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[書評]のメルマガ vol.644


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■■ [書評]のメルマガ                2017.12.20.発行
■■                              vol.644
■■ mailmagazine of book reviews [ダメな組織はここまでダメになる 号]
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■コンテンツ
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★「トピックス」
→ トピックス募集中です

★「音楽本専門書評 BOOK’N’ROLL」/おかじまたか佳
→ 『セロニアス・モンクのいた風景』

★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→ 『ペップトーク たった1分で相手をやる気にさせる話術』

★「目につく本を読んでみる」/朝日山
→ 『不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したのか』

★【募集中】献本読者書評のコーナー
→ 献本お待ちしています!

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#90『セロニアス・モンクのいた風景』

 今年最後の一冊も、ジャズ喫茶繋がり。

 どういう繋がりかというと、本書を編集・翻訳した村上春樹が、作家になる
前は国分寺辺りでジャズ喫茶を経営していた、という繋がりだ。とはいえ、随
分昔に読んだ雑誌のインタビューでそう言っていた記憶があるだけで、確かで
はないけれど。

 で、村上春樹の、小説ではなく、編集と翻訳を手がけた本書をわざわざ選ん
だのにも理由がある。

 史上初めてのジャズ・レコードが発売されて100周年だった今年の当欄は、
1年を通じてジャズ本尽くしになったわけだが、実は先月になってようやく、
もうひとつのアニバーサリー・イヤーだったことを知った。

 セロニアス・モンクの生誕100年である。

 ご存知ない方のために解説しておくと、セロニアス・モンクはピアニスト。
モダン・ジャズのパイオニアの一人で、数多いるジャズの巨星の中でも、飛び
抜けて個性的な音楽を創造した。
 しかし、ジャズの歴史はトランペットやサックスなどのホーン・プレイヤー
が中心になることが多いため、何となくチャーリー・パーカーやマイルス・デ
イヴィスよりちょっと若い世代のような印象を持っていたのだが、なんとジャ
ズ・レコードと同い年だったのね、という驚きがあった。

 加えてぼくにとって、モンクは特に印象深いジャズメンなのである。

 前にも書いたが、若い頃、インストものがまったくダメだった。
 歌のない音楽って、どう聴いたらいいのか、どうもわからない。
 したがって、クラシックやらジャズは、ほぼスルー。声楽も、あの発声が苦
手だったので、パス。辛うじてジャズ・ヴォーカルだけは聴いていたが、どち
らかというと、メロディをあまり崩さない白人系が多かった。「ニューヨーク
のため息」と呼ばれたヘレン・メリルとか、初期ジャズのコーラス・グループ、
アンドリュース・シスターズとか。
 高校の時に、マイルス・デイヴィスの『カインド・オブ・ブルー』なら、メ
ロディアスで聴けるんじゃないかと思って試してみたが、やはり集中力が続か
ず、A面の途中で寝てしまった。

 しかし、30代の後半になって、突然「歌」というものが妙に押しつけがまし
く感じるようになったのである。むしろインストの方が聴きやすい、聴きたい
と思うようになった。
 きっかけは何もない。
 ただ、不意にそう感じたのだ。
 ある女性にその話をしたら、「抽象的になったのね」と言われた。いい年の
おっさんが何だけど、やっと大人になった気がした。

 そこで、この機会にインスト音楽という未踏の処女地を探検してみようと思
った。
 なにせ、かなり有名なものでも聴いたことがないので、見渡す限り名盤の宝
庫。聴くものには全く困らない幸せな状況となった。

 まずはクラシック。
 が、やはり長大なシンフォニーは途中で飽きてしまったので、コンパクトな
室内楽とか、自分も弾くギターもの、村治佳織とかをよく聴いていた。
 ただ、なぜかマーラーの一番だけは、最後まで飽きずに聴き通すことが出来
た。ロマン派あたりの方が、メロディも明解でとっつきがいいはずなのに、ど
うしてなのか、未だにわからない。

 そして、ジャズである。
 こちらも、アルバム1枚はなかなか聴き通せず、1曲、2曲で集中力が切れ
てしまっていたのだが、セロニアス・モンクの『ブリリアント・コーナーズ』
を買ったことで状況が変わった。このアルバムがぼくにとって「最後まで飽き
ずに聴き通すことの出来た初めてのモダン・ジャズ・レコード賞」に輝くので
ある。
 ま、大した賞ではないし、何も贈らなかったけど。
 どのみち本人死んでるし。

 だからモンクは、ぼくにとって特別なのだ。

 それにしても、どうしてこのアルバムを買ったのか、今となっては思い出せ
ない。
 かつて一度試したマイルスならわかる。ヘレン・メリルとの共演盤で有名だ
ったクリフォード・ブラウンでもわかる。けれど、唐突にモンクのアルバムに
手を出したのは……もしかするとジャケ買いだったのかもしれない。

 求道的で暗いイメージのモンク、代表曲が『ラウンド・アバウト・ミッドナ
イト』であるモンクにしては、タイトルに「ブリリアント」とあるせいか、こ
のアルバムのジャケットは白が基調となっており、やけにクリアなイメージの
ビジュアルなのである。
 写真も、白シャツを着た5人のモンクが、背中合わせにぐるっと円を描いて
いる合成もので、なかなか手がこんでいる。しかも本人、いたってにこやかに
微笑んでいるのである。

 余談だが、変な帽子に変な眼鏡、尖った顎鬚がトレードマークでありながら、
モンク自身は寡黙な人で、アルバムのジャケ写ではっちゃけるタイプとは思え
ないのだが、実際には案外コスプレしている。
『ソロ・モンク』のジャケットは、イラストではあるが昔の複葉機のパイロッ
ト姿だし、本書で村上春樹も取り上げている『アンダーグラウンド』ではレジ
スタンスの兵士に扮して、銃まで持ち、わざわざセットを組んで、凝りに凝っ
た写真を撮っている。

 しかし、『ブリリアント・コーナーズ』のジャケットが、いかにモンクらし
くない明るさに輝いていても、中身の音楽はばっちりモンク印。いきなりピア
ノの奇矯な不協和音から始まり、ホーンが入ってのテーマも、やはり独特のく
ねくねしたメロディだ。
 明らかにマイルスの『カインド・オブ・ブルー』の方が聴きやすいはずなの
だが、なぜかこのアルバムが最後までぼくの集中力を惹きつけ続けた。

 さて、前置きが長くなったが、本書『セロニアス・モンクのいた風景』は、
たぶん元ジャズ喫茶店主である村上春樹が、さまざまなジャズ雑誌やジャズ本
から、モンクに関する文章を抜粋して翻訳し、一冊に編集したものである。
 書き手には、モンクと共演したミュージシャンもいれば、ジャズ評論家もい
るし、彼のレコードを制作したプロデューサーもいる。

 本書から浮かび上がるモンクの生涯は、誤解を恐れず言うなら、その音楽の
ユニークさからするとありきたりである。
 つまり、不遇の天才ジャズメンという、ありふれた物語の1バリエーション
である、という意味だ。

 若い頃から既に自分の音楽を持っていて、チャーリー・パーカーやディジー
・ガレスピーと並んでビバップ革命に大きな貢献を果たしたが、彼の新しさを
ミュージシャン仲間すらほとんど理解できず、それでも頑固に孤高の道を歩み
続けために、経済的には恵まれなかった。妻のネリーや、数少ない理解者でモ
ダン・ジャズのパトロンとして知られるパノニカ・ド・コーニグズワーター男
爵夫人の支えで辛うじて生きてきた。
 ドラッグやアルコールの問題もあったし、遅刻の常習犯でもあった。ツアー
に出発する当日、カフス・ボタンが見つからないから行けないと言い出したり
もした。
 共演者のソロの途中でピアノの前から姿を消し、二十分帰って来ないことも
あった。
 しかし地道な活動は少しずつ理解者を増やし、そしてある時、小さなジャズ
・クラブでの連続公演が成功を収めて一気にメジャーに浮上する。

 そんなありふれた物語の中で、印象に残るのは、キャバレー・カードの問題
である。

 昔のアメリカの警察は、ミュージシャンが飲食を提供する店で演奏するため
の免許を発行していた。それがキャバレー・カードなのだが、その手数料は警
官の年金の基金に使われていた。
 また、免許の停止を種にミュージシャンを脅し、小遣い稼ぎをする輩もいた
という。
 そうした腐敗の構造に、天才モンクであってもやはり無縁ではいられなかっ
た。無実にもかかわらず薬物使用の容疑でキャバレー・カードを取り上げられ、
仕事ができなくなった時期が数年あるのだ。

 そうした時期でさえ、モンクは一人家でピアノに向かい続け、自らの音楽を
不断に進化させていた。なのに、その貴重な演奏はまったく人の耳に触れるこ
とがないままに、永遠に失われてしまった。
 これは明らかに、警察による文化への「犯罪」である。

 もうひとつは、パトロネージュの問題だ。

 先に書いた、モンクの理解者だったパノニカ男爵夫人、通称ニカは、英国ロ
スチャイルド家の生まれで、モンクに限らず、さまざまなアーティストの演奏
するジャズを愛し、彼らを物心両面で惜しみなく支えた。
 彼女は当初高級ホテルのスイートルーム住まいだったが、そこに夜な夜なミ
ュージシャンが出入りし、セッションを繰り広げたおかげで、同じようにホテ
ルに住む金持ちの御婦人方の顰蹙を買い、追い出されてしまうほどだった。
 ちなみにその様子はテープに録られ、今もロスチャイルド家に保管されてい
るという。残念ながら未だ門外不出のようだが、もし公開される日が来たら、
大変な音楽的発見になるだろう。

 それにしても、かつてヨーロッパでは、バッハが貴族の庇護によって音楽を
生み出していた、偉大な「パトロン」の時代があったわけだが、1950年代とい
うごく近い時代のアメリカにも、男爵夫人がジャズを庇護するなどという時代
錯誤なことがあったというのが、ぼくには意外だった。

 いま、パトロンというものはいない。
 80年代には、企業メセナということが言われ、企業がその役割を担うことが
期待された時期もあったが、それも景気がよければのこと。
 パトロン不在の21世紀に、時代の先を行き過ぎたミュージシャンは、どのよ
うに生活を支え、音楽を守るのだろう。
 しかも、音楽のみならず文化コンテンツの価格は軒並み暴落している。
 Youtubeを開けば、タダでいろんなものが視聴できる。
 有償サービスでも、定額聴き放題で何万曲、などと謳われている。

 正直言ってぼくもYoutubeの恩恵には預かっているのだが、こうしたコンテ
ンツの価格破壊が極限まで進行した時、どんな文化的荒野が広がるのか、恐ろ
しくもある……

 と、憂いつつ、本書を閉じれば、読者は裏表紙にセロニアス・モンクの後ろ
姿のイラストを見る。
 そこには手書きの文字で「なつかしいセロニアス・モンクの思い出 MIZU」
とあり、さらに、モンクがくわえたタバコに矢印が引かれ「ハイライト」と書
かれている。

 この絵の意味は、あとがきで村上春樹が書いている。

「MIZU」は、イラストレーター安西水丸のサインだ。彼はモンクの大ファンで、
ライブを見に行った時、なんとタバコをねだられてハイライトを一本上げたこ
とがあるらしい。
 そこで村上は、本書の表紙を安西水丸に依頼し、その時のことを描いてもら
おうと考えたのだが、その矢先に、一時代を築いたイラストレーターは急逝し
てしまった。
 
 では、本書の表紙はどうなったか。
 ちゃんと、ステージから降りたモンクが客席の日本人らしき男性からタバコ
を一本もらう場面を描いたイラストになっており、そこには「WADA」というサ
インがある。

 この「WADA」とは、かの和田誠。かなわぬ夢に終わった表紙の絵を、安西水
丸に代わって描いたという次第なのだった。

 そして、その後発見された安西水丸によるモンクの後ろ姿を裏表紙にして、
本書は成った。
 そんなエピソードも、どこかセロニアス・モンクに相応しいような気がする。


村上春樹編・訳
ロレイン・ゴードン、メアリ・ルウ・ウィリアムズ、トマス・フィッタリング、
スティーブ・レイシー、ナット・ヘントフ、デヴィッド・カスティン、ダン・
モーゲンスターン、ベン・ラトリフ、バリー・ファレル、レナード・フェザー、
オリン・キープニューズ、ジョージ・ウィーン
『セロニアス・モンクのいた風景』
2014年10月10日発行
新潮社

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
ノーベル文学賞候補の常連、村上春樹。今年はまさかのカズオ・イシグロで、
なんかニアミスな感じでした。しかし、同じ日本人だからと言って、優れた人
の業績を、なぜ我がことのように喜ぶのでしょうか? 自分は何も貢献してい
ないのに。もっと言えば、そうした世界的な評価を得るまでは、ろくに作品に
触れてもいないのにね。ニカのようなパトロンにはなれずとも、一人の読者と
して支持してきた作家の受賞であれば、例え外人作家であれ、国籍なんか関係
なく、嬉しいはずだと思うんだけど。

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■「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
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人を励ます言葉を知って、励まされよう
『ペップトーク たった1分で相手をやる気にさせる話術』
(浦上大輔・著/フォレスト出版)

 溺れる者は藁をもつかむ……約1か月前、おばちゃまは、ある人と話合って
方向性を決め、励ます仕事をしないといけないことになりました。

 もうね、これだけはどうしても避けられない乾坤一擲の大勝負ですよ。

 世の中にはムダな言葉や、やくたいもない会話がアホほど飛び交っているけ
れど、これだけは真正面からやらんとしょうがないという案件だったわけです。
そして相手を納得させる自信は限りなくゼロ。

 そんなときに知ったのがこの本です。

 普通の状態なら通り過ぎる本。

 ちょっと立ち止まったとしても、
「ああ、アメリカ的な新しいやつね」で終わっていたことでしょう。
しかし。

 溺れる者は藁をもつかむ(大事なことだから2回言いました)。

 で、結論から言うとこの本は細くない藁だったのです。
 その乾坤一擲の大勝負に役立ったかどうかはわかりません。
 でも、ネガティブ思考歴半世紀以上の私には勉強になることばかりでした。
 
 ペップトークとは、人を励ます言葉のことです。
 アメリカではこれが盛んで、どうしたらやる気が出て進んで勝負に出て勝利
を収められるかリーダーたちは考えているらしい。
 たとえば、オリンピックで強敵相手にびびるチームに、「時代はお前たちの
ものだ。必ず取ってこい」
と激を飛ばすとか。
 ポイントは
 (1)ポジティブな言葉を使う (2)短い言葉を使う (3)わかりやすい言葉を使う 
(4)相手が一番言って欲しい言葉を使う (5)相手の心に火をつける本気のかか
わりですって。受容→承認→行動→激励の4ステップが大事。なるほど。日本
人の苦手なとこですなあ。

 バレーボールの大事な試合で、サーブが回ってきた。コーチから言葉が来る
「ミスするなよ」。選手の脳裏にかつてサーブでミスした場面がフラッシュバ
ックする。ミスして負ける・・・。ああ!日本人!

 そこは、

「大丈夫。丁寧にいけ」とか「思い切っていけ」とかいうのがいいんでしょう。

 そして、何かでへこんでいる人には励ます前に、「たいへんだったでしょう。」
と一度、相手の心情まで自分の心の眼線を下げて言葉をかけるなども大事です。

 この手の人をプラス志向にもっていく本は、ある意味、うさん臭さがあるも
のですが、読んでいてすんなり納得できたのは、著者のパーソナリティのせい
かもしれません。

 彼が実際に経験したことを書いているし、そのエピソードがいいんですよ。

 北海道でもう一度メロンが作りたくてリハビリに励む女性とか、病気になっ
ても前向きな女性とかとのかかわり方がリアルで、心情に満ち溢れています。

 このエピソードが作為的ではないと感じられたからこそ、ネガティブ思考&
斜目線でものを見る癖半世紀以上の私が最後まで読めたのかもしれません。

 なんかね、ときどき泣けてきた部分もある。

 浅田真央さんのソチのフリーの前に佐藤信夫コーチがこう言う。
 「何かあれば先生がリンクに入って助けに行く」

 この話、もう何回も聞いて知っている話。そして、リンクに入ったらルール
違反でアウトと皆知っている。でも聞くだけで感動してしまいます。
(これがヘップトークなのかと言われれば違うような気もするけどね。)

 ペップトークの基本は本気で人とかかわることと書いてありますが、それは
わかります。
 人を励ます言葉の本を読んで、励まされた気がします。

 今は師走だというのに実はおばちゃま、にっちもさっちもいかない仕事の迷
路にはまりまくっている状態。でも、人を励まし自分も励ましてがんばろうと
思えました。


大友舞子(おおとも・まいこ)
昭和20年代生まれのフリー編集&ライター。関東生まれで関西在住。

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したのか』鴻上尚史 講談社現代新書

 『永遠の0』というベストセラー小説がある。特攻で死ぬことに抗った戦闘
機乗りの話だが、実際にはこんな人はいなかったろうなと思った。ところが、
実際には「こんな人」がたくさんいたとは知らなかった。

 この本は九回特攻で出撃しながら生きて戻ってきた佐々木友次氏を描くノン
フィクション。鴻上尚史氏は、佐々木氏を取材して小説をモノにして、それだ
けでは足りない。本当にこんな人がいたのだと言うことを多くの人に知って欲
しいと思って、新たにノンフィクションを書き下ろしたのだという。

 最初に出てくるのが、振武寮という福岡にあったという、生還した特攻隊員
が集められた寮の話。ミュージシャンでる大貫妙子の父親で、実際に振武寮に
入れられた大貫健一郎氏の体験談だ。

 振武寮では「なぜ生きて戻ってきたのか!」「死んでいった仲間に恥ずかし
くないのか!」と責められるのである。その体験談の中に佐々木友次という名
前が出てきて鴻上氏は佐々木氏を知ることになる。

 特攻隊は海軍から始まったが、佐々木氏は陸軍最初の特攻隊万朶隊に参加し
ていた。特攻の初期は、必ず成果を上げなければならないと言うことで、メン
バーは精鋭を選んでいた。陸軍においても同様で、精鋭だからこそ佐々木氏も
選ばれた。

 隊長に任命したのは岩本益臣大尉。この人は操縦と爆撃の名手として知られ、
特攻隊長に任命される前には「跳飛爆撃」の第一人者だった。跳飛爆撃とは、
爆弾を敵艦船に命中させるのではなく、直前のところで落として跳ねさせて当
てる爆撃法。平たい石を低角度で投げて跳ねさせるのを爆撃に応用した方法だ。

 なぜこういう方法を採るのかというと、艦船を爆撃するのは大変難しいから
である。飛行機は速い。艦船は遅い。当てようとすると艦船は細長いので前方
ないしは後方から狙いをつけて爆弾を落とさなければならないが、当然敵艦船
は攻撃してくる上にジクザグに進路をとって前後ろをとられないようにする。

 跳飛爆撃だとジクザグに逃げる手を封じられるだけでなく、艦船の低いとこ
ろに爆弾を当てることになるから上から攻撃するよりダメージが大きく撃沈も
しやすくなる。

 そう考えて、攻撃ノウハウを訓練によって一生懸命作り上げてきて、ようや
く完成の域に達し、これから多の戦闘機乗りにノウハウを教えようとしていた
凄腕の戦闘機乗り。そんな人を陸軍は無駄に死なせようとしていた。

 これには、ほかならぬ岩本大尉も怒った。自分もいつ死ぬかもわからないが、
生きていれば何隻も敵艦船を沈められる自信があった。そのために厳しい訓練
を重ねて新しい爆撃法を開発したのだ。それが一隻しか沈められない特攻をや
れと言われりゃ、そりゃ怒る。

 かといって軍隊であるから上官の命令には逆らえない。そんな中、岩本大尉
に情報がもたらされる。爆弾を外せなくしてあった特攻用の機体から爆弾を落
とせる方法を岩本大尉に教える人がいたのだ。

 それで岩本大尉もなんとか優秀な乗員を殺さなくて済むと思っていたところ
に、上官から呼び出された。司令部に行く飛行機が米軍の餌食となって岩本大
尉以下将校クラスが全員戦死してしまった。万朶隊は出撃前に上官を失ったの
である。

 この岩本大尉に佐々木氏は感銘を受け、できるだけ生き残って多くの艦船を
沈めようとする。そのため何度も帰ってくるのだが、特攻で出撃した人にはす
でに戦士報告がされていて、彼の出身地である北海道の当別町では二度葬式が
出たという。

 軍神扱いされている人が生きていては困ると戦果を挙げて帰ってきても「死
んでこい」なのである。そうした上からの圧力には抗しがたく、多くの人が海
に散っていった。しかし、佐々木氏は上から圧力に負けなかったのである。

 それはなぜだったのか?それがこの本のテーマだ。それは読んでのお楽しみ
にしておくが、読んでいて胸くそ悪かったのがダメな組織はここまでダメにな
るのかという絶望感だ。

 もともと特攻で大戦果は挙げられないとわかっていた。戦艦や空母を陸軍の
爆弾で沈めることは難しかった。特攻で相手を震い上がらせて講和に持ち込む
というシナリオがあったようだが、それもよしとしよう。発案者の大西瀧治郎
は自分が何をやっていたのかよくわかっていた。自分の責任を自覚していたか
らこそ終戦時に自決したのだろう。

 しかし実際に飛行兵に命令を出していた連中のなんと醜悪なことか。そして
その姿は、非正規雇用を使い捨てにしたり、正規でもブラックな職場で社員を
潰していくことをなんとも思わないブラック企業が跋扈する今に通じているの
だろう。

 もはや先の戦争に参加した経験のある人は90歳前後。経験者が日本からいな
くなる日は間もなくやってくる。しかし特攻を生んだ、唾棄すべき体質を持つ
組織は、今なお日本に生き続けている。

(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・『元アイドルのAVギャル瀬名あゆむ、アイドルプロデューサーになる』
 (コアマガジン)
 http://www.coremagazine.co.jp/book/coreshinsho_024.html

・『ミスなくすばやく仕事をする技術』(秀和システム)
 http://www.shuwasystem.co.jp/products/7980html/5125.html

・『マンガでわかるグーグルのマインドフルネス革命』(サンガ)
 http://www.samgha-ec.com/SHOP/300870.html

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
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1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
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6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 発行が遅れに遅れて、とうとう大晦日になってしまいました。個人的には今
年は喪中ですので年末年始はがっつり仕事しようと思っています。

 皆様も素敵な2018年をお迎えください。(あ)

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