[書評]のメルマガ

配信済のメルマガのバックナンバーを見ることができます。また、記事に対するコメントもお待ちしております。
<< [書評]のメルマガ vol.629 | main | [書評]のメルマガ vol.631 >>
[書評]のメルマガ vol.630

■■------------------------------------------------------------------
■■ [書評]のメルマガ                2017.06.20.発行
■■                              vol.630
■■ mailmagazine of bookreviews     [打つべき手は打っている 号]
■■------------------------------------------------------------------
----------------------------------------------------------------------
■コンテンツ
----------------------------------------------------------------------

★「トピックス」
→ トピックス募集中です

★「音楽本専門書評 BOOK’N’ROLL」/おかじまたか佳
→ 『新宿ピットインの50年』

★「目につく本を読んでみる」/朝日山
→ 『ジャパン・メイド・トゥールビヨン』浅岡肇編著 日刊工業出版社

★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→ 『発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由』栗原 類 著(KADOKAWA)

★「本の周りで右顧左眄」蕃茄山人
→ 今回はお休みです。

★【募集中】献本読者書評のコーナー
→ 献本お待ちしています!

----------------------------------------------------------------------
■トピックス
----------------------------------------------------------------------
■今回の献本読者書評のコーナー
└──────────────────────────────────

 ダイヤモンド社様より献本頂戴しました。

・久我谷亮『脳疲労が消える最高の休息法 CDブック』
 https://www.diamond.co.jp/book/9784478101919.html

 ありがとうございます!

 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

----------------------------------------------------------------------
■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
----------------------------------------------------------------------
#83『新宿ピットインの50年』

 前回取り上げた『宮澤賢治、ジャズに出会う』にもあったが、日本に初めて
本格的なジャズ・ブームが訪れたのが、1920年代。
 つまり、そこから現在まで大体100年が経っていることになる。
 したがって、50年といえば、その半分を占める年月であるわけだが、その長
きに渡って、日本のジャズの中心としてシーンを牽引し続けてきた老舗のライ
ブハウスがある。
 
 新宿ピットインである。
 
 この店名、ぼくはずっと不思議に思っていた。

 ピットインといえば、レースで車が給油やタイヤ交換、オーバーホールのた
めに一時停まることだ。これとジャズと、一体何の関係があるのだろう???
 もしかすると、ジャズメンの隠語か? はたまた音楽用語か?
 だが、どんな本を読んでもそんな言葉は出て来ない。

 実は、答えは気抜けするほど簡単だった。

 元々は成城大学自動車部に所属する学生が、カーマニアの溜まり場がほしい
と思い、開いた喫茶店だったからなのだ。

 だとすれば、このネーミングはまっとうすぎるくらいまっとうだ。

 その学生、佐藤良武が、両親の営む洋品店のデッドスペースを借りてピット
インをオープンしたのは、1965年、12月24日のクリスマスイブ。
 
 だが、佐藤の目論見ははずれた。

 現在のピットインは新宿二丁目にあるが、開店当初は三丁目、伊勢丹脇の裏
通りにあった。
 今でこそ「裏原宿」などと言って、表通りから少し外れた界隈がかえって注
目されたりするが、その頃はあまり人通りもない、文字通りの「裏」だったら
しい。
 そのため、狙ったような自動車好きの客はあまり来ず、代わりにBGMとし
て流していたジャズを目当てに、音楽好きの若者が集まるようになった。
 60年代の半ば、ステレオはまだまだ贅沢品であり、金のない若者にとって、
レコードを流す店は貴重な情報源だったのだ。だから、ジャズ喫茶を始め、名
曲喫茶、シャンソン喫茶、タンゴ喫茶と、各ジャンルのレコードを売り物にす
る喫茶店が軒を連ねていた。現在のカラオケボックスの先駆形態である、歌声
喫茶なんてのもあった。
 
 ともあれ、そうして集ったピットインの客の中に、ジャズメンの卵たちがい
たのである。
 彼らには演奏する機会がほとんどなく、あっても譜面通りに吹く仕事ばかり
で、自由に即興し、新しいサウンドを追求する場がなかった。
 それを知った佐藤は、当初の目的から転じ、店内にステージをつくって、ラ
イブハウスに舵を切ったのであった。

 ひとつの文化が潮流を生み出すためには、「場」というものが必要だ。
 しかし、それは往々にして人の意図を越え、偶然が偶然を呼ぶ形で形成され
ることが多いような気がする。
 新宿ピットインも、典型的にそのケースだと言える。
 もし、佐藤の目論見が当たってカーマニアが集まっていたら後のピットイン
はないし、日本のジャズも随分形を変えてしまっていただろう。
 それが、幸運にも(!)失敗することによって、ヒョウタンから駒の喩え通
り、ライブハウス、ピットインが生まれたのだ。

 もうひとつ幸いだったのは、佐藤がカーマニアであっても、ジャズマニアで
はなかったことである。

 だから彼は、音楽的なことに一切口出ししなかった。いや、出来なかった。 
 ジャズに詳しいオーナーであれば、「これはジャズではない」と拒否したか
もしれないような新しい音楽を、むしろジャズには素人で、旧来のジャズに思
い入れがない佐藤だったからこそ、オープンな態度で受け入れることができた
のである。
 
 それだけではない。タイミングも味方した。

 渡辺貞夫が人気プレイヤーの座を捨てて、単身渡米。バークリー音楽院に留
学して学んだ知識を、帰国後、惜しむことなく仲間に伝えたという、日本ジャ
ズ史に有名な美談があるが、これがちょうどその頃だったのである。
 それまでの経験的なジャズ演奏に理論的な体系が与えられた、いわば、日本
のジャズがアメリカのモダン・ジャズを消化し、その地平を越えてオリジナル
なものを創造しようとする胎動期。
 まさにその時期に、新宿ピットインが現れる。
 これを、天の配剤と言わずして何と言おう。

 かくして野心に燃えたミュージシャンがピットインに続々と集結し、さまざ
まな実験を始めた。その勢いがいかに旺盛であったかは、当時のピットインが
朝の部、昼の部、夜の部と三部制であったことからも伺い知れる。朝っぱら
(といっても、この世界のことだから、昼の12時だが)からわずかなギャラで
も演奏したいと願うミュージシャンが、それだけたくさんいたということなの
だから。
 
 しかし、演奏する者ばかりでは、「場」は成立しない。聴き手が必要だ。

 この点でも、新宿という土地柄が、味方をした。
 
 時代は、学生運動華やかなりし頃。ことに新宿には過激な学生が多く集まっ
て、ピットイン開店の数年後には新宿騒乱があり、西口フォークゲリラが出没
することになる。
 
 ぼくはまだ小学生で、後から本でこうしたことがあったのを知り、遅れて来
た世代であることを恨めしく思ったものだ。あと、10年早く生まれていれば、
この騒乱の新宿をリアルタイムで体験することができたのに、と。
 もっとももしそうだったら、過激派学生からそのまま過激派ゲリラになって、
内ゲバと呼ばれた不毛な内輪同士のテロに巻き込まれ、早々とくたばっていた
かもしれない。何とか生き延びたにしても、よど号ハイジャックにでも加わっ
ていま頃は北朝鮮に埋もれていたかもしれないので、幸いだったとも言えるが、
それはともかく。
 
 騒然とした雰囲気の中で新宿に集まった若者たちは、さまざまなセクトに分
かれていたが、既成の体制にアンチを唱える思いは同じだった。
 そしてそれは、既存のジャズに飽き足りず、音楽的冒険に挑んでいくジャズ
メンたちへの熱い共感となったのである。
 ミュージシャンとオーディエンスの、幸福な一致。

 そのシンボルとなったのが、新宿ピットインのレギュラーとして活躍した山
下洋輔だ。
 
 ドラムに森山威夫、サックスに坂田明を迎えた時代の山下トリオは、毎回全
力で音楽に没入した。森山は足が攣るまでバスドラを蹴り、坂田はのたうち回
ってブロウし、山下は拳や肘でピアノを叩き、ついには足蹴りまでかます。
 その格闘技のようなフリージャズには、これまでのジャズを破壊し、その廃
墟の上に、全く新しい音楽美を構築しようとする強烈な意志があった。
 革命を志向する学生たちだからこそ、敏感にこの音楽革命に共振できたので
ある。
 
 山下トリオが出演する夜のピットインは、満員の聴衆が詰めかけ、熱狂の坩
堝となった。演奏者と聴き手が真剣勝負で対峙する、その激しい嵐のような時
間は、いまとなっては関係者の証言からおぼろげに浮かび上がるものを想像す
るしかない。
 
 そういう意味で、その時代を体験した人たちの言葉を記録に残すことは重要
だが、しかし、その山下洋輔もいまや75歳。先輩である、渡辺貞夫は84歳。彼
らの生い立ちを含め、ピットイン黎明期の思い出を書物としてまとめておくた
めに、そう長い時間が残されているわけではない。

 そこに2015年、本書が出た。

 このタイミングの絶妙さも、ピットインという「場」が、いまもまだ「持っ
てる」証拠だろう。

 山下を始め、新宿ピットインで伝説的なパフォーマンスを繰り広げてきたミ
ュージシャン18名を、佐藤良武自らがインタビューして、半世紀に渡る歴史を
まとめた『新宿ピットインの50年』。
 監修は音楽ライター、田中伊佐資。編集は、新宿ピットイン50年史編纂委員
会。

 本書をひもとくだけでなく、いまもなお日毎、夜毎、伝説を生み出し続けて
いる新宿ピットインを、あなたも訪れてみませんか?

田中伊佐資 監修
新宿ピットイン50年史編纂委員会 編
『新宿ピットインの50年』
2015年12月24日 初版印刷
2015年12月24日 初版発行
河出書房新社

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
今年のポール・マッカートニーは、ついにパス。まあ、前回の来日公演で、な
んか、堪能しきった感があり、行くとすれば武道館か、と思いつつ、とはいえ
10万はないでしょ。それに、東京ドームに比べれば、そりゃあ小ぶりな会場で
はあるが、やはり遠くに豆粒ほどのアーティストを見ることに、さほどの興奮
を感じなくなってきたのです。その点、ライブハウスはいい! アーティスト
の息遣いが伝わるような、場の一体感が違います。今回取り上げた新宿ピット
インのみならず、下北沢のシェルター、mona records、basement bar……今月
は六本木の虎寅虎で月光グリーンの2DAYSに参ります!行くぜ!R&R!

----------------------------------------------------------------------
■「目につく本を読んでみる」/朝日山
----------------------------------------------------------------------
『ジャパン・メイド・トゥールビヨン』浅岡肇編著 日刊工業出版社

 前回紹介した『100万円超えの高級時計を買う男って馬鹿なの?』をきっか
けに知った日本の独立時計師浅岡肇の名前を検索したら出てきた本。日刊工業
新聞創刊100周年記念出版である。

 独立時計師というのは、1からムープメントから何から全て自分たちの手で
時計を来る人たちで、一般にはスイスにある独立時計師アカデミーという団体
のメンバーをさす。
http://www.ahci.ch/members/

 世界トップレベルの技術力を持っている人でないと入れない組織である。そ
の中に日本人が2人いる。そのうち1人が浅岡肇氏である。腕時計の中に日本
人として初めてトゥールビヨンという機構を入れた時計を作った人。トゥール
ビヨンとは時計の姿勢差(上向き下向き仰向けうつぶせなど)によって生じる
誤差を補正する機構のこと。
 置き時計の振り子に当たるテンプと、テンプを動かす脱進機を回転させるこ
とによって姿勢差による誤差を最小限にしようとする機構で、有名な時計師ブ
レゲが発明した。

 これを腕時計に入れる試みは戦前からあって、実際に腕時計に組み入れられ
たこともあるのだが、当時の工作精度では腕時計では思ったほど精度が出ない。
そのため腕時計の権威ですらトゥールビヨンは要らないと言ったこともあると
か。

 それが1980年代になるとCADと新素材の進化によって工作精度が向上し、
本当に機能するトゥールビヨンが作られるようになり腕時計に搭載されるよう
になる。とはいえ、つくるのに高い技術力が必要なのは変わらないため、高級
時計メーカーは競うようにトールビヨン搭載の、しかも永久カレンダーやミニ
ッツリピーターのような複雑機構を組み合わせた時計を作って、自社の技術力
を誇示している。

 で、この本は浅岡氏が「PROJECT T」という時計を作っていくドキュメント
だ。もともと、普通のノンフィクションのような最後には感動する物語を読ん
でいるような感じではない。そういう要素は全くなくて、強いて言えばカタロ
グや製品の説明書に近い。カタログや製品の説明書と違うのは、熱量である。
こんな熱いカタログ、説明書は、たぶんどこのメーカーも作っていないはず。
ちなみに「PROJECT T」の価格は800万らしい。
https://www.youtube.com/watch?v=pgg6AaFD8zg
http://www.ablogtowatch.com/hajime-asaoka-project-t-tourbillon-indepedent-japanese-watch/

 で、内容だが、最初の浅岡氏のトゥールビヨンができるまでの背景説明が読
みごたえが満点。背景説明といっても書いてあるのは戦後のスイスと日本の時
計メーカーの興亡史だ。他の人の書評で、この部分を特に高く評価する人が多
いのもむべなるかな。

 戦後日本の時計メーカーはスイスに追いつこうと懸命になって生産性と精度
の向上に取り組んできた。1960年代におそらくロンジンとおぼしきスイスの時
計メーカーの社長が日本の時計工場を訪問した時に組立作業がスイスよりも進
歩していて驚愕した。大量生産システムのラインがすでにできていたのだ。こ
の頃にアメリカメーカーの多くが脱落。

 しかしスイスの時計メーカーの動きは遅く、クオーツの時代になると瞬く間
に日本製の時計が世界を席巻し、スイスの時計メーカーは窮地に追い込まれる。
クオーツの開発は当初スイスの方が進んでいたにもかかわらずだ。

 しかし、それでもスイスは当初は踏ん張っていた。スイスもクオーツを作っ
ていたし、まだクオーツは出たての技術で薄型ムーブメントやクロノグラフは
作れない。そんな時に起きたのがドルショックで、通貨の変動相場制への移行
によってスイスフランが高騰し、コストが合わなくなった。

 そのためスイスメーカーは生き残りをかけて薄いムーブメントを貴金属のケ
ースに収めたブレスレットウオッチにシフトした。ところが、そんなタイミン
グを見計らったかのように金相場のアホみたいな高騰がやってきた。これでス
イスの時計産業はとどめを刺されて壊滅的状況に追い込まれてしまう。

 しかし、機械式腕時計にはまだ生き残る場所はあった。汎用ムーブメントの
開発でコストを下げつつデザインに注力し、活路を見いだす。その典型例が有
名なオーディマ・ピゲの「ロイヤルオーク」。ステンレスケースを使って「金
(Gold)を使わずにどれだけ時計の値段を上げられるか」に挑戦する。

 またシースルーバック(裏ぶたをガラスにして内部機構を見ることができる
ようにしたもの)の開発も大きかった。そして今ではスウォッチのような大量
生産品も作るが、一部では大量生産に目を背けて恐ろしく手がかかった、少数
しか作れない、趣味性の高い、高付加価値のとれる時計にシフトすることで復
活を遂げたのである。

 なんでこんな背景説明があるのかというと、浅岡氏の作る時計は単なる日本
最初のトールビヨンであるだけでなく、日本メーカーの高度な技術力に支えら
れた、スイスの一流メーカーでもおいそれとは真似できない、革新的な設計が
されているからだ。

 そこから先は、時計の部品一つ一つの解説が続く。機械に詳しい人でないと
どれだけすごいのかは見えにくいかも知れないというか、私もちんぶんかんぷ
んな部分が多々あるが、言葉の端々に凄みは感じる。

 軸受けにボールペアリングを使うことと、ムーブメントの分割設計を挙げよ
う。腕時計の軸受けには普通ルビーが使われるが、「PROJECT T」では8箇所
にルビーの替わりに世界最小のボールベアリングを使っている。トゥールビヨ
ンは軸受けが構造的に弱くなる泣き所があり、ボールベアリングなら高性能・
高耐久が実現できる。これをいち早く採用したが、だからといって搭載はそう
簡単なことではない。

 ムーブメントの分割はゼンマイの載る動力源部分と精度を追求する調速部分
を分割している。これは動力源には高負荷に耐える機構が、調速部には繊細な
機構が求められるのに従来のムーブメントのように一体化しているのは合理的
ではないというのと、拡張性(複数の動力源と調速部の組み合わせで商品のバ
リエーションが容易に拡大できる)ことを見据えたもの。しかしこれも思いつ
くのは簡単だが、従来の高級時計程度の精度ではまともなものは作れない。

 「PROJECT T」にかかわったメーカーはメインが超精密加工を得意とする由
紀精密と、国内有数の工具メーカーであるオーエスジー。ボールベアリングは
ミネベア製だ。浅岡氏の持つスキルもすごいものがあるが、彼の構想を実現で
きるだけの、スイスの超高級時計メーカーを凌駕する技術を持つ、こうしたメ
ーカーがないと「PROJECT T」は実現できなかった。

 日本の時計メーカーは確かにクオーツで世界を制した。今でも技術力はスイ
スに勝るとも劣らないものがある。しかし製品の付加価値はどうなのか? 日
本メーカーもクオーツショックの時期のスイスメーカー同様、手をこまねいて
見ているわけではない。工芸品としての価値を訴求した1本5千万円もする腕
時計もつくっておれば、クオーツと自動巻きのいいとこ取りのスプリングドラ
イブ、世界一薄い光発電時計を開発したりもしている。着々と打つべき手は打
っている。

 しかし、腕時計以外の製品を作る、他のメーカーはどうなのか? 多くが今
なお大量生産、効率化のキーワードでくくられる旧来の鉱工業生産の延長線上
にあると言えるだろう。そうした方向性とは逆の、高い技術力を持つ人が手間
ひまをかけた、大量生産や効率とは真逆の製品にも活路はあるのではないか? 
それをこの本は問うているのだと思う。

 その意味では、日刊工業新聞社100周年記念本として、確かにふさわしい内
容をもつ本である。


(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)

----------------------------------------------------------------------
■「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
----------------------------------------------------------------------
正しく理解しようよ、発達障害
『発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由』
栗原 類 著(KADOKAWA)

 最近、発達障害への関心が高まっていますよね。高まっているのはいいので
すが、その高まり方に違和感が少しあります。

 捉え方が曖昧で、漠然とし過ぎていると思いません?

 極論すれば、「みんな違ってみんないい」的なやさしさに満ち、「それぞれ
の個性または違いを認め合おう」的なざっくり感。

 これってホントに障害を認めたことになるのかなあ。「それって個性だよね」
と言って距離を取ってるというか、敬遠しているというか、見て見ないフリし
ているというか。

 それってどうよ?と思っていたのであります。

 が。専門的な本を読むにはハードルが高い。そこで、テレビの人気者の本か
ら始めようと思った次第です。

 栗原類は「笑っていいとも」などでネガティブだけどパリコレモデルで、タ
ロットカードが得意なタレントとして10代から登場して人気になりました。暗
いけどトップモデルというギャップ、タロットという技があるというブレーク
の条件が揃っていたのがよかったのかな? 

 最初は発達障害であることは知られていずに、今回の本でカミングアウトと
いうことになりました。それによって「類君って障害があったんだね。でもい
い人だよね。」という世間の評価が得られたわけですが、やはり仔細に読んで
みると、障害というのは本人と肉親にとって、ヘビーなことだと言わざるをえ
ず、「個性だよね」でスルーしていいものではないと感じました。

 担当医師によると障害は軽い方とのことですが、感覚が鋭敏でこだわりが強
く、注意散漫で記憶が残らず(よって学習障害がある)、人の感情が読めない。
幼稚園時代から周囲の音をうるさく感じ、学校では成績が取れず、

 具体的には、仕事で現場に行こうとするけれど、途中で場所が分からなくな
るなど、さまざま。何かいつもと違ったことがあると感情的になったり、パニ
ックに陥ったりも。

 それに対して、親はその都度、繰り返して、感情が揺れたら一度冷静になっ
て考えることや、思ったことをすぐに言葉にするのではなく、立ち止まって考
えることをアドバイスすることで、生活を支障なく過ごすことをアドバイスし
ます。

 手間と根気と努力、そして愛情が必要な子育てです。

 それらの工夫と努力のしかたを読むと、とても「個性だよね」と一言で言う
ことではないと感じます。

 障害がないとされる側もこのへんは再確認しておきたいことだと思われます。

 栗原類の母の工夫は読んでいてなるほどと納得!

 おばちゃまはここで、「母の愛を感じた」「この母が偉いよね」とかの感想
は言いません。たぶん、私も同じ立場になったら同じことをしたと思うし、で
きるかどうかは別にしてどうにかして子どもが生きる可能性を見つけようとあ
ちこちとぶつかりながらも必死になったと思うからです。おかあさんてそうい
うものだものね。

 もう1つなるほどと思ったことがあります。

 栗原類を芸能の世界で仕事をさせようとしたとき、周囲は否定的なことを言
う人が多かったそうですが、母は音楽関係のライターをしている立場からこう
言います。

「否定的なことを言う人のイメージは誰もが知っている大スター。でも主役だ
けが俳優ではないし、テレビドラマだけが俳優の仕事ではありません。舞台や
ミニシアター系の上映館数の少ない映画の脇役も俳優業で生活しています。
『俳優業で自分1人ぐらいは食べていけるぐらいにはなろうね。30歳までの間
に』」と言ったとあります。

 仕事柄、インディーズから大スターまでさまざまなビジネスの成立の仕方を
見てきたので「売れなくても食う方法はある」と知っていたのです(省)。

 そうそう、一家を養ってこそ一人前とか、スターを夢見てがんばるとかだけ
を目標にしなくてもいいんだと、ちょっと肩のチカラが抜けた感じがしました。
 
 また、障害があるとたとえばテーマパークに行っても刺激が強すぎて1時間
で疲れてしまう。そんな時はコスト(せっかくお金払って来たんだから)を考
えずにすぐ帰るほうが子どものためという記述にもはっとさせられました。

 本題以外にも、目からウロコをぽろぽろはがしてくれる記述があり、いつも
思うのですが障害のことを考えると子育て全般、また人間関係全般を顧みるき
っかけになった読書体験でした。

大友舞子(おおとも・まいこ)
昭和20年代生まれのフリー編集&ライター。関東生まれで関西在住。

----------------------------------------------------------------------
■献本読者書評のコーナー(応募要項)
----------------------------------------------------------------------

 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・『脳疲労が消える最高の休息法 CDブック』(ダイヤモンド社)
 https://www.diamond.co.jp/book/9784478101919.html

・『トシ、1日1分でいいからフクシマ英語に触れてみて。それだけできっと世
  界は変わる。』(SCICUS)
 https://www.facebook.com/scicus.jp/posts/1054815034566643

・『あれか、これか
  「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門』(ダイヤモンド社)
 http://www.diamond.co.jp/book/9784478066041.html

・『最高のリーダーは何もしない』(ダイヤモンド社)
 http://www.diamond.co.jp/book/9784478068137.html

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

----------------------------------------------------------------------

 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

 〒142-0041 東京都品川区戸越5-4-3 アズ品川ビル4階
       ビズナレッジ株式会社内 [書評]のメルマガ 献本 係

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンや楽天などのオンライン
 書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。つまり
 は当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願いしま
 す。(あまりにも短いものは書評とは呼べませんので、文字数の条件を設け
 ました。書評は500字以上でお願い致します。)

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

----------------------------------------------------------------------
■あとがき
----------------------------------------------------------------------

 今月はやや遅れ、での配信となりました。

 昨日は仕事での出張のついでに、ある地方都市を訪問していました。元々は
賑わった商店街だったのでしょうが、今や見る影もなく、シャッター街と貸し
ます売りますの貼り紙だらけ…。

 ビジュアル的には「昭和ノスタルジー」で価値があると感じましたが、何せ、
人が居ない。数件、開いているお店にも、老人の姿しかおらず、戦時中にタイ
ムスリップしたかのようでした。

 普段、都心に住んでいるとわかりませんが、日本の地方のあちこちで、同じ
ようなことが起こっているのかと思うと、とてももったいない気持ちがします。

 こればかりは政治が何とかしなくてはいけないのでしょうが、有権者も施政
者も高齢化しており、もっと思い切った方法が必要な気がします。(あ)

======================================================================
■電子メールマガジン「[書評]のメルマガ」(毎月二回発行)
■発行部数 3230部
■発行:[書評]のメルマガ発行委員会
■掲載された内容を許可無く転載することを禁じます。
■COPYRIGHTはそれぞれの記事の記者が有します。
■ご意見・御質問はこちらまで info@shohyoumaga.net
■HPアドレス http://www.shohyoumaga.net/
■このメルマガは『まぐまぐ』を利用して発行しています。
■メールマガジンIDナンバー 0000036518
■購読・解除・変更手続きは http://www.mag2.com/ より行って下さい。
======================================================================

| バックナンバー | 17:32 | comments(0) | trackbacks(0)
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://back.shohyoumaga.net/trackback/979063
トラックバック
SEARCH
[書評]のメルマガ
本の虫の出版業界人が<徹夜した本>や<繰り返し読んだ本>、さらに新聞記者、出版編集者、プロの書評家による気鋭の書評など、書評メルマガの決定版。
発行周期発行周期:月4回
バックナンバーバックナンバー:すべて公開
マガジンIDマガジンID:0000036518

メールアドレス:

メールアドレス:
Powered by まぐまぐ
※読者登録は無料です

フリーラーニング Free-LearninG For Your Extention コーチ募集(コーチングバンク) 灰谷孝 ブレインジムラーニング 無料 コーチング 東京新都心ロータリークラブ カーディーラー経営品質向上 相続・遺言なら新都心相続サポートセンター 夢ナビ 実践写真教室 フォトスクール「橋本塾」 無料 eラーニング CSR コンプライアンス 経営倫理 実践研究 BERC 「付加価値型」会計アウトソーシング−株式会社サンライズ・アカウンティング・インターナショナル
LATEST ENTRY
RECENT COMMENT
RECENT TRACKBACK
CALENDAR
S M T W T F S
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930  
<< November 2017 >>
ARCHIVES
LINKS