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[書評]のメルマガ vol.632


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■■ [書評]のメルマガ                2017.06.20.発行
■■                              vol.632
■■ mailmagazine of bookreviews     [シュールなドタバタ満載 号]
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■コンテンツ
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★「トピックス」
→ トピックス募集中です

★「音楽本専門書評 BOOK’N’ROLL」/おかじまたか佳
→ 『ドバラダ門』

★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→ 夏目漱石『こころ』(新潮文庫)

★「目につく本を読んでみる」/朝日山
→ 『テロリストは日本の『何を』見ているのか』伊勢崎賢治 幻冬舎新書

★「本の周りで右顧左眄」蕃茄山人
→ 今回はお休みです。

★【募集中】献本読者書評のコーナー
→ 献本お待ちしています!

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#84『ドバラダ門』

 前回は新宿の老舗ライブハウス、ピットインの50周年記念本を取り上げたが、
1960年代当時、この店を舞台に、日本のジャズの歴史を塗りかえた一人として、
この本に名前が挙がり、登場もしている山下洋輔。

 今月は、ジャズ・ピアニストでもあり、幾多の名エッセイで文筆家としても
声望高い彼の本を紹介したいと思った。

 初めは、60年代の空気を今に伝える、処女エッセイ集『風雲ジャズ帖』にす
るつもりだったのだが、改めて読み返してみると、後のエッセイと違って、旅
の記録としての側面はあまりない。考えてみれば当然で、この本は病気療養中
の無聊を慰めるために書かれたさまざまな文章と座談会、対談から成っていて、
著者が一番旅をしていない時期のものなのでる。

 また、後に山下洋輔文化圏と呼ばれる、ジャズメンはもちろん、筒井康隆や
タモリなどを含む多彩な人脈によるバカ騒ぎの時代も、まだ始まっていない。

 したがってハナモゲラ語もまだなく、全日本冷やし中華愛好会もまだない。
ちなみに、前々回『宮澤賢治、ジャズと出会う』を取り上げた時、著者の奥成
達の名前をどこかで聞いた覚えがあるのだが思い出せない、と書いたが、この
山下洋輔文化圏の一人であった。筒井康隆か山下洋輔のエッセイに登場してい
たのだろう。

 という訳で、『風雲ジャズ帖』の中心テーマは音楽論であり、多少の譜面も
出てくる。ある程度知識と興味がないと、なかなか理解しづらく思われ、この
欄で取り上げるのにためらいが出た。

 だったら、その後の『ピアノ弾きを笑え』でも『ピアノ弾き乱入列車』でも
いいはずだが、何となくそれでは面白くない気がして、つらつら迷っていると、
ふと思いついたのが本書、『ドバラダ門』だった。

 これは、当然音楽絡みではあり、だからこそこの音楽本書評で取り上げるわ
けだが、中心的な興味は山下洋輔のルーツ探求にある。
 しかも、最後の注釈には「大体においてノンフィクション」とは書かれてい
るものの、筒井康隆によるあとがきには、「唯一の長篇小説」とあり、まあ、
そもそもジャンルを決めるのが難しくかつ無意味であるような奇書なので、ど
っちでもいいと言えばいいのだが、ある程度物語としての構成は整っているし、
読みやすいことは確かだ。うん、これがいいんじゃないかな、と思い始めた。

 そこで本棚を探してみたのだが、どうしたものか、見当たらない。
 単行本で出た当時に買った記憶は確かにあるし、もちろん内容もある程度は
覚えているのだが。
 仕方がないので、これだけの名作だ、図書館にあるだろうとホームページで
蔵書検索をかけると、あるにはあったが、なんと保存庫に眠っているではない
か!

 信じられない。あれだけの傑作なら、図書館の開架に常時君臨して、常に新
しい読者を待っていて当然。
 これはもう、ささやかながら本欄でも取り上げ、その魅力を少しでもお伝え
しておかねば、と思い、ご紹介決定となった次第である。

 とにかく、「大体においてノンフィクション」でありながら、時空はもちろ
ん、虚実も自由に飛び越えて読者を引きずり回す、途方もない「小説」でもあ
り、いやしくも文学好きは必読の一冊なのだ。

 さて、物語の発端は、事実に基づいている。
 著者が鹿児島でライブをすることになったと何気なく実家の母親に告げると、
だったら鹿児島にお祖父さんのつくった刑務所があるから見ておいで、と言わ
れるのだ。

 刑務所? つくった? なにそれ?

 その時著者も初めて知るのだが、父方の祖父、山下啓次郎は今で言う東大の、
今で言う建築科を出ており、日本が明治維新を迎え、文明開化の波に襲われる
その中で、全国五箇所に西洋式の近代的な監獄を設計、建設した人物だったの
である。
 そのひとつが、鹿児島市に、まだ現存していた鹿児島刑務所なのだと言う。

 山下洋輔は東京生まれであるが、父方のルーツは、その鹿児島だ。幕府が倒
れ、維新の世となった時、下級武士であった曽祖父、山下房親も、新しい日本
を築くべく、薩摩から東京に出た。西郷隆盛の肝煎りで始まった、近代的な
「警察」の創設に加わるためである。
 そして房親は最終的には刑務所長となるのだが、息子の啓次郎もまた、司法
省営繕課の課長として、その刑務所を建てる仕事に就く。
 そうして故郷である鹿児島にも、刑務所をつくったのだ。

 その後、紆余曲折を経て、著者は、その刑務所に出会う。
 いや、むしろその門に出会う。

 と言うのも、ゴシック様式の刑務所の、小さな城のような門がまず目に飛び
込み、住宅街の真ん中で場違いな偉容を誇るその奇観に、強く心を撃たれるか
ら である。
 これこそ、タイトルにあるドバラダ門だ。

 しかし、祖父が建てたその建物は、取り壊しの危機にあった。

 建設当時は人も通わぬ郊外だったのだろうが、現在では住宅地になっている。
その真ん中に刑務所があるのは何かとよろしくない、ということで既に中身は
移転していた。そこに在ったのは、抜け殻だったのだ。

 移転はいいとして、問題は跡地の処理である。

 鹿児島には、古くから石を使って建築する石工の技術があったため、山下啓
次郎は当時主流となっていたレンガ造りではなく、石造を採用した。
 そのため鹿児島刑務所は、今に残る石造建築として最大の規模を誇ることに
なったのである。

 ところが、鹿児島市はこのように貴重な明治時代の遺跡を跡形もなく破壊し
た上で、新たな文化施設を建設する計画を立て、市民が何も知らされない内に
議会を通し、予定通り取り壊しの準備を進めていたのだ。

 この暴挙を知って、鹿児島大学建築学部を中心に反対運動が巻き起こってい
た。「もう決まっちゃったもんね」の一点張りで、「ええい、聞く耳持たぬは
そこへ直れ」的な態度の市に、それでも果敢な保存の訴えが行われていた。

 山下洋輔は一家と共に、そうした活動の一環として鹿児島刑務所で開かれた
シンポジウムに出席。かの建築探偵、藤森照信などにも会い、祖父の遺した業
績の偉大さを今更ながら知ると同時に、「取り壊しを中止させるためなら、何
でもする。刑務所の門前でピアノを弾いてもいい」と口走る。

 もちろん、その口走りは実現に向けて動き出す。

 一方で著者はさまざまな資料に当たり、祖父の人生ばかりか、遡って曽祖父
房親の時代から、西郷隆盛なども登場する幕末、明治の激動の歴史を調べ上げ、
海外ツアーの際には、啓次郎が視察したという、ベルギー、フランス、イギリ
スの刑務所を訪れる。

 そして当局の妨害により、形を変えながら、ついに実現する、刑務所門前で
の演奏。

 と、ここまで書くと、なんだ、普通のノンフィクションじゃん、どこが奇書
やねん、となぜか関西弁の物言いがつきそうだが、これはあくまで骨組みに過
ぎない。

 この流れを主軸に、至るところに華々しい脱線が起こる。
 ふとしたセリフや、アクションをきっかけに、物語はすぐに逸脱を始める。

 その先には、生麦事件があったり、薩英戦争やら西南の役やらの戦闘シーン
があったり、ヨーロッパの監獄視察から帰った啓次郎の帰朝演説があったり、
山下一族やゆかりの人々の挿話が紛れ込んだり、いろいろな時代、場所を自由
に行き来して、シュールな場面が続出する。

 そしてもちろん、虚実も自在に飛び越える。
 歴史家でも歴史小説家でもない割によく調べているくせに、書き始めると時
代考証などどこへやら、登場人物が「この時代の人間が、こんなことは言わな
いと思うのだが」などと自分にツッコミを入れながらしゃべったり、現代の事
物が幕末に混入したりする。

 特に好きなのが、薩英戦争の場面。英国艦にヘミングウェイ軍曹という水兵
が乗っているのだが、これが釣りばかりしていて、時には老人がカジキマグロ
と死闘する白昼夢を見たりするので、要するに『老人と海』の文豪ヘミングウ
ェイなのだが、実際に同姓の水兵がいたという記録を読んでの妄想なのか、ま
ったくの虚構なのか。ちょっとしが出てこない割に印象に残る名脇役である。
『ヘミングウェイの日記』なる本からの引用もあるが、当然虚構だろう。
 それにしても、英国艦だよね。なんでアメリカの文豪?

 さらに、房親の兄が江戸で死んでいるのだが、その真相が明らかでないのを
いいことに、実は平賀源内の発明した時間航行機、すなわちタイムマシンで時
間放浪者になって、さまざまな時代に出没することにしてしまう。その姿がな
ぜか画家の山下清……と言うより、テレビで芦屋雁之助が演じた裸の大将その
ままで、単に同姓のよしみで勝手に持ち出したのか、とにかく爆笑キャラとし
て大活躍する。

 著者自身が心酔する筒井康隆ばりの、シュールなドタバタ満載の、抱腹絶倒
劇。
 そのついでに、文化をないがしろにするこの国の行政の愚昧を暴き、100年
に渡る時の流れに想いを馳せる。

 それにしても、いくらミュージシャンの作にせよ、文中にBGMが書いてあ
る 小説なんて、前代未聞ではないだろうか。

 結局、貴重な文化財である鹿児島刑務所は、市当局によって残忍に破壊され
てしまう。その描写は、短いながら哀切で痛々しい。まるで石の建築が、巨大
な生き物であるかのようだ。

 そう、それは破壊ではなく、殺戮だった。人間の歴史の殺戮である。

 ただ、唯一の譲歩として、門だけが残されたと言う……


山下洋輔
『ドバラダ門』
平成五年九月二十五日発行
新潮文庫

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
山下洋輔の実家は阿佐ヶ谷だそうで、そこはぼくが幼稚園の年長さんから結婚
して家を出るまで過ごした街。また、山下家のルーツが鹿児島なら、ぼくの父
の家は佐賀。封建的風土も共通する九州人の末裔同士。なんか、勝手に親近感
を覚えてしまいます。

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■「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
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未亡人の視線で「こころ」を読む
夏目漱石『こころ』(新潮文庫)

 久しぶりに会った高校教師(国語)の友人に、「今って教科書に何が載って
るの」と聞いたら「『こころ』は今でも掲載されているかなあ」というので興
味を持ちました。聞けば教科書に載ってるのは一部なので、夏休みの宿題とし
て全部読んで感想文を書きなさいというと結構読んで書いてくるらしいです。
「ほら、三角関係の話だったりするから高校生にも親しみがあるんじゃない」
と友人。(レベルの高い学校に勤務してるんですね)

 そこでおばちゃまも読んでみた次第。茶色くなった新潮文庫の「こころ」書
棚の隅にほこりかぶってました。

 読み始めたら大昔読んだときとはまったく違う視点から読むことになって、
我ながら「え?え?まじか」とびっくり。いやいや、だから名作は怖くて素晴
らしい! 時を経て読むとまったく別の様相が浮かび上がるんですね。

 ご存じ、「こころ」は大正3年、新聞小説として掲載された漱石の代表作で、
「金銭と恋愛をめぐる我執(エゴ)の相の洞察は鋭い」と三好行雄は解説して
います。ざっくり言うと、「私」が私淑する「先生」はかつて、「K」という
友人を裏切って下宿先のお嬢さんと結婚した。「K」は理由も言わずに自殺。
その裏切りをずっとひきずってとうとう先生も命を絶ちましたという話です。

 大昔読んだときは、「先生」の心模様ばかりに目が行ってました。たぶん、
夏休みに読書感想文書いてくる高校生も同じだと思うのですが、今回、還暦過
ぎて読んだら、まあ、この下宿の未亡人ばかりに気が行って、もう「先生も
「K」もええわって感じになりました。なので今回は未亡人目線でこの話を読
んだという話です。

 下宿の奥さまは軍人である夫を戦争(日清戦争)で亡くしています。夫は鳥
取出身で、自分は(元防衛庁のあった)市ヶ谷生まれというから、そのあたり
で見合いして結婚したんでしょうか? 夫亡きあと、広い屋敷を手放して素人
下宿を営みます。役人にでも貸したらいいかと思っていたときにやってきたの
が大学生の「先生」。この時代、大学というのはそのへんの三文大学じゃござ
んせん。東京大学のことです。

 おばちゃま、奥さんの身になって考えた。頼る人のいないシングルマザーと
娘。自分が死んだあと、娘はどうしたらいいのか。娘さんは女学校に行ってる
けれど(地理的に見て三輪田あたり?)当時、女学校を卒業したからでは地元
の信用金庫にでも就職というわけにはいきません。仕事をする女性なんていな
かったのです。ではどうするか? 結婚です。

 芥川龍之介「秋」で小説家をめざすヒロインが、父が亡くなっていたので小
説家志望の前に「縁談から決めてかかるべく余儀なくされた」時代、結婚は弱
い立場の女性のセーフティネットだったのですね。(今でもそのような意味は
消えてませんが)。

 決して広くないしもた屋に、未亡人(っていってもたぶんアラフォー)、若
い女学生、そして大学生の3人。部屋を仕切るのはふすま一枚。鍵のかかる部
屋はなかったでしょう。

 これは奥さんが意識するとしないとにかかわらず仕掛けた罠なのか、大学生
=先生はあるとき、それに気づきます。

 「利害問題から考えて見て、私と特殊の関係をつけるのは、先方に取って決
して損ではなかったのです」。

 ここで問題なのは、大学生が決して女性関係で世慣れていないということ。
恋愛未経験な大学生なのであります。(佐伯順子さんの研究では、あくまで素
人の女性に対してのみ未経験であって、プロ女性とは交際があるのが当時の常
識とされています。『近代化の中の男と女・色と愛の比較文化史』)。

 そしてさらに、先生の案内でここに「K」が加わるのです。先生はお嬢さん
に好意を寄せているのに同世代の友人を仲間に加えるなんて、恋愛で一番やっ
ちゃいけないことですが、これ、1000年前に「源氏物語」で薫大将がやってま
す。女とみたらすぐ誘い出す匂宮をグループに入れるという暴挙。こわいもの
見たさの恋愛パターンですね。

 このKは先生よりさらに女に対して奥手。一気にお嬢さんを恋して、そして
悲劇が起きるのです。

 未亡人は、どうもKよりも先生を気に入っていたようで、お嬢さんがKと仲
良くなることをどう思っていたのか、大学生は卒業が近づいてくる、同時にお
嬢さんも女学校の卒業が近い…どうするどうする・・・・・このへんは非常に
緊迫していてスリリングです。

 先生の「お嬢さんをください」プロポーズに即答して「どうぞ貰って下さい。
ご存じの通り父親のない憐れな子です」というセリフに、当時の女性の置かれ
た位置がわかります。

 未亡人が大活躍する場面がこのあとすぐに描かれています。Kが自死を遂げ
た後始末をはしはしと仕切る姿です。

 軍人の妻なのでこのへんはノウハウを知り尽くした感じ。たぶん奥さんの父
親も軍人だったと思われます。医者へ知らせ警察へ知らせ、先生が遺族に電報
を打って帰ってくるとすでに線香が立てられていたという描写に、この女性の
悲しさと強さ…そして母としてのしぶとさを感じます。

 先生とお嬢さんが結婚後、奥さんはなくなりますが病を得た奥さんを先生は
心を込めて看病するのでした。奥さんはそれをどう思ったでしょうか? どれ
だけ先生とKの関係を知っていたのか、文中には何もかかれていませんが、ぼ
んやりとでも何事かを悟っていたのではないかとおばちゃまは思うのです。


大友舞子(おおとも・まいこ)
昭和20年代生まれのフリー編集&ライター。関東生まれで関西在住。

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『テロリストは日本の『何を』見ているのか』伊勢崎賢治 幻冬舎新書

 伊勢崎賢治という人は、不思議な人だとと思う。彼は世界の紛争の最前線に
出張っていって、彼の地の武装勢力を武装解除して回るというものすごい仕事
をしている人だ。そんな人が、戦争の最前線のことなど知らない、あるいは単
なる感情論で平和を語る「9条教」信者みたいな人から支持されている。

 9条を高らかに評価するから支持されるのだろうけど、戦場のリアルを体で
知っていると言っても良い人が9条教徒のリアリティのなさと共鳴しているか
のように見えるのがなんとも不思議なのだ。

 で、この本は日本がテロリストに狙われないようにするにはどうすべきかを
書いてある本。最初に出てくるのは中国脅威論に対する批判である。中国が日
本を攻めてくるはずないだろ。そんな非現実な想定よりもグローバルに拡大す
るテロの脅威の方がよほど重要だとくる。

 次に言うのは原発の危険性である。原発をテロ攻撃するというと、フィクシ
ョンならミサイル撃つとか、爆弾を持ち込むとかとなるけども、彼はそんなこ
と言わない。

 福島第一発電所の事故の後、テロリストは原発を攻撃するのにミサイルも爆
弾も不要だと知った。福島第一は津波によって電源を喪失することが事故に繋
がった。すなわち原発に侵入し、従業員を脅して電源喪失に持ち込むならピス
トルや刃物で十分にテロは実行できる。

 そういう脅威から原発を守るには警備員にピストルや小銃などを持たせなき
ゃならないが、日本では警備員の武装は認められていない。そんなことで原発
テロを防げるのか?と畳みかけてくるのである。

 そこから話は「インサージェンス」を中心に進む。インサージェンスとはテ
ロリストの同義語みたいな、反体制派を意味する言葉だが「テロリスト」と区
別して使われている。ここがある意味、この本のキモだろう。反体制派をテロ
リストと言ってしまえば単なる悪者と読者に認識されて、そう認識されてしま
うと話が通じないからだ。

 テロリストの成り立ちはさまざまだが、彼らにも彼らの正義がある。タリバ
ンは元々アフガンに群雄割拠して悪さしていた軍閥に対抗する勢力として生ま
れた。タリバンは悪者として見られているが、実は軍閥はタリバンなどよりよ
ほどむちゃくちゃなことをやっていて、そんな連中を一掃することでタリバン
はアフガン国民の支持を得た。

 そうした軍閥を育てたのは、アフガン戦争でソ連に対抗しようとしたアメリ
カやアラブ諸国だ。アフガンの英雄にはオサマ・ビン・ラディンもいる。

 オサマ・ビン・ラディンはそもそもアフガン義勇兵だった。それもサウジの
金持ちのボンボンが最前線に立ったものだから多くの人が彼を支持した。イラ
クの脅威にサウジアラビアが晒されていると見るや、オサマはアフガン同様に
義勇兵を募って祖国を守るためにイラクと戦う気でいた。ソ連相手に勝った連
中だ。イラク相手に勝てる自信もあった。なのに、サウジ政府はあろうことか
アメリカに助けを認めた。そりゃオサマも怒る。

 9.11テロでアメリカが激怒してタリバンを追い出したはいいが、そうなると
また軍閥が跋扈する。ISなんてのも出てきた。そんな、新たな脅威に対抗する
ために、タリバンを「まともな敵」として育てることが必要になる・・・いや
はやこの世は複雑だ。

 なにせアフガンの武装解除を指揮した本人の言うことだ。軍閥の武装解除は、
きれい事では済まされない。何百人と虐殺した者が武装解除した途端に訴追さ
れて罰せられるとなると、彼らは絶対に武装解除に応じない。だから武装解除
後、新政府の閣僚として虐殺者の親玉を迎え入れなければならない矛盾など、
現場を仕切った人にしか分からない、えぐい話がいっぱいだ。

 そしてテロ防止策の話が来るが、注目に値するのは、テロ防止策として移民
の推進を挙げていることだろう。このあたりは人によってかなり意見が割れる
と思う。

 そして最後に来るのが在日米軍との地位協定と憲法9条の改訂を提案する。
本の最後は彼の「改憲」9条の条文になる。彼が一体何を考えてこういう条文
を持ってくるに至ったのか、それを説明するのがこの本なのだなと、最後まで
読んでやっと気がついた。

 そしてこういう考えに彼が至ったということは、彼が「改憲派」としての旗
幟を明白にしたということだ。これに対し、護憲派と呼ばれる人たちがどう反
応するのか興味深い。しかし、この本が出て8ヶ月にもなるが、特に護憲派か
ら批判されてるなんて話も聞かない。では護憲派が改憲を認めたのかというと、
それもなかろう。

 ということは、護憲派から「使えねぇ」と思われて無視されているとするの
が、当たらずとも遠からずの現状ではないかと思う。

 ま、それはともかく、イデオロギーとしての反戦平和ではなく、リアリズム
に立脚した反戦平和について考えるなら、ぜひ読んでおくべき本だと思う。


(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)

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■あとがき
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 何を勘違いしたのか、先月の20日号の月を間違えてしまいました。正しくは
5月20日号で、今号が正真正銘の6月20日号です。

 一瞬、自分がタイムスリップしたのかと思ってしまいました…。(あ)

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