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[書評]のメルマガ vol.22
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■■ [書評]のメルマガ   2001.1.10.発行
■■       vol.22
■■  mailmagazine of book reviews [あっさり食べられちゃう 号]
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■「私、この本で徹夜しました」林弘平
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『恐竜クライシス』(ハリー・アダム・ナイト著/尾之上浩司訳/創元推理
文庫)660円

 「なんか面白い小説知らない?」と人に聞かれたら、僕はたいがいこのハ
リー・アダム・ナイトの『恐竜クライシス』と答えるようにしている。
 この作家、日本じゃあまり知られていないみたいだけど、イギリスでは人
気のパニック小説作家らしいのだ。
 で、『恐竜クライシス』だが、このしょうもないタイトルからわかるよう
に恐竜が大暴れするだけのパニック小説だ。しかも遺伝子工学で現代に蘇っ
た恐竜が……てところからして、なんかの二番煎じのようだが、どうやら出
版されたのはこっちのほうが先らしい。
 そう『ジュラシック』のほうがパークって、いやパクっているのだ。もっ
とも、たとえ『ジュラシック・パーク』のほうが先だったとして、小説とし
ては『恐竜クライシス』のほうが格段に面白いと僕は思う。
 あちこちでこの小説は面白いと言っているのだが、どうも実際に読んでく
れた人はいないようだ。だから『恐クラ』って面白いよねって会話ができな
い。それが口惜しい。
 きっと読む前からアホらしいと決めつけているのだろう。だとしたらそれ
は実にもったいないと思う。これほど面白い小説はそうそうないのだから。
 とにかく最初の1ページ目から恐竜が登場し、最後のページまで全編クラ
イシスだ。これでもかというほど次々に人が恐竜に食われる。ライオンや虎
まで食われる。僕はとくにこの部分が好きで、ライオンがおしっこチビりな
がらティラノサウルスにとびかかって、あっさり食べられちゃうところの描
写なんか、もう背筋ゾクゾクものだ。
 だからなんなんだと言われれば、それまでだけど、一応簡単にストーリー
を説明すると、イギリスの片田舎に頭のいかれた大金持ちが住んでいて、こ
の人が恐竜の化石から細胞を取り出し、ニワトリの卵に移植かなんかして恐
竜を復活させ、それでもって動物園をつくろうとしたところ、ご他聞にもれ
ずそのなかの一匹が逃げ出しちゃって、人を襲うというところから話が始ま
る。
 主人公は新聞記者。そのガールフレンドも新聞記者で、ふたりとも特ダネ
狙いのブンヤってかんじで結構人間臭い。
 大金持ちには淫乱の女房がいて、この夫婦の関係に事件の発端が隠されて
いるといった小細工はあるが、要は暴れまくる恐竜の活躍を描いた小説だ。
 ここにはなんらあたらしみも驚きもないが、特筆すべきはそのストーリー
展開の速さと、小気味よいテンポ。少しも弛緩することなく、これほどタッ
タカ読める小説は少ない。
 ハリー・アダム・ナイトは、この小説で他人から評価されようとか、尊敬
されようとかいった気持ちは皆無だったと思う。最初のページに恐竜を登場
させた瞬間、彼の意識は完全に恐竜とシンクロしてしまい、あとは筆が暴走
するままに一気に書き上げてしまったに違いない。
 こういう小説が書ける人はしあわせだが、こういう小説が読める人はもっ
としあわせだと思う。

<林弘平 出版社勤務 35歳 年間読書量30冊 好きなジャンル 時代
小説・ミステリー・ホラー>
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■「私、この本で徹夜しました」朝日山
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「インド社会と新仏教」山崎元一 刀水書房
「カーストの絶滅」アンベードカル 明石書店

去年最大の政治的事件といえば、「加藤紘一の乱」であると言って、否定す
る人は、いないでしょう。いるとすれば、たぶん日本共産党の委員長に志位
和夫が就任し、党のリストラ(首切りじゃなくて、構造改革の意味ね)が本
格化したことを挙げるでしょう。もっとも、どこまで本気なのか未知数です
けど……本気かどうかは、党大会で執行部への反論意見が出ても、すぐに反
論者が「査問」されないかどうかで判断しましょう。数年前まで、「査問」
されるとすぐ党を除名されてましたからね。そんな人が出るかどうかが、日
本共産党のリストラを評価するときのポイントです。党大会が反論を黙殺で
きずに迷走するようでなければ、変わったとは言えんもんね。

本気かどうか今一つわからない日本共産党に対し、加藤紘一は、間違いなく
本気だったでしょう。失敗の理由は簡単で、朝日山に言わせれば世論に期待
したから。加藤紘一が「君主論」や「孫子」なんかを読んでいれば他に策が
あったろうに……はぁ。

政治家って、大変な商売です。実は朝日山、ふだんの言動が災い\(^O^)/
して、昨年市会議員に担ぎ出されかけて、最後には立候補を断念しました。
理由の第一は多忙ですけど、第二の理由は、やれやれと言う支持者の腰が全
く据わっていなかったからです。本気ならやることを全然やらない支持者や
地域の人たちに、あぁダメだこりゃ……選挙は戦いですからね。実力とやる
気において信頼できる味方がいなきゃ、できるもんじゃありません。加藤紘
一は自分の派閥すらまとめきれなかったんですから、負けは当然です。

そんな政治の難しさに、政治家は日々直面しているわけですが、それは歴史
に残る偉大な政治家にとっても同じことだったようです。マハトマ・ガンジ
ーだって例外ではありません。リチャード・アッテンボローの映画「ガンジ
ー」に出てきた「塩の行進」に感動のあまり涙した朝日山が、最近本屋で見
つけたのが、光文社・知恵の森文庫の「不可触民 もう一つのインド」。悪
名高いカーストに虐げられてきた人々の記録ですが、とんでもないことが書
いてある。

「マハトマ・ガンジーなんて信用するんじゃないぞ」
ガンジーは世評ほど立派な人間ではない。四つのカーストの、さらに下に位
置づけられた不可触民にとって、ガンジーは英雄でも何でもないというので
す。
なんだとぉぉぉ??

では彼らにとっての英雄とは誰なのか。それがアンベードカルという男だと
書いてある。アンベードカルとは何者か。不可触民出身の社会運動家・政治
家・学者。インド憲法の編纂者にして、カーストとヒンズー教が不可分と悟
り、ヒンズー教徒から仏教徒に改宗した男!

なんだこいつは?朝日山の大好きな叛逆者じゃないか(笑)
ということで、ガンジーをクズ呼ばわりした男の本の探索が始まった。それ
なりにたくさんあるが絶版が多い!あっても、これ一冊という本がない(あ
るようなのだが入手難)。それで仕方なく二冊挙げることになりました。

読む順番は、「インド社会と新仏教」、「カーストの絶滅」の順に読むこと。
「インド社会と新仏教」に載っているアンベートカルの生涯と思想。そして
カースト制度に関する資料を読み込んで、「カーストの絶滅」にあるアンベ
ートカルの主要論文を読む。「カーストの絶滅」だけを読んでいると、せい
ぜい高校卒業程度の世界史の知識しかない朝日山ほか一般的日本人では、カ
ースト制度やインド近現代史についての知識に欠けるので、迫力はあっても
よくわからん状態に陥ります。
ガンジーの反論なども書いてあって、両者の立場の違いが激突するところが
読みどころでしょう。

ガンジーの運動は、南アフリカで弁護士をしていたときに彼が差別的な扱い
を受けたことから始まったとされています。差別に敏感な彼が、なぜ不可触
民が日々直面している苦難に関心を持たないのか。いや、持っているとガン
ジーは言う。実際行動も起こしている。それは確かだ。だが、本気か?本気
なら、どうしてカースト制度と不可分のヒンドゥー教を否定しないのか?

アンベードカルの舌鋒は穴もあるが、鋭い。アンベードカルという男は、ヒ
ンドゥー支配よりイギリスの統治の方がマシ(ヒンドゥー教の不可触民への
差別に較べたら、英国人の差別なんて差別のうちに入らない)だということ
で対英協力も辞さない男です。
ガンジー側からすると恣意的な少数派にされて独立を否定されたという第二
次円卓会議。ここでもアンベードカルは、ことあるごとにガンジーと対立し、
「無礼、悪魔的、イギリスの走狗、売国奴」などとインドマスコミから呼ば
れながらも不可触民の権利を擁護するために戦い抜きます。

朝日山の見解からすれば、ガンジーは政治家として有能だったことは疑いな
いと思います。だからこそ、インド独立・統一を目指すうえで、圧倒的多数
を占めるヒンドゥー教徒を敵に回すことを極力避けたのでしょう。これに対
し、不可触民であるアンベードカルにとって、インドの独立よりもカースト
差別の撤廃こそが大義であったわけで、ぶつかるのは必然の成り行きです。
もっともガンジーのそんな姿を快く思っていなかったのは不可触民だけでは
ありません。ガンジーの説得にもかかわらず、イスラム教徒がヒンドゥー教
徒に叛旗を翻した結果できたのが、今のパキスタンとバングラディッシュで
す。

だからと言ってガンジーがアンベードカルを憎んでいたかといえば、さにあ
らず。「もしかれがわたしを殺しても、わたしは驚かないだろう」と言いつ
つも、彼を高く評価していたようです。インド憲法の編纂責任者にアンベー
ドカルを推したのもガンジーだとか。ところが、ガンジーが死んだとき、ア
ンベードカルは「真の敵は去った」と言い放ったという。

正直なところ、大人のガンジーにガキのアンベートカルといった印象も、な
いわけではありません。ですが、そうした印象を、挑発的な文章で物議をか
もすことを好む朝日山が主張しないのは、あのプーラン・デヴィのカースト
であるマッラですら、「最下層のカーストではなく、その下に目も霞むほど
はるか下層まで何千という《差別されるべき》カーストが続いている(女盗
賊プーランの解説)」現実を目の当たりにしていたら、言えないかもしれな
いなという感慨を持つからです。

最後に注意を……
アンベードカルの主張を読んでいると、だんだん腹もたってくる人がいらっ
しゃるかもしれません。実は朝日山がそうだった。なんだ、アホな「上」の
権力の横暴に耐えているオレは不可触民かってね(笑)。たぶん、その感慨は
多少極端だけど、間違いないでしょう。だからと言って、ナイフや猟銃を振
り回さぬよう……勝てる時期が来るまで、みなさん耐えつつ頑張りましょう
。やる時は、田中真紀子小泉純一郎などを公開討論などで挑発して、彼らの
化けの皮を剥いでやるくらいのことをしましょうね。そうすれば、逃げるの
にも大衆(マスコミ)好みの撤退もできますから(^o^)/~~。
(朝日山 百姓 36歳 年間読書量50冊 好きなジャンル 特になし)
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■あとがき
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>CMで年賀メールの宣伝さんざんやってましたけど、少しは来ましたか?
>うーん、全然。やっぱり年賀状だよねー。でも、そもそも年賀状自体、少
なかったりして・・
>何枚くらいもらうんですか
>毎年、50枚行かないんですけど・・
>それって、友人・知人少なすぎませんかー(笑)
>うう、はっきり事実を言うなープンプン。でも、やっぱり年賀状はお年玉
くじついてないと駄目ですよねー。メールの賀状も、くじつければきっとひ
ろまるんじゃないんですかねー
>うーん、やっぱ物欲ですか(笑)
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ガンジーと裸の女の子たち
 マハトマ・ガンジーは78歳で暗殺される直前まで、孫のような年齢の女性たちと裸体
| 翻訳blog | 2006/03/26 4:15 PM |
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