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[書評]のメルマガ vol.220
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■■ [書評]のメルマガ     2005.6.30.発行
■■       vol.220
■■  mailmagazine of book reviews     [売れる本、ないねー 号]
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■コンテンツ
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★「極私的読書日記」/石飛徳樹
→スミマセン、お休みでーす。単行本執筆中で、請う御期待でーす。

★「面白すぎて、♪どうにも止まらねぇ!」/ミラクル福田
→今回は、多忙につきミラクルさんもお休みです、ズミマセン……。

★「あんな新刊こんな新刊」/荻原千尋
→書店員として励まされる二冊を紹介します。

★「現代ビジネス・古典解読」/aguni
→今回は、古典の名作『人口論』を取り上げます。

★「本の香りだけ」/守屋淳
→戦後六十年の今こそ読んで欲しい傑作を紹介します。
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■「あんな新刊こんな新刊」/荻原千尋
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皆さん、こんにちは。
先月あたりから、全国的に書店の売上が落ち込み気味とか。
確かに、爆発的に売れる本が、ここのところないですからねー。ランキング上
位の冊数が、明らかに少ないんですよ。
うちの店だけじゃないのね、などと安心している場合でもないです。何とか
しなければ、ですね!
とは言うものの、先月、今月と、実はいい新刊がたくさん出ていています。心
からお客さんに買ってほしいと思う本が何冊も出ました。個人的には非常に当
たり月です。
今回は、その中から2つを紹介させていただきたいと思います。

まず一つは、発売したばかりの『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』
(リリー・フランキー著 扶桑社)。
雑誌「en-taxi」で連載されていたこの作品は、発売前から書店員の間では話題
騒然、ヒット間違いなしということで、発売が待たれていました。
今まで出していたライトエッセイとも、一昨年刊行された小説集『ボロボロに
なった人へ』とも作風の違うこの作品は、母親の思い出をメインに語られた、
著者の自伝とも言える作品です。
九州での子ども時代、ゆとりがあるとは言えない生活の中で、欲しいものを買
ってくれ、おいしいものを食べさせてくれたオカン。大人になって東京で一緒
に暮らすようになってからも、家に人が来るたびに食事を振舞うオカン。
そんなオカンに対する愛情を離れて暮らすオトンとの関係を織り交ぜながら、
リリーさんはまっすぐに書いている。
母親という存在を100%受け止め、その気持ちを大切にするリリーさんと、
なぜか周囲に人が集まってきて、皆のお母さんのようになっている強くて優し
いオカンの関係が、暖かくてきれいで、笑えるけれど、悲しい。
親の存在って、感謝の気持ちや愛情はさておき、どこか恥ずかしいものだと
大人になっても私は思っていた。親には絶対に職場に来ないように、来ても私
の親であることはバラさないように、とつい言い聞かせてしまうし、つまらな
い勘違いや、妙な情報や笑えないギャグを嬉しげに披露されると、面白いけれ
どちょっと「やれやれ」という気持ちになってしまう。
恥ずかしいのは、そんなふうに親に接している自分の方だったかも、と、しみ
じみ考えてしまった。テレビに出ているリリーさんに興味を持てない人にも、
ちゃんと気が付かれるように売らなければ、と思う。

もう一つは5月下旬に発売された『ポーの話』(いしいしんじ著 新潮社)。
この作家の本のことは、刊行されるたびに書かせていただいている気がしま
すが、今回も書かないわけにはいきません!この小説家に出会うべきなのに出
会わずに一生を終える人がいるのかと思うと、本を売る仕事をするものとして
勝手に責任を感じてしまうくらいです。
 「うなぎ女」たちの息子として泥川で生まれた少年ポーが、人々との出会い
や川を流され新しい場所に行くことを通じて成長する物語、といっても、この
物語のあらすじも、魅力も説明できない。どこだかわからないのになつかしい
街、現実にあると思えないのに、あるような気がする風習や人々。そして物語
の中に読者をスーッと引き込む力。いしい氏の小説はいつもそうなのだけれど、
今回も、読み始めたら本の中から抜け出せなくなっていた。

悪事を働く人間がかならずしも救いようのない悪人とはかぎらず、ひどい出来
事の中に、全く希望がないわけではないということ。そもそも、何が善いこと
で何が悪いことなのかを、自分はいつからどうやって判断するようになったの
だろう?そんなことを、物語の中に入ったまま考え、読み終わると、自分のい
る世界の広さや複雑さについていろいろなことを思っていた。
 いしい氏の本には、今まで一度もがっかりさせられたことはないけれど、
この小説は明らかに前作より壮大になり、深く高くなっていると思う。
これだけの作品が、たくさんの人に届かないわけがないとも思うし、そうあっ
てほしいと心から思う。

いしいしんじという人を最初に知ったのは、『その辺の問題』(角川文庫)と
いう中島らも氏との対談集ででした。らもファンの友人に「このいしいって人、
ある意味で中島らもよりすごいよ」と言われ、読んでみた時には、このよく
わからないけれど得体の知れない面白さのいしいという人が、自分のことを
激しく揺さぶる小説を書くとは全く思いませんでした。
そして、リリー・フランキーを最初に知ったのは、『女子のいきざま』(新潮
文庫)という本でした。あの名著に教えられたこと(女子は汚い靴を履いては
いけない、とかね。)はたくさんあるけれど、同じ著者が、『ボロボロになっ
た人へ』を書き、そしてこのような作品を発表する日がくるなんて、想像もし
ませんでしたね。
 こういう二人の作家が、続けて本を出し、どちらも普遍的なテーマを、それ
ぞれにしか書けないやり方で描いている、ということに書店員として大変励ま
されます。
本を読むこと、やっぱり面白いじゃん。こんなに面白いんだから、書店員とし
てまだまだやるべき事はあるはず。これからも、いい本はまだまだ発売される
はず。
「売れる本、ないねー」とか、ぐちってる場合じゃない!
と元気を出したところで、今回は終わりとします。
それではまた来月。

(荻原千尋 乙女派美人書店員 カレー好きとの噂)
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■「現代ビジネス・古典解読」/aguni
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「人口論」的に考えるということ

『人口論』
マルサス著 永井義雄訳 中公文庫 1973年

 aguni です。今回、取り上げるのはマルサスの人口論です。名前だけは有名
なのに、どんな内容なのかあまり知られていない。これもそんな一冊ですよね。
アダム・スミスの『国富論』に影響を受け、マルクスやケインズに影響を与え、
ダーウィンの『種の起源』にまで取り上げられているこの一冊は、始めは、匿
名のパンフレットでの印刷であったようです。初版の出版は1798年。フランス
革命直後の時期に、イギリスでの出版でした。

 マルサスがこの本で展開している話題はほぼひとつの命題だけです。「人口
は幾何級数的に増加するが、食料は算術級数的にしか増加しない」この一点だ
けといっても良いかと思います。もう少しカンタンに言いますと、人口は掛け
算で増える。食料は足し算で増える。今の先進諸国の世の中は食料が工場で生
産されていますので、どうもこの話はナンセンスですが、「資源は有限であり、
人口が増え続けると不足する」という考え方はこのマルサスからはじまり、ロ
ーマ・クラブの『成長の限界』、それに二酸化炭素排出への制限や、あるいは
中国の人口問題への懸念から素材インフレまで、いろいろな形で我々の前に登
場してきています。

 もっと言いますと、マーケティングにおける人口の問題というのは結構、重
要な視点です。お客さんの数、口の数、服を着るカラダの数、そういったもの
がどのくらいの数かによって商品の販売数に上限が見えてきます。こういう考
え方の基礎となるのがマルサスの「人口論的な考え方」にあることは間違いな
いでしょう。

 しかしなぜか人口のお話というのはあまり学校でも教えてくれませんし、社
会科の地理の授業でもあまり目立った地位を確保していないような気がします。
なぜでしょうか? ちなみにこの『人口論』が世に出た直後もいろいろな形で
叩かれまくりました。フランス革命直後のヨーロッパといえば若く力のある時
期。イケイケ路線が持てはやされていた時代に、食料に限界があるから成長も
止まるよ、という悲観的な論調が受け入れられなかったのは想像に難くありま
せん。マルサスは批判を受けるたびにこれを改訂し、1826年には初版の5倍の
ボリュームもある第六版を発行しています。面白いことにマルサスはイギリス
の最初の経済学教授、しかも東インド会社の職員教育の学校にてのことでした。
つまり、マルサスのこの食料についての悲観的な考え方が、イギリスの対外政
策・植民地政策に影響を与えていたかもしれない、ということです。イギリス
はそもそも島国。狭い国土で発展するためには海外に領土を広げるしかない。
そういう考え方に落ち着いたのもおかしなことではないでしょう。

 翻って日本でも最近、人口についての話題が増えてきてはいますが、以前は
そうでもありませんでした。というのはこの『人口論』もそうですが、どうし
ても人口を云々しますと、男女関係の話になってしまうからかと思います。つ
まり男女の関係は個人の自由なのだという発想がこういう議論をしにくくさせ
てきたのではないか、と私は思います。例えば早婚への規制に関する話題では、
『人口論』ではこれを、「下層諸階級のあいだで、家族をじゅうぶんに扶養で
きないというおそれにもとづくか、あるいは上層諸階級のあいだで、かれらの
生活状態を低下させるというおそれにもとづく」(P26-27)という指摘をして
います。これってまさに少子化で問題になっている視点そのものです。現在の
日本の法律では、「優生保護法」などの影響もあって、親の都合によって新し
い子供の命が奪われているわけですが、だからといって望まれない子供が生ま
れて不幸になればいい、とは言えず、結局は倫理の問題として片付けられてし
まうのが現状です。結局、経済学に戻って来ないので、議論も先に進まない。
そういう状況なのかな、と思います。

 さて、最後に少子化に絡めてマルサスの『人口論』の定義を読み返してみま
す。「人口は幾何級数的に増加するが、食料は算術級数的にしか増加しない」
は増える方ですが、これを減るほうにあてはめて読み返しますと、「人口は幾
何級数的に減少するが、食料は算術級数的にしか減少しない」・・・これって
今のモノ余り・金余りの日本を象徴するフレーズになってはいませんかね?

 「人口論的に考えるということ」の基本書、『人口論』。あなたの書棚にも
いかがでしょうか?

(aguni ビジネス書・書評者 http://blog.livedoor.jp/bizshohyo/
メルマガ「週刊ニュースなビジネス書評」発行人
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■「本の香りだけ」/守屋淳
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「ジャングル崩れ」はいない

『一下級将校の見た帝国陸軍』山本七平 文藝春秋

1990年〜91年にかけて続いた湾岸戦争のさい、当時の統合参謀本部議
長だったコリン・パウエル氏が、印象的なことを述べています。

《ペンタゴンにいると、ときどき戦争がスケールの大きいゲームに見えてく
ることがある。人が死ぬのでなければそれは実に楽しいものだった》
(『司令官たち』文藝春秋)

パウエル氏はベトナム戦争に従軍、どろ沼のゲリラ戦を経験したことがあり
ます。その意味で、現場の状況をよく知ったうえで、自戒と皮肉をこめてこ
う書いているわけです。

そして、この「ペンタゴンにいると」を「歴史の彼方にいると」に変える時
戦後六十年を経た我々のいる立場が照らし出されてきます。だからこそ、戦
争の体験とは語り継がれるべきものなのでしょう。かくいう評者も「戦略」
なるものを比較的軽々しく扱ってしまう立場にいるわけで、今回は自戒をこ
めて本書を紹介します。

山本七平さんは、ご存知戦後を代表する知識人の一人ですが、その執筆の核
の一つをなすのが、ご自身の戦争体験――ルソン島のジャングルで、あと一
日戦争が伸びれば間違いなく戦死していた状況を偶然にも生き抜いた体験に
あります。本書は徴兵から捕虜収容所に至る克明な体験とともに、日本陸軍、
ひいては戦後にも引き継がれてしまった日本の組織的病理を炙り出していき
ます。

当時、陸軍で蔓延していたのが「員数をあわせる」ということでした。これ
はつまり、《外面的な辻褄が合ってさえいればよく、それを合すための手段
は問わないし、その内実が「無」すなわち廃品による数合わせでもよいとい
うことである》――

なんだか、無理な過密ダイヤを押しつけて、現場に辻褄合わせをさせ、結局
大事故に至ってしまったJR西日本を思い起こさせる記述ですが、山本氏は
こうも書いています。
《「不可能命令とそれに対する員数報告」で構成される虚構の世界を「事実」
としたからである。日本軍は米軍に敗れたのではない。米軍という現実の打
撃にこの虚構を吹き飛ばされて降伏したのである》
JR西日本も、事故によって虚構が吹き飛ばされてしまったわけですが、似
たような構図は、三菱自動車やUFJ銀行、ダイエーといった企業にもあっ
たように思えてなりません。悲しいかな、戦後六十年たっても同じ愚かさは
繰り返され続けているのです。

さらに、《「あいつは気魄がないヤツだ」と評価されれば、それは無価値・
無能な人間の意味であった》という「精神主義」が蔓延し、物事を深く考え
ずとも「気魄」を言い募る者が権力を握って行き、「私物命令」や「リンチ」
が横行する組織……。実際に将校として山本氏が経験したあからさまな実態
、そして現在にも続く組織の病巣がが縷々語られて行きます。

本書で僕が一番印象に残ったのは、次の言葉でした。
《人は、戦争直後に狷湛兇ずれ瓩箸いΩ斥佞呂△蠧世討癲↓爛献礇鵐哀
くずれ瓩箸いΩ斥佞呂覆ったという奇妙なことに気づくはずである》
親しい戦友を助けるか、部下の命を守るかの二者択一を強いられたり、戦友
の死体にウジがわくような状況を横目で見つつ、それが明日の自分の姿であ
ることを予感する――そんな地獄を見てしまった者にとっては、もはや爐
ずれ瓩覆匹箸いΧ鬚しさに身を任せる気力もない、というのです。逆に、
ある意味で道義的にさえなっていく……

そして、これは万国共通の心理だともいいます。だからこそ山本氏が捕虜に
なったとき、今の今まで殺し合いをしていたはずの最前線のアメリカ兵が最
も丁重に優しく扱ってくれ、逆に、現場から離れたアメリカ兵の管轄に移さ
れるにつれ、扱いが酷くなって行くという不思議……

山本七平という稀代の知識人が、最前線の現場から見つめた日本陸軍、そし
て戦争の実態を、戦後六十年という年にこそ、ぜひ。

(守屋淳 著述業)
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■あとがき
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>若干、古い話になるんですが
>はあはあ
>人材派遣のコマーシャルやってるスタッフサービスが残業代払ってなくて
ニュースになってましたねー
>ああ、あのチャイコフスキーの弦楽セレナーデのメロディとともにCMで
「上司に恵まれないなと思ったら」「派閥争いにつかれたら」とかやってい
る所ですね
>そうそう、こりゃライバル企業には大チャンスでしょう。こうなったら、
あの弦楽セレナーデのメロディとともに「会社が残業代を払ってくれなかっ
たら」とかいって、大宣伝やるしかない(笑)要は、他の会社で「不満」や
「不備」があったら、こちらに来てねみたいなCMを大々的に流している所
が、こんなんやってたら普通、もうちょっと袋叩きでしょうと思うんですけ
どね
>しかしまあ、残業代ばっくれてる会社って凄く多そうですよね。ある意味
マスコミもそうだから、あんまし叩けないのかもしれませんね……
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