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[書評]のメルマガ vol.349
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■■ [書評]のメルマガ           2008.2.19発行

■                     vol.349
■■  mailmagazine of book reviews  [ また会いましょう 号]
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[CONTENTS]------------------------------------------------------
★「入谷コピー文庫 しみじみ通信」堀内恭
 →限定15部でオモシロ小冊子をつくる極小版元の活動報告です。
★「真駒内石山堂通信」杉村悦郎
 →山口瞳熱愛者と永倉新八のひ孫。二人がお伝えする札幌の本事情。
★「今月ハマったアート本」平林享子
 →ついに最終回。「目の前がずっとピンク色に染まる本」とは何か?
★「渡辺洋が選ぶこの一冊」
 →放映中のNHKドラマ『鞍馬天狗』の原作との齟齬を指摘します。
★「もっと知りたい異文化の本」内澤旬子
★「全著快読 梅崎春生を読む」扉野良人
 →休載です。
★リレー連載「書肆アクセス閉店から見えてくること」
 →寄稿者募集中!

*本文中の価格は、表示のあるもの以外は、税抜き(本体)価格です。

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■入谷コピー文庫 しみじみ通信  堀内恭
(13)待つわ
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 年末の紅白歌合戦を毎年観ている友達は、周囲にはあまりいないのですが、
僕は必ず観る方です。今回も視聴率はよくなかったようですが、昨年の紅白は
近年になくユニークで面白かったと思います。

 やはり白組司会の笑福亭鶴瓶さんの存在が大きかったのではないでしょうか。
紅白の本来伝えねばならない「歌力」をさりげなく演出し、フォローしていた
ように思います。人気のなくなった紅白を一度で盛り返すのは難しいと思いま
すので、ぜひ今年も司会は鶴瓶さんでお願いしたいものです。

 歌手の中では、中村中とあみんが印象的でした。友人のお兄さんがいいよと
ススメてくれていた話題の歌手・中村中は初めて聴いたのですが、背筋がぞっ
としました。一度でファンになりました。

 学生時代に耳がくさるほど街中でかかっていた、あみんの「待つわ」。その
歌が時を超えて、人生の皺を重ねた二人が歌うと、何とも味わい深いものでした。

「待つわ」というタイトルも、情報社会で待つことの少なくなった人の心にこ
そ響きます。その「待つわ」ですが、この「入谷コピー文庫」でも創刊当時か
ら、実は3年間ずーっと待っている「待つわ」原稿があるのです。
 そのタイトルだけでも紹介しましょう。

(1)伊藤裕子さん『裸体と衣装 やくざ映画に見るエロス』
(2)濱里史明さん『ニッポン・レトロ映画館巡礼記』(仮題)
(3)阿部清司さん『東京のお菓子屋さん』

 このうち2つは表紙デザインもずいぶん前に出来あがっています。いずれも、
かなり面白い読み物になるはずです。

 執筆者のみなさんには、本業で忙しい中での執筆はとても大変ですが、どう
にか一気呵成の勢いで仕上げてほしいと願っています。

 よく「役者と編集者は、待つのが仕事だ」と言われますが、2008年の今年こ
そ刊行できることを「積極的に待つわ」の心境です。

〈ほりうち・やすし〉1957年生まれ。フリー編集者。
『下町酒場巡礼』のトリオ、大川渉・平岡海人・宮前栄の三氏の『酒日記』を
2〜3月に刊行予定しています。

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■真駒内石山堂通信〔番頭篇〕 杉村悦郎
(24)哀しや、加藤眠柳
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真駒内石山堂通信の前の前の回で「なんだか場違いな内容かな、と思いなが
ら、とにかく書きたい」と断りを入れて、『新撰組顚末記』という本をまとめ
た加藤眠柳という人物について、なんでもいいから教えてほしい、と書いた。
メールアドレスまで載せてね。私は大いに期待してたんだけどさ。反応ゼロ。
で、もう誰も興味を持たなくたっていいや、とちょっと偏屈になって、その後
の眠柳調査を書きとめておきたい。

加藤眠柳は、明治2年生まれ。12歳のとき上京、築地中学校に入学した。卒
業後、いくつかの新聞を転々としたが、このあたりの調査はこれから。明治30
年には東京朝日新聞に在籍、軟派記者として鳴らしていた。同僚には山本笑月
(中公文庫『明治世相百話』の)、小説記者には饗庭篁村、村上浪六(の孫が
山口二矢と『テロルの決算』で知ったが)、半井桃水(樋口一葉が思いを寄せ
た、というだけでも文壇史に名を残すべきだし、意外と多くの新聞小説を書い
ているんだよね)等がいた。

このころ、大阪朝日主筆の池辺三山が、沈滞気味の東京朝日の紙面を立て直
すためにやって来る。『朝日新聞社史』に興味深い記述がある。池辺三山が着
手した紙面改革により戯作調の記事はしだいに影をひそめていく。つまり、一
人の著名記者があらゆる分野で才筆をふるう時代は終わり、それぞれの分野で
専門的な知識が求められるようになった。軟派記者は御役御免になり、新聞に
おける最初の本格的な文芸欄の誕生も誕生する。三山はこの流れのなかで二葉
亭四迷、夏目漱石を小説記者として迎えることになる。これは私の推測なのだ
が、この三山の改革に押し出されるように、眠柳は東京朝日を退職することに
なったのでは。北辺の小樽に来たのも、軟派記者時代の終焉だったのではないか。

 さて、眠柳がどんな本を出したか? 4冊だけはわかった。人情小説『水彩
色』(隆文館)をはじめ、東京朝日新聞評で「穏健なる言文一致もて清らかに
訳されたり」という『英国士道物語』、「欧米に於て最も欽仰すべき名媛」の
伝記をまとめた『女子立志編』、堺利彦編「家庭夜話」(全3冊)のうちゴー
ルド・スミス(知らないんだけど)の著作を翻訳した『質素倹約の話』(いず
れも内外出版協会刊の啓蒙書)。4冊は小樽新聞に入社以前に刊行されている。
真駒内石山堂店主は、梅びしおのもりそばを頬ばりながら、お気楽に言ったも
のだ。4冊の著作がわかっただけでも、加藤眠柳に関する第一人者だぜぃ、ウ
フフフ。

 こんど初めて知ったのだけど、国会図書館の「近代デジタルライブラリー」
はすごい。眠柳本のうち3冊は、寒気団に覆われた札幌のわが家のインターネ
ットで検索したもの。表紙から全ページのマイクロフィッシュがプリントでき
るなんて! デジタル化は順次進めるらしいが、寒気団に覆われた地方都市の
住人としては、大いに期待したい。

 加藤眠柳は、現在準備中の本(新八本なんだけどさ)の序章における最重要
参考人なので、私はもうちょっとこの忘れ去られた(ような)軟派記者を追跡
したいと考えている。それにしても、いろんな新聞社の軟派記者の水脈って、
面白そうじゃない。

〈すぎむら・えつろう〉真駒内石山堂通信編集長
これにて私の連載担当は終了となりました。読者がいたとすれば、深く感謝し
ます。札幌の本事情や真駒内石山堂の悪戦苦闘がテーマだったはずなのに、好
き勝手なことばかり書いて、アヤシゲさん、すいません。札幌に来たら、バカ
ウマ「かま吉」(相変わらず営業日不定ですが)呑みましょう。

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■今月ハマったアート本  平林享子
(27)最終回 菩薩行と慈悲についてしみじみ考えた
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円奴『幸せの形 ばいぶる』 2008年1月1日 発行:杉並北尾堂 
発売:ポット出版 本体2800円

この本は、イラストレーター、ダンサー、ドラァグクイーンなどなど、多彩
な活動をする円奴(まるやっこ)のコミックです。円奴は、さまざまなキャラ
クターを演じ、たくさんの名前をもち、まさに観音菩薩のように、変化(へん
げ)に変化を重ねていっているお方。

ピンクのクロス装に、銀色の箔押しという、なんともリッチでゴージャスな
ルックス! なかを開くと、これまたオールカラーのキラキラ・ワールド! 
ジャン・コクトー、アメコミ、日本のキャラクター・カルチャーなど、いろん
なエッセンスがミックスされているように感じます。

ストーリーも深遠。人魚とイルカの異類婚があり、その子供が兄妹で近親婚
……といった神話的なモチーフが出てきます。善と悪、男と女、常識と非常識、
美と醜などが二項対立する世界ではなく、陰と陽が溶け合って動いている世界。

読み終わって本を閉じても、目の前がずっとピンク色に染まっています。こ
の世界は、悲しいこと、つらいこともいっぱいあるけど、愛すべきもの、可愛
いものも、いっぱいある。諸行無常、諸法無我、だからこそ慈悲でもってラブ
&ピース。カタチはどうであれ、カタチがなくても、姿カタチが見えなくても、
愛するもの、ラブリーなものたちのことを、大切にしよう。そんなことをあら
ためて考えました。

 さて、突然ですが、このたび、とある会社に就職した関係で、今号をもちま
して、この連載を終了させていただくことになりました。2001年から約7年間、
おつきあいくださってありがとうございました。みなさまには、またいつかど
こかで、お目にかかれますよう!

〈ひらばやし・きょうこ〉
編集者&ライター。2008年2月より某社出版部所属。クローバー・ブックス
http://www.cloverbooks.com/ の活動もマイペースで続けます。最近、編集し
た本は、太田光、田中裕二、辻惟雄著『爆笑問題のニッポンの教養 異形のモ
ノに美は宿る 日本美術史』(講談社、2月18日発行)。

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■渡辺洋が選ぶこの一冊
(28)愛がなくっちゃね、悲しいね
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大佛次郎著、縄田一男編『鞍馬天狗 時代小説英雄列伝』(中公文庫)

−−いやあ、NHKの「鞍馬天狗」にはまいりました。久しぶりに楽しみにで
きるドラマが始まると期待していたんですが。
−−小説のシリーズ第一作「鬼面の老女」ほかのドラマ化ですね。
−−ええ、2回観たのかな。で、何か、頭がくらくらするというか、混乱して
いる感じがして、原作を引っ張り出して読んだら、かなり強引に脚色されてい
るのが原因らしいとわかって観るのをやめてしまいました。
 ちなみに、私が引っ張り出したのは2002年刊の中公文庫で、品切れのよう
ですね。ついでに言うと、私が大佛作品を読むきっかけにもなった2000年の
「鶴見俊輔が選ぶ鞍馬天狗」シリーズ(小学館文庫)もほぼ品切れ。「鬼面の
老女」については、新刊としては文藝春秋のシリーズ「鞍馬天狗傑作選」で入
手できます。

−−話を戻して、その「混乱」とは?
−−主要登場人物は4人ですね。整理しておきましょう(カッコ内はドラマで
のキャスト。人物設定はひとまず原作から)

○倉田典膳/鞍馬天狗(野村萬斎) 謎の剣士。幕末の混乱のなか、立場は朝
廷寄りらしい。四十歳前くらい。
○小野宗房(野村萬斎) 貴族の息子。父の死後、叔父に財産も奪われ、父の
遺臣の手で育てられ、武術を仕込まれる。山育ちで世間知らず。二十五歳。
○小野宗行(村井国夫) ひそかに幕府側と通じる貴族。金に汚い。
○白菊(京野ことみ) 宗行の娘。父思い。

で、原作では、宗行が江戸とのやり取りに送った密使を見張っていた鞍馬天
狗が、宗房をそれと誤解して刀を交えるが、誤解が解け、二人は親交を結ぶ。
宗房の父の亡霊が出るという噂の真実を確かめるために、二人はあばら家で張
り込み、そこで宗行の密使たちを捕らえるが、その一人の鬼面の老女に主君の
名前を吐かせようとしたところ、老女は父思いの白菊が放った矢で死ぬ。二人
は白菊の父思いに感じ、彼女は逃がしてやる、という筋立てになっています。
−−何か、それほど面白くもなさそうな話ですね。
−−まあ、シリーズ第一作で、まだ作者もコンセプトが固まっていなかったん
でしょうね。後の「地獄太平記」とか、「新東京絵図」(維新後の世相を描い
た快作)のようには筆も伸びていません。それにこの話はもともと作者が翻訳
紹介していたイギリスの大衆小説の翻案で、中公文庫版にはネタ元の翻訳小説
も載っています。
−−大佛さんはもともと外務省勤務だったのが、無類の本好きで、震災を機に
通勤するのが嫌になって勤めを辞めてしまって、作家になったという方ですか
らね。それで、ドラマの方はどうなんですか。

−−基本的に一番問題だなと思うのは、鞍馬天狗と小野宗房を同一人物にして
しまったことじゃないかな。宗房は父の遺臣に鞍馬の天狗ほどに腕を磨くべく
鍛えられたという設定になっています。
 そのために、謎の剣士である鞍馬天狗は頭巾を脱いだ時は倉田典膳なんだけ
れども、その正体は実は小野宗房、という三重人格になっていて、これは脚色
のしすぎであると同時に、原作の記憶を抜きにしてオリジナルの物語と見ても
無理があります。だって宗房が倉田典膳に化ける必然性はまったくないんです
から、倉田典膳というキャラをなしにして、宗房が天狗に化けるだけというな
らまだしもですけど。
−−原作を忘れて、オリジナルのドラマとして観ても面白くない、と。
−−そう思いますね。ドラマとして初めからこわれている印象です。その他、
ドラマでは宗房の病死した父は宗行に暗殺された、としたり、鬼面の老女の主
君である宗行が頭巾の侍に切り殺される、としたり(主君が死んでしまったら、
その密使である鬼面の老女が出てくる必然性もなくなってしまう、ま、そのあ
たり観るのをやめてしまったんで、どうごまかしたのか分かりませんが)、そ
れで父の仇は鞍馬天狗ではと疑う白菊が天狗の居場所を倉田典膳に聞きに行く
とか(あの、白菊と宗房は従兄妹なんだけど、白菊は宗房と典膳の二重キャラ
をどう考えているのか、ああ、分からない)、ちょっと話しているだけで、ま
た混乱してきました。

−−NHKとしては、野村萬斎主演で、後は何でもありというスタンスでしょ
うか。
−−ただのヒーロー・ブランドという扱いで、大正から戦後にかけて書かれた
原作の主人公の、時代に流されない骨太の自由人という性格は初めから目に入
っていないんでしょうね。一昨年の「ゲド戦記」の映画化もそうでしたが、原
作の知名度と大枠だけ借りておしまい、製作者たちの意識がすごくゆるくなっ
ているのを感じます。やっぱり愛がなくっちゃね、悲しいね。

−−ドラマのことは忘れて、これを機に原作シリーズを読み直しますか。
−−鞍馬天狗だけでも作品数が多くて、まだまだ読んでいない傑作がたくさん
あるだろうと思うと、ちょっと楽しいですね。

〈わたなべ・ひろし〉詩人・編集者
英訳ムラカミハルキを読んでいます。初期作品を読むのは四半世紀ぶり。
http://www.catnet.ne.jp/f451/

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■あとがき
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 平林享子さんの連載、今回で終了です。「2001年から約7年間」と書かれ
ているのを読んで、もうそんなに時間が経ったんだ、と驚いています。私が
編集を担当して以来の連載のひとつなので、とくにそう思うのかも。
 また、「真駒内石山堂通信」の〔番頭篇〕も今回で終了。杉村悦郎さん、
二年間お疲れ様でした。来月は〔店主篇〕の最終回です。
 いつも届いていた原稿が読めなくなるのはさびしいですが、新しいヒトに
連載をお願いするチャンスでもあります。さて、誰に頼もうかなあ。書いて
みたいヒトからの連絡もお待ちしております。下記メールアドレスまで。
                       (南陀楼綾繁)
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