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[書評]のメルマガ vol.308
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■■ [書評]のメルマガ   2007.4.7発行

■          vol.308
■■  mailmagazine of book reviews [ 書かれていないもの 号]
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[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。イベント・展覧会が色々です。
★「大阪豆ごほん」次田史季(ちょうちょぼっこ) 
 →大阪のふたつの「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「食の本つまみぐい」遠藤哲夫
 →〈大衆食堂の詩人〉エンテツが料理文化史の重要本を紹介します。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。
★「楽しみと日々 古書展と書簡をめぐるあれやこれや」つばめ
 →やたらと本に詳しい謎の人物「つばめ」による書誌探求の余談です。

*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
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★4月15日は西荻と高円寺へ
 西荻窪の南口にある柳小路通り飲食街で、月に一回行われているイベント
「昼市」に、フリマ形式の古本市が参入します。名づけて「昼本市」。飲み食
いしつつ、古本を物色してください。

昼本市
4月15日(日)11:00〜16:00
参加店舗 元我堂、よるのひるね、音羽館、にわとり文庫、ハートランド、
すうさい堂、退屈男、バサラブックス

 そしてこの日は6時から、高円寺の〈コクテイル〉で「オヨちゃんとモクロ
ーくんの古本ジェットストリーム」が行われます。第4回となる今回は、ゲス
トにライターの岡崎武志さんをお迎えし、この日、南陀楼が40歳を迎えるコ
トや、2週間後に行なわれる「一箱古本市」や、岡崎さんの新刊『読書の腕前』
(光文社新書)の刊行など、いろんなことを記念してお送りします。お題は、
「箱」。一箱古本市の箱、単行本の函など、箱のアレコレについて。

オヨちゃんとモクローくんの古本ジェットストリームvol.4 
「箱」のハナシをしようじゃないか

4月15日(日曜日) 18:00〜
古本酒場コクテイル
高円寺北2-24-13
TEL 03-3310-8130
http://koenji-cocktail.com/
*予約優先

出演:南陀楼綾繁
山崎有邦
ゲスト:岡崎武志

 こうなったら、この日はいちにち中飲んだくれだあ!

★新日本文学会の肖像
 4月9日、みすず書房から、小沢信男『通り過ぎた人々』が刊行されます
(本体2400円)。「新日本文学会とはなんだったのか。軽妙なタッチでペーソ
ス豊かに描かれた追悼録から、戦後日本を代表する文学運動体の盛衰が浮かび
上がる。花田清輝に見いだされ、学生のころから新日本文学会の事務・編集に
携わり、2005年3月の解散時まで半世紀にわたって在籍した著者が、そこで
出会った人々の思い出を書き残しておきたいと綴った。」(オビより)
 小沢さんの前を通り過ぎていったのは、次の人たち。井上光晴/寺島珠雄/
向井孝/菅原克己/関根弘/古賀孝之/石田郁夫/菊池章一/内田栄一/小野
二郎/藤森司郎/久保田正文/畔柳二美/富士正晴/秋山清/藤田省三/庄幸
司郎/田所泉。
 一部を除けば、知られているとはいいがたいですが、いずれも重要な仕事を
残した人たちです。なにか、ピンと来るものがあったら、ぜひ本書を手に取っ
てください。

★京都大学総合博物館で「地図出版の四百年―京都・日本・世界―」
地図を刷り、地図を売る。そこには、分かりやすさと奇抜さ、そして手にと
ってもらうための仕掛けがあった。貴重な京都図・日本図・世界図を中心に、
四百年にわたる出版人の創意と工夫をとらえていく。
 また、展示と同時に、京都大学大学院文学研究科地理学教室・京都大学総合
博物館 編『地図出版の四百年―京都・日本・世界―』も刊行される。ナカニ
シヤ出版発行。定価 2,940円(税込)。
期間:2007年4月4日〜5月6日
場所:京都大学総合博物館 2階企画展示室
主催:京都大学総合博物館
http://www.museum.kyoto-u.ac.jp/japanese/event/exhibition070404.html

また、この期間の毎週土曜日に公開講座も開かれます。

4月 7日(土):「江戸時代の地図出版」
4月14日(土):「西洋における地図の出版と社会」
4月21日(土):「博物学と地図との関係」
4月28日(土):「世界・地域の認識と出版地図」
時間:午後1時30分〜午後4時
会場:京都大学総合博物館 2階セミナー室
定員:30名(応募者多数の場合は抽選)
受講料:6,200円

★〈ふぉっくす舎〉〈食堂 アンチへブリンガン〉共催
猿楽町食堂学校 1時限目
和田靜香バラエティ・トークショー
「病気と音楽と相撲のはなし…あと農業も!」

「日本一の病院マニア」は見た! 体当たり爆笑病院放浪記『ワガママな病人
vsつかえない医者』(文春文庫PLUS)の刊行を記念して、音楽評論家の
和田靜香さんのトークショーが開催されます。

4月22日(日)午後3時30分〜5時30分(開場 午後3時)
チャージ 1000円+1ドリンク以上オーダー
定員25名

会場  食堂 アンチヘブリンガン
千代田区猿楽町2-7-11ハマダビルヂング2階
(水道橋駅徒歩5分・神保町駅徒歩10分)
03-5280-6678
※トーク終了後、午後7時30分まで、店内で引き続き飲食できます

参加希望の方はメールでご予約ください。「トークショー参加希望」と件名に
記入のうえ、〈ふぉっくす舎〉 negitet@yahoo.co.jp まで。 
1.お名前 2.人数 3.お電話番号(念のため) を必ずご記載ください

★海文堂で、池澤夏樹さんの朗読会とトーク&サイン会
池澤夏樹さんの短編小説集『きみのためのバラ』が、4月下旬に新潮社から
出版されます。これを記念し、池澤さんをお招きいたしまして、この新刊に収
められている作品を池澤さんご自身に朗読していただきます。さらに、サイン
会もおこないます。

日時:4月29日(日)午後2時〜4時
   午後2時〜3時:朗読会 & トーク
   午後3時〜4時:サイン会

会場:海文堂書店 2F<Sea Space>
兵庫県神戸市中央区元町通3丁目5番10号
電話:078−331-6501
http://www.kaibundo.co.jp/

★池袋モンパルナスの作家たち
「池袋モンパルナス」の代表作家として戦後高く評価された長谷川利行の「支那
之白服」、幻想的な古代モチーフを題材に独自の世界を作った難波田龍起の「ヴ
ィナスと少年」「ニンフの踊り」、板橋に暮らし、常に芸術家グループの中心
にいた寺田政明の「灯の中の対話」、など、当館所蔵作品の中から選りすぐり
の約80点の戦前、戦中、戦後の様々なスタイルの油彩画を「独立美術協会」「新
人画会」などの発表の場となった美術団体や社会的背景との関連で紹介し、新た
な魅力を発見する新しい試みです。(サイトより)

板橋区立美術館
開催中〜5月6日 
http://www.city.itabashi.tokyo.jp/art/index.html

★パリのエスプリ 佐伯祐三と佐野繁次郎展
佐伯祐三と佐野繁次郎の青年時代のつきあいを調査しながら、両者に見られ
る文字の絵画的な表現が彼らの芸術作品にどのような意味を持っていたかを考
察。そして、日本近代洋画における文学や文字との親近性を垣間見ることによ
り、美術は美術、文学は文学と区別するのではなく、総合的な視野にたって芸
術を生み出し、それらを享受しようとしていることを再確認し、さらに、昭和
の絵画において、絵画作品のなかの文字の視覚効果について熟考できれば幸い
です。(プレスシートより抜粋)

神奈川県立近代美術館葉山館
開催中〜5月20日 
http://www.moma.pref.kanagawa.jp/museum/index.html

★ 澁澤龍彦−幻想美術館
本展は雑誌「コドモノクニ」などに熱中した「昭和の少年」としての顔に始
まります。文学の世界では、マルキ・ド・サドやユイスマンスの翻訳者・紹介
者として脚光を浴びますが、澁澤は一方で既存の美術史の枠にとらわれること
なく、多くの美術家たちを紹介しました。マニエリスムの時代からシュルレア
リスム、近世から同時代の日本の美術家まで、澁澤が紹介した美術家の作品を
展示し、その嗜好や視点を探ります。また、1960年代は三島由紀夫や土方巽、
唐十郎など、文学や演劇、美術の先鋭たちがジャンルを超えて緊密に結びつく
時代でした。澁澤の周囲には、引き寄せられるかのように芸術家たちが集まり、
一種のサロンの様相を呈していたといわれています。そのような交友のなかで、
澁澤龍彦が時代をどのようにリードしてきたかを検証し、その美的視野の全体
像を提示しようとする展覧会です。(サイトより)

埼玉県立近代美術館
開催中〜5月20日 
http://www.momas.jp/

★澁澤龍彦の驚異の部屋
澁澤龍彦の膨大な美意識の世界を年代的かつ百科事典的にたどるのではなく、
現在の優れた作家たちの手による、澁澤さんが偏愛した事物やオブジェ観念を
形象化・具体化したオブジェの展示を企画しております。
会場には、新旧の作品を含めた多様なオブジェ作品はもとより、岩石・貝殻・
骨の標本・鏡・書物・写真などの自然物や人工物などによる夢の宇宙誌的な作
品が展示されます。(サイトより)

【出品作家】
池田龍雄、大月雄二郎、加納光於、桑原弘明、合田佐和子、アンティエ・グメ
ルス、鈴木真、建石修志、谷川晃一、中西夏之、四谷シモン

【レクチャー】
巌谷國士「澁澤龍彦の驚異の部屋」  
4月21日(土)午後6時〜 1500円(ワンドリンク付)

期間;2007年4月7日(土)−5月20日(日)
場所:ギャラリーTOM
〒214-0011 東京都渋谷区松涛2-11-1
電話:03- 3467-8102 
http://www.gallerytom.co.jp/

休館日: 毎週月曜日
開館時間: 10:30-17:30
入館料: 一般600円/小中学生200円/視覚障害者及び付添者300円

★モダン日本の里帰り 大正シック ホノルル美術館所蔵品より
本展の出品作品は、世界的に高い評価を受けているホノルル美術館の日本美
術コレクションから、人間性豊かでロマンティックな香りを漂わせた大正時代
から昭和戦前期にかけての作品を、同館の学芸員が選んだものです。展覧会は
「絵画と版画」「装飾美術」「きもの」「大正時代の流行歌の本」の4 つのテ
ーマで構成され、モガ(モダンガール)などの時代風俗を描いた日本画、アー
ル・デコの影響を受けた、ユニークで斬新な柄の着物や工芸品など約80点が、
新たな視点でとらえられています。(サイトより)

東京都庭園美術館
4月14日〜7月1日 
http://www.teien-art-museum.ne.jp/index.html

*情報提供 藤田加奈子さん

なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

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■大阪豆ごほん  次田史季(ちょうちょぼっこ)
(35)「ねこねこいち」を終えて
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「にのにのいち」と「ねこねこいち」も盛況のうちに(はじめだけ?)おわり、
ひと段落。4月は、いつものちょうちょぼっこをしています。

今回、猫特集をしてみて世の中には猫好きが多いことを再確認しました。そ
して猫本もたくさんあることも。でも、前回、郷田さんが書いていたように、
私は猫がとても好き!という感じではありません。会社では生命保険の人に毎
年もらうイヌネコ卓上カレンダーを使っていて、毎月違うネコちゃんがでてく
るとかわいいと思ったりはしますが、自分でネコ写真集を買ったことはありま
せん。そんななので、「ねこねこいち」のために本をさがしているときも、ネ
コ好きな人がどういうものを求めているのかがよくわからず、選ぶのが難しか
ったです。

それでも道端でネコを見かけると、見に行きたくなります。でもそれは、ネ
コが好きだからというよりも、ネコの動きを観察したいという興味からだと思
われます。だから、ネコがいそうな裏道を通るのは好きです。何回かネコをみ
かける場所があって、いつもそこを通るときは注意してみながら通るのですが、
ある日、いた!と思ったら、錆びた缶のようなものでした。暗かったので、ネ
コとよく似た形をしているものと間違えたのでした。ネコ好きの福島さんは、
ネコを見つけるとすごい早さで、捕まえるような勢いで近付いていきますが、
私は少し離れたところから見ています。もう見つけた時点でだいぶん満足なの
です。すぐに逃げてしまったら、少し残念ですが、またその辺で会えるかもし
れないと思うとそれはそれでよいのです。ちょっとサービス精神旺盛なすぐに
逃げないネコに出会ったときには、少し観察して、カメラにおさめたりします。
でも触ることはありません。基本的にはこわいのです。

浅生ハルミンさんの『私は猫ストーカー』はそんな熱烈なネコ好きではない
けれど、何か気になるという私には、とても興味深い内容でした。人のストー
カーは犯罪ですが、猫なら大丈夫。何かのレビューにドライな猫好きにおすす
めと書かれていて、なるほどと思いました。ネコ好きでなくても読みたくなる
猫本もたくさんあることを発見した「ねこねこいち」でした。「ねこねこいち」
を恒例のイベントにしようと計画中。また来年お楽しみにー。

〈つぎた・ふみき〉
平成生まれの新入社員が入ってきて驚きましたが、バイトで書店員をしていた
マンガ好きだったのでちょっと安心しました。いつちょうちょぼっこのことを
話そうかと様子見中。「ロバロバカフェ 春の古本市(4月28日〜5月9日)」
にちょうちょぼっこも参加します。是非、お立ち寄り下さい。

貸本喫茶ちょうちょぼっこ
〒550-0014 大阪市西区北堀江1-14-21 第一北堀江ビル402
http://www.geocities.co.jp/chochobocko/
*営業日は、第1〜3週末です。 金18:00-21:00、土日 13:00-21:00

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■食の本つまみぐい  遠藤哲夫
(23)科学化される調理
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杉田浩一『「コツ」の科学 調理の疑問に答える』柴田書店、1971年

「ビールをつぐとき、コップを傾けるのはなぜ?」「海の魚は皮から焼き、川
魚は身から焼くとされているのはなぜ?」「火の上でサンマやウナギを焼くと
き、横からあおぐのはなぜ?」「すきやきの肉としらたきは、ふれ合わないよ
うにするのがよいというのはなぜ?」…というぐあいに、「この本は調理にあ
らわれるいろいろな「こつ」を、科学の目でながめるのを目的としています」
(著者のことば)

おれが持っているのは1977年の45刷だが、昨年の11月15日に『新装版
『こつ』の科学』として発行された。柴田書店食の殿堂メールマガジン 2006
年12月01日は、そのことを「初版から30年、累計25万部の「こつ」の科学
が、写真、図版を全面的に新しくし、新装版として登場!」と伝えている。
「昭和43年〜44年にかけて、二年間にわたり『月刊専門料理』に掲載された
記事に加え、現場のベテラン調理師から寄せられた疑問、調理学の講義におい
て取り上げられている問題を多数追加し、なんと287項目を収録。普遍的な
調理の仕組みを知ることで、新しい料理の世界が広がります」。料理のプロ、
専門家のニーズを背景に生まれた本だ。

1970年前後から外食産業は「産業」といわれるようになる。そのころ誕生し
成長するファミリーレストランが「産業化」の急先鋒を担った。しかし、その
前から外食は、かなりの市場規模で存在していた。なのに「なぜ」いまさら「産
業」だったのか。簡単に言ってしまえば、飲食業が、銀行の貸付の有力な対象
として、また投資の対象として、「一人前」とみられる事業分野に位置づいた
ということなのだ。別の見方をすれば、生業的な経営から企業的な経営を志向
するものが生き残る競争環境になった。さらに別の言い方をすれば、人びとの
胃袋は生活を超えて市場に引きずり出され、投資の対象になったということで
もある。

というわけで、調理は見て覚えるもの、「なぜ」なんて考えないで先輩のや
るとおりにやればよいといった、「身体で覚えろ式」の体験訓練主義的な悠長
なことでは、資本回転率を上げることで利益を大きくする法則の投資の期待に
応えられないことになった。「調理学」といえば聞こえはよいが、大方のもて
はやされる学問がそうであるように、より短期の人材育成を目的とした「マニ
ュアル化」が進む。

でもまだ、この初版の時期は、「こつ」や「秘伝」を神秘的な権威として守
ろうという保守主義は濃厚だった。そのためか、「著者のことば」では、「「な
ぜ?」を知っても調理のウデが急に上がることはないかもしれません。ところ
が逆に、ウデをもつ人が「なぜ?」を考えることは、調理という仕事の進歩と
向上に、はかり知れない大きな力になると思います」と、ウデのある職人に気
をつかっている様子をうかがえる。

しかし、そのころから、職人が神秘主義的に守ってきた調理法は、どんどん
身も蓋もないほど丸裸にされる。調理の内容は科学され、調理作業もビデオカ
メラで詳細に分析され、マニュアル化される。資本と急成長する市場のニーズ
に応える体制ができあがっていく。さらに食味センサーなるものまで生まれ、
どんどん計量化され、味覚づくりの現場は、いまや化学実験室のような有様に
なっている。それが累計25万部の背景といえるだろう。

おもしろいのは、そのように科学的に丸裸にされた味覚を、一方ではグルメ
たちが「こつ」だの「秘伝」だの「まぼろし」だのと神秘主義的にありがたが
ることだ。ともあれ、依然としてインチキくさい根拠のない知ったかぶりが横
行するなかで、ここに書かれた「なぜ?」を知っておくことは、日々の料理に
役立つだけではなく、料理の構造への理解を深めながらウンチクを楽しむのに
よい。

〈えんどう・てつお〉フリーライター。忙しい。アル中一直線。

「ザ大衆食」 
http://homepage2.nifty.com/entetsu/

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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(47)ホッピーマラソン部数決定!
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 2006年6月。『酒とつまみ』編集部は、創刊以来初の単行本となる『中央線
で行くホッピーマラソン』の追い込みにかかっていた。というのは、ウソで、
編集WクンもデザインのIさんも、ただひたすら、私の原稿を待っていた。

「5月の連休で一気に書くからよ。後はよろしく頼みますわ」
 と強気な発言をしていたのも私だ。しかもこの連休、実は2005年のゴールデ
ンウイークのことなのであった。つまり、書くよ書くよ、初の単行本をついに
出すのよと掛け声だけ盛んで実はほとんど何も進まない月日が、丸1年に及ん
でいた。

 さすがに私も焦っていた。単行本用のボーナストラックである京王線バージ
ョンの、半分に満たないところまでは、05年の10月初めまでに書いていたの
だが、食っていくための仕事に追われ、追われて疲れて深酒をし、その後、年
を越えてからは8号の製作作業でもドツボにはまり、息も絶え絶えなのだった。

 しかし、もういい加減に書かないと、本は出ないなあ、というところまで追
い込まれていた。私にはいつか書くという気持が残ったとしても、1年にわた
って原稿を待ってくれている仲間の気持ちが、この機を逃しては完全に離れて
しまうという危機感もあった。なんとしても書ききらなくてはいけない。

 で、集中して書いたら、ああ、書けた。06年6月半ばには最後まで書き切り、
校正紙をWクンが丹念に読んでくれ、修正箇所へのアドバイスももらった。本
編の最後、作家の重松清さんが登場する箇所になると、とたんに文章のトーン
が弱くなることを指摘して、「ヒヨルな」と忠告してくれた。こちらの性格を
見抜いている。怖い編集者だ。
 けれど、指摘は至極もっともな話でもあったので、その修正も月末には終え、
入稿は7月6日。大日本印刷のMさんが、原稿をとりに来てくれた。

 本編256ページ。カバーも帯もなし。掲載箇所の原稿確認をお願いした重松
清さんからは、帯に使う推薦コメントを頂戴していたが、予算の関係で、帯を
つけることができなかった。
 それでも、ようやく、入稿した。後は最終の校了作業をして、本の完成を待
つばかりである。協議の結果、定価は本体価格1400円。部数を、なんと3000部
と決めた。私は、頭がクラクラした。

 原稿をMさんに渡した後、Mさんをそのままお誘いし、デザインのIさん、
カメラのSさん、編集Wクン、私の5人で、「浅草橋西口やきとん」で入稿を
祝った。普段はこんなに頼まないくらいのつまみを注文し、通称ボールと言わ
れる、レモンハイボールを次々にお代わりして、私はまた、頭がクラクラした。
このメンバーが集まり、Mさんが持参した束見本を手に飲んだ晩から、すでに
2ヶ月が経っていた。

 どんな本になるのだろう。私にとって、ピンで書く初めての単行本が、どの
ような顔をしているのか。不安でもあり、楽しみでもあった。みんなに感謝し
たい気持ちが湧き上がって、私はボールをまた、お代わりした。酒が、止まら
なかった。

〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集発行人
自宅から遠くない場所でシコマタ飲んで意識も不確かになった明け方、どうや
らタクシーに乗せてもらって帰宅。下りるとき、どこか遠くから帰ってきたよ
うな気がしていたがメーターは1000円台。「運転手さん、俺、どこから乗って
きた?」「吉祥寺ですよ」「へ?」疲れているであろう運転手さんに爆笑され
たのは生まれて初めてのことでした。
http://www.saketsuma.com

ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(56)作品社の巻  “朽ちたセメント製長屋”風ビル
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“1979年(昭和54年)1月創立。中上健次「水の女」、山田太一「沿線地図」
を処女出版、翌年、「精読者のための文芸誌」を標榜し、純文芸雑誌「作品」
を刊行するも通刊7号にて休刊。軽薄知小の時代に抗い、硬派であるが人文・
日本文学・海外文学・芸術・随筆など幅広いジャンルで独創的出版物を刊行す
るように心掛けています”(HPの会社案内より)。

『日本残酷写真史』『体位の文化史』『ヴァギナの文化史』『オルガスムの歴
史』『お尻とその穴の文化史』『ペニスの文化史』『マスターベーションの歴
史』『おなら大全』等、確かに“独創的出版物”の乱れ撃ちだ。その作品社は
千代田区飯田橋2ー7ー4(我が漫画屋の目と鼻の先)。

 目白通りに面したオオムラビルの3階。向かって右側が竹書房、左が明治生
命の各ノッポビル。わずか4階建てのオオムラビルは目立つ。両側が、白いタ
イルで覆われた明るい建物のせいもあるが、灰色のすすけた同ビルは、“朽ちた
セメント製長屋”風イメージ。大村さんが1階と4階に居住。大企業所有ビ
ルのようには、手入れが行き届かないのかも。加えてすぐ前に歩道橋。高速道
路や歩道橋から見下されるビルは、どこも3割方安っぽい(日当たりが悪いせ
いも?)。

 1階にラーメン「和三房」。7〜8年前にオープンした際1度だけ行ったが、
少量で値段が高い割に、味は並だったので以降はプッツリ(なぜかレジ後方に
62年度日活映画、『望郷の海』のポスターが。主演の小林旭より名悪役、深江
章喜が大きくレイアウト。さっき見たら既になかった)。店の構えがこれまた
陰気で、オオムラビルにピッタシ。

 陰気と言えば、明治生命飯田橋ビル、麹町飯田橋通郵便局、そして1本道を
渡ったトコにあった個人経営の喫茶店、「エリカ」(1月末に閉店。今は「串
八珍」が)には、作品社の出版物も2〜3(エロ系でないモノ)。同社社員も
出入りしてたのだろう。誰からも振り向かれず、手アカまみれのコミックスの
ブックエンド役を果たしてたが、作品社の暗いたたずまいとピッタリで時々苦
笑した。

 同社は河出書房新社の系列版元と聞いたが、今も? 福田和也が『週刊新潮』
の連載で、河出は執筆者を他社に教えず、昔から囲い込む社是がと書いていた。
漫画界で言えば、集英社みたいなトコらしい。ひょっとすると作品社の陰気さ
は、ビル自体のイメージからだけではなく、閉鎖的な内部から発せられている
のかも。

『日本残酷〜』(5刷)『体位の〜』(9刷)『ヴァギナの〜』(16刷)『オルガス
ムの〜』(2刷)『お尻とその穴〜』(10刷)『ペニスの〜』(8刷)『マスターベ
ーションの〜』(5刷)『おなら〜』(4刷)。“精読者”はやはり心強い。先程も
「珈琲美学」帰りに歩道橋を渡った。夕陽を受けたオオムラビルは、どっか酷
使しすぎたAV女優の、ゆるんだアナルのように見えなくもなかった。 

〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)。『嫌われ者の記』をベースにし
た新刊『出版業界最底辺日記 エロ漫画編集者「嫌われ者の記」』(ちくま文
庫)が好評発売中。
なお、この連載に関しての批判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(た
だし、謝るとは限りません)。
mangaya@air.linkclub.or.jp
http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/

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■楽しみと日々 古書展と書簡をめぐるあれやこれや  つばめ
第15回 逃げ去るつばめ その1
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 南陀楼綾繁さんがブログ(http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/)で掲載し
ている「路上派少年遊書日記――1981年・出雲」を読んでいると、すこし時
代は遅れるが1980年代半ばのころを思い出す。今から振り返れば、『ショー
ト・ショート・ランド』の流れの果てだろう。地元ラジオ局の番組で、三題噺
の掌編を募集するコーナーがあった。わたしは、県庁所在地からすこし離れた
土地の中坊だった。ゆきの通学時間、チャリンコに乗りながら構想を練り、授
業のあいだに書き上げ、かえりに投函することを何度か繰り返した。息をひそ
めて、耳を澄ます。巣穴のなかの甘い戦慄。

ときには続けて採用されることもあったが、賞品がおくられてくるのは、最
後に読み上げられたときだけ。雪が降るクリスマスイブに、はじめて掉尾を飾
って、白い米菓の詰め合わせが届いた。いまでも亀田製菓のせんべいをかじる
と、あのころの空気の匂いまでがあざやかによみがえる。と書くと、途中から、
嘘が混じっているような気がする。花のない冬だし、鼻も詰まっていたから、
香りは分からないだろう。刺すような寒さを感じていただけかもしれない。
 
 河上進少年は、当時の日記を大切に守ってきたというのに、わたしは、もと
もと日記をつけられない怠惰な性分であるし、ノートに記した草稿のたぐいは、
自分の才能に見切りをつけた高校生のころ、きれいさっぱり燃やしてしまった。
吉田小五郎が、柏崎に帰る直前に、「日記を書く男」だの「偽物を作る男」の
心理を書いた原稿など、誰にも見せないままみんな燃やしてしまったという話
(『柏崎だより』所収の「焼却爐」「本を焼く」参照)が心に浮かぶ。

 それから二十年がたち、日記を書く方々は、着実に仕事を積み重ねている。
これに対し、わたしは、時折思い出したように空砲を放つのみである。今回の
連載も、まだ読み通していない『失われた時を求めて』を、この機会に読み進
めて、集英社文庫版(鈴木道彦訳)の刊行ペースにあわせて、ちくま文庫版
(井上究一郎訳)とひそかに読み比べながら、筆を進めようともくろんでいた。
たとえば、こんなふうに、訳文を対照しながら。

【集英社文庫版第4巻p157[抄訳版第1巻p377]、「若いツバメ」=「ジゴロ」
等のルビあり】

サン=ルーが、たまたま親戚[親類]ないしは親しい仲間のなかの二、三
の「若いツバメ」の名前を口にすると、シャルリュス氏は日頃の冷淡さと
は打って変わったほとんど獰猛とも言える表情を浮かべて、「あいつらは嘴
の黄色いろくでなしだ」と言い放った。

【ちくま文庫版第3巻p125、ルビはなし】

サン=ルーの縁者とか親友とかのなかにあって二、三の「ジゴロ」に類す
る男について、シャルリュス氏は、その名を偶然サン=ルーが挙げたとき、
いつもの冷淡さとはきわだってちがうほとんど獰猛なともいえる表情をし
ながら、こういった、「とんだ下司野郎だ。」

 それなのに、横道にそれているあいだに、そして、まだ4巻までしか読み終
えていないというのに、集英社文庫版は完結に至り、時を逸してしまった。と
んだ「のら烏」だ。嘴の黄色いツバメだ。

 実をいうと、文章を書くよりも、事実を調べたり、趣向をあれこれ考えるほ
うが格段に楽しい。だからというわけでもないだろうが、その日に起こったこ
とをその日のうちに書くことは、苦手である。もっとも、熟成に時間をかけて、
いざ文章にしてみても、頭に描いていたほどではないし、「趣向倒れ」に陥る
こともしばしばである。

 たとえば、書こうかなと思って、書かなかった話のメモ。
 矢島正見編著『戦後日本女装・同性愛研究』(中央大学出版部、本体7200円、
中央大学社会科学研究所研究叢書16)を村山書店で確か4000円程度で購入し
た。乱歩の随筆に「ノガミの男娼」が出てくるが、高校生のころは、その正体
がよく分からなかった。いまでもよく分かったとはいえないが、この本から手
がかりを得たような気がする。また、三橋順子の論述(「性転換」の社会史)
を読んだおかげで、増村好造監督『セックス・チェック 第二の性』や『エド・
ウッド』(クリスチーヌ・ジョルゲンセンに便乗しようとしたはずの映画Glen
or Glendaが劇中に登場)を興味深く観ることができた。

同じグループの仕事として『異性装・同性愛書誌目録』(中央大学社会科学
研究所調査研究資料集第3号)の存在を知り、発行所に請求して、入手した。
この文献目録は、『探偵小説四十年』に出てくるので乱歩の読者には周知の「夜
の男の生態」という座談会(旬刊ニュース昭和24.2.10号、現物未見)を採録し
ていない。などなどと、連想や探索を広げてゆくと、収拾がつかなくなる。し
かし、筆が止まった本当の理由は、古書現世が『戦後日本女装・同性愛研究』を
3500円で売っていて、ショックを受けたからだったりする。

 拙稿も『スピン』で林哲夫さんが「淀野隆三日記を読む」の連載を始めるき
っかけになったりして、それなりの役割を果たしたと自負している。材料が尽
きたというわけではないけれど、続きを書くには、まだ機が熟していないので
あろう。いずれは舞い戻るかもしれないけれども、ひとまず筆を擱こう。季節
柄、燕は巣作りに専念する必要があるから。たとえば僕が一羽の燕であるとす
れば(小山清「落穂拾い」)

 と書きかけたまま、『スピン』1号所収の北村知之「エエジャナイカ1」の
最後の3行をみて、慄然とする。

 世の中に書かれていないものは何もない。

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