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[書評]のメルマガ vol.504

 
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■■ [書評]のメルマガ                2012.1.10.発行
■■                              vol.504
■■ mailmagazine of book reviews      [脂肪が溜まる正月明け 号]
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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→70年代勤労青少年と『二十歳の原点』

★「背伸びして本を選ぶ」/十谷あとり
→冬のブックオフで、絵本を買う

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/大麦親父乳酸脂肪
→平田オリザが求めるもの(その2)

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→文学の効用

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/庄司善彦
→今回はお休みです

★献本読者書評のコーナー
→出版社の皆さん、献本募集中です!

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 またまた献本を頂戴しました。ありがとうございます。

 マグナム・ハート作『連番禁止ナンプレ』(パブリック・ブレイン)
 http://www.publicbrain.net/books.htm

 自費出版レーベルとのこと。いやー、しかしパズル本に書評なんてつけられ
るんでしょうか?

 中久保浩平 著『ビジネス真実践』(アルマット)
 http://www.arumat.com/book/b97255.html

 聞いたことのない出版社だと思ったら、国際語学社の人文・実用書レーベル
だそうです。まぐまぐ!殿堂入りメールマガジンを書籍化したもの、とのこと。

 この本の書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中の「献本読者書評」
巻末のコーナーで!

 出版社・著者の皆様からの献本も募集中です!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<25> 70年代勤労青少年と『二十歳の原点』

 皆様、新年明けましておめでとうございます。

 ……とゆーても年年歳歳、「お正月らしさ」てか、正月の「特別感」てのは
薄れてゆくばかり。スーパーなんて元旦から営業してるし。

 今年の我が家など、暮れに引っ越したこともあって、ついにお雑煮もお節も
ない正月になってしまった。
 餅すらないぞ、正月の我が家には。ザマァ見ろ(何に?)
 大晦日と元旦は、もらい物の猪肉でシシ鍋食ってた。(旨かったです)

 ところで、本年の1月9日は「成人の日」だ。
 成人の日は、「1月15日」だったはずなのだが、いつの間にか「1月の第二
月曜」ということになっていた。
 どーでもいいけど、「祝日」てのが、近頃やたらと「多い」と思いません?
 非常勤で講師やってると、この祝日ってヤツに授業を潰されることがままあ
って、とても往生こかされる。
 さらに、その祝日が日曜日に当たると、わざわざ、翌月曜を休日にするお節
介。
 
 はっきりゆーて、日本人、休みすぎ!もっと働こうよ……

 で、「成人の日」なんだけど、このたび、生まれて初めて「成人式」という
のに臨席する予定なのだ。
 神戸の歌姫こと詩桃(うたもも)嬢が、数年前から神戸の隣の三木市に住ん
でいて、このたび、その三木市の「成人の日の集い」でライブをやる、という
ので、「あ、ほならワシ、二十歳で三木で、ちゅー詞ィ書くから、歌(う)と
てェな!」と、飲んだイキオイで押しかけ作詞。

 それを、このたびの「成人の日の集い」で披露してくれる……はずなんだけ
ど、あくまでも「曲が間に合えば」……

 とまれ、わしのころには、「成人式」とゆーのは、「体制側の用意した式典
なんて、ケッ!」という風潮でもあったので、わしの場合では、神戸と東京と
で2回、出席の機会があったはずで、事実、招待状も届いてた覚えがあるのだ
が、なにしろ「ケッ!」だったから、破り捨てて無視を決め込んでいたのだっ
た。
 なので、今回初めて「成人式」ってのを見る機会に恵まれて、少し楽しみで
もある。

 「二十歳」あるいは「成人」で思い出すのは、高野悦子の『二十歳の原点』
と、バロン吉元『十七歳』、なんである、わしの場合。

 『二十歳の原点』は言わずもがなだけど、バロン吉元『十七歳』は、1970年
から75年にかけて「ヤングコミック」に不定期で連載されていた、読み切りオ
ムニバス形式の漫画作品。

 連載中から気になっていた作品だったのだけど、単行本で入手する機会を逃
していて、少し前ブックオフで、集英社から「ホーム社漫画文庫」として纏め
られてるのを見つけて、即購入。
 いや、懐かしかった。

 このシリーズ、タイトルどおりに、それぞれの物語の主人公は、いずれも
「十七歳」で、第1話と2話こそ、高校生のそれぞれ男女を主人公として、
「青春の蹉跌」的、青春の鬱屈と屈託、そして「虚無」を描いた、アメリカン
・ニューシネマ的作品なのだけど、第3話以降は、がらりと様相が一変する。

 第3話以降の主人公たちは、新幹線車内販売の売り子、キャバレーのコック
見習い、東北の寒村で床屋を営む少女、自衛官、トルコ嬢(ただ今の「ソープ
嬢」ですね)、デパートの売り子、はとバスのガイド嬢……と、主人公はすべ
て「十七歳」なんだけど、その全員が既に職業人。
 ……ということは、彼らは皆、「中卒」で世の中に出ている、ということ。

 二十歳の高野悦子とほぼ同時代に「十七歳」の彼ら彼女たちは、17歳にし
て、既に皆自立している。
 「独りであること、未熟であること、これが私の二十歳の原点である」とい
う高野悦子と対照的に、未成年でありながら既に「成人」している彼ら彼女た
ちは、自らを決して疑わない。

 17歳にして既に成人した彼らは、「70年代」という時代の中で、「明日」
を、今日よりは確実に前進するはずの明日を信じて、ひたすらに前向きに健気
に、そして強かに生きてゆく。その様子が、いっそ清清しくて潔い。

 そう言えば『二十歳の原点』の中でも、学生運動の中で自分を見失い悩んで
いる渦中に、アルバイトで入った京都ホテルで、同年代の同僚ウェイトレスた
ちの明るさと屈託のなさに愕然とし、また、自分とは違う価値観に気づかされ
るクダリがあったと思うが、バロン吉元『十七歳』の明るさ、屈託のなさもま
た「70年代」なのだ。

 数年前から、週一で京都へ通っているのだけど、ある日ふと、この大学が、
高野悦子の住んでいた下宿に程近いことに気がついて、学校が退けた後に、彼
女が最後に住んでいた「丸太町御前通」を、ふらりと訊ねてみたことがある。

 下宿があったと思しきあたりから、御前通を南へくだると、すぐに山陰線の
高架に行き当たる。
 1969年当時は高架ではなく、住宅街の裏手をひっそりと走る単線未電化
のこの線路に、1969年6月24日の未明、午前2時を過ぎて高野悦子は踏
切から侵入して西へ向かい、京都に向かっていた貨物列車に轢かれて死んだ。

 当時の彼女が歩いたであろう、高架の下の線路跡を同じく西へ向かって歩い
て、ほぼ確信したのだけど…

 「自殺」と言われている彼女の死は、実は「事故」だったんじゃなかろうか。

 死の直前に、「ノート」に残した詩は、「旅に出よう」で始まっている。

 死んだときの彼女の服は、京都へ来た母親からデパートで買ってもらったワ
ンピース。いわば「よそ行き」の一張羅だ。

 それを着て彼女は、どこかへ「旅」に出ようとしたんではないか。

 当時の山陰線は、昼間でも1時間に1〜2本の「汽車」が走るだけのローカ
ル線である。
 そこに、深夜の2時に汽車が走るとは、おそらくは想像もしてなかったので
はないか。

 御前通から線路を西に辿ると、現在は「円町」駅に行き着くが、この駅は当
時はなく、直近の駅は「花園」駅。
 そこへ早く確実に行き着くには、すでに列車の走っている「はずのない」線
路を辿るのが、一番手っ取り早い。
 実際、わしなんかも当時…って、69、70年ころ…実家から駅へ行くのに、踏
切から線路に入って、線路から直接ホームにあがる、てことを、しょっちゅう
やってた。

 高野悦子もまた、花園駅まで線路を歩いて、そこで、一番列車を待って、ど
こかへ行くつもりだったのでは、なかろうか。

 自分を見失ったとき、「旅に出る」のもまた、70年代的「熱病」でもある。

 当時ラジオからよく流れていたこの曲…
 http://www.youtube.com/watch?v=ng5F5qsqq2E
 もまた、「旅に出る」歌だ。
 彼女が頻繁に通ったという、河原町荒神口のジャズ喫茶「しあんくれーる」
でも、この曲はよくかかっていたろう。

 高野悦子もまた、「夜が明けたら、一番早い汽車に…」乗るつもりで、深夜
の線路を、茶色いワンピースで歩いていたに違いない……
 と、夕方近い高架下の旧線路跡で妄想の輪を広げた、秋のある日なのだった。

 ちなみに「二十歳の原点」、この本がベストセラーとなった当時に、一度映
画化されていて、これは未見なのだけど、あえて「今」、再映画化したら、面
白いんじゃないか、と思うのだけど、だれかやってくれないかな?

太郎吉野(たろう・よしの)
元・漫画プロダクション勤務を経て元・本屋。ただいまの本職は「文筆業」の
はずなのだが、もっぱらは複数校掛け持ちにて漫画家を目指す若者たちに、え
ーかげんなこと教えては路頭に迷わすことで生計を立てている。神戸在住。

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■「背伸びして本を選ぶ」/十谷あとり
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16 冬のブックオフで、絵本を買う

テレビを観ていたら、ブックオフのコマーシャルが流れてきた。中年夫婦が105
円の本を何冊も買い込む。公園かどこかの芝生に座り、買って来た本を広げる。
奥さんがうれしげにレシートを眺める。そんな絵。そして、「大人の楽しみ、
105円から」「好きな本を、好きなだけ」というコピー。折々、夫と一緒にブッ
クオフに行くので、この設定は他人事とは思えない。中途半端なリアルさが身
に迫って、観ていて気恥ずかしい。いっそ林家ペー・パー子夫妻が演じてくれ
ていたらよかったのにと思う。「定価3,000円の本が105円だってさ」「イヤ〜
ダ〜、アーッハハハハ」そして店内でばしゃばしゃ写真を撮りまくってほしい。
制止する店員を無視して。

コマーシャルをしようがしまいが、わたしはブックオフが好きだ。好きだから
月に何度でも行く。105円の本を買う。
昨年の11月からこの1月にかけて、105円の絵本に恵まれ続けている。以下、福
音館書店の絵本に絞ってタイトルを拾ってみる。

『たろうのおでかけ』 村山桂子さく 堀内誠一え
『長ぐつをはいたねこ』 ハンス・フィッシャー ぶん・え やがわすみこ 
やく
『ぞうくんのさんぽ』 なかのひろたか さく・え なかのまさたか レタリ
ング
『ゆかいなかえる』 ジュリエット・キーブス ぶん・え いしいももこ や

『ももたろう』 松居直 文 赤羽末吉 画
『かさじぞう』 瀬田貞二 再話 赤羽末吉 画
『さるとかに』 神沢利子 文 赤羽末吉 絵
『もりのひなまつり』 こいでやすこ さく
『たからさがし』 なかがわりえこ と おおむらゆりこ
『どうぶつのおやこ』 藪内正幸 画
『いたずらこねこ』 バーナディン・クック ぶん レミイ・チャーリップえ
 まさきるりこ やく
『ちいさなねこ』 石井桃子 さく 横内襄 え
『あさですよよるですよ』 かこさとし さく
『しずくのぼうけん』 マリア・テルリコフスカ さく ボブダン・ブテンコ
え うちだりさこ やく
『たまごとひよこ』 ミリセント・E・セルサム ぶん 竹山博 え 松田道
郎 やく
『のろまなローラー』 小出正吾 さく 山本忠敬 え
『おふろだいすき』 松岡享子 作 林明子 絵
『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』 バージニア・リー・バートンぶん/え
 むらおかはなこ やく

めずらしいものはないかもしれないが、どれもわたしが「小さい子と一緒に読
みたい」と思う本ばかりなので、ありがたく、うれしい。これらをこのあとど
うするか。写真を撮ってオークションに出品するのか。あるいは絵本児童書で
一箱にまとめて、どこかの古本市に参加させてもらうのか。いずれにせよその
一手間の前に、きれいに拭いた絵本を並べて眺めるしあわせ。他の本はともか
く、絵本ばかりは手放さずに置いておこうかとも思ってしまう。息子どもが独
立して、二人暮らしになったら、空いた一部屋をこども向けの文庫にしてもい
いかもしれない。そうしたら、近所のこどもが遊びに来てくれるだろうか。か
つて息子どもが、公文式の教室で絵本を借りて読んでいたように。

〈じゅうや・あとり〉今回をもちまして寄稿を終了させていただきます。「背
伸びして本を選ぶ」にお付き合いいただき、ありがとうございました。

■【このはな文庫 十谷あとりの本棚】http://konohanas.exblog.jp/
■【ハイクオリティボタンのセレクトショップ ボタン王子のお店】541-0047
大阪市中央区淡路町2-6-10大阪毛織会館4階
電話06-6228-5300 http://artsynchs.co.jp/

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/大麦親父乳酸脂肪
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第25回 平田オリザが求めるもの(その2)

 前回ご紹介した『演劇入門』(講談社)(講談社現代新書)(1998)の続編。
姉妹書と云ってよい本を今月はご紹介しよう。

 『演技と演出』(平田オリザ 著)(講談社)(講談社現代新書)(2004)

 題名のとおり、演技と演出について、平田オリザさんが一般の人にわかりや
すく伝授している。平田オリザ主宰の演劇ワークショップに参加しているよう
だ。

 前作の『演劇入門』が芝居の作り方、戯曲の書き方を伝授する本ならば、こ
ちらは芝居の演出の仕方と演技をするときのコツを説いた本になる。

 平田オリザらしく、まずは言葉の定義から始める。
 「演技」とは、俳優が自分を制御して何かの振る舞いをすること。
 「演出」とは、外から与えられるもの。

 ・・・・・・このように定義づけられても、素人はよくわからない。この定義が本
書を読む前からすんなり理解できれば、もう本書を読む必要はない。ちんぷん
かんぷんならば、本書を楽しみながら読めるというものだ。

 さて、いずれにしても、どうやって「演技」をするのか?また「演技」させ
るためにどのように「演出」するか?

 平田オリザが好んで使う言葉のひとつに「コンテクスト」という言葉がある。
通常「文脈」と訳しているが、平田の場合、一人ひとりの言葉の使い方の違い、
ひとつの言葉から受けるイメージの違いを、この「コンテクスト」という言葉
で表現している。この「コンテクスト」=生い立ちや環境で違ってくる言葉の
使い方や言葉のイメージの違い。を理解した上で、演技をさせ、演出をする。
人はそれぞれさまざまな「コンテクスト」を持っているから、せりふを云う人
と云われる人が持っているその「コンテクスト」を摺り合わせ、同じにしてい
く作業を「演出」という。例えば、平田が本書で盛んに例示しているのが、
「ご旅行ですか?」というせりふがある。いったいこれを自然に云うためには
何が必要なのか、何が邪魔なのか。普通に考えれば、このせりふを云う側にだ
け責任があり、せりふをどうやったらしっかり自然に普通にさりげなく云える
のか。せりふを云う役者は悩みながら発語しようとする。しかしうまくいかな
い。なぜか?

 せりふを云う側と云われる側それぞれが「コンテクスト」を摺り合わせてい
ないからだ。列車内のボックスシートでいきなり向かいの人に話しかける人は
そうそういない。もしも自分が他人に話しかけるとしたら、どう云うのか?と
イメージを広げていくこと。これが、「コンテクストを摺り合わせる」ことで
ある。自分が自然に「ご旅行ですか?」と云えるためには、何が必要なのか。
つきつめて考えるとそれは、「ご旅行ですか?」と発語する側よりもむしろ話
しかけられる側に強い要素があることがわかってくる。我々は常に相手をみて
ものを云い、会話をしているのだ。自分の話は相手次第。相手あっての会話で
ある。いくら人見知りしないで快活な人でも、向かいに座っている人がやくざ
とわかれば話しかけはしまい。あるせりふを云うには、相手が話しかけられや
すい状態になっていなければ、いいせりふは云えないのである。“相手の力を
利用してせりふを云う”。

 演劇の素人でもわかりやすい議論の展開は、読んでいても小気味よい。

・・・・・・・・・・・・・・・

 最初の方に書いた、一文に戻ってみよう。
 「演技」とは、俳優が自分を制御して何かの振る舞いをすること。
 「演出」とは、外から与えられるもの。

 人がせりふを云いやすい状態にするのが演出であり、相手にせりふを云いや
すくさせるように振る舞うのが演技なのだ。うん。よくわかる。

・・・・・・・・・・・・・・・

 演劇は人生に似ている。と平田は云った。人は、人生をうまく演出していか
なけばならない。

「何のために生きるのか」という命題は、「いかに生きるのか」という命題と
両立するかどうかは、まだ議論の余地があるように思えるが、人生を演出する、
という考えには双手を挙げて賛成したい。

大麦親父乳酸脂肪(呑み疲れ、脂肪が溜まる正月明け。だるい体に鞭をうつ。)

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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13 文学の効用

 年があけました。

 昨年の震災以降、どうにもこうにも時間のたちかたが自分の中で変わってし
まい、震災前のことがずいぶん前に感じられ、目に見えない原発の嫌悪感は強
まるばかりです。

 ときに心をほぐさくては。

 『やぎと少年』
        アイザック・B・シンガー 作 モーリス・センダック 絵
        工藤幸雄 訳 岩波書店


 ノーベル文学賞受賞作家、アイザック・B・シンガーは、子どもに向けての
本も執筆しています。
 訳者あとがきによると本書はシンガーがさいしょに若い人たち向けに書いた
作品とのこと。まえがきにシンガーはこう記しています。

 

  過去とそれにまつわるさまざまな気持ちを思い出すうえに役立ってくれるも
 の、それが文学です。

 

 シンガーは本書を〈おとなになる機会を持てなかったおおぜいの子どもたち〉
に捧げています。

 子どもたちがおとなになれなかったのは、”ばかげた戦争、ざんこくな迫害
が、町まちを荒らして、罪のない家庭をめちゃくちゃにしたせいでした。”と
つけくわえ、読者に”みなさん自身が、お父さん、お母さんになったとき、自
分の子どもばかりでなしに、世界じゅうの良い子どもたちみんなを、かわいが
ってほしい”という願いも伝えています。

 7つの短編がおさめられ、センダックが緻密な挿絵を描いた本書を以前から
何度も読んでいるのですが、今回の再読はことのほか楽しめました。寓話のよ
うな短編のいずれも、冒頭から心の奥にある凝った気持ちがほぐされていくの
を感じたのです。


「つくりものの天国」では、自分が早く死んで天国にいきたい男が登場します。
なまけ者なので勉強も仕事もしたくない。死ねばなにもせずにいられるから、
早く死にたいと思いこむ男に、家族は心配して名医に相談にいきます。名医の
指図どおりにすると男はどうなったか――。

 まぬけな男のその話はなんともいえないおかしみがありリアリティがありま
す。また無駄のない文体からは、人の感情がよりくっきりみえてきます。

 表題の「やぎと少年」(短編タイトル「やぎのズラテー」)はハヌカのお祭
りに必要なものを買うお金も欠くほど不景気なため、大事にしていたやぎを売
りに出す話です。父親はやぎをかわいがっていた少年に売りにいく役割を命じ
ます。少年がやぎを連れて家を出たあと、天気が急変しひどい雪になりました。
経験したこともない大雪の中、目的地にいくどころかどこにも動けなくなりま
す。このままでは生きて家に帰れるのか――。

 雪の中にとじこめられた少年とやぎがどんな3日間を過ごすのか、話をしめ
くくる最後の一文に、読んでいて自然と笑顔になりました。


「おばあさんのお話」のはじまりはこんな風です。


  何がおもしろいといって、こまを回して点を争うドロイデル遊びには、か
 なわない。でも、子どもの夜ふかしはいけないよ、さっきからレアおばあさ
 んが、しきりにそう声をかけていました。それじゃあ、寝る前にお話を聞か
 せて、とみんなは、おばあさんにせがみました。

(ドロイデルというのは、あとがきで説明されているように、ハヌカのお祭り
の間に子どもたちが楽しむこま遊びのことだそうです。)

 せがまれて子どもたちにしたおばあさんの話は、なんだかめっぽうおもしろ
く感じました。気持ちをわくわくさせて聞くというそのことが、自分にも本当
に起きたように感じたのです。

 
 文学は、物語は、こうして何年も前に語られたものでも、いまこのときの気
持ちをほぐしてくれる――7つの物語を読んだあと、あらためてシンガーいう
ところの文学に今回もまた深く共感した次第です。


 今年もこのメルマガのおつきあいをどうぞよろしくお願いいたします。

(林さかな)
会津若松在住。主に児童書の新刊紹介をネットで公開したり、出版翻訳データ
ベースのサイト( http://www.trs-data.com/ )にて、翻訳者のインタビュー
記事を書いたりしています。個人ブログ http://r2fish.cocolog-nifty.com/

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本が欲しい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡ください。

『ビジネス真実践』(アルマット)
 http://www.arumat.com/book/b97255.html

 マグナム・ハート作『連番禁止ナンプレ』(パブリック・ブレイン)
 http://www.publicbrain.net/books.htm

『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)
 http://www.seikatsushoin.com/bk/083%20america.html

『心に響く遺言書』(学研パブリッシング)
 http://hon.gakken.jp/book/1340482500

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社でも著者でもどちらでも結構ですが、献本を募ります。冊数は
 何冊でもOKです。メールで【読者書評用献本希望】とご連絡いただければ、
 折り返し、送付先をお知らせします。

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、熱意と販促効果優先で選ばせていただきます。

3)発行委員会はいただいたメールの中から、熱意がありそうな方をピックアッ
 プして献本いただいた本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に
 応募数が満たない場合には、100日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンやbk1、楽天などのオ
 ンライン書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。
 つまりは当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願
 いします。

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 新年あけましておめでとうございます。新年早々、発行日に発行できるとい
うのは、縁起が良いですね。

 私は何だかんだで文章を書くことを生業としていることが多いのですが、最
近はそのエリアがどんどん広がっていると感じています。これはとても嬉しい
ことですね。

 出版の不景気話は相変わらずですが、なぜか新しい出版社も次々と立ち上が
っていたり、潰れたはずの出版社が再生していたりと、なかなかどうしてしぶ
といのが出版界。

 個人的には今年は出版関係がとても面白くなると踏んでいますが、さて、面
白い本や記事にどれくらい出会えますかどうか。

 今号で、十谷あとりさんが連載終了ですが、ブログ等は続けられるようです
ので、皆様、是非、応援してあげてください。

 そして、新しく応援して欲しい書き手さん、いらっしゃいましたら、いつで
もウェルカムです。大きく応募はしませんが、いつでも待っています。読者の
方も書き手の方も、そんなに差がないのがこの[書評]のメルマガです。本好き
だもの。ねぇ。

 本年もよろしくお願い致します。(aguni原口)

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