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[書評]のメルマガ vol.170
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■■ [書評]のメルマガ   2004.06.30.発行
■■       vol.170
■■  mailmagazine of book reviews       [Let's 号]
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■コンテンツ
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★新連載「現代ビジネス・古典解読」/aguni
→弊メルマガのウェブマスターであるaguni氏による、ビジネス書の古典を
系統的に読み解く野心的試みです。第一回は『プロテスタンティズムの倫理
と資本主義の精神』

★「極私的読書日記」/石飛徳樹
→お休みでーす、すみません

★「面白すぎて、♪どうにも止まらねぇ!」/ミラクル福田
→日本人のアヤシイ英語に切り込んだ本をご紹介します。

★「あんな新刊こんな新刊」/荻原千尋
→結婚も戦略だ、でもあたしは……とお嘆きの美人書店員でした。

★「本の香りだけ」/守屋淳
→イラク情勢に余りにも似ているベトナム戦争の本です。
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■トピックス
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●イベントのご紹介
「『平和と平等をあきらめない』刊行記念 
        ―今、人々の心に何が起きているのか―」
 日時  7月4日(日)17時30分〜19時
 場所  池袋西武イルムス館8階
      コミュニティカレッジ 3 .4番教室
参加費  1000円 定員150名さま(お早めに)
チケット リブロ池袋本店 注文カウンター(B1F)にて
お問合せ先 代表 03−5949−2910 
注文カウンター 03−5949−2933
※電話予約もOK(→当日会場入り口にて精算。)

●コーチング入門書の決定版が発売!
ビジネス、プライベートの両分野で浸透しつつあるコーチング。関連書もた
くさんでていますが、入門書の決定版が発売されました。ビジネス分野の
コーチングは、スキルの易しさに比べ、なかなか社風を変えるところまでい
きません。何人もの管理職を甦らせてきたプロコーチによる、他では教えて
いないスキル以外の「おさえどころ」が満載です。
『目からウロコのコーチング――なぜ、あの人には部下がついてくるのか?』
(株)フレックスコミュニケーション代表取締役・ 播摩早苗=著、発
行:PHP研究所、232頁、ISBN4-8222-4099-1、定価1,400円(税別)
http://www.flex-communication.com
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■「現代ビジネス・古典解読」/aguni
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サラリーマンと経営理念の誕生!?

『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』
マックス・ヴェーバー著 大塚久雄訳 岩波文庫 1989年

 世の中に現代ビジネス史、という学問があるのかわからないけれども、こ
の連載では毎回、超・有名なビジネス書を書評することによって、現代ビジ
ネス史を読んでいきましょう、という趣旨のものです。ビジネス書の古典を
読んでおきたいなーと常々思っていた私、aguni が編集の守屋さんに無理矢
理企画を持ち込んで、それで強引にスタートしてもらった企画です。よろし
くお願いします。

 さて、記念すべき第一回、今回はドイツの社会学者、マックス・ヴェー
バーによる『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を取り上げる
ことにします。(タイトルが長いので、以降は『プロ倫』と書くことにしま
す。)

 『プロ倫』が刊行されたのは1905年のドイツ。日本では日露戦争終結の
ポーツマス条約が結ばれた年、翌年には満鉄が創立され、ソビエト評議会の
初代議長にはトロツキーが就任します。アメリカではエジソンが蓄電池を発
明、フォード社は1908年のT型フォードの開発に取り掛かっていた頃。つま
り、帝国主義的な雰囲気を漂わせつつ、資本主義が国の外にはみ出して勃興
してきた時代でした。このコラムは論文ではなく、あくまで私の書評コラム
ですから、そうした環境が著者のマックス・ウェーバーにどのような影響を
与えたのか、いうことをこれ以上、掘り下げたりはしません。ただ、彼が生
きていた時代は我々が生きているのと同じ、資本主義の支配する時代だった、
ということを確認しておきます。

 「資本主義」というのは「資本」を増やすことを目的とした生活・制度で
す。彼は強烈に人を駆り立てていくこの資本主義という「文化」あるいは
「制度」が一体、どこから生まれてきたのだろう、と考え、時代を溯ってみ
たわけです。そこで彼はなんと、17世紀の宗教革命にまで溯ってしまったわ
けです。

 彼の文章を引用しましょう。

「宗教改革が人間生活に対する教会の支配を排除したのではなくて、むしろ
従来のとは別の形態による支配に変えただけだ、ということだ。」(P17)

 それがなぜだったのか、あるいはどんな風に変わっていったのか、という
ことについて彼が書いたのが、『プロ倫』だったわけです。つまりは「安定
した宗教的生活」から「資本主義による支配」という変化ですが、これを創
り出したのがなんと、宗教改革後の新しいキリスト教的な考え方、「営利の
追求を敵視するピューリタニズムの考え方」によるものだった、というので
す。

 たとえば、最近ではまた日本でも流行っている「天職」という概念。これ
をそもそも言い出したのは宗教革命の祖であるルッター。で、意味するとこ
ろは、神に対する献身となるような、神が個々人に与えたもうか定めたお仕
事のこと。昔の「宗教生活」時代の場合には、働いていたとしても、人はそ
の日の家族のおまんまが手に入ればよかったわけです。で、神様、今日の糧
を与えてくれてありがとう。あまったお金は教会に寄付するね。この状況で
は、お金は単なる物々交換の代替物にしか過ぎなかったわけです。
 ところがさすがに教会の私腹を肥やすのに反発したルッターは、天職で働
いて金を儲けたら、それを元手にもっと儲けるのが神への献身、という考え
方にしてしまった。ここでサラリーマンが(とはウェーバーは言ってないけ
ど)誕生したわけです。引用してみましょう。

「人は「生まれながらに」できるだけ多くの貨幣を得ようと願うものではな
くて、むしろ簡素に生活する、つまり、習慣としてきた生活をつづけ、それ
に必要なものを手に入れることだけを願うにすぎない。」(P65)
「少なくとも勤務時間の間は、どうすれば楽に、できるだけ働かないで、し
かも普段と同じ賃銀が取れるか、などということを絶えず考えたりするので
はなくて、あたかも労働が絶対的な自己目的−>>Beruf<<「天職」−であるか
のように励むという心情が一般に必要になるからだ。しかし、こうした心情
は、決して、人間が生まれつきもっているものではない。」(P67)

 つまり、それは教育の成果だ、とウェーバーは言っているのです。で、そ
の教育の元になったのが、「プロテスタンティズムの精神」というわけ。そ
のロジックはこうなります。
 神の国に行くために頑張って献身的に働きましょう、という前提がまず
あって、ここでは働くことがそのまま神への献身であり、その結果は利潤と
いう形でもたらされることになっています。それは神からの評価であるから、
これは貯められることになり、で、もっと利潤を得ることを神はお望みに
なっている。では設備や人材に投資して、より利潤を大きくしていきましょ
う。それによって神の国はより約束されます・・・。
 個人的な営利の追求を敵視する禁欲的なピューリタニズムが、神のために
献身的に金のために働いている。そういう構図になっているわけです。

 この本を改めて読んでみて、この本はやはり、資本主義を前提としたリー
ダーシップやモチベーションについての古典なのだなぁ、と改めて納得しま
した。つまり、ビジネスをやろうとして組織を作った場合、合理的に考えれ
ば、みんなサボってしまうことになります。(これは後に1924〜1927年にア
メリカで行われたホーソーン実験で証明されてしまいます。)そこには生産
性向上を良しとする風潮がないからです。しかし、そこに社会(あるいは神)
に対する貢献などの「意味」や「価値」を与えてあげることで、人は生産性
を上げるべく、動き出す。つまりはモチベーションを保ちながら、頑張って
くれる。だからこそ、会社という組織には、経営者の言葉や会社の理念など
「宗教的な言葉」が必要になってくるのだろうな、と思いました。

 最近、私は「商売」と「事業」の違いについて考えておりました。「商売」
というのはつまり、何かを安く買ってきて売るとか、何かをサービスしてそ
の対価にお金をもらう、というようなもので、貨幣の誕生から続いてきた文
化的行為です。一方、「事業」というのは「資本」を使って人・物に投資を
して、「資本」を増やしていくことを意味しています。この「事業」の考え
方が生まれたのがつまり「蓄財を悪としない考え方」、つまりは宗教革命か
ら生まれて来た「プロテスタンティズムの精神」によるものなのだ、という
ことを、この『プロ倫』を読んで思いました。なるほど、最近、流行してま
すいわゆる「金持ち本」「自己啓発本」「成功哲学」の類が、多分に宗教的
であるのは、以上のような文化的背景があるからなのかもしれません。一方
で、生活・文化の中にキリスト教のない我々日本人にとって、ビジネスとは
どのような意味を持っているのでしょうか?

 『プロ倫』は古典ながらにして非常に示唆に富む一冊でした。
 あなたの書棚にも一冊、いかがですか?

(aguni ビジネス書・書評者 http://www.aguni.com/bookshelf/
メルマガ「ニュースがもっとよくわかるビジネス書紹介」発行人)
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■「面白すぎて、♪どうにも止まらねぇ!」/ミラクル福田
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わたしの英語、ずーっと間違ってました。

『ニホン語、話せますか?』 マーク・ピーターセン 新潮社  定価
1,000円+税

ここのところ、外国の人の「ニホン語」を耳にする機会がとんと多くな
ってきました。あたり前のことですが、どんなに流暢な人でも、文法がど
こか変だったり、発音が妙だったりするものです。話をしてみると、やは
りちょっと聞き取りにくい。でも、それほどは気にはならなかったりする
のではないでしょうか。

 でも、なぜだか、目で見る間違いには、寛容な気持ちにはなれないので
す。心がちいさいのか、懐が浅いのか、足が短いせいか。やはり、小さな
目の中にようやく入ってきたものへの思いがひとしおだからなのでしょう
か。
 アメリカ映画に出てくる「日本文化」なんて、ホントに俗悪です。刀を
やたらと振りまわしたり、変な化粧の女性が出てきたり、変な茶室が出て
きたり(具体例が出てこないのはよくないですね、すみません)。

 でもでも、よくよく身のまわりを見回してみると、あるんですなぁ、わ
れらが日本にも、怪しいアメリカが(もちろん、世界的な国家ですから、
イギリスもフランスも、中国や韓国、ドイツもブラジルも、ありとあらゆ
る国の「怪しい」が取り揃えてあるはずです)。
 なかでも、本当に気になるのが、駅のキオスクに書いてあるキャッチ・
フレーズ、「Let's Kiosk」。
外国の人がこれを見ているところを想像しただけで、「穴があったら入
りたい」と思ってしまったりしております。でも、いつも「穴に入ってか
ら」のことなので、逃げ場がなかったりして、ホントに困ります。

 中学校で習ったはずなのですが、「Let's」は、後ろに動詞が続かなけれ
ばならないのに、これは名詞だ。中学校レベルの英文法もわからなくなっ
てしまっているのでしょうか。ホントに恥ずかしい。キオスクに勤めてい
る人はどうなんだろう。恥ずかしくないのかなぁ。できれば、今すぐにで
も架け替えて欲しいもんです。

 実は、この『ニホン語、話せますか?』のマークさん、この「Let's Kiosk」
に同じことを感じていた人なのです。キオスクの前を通りかかると、この
「Let's Kiosk」が視野に入らないように努力しているとか。いじましい
ではありませんか。そんな人がいてくれただけで、心強い気がいたします。

 ほかにも、「Let's Sports」なんかがあると指摘しているマークさん。ど
うやら、こんな英語がたくさんあるらしいのです。
 ここ数年にわたって、大きな話題となっている「ペイ・オフ」。これな
んかは、「Let's Kiosk」よりも露出が圧倒的に多かったりします。「Let's
Kiosk」が連続出場記録を更新している「小結」だとしたら、「pay off」
は、これはもう圧倒的に「横綱」でしょう。

「pay off」は本来、「借金などを完済する」という意味だそうですから、
日本でニュースを見ていても、マークさんはなんのことかわからず、調べた
のだそうです。それで、日本では、「pay off」が「払い戻し」の意味で使わ
れているということがわかったとか。払い戻しは英語では「pay back」とい
うそうですから、「pay off」にとっては何の因果が極東の果てで報いたか……。

 日本中、ほんとにいい加減に言葉を使っているようなのです。もちろん、
新しい言葉をどんどん作り出すのは、悪いことではないと思いますが、元
の言葉を、母国語とする人びとに、気持ちの悪い思いをさせてしまうのは、
やっぱり寝覚めのよいものではありません。

 まあ、いろいろと例は挙がってきますが、その最たるものが、中学の英語
の教科書だ、なんて言われた日にゃあ、日本の未来が心配になって眠れなく
なります。明日の日本を背負って立つ若者は、初手から「日本」ではなくて、
「英語」という重荷を負わされているのは、間違いないようです。
 ニホン語オンリーで、そのニホン語もちょっと怪しかったりするけれど、
ドメスティックに生きていこうと決心した私のような者ならいざ知らず、
気の毒でなりません。

 日本の教育は、世界に羽ばたく若者の足に重石を括りつけようとしてい
るのでありましょうか。あんまり考えてないのかも知れませんね。
 すっかり怪しいニホン語の外国の方を、どうのと言えなくなってきまし
た。マークさん、中学の英語教育の告発よりも、実は外国の方の地位向上
を目指してたりして。

(ミラクル福田 某人文系出版社編集 33歳 年間読書量80冊弱 
好きなジャンル 文芸・芸能)
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■「あんな新刊こんな新刊」/荻原千尋
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皆さんこんにちは。
実は、先日初めて『負け犬の遠吠え』(酒井順子、講談社)を
読みました。
30代、未婚、子なしという「負け犬」の三大条件を見事なまでに
兼ね備えた私のこと、当然この本は読んでいる!と思われていた
ようですが、実は未読でございました。
しかも、無責任にいろいろな人におススメしていました…。
まあ、結構面白かったんだからいいか。
この本についてはいろいろな人がいろいろなことをおっしゃっている
ので、内容に関してはあえて語りませんが、書店員の目から見て功績
は2つあると思います。
1つは売れたこと、もう1つは女性エッセイの棚になんとなくあった
「20代後半から30代の独身OL」むけの恋愛やら結婚やら美容やら
素敵な生活やらのコーナーに、「負け犬本」というわかりやすい名称を
つけたこと。名称がつくと棚ってまとまるものなんですよ。
発売以来仕事がやりやすいです! ありがとう酒井さん。

ここしばらくで続々負け犬のための結婚本が出版(を予定)されてい
ます。○○才からの××、××は○○才から、と言うように、年齢と
結婚にかんする単語がストレートに入っているわかりやすいタイトル
が特徴。
そんな負け犬結婚本の中でも、一番説得力がありそうな本を今月は
紹介したいと思います。
『プログラム  ハーバード大学MBAメソッドによる30代からの結
婚へのステップ15』(レイチェル・グリーンウォルド著 佐竹史子訳
 ソニー・マガジンズ刊)。
タイトルからしてすごいな。結婚にMBAを持ち出すというのが新鮮。
どんな女でも、これを実践すれば12ヶ月から18ヶ月で結婚できると
いうから驚きです。
ちなみに著者はハーバード大のビジネススクールを卒業したマーケテ
ィングの専門家。もちろん、理想的な夫もいるらしい。

『リセットダイエット』(篠塚蘭美以、幻冬舎)で目標体重を達成し、
「当店スタッフも成功!」という恥ずかしいPOPを書いて売りまくっ
た私が、今年やってみたい企画の1つとして「実用書は試して売れ!」
があります。
この本を読んで、アラブの大富豪とは言わないまでも、そこそこのダ
ーリンをゲットできたら…、
私は幸せになれる(かもしれない)し、本が売れる! 一石二鳥じゃん!
というわけで、飛び込んで見ましたよ、「プログラム」の世界に。
「本書には曖昧なアドバイスはありません」「商品はあなた自信」と、
やる気を起こさせるきっぱりしたメッセージを読んで燃えてきたとこ
ろで第1章に突入!
読んでいくうちに、みるみるやる気がそがれていきました…。
だってだって…、できませんよ、私には。

ステップ1マーケティングフォーカス
…パートナー探しを最優先事項にする。
ステップ6アドバタイジング
…自分のパーソナルブランドをPRするためのポストカードを様々な
知り合いに送りつける。
ステップ10テレマーケティング
…100人以上の人に、「結婚したいので男性を紹介してほしい」と
電話でお願いする。

MBAはすごい。そして人生には戦略が必要、と言うことがよーくわか
った。「ごくシンプルな15段階の実践的方法を実践すれば、かならず
結婚できる」という著者の言葉もたぶん本当でしょう。
しかし、そんな情熱は、私にはないよ…。
いうか、そこまで努力するなら社長を目指したほうがいいような気さえ
します。できることだけやるとか、そういう中途半端なことでは目的は
達成できないんだろうなあ。
結局、富豪との結婚もないし本も売れないんだ…。
と、思ったところで気がつきました。
このMBAメソッドを、棚作り、店作りに生かしたら、売上がものすごく
アップするのでは?

ステップ1マーケティングフォーカス
…本屋の仕事を人生の最優先事項にする!
ステップ3パッケージング…まずは内装と陳列方法から!
ステップ5 ブランディング…店の特徴を売り出せる品揃えを!

なんかやる気が出てきましたよ。本屋の仕事に。
というわけで、何がなんでも結婚したい30代以上の女性と、MBA方式を
わかった気になりたい人に、この本はおススメです。
それではまた来月。
(荻原千尋 乙女派美人敏腕書店員)
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■「本の香りだけ」/守屋淳
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終わる戦争 終わらない戦争

『ベスト&ブライテスト』デイヴィッド・ハルバースタム 
浅野輔訳 朝日文庫

今のイラクの状況は、実はベトナム戦争にそっくりな部分が多々あります。
それを知るのにうってつけな一冊が、本書なのです。

題名の由来となったのは、ケネディ政権時、政府に集められた人材――
フォードの社長まで登りつめたマクナマラ、ハーバードのスター教授バン
ディなど――がまさに当時最高で最良の人々と呼ばれていたことに由来しま
す。

しかし、その輝かしい人々が、結局、アメリカに建国以来ともいえる屈辱
的敗北をもたらします。一体何が間違っていたのか――ニューヨーク・タイ
ムズの記者だったハルバースタムは執拗にその経緯をえぐっていきます。

まず、誤りの第一歩となるのが、その輝かしい人たち自身の問題。彼らは
《冷徹な現実主義者》を当時名乗っていました。これって昨年のイラク開戦
のさい、アメリカ追随を声高に叫んでいた日本の議員や、知識人たちが似た
ように名乗っていたことがありましたねー。自分たちはリアリストであり、
日本の国益を真に考えているのだと……「アメリカが言ってるんだから、大
量破壊兵器はあるに決まってんだろ」とある議員はテレビで叫んでいまし
たっけか……

しかし、彼らはおそらく《現実主義者》などと名乗るがゆえに、物事の本質
的な面を見誤り、見通しを外し続けてコロコロと自分の発言を変えざるを得
なくなっていく所があります。

世の中には原理原則というものがあります。たとえば、戦争の原理原則。ケ
ネディ政権時の国務次官ジョージ・ボールはこう指摘しました。
《負けていると思う側は、つねに賭けを大きくすることによって、損害を取
り戻そうとするのである》
《いったん虎の背にまたがると、降りるべき適当な場所があるとの保証はな
い》
そう、敗けたまま終わりたくない、という心理をお互いが抱く以上、戦争は
一端始まってしまえばなかなか終わらない性質を持つのです。

しかしベトナム戦争の場合、現実主義者と名乗る人々の、「ドミノ理論」へ
の傾倒、さらにアメリカは圧倒的に強く、敵をコントロールできるはずとい
う自信過剰さから、泥沼のベトナム介入に足を踏み入れていきます。

結局、現実主義者を名乗るということは、その時点での最適化を志向してし
まう面が出て来てしまいます。それが、原理原則にそぐわない場合、後々、
最悪の結果を生じかねないのです。日本でも、その場の最適化でアメリカの
開戦支持、同じように自衛隊派遣、同じように多国籍軍参加……

しかし、ここで問われなければならないのは、たとえば、戦争は本当に終
わっているのかという問題、さらにブッシュ政権が保たずにアメリカの外交
政策が変わってしまった場合どうするのか、といった観点です。

特に前者の点は、ベトナムでも問題になったものでした。アメリカ軍部に
とって、この戦争は、間違いなく勝っているはずのものだったのです。なに
せ、ベトコンや疑わしい現地人を圧倒的な装備の差を活かして殺戮し続け、
アメリカ側の死者約五万に対し、百万から三百万の死傷者をベトコン側に与
えていたのですから……

この考え方の前提にあったのがクラウゼヴィッツの『戦争論』的な戦争観。
《敵の戦闘力の壊滅は、あらゆる他の手段に優先する、最高の、もっとも効
果的な手段である》(『戦争論』淡徳三郎訳 徳間書店)
ともありますが、軍隊やそれに準じる組織の人間を、殺しに殺して戦闘力を
奪えば、勝利は達成できるはずだったのです。

ところが、ベトナムは違いました。
《北ベトナムの主力陸軍は、戦争期間を通じて、二十五万から四十七万五千
に増強されている。消耗戦略は、彼らにかすり傷ほどの影響も与えていない。
われわれは、彼らの出生率においついていけないのだ》
とハルバースタムがいみじくも喝破したように、敵は北ベトナムであり、ベ
トコンであり、さらにはアメリカに自国から出ていって欲しいと願うベトナ
ム人――要は、ベトナム国民のほとんどという状況になっていたのです。

これをベトナム側の将軍ボー・グエン・ザップは「人民戦争」と呼び、欧米
経営学のカリスマ、ドラッカーは、戦争は政治の継続ではなく《政治の失敗
を意味するにすぎなくなった》(『新しい現実』ダイヤモンド社)と指摘し
ました。戦争は割に合わない――この原理原則も、すでにベトナム戦争で語
り尽されていたはずなのです。

もし軍隊VS軍隊の戦いであれば、敵の戦闘力を壊滅させたところで決着がつ
きます。後は相手の政府に降服文章を調印させればお終いなのです。

しかし、軍隊VS国民の場合……殺しに殺し続けても、相手は根をあげず、や
がて殺しまくっている大国の側が根を上げるという構図が生まれてきます。
殺戮の血飛沫のなかで、国費は底をつき、「民主主義を守る」「国際平和の
ため」といった大義のまやかしがあからさまになっていくわけです。

そう、今のイラクもこの状況と、ほぼ相似形です。戦争は終わっているが、
治安状況が悪化しているだけだという説明もなされていますが、多くのイラ
ク国民が反米感情を抱き、自国から出ていって欲しいと願う状況が続く以上、
戦争は根源的に続いているというのが本当の所かもしれません。

しかも、そもそもフセインがアルカイダと繋がっているという疑いや、大量
破壊兵器の発見という大義は崩れ、石油のためという露骨な理屈が恥かしげ
も無く語られるようになっています。

もちろん、アメリカとてベトナムの二の舞は踏みたくないという思いは強い
でしょう。だからこそ、前倒しにしてまで主権委譲を行ったと見ることもで
きます。

今も昔も、残念ながら変わらぬ超大国の自信過剰さ、そして戦争につきもの
の愚かしさを知りたい方に、ぜひ。

(守屋淳 怪しい隠居 中国古典とビジネス書しか、仕事柄読んでる暇がな
い38歳) 
---------------------------------------------------------------------
■あとがき
---------------------------------------------------------------------
>NHKの「試してガッテン」が好きで、毎回見ているんですよ
>はあはあ
>で、気づいたんですが、「トリビアの泉」も同じ曜日にやってるんですね
>おや、何を今更まあ(笑)
>いや、注意力がないもので、全然気づきませんでした(笑)。でも、二つ
ともボタンみたいの押して、片や「ガッテン、ガッテン」、片や「ヘー、
へー」ってちょっと似てますよね。両者とも口に出して皆で一斉にいうのは
恥かしいけど、機械の声だと何となく良いかな、と思える感じで(笑)
>まあ、そうですね。
>どうせなら、「チンプン、カンプン」とか「ブー、ブー」とかいうボタン
も造れば面白いのに。NHKの司会者大弱り、みたいな(笑)。
>ふふふ、あなた的には「はあはあ、はあはあ」ボタンを作ってもらいたい
んじゃないですか?
>う、バ〜レ〜た〜か(笑)
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