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[書評]のメルマガ vol.623


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■■ [書評]のメルマガ                 2017.2.10.発行
■■                              vol.623
■■ mailmagazine of book reviews   [どこに消えたのでしょうか? 号]
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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→漫画で読みたい! 日本近代文学史

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→Silence 神よ なぜ黙っているのですか

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→大きな絵本の大きな世界

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<86>漫画で読みたい! 日本近代文学史

 母さん、僕のあのマトン、どうしたんでせうね?
 ええ、夏、すき焼きをするってときに、
 うちは貧乏だからって買ってきたあのマトンですよ。

 母さん、あれは好きな肉でしたよ、
 僕はあのときずいぶんうれしかった

 ♪Mama! Do you remember…

 そう、「マトン」ですよ。
 子羊肉の「ラム」に対して、大人の羊の肉が「マトン」。

 わしが子供のころ…というのは、つまり昭和40年代…には、肉屋さんで一番
安かった肉が、この「マトン」なのだった。
 値段の序列でいうと、牛肉→豚肉→ラム→マトン。
 ラムよりも臭みが強くて少し硬いというので、世間ではやや敬遠されていた
マトンだったが、わしは、好きだった…のは、母方の祖父が猟師だったので、
猪や兎肉に慣れてたせいかもしれない。
 なので、お使いを頼まれて、「今月はちょっと苦しいから、マトンを 400グ
ラム」とか言われると、妙に嬉しかった。

 あのころは、テレビでも、「♪ニュ〜ジ〜ランド、ラ・ム!」と、軽快なコ
マソンに乗せて、ニュージーランド産羊肉を、盛んにコマーシャルしてたのだ
が、コマーシャルを「最近見ないな…」と気づいたころには肉屋の店頭からも、
羊肉は消えていた。
 気がつけば、スーパーでたまに見かける「ラム・チョップ」なんて、すっか
り高級食材となっている。

 なんで肉屋の店頭から安価な羊肉が消えたのか?
 対ニュージーランド貿易に、どこかの時点で、なんか問題が生じたんですか
ね…?

 「マトン」に限らず、ふと気がつくと、いつの間にかなくなっていた、ある
いは何かにとって変わられていた、ということがままある。

 たとえば、同じく食い物でいうと、「細長いリンゴ」。
 「印度リンゴ」とか、「キングデリシャス」といった品種名だったと思うけ
ど、かなりどぎつい濃い赤色の皮で、側面がやや凹んだ形状の、細長いリンゴ。
 ふと気がついたときには、スーパーや果物屋の店頭には「富士」に代表され
る「丸いリンゴ」ばかりで、あの細長いリンゴは、いったいどこに消えたので
しょうか?

 ♪わたなべの、ジュースの素ですもう一杯…
 とテレビで盛んに歌ってた「粉末ジュース」というのも、あっと言う間にな
くなりました。

 駅のホームでの「白線まで下がってお待ちください」のアナウンス。
 今やどことも「黄色い線までお下がりください」あるいは「黄色い点字ブロ
ックまで…」が主流。
 「黄色」いのは、「線」ではなくて確かにブロックだから、「黄色い線」と
の表現は、如何なものか、とも思うが、それはさておき、それでは「白線」は、
なんのために、未だ残されているのだ?
 面倒なので、あえて取り外されないかつての「遺構」かと思えば、新設のホ
ームにも「白線」と「点字ブロック」の両方があるぞ。なんでだ?

 大衆食堂の「めし」という平仮名で独特の書体の看板や暖簾も、いつのまに
か街から消えてしまった。

 西日本では元からなかったようだが、「蒲団の袖」というのも、東日本にお
いてはいつのまにか「消えた」ものなのか? という疑念は、夏目漱石の随筆読
んで湧いてきた。

「…寝心地はすこぶる嬉しかったが、上に掛ける二枚も、下へ敷く二枚も、こ
とごとく蒲団なので肩のあたりへ糺の森の風がひやりひやりと吹いて来る。車
に寒く、湯に寒く、果は蒲団にまで寒かったのは心得ぬ。京都では袖のある夜
着はつくらぬものの由を主人から承って、京都はよくよく人を寒がらせる所だ
と思う。」(夏目漱石『京に着ける夕』)

 『京に着ける夕』は、正岡子規とともに京都に遊んだことを記した随筆だが、
その中の、朝東京をたって後、ほぼ一日がかりでその日の夜に京都に着いて駅
から人力を雇い、底冷えのする京の冬、糺の森近くの旅館に投宿したくだりが、
上の文章。

 敷蒲団も掛蒲団も「ことごとく蒲団」というのは、しごく当たり前に思える
のだが、漱石にとっては「あり得ない」事態だったようだ。
 「袖のある夜着」とは、今日東北地方に見られる「かいまき」のことかと思
うが、上の漱石の文章では、彼は日常的にこれを使用していたようだ。
 さらに、「京都では」これを「つくらぬ」という事実を知るに及んで、やや
怒気を含んだ憤りを記している。多分、旅館の主人を呼んでねちねちとクレー
ムつけたんだと思う。クレーマー漱石、ですね。
 言われた旅館の主人も、さぞ困ったと思う。おそらくは「袖のある夜着」な
んて、見たこともなかったろうから。

 わしは、学生時代から10と数年間を東京で過ごしたのだけど、寝るときに
「かいまき」を使用する人、というのには、ついぞ出遭ったことがない。ふと
ん屋などで売ってるのを見たこともない。そもそも、「かいまき」という夜着
の存在を知ったのも、東京を離れてからだ(たまたま見た通販雑誌ではじめて
知った)。
 しかし漱石の文章では、さもそれが「当たり前」のような書きようである。
 さすれば、「袖のある夜着」というのも、漱石の時代、東京では「当たり前」
だったのが、いつのまにやら消えてしまった習俗だったのか? と思った次第。

 漱石は、人並み外れて「寒がり」だったというから、夏目家独自の習慣だっ
たかも知れないのだが、その辺、どうなんでしょうか?

 そう言えば、かつては各社が競い合うように「日本文学全集」または「世界
文学全集」あるいは「少年少女世界文学全集」はたまた「日本近代文学全集」
なんてのが、文芸系出版社各社から相次いで刊行されていて、どこの家にもど
こかの出版社が出した全集が、専用の書架にずらりと収まってたり、あるいは
その端本がその辺に転がってたりしたもんですが、あの光景も、「百科事典」
とともに、いつのまにやらご家庭からなくなってしまった。
 わしも、たとえば夏目漱石とか芥川龍之介、井伏鱒二や川端康成なんてのは、
家にあった全集の端本で読んだ記憶がある。

 文学全集は消えてしまったけれども、近代の日本の文学者とその周辺及び同
時代との係わりを、漫画で描くことが、静かなブーム…と言うほどではないが、
気を付けて見てみると、結構目立ってきているように思える。

 この分野での嚆矢であり、さらに「金字塔」とも言える存在が、「漫画アク
ション」で連載され、単行本と文庫版がともに双葉社で現在も版を重ねている、
関川夏央・作/谷口ジロー・画の『坊ちゃんの時代』から続く連作「明治五部
作」である。

 漱石と、漱石邸に出入りするその門弟たちとの関わりを中心に、「ラフカデ
ィオ・ハーン」や「仕立て屋銀次」も登場する第一部『坊ちゃんの時代』。
 森鴎外と、彼を追ってはるばるドイツから来日した「エリス」の物語を中心
に、二葉亭四迷なども登場する第二部『秋の舞姫』。
 石川啄木の放蕩とそんな彼に凝りもせず、乞われるままひたすらに経済的援
助を続ける金田一京助の日々、そしてそこに女史・樋口一葉の夭逝が絡む第三
部『かの蒼空に』。
 幸徳秋水と「大逆事件」を軸に展開する第四部『明治流星雨』。
 そして再び漱石を主人公に据え、「修善寺の大患」からの生還と、過去四部
の人々のその後を語りながら「明治」という時代の総決算としてまとめられた
第五部『不機嫌亭漱石』。

 関川夏央と谷口ジローのタッグは、この五部作で「明治」という時代を見事
に活写し、この時代の町の…ことに東京という都市の空気や、その空気の中に
棲みながら、時代を動かし、作ってきた文学者や政治家、社会活動家たちの生
活を、活き活きと描き出して見せてくれた。

 これは、漫画というメディアの特性でもあり、また谷口ジローの画力に負う
ところも大なのだが、『坊ちゃんの時代』は、漱石や森鴎外、石川啄木や樋口
一葉、等々の人物が、肖像写真や肖像画、または千円札や二千円札を通じて我
々がよく知ってる顔かたちで、キャラクターとして動くのである。
 このインパクトは大きい。

 実写映画や小説で、同様のモチーフが展開された例は過去にもあるが、彼ら
がキャラクターとなったとき、その「実在感」というのは、漫画に一日の長が
ある。
 胃痛に耐えながら、原稿用紙を前に所在無げに鼻毛を抜く漱石。
 「維新」とは決して呼ばず、明治維新を終生「瓦解」と、不機嫌に呼び続け
た漱石。
 市電で出会った金田一をこれ幸い、「君、少し用立ててくれたまえ」と悪び
れもせず借金申込み、意気揚々と女郎買いに向かう啄木。
 そのリアリティと存在感は、いずれも圧倒的だ。

 この「実在感」は、中原中也と小林秀雄…この二人の関係性って、啄木と金
田一京助の関係性にそっくりなんですね…そして中也の愛人である康子、三人
の三角関係を軸に物語が展開する、曽根富美子『含羞(はじらひ)−我が友 中
原中也−』もそうだし、芥川龍之介を主人公に、室生犀星、萩原朔太郎という
二人を狂言回しとして、大正時代に文士が多く住んだ「田端村」と大正文壇の
盛衰を描いた、松田奈緒子『えへん、龍之介。』でも、彼らは、それぞれの時
代の中で同じ存在感を有していて、なのでその時代性や背景の町や社会もまた、
とてもリアルに感じられる。

 ことに、『えへん、龍之介。』での、ハンサムで知的な風貌を持ち、人前で
はインテリ然とした振る舞いを崩さない主人公・龍之介が、ふとしたはずみに
見せる下世話でミーハーな側面が、とても秀逸。

 中原中也と小林秀雄のコンビを描いた作品としては、月子『最果てにサーカ
ス』が、最近まで「月刊スピリッツ」に連載され、単行本は全3巻で出ている。

 また、現在連載中の作品としては、倉科遼・作/ケン月影・画の『荷風にな
りたい −不良老人指南−』がある。
 こちらは、永井荷風の、若年時からの性的嗜好、ありていに言えば旺盛な性
欲が嵩じての「変態性欲」にスポットを当て、そんな彼の女性遍歴…というよ
りも性的漁色を軸に、文豪・荷風の生涯を描く取り組み。
 物語は2017年2月現在の連載では、『墨東奇譚』のあたりまで進んでいる。
 これ、絵を担当するのが、あの、エロ劇画の巨匠・ケン月影なので、電車の
中では開くのが躊躇われるページが多くて、乗り物読書には、やや不向きです。

 こちらの主人公は文学者ではないのだけど、村上もとか『フイチン再見!』
もまた、漫画家・上田としこの生涯を描くことによって、彼女と、彼女が生き
た時代とその背景を浮き彫りにしようとしている点で、上記各作と同列かとも
思う。
 こちらは、連載ではただ今1970年代。物語には、若き日の作者・村上もとか
が登場してきている。

 この分野、ひそかに期待しているのだが、まだまだ描かれてない人と時代を
発掘し、どんどん読ませていただきたい、と思う。

 たとえば……
 坂口安吾、太宰治にオダサクを絡めて、檀一雄を語り部とする「無頼派」一
党の暴れっぷり。

 あるいは、野坂昭如を主人公にして、永六輔や小沢昭一らの「中年御三家」
や雑誌「面白半分」、そして「四畳半襖の下張り」事件がからんでくる昭和元
禄浮世草紙。
 さらにそこからスピンオフする形で、上村一夫と阿久悠の交友を軸に、新宿
ゴールデン街紳士録、なんて物語。

 萩原葉子『蕁麻の家』は、世田谷代田に居を構えたばかりの萩原朔太郎一家
を、娘の視点から描いた物語だが、これも漫画で読んでみたい、とも思う。

 最近アニメ化された『この世界の片隅で』でにわかにブレークしたこうの史
代には、林芙美子の尾道時代なぞ、ぜひ描いてほしい…と思ってみたり。

 ……等々、等々、妄想は無限に膨らんでいくのだけど、上のどれか、本当に
実現しないかな。


太郎吉野(たろう・よしの)
 2011年に神戸から西宮へ引っ越して、ただ今のホームグラウンドは甲子園。
右投げ右打ち。掛布二軍監督はひとつ年上の同級生。

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第86回 Silence 神よ なぜ黙っているのですか

 先月は上智大学の先生でイエズス会の神父でもあるピーター・ミルワード先
生の本を紹介した。今月もイエズス会に関係のある本を紹介したいと思う。イ
エズス会宣教師の話。でもそれは小説なので、フィクション。しかしいたる処
に史実どおりのこともちりばめている小説を紹介したい。そしていま、それを
原作にした映画が劇場で上映されている。

『沈黙』(遠藤周作 著)(新潮社)(1976年(昭和41年))

 遠藤周作はクリスチャンであった。そして本書はクリスチャンである遠藤周
作が終生、心の中で問うていた問題について書いた物語であった。すなわち、
「神はなぜ黙っているのか」という疑問であり、これが本書の主題なのである。

 主(創造主=神)は慈悲深く、人々を苦しみから救ってくださる。しかし、
日本の切支丹のことはお救いにならなかった。神は沈黙したままだった。そし
て、それはもしかしたら実は神は常に沈黙したままなのかもしれない、神がな
にかをしてくれることなど今までもあったのだろうか、という疑念に信徒は苦
しむことになったのかもしれない。そしてそれはさらに恐ろしい疑念となって
いくのである。すなわち、神は本当に存在するのか。と心のどこかでおもって
しまうことになるのだ。

 この物語によると、江戸時代に切支丹の弾圧において、幕府は信者のそうい
う疑念をうまく利用して、棄教を迫ったと云える。信者の心の中の迷いに乗じ
て棄教に持っていく。神の存在を疑うこと自体が神への冒涜であり、それはす
でに疑うことによって、信者の資格はない、という論法で棄教させていく。

 また、幕府は宣教師=バテレンは処刑しない。バテレンを処刑すると、彼ら
を殉教者にしてしまい、ますます切支丹たちは信仰を深めていくことになる。
拷問し処刑するのは、百姓の切支丹たち。それをしっかりバテレンに見せて、
バテレンを苦しめ、そしてバテレンに棄教を迫るのだ。苦しむバテレンは、懸
命に神に問いかける。主よ救い給え。しかし神は答えない。神は沈黙したまま
である。バテレンの苦しみは最高潮に達する。そして神もお赦しになる、と悲
しみの中で消極的であるが重大な決心をして、転ぶ(棄教する)。

 神を信じることで、なぜこれほど苦しまなくてはいけないのか。神に問いか
けてもなぜ神は答えてくれないのか。そして、神はどこにいるのか。
 作家、遠藤周作の心の中の疑問はまさにここにあったのだろう。

 もうひとつ。遠藤周作の興味は棄教者にあった。フェレイラ師、ロドリゴ神
父、そしてキチジロー。この主要人物3名がみな、転び者なのだ。信仰を守り
続けた強い人たちは漁師たちであり百姓たちなのである。

 物語は珍しい形式となっている。まえがきとして時代背景や物語が始まるま
での経緯が長いト書きのように書かれている。そしてロドリゴ神父の手紙。リ
スボンからマカオ、そして日本の地に潜入し、布教活動の様子を細かく記した
この手紙は、ロドリゴ神父の一人称で書かれている。手紙形式の文体は、ロド
リゴ神父がキチジローの裏切りによって日本の官憲に捕らえられるまで続く。
そして第三の形式として、ロドリゴ神父の思考に沿って物語は進んでいくが、
一人称ではなく、「彼は」という主語で物語を展開させている。第二の手紙形
式は、困難な布教活動を描き、第三の客観的表現では、棄教へ至る心の変化を
描いている。棄教までの心の変化は、一人称に語らせると、必ず自己弁護にな
ってしまうから、客観的な第三者の記述表現にしたのだろうと推察する。
 遠藤は、棄教者に心を寄せている。

 さて、現在上映中の「Silence−沈黙」。巨匠 マーティン・スコセッシ監督
作品。
 原作にほぼ忠実に描いている。
 映画は監督の意志と役者の演技によって完成する。スコセッシ監督の意図を
汲んだ役者たちの演技が素晴らしい。本来はポルトガル語で表現しなければな
らないのだろうが、映画では当然のように英語が使われている。欧州の言葉で
あれば、英語でもいい。英語でも目をつぶるしかないであろう。

 本作の成功は、シークエンスの見事さもさることながら、配役の見事さに尽
きると思う。とにかく観た方がいい。できれば原作を読んでから観た方がいい。
宗教という、理解するのに少し時間のかかるものをテーマにしているので、会
話も高度に形而上学的だから、映画で初見だと、意味がわからない処がたくさ
んあると思うのだ。

多呂さ(フロリダで両首脳がゴルフをするという。遊びのゴルフかそれともゴ
ルフ場での真な交渉なのか、どちらなのだろう)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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69 大きな絵本の大きな世界

『走れ!! 機関車』
 ブライアン・フロッカ 作・絵 日暮雅通 訳 偕成社

 たくさんある絵本の中でどの本を選んで読むのか。
 翻訳絵本ですと、その基準になるひとつが、アメリカで最も権威のある絵本
賞、コールデコット賞です。
 本作は2014年の受賞作。

 大きい判型、見返しから文字がびっしり読ませます。
 でも、まずはここは後で読んでもらった方がいいでしょう。

 1869年、夏、ある家族がアメリカ大陸の東から西へ向かって、開通したばか
りの大陸横断鉄道に乗って旅をします。

 鉄の道を鉄の馬が走る。

 大きな蒸気機関車が大きな鐘の音を鳴らしながら線路を走ってきます。

 迫力満点に描かれるのは機関車だけではなく、
 機関車から発せられる音の文字も色を変えたり大きさに変化をもたらせたり、
ページ全体から動きを感じさせます。

 機関車と共に働く人たちをみせながら、
 乗客として旅の臨場感を読者にもたらせます。

 ページを繰るごとに旅はすすみ、会いたい人のもとに運んでくれます。

 ガタガタゆられながら到着した終点。

 その余韻にひたりながら、今度は見返しに書かれている説明を読む楽しみが
待っています。

 アメリカの蒸気機関車について、その歴史から、大陸横断鉄道のルートまで
絵と文字の情報はたっぷりな読みごたえです。

 蒸気機関車には一度乗ったことがあります。
 地元で時折SLが走るのですが、それにです。
 長旅ではありませんが、迫力あるボーーーッツという音に胸が高鳴りました。

 ローカル線もよく利用しますが、長旅にはイスが固かったり不便もあります。
 でも、車窓の景色が楽しみで、季節ごとに楽しんでいます。

 鉄道旅好きにはたまらない絵本なのはまちがいなし。
 読んでみてください。

 今回はもう1冊ご紹介。 
 2015年イギリスのケイト・グリーナウェイ賞受賞作です。
 この賞は作品ではなく、画家に与えられる賞で、イギリスで出版された絵本
の中でもっともすぐれた作品の画家に対して年に一度贈られます。

 『シャクルトンの大漂流』
           ウィリアム・グリル 作 千葉茂樹 訳 岩波書店

 南極大陸横断に挑戦した28人の男たちの実話。
 
 25歳の画家、ウィリアム・グリルは色鉛筆で隊員たちひとりひとり、そして
一緒に連れていった69頭の犬も含め、あたたかい色彩で繊細に描き出していま
す。

 持ち込んだ道具もすべて描いていて、数が多いものを見開きにおいているた
め、ゴマ粒のように小さいのもあるのですが、その細かさには心をつかまれま
す。小さなものすべての必要性を納得させる愛情を感じるのです。

 小さなものばかりではもちろんなく、それらを積み込む船はでーんと大きく、
荒れ狂うブリザードの海は迫力を持って描かれ、絵本の中がとにかく広くて深
い。南極の寒さまでもが伝わってくるほどに。

 実際にあった過酷な冒険が臨場感をもって迫ってくるのは、大小さまざまな
もののリアルさにあるのでしょう。

 すごいなあ、すごいなあと目をページに近づけたり遠ざけたりしながら南極
の冒険を観察する絵本。読むのにも体力を使った気分になるほどです。

 本書は絵本のつくりもとても美しく、担当編集者さんによると背に布を使っ
ていて表紙にはUV箔という贅沢な造りなのだそうです。

 美しさと厳しさを同時に鑑賞できる贅沢な一冊。
 ぜひ体感してほしいです。


(林さかな)
会津若松在住。
編集協力した新訳「オズの魔法使い」(復刊ドットコム)シリーズ
★おかげさまで少しずつ重版されています
http://1day1book.strikingly.com/

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・『セブン・ハーフ・アンド・ワン』(文芸社)
 http://www.bungeisha.co.jp/bookinfo/detail/978-4-286-17241-5.jsp

・『トシ、1日1分でいいからフクシマ英語に触れてみて。それだけできっと世
  界は変わる。』(SCICUS)
 https://www.facebook.com/scicus.jp/posts/1054815034566643

・『あれか、これか
  「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門』(ダイヤモンド社)
 http://www.diamond.co.jp/book/9784478066041.html

・『最高のリーダーは何もしない』(ダイヤモンド社)
  http://www.diamond.co.jp/book/9784478068137.html

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
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 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

 〒142-0041 東京都品川区戸越5-4-3 アズ品川ビル4階
       ビズナレッジ株式会社内 [書評]のメルマガ 献本 係

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンや楽天などのオンライン
 書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。つまり
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 ました。書評は500字以上でお願い致します。)

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 今年は何だか正月から個人的に慌ただしい日々が続いていまして、いろいろ
メールの返事すらも覚束ない状態…。

 最近、某社では仕事のメールのやり取りをAIでサポートさせる実験が始ま
っているとか。言われてみればビジネスのメールは定型なやり取りが多く、実
用化も早そうです。

 早く実用化されて、この業務メールの山から逃れられないものかなぁ、と、
密かに祈っております。(あ)

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