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[書評]のメルマガ  vol.304
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■■ [書評]のメルマガ     2007.3.16 発行
■■ mailmagazine of book reviews         vol.304
■■                  [この版元がエライ!2007]
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■はじめに
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 毎年年末から年頭にかけて募集している、アンケート企画「この版元がエラ
イ!」をお届けします。今回で6回目となりました。
このアンケートでは、2006年に気になる出版物・出版活動のあった出版社を
ひとつ選び、それが「エライ!」理由を書いてもらいました。
 いつもどおり、こんな本を出してくれた、いまだにツブれない、発想が新し
いなど、「エライ!」基準はさまざまですが、誰に頼まれたワケでもなく、自
分の見方で版元を選んでいるところは共通しています。
 今回の回答者は27人。
 掲載は到着順です。
 それでは、どんな版元が出てくるか、お楽しみに。
                     (編集・南陀楼綾繁)
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宮川恵子(代行営業)
●双葉社 http://www.futabasha.co.jp/
【出版物・出版活動ベスト3】
1 武富健治『鈴木先生』
2 森下裕美『大阪ハムレット』
3 西原理恵子『はれた日は学校をやすんで』
【エライ理由】
今年は例年に増してマンガをよく読んだ年でした。そのなかで一番多く買っ
ていたのが双葉社の本だったので選びました。アクションも復刊したので毎号
買っています。1、2は言わずもがなの注目作品で、今年のマンガの収穫だと
思っています。また、『漫画アクション』からは文化庁メディア芸術祭にて、
3作品が選ばれています。今一番注目の漫画雑誌はアクションだと思っており
ます!(『大阪ハムレット』が優秀賞に、『鈴木先生』『耳かきお蝶』が審査
委員会推薦作品です。)3は、肩の力が抜けてふっと楽になる作品で、西原さ
んの作品のなかでは一番好きです。


岡田@川崎追分町(休職中サラリーマン)
●APPカンパニー  http://www.app-beya.com/
【出版物・出版活動ベスト3】
1 『ご存じ古今東西噺家紳士録』
2 『江戸明治東京重ね地図』
3 『江戸/東京 芸能地図大鑑』
【エライ理由】
 いずれも去年の発行物でもなく、また、私ごときが今更ほめるまでもない
「話題のブツ」であるが・・。
 去年、私が感動したのは、こちらの会社の社長の小島豊美氏が、故・小島貞
二の息子さんだということを知った時。
 小島貞二も、相撲取り、漫画家、演芸評論家と多彩な経歴の持ち主であった
が、息子さんの豊美さんも、ポニーキャニオン在籍時は、なんとあの大ヒット
曲『およげ!たいやきくん』を手掛けたそう。
 なんとも豪華な経歴の親子である。


林哲夫(画家)
●山猫軒
【出版物・出版活動ベスト3】
1 『たまや』03 追悼・種村季弘 
【エライ理由】
昨年は海野弘、南陀楼綾繁、向井透史らの著作を次々に刊行した右文書院が
エラカッタと思う。個人的にも装幀の仕事を多くさせてもらったので右文書院
を挙げないことには義理を欠く。
とは言うものの、やはりまるまる二年の空白期間を置いて発行された『たま
や』種村季弘追悼号には驚かされた。内容はもちろんのこと、B5判、本文活
版二色刷というその仕様に、反時代的な発行人間村俊一の偏執が感じられて
「あんたが一番エライ!」と叫ばずにはいられないのである。


川口 正(紹介屋/出版営業代理人)
●出版ニュース社 http://www.snews.net
【出版物・出版活動ベスト3】
1 出版ニュース社編 『出版年鑑2006』 本体30,000円+税
2 思想の科学研究会編 『「思想の科学」50年の回想』 本体2,500円+税
3 箕輪成男著 『中世ヨーロッパの書物』 本体3,000円
【エライ理由】
 失くしてから惜しんでも取り返しがつかないもの、というのがある。同様に、
記録しなかったがために後顧に愁いを残すという事態も多々起こる。さしずめ、
紙版での『日本書籍総目録』など、いずれ挙げられることになるだろう。
 出版ニュース社は、創業から一貫して『出版年鑑』を出し続けてくれている。
日本における一年間の総出版点数や、その内容・動向、そもそも出版活動を続
ける会社数が何社あるのかといった素朴な疑問に応える基礎データは、この社
がまとめる年鑑数字に準拠する以外ないのが、「出版資料館」さえ存在しない
お寒い出版業界の実態だ。
 旬刊「出版ニュース」の継続発行による業界へのグローバルな目配りと、右
顧左眄の企画を大量生産する数多の版元をよそに、社名にふさわしい本しか出
してこなかった出版姿勢も清々しく、年度なんかとは無関係に、私の推すオー
ルタイム・ベストの版元だ。


小林浩(月曜社取締役)
●洛北出版 http://www.rakuhoku-pub.jp/
【2006年の出版物】
1 A・リンギス『何も共有していない者たちの共同体』2月刊行
2 浅野俊哉『スピノザ 共同性のポリティクス』3月刊行
【エライ理由】
 松籟社の編集者、竹中尚史さんが独立して設立した京都の出版社。そのスキ
ンヘッドのこわもてと長身で強い第一印象を抱かせる人だけれど、腰の低さと
丁寧な仕事、地道でたゆまぬ努力を東京から見ていて、その姿が私自身の仕事
にとって大きな励みになっている。人文系零細出版社の現実は常に厳しいし、
自身の心身を削ることなしには容易に存続できない。つくっている本からはう
かがい知れない竹中さんの影の苦労を思うとき、自分ももう少し頑張ってみよ
うと思う。同様に励みにさせていただいている出版社に、藤原書店から独立し
た清藤洋さんの「書肆心水」がある。硬派ここにあり。
http://www.shoshi-shinsui.com/


田中町子(書店員)
●双葉社 http://www.futabasha.co.jp/
【出版物・出版活動ベスト2】
1 石原真理子『ふぞろいな秘密』
2 はるき悦巳『じゃりン子チエ』
【エライ理由】
『ふぞろいな秘密』がよく売れています。yoshiの著作が出た時にも思ったの
ですが、社の、その書籍に対する愛情がかなり薄く、モノとしてどれだけ流通
させるか、というとてつもなくクールな対応に恐れ慄きました。
初めは もう双葉社の本はもう買わない!と思いましたが、本が好きで書店
員になった自分の甘さに気づき、本とはモノなのか、消費物なのかという問い
(まだ答えは出ていませんが)を与えてくれたと思い感謝しています。
それに、買わないも何も、個人的にじゃりン子チエ大ブームなので、今一番
お世話になっている版元でありました。


大林えり子(ブックギャラリー ポポタム) http://www6.kiwi-us.com/~popotame/
●キョートット出版 http://kyototto.com/
【出版物・出版活動ベスト2】
1 いちむらみさこ『Dearきくちさん、ブルーテント村とチョコレート』
2006年9月発売                       
2 小川てつオ『このようなやり方で300年の人生を生きていく』2005年
【エライ理由】
前回もこの小さな版元を「エライ」にしました。アートと生活をテーマに、
出版だけでないさまざまな活動を展開する小川恭平さんのひとり出版社。おも
しろい本をていねいにつくるだけでなく、ていねいに営業しているところがエ
ライところだと思います。デザインや中身が、「今風」も「ミニコミっぽさ」
もひょいっと跨いだ感じで、「その作家の作品」をつくるという姿勢が私には
伝わってきます。最新刊の『Dear きくちさん』が書評などで注目されつつあ
りますが、もっともっと読まれてもよいです。もちろんブックギャラリーポポ
タムでは平積みです。また2月に上記の著者二人の展示とイベントを行ないま
した。


にとべさん(本好き自由人)
●筑摩書房 http://www.chikumashobo.co.jp/
【出版物・出版活動】
☆ ちくま文庫の復刊
【エライ理由】
2005年秋、ちくま文庫の20周年を記念し、「ちくま文庫復刊フェア」が行
なわれた。この時は、事前に同社サイト上で読者から復刊希望のアンケートを
つのり、その結果をもとに復刊するという「お祭り的」なものだった。ところ
が2006年の復刊は、サイト上などで特に予告することもなく行なわれた。こ
れは、今後も年に一度のペースで普通に復刊していきますよ、という静かな宣
言だと解釈してもいいのではないだろうか。(もちろん復刊した本が売れるこ
とが条件となるだろうが。)
 そんな勝手な期待も込めて、筑摩書房を推す。


歸山健一(会社員)
●みずのわ出版 http://www.mizunowa.com/
【出版物・出版活動ベスト2】
1 『神戸の古本力』
2 平野義昌『本屋の眼』
【エライ理由】
昨年から転勤で関西に住むようになって、せっかくだから読む本も関西寄り
のものにしようと考えた。テーマが関西、もしくは版元が関西の本。勤め先は
大阪・天満橋にあるが、実際の仕事の現場は神戸と京都が多い。去年は特に神
戸で大きな仕事があり、現場から海文堂書店は徒歩圏なので、よく通った。
『神戸の古本力』は同店でのトークショーがきっかけになってまとめられたも
の。『本屋の眼』は店員さんの同店のミニコミ「海会」での連載をまとめたも
の。本屋から発信されたコンテンツが、地元の版元から本として刊行される、
というのは地方における理想的な組み合わせのように思われる。突き詰めると
「この本屋でしか買えない本」があると面白いと思うが、そこまで行かなくて
もそれに近い効果があるのではないか。地元の本屋さんと良い関係を築き上げ、
積極的に情報発信している「みずのわ出版」はエライ!


小柳安夫(営利会社員、非営利大学講師)
●講談社  http://www.kodansha.co.jp/
【出版物・出版活動ベスト3】
1 『主語を抹殺した男―評伝 三上章』(金谷武洋)
2 『自伝 大木金太郎―伝説のパッチギ王』(大木金太郎)
3 『雑学図鑑 知って驚く!!街中のギモン110』『雑学図鑑 街中のギ
モン ダイナマイト』(日刊ゲンダイ編・講談社+α文庫)
【エライ理由】
いまさら何で講談社? そう思った人は多いはず。金田一京助でなく三上章、
力道山でなく大木金太郎の伝記とは、2006年の講談社はちょっとブッ飛んでい
た。そういえば05年にも講談社は『打撃の真髄 榎本喜八伝』(松井浩)を出
している。日本語文法の本質を喝破した1960年の三上章の著作『象は鼻が長い』
が、くろしお出版を今日まで支え続けている。
大木金太郎こと金一(キム・イル)によって、1980年代以降の日韓スポーツの
壁が越えられ、交流も活発化した。
人物を取り上げる際の着眼点の素晴らしさ。着眼のヒントとなっているのは、
意外と日刊ゲンダイ連載のコラム「街中の疑問」ではないかという気がする。
「大学ノートの”大学”って何?」など、連載コラムをまとめた2冊の文庫本
もおすすめ。


干場みゆき(書店員)http://bookrium.exblog.jp/
●フリースタイル  http://webfreestyle.com/
【出版物 出版活動ベスト1】
『フリースタイル vol.5 特集 久世さんのドラマ。』
【エライ理由】
 2006年3月2日に急逝された久世光彦氏の追悼特集。
私にとっての久世さんは小説家でした。『時間ですよ』や『涙たたえて微
笑せよ 明治の息子島田清次郎』の演出家だとは知らなかった。「久世さんの
ドラマ。」に気が付いたのは、16歳の時に見た向田邦子終戦ドラマ『いつか
見た青い空』。小説家と演出家がつながり、久世さんが本で書いてきたことが、
テレビの中で芯となっているのを見つけました。
久世さんの本で執拗に描かれる疎開するまで育った阿佐ヶ谷の家。戦争中
でも見つける日常のしあわせ。軍人の父。昭和10年代の東京の空気。
特集最後の「久世光彦テレビドラマ全仕事」は資料として貴重です。あぁ
これも久世さんだったのかと思いながらも、ドラマほどに久世さんの小説が評
価されていないのはなぜだろうと考える。久世さんはテレビでは遊び、本では
真顔を見せている。「久世さんの小説。」をまとめてはじめて、「久世光彦」
という人が浮かび上がってくるのでしょう。


喜納えりか(ボーダーインク編集者 http://www.borderink.com)
●沖縄文化社 http://www.okibunsha.co.jp/
【出版物・出版活動ベスト3】
1 名嘉真宜勝『沖縄の人生儀礼と墓』
2 上江洲均『ふるさと沖縄の民具』
3 沖縄文化社編『ひとことウチナーグチ』
【エラい理由】
 1985 年の創業以来、ハンドブックシリーズを淡々と出し続ける迷いのなさ
が尊敬に値します。同シリーズは沖縄の「民話」「わらべうた」「歴史(人名)」
「文化財」などをテーマとした、B6判ソフトカバー120頁ほどの体裁で、これ
まで14冊が発行されています。著者にはその道の専門家が多いので、手軽な中
にも読みごたえあり。ちなみに2006年は『沖縄の行事料理』(松本嘉代子著)
という本が出ています。著者の松本さんは沖縄料理研究の大御所で、作ろうと
思えばン万円の豪華本も作れたはずなのに、税込998円。感動。


松下浩(新聞社広告局勤務)
●新星出版(沖縄)
【エラい理由】
『沖縄のセミ』を刊行。国内のセミはおよそ30種。このうち半数以上が生息す
る沖縄県。県内全種の生態写真と鳴き声のCDつきのマニア垂涎の一冊を世に
出してくれた。1500円の定価も非常に良心的。
ちなみに台湾ではこんなのもあってうらやましい。
陳振祥 著『台湾賞蝉圖鑑 Cicadas of Taiwan』大樹文化叢書(台北), 2004
沖縄以外のセミの類書を出してくれませんか。文一総合出版さん、あんたの
出番ですよ。


盛厚三(同人誌主宰)
●講談社/講談社文芸文庫 http://www.kodansha.co.jp/
【出版物・出版活動ベスト3】
1 加能作次郎『世の中へ/乳の匂い』
2 川崎長太郎『もぐら随筆』
3 大岡昇平『愛について』の重版
【エライ理由】
講談社文芸文庫の年間刊行数は、それほど多くない。巷の隠れた文芸文庫フ
アンとしては、伊藤整らの『日本文壇史』が刊行されたときには歓喜した。お
まけに『日本文壇史総索引』まで出してくれた。
そして、色々噂を聞いていた加能作次郎が文芸文庫に入った。年明け早々に
店頭に並んだ『世の中へ/乳の匂い』。マイナー作家の一人と言われる加能作
次郎のなかなか読むことのできない作品を取り上げたことはエライ。昨年は、
川崎長太郎の『もぐら随筆』も出ている。この出版を契機に、中戸川吉二や南
部修太郎らの作品を取り上げたら、もっとエライ!
さらに、この文芸文庫で昨年話題になったのは、ある書店の要望で大岡昇平
『愛について』を専売商品として700冊を見事に重版したこと。文庫編集者
の意向ではないにしても、その決断はエライ。書店はもっとエライ!


栗田朋子(書店員)
●講談社 http://www.kodansha.co.jp/
【出版物・出版活動ベスト3】
1 瀧波ユカリ 『臨死!!江古田ちゃん』
2 カラスヤサトシ 『カラスヤサトシ』
3 サマー 『姉ちゃんの詩集』
【エライ理由】
2006年はこのご時世「売って売って儲けなければ」という立場におりますと、
おもしろくて売れる本、というそのものに興味が沸いた一年でした。そして自
分自身の日々がてんてこ舞いですと、なんとなくそれを反映するようなくだら
なくて自虐的な明るさのある本に惹かれました。
と言うわけで、これらの三冊はほんのり類似本ですが、以上の要素を踏まえ
ており、なおかつ前衛的(?)で若い著者たちの新しい風を感じるものでした。
今更ながらやはり多くの民衆の心をとらえるパワーがあり、儲かるのは当たり
前にエライんだ、と思い講談社に一票をささげます。


リコシェ・柳ヶ瀬和江(本のディストリビューター)
●編集出版組織体アセテート http://www.acetate-ed.net
【出版物ベスト3】
1 長嶋康郎『ニコニコ通信』
2 渡辺豊和『文象先生のころ 毛綱モンチャンのころ 山口文象・毛綱モ
ン太覚え書』
3ビリー・クルーヴァー『Billy's Good Advice ビリーのグッド・アドバイス』
【エライ理由】
建築は門外漢で「建築書は、難しくて読みにくい」とずっと思っていました。
それが、偏見もいいとこで、面白いんだど思ったのは『文象先生のころ〜』を
読んだからですね。ほとんど知らない建築家が大勢登場するし、専門用語もあ
りますが、何だか、小説のようにすいすい読めちゃったんです。以後、図書館
で「ル・コルビュジエの本」や『住宅70年代・狂い咲き』なんて本を借りた
りして、楽しんで読んでます。同じような体験をした読者の方が、数人はいる
と思うんでがどうですかね? 読書革命(?)だと思うですが。
『ニコニコ通信』を最初に読んだんですが、古道具屋さんの本を、建築学の研
究室が出版したと聞いたので、意外さに驚き、巻末に記載されている「あらか
じめ決定された予算がつきるまで、活動していきます。」という意味不明な文
に、読者としては、かってに「競馬で一攫千金を得たのか?」など妄想してい
ます。注目したい出版活動です。


沼辺信一(編集者・研究者・収集家)
●早川書房(ポピュラー・サイエンス部門) 
http://hayakawanonfiction.boxerblog.com/
【出版物ベスト3】
1 ケン・オールダー『万物の尺度を求めて メートル法を定めた子午線大
計測』
2 アミール・D・アクゼル『デカルトの暗合手稿』
3 エイミー・B・グリーンフィールド『完璧な赤 「欲望の色」をめぐる帝
国と密偵と大航海の物語』
【エライ理由】
ハヤカワはミステリとSFばかりじゃない。ノンフィクション、とりわけ近
年はいわゆる「ポピュラー・サイエンス」系の面白本の翻訳刊行にも力を入れ
ている。例えば2005年に出たO・ギンガリッチの『誰も読まなかったコペル
ニクス』とM・リヴィオの『黄金比はすべてを美しくするか?』は、それこそ
目から鱗がごそっと落ちる画期的な読物だった。昨年もそれらに引き続き、上
にあげた三冊がどれも無茶苦茶スリリングな内容で、読み始めたらもうやめら
れない面白さ。事実は小説よりも奇なるかな、と感嘆することしきり。
これだけ「ハズレ」がないということは、編集部によほど原書の選定に長け
た目利きがいるのだろう。欧米で星の数ほど出ている科学読物から、価値ある
ものを選り抜いて紹介している。それにどれをとっても訳文がこなれている。
すらすら読めるし、固有名詞や専門語の表記も抜かりがない。さすが翻訳物の
老舗だなあ。


よーまる(書店員)
●みずのわ出版 http://www.mizunowa.com/
【出版物・出版活動ベスト2】
1 読売新聞西部本社編『旅する巨人宮本常一 にっぽんの記憶』
2 林哲夫・高橋輝次・北村知之編『神戸の古本力』
【エライ理由】
 97年創業、神戸のひとり出版社。柳原一社主は山口県周防大島出身、郷土
の先輩宮本常一関連書を中心にこれまで46点を出版。昨年は上記2点を含む10
点を世に出す。そのなかには拙著『本屋の眼』もあり、これが天災おバカ本で、
「みずのわ」の硬派・良質な本づくりからはみ出したため、ストレスが内臓を
蝕み年末緊急入院。1は7月初版、9月に2刷という同社久々の快挙。2は林
哲夫『文字力100』出版記念の書店トークショーを文字化、地域本ながら古
書愛好家から高い評価あり。『宮本常一離島論集』全5巻刊行準備中、さあ立
て、立つんだ一!


大橋あかね(ハラゴメカエル作家・雑貨クリエイター)
●エスクァイア マガジン ジャパン http://www.esquire.co.jp/
【出版物・出版活動ベスト】
ヤン・シュヴァンクマイエル画、ルイス・キャロル著
『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』
【エライ理由】
 理由その1:シュヴァンクマイエル大好き、アリス大好きの私にとって、ま
さに天からの贈り物の様な絵本を出してくれたから。金かかってそうな凝った
装丁にもウットリ。
 理由その2:チェコセンターでの原画展やサイン会など、関連イベントも盛
り沢山だったから。
 ちなみに、昨年、私が一番興奮したのは、シュヴァンクマイエルの来日とサ
イン会で、一番悔しかったのは、自分がそのサイン会に行けなかったこと。
 エスクァイア マガジン ジャパンさん、私に喜びと後悔をありがとう!


阿部麗奈(リコシェ・筆豆班)
●Bit Rabbit  http://www.bit-rabbit.com/
【出版物】
art mini mag「appel」
【エライ理由】
昨年(2006年)10月、東京・経堂のギャラリー〈appel〉が閉店しました。
アペルは、アートユニットBit Rabbit(tattaka、泉沢儒花)のお二人が運
営されていた現代美術のギャラリーです。展示だけでなく様々なイベントもさ
かんに行われていました。アーティストによるアート好き・アーティストのた
めのサロンでした。
お店の営業のほかにお二人は、自らの作品制作を続けながら、アートミニマ
ガジン「appel」をこつこつと作っていたのです。リコシェでも扱わせていた
だいていて、小さいながらも濃い特集を楽しみにしていました。作る人が同時
にそれを広める場も提供していることにいつも感動していました。
ギャラリーカフェの〈アペル〉は残念ながらなくなってしまいましたが、私
はアペルのやってきたことそしてこれからも、形が変わっていっても、アペル
はいつも人をわくわくさせる存在なのだとおもっています。
皆さまも本屋さんで、アペルを見かけたら是非お手にとってみてください。


西村義孝(古本蒐集家)
●ブッキング http://www.book-ing.co.jp/pod.html
【出版物・出版活動ベスト3】
1 ウォー、吉田健一訳『ブライヅヘッドふたたび』
【エライ理由】
 『ブライヅヘッドふたたび』が2006年11月20日復刊され、三度目の新刊、
書店、ネットで手軽に読めるようになった。私も『ブライヅヘッドふたたび』
をネット注文した、書棚に3冊目が並んだ。2007年は吉田健一没後30年、他
の復刊、編集本を期待しております。


神戸鶴亀本舗 石井章
●創元社
【出版物】
中村よお 『肴(あて)のある旅 〜神戸居酒屋巡回記』
【エライ理由】
この本の創り方です。
主に神戸方面の、中村よお氏ご愛用の居酒屋を紹介した本ですが、担当編集
者は、お店の紹介本ではなく、あくまでも随筆として文字だけの本を作ろうと
した。だから、この本にはお店の地図も写真も一切入れてない。とか云いなが
ら187頁の隅っこに幅5ミリ天地4.5センチほどのクリヌキ写真がちょろりと
入っている。これ、スルメの足なのですね。版下作製の際に何ぞの間違いで余
分なものが付着したようにもみえますが、勿論、わざとやっとる訳です。
また、3桁のページ数が、手作業でナンバリングしたようにあちこちビミョ
ーに天地や字間がずれている。これも揃えるよりはずらせる方が圧倒的に手間
がかかるのだが、こんなアホなことやっとるところが、とってもステキ!
そして、もうひとつアホなことやってるのですけれど、これの説明は長くな
りそうなので割愛します。


遠藤哲夫(フリーライター)
●堀内家内工業 入谷コピー文庫
【出版物・出版活動ベスト2】
1 遠藤哲夫『現代日本料理「野菜炒め」考』
2 大川渉『酒中乱読日記』
【エライ理由】
フリー編集者の堀内恭さんがひきいる、堀内家内工業が発行する入谷コピー
文庫は、著者がプリントアウトした原稿をコピーし手製本で仕上げるという仕
組みで、初版のみ20部前後の発行らしいので、なかなか入手が難しい。2006
年に入手したのは、自分の著のほかに、大川渉さんのものだけ。とにかく、ビ
ジネスを軽蔑しながらビジネスに流れている出版業界に、手づくりで抗してい
る。見上げたものというか、これぞ道楽の真髄というか。おれの著は、このあ
と現代日本料理シリーズとして、「ポテトサラダ」「サバ味噌煮」を予定して
いる。エライ!


畠中理恵子(書店員・書肆アクセス)http://www.bekkoame.ne.jp/~much/
●青森文芸協会出版部(青森県五所川原市)
【出版物ベスト3】
1 『謎餡のボタモチ』遠山英志、1993
2 『女子高生が語る不思議な話』久保孝夫、1997
3 『〈新版〉青森なぞなぞ集』佐々木達司編、2006(初版1971)
【エライ理由】
 個人的に、地方出版物のイメージにぴったりな本を出す版元。地方といって
もそれぞれ全く違うユニークな文化、言葉、伝統をもっています。地味ながら、
地域にこだわり、口承伝承、採集という分野を大切にし、決して古びてない現
代にも通じる内容の出版物を発行されている、この出版社に惹かれます。例え
ば、『謎餡の〜』は「ボタモチ」の名の変遷から始まり、塩餡から砂糖餡に変
わる過程などを紹介。遠山氏には鰻、テンプラ、キビダンゴなどの食べ物関係
著書が多いのも何だかうれしいです。
『女子高生〜』は札幌の女子高機関誌に掲載された題材から、1200話の現代民
話を取り上げます。青森独特のことばの遊び、ことばを生む風土を感じさせる
『青森なぞなぞ集』。この滋味あふれる出版物は、地方出版物ならでは。なか
なかたくさんの刊行物は望めませんが出るといつも裏切らない。装丁もやっぱ
り地味でいいです!


貴島公(説明業)http://homepage1.nifty.com/hebon/fhp/
●書肆侃侃房(しょしかんかんぼう)http://www.kankanbou.com/kankan/
【出版物ベスト3】
1 高倉美恵『書店員タカクラの、本と本屋の日々。…ときどき育児』
2 西日本新聞社文化部編『九州歌謡地図 愛しのご当地ソング』
3 木脇啓四郎、二木直喜『復刻版 麑海魚譜(げいかいぎょふ)』
【エライ理由】
 10年前に転勤で福岡に居た頃、よく通った本屋さんがあり、どうせなら地元
紙をとたまたま購読していた新聞に、そこの店長さんが連載していたコラムも
愛読していました。紹介記事を読んで、ひょっとしてこれは、あのときのあの
ひと、あのコラムと合点した途端、よみがえったり、こみあがったりするもの
が。版元のことは、この本で初めて知ったのですが、はさみこまれた出版案内
を眺めていて、読みたくなった本、多数。ミニコミや小さなコラムをていねい
にまとめた本があるのが印象的。柴山俊之評伝『菊の花道』、インタビュー集
『博多とロック』などの音楽本も気になってます。


松本八郎(老年ニート)
【出版活動ベスト2】
1 『銅鑼』(銅鑼の会編集・校倉書房発行)
2 『煉瓦』(久鬼高治発行)
【エライ理由】
 このうちの一つは、「版元がエライ」のか「編集人がエライ」のかよく判ら
ないものの、消えたと思っていた雑誌が未だしぶとく発行されていたという点
で、評価(?)。
 昭和34年に結城信一や保昌正夫らが創刊した『銅鑼』は、昭和50年代まで
は年に1、2号、定期的に発行されていたが、平成5年の53号で中断。廃刊か
と思っていたら9年に54号、16年に55号、そして今年(18年)56号が発行
された。――といっても、54号から56号までは、すべて創刊メンバーの追悼
を兼ねた発行である。
 これとよく似たケースで、昭和8年に高見順や渋川驍らが創刊した『日暦』
は、平成元年まで(戦時中は休刊していたものの)延べ56年間で84号発行さ
れた。しかし、創刊50周年の79号前後から終刊までは、毎号のように同人の
追悼特集号であった。
 それをしないで、今年、主宰者が存命中にいさぎよく終刊した雑誌が『煉瓦』
である。発行者・久鬼高治は今年92歳、体調を崩され継続不能というので、今
年11月、33号を終刊号として、『古本屋五十年』などの著者である青木正美さ
んら、同人の手で締めくくりが行われた。青木さん作成の「久鬼高治・文学年譜」
は必見。


南陀楼綾繁(ライター・編集者)
●ディスク・ユニオン http://diskunion.net/index.html
【出版物・出版活動ベスト2】
1 『赤塚不二夫のまんがNo.1 シングルズ・スペシャル・エディション』
2 『ライヴ・イン・ハトヤ』(CD)
【エライ理由】
 復刻出版というのは、労多くして、評価につながりにくい行為だ。原本をす
べて再現するのはボリュームからもコストからも難しく、かといって、あまり
圧縮しすぎると「削除した部分がヨカッタ」などと恨みを買う。その点、『赤
塚不二夫のまんがNo.1 シングルズ・スペシャル・エディション』は、全10
冊のキモの取り出し方がすごくウマイ。さらに、編集長の長谷邦夫とブレーン
だった奥成達の対談をはじめとする、現在の視点での解説・補足が、過不足な
く加えられていて、雑誌に付いていたソノシートの曲もCDにまとめられてい
る。同書のあとがきで、赤塚夫人から「次はこれを復刻しなさいよ」と云われ
た、『ライヴ・イン・ハトヤ』(赤塚不二夫らのグループによるパロディ・レ
コード)を、わずか3ヵ月後に、ホントに復刻してしまうところもスゴイ。

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■おわりに
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 総勢27人による「この版元がエライ!」、いかがでしたか? 
今回のダブリは、講談社、双葉社、みずのわ出版でした。業界最大手と、神
戸の極小出版社が肩を並べるあたり、いかにも、このメルマガらしい回答だと
思いました。

 以下、毎年同じコトを書いてますが、こんな企画は書くほうも編集するほう
も、好きでやってるだけでナンの見返りも期待しておりません。ただ、無反応
なのは淋しいので、このアンケートをこんな風に使ってみては、という処方箋
を最後に。
 【版元】の編集さんは、「こんなところで取り上げられました」と社内外へ
のアピール、次の企画推進への脅迫材料として使ってください。サイトへの
転載も歓迎。営業さんは、書店周りの際の「一口ばなし」にどうぞ。あんがい、
身近な書店員が読んでるかもしれないですよ(書いてる場合も?)。
 【書店】では、いっそ「この版元がエライ!」フェアをやりませんか? 
まったく私的な「版元贔屓」だけでフェアを構成するという……。冒険ですけ
ど、つられて買うヒトは出てきそう。
 【読者】の方々には、ココで出てきた版元にちょっとでも興味を覚えていた
だければ、そして、書店でこれらの版元の本を手にとっていただければ、こん
な冥利に尽きることはございません。なお、紹介した版元中、直販のみで一般
書店に置いていないものもありますので、サイトなどでご確認ください。
 このアンケートを利用されたい場合は、南陀楼綾繁(kawasusu@nifty.com)
まで一声掛けてください。筆者に許諾をとった上で、テキストを提供します。
それでは、最後に。登場した版元も、登場しなかった版元も、ガンバレ!

 2月中に発行するつもりでしたが、人生初入院などというものをしてしまっ
たため、1ヶ月遅れました。回答してくださった方には申し訳ないです。また、
回答いただいたにもかかわらず、紙面に載ってないという方がいらっしゃいま
したら、ご一報ください。
来年もやります……たぶん。                 (南)

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宮本常一 生誕100年 福岡フォーラム

5月27日(日) 13:00〜17:00
アクロス福岡 円形ホール

フォーラム概要
主催者あいさつ[ 代表世話人 長岡秀世 ]13:00〜13:10
ドキュメンタリー鑑賞[ "学問と情熱"シリーズから ]13:13〜14:00
基調講演[ "家郷の訓"と私 原ひろ子 氏 城西国際大学客員教授 お茶の水女子大学名誉教授 ]14:05〜15:20
パネルディスカッション[ コーディネーター 長岡秀世 ]15:35〜16:45

パネリスト
武野要子 氏 (福岡大学名誉教授)
鈴木勇次 氏 (長崎ウエスレヤン大学教授)
新山玄雄 氏(NPO周防大島郷土大学理事 山口県周防大島町議会議長)
佐田尾信作 氏 (中国新聞記者)
藤井吉朗 氏 「畑と食卓を結ぶネットワーク」
照井善明 氏 (NPO日本民家再生リサイクル協会理事一級建築士)

作品展示
宮本純子[ 宮本常一名言至言書画作品 ]
瀬崎正人[ 離島里山虹彩クレヨン画作品 ]
鈴木幸雄[ 茅葺き民家油彩作品 ]
| 宮本常一を語る会 | 2007/05/26 5:02 AM |
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