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[書評]のメルマガ vol.680

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■■ [書評]のメルマガ                2019.07.10.発行
■■                              vol.680
■■ mailmagazine of book reviews      [いちいち説明しないと 号]
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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<114>鉄と漫画と遠い昭和と

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→96 生きていくために見つけなくはいけないもの

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第114回 日本の歴史では、何が勝者を決めるのか

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<114>鉄と漫画と遠い昭和と

 いしいひさいちの漫画に時たま登場する「セキカワ先生」をご存知だろうか。

 大学の先生であるセキカワ先生は、稚気と無邪気な我が儘に溢れる人で、学
会で出張するに際して、新幹線の切符どうしましょう? と尋ねてきた助手に
向かって、「席は窓際な。そして隣には、三十代半ばの人妻だ、これは絶対!」
と無理難題を押し付ける。

 そのセキカワ先生こと関川夏央の『汽車旅放浪記』(中公文庫)を、最近読ん
だ。
 既に中年を過ぎ老年に差し掛かった著者が、以前から鉄道趣味があったこと
を「含羞をこめて」告白し、小説や映画の中の「鉄道」シーンを通してその作
品を語ったり、あるいはそこへ出かけて行ったり、というエッセイ集。

 夏目漱石の「三四郎」が福岡県行橋から帝大入学のために上京するに際して、
行橋を「9時57分発」の列車に乗って、門司から連絡船で下関、「午後2時40分
発」の京都行列車で翌朝「6時25分」神戸着。
 終着の京都まで行かなかったのは、神戸始発の列車で座席を確保したいがた
めで、8時間後の「午後2時30分発」名古屋行きに乗車。
 この列車内で乗り合わせた女と、名古屋の旅館で同宿する羽目になる。その
翌朝、「あなたは余っ程度胸のない方ですね」と呆れる女と別れて東京行きの
客となり、夜の「8時02分」、ようやくに新橋に到着する。
 行橋を出てから丸々3日間の行程である。

 と、このように、夏目漱石はじめ、内田百痢太宰治、林芙美子や松本清張、
宮脇俊三などの文芸作品を、あるいは黒澤明や小津安二郎の映画を、「鉄道」
という視点で捕えて、読み解いていく。
 中でもセキカワ先生は、自らと同じく「含羞をもって」鉄道趣味を語る宮脇
俊三の視点がお好みのようで、その後の、やはり「鉄道」を軸にした著作『寝
台急行「昭和」行』(NHK出版)では、宮脇俊三その人になりきろう、としたフ
シも見える…ように思える。

 『汽車旅放浪記』でも触れていて、同じセキカワ先生の他の著作でも触れら
れていたのが、松本清張原作になる1958年の松竹映画『張込み』(野村芳太郎
監督)だ。

 指名手配の殺人犯が立ち回るはずの、彼の故郷に先回りして待ち伏せの張込
みに向かうべく、夜の横浜駅ホームに駆け上がってきた刑事二人が、すでに動
き始めている九州行きの列車に飛び乗る。
 警視庁の刑事二人が、始発の東京駅ではなく、わざわざ横浜から乗車したの
は、新聞記者たちの目をそらすためで、まんまと作戦は成功したが、途中駅か
らの乗車では、すでに座席は満席で、二人は、流れる汗をぬぐいながら、満員
の列車で座席と座席の間の通路に座り込み、揺れる車内の蒸し暑い一夜を過ご
す。
 夜が明けて、京都付近でようやく座席が空いて、刑事二人はほっと息をつく
のだが、まだまだ先は長い。
 列車は、山陽路をひた走り、関門トンネルを抜け、夜も遅くにようやく、目
的地の佐賀に到着する。

 この丸一昼夜の行程が、映画の冒頭、しかもタイトル前に、かなりの時間
(10分以上はあったと思う)を割いて延々と描写されるのだ。
 もちろん当時のこと、列車に冷房などはなく、二人の刑事も周りの乗客も男
性は皆、上着はおろかワイシャツまで脱いでランニングシャツ一枚となり、パ
タパタと扇子を煽いでは、暑さに耐える。乗客の中には、ズボンまで脱ぎ捨て
てステテコ一枚の親父も混じっている。
 天井の扇風機が、そんな車内の空気を気怠く掻きまわしては、長旅の憂鬱を
募らせる。

 この映画の、その冒頭シーンは、わしも30年くらい前のテレビ深夜映画で初
めて見て、強く記憶に残っていた。
 1950年代、東京から九州までの移動が、『三四郎』の時代ほどではなかった
にしろ、まだまだ大仕事だったことを実感させるシーンで、このシーンがある
ので、その後の「張込み」シーンもまた、強烈なリアリティを持ってくる。

 90年代に、この映画がTVドラマにリメイクされたものを見たのだが、そちら
は、九州佐賀ではなく、張込み先は栃木県に変更されていて、東京からやって
きた刑事二人は、東武電車で張込み先の町に降り立つのだ。
 思わず、「ダメでしょ、それじゃ…」とつぶやいてしまった。

 セキカワ先生の指摘を待つまでもなく、小説や映画では、「鉄道」や「列車」、
あるいは「駅」が、それ自体がテーマではなくとも、重要な役割を果たしたり、
象徴的なシーンとして描かれることが多い。
 翻って、漫画では、どうだろうか? というのが、今回の主旨。

 漫画と鉄道…と考えて、今回真っ先に思い出したのは、『クッキングパパ』
だった。
 1985年の連載開始当初、荒岩パパは、料理の腕前を会社ではひた隠しにして
いて、自分で作って持ってくる弁当も、「うちの奴」のお手製だとごまかして
いたのは、男子が厨房に入ることを潔しとしない九州男児のDNAか、はたま
たセキカワ先生や宮脇俊三の鉄道趣味と同じ「含羞」からか。

 荒岩パパがその料理趣味を周囲にカミングアウトして以降は、漫画の路線も
がらりと変わっていくのだが、まだそれを隠していた時期、荒岩パパは、勤め
先の「金丸産業」東京支社へ出張に赴く。
 飛行機が苦手な荒岩は、博多から東京まで、敢えて新幹線で向かうのだが、
この延々6時間に及ぶ車内での様子が、結構なページ数を割いて描かれていて、
やや疲労感をにじませながら、ようやくたどり着いた東京駅で安堵のため息を
漏らす荒岩に、ふと前述の映画『張込み』を彷彿したりも、したのだった。

 東京支社では、そんな荒岩の来訪を社員一同待ちかねていて、支社に到着し
た荒岩は、早速に「厨房をお借りします」と断ると、車内の湯沸かし室にこも
り、予て用意の博多豚骨ラーメンを手早く調理して、故郷の味に飢えていた支
社の皆に振る舞うのだ。
 この時にも確か、持参した半調理済みのラーメンは「女房が用意してくれた」
とわざわざ断りを入れていたと記憶する。

 このシーンもやはり、延々6時間かけてわざわざ、という描写がまずあった
ればこそ、ラーメンのシーンが引き立つのである。

 谷口ジロー『遥かな町へ』では、冒頭、二日酔いの主人公が、京都駅で東京
へ帰る新幹線と倉吉行きの特急を乗り間違えたことから、運命の歯車が回り出
す。
 いくら二日酔いで「ぼーっ」としていても、高架のホームから出る新幹線と、
古びた平面のホームから発車するディーゼル特急を乗り間違えることは、「ま
ずない」とも思えるが、それを不自然に感じさせずにすんなり読ませてしまう
のは、やはり谷口ジローの画力と構成力に負うところ大、と思う。

 つげ義春の漫画でも、鉄道は、印象的なシーンに描かれる。
 『ねじ式』の、漁村の狭い路地を「ゴッゴゴゴ」と突き進む機関車は、あま
りにも有名なシーンだ。

 『やなぎ屋主人』では、作者本人と思しき主人公は、新宿のヌードスタジオ
を出た直後、夜の街に流れていた高倉健の「網走番外地」に触発され、「房総
行の列車に飛び乗って」しまうのだ。
 あてもなく降り立った漁村の駅で紹介された寂れた旅館の、戦争未亡人であ
る女将を犯す妄想に耽った挙句、翌朝早くに旅館を出るのだが、その一年後、
この旅館を再訪し、彼のことなど覚えてもいない女将と言葉を交わした後、海
岸で猫と戯れる…というだけの物語だが、夜を行く車窓から見る黒い海や、通
過する小さな駅の木造駅舎の明かり、たどり着いた漁村の駅のすがれた風情、
海沿いの線路を轟音立てて行くディーゼル列車、等々が細密なペンタッチで効
果的に配されて、主人公のあてどなく行き場のない心情を暗喩する。

 実はこの漫画を読むまで、房総行きの列車が新宿から出る、ということを知
らなくて、その後東京に住み始めたころ、新宿駅のホームに、既に電車になっ
てはいたが、「館山行」急行列車がひっそりと佇んでいるのを偶然に見かけて、
「あ、これかァ!」と一人カンゲキに耽ったのだった。

 房総といえば、安西水丸がその少年時代をモチーフとした「千倉」シリーズ
でも、海の見える草原の向こうを驀進する列車が、象徴的に描かれていた。

 で、その他に…と考えてみたのだが、思いつかない。
 鉄道そのものをテーマにした漫画はあるのだが、そうじゃなくて、となると、
おそらくはあるのだろうけど、その数は極端に少ないのは、確か。
 映画や小説、あるいは歌謡曲なら、即座に思い浮かぶのだけどね。

 ちなみに、ちあきなおみの歌う「喝采」の一節、「動き始めた汽車に一人飛
び乗った」という部分。
 あれ、今の若い人の感覚では、動き始めた列車を、なんらかの方法で止めて、
車掌にドアを開けさせた上で「飛び乗った」と解釈するみたい。
 そもそも「機関車の曳く客車」が今やレアだし、「ドア開けっ放しのデッキ」
など見たこともないから、そうとしか解釈できないんだろうな。

 歌謡曲では、ザ・ピーナッツの「ふりむかないで」の「今ね、靴下直してる
のよ」というのも、ここでの「靴下」は「ストッキング」のことで、バックシ
ームがずれてるのを、スカートをちょっとたくし上げて直してる、といちいち
説明しないと分からないのだ。

 わしらの昭和は、加速を続ける列車の後方彼方に、ずんずんと置き去りにさ
れていってるのですね。

太郎吉野(たろう・よしの)
阪神タイガースお膝元在住。右投げ右打ち。趣味は途中下車、時々寝過ごし乗
り越し、最長不倒距離は三重県名張。
ちなみに「阪神タイガース」の「阪神」は、「兵庫県阪神地方」を指します。

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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96 生きていくために見つけなくはいけないもの

『ヒキガエルがいく』
申 明浩/広松由希子 訳 岩波書店

 力強い画風の絵本作家、伊藤秀男さんが題字を書かれている。
 文字からも気迫が伝わり、主人公(?)のヒキガエルは表紙にでんといて、
読者をじっとみている。強烈な表紙だ。
 
 本文の言葉はただ太鼓の音だけ。

 訳者の説明書きによると、韓国の仏教では、鐘は人間のため、太鼓は動物の
ため、木魚は昆虫のために鳴らすといわれているそう。

 カエルのための太鼓の音は、タン タタン だったり、トントントントン
だったり、ドンドン ダンダンだったり。音が腹に響く感じ。何匹ものヒキガ
エルが絵本の中で蠢いている。

 生の実感ある絵が続くので、緊張感がある。

 カエルといえば、我が家の前に広がる田んぼにもカエルがいっぱいいて、い
すぎて、3人の子どもたちは皆、苦手になってしまった。

 田んぼに水が入った日のカエルの鳴き声は毎年聞いても、驚くほどに厚みが
あり飽きることがない。昨日までどこにいたのだろう思うほどの賑やかさなの
だ。カエル嫌いの娘ですら、確かにすごいと聞いている。あの声には、生きて
いるエネルギーがあり、聞いているだけでも強く感じるものがある。

 この絵本は、そういうエネルギーのライブ感に満ちている。
 音や振動が聞こえてきそうで、ぜひ読んで感じてほしい。

 次に紹介するYA小説も強烈。

『ゴースト』
ジェイソン・レイノルズ ないとうふみこ訳 小峰書店

 帯文は「銃声がきこえたら、走れ!」

 ゴーストは走るのが得意な中学生。バスケをやろうと思っていたが、陸上チ
ームのコーチに誘われ、走りを選ぶ。

 もともと走るが速いのだ。
 特別な練習をしているわけではない。トレーナーについてもいない。
 しいていえば、こわい人のせいだとゴーストは思っている。
 こわい人から逃げるために走った3年前から、自分が早く走れることを自覚
した。

 チームの新人食事会には伝統がある。チームメートが知らない自分の秘密を
話すのだ。それぞれ、重ための秘密を抱え吐露することで、いい距離感がうま
れる。

 秘密は口に出すことで、相手との距離を縮めることがある。
 そうやって人と近づき、信頼がうまれるのはうれしいもの。

 厄介事をいろいろ抱えるゴーストが、走ることで、変化していく。

 大人目線ではコーチもかっこいい。
 いい大人が出てくる小説は、大人もたっぷり楽しめる。

 そして、次の紹介本、すずき出版の児童文学シリーズ「この地球を生きる子
どもたち」の新刊は安定の読ませる力をもっている。

『11番目の取引』
アリッサ・ホリングスワース作 もりうちすみこ訳 みうらし〜まる装画

 アフガニスタン難民のサミの物語。
 サミが難民になった背景として描かれるのは18年前の9・11の事件、家族の
中で生き残ったのは、サミと祖父の2人だけ。祖父はサミと共に、アメリカの
ボストンに渡る。

 祖父は有名なルバーブ奏者だったが、アメリカでは路上で演奏することしか
できない。演奏で得る金もアフガニスタンで得ていたものには比べることもで
きないくらいほんの少しだ。

 そんな経済と心の拠り所のルバーブが、ある日盗まれてしまい、祖父は慣れ
ない仕事をすることになる。サミはなんとかルバーブを取り返そうと、探し出
したものの、ギター店に売り出され700ドル稼がないと手元に戻ってこない。

 ついていないことだらけのサミだが、何かを失うときは、何かを得ること。
サッカー上手のサミに、友だちができ、彼らの助けをかりながら700ドルを目
標に動き始める。

 サミと祖父にとって何より大事なルバーブが手元にもどってくるのか、700
ドルもの大金が果たして一か月でつくれるのか。

 友人らの協力は現実的で、ネットの使い方もうまく、徐々に目標額に近づい
き、友情も深まっていく。

 作者はアフタニスタンに行き、自らの感じたこと、出会った人を物語に投影
した。翻訳されたことで、私たちが出会える世界があることに感謝したい。

 最後にご紹介するのは、季節の行事を楽しめる日本の物語。

 『とねりこ通り三丁目 ねこのこふじさん』
 山本和子 作 石川えりこ 絵 アリス館

 ねこのこふじさんは、職場でのイジメで心が疲れ、部屋でひきこもり。こふ
じさんのおばあさんは、自分の研究で世界一周に出かけるのを機に、留守番が
てら、こふじさんを住まわせることに。家賃は「月に一度、その月らしい行事
をすること」

 いっぴき暮らしを楽しもうとしていたこふじさんに、既にネズモリというネ
ズミさんも戸だなの中で暮らしていて、なんとなく同居暮らしがはじまる。

 4月のお花見にはじまり、七夕、花火……。よく知っている年中行事に、ネ
ズモリさんの豆歳時記コラムがおもしろくて、季節をあらためて見直してしま
う。

 四季を楽しめる生活の豊かさ、毎日仕事に追われていると、それは夢物語に
も思えてしまうけれど、疲れているときは、立ち止まって周りを見渡すことも
大事と素直に思える。

 さっぱりした甘くない絵も、物語にぴったりで、ねこのこふじさんという知
り合いができて楽しい気分になる。つかれている時に読みたくなる物語だ。


(林さかな)
会津若松在住。「本の雑誌」新刊めったくたガイド海外文学担当。
http://1day1book.strikingly.com/

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第114回 日本の歴史では、何が勝者を決めるのか

 今月も先月に引き続き、歴史の解説書、入門書をお届けする。

 日本の歴史を戦い、争い=価値観の衝突、利益の相反。という部分でみてい
く面白い入門書がある。

 そもそも日本の戦いの名称はおかしな名前が多い。「○○の戦い」や「□□
の乱」ならわかるが、「△△の変」「●●の役」となるとおかしくなってくる。
小学生のときから日本の歴史は勉強していて、子どものときは疑問も持たずに
教えてもらったことをそのまま鵜呑みするから、そのような呼び名でも特段に
おかしい、変だ、とは思わなかった。そしてそのような不思議な名称でも云い
慣れてしまい、使い慣れてしまうと疑問にも思わなくなる。あえて云えば、人
の名前のようなものだ。疑問に思わない。しかし、この名称をあらためて思っ
たとき、それらはなんと不思議な名称なのだろう、と考え始めた。本書のタイ
トルを目にしたとき、そんなことを思ったわけだ。

 天下分け目は「関ヶ原の戦い」であり、室町時代の内乱は「応仁の乱」。織
田信長が殺されたのは「本能寺の変」であり、奥州での争いは「前九年の役・
後三年の役」という名称になっている。いったい、その差はなにか、戦いの規
模か、それとも後世への影響力の大きさか。

 今回紹介する書物は、このような日本史上の戦いの名称に対する疑問から始
まり、その戦いが日本史のターニングポイントになったのではないか、という
ものを選んで、その戦いを俯瞰した上で、歴史上の影響をみていく、という作
業している。

『乱と変の日本史』(本郷和人 著)(祥伝社)(祥伝社新書)
(2019年1月30日)

 著者は、気鋭の中世史の研究者。その著者、本郷和人さんに因れば、本来戦
いの分類は厳密に学術的に行えばよかったが、そうはなされず、多分に感覚的
になっている、という。執筆子もそのとおりだと考える。そして、本郷さんの
感覚では、戦いの規模で、名称を分類するのならば、「戦争」→「役」→「乱」
→「変」→「戦い」の順番で規模が小さくなっていくようだ、と云っている。

 本書では、日本史上の代表的な戦いの名称である「乱」と「変」の名称の付
く、戦いを考察して、それが日本史上にどのような影響を及ぼしたかをみてい
く。
 紹介している戦いは以下の10こ。
 「平将門の乱」「保元の乱、平治の乱」「治承・寿永の乱」「承久の乱」
「足利尊氏の反乱」「観応の擾乱」「明徳の乱」「応仁の乱」「本能寺の変」
「島原の乱」。

 それぞれに特徴があり、その戦いが起こった理由、そしてその戦い後の様子
をみて、日本の歴史がどのような道をたどったかを考えている。将門の乱で律
令制が崩れ、武士の勢力を無視することが困難となり、保元平治、で武士が主
役の時代が始まり、治承寿永で政権は都以外に置かれることになった。尊氏は
政権を都に戻したが、権力が分散していたため政権が不安定であり、政権に権
威と統率力がないため、室町期を通じて様々な戦いが行われる。最大の内乱で
ある応仁の乱後は土地の排他的所有という概念が生まれた。天下統一を目指し
た信長は人の持つ土着性や郷土愛を蹂躙したので暗殺された。島原の乱はキリ
シタン一揆というよりも、平和と平等の争いであり、平和を求める人々の思い
が平等を求めた一揆側を凌いだ、ということだという。

 こうしてみると、日本史上の戦いは、その時、その時代において、社会的に
より高い利益を生むと思われる側が勝利している。武士の時代が到来したその
ときには平清盛は輝いていたが、平家は守旧派の朝廷に同化して、武士の利益
を代弁しなくなった時点で歴史の表舞台から退場した。揺れ戻しは不可能とい
うことが自覚され(承久の乱)、その後の300年くらいは互いに権力闘争によ
り不安定期となる。どちらが時流に乗っているかはわからないくらい混沌とし
た時代が長く続いた。それでもずっと武士の時代は変わらなかった。統一政権
後の混乱を収め、武士の時代は続くが、その武士の時代を終わらせたのは、
1877年(明治10年)の西南戦争、ということになる。

 歴史では、必要とされた者が勝ち、用済みの者が負ける。それが歴史の必然
なのだ。
 あざやかなタッチでぐいぐいと読者を日本史の世界に引きずり込んでいく。
とにかく面白かった。一気に読める。

 日本の歴史は、この国の国土が豊かで外敵の侵入がすくないため、穏やかに
ゆっくりと進む、と云う。天皇制は1000年以上前から不変だ。それでも、国内
でこれだけの戦いが繰り広げられている。
 歴史はとてもおもしろい。


多呂さ(参議院選挙。皆さん投票はしましょう)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ― 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510

・『支え合い・学び合いで育つ「わたし」』(エディット・パルク)
  http://web.kyoto-inet.or.jp/people/cogito/%8Fo%94%C5%88%C4%93%E0/%8Ex%82%A6%8D%87%82%A2%81E%8Aw%82%D1%8D%87%82%A2.html

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 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

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 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 歳を取ると時の流れが速くなると言いますが、最近は、速くなりすぎて追い
越されてる感が満載です。もう、びゅんびゅんです。(あ)

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