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[書評]のメルマガ vol.249
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■■ [書評]のメルマガ     2006.2.12発行

■          vol.249
■■  mailmagazine of book reviews  [ 他人の本棚 号]
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[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。今月もイベントたくさんです。
★「大阪豆ごほん」真治彩(ちょうちょぼっこ) 
→北堀江のふたつの「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「食の本つまみぐい」遠藤哲夫
 →〈大衆食堂の詩人〉エンテツが料理文化史の重要本を紹介します。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。

*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
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【トピックス】
今回は知り合い関係の告知が多くて、すみません……。
★岡崎武志『気まぐれ古書店紀行』とそのイベント
8年前にはじまり、現在でも継続中の『彷書月刊』の名物連載を完全収録した
本が、2月15日頃に工作舎から刊行されます。432ページもあって2300円はお
買い得。加えて、イラストも文字もウマイ岡崎さんならではの趣向もあり。ぜ
ひ手に取ってみてください。同書刊行にあわせて、2月、3月にさまざまなイ
ベントが開催されます。以下、かいつまんでご紹介。

その1 同書装画を担当した石丸澄子さんのポスター展&即売会「本の散歩 
シルクスクリーンによる古書店ポスター展」を、ジュンク堂書店池袋店3Fフ
ロアにて開催中。

会期:2/2〜2/28
会場:ジュンク堂書店池袋店 3F

その2 神戸・海文堂書店にてサイン会開催 
『気まぐれ古書店紀行』著者・岡崎武志さんが神戸に出張。古本ミニコミ誌
『sumus』を兵庫県下で唯一販売している海文堂書店にてサイン会が急遽決
定しました。この機会に関西在住のファンの方、ぜひお立ち寄りください。

“ 古本者 岡崎武志  神戸乱入サイン会 ”
〜 『気まぐれ古書店紀行』(工作舎) 出版記念 〜
日時:2/18(土) 14:00〜15:00
会場:海文堂書店・1F中央カウンター
   兵庫県神戸市中央区元町通3-5-10
   電話078-331-6501

その3 古本酒場 コクテイルにてイベント「古本酒場 岡崎武志」
『彷書月刊』人気連載単行本化を記念して、均一小僧・岡崎武志がカウンター
に入ってみなさまのお相手をします。文士料理、ギター演奏、トークショーな
ど、何が飛び出すかお楽しみ!

日時:2/19(日) 19:00〜
会場:古本酒場 コクテイル
   杉並区高円寺北2-24-13あづま通り(JR中央線高円寺北口徒歩7分)
   電話03-3310-8130
   料金:飲み放題・食べ放題 3500円
   もれなく工作舎・汚損本(貴重本多数あり)を一冊プレゼント
※要予約、ただし席は先着順

その4 六本木でトークショー「均一小僧の独演会」

日時:3/18(土) 19:00開場、19:30開演。
会場:ストライプハウスギャラリー
港区六本木5―10―33 3F(六本木交差点、アマンド脇の路地、芋洗い
坂を下った右手、六本木中学前)
入場料:500円。
予約:2月20日より受付。
青山ブックセンター六本木店(03-3479-0479)までお申し込みください。

★コクテイルでのイベント
昨年12月にも行なわれた、高円寺の〈古本酒場コクテイル〉での、立ち飲み
&古本市&イベントの第二弾です。今回は、「一箱古本市」前哨戦ということで、
不忍ブックストリート関係有志が一箱ずつ出品します。

その1 不忍ブックストリート協賛「コクテイルの一箱古本市」
出品者:決定次第、告知します
2月25日(土)、26日(日) 12:00〜18:00

その3 古書現世・向井透史トーク
2月25日(土)午後2時〜 
ゲスト:畠中理恵子(書肆アクセス)ほか
『早稲田古本屋日録』(右文書院)刊行を記念してのトークショー。当日はサ
イン本も販売します。

その3 オヨちゃんとモクローくんの「古本ジェットストリーム」
2月26日(日) 午後2時〜4時
出演:山崎有邦(オヨヨ書林)
   南陀楼綾繁(編集者・ライター)
ゲスト:宮地健太郎(古書ほうろう)ほか不忍ブックストリート関係者
入場無料

根津の古書店「オヨヨ書林」(http://www.oyoyoshorin.com/)の店主にして、
「不忍ブックストリートのニセ平井堅」の異名を取る「オヨちゃん」こと山崎
有邦と、本のコトならドコでも首を突っ込む編集者・ライターの「モクローく
ん」こと南陀楼綾繁が、東京は高円寺・古本酒場コクテイルをキーステーショ
ンに、周囲3メートル四方の皆様に向けて、思いついたハナシを喋ります。二
人の絶妙にかみ合わない会話をお楽しみください。最近の収穫本や、好きな音
楽を掛けるコーナーもあり。今回は、開催まで2ヶ月に迫った「一箱古本市」
の裏話や、不忍ブックストリートの最新情報などを中心にお話します。

その4 中川五郎&三上寛「フォークとトークで送る 俺達を通り過ぎていっ
た音と人と」
フォークシーンをリードしてきたお二人による、トークあり、歌ありのイベ
ントです。五郎さんも寛さんも歌もいいけど、実は座談の名手なのです。
2月26日(日) 19:00開場 19:30開始
チャージ3000円+1ドリンクオーダー
※30名限定。要予約。

いずれも場所は、〈古本酒場 コクテイル〉です。
http://www7a.biglobe.ne.jp/~koenji-cocktail/contents/frameset.htm

★阿佐ヶ谷〈よるのひるね〉で古本市「よるひるふる」  
 阿佐ヶ谷の昭和風バー・よるのひるねでも、古本市を行います。しかも、コ
クテイルの古本市と同じ日だ! 出品者は、かもめブックス・股旅堂・駄猫舎・
inkspot、よるのひるね。当日以降も一週間、営業時間中に販売するとのこと。

2月26日(日) 12:00-18:00
場所:よるのひるね
杉並区阿佐ヶ谷北2-13-4
Tel 03-6765-6997
19:00〜26:00
http://members.jcom.home.ne.jp/yoruhiru/

★「チェコのマッチラベル展」、今度は奈良と金沢へ

□奈良篇
2006.3.2(木)〜3.13(月)
場所:よつばカフェ
奈良市紀寺町954
営業時間/12:00〜20:00(初日の展示は14:00より)
定休日/火曜・水曜日 
TEL/0742-26-8834
南陀楼の在廊日/2(木)、4(土)、5(日)、13(月)
http://www.h7.dion.ne.jp/~yotsuba/
*駐車場はありません

□金沢篇
3.17(金)〜4.3(火)
場所:ブックカフェあうん堂
金沢市東山3-11-8
営業時間/10:30〜19:00
定休日/水曜・木曜 
TEL・FAX/076-251-7335
南陀楼の在廊日/18(土)、19(日)
http://www.aun-do.info/

●3/18(土) 14:00〜
南陀楼綾繁と田中義英氏(benlly’s&job店主)によるトークショー
あり。会費500円(1ドリンク付)。要予約。

なお、3/19(日)8:00〜13:00 
第一回「金沢の一箱古本市」を行ないます。
場所:金沢・主計町 源法院境内
(大雨の場合はどうするかは、検討中)

また、3月19日(日)には、金沢で内澤旬子の本づくりワークショップも
行ないます。詳しくは、以下をご覧下さい。
http://d.hatena.ne.jp/halohalo7676/

なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

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■大阪豆ごほん  真治彩(ちょうちょぼっこ)
(25) 本に囲まれた友だちの部屋で過ごす休日
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 誰かの本棚を見ることは楽しい。ただ、本棚を見られることは結構恥ずかし
いことだ。それを承知で、ちょうちょぼっこのお客さんに本棚を見せてもらう
ことがわたしの中でブームとなっている。第1弾として、絵本・デザイン書を
多く持つ中嶋さん宅を訪問したときの様子は「ちょうちょぼっこ日誌」(2005/
11/10)で簡単に触れている。
http://www.nk.rim.or.jp/~apricot/chochobocko.html

第2弾として、先日、モズさんマナムラさん夫婦のお宅を福島さんと訪れた。
モズさんはわたしより5歳年上の35歳の男性、マナムラさんは福島さんと同じ
29歳の女性。お二人はちょうちょぼっこのお客さんである以前に、わたしと福
島さんが彼らのブログの読者で、メール交換などをたまにする間柄だ。日記を
読んでいるので日々のあれこれを知っていたり趣味趣向を把握しているのだが、
名前や職業などは知らず、ちゃんとお話するのもお宅を訪問する日が実は初め
てだった。「モズさん」「マナムラさん」とおおよそ本名ではないだろうが、
なんの疑問も持たず、そう呼んでいるので文中でもそう記述させていただく。

泉北高速線「光明池」を最寄駅とする真新しいマンションを訪れた私たちは、
広がる新興住宅地を目の前にし不思議な感覚に陥った。本当の都会で育った福
島さん(吉祥寺育ち)と本当の田舎で育ったわたし(岡山県阿哲郡育ち)には、
この「泉北ニュータウン」と名づけられた街並にあまりに馴染みがなかったせ
いだろう。明るい日射しが差し込むリビングに通されたわたしたちはこころな
しか落ち着かず(ほんのりと香る家庭の匂いに戸惑ったのだろうか)「じゃ、
とりあえず本棚でも見ますか」というモズさんの言葉に安堵した。案内された
部屋は6畳ほどの広さで、壁一面に背の高い本棚が並べられていた。右半分が
モズさんの、左半分がマナムラさんの本棚だった。

上から下まで右から左まで見ていたら、モズさんが珈琲を煎れてくださる。美
しい器に入った珈琲だ。(ちなみにモズさんはお茶やらやきものやらも趣味とす
る)珈琲を飲みながら何を話してよいか分からず、思わず「一番高価な本はど
れなんですか?」と下世話極まりない質問をする。すると、ずらりと並ぶ上林
暁の本の中でもやたら古そうな1冊を取り出して見せてくれる。先程、上林本
を眺めながら、きっと高いのだろうと触るのをやめていたわたしは「う〜ん。
古い本だわねえ」と知識のない感想を持ちながら緊張した指先でページをめく
った。

最近、集めているという藤沢桓夫の本も並ぶ。「あー、この人の本集めている
んですよねー」など、藤沢桓夫のことを「この人」よばわりするわたしは藤沢
桓夫がいかなる作家か本当に知らない。「大阪なのに藤沢先生の本はあまりな
くて」と言うモズさんは、2005年11月21日の「ナンダロウアヤシゲな日々」
(http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/20051121)を読み、『谷沢永一書誌学研叢』
(日外アソシエーツ)に「藤沢桓夫著書目録」が収録されているということを
知ったそうだ。図書館でコピーした「藤沢桓夫著書目録」を簡易製本し、買っ
た本には赤い丸印をつけていた。「このひと、マメだな〜」とその目録を手に
思ったが、実は部屋に入った瞬間、マメであることは既に感じていた。本やCD
は見事に整理整頓されていた。

マナムラさんは女子らしく武田百合子などのエッセイが並ぶ一方、犯罪実録
ものも多く並んでいた。犯罪ものにハマっていることは日記などを読んで知っ
ていたので、桶川ストーカー殺人事件や北九州監禁殺人事件について話す。わ
たしも北九州監禁殺人事件ものを少し読んでいたのでその恐ろしさで盛り上が
る。マナムラさんはマンガも大好きなようで、マンガの数も相当多い。買おう
かどうか迷っていた志村貴子の『青い花』がある。思わず手にしたわたしに
「それ、すごいいいですよ」とマナムラさん。「志村貴子にはレズホモものを
もっと描いて欲しいですよね」と藤沢桓夫を「この人」呼ばわりしたわたしは
この話題は得意分野とばかりに嬉々と話す。マナムラさんはそれ以外にも懐か
しの小学館入門百科(ミニレディ百科)やコロタン文庫も収集しておられ、小
学生の頃、図書室で読んだそれらを久しぶりに見たわたしは少しばかり感慨深
くなった。

その後、古本屋の話に。南海沿線は数店鋪の天牛堺書店が点在するので、お2
人はやはりそこに行く率が圧倒的に多いようだ。これもこれも天牛堺での掘り
出し物と天牛堺書店ヘビーユーザ夫妻は話す。「あんたたち、天牛堺のCMに出
れるよ」とは心の声。「古本屋ってどこに行きますか」というモズさんの質問に
福島さんは「古書キリコ(池田市)」と答え、わたしは「天牛堺船場センター
ビル」と答える。あとは難波の天地、天六の天牛、南海の古書センターぐらい
で、梅田方面の古本屋にわたしたちは弱いなと改めて感じた。最近、懇意にし
ている一色文庫を紹介してみたが、「モズさんの好きそうな本はないかもしれ
ない」と小さな声で付け加えておいた。

ひとしきり話した後で、モズさんがお抹茶をたててくれる。多趣味な人だね、
全く。品の良いお饅頭が並べられた角皿の画像は何度か日記で拝見していた。
(柿がもられていたりクリスマスケーキが置かれていたり)福島さんが「案外
小さいお皿ですね〜。あ、ケーキが小さかったのかぁ」と失礼ぎりぎりの発言
をするのが面白かった。「牡丹がきれいででしょ。こういうのを浮牡丹って言
うんですよ」というモズさんの言葉も「お饅頭おいしいね〜」「上品な甘さだ
ね〜」という女子3人の会話にかき消されていた。モズさんは井伏鱒二の『珍
品堂主人』(中公文庫)を取り出して、「珍品堂主人のモデルは秦秀雄ってひ
となんですよ。で、その秦秀雄が書いた本が『骨董玉手箱』っていう、この本
です」とわたしたちに見せてくれるが、骨董とか器とかもうわたしたちの知識
の容量を超越した話題であった。話題にはついていけなかったが、お抹茶はす
ごいクリーミーな泡だち加減でとても美味しかった。しかし器を愛でる情緒を
わたしたちは持っていないようだった。

文士の回想録や交遊録を読むのが好きなモズさんの本棚には、それ関係の本
がたくさん並んでいた。すごい! 付箋だらけ。わたしも常々読んでみたいと
思っているのだけどなかなかまだ手をつけておらず、興味深く本棚を拝見した。
「芥川が書くものはあんまり面白いと思わないけど、芥川のことが書かれたも
のはどれもこれも面白い」という発言は頭の片隅に残った。「芥川の本の装幀
をほとんど手掛けた小穴隆一って人がいて、その人が書いた『鯨のお詣り』も
天牛堺で買いました」とモズさん。小穴隆一やら秦秀雄やら聞いたこともない
よー。誰だよー。とは正直な感想。けど、モズさんが好きだという文士の回想
録や交遊録の魅力を少しは分かったつもりになった。

その後、モズさんと福島さんが音楽話を始める。あー、この2人、音楽の趣
味があうんだったわ。カンタベリとか言うので、ペリーヌの従妹かなんかだと
思ったらどうやら音楽の話のようで、小穴隆一やら秦秀雄同様、わたしの知識
外のことなので、全く会話を聞き取れない。福島さんがメモなんかとりはじめ、
「これ、聴かせてください〜」とかって感じで、モズさんはDJと化しCDをか
けている。モズさんは既婚者だけど、このような展開で男女が恋愛関係に陥る
ことは往々にしてあるだろうなあなどと奥様を目の前にして不謹慎なことを考
えはじめたわたしは、それを打ち消すかのように、さきほど見た志村貴子のマ
ンガを読みはじめた。気がつけば心は鎌倉の女子高へと飛んでいた。

雑談はつきず、気づけば時間は相当経っていた。そろそろおいとましようと
いう時に、モズさんが「これ自慢なんですよ」と吉田健一から河上徹太郎への
献呈本を見せてくれた。「おお!豪華な。これは両方とも名前が分かる!」と
心の中で叫んだ。続いて、「これも」と見せられた本は鈴木邦男のサイン本。
そういや、新右翼本、天皇本も多く並んでいたなー。けど、前者は、今流行り
の文化系女子も喜ぶだろうけど、邦さんのサインはねえ、微妙〜。「私たちは
いいとしても他の女子には見せてはいけないよ、モズさんよ。」と声に出さず
呟いた。

本に囲まれた友だちの部屋で過ごす休日は久しぶりで、「ちょうちょぼっこ」
なんて言わばそんな空間の延長線上ではじめたのに、こういう楽しい感じをす
っかり忘れていたなあなんて思いつつ家路についた。

〈しんじ・あや〉
貸本喫茶ちょうちょぼっこのメンバー。今年で5周年を迎えるちょうちょぼっ
こだが、何の予定もたてておらず。「ちょうちょぼっこを閉めたら、あの本の
置き場はどうしよう」などと4人全員が考えはじめているのを薄々感じる今日
この頃。

貸本喫茶ちょうちょぼっこ
〒550-0014 大阪市西区北堀江1-14-21 第一北堀江ビル4F
金:18:00〜22:00/土日:13:00〜21:00
http://www.nk.rim.or.jp/〜apricot/chochobocko.html

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■食の本つまみぐい  遠藤哲夫
(16)市場にふりまわされる農漁業と生活
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朝日新聞経済部『食糧 何が起きているか』朝日新聞社、1983年

育てる育むことが苦手。欠点欠陥があると、それをあげつらね不満や不安を
ぶちまけるだけで、育てる育むことを追求しない。結果、壊れる。壊れても、
そんなのいらないよ、おれにはこっちがあるよ、こっちがいいもんね。

これは日本人の性癖なのか、いまの日本の市場で生きる人たちの性癖なのか。
とにかく、はやい話、日本の農漁業はダメだ競争力がないと、さっさと見切り
をつけた。1961年の農業基本法の施行。「優勝劣敗の市場競争原理」なんて
言葉は、日本の農漁業は、このころから耳にタコができるほど聞かされてきた。

おれは高校生だった。魚沼コシヒカリで有名になった米どころ、でも田舎じ
ゃ生活ができない、東京へ行こう。東京へ行けばなんとなるさ。若者だけじゃ
なく、年寄りまで、そう思った。東京へ、東京へ。歌もできた。この流れは、
70年代を通して、怒涛のごとく。

で、80年代初め、この本が出た。「朝日新聞に、一九八二年七月から十二月
まで、毎週一回連載した特集「食糧」に加筆して、まとめた」。当時の鈴木善
幸首相がアメリカのレーガン大統領に尻尾をふって、市場開放政策の第二弾が、
大統領にメデタク評価されたころだ。背骨の曲った養殖ハマチが出回って騒が
れたころだ。農地では毒ガスマスクをつけて農薬をまいていた。

「日本では、政府の一部が他国と気脈を通じたり、有力経済人が農業そのもの
の追放を提唱したりする国家的分裂、危機感と危機感の衝突の中で、農業を豊
かに生き生きと発展させる、将来にむけての明確な政策を今も政府は描き切れ
ないでいる」「ソニー名誉会長の井深大は、八二年三月十日東京で開いた「国
際化に対応した農業問題懇談会」の席で、「農業はそっくり東南アジアへ移し
たらよい」とぶった。」「「競争力を失ったものを国内に抱えておくことは国
民的損失以外の何物でもない。計算すると、農家には農産物を作ってもらうよ
り、カネを渡して遊んでいてもらった方がまだましだ。大体、農業と工業とで
は、単位面積あたりの生産性で千五百倍の開きがある」と、井深はいうのである」

何百年の営みを続けてきた田んぼは、わずか1年で草ボウボウ。東京湾の海
岸線は埋め立てられ、工場がたち、いや、工場がたったなら、まだいいほうか、
いまでも、埋め立てられたまま草ボウボウの海岸が広がっている。井深の描い
た風景だ。

いま「食の乱れ」がいわれ食育基本法なるものまで制定された。食の安全が
脅かされ、食への不安が高まっている、といわれるが、本書では、こうだ。
「核兵器がなくても私たちは滅び得るのではないか。安全性のはっきりしない
添加物や農薬漬けの食べ物。何代か後に、どのような形で、その効果が出てく
るのか。私たちは緩慢な死を生きている」。チト、これは煽りすぎじゃないか
と思う。

こんどは、180度転換の主張。工業を否定し、かつてのように日本の農漁業
に依存する、昔ながらの伝統食がよいのだと。この本から、20数年たつが、同
じ議論の堂々めぐり。不安や不満や強迫観念からは、マットウな政策は生まれ
ないという証明。「核兵器がなくても私たちは滅び得るのではないか」「私た
ちは緩慢な死を生きている」。こういう認識から、何か生まれるのか?

ま、でも、いま本書を読んで、この日本という国は、本当に「国」といえる
ようなものなのか、考えてみるのも悪くない。それに、「市場競争原理」とい
うものが、ワレワレの味覚までつくってきたことに気がつくだろう。そういや、
グルメ本や外食本が絶好調に流行りだすのは1980年代からだ。そういう本の
書き手が、あたかも、よいモノうまいモノをご存知のようにふるまっているが、
その多くは、市場がもたらした幻想にすぎない。生産者も流通業者も、消費者
の味覚も、市場にふりまわされてきた。では、ワレワレは、どう市場をこえら
れるのか。文化といわれた出版ですら、市場でアタフタする時代に。

〈えんどう・てつお〉フリーライター。毎月15日発売の月刊『食品商業』(商
業界)に「食のこころ、こころの食」という通しタイトルで、重いエッセイを
連載中。

「ザ大衆食」 
http://homepage2.nifty.com/entetsu/

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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(33)シール貼りこみで若き日を思う
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 第7号の納品に遅刻し、編集WクンにもカメラのSさんにも白眼視された私
だったが、なに、本さえ出てしまえば、あとはもう好きな営業仕事であるから、
気分は軽い。例によって納品当日に回る店を回るのだが、第7号なのかと思う
と、なんかこう、ずいぶんな時間が経過したようで感慨もひとしお……、そう、
本当に時間が経過していたのである。

 酒のミニコミでいいじぇねえの、といい加減に決めて創刊号が出たのが2002
年10月だから、もう、3年に近い。それで7号しか出てないってのはいったい
どうしたことなんだと詰められた日にはグーの音も出ねえ、ってなわけだが、
本当に、3年で7冊。
ねえ。これでよく、はるかに長い道のりを来たものよの〜などと感慨ひとしお
ごっこをしてられたもんである。3年で7冊。ぜーんぶ、アタシが悪いんだ。

 さて、7号納品後のことであるが、第7号はひとつのエポックだった。ISBN
コードが印刷されたのである。バーコードまで付けてしまった。
これは、実にどうも、とんでもないことをしでかしてしまったような、いて
もたってもいられないような、なんだかひらがなばっかりになってるような、
間が抜けたようでいてやっぱりちょっと焦る出来事なのだった。吉祥寺「ハバ
ナムーン」のマスターは言ったね。
「オレがこの第7号でいちばん感動したのは、ISBNコードが入ったことだね」

 そうなのだ。それほどのことなのだ。そしてISBN問題は、その後に大きな波
紋を残すのである。
 第7号印刷に際して私は、バックナンバー用のISBN番号を登録した。これが
あれば、バックナンバーも全国からの注文を受けることができるのだ。だから取
得した。
 しかし、バックナンバーは、ISBNが印刷されていない。つまり後付けでISBN
を付けなくてはいけない。シールを貼るのである。

表4のところにシールを貼る。そんなもんワケはねえよ、と思っていた私がバ
カだった。貼るには貼るんだが、『酒とつまみ』には表4にはページ中央からち
ょっと上くらいのところにイラストが入っている。ISBNとバーコードを印刷し
たシールをそのまま貼ろうとすると、そのイラストの一部にかかってしまう。
 第3号と、第4号がそうだった。

「バックも入れてください」
 地方・小出版流通センターから、飛び上がって喜びたいバックナンバーの注
文が来たとき、私は本当に飛び上がったのだけれど、その後の私は、ただひた
すらISBNコードの印刷されたシールを酒とつまみの表4のイラストにかから
ないように切り出しては1枚、また1枚と、貼り付けていったのだった。
 出版社に勤務していた若い一時期のこと、返品された本のカバーを消しゴム
で擦っては1冊1冊汚れを落とした頃のことを、ふと、思い出した。この仕事
は楽しい。

〈おおたけ・さとし〉『酒とつまみ』編集発行人
『dancyu』3月号のカップ酒特集の中で、ワタクシ、カップ酒とカップ焼酎を
飲みながら九州を縦断しております。写真もバシバシ載っちまってる。酔眼、
薄ら頭、ポケットにカップ焼酎。力の入らねえオヤジなんでありますが、焼酎、
うまかったねえ。また行きたい。
第8号、もう少し、お待ちくださいませ。
http://www.saketsuma.com

ついにブログに進出!「『酒とつまみ』三昧」、見てね。
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(41)朝鮮新報社の巻  一日も早い現地見物をお勧め
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80近い父ちゃんは、1度脳溢血で倒れて以来、発熱するとボケ症状が出る場合
があるが、52の息子も似たようなモンと痛感したのが、今回の立ちション取材。
筆者はこの20年くらい、飯田橋駅東口の、「文鳥堂書店」裏手の坂を昇ったト
コに、銀座ソニービルのレプリカみたいな、文英堂ビルがあるモノと確信してた。

〈ぶんぶん〜ぶんえいど〜ぶんえいど〜の〜さんこ〜しょ〜♪〉というTVCMを
昭和30年代にハデに打ってた同社、近頃あんま名前を聞かないが…とのリード
まで考え、HPで事前調査。なになに、大正10年大阪で設立。本社は京都か。
並のケチさじゃねえな。社是が〈顧客・従業員・会社〉の三位一体だあ? 米
帝、金王朝、イラン大統領で内閣作れって言ってるようなモン。笑わせんぜ。
要するに主人&デッチ経営か…等々、手帳に書き写し、いざ現地にテクテク。
「ガビーン!!」。坂の途中、ゾンビゼネコン熊谷組の、LLサイズの棺桶みた
いな白亜ビル手前にあったのは、文英堂ではなく、〈集文館〉であった(全然
似てねえだろっ!!)。

 呆然自失とはこの事。ラブホテルに女を引っぱり込んで、例によって立たな
かったのに、翌朝コップの水でうがいをしたら、相手のコンタクトが入ってて、
弁償させられたみたいな(絶対に実体験ではありません)。ここまで来たんだと、
近所をフラフラ。が、飯田橋や九段、神保町と違い、付近に版元様も犬の糞の
ように散乱してない。「う〜む…」

 ふと見上げると、何だ眼の前にあるじゃん!! 朝鮮新報社だ。7階建て。
道路側は茶色で、裏側3面は白(東京厚生年金病院といい、周囲のビルは何か
と白、ないしクリーム色志向)。が、妙。右翼の街宣車も、88プレートの警
察車両の影も形もない。この日朝交渉再開時に…。それより何より、中の明か
りが見えない。夜逃げ? 近づくと、シャッターまで降りてる。横に白い貼り
紙。文京区白山4-33-14に移転したと。トホホホ…。何かと運の悪い月だ
が、なら廃墟編で行こう!!(テキトー…)

 表札はまだシッカリ。朝鮮新報社の他、朝鮮画報、在日朝鮮言論出版人協会、
時代社、共済会、現代綜合出版印刷が同居してたと。道を隔てた本郷材木店前
からだと、窓の中がちょっと覗ける。真っ暗なのは当然だが、白いカーテンが
非常に乱雑。キッチリ閉まってるトコはどこにもなく、中途半端にあっちこっ
ちに寄ってて、非常にだらしない。HPでチェックしたら、昨秋の移転らしいが、
入居してた人々の精神の荒廃さえ感じ取れる。

 それは裏手の高台にある、筑土八幡神社から眺めるとより強く感じる。非常
階段のサビなど、半年どころか6〜7年用いられてなかったんじゃという雰囲
気。 廃墟はどこも殺伐としたモンだろうが、当方の事前知識のせいもあって
か、ガリバーの腐ってクンセイ化した死体のようにも。神社との間には、東京
修道院とみことばの家が。さぞかし街宣右翼の騒音には、悩まされ続けたであ
ろう。

 神社の一角に、田村虎蔵先生顕彰碑。全く知らなかったが、鳥取生まれの作
曲家と。65年に建てられた碑に苦笑。何と、「金太郎」の譜面と歌詞なのだ。
金王朝を見下ろす金太郎。出来すぎた話だが、どっか気分が明るくなる。あの
調子では朝鮮新報社もすぐ取り壊されるだろう。神社との2点セットの、一日
も早い現地見物をお勧めする。

〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)。なお、この連載に関しての批
判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(ただし、謝るとは限りません)。
mangaya@air.linkclub.or.jp
http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/

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こだわりの油職人を訪ねた日のお昼は、 地元の道の駅で、同行の前田さんとランチ。 これが出張のもう一つの楽しみなんですよね〜。 中でも道の駅は地元の特産品やそれを素材にした 食事ができるので、大好きな場所のひとつ。 熊本県の南の方にあるこの道の駅は
| 新米取締役のお仕事日記♪ | 2006/03/10 1:11 PM |
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