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[書評]のメルマガ vol.503

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■■ [書評]のメルマガ               2011.12.20.発行
■■                             vol.503
■■ mailmagazine of book reviews[今年の3冊ってあるんでしたっけ 号]
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■コンテンツ
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★「トピックス」
→トピックス募集中です

★「音楽本専門書評 BOOK’N’ROLL」/おかじまたか佳
→『ろうそくの炎がささやく言葉』

★「書評で巡る、男の生き様劇場」蕃茄山人
→ 今年だからこその「おめでとう」

★「目につく本を読んでみる」/朝日山
→「エコノミック・ヒットマン 途上国を食い物にするアメリカ」

★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→ 今回はお休みです。

★【募集中】献本読者書評のコーナー
→ 読者の方、著者の方、出版社の方、必見です。

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
└──────────────────────────────────

 まだまだ募集中の「献本読者書評」巻末のコーナーで!

 出版社・著者の皆様からの献本も募集中です!

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■「音楽本専門書評 BOOK’N’ROLL」/おかじまたか佳
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#17 『ろうそくの炎がささやく言葉』

前回は、アフリカの親指ピアノという楽器にまつわる本を通して、人に聴かせ
るのではなく、自分のひまつぶしとしての「演奏」もあり得るし、それは聴か
せる演奏と同じように、人の暮らしの中で価値を持つ、ということについて書
いてみた。

さて、このふたつの「演奏」には、もうひとつ、その中間領域があるように思
う。
自分一人だけでもないし、聴衆を前にするわけでもない。気心の知れた人たち
が集まって、交替で歌ったり演奏したりするようなサロン的な場での「演奏」
だ。

実はぼく自身、月に一度とある画廊で、そうした音楽の集いに参加している。
それはライブではないが、一人でもない。時に演奏者でもあるが、時に聴き手
でもある。全員で合唱することもある。演奏者と聴衆を確然と分かたない、コ
ミュニティ的な音楽のあり方には、このスタイルでしか得られない楽しさがあ
る。
そしてこれは、実は最も原初的な「演奏」のカタチではないだろうか。

第9回で取り上げた『縄文の音』の著者、土取利行は、パーカッショニストと
して、縄文時代の楽器を再現し、演奏する取り組みをしているが、その後はさ
らに時代を遡って、旧石器時代の音楽の再現を試みた。その顛末は、別の著書
『壁画洞窟の音』に詳しいが、フランスの、古代壁画が残る洞窟での演奏体験
には、古代クロマニヨン人の「演奏」の姿が重なる。

複雑な石の回廊。そこに反響する、呪文や歌、そして素朴な楽器の音。その霊
的なエネルギーの神秘は心を衝き動かし、いつしか踊りが始まる。

その時、彼は一人ではあるまい。仲間と共に、暗い洞窟の奥深く集まり、音楽
によって結ばれていたはずだ。
揺れる炎。浮かび上がる壁画。その前で踊る人々の影。

では、夜、ろうそくに火を灯し、その回りに集まった人たちが「声に出して」
本を読む、というのはどうだろう。
それは厳密な意味で音楽ではないが、ぼくには一種の「音楽」であるように思
われる。少なくとも頭の中でイメージされるその光景は、古代人たちの「演奏」
を髣髴とさせる。
本の朗読であろうが楽器の演奏であろうが、そこにあるのは同じ共同体感覚だ
からだろう。

ということで、多少強引に思われるかも知れないが、本書も音楽本であると思
い、この欄で紹介させていただくことにした。

管啓次郎・野崎歓編『ろうそくの炎がささやく言葉』である。

この本が慌しく編まれた理由はもちろん、もうすぐ終わろうとするこの一年を
歴史に刻印したあの出来事がきっかけだ。

「震災とそれに続く日々は、日本社会を深く変えました。(中略)私たちが今
回の一連の出来事を体験して知らされた衝撃、動揺、悲しみ、不安、怒りに、
まずはとりくむ必要があります。人間のひとりひとりはあまりにも弱いので、
私たちは感情をも言葉にして分かち合い、そこから力を汲み上げる工夫をしな
くてはなりません。その作業に直接役立つ本をつくろう。たとえば、しずかな
夜にろうそくの炎を囲んで、肉声で読まれる言葉をみんなで体験するための本
を。」(本書あとがきより)

つまり、ある意味で、本書は優れた実用書なのだ。「直接役立つ本」なのだ。

震災後、多くの表現者が、「いまこんなことをしていていいのか」という疑問
に囚われたと語っている。
しかし、ここには表現への迷いは感じられない。むしろ、いまこそ言葉が必要
だ、という強い信念がある。
だから一刻も早く、この本を必要とする人たちに届けたい。届けなければなら
ない。
その使命感が、震災後約五ヶ月で上梓するというスピードを可能にしたのだろ
うか。
企画の素晴らしさと同時に、この実行力にぼくは敬服する。

本書に言の葉を寄せたのは、谷川俊太郎らの詩人、古川日出男らの小説家、柴
田元幸らの翻訳家たち。海外からも、親日家のフランス人作家ジャン=フィリ
ップ・トゥーサンなどが参加している。

谷川俊太郎の詩は、ろうそくの炎のゆらめきに、自身の気持ちの伸縮を重ね合
わせた。「きもちがのびたりちぢんだりする」というフレーズの繰り返しに、
震災の報道に打ちのめされたり、心温まる挿話に希望が湧いたり、めまぐるし
く変転する精神の軌跡が浮かび上がる。そして、遠い未来に向かうこれからの
曲がりくねった道のりを思い、「ひとあしひとあしあるいてゆくと/からだの
そこからたのしさがわく」と希望の言葉を最後に置く。

古川日出男は福島出身の作家として、小説ではなくいまの思いを素直に書きつ
けた短文を寄せた。9.11のニューヨークも被災地だが、それはビン・ラデ
ィンという「敵がいる被災地」だ。しかし「僕たちの日本のそれぞれの地域は
被災地で、しかし敵はいません。」それがよいことなのかどうか。判断に迷い
苦しみながら、それでも彼は「赦したい」そして「赦されたい」と願う。「僕
はこの巨大な悲劇すら赦したいし、その果てに、いまここに「存る」ことを赦
されたい。」と。

しかし本書はこれらのように、震災という体験を直接表現した文章ばかりでは
ない。冒頭に置かれたこの2作品から、次第に表現世界は広がっていく。

その中に、音楽をモチーフにしたものもいくつか、ある。
これをもって本書を、音楽本と言ってもいいかもしれないようなもの。

例えばカリプソ歌手マイティ・スパロウと忌野清志郎に触れた中村和恵の『ワ
タナベさん』、暗闇に沈んだピアノのある部屋で少女が体験した優しい響きを
描く林巧の『ピアノのそばで』、レゲエ・スターを夢見るラスタファリアン、
フルートの人生を語る旦敬介の『フルートの話』……

だが、音楽を直接には題材にしていないのに、最も音楽を感じた一篇は、小沼
純一の散文作品『めいのレッスン』だった。

家で仕事をする独身の「わたし」は、妹から子守を頼まれる。小学生の姪はい
つも学校帰りにやってくるのだが、まったく手がかからない、おとなしい子だ。

仕事が一段落した「わたし」は、姪が日頃一人で何をして時間をつぶしている
のか、好奇心を抱く。すると彼女がしていたのは「ちょっと口で音をだしたり、
目をつぶったり、てのひらを顔のところどころにあててみたり。どこがおもし
ろいのかさっぱりわからない」ようなことだった。

「わたし」はきっとそう言うだろうと、母親が言っていたと姪は笑う。
なぜなら「わたし」の妹も幼い頃、同じことをしていて、「わたし」にはその
意味も面白さもさっぱり理解できなかったからだ。

そこで「わたし」は自分でもやってみる。
「ろうそくを、ふ、っと吹き消すようにくちびるをすぼめて「あ」と「お」を、
つづけてみる。」
「「う」といってびりびりするのをくすぐったくかんじながら、「い」や「え」
へとうごかしてみる。」
だらしないとか下品だとかの理由で、いつの間にか出さなくなっていた音の存
在を「わたし」は再確認する。すると、子どもの頃にそうした音を出した時の
気持ちが甦る。
幼い妹が、どんなに豊かな音にまみれていたのかに、ようやく気づく。

これが音楽でなくて、何だと言うのだろう。

著者の小沼純一は音楽評論家である(詩人でもあり、文芸評論家でもある)。
最近、坂本龍一がやっているNHKの『スコラ』という番組に出ていたから、
見たことのある人も多いだろう。

彼は他のところで、最近あまりCDやiPodで音楽を聴かなくなった、と書いて
いた。四六時中、音楽を聴いていると、記憶の中の音楽を反芻する時間がなく
なるからだ、と。
かつて訊き馴染んだ音楽を頭の中で再生する時、それは恐らく実際の音楽とは
異なっている。自分にとって印象深い部分、好きな部分がクローズアップされ
ているはずだからだ。
それは一種のリミックスともいえるだろう。機械を使わない、精神によるリミ
ックス作業だ。
そうした時間を大切にしたいと、彼は言っていた。

楽器を弾いたり、CDやコンサートを聴くのとは違う、音楽のあり方。
声の響きを楽しむのも、精神によるリミックスも、そういう音楽のあり方を示
しているのではないか。
押し寄せる情報の波の中で、見失いがちな音楽のあり方を。

かつて人類は狩りをして、仕留めた獲物を家に持ち帰り、仲間と共に分かち合
って食べた。
同じように、炎の回りに親しいものが集まり、素朴な声や音の記憶という、魂
の食べ物もまた分かち合ったに違いない。
そして、原発事故で電力が危うくなったいま。
もしも、か細いろうそくの炎に頼る時代が再び訪れれば、iPodは冷たい沈黙の
箱になる。

だが、それでも人は音楽を捨てないだろう。
それが希望への道しるべである限り。
記憶の中の音楽を、繰り返し心で再生するだろう。
変な声を出して、その響きを楽しもうとするだろう。

もしかすると、この「めいのレッスン」は、そんな時代を生きているぼくたち
の、明日のための「レッスン」であるのかもしれない。

管啓次郎・野崎歓編『ろうそくの炎がささやく言葉』
勁草書房
2011年8月8日 第1版第1刷発行

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
よいお年を。この常套句に、今年は心からの祈りを込めずにいられません。

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■「書評で巡る、男の生き様劇場」蕃茄山人
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(72) 今年だからこその「おめでとう」

内藤陽介著『年賀状の戦後史』(角川oneテーマ21新書・724円)

師走である。

昔から、ゴホンといえば龍角散、オカンといえば中将湯。そして師走といえば
年賀状、である。

この季節、各社、各店、各機関から「年間ベストセラー」が発表されている。
それによると大抵は、東川篤哉『謎解きはディナーのあとで』(小学館)が1
位。

つまり年間を通して一番売れた本は『謎解きはディナーのあとで』ってことに
なるんだけど、毎年この時期に瞬間風速的に売れる本、ていうか売れるジャン
ルがある。それは年賀状関連書。大抵がCD−ROMまたはDVD−ROMつ
きのムックで、イラストやカリグラフのデータがいろいろパックされている商
品だ。これ一冊で美麗な年賀状が自作できる。なんだかんだ言っても国民の皆
さんの年賀状への関心は高いことがよくわかる。

僕も年賀状大好き。出すのももらうのも。近年(自分の加齢とともに)減って
しまったが、子どもの写真入り年賀状なんて幸せのおすそ分けをいただいたよ
うで嬉しくてアルバムに貼ってますよ。今年は年賀状を出すのに抵抗があると
いう人があるらしいが、こういう年だからこそ出そうよ、「元気です」「生き
てます」「○○にいます」って。

私事だが昨年の今頃は入院していて、病室で年賀状を書いた。 そして、

「賀状書く こんな俺にも 来年は来る」

の句を得た。「賀状書く」が師走の季語。「暦買ふ」「手帳買ふ」も同じく師
走の季語。去年はジャージにコートを羽織って病院を抜け出し駅前のデパート
でカレンダーと手帳を買った。手帳やカレンダーを買って次年の予定を考える
というのは生きる希望を燃やすということである。そこでも次の二句を得た。
「暦買ふ こんな俺にも来年は来る」「手帳買ふ こんな俺にも来年は来る」。
こういうのを「同工異曲」という。

つまり、みなさん年賀状出しましょうよ、という話である。また今年は「あけ
ましておめでとう」と書かないで大きく「絆」とか「希望」とか書く、という
人が多いとも聞くけど、うーん。なんか「絆」とか「夢」とか「希望」とか大
書するのって洋式の墓石みたいで僕はあまり好きじゃないなあ。

前置きが長くなった。そんなわけで年の瀬配信の今号で紹介させていただくの
も年賀状関連の本である。って言っても昇り龍のイラストの画像データの入っ
た実用ムックではない。いわゆる「教養新書」。内藤陽介著『年賀状の戦後史』
(角川oneテーマ21新書)。

元・切手の博物館副館長の郵便学者というお堅いプロフィールとはうらはらに、
郵便を通して国家と社会、時代や地域のあり方を硬軟とりまぜ縦横に語る自在
な論考が光る気鋭の著者の最新刊だ。「国家名義で発行される切手は、その国
のイデオロギーや経済状態を世界に喧伝する『外交官』である」と喝破した前
著『事情のある国の切手ほど面白い』(メディアファクトリー)がとても面白
かったので、思わず手に取った。

タイトルの通り敗戦の焦土から立ち上がった日本人たちが年賀状に何を託して
きたのかを考察する本だ。冒頭教えてくれるのが、焦土から「尋ね人の時間」
としての年賀状の興隆。そして、また大阪の洋品屋の親父さんが「発明」し、
自ら試作品を作成して郵政省に直訴して始まった「お年玉つき年賀はがき」、
賞品欲しさに他人のポストから年賀状を持ち去る窃盗事件が頻発した勃興期な
どエピソードは尽きない。年賀切手のデザインがなぜ各地の民芸品なのかを巡
る論考も興味深い。さらにはその「民芸品」と「選挙」の生臭い関係、など
「ヘェー」の連続。そしてこの季節の駅頭やイベント会場で揃いのコートを着
たおじさんやおばさんやおにいさんやおねえさんが寒さに震えながらも必死に
年賀ハガキを売っている理由もよくわかる。

にわか「年賀状博士」になれること必定である。どうだろう?お正月、おせち
をつつきながら、あるいは届いた年賀状の束を分類しながら、この本で得た薀
蓄を家族に傾けてみては? 嫌われるクソ親父になること必至であろう。

この『年賀状の戦後史』を通読して思ったのは、ありきたりだが年賀状が明ら
かに戦後復興のエネルギーを醸成する一助となったということ。前述した「こ
ういう年だからこそ出そうよ」の所以である。別に「買い物をすることで経済
を回して」なんて言うつもりはない。俺の小さい財布を開いたぐらいで回るほ
ど、日本の経済はヤワじゃないぜ。

なに? 年賀状なんて無駄? 然り。確かに無駄。間違いない。だけど無駄無く
してなんの人生よ? 人生まで語るか、蕃茄山人!

内藤陽介著『年賀状の戦後史』(角川oneテーマ21新書・724円)。


あ、年末最終号恒例の「今年の3冊」ってあるんでしたっけ。絞りきれないの
で本連載タイトル、「書評で巡る、男の生き様劇場」にふさわしいものを3点
ご紹介。

・『ホームレス歌人のいた冬』(三山喬、東海大学出版会) 4/2号でご紹介
・『赤紙と徴兵』(吉田敏浩、彩流社)8/20でご紹介
・『くじけな』 (枡野浩一、文藝春秋)10/20でご紹介

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(ばんかさんじん。都内出版関係某社勤務。昨9月脳梗塞に斃れ、今年1月末
に退院。アグレプランニング「季刊 健康」にて、日本一役に立たない闘病記
「リハビリ道楽」を好評連載中。完全復活に向けての苦闘と妄想をブログ「蕃
茄庵日録([ばんかあん]で検索)」にてリアルタイムで報告中。
 http://d.hatena.ne.jp/banka-an/  「JPIC読書アドバイザー養成講座」
受講中。

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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「エコノミック・ヒットマン 途上国を食い物にするアメリカ」
 ジョン・パーキンス 東洋経済新報社

「ヒットマン」やくざ映画でよく出てくる殺し屋のことだが、この本の著者は
元国際エンジニアリング会社のエコノミスト(実際は開発コンサルタント)を
していた人物。タイトルは編集者が勝手にっけたのかと思ったら原題にちゃん
と“Hit Man”とある。ヒットマンとは和製英語ではないらしい。

内容は、エコノミック・ヒットマン(EHM)として途上国のインフラ整備の仕
事に携わってきた著者の手記。1980年にいったんEHMから足を洗って、EHMの告
発しようと書き始めたが、20年以上封印していた内容を書き記したもの。封印
していた理由は、恐怖と飴だ。

著者のパーキンスは、裕福なコミュティの中で貧しい部類として育った。最初
NSA(アメリカ国家安全保障局)に職を得る。理由はベトナム戦争の徴兵逃れ。
NSAに勤めていると徴兵されなかったのだ。その採用基準が興味深い。

パーキンスはベトナム戦争に反対だとはっきり言った。国家への忠誠心はない
と言っているのに等しい。しかしこれが採用のマイナス要因にはならなかった。
面接官たちは、これまでどんな生活をしてきてどんな欲求不満を持っているの
かを知りたがった。要はカネや女と言ったエサで釣れる人間が求められていて、
彼は合格した。

しかし、NSAに合格後、パーキンスは同じ徴兵免除が受けられるならと平和部
隊と呼ばれる海外ボランティアに興味を持ち、エクアドルに赴任した。そこに
エクアドルの開発に関心を持つ国際的にエンジニアリング企業メイン社の人が、
彼にエコノミストとして入社しないかと誘い、彼は入社した。

そして勉強していると、現れた謎の女、クローディンと名乗る美女は、パーキ
ンスはEHMの仲間入りをするのだと説明した。

「私たちはも、汚い仕事をする特別な存在。どんな仕事をしているのか誰にも
話してはいけません」

この仕事に就くかどうか内容を説明するから、自分で決断しなさい。ただし

「決断したら後戻りはできないわ。いったん仲間入りしたら一生抜けられない
わよ」とのたまった。

EHMは、ダムや発電所など大型インフラ投資を途上国首脳にすすめ、実際に作
らせる仕事だ。目の前にあるのは、急速な経済成長です。金がないなら世界銀
行が貸してくれます。借金が過大になりすぎる?そんなの経済成長を達成した
らすぐに返せますよと説得するのだ。

ついでに首脳たちは、インフラ整備に関わることで大金を手にする。急速な経
済発展によって国際的に有名な政治家になれて、金持ちにもなれる。そんな幻
想を振りまいて途上国首脳を誘惑する。理由は、彼らを国ごと型にはめるため
だ。

EHMは、かならず過大投資をすすめる。そして途上国を経済成長ではなく借金
まみれにする。借金返したかったらお宅の地下に眠っている資源を売って借金
返せとくる。そうやってアメリカは途上国の資源を安く買いたたき、途上国の
貧困は改善されず、むしろ悪化する。

そんなえげつない仕事をさせる飴もまた高額な報酬だ。強欲を満たす高額な報
酬が良心にふたをさせる強烈な動機になる。

途上国の元首がそうした罠を見抜けばどうなるか。パーキンスは第二段階とし
て「ジャッカル」がやってくるという。EHMの陰を感じ取ったパナマのトリホ
ス将軍、コロンビアのロルドス大統領は飛行機事故で死んだ。爆発物が仕掛け
られていたのだ。それでもダメなら軍隊がやってきて、武力行使で国家転覆を
謀る。

いやはや、日本のODA援助を挙げるまでもなく、途上国への援助はろくでもな
いことになっているという話は聞いていたけど、そうなるのは単純に開発援助
関係のリーダーたちが未熟だからだと思っていた。そうじゃなくて彼らはわざ
と途上国が破綻するように仕向けている。

もちろん現場で実際にエンジニアリングや資金調達などに走る人たちは、そん
なことには気がついていない。彼らは自分たちが途上国の発展に貢献している
と思っているし、この国は自分たちが発展させてやるのだと誇りに思っている
人たちもいる。その実態を知っているのは、EMHだけなのだ。

しかし産油国との戦いでは、アメリカは中南米とは勝手が違った。厖大な借金
させようにもサウジアラビアは厖大な金を持っているから借金漬けになんかで
きない。イランではイスラム革命前夜の情勢を読み切れず、大損こいたりもし
ている。このあたり、彼らも時代を読む能力がやはり必要なのだ。

そのうち、パーキンスも良心の呵責に耐えられなくなって、1980年にEHMから
足を洗う。そしてエコノミックヒットマンの存在を告発することを決心する。
しかし原稿は書くものの、出版する決心はなかなかつかなかった。

決心がつくのは911の後である。なぜ911まで決心がつかなかったのか、911後、
どうして出版する気になったのか?出版すべきかせざるべきか。悩み、苦しむ
パーキンスは、間違いなく本音で語ってると思う。そりゃ迷うよね、人間だも
の。

それと、この本はサブタイトルにあるように途上国を食い物にするアメリカ産
業界について書いてあるのだが、同時にアメリカの強さと泣き所についてもい
ろいろと教えてくれるところもある。そんな読み方をされるとは著者は思って
いないと思うが、それこそがこの本を読む一番の醍醐味かも知れない。

(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
----------------------------------------------------------------------

 この本が欲しい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡ください。

『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)
 http://www.seikatsushoin.com/bk/083%20america.html

『心に響く遺言書』(学研パブリッシング)
 http://hon.gakken.jp/book/1340482500

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

----------------------------------------------------------------------

 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社でも著者でもどちらでも結構ですが、献本を募ります。冊数は
 何冊でもOKです。メールで【読者書評用献本希望】とご連絡いただければ、
 折り返し、送付先をお知らせします。

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、熱意と販促効果優先で選ばせていただきます。

3)発行委員会はいただいたメールの中から、熱意がありそうな方をピックアッ
 プして献本いただいた本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に
 応募数が満たない場合には、100日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンやbk1、楽天などのオ
 ンライン書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。
 つまりは当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願
 いします。

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

----------------------------------------------------------------------
■あとがき
----------------------------------------------------------------------

 蕃茄山人さんのところで最後にある「今年の3冊」。以前は全執筆者にお願
いしていたのですが、今は自由参加ということで。

 ということで、極めて、極めて個人的な今年の3冊をピックアップしてみま
した。ただし順不同です。

■『ヴィジョン・セミナー』(創元社)

 昨年、刊行された『赤の書』4万円台。で、今年はこれで、3万円弱。この値
段が安く感じるから不思議。
 ユングには未完の原稿がまだまだあるそうで、創元社さんは金脈を見つけた、
という感じですね。こういう仕掛け方、嫌いではないです。
 個人的な意見として、物的な書籍の価値というのは今後、ますますポイント
になっていくと思っていて、そういう意味で、この本はすごい。
 しかも、個人的に欲しい…(w。
 ということで、媚びるために一位。
 創元社さん、くれないかなー。くれないだろうなー。

■『涼宮ハルヒの驚愕』(角川書店)

 いや、正直ですね。この話の面白さは私にはわからんのですが、何で選ばれ
たかというと、その発売がすごい。
 初版は51万3000部、というのもすごいですが、もっとすごいのは、この本、
世界同時発売、だそうです。
 何がすごいのかって、本はDVDや映画やゲームとは違うんです。言語が全
部違うものを、世界同時に発売するって、どんなんですか!
 マニア向けTV番組で編集者の方がコメントしていましたが、世界同時発売
ということは、原稿はとっくに仕上がっているのに、それをわざわざ翻訳がで
きるまで発売を待っていたそうで、何のために?というと、それがよくわから
ないところがすごい。
 マルチ言語印刷機でもあって、一遍に印刷したってなぁ、運ぶのも国際便で
しょ? 到着まで日本語版を寝かせていたのかしら。。。
 ともあれ、その裏の意味がわからない「努力」が「驚愕」でした。

■『速習!ミクロ経済学』(中央経済社)

 で、これは個人的な思い入れ、、、というか大変だったのでセレクト。
 これは学生や資格試験・公務員試験向けのテキストなんですが、なんと、こ
の本を元にした講義を youtubeで無料で30時間以上も聴ける、という仕掛けで
す。その動画をコツコツアップする作業をしていたのが、実は私(w。
 Amazonの書評にも、この本と動画のおかげで合格しました!なんて、まるで
本のコメントとは思えないコメントがついたりしています。
 というわけで、本の中身そのものよりも、本の成立に目が行ってしまうあた
り、まったく参考にならないかもしれませんが、私の今年の3冊を以て、今年
の[書評]のメルマガは締めくくりです。

 皆様、素敵なクリスマス&新年をお過ごしください。(aguni原口)

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