[書評]のメルマガ

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[書評]のメルマガ vol.114
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■■ [書評]のメルマガ   2003.04.30.発行
■■       vol.114
■■  mailmagazine of book reviews       [ネギダクの陥穽 号]
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■コンテンツ
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★「極私的読書日記」/石飛徳樹
→今回はお休みでーす。

★「面白すぎて、♪どうにも止まらねぇ!」/ミラクル福田
→子供の本でもテツガクするのだ。

★「あんな新刊こんな新刊」/荻原千尋
→今話題の「おれ論」本を取り上げます。

★「本の香りだけ」/守屋淳
→近年、最大の名経営者の一人といえば……
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■「面白すぎて、♪どうにも止まらねぇ!」/ミラクル福田
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子どもはこの本をどんな風に読むのだろう???

『テーブルはテーブル』 ペーター・ビクセル 未知谷 本体価格:160
0円


ずいぶんと素っ気ないタイトルなので、逆に気になって手に取ってしまっ
た。本国ドイツでも<子ども物語>という、これまた身も蓋もないタイトル
で出版されたこの本は、ドイツ児童文学賞を受賞した作品で、読み継がれて
いる本なのだという。

 収録されている7編の物語は、すべて10〜15ページくらい短編。どの
作品にも共通するのは、考え方の変わった主人公ばかりという点と、主人公
がこだわりを持つのが「言葉」であるということだ。

「テーブルがテーブルである」ということが気に入らない男は、自分で知っ
ているテーブルをベッドといい、ベッドを絵と言い、椅子を目覚ましとい
い・・・・・・。男は知っている物を、すべて別の物の名前に言い換えてしまい、
結局は、誰とも会話ができなくなってしまう。

 同じように、名前をつけ替えてしまう小説に、高橋源一郎の『さようなら、
ギャングたち』がある。親からつけてもらった名前を川に捨てて、「中島みゆ
きソング・ブック」だとか、「さようなら、ギャングたち」だとか、自分で気
にいった名前をつけてしまうのだ。しかし、『さようなら、ギャングたち』の
登場人物が、1970年ころの政治的な社会状況に大きな影響を受けているのと
は違い、「テーブル」の男は、もっと純粋に、名前のつけ替えをする。『テー
ブルはテーブル』が書かれた時のドイツの状況がわからないからかもしれな
いが、その動機が抽象的である分、なにやらより深いものがあるのではない
かと、考えさせられ(邪推し)てしまう。

「地球がまるい」ということが信じられない男は、一般にいわれていること
でも、自分で確認し、納得できなければ信じられない男だ。それで、地球が
まるいことを確認するために、旅に出てしまう。

 この男の考えを裏返してしまえば、「湾岸戦争はなかった」などという本を
出して、一部で物議をかもしたボードリヤールの考えに近いものがあるので
は、なんてことも考えてしまったりする。
 それから、書物やインターネット(原著が出たときにはインターネットな
んてなかったが)なんかで、情報を得ることにアンチを唱えているとみるこ
ともできるだろう。

 この他にも、自分の知らないことはもう知りたくないという男、時刻表に
書いてあることがすべてだと思っている男などなどいろいろな人が出てくる。
 要するに、児童向けに書かれた本でありながら、読む側にいろんな解釈を
許して、読者それぞれの生きてきた、読んできたものがそのまんま映し出さ
れてしまうような本なのだ。いくつもの解釈を許すこの物語は、決して難し
い書物ではないけれど、いくらでも難しくなるし、自分のことを映し出して
くれるものでもある。

「哲学をしたければ、小説を書きなさい」なんてことを言った作家もいるけ
ど、児童書でありながら、また、児童書であるがゆえに、なにやらテツガク
させられてしまう本なのだ。
この本を平積みしてくれていた書泉グランデに感謝!

(ミラクル福田 某人文系出版社編集 31歳 年間読書量80冊弱 
好きなジャンル 文芸・芸能)
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■「あんな新刊こんな新刊」/荻原千尋
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 皆さんこんにちは。
 4月後半の目玉商品といえばもちろん、今年も「好きな男ランキン
グ」の第1位に輝いた木村拓哉氏の初エッセイ集、「開放区」(集英社)
でしょう。
 今回は、絶対この本の事を書きたいと、ジャニーズウオッチャー
書店員かつアンチ・キムタクの私は思っていました。
  
 タレント本の仕入をするのは、難しいけれど面白い。
 しょっちゅうテレビに出ていても、恐いくらい本が売れないことっ
てたまにあります。バラエティ番組ではおなじみのタレントさんの
サイン会をやったら、お客さんよりマスコミのほうが多かったって
いう寒い話もよく聞きますよね。
 タレント本なんて、テレビで紹介されて瞬間的に売れてそれで
終わりでしょ、と思ってる人は多いかもしれないけれど、
読んで面白いもの、役に立つものは、ちゃんとロングセラーに
なるんですよ。
「好きな女優ランキング」には絶対出てこない人の本が、ずっと
平積みになることだって珍しくありません。その辺をちゃんと
リサーチして、かつ私情をはさまず(ここが難しいんだよね…)
適正な部数を仕入れられたときって、かなり気持ちが良いもの
なんですよ。
   
 さてキムタクです。性格があまりよろしくない私の友達の間では、
「トシちゃん(=田原俊彦)化し始めていることを誰かが教えてやる
べき」だの、
「あのタメ口芝居にはもうあきた」だの、
散々な言われ方をしています。(かわいさ余って憎さ百倍、という奴だろう。)
 こういう考えの人々もかなりいるのだろうけれど、
ドラマの視聴率は異常に良かったし、「アンアン」の好きな男特集でも
1位になっていたし、人気はまだまだ健在のはず。
好きでも嫌いでもないけど、キムタクについては一言いいたいって
人は職場にもやけに多かった…。(新刊の情報が入った時、
バックヤードでは普段の5倍くらい熱い論議がかわされました。)
ここまでいろいろな人々が語りたがる人物の本が売れないわけがない。
もうあとは入荷を待つだけ。4月下旬の売上は安泰ね、
と思っていたのに…。

 「開放区」は中身をチェックする間もなく売りきれてしまったの!
速攻売りきれとは、さすがキムタク! といいたいところだけど…、
それだけじゃなくて、配本があまりに少ないんだよー。
これは別に私の店だけの話じゃなくて、全国のほとんどの書店で
そうらしいです。
なのにワイドショーでもばんばん取り上げられるし、
問い合わせも予約も殺到するし…。ああ、ストレスがたまるぅっ!
こんなに売れているのにどこにもなくて、満足な重版もかかりそうに
ないという状態、これはいったいどうしてなのかしら?? 
まさか話題づくりのためにわざと出し惜しみしてるってわけじゃない
わよね?
勝手ながら全国の書店(とキムタクファンのお客様)を代表して
ひとこと言わせていただきます!

なぁにが「開放区」じゃあっっ!! まずは出庫を開放してくださーい!

というわけで、私の手元には現物がなく、内容を深く論じることが
できなくなってしまいました…。
パラパラと見た感じでは、かなり「オレ様度」が高いです。
ところどころ入っている手書きのメッセージも、ファンでない人には
かなり辛い。
近年、「オレってさあ…、」と、自分を語りたがる男は徹底的に
モテなくなってますよね。
人気俳優だったのに、ある時から「嫌いな男」ランキングに入ってし
まうような場合も、「オレ話」が原因だったりしませんか?
そんな中、何十万人の女が金払ってでも「オレ論」を聞きたがる
キムタクの人気は、やはり本物なのだろう。

そうそう、彼は「キムタク」って呼ばれるのが好きじゃないらしい。
これだけお茶の間で親しまれているニックネームを正々堂々と
嫌がってみせるなんて、さすが視聴率ナンバーワンの大物俳優
だね!
ここはぜひとも「月刊 木村拓哉」を創刊して、ファンのみんなと
貧乏な本屋を幸せにしてほしいな。

それではまた来月。

(荻原千尋 美人カリスマ書店員 カレーが大好きという噂)
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■「本の香りだけ」/守屋淳
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『小倉昌男 経営学』小倉昌男 日経BP社

今回取り上げるのは、弊メルマガ35号で、朝日山さんが取り上げた『小倉
昌男の福祉革命』(建野友保 小学館)の主人公、小倉昌男さんの半自伝で
す。ご存知、クロネコヤマトを創り上げた立志伝中の経営者ですね。

小倉さん、経営者が現役のうちに「経営のノウハウ」みたいな本を書くのは
よくないこと、と思っていたらしく(確かに、そんな本を書いた後、経営が
悪化して赤っ恥みたいな人もいますからね……)、在任中は執筆をずっと
断っていたそうです。しかし、クロネコヤマトの一線を引退し、福祉事業へ
とフィールドを移したのを期に、本書は書かれたようです。

当初、小倉さんは父親から商業貨物の運送会社を引き継ぐのですが、そこで
大口の荷物ばかりを扱うという方針を立てて、大きな失敗をしてしまいます。
当時、荷物は実は小口の方が儲かるものだったらしいのに、正反対の誤解を
したため、会社を危機に陥れてしまったのです。

そこで、頭をひねった小倉さん、「宅配便」という、当時は誰もが儲からな
いと信じて疑わなかったシステムに活路を見出すのですが、そのヒントは意
外なものにあったのです。

《社長に就任した私は、ターゲットを商業貨物市場から個人宅配市場へと切
り替え、多角化とは反対にたったひとつのサービスに絞ることで、危機を乗
り切ろうと考えた。ヒントは「牛丼」一本のメニューでヒットした「吉野屋」
の記事だった。》

うーむ、モテない一人ものの友「吉野屋」が、宅配便の発想の元になってい
たとは、恐るべし(笑)。完全に余談ですが、「ネギダク(ねぎ多め)」っ
てネギが増えるだけじゃなくて、その分肉が減らされると知って、最近
ショックを受けてしまいました。世の中、そんな美味しい話はないんです
ねー、シクシク(笑)

で、郵政省のお役人の、とんでもない妨害行為を中央突破で乗り切りながら、
宅配は巨大市場へと成長して行きます。本書に記された、郵政省のいやがら
せ振りを読むと、クロネコヤマトが、軽々に郵便事業に参入しなかった理由
がよーくわかります。利権のためなら、なりふり構わないお役人が、首根っ
こを掴んでいる状態では、まともな商売は成り立たないのです。まあ、そう
いう状態に長く置かれ過ぎたため、銀行や証券といった業種は、ある意味
腐っていき、国際競争力も失っていったわけでもありますが……

では、小倉さんの事業の成功の秘訣は一体何なのか。まず、計画段階の注意
点としては、

《読みが浅いとか深いとかいうのは、どれだけ与件を考慮したかによる。な
るべくたくさんの与件を考慮し、その重みづけが間違っていなかったら、正
しい予測は可能なはずであるが、それが往々にして間違うのは、人間にかか
わる与件は、常に不確実な要素を含んでいるからである》

そして、それを現実の経営に当てはめると、

《ただ経営における予測は、それほど難しいものではない。事前に計画の段
階だけではなく、実施に移った後に、試行錯誤しながら条件を変化させてゆ
き、微調整をしながら計測していけば、そんなに違いなく結果を予測できる
ものである。むしろ試行錯誤のやり方が大事なのである。》

そして、この試行錯誤によって「善い循環」をつくることが何より大事だと
いうのです。

《株価が高い水準を維持できているため資金調達」が容易になり、資金が豊
富になるから現場に新しい設備を導入して作業効率を上げることができる。
作業効率が上がるからコストが下がり、また競争力も増して収入が増える。
したがって増収増益の構造となり、善い循環が起こるのである。
 善い循環の起点は何かというと、宅急便の場合は質の高さである。善い
サービスを出発点として善い循環が起きていったのである》

この後、小倉さんはクロネコヤマトを引退、華麗なる転進をとげ、人として
理想的な人生を全うしようとしているかのように見えます。あ、こちらの詳
しい話は、ぜひNO.35の朝日山さんの書評をお読みください。しかし、
戦後に真の名経営者と呼ばれた人――本田宗一郎氏や井深大氏、そして土光
敏夫氏などはみな、引退後に福祉や公益事業へと邁進しています。利権を守
るのに汲汲とする人がいる一方(最近では議員年金が減らされる直前に、い
きなり辞任した地方議員とかいたみたいですね……)、こういう人の存在は
人間性への希望を繋がせるものですね……。義務教育では、ぜひこういう人
のことを教えて欲しいと、思いもします。もちろん、利権に群がって日本を
おかしくしている、お役所や企業、特殊法人の人も対照的な悪役として登場
させて(笑)

(守屋淳 37歳 [本]&[書評]のメルマガ独身者の火を死守する総統)
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■あとがき
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>なんか、眼鏡とかガラス製品で有名なHOYAがインチキやっちゃったみ
たいですねー
>はあはあ
>眼鏡のレンズを強くする加工を謳っておきながら、それをせずに延々出荷
しちゃったってらしいです。本読む人は眼鏡している人も多いから、該当者
は交換してもらった方がいいんじゃないでしょうか。
http://www.hoya.co.jp/japanese/news/news20030423.cfm
>しかし、私が知らないだけかもしれませんが、あんまり報道されてません
ね、これ。たまたまじゃなくて、故意の詐欺行為やっちゃったんだから、雪
印とかと同じくらい騒がれてもいいと思うんですが……
>うーん、確かにマスコミの取り上げ方って謎ですね。タマちゃんとか、白
い集団とかやってるヒマがあるなら、こういう実害があるの、もうちょっと
取り上げればいいと思うんですけど(笑)
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