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[書評]のメルマガ vol.303
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■■ [書評]のメルマガ   2007.3.10発行

■          vol.303
■■  mailmagazine of book reviews  [ 春の風情 号]
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[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。今年もやります、一箱古本市。
★新連載「音を探してページをめくる」貴島公
 →音楽サイト「モノノフォン」の主が、音とテキストの関係を考察する。
★「〈畸人研究〉今柊二の読書スジ」
 →朝、通勤電車、夕食後、寝床。あらゆる機会を見つけて本を読むのです。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。
★「楽しみと日々 古書展と書簡をめぐるあれやこれや」つばめ
 →やたらと本に詳しい謎の人物「つばめ」による書誌探求の余談です。
★「大阪豆ごほん」柴田尚美(おまめ) 
 →柴田さん、オメデタのため、しばらく休載です。

*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
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★「外市のしずく」は明日
古本市イベント「ちょっとだけ、外、行く?」
「第1回外市」のしずく〜幻の2日目〜

 2月24日に開催された古本市イベント「外市」のささやかなアンコールが
開催されます。今度は日曜日。往来座の台をどかさない程度の小規模開催です。
岡崎武志さん、南陀楼綾繁、浅生ハルミンさんをはじめ、第一回外市の参加者
たちが一箱だけで参加します。

[参加店舗] ※火星の庭さんのみ大棚での参加になります。
bookcafe 火星の庭(仙台)/古書往来座(南池袋)
古書現世(早稲田)/立石書店(早稲田)
ごたごた荘古本部(正体は某有名古書店主)/旅猫雑貨店(雑司が谷)
ブックギャラリーポポタム(目白)/退屈男(名誉わめぞ民)
岡崎武志堂(岡崎武志)/古本けものみち(南陀楼綾繁)/ハルミン古書セン
ター(浅生ハルミン)/北條一浩(「buku」編集長)/他往来座お客様オール
スターズ

特別企画・bookcafe 火星の庭 半額セール!!
店主・前野久美子さんのご好意により、外市の残品(洋書絵本のみ除外)を全
て半額にて販売!

[日時] 2007年3月11日(日)/11時〜17時
※往来座は、22時まで営業します。雨天決行!
[場所] 古書往来座 外スペース 
東京都豊島区南池袋3-8-1 ニックハイム南池袋1階/TEL:03-5951-3939 

★「不忍ブックストリートの一箱古本市」、もうすぐ店主募集開始!
 谷中・根津・千駄木エリアの書店、雑貨店、ギャラリー、カフェなどの店舗
の軒先をお借りして、一人が一箱分の古本を持ち寄って販売する青空古本市、
それが「不忍ブックストリートの一箱古本市」です。2005年春、2006年春と
秋に続き、今年は第4回目となります。おかげさまで、すっかり地域に定着し
たイベントになってきました。
 当日までには「不忍ブックストリートMAP」の改訂版も完成します。地図を
片手に、街を散歩しながら、古本に出会えるという、日本初のネットワーク型
古本市です。恒例のスタンプラリーも行ないます。

第4回「不忍ブックストリートの一箱古本市」
2007年4月29日(日)11:00〜17:00
*雨天決行

 この一箱古本市に出品される方(店主)を募集します。箱の総数は100箱を
予定しています。店主の受付は、今回から先着順となります。

◎応募期間
応募開始 3月15日(木) 午前0時
定数に達し次第、受付を終了します。

◎応募方法
3月15日から以下のURLで申し込みができます。
http://sbs.yanesen.org/cgi-bin/entry.cgi

◎参加費
2000円

その他、詳細は「不忍ブックストリート公式サイト」(http://sbs.yanesen.org/)
およびブログ「しのばずくん便り」(http://d.hatena.ne.jp/shinobazukun/)に
順次アップされます。

◎「助っ人」(ボランティアスタッフ)募集
事前の準備から当日の運営まで、できる範囲で「一箱古本市」を手伝って下さ
る方を求めています。「助っ人」として手を貸してくださる方は、メールにてお
申込みください。
hitohako@yanesen.org/ 件名:「助っ人」参加希望

★よるのひるねでも店主募集
 阿佐ヶ谷の〈よるのひるね〉で、古本市「よるひるふる」3を開催します。
現在、ひと箱古本出店者若干募集とのこと。サイトをご覧ください。

3月18日(日) 11:00-18:00 よるのひるね内
参加者 股旅堂・阿佐ヶ谷駅前のふるほんや・よるのひるね
http://members.jcom.home.ne.jp/yoruhiru/

★ロバロバカフェでも古本市
 経堂の〈ロバロバカフェ〉で、ゴールデンウィークに古本市を行います。こ
ちらは一箱じゃなくて、100〜200冊での出品になります。参加希望者は、3月
12日までにご連絡ください。詳細はロバロバカフェまで。

4月28日(土)〜5月9日(水) 
ロバロバカフェ・春の古本市

ロバロバカフェ
TEL&FAX  03-3706-7917
http://www15.ocn.ne.jp/~robaroba/index.html

★なぜか深川で『彷書月刊』フェア
 東京江東区にあるギャラリー・深川いっぷくで、古本と古本屋さん・すべて
の本を愛する方のための情報探求誌『彷書月刊』の創刊23年目お祝いイベント
「新春・彷書月刊まつり」を開催中。

[会期] 2007年3月7日(水)〜3月25日(日)/11時〜18時/月・火定休
※会期中の休み:3月12日・13日・19日・20日
[場所] 深川いっぷく 
東京都江東区白河3-2-15 1F/営業日:水曜〜日曜・祝日/11時〜18時
休業日:月曜・火曜日・祝日の翌日
※東京都現代美術館の近く、深川資料館通り商店街沿い

【展示】タイムマシン彷書月刊(会期中常時展示)
【イベント:いっぷく・いっぱこ古本市】
3月16(金)・17日(土)・18日(日)・21日(水・祝)
彷書月刊の執筆陣を中心に、いっぷくの外と店内にお宝古本箱が並びます。

【トークショー】 3月21日(水・祝) 15時〜16時半※要予約
◇なないろさんの古本入門教室〜ガッチリ なんでも 聞きまショウ
定員:30名/参加料:800円
田村治芳(彷書月刊編集長)×阿部麗奈(リコシェ)

【ライブ+ミニトークショー】3月24日(土) 16時〜18時※要予約
◇ウクレレブラザーズ いっぷくライブ
定員:30名/参加料:ライブ&トーク(茶菓子付)1000円
首席ウクレレ奏者:高野ひろし

◇トークショー 副編集長は見た!裏窓からみた彷書月刊編集部◇
南陀楼綾繁×皆川秀(彷書月刊副編集長)

[ トークショー・ワークショップの予約 ] ※イベント名を必ずお伝え下さい
深川いっぷく:メール/リコシェ:メール、FAX:03-3804-3907
どちらかのメール、又はFAXにてご予約お願いいたします。

★岡崎武志 トーク&サイン会
 3月16日に光文社新書から刊行される、『読書の腕前』を記念して、各所で
岡崎武志さんのイベントが行なわれます。以下、さわりのみ……。

◎神戸・海文堂書店
岡崎武志 トーク & サイン会 & 一箱古本市
2007年3月31日(土) 15:00〜17:00

◎京都・ガケ書房
岡崎武志・山本善行 トーク&古本オークション&サイン会
4月1日(日) 16:00〜18:00

 このほか、4月15日(日)に高円寺〈古本酒場コクテイル〉で行なわれる
「オヨちゃんとモクローくんの古本ジェットストリーム」にも、岡崎さんがゲ
ストとして出てくれます。詳細情報は各店のサイトおよび岡崎さんのブログを
チェック!
http://d.hatena.ne.jp/okatake/

★林哲夫さんの展覧会
 東京美術商協同組合所属の54店舗が絵画・近代美術をテーマに出店し、各店自
慢の美術品を展示・販売する「2007東美アートフェア「春」」に、林哲夫さんが
「開窓近作展」と題して、出展します。

ブースNo.4-6 林哲夫「開窓近作展」

[会期] 3月16日(金)10時〜19時、17日(土)10時〜18時、
18日(日)10時〜17時
※入場無料
[会場] 東京美術倶楽部
東京都港区新橋6-19-15/TEL:03-3432-0191 



なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/


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■音を探してページをめくる  貴島 公
(2)印度へ虎狩りにですって
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宮沢賢治『セロ弾きのゴーシュ』
青空文庫 http://www.aozora.gr.jp/cards/000081/card470.html

 イギリスのポップグループ、ボンゾ・ドッグ・バンドの第3作『おたまじゃ
くし Tadpoles 』を初めて手にしたとき、日本人の多くは、と大きく出る必要
は全くないのだが、1曲目の題名を目にして、「あ、印度の虎狩」と思ったの
ではないか。Hunting Tigers Out in "INDIAH"。60年代の終わり頃、彼の地で
はヒットしたという「恋のスペイスマン」めあてに、80年代半ばようやく復刻
されたLPを買ったわたしもそうだった。

 コミカルな「Hunting Tigers」は、曲調からして、宮沢賢治(1896年−1933
年)の『セロ弾きのゴーシュ』に出てくる「印度の虎狩」とは思えなかった。
しかしながら、このバンドは20、30年代の古いジャズソングやヴォードヴィル
曲をレパートリーにしていることで知られており、果たして「Hunting Tigers」
も作者はハーグリーブス、ダメレル、エバンス(戦後ペリー・コモがリバイバ
ルヒットさせた「イフ」などで知られるチーム)。自作ではないらしい。だと
したら、賢治と同時代、音楽好きでレコードマニアで知られる彼がこの曲の存
在を知っていた可能性もある! と考えると楽しくなった。

 他愛のない思いつきだけど、どこかに接点はないかと、『ゴーシュ』をコン
サート評かレコード解説のように読んで、曲の扱いを分析したり、映画館付き
の楽士のことを調べたり、徳川義親『じゃがたら紀行』(中公文庫、1980年)
を読んだりしていたところ、原子朗編著『宮澤賢治語彙辞典』(東京書籍、
1989年)に、当時賢治が知り得たはずの情報の中に「印度へ虎狩りにですって」
というレコードがあったことが記されていた。作曲者はエバンス。おー、まさ
しく、これは。古いSPレコードは見つけられなかったけど、テレビで放映され
た生誕か没後何周年かの記念番組で、このレコードをほんの少しかける場面が
あり、聴くこともできた。

 ところで縷々綴ってますが、この件についての調査、分析は、佐藤泰平氏の
『宮沢賢治の音楽』(筑摩書房、1989年)所収の「「セロ弾きのゴーシュ」私
見」で余すところなく行われており、わたしの思いつき研究もそこで打ち止め
となった。なので、改めて書くようなことでもないのだけど、ボンゾズがコン
ト仕立てでこの曲を演奏しているテレビ番組『ドゥノット・アジャスト・ユア・
セット』が去年復刻されたり、古い録音を集めた『ボンゾ・ドッグ・バンドが
教えてくれた歌たち SONGS THE BONZO DOG BAND TAUGHT US』(Lightning Tree、
2007年)なんていう企画CDが発売されたりしたので、1曲をめぐってあれこ
れ想像をめぐらせたり、文献を読んだりしたことを記しておきたくなったので
した。

 そのテレビ番組の復刻映像に付けられた字幕によれば、彼の曲の題名の意味
は「人食い虎、インドに現る」。え、「Hunting Tigers」て、虎狩りのことで
はなかったのか。あぁ。

〈きじま・こう〉説明業、趣味・読書と音楽鑑賞。
『ボンゾ・ドッグ・バンドが教えてくれた歌たち』発売のニュースを知ったの
はちょうど2年前。延期延期でようやく出ました。賢治文献で知られているも
のとは楽団が異なり、歌も繰り返しのところしか歌われていないのが残念です
が。いまのところ輸入盤のみ。http://www.lightning-tree.com/


「モノノフォン」
http://homepage1.nifty.com/hebon/fhp/

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■〈畸人研究〉今柊二の読書スジ
(17)濫読・乱読の記録
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 うーむ、忙しい。またしても書き下ろしに近い形の定食文庫本と複数の連載
が重なり、日々のスケジュールがどんどんタイトになっていく。それでも書店、
古書店めぐりを定期的に行なわないと気がすまないので困ったものだ。そうし
て本を買い込むと読むべき本が蓄積してくる。なるべく効率よく読むために一
日のなかでどの時期にどれを読むかを決めるようになってくるわけだった。以
下で最近の状況を簡単に記してみよう。

朝本…『まだある・駄菓子編』(初見健一著 大空出版)。アイオープナーは
カラーの食べ物系の本がいい。これとか、かの文春文庫の『B級グルメシリー
ズ』をぼんやりと眺める。

通勤電車本…『平凡パンチ1964』(赤木洋一著、平凡社新書)。『アンア
ン1970』を読もうと思って購入したら、『平凡パンチ1964』を読んで
からのほうがいいかと思って、こちらから。雑誌づくりのワクワク感が本書い
っぱいに溢れていて、一気に読み上げてしまった。読後に『証言構成『ポパイ
の時代』』(赤田祐一著、太田出版)を書棚からまた取り出してしまい読み始
めてしまう。いつになったら『アンアン1970』が読めるのだろう。『平凡
パンチの時代』(マガジンハウス)も読みたいし。

夕食後本…大体23時くらいに夕食(晩飯)を食べるのが私の日々のペース。そ
の後いきなり風呂に入るわけにも行かないので、ここで読書タイム。現在は、
『天皇のロザリオ』上・下(鬼塚英昭著、成甲書房)。マッカーサーとカトリ
ックが仕組んだ日本改造計画の謀略に迫る本。…うーん、これはいろいろな意
味でスゴイ本ですね。著者が竹細工職人というのも意表をつかれるなあ。

寝本…いつも原稿書きつつ玉砕して果てるというかんじで寝るが、たまたま本
を読むときはさっくり終わるものを。現在は『回転寿司「激安ネタ」のカラク
リ』(吾妻博勝著、宝島社)。面白いが、やはり回転寿司に行きたくなくなる
ので困る。

〈こん・とうじ〉畸人研究学会主幹。
『がんがん焼肉もりもりホルモン』(ちくま文庫)が好評発売中。『畸人研究』
最新号も出ました。

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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(46)5000部なら2ヶ月で品切れ!
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 さまざまなメディアでの紹介によって、『酒とつまみ』という雑誌の知名度
は確実に上がっていった。これは推測になるけれど、知名度の向上というのは、
メディアでの紹介のその先に、手にしてくださった読者が、知り合いに口コミ
で広めていくという理想的な形で進んでいったような気がしている。

 というのも、メディアで紹介された後の反響は、その時点で出ている最新号
への注文として最初に現れるのだが、その後で、バックナンバーの注文も来て
いたからだ。
 知っていただくチャンスが増えることは、バックナンバーの販売にもつなが
っており、これは、多くの在庫を抱えてきた編集部として、心から嬉しいこと
だった。

 弱小ミニコミにとって、在庫を抱えるのは苦しい。置く場所を考えるだけで
も、次の号を出す意欲をそがれるほどだ。『酒とつまみ』編集部でも、そうい
う時期が長く続いた。
 創刊からの各号の出荷開始と品切れまでの期間を見ると、創刊号では約10ヶ
月、2号では8ヶ月かかって2000部をひとまず売り切った形になる。それに勢
いを得て3号を4000部刷った頃から長く在庫を抱えている。3号が品切れにな
るまで、1年と7ヶ月かかっている。部数を5000部とした4号以降はさらに厳
しい状況になった。

 2004年1月発行の4号は、05年秋に『タモリ倶楽部』で2度にわたって知っ
ていただく機会を得たことで急激に在庫を減らしていたが、06年5月時点でも
品切れには至らなかった。5号、6号には、さらに在庫に余裕がある状態。『酒
とつまみ』の天井は5000部なのか。ときおり、悲観的にならざるを得なかった。
500部で始めたミニコミが5000部まで刷れるようになったのだから、それで十
分とも思えたが、やはり、そこには残念さもあったのである。

 状況が変わったと感じられたのは、7号の5000部が、実質的には6ヶ月ほどで
品切れ状態になったときだった。06年の2月末である。
 そして編集部は、8号を8000部刷る決意をし、06年4月13日に配本を開始
したのだ。その翌月が歓喜の5月であったことは前回にも書いたが、実は6月
13日までのちょうど2ヶ月の間に、5738冊を出荷していた。部数が5000部な
ら、すでに品切れということになる。6月上旬には、連載陣の松崎菊也さんた
ちのコントライブの会場で、一挙に96冊を売っている。

 ライブ会場の別室で行なわれた松崎さんたちの打ち上げに参加させてもらい
ながら、私はしこたま飲んだ。なにしろ、5000部ならもう品切れという信じら
れない事態に突入していたのだ。平静でいられるわけがない。
 そして編集部は、この頃から、初の単行本『中央線で行く東京横断ホッピー
マラソン』の刊行へ向けて、本格的に動き始めるのである。

〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集発行人
『酒とつまみ』9号の配本作業もようやく一段落。お届けが遅れた読者と書店
の皆様、本当に申し訳ございませんでした。最近では飲み疲れが相当に来てい
るようで、先般ホッピーを飲んでいてふと気がつくと、「外」を入れるのを忘
れて飲んでいるのでした。これでは甲類焼酎のでっかいオンザロック。体に障
りますよ、本当に(泣)。
http://www.saketsuma.com

ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(55)松柏社の巻 謙虚さ溢れる“スト破り”自社ビル
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 雑居ビルが高層ビルへとスクラップ&ビルド化される中、飯田橋付近では
“事務所難民”が大量発生中だが、同様なのが“喫煙者喫茶店難民”。隔離さ
れる今風の安い店は落ち着かないと見え、コーヒー一杯400円前後の、数少
ない個人経営の残存喫茶店は、中高年の根強い支持を。が、目白通り沿いの作
品社手前にあった、「エリカ」も遂に廃業(コーヒーはまずかったが、BGM
をかけないので落ち着いた)。

「これからの食後の読書は?」と思案。「「樹」の、ラリったマスターの面な
んざ見たかねえし…」。思い出したのが、目白通りの反対側、「津つ井」と
「トクミヤ洋服店」の間の路地を入ったトコの「珈琲美学」(ひでえ店名)。
健在なのかと心配したが、入ると大盛況(タバコの煙も)。個人経営の喫茶店
は、愛煙家とスクラム組んで生き残るしか道はないな(これに役所が介入する
のは、確かに斎藤貴男が言う通り、禁煙ファシズム。ちなみに筆者は非喫煙者)。

 松柏社は路地の右側、「トクミヤ洋服店」の裏手に。千代田区飯田橋1ー6
ー1。堂々たるという規模ではないが、学術系版元らしい、謙虚さ溢れる5階
建て自社ビルだ。路地に面した側は、淡いオレンジ色と、一部コゲ茶色の、細
かいタイルで覆われている。1、2階を同社、3階に都市建築編集研究所、4
階がネクスト、5階は表示なし。1948年設立の英語教材で知られる版元だ
が、社名さえ思い出したくない人も多いだろうから(筆者も)、業務内容につ
いてはこれ以上触れない(『フォークナー研究』の発行元でもありマス)。

 で、松柏社ビルが謙虚に見えるのはもう一つ理由が。付近の人なら絶対知っ
てるはずだが、同社ビル左手には強烈な物件が(その左が「珈琲美学」)。何
と、木造の3階建て住宅が今も現役で、小津安二郎風というより、千葉泰樹風
のたたずまいを(“横丁の小津安”テイストの、『下町』や『好人物の夫婦』
等で知られる千葉監督の映画群は、肩が凝らなくていい)。

 1階は部分的にセメントで固められてるが、他は全部板張り(キッチン「南
海」のカレー色)。路地より少し高台にあり、狭い庭も(ガラパン等の干し物
ヒラヒラ)。一般人も住んでるらしい。一番印象的なのが、3階の「シネマ・
アベ」の白看板。“映画・製作 世界の名作16ミリ(日本語版)配給・販売”。
しかも窓には、お化けの出そうなすだれまで(なぜか2階の窓にも)。とても
21世紀とは思えない(「シネマ・アベ」の実態は、あえて知らない方がいい気
が。そう思わせるド迫力が、建物と看板にはある)。

「トクミヤ洋服店」も異色。先日も横を通ると、職人さんが5〜6人。遂に取
り壊しかと思いきや(これまた文化財級)、ネズミ色の外壁の塗り替え中。都
心から個人の家が次々と追放される中、この一角はまだまだ頑張っている。一
方、松柏社ビルは、一種の“スト破り”に見えなくもない。別に後ろめたいと、
建物が意志表示するはずもなかろうが、無責任な通行者にそう思わせる、濃密
な立地条件下の松柏社の御殿ではある。


〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)。『嫌われ者の記』をベースにし
た新刊『出版業界最底辺日記 エロ漫画編集者「嫌われ者の記」』(ちくま文
庫)が好評発売中。
なお、この連載に関しての批判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(た
だし、謝るとは限りません)。
mangaya@air.linkclub.or.jp
http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/

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■楽しみと日々 古書展と書簡をめぐるあれやこれや  つばめ
第14回 中上健次と二人の死刑囚 その2
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【ジャズ・ヴィレッヂの常連客中上健次が語る話】
 中上健次(1946.8.2-1992.8.12)。1965年上京。1970年8月、羽田の国際
空港事業株式会社に勤務。

(「青春の新宿」より)
 十八の歳に上京したのだが、その東京に着いた次の日に電車に乗って出かけ
た町の中で入ったモダンジャズ喫茶店がいわば私の運命を狂わせた。そのモダ
ンジャズ喫茶店ジャズ・ヴィレッヂは歌舞伎町の朝日ビルの通りにあった。

(「ジャズの日々」より)
 十八から、二十三まで、ジャズを聴いたのは、新宿の「ジャズ・ヴィレッヂ」
という喫茶店だった。

(「路上のジャズ」より)
 一つ通り向うのモダンジャズ喫茶店に、永山則夫が、ボーイとして働いてい
た、永山則夫が、連続ピストル射殺事件の犯人として逮捕されて、それを知っ
た、確か、二十歳までを生きると書いたのは、永山則夫だった。

(「小説の敵」より)
 二十一、この頃、新宿で日がな一日ジャズをきく生活にあきはじめ、毎日、
近くの図書館に通ったことがある。元気のない時だった。丁度、その頃、永山
則夫が逮捕されたのだった。

(「永山則夫の存在を否定した文学者たち」より)
 僕は、逮捕されてからすぐにショックでね。僕と一歳くらいしか違わないん
だよ。僕が新宿で遊んでたときにね、彼は歌舞伎町の「ビレッジヴァンガード」
というところで、ボーイやってたんだ。今はポルノショップになってる。僕は
十八で上京して二日目から、すぐ近くのジャズ喫茶に入りびたりになっていた。
彼は、捕まるまで、その店で働いていた。捕まってから、そういえばあいつか
なと思った。[初出は「月刊TIMES」1990年7月号の由]

【ビレッジゲートのボーイ北野武が語る話】
 北野武(1947.1.18-)。

(『コマネチ!ビートたけし全記録』より)
 1966年、大学にはこの頃からほとんど行かなくなり、新宿界隈で過ごしてい
た。新宿中央口前の「風月堂」に入りびたり、新宿の喫茶店「びざーる」など
でバイト生活を送る。1968年、この頃、新宿のジャズ喫茶「ビレッジゲート」
でボーイとして働く。当時の給料は1日200円だった。他にもバイト先を転々
と変わり、羽田空港のエア・グランド・サービス(AGS)では中上健次らと
知り合う。1970年、日本交通・早稲田営業所に入所し、タクシー運転手とし
て働く。1972年、この年の夏、ストリップ劇場の浅草フランス座でエレベータ
ーボーイに。座長の深見千三郎(久保七十二)に弟子入りを志願。おいらの自
分史

(『浅草キッド』より)
 あいまに『ビレッジゲート』という新宿のジャズ喫茶のボーイとして働き、
夜はフーテン仲間の友だちの下宿に転がり込んで、居候させてもらったりし
ていた。

(『六〇年代「燃える東京」を歩く』より)
 その頃、新宿のジャズ喫茶のボーイとして働いていたことがあった。思い詰
めた表情をしていたのは、おいら以外にもいっぱいいた。直接会ったことはな
いけれど、永山則夫も同じところで、バイトしてたらしい。一歩間違えば、お
いらだってとてつもない凶悪犯罪を犯していても不思議はない。おいらも「燃
えた」六〇年代

(「映画・差別・新宿」より)
 あれはね、ビレッジバンガードだよ。ジャズ・ビレってね、後にピテカント
ロプスっていう名前に変わってね、もうこれ大変な所になっちゃってね(笑)。
皆、手入れ受けて、ひでえ目に遭った所なんだけど。俺ずっとボーイ。1500円
だよ。1500円って時給じゃないんだよ。一日だよ。50円でね、ビレッジゲート
でコーヒー飲んでね。モーニングサービスでサンドウィッチ食い放題でさ。
[初出は「シティーロード」1991年10月号の由]

【蛇足】
「蛇淫」は、市原市の両親殺しの新聞記事に触発されて書かれたが、中上健次
は、調べを尽くしたわけではない。長谷川和彦監督『青春の殺人者』は、「蛇
淫」をもとにした映画であるが、実際の事件をも調べに調べたという。そのせ
いか、映画は、支離滅裂で、つまらない。

 原作の設定では、女は、両親が殺害した男とは幼なじみ。男が経営するスナ
ックの従業員で、両親と同居している男の自宅に住み着いている。実際の事件
では、女は、いわゆるトルコ嬢であって、後に死刑判決を受けた男は、女と客
として知り合い、内縁の夫がいることを知りつつ結婚を考えるようになり、両
親に内緒で借りたアパートの一室に住まわせていた。映画では、設定は原作ど
おりなのに、父親が、興信所かどこかに依頼して、調査したということになっ
ていたように記憶している。幼なじみという設定で、それはないだろう。

 動機も、実際の事件では、当然のことながら、無花果なぞは全く無関係で、
判決(千葉地裁昭和59年3月15日判決、東京高裁昭和61年8月29日判決・
判例時報1225号124頁)の認定によれば、父親が、知人に依頼して女が勤め
ている店の内容や女のことを調べてもらったこと、女がいかなる職業の女であ
り、客に対してどういうことをする女であるかを具体的に卑猥な言葉で述べ続
けるに及んで、意表を衝かれて驚き、女の職業が父親に知られてしまったから
にはもうどうしようもないと思うとともに、最も大切なものが壊されるような
思いを抱き、こんなことを言い続ける者は父親だろうがなんだろうが殺してや
ろうととっさに決意した、というものである。

 判決は、父親殺害後に、「私もこれでこの人から開放される。××[被告人]
はこの人の子ではないかもしれない。これから二人きりで暮らそう。」と母親
が言ったという被告人の供述は、信用性に疑問があるとしている。映画では、
母親が似たような台詞をいう場面があったような気がする。

 実際の事件は、昭和49年10月30日午後5時20分ころ、発生した。この事
件で、殺害された母親が隣の「ふるさと」食堂に米飯を買いに行った日付けが
事実認定上問題となっている。そのとき、萩本欽一が出演している番組が放映
されていたことは間違いないが、それが10月29日午後7時30分放映開始の
「55号決定版」だったのか、10月30日午後7時放映開始の「日本一のおかあ
さん」だったのかが判決で大真面目に検討されている。たしかミヒャエル・ハ
ネケ監督の映画は、日常生活のなかでニュースがずっと流れているうちに、事
件が起こるというパターンが多いような漠然とした記憶があるが、現実には、
深刻な事件の背後に、お笑い番組が流れている、ということもある。

 というようなことを書きあぐねていて、新潮文庫版(昭和57.11.25発行)の
小林信彦『日本の喜劇人』を読んでいたら、次のような一節を目にしてしまう。

 歌舞伎町のジャズ喫茶「ビレッジ・バンガード」で早番のボーイをしていた
たけしは、遅番の或る青年と、毎日、すれちがっていた。青年は〈連続射殺魔〉
の永山則夫である。

 小林信彦が文章で断定的に書くなら何か確実な根拠があるに違いないとは思
いつつも、伝聞であるならしょせんは語りの初期型にすぎないとも考えて、時
が経つほどはっきりする伝説の輪郭と時が経つほど不透明になってゆく事実と
の間で、わたしは、伝説の源にたどりつくことがなかなかできない。これから
さきは、考証が可能な世界から、口承の世界に入ってゆくであろうから。


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