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[書評]のメルマガ vol.657

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■■ [書評]のメルマガ                2018.07.10.発行
■■                              vol.657
■■ mailmagazine of book reviews    [ざわざわする心持ちのとき 号]
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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<103>思わず笑ってしまった、いくつかの件について

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第102回 自分を偽って生きることについて。血の繋がりだけが家族か

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→85 普遍的な物語の効能

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです。

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<103>思わず笑ってしまった、いくつかの件について

 You tubeを渉猟してたら、地方から東京へ遊びに来た人たちに、東京の印象
を尋ねる、という旨の街頭インタビューをやっていた。
 なんかのテレビ番組から抜かれた映像だった。
 その中で、「神戸から観光で来た」という、大学生くらいらしい女子2名が、
「あ、あれ! あれが、めっちゃおかしかった」とケラケラ笑いながら答えて
いたのだった。

 彼女たちが「めっちゃおかしかった」のは、電車のラッシュで、しかもすし
詰めになった乗客たちの誰もが「なんかな、みんな、すっごい真面目で真剣な
顔して乗ったはるねン」と、山手線のホームで笑い転げていたらしい。

 確かに、関西で東京と同じようなラッシュが出現するのは、大阪の地下鉄御
堂筋線くらいやもんなあ…と思ったところで、けらけら笑う彼女らに、なんだ
か既視感があるのに気がついた。

 そうだった、そうだった、と思い出したのは、10年ほど前のこと。
 当時勤めていた神戸の専門学校の学生たちを、東京での研修に引率したとき
だった。

 その日は、三鷹のジブリ美術館の見学が予定されていて、男子2名女子4名
を連れて、ホテル最寄りの水道橋駅の新宿方面行ホームに上がったのは、朝の
8時頃。
 ところが、ちょうどラッシュアワー、やって来た電車は満員のすし詰めで、
「え〜〜〜っ? これに乗るんですかァ〜〜?」と、女子連が難色を示した。
 何本遅らせようと同じだとは思ったが、思い知らせるために1本遅らせるこ
とにして、とりあえず、1本目は見送った。
 と、動き出した電車を眺めながら、女子たちが、なにやらケラケラと笑って
いるのである。
 何がそんなにおもしろいのかと問うと、さきのテレビの神戸女子と同じく、
「せやかって、なんか、みんな、真剣な顔で電車に乗ってやるし……くくく…」
「女の人なんか、眉が吊り上って……きゃははは…」と、笑いながら口々に言
うのだった。

 彼女たちにとっては、初めて見る「超」のつく満員電車が物珍しいのと同時
に、そこに笑いもせず無表情で乗っている乗客たちが、なんだかコントの一場
面のようにも見えたようなのだ。
 ほどなくやって来た次の電車も、案の定、同じく満員で、「え〜〜〜っ!?」
と嫌がる彼女らに、「いくら待ってもおんなじやから、乗れ!」とムリヤリ乗
っけたのだが、すし詰めの車内に入ってもなお、周りの乗客を眺めまわしては、
「くくく…」「うふっ…うふふ…」という忍び笑いから、やがてケラケラと無
遠慮に笑いだし、通勤のサラリーマン・ОLの皆さんから、顰蹙を買いまくっ
てしまった。

 あ、今書いていて思い出したのだが、自分にも、同じようなことが、ありま
した、ありました。
 あれは、受験のために初めて東京へ行った1974年の春。
 新幹線を降りて、国電のホームに上がると、電車を待つ人たちが、まるで小
学生の朝礼のように、整然と並んでいたのだった。
 皆が皆、真面目くさった顔で「前にならえ」したみたいにきれいに並んでい
て、下を向いては思わず「くくく…」と笑ってしまったのだった。

 あのころ、「ホームに整列する」という文化は、関西にはなかったですもん
ね。
 電車を待つ乗客は、ホームのあちこちに、てんで勝手にばらばらと立ってい
て、電車が来ると、団子になってそれぞれのドアに殺到してました。
 今でこそ、一応は並んで待つようにはなったが、それにしても、あの整然た
る様とは比べ物にならず、かなりばらけてくだけた並び方です、関西は。

 ふと買った、あるいはたまたま見かけた漫画で、「思わず笑ってしまった」
というのが、このところ何度かあった。

 スケラッコ『大きい犬』(リイド社)は、たまたま書店で見つけて買った本。
 作者のスケラッコは、「トーチweb」で知っていて、独特の「ちょっと不思
議」な世界観が好きだったので、買ってみた。

 オムニバスなのだが、表題作の『大きい犬』に、まず「思わず笑って」しま
った。
 主人公・高田クンは、「インドに行く」という友人から、留守中の部屋…と
いうか一軒家なのだが、そこに留守番として住んでくれるよう頼まれる。
 引き受けたはいいが、彼から渡された地図はごくごく簡単なもので、目印と
して「大きい犬から二軒め」としか書いてない。
 「大きい犬って、なんだよ?」と角を曲がったところにいたのは、まさに
「大きい犬」。
 そこには、家一軒分ほどの大きさのでかい犬が、家と家の間の空き地に、つ
くねんと寝そべっているのだ。

 犬はいいやつで、なぜか犬語が話せる高田クンは、この犬と次第に交情を育
んでいくのだが、高田クンが旅行から帰ると、犬は、街から忽然と姿を消して
いた。
 自分の言葉が、知らず犬を傷つけたのでは? と悩む高田クンのもとに、や
がてひょっこりと犬が帰ってきて、旅行に出かけた高田クンを見て、自分もま
た、ここに留まっている必要はないと気付いたのだ、と告げ、「動く」ことに
気づかせてくれた高田クンに感謝しつつ、またもやどこかへ旅立っていく。

 これ、誰しも「大きい犬」の登場シーンでは、思わず笑ってしまうと思う、
絶対。

 この他にも、ある日突然お爺ちゃんが、家族全員に向かって「実は、わし、
えびすさまなんや」と、七福神の一人であることを告白して、あっけにとられ
る家族を尻目に、お爺ちゃんの元へ、七福神が続々と集結し、挙句の果ては
「宝船」であるらしいハイエースに乗り込んで、揃って天に昇って行ってしま
ったり……

 と全編、なんだかまったりとした「不思議」に満ちていて、「大きい犬」の
後日譚もまた、ほんの短く収録されているのだった。

 スケラッコは、「トーチweb」でただ今『平太郎に怖いものはない』を連載
中。
 備後三次地方に伝わる有名な怪異譚「稲生物怪録」を、現代の広島に置き換
え、さらに飄々とした16歳の主人公「平太郎」の「なんとなくな恋」などもオ
リジナルで挿入された妖怪怪異譚の連作オムニバス。
 これまた、ホンワカとした「不思議感」が作品全体に流れていて、とてもい
い味を出している。

 原作に忠実に、1話1日、「30日」で物語が完結するみたいだが、既にその
およそ半月分が、単行本に「上巻」としてまとめられている。
 これは、「買い」ですぜ、絶対。

 ちなみに、「トーチ」連載中の漫画は、「動く」漫画なのだけど、紙の単行
本では当然動くことはなくて、電子版なら動くのかな? と今回は電子版を手
に入れたのだが、これもやはり、紙と同じく動きませんでした。

 意志強ナツ子『魔術師A』(リイド社)もまた、「トーチ」連載からの単行本。
 こちらは、その連載中に、単行本にも収録されている一篇『コリコリ屋さん』
を見て、衝撃を受けると同時に「思わず笑ってしまった」ので、単行本化を知
ってすぐに購入。
 でも、単行本でまとめて読んでみると、「トーチ」で初めて見たときほどの
インパクトがなくて、「あれ?」と思ったのだが、それでも、全編に、おもわ
ず「ぢょしこうせい」と「ち」に点々の平仮名で書きたくなるやーらしさとい
うか、怪しいエロティシズム…というより「淫靡」と言った方がハマるような
「気」が、こってりと満ちているのだ。
 さりながら、ここに描かれた女子高生たちは、まさに「今」を生きる少女た
ちで、意志強ナツ子、次回作も是非「ぢょしこうせい」でお願いしたい、と思
う。

 「トーチ」では、あの『あれよ星屑』の山田参助が、小島功ばりの「うっふ
んお色気画風」で挑む『ニッポン夜枕ばなし』も始まった。
 この人、ほんとに器用ですね。

 「トーチ」連載作品ではさらに、この8月には単行本も発売されるらしい、
斎藤潤一郎『死都調布』も、注目だ。
 この人は、あの西野空男が主催した雑誌「架空」出身の作家なのだ。

 コマの中で絵が動いたり、マイナー作家を発掘してきたり、漫画家じゃない
人に漫画を描かせたり、漫画家にさまざまな新しい取り組みをさせてみたり、
と今や「トーチ」は、漫画の実験場といった感があるのだけど、それも含めて、
やはり「トーチ」は、現代の「ガロ」である、といつだかも言ったけど、改め
て強く感じるのであった。

 あの「リイド社」が運営するこのウェブマガジン、既に単行本もかなりな点
数が出ていて、『クモ漫』のような映画化作品もあるのだが、いかんせん、ま
だまだかなりな赤字ではあるそうだ。
 ここには、現代の「ガロ」、漫画の実験場として、ぜひともに頑張って頂き
たいと思う。

 がんばれ、「トーチ」!


太郎吉野(たろう・よしの)
 2011年に神戸から西宮へ引っ越して、ただ今のホームグラウンドは甲子園。
右投げ右打ち。掛布二軍監督はひとつ年上の同級生。

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第102回 自分を偽って生きることについて。血の繋がりだけが家族か

 「万引き家族」。カンヌ国際映画祭で最高賞「パルムドール」に輝き、その
後のサン・セバスチャン国際映画祭での「ドノスティア賞」。そしてミュンヘ
ン国際映画祭では「外国語映画賞」を受賞した。

 今回の課題は、パルムドール作品だから、というわけではない。この作品を
作った是枝裕和監督は、これまでもホームドラマの体裁を取りながら、この世
の中の構成要素を切り取った、まさに社会の縮図を描いている作品を世に送り
出している。その監督の映画の題名が「万引き家族」。万引きをして生計を立
てている家族を描いている、という前宣伝だった。犯罪映画か?犯罪誘導映画
か?と思ってしまうのも無理はない。しかし、映画の後半から徐々に真実が明
らかになり、さまざまな問題を提示して、映画は終わるのだ。

 映画を観終わった後、書店で早速映画の題名と同じ題名の本を買って読んだ。

『万引き家族』(是枝裕和 著)(宝島社)(2018年6月11日第1刷発行)

 本書は映画の原作ではない。映画は完全に是枝監督の頭の中で紡がれ、まず
は脚本という形で現れた。本書は、たぶんト書きと台詞を厳密に分けているそ
の脚本を小説という形に整えたものだと思う。全体の作りが脚本に似ている。
そしてたぶんト書きには書いていない、役者オリジナルの演技を文章化してい
る。是枝監督は演技を役者に考えさせ、役者に任せた部分もある、とどこかの
インタビューで云っていたのだが、本書は描写が映画で描かれている場面と同
じなのである。だから、本書の発行日(2018.06.11)は映画公開日(2018.06.
08)よりも後になる。もうひとつ云うと、映画ではカットされたけど、本書で
は、描かれている場面があるのだ。おそらく撮影はしたのだけど、編集段階で
尺の関係から切らざるを得なかったのではなかろうか。

(以下、すべて映画のネタバレになります。まだ映画を観ていない人は読まな
くていいです)

 是枝監督に拠ると、最初に撮ったシーンが後半のハイライトである海水浴の
場面で、そこで樹木希林のアドリブによって、映画の方向が決まった、とのこ
とだ。そのアドリブだった台詞も、本書にはばっちり書かれている。

 なにもかも映画が最初にありきの本である。したがって、本書のことを書く
ことは映画に対する批評でもある。

 「万引き家族」で是枝監督は何を訴えたかったか。この映画は実はとても重
い。家族と社会と貧困について考えさせられる。それらのなんと間口が広く、
奥行きもあることか。さまざまな人がさまざまに云っているし、それはほとん
どが間違ってはいない。正解のない命題。観た人それぞれが自分の経験や自分
の考えに照らし合わせて、自分の尺度でものを云う。たぶんそれでいいと思う。
さまざまな感想があることはとてもいいことだ。

 で、執筆子はどう観て、どう読んだか。

 一言で云うと、“血縁関係だけが家族か”・・・・・ということに尽きる。
本作の家族は、6人。祖母(初枝=樹木希林)、父(治=リリー・フランキー)、
母(信代=安藤さくら)、母の妹(亜紀=松岡茉優)、息子(祥太=城桧吏)、
娘(ゆり=佐々木みゆ)。実は誰ひとりとして血は繋がっていない。家族のふ
りをしている。が、前半でヒントになる出来事がある。この映画は娘のゆりが
拾われた日から始まるが、家族の中でゆりを返してくる、返さない、で少し議
論になる。結局母(信代=安藤さくら)が引き取ること(それでも世間ではこ
のようなケースを誘拐というが)に賛成して、ゆりは家族の一員となる。返す
ことを主張していた母が、ゆりの本当の家の様子をみて(DVの家庭だった!)、
ゆりを引き取って育てることにした。その決心のシーン。母がゆりをぎゅっと
抱きしめる。映画ではこれだけだが、本ではそこに母信代の独白が入る。「お
前なんかにこの子を返してやるもんか」。

 この独白が後半、一家が警察に捕まり、取り調べにおいて、信代が取り調べ
の警官に云い放つせりふにリンクしている。「誰かが捨てたのを拾ったんです。
捨てた人は、他にいるんじゃないですか?」

 家族がテーマのものがたりである以上、主役は家族全員なのだが、いちばん
大切なのは母なのだ。女性なのである。映画では父役のリリー・フランキーが
最初にクレジットされるが、全員が主役であり、なにより大切なのは母役の安
藤さくらだと思った。

 ものがたりは、まず、父の治と息子の祥太がスーパーマーケットで見事な連
携プレーで万引きをするシーンから始まる。どうして万引きをしているのか、
ものがたりが進むにつれて、少しずつ分かってくる。治は日雇い、信代はクリ
ーニング店、亜紀は風俗でそれぞれ働いている。しかし祖母の初枝の年金が最
大の収入源である。年金だけでは心許ないので万引きをして生計を維持してい
るようだ。子の祥太は小学生だが、どうやら学校に通っていない。この状況で
拾ってきたゆりを家族の一員として認めていく。そしてゆりも万引きするよう
になる。そのあたりからものがたりは少しずつ、この偽装家族が壊れていく様
を描いていく。最初のほつれは、ゆりが行方不明、とマスコミで報道されたこ
と。観客(読者)は、この家族はもしかしたらみんな他人なのではないか、と
思い始める。祖母の初枝と妹の亜紀の関係が明らかになるシーンでは、初枝は
善意で行動しているのか、また悪意を込めて小ゆすりたかりをしているのか、
亜紀の両親の家庭に行って小遣いを得ているのだ。この偽装家族は、ある意味
ユートピアを築いていた。しかしそれは、実は砂上の楼閣に過ぎなかったこと
が、この大報道でわかってしまう。そして、次にものがたりが壊れるのは、母
信代がクリーニング店を馘首になるとき。さらに三番目の破綻は、祖母の初枝
の死。葬式とか届け出とかそういうことをすると、この偽装家族のことがあっ
という間に世間にバレてしまい。バレたときがユートピアの終焉になることに
気づいた、父(治)と母(信代)は、初枝の死をなかったことにする。なんと
穴を掘って埋めてしまうのだ。それでも翌日から偽装家族は続く。死亡届を出
していないので、期日には初枝の口座に年金が入る。偽装家族は初枝が死んで
も初枝の年金をあてにする。そんなことをしているうちに、息子の祥太が罪悪
感をもってしまったことが第四の破綻。父の治よりも早く万引きに対する罪悪
感を持ってしまった。

 そして息子祥太が、ゆりをかばうためにスーパーの店員にわざと捕まり、一
家は解散の日を迎えた。

 このものがたりの凄さは、誰も救われない処にある。信代はすべての罪を被
って刑務所へ。亜紀は、治と信代に騙され、そして最愛の初枝にも騙されたと
思い込んでいる。ゆりは実の両親に引き取られ、あいかわらず暴力を受けひと
りで過ごす。治は淋しく一人暮らし。全員に捨てられた状況。祥太は施設に入
る。祥太は救われるのか。ゆりは頑張って生きていけるのか。亜紀は大丈夫な
のか。最後まで能天気な治はひとりで生活できるのか。信代はいつ刑務所から
出られるのか。これは嘘をついたことの代償なのだ。この偽装家族は、人を騙
すと共に自分自身も偽って生きていたのだ。自分を偽って生きている人に救い
と希望はない。

 ものがたりを観終わり、読み終わっても、なお未来を想像してしまうのだ。
 このものがたりは、確実に家族のものがたりであり、ホームドラマである。
それが他人同士であっても。

多呂さ(昨年に続いて7月7日の凶報。大雨によるたくさんの犠牲者。被災者
が一刻早くもとの生活に戻れるように祈念します)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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85 普遍的な物語の効能

 各地の水害で避難にあわれたみなさまの日常が、一日も早くもどってきます
 ように。孤立されている方々が無事救助され、食べ物や日常に不足なものが
 なくなりますように。

 一年の中でおだやかに過ごせる季節が少なくなっているような感覚です。
 地震があり、豪雨があり、土砂災害があり。

 ざわざわする心持ちのとき、
 なにを読めるだろうかと考えました。

 そんなとき、
 フェイスブックで、京都の子どもの本の店「きんだあらんど」さんが、『山
 の上の火』というエチオピアのおはなしを紹介されていたのを読み、久しぶ
 りに再読したところ、なんともいえない落ち着いた気持ちになりました。

 「きんだあらんど」Facebookページ
 https://goo.gl/LdZVHM

 アルハという若者がご主人様と賭けをします。
 スルタ山のてっぺんに一晩中、裸で突っ立っていられるかどうかです。
 アルハは賭けを引き受けてから心細くなり、ものしりじいさんに相談しまし
 た。じいさんは、スルタ山の谷を隔てたところにある岩の上で火をもやすの
 で、それをみて山に立ち続けることを提言しました。

 直接あたためない火でも、その火を燃やし続けてくれるじいさんの気持ちは
 アルハを一晩山の上で立たせる力の源になりました。
 
 その後の話は一筋縄ではいかないのですが、しめくくりはとてもよいもので
 した。

 この話を読んだあと、アンデルセンを読みたくなりました。

 岩波文庫や福音館文庫でも、アンデルセン童話集は刊行されていますが、
 この5月にのら書店からアーディゾーニが選んだアンデルセン作品が出たの
 です。

 『アンデルセンのおはなし』
 スティーブン・コリン /英語訳
 エドワード・アーディゾーニ/選・絵 江國香織訳 のら書店

 たくさんのアンデルセンの物語から、14編を選び絵をつけたのが、エドワー
 ド・アーディゾーニ。1979年に亡くなっている、イギリスの画家です。
 『チムとゆうかんなせんちょう』(福音館書店)のシリーズ絵本等の他、児
 童文学の挿絵も描いています。

 アーディゾーニの描く子どもは、その心情が浮かび上がってくるかのような
 繊細なタッチで、見入ってしまう魅力があります。

 既訳のアンデルセン作品は、大塚雄三さん(福音館文庫)も、大畑末吉さん
 (岩波文庫)も、簡潔ですっきりしたものですが、江國香織さんの訳文は、
 情景が目に見えるようで、また、すっきりした読みやすい文章は、声に出し
 て読むとより楽しめます。

 14編をいくつか音読していると、高校生の娘もいつのまにか聞いていたほど、
 よく知っている話でも、ぐぃっと物語世界に引き込まれます。

 2つの話をご紹介します。

 「しっかりしたスズの兵隊」

 25人いるスズの兵隊の内、1本足の兵隊がいました。
 彼は、片足を上げて踊っている小さな女の人(紙でできています)も自分と
 同じように1本足だと思い、心を寄せます。
 同じ家のおもちゃには、びっくり箱に入った小鬼がいました。小鬼はスズの
 兵隊に冷たい言葉を放ちます。小鬼のしわざなのか、スズの兵隊は、家から
 出てしまい、紆余曲折を経て、また同じ家に戻るのですが、残酷な運命が待
 っていました……。

 スズの兵隊の実直な様子や、小鬼の意地悪さ、踊り子の可憐さがまっすぐに
 伝わり、兵隊が運命に翻弄されラストを迎えるまでずっとハラハラします。

 短い話ですが、スズの兵隊に流れる人生の時間はとても濃密です。

 「皇帝の新しい服」は「はだかの王様」というタイトルでよく知られている
 話です。

 衣装に目のない皇帝が、すばらしい衣装という言葉にひかれて、ペテン師に
 だまされてしまう話です。
 
 その役職にふさわしくない者にはみえないすばらしい衣装。皇帝より先に、
 チェックした側近たちもみな、役職にふさわしい事を示すために、みえない
 衣装をほめちぎります。

 衣装をつけたつもりで大行列する皇帝に、ひとりの子どもがぴしゃりと言い
 ます。「皇帝は何も着ていないよ!」

 この子どものひとことは、いまの私には響きました。

 はだかの王様を滑稽だと思っていたときもありましたが、いい大人になって
 から読むと、周りの目を気にすることをより理解できるようになったからで
 す。

 普遍的だからこそ、このお話はいまも読み継がれるのでしょう。

 まずは、ひとつふたつ、読んでみてください。


(林さかな)
会津若松在住
http://1day1book.strikingly.com/

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
----------------------------------------------------------------------

 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510

・『支え合い・学び合いで育つ「わたし」』(エディット・パルク)
  http://web.kyoto-inet.or.jp/people/cogito/%8Fo%94%C5%88%C4%93%E0/%8Ex%82%A6%8D%87%82%A2%81E%8Aw%82%D1%8D%87%82%A2.html

・『追憶 下弦の月』(パレードブックス)
  http://books.parade.co.jp/category/genre02/978-4-434-23989-2.html

・『元アイドルのAVギャル瀬名あゆむ、アイドルプロデューサーになる』
 (コアマガジン)
 http://www.coremagazine.co.jp/book/coreshinsho_024.html

・『ミスなくすばやく仕事をする技術』(秀和システム)
 http://www.shuwasystem.co.jp/products/7980html/5125.html

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
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 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

 〒142-0041 東京都品川区戸越5-4-3 アズ品川ビル4階
       ビズナレッジ株式会社内 [書評]のメルマガ 献本 係

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンや楽天などのオンライン
 書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。つまり
 は当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願いしま
 す。(あまりにも短いものは書評とは呼べませんので、文字数の条件を設け
 ました。書評は500字以上でお願い致します。)

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

----------------------------------------------------------------------
■あとがき
----------------------------------------------------------------------

 お詫びです。前号6月20日号の号数を誤っておりました。正しくは656号で
した。謹んでお詫び申し上げます。

 今回は、久々に、あまり遅れずに発行できました。(あ)

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