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[書評]のメルマガ vol.271
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■■ [書評]のメルマガ     2006.7.7発行

■          vol.271
■■  mailmagazine of book reviews  [沈丁花の女 号]
■■-----------------------------------------------------------------
[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁と退屈男のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。トークとか展覧会とかいろいろ。
★「大阪豆ごほん」柴田尚美(おまめ)
 →北堀江のふたつの「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。
★新連載「楽しみと日々 古書展と書簡をめぐるあれやこれや」つばめ
 →やたらと本に詳しい謎の人物「つばめ」による書誌探求の余談です。
*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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■南陀楼綾繁と退屈男のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
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★仙台で「一箱古本市」
 不忍ブックストリートで行なわれている「一箱古本市」が仙台に上陸!
 7月8日(土)、9日(日)11:00〜17:00 仙台〈book cafe 火星の庭〉
にて、一箱、2日だけの古本屋が50軒大集合。岡崎武志、友部正人、蟲文庫、
日月堂、魚柄仁之助、田中栞の諸氏も参加します。不忍ブックストリートから
は南陀楼と谷根千工房が参加。
 個人的に注目しているのは、「十月堂」という店主。なにしろテーマが「回
想のダダカン」なのだ。ダダカンこと糸井貫二といえば、仙台に住む存在自体
がシュールな人物。竹熊健太郎の名著『箆棒な人々』(太田出版)にも登場し
ている。そのダダカンに関する資料を集めた一箱とは、気になる……。

 なお、同店では7月31日まで「チェコのマッチラベル展」を開催中。
7月8日(土)18:30〜は、「ナンダロウアヤシゲ流 紙モノの旅」と題するト
ークを行ないます。チェコのマッチラベルだけでなく、日本の紙モノについて
もお話したいと思っています。ゲストは『仙臺文化』編集人の渡邊慎也さん。
参加者にはもれなく南陀楼秘蔵(というか部屋に埋もれていた)紙モノ1点を
差し上げます。予約は火星の庭まで。【南】

火星の庭
宮城県仙台市青葉区本町1-14-30-1F
tel 022-716-5335
OPEN/11:00〜20:00(日祝〜19:00)
定休日/毎週水曜、第2火曜
http://www.kaseinoniwa.com/

★嫌われ者の日記本が出るぞ
 本紙でも連載している、エロ漫画下請け編集者・塩山芳明氏の新刊『出版業
界最底辺日記 エロ漫画編集者「嫌われ者の記」』が、ちくま文庫から10日ご
ろ刊行されます(950円)。
 品切れで探求者も多い単行本『嫌われ者の記』(一水社)からセレクトし、
同書刊行後の連載をプラスした、不肖・南陀楼による文庫オリジナル編集。宮
崎勤事件の翌年の1990年から2005年までの16年間、エロ漫画界を含む出版業
界がどのように地盤沈下していったかを肌身に感じるのもよし、漫画家や印刷
会社への罵倒を愉しむのもよし。いろんな読み方ができる日記本です。解説は
福田和也氏。【南】

★恵文社生活館 7月7日オープン!
 京都の〈恵文社一乗寺店〉の隣接したスペースに〈恵文社生活館〉がオープン。
生活雑貨を中心に、書籍(古本もあり)、飲み物やお菓子などもあるんだとか。
5月頃から準備のようすが特設ブログで報告されていて、これもとっても素敵
(期間限定というのが惜しいッ!)。【退】

恵文社生活館 期間限定ブログ 
http://d.hatena.ne.jp/keibunsha2/

恵文社一乗寺店
〒606-8184 京都市左京区一乗寺払殿町10
TEL & FAX 075-711-5919

★写真と文章のコラボレーション
『MAXWELL STREET』  写真と文章のsession 野犬ブルース 
津田明人×林哲夫×友部正人

 シカゴブルース誕生の地であり、マディー・ウォーターズを始め数多くのブ
ルースマンを育んだ町、シカゴ・マックスウェルストリート。現在は、長年の
保存運動にも拘らず、再開発により全てを取り壊され跡形もなく消え去ってし
まった伝説の町。1994年、この更地を一人の写真家が歩き、写真を撮りました。
写真集『MAXWELL STREET 』は、シカゴの風景も人も音楽シーンもありません。
「野犬」だけです。道に這いつくばり、息が届くまで近づき、彷徨う犬達の眼
に視線を合わせた写真には、人間の本質に迫るものがあります。
 今回の展示では、画家であり文筆家の林哲夫氏と音楽家で詩人の友部正人氏
に、写真集『MAXWELL STREET 』を見て閃いたものを言葉にしてもらいました。
 会場では、林哲夫、友部正人の著書や、ビレッジプレス発行『雲遊天下』の
バックナンバーなどを販売します。

2006年7月10(月)〜7月31日(月)
ジュンク堂書店池袋店9階

★神保町と奈良でヨーロッパの絵本
パビリオンブックス 夏の巡業展覧会
「絵本でめぐる旅/北欧・中欧あっちこっち」

 チェコ、フィンランド、イギリス、ロシア、日本など世界の絵本を販売する
オンラインショップ〈パビリオンブックス〉が、展示即売会を行ないます。
「昨秋訪れたヨーロッパで、文字通あっちこっち巡りながら見つけた絵本や地
図を選りすぐってご紹介」するそうです。
〈パビリオンブックス〉のお二人には、奈良〈よつばカフェ〉での「チェコの
マッチラベル展」でお目にかかりました。この秋には、絵本を手にとって見ら
れるカフェを開業予定。ナンと古い民家を購入して自力でつくるのだとか。【南】

■東京
会期:7月14日(金)〜26日(水)
場所:Amulet(アミュレット)
住所:〒101-0051 東京都千代田区神田神保町1-52
電話&FAX 03-5283-7047
営業時間:11:00〜19:00 日曜定休
http://www.mecha.co.jp/amulet

■奈良
会期:8月1日(火)〜31(木)
場所:AXEOBJE(美容院に併設のギャラリーです)
住所:〒630-8226 奈良市小西町37-1 AXE unit 2F
電話:0742-20-5520 
営業時間:10:00〜20:00 月、第二火曜定休
http://www.bridal-h.co.jp

パビリオンブックス
http://pavilion-b.ocnk.net/

★西荻で石神井さん
 5月から毎月連続で、意欲的な講座を行なっている「西荻ブックマーク」、
3回目は石神井書林・内堀弘さんの登場です。題して、「西荻で古本とか古本
屋のことを―誰にも作れない古本屋は、なぜ誰にでも作れるのか―」。
 先日、〈古書ほうろう〉で行なわれた座談会でも、「これから先は西荻で話
すので」とたっぷり予告されていた内堀さん。古書業界の理論派としてみんな
が注目している内堀さんの話を聞こう。【南】

7月16日(日)
今野スタジオ『MARE(マーレ)』
16:30受付/17:00〜
¥1,500 定員27名/要予約

予約→ハートランド
(tel: 03-5310-2520/13:00-20:00/水曜休 or mail)

★文鳥舎トークライブ
 7月から「寺小屋」を開講した三鷹・文鳥舎。開講を記念して以下のトーク
ライブが行なわれます。
 なお、魅力的な講座が並ぶ寺小屋ですが、告知不足もあってまだ定員に達し
ていない講座がいくつかある模様。ユニークなテーマが多いので、この際、
好きな先生を独り占めするつもりで、小遣いをはたいてみては?【南】

◎開講記念トークライヴvol.2
北尾トロの 興味の行方 〜 中途半端は楽しい 〜

出演:北尾トロ(ライター・杉並北尾堂店主)
日時:2006年7月15日(土)
   午後5時開演(午後4時半開場)
入場料:2,500円
懇親会参加費:3,000円

◎開講記念トークライヴvol.3
小林恭二の ブロードウェイの歩き方 〜 日米最新演劇事情 〜

出演:小林恭二(作家)
ゲスト:小山内伸(新聞記者)
日時:2006年7月16日(日)
  午後5時開演(午後4時半開場)
入場料:2,500円(学割:1,800円)
懇親会参加費:3,000円

◎開講記念トークライヴvol.4
根本昌夫の 【 新人賞獲得法 〜 文芸編集者の直伝 〜 】

出演:根本昌夫(文芸編集者)
日時:2006年7月30日(日)
   午後5時開演(午後4時半開場)
入場料:2,500円
懇親会参加費:3,000円


なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

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■大阪豆ごほん  柴田尚美(おまめ)
(30)食べ物の面白さと恐ろしさ
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安部司『食品の裏側』東洋経済新報社、2005年

 裏側。全てのことに表と裏。光と影。陰と陽。
デザインを学んでいた学生の頃、物は影の付け方でどんなふうにも見えるこ
とを知った。
 表より裏が断然面白い。裏の方が物語があって、歌でも話でも晴れより 雨
の方が作りやすい。表があれば裏があり、裏があれば必ず表がある。テレビを
つければ ワイドショーは裏を取り上げ人は知りたがる。そのくせ自分の裏は
隠し表を見せて生きたいのが人の常。

 食べ物に興味を持ったのは二十歳を過ぎてから。好き嫌いなくなんでも食べ、
学生時代はテニスに精を出していたから食べるは食べる元気いっぱいの少女だ
った。卒業し就職。体育会系の私は120%全力投球して新入社員生活を始め
た。クタクタになるまでやる、というのが体育会系の性分で、真面目に働き、
真面目に先輩後輩をし、真面目に残業をし、洗い物の山を片付け帰ったら疲れ
果てて眠る毎日。夢多き若者は新しく始まった社会人生活を熱いものとイメー
ジしていた。

 しかし2、3ケ月もすると会社というところはそういうところではないとい
うことがわかってくる。適当にやって適当に帰る。そういう人が山ほどいるし、
女子社員は特にそうだった。ぼーっと一日枝毛を切ってる人、素顔で来てトイ
レで30分化粧をしてから仕事を始める人、終業時間前にはほとんどの人の机
は片付いていてチャイムが鳴ると同時にバタバタと更衣室へ走って行く。洗い
物の山を残して。それを私がひとりで洗う。洗うのは新入社員の仕事。だが新
入社員は同じ部署にもう一人いた。だが彼女は洗い物をしない。「二つ年上だ
から」というのが彼女の言い分で何度言ってもそそくさ帰ってしまうのだ。

 残業をしていると上司がセクハラまがいのようなことを話に来るし、男子社
員に「そんなにお金がほしいの?」と言われたこともあった。減滅とエネルギ
ーの消耗は毎日どんどん増し、週末は一週間の体力を回復させるために一日家
の中で休む日々となる。いつしか死んだ魚のような目になっていき、始業開始
とともに終業時間までの時間を数えるようになっていった。

 そんなある日かつてのテニス仲間より誘いがかかる。運動などしたくないけ
れど出かけていった。無心にボールを追う快感。血が騒いで楽しくて暴れまく
ったその時、ぎっくりやってしまったのである。しばらく遠のいていた運動、
ストレスによる身体の歪みや筋力低下の身体に無茶な力がかかってしまったの
だ。腰痛はひどくなる一方で這うように会社へへ行き、しまいには一日の労働
が無理になり結局辞めることになった。

 立っても座っても痛い、顔を洗えない、咳をしても痛い……寝てるしかない
ような、まるで老人のような暮らしになってしまう。外科に整形外科に鍼灸整
骨院、どれだけの病院に通ったことか。腰痛の本を読みまくり、いいと書いて
あることは全部したし遠い病院へも行った。けれどいっこうによくならない日
々。二十歳すぎの元気いっぱいなはずの2年をそんな毎日で過ごすと、どんど
ん気持ちは沈みまっ暗になっていった。ある整骨院を訪ねた時、年老いたじい
ちゃん先生の前でくたびれ果てていた私は泣きべそをかいてしまった。
「治らないのでしょうか」と。

 今まで通った病院の先生はどの先生もやさしく「そうですねぇ、徐々に様子
を見ながら治療していきましょう」と言ってくれた。でもそのじいちゃん先生
は「アホ ! なにを言うとる! 人間の身体は治るようになっとるんじゃ!」と
怒鳴ったのだった。「メソメソしとっては治るもんも治らんわ。治すんじゃ!」
と。病人は慰めてもらうことに慣れている。だから驚いたけれど「治る」と断
言されたことの力は凄かった。

 それからはなにをどう治療してくれたかは特別覚えてないけれどどんどんよ
くなった。気持ちというものが大きかったのかもしれない。レントゲンを撮って
注射や手術という提案しか出してくれなかった整形外科への疑問とともに、よ
くなっていった鍼灸整骨の世界に触れて東洋医学へ興味を持った。鍼灸整骨治
療士の友人も出来、その友人の治療院でバイトをするようになり本棚に並ぶ東
洋医学の本をむさぼるように読んだ。 面白かった。表に出る症状の裏側を治
療する。お尻の病気に悩む人の治療に頭のてっぺんに針を打ったり、風邪の時
に手に針をしたりと。それを見てるのが不思議で面白くて質問攻めにした。

 食べ物の面白さを知ったのもその頃。糖尿病には糖分を控えてというような
処置ではなく、怒りっぽい人には陰性なもの、陰気な人には陽性のものをとい
うような中国の食養学。浮気っぽい男性には椎茸をなど面白くてはまっていく。
先生はその人を見ればなにを食べているかわかると言い、人は食べ物のお化け
だということだった。食べ物が確実に自分を作っていくということの事実。体
質だからと思ってた幼い頃からの手の皮膚炎が出なくなった。驚き。そして暴
飲暴食をすると再び出た。それからは食べ物に限らず、何を入れるかによって
何が出るか、何を出したいなら何を入れるか、結果を見て何が入ったのかを考
えるようになった。辛かった腰痛だけれど、たくさんのことを知る事ができ、
今じゃ見た目はもやしだが元気満々、腰痛も調節できるようになった。

 今読んでいるのは食品添加物のトップセールスマンの告発本。添加物があふ
れ、口にしないで過ごす方が難しい今の食生活。食品に貼ってあるラベルを見
るとなにも買うことができないくらい添加物漬け。よくないんだろうなと思い
つつ食べている日々だが、この本を読むと本当に食べられなくなる。白い粉だ
けで作るトンコツスープ、くずと添加物だけで作るミートボール、見た目は本
物だけれど裏は別のもので出来ているものだらけ。表だけを見て口にするとお
そろしいことになる。あと10年もしたら皆添加物のお化けになる。いや、
コンビニの前でヘナヘナ座る若者たちはもうなっているのかもしれない。

〈しばた・なおみ〉小冊子「おまめ」発行人。 豆本製作。
今年中に豆本作りの本を出版する予定。
http://www.geocities.co.jp/omamebook/

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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(38)編集Wクン、嬉し泣きの日々
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 2005年10月、『タモリ倶楽部』の放送から一週間を過ぎても、反響は留ま
るところを知らなかった。毎日、毎日、メールを中心に、注文が入る。そして、
その大半が、3号から6号まで、とか、3号から7号まで、というまとめ買い
で、8号からの定期購読を申し込む人も少なくなかった。

 編集部では、個人のお客さんから直接注文が来ると、メールの場合なら、ま
ずはお返事を書き、それから出荷の作業に入る。注文してくれたお客さんの名
前や住所などを登録するが、すべてアナログ処理である。
 横長のノート、1ページにちょうど20件分を書き込めるノートに、まずは情
報を写し、それから、封筒の宛名を書く。そして、注文の本を揃え、冊数分の
値段に送料を足した金額を振り替え用紙に記入して同封する。このほかに、号
ごとのノートにも冊数と日付、個人向けの直販であることなどを記入し、この
作業が完了すると、宅配便の業者に連絡を取るのである。

 1件の注文を処理するのにも、相応の時間がかかる。この注文が1週間で100
件近くも来ると、とてもではないが、対応が困難だ。書店さんかの注文もある
し、そもそも我々は、『酒とつまみ』に関する編集・制作・営業などのほかの
仕事をしなければ、食べてはいけないのである。

 注文が来るということは、たいへん結構なことなのだが、いざ殺到するとなる
と、何か急ぎの仕事があるにもかかわらず、まずは注文の対応に追われるとい
うことになる。注文は、番組放送からの1ヶ月強の間に、ざっと数えて220件
に上った。
 そして、この対応をしたのが、編集Wクンである。ひとりで対応した。なぜ、
ひとりなのか。

 まずは私だが、諸々の仕事に追われ(単に二日酔いをしているという話もあ
るが)、編集部滞留時間がひどく短い。おまけに事務仕事が嫌いである。誰だ
って好きじゃないだろうが、元来、わがままな性格なので、嫌いなことをやる
となると、まるで能率が上がらないのでもある。
 そして、いつも編集部にいるもう一人であるカメラのSさん。この人の場合
は、編集Wクンをなんとかして助けたいと思っている。思ってはいるのだが、
残念、宛名を書けば必ず間違える。しかも、仕事が遅い。

 ということで、編集Wクンは連日、注文への対応に奮闘し、やがて嫌気がさし、
ちょっと投げやりになってきた。
「パソコンを立ち上げるのが嫌になってきた。注文をこなしたばかりなのに、
メールを受信するともう、新しい注文が入っているんだから。嬉しい悲鳴とか
言いますけどね。ああ、イヤんなった! 誰がちゃんと仕事ができる助っ人は
いねえのかよ!」

 そうこうするうちに、10月も終わり、11月に入ったばかりのある日。タモリ
倶楽部ショックもようやく沈静化してきたかと思われたころ、私は1本の電話
を受けた。

「『タモリ倶楽部』の○×ですけど、12月放送のおつまみ特集に出ませんか」
「へ? また?」
「出ていただけますよね」
「ええ、出ますけど」
 ひとまず出ると答えながら、私は、荒れ狂うWクンの姿を思い浮かべていた。
 
〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集発行人
長らく出すよ出すよと狼少年さながらに申してきました『ホッピーマラソン』
の単行本。いよいよ、本当に出ます。この原稿を書いている今、このとき、印
刷会社に、すべてのデータを入稿しました。発売は8月初旬の予定。
いい本に仕上がっていると思います。ぜひともご期待ください。
http://www.saketsuma.com

ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(48)源流社の巻  セミ・ドキュメンタリ−タッチの非常階段
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 千代田区飯田橋1ー9ー6、朝日飯田橋マンション305号、源流社。同マンシ
ョンは11階でL字型。右側のシッポ部分が目白通りに面して、3階の同社の窓
は外からもよく覗ける。出版社特有のよどんだ雰囲気はなく、キビキビとビジ
ネスマンが仕事してる感じ。壁面が茶色のタイルに覆われた同ビルは、既に築
20年は経ってる感じで、1〜2階にはくたびれた店子も。1階はイタ飯屋の
「ポルポ」、焼き鳥屋の「一番や」、中華の「大王」、牛丼の「松屋」。そして
地下1階には焼き鳥とうなぎの「串鐵」。情けない事に著者は、「ポルポ」と
「松屋」を除く、3軒の常連だ(「大王」は特にうまくはないが、夜中の3時
まで営業してるのと、量が多いので非常に重宝な店だ。配膳係の二代目は、昭
和30年代顔というか、左右田一平のいとこのようなショボい顔で、必ず客に優
越感を抱かせる、傑出した特技が。こっそり陰で、巨額の貯金をしてるに違い
ない)。 

 源流社は1976年の設立。HPのトップに、“人びとの手わざ=世界の生活美
術をあなたに贈ります”と。刊行物。『20世紀の日本のファッション』『西洋男
子服流行史』『婦人服造型とパターン』…。夏場は短パンとサンダルですごす、
脂ぎった初老男にゃ関係ねえもん、イメージがわかなかったはず。ただ、『デ
ジタル時代の放送革命』『年間テレビベスト作品』なんて書籍も。

 どっかで聞いたことある気はしてたが、同社、誌名は思い出せないが、テレ
ビ界の批評誌の発行を、一時引き受けてたはず(昔の映画雑誌で見た記憶)。
つまり、部分的には漫画屋のすぐ近くの、兼六館出版と刊行物が重なっている。
飯田橋がテレビ関係の版元のメッカだったとは…(オーバーだよ!!)。「大
王」で深夜、昔の『映画芸術』めくりながら、プチ左右田一平の運んで来た餃
子をつまみにビール傾けてると、蕨や西川口のうらぶれムード一杯なんだけど…。 

 朝日飯田橋マンションの玄関は、正式には學陽書房ビル手前にあり、受付に
人も。が、実は「串鐵」に下りていく右手に、非常階段があり、住人はこれを
多用。この目白通りに面した、コゲ茶色の階段がカッコいい(長体が4番位か
かって全体にスマート)。ジュールス・ダッシン監督の傑作、『裸の町』さえ
思い起こさせる(左右田一平が餃子を運んでくる中華屋の入るビルで、こう思
わせる位のセンスなのだ)。セミ・ドキュメンタリ−タッチ。その非常階段か
ら覗くと、いよいよ源流社のビジネスライクな明るさは、凡庸で逆に浮いて見
えるが、こりゃまあ同社の勝手だわな。

 それより俺のカバンだよ。先日、拙著『出版業界最底辺日記』(ちくま文庫)
の完成祝いを、「串鐵」で関係者とやり、2次会に「一番や」へ1人で。翌日、
漫画屋の玄関で目覚めたら、カバンがないっ!!(財布はあった)どっちかの
店にあるはずと気楽に考えてたら、影も形もないっ!!!小学校3年の時、学
校にランドセル忘れて帰宅、母ちゃんに言われるまで気づかなかった以来の屈
辱。誰か拾って隠してるのなら、ちゃんと返してよ、泥棒!!!(中身。『出
版業界最底辺日記』『松本清張研究』『レコンキスタ』『救援』「シネマテーク
たかさき」の会員証他。トホホ…)

-------------------------------------------------------------------
■楽しみと日々 古書展と書簡をめぐるあれやこれや  つばめ
第6回 花を匂わす女たちのかげに その1
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 平成17年10月31日、東京古書会館のフリーダム展で、新潮文庫版『失われ
た時を求めて』不揃を千円で買う。全7巻13冊のうち、第7巻『見出された
時』の第1冊を欠いている。
【後日、神田古書センター前のワゴンで、百円均一の文庫本のなかに、8冊く
らいのその版が紐で縛られていて、『見出された時』も含まれていた。まとめ
て買っても八百円だし、バラしても後ろに手が回るわけではないが、あんまり
早く揃うと、話にならないので、あえて見逃す。さらに後日、同じワゴンで、
『見出された時』は再び失われ、『スワンの恋』の1冊目だけが残っていたの
であった。元版にあたる最初の新潮社版は、南部古書会館で、月報入りの揃を
千円で入手した。Qは月報で海外からの手紙を紹介している。改訂愛蔵版箱入
りセットは三千円で見かけるが、まだ重さを確かめただけである。】

 それから、池袋に向い、新文芸坐で、松本清張原作、石井輝男監督「黄色い
風土」(1961)を観る。
 この映画は、物語の冒頭に魅惑的な謎を提出する。週刊誌の取材記者若宮四
郎は、熱海に向かう列車のなかで、フランスの哲学書を原書で読む女に出会う。
カトレアの匂いの女。そして、人の命がひとつひとつ失われるたびに、カトレ
アの花がつぎつぎと姿を見せる。ホテル、旅館、墓地。暗闇ではカトレアの匂
いが。わたしは、誰が犯人か、ということよりも、カトレアにどのような意味
が込められているか、という謎に心奪われる。というのは、「カトレアをする」
という言葉は、プルーストの小説のなかで、ある特殊な言い回しに使われてい
るのであって、そのことが、前述の謎と深く関わっているかもしれない、と思
ったからである。
 最後に見出された真相とカトレアとの関係は?

 北野武監督の「キッズ・リターン」にでてくる喫茶店が「カトレア」という
屋号だったとしても、これほど謎が込められているとは思わなかったろう。

 後日ビッグ・ボックスの古書感謝市で二百円で入手した講談社文庫版の原作
をみると、小説と映画との違いがはっきり分かる。
 松本清張の原作では、「カトレアの女」は「沈丁花の女」である。
 紙幣の原料である三椏(ミツマタ)や雁皮(ガンピ)はジンチョウゲ科。墓
前に供える花束に沈丁花の香水をじゃぶじゃぶ振りかけるのはやりすぎだが、
贋造紙幣が登場するこの物語で、「沈丁花の女」が登場するのは、強い芳香を
放つことをもうまく利用した設定である。飛行機のなかで、「沈丁花の女」が
読んでいるのは、I文庫の『認識及実証論』という哲学書の小型本で、これも
フランス語の原書よりも無理がない。

 わたしは不敏にして、映画版が沈丁花をカトレアに差し替えた理由は、大輪
の花のほうが、見栄えがするということと、台詞として発せられるときの響き
の違いくらいしか思いつかない。
 そういえば、松苗あけみ『カトレアな女達』もまた、「時」と「花咲く乙女
たち」を主題の一つとしているが、わたしは、この華麗な漫画においても、カ
トレアに「花の女王」以上の含意を読みとることができない。花の寓意に精通
する読者の御教示を乞う。

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