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[書評]のメルマガ vol.462
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■■ mailmagazine of book reviews       [お人よしのリンゴ 号]
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■コンテンツ
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★「トピックス」

★【新連載】「音楽本専門書評 BOOK’N’ROLL」/おかじまたか佳
→#1「レコパル・ライブ・コミック」

★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→どこまで続くぬかるみぞ。母と娘の断ち切れない血脈

★「マキャヴェッリ全集を読む」/朝日山
→フィレンツェ史 第四巻

★「書評で巡る、男の生き様劇場」蕃茄山人
→PC復活!でも仕事仕事でまたも休載です。

★【募集中】献本読者書評のコーナー
→読者の方、著者の方、出版社の方、必見です。

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■トピックス
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■〔書評〕のメルマガ 書き手さん募集

 〔書評〕のメルマガでは、さらに充実したメルマガにすべく、新しく書評コ
ラムの書き手さんを若干名、募集しています。

 執筆は、20日号、月末号のどちらかになります。

 商業誌ではありませんのであくまで無報酬ですが、毎月、本(あるいは雑誌
や電子書籍、それに関連するメディアでもOKです)を読んで書いていただく
だけ。内容も自由ですが、読書の目利きを自称(あくまで自称)する皆さん、
是非、こだわりの「あなたのお気に入り」を薦めてください。

 我こそは!という方は、下記のメールアドレスまでご応募ください。
 ご応募お待ちしています。
 info@shohyoumaga.net
 http://www.shohyoumaga.net/

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■今回の献本読者書評のコーナー

 「書いてみたら思った以上に面白かった!」と評判のこのコーナー。
 あなたもチャレンジしてみませんか?

 まだまだ募集中の「献本読者書評」は、巻末のコーナーで!

 出版社・著者の皆様からの献本も募集中です!

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■【新連載】「音楽本専門書評 BOOK’N’ROLL」/おかじまたか佳
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#1「レコパル・ライブ・コミック」

 子どもの頃から、本が好きだった。それから、音楽が好きになった。そして
ここ数年、特に「音楽」について「読む」ことが楽しくなった。

 音楽評論、伝記、音楽理論、楽器本、音楽をテーマにした小説……

 これら音楽本の書評を通して、本来視覚表現ではない「音」というものを、
人はなぜ本という形で表現しようとするのかを考えてみたい。題して「音楽本
書評 BOOK’N’ROLL」。

 オープニング・ナンバーは、少年だったぼくが音楽について読むことの楽し
さを最初に味わったコミック。今はもう自分の手元にもなく(ほんと、とっと
きゃよかった!)、ライツ関係が複雑とかで復刊の見込みもないようで、恐ら
くこのまま永久に再読不能かと思われる、FM雑誌連載の「レコパル・ライブ
・コミック」である。

 本題に入る前に、今は滅亡したFM雑誌なるものについて一言。

 70年代前半、レンタル・レコード屋の誕生もまだ先で、もちろん myspace
や youtube でいろんな音楽が聴き放題なんて時代が来るとはどんなSFにも
一言も書いてなかった時代。乏しい小遣いで買えるレコードも高が知れている
子供にとって、音楽を安く手に入れる唯一の方法がエアチェック。つまり、高
音質のFMラジオでオンエアされる音楽をカセットテープに録音する、という
方法だった。

 そんな連中をターゲットに隆盛を極めたのが、FM雑誌だ。

 内容は、レコードの新譜情報と、オーディオ機器の新製品紹介、レンガの上
にスピーカーを乗せると音がよくなるなどのウンチク、そしてメインとなるF
Mラジオの番組表だった。テレビガイド誌のラジオ版なのだが、いま考えると、
ラジオというメディアが力を持っていた時代だったのだなぁ、としみじみ思う。
AMの深夜放送も、当時ぼくらの世代には重要なメディアだったし。

 ともあれ、音楽雑誌とオーディオ雑誌と番組表の寄せ集めが立派に商売にな
ったことが、今では奇異にさえ感じられるけれど、そういう雑誌が数誌存在し
ていた。

 その中に小学館のFMレコパルがあったのだ。

 ペンパルに対してレコパル、つまり recording pal=録音仲間ということだ
ろうが、その名の通り、特製カセットレーベルがおまけにつくなど、完全にエ
アチェック派を狙っていた。そして、他誌と差別化し、小学館という出版社の
強みを活かすアイデアだったのか、FM雑誌で唯一、コミックのページが設け
られていたのである。

 「レコパル・ライブ・コミック」というタイトルの下、毎号一人のミュージ
シャンを取り上げ、その伝記をいろいろな漫画家が持ち回りで書く。もちろん
漫画誌ではないので読み切り短編だが、クオリティは非常に高かった。

 その要因は、まず、さすが小学館、当時第一線の錚々たる人気作家が揃って
いたこと。そして、どのミュージシャンとどの漫画家を組み合わせるかのキャ
スティングに、編集部のセンスが光っていたことにある。

 中でも、強烈に印象に残っているのは、石森章太郎(後、石ノ森章太郎に改
名)が描くジャズメンだ。恐らく彼自身が熱烈なジャズ・ファンだったのだと
思う。ミュージシャンの音楽性に合わせて漫画の手法を変えるという、実に緻
密な仕事をしていた。

 例えば、マイルス・デイビスの回では、このジャズ界の王者に相応しく極め
てオーソドックスに彼の人生をエピソードで構成する手堅い手法。絵も劇画調
のリアルなタッチで、成功して高級車に乗るマイルスが白人に嫌味を言われ、
「So what?(だからどうした?)」と言い返す、凄みのある顔が忘れられない。
もちろん、マイルスのモード・ジャズ期の代表作『So what?』に引っ掛けたの
だ。

 トランペッターのクリフォード・ブラウンは、ヴォーカリスト、ヘレン・メ
リルとのデュエット盤が有名だが、交通事故によって、まだこれからという25
歳の若さで亡くなったせいか、「青春」というイメージがある。そのため普通
の伝記スタイルではなく、まだ自分の可能性を信じることが出来ずに悶々と苦
しむ日本人の青年の物語の中に、彼がブラウンのレコードを愛聴する姿を描い
てその音楽の魅力を表現するという手法だった。

 MJQは、多分作家自身が見たのであろう来日公演を描き、雑誌が出た季節
を反映させてか、秋のイメージが濃いもの静かな小品で、そこはかとない老い
と憂愁が子供心にも沁みた。ジョン・コルトレーンも、その訃報をラジオで聞
き、泣き伏す男が主人公だったように記憶している。これも恐らく、作家自身
の姿だったのだろう。

 そして最も驚いたのが、オーネット・コールマン。この人は、いわゆる前衛
ジャズの第一人者で、それまでの音楽の話法を根底から覆し、ジャズの来るべ
き姿を提示した革命的なミュージシャンだ。したがって漫画も、主人公なのに
コールマンをシルエットでしか描かないという極めて前衛的な手法で、黒いの
っぺらぼうの奏でる音楽が、進みすぎていたために聴衆からごうごうたる非難
を浴びるシーンが不気味なまでの迫力だった。

 一方ロックでは、ビートルズとローリング・ストーンズが意外な作家の手に
委ねられた。前者は黒金ヒロシ、後者はジョージ秋山である。

 黒金ヒロシのビートルズは、リバプール時代から解散までの、数あるエピソ
ードをこれでもかと詰め込んだ、超アップテンポのスラップスティック・コメ
ディだった。例えばMBA勲章授賞ライブで、「貴賓席の方は宝石をチャラチ
ャラ鳴らしてください」とジョンがギャグを飛ばしたエピソードなど、僅かひ
とコマで消化していた。これだけで伝わってしまうのはやはり、さまざまなエ
ピソードがよく知られたビートルズだからこそだ。四人のキャラクターも極端
なまでにデフォルメされていた。意地悪で皮肉屋のジョン、わがままなポール、
隠者然としたジョージ、お人よしのリンゴ。ファンからは猛反発を食らいそう
なウルトラ単純化という手法が、10年にわたるビートルズの物語を数ページに
凝縮する上で非常に有効だったと思う。特に、ポールの最初のソロ・アルバム
とビートルズのアルバムの発売日が同じになってしまい、他のメンバー三人が
発売日をずらすように言うと、ポールが「ヤダァ!」と跳ねつける、あの駄々
っ子ぶりは鮮烈だった。

 ジョージ秋山のストーンズは、この作家の当時のヒット作『銭ゲバ』に近い
画風で描かれており、本当に悪魔がかっていた。ちょうど『悲しみのアンジー』
が大ヒットしていた時で、アンジーとはデビッド・ボウイー夫人のことで、ミ
ックは不倫しているのだ、というゴシップが有名だったのだが、漫画の中でも
ストーンズが乱交パーティを開き、アンジーにのしかかったミックの体がどろ
どろに溶けて覆い尽くすという、まるで妖怪のような描かれ方をしていたのが
凄まじかった。ストーンズの音楽そのものが描かれたわけではないが、そのお
どろおどろしい雰囲気は、まさに『悪魔を憐れむ歌』や『黒くぬれ』の音楽性
に通じるものがあった。

 もっとも、子供心にもこれはいかがなものか、と思った回もある。池上遼一
のエリック・クラプトンだ。何しろクラプトンが女房をジョージ・ハリスンに
寝取られる話なのだ。クラプトン夫妻がジョージ夫妻の大邸宅に招かれる。彼
らは酒を飲み、恐らくマリファナをやりながら、ブルーフィルムを見る。いま
や死語だが、要は昔のアダルトビデオだ。黒人の男が白人の女性を犯すシーン
で、クラプトン夫人が言う、「あの黒人のアレ、凄く大きいわね」するとジョ
ージが言う、「俺のはもっと凄いぜ」一方クラプトンはその頃麻薬でぼろぼろ
で、半分幻覚にうなされている。それをいいことにジョージはクラプトン夫人
を抱いてしまうのだが、その現場を目撃したクラプトンは怒ることも出来ず、
ただ逃げるようにその場を去る……というような話だった。クラプトンが麻薬
に苦しんだのも、不倫の恋に悩んだのも事実だが、あまりにスキャンダラスに
描き過ぎている。こうした経験が後に名曲『いとしのレイラ』を生んだとはい
え、音楽とは殆ど関係がない。大体これじゃジョージ・ハリスンは親友の奥さ
んを誘惑する色魔だ。事実は逆で、ハリスン夫人のパティにクラプトンが惚れ
てしまったはずなのに、一体どうして漫画では反対になってしまったのか不可
解きわまる。と言いつつ、これだけ事細かに覚えているのは、やはり思春期だ
ったからだろう。

 さて、先述の通り今はもうぼくの手元にはなく、記憶だけを頼りに書いてい
るので、年月による美化や老化による錯誤などあろうかと思うが、少なくとも
ぼくの心の中に刻まれたレコパル・ライブ・コミックはこんな漫画だった。

 青年誌が登場し、劇画ブームが起こり、漫画が単なる子供向けの娯楽から、
ひとつの芸術ジャンルとして多面的に拡大していった70年代。これまでとは違
う表現を求めて貪欲に触手を伸ばしていた漫画が、音楽という対象を発見し、
「音」を使わずに音楽を表現するという新しい試みに取り組んだ。それが「レ
コパル・ライブ・コミック」という場だったのではないか。

 だからそこには実験精神が溢れ、ミュージシャン以上に、彼らのミュージッ
クそのものが描かれていたと思う。

 近年、さまざまな音楽や映像が、複雑な権利関係の処理を実現し、最新のデ
ジタル技術で美しく蘇ってわれわれの下に届けられる。『レコパル・ライブ・
コミック』も、そんな奇跡の復活を果たしてほしいと切に願う。

おかじまたか佳
 会社員書評家&アマチュア・ミュージシャン
 先日ギターをうっかり倒して一部が欠けたが、セメダインで無事修復。セメ
ダインは偉大!

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■「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
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どこまで続くぬかるみぞ。母と娘の断ち切れない血脈

辻村深月
ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ

 今回も先月の林真理子・著『下流の宴』に続いて、母と娘の葛藤を描いた小
説をご紹介。この辻村深月さんという小説家、人気のある方なんですね。小学
生の頃から綾辻行人ファンで、高校生のときに書き始めたデビュー作が『冷た
い校舎の時は止まる』でメフィスト賞受賞。旧世代のおばちゃま、知りません
でした。だって人気と聞いてこの本探したのに書店で見当たらず、図書館で予
約したら3か月待ち。新しい才能が次々に登場してるんですね。おばちゃま、
トシを感じてしまいます。

 さて、第142回の直木賞候補になったこの作品、とってもダイナミック!
楽しんで読ませていただきました。

 ストーリーは・・・。都会でライターしつつ結婚している30歳のみずほと、
その幼馴染で地方で契約社員として働く未婚のチエミ。ある日、チエミの母が
遺体で発見され、チエミが行方不明になる・・母殺しの犯人と目されるチエミ
を探して、みずほは友人たちや恩師、みずほの友人でチエミの元恋人のもとを
巡るのだが・・・・というお話。

 正直言って、最初の方は読んでいて「いったいこの話はどこ行くね〜ん」と
思うことしばしば。著者が描いているテーマは、地方VS都会、学歴差、就職
先差、女性と出産、男VS女、そして、母VS娘ともう盛りだくさん。最終的
には母VS娘に集約されるのですが、その途中はテーマがありすぎて整理され
てない感じです。

 でも私が「著者はこのへんにこだわっているんやなあ」と感じたのは、チエ
ミに代表される地方で未来が見えない不満を抱えている女性と、みずほに代表
される進学を契機に都会に出て華やかに暮らし結婚にも成功した女性の格差の
部分。(ま、雑誌の読み物ページ担当のライターが華やかじゃないことはおば
ちゃま一番よく知ってますがそれはおいておいて^0^)小さい頃は大親友だ
ったのに、境遇が違ってくると疎遠になってしまい差は歴然というケースは、
まああること。でもみずほはチエミにいつまでもかかわろうとして、あろうこ
とか友人の男(いわゆるエリート男)をチエミに紹介して、チエミはうまくい
くはずのない恋愛に突進してしまうのです。みずほがチエミに対するときの、
ちょっとした上から目線とおせっかいは、何? みずほってちょいちょいヤな
女じゃないでしょうか?(ま、このおせっかいがないとこの小説が進んでいか
ないんですが)。チエミの元恋人がみずほに「ご同類でしょ、みずほちゃんと
僕は。あの子たちのこと、バカにしてたくせに」。このへんを深めていただけ
たらと思いました。

 でもこれらの欠点を補ってあまりあると感じたのが最終章です。まるで退屈
な能が「序・急」ときて「破」になって最後、盛りあがりまくって終盤を迎え
るように、最後は華麗にして納得のクライマックスです。

 おばちゃま、娘たち世代のことはもういいの。この母に同世代としての思い
入れがたっぷりあります。なんで、おばちゃま世代のこの感覚が若い30歳の
著者にわかったのかしら?さすが作家と思いました。ネタバレになるので詳し
くは言えませんが、きっとチエミの母と同じことを私もこの状況になってした
と思います。この小説の参考資料として挙げられている小倉千加子さんはエッ
セイの中で「中高年の母は、子どもの学費のためにパートに出ている。衣食住
は夫が担当しているが、なぜか学費は自分のパート収入でまかなっていると信
じている」というようなことをおっしゃっていますが、まさに図星!チエミの
母は学費じゃなかったけど、娘のためにお金を貯めてました。そして・・・チ
エミの母と同じように、私も娘名義の◎◎の◎◎は娘の◎◎なんですよ。いや
いや、母ってそんなもんです。みなさま、この◎◎部分が知りたい方はぜひ、
この小説を読んでください。

 それにしても母と娘はめんどくさい・・・。みずほも母との葛藤を抱えてい
て、こっちの方こそ、かなり深刻・・・次回はこのヘンも掘り下げてほしいと
思いました。

大友舞子(おおとも・まいこ)
昭和20年代生まれのフリー編集&ライター。関東生まれで関西在住。

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■「マキャヴェッリ全集を読む」/朝日山
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フィレンツェ史 第四巻

第四巻は、メディチ家のフィレンツェ支配の始まりを描く。1414年から22年ま
での間、フィレンツェは比較的安定していた。しかし、アルビッツィ家とリッ
チ家の争いから始まった党派争いの火はくすぶったままであった。もっとも13
82年から1400年までの混乱の時期、党派首領はたびたび迫害され党派争いなど
できる状況はなかった。

それで支配者たちは傲慢になった。そして油断が生じた。長く体制を維持して
いたため「彼らを攻撃することが可能で、当然そうするに違いない人々への配
慮を持ち続けなかった」のだ。

党派の嫉妬心を育てるために支配者たちは弾圧されたメディチ家の権威を取り
戻し、再起を図らせた。最初に台頭してきたのはジョバンニ・ディ・ピッチ
(メディチ)。この人が慈愛に満ちた優しい人だったので、評判はよく市政の
最高位に就任した。これに警告したのがニッコロ・ダ・ウッザーノである。

こんな評判の高い人物を育てることがどんなに危険か。他の党派の残党が嫉妬
してまた混乱の種になる。そんな警告は誰も聞かなかった。ニッコロ自体が嫉
妬の対象になっていて、ニッコロが嫉妬していちゃもんをつけているくらいに
しか思われなかっだ。

そんなころ、ミラノ公フィリッポがジェノヴァをほしくなって侵略を企ててい
た。フィリッポはフィレンツェを味方につけておかないとやばいと思い、取引
を持ちかけて協定を結ぼうとする。これを受けるかどうかでフィレンツェはい
つものように二分された。

協定を結んでも利益は少ないから、協定を結ぶべきでない派と、フィリッポ公
に条件を課せるし、約束を破られたら公然と戦争ができるから協定を結べ派の
論争は後者が勝利を収めたが、フィリッポは侵略が一段落するとさっさと協定
を破ってしまう。

これにフィレンツェは気を悪くしたが、それを察したフィリッポがそんなつも
りはなかったとか適当な言い訳をしているうちに、領主の息子の後見人問題で
フォルリがなりゆきでフィリッポの支配下に入り軍隊が進出してくる。フォル
リはフィレンツェに近いから、いつ攻めてこられてもおかしくない。そこで迎
え撃つのか、こっちから攻めるのかフィレンツェはもめ、これも後者の意見が
通って戦争に入る。

フィレンツェの動きに気づいたフィリッポはごまかしきれないと戦う腹を決め、
大軍をイモラに派遣。フィレンツェは最初は優勢だったが、策略によって結局
打ち負かされてしまう。そのためフィレンツェのこっちから攻める派は窮地に
陥ったが、そこをなんとか丸め込んだのがリナルド・ディリ・アルビッツィで
あった。

この実績によってリナルドは下層民に支配されていたフィレンツェを再び自分
たちの手に取り戻そうと考え、戦争継続のため重税を課すと同時に自分たちの
手に政治の主導権を取り戻そうと市民たちを相手に画策する。ある程度の合意
を得たリナルドは最大の反対派と思われたジョバンニ・ディ・メディチを説得
にかかる。ジョバンニは言った。

それをやったら、あなたは民衆から恨まれ、あなたの力で民衆から権威を奪っ
た味方たちは、今度はあなたを恨む民衆の助けを借りてあなたの権威を取りあ
げるでしょう。

まもなく不治の病にかかり死期が近いと悟ると、ジョバンニは息子のコジモと
ロレンツォを呼び、概略以下のようなことを助言した。

自分は満足して死んでいく。富裕で健康で尊敬される資質を持つおまえたちを
残したからだ。自分はこれまで誰も傷つけず自分の能力の許す限り人に恩恵を
与えてきた。おまえたちもそうしなさい。

そして政治的に安全に生きたければ、法律と人々が与えるものだけを取れ。そ
れ以上のものを求めたら憎まれる。そうすれば、多くの敵に囲まれ、絶え間な
い心労で暮らす人たちよりもずっと多くのものを得られると。

コジモは、この言いつけをよく守った。彼はフィレンツェ人の模範として評判
が高まったため、支配者たちにとって大きな脅威となった。その後発生したル
ッカとの戦争で主導権を取れなかったコジモ派は、ルッカ戦争で負けることが
あると軍事代表委員たちがよい知恵を出さないからだと避難した。

これは必ずしも事実ではなかったが、世論は事実ではなく願望を信用する。コ
ジモほど評判がよくなかった政府や軍事委員会は窮地に追い込まれた。これを
打開しようと彼らは考えたもののうまい対策は見つからない。それで有力者で
あるニッコロ・ザ・ウッザーノにコジモを破滅させる企てに同意してほしいと
話をしに行くと、ニッコロは拒否。

コジモの評判はいい。仮に追い出したとしても彼の味方はフィレンツェにたく
さんいるし、コジモの味方は我々を憎む。そのコジモ派に勝てるとは思えない
し、そもそもリナルドを愛する理由がない。私は中立を保つし、君もそうしな
さい。

そう言われて収まらないリナルドは、とうとうコジモを逮捕、死刑にしようと
するが、さすがにコジモ派の反発が怖くて追放処分にせざるを得なかった。コ
ジモ追放後、すぐにフィレンツェ内部にコジモ帰国を企む動きが出る。リナル
ドは武装して執政府の占拠を企て進軍するが、執政府はコジモを帰国させるつ
もりはないから武装を解いてくれと懇願。

これをリナルドが受け入れたと見るや、密かに用意していた歩兵を使って執政
府が要所を固め、コジモ帰国とリナルドの追放を決定。リナルドは失意のうち
にフィレンツェを去る……。

「フィレンツェ史」自体、メディチ家の注文で書かれているため、多少メディ
チ家についてはヨイショもあるのだろうが、興味深いのはジョバンニもコジモ
も決して自分からフィレンツェを動かそうとはしなかったことだ。

メディチ家の人間にももちろん血の気の多い人もいたし、謀略好きな人もいた。
しかし当主を務めたジョバンニもコジモも決して自分からは動かず、貴族・市
民・下層民とも等距離で接し、味方を作ることだけに力を入れていたようだ。
その結果、権力は向こうから転がり込んできた。

会社の派閥抗争がひどくて、どちらも納得する人選をしようとすると、無派閥
の自分しかいなかったなんてことをおっしゃる社長がたまにいる。これに近い
話なのだろう。このあたり、山本常朝の「武士道」にある、出世は遅れる方が
いいに通じるところもある。待ちの権力奪取は自分の力ではなく、周囲の力で
権力を取るから安定もするわけだ。

しかし、この後メディチ家は決して安穏としていられたわけではない。「バッ
ツィ家の陰謀」を乗り越えたり、フィレンツェから追い出されたりするのだが、
それはたぶん次巻以降で描かれるのだろう。

(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本が欲しい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡ください。

『秋葉原は今』(芸術新聞社)
 http://www.gei-shin.co.jp/books/ISBN978-4-87586-192-8.html

『自分を鍛える働き方』(サンマーク出版)
 http://www.sunmark.co.jp/local-cgi/hpage/search1_isbn.cgi?isbn_cd=978-4-7631-9960-7

『宮芳平自伝 森鴎外に愛された画学生M君の生涯』(求龍堂)
 http://www.kyuryudo.co.jp/shopdetail/049004000013/

『マックス・フライシャー アニメーションの天才的変革者』(作品社)
 https://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/geijyutsu-etc/tanpin/22575.htm

『愛するものたちへ、別れのとき』(作品社)
 https://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/kaigaibungaku/tanpin/22681.htm

『暁の群像 豪商岩崎弥太郎の生涯』(作品社)
 https://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/nihon-bun/tanpin/22483.htm

『坂本龍馬』(作品社)
 https://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/nihon-bun/tanpin/22605.htm

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
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 表題【読者書評参加希望】
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 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社でも著者でもどちらでも結構ですが、献本を募ります。冊数は
 何冊でもOKです。メールで【読者書評用献本希望】とご連絡いただければ、
 折り返し、送付先をお知らせします。

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、熱意と販促効果優先で選ばせていただきます。

3)発行委員会はいただいたメールの中から、熱意がありそうな方をピックアッ
 プして献本いただいた本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に
 応募数が満たない場合には、100日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンやbk1、楽天などのオ
 ンライン書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。
 つまりは当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願
 いします。

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 今回から待望の新連載がスタートです。テーマは音楽本ということで、また
またこのメルマガの守備範囲が広がりました。(って今回は純粋に音楽本とは
言えませんが・・・。

 個人的には、とても追いかけられないライトノベルとか写真集とか洋書とか
ミステリーとか、まだまだこのメルマガが追いかけられていないジャンルも多
いので、まだまだ新しい書き手さんが世に埋もれているのではないかと思って
います。あなたならどんなジャンルで書きたいですか?

 なにはともあれ、次回もお楽しみに!(aguni原口)

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