない場合、アイドルや芸人、声優、タカラヅカな
ど半分バーチャル半分リアルな存在にお金をかける、いわゆるヲタ活動に従事
するのも快感であります。

 発売以来たちまち重版になったこの本は、そのヲタ活動のありさまを赤裸々
に描いた自分発信ルポ。これまでにもこの分野には、ジャニーズファンのある
ある的な本がありますが、今回はヲタ活動における「財政面」に焦点をあてた
のが新しい。

 では、その実態を見てみましょう。

◎ソーシャルゲームの課金で1回に3万円使った(ヲタ活動では「溶かした」
 と表現するらしいです)
◎同人誌は同じものを3冊買う。
◎若手俳優にプレゼントを30万(2年間)
◎追っかけ費用130万。
◎タカラヅカの観劇のために、宝塚市に賃貸マンションを借りる。

 詳しいことは本を読んでみてください。

 これをバカとかムダとかいう人は、正常な人なのでそのまままっすぐな道を
歩いて行ってください。わかりすぎる人、またはもうこの道に入っているとい
う人は・・・・・まあとことんやるしかないですね。

 この本を読んでおばちゃまが思ったことは次の3つです。

(1)寄稿している人はみな賢い

 この本にはいろんなジャンルのヲタたちがいかに浪費しているかを書いてい
るのですが、書いてる人の知的偏差値はみな高いと思いました。オタにもいろ
いろいて、ただワーキャー言ってるだけの人がほとんどですがその中から、た
とえば有名ブロガーのように、オピニオンリーダーというか「私はこう思う」
と愛する対象を分析したり意見を述べたりする人たちが生まれてくるんですよ
ね。この本に書いている人たちはそれにプラス、ヲタを愛する自分への自己分
析もきちんとしていて、はまり具合を客観的に見られて自虐的考察ができてい
る。これ、アホじゃできませんて。だからはまる分野はさまざまですが、皆さ
ん文章の書き方と論旨の展開が似てると思いました。

(2)さほどでもない金額

 そして浪費とは言うけれど、金額的にはさほどでもないんだなと思いました。
上にあげた金額でも多くて1年で130万。ヅカの賃貸マンションもグループで
借りて、しかもほかの組のグループと共同管理して1年を回しているらしいの
で、1人当たりはさほどでもない。(賢いなああ! しかし、近所の人にして
みたら不審ですよね。年代の違う女性たちが入れ替わり立ち代わりするって。
なんかの犯罪グループ?宗教?って思うでしょうね。いや、ある種の宗教なん
ですが)。

 ほかの趣味でもっと使う人もいるでしょうから、浪費といってもたいした額
ではない。

 しかし! これは彼女たちが汗水たらして働いたお金から抽出されたまっと
うな浄財なんですよ。バイト先でいやなこともあったでしょう。家事育児をこ
なしてパート勤務したわずかなお金から出ていることもあると思います。そし
てオタ活の対象には税金は1円も投入されておりません。バレエ、クラシック、
能、狂言、歌舞伎などには文化振興の名目で文部科学省あたりから何がしかの
税金が入っております。しかし、どの省庁がジャニコンやコミケに助成するで
しょうか。すべて彼女たちの汗水から出ているわけです。だから尊い!

 額が少ないからこそヒリヒリした消費であり、収入に対しての消費割合が大
きいからこそ、(そのうちエンゲル係数に次ぐ消費指数としてヲタ指数ってい
うのが出るかも)快感なのです。

(3)なぜヲタ活するのかの研究が未知数

 ネットによってヲタの存在が表面に出てきた昨今ですが、実はこの手の消費
は前からされていました。
 ヅカファンは前からいたし、歌舞伎もあるし、オペラもいる。実はおばちゃ
まの友人の1人に、大御所歌手のヲタをここ30年やってて1か月公演全ステ
(すべての公演を見ること。もちろん、内容は同じです。トークで話すギャグ
も同じだそうです)という子もいます。これらは皆出費額もケタ違い。この本
の寄稿者は比較的若い世代、フィギュア(スケートの方)が少し入っているぐ
らいなので、金額が少ないのだと思います。

 なぜこれができるのかというと、

 女性の経済的自立、女性の結婚・出産への社会の束縛が薄れていること、ネ
ットの拡大などの社会的要因があげられると思います。つまり、女性たちがい
わゆる適齢期になっても結婚して子どもを産めという社会からの規制がゆるみ、
稼ぐ場が広がっているのが理由ということ。つまり、女性たちがヲタ活できる
いい世の中になったなあということ。

 しかし、「異常なほど何かにのめり込んでいる時、人は他の何かから逃避し
ていることが多いように思う。私にとって彼らは依存の対象だった」(フタコ
ブラクダさん)という記述もありました。女性たちにとって、いまだに狄覆
べき本筋の道瓩箸いΔ發里あり、ヲタ活はその代償に過ぎないのか、ある一
定期間の遊びなのか、いやいやこっちが本筋だとばかりに会社のお金を着服し
て東南アジアに逃げるヲタが出現した時に(前にヅカファンに1人いましたよ
ね)本当のヲタと認知されるのか、そこが知りたいものです。

 全国津々浦浦の大学に数人ずついる社会学の研究者の方の中からヲタについ
て研究する人が出てくださることを祈念します。深く考えるとヲタはジェンダ
ー論とも関係があるけれど、女性学の方でこの分野に発言している方を知らな
いのでそこもよろしくと思います。(まあジェンダー論に携わる方々自体が内
輪でわちゃわちゃしているだけのヲタ活みたいなとこもあるかも)。失礼しま
した。

大友舞子(おおとも・まいこ)
昭和20年代生まれのフリー編集&ライター。関東生まれで関西在住。

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・『脳疲労が消える最高の休息法 CDブック』(ダイヤモンド社)
 https://www.diamond.co.jp/book/9784478101919.html

・『セブン・ハーフ・アンド・ワン』(文芸社)
 http://www.bungeisha.co.jp/bookinfo/detail/978-4-286-17241-5.jsp

・『トシ、1日1分でいいからフクシマ英語に触れてみて。それだけできっと世
  界は変わる。』(SCICUS)
 https://www.facebook.com/scicus.jp/posts/1054815034566643

・『あれか、これか
  「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門』(ダイヤモンド社)
 http://www.diamond.co.jp/book/9784478066041.html

・『最高のリーダーは何もしない』(ダイヤモンド社)
 http://www.diamond.co.jp/book/9784478068137.html

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[書評]のメルマガ vol.637


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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→神戸山中「コケッコー」

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→こどもって

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→3つの外交交渉が失敗に終わったわけ

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<93>神戸山中「コケッコー」

 『天然コケッコー』は、90年代から2000年まで雑誌「コーラス」で連載され、
2007年には、渡辺あや・脚本、山下敦弘監督によって、夏帆、岡田将生の主演
で映画化もされた、くらもちふさこの代表作のひとつである。

 以前の当欄でも、渡辺あやの脚色力が「すごい」という例のひとつに取り上
げた漫画&映画でもある。

 漫画では、島根県石見地方と思しき海沿いの田舎の、児童生徒数がわずか
「6人」という小中学校に、ある日突然、東京から転校生がやってきて、小学
校中学通じて初めて「同級生」が存在することになった主人公「そよ」と、こ
の一見イヤミでスカした都会っ子野郎とのほのかな恋心を軸に、田舎生活のあ
れこれが、とても情味豊かに描かれる。

 漫画は、作者・くらもちふさこの母方の実家である島根県の町をモデルとし
ていて、映画版の方もまた原作に沿って、島根県浜田市で撮影されたそうだ。

 この漫画、実は連載中は知らなかったのだが、書店…ってもブックオフだけ
ど…でふと1巻を手に取って以後、続刊を全て買って読んだ。

 主人公の「そよ」と転校生の「大沢くん」、主人公である二人のキャラクタ
ーの心情が、とても丁寧に描かれているのだけど、その他の、そよと同じ小中
学校に通う下級生たちや先生たち、児童生徒の親たちやその他の村人たちの一
人一人の人物像もまた、典型的な「日本の田舎」の生活の中に、リアルに、丁
寧に描き出されている。

 なのだけど、この漫画が気になった最大の理由は、その舞台設定だった。
 その昔、わしが6年間通った小学校もまた、そよたちの学校ほどではないけ
ど、山の中の小さな小学校で、全校児童がほぼ顔見知り、という環境だったか
ら。

 わしが通った1962年〜68年あたりで、全校児童およそ100人余り、1学年1
クラスで、各学年15〜20人ほど、だったか。
 神戸市内では、下から3番目に児童数の少ない小学校だった。

 その後、1960年代末から70年代、同じ私鉄沿線の周辺では宅地開発が進んだ
のだが、この小学校の校区は、全域が市街化調整区域に組み込まれたこともあ
って開発からは取り残され、昔ながらの農村地帯のままで、若い世代では、不
便さを嫌って周辺の団地やもっと便利な阪神間で世帯を構える人たちも増え、
それにつれて小学校の児童数は徐々に減少していった。

 かくいうわしもまた、ここを「出た」一人だ。

 わしの甥っ子姪っ子が通っていた90年代ころで、すでに児童数は20人を割り
込み(10人未満という年度もあったらしい)、複式学級を余儀なくされ、ひと
駅隣の住宅団地に70年代以降新設された複数の小学校のいずれかに統合する案
も再三、市から提案されていたらしい。

 その統合案を拒み続けたのは、明治6年開校と、周辺地域でももっとも古い
小学校であり、さらにその後の戦前から戦後にかけては、ことある度に地域住
民で資金を出し合い、住民自らの手で山から木材を伐りだして校舎を建築した
り、という地域住民が造り、支えてきた学校である、という矜持であった。

 実際、わしらが在籍したころでも、小学校は地域の中心施設として存在して
いて、運動会や学芸会といった学校行事もまた、村ぐるみ、地域全体の「お祭
り」的存在であった。

 運動会では、校庭の一角に「婦人会」の出店が出て、瓶入り飲料やアイスク
リームを売っていた。
 競技もまた児童だけではなく、青年団の「綱引き」とか婦人会による「踊り」
やなんかもプログラムに組み込まれ、まさに「村ぐるみ」のお祭りだった。

 盆踊りの会場も学校の校庭だし、青年団による「お芝居」は小学校の講堂を
会場として、夜遅くまで飲めや歌えの騒ぎが続いたり、はたまた校庭を使った
「映画会」が開催されたり、なにかにつけ、小学校は地域の集会所、あるいは
「広場」として機能していた。

 さすがに90年代では、地域自体の人口減少もあって、地域コミュニティーの
中心としての役割は終えていたようだが、それでも、土地の古老たちが小学校
の廃止・統合を頑なに拒んできたのは、そういう背景があったからだろう。

 一時は存続の危機に立たされたその「神戸市立藍那小学校」が、ただ今現在、
児童数50人以上という規模に児童数を回復しているらしいのだ。
 地域の子どもが増えたわけではなく、数年前に神戸市の「小規模特認校」に
指定され、校区が神戸市全域に広がった故、らしい。
 実際、現在の児童50数名中、本来の校区から通ってくるのはわずかに「3名」
だそうだ。

 「自然環境に恵まれ特色ある教育を推進している小規模な学校(小規模特認
校)に通学することにより、心身の健康増進を図り、豊かな人間性を培うとと
もに、複式学級の解消など学校の活性化を図ることを目的」とするのが、小規
模特認校制度だそうだが、神戸市では、ここと「六甲山小学校」の市立小学校
2校が、その特認校に指定されている。

 六甲山小学校は、六甲山上に位置し、わしらが小学生のころでは、市内で児
童数が最少の小学校として知られていた。
 当時は、山上の保養所や観光施設で働く人たちの子女が通う学校だったのだ
が、こちらもまた時代の変化で、保養所などが次々と閉鎖され、児童数を減ら
していたらしい。

 が、特認校に指定されて後は、六甲山上という絶好のリゾート的ロケーショ
ンもあって、麓の灘区、東灘区などからの入学希望者が相次ぐ人気校となり、
現在の在校生の殆どは、父兄の車でケーブルカーの山麓駅まで送ってもらい、
そこからケーブルカー、バスを乗り継いで通学しているそうだ。

 ちなみに、六甲山小学校は、六甲山上という立地のゆえに「北国仕様」の学
校で、昔から、夏休みが短く冬休みが長い、という年間スケジュールを採用し
ている。
 毎年10月末に、この小学校の「ストーブの火入れ式」というのがニュースで
報じられるのは、神戸の「風物詩」でもある。

 これに対して我が藍那小学校では、リゾート要素は皆無なのだが、「現存す
る市内唯一の木造校舎」と、棚田が点在する昔ながらの素朴な農村風景が「売
り」で、毎年10人程度の募集に対して、そこそこの数の応募があるらしい。

 「地域との連携」もまた、特認校の特色のひとつであるらしく、我が老母な
ども、老人会の活動の一環として、小学校での「うどん打ち」や「餅つき」
「草鞋作り体験」等々に駆り出されているらしい。

 たまに実家に出向くと、下校のために集団で駅に向かう子供たちと出くわし、
口々に「こんにちは!」「こんにちは!」と、ほとんどがなり立てるような、
元気な挨拶を受けることも度々で、道で人に出逢ったら、必ず挨拶をするよう、
学校で教えられているようだ。

 わしらの頃には、6年生の修学旅行は、「北神連合」という、今の神戸市北
区全域の小学校合同で催行されていた。
 合同とはいえ、バスなんかは一応学校別でチャーターされるのだが、我が校
は6年生全員で「17名」と少なかったので、他校のバスに「間借り」する形で
割り込まされ、とても肩身が狭かった。

 しかし、ただ今は、修学旅行も単独催行で、昨年秋には、6年生3名と先生
3名で、伊勢・志摩を回って来たそうだ。
 『天然コケッコー』の「そよ」もまた、中学3年の修学旅行は大沢くんと二
人きりの東京で、とても鮮烈な体験として記憶されるのだが、我が母校の後輩
6年生たちもまた、とても濃い体験となったと思う。

 都心部ではなおさらに顕著らしいが、少子化の影響で、小学校や中学校、は
ては高校の統廃合があちこちで目につく昨今、自分の出身校が、このような形
で残ってくれているのは、とても嬉しい。
 今の在校生たち、そしてこれから入学してくる子どもたちにも是非、「コケ
ッコー」な学校生活を満喫して、卒業してもらいたいと願ってやまない。


太郎吉野(たろう・よしの)
 2011年に神戸から西宮へ引っ越して、ただ今のホームグラウンドは甲子園。
右投げ右打ち。掛布二軍監督はひとつ年上の同級生。

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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75 こどもって

 毎年夏の終わりは突然だなと感じます。
 台所の蛇口から出てくる水が冷たく感じると秋のはじまり、
 朝の霧が深くなると冬のはじまり、
 秋は短い会津です。

 今回は「こども」をテーマにご紹介します。

 一冊目はひとり出版社ですばらしい絵本を次々出しすっかり知名度が高くな
っているきじとら出版からの最新刊。

『こどもってね』
 ベアトリーチェ・アレマーニャ みやがわ えりこ訳 きじとら出版

 絵も文も書いている作者はいま注目を集める絵本作家のひとり。本作は自ら
「代表作」と呼ぶもので、一読して納得です。

 こどもってね、という平易な語りで哲学の側面をみせてくれる深淵な文章に
描かれているこどもたちは、それぞれに個性的でやわらかな意志を感じます。

 大判の絵本、見開き片側にひとりずつ、こどもの表情が大きく描かれ、笑っ
たり、泣いたり、夢見ていたりして、こどもたちの気持ちが絵からも伝わって
くるのです。

 ------
 こどもってね、ちいさな ひと。
 でも、ちいさいのは すこしのあいだ。
 いつのまにか しらないうちに おおきくなる。
 ------

 詩的な言葉で綴られる、こどもとは、の考察は、
 大人だからこそ響くものがあります。

 響くからこそ、大人として少々反省する気持ちも芽生えることも。

 毎日忙しく過ぎていると、リアルタイムにしっかりと目の前のこどもを意識
することは時に難しく彼らの声に耳をすますのは簡単ではありません。

 でも、この絵本から聞こえるいろいろなこどもたちの声を聞き、表情をみて
いると楽しく幸せなこども時代を過ごせるよう、大人としてがんばろう!と背
中を押された気分です。

 えいえいおー。
 

 2冊目はアルゼンチンの絵本。

 『エンリケタ、えほんをつくる』
 リニエルス 作 宇野和美 訳 ほるぷ出版

 アルゼンチンでは国民的人気マンガ家であるリニエルスの初邦訳絵本!

「初」という言葉に弱い私、わくわくしながら読みました。
 
 主人公の少女、エンリケタはママからきれいな色鉛筆セットをプレゼントさ
れ、さっそく物語を彩ります。

 そこから先はエンリケタの描くお話しと、エンリケタとねこのフェリーニの
やりとりが同時進行します。

 リニエルスの描くエンリケタとフェリーニ。
 リニエルスが描いているエンリケタがつくるおはなしの絵。

 これらをタッチを変えて描き分けています。

 おはなしの世界をつくりあげていくときの過程を、エンリケタが絵本の中で
実況中継してくれるのですが、これがとってもいい感じ。

 私も自分が小さかったとき、よく風邪をひいて学校を休み、布団の中に紙を
持ちこんでおはなしをつくっていた時のことを思い出しました。フェリーニの
ように相談できる相手がいなかったので、ひとり何役もしながら、物語をつく
って楽しんでいたのです。

 なので、エンリケタの描く世界がとっても近しく感じます。
 いろいろなハプニングがおきつつもラストはどう終わらせるか。
 
 これは現役のこどもが読んだらきっと楽しむでしょう。

 リニエルスの他の絵本も読みたくなってきました。

 3冊目にご紹介するのは、2009年に刊行されたフランスの絵本

 『ソフィー ちいさなレタスのはなし』
 イリヤ・グリーン  とき ありえ 訳 講談社

 オルガ、アナ、ガブルリエル、ソフィーはなかよし4人組。
 あるとき、4人は畑に種をうえてレタスをつくろうと計画します。

 4人はそれぞれの場所に種を植え、かたつむりにやられないようワナ(!)
をつくり、自分たちの名前札も据え置きました。

 さて生育状況はといえば、なぜかソフィーのレタスだけは育ちません。
 そこで、ソフィーは考えたのです。
 まずはうそレタスをこしらえて……。

 この絵本はこどもはもちろん、大人が読んでも共感するところが多々ありま
す。

 こどもの愛らしいところではなく、ブラックな面がいかんなく発揮され、嘘
やダマし、心の狭さがキュートに描かれているのです。

 そしてこの心の狭さは末っ子に多いかも、しれません。

 なにせ、我が家の3人のこどもたちでも、一番共通点があったのは、ちびち
ゃんでしたから。

 それでも成長したら、この手の心の狭さはだいぶ解消されるのです。
 それが成長なのかもしれません(笑)。

 刊行年が少し前なので、ネットで検索しても在庫があるところが見つけられ
ませんでしたが、そのときはぜひ図書館で探してみてください。

 
(林さかな)
会津若松在住。
編集協力した新訳「オズの魔法使い」(復刊ドットコム)シリーズ
★おかげさまで少しずつ重版されています
http://1day1book.strikingly.com/

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第93回 3つの外交交渉が失敗に終わったわけ

 以前に『それでも、日本は「戦争」を選んだ』という本を紹介した。この本
は2009年の出版だった。本欄に執筆子が紹介したのは、かなり遅くおそらく20
12年か2013年ごろだろうと思う。その本の続編が昨年出版された。

『戦争まで 歴史を決めた交渉と日本の失敗』
(加藤陽子著)(朝日出版社)(2016年7月29日発行)

 本書も前書(『それでも、日本は「戦争」を選んだ』)と同じく、東京大学
の加藤陽子先生が中高生へ特別講義をした時の講義録という形式を取っている。

 前書は日本が“もはや戦争しかない”と決めてしまったこの過程を考察した
ものである。そして本書は、戦争に至るまでの3つの外交(交渉事)について
考察し、その交渉を通じて日本の失敗を浮き彫りにしようとしたものである。
前書もそうであるが、本書も中高生を相手にことばを選んでいるのでとてもわ
かり易い。

 3つの外交交渉とは何か。
1)リットン調査団(1932年(昭和8年))
2)日独伊三国同盟調印(1940年(昭和15年))
3)日米交渉(1941年(昭和16年))

 この3点の外交交渉をみていき、そこでの日本の選択および相手国の選択、
それが結局は戦争になり、そして日本の敗戦へとつながる、その過程を考える。
結果的に日本は戦に負け、国のしくみを変えるということになった。

 リットン調査団の報告書が公表されたとき、日本はまだまだ全面戦争を避け
る余地があった。交渉に費やす時間もあったし、妥結の余地も充分にあった。
しかし、そうはならなかった。

 リットンの報告書には満州国を維持するために、日本軍は常時、満州国に駐
留しなければならない、その理由はソ連や中国共産党から日本の国益を守るた
めだ、というが、この日本軍の役割を国際連盟が主催する、「特別憲兵隊」に
まかせてはどうか、という提案を報告書でしているのだ。このしくみは現在の
PKOのはしりにもなる、有益な提案といえよう。日本は満州国という日本の
属国に固執するあまり、駐留に伴う国際的非難やそれに掛かる経費を無視して
しまった処にまず間違いがあった。この1932年(昭和8年)という時期はまだ、
蒋介石率いる国民党政府と交渉できる余地はたくさんあったとみる。日本はみ
すみすその機会を逃した。

 日独伊三国同盟調印のときはすでに欧州で戦争が始まっている。ドイツはソ
連と不可侵条約を結び、西部戦線に注力している。オランダもベルギーもフラ
ンスもドイツの電撃作戦により、あっという間に占領されてしまった。となる
と東アジアにあるオランダとフランスの植民地はどうなるのか? 基本的には
ドイツのものになるのであろう。日中戦争をめぐりアメリカと対立している関
係上、日本は蘭領東インド(現在のインドネシア)の石油資源がほしい。そし
てそのために仏領インドシナ(ベトナム・ラオス・カンボジア)を中継基地に
したい。ドイツ領になるかもしれない、これらの仏蘭植民地を我が物にしたい
ために三国同盟を締結した、ということがことの真相らしい。決して仮想敵国
のアメリカへの牽制だけではない。ということが本書を読んで初めてわかった。
東洋のことは日本に、西洋のことは独伊に、ということがこの同盟の趣旨だっ
た。

 そして、日本が進む道は、ドイツと提携をしていくことなのか、それとも英
米と提携するのか、ということを1940年(昭和15年)の時点でもまだ、選択で
きる状況にあった、ということがわかる。

 太平洋戦争開戦前夜とも云うべき時に、日本はアメリカと真剣に交渉をして
いる。それはアメリカとの戦争を避けるためである。少なくとも日本の海軍は
アメリカとは戦争をしたくなかった。工業力に圧倒的な差がある。1941年(昭
和16年)の年末12月8日が真珠湾攻撃の日である。この年の10月くらいまでは
ぎりぎり戦争回避の分岐点がいくつも日本の目の前に広がっていた。5月や6
月にはアメリカのルーズヴェルト大統領と日本の近衛首相の頂上会談をハワイ
で行おう、という処まで進展があったという。日米が合意できるのは反共とい
う立場であり、ここはまったく一致している。中国大陸においては、満州国以
来日本軍の駐留がアメリカとの主な対立点であることは間違いない。いったい、
日本はなぜ中国大陸で戦争をしているのか。日本は大陸での戦争の大義名分が
いつしかなくなっていることに気づかずにいた。中国共産党が勢力を伸ばして
いるときに日本は蒋介石の国民党と戦をしている場合ではなかったはずだ。

 決定的な読み間違いは、この年の7月28日に日本は南仏印に進駐したことだ
ろう。間髪入れず8月1日にアメリカは石油の全面禁輸に踏み切る。日本は南
仏印を占領してもアメリカは怒らないと高をくくっていた。そしてアメリカ側
の読み間違いは、アメリカが最後通牒とも云うべき、ハル・ノートを日本に送
ったことだろうか。アメリカは日本がこれによって強硬な姿勢を緩和させるだ
ろうと高をくくっていた。まさか勝ち目のない戦争を仕掛けるとは思っていな
かった。

 日米交渉において、反共という立場で一致するものの、日本はアメリカと妥
協することが可能だったのであろうか。
 キーワードは自由貿易と資本主義ということであろうか。貿易をしてこそ日
本が繁栄する唯一の道である、ということを国民全員が自覚したとき、日米交
渉は成功したであろう。軍隊を他国に駐留させて戦争をする、ということがど
れだけ高くつくかをもっともっと自覚すべきだった。そのためには自国のみで
はなく他国の幸福も謳っていたアメリカの主張に耳を貸すことが肝要だったの
だろう。

 どんな世の中だろうと、「世界の道」を示した処に勝算があるのだ。つまり
普遍的な理念を具体化して第三者にも利益が出るようなしくみを作った方が勝
つのである。
 世界に通用するような普遍的な理念を掲げるためには国民にすべてを知らせ
ないといけない。自国民が知らないようなことを他国には云えない。戦前の日
本国民はあまりにも知らされていなさすぎたのだ。


多呂さ(世の中がこの書評のような時代に似た状況になってきているような・
・・)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

----------------------------------------------------------------------
■あとがき
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 9月ですね。というか、ここのところ仕事に追われているせいか、いつの間
にこんな日付になっているのか、とても不思議な感覚です。

 で、手帳を見てみると、やっぱりよくわからない(笑。

 忙しいのはわかるのですが、それでも仕事が終わっていない。

 で、ちょっと落ち着いてきましたので、今月中に何とか、溜まった仕事を片
付けたいな、と思っています。(あ)

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→ 『噂のレコード原盤の秘密』

★「目につく本を読んでみる」/朝日山
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★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→ 今回はお休みです。

★【募集中】献本読者書評のコーナー
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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#86『噂のレコード原盤の秘密』

 エジソンはレコードを発明したことで、ひとつの産業も発明した。
 言うまでもなく、レコード産業である。
 とはいえ、目には見えない<音楽>が、後に途方もない経済的価値を持とう
とは、さすがの発明王も想像しなかっただろう。

 レコード会社は、ミュージシャンの演奏を録音し、それを工場で複製して商
品にするのだが、最初に録音した時のオリジナル音源を指して「原盤」という。
テープレコーダーが発明される前には、録音の時から直にレコード盤に刻んで
いたので、「盤」と呼ばれるのだ。
 原盤は摩耗を防ぐために、金属製である。それが工場に持ち込まれ、もっと
柔らかい素材の盤にコピーされると、われわれにもおなじみの、あのレコード
となるわけだ。

 原盤制作には、レコード会社が投資をしている。歌手との契約金、吹き込み
料から、伴奏するミュージシャンのギャラ、作曲家、編曲家のギャラ、スタジ
オ代、エンジニアらスタッフのギャラ、録音機材費などなど、細かく数えれば
キリがない。

 さらに、原盤から生産されるレコードの生み出す利益がある。
 もし、その歌手が大スターだった場合、原盤制作の費用も多額になるが、将
来見込まれる利益もまた大きい。
 つまり、たった一枚の丸い金属板には、とんでもない経済的価値があること
になる。

 しかも、その大スターが、録音のわずか二日後に、不慮の飛行機事故で死ん
だとすれば。
 原盤は貴重なラスト・レコーディングであり、過去最大のヒットが予想され
る以上、その価値はさらに跳ね上がる。

 一方、無名の歌手志望の女の子が吹き込んだテスト・レコーディングの原盤
も、見た目はまったく変わらない。
 もちろん、人間の目が顕微鏡サイズの世界を見ることができれば、刻まれた
溝のパターンの違いがわかるかもしれないが、そうでない限りは、プレイヤー
にセットして聴いてみないと区別はつかない。

 しかし、大スターの原盤は数百万ドルの価値があるのに、女の子の原盤には
一銭の価値もないのである。

 そもそも目に見えない<音楽>に、そんな巨額のお金がつきまとうことも不
思議だが、見た目ではまったく差がないふたつの物が、天と地ほども経済価値
を異にするのも、何か異様なほどの不思議さを感じさせる。

 本書『噂のレコード原盤の秘密』は、そんな<音楽>の持つ不思議から発生
した殺人事件を主題とするミステリィである。

 著者のフランク・グルーバーはアメリカの作家で、第二次世界大戦前後の物
資不足の時代に、安価なパルプ紙を使ってつくられた粗悪な娯楽雑誌を舞台に、
エンターテイメントに徹したミステリィや西部劇を発表した。
 本書は、ジョニー・フレッチャーとサム・クラッグというテキ屋のコンビが
探偵役を演じる、シリーズの第10作に当たる。

 歌手志望のマージョリーが、偶然手に入った大スター最後の録音の原盤を狙
う何者かに殺される。しかし彼女が死の間際、部屋の外に放り出した原盤が、
ジョニーとサムの手に渡る。警察に犯人と疑われ、潔白を証明するためと、原
盤を巡る事情を解き明かして、ひと儲けするために、二人は犯人探しに乗り出
す、というストーリィは、まあありふれている。
 最後は限られた容疑者の中から犯人を指摘するのだが、その意外性も「まあ
まあ」だし、絞込みのロジックも「まあまあ」。

 と書くと、いいところがないようだが、本書の魅力は逢坂剛のあとがきにも
あるように、何より主人公二人の軽妙なやりとりにある。

 ハードボイルドの楽しみのひとつに、ワイズクラックと呼ばれる、しゃれた
セリフがある。日本語で言うなら、減らず口、というところか。皮肉の効いた
言い回しで相手をやり込めるのだが、これが災いして、主人公はしょっちゅう
ギャングに殴られたり、刑事に嫌われたりする。それでも、懲りずにワイズク
ラックを口にするのがハードボイルドのヒーローの定型だが、ジョニーとサム
のやりとりにも、この伝統の良質な部分が詰まっている。

 さらに加えて、決して善人ではない二人が、手持ちの金が1ドルを切った時、
犯罪すれすれの方法で糊口を凌いでいくスリル。
 1949年当時の、アメリカのレコード会社や工場の様子を、短い文章で鮮やか
に浮かび上がらせる描写の冴え。
 役員たちの株の持ち合い状況なども絡ませた、経済小説的な興味。
 そして、金がないくせに妙にタクシー代だけはケチらない二人の行動の、ス
ピーディな小気味よさ。

 主題とは別の、周辺のさまざまな魅力こそが本書の価値だろうと思う。

 原題は、The whispering master

 なかなか粋なタイトルがついているが、翻訳は難しい。かつて抄訳が出た時
には『レコードは囁いた…』だったそうだが、これもいまいち。
 今回の新訳では、「囁いた」を解釈して「噂の」としたのだろうが、かなり
の拡大解釈だし、そもそもこの大スターの原盤の存在は秘密にされていたとい
う設定なので、ちょっと違和感が残る。

 こういう時、最近の映画だと、原題をそのままカタカナにしてごまかすが、
『ウィスパリング・マスター』じゃ、なんか喫茶店のマスターに囁かれるみた
いで気持ち悪い。

 マスターといえば、英語のmasterは、媒体が何であれ使えるが、「原盤」と
なるとそうはいかないはずだ。
 だが、本書の時代から技術が革新して、先に書いたようにテープになっても、
原テープとは呼ばれなかった。
 そしてデジタル・レコーディングの時代となり、音楽はデータになったが、
やはり原CD−Rとも、原USBとも呼ばれることはない。
 やはり実際には「盤」でなくても、「原盤」という言葉は永遠になくならな
いのだろう。

 それとも、データになると、そもそも「原=マスター」という概念に意味が
なくなるのだろうか。
 コピーしても劣化しなければ、オリジナルとコピーに差はないのだから。

 すると、本書のような「原盤」が紛失するという事態もなくなるわけだ。

 かつてポール・マッカートニーがプロデュースして主演もした『ヤァ!ブロ
ードストリート』という映画も、ポールが自分の録音した原盤を失くしてしま
う話だった。
 レコード業界の人間に共通の悪夢、原盤の紛失。
 もはやその悪夢も終焉を迎えているのかもしれない。
 関係者のためには、まことに慶賀に堪えないことではあるが、どうしてだろ
う、ぼくはそこに何か、一抹の寂しさを覚えてしまうのである。
 

フランク・グルーバー
仁賀克雄訳
『噂のレコード原盤の秘密 ――論創海外ミステリ161』
2015年12月20日 初版第1刷印刷
2015年12月30日 初版第1刷発行
論創社

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
本書の版元、論創社は、埋もれた内外の秀作ミステリィをたくさん発掘してい
るようです。元々は、堅い、人文・社会学書系の出版社だったようですが、ど
うしてこんな、素敵なことになったのでしょう。これからもがんばってほしい
ものです。

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『夜遊びの経済学』木曽崇 光文社新書

 今月初旬、スペインのバルセロナやマヨルカ島で「観光客は帰れ」とする抗
議活動が行われたと報じられている。

 https://twitter.com/IrrTenko/status/893866140643934208

 なぜ観光客が非難されるのかというと、どうもAirbnb、ないしはそれに準ず
る民泊業者が増えたことで住民が住むアパートなどが不足して家賃が高騰した
り、観光客相手の低賃金労働が増えたことが背景にあるようだ。

 似たような話は京都あたりでもある。家賃の話は聞かないが、民泊のせいで
これまで観光客が来なかったような街にまで観光客がやってきて迷惑を被って
いる住民がけっこうおられるそうで、住民の憤懣がたまっている地区も多いと
いう。

「観光客というのは、実は『ただそこに来る』だけでは経済効果は生まず、む
 しろ受け入れる側の地域にとっては一義的に『コスト要因』に他ならない」

 観光客が作ったゴミの処理や道路やトイレなど施設整備も地元自治体のカネ、
すなわち住民の血税で作られる。たくさん人が来たら大騒ぎしたり私有地に無
断で入ってきて悪さもする。なので

「はっきり言ってしまえば、観光客というのはその地域に根ざして生活する人
 にとっては、根源的に厄介者であり、迷惑以外の何物でもないのである」

 こういうことが書いてあるのが、この本である。著者はカジノの専門家だが、
読んでみると決してカジノだけを見ているのではない、カジノを含めたIR
(Integrated Resort 総合型リゾート)だけでなく、エンタテイメントによ
って地域振興を図ること全体の専門家だとわかる。

 簡単に言えば、文化財や自然見物では観光客はあまりお金を消費しないので、
夜に消費してもらうようにすればいいというのが趣旨となろう。カジノのこと
は最後に少々触れているだけだ。

 冒頭が上手い。地方都市に出張に行った時、メシ食った後、行くところがな
くて結局ホテルの部屋でテレビを見ているしかなかった経験のある人は少なく
ない。そうした情景を語り、ここにお金を使う機会を作るべきだと言われて、
いや、そうではないと言い返せる人は少ないと思う。

 徐々に日本人の生活も夜型になってきているとは言え、日本には(というか、
外国もそうだが)昼は仕事や観光して夜は寝るという生活が一般的だ。また、
夜にカネを使おうとすると当然酒も入ってくるし、治安上の問題を危惧する人
も多い。

 また、下手に観光施設を作っても閑古鳥が鳴いて、夕張の二の舞になっても
いけない。ではどうするのかということで、日本や欧米、あるいはシンガポー
ルや韓国などの成功事例、失敗事例を検討しつつ、夜の観光開発のポイントを
解説している。

 読んでいて思うのは、この分野で成功するには、単に金儲けだけではなく、
いかに地域住民の理解やインフラの整備が重要かということ。

 例えば英国では、日本同様ドーナツ現象が起こり、市街地に人がいなくなっ
たが、日本同様「まちづくり」のためにタウンセンターマネジメントという活
性化策が推進され、その中でナイトタイムエコノミーの振興が図られている。

 夜に安心して出歩くことができる安心・安全な待つとしてパープルフラッグ
と呼ばれる認定制度を作って

1.犯罪および反社会的行為の抑制
2.アルコールと健康対策
3.多様な楽しめる選択肢があるか
4.交通手段は整備されているか
5.社会的に認知されているか
6.規模は十分で経済的に拡大基調か
7.客質はいいか、20時くらいまでファミリー層にも楽しめる街になっているか

といった基準で認定するか否かが決められる。

 英国のナイトエコノミーは16兆円もの規模に達しているという。中心地であ
るロンドンでは副市長がトップとなって関係官庁や業者も含めたナイトタイム
委員会が作られ、市政に提言が活かされる。その上でナイトメイヤー(夜の市
長)まで作られた。この夜の市長はナイトタイムエコノミーにも産業界にも一
定の敬意を持たれ、一般市民にも考えを浸透できる人物でなければなれない。

 そういう夜の市長がいるから「あの人が言うなら仕方がない、信用できる」
と一般市民の協力も得られるのだ・・・なんとまぁ、丁寧なやり方である。

 個人的には、この部分だけですでに内容に満足しているが、もちろん内容は
これだけではない、他にも多くの事例の解説があり、いずれも説得力がある。

 いわゆる地域活性化がテーマの本ではあるけども、こういう夜の地域活性化
について書かれた本は、たぶんこれが初めてではないか?そして、ともすれば
興味本位にとりあげられることになりやすい「夜の世界」を開発することのメ
リット、デメリットを挙げて、冷静に、的確に論じた本もまた初めてではない
かと思う。

 もっとも、著者の考える夜のマーケット開発は、大都市周辺など、立地を相
当選ぶ。基本総合リゾートを論じているからそうなるのだけど、中小都市でも
有効な夜のマーケット開発はまだまだ手つかずのように思える。

 田舎の夜のマーケット開発は事例も少ないだろうし、実際に書くとなると相
当困難を伴うと思うが、この方ならかけるのではないかな?


(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・『ミスなくすばやく仕事をする技術』(秀和システム)
 http://www.shuwasystem.co.jp/products/7980html/5125.html

・『マンガでわかるグーグルのマインドフルネス革命』(サンガ)
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・『脳疲労が消える最高の休息法 CDブック』(ダイヤモンド社)
 https://www.diamond.co.jp/book/9784478101919.html

・『セブン・ハーフ・アンド・ワン』(文芸社)
 http://www.bungeisha.co.jp/bookinfo/detail/978-4-286-17241-5.jsp

・『トシ、1日1分でいいからフクシマ英語に触れてみて。それだけできっと世
  界は変わる。』(SCICUS)
 https://www.facebook.com/scicus.jp/posts/1054815034566643

・『あれか、これか
  「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門』(ダイヤモンド社)
 http://www.diamond.co.jp/book/9784478066041.html

・『最高のリーダーは何もしない』(ダイヤモンド社)
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 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

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 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 発行が遅くなりました。お盆シーズンから様々な人との飲み会ラッシュでし
た。久しぶりにお会いする方もいて、別に帰省したわけでもないのにお盆気分
を満喫しました。

 しかし年齢のせいか、親戚家族関係の御不幸の話が多いこと多いこと。そう
いう話をお違いにすることも、ひとつの供養かと思いました。(あ)

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[書評]のメルマガ vol.635

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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→波平さんは、京大出身!?

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→知ること

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第一次世界大戦はいかに始まったか(その2)

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→働き方改革の実現に必要なものとは?

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
└──────────────────────────────────

 株式会社秀和システムの御担当、森千草様より、下記の献本を頂戴しま
 した。ありがとうございます!

 『ミスなくすばやく仕事をする技術』
  著者:成吉新一
  価格:本体1300円(税別)
  ISBN:978-4-7980-5125-3
  発売日:2017/7/15
  判型:四六
  ページ数:224
 http://www.shuwasystem.co.jp/products/7980html/5125.html

 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<92>波平さんは、京大出身!?

 昨年あたりから、ネットの中で『サザエさん』のお父さんである波平さんや
その他のキャラクターたちの「学歴」をめぐって、「えらく盛り上がっている」
と、人から聞いたのが、つい先日。

 それによると、波平さんは「京都大学出身」、その甥のノリスケさんは「東
京大学法学部」、マスオさんは、二浪の末「早稲田大学」出身…らしい。
 さらに、サザエさんちに毎度御用聞きに回ってくる「三河屋のサブちゃん」
に至っては、なんと一橋大学商学部を卒業した後、「サントリーに勤務」、そ
の後、なぜか三河屋の御用聞きに転職した…というのだ。

 他にも、フネさんは日本女子大、タイ子さんは立教大学…等々、等々。

 これ、あちこちのサイトを覗いてみたのだけど、ひとつとして、その根拠と
なる出典が示されていない。
 おそらくは、どこかで誰かが、「こうだったら面白い」という架空の設定を
遊びで作って、それが拡散していく過程で、さらに詳細な設定が付け加えられ
ていった、というのが実情だろう。

 その中にあって、主人公のサザエさん一人、なぜか「あわび女子学園」とい
う架空の学校出身というのが「?」なのだが、架空であるが故に、信憑性(?)
も高いと考えられる。
 おそらくは、原作漫画、あるいは映画版、またはTVドラマ版のどこかに出て
きたのだと思う。

 マスオさんの「ワセダ」というのも、確かドラマで、そう紹介されるシーン
があったような…おぼろにだが、かすかに覚えているような…気がしないでも
ない。

 だいたいが、アニメ版の『サザエさん』は、その舞台となる時代が、おおよ
そ昭和50年前後のところで止められているのだ。
 なので、ノリスケは、新制の「東京大学」で矛盾しないが、波平は京都大学
ではなく「京都帝国大学」でなければ、おかしいではないか。

 フネさんだって、戦前に女子大学出身なら、超エリート女子だ。
 ちなみに、昭和50年ころ、フネさんよりも10歳ほど年下だった、うちの母親
の最終学歴は「尋常小学校」である。

 しかし、フネさんは、静岡の人である。
 その静岡から、わざわざ娘を東京の女子大学にやる…戦前という時代を考え
ると、まずあり得ない。
 フネさんの実家は、そこまで進取な家ではなかったように思える。
 せいぜいが、地元の女学校か女子高等師範だったんじゃないだろうか。

 波平さんの「京大」やノリスケさんの「東大」もまた、「ちょっとな…」だ。
 波平さんが帝国大学に進んだのなら、地元の九州帝国大学を選んだんじゃな
かろうか。
 ノリスケさんには、マスオと同じ「ワセダ」が似合ってそうだと、わしなん
か思うのだけど、どうだろう?

 サザエさん一家の磯野家が、福岡出身であるのは、広く知られている事実で
ある。
 「サザエさん」は元々、作者・長谷川町子の出身地であり、当時在住してい
た福岡で、昭和21年、地元の新聞に連載が始まった。
 その後、連載を東京朝日新聞に移すにあたり、作者と同時に一家もまた、福
岡から東京・桜新町に引っ越したのだ。

 昔、我が家にあった姉妹社版『サザエさん』には、割と若い巻数で、「東京
に引っ越します。皆さん、おせわになりました。これまでありがとう」と、正
装のサザエさんが読者に向かって挨拶する回があり、その次のページでは、
「初めまして、サザエと申します」と、新しい読者に向かって挨拶する回が収
録されていた。

 ちなみに、福岡から東京に越してきたころのサザエさんのファッションは、
割烹着に赤足袋、下駄が定番だった。

 磯野家は、サザエ、カツオ、ワカメも皆、だから福岡生まれなのだけど、そ
の前提として、福岡在住の波平さんに静岡のフネさんが嫁いでいた、というの
も、やや無理筋だと思う。
 フネさんの「静岡」は、おそらくアニメオリジナルの設定なのだろう。

 そんな磯野家の長女・サザエが東京移住後、見合いを経て結婚する相手が、
大阪出身のマスオさんだ。
 マスオさんが大阪出身とされたのは、もともとが大阪の新聞社である朝日新
聞が、地元・関西の読者に配慮した故……と、毎年、授業の中で学生たちにし
たり顔で解説しているのだが、そうですよね? 長谷川先生。

 『サザエさん』は、新聞の連載漫画だったので、キャラクターたちこそ齢を
とらないものの、その時代背景は刻々と変化して、時に時事ネタやその時々の
流行も取り上げられてきた。
 両さん以下、キャラクターたちは齢を取らないが、時代はリアルと同時進行
で進んでいく『こち亀』と同じ方式だ。

 新聞連載の中で、ちょうど「パンティーストッキング」が女性の間で普及し
始めたころのエピソードを、よく覚えている。

 来客中の波平の座敷に、お茶を盆に載せて入ってきたサザエ。
 お茶を出そうとした拍子に、履いていた巻きスカートが「はらり」と落ちる
……と、その下にはなにも着けていない(ように見える)
 「ギョッ!」として顔を赤らめる波平とお客。
 「ご心配なく。パンティーストッキングですから」
 と、しれっと言い放ち、すまし顔でスカートと盆を持ってサザエ、立ち去る。

 これ、掲載時(わしが中学生のころだ)には別段変には思わなかったのだが、
その後、パンストの実物を目にするにつけ、あのとき作者の長谷川さん自身は、
まだ「パンティーストッキング」を着用したこともなければ、実物を見たこと
すらなかったんじゃなかろか? と、思えてきた。
 おそらく、「タイツ」と混同したのだと思う。
 ご本人が「パンスト」を実際に経験していたならば、絶対にこういうネタに
はならなかった、と思うぞ。

 前にも書いたような気がするが、『サザエさん』は、わしらの世代にはアニ
メ版よりも、それ以前に放映されていた実写ドラマ版(1965〜1967の放映で、
アニメと同じフジテレビの制作だった)の方が、なじみが深い。
 テレビ版以前の映画版でも主役を務めた江利チエミは、まさに「サザエさん」
が、はまり役だった。

 清川虹子のフネさん、川崎敬三のマスオさんもまた、原作のイメージにぴっ
たりはまっていた。
 上原ゆかりのワカメが、かわいかった。

 江利チエミが歌う、「サザエさん、サザエさん、サザエさんってどんな人…」
という主題歌もパンチが効いていて、わしは今も、サザエさんの歌というと、
「お魚くわえたドラ猫」よりも、こっちを頭に思い浮かべてしまう。

 ドラマでは、家族が「福岡出身」という設定はオミットされていたようで、
作中で明言されるわけではないが、波平さんとフネさんは、東京で所帯を持ち、
サザエ以下の子供たちもまた「東京生まれ」でデフォルトされていたようだ。
 まあ、「オミット」ちゅーても、原作漫画の方でも、連載が「朝日」に移っ
て以後は、ことさらに「福岡出身」と明言するシーンはないんだが。

 ドラマ版の後を受けて、1969年から放映の始まったアニメもまた、これを踏
襲して、福岡出身の波平が、静岡出身のフネと東京で所帯を持ち、一家をなし
た、という風に設定されているようだ。

 原作漫画及びドラマ版『サザエさん』と、アニメ版を見比べると、「ワカメ」
と「フネ」のキャラクターが大きく違っている。
 アニメでは、フネは家族想いのとても優しいお母さんで、ワカメもまた、と
ても聞き分けのいい「よいこ」なのだが、原作及びドラマでは、フネはしょっ
ちゅう家族の誰かに腹を立てては大声で怒鳴りつけているし、ワカメは、カツ
オと一緒になっていたずらを仕掛けるわ、それを咎められると、聞き分けのな
いワガママな駄々っ子ぶりを発揮して、地面に転がって泣き叫ぶ、とてもイヤ
なガキなのだ。

 新聞連載の『サザエさん』は、1974年から休載になり、その後新聞紙上に復
活することはなかったので、その「時代」は、1974年で途絶えている。
 アニメ版の方では、スポンサーが東芝だったこともあり、キャラクターたち
は齢を取らないが、時代はリアルに合わせて推移し、ことに家の中の家電製品
は、時代とともにさりげなくリニューアルされていた。

 これが、1990年前後から、背景の時代を現実に沿って推移させるのは「もは
や無理」と判断され、新聞連載が終了したころの時代に固定されることになっ
たようだ。
 なので、アニメ『サザエさん』の世界には、スマートフォンはもちろんのこ
と、携帯電話もインターネットも存在しない。

 さくらももこ『ちびまる子ちゃん』は、雑誌「りぼん」で連載を開始して1
年後の春、主人公の「まる子」を、3年生から4年生に進級させるか否か、作
者と編集部とで真剣に討議した結果、キャラクターたちに齢を取らせない「サ
ザエさん方式」が採用されたんだそうだ。
 さらに、時代もまた作者・さくらが小学3年生だった「1972年」に固定され、
まる子は「永遠の小学3年生」として、もう今は存在しない「静岡県清水市」
に住み続けることになる。

 『ちびまる子ちゃん』もまた、フジテレビによってアニメ化され、奇しくも
その方式をまねた『サザエさん』の前の時間帯で放映されることとなり、日曜
日の夕方6時台に、1970年代を背景とするアニメが2本、続けて放映されるこ
ととなった。

 アニメ『ちびまる子ちゃん』では、CMに入る直前、まる子が「ウララ〜、
ウララ〜、ウラウラヨ…」と山本リンダのモノマネを披露するのだが、これが
きっかけで、70年代ヒット曲である山本リンダの「狙いうち」は、高校野球の
応援定番曲として復活した。

 高校野球ファンとしても知られた作詞家の阿久悠は、随分と昔の自作ヒット
曲が、突如「応援ソング」として復活したのを喜びつつも、「なぜなのか、そ
の理由は皆目わからない」と、戸惑いつつ亡くなってしまったようだ。

 サザエさんちの玄関にある「黒電話」や茶の間にある「卓袱台」、まる子が
大ファンの「百恵ちゃん」、そのお姉ちゃんが大好きな「西条クン」、これら
が、もはや「なんだかよくわからない」世代は、着々と増えている。

 日曜夕方6時台のアニメ2本が、ともに「時代劇」と定義される時代もまた、
近いのかもしれない。


太郎吉野(たろう・よしの)
 2011年に神戸から西宮へ引っ越して、ただ今のホームグラウンドは甲子園。
右投げ右打ち。掛布二軍監督はひとつ年上の同級生。

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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74 知ること

 東北も今年は遅い梅雨明けでした。
 猛暑、大雨、気候は厳しいです。
 被災された地域の方々がすこしでも健やかにこの夏を過ごせますように。


 今回は「知ること」をテーマに3冊おすすめします。
 一冊めはこの絵本です。

 『サルってさいこう!』
     オーウェン・デイビー 作 越智 典子 訳 偕成社

 テキストベースのメルマガでは絵の迫力を伝えきれないのがもどかしいです
が、洒落たデザインの表紙は目をひくサルが何匹もいます。

 デフォルメされているサルですが、特徴はしっかりつかんでいるという、絵
本を監修したサル専門家の中川教授のお墨付きです。

 現在、地球には260種のサルがいるといわれており、絵本では見開きからはじ
まり44種類のサルたちが登場します。

 そもそもサルとは何者かというところから、進化の過程、新世界ザル・旧世
界ザルについて、生態、それぞれの特徴をコンパクトにセンスのいいイラスト
で説明しています。途中でクイズなどもあり、サルについての知識が定着しや
すくなっているのも楽しい。

 イラストも文章も書いているオーウェン・デイビーはスマホゲームのイラス
トも描いているそうです。専門的なサルの生態についても、わかりやすく書い
てあり、へえ!と思わされます。

 では、ぬきんでてすごいサルをご紹介しましょう。
 「ほえ声 一等賞」にはオスのホエザル。
 霊長類一の大声は、世界じゅうの動物の中でもトップクラスだそうです。
 このホエザルは、はるか5キロ先からも響き渡るとか。
 近くに暮らすホエザルへの縄張り宣言の大声。
 聞いてみたいものです。

 日本に暮らすニホンザルも紹介されています。
 なんと、人間をのぞくと、世界一北で暮らす霊長類!
 温泉に入ったり、イモをあらったりするサルも。
 雪国のニホンザルは、雪のボールをつくって持ち運んだり、投げたりもする
そうで、それも楽しみのために! なんておもしろい。

 サルについていろいろ知ったあと、
 絵本で最後に書かれていることは、
 いまの時代はサルにとって住みにくくなっていること。
 熱帯雨林が切り倒され、破壊され、森が小さくなっているためです。

 だからこそサルの住みかを脅かすことのないよう、
 この絵本は「持続可能な森」からつくられた紙を使っています。

 サルのことを知り、森についても考える。
 自分たちにできることが促されています。


 次に「知ること」をテーマにご紹介する本は

 『いのちは贈りもの ホロコーストを生きのびて』
        フランシーヌ・クリストフ 著 河野万里子 訳 岩崎書店


 タイトルにあるように、ホロコーストを生きのびた著者が、自らの12歳の記
憶している経験を綴ったものです。

 日記を元に書かれているそれは、簡潔な文体でついさらりと読めてしまえる
ほどです。しかし、あとから気持ちが文章に追いついてくると、苦い気持ちが
あふれだします。

 6歳の時に父親が戦争捕虜となり、離ればなれになります。その後、母親と
一緒にナチス・ドイツに連行され、厳しい日々が続きます。

 それでも人の気持ちはやわらかいと思ったエピソードがあります。

 収容所に収監された場所で、出会った人が赤ちゃんを産むシーンです。


 「わたしは興奮した。ついこのあいだまで、自分はカリフラワーのなかから
生まれてきたと思っていたのだから。
 男の子はキャベツのなかから、女の子はバラの花から、そしてわたしみたい
にちょっとおてんばな女の子は、カリフラワーから生まれる。そしてユダヤ人
の赤ちゃんは、収容所で生まれるわけだ。まったく筋が通っている。」

 楽しくない場所でもいのちは生まれ、フランシーヌの心は動かされます。
 誰にとってもいのちは贈りもの。
 生まれてきた命に優劣があるはずもない、しかし狂った時代があったことは
知り続けていかねばと、そのことを書いた本を読むたびに思うのです。


 続けて読んだ本書もホロコーストが描かれています。

 『ファニー 13歳の指揮官』
        ファニー・ベン=アミ 
        ガリラ・ロンフェデル・アミット 編 伏見操訳 岩波書店

 第二次世界大戦中に、フランスとスイスで子ども時代を過ごした著者ファニ
ーの実話。ファニーから聞いた話を編者のガリラ・ロンフェデル・アミットが
書きおこしたものです。

 ナチスの手を逃れるために13歳の少女、ファニーが自分と妹、そして同じよ
うな子どもたちと力をあわせてスイスに渡るまでが臨場感をもって語られてい
ます。

 逃亡する旅の途中、リーダーの青年は突然離れてしまい、代わりに指揮官と
して11人の子どもたちの命を預かることになったファニー。
 ファニーは仲間達と一緒に生きのびるために、知恵をしぼり勇気をもってス
イスに向かいます。

 ファニーは児童救済協会の子どもの家で3年間過ごしているのですが、この
家での学びがファニーに生きのびる強さを与えています。

 そこでは、学校に通えないファニーたちに監督官の大人たちが芸術、文学、
絵などを教えてくれました。

 監督官のひとりエテルはこういいます。

「今みたいにたいへんな時代、教育の目的はひとりで生きていけるようにする
ことなの。だって、これから何があなたたちを待ちかまえているか、わからな
いからね」

 ところで、この物語にもファニーが偶然にも分娩にたちあうシーンがあり、
『いのちは贈りもの』に通じるものを感じました。

 人間の赤ちゃんが生まれてくるところを見たファニーは興奮します。

「人生で見たなかで、いちばんきれいなものだったよ……」


 編者であるイスラエルの作家ガリラ・ロンフェデル・アミットは、『心の国
境をこえて』『ベルト』『ぼくによろしく』(さ・え・ら書房)など、とても
読みごたえのある作品を書いています。


 本書の映画がこの夏公開されています。
「少女ファニーと運命の旅」
 8/11(金)より、TOHOシマズシャンテほか全国ロードショー
 公式サイト http://shojo-fanny-movie.jp/
 

 私も娘と観る予定です。
 
(林さかな)
会津若松在住。
編集協力した新訳「オズの魔法使い」(復刊ドットコム)シリーズ
★おかげさまで少しずつ重版されています
http://1day1book.strikingly.com/

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第92回 第一次世界大戦はいかに始まったか(その2)

 先月に引き続き、『夢遊病者たち −第一次世界大戦はいかにして始まった
か−』の下巻(2巻)を読む。2巻には事項索引と人名索引がついているから
少しは読みやすかった。

 下巻は戦前のそれぞれ列強の動きを解説し、サライエヴォでのオーストリア
皇太子夫妻の暗殺事件の様子を詳細にみて、その後宣戦布告までの1ヶ月間の
ヨーロッパの動きを丁寧に追う。

『夢遊病者たち −第一次世界大戦はいかにして始まったか−』(2巻)
(クリストファー・クラーク 著)(小原 淳 訳)(みすず書房)
(2017年1月25日発行)
『THE SLEEPWALKERS−How Europe Went to War in 1914』
(Christopher Clark)(2012)

 2巻の各章は以下の通り。

第5章 バルカンの混迷
第6章 最後のチャンス−デタント(緊張緩和)と危機 1912〜14
第7章 サライェヴォの殺人
第8章 広がる輪
第9章 サンクトペテルブルグのフランス人
第10章 最後通牒
第11章 威嚇射撃
第12章 最期の日々

 我々日本人にはあまり知られていないが、バルカン戦争という局地戦が1914
年の第一次世界大戦の前に行われていた。バルカン戦争は2度行われている。
最初の第一次バルカン戦争(1912.10−1913.05)はトルコ帝国から独立したブ
ルガリア、ギリシャ、モンテネグロ、セルビアとオスマントルコ帝国と戦争で
あり、第二次バルカン戦争(1913.06−1913.08)は第一次バルカン戦争でほと
んど一人勝ちして領土を広げたブルガリアへの不満からギリシャ、モンテネグ
ロ、セルビアがブルガリアを攻めた戦争である。

 そして翌年勃発する第一次世界大戦は、いわば第三次バルカン戦争とも云え
る。つまり、今回はアドリア海に面したボスニア・ヘルツェゴビナをオースト
リア帝国が保護領化した。このことが隣国のセルビアを大きく刺激した。セル
ビアは自国の領土を広げたいと願っていた。そこにロシアが登場する。ロシア
という列強が登場することによって英仏という列強も加わり、さらに独伊が介
入する。こうして役者が揃い、丁々発止の外交戦を戦わす。

 汎スラブ主義を標榜するセルビアはロシアを兄として慕い、是非にもオース
トリアの横暴を食い止めてほしいと願う。オーストリアはロシアに対してトル
コの両海峡の優先的な通行権を認める代わりにボスニア・ヘルツェゴビナの保
護領をロシアに認めてもらうように交渉する。ロシア内部は親セルビアか親オ
ーストリアのふたつに分かれて論争が始まる。結局、露独墺(ロシア・ドイツ
・オーストリア)の三国は皇帝をいただき、彼に主権が存する19世紀的な君主
国なのだ。したがって、同じ体制としてシンパシーを感じている人が多い。

 ロシアの野望はボスポラス・ダーダネルス両海峡を手に入れること。しかし
これにはロシア以外の国々がこぞって反対している。特にイギリスはロシアの
南下を抑えることが国是であり、外交政策の基本なのだ。その両海峡を領土に
している黄昏のオスマントルコ帝国。かの国はこの両海峡の守備をドイツに任
せようとした。ロシアで起こる大規模な反対運動。今にもロシアが攻めてくる
という不安にさいなまれるトルコ。そしてもちろん両海峡をドイツにも渡した
くないイギリス。

 一方でセルビアを海に出したくないオーストリアはそのためにボスニア・ヘ
ルツェゴビナを自国の保護領としたのだ。しかしあまりにも周囲の軋轢が大き
く自国だけではボスニア・ヘルツェゴビナを統治できないのがオーストリアの
悩みの種だった。オーストリアはどうしてもドイツに援助を依頼したくなる。
ドイツはイギリスとの海軍拡張競争をしており、積極的にはオーストリアの援
助はしたくない。しかしやはり同じゲルマン民族の国同士、オーストリアを見
放すことはできない。

 さて、フランスである。フランスの対外政策は対ドイツ包囲網を構築するこ
とにある。根強い反独意識がフランスの外交政策の基本だ。ドイツに不利益に
なることは何でもする。ドイツを挟んで東側のロシアと同盟を結ぶ(露仏協商)。
ドイツの同盟国であるオーストリアに対抗するためにバルカン半島の小国に積
極的に借款を施し投資する。この時期フランスの外交政策を決定していたポア
ンカレは、ロシアとの同盟を強化し、軍備を増強し、ドイツと徹底的に対立す
る道を選んだ。バルカン半島での対立を局地の対立にとどめたいのはイギリス
であり、ドイツであるが、それを大きな対立にしたいのはフランスであった。
バルカンにおけるオーストリアとロシアの対立を局地的なものに留めず、ドイ
ツを引っ張り出し、ドイツに一撃を与えるのが、フランスの究極の目標になっ
た。

 ドイツはロシアをフランスから遠ざけたい。皇帝が従兄弟同士なので、とて
もよい友情がふたりにある。ニッキー(ニコライ鏡ぁ砲肇Εリー(ヴィルヘ
ルム鏡ぁ砲噺討唸腓辰討い襦この皇帝同士の関係で両国関係を発展させたい
と願っている一派があるが、一方ではそれぞれ相手の国に対する根強い不信感
(対独不信と対露不信)があり、相手国の勢力を削ぐ方策を進める一派もある。
それぞれの国で政権内の権力争いが起こる。そしてふたつの勢力の間で揺れる
皇帝。

 ドイツでもロシアでも同じ様相を呈している。結局は皇帝の友情よりも帝国
主義の力学が勝り、戦争になってしまうが。ドイツはフランスとことを構えた
くないのか、フランスとの一戦も辞さず、ということなのか。バルカン半島で
はオーストリアの後押しをするが、対フランスとの戦争はかなり負担を強いら
れるのは目に見えている。フランスには強固な要塞がたくさん存在するので、
フランスに攻め込むためにはどうしても中立国のベルギーの国土を通過しなけ
ればならなくなる。そうなれば大陸での対独戦争になってときに中立を約束し
ているイギリスは確実にドイツに宣戦布告する。ドイツの決定は最後には“男
らしさ”で決まってしまったようだ。つまり、戦争を回避する女々しい方策で
はなく、断固男らしく戦争をする、という決定だった。

 そしてサライエヴォの事件が発生する。

 オーストリア皇太子夫妻がボスニア・ヘルツェゴビナのサライエヴォでセル
ビア人青年によって暗殺されたのは、1914年6月28日。オーストリアがセルビ
アに宣戦を布告したのは、7月28日。7月31日にドイツはロシアに最後通牒。
8月1日、ドイツ、ロシアに宣戦布告。8月2日、ドイツ、ルクセンブルクに
侵攻。8月3日、ドイツ、フランス、ベルギーに宣戦布告。8月4日、ドイツ、
ベルギーに侵攻。イギリス、ドイツに宣戦布告。・・・・・

 暗殺事件からすぐに戦争が始まったわけではない。この一ヶ月間、各国の首
脳はめまぐるしく仕事をしていた。本書の後半300ページは戦争までの一ヶ月
間の出来事を追っている。世界戦争は避けることができず、ついに起こってし
まった。

 本書は、なぜ戦争が始まったのか、を考察していない。いかに始まったのか、
を淡々と記述している。それは見事だ。読み終えると、戦争になったのは仕方
なかった、という気になる。なぜ戦争が始まったか、と原因を探ることは戦争
を回避するために何が足りなかったか、という視点を避けて通ることはできな
いが、本書は最初からそれをしていない。もともと『夢遊病者たち』が戦争に
至る道をすすんでしまったわけで、戦争の原因は、そういう夢遊病者がちが当
時、各国の政策決定担当者になっていたことにある、としているわけだ。

 本書の結論はこうなっている(本書832ページ)。

 “彼らは用心深かったが何も見ようとせず、夢に取り憑かれており、自分た
ちが今まさにもたらそうとしている恐怖の現実に対してなおも盲目だったので
ある。”

 何も見ようとせずに、現実に盲目だったこの戦争へ至る過程の数年間を800
ページを超える大著にまとめた筆者に最大限の敬意を表する。


多呂さ(日本は低気圧の通り道になっています。毎日不愉快な天気が続きます)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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■人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える/show-z
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働き方改革の実現に必要なものとは?

『「納品」をなくせばうまくいく』
倉貫義人著 日本実業出版社 (2014/6/12)


 今年3月、安部内閣が一億総活躍社会の実現に向けた最大のチャレンジとし
て“働き方改革の実現”を掲げ、メディアでも大きく報じられました。

 その中で、課題の1つとして取り上げられているのが長時間労働の問題。昨
年末に起こった大手広告代理店社員の自殺問題などは記憶に新しいところです
が、日本人のワークライフバランス実現のためにはまず避けて通ることができ
ない、喫緊の課題です。

 私が身を置くIT業界というところは、残念ながら長時間労働の習慣が染み
ついてしまっており、正直、あまり幸せとは言えない業界であります。

 だいぶ前に、若者が働きたくない業界や職種を“3K”という言葉で表現し、
「きつい」「汚い」「危険」の頭文字として揶揄されていた時代がありました
が、これがIT業界になりますと「きつい」「厳しい」「帰れない」だったり、
「気が休まらない」「給料が安い」「結婚できない」「キリがない」など様々
な言葉に派生していって・・・それこそキリがなくなっていたりして。

 ではなぜ、こんな状況に陥ってしまうのか。要因の1つとして挙げられるの
が、顧客との契約手法の問題です。

 日本ではシステムの受託開発を行う際、あらかじめどんなシステムを作るか
を、発注者(顧客)とIT会社が相談して事前に細部まで決め、それをもとに
開発期間や費用を見積もってからシステムの開発を開始、決められた期限まで
に納品を行う“一括請負”と呼ばれる契約形態が一般的となっています。

 しかし、システムの開発にはトラブルがつきもの。プロジェクトがスタート
してから、当初の見積もりの甘さによる人員不足の発生、仕様の変更、それに
よる追加費用の発生など、想定外のトラブルが起こるのはよくあるお話です。

 で、そのシワ寄せはすべて、現場で働くエンジニアにいくんですね。指示さ
れた通りに仕事をこなしていたはずなのに、突然業務の変更を命じられるとか、
業務量が想定以上に増えてしまうとか。しかし何が起こっても、納期を遵守し
なければならないため、結果的に長時間勤務を強いられてしまうこと、よくあ
ります。

 本来、システムエンジニアの仕事とは、働いた時間と成果・業績が必ずしも
連動しない、いわばクリエイティブなお仕事として定義されます(実際、裁量
労働制の対象職種にも規定されています)。しかしこの契約形態によりクリエ
イティブな側面は薄れ、エンジニアの仕事は顧客と決めた納期、つまり時間と
の戦いになっていくため、結果、現場は疲弊しがちです。

 それなら、エンジニアと顧客の双方が幸せになるために、この一括請負とい
う考え方、つまり最終的に“納品する”という概念自体を見直したうえで、新
たなビジネスモデルを提唱しているのが、今回の本です。

 著者が提唱する“納品のない受託開発”とは、IT会社が顧客と“顧問契約”
を結んで、顧問料を月額定額制で受け取り、契約をしている間は、システムの
開発や運用、メンテナンス、各種の相談を行い続けるというビジネスモデルに
なります。

 つまり、事前に何を完成させたらプロジェクト終了、といった取り決めは、
何も行わないんですね。最初にするのは、エンジニアが顧客のビジネスモデル
や課題を理解し、顧客と必要なシステムの認識を合わせること。つまり顧問と
して、顧客に言われたものをその通りに作ります、ということもやりませんと。

 その後、必要となるシステムの最小限の画面設計と機能開発を短期間で実施
し、顧客と定期的に打ち合わせをしながら、さらに必要な機能を追加で開発し
たり、運用を行ったりしていきます。当初に作るものの最終形や期間を設定し
ないため、途中でエンジニアの勤務に無理が生じる可能性は低く抑えられます。

 また、このやり方は顧客にとってもメリットがあります。徐々に出来上がっ
ていくシステムを見ながら、どこまでの機能を実現するかや、途中で浮かんだ
アイデアを追加で反映するかどうかなどを、都度エンジニアと相談しながら、
その時々の費用面やスケジュールを見て決定できるためです。一括請負なら、
ここまでフレキシブルな対応は当然不可能でしょう。

 ただこのやり方、数百人以上のエンジニアが動くような大規模システムの開
発案件には適用しにくい、そして開発前の時点で正確な費用を見積もることが
できないといった点がデメリットであり、このことは本書内で著者自身が言及
しています。しかし、エンジニアと顧客双方のメリットを追求したビジネスモ
デルを考案し、実際に自らの会社にて実践する著者の姿勢には感服しきりです。

 働き方改革という号令のもと、働き方の見直し、残業時間の削減というと、
まず最初に出てくるのが、会社の風土改革や、業務効率化といった観点です。
もちろん、それらも大事なポイントですが、仕事や会社の“仕組み”そのもの
から問題を考え、解決策を考案するというのは、もっとも抜本的、成果を伴う
改革に成り得ます。あるものを根底から変えるのは難しいことですが、既に常
識と思っている既成概念を疑う姿勢だけでも、常に持ち続けていたいと感じた
のでした。

show-z
某IT企業で人事担当者として勤務。千葉県在住。

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・『ミスなくすばやく仕事をする技術』(秀和システム)
 http://www.shuwasystem.co.jp/products/7980html/5125.html

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・『セブン・ハーフ・アンド・ワン』(文芸社)
 http://www.bungeisha.co.jp/bookinfo/detail/978-4-286-17241-5.jsp

・『トシ、1日1分でいいからフクシマ英語に触れてみて。それだけできっと世
  界は変わる。』(SCICUS)
 https://www.facebook.com/scicus.jp/posts/1054815034566643

・『あれか、これか
  「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門』(ダイヤモンド社)
 http://www.diamond.co.jp/book/9784478066041.html

・『最高のリーダーは何もしない』(ダイヤモンド社)
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 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 ちょっと配信が遅れて、ちょうど終戦記念日になりました。誰もが悪と知り
ながらなしてしまう。平和を生み出すには、そういう人の愚かさを知った上で
のリーダーシップが必要ではないかと、最近、思います。(あ)

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★「目につく本を読んでみる」/朝日山
→ 『闇ウェブ』セキュリティ集団スプラウト 文春新書

★「本の周りで右顧左眄」蕃茄山人
→ 今回はお休みです。

★【募集中】献本読者書評のコーナー
→ 献本お待ちしています!

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#85『アックスマンのジャズ』

 こんなミステリーがあったら、手に取らずにいられますか?

 アックスマン、日本語で言えば斧男、と呼ばれる殺人鬼が、1919年のニュー
オーリンズで次々と残虐な殺人を繰り返す。

 いや、ここまでは、よくあるサイコスリラー。

 しかし、恐怖に震える市民に、新聞を通じてアックスマンがこんな予告をし
たとしたら?

 いわく、次の火曜日の零時15分に再びニューオーリンズに現れるが、自分は
ジャズが気に入っているので、この時刻にジャズバンドが演奏中の家にいる者
全員は見逃す。逆に言えば、ジャズを聴いていない者は、斧を食らう。

 ジャズを愛する殺人鬼!

 しかも、これは実話に基づいており、この予告が実際にあったとしたら?

 しかもしかも、探偵役が、あのディキシーランド・ジャズの帝王、ルイ・ア
ームストロングだとしたら?

 正確に言うと、まだ19歳のルイは、本書では名前をフランス風の発音に改め
ておらず、「ルイス」と呼ばれているし、既にトランペッターとして頭角を現
しつつあって、探偵役というよりも、探偵志望の幼馴染アイダのために、彼女
の助手兼ボディガード役を買って出るのだが。

 そしてもちろん、この素人探偵コンビ以外にも、当然、警察のアックスマン
事件担当警部がおり、さらに彼と過去の因縁を持つ元刑事までもが捜査に加わ
ってくるのである。

 これまでにも、探偵役が二人いて、競い合うものはあった。ドラマ『貴族探
偵』における武井咲と相葉雅紀のように。
 しかし本書で繰り広げられるのは、三つ巴の探偵レースだ。
 三組の探偵たちが次第に真相に迫りゆく過程を交互に描くことで、サスペン
スをらせん状に高めていく手法は、新人作家のデビュー作とは思えない。

 しかもしかもしかも、複雑な真相を語る上で、一人の名探偵がクライマック
スに一気に謎を解く形式だと、説明が延々と続いてしばしば退屈してしまうの
だが、本書では三者が三様に異なる角度から真相を暴いていくため、クライマ
ックスが分散して、その弊害がない。

 ある探偵は事件のそもそもの発端となる過去を暴き、別の探偵は政治家とマ
フィアとの癒着の観点から、別の探偵はマフィア内部の権力抗争の観点から、
それぞれが真相を段階的に解きほぐすので、複雑に絡み合った謎解きがスムー
スに理解される。
 この辺の手さばきもまた、ベテランのような円熟味だ。

 しかし、著者のレイ・セレスティンは本書を持って世に出たのである。それ
もアメリカ人ではなく、イギリス人。

 いくら同じ言葉を話すとはいえ、異国の作家がわざわざニューオーリンズを
舞台に選んだのは、きっとジャズが大好きだからに違いない。

 大体イギリス人という連中は、当のアメリカ人以上にアメリカのブラック・
ミュージックが大好物だ。それは、エリック・クラプトンやジェフ・ベックと
いったイギリスの若者(当時)が本国の白人に顧みられなかったブルースを
「発見」し、そこから「ロック」を生み出したことからもわかる。あるいは、
埋もれたソウルの名曲を掘り起こし、ノーザン・ソウルと称してアメリカに逆
輸入したのが、ロンドンの北に位置する街のDJたちであり、だからこそ、ノ
ーザン(北の)と呼ばれたことからも。

 しかもしかもしかもしかも、著者が単にジャズを聴くだけではなく、恐らく
自身も楽器を、それも管楽器を演奏するのでは、と思わせるのは、アックスマ
ンが殺人を予告した夜、街全体がこの素晴らしい音楽に満ち溢れる中、ルイス
がトランペット・ソロを奏でるシーンのリアリティである。

 そもそも音を言葉で表現するのは至難の技で、音楽を扱う小説において、演
奏シーンがどのように描かれているかは、その本の音楽本としての価値を決定
づけると言って過言ではない。その重要な箇所で、セレスティンは、ルイスが
それまでより一回り大きく成長した見事なソロを吹く様を、彼の子供の頃の思
い出と交錯させながら、詩的表現をちりばめて巧みに描いているのだが、それ
だけではなく、「ドラムの半小節のフィルイン」とか「スネアドラムのダブル
ストローク」とか「ストップタイム」とか「完璧で澄み渡ったハイBの音をま
る四小節分もキープ」といった、音楽用語を交えた具体的な表現をしているの
である。
 これこそ、著者に演奏経験があるのでは、と思わせるポイントだ。

 もうひとつ、音楽本としてのポイントは、1919年のニューオーリンズの音楽
状況の克明さである。

 それは、ジャズ誕生の地のイメージが強いこの街で、意外にもオペラのアリ
アが流行歌のように愛され、例えば物語の中でルイスのかけるレコードが『セ
ビリアの理髪師』だったりすることだ。

 そうした描写が、単なる蘊蓄に終わらず、事件全体の背景を支える状況の描
写にもなっているところが、また素晴らしい。

 つまり、さまざまな音楽が混沌として共存している姿を通して、この街にさ
まざまな人種が混在していることを象徴しているのである。
 そして、そうした人種状況が、事件の大元の原因である、殺人鬼アックスマ
ンの心に潜む、哀しみの源泉になっているのだ。

 ニューヨークがビッグ・アップルと呼ばれるのに対し、この街のニックネー
ムはビッグ・イージー。大いなる気楽さ。
 確かに、のんびりした一面はあるのだが、その一方で人種差別と暴力がはび
こるヘヴィな土地でもあった。
 本書はそんなビッグ・イージーの、暗黒面を切り裂いて見せている。

 大団円では、ニューオーリンズがハリケーンに襲われ、街が洪水で水没する
中、追う者と追われる者の死闘が展開される。
 昔この連載で取り上げたドロシー・セイヤーズの『ナイン・テイラーズ』。
あのクライマックスでも、村が嵐のために水浸しになったのを思い出す。恐ら
く同じ英国のミステリー作家として、著者もこの偉大な先人の残した名作を意
識したに違いない。
 あるいは、記憶に新しいハリケーン・カトリーナによる被害で、ニューオー
リンズが水没した出来事を念頭に置いているのかもしれない。

 あとがきによると、本書はイギリスでテレビドラマ化されるらしい。
 また、ラストで、主要なキャラクターの二人が、その後シカゴに移り住み、
探偵として働き始めるという、いかにも「シリーズ化しまっせ」な終わり方を
しており、実際もう第2弾『Dear man's blues』の刊行が決まったそうだ。

 シカゴかあ。
 シカゴと言えばブルース。タイトルにもちゃあんと入っている。

 何とも、楽しみなシリーズが始まってくれた。


レイ・セレスティン
北野寿美枝訳
『アックスマンのジャズ』
2016年5月10日印刷
2016年5月15日発行
早川ポケットミステリ

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
ここ半年、私生活で懸案事項があって、それが片付かないとなかなか気が晴れ
ないなあ、と思っていたのですが、先月ようやく決着し、ほっと一息。すると
待っていたかのように、仕事も順調になって、新しい案件の声がかかったり、
にわかに活気づいてきました。何事にもタイミングってあるんだな、と思う今
日この頃。

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■「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
----------------------------------------------------------------------
『こども孫子の兵法』
 斎藤孝監修(日本図書センター刊)

「強くしなやかに生きる」方法を子どもに伝授?でOK?

 子どもは大きく、孫がいないおばちゃまは、児童書売り場にはとんとご無沙
汰。
 でも、なんかのついでに行ったりするとき、最近の児童書ってなんかイヤっ
て思うことが多かったです。

 それは、ある考え方なり主義があって、そこへ誘導するような本が増えてん
じゃないの?って思ったから。実用書というより、啓発書?つまりプロパガン
ダ本ですね。戦争反対系ありいの(趣旨は間違ってません!)、もちろん、フ
ェミニズム系も来てる(趣旨は間違ってません)、恋愛至上主義系ありの、細
かいところではこどもを早く寝かせるための本とか(大事です)…。

 そんな中で、一番、「これあり?」って思ったのが「こども孫子の兵法」
(監修・斎藤孝)。とうとう出たか、こども向き自己啓発本!と思いました。

 子ども向きに孫子の兵法を説くなんて、味気ない味気ないと思ったのであり
ます。
 この本はヒットして続編として「菜根譚」やらなにやら出ていますが、どう
なんだろ〜。そう思って読んでみました。

 思ったのは、「これ合ってるの?」ってことです。孫子の兵法にくわしくな
いのでわからないんですが。たとえば「囲師には必ずかき、窮寇には迫ること
なかれ」って「相手を追いつめすぎてはいけないよ」ってあって「勝手もいつ
もと変わらない態度でいることこそ、勝ち方のマナーなんだ」ってあるけど、
ほんとにそうなの? そんなことで中国の春秋時代で生きていけてたの? こ
れってニーチェの超訳みたいなものではなくて?

 あと対象が何歳か不明ですが、「兵とは詭道なり」ってのもどうなんですか?
説明に「正々堂々は大事だけど、サッカーやバスケにもフェイントがあるよう
にかけひきも大事で、それがきみがこの世をしなやかに生きていくための方法」
って書いてあるのも大丈夫って思いました。

 詭道ってバスケのフェイントでOK? で詭道を使うことは「強くしなやか
にいきるため」ってありますが、この「しなやか」って言葉、「ずるい」をめ
っちゃくちゃいいように表現した言葉のように思えて、ライターうまいな〜っ
て思うと同時に、いいの?それほんとに、子どもに対して!って思いました。

 これは、この本にも書いてありますが、むしろお父さんのための自己啓発本
として適しているのかもしれません。
 決めるのはあくまで自分だとか、ピンチがチャンスだとか、逃げることも手
だとかのフレーズは実社会で戦っている企業人には激励になると思いました。
(孫子の兵法とは違っているかもしれませんけど)。

 でもでもでも。
 実用書もたしかに役に立っておもしろいことはおもしろい。

 でも、子どもにこそ、もっと心の底から心情を耕すことができるような、深
い本を読ませてあげたいとおばちゃまは思うのです。
 それが何かはわからないけど、子ども時代だからこそ、自己啓発より実用書
より文学的作品を読んでほしいと思ったことでした。


大友舞子(おおとも・まいこ)
昭和20年代生まれのフリー編集&ライター。関東生まれで関西在住。

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『闇ウェブ』セキュリティ集団スプラウト 文春新書

 ネットが様々な犯罪の舞台になっていることは、いまさら言っても誰も驚か
ないが、どこで犯罪が行われているのかご存じだろうか。

 えっちな画像にひかれてクリックしたら「入会手続き完了、二万円払ってね」
は、クリックした先に詐欺サイトがあるのはみんな知っている。しかし麻薬や
偽造パスポート、児童ポルノなど違法性が高く、持っているのがわかったら即
逮捕されるようなモノもネットで売っていると言うが、どこで売っているのか?
こういう”商品”のスパムメールは全然来ないではないか・・・

 この本は、そういう世界の解説書である。著者の名義はネットセキュリティ
のサービス会社だが、後書きによると社外の専門家の力を仮で書いている章も
ある。
https://sproutgroup.co.jp/about/

 で、どこにあるのかというと、匿名性の高いブラウザを使わないとアクセス
できない「ディープウェブ」にあるらしい。匿名性の高いブラウザとは、PC
遠隔操作事件で、いったん裁判で無罪になりながら調子に乗って自滅した某が
使っていたTorのようなブラウザである。

 Torは元々米海軍の関連組織が作り、今はオープンソースで開発が継続され
ている。このブラウザのしくみは書いてあるがここでは割愛して、そもそもな
ぜこんな匿名性の高いブラウザが作られたのかと言えば、言論の自由がない国
の人たちのためだ。

 反政府的な発言や行動を行えば命が危ない。そんな国で自由を求める人たち
の発言や通信を守らなければならない。ネットで彼らを守るのがTorなどの匿
名ツールなのだ。

 そんなツールは闇の世界の住人にとっても都合が良い。しかし、闇のWebペ
ージが興隆してきた理由はもう一つある。ビットコインの発明である。カネの
流れはいかに隠そうとも金融機関の記録には残る。ここがネットにおける違法
な商品取引の泣き所だった。そこにビットコインという匿名性の高いカネの流
通ができるしくみができたことで、この世界はとても便利になったのだ。

 もちろん犯罪を摘発する側に立つ捜査機関も、そんな状況に手をこまねいて
いるわけではない。違法サイトのアマゾンと呼ばれた「シルクロード」の摘発
など、多くの殊勲を挙げている。しかし、それは匿名化技術が破られたのかと
いうと、著者たちはどうも怪しいと見る。矛で盾を破ったから逮捕できたので
はなく、犯罪者たちがついうっかり残した手がかりに食らいついて逮捕まで持
ち込んだというのが正直なところではないかと見る。実際、シルクロード摘発
にはおとり捜査が用いられ、捜査官がシルクロードの親玉であった「恐怖の怪
物ロバーツ」ことロス・ウイリアム・ウルブレヒトのパートナー的存在にまで
なっていたので証拠を押さえることができた。これがサイバー空間のみなら起
訴できたか、筆者らには疑問らしい。

 そうした捜査機関対違法取り引き業者との攻防は読んでいただくとして、我
々に直接関わってくるのは違法マーケットで取引される個人情報だろう。日本
の場合、これまで漏れ出る個人情報と言えば詐欺に一度引っかかった人のリス
トなど限定的なモノが多かった。しかしこれからはヘルスデータが彼らのター
ゲットなるだろう。いや、もうなっている。背景にあるのは、当然 Apple Wat
chに代表される、ネットに接続されるウエラブル端末の普及とビックデータの
分析の流行が背景にある。そしてこれまで漏れ出た情報と照らし合わせれば、
たとえば自分の娘になりすました奴が「父さんへ、これいいんじゃない?」と
か書いて健康食品や薬のリンクを張ってくるなんてことが可能になる。娘なら、
父親が糖尿病を恐れていると知っている。その娘から糖尿病予防ドリンクのリ
ンクが張られたメールが来たら真面目に買うことを検討する父親は多いだろう。
さらにそうして買ったネットにつながった医療機器を暴走させて人を殺すこと
だって可能性としては考えられるのだ。

 そんな個人情報の漏洩をいかに防ぐかについては、実は妙案はない。なにせ
FBI長官の個人情報すら漏れるのが実情であるし、個人がきちんと情報を管理
しても関係する役所や会社からも漏れる。漏れないようにするのは無理である。
今で漏れていないのは運が良かっただけだと思った方がいい。ではどうすれば
いのか?それは本には書かれていない。書きようもない。

 ネット技術が進化すればするほど、その技術を使った犯罪は起こるし、その
犯罪主体も個人や犯罪者グループのみならず、国家まで参加してくる。今はそ
んな時代だと言うこと。それを少なくとも理解はしておこう。

 怖い時代になったものである。


(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)

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・『セブン・ハーフ・アンド・ワン』(文芸社)
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・『トシ、1日1分でいいからフクシマ英語に触れてみて。それだけできっと世
  界は変わる。』(SCICUS)
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・『あれか、これか
  「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門』(ダイヤモンド社)
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・『最高のリーダーは何もしない』(ダイヤモンド社)
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■あとがき
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 ここのところヘッダ部分のミスが多くて恐縮ですが、前回お送りした10日号
の号数が間違っていました。正しくは、633だったのですが、なぜか635で配信
してしまいました…。

 指摘が無いので、誰も気にしてないかもですが…(笑。(あ)

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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→『難波鉦異本』と、なにわ「駅便」考

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→贈り物

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第一次世界大戦はいかに始まったか(その1)

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
└──────────────────────────────────

 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<91>『難波鉦異本』と、なにわ「駅便」考

 冒頭のっけに便所の話題で恐縮だが、こんな張り紙を見つけた。

「最近、トイレを長時間占有される方をお見かけ致します。長時間に亘るご利
用は、他のお客様に大変ご迷惑となりますのでご遠慮ください。」

 阪急梅田駅のトイレの個室内にあった張り紙だ。
 張り紙では、その後に続けて、場合によっては強制的に開錠し、「ご協力を
お願い」する場合もあると告げ、「ご理解ご協力をお願いいたします」と結ん
でいる。

 これ、わしもかねてから不思議に思っていたことなのだ。

 わしは、街中での「突然の便意」が多い人なので、駅のトイレも利用するこ
とが多いのだが、通勤時間帯の朝など、個室が全て「塞がっている」というこ
とが多くて、近くに代替の便所がない場合は、そこにとどまって空くのを待つ。

 たいていは、5分程度も待てばどこかは空くのだが、中に、10分15分、時と
して30分ほども塞がったまま…という個室がままあるのである。

 鈴木大介のルポ『家のない少年たち』(太田出版)を原案とする肥谷圭介の漫
画『ギャングース』(講談社)によると、近頃あちこちで見かける「多目的トイ
レ」というのは、その広さと密室性から、「半グレ」集団や詐欺グループの
「打ち合わせ」に使われることが多いらしいのだが、多目的ではない普通のト
イレが、長時間にわたって塞がっている…というのは、いったい中でナニをし
ておるのか?

 ナニをやっているのかはわからないが、いずれにしても、最近の便所、こと
に駅をはじめとする公共トイレが「こぎれいで快適」になっているのが、その
滞留時間を長くする原因のひとつでは、あると思う。

 昔の公衆便所や駅の便所ったら、狭い、汚い、臭い、ハエや蚊やその他の虫
がぶんぶん飛び回り、這いずっているわ、壁は落書きだらけだわ、「臭い」は
すでに限界を超えて、目に染みるほどだわ……で、長逗留するどころか、一分
一秒でも「早く出たい」という場所でしたからね。

 かつてわしが実際に体験した便所で、一番衝撃的だったのは、1975年、国鉄
渋谷駅で遭遇した「すり鉢便所」。

 個室のドアを開けるとそこは、四方の壁から真ん中の「穴」に向かって、す
り鉢状に傾斜していて、真ん中の穴の左右に、コンクリートブロックほどの大
きさの四角い「島」がふたつあり、そこがすなわち足を乗せるところ。

 で、その島というか足場に乗ってしゃがみ込み、穴に向けてウンコをひり出
し、水洗レバーを引いたら、驚いた。

 四方の壁の全面全方位から、水が「ずざざざ〜〜っ」と流れだし、たちまち
個室全体が滝壺状態……に至ってようやく、「足場」の意味が理解できたのだ
が、あれには、たまげた。

 これは、ホームレス…って当時は「浮浪者」と言ったのだが、その人たちが、
一夜の宿として泊まり込むのを、防ぐために考案されたトイレだったようだ。

 しかし、やはり利用者には至極不評だったのだと思う。

 なにせ、「個室全体が便器」なわけで、たとえば不注意でポケットから何か
を落としてしまうと、たちまちそこは「便器の中」なのだ。
 渋谷駅で一度きり遭遇したすり鉢便所は、その後二度と目にすることはなか
った。

 ちなみに、近頃の「駅便」ランキング関西版…ってもわしの行動範囲に限ら
れるのだが、ダントツの一位は、総合点で大阪市営地下鉄。

 以前は、「長居したくない」トイレのダントツ一位だったのだが、橋下市政
の置き土産で、悪評高かった地下鉄売店(午後6時にはとっとと閉店する売店
だった)の全店コンビニ化とともに、トイレもまた、どの駅もピカピカトイレ
に改装された。

 シャワートイレの設置率でも、おそらくは関西圏ナンバー1だと思う。

 そして、ここもまたトイレが快適に改装された長堀鶴見緑地線西大橋駅から
ほど近くに、出版取次大阪屋の本社ビルがあった。

 かつて本屋時代に、何度か訪れたこともあったが、クラシカルな外観が特徴
的なビルで、その建物が、その昔「新町遊廓」の演舞場だったと聞かされ、
「ええ?」と驚いたのは、そもそもそこが元は遊廓だったことも知らなかった
し、辺り一帯が完全にビジネス街と化していて、「遊廓」の面影がどこにも残
ってなかったからだ。

 何年か前にたまたまこの前を通りかかったとき、そのクラシカルな建物が跡
形もなく取り壊され、仮囲いの中でタワーマンションの建設が進んでいるのを
見て、再び「ええ?」と驚いた。

 出版不況による本社ビル売却、栗田出版販売との経営統合、さらにまた新会
社への移行…と、いろいろとあったらしいとはその後に調べて知ったが、本屋
業界を離れてからこちら、全然知らなんだ。

 もりもと崇『難波鉦異本(なにわどらいほん)』は、かつての旧大阪屋本社
付近一帯が、江戸の吉原、京都・島原とともに「三大遊廓」と並び称された
「新町遊郭」だった時代の物語。

 大坂新町遊廓は、遊女に対する戒律も非常に厳しかった江戸吉原とは違って
緩やかで、遊女たちは、昼間は平服で廓の外に出かけることも許されていたし、
廓の出入り口も、吉原のように一か所だけでなく東西両側にあって、「通り抜
け」も可能だった…等々という新町遊廓とその周辺事情に関する知識もふんだ
んに盛り込まれた漫画なのだった。

 この新町遊廓で、最高級の「太夫」に次ぐ二番手の位階にある「天神」遊女
の「和泉」を主人公とし、その禿(かむろ)である「ささら」との掛け合いを
中心に、ときに実在の大作家・井原西鶴を狂言回しとして展開する、元禄大坂
色里模様。

 少年画報社の時代劇マガジン「斬鬼」に連載され、単行本も同じ少年画報社
から2巻まで発売されて、3巻の発売を今か今かと待っていたのが10と数年前
だ。

 ところが、いっかな発売されないので、もう出ないもんだと諦めていたとこ
ろ、エンターブレインから新たに3巻揃いで出ている、と知った。
 これは取り寄せねば、と検索してみると既に品切れ。とりあえず「上・中・
下」巻のうち、下巻のみを古本で探し取り寄せたのだが、以前の少年画報社版
とは判型も違うし、収録作も微妙に違っているようなので、上巻・中巻も後か
ら取り寄せた。

 少年画報社には、昔からこういう単行本の尻切れトンボが多かったと思うの
だが、この『難波鉦異本』など、手塚治虫文化賞・新生賞も受賞してんのであ
る。
 きちんと最終巻まで面倒を見ていただきたかった、と思う。

 にしても、もりもと崇の名前を、ちかごろとんと目にしない。

 検索を入れてみても、単行本は、この『難波鉦異本』の他には、『大江戸綺
人譚−のっぺら女房』『鳴渡雷神於新全伝』(いずれも小池書院)が引っかか
ってくるのみ。
 『難波鉦〜』を連載した「斬鬼」はすでに休刊しているし、小池書院は倒産
している。

 なにやら不運に見舞われているような気配だが、もしもそうならば、ぜひと
も復活していただきたいと思う。そして、新たな時代劇漫画を読ませていただ
きたい、と切に思う。

 ところで再び「駅便」だが、阪神電車も近頃頑張っていて、各駅での改装、
シャワートイレ化が進んでいる。
 JRもまた、改装が進んでいる。
 阪急も、きれいに改装されたトイレが多いのだが、その改装後のトイレが、
なんでか「和式」中心で、イマドキ、「それは、ないやろ」と思う事しきり。

 最低ランクは「京阪電車」で決まり。ことに京都市内の駅便が、未だに
「汚い」「臭い」「和式のみ」の三重苦。

 外国人観光客が、ことに京都で爆発的に増えている昨今、あれは、どないか
した方が、ええと思うんやけどな、正味。


太郎吉野(たろう・よしの)
 2011年に神戸から西宮へ引っ越して、ただ今のホームグラウンドは甲子園。
右投げ右打ち。掛布二軍監督はひとつ年上の同級生。

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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73 贈り物

 誕生日や記念日など、贈り物をする機会が年に何回かあります。相手のこと
を考えて喜ぶものを想像するのは、送る方にとっても楽しい時間です。

 『イードのおくりもの』
           ファウズィア・ギラ・ウィリアムズ 文
           プロイティ・ロイ え 前田君枝 訳 光村教育図書

 本書はトルコ民話をもとに書かれたインドの絵本の邦訳です。
 イードとは、ラマダン月(イスラーム暦第9月)が開けるお祝いのお祭り。
巻末の訳者のことばによると、ラマダン月の断食明けのイードはたいへんもり
あがり、日本のお正月そのものだそうです。
 また、日本にもイードを祝うイスラーム教徒の人たちがたくさん暮らしてい
るそうです。

 さて物語は、くつやのイスマトさんが家族にイードの贈り物の買い物に出か
けるところからはじまります。相手が喜びそうなものを見繕い、最後に自分の
買い物もしたイスマトさん。でも、買ったズボンはゆび4本分長いのです。

 しかし、誰もがイードのお祭り準備で忙しく、イスマトさんのズボンをなお
す時間のある人が見つけられません。そこでイスマトさんは……。

 愛情たっぷりの締めくくりに心があたたかくなりました。

 絵はイギリスのニック・シャラットさんの画風を思い起こす、ポップな楽し
い雰囲気。色がきれいです。
 
 毎日の仕事や家事に追われているとなかなか相手が喜ぶことができないもの
です。おだやかに過ごすことを心がけていても、疲れていると難しい。それで
も、相手の喜ぶ顔を想像し行動するのは大事だとこの絵本を読んで思いました。

 贈り物にぴったりのおくりもの絵本です。


 『どうぶつたちがねむるとき』
   イジー・ドヴォジャーク 作 マリエ・シュトゥンプフォーヴァー 絵
                        木村 有子 訳 偕成社

 次のご紹介する絵本はチェコの絵本です。

 我が家はみな、一日のうちで一番待ち望んでいるのは布団の中に入るときと
いいます。つつがなく一日が終わり、お風呂でゆるみ、布団で眠る至福の時間。

 この絵本は、幼児向けのおやすみなさい絵本ではなく、様々な動物たちが、
どんな睡眠をとるのかについての知識絵本です。

 ペリカン、ブダイ、マルハナバチ、ラッコ、アザラシ、シロクマ、
 フラミンゴ、ヤマネ、キリン、ネコ、ミドリニシキヘビ、キツネ、
 クジャク、ラクダ、イヌ、アマツバメ

 フロッタージュ(でこぼこした物の上に紙をおいてこする技法)を効果的に
用いて描かれた動物たちは、独特で印象深く、なにより美しい。

 上記の中でいちばん眠る動物はわかりますか。
 私は初めて知りました。
 
 キリンは2時間くらいしか眠らないこともも初めて知りました。

 動物園に行って、実際に動物たちを観察したくなります。

 子どもはもちろん、大人にもおすすめの絵本。
 洒落て美しい装幀なので贈り物にぴったりです。

 最後にご紹介するのは、写真絵本。
 
 映画『世界の果ての通学路』をご存知ですか。
 偶然テレビで子どもたちと一緒に観た映画です。

 ケニア、アルゼンチン、モロッコ、インド、それぞれの厳しい通学路で学校
に向かう子どもたち。
 4か国それぞれの過酷さにびっくりしました。

 ケニアでは野生動物がでるので襲撃にあわないよう
 アルゼンチンでは、石ころだらけの道を馬に乗って通い
 モロッコでは週初め、夜明けに起きて22kmの道を歩き週末に帰ってくる
 インドでは、オンボロ車イスに乗っている弟を兄弟たちでかついで一緒に通
う。

 学ぶことが大事だとわかっているから、このような厳しい通学を日々してい
る、その姿に子どもと一緒に感嘆しました。

 今年高校生になった娘の英語の教科書には、この映画の話がのっていて、す
ぐにあの映画だ!とわかった娘が嬉しそうに教えてくれました。

 『すごいね! みんなの通学路』
 文 ローズマリー・マカーニー 訳 西田 佳子 西村書店

 西村書店刊行の新シリーズ「世界に生きる子どもたち」第一弾の絵本。
 これもドンピシャリ、映画と同じように厳しい通学路で学校に通う子どもた
ちがうつされています。

 地形の厳しさだけでなく、自然災害などでも通学を困難にさせる子どもたち。
日本の子どももいます。
 
 どの子も学校に向かって歩いています。
 いろいろな子どもたちがいる。笑顔だけでない、危ない道なので緊張した顔、
厳しい顔。

 巻頭には日本語版限定で、ノーベル平和賞受賞のマララさんの写真も掲載さ
れています。「すべての子どもたちに教育を受ける権利を」とマララさんは訴
え、レバノンに自身の基金で女学校をつくっています。

 若いマララさんを見習って大人もまた子どもの未来をつくっていきましょう。
そんな話を読んだ人としたくなりました。

 たくさんの子どもたちと大人に贈りたい絵本です。


(林さかな)
会津若松在住。
編集協力した新訳「オズの魔法使い」(復刊ドットコム)シリーズ
★おかげさまで少しずつ重版されています
http://1day1book.strikingly.com/

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第91回 第一次世界大戦はいかに始まったか(その1)

 たいへんな本を手にとってしまった。全2巻(844ページ)の大著である。
しかも翻訳本。そして発行元は学術書を出版しているあの、みすず書房。とく
れば、どれだけ硬い本なのだ、と想像がつく。タイトルをみて、ふらふらとこ
の本に近寄ってしまった、執筆子としてはぜひこの本の書評をものにしてみた
い、という熱い思いが続いている。しかし、7月10日現在、まだ読み終わって
いないのだ。仕方がないので、あまり例はないが、本書は上下の2巻に分かれ
ているので、今回は1巻だけの紹介をしようと思う。

『夢遊病者たち −第一次世界大戦はいかにして始まったか−』(1巻)
(クリストファー・クラーク 著)(小原 淳 訳)
(みすず書房)(2017年1月25日発行)
『THE SLEEPWALKERS−How Europe Went to War in 1914』(Christopher 
Clark)(2012)

 本書は全12章からなっている。そのうち1巻は4章分になり、残りの8章が
2巻の登載である。1巻の各章は以下の通り。

第1章 セルビアの亡霊たち
第2章 特性のない帝国
第3章 ヨーロッパの分極化 1887〜1907
第4章 喧々囂々のヨーロッパ外交

 本書は19世紀の末から第一次世界大戦が勃発した1914年までのおよそ20年間
のヨーロッパの政治家たちの動きを時間(時系列)と空間(地域別)でそれこ
そ縦横無尽に表現している。そのとき、その立場にいたその人たちの発言や行
動、ひとつひとつが、1914年の大戦勃発への原因となっていく。彼らは自分の
発言と行動に責任を持たなかったので、それこそ「夢遊病者」だったわけだ。
責任を取らない政治家たち。それが大戦の悲劇を産んだ。

 第一次世界大戦では、主な戦場がヨーロッパであり、日本は遠い異国での戦
争、というイメージである。実際にこの戦争の原因がなにかは、学校でしっか
り教わった記憶がない。“一発の銃弾が大戦の引き金となった”・・・という
ような表現で、オーストリア=ハンガリー帝国の皇太子夫妻がサラエボにおい
てセルビア人の青年に暗殺されたことを学習した。そして当時のバルカン半島
は“火薬庫”であり、ほんの些細なことで大爆発を起こす危険がある、という
ようなことを学んだ。実際に、オスマン帝国とオーストリア=ハンガリー帝国
という、長くこの地を治めていた両帝国の勢力が弱まり、この地のさまざまな
民族が自立を願ったこと。つまりナショナリズムの台頭があり、そして墺(オ
ーストリア)と土(トルコ)以外にそこに英仏独露伊という帝国主義時代の列
強と云われる大国が自国の利益を優先させた外交政策を取り、それら列強の思
惑と自立の願うそれぞれの民族の行動が複雑に絡み合いバルカン半島をして、
火薬庫にさせしめていた。

 話は脇に逸れるが、帝国主義時代と云われるこの時代、国名を英米仏伊独露
蘭白墺土と表現するとピタッとくる。英仏露の三国協商に独墺伊の三国同盟の
ような表現だ。たくさんの国名が出てくるので漢字一文字の略称は素晴らしい
アイデアだと思う。そしてこの乱暴な当て字略称は大国の横暴とそれが結果的
に弱い者いじめになったこの乱暴な帝国主義時代を端的に表わしているように
思えるのだ。

 閑話休題。

 この1巻は、第一当事国のセルビアとオーストリアの王族や政治家たちの派
閥争いが細かく描かれている。スラブ人の名前、ドイツ系の名前が入り乱れる。
王さま、皇太子、首相、外相、陸相、参謀総長、各地の駐在大使たち。名前を
覚えることを放棄しないと読み通せない。前に進まないのだ。人名索引は2巻
にある。しかし1巻にも人名索引を付けてくれたらよかったのに・・・・・。

 そのような政策決定者たちはいかにしてこの大戦を始めてしまったのか?と
いうことを本書はテーマにしている。本書の「序」を少し長くなるが引用した
い。

 “「いかに」という問いは、一定の結果をもたらす一連の相互作用を間近で
観察するよう、我々をいざなう。対照的に「なぜ」という問いは、帝国主義、
ナショナリズム、軍備、同盟、巨額の融資、国民的名誉の思想、動員の力学と
いった、ばらばらのカテゴリー別の諸要因を分析するよう、我々をいざなう。
「なぜ」からのアプローチは一定の分析上の明確さをもたらすが、理解を歪め
る効果もある。この場合、諸々の原因が次々と上に積み重ねられ、諸々の事実
を下に押しやることになる。・・・・・本書が語る物語はこれとは反対に、何
らかの作用を及ぼした人物たちで満たされている。”

 大勢の政策決定者たちがヨーロッパを少しずつ危機に向かって進めていった。
それを本書は可能な限り描写している。

 例えば、セルビア国の首相のニコラ・パシッチの性格描写はこう書かれてい
る。「秘密主義で、こそこそしていて、うんざりするほど慎重」。・・・・・
このような人物がセルビアを動かしていた。彼は自国の利益よりも自分の利益
を優先していたきらいがある。つまり、セルビアの利益が多少損なわれても自
分の地位を保つことを最優先とした行動と発言をしていた、ということだ。

 そのセルビアは、汎スラブ主義(スラブ民族で統合しようとする立場。ナシ
ョナリズム。ロシアと友好。オーストリアと対立。)と親オーストリア派とあ
ったが、汎スラブ派が影響力を強めてきた。それは取りも直さず、戦争の危険
が迫ることに直結している。

 オーストリアは、多民族国家なので、ナショナリズムを嫌うが、そもそも複
雑な国家として巨大すぎるし、どう行動すれば、国の利益になるか、というビ
ジョンが欠けた国のようであり、その意味で老大国といってよい。

 フランスは共和制であり、イギリスの国王は政治に口を挟まない。オースト
リアとドイツ、それにロシアは皇帝をいただく帝国であり、最終決定は皇帝に
ある。それはつまり、どの派閥が王を取り込むか、ということになる。このこ
とは簡単に想像がつくし、本書はその派閥争いにほとんどのページを費やして
いる。これにあとさきを考えない血の気の多い無鉄砲なセルビア人のドタバタ
が入る。まったく大いなる人間模様が描かれているのだ。

 セルビアやブルガリア、ルーマニアなどバルカン半島の小国の立場があり、
考えがある。いかに自国に有利(領土を広げること、通商を有利な条件で行う
こと)な条件を相手に飲ませるか。また列強の立場もある。例えばロシアは例
のダーダネルスボスポラス両海峡の通行権の確保が最大の悲願。こんな風に各
国の立場をこの場で書いていたら、切りがなく、それこそ本書を読んでくださ
い。ということだ。

 本書はまさに“いかにして”第一次世界大戦が始まったのか、が細かく描写
されている本なのである。


多呂さ(今年も気の毒な自然の大災害が起こってしまいました。お見舞い申し
上げます)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 最近、ちょっと個人的に、方言好きになっております。なんていうか、温か
さを感じてしまうんですね。子どもの頃に聞いていた言葉なので、ノスタルジ
ーなのかもしれませんが。

 ただし、個人的には幼少期に聞く機会の多かった九州弁、関西弁にぐっと来
るんですが、なぜか高校時代を過ごしたはずの名古屋弁にはぐっと来ません。

 なんででしょうねぇ。(あ)

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#84『ドバラダ門』

 前回は新宿の老舗ライブハウス、ピットインの50周年記念本を取り上げたが、
1960年代当時、この店を舞台に、日本のジャズの歴史を塗りかえた一人として、
この本に名前が挙がり、登場もしている山下洋輔。

 今月は、ジャズ・ピアニストでもあり、幾多の名エッセイで文筆家としても
声望高い彼の本を紹介したいと思った。

 初めは、60年代の空気を今に伝える、処女エッセイ集『風雲ジャズ帖』にす
るつもりだったのだが、改めて読み返してみると、後のエッセイと違って、旅
の記録としての側面はあまりない。考えてみれば当然で、この本は病気療養中
の無聊を慰めるために書かれたさまざまな文章と座談会、対談から成っていて、
著者が一番旅をしていない時期のものなのでる。

 また、後に山下洋輔文化圏と呼ばれる、ジャズメンはもちろん、筒井康隆や
タモリなどを含む多彩な人脈によるバカ騒ぎの時代も、まだ始まっていない。

 したがってハナモゲラ語もまだなく、全日本冷やし中華愛好会もまだない。
ちなみに、前々回『宮澤賢治、ジャズと出会う』を取り上げた時、著者の奥成
達の名前をどこかで聞いた覚えがあるのだが思い出せない、と書いたが、この
山下洋輔文化圏の一人であった。筒井康隆か山下洋輔のエッセイに登場してい
たのだろう。

 という訳で、『風雲ジャズ帖』の中心テーマは音楽論であり、多少の譜面も
出てくる。ある程度知識と興味がないと、なかなか理解しづらく思われ、この
欄で取り上げるのにためらいが出た。

 だったら、その後の『ピアノ弾きを笑え』でも『ピアノ弾き乱入列車』でも
いいはずだが、何となくそれでは面白くない気がして、つらつら迷っていると、
ふと思いついたのが本書、『ドバラダ門』だった。

 これは、当然音楽絡みではあり、だからこそこの音楽本書評で取り上げるわ
けだが、中心的な興味は山下洋輔のルーツ探求にある。
 しかも、最後の注釈には「大体においてノンフィクション」とは書かれてい
るものの、筒井康隆によるあとがきには、「唯一の長篇小説」とあり、まあ、
そもそもジャンルを決めるのが難しくかつ無意味であるような奇書なので、ど
っちでもいいと言えばいいのだが、ある程度物語としての構成は整っているし、
読みやすいことは確かだ。うん、これがいいんじゃないかな、と思い始めた。

 そこで本棚を探してみたのだが、どうしたものか、見当たらない。
 単行本で出た当時に買った記憶は確かにあるし、もちろん内容もある程度は
覚えているのだが。
 仕方がないので、これだけの名作だ、図書館にあるだろうとホームページで
蔵書検索をかけると、あるにはあったが、なんと保存庫に眠っているではない
か!

 信じられない。あれだけの傑作なら、図書館の開架に常時君臨して、常に新
しい読者を待っていて当然。
 これはもう、ささやかながら本欄でも取り上げ、その魅力を少しでもお伝え
しておかねば、と思い、ご紹介決定となった次第である。

 とにかく、「大体においてノンフィクション」でありながら、時空はもちろ
ん、虚実も自由に飛び越えて読者を引きずり回す、途方もない「小説」でもあ
り、いやしくも文学好きは必読の一冊なのだ。

 さて、物語の発端は、事実に基づいている。
 著者が鹿児島でライブをすることになったと何気なく実家の母親に告げると、
だったら鹿児島にお祖父さんのつくった刑務所があるから見ておいで、と言わ
れるのだ。

 刑務所? つくった? なにそれ?

 その時著者も初めて知るのだが、父方の祖父、山下啓次郎は今で言う東大の、
今で言う建築科を出ており、日本が明治維新を迎え、文明開化の波に襲われる
その中で、全国五箇所に西洋式の近代的な監獄を設計、建設した人物だったの
である。
 そのひとつが、鹿児島市に、まだ現存していた鹿児島刑務所なのだと言う。

 山下洋輔は東京生まれであるが、父方のルーツは、その鹿児島だ。幕府が倒
れ、維新の世となった時、下級武士であった曽祖父、山下房親も、新しい日本
を築くべく、薩摩から東京に出た。西郷隆盛の肝煎りで始まった、近代的な
「警察」の創設に加わるためである。
 そして房親は最終的には刑務所長となるのだが、息子の啓次郎もまた、司法
省営繕課の課長として、その刑務所を建てる仕事に就く。
 そうして故郷である鹿児島にも、刑務所をつくったのだ。

 その後、紆余曲折を経て、著者は、その刑務所に出会う。
 いや、むしろその門に出会う。

 と言うのも、ゴシック様式の刑務所の、小さな城のような門がまず目に飛び
込み、住宅街の真ん中で場違いな偉容を誇るその奇観に、強く心を撃たれるか
ら である。
 これこそ、タイトルにあるドバラダ門だ。

 しかし、祖父が建てたその建物は、取り壊しの危機にあった。

 建設当時は人も通わぬ郊外だったのだろうが、現在では住宅地になっている。
その真ん中に刑務所があるのは何かとよろしくない、ということで既に中身は
移転していた。そこに在ったのは、抜け殻だったのだ。

 移転はいいとして、問題は跡地の処理である。

 鹿児島には、古くから石を使って建築する石工の技術があったため、山下啓
次郎は当時主流となっていたレンガ造りではなく、石造を採用した。
 そのため鹿児島刑務所は、今に残る石造建築として最大の規模を誇ることに
なったのである。

 ところが、鹿児島市はこのように貴重な明治時代の遺跡を跡形もなく破壊し
た上で、新たな文化施設を建設する計画を立て、市民が何も知らされない内に
議会を通し、予定通り取り壊しの準備を進めていたのだ。

 この暴挙を知って、鹿児島大学建築学部を中心に反対運動が巻き起こってい
た。「もう決まっちゃったもんね」の一点張りで、「ええい、聞く耳持たぬは
そこへ直れ」的な態度の市に、それでも果敢な保存の訴えが行われていた。

 山下洋輔は一家と共に、そうした活動の一環として鹿児島刑務所で開かれた
シンポジウムに出席。かの建築探偵、藤森照信などにも会い、祖父の遺した業
績の偉大さを今更ながら知ると同時に、「取り壊しを中止させるためなら、何
でもする。刑務所の門前でピアノを弾いてもいい」と口走る。

 もちろん、その口走りは実現に向けて動き出す。

 一方で著者はさまざまな資料に当たり、祖父の人生ばかりか、遡って曽祖父
房親の時代から、西郷隆盛なども登場する幕末、明治の激動の歴史を調べ上げ、
海外ツアーの際には、啓次郎が視察したという、ベルギー、フランス、イギリ
スの刑務所を訪れる。

 そして当局の妨害により、形を変えながら、ついに実現する、刑務所門前で
の演奏。

 と、ここまで書くと、なんだ、普通のノンフィクションじゃん、どこが奇書
やねん、となぜか関西弁の物言いがつきそうだが、これはあくまで骨組みに過
ぎない。

 この流れを主軸に、至るところに華々しい脱線が起こる。
 ふとしたセリフや、アクションをきっかけに、物語はすぐに逸脱を始める。

 その先には、生麦事件があったり、薩英戦争やら西南の役やらの戦闘シーン
があったり、ヨーロッパの監獄視察から帰った啓次郎の帰朝演説があったり、
山下一族やゆかりの人々の挿話が紛れ込んだり、いろいろな時代、場所を自由
に行き来して、シュールな場面が続出する。

 そしてもちろん、虚実も自在に飛び越える。
 歴史家でも歴史小説家でもない割によく調べているくせに、書き始めると時
代考証などどこへやら、登場人物が「この時代の人間が、こんなことは言わな
いと思うのだが」などと自分にツッコミを入れながらしゃべったり、現代の事
物が幕末に混入したりする。

 特に好きなのが、薩英戦争の場面。英国艦にヘミングウェイ軍曹という水兵
が乗っているのだが、これが釣りばかりしていて、時には老人がカジキマグロ
と死闘する白昼夢を見たりするので、要するに『老人と海』の文豪ヘミングウ
ェイなのだが、実際に同姓の水兵がいたという記録を読んでの妄想なのか、ま
ったくの虚構なのか。ちょっとしが出てこない割に印象に残る名脇役である。
『ヘミングウェイの日記』なる本からの引用もあるが、当然虚構だろう。
 それにしても、英国艦だよね。なんでアメリカの文豪?

 さらに、房親の兄が江戸で死んでいるのだが、その真相が明らかでないのを
いいことに、実は平賀源内の発明した時間航行機、すなわちタイムマシンで時
間放浪者になって、さまざまな時代に出没することにしてしまう。その姿がな
ぜか画家の山下清……と言うより、テレビで芦屋雁之助が演じた裸の大将その
ままで、単に同姓のよしみで勝手に持ち出したのか、とにかく爆笑キャラとし
て大活躍する。

 著者自身が心酔する筒井康隆ばりの、シュールなドタバタ満載の、抱腹絶倒
劇。
 そのついでに、文化をないがしろにするこの国の行政の愚昧を暴き、100年
に渡る時の流れに想いを馳せる。

 それにしても、いくらミュージシャンの作にせよ、文中にBGMが書いてあ
る 小説なんて、前代未聞ではないだろうか。

 結局、貴重な文化財である鹿児島刑務所は、市当局によって残忍に破壊され
てしまう。その描写は、短いながら哀切で痛々しい。まるで石の建築が、巨大
な生き物であるかのようだ。

 そう、それは破壊ではなく、殺戮だった。人間の歴史の殺戮である。

 ただ、唯一の譲歩として、門だけが残されたと言う……


山下洋輔
『ドバラダ門』
平成五年九月二十五日発行
新潮文庫

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
山下洋輔の実家は阿佐ヶ谷だそうで、そこはぼくが幼稚園の年長さんから結婚
して家を出るまで過ごした街。また、山下家のルーツが鹿児島なら、ぼくの父
の家は佐賀。封建的風土も共通する九州人の末裔同士。なんか、勝手に親近感
を覚えてしまいます。

----------------------------------------------------------------------
■「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
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未亡人の視線で「こころ」を読む
夏目漱石『こころ』(新潮文庫)

 久しぶりに会った高校教師(国語)の友人に、「今って教科書に何が載って
るの」と聞いたら「『こころ』は今でも掲載されているかなあ」というので興
味を持ちました。聞けば教科書に載ってるのは一部なので、夏休みの宿題とし
て全部読んで感想文を書きなさいというと結構読んで書いてくるらしいです。
「ほら、三角関係の話だったりするから高校生にも親しみがあるんじゃない」
と友人。(レベルの高い学校に勤務してるんですね)

 そこでおばちゃまも読んでみた次第。茶色くなった新潮文庫の「こころ」書
棚の隅にほこりかぶってました。

 読み始めたら大昔読んだときとはまったく違う視点から読むことになって、
我ながら「え?え?まじか」とびっくり。いやいや、だから名作は怖くて素晴
らしい! 時を経て読むとまったく別の様相が浮かび上がるんですね。

 ご存じ、「こころ」は大正3年、新聞小説として掲載された漱石の代表作で、
「金銭と恋愛をめぐる我執(エゴ)の相の洞察は鋭い」と三好行雄は解説して
います。ざっくり言うと、「私」が私淑する「先生」はかつて、「K」という
友人を裏切って下宿先のお嬢さんと結婚した。「K」は理由も言わずに自殺。
その裏切りをずっとひきずってとうとう先生も命を絶ちましたという話です。

 大昔読んだときは、「先生」の心模様ばかりに目が行ってました。たぶん、
夏休みに読書感想文書いてくる高校生も同じだと思うのですが、今回、還暦過
ぎて読んだら、まあ、この下宿の未亡人ばかりに気が行って、もう「先生も
「K」もええわって感じになりました。なので今回は未亡人目線でこの話を読
んだという話です。

 下宿の奥さまは軍人である夫を戦争(日清戦争)で亡くしています。夫は鳥
取出身で、自分は(元防衛庁のあった)市ヶ谷生まれというから、そのあたり
で見合いして結婚したんでしょうか? 夫亡きあと、広い屋敷を手放して素人
下宿を営みます。役人にでも貸したらいいかと思っていたときにやってきたの
が大学生の「先生」。この時代、大学というのはそのへんの三文大学じゃござ
んせん。東京大学のことです。

 おばちゃま、奥さんの身になって考えた。頼る人のいないシングルマザーと
娘。自分が死んだあと、娘はどうしたらいいのか。娘さんは女学校に行ってる
けれど(地理的に見て三輪田あたり?)当時、女学校を卒業したからでは地元
の信用金庫にでも就職というわけにはいきません。仕事をする女性なんていな
かったのです。ではどうするか? 結婚です。

 芥川龍之介「秋」で小説家をめざすヒロインが、父が亡くなっていたので小
説家志望の前に「縁談から決めてかかるべく余儀なくされた」時代、結婚は弱
い立場の女性のセーフティネットだったのですね。(今でもそのような意味は
消えてませんが)。

 決して広くないしもた屋に、未亡人(っていってもたぶんアラフォー)、若
い女学生、そして大学生の3人。部屋を仕切るのはふすま一枚。鍵のかかる部
屋はなかったでしょう。

 これは奥さんが意識するとしないとにかかわらず仕掛けた罠なのか、大学生
=先生はあるとき、それに気づきます。

 「利害問題から考えて見て、私と特殊の関係をつけるのは、先方に取って決
して損ではなかったのです」。

 ここで問題なのは、大学生が決して女性関係で世慣れていないということ。
恋愛未経験な大学生なのであります。(佐伯順子さんの研究では、あくまで素
人の女性に対してのみ未経験であって、プロ女性とは交際があるのが当時の常
識とされています。『近代化の中の男と女・色と愛の比較文化史』)。

 そしてさらに、先生の案内でここに「K」が加わるのです。先生はお嬢さん
に好意を寄せているのに同世代の友人を仲間に加えるなんて、恋愛で一番やっ
ちゃいけないことですが、これ、1000年前に「源氏物語」で薫大将がやってま
す。女とみたらすぐ誘い出す匂宮をグループに入れるという暴挙。こわいもの
見たさの恋愛パターンですね。

 このKは先生よりさらに女に対して奥手。一気にお嬢さんを恋して、そして
悲劇が起きるのです。

 未亡人は、どうもKよりも先生を気に入っていたようで、お嬢さんがKと仲
良くなることをどう思っていたのか、大学生は卒業が近づいてくる、同時にお
嬢さんも女学校の卒業が近い…どうするどうする・・・・・このへんは非常に
緊迫していてスリリングです。

 先生の「お嬢さんをください」プロポーズに即答して「どうぞ貰って下さい。
ご存じの通り父親のない憐れな子です」というセリフに、当時の女性の置かれ
た位置がわかります。

 未亡人が大活躍する場面がこのあとすぐに描かれています。Kが自死を遂げ
た後始末をはしはしと仕切る姿です。

 軍人の妻なのでこのへんはノウハウを知り尽くした感じ。たぶん奥さんの父
親も軍人だったと思われます。医者へ知らせ警察へ知らせ、先生が遺族に電報
を打って帰ってくるとすでに線香が立てられていたという描写に、この女性の
悲しさと強さ…そして母としてのしぶとさを感じます。

 先生とお嬢さんが結婚後、奥さんはなくなりますが病を得た奥さんを先生は
心を込めて看病するのでした。奥さんはそれをどう思ったでしょうか? どれ
だけ先生とKの関係を知っていたのか、文中には何もかかれていませんが、ぼ
んやりとでも何事かを悟っていたのではないかとおばちゃまは思うのです。


大友舞子(おおとも・まいこ)
昭和20年代生まれのフリー編集&ライター。関東生まれで関西在住。

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『テロリストは日本の『何を』見ているのか』伊勢崎賢治 幻冬舎新書

 伊勢崎賢治という人は、不思議な人だとと思う。彼は世界の紛争の最前線に
出張っていって、彼の地の武装勢力を武装解除して回るというものすごい仕事
をしている人だ。そんな人が、戦争の最前線のことなど知らない、あるいは単
なる感情論で平和を語る「9条教」信者みたいな人から支持されている。

 9条を高らかに評価するから支持されるのだろうけど、戦場のリアルを体で
知っていると言っても良い人が9条教徒のリアリティのなさと共鳴しているか
のように見えるのがなんとも不思議なのだ。

 で、この本は日本がテロリストに狙われないようにするにはどうすべきかを
書いてある本。最初に出てくるのは中国脅威論に対する批判である。中国が日
本を攻めてくるはずないだろ。そんな非現実な想定よりもグローバルに拡大す
るテロの脅威の方がよほど重要だとくる。

 次に言うのは原発の危険性である。原発をテロ攻撃するというと、フィクシ
ョンならミサイル撃つとか、爆弾を持ち込むとかとなるけども、彼はそんなこ
と言わない。

 福島第一発電所の事故の後、テロリストは原発を攻撃するのにミサイルも爆
弾も不要だと知った。福島第一は津波によって電源を喪失することが事故に繋
がった。すなわち原発に侵入し、従業員を脅して電源喪失に持ち込むならピス
トルや刃物で十分にテロは実行できる。

 そういう脅威から原発を守るには警備員にピストルや小銃などを持たせなき
ゃならないが、日本では警備員の武装は認められていない。そんなことで原発
テロを防げるのか?と畳みかけてくるのである。

 そこから話は「インサージェンス」を中心に進む。インサージェンスとはテ
ロリストの同義語みたいな、反体制派を意味する言葉だが「テロリスト」と区
別して使われている。ここがある意味、この本のキモだろう。反体制派をテロ
リストと言ってしまえば単なる悪者と読者に認識されて、そう認識されてしま
うと話が通じないからだ。

 テロリストの成り立ちはさまざまだが、彼らにも彼らの正義がある。タリバ
ンは元々アフガンに群雄割拠して悪さしていた軍閥に対抗する勢力として生ま
れた。タリバンは悪者として見られているが、実は軍閥はタリバンなどよりよ
ほどむちゃくちゃなことをやっていて、そんな連中を一掃することでタリバン
はアフガン国民の支持を得た。

 そうした軍閥を育てたのは、アフガン戦争でソ連に対抗しようとしたアメリ
カやアラブ諸国だ。アフガンの英雄にはオサマ・ビン・ラディンもいる。

 オサマ・ビン・ラディンはそもそもアフガン義勇兵だった。それもサウジの
金持ちのボンボンが最前線に立ったものだから多くの人が彼を支持した。イラ
クの脅威にサウジアラビアが晒されていると見るや、オサマはアフガン同様に
義勇兵を募って祖国を守るためにイラクと戦う気でいた。ソ連相手に勝った連
中だ。イラク相手に勝てる自信もあった。なのに、サウジ政府はあろうことか
アメリカに助けを認めた。そりゃオサマも怒る。

 9.11テロでアメリカが激怒してタリバンを追い出したはいいが、そうなると
また軍閥が跋扈する。ISなんてのも出てきた。そんな、新たな脅威に対抗する
ために、タリバンを「まともな敵」として育てることが必要になる・・・いや
はやこの世は複雑だ。

 なにせアフガンの武装解除を指揮した本人の言うことだ。軍閥の武装解除は、
きれい事では済まされない。何百人と虐殺した者が武装解除した途端に訴追さ
れて罰せられるとなると、彼らは絶対に武装解除に応じない。だから武装解除
後、新政府の閣僚として虐殺者の親玉を迎え入れなければならない矛盾など、
現場を仕切った人にしか分からない、えぐい話がいっぱいだ。

 そしてテロ防止策の話が来るが、注目に値するのは、テロ防止策として移民
の推進を挙げていることだろう。このあたりは人によってかなり意見が割れる
と思う。

 そして最後に来るのが在日米軍との地位協定と憲法9条の改訂を提案する。
本の最後は彼の「改憲」9条の条文になる。彼が一体何を考えてこういう条文
を持ってくるに至ったのか、それを説明するのがこの本なのだなと、最後まで
読んでやっと気がついた。

 そしてこういう考えに彼が至ったということは、彼が「改憲派」としての旗
幟を明白にしたということだ。これに対し、護憲派と呼ばれる人たちがどう反
応するのか興味深い。しかし、この本が出て8ヶ月にもなるが、特に護憲派か
ら批判されてるなんて話も聞かない。では護憲派が改憲を認めたのかというと、
それもなかろう。

 ということは、護憲派から「使えねぇ」と思われて無視されているとするの
が、当たらずとも遠からずの現状ではないかと思う。

 ま、それはともかく、イデオロギーとしての反戦平和ではなく、リアリズム
に立脚した反戦平和について考えるなら、ぜひ読んでおくべき本だと思う。


(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)

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■あとがき
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 何を勘違いしたのか、先月の20日号の月を間違えてしまいました。正しくは
5月20日号で、今号が正真正銘の6月20日号です。

 一瞬、自分がタイムスリップしたのかと思ってしまいました…。(あ)

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[書評]のメルマガ vol.631


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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→観察の楽しさ

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→わしらが子供だったころ

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→新渡戸稲造氏の生き方

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 株式会社サンガ様、原作者の方喰正彰様より『マンガでわかるグーグルのマ
インドフルネス革命』を献本いただきました。ありがとうございます。
 http://www.samgha-ec.com/SHOP/300870.html

 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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72 観察の楽しさ

 大人になってからは初めてともいえる写生会を体験してきました。
 絵は好きなのですが、描いたことはほとんどないので、学べればと思って参
加したものの、具体的な指導はなく、ただひたすら野の花や樹木を見て描いて
きました。まとまった時間じっくり観察してみると、いままで見えていなかっ
た細かなところまで見えてくるようになり、自分の眼が成長を遂げた気分を味
わいました。

 それ以来、自分の視点が確かに変化し周りの野の花だけでなく、虫や鳥もい
ままでになく視界に入ってくるようになったのです。楽しくて、歩いていると
常にきょろきょろしています。家のまわりは田んぼだらけで自然がたっぷりな
のです。

 さて、今回は虫が活発になる季節にぴったりの絵本。

 『甲虫のはなし』
 ダイアナ・アストン文/シルビア・ロング絵/千葉 茂樹訳/ほるぷ出版

 ほるぷ出版の「あたたかく美しい絵で身近な科学を紹介するシリーズ」の一
冊です。このシリーズはどれも読んでほしい!のですが、ここでは新刊をご紹
介します。

 甲虫とは、6本のあしをもつ昆虫のなかでも、とくにかたいまえばねをもつ
虫のこと。

 見開きいっぱいに、のびやかな水彩画でカラフルな甲虫が描かれています。

 たまごの甲虫は葉っぱのうらにうみつけられ、
 たまごからかえると、なんども脱皮をくりかえしながら成長します。

 1週間くらいで成虫になるサカハチテントウ。

 メダマジンガサハムシ、アカヘリミドリタマムシのいろとりどりの美しさ。

 美しい甲虫は世界のあちこちで食用にもなっています。

 国連食糧農業機関(FAO)は2013年5月に「食用昆虫 食品と飼料の安全
保障」という報告書をまとめ、昆虫食の利点を挙げており、

 この絵本でも
 インドではクワガタムシのチャツネ、パプアニューギニアでは幼虫のシチュ
ーなど、いろいろ紹介しています。(残念ながら料理の絵はありません)

 また、人間の食べるパンやドライフルーツ、中にはペットフードまで食べる
ありがたくない虫も紹介されています。

 恐竜が生きていた約3億年前から生息していたことが化石からわかっている
甲虫。長い時を経ていまにいたっている虫たちを今年は観察してみようと思っ
ています。

 シルビア・ロングの描く甲虫はとってもきれいなので、子どもだけでなく、
虫好きの大人の方への贈り物にもおすすめです。

 これを機会に既刊絵本もぜひ。

 『たまごのはなし』
 『たねのはなし』
 『チョウのはなし』
 『いしのはなし』
 『巣のはなし』


 もう一冊ご紹介。

 『子どものための美術史 世界の偉大な絵画と彫刻』西村書店
  アレグザンダー 文/ハミルトン 絵/千足伸行 監訳/野沢香織 訳 

 タイトルどおり、美術を楽しむための入門本。
 絵をきれいに描ければなあと長年思っていましたが、絵をみることも大好き
です。

 地方に住んでいるとなかなか本物をみる機会には恵まれませんが、こういう
本があると、自分の好きな時間にじっくり絵を楽しめます。

 子どものための入門書は、実は大人にとっても便利な一冊です。説明が丁寧
で、専門用語の羅列なくして、わかりやすい言葉で書いてあるので理解しやす
いからです。

 本書ではヨーロッパとアメリカの画家が中心ですが、日本人ではひとりだけ
葛飾北斎が紹介されています。

 見開きで1人の画家が紹介され、代表的な絵画1枚、どんな風に描かれてい
るか細かな注釈がついています。

 葛飾北斎では〈富嶽三十六景〉より《神奈川沖浪裏》の絵が紹介。描かれて
いる絵の、たとえば「小さいほうの浪は富士山と同じ形をしていること」など
鑑賞の一助となることが添えられています。

 また、すべてではないですが、それぞれの画家の画法についての簡単なワー
クショップが紹介されているのも魅力です。

 アンリ・マティスのページでは、「はさみでかく」切り絵のしかたを、ルノ
ワールのページでは「スクラッチアート」をというように実際に作品づくりを
したくなる工夫があります。

 実際に自分の手でアートをつくる体験をすると、本物のすばらしさをより理
解でき、また鑑賞する楽しみも深まります。ぜひ実際に描いたりつくったりし
てみてください。

 夏休みにはすこし早いかもしれませんが、自由研究の参考にもなるおすすめ
本です。

 
(林さかな)
会津若松在住。
編集協力した新訳「オズの魔法使い」(復刊ドットコム)シリーズ
★おかげさまで少しずつ重版されています
http://1day1book.strikingly.com/

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<90>わしらが子供だったころ

 この5月の下旬、とても遅まきながら、アニメ映画『この世界の片隅に』を
観てきた。
 こうの史代の原作漫画はとても好きだったので、あの独特の空気を、アニメ
でうまく再現できているのかどうか、さらに「あの時代」を、必要以上に、暗
く陰鬱で灰色というステレオタイプで描かれてたりしたら「やだな…」等々と
いう不安と疑心暗鬼で先延ばしにしていたのだが、いよいよ5月の最終週で公
開が終了する、と聞いて、重い腰をあげたのだった。

 とても良かった。
 もっと早く観に行けばよかったと後悔した。
 原作の「空気」は、きちんと再現…というよりも、さらに昇華した形で表現
されていた。

 原作漫画では、物語の背景となる当時の広島や呉の町の様子や、衣服や履物、
乗り物等々のディテールが、かなりのこだわりを持って描かれていたのだが、
これも、なお一層細かく……おそらくは綿密な取材がされたのだろう……緻密
に描きこまれていた。

 アニメ版では「音」もまた、丁寧に再現されていたように思う。
 たとえば、爆弾が至近距離で炸裂する音。あるいは、艦載機が急降下して機
銃掃射していくエンジンと機銃の爆音。
 どのシーンの音も、とてもリアルに感じられた。
 「すず」さんの嫁ぎ先のラジオからは、空襲警報を伝えるニュースが流れて
くるのだが、そのニュースを伝えるのが、「昭和20年」に至って、男性から女
性の声に代わっている……のに気づいたときには、「さすが……」と、思わず
うなってしまった。

 平日午前の上映だったのだが、公開終了間際だったせいか、客席は六分ほど
の入りだった。
 わしの隣には、わしよりやや年上と思われる男性が座っていたのだが、この
人は、映画が終わり明かりが戻った館内で、下を向いたきりしばらく立ち上が
れずに、ずっと目のあたりを押さえていた。

 映画館で立ち上がれなかった彼もそうだろうけど、わしもまた、戦争を直接
体験した世代ではない。
 しかし、わしらがモノゴコロついたころには、白い着物の「傷痍軍人」が、
切断された足を台車に載せて商店街をいざり歩いては、胸に抱えたアコーディ
オン弾いて物乞いをしていたり、空襲で崩れたままのビルがあったりと、そこ
ここにまだ痕跡や傷跡が残っていた。

 幼稚園の遠足で遊園地に行ったとき、駅からその遊園地へ行く途中、なにや
ら異様なビルの横を通ったのだった。
 錆びた鉄枠の窓はあちこちのガラスが破れ、中は薄暗くて人の気配もなく、
丸みを帯びた外壁はコンクリートが剥き出しで、その全体が鬱蒼と繁茂した蔦
に覆われてしまっている廃ビル……
 なんだか不気味なそのビルは、空襲を受けたのちに放置され、そのままにな
ってるんだ……と一人合点で思い込んだ。
 空襲受けた廃ビルと思ったそれが、実は甲子園球場だったと知るのは、それ
から数年後のことだった。

 荒れて放置された建造物、イコール、空襲を受けた、という連想は、それま
でに、親たち、あるいは学校の先生や祖父母から、何度も空襲や機銃掃射の話
を聞かされていたからだ。
 甲子園球場は、放置されていたわけではないけど、昼間で無人だったから、
そんなに思ってしまったんだろうな。今ほどきれいにメンテナンスもされてな
かったし。

 アニメ『この世界の片隅に』は、久々にあのころの記憶を呼び覚ましてくれ
る映画でもあった。

 あのころ、わしらがまだ子供だった1950年代から60年代。
 日本はまだ「先進国」ではなかった。

 長谷川町子『いじわるばあさん』に、ばあさんがアメリカ旅行をするくだり
がある。
 ばあさん、ニューヨークでお土産買って、しかもそれがとても安く買えたも
んだから「ホクホク」だったところが、ホテルへ帰ってよく見ると、その製品
に「Made in JAPAN」のタグがついていた、というオチ。

 1950年代、日本から欧米に向けて盛んに輸出されていた工業製品の筆頭は
「おもちゃ」で、そのおもちゃに代表される「Made in JAPAN」は、全世界的
に、「安かろう悪かろう」という粗悪品の象徴だったのだ。

 そのイメージは、今の中国製品よりずっと劣悪だった。

 虫プロアニメ『鉄腕アトム』の放映開始が1963年。以後、国産アニメは徐々
にテレビに増殖していくが、しかし、子供向けのアニメやヒーロードラマ、あ
るいは子供向けコメディードラマは、圧倒的にアメリカ製が多かった。

 そこに描き出される「豊かなアメリカ」なライフスタイルは、彼我のギャッ
プが大きすぎて、まるで現実のものとも思えない、まさに夢のような生活様式
だった。

 「レモネード」とか「パイ」とか「ハロウィン」とか、そのスタイルの中に
は、なんだかよくわからないものもいっぱいあった。

 『ポパイ』に出てくる「ウィンピー」が、いつも頬張ってる「ハンバーガー」
もまた、「よくわからない」物件のひとつだった。
 当時「ホットドッグ」は売っていたけど、「ハンバーガー」は、どこにも売
ってなかったのだ。
 名前と形状から、パンにハンバーグを挟んだもの、という想像はついたので、
自作してみたのは中学1年の頃。
 スーパーに売ってたハンバーグ……というか、今思うと「スパム」と「ミー
トローフ」の中間のような形状のもの…を、バンズはどこにも売ってなかった
から、食パンを代用して、キュウリを薄切りにしたのと一緒に挟んだ。味付け
は、ウスターソースとケチャップ。
 滅法、旨かった。

 後年、神戸で最初にできた「マクドナルド」に、あのときの感動を期待しつ
つ出向いたのだが……
 初体験のその味は、衝撃的に不味かった…
 ウィンピーは、こんなモンを「うまい、うまい」と食ってたのか? と愕然
としたのだった。

 「マクド」初体験のちょっと前、やはり初体験の「ケンタッキーフライドチ
キン」では、「世の中に、こんな旨いモンがあったのか!?」と感動した、その
反動もあったのだと思う。
 マクドは、その「不味さ」に徐々に慣れていったのか、味が変わったのか、
その数年後には、そんなに不味いとも感じなくなっていた。

 ところで、テレビアニメ…当時は「テレビ漫画」と呼ばれた『ポパイ』では、
「ホウレンソウの缶詰」というのも謎だったのだが、あれは、アニメの創作で、
当時も今も「ホウレンソウの缶詰」というのは存在しない、というのは、つい
最近知った。

 だろうな。
 葉物野菜の缶詰……あったとしても、とてつもなく不味そうだし……

 『ポパイ』では、どう見ても「やせぎすの老けたおばさん」にしか見えない
「オリーブ」をめぐって、大の男二人が張りあう…という構図もまた、当時子
供だったわしらには不思議なことだった。

 オリーブ、力づくでブルートにかっさらわれても、なんの抵抗もせずに「ポ
〜〜〜パ〜〜イ! た〜〜すけて〜〜!」と叫ぶだけ…なのも、子供ゴコロに
やや「イラッ」ときた。

 日曜日の夜に、8チャンネルの『ポパイ』が終わると、その直後には、「赤
とんぼ」のBGMとともに、「週刊新潮は、ただいま発売中です」という、や
やたどたどしい子供の声のコマーシャルが流れてきて、これを聞くと、「ああ、
日曜が終わってしまう…」という空虚な思いにとらわれたものですが、今で言
う「サザエさんシンドローム」ですね。

 国産アニメや漫画の中にも「不思議」はあった。
 『ハリスの旋風(かぜ)』や、『男一匹ガキ大将』で、石田国松や戸川万吉が、
肩から提げてた、白いズックの通学鞄。『夕焼け番長』でも使ってた。

 わしらが使ってた通学用の鞄は、小学校の低学年時ではランドセル、その後、
5年生くらいからは布製の手提げの学生鞄で、中学高校では革製の学生鞄、と
いうのが普通で、漫画やアニメではよく登場する、ズック製の白い肩掛け鞄、
というのは、使ったこともないし、使ってる人を見たこともないのだった。

 あれは、戦前の旧制中学的「バンカラ」をイメージさせるために敢えて登場
させてたアイテムだったのでしょうか?
 石田国松の「ハリス学園」など、なんでか戦前の中学と同じ「5年制」だっ
たし。

 映画『Stand by me』で、4人の子供たちが線路伝いに歩きながら、「マイ
ティ・マウスとスーパーマン、どっちが強い?」「バカ! マイティ・マウス
は漫画だけど、スーパーマンは本物だから、スーパーマンが強いに決まってる
だろ」と、とても子供らしい議論をするシーン、とても好きなのだが、わしら
もまた、似たような議論を、よくしておりました。

 「バットマンとスーパーマン、どっちが強い?」とか。
 『逃亡者』のリチャード・キンブルは、「名犬ラッシーと一緒に逃亡したら、
追手がきても、わんわん吠えてすぐに知らせてもらえる」とか。

 テレビで『スーパージェッター』が放映されていた時期、だからわしは小学
4年の時。
 同級生4、5人で遊んでいたら、誰かが「あ! ジェッタ―の時間や!」と
言い出したのだった。
 『スーパージェッター』は、見逃してはならん、ということで、そこから一
番近かったシブヤくんの家でテレビを見ることになった。

 シブヤくんちの居間に皆して押しかけ、わいわい言いながら『ジェッタ―』
を見ていたら、夕食の準備の手を止めたシブヤくんのお母さんが、粉末の「ジ
ュースの素」で作ったオレンジジュースを持ってきてくれた。

 皆にグラスを配ったお母さんは、しばらくテレビの『ジェッタ―』を立った
まま眺めていたのだが、やがて感慨深そうに、わしらに向かって言うのだった。
 「ジェッタ―は、えらいねえ。みんなも、ジェッタ―みたいにならんと、あ
かんよ」
 と、わしの隣にいたトシちゃんが、真剣な顔で答えて言った。
 「おばちゃん、ジェッタ―は、30世紀から来たんやで。ぼくら、20世紀の人
間やから、ジェッタ―には、なれへんわ。流星号も持ってへんしな」

 『ジェッタ―』のエンディングテーマが終わった白黒の画面では、丸美屋の
「スーパージェッターふりかけ」が賑やかにコマーシャルされていた。


太郎吉野(たろう・よしの)
 2011年に神戸から西宮へ引っ越して、ただ今のホームグラウンドは甲子園。
右投げ右打ち。掛布二軍監督はひとつ年上の同級生。

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第90回 新渡戸稲造氏の生き方

 新渡戸稲造、という人に興味があった。樋口一葉の前の5,000円札の人であ
る。

 昭和59年から平成16年まで流通していた。そもそもこのときに新渡戸稲造っ
て誰だか知らなかったし、『武士道』の作者だった、とか、国際連盟の事務局
次長だったとか、経歴について断片的に知ることになったけれど、その後も特
に伝記を読んだわけではなく、そのままにしていたが、やはり気になってはい
たので、これを機会に新渡戸稲造について書かれた一冊の本を手に取ることに
した。

『明治のサムライ −「武士道」新渡戸稲造、軍部と戦う−』
(太田尚樹 著)(文藝春秋社)(文春新書)(2008年)

新渡戸稲造。教育家。農政学者。
1862年(文久2年)盛岡生まれ。
1877年(明治10年)札幌農学校の二期生入学(15歳)。その後東京大学へ。
1884年(明治17年)米国ジョンズ・ホプキンス大学留学(22歳)。
1887年(明治20年)独ボン大学へ(25歳)。
1891年(明治24年)結婚(米国人メリー・エルキントン)。帰国。札幌農学校
         教授(29歳)。
1900年(明治33年)英文『武士道』出版。ヨーロッパ視察(38歳)。
1901年(明治34年)台湾総督府民生部殖産局長心得(39歳)。
1906年(明治39年)第一高等学校校長就任(44歳)。
1918年(大正7年)東京女子大学初代学長(56歳)。
1920年(大正9年)国際連盟事務次長(58歳)。
1926年(大正15年)国際連盟事務次長を退任。貴族院議員(64歳)。
1929年(昭和4年)太平洋調査会理事長(67歳)。
1933年(昭和8年)カナダ・ビクトリア市にて客死(71歳)。

 新渡戸稲造の印象。彼について現代の日本人はどれだけ知っているのだろう。

 5,000円札の肖像画の人(これでさえ、替わってからもう10年以上経ってい
る)。『武士道』の著者(このことを知っている人は多いだろうが、実際にこ
の『武士道』を読んだ人はおそらくぐっと少ないだろう)。国際連盟事務次長
(日本人にとって国際連盟の印象はあの松岡外相による脱退の情景に尽きるの
ではないだろうか)。

 いずれにしても幕末に朝敵だった盛岡の武士の家に生まれて、さまざまな所
で学び、英語が堪能で、教育家、そして有能な官吏であり、明治大正昭和を生
きた新渡戸稲造は半ば忘れられた偉人、と云っていいかもしれない。もったい
ないことだと思う。

 新渡戸稲造は、札幌農学校での課程を終えて、東京大学に入学する時の面接
で、「太平洋の橋になりたい」と述べて、面接官を驚かせた。日本と西洋。日
本の長所を西洋に紹介し、西洋の長所をどしどし輸入する、そのような橋渡し
の役をやりたい、ということだった。経歴をみると、まさしくその希望に沿っ
た人生を歩んだ、と云えるだろう。

 本書は、そんな新渡戸稲造の生涯を追いながら、彼の取った行動を彼の思想
から考察する。新書版なので、一般向けにわかりやすく書かれている。

 新渡戸稲造と云えば、『武士道』が有名である。この『武士道』を彼はなぜ
書いたのか。という疑問がある。日本人の行動様式、思想形成に大きな影響を
与えているのは、特定の宗教とではなく、武士の行動様式、武士の思想による
処が大きい。と看過したからに他ならない。英語で書かれたこの本は出版時期
が日露戦争後だった、ということも重なり、全世界で大いに読まれたらしい。

 日本人の知識層は、西洋の唯一絶対神を信じるキリスト教と対立を求めず相
対的な仏教や神道の影響を受けた日本独自の精神と、このふたつの思想が自分
の中で相克している状況であり、それは開国したときから始まって、未だにそ
のふたつを抱えている。そして新渡戸稲造がまさにその典型であるように映る。

 彼の晩年(国際連盟事務次長を退任してから。それは時代が昭和に入ったと
きと重なる)に、彼は満州事変や上海事変を起こした軍部を憎み、国内では軍
部を批判したが、外では日本の取った行動に理解を示し、日本の立場を擁護し
ている。個人の意志に反した行動を取ることは、すなわち新渡戸の中に時代の
雰囲気、時勢というようなものが反映されていたのであろう。日本の精神が誇
張され、過大に評価され、「愛国心」ということばに収斂されてしまう、結果
として一度は日本を滅ぼした思想に、新渡戸でさえ抗えなかったことの証左で
あろうと思われる。

 この晩年の新渡戸が体験した時代の雰囲気は、どこかいまの日本の雰囲気に
似ていることは、さまざまな人が警鐘を鳴らしているとおりだ。

 新渡戸稲造の生涯は、誠実に生きることの難しさを、現代の我々に教えてく
れる。

多呂さ(東京は梅雨入りと思ったら、長い梅雨の中休みに入ってしまったよう
な気圧配置です)

 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・『マンガでわかるグーグルのマインドフルネス革命』(サンガ)
 http://www.samgha-ec.com/SHOP/300870.html
 
・『セブン・ハーフ・アンド・ワン』(文芸社)
 http://www.bungeisha.co.jp/bookinfo/detail/978-4-286-17241-5.jsp

・『トシ、1日1分でいいからフクシマ英語に触れてみて。それだけできっと世
  界は変わる。』(SCICUS)
 https://www.facebook.com/scicus.jp/posts/1054815034566643


 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

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■あとがき
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 出張続きで、気が付くと10日も過ぎ去っていました…。すみません。20日号
もまもなく配信致します。(あ)

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[書評]のメルマガ vol.630

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■コンテンツ
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★「トピックス」
→ トピックス募集中です

★「音楽本専門書評 BOOK’N’ROLL」/おかじまたか佳
→ 『新宿ピットインの50年』

★「目につく本を読んでみる」/朝日山
→ 『ジャパン・メイド・トゥールビヨン』浅岡肇編著 日刊工業出版社

★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→ 『発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由』栗原 類 著(KADOKAWA)

★「本の周りで右顧左眄」蕃茄山人
→ 今回はお休みです。

★【募集中】献本読者書評のコーナー
→ 献本お待ちしています!

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 ダイヤモンド社様より献本頂戴しました。

・久我谷亮『脳疲労が消える最高の休息法 CDブック』
 https://www.diamond.co.jp/book/9784478101919.html

 ありがとうございます!

 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#83『新宿ピットインの50年』

 前回取り上げた『宮澤賢治、ジャズに出会う』にもあったが、日本に初めて
本格的なジャズ・ブームが訪れたのが、1920年代。
 つまり、そこから現在まで大体100年が経っていることになる。
 したがって、50年といえば、その半分を占める年月であるわけだが、その長
きに渡って、日本のジャズの中心としてシーンを牽引し続けてきた老舗のライ
ブハウスがある。
 
 新宿ピットインである。
 
 この店名、ぼくはずっと不思議に思っていた。

 ピットインといえば、レースで車が給油やタイヤ交換、オーバーホールのた
めに一時停まることだ。これとジャズと、一体何の関係があるのだろう???
 もしかすると、ジャズメンの隠語か? はたまた音楽用語か?
 だが、どんな本を読んでもそんな言葉は出て来ない。

 実は、答えは気抜けするほど簡単だった。

 元々は成城大学自動車部に所属する学生が、カーマニアの溜まり場がほしい
と思い、開いた喫茶店だったからなのだ。

 だとすれば、このネーミングはまっとうすぎるくらいまっとうだ。

 その学生、佐藤良武が、両親の営む洋品店のデッドスペースを借りてピット
インをオープンしたのは、1965年、12月24日のクリスマスイブ。
 
 だが、佐藤の目論見ははずれた。

 現在のピットインは新宿二丁目にあるが、開店当初は三丁目、伊勢丹脇の裏
通りにあった。
 今でこそ「裏原宿」などと言って、表通りから少し外れた界隈がかえって注
目されたりするが、その頃はあまり人通りもない、文字通りの「裏」だったら
しい。
 そのため、狙ったような自動車好きの客はあまり来ず、代わりにBGMとし
て流していたジャズを目当てに、音楽好きの若者が集まるようになった。
 60年代の半ば、ステレオはまだまだ贅沢品であり、金のない若者にとって、
レコードを流す店は貴重な情報源だったのだ。だから、ジャズ喫茶を始め、名
曲喫茶、シャンソン喫茶、タンゴ喫茶と、各ジャンルのレコードを売り物にす
る喫茶店が軒を連ねていた。現在のカラオケボックスの先駆形態である、歌声
喫茶なんてのもあった。
 
 ともあれ、そうして集ったピットインの客の中に、ジャズメンの卵たちがい
たのである。
 彼らには演奏する機会がほとんどなく、あっても譜面通りに吹く仕事ばかり
で、自由に即興し、新しいサウンドを追求する場がなかった。
 それを知った佐藤は、当初の目的から転じ、店内にステージをつくって、ラ
イブハウスに舵を切ったのであった。

 ひとつの文化が潮流を生み出すためには、「場」というものが必要だ。
 しかし、それは往々にして人の意図を越え、偶然が偶然を呼ぶ形で形成され
ることが多いような気がする。
 新宿ピットインも、典型的にそのケースだと言える。
 もし、佐藤の目論見が当たってカーマニアが集まっていたら後のピットイン
はないし、日本のジャズも随分形を変えてしまっていただろう。
 それが、幸運にも(!)失敗することによって、ヒョウタンから駒の喩え通
り、ライブハウス、ピットインが生まれたのだ。

 もうひとつ幸いだったのは、佐藤がカーマニアであっても、ジャズマニアで
はなかったことである。

 だから彼は、音楽的なことに一切口出ししなかった。いや、出来なかった。 
 ジャズに詳しいオーナーであれば、「これはジャズではない」と拒否したか
もしれないような新しい音楽を、むしろジャズには素人で、旧来のジャズに思
い入れがない佐藤だったからこそ、オープンな態度で受け入れることができた
のである。
 
 それだけではない。タイミングも味方した。

 渡辺貞夫が人気プレイヤーの座を捨てて、単身渡米。バークリー音楽院に留
学して学んだ知識を、帰国後、惜しむことなく仲間に伝えたという、日本ジャ
ズ史に有名な美談があるが、これがちょうどその頃だったのである。
 それまでの経験的なジャズ演奏に理論的な体系が与えられた、いわば、日本
のジャズがアメリカのモダン・ジャズを消化し、その地平を越えてオリジナル
なものを創造しようとする胎動期。
 まさにその時期に、新宿ピットインが現れる。
 これを、天の配剤と言わずして何と言おう。

 かくして野心に燃えたミュージシャンがピットインに続々と集結し、さまざ
まな実験を始めた。その勢いがいかに旺盛であったかは、当時のピットインが
朝の部、昼の部、夜の部と三部制であったことからも伺い知れる。朝っぱら
(といっても、この世界のことだから、昼の12時だが)からわずかなギャラで
も演奏したいと願うミュージシャンが、それだけたくさんいたということなの
だから。
 
 しかし、演奏する者ばかりでは、「場」は成立しない。聴き手が必要だ。

 この点でも、新宿という土地柄が、味方をした。
 
 時代は、学生運動華やかなりし頃。ことに新宿には過激な学生が多く集まっ
て、ピットイン開店の数年後には新宿騒乱があり、西口フォークゲリラが出没
することになる。
 
 ぼくはまだ小学生で、後から本でこうしたことがあったのを知り、遅れて来
た世代であることを恨めしく思ったものだ。あと、10年早く生まれていれば、
この騒乱の新宿をリアルタイムで体験することができたのに、と。
 もっとももしそうだったら、過激派学生からそのまま過激派ゲリラになって、
内ゲバと呼ばれた不毛な内輪同士のテロに巻き込まれ、早々とくたばっていた
かもしれない。何とか生き延びたにしても、よど号ハイジャックにでも加わっ
ていま頃は北朝鮮に埋もれていたかもしれないので、幸いだったとも言えるが、
それはともかく。
 
 騒然とした雰囲気の中で新宿に集まった若者たちは、さまざまなセクトに分
かれていたが、既成の体制にアンチを唱える思いは同じだった。
 そしてそれは、既存のジャズに飽き足りず、音楽的冒険に挑んでいくジャズ
メンたちへの熱い共感となったのである。
 ミュージシャンとオーディエンスの、幸福な一致。

 そのシンボルとなったのが、新宿ピットインのレギュラーとして活躍した山
下洋輔だ。
 
 ドラムに森山威夫、サックスに坂田明を迎えた時代の山下トリオは、毎回全
力で音楽に没入した。森山は足が攣るまでバスドラを蹴り、坂田はのたうち回
ってブロウし、山下は拳や肘でピアノを叩き、ついには足蹴りまでかます。
 その格闘技のようなフリージャズには、これまでのジャズを破壊し、その廃
墟の上に、全く新しい音楽美を構築しようとする強烈な意志があった。
 革命を志向する学生たちだからこそ、敏感にこの音楽革命に共振できたので
ある。
 
 山下トリオが出演する夜のピットインは、満員の聴衆が詰めかけ、熱狂の坩
堝となった。演奏者と聴き手が真剣勝負で対峙する、その激しい嵐のような時
間は、いまとなっては関係者の証言からおぼろげに浮かび上がるものを想像す
るしかない。
 
 そういう意味で、その時代を体験した人たちの言葉を記録に残すことは重要
だが、しかし、その山下洋輔もいまや75歳。先輩である、渡辺貞夫は84歳。彼
らの生い立ちを含め、ピットイン黎明期の思い出を書物としてまとめておくた
めに、そう長い時間が残されているわけではない。

 そこに2015年、本書が出た。

 このタイミングの絶妙さも、ピットインという「場」が、いまもまだ「持っ
てる」証拠だろう。

 山下を始め、新宿ピットインで伝説的なパフォーマンスを繰り広げてきたミ
ュージシャン18名を、佐藤良武自らがインタビューして、半世紀に渡る歴史を
まとめた『新宿ピットインの50年』。
 監修は音楽ライター、田中伊佐資。編集は、新宿ピットイン50年史編纂委員
会。

 本書をひもとくだけでなく、いまもなお日毎、夜毎、伝説を生み出し続けて
いる新宿ピットインを、あなたも訪れてみませんか?

田中伊佐資 監修
新宿ピットイン50年史編纂委員会 編
『新宿ピットインの50年』
2015年12月24日 初版印刷
2015年12月24日 初版発行
河出書房新社

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
今年のポール・マッカートニーは、ついにパス。まあ、前回の来日公演で、な
んか、堪能しきった感があり、行くとすれば武道館か、と思いつつ、とはいえ
10万はないでしょ。それに、東京ドームに比べれば、そりゃあ小ぶりな会場で
はあるが、やはり遠くに豆粒ほどのアーティストを見ることに、さほどの興奮
を感じなくなってきたのです。その点、ライブハウスはいい! アーティスト
の息遣いが伝わるような、場の一体感が違います。今回取り上げた新宿ピット
インのみならず、下北沢のシェルター、mona records、basement bar……今月
は六本木の虎寅虎で月光グリーンの2DAYSに参ります!行くぜ!R&R!

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『ジャパン・メイド・トゥールビヨン』浅岡肇編著 日刊工業出版社

 前回紹介した『100万円超えの高級時計を買う男って馬鹿なの?』をきっか
けに知った日本の独立時計師浅岡肇の名前を検索したら出てきた本。日刊工業
新聞創刊100周年記念出版である。

 独立時計師というのは、1からムープメントから何から全て自分たちの手で
時計を来る人たちで、一般にはスイスにある独立時計師アカデミーという団体
のメンバーをさす。
http://www.ahci.ch/members/

 世界トップレベルの技術力を持っている人でないと入れない組織である。そ
の中に日本人が2人いる。そのうち1人が浅岡肇氏である。腕時計の中に日本
人として初めてトゥールビヨンという機構を入れた時計を作った人。トゥール
ビヨンとは時計の姿勢差(上向き下向き仰向けうつぶせなど)によって生じる
誤差を補正する機構のこと。
 置き時計の振り子に当たるテンプと、テンプを動かす脱進機を回転させるこ
とによって姿勢差による誤差を最小限にしようとする機構で、有名な時計師ブ
レゲが発明した。

 これを腕時計に入れる試みは戦前からあって、実際に腕時計に組み入れられ
たこともあるのだが、当時の工作精度では腕時計では思ったほど精度が出ない。
そのため腕時計の権威ですらトゥールビヨンは要らないと言ったこともあると
か。

 それが1980年代になるとCADと新素材の進化によって工作精度が向上し、
本当に機能するトゥールビヨンが作られるようになり腕時計に搭載されるよう
になる。とはいえ、つくるのに高い技術力が必要なのは変わらないため、高級
時計メーカーは競うようにトールビヨン搭載の、しかも永久カレンダーやミニ
ッツリピーターのような複雑機構を組み合わせた時計を作って、自社の技術力
を誇示している。

 で、この本は浅岡氏が「PROJECT T」という時計を作っていくドキュメント
だ。もともと、普通のノンフィクションのような最後には感動する物語を読ん
でいるような感じではない。そういう要素は全くなくて、強いて言えばカタロ
グや製品の説明書に近い。カタログや製品の説明書と違うのは、熱量である。
こんな熱いカタログ、説明書は、たぶんどこのメーカーも作っていないはず。
ちなみに「PROJECT T」の価格は800万らしい。
https://www.youtube.com/watch?v=pgg6AaFD8zg
http://www.ablogtowatch.com/hajime-asaoka-project-t-tourbillon-indepedent-japanese-watch/

 で、内容だが、最初の浅岡氏のトゥールビヨンができるまでの背景説明が読
みごたえが満点。背景説明といっても書いてあるのは戦後のスイスと日本の時
計メーカーの興亡史だ。他の人の書評で、この部分を特に高く評価する人が多
いのもむべなるかな。

 戦後日本の時計メーカーはスイスに追いつこうと懸命になって生産性と精度
の向上に取り組んできた。1960年代におそらくロンジンとおぼしきスイスの時
計メーカーの社長が日本の時計工場を訪問した時に組立作業がスイスよりも進
歩していて驚愕した。大量生産システムのラインがすでにできていたのだ。こ
の頃にアメリカメーカーの多くが脱落。

 しかしスイスの時計メーカーの動きは遅く、クオーツの時代になると瞬く間
に日本製の時計が世界を席巻し、スイスの時計メーカーは窮地に追い込まれる。
クオーツの開発は当初スイスの方が進んでいたにもかかわらずだ。

 しかし、それでもスイスは当初は踏ん張っていた。スイスもクオーツを作っ
ていたし、まだクオーツは出たての技術で薄型ムーブメントやクロノグラフは
作れない。そんな時に起きたのがドルショックで、通貨の変動相場制への移行
によってスイスフランが高騰し、コストが合わなくなった。

 そのためスイスメーカーは生き残りをかけて薄いムーブメントを貴金属のケ
ースに収めたブレスレットウオッチにシフトした。ところが、そんなタイミン
グを見計らったかのように金相場のアホみたいな高騰がやってきた。これでス
イスの時計産業はとどめを刺されて壊滅的状況に追い込まれてしまう。

 しかし、機械式腕時計にはまだ生き残る場所はあった。汎用ムーブメントの
開発でコストを下げつつデザインに注力し、活路を見いだす。その典型例が有
名なオーディマ・ピゲの「ロイヤルオーク」。ステンレスケースを使って「金
(Gold)を使わずにどれだけ時計の値段を上げられるか」に挑戦する。

 またシースルーバック(裏ぶたをガラスにして内部機構を見ることができる
ようにしたもの)の開発も大きかった。そして今ではスウォッチのような大量
生産品も作るが、一部では大量生産に目を背けて恐ろしく手がかかった、少数
しか作れない、趣味性の高い、高付加価値のとれる時計にシフトすることで復
活を遂げたのである。

 なんでこんな背景説明があるのかというと、浅岡氏の作る時計は単なる日本
最初のトールビヨンであるだけでなく、日本メーカーの高度な技術力に支えら
れた、スイスの一流メーカーでもおいそれとは真似できない、革新的な設計が
されているからだ。

 そこから先は、時計の部品一つ一つの解説が続く。機械に詳しい人でないと
どれだけすごいのかは見えにくいかも知れないというか、私もちんぶんかんぷ
んな部分が多々あるが、言葉の端々に凄みは感じる。

 軸受けにボールペアリングを使うことと、ムーブメントの分割設計を挙げよ
う。腕時計の軸受けには普通ルビーが使われるが、「PROJECT T」では8箇所
にルビーの替わりに世界最小のボールベアリングを使っている。トゥールビヨ
ンは軸受けが構造的に弱くなる泣き所があり、ボールベアリングなら高性能・
高耐久が実現できる。これをいち早く採用したが、だからといって搭載はそう
簡単なことではない。

 ムーブメントの分割はゼンマイの載る動力源部分と精度を追求する調速部分
を分割している。これは動力源には高負荷に耐える機構が、調速部には繊細な
機構が求められるのに従来のムーブメントのように一体化しているのは合理的
ではないというのと、拡張性(複数の動力源と調速部の組み合わせで商品のバ
リエーションが容易に拡大できる)ことを見据えたもの。しかしこれも思いつ
くのは簡単だが、従来の高級時計程度の精度ではまともなものは作れない。

 「PROJECT T」にかかわったメーカーはメインが超精密加工を得意とする由
紀精密と、国内有数の工具メーカーであるオーエスジー。ボールベアリングは
ミネベア製だ。浅岡氏の持つスキルもすごいものがあるが、彼の構想を実現で
きるだけの、スイスの超高級時計メーカーを凌駕する技術を持つ、こうしたメ
ーカーがないと「PROJECT T」は実現できなかった。

 日本の時計メーカーは確かにクオーツで世界を制した。今でも技術力はスイ
スに勝るとも劣らないものがある。しかし製品の付加価値はどうなのか? 日
本メーカーもクオーツショックの時期のスイスメーカー同様、手をこまねいて
見ているわけではない。工芸品としての価値を訴求した1本5千万円もする腕
時計もつくっておれば、クオーツと自動巻きのいいとこ取りのスプリングドラ
イブ、世界一薄い光発電時計を開発したりもしている。着々と打つべき手は打
っている。

 しかし、腕時計以外の製品を作る、他のメーカーはどうなのか? 多くが今
なお大量生産、効率化のキーワードでくくられる旧来の鉱工業生産の延長線上
にあると言えるだろう。そうした方向性とは逆の、高い技術力を持つ人が手間
ひまをかけた、大量生産や効率とは真逆の製品にも活路はあるのではないか? 
それをこの本は問うているのだと思う。

 その意味では、日刊工業新聞社100周年記念本として、確かにふさわしい内
容をもつ本である。


(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)

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■「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
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正しく理解しようよ、発達障害
『発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由』
栗原 類 著(KADOKAWA)

 最近、発達障害への関心が高まっていますよね。高まっているのはいいので
すが、その高まり方に違和感が少しあります。

 捉え方が曖昧で、漠然とし過ぎていると思いません?

 極論すれば、「みんな違ってみんないい」的なやさしさに満ち、「それぞれ
の個性または違いを認め合おう」的なざっくり感。

 これってホントに障害を認めたことになるのかなあ。「それって個性だよね」
と言って距離を取ってるというか、敬遠しているというか、見て見ないフリし
ているというか。

 それってどうよ?と思っていたのであります。

 が。専門的な本を読むにはハードルが高い。そこで、テレビの人気者の本か
ら始めようと思った次第です。

 栗原類は「笑っていいとも」などでネガティブだけどパリコレモデルで、タ
ロットカードが得意なタレントとして10代から登場して人気になりました。暗
いけどトップモデルというギャップ、タロットという技があるというブレーク
の条件が揃っていたのがよかったのかな? 

 最初は発達障害であることは知られていずに、今回の本でカミングアウトと
いうことになりました。それによって「類君って障害があったんだね。でもい
い人だよね。」という世間の評価が得られたわけですが、やはり仔細に読んで
みると、障害というのは本人と肉親にとって、ヘビーなことだと言わざるをえ
ず、「個性だよね」でスルーしていいものではないと感じました。

 担当医師によると障害は軽い方とのことですが、感覚が鋭敏でこだわりが強
く、注意散漫で記憶が残らず(よって学習障害がある)、人の感情が読めない。
幼稚園時代から周囲の音をうるさく感じ、学校では成績が取れず、

 具体的には、仕事で現場に行こうとするけれど、途中で場所が分からなくな
るなど、さまざま。何かいつもと違ったことがあると感情的になったり、パニ
ックに陥ったりも。

 それに対して、親はその都度、繰り返して、感情が揺れたら一度冷静になっ
て考えることや、思ったことをすぐに言葉にするのではなく、立ち止まって考
えることをアドバイスすることで、生活を支障なく過ごすことをアドバイスし
ます。

 手間と根気と努力、そして愛情が必要な子育てです。

 それらの工夫と努力のしかたを読むと、とても「個性だよね」と一言で言う
ことではないと感じます。

 障害がないとされる側もこのへんは再確認しておきたいことだと思われます。

 栗原類の母の工夫は読んでいてなるほどと納得!

 おばちゃまはここで、「母の愛を感じた」「この母が偉いよね」とかの感想
は言いません。たぶん、私も同じ立場になったら同じことをしたと思うし、で
きるかどうかは別にしてどうにかして子どもが生きる可能性を見つけようとあ
ちこちとぶつかりながらも必死になったと思うからです。おかあさんてそうい
うものだものね。

 もう1つなるほどと思ったことがあります。

 栗原類を芸能の世界で仕事をさせようとしたとき、周囲は否定的なことを言
う人が多かったそうですが、母は音楽関係のライターをしている立場からこう
言います。

「否定的なことを言う人のイメージは誰もが知っている大スター。でも主役だ
けが俳優ではないし、テレビドラマだけが俳優の仕事ではありません。舞台や
ミニシアター系の上映館数の少ない映画の脇役も俳優業で生活しています。
『俳優業で自分1人ぐらいは食べていけるぐらいにはなろうね。30歳までの間
に』」と言ったとあります。

 仕事柄、インディーズから大スターまでさまざまなビジネスの成立の仕方を
見てきたので「売れなくても食う方法はある」と知っていたのです(省)。

 そうそう、一家を養ってこそ一人前とか、スターを夢見てがんばるとかだけ
を目標にしなくてもいいんだと、ちょっと肩のチカラが抜けた感じがしました。
 
 また、障害があるとたとえばテーマパークに行っても刺激が強すぎて1時間
で疲れてしまう。そんな時はコスト(せっかくお金払って来たんだから)を考
えずにすぐ帰るほうが子どものためという記述にもはっとさせられました。

 本題以外にも、目からウロコをぽろぽろはがしてくれる記述があり、いつも
思うのですが障害のことを考えると子育て全般、また人間関係全般を顧みるき
っかけになった読書体験でした。

大友舞子(おおとも・まいこ)
昭和20年代生まれのフリー編集&ライター。関東生まれで関西在住。

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  界は変わる。』(SCICUS)
 https://www.facebook.com/scicus.jp/posts/1054815034566643

・『あれか、これか
  「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門』(ダイヤモンド社)
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・『最高のリーダーは何もしない』(ダイヤモンド社)
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6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 今月はやや遅れ、での配信となりました。

 昨日は仕事での出張のついでに、ある地方都市を訪問していました。元々は
賑わった商店街だったのでしょうが、今や見る影もなく、シャッター街と貸し
ます売りますの貼り紙だらけ…。

 ビジュアル的には「昭和ノスタルジー」で価値があると感じましたが、何せ、
人が居ない。数件、開いているお店にも、老人の姿しかおらず、戦時中にタイ
ムスリップしたかのようでした。

 普段、都心に住んでいるとわかりませんが、日本の地方のあちこちで、同じ
ようなことが起こっているのかと思うと、とてももったいない気持ちがします。

 こればかりは政治が何とかしなくてはいけないのでしょうが、有権者も施政
者も高齢化しており、もっと思い切った方法が必要な気がします。(あ)

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