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[書評]のメルマガ vol.633


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■■ [書評]のメルマガ                 2017.7.10.発行
■■                              vol.635
■■ mailmagazine of book reviews      [「それは、ないやろ」 号]
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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→『難波鉦異本』と、なにわ「駅便」考

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→贈り物

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第一次世界大戦はいかに始まったか(その1)

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<91>『難波鉦異本』と、なにわ「駅便」考

 冒頭のっけに便所の話題で恐縮だが、こんな張り紙を見つけた。

「最近、トイレを長時間占有される方をお見かけ致します。長時間に亘るご利
用は、他のお客様に大変ご迷惑となりますのでご遠慮ください。」

 阪急梅田駅のトイレの個室内にあった張り紙だ。
 張り紙では、その後に続けて、場合によっては強制的に開錠し、「ご協力を
お願い」する場合もあると告げ、「ご理解ご協力をお願いいたします」と結ん
でいる。

 これ、わしもかねてから不思議に思っていたことなのだ。

 わしは、街中での「突然の便意」が多い人なので、駅のトイレも利用するこ
とが多いのだが、通勤時間帯の朝など、個室が全て「塞がっている」というこ
とが多くて、近くに代替の便所がない場合は、そこにとどまって空くのを待つ。

 たいていは、5分程度も待てばどこかは空くのだが、中に、10分15分、時と
して30分ほども塞がったまま…という個室がままあるのである。

 鈴木大介のルポ『家のない少年たち』(太田出版)を原案とする肥谷圭介の漫
画『ギャングース』(講談社)によると、近頃あちこちで見かける「多目的トイ
レ」というのは、その広さと密室性から、「半グレ」集団や詐欺グループの
「打ち合わせ」に使われることが多いらしいのだが、多目的ではない普通のト
イレが、長時間にわたって塞がっている…というのは、いったい中でナニをし
ておるのか?

 ナニをやっているのかはわからないが、いずれにしても、最近の便所、こと
に駅をはじめとする公共トイレが「こぎれいで快適」になっているのが、その
滞留時間を長くする原因のひとつでは、あると思う。

 昔の公衆便所や駅の便所ったら、狭い、汚い、臭い、ハエや蚊やその他の虫
がぶんぶん飛び回り、這いずっているわ、壁は落書きだらけだわ、「臭い」は
すでに限界を超えて、目に染みるほどだわ……で、長逗留するどころか、一分
一秒でも「早く出たい」という場所でしたからね。

 かつてわしが実際に体験した便所で、一番衝撃的だったのは、1975年、国鉄
渋谷駅で遭遇した「すり鉢便所」。

 個室のドアを開けるとそこは、四方の壁から真ん中の「穴」に向かって、す
り鉢状に傾斜していて、真ん中の穴の左右に、コンクリートブロックほどの大
きさの四角い「島」がふたつあり、そこがすなわち足を乗せるところ。

 で、その島というか足場に乗ってしゃがみ込み、穴に向けてウンコをひり出
し、水洗レバーを引いたら、驚いた。

 四方の壁の全面全方位から、水が「ずざざざ〜〜っ」と流れだし、たちまち
個室全体が滝壺状態……に至ってようやく、「足場」の意味が理解できたのだ
が、あれには、たまげた。

 これは、ホームレス…って当時は「浮浪者」と言ったのだが、その人たちが、
一夜の宿として泊まり込むのを、防ぐために考案されたトイレだったようだ。

 しかし、やはり利用者には至極不評だったのだと思う。

 なにせ、「個室全体が便器」なわけで、たとえば不注意でポケットから何か
を落としてしまうと、たちまちそこは「便器の中」なのだ。
 渋谷駅で一度きり遭遇したすり鉢便所は、その後二度と目にすることはなか
った。

 ちなみに、近頃の「駅便」ランキング関西版…ってもわしの行動範囲に限ら
れるのだが、ダントツの一位は、総合点で大阪市営地下鉄。

 以前は、「長居したくない」トイレのダントツ一位だったのだが、橋下市政
の置き土産で、悪評高かった地下鉄売店(午後6時にはとっとと閉店する売店
だった)の全店コンビニ化とともに、トイレもまた、どの駅もピカピカトイレ
に改装された。

 シャワートイレの設置率でも、おそらくは関西圏ナンバー1だと思う。

 そして、ここもまたトイレが快適に改装された長堀鶴見緑地線西大橋駅から
ほど近くに、出版取次大阪屋の本社ビルがあった。

 かつて本屋時代に、何度か訪れたこともあったが、クラシカルな外観が特徴
的なビルで、その建物が、その昔「新町遊廓」の演舞場だったと聞かされ、
「ええ?」と驚いたのは、そもそもそこが元は遊廓だったことも知らなかった
し、辺り一帯が完全にビジネス街と化していて、「遊廓」の面影がどこにも残
ってなかったからだ。

 何年か前にたまたまこの前を通りかかったとき、そのクラシカルな建物が跡
形もなく取り壊され、仮囲いの中でタワーマンションの建設が進んでいるのを
見て、再び「ええ?」と驚いた。

 出版不況による本社ビル売却、栗田出版販売との経営統合、さらにまた新会
社への移行…と、いろいろとあったらしいとはその後に調べて知ったが、本屋
業界を離れてからこちら、全然知らなんだ。

 もりもと崇『難波鉦異本(なにわどらいほん)』は、かつての旧大阪屋本社
付近一帯が、江戸の吉原、京都・島原とともに「三大遊廓」と並び称された
「新町遊郭」だった時代の物語。

 大坂新町遊廓は、遊女に対する戒律も非常に厳しかった江戸吉原とは違って
緩やかで、遊女たちは、昼間は平服で廓の外に出かけることも許されていたし、
廓の出入り口も、吉原のように一か所だけでなく東西両側にあって、「通り抜
け」も可能だった…等々という新町遊廓とその周辺事情に関する知識もふんだ
んに盛り込まれた漫画なのだった。

 この新町遊廓で、最高級の「太夫」に次ぐ二番手の位階にある「天神」遊女
の「和泉」を主人公とし、その禿(かむろ)である「ささら」との掛け合いを
中心に、ときに実在の大作家・井原西鶴を狂言回しとして展開する、元禄大坂
色里模様。

 少年画報社の時代劇マガジン「斬鬼」に連載され、単行本も同じ少年画報社
から2巻まで発売されて、3巻の発売を今か今かと待っていたのが10と数年前
だ。

 ところが、いっかな発売されないので、もう出ないもんだと諦めていたとこ
ろ、エンターブレインから新たに3巻揃いで出ている、と知った。
 これは取り寄せねば、と検索してみると既に品切れ。とりあえず「上・中・
下」巻のうち、下巻のみを古本で探し取り寄せたのだが、以前の少年画報社版
とは判型も違うし、収録作も微妙に違っているようなので、上巻・中巻も後か
ら取り寄せた。

 少年画報社には、昔からこういう単行本の尻切れトンボが多かったと思うの
だが、この『難波鉦異本』など、手塚治虫文化賞・新生賞も受賞してんのであ
る。
 きちんと最終巻まで面倒を見ていただきたかった、と思う。

 にしても、もりもと崇の名前を、ちかごろとんと目にしない。

 検索を入れてみても、単行本は、この『難波鉦異本』の他には、『大江戸綺
人譚−のっぺら女房』『鳴渡雷神於新全伝』(いずれも小池書院)が引っかか
ってくるのみ。
 『難波鉦〜』を連載した「斬鬼」はすでに休刊しているし、小池書院は倒産
している。

 なにやら不運に見舞われているような気配だが、もしもそうならば、ぜひと
も復活していただきたいと思う。そして、新たな時代劇漫画を読ませていただ
きたい、と切に思う。

 ところで再び「駅便」だが、阪神電車も近頃頑張っていて、各駅での改装、
シャワートイレ化が進んでいる。
 JRもまた、改装が進んでいる。
 阪急も、きれいに改装されたトイレが多いのだが、その改装後のトイレが、
なんでか「和式」中心で、イマドキ、「それは、ないやろ」と思う事しきり。

 最低ランクは「京阪電車」で決まり。ことに京都市内の駅便が、未だに
「汚い」「臭い」「和式のみ」の三重苦。

 外国人観光客が、ことに京都で爆発的に増えている昨今、あれは、どないか
した方が、ええと思うんやけどな、正味。


太郎吉野(たろう・よしの)
 2011年に神戸から西宮へ引っ越して、ただ今のホームグラウンドは甲子園。
右投げ右打ち。掛布二軍監督はひとつ年上の同級生。

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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73 贈り物

 誕生日や記念日など、贈り物をする機会が年に何回かあります。相手のこと
を考えて喜ぶものを想像するのは、送る方にとっても楽しい時間です。

 『イードのおくりもの』
           ファウズィア・ギラ・ウィリアムズ 文
           プロイティ・ロイ え 前田君枝 訳 光村教育図書

 本書はトルコ民話をもとに書かれたインドの絵本の邦訳です。
 イードとは、ラマダン月(イスラーム暦第9月)が開けるお祝いのお祭り。
巻末の訳者のことばによると、ラマダン月の断食明けのイードはたいへんもり
あがり、日本のお正月そのものだそうです。
 また、日本にもイードを祝うイスラーム教徒の人たちがたくさん暮らしてい
るそうです。

 さて物語は、くつやのイスマトさんが家族にイードの贈り物の買い物に出か
けるところからはじまります。相手が喜びそうなものを見繕い、最後に自分の
買い物もしたイスマトさん。でも、買ったズボンはゆび4本分長いのです。

 しかし、誰もがイードのお祭り準備で忙しく、イスマトさんのズボンをなお
す時間のある人が見つけられません。そこでイスマトさんは……。

 愛情たっぷりの締めくくりに心があたたかくなりました。

 絵はイギリスのニック・シャラットさんの画風を思い起こす、ポップな楽し
い雰囲気。色がきれいです。
 
 毎日の仕事や家事に追われているとなかなか相手が喜ぶことができないもの
です。おだやかに過ごすことを心がけていても、疲れていると難しい。それで
も、相手の喜ぶ顔を想像し行動するのは大事だとこの絵本を読んで思いました。

 贈り物にぴったりのおくりもの絵本です。


 『どうぶつたちがねむるとき』
   イジー・ドヴォジャーク 作 マリエ・シュトゥンプフォーヴァー 絵
                        木村 有子 訳 偕成社

 次のご紹介する絵本はチェコの絵本です。

 我が家はみな、一日のうちで一番待ち望んでいるのは布団の中に入るときと
いいます。つつがなく一日が終わり、お風呂でゆるみ、布団で眠る至福の時間。

 この絵本は、幼児向けのおやすみなさい絵本ではなく、様々な動物たちが、
どんな睡眠をとるのかについての知識絵本です。

 ペリカン、ブダイ、マルハナバチ、ラッコ、アザラシ、シロクマ、
 フラミンゴ、ヤマネ、キリン、ネコ、ミドリニシキヘビ、キツネ、
 クジャク、ラクダ、イヌ、アマツバメ

 フロッタージュ(でこぼこした物の上に紙をおいてこする技法)を効果的に
用いて描かれた動物たちは、独特で印象深く、なにより美しい。

 上記の中でいちばん眠る動物はわかりますか。
 私は初めて知りました。
 
 キリンは2時間くらいしか眠らないこともも初めて知りました。

 動物園に行って、実際に動物たちを観察したくなります。

 子どもはもちろん、大人にもおすすめの絵本。
 洒落て美しい装幀なので贈り物にぴったりです。

 最後にご紹介するのは、写真絵本。
 
 映画『世界の果ての通学路』をご存知ですか。
 偶然テレビで子どもたちと一緒に観た映画です。

 ケニア、アルゼンチン、モロッコ、インド、それぞれの厳しい通学路で学校
に向かう子どもたち。
 4か国それぞれの過酷さにびっくりしました。

 ケニアでは野生動物がでるので襲撃にあわないよう
 アルゼンチンでは、石ころだらけの道を馬に乗って通い
 モロッコでは週初め、夜明けに起きて22kmの道を歩き週末に帰ってくる
 インドでは、オンボロ車イスに乗っている弟を兄弟たちでかついで一緒に通
う。

 学ぶことが大事だとわかっているから、このような厳しい通学を日々してい
る、その姿に子どもと一緒に感嘆しました。

 今年高校生になった娘の英語の教科書には、この映画の話がのっていて、す
ぐにあの映画だ!とわかった娘が嬉しそうに教えてくれました。

 『すごいね! みんなの通学路』
 文 ローズマリー・マカーニー 訳 西田 佳子 西村書店

 西村書店刊行の新シリーズ「世界に生きる子どもたち」第一弾の絵本。
 これもドンピシャリ、映画と同じように厳しい通学路で学校に通う子どもた
ちがうつされています。

 地形の厳しさだけでなく、自然災害などでも通学を困難にさせる子どもたち。
日本の子どももいます。
 
 どの子も学校に向かって歩いています。
 いろいろな子どもたちがいる。笑顔だけでない、危ない道なので緊張した顔、
厳しい顔。

 巻頭には日本語版限定で、ノーベル平和賞受賞のマララさんの写真も掲載さ
れています。「すべての子どもたちに教育を受ける権利を」とマララさんは訴
え、レバノンに自身の基金で女学校をつくっています。

 若いマララさんを見習って大人もまた子どもの未来をつくっていきましょう。
そんな話を読んだ人としたくなりました。

 たくさんの子どもたちと大人に贈りたい絵本です。


(林さかな)
会津若松在住。
編集協力した新訳「オズの魔法使い」(復刊ドットコム)シリーズ
★おかげさまで少しずつ重版されています
http://1day1book.strikingly.com/

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第91回 第一次世界大戦はいかに始まったか(その1)

 たいへんな本を手にとってしまった。全2巻(844ページ)の大著である。
しかも翻訳本。そして発行元は学術書を出版しているあの、みすず書房。とく
れば、どれだけ硬い本なのだ、と想像がつく。タイトルをみて、ふらふらとこ
の本に近寄ってしまった、執筆子としてはぜひこの本の書評をものにしてみた
い、という熱い思いが続いている。しかし、7月10日現在、まだ読み終わって
いないのだ。仕方がないので、あまり例はないが、本書は上下の2巻に分かれ
ているので、今回は1巻だけの紹介をしようと思う。

『夢遊病者たち −第一次世界大戦はいかにして始まったか−』(1巻)
(クリストファー・クラーク 著)(小原 淳 訳)
(みすず書房)(2017年1月25日発行)
『THE SLEEPWALKERS−How Europe Went to War in 1914』(Christopher 
Clark)(2012)

 本書は全12章からなっている。そのうち1巻は4章分になり、残りの8章が
2巻の登載である。1巻の各章は以下の通り。

第1章 セルビアの亡霊たち
第2章 特性のない帝国
第3章 ヨーロッパの分極化 1887〜1907
第4章 喧々囂々のヨーロッパ外交

 本書は19世紀の末から第一次世界大戦が勃発した1914年までのおよそ20年間
のヨーロッパの政治家たちの動きを時間(時系列)と空間(地域別)でそれこ
そ縦横無尽に表現している。そのとき、その立場にいたその人たちの発言や行
動、ひとつひとつが、1914年の大戦勃発への原因となっていく。彼らは自分の
発言と行動に責任を持たなかったので、それこそ「夢遊病者」だったわけだ。
責任を取らない政治家たち。それが大戦の悲劇を産んだ。

 第一次世界大戦では、主な戦場がヨーロッパであり、日本は遠い異国での戦
争、というイメージである。実際にこの戦争の原因がなにかは、学校でしっか
り教わった記憶がない。“一発の銃弾が大戦の引き金となった”・・・という
ような表現で、オーストリア=ハンガリー帝国の皇太子夫妻がサラエボにおい
てセルビア人の青年に暗殺されたことを学習した。そして当時のバルカン半島
は“火薬庫”であり、ほんの些細なことで大爆発を起こす危険がある、という
ようなことを学んだ。実際に、オスマン帝国とオーストリア=ハンガリー帝国
という、長くこの地を治めていた両帝国の勢力が弱まり、この地のさまざまな
民族が自立を願ったこと。つまりナショナリズムの台頭があり、そして墺(オ
ーストリア)と土(トルコ)以外にそこに英仏独露伊という帝国主義時代の列
強と云われる大国が自国の利益を優先させた外交政策を取り、それら列強の思
惑と自立の願うそれぞれの民族の行動が複雑に絡み合いバルカン半島をして、
火薬庫にさせしめていた。

 話は脇に逸れるが、帝国主義時代と云われるこの時代、国名を英米仏伊独露
蘭白墺土と表現するとピタッとくる。英仏露の三国協商に独墺伊の三国同盟の
ような表現だ。たくさんの国名が出てくるので漢字一文字の略称は素晴らしい
アイデアだと思う。そしてこの乱暴な当て字略称は大国の横暴とそれが結果的
に弱い者いじめになったこの乱暴な帝国主義時代を端的に表わしているように
思えるのだ。

 閑話休題。

 この1巻は、第一当事国のセルビアとオーストリアの王族や政治家たちの派
閥争いが細かく描かれている。スラブ人の名前、ドイツ系の名前が入り乱れる。
王さま、皇太子、首相、外相、陸相、参謀総長、各地の駐在大使たち。名前を
覚えることを放棄しないと読み通せない。前に進まないのだ。人名索引は2巻
にある。しかし1巻にも人名索引を付けてくれたらよかったのに・・・・・。

 そのような政策決定者たちはいかにしてこの大戦を始めてしまったのか?と
いうことを本書はテーマにしている。本書の「序」を少し長くなるが引用した
い。

 “「いかに」という問いは、一定の結果をもたらす一連の相互作用を間近で
観察するよう、我々をいざなう。対照的に「なぜ」という問いは、帝国主義、
ナショナリズム、軍備、同盟、巨額の融資、国民的名誉の思想、動員の力学と
いった、ばらばらのカテゴリー別の諸要因を分析するよう、我々をいざなう。
「なぜ」からのアプローチは一定の分析上の明確さをもたらすが、理解を歪め
る効果もある。この場合、諸々の原因が次々と上に積み重ねられ、諸々の事実
を下に押しやることになる。・・・・・本書が語る物語はこれとは反対に、何
らかの作用を及ぼした人物たちで満たされている。”

 大勢の政策決定者たちがヨーロッパを少しずつ危機に向かって進めていった。
それを本書は可能な限り描写している。

 例えば、セルビア国の首相のニコラ・パシッチの性格描写はこう書かれてい
る。「秘密主義で、こそこそしていて、うんざりするほど慎重」。・・・・・
このような人物がセルビアを動かしていた。彼は自国の利益よりも自分の利益
を優先していたきらいがある。つまり、セルビアの利益が多少損なわれても自
分の地位を保つことを最優先とした行動と発言をしていた、ということだ。

 そのセルビアは、汎スラブ主義(スラブ民族で統合しようとする立場。ナシ
ョナリズム。ロシアと友好。オーストリアと対立。)と親オーストリア派とあ
ったが、汎スラブ派が影響力を強めてきた。それは取りも直さず、戦争の危険
が迫ることに直結している。

 オーストリアは、多民族国家なので、ナショナリズムを嫌うが、そもそも複
雑な国家として巨大すぎるし、どう行動すれば、国の利益になるか、というビ
ジョンが欠けた国のようであり、その意味で老大国といってよい。

 フランスは共和制であり、イギリスの国王は政治に口を挟まない。オースト
リアとドイツ、それにロシアは皇帝をいただく帝国であり、最終決定は皇帝に
ある。それはつまり、どの派閥が王を取り込むか、ということになる。このこ
とは簡単に想像がつくし、本書はその派閥争いにほとんどのページを費やして
いる。これにあとさきを考えない血の気の多い無鉄砲なセルビア人のドタバタ
が入る。まったく大いなる人間模様が描かれているのだ。

 セルビアやブルガリア、ルーマニアなどバルカン半島の小国の立場があり、
考えがある。いかに自国に有利(領土を広げること、通商を有利な条件で行う
こと)な条件を相手に飲ませるか。また列強の立場もある。例えばロシアは例
のダーダネルスボスポラス両海峡の通行権の確保が最大の悲願。こんな風に各
国の立場をこの場で書いていたら、切りがなく、それこそ本書を読んでくださ
い。ということだ。

 本書はまさに“いかにして”第一次世界大戦が始まったのか、が細かく描写
されている本なのである。


多呂さ(今年も気の毒な自然の大災害が起こってしまいました。お見舞い申し
上げます)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・『マンガでわかるグーグルのマインドフルネス革命』(サンガ)
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・『脳疲労が消える最高の休息法 CDブック』(ダイヤモンド社)
 https://www.diamond.co.jp/book/9784478101919.html

・『セブン・ハーフ・アンド・ワン』(文芸社)
 http://www.bungeisha.co.jp/bookinfo/detail/978-4-286-17241-5.jsp

・『トシ、1日1分でいいからフクシマ英語に触れてみて。それだけできっと世
  界は変わる。』(SCICUS)
 https://www.facebook.com/scicus.jp/posts/1054815034566643

・『あれか、これか
  「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門』(ダイヤモンド社)
 http://www.diamond.co.jp/book/9784478066041.html

・『最高のリーダーは何もしない』(ダイヤモンド社)
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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
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 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
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 には、60日後に古本屋に売却します。)

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5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 最近、ちょっと個人的に、方言好きになっております。なんていうか、温か
さを感じてしまうんですね。子どもの頃に聞いていた言葉なので、ノスタルジ
ーなのかもしれませんが。

 ただし、個人的には幼少期に聞く機会の多かった九州弁、関西弁にぐっと来
るんですが、なぜか高校時代を過ごしたはずの名古屋弁にはぐっと来ません。

 なんででしょうねぇ。(あ)

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