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[書評]のメルマガ vol.684

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■■ [書評]のメルマガ                2019.09.10.発行
■■                              vol.684
■■ mailmagazine of book reviews       [季節が変わりました 号]
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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<116>9月になってもウランバーナ

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→98 自由を感じる絵本のせかい

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第116回 黒澤明の贖罪

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<116>9月になってもウランバーナ

 小池一夫氏は、生前に数々のヒット作を生み出し、これを原作として映像化
された作品には、内外の映画監督らに影響を与えた作品も少なくない。
 クエンティン・タランティーノ監督の『キルビル』などは、映画版の『修羅
雪姫』のキャラクターと世界観を、そのまんまの形で、明治の東京から現代の
アメリカに移し換えた作品で、ラストシーンでは、ご丁寧にも『修羅雪姫』主
演の梶芽衣子が歌う主題歌まで流れてくる。

 『子連れ狼』は、やはり映画版が80年代アメリカで公開されるや、その斬新
なキャラクターと、スプラッターなアクションシーンが話題となってヒットし、
映画のヒットを受けて、原作漫画の英訳版も出版された。
 これが、アメリカで日本の漫画が翻訳出版された最初で、いわば「クールジ
ャパン」の先駆けとなった。
 また、その後アメリカで「サムライ」「ニンジャ」がブームとなったのも、
この作品がきっかけ、と言われている。

 だが、小池一夫が、漫画界に残した最大の功績は、『小池一夫劇画村塾』を
立ち上げ、数多くの才能を発掘したこと、これに尽きると思う。

 漫画原作者は、その「原作」を作画してくれる漫画家がいなければ、作品を
発表することができない。
 が、今でこそ、各社こぞって応募型の新人賞を設け、新人漫画家の発掘に余
念がないが、1970年代当時、そのようなシステムはなく、新人漫画家がデビュ
ーするのは、かなりの狭き門、だった。

 そんな状況の中で、発売されているほぼすべての漫画雑誌、及び一部の一般
週刊誌に連載を持っていると、勢い、タッグを組む漫画家は固定化してくる。
一つの連載が終わると、また同じ漫画家と組んで新しい連載が始まる、この繰
り返し。
 これでは、いずれ読者に飽きられる、できればフレッシュな新人漫画家とも
組んでみたい、と思っても、新人漫画家の発掘や育成は、今のようにシステム
化されておらず、なかなか出てこない。

 ならばいっそ、自らの手で新人漫画家を育成して、出版界に送り込もう、と
思い立ったのが、「劇画村塾」創設の直接的な動機だったそうだ。

 1977年春に「第一期」として開講された「小池一夫劇画村塾」は、業界で大
きな話題を呼んだ。
 今でこそ、大学や専門学校に「漫画学科」や「漫画コース」があるのは、別
に珍しくもなんともないが、当時、漫画を教える学校や塾、なんてものは、日
本中どこを探してもなかったのだ。

 しかも、その「日本初の漫画塾」で、塾頭として教壇に立つのが、絵を描か
ない「原作者」である、という点でも、大いに注目された。
 絵の描けない原作者が、どうやって漫画を教えるのか? と懐疑的な意見も、
当時の業界内には決して少なくはなかった。
 手塚治虫は、「絵の描けない小池さんが、どうやって漫画の描き方を、教え
るんでしょうね?」と、かなり冷ややかなコメントを発してもいた。

 が、開塾から1年後、一期生の中から、当時まだ女子大生だった高橋留美子
が「少年サンデー」でデビューし、その直後からデビュー作を元とする『うる
星やつら』の連載を開始。瞬く間に大ヒット作となる。
 さらにその後も、さくまあきら、堀井雄二、狩撫麻礼、山本直樹、とがしや
すたか、菊池秀行、板垣恵介、等々、続々と、しかも漫画界に留まらず、ゲー
ムや小説の世界にも人材を輩出するにつけ、世間の評価は一変した。

 「劇画村塾」には、わしも創設から2年後に「スタジオ・シップ」に入社し
て、その「第二期」から関わってきた。
 週に2回開催されていた授業にも、毎回付き合ってきた。

 その授業では、「絵の描きかた」など、一切教えることはなかった。
 どころか、「絵なんてなあ、ずっと描いてりゃ、そこそこ見られる絵は描け
るようになるんだ」と、塾生の作品を評価する際にも、画力や絵のテクニック
は一切問わなかった。
 さらに「描いても描いても、ずっと絵がヘタだったら、売れてから絵のうま
いスタッフを雇えばいい」とまで言っていた。

 では、ストーリーの作り方を教えていたのか、と言えば、それも違う。
 逆に、「ストーリーを作るな」と教えていた。

 教室で、自身の自慢話を交えながら、繰り返し繰り返し教えていたのは、
「読者が共感できるキャラクターを作れ」ということと、そのキャラクターを、
いかにして「起てるか」ということだった。
 まずはキャラクターを際立たせた上で、そのキャラが、何かになりたい、あ
るいは何かを成し遂げたい、ともがきながら動く、その「軌跡」が、すなわち
「ストーリー」であり、すなわち、ストーリーを作るのは、作者ではなくキャ
ラクターである、と教えていたのだった。
 砕いて言えば、要するに「俳優の育て方」と、その俳優の個性を活かす「演
出」ですね。

 そうやって、2年を1スパンとして2期、3期と回を重ね、1983年からは
「神戸校」も開講し、活動を一旦休止する1990年ころまでには、100人以上に
及ぶ様々な人材を、漫画、ゲーム、文芸の世界に輩出してきたのだった。

 劇画村塾で高橋留美子と同期の一期生だった狩撫麻礼は、30歳を過ぎてから
漫画原作者を志した変わり種だった。
 デビュー前には、主にレゲエを聴かせるロックバーを、小田急経堂の農大通
りで営んでいた。
 わしも当時は経堂に住んでいたので、コンクリートのガレージのような、穴
倉のようなその店に、度々お邪魔した。

 店は、デビューして連載を持つようになってからは手放したようだったが、
住まいがやはり経堂で、当時のわしの住まいからもごく近くだったので、夜、
ビールを買いに出かけたついで、あるいは散歩の途中に、こちらにもよくよく
お邪魔した。
 表通りから、世田谷区独特の入り組んだ路地を入ったところで、木造の、ア
パートなんだけど、なにやら福生あたりの米軍ハウスを思わせるような造りの、
いかにも「狩撫麻礼」な住まいだった。

 「こんばんは〜〜」と、相手の都合も考えずに訪ねて行くと、いつもイヤな
顔ひとつせずに、「いよ〜〜っ」と迎えてくれて、すぐに冷蔵庫からビールを
取り出す人だった。
 「仕事してたんだけど、ちょうど煮詰まってたとこでさ、ちょっと付き合っ
てよ」と、バドワイザーを注いでくれるのだった。

 ビール飲みながら、時には奥さんも交えて、漫画の話や映画の話、それに狩
撫さんの“信仰”の対象であり、ペンネームの由来でもあったボブ・マーレイ
を、熱く語る人だった。
 一見“コワモテ”で、近寄りがたいオーラを発している人だったが、一旦フ
トコロに入ってしまうと、とても気さくで、気遣いの人でもあった。

 あれは確か冬だったと思うのだが、朝、会社に向かおうと経堂駅のホームに
上がると、コートの身を丸めて、ベンチで寝ている狩撫さんを発見した。
 「狩撫さん、狩撫さん」と揺り起こすと、「…ん? あ、よ〜〜っ!」と起
き上がり、「何時?」と酒臭い息を吐きながら訊く。
 「8時半です」と答えると、「ん〜〜、じゃ、もうちょっと寝るわ。これか
ら会社? いってらっしゃ〜〜い」と、コートひっかぶり、またベンチに横た
わるのだった。

 どうやら、どっかで夜通し飲んで、始発で帰ってきて、そのままホームのベ
ンチで寝ていたらしい。
 狩撫麻礼は、自身の作品世界を、身を持って生活の中に体現していた人でも
あった。

 その狩撫さんが亡くなったのを知ったのは、昨年1月の逝去からかなり経っ
てのことだったのだけど、ここ何年、」いや何十年も会ってなかったにもかか
わらず、なにやら大きな喪失感に襲われた。
 あの経堂の部屋のことなど思い出しては、その夜一人で、ビールで献杯させ
ていただいた。

 あの経堂の部屋で、つげ義春の漫画が好きだと言うと、「これ、まだ読んで
なかったら、貸すよ」と、当時発売されたばかりだった晶文社『必殺するめ固
め』を借りて持って帰って、そのうちに返すつもりが、もう四十年も借りっぱ
なしになってしまったけど、狩撫さん、これは、形見としていただいておきま
す。


太郎吉野(たろう・よしの)
阪神タイガースお膝元在住。右投げ右打ち。趣味は途中下車、時々寝過ごし乗
り越し、最長不倒距離は三重県名張。
ちなみに「阪神タイガース」の「阪神」は、「兵庫県阪神地方」を指します。

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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98 自由を感じる絵本のせかい

 一度みたら忘れられない絵本。
『うっかりおじさん』
 エマ・ヴィルケ 作 きただいえりこ訳 朔北社

 絵本の中にいるおじさんが、読者に語りかけてきます。

「きみ、ちょうどいいところにきてくれた!
 めがねがみつからないんだ。みなかったかい?」

 ぎょろりとした目のおじさんが、めがねを探し、
 見つかると、また別の物を探し始め、
 自分で見つける気はサラサラなく、人まかせ。

 そんなうっかりおじさんが最後にうっかりしたものとは……。

 絵本の見開きページにもちょっとした仕掛けも施され、
 すみずみまでじっくり読む&見るが楽しめます。

 スェーデンのすぐれた絵本に贈られるエルサ・ベスコフ賞を受賞しており、
 ユーモア大好きな子どもや大人の方へのプレゼントにもぴったりです。

 もう一冊、朔北社の絵本をご紹介。
 『レナレナ』
 ハリエット・ヴァン・レーク 作 野坂悦子 訳 

 30年ぶりの復刊絵本。
 熱狂的なファンをもつこの絵本は復刊が長らく待たれていたもの。
 
 レナレナは不思議なことを自然体で受けとめる少女。
 
 高野文子さんの『るきさん』がお好きな方はきっとツボにはまるのでは。
 漫画ではありませんが、コマ割された絵はグラフィックノベルの雰囲気も感
 じます。

 ネズミに追いかけられて髪の毛を食べられても、びっくりせずに、ネズミが
 食べやすいようにさかだちするのがレナレナ。

 雨が降っているときは、雨を味見して雨茶(あまちゃ)を入れるレナレナ。

 レナレナを見ていると自然と気持ちがほぐれてくるので、休憩タイムにもっ
てこい。

 読んでいるとレナレナのマネしてみたくなりますよ、たぶん。

 『すてきってなんだろう?』
 アントネッラ・カペッティ 文 メリッサ・カストリヨン 絵
  あべけんじろう あべなお 訳 きじとら出版

 楽しみにしていたきじとら出版さんの新刊。
 第25回いたばし国際絵本翻訳大賞 最優秀翻訳大賞受賞作。

 ご夫婦の共同翻訳で見事、翻訳大賞を受賞されました。

 「すてき」ってどういうこと? どんなもの?
 「すてきないもむしさんね」
 と言われたいもむしは、
 初めて聞いたこの言葉の意味を知りたくて、
 熊やリスなど
 森で出合う仲間たちにたずねます。

 それぞれの「すてき」を聞きながらたどりついたのは……。

 シルクスクリーンを使った鮮やかな中間色がすてき(ふふ、こういう時にも
 使いますね)な雰囲気をつくっています。

 自分の「すてき」って何だろう。
 考える時間も心地よく楽しめます。

 『カルメラのねがい』
 マット・デ・ラ・ペーニャ作 クリスチャン・ロビンソン 絵
 石津ちひろ訳 すずき出版

 7歳の誕生日を迎えたカルメラ。お兄ちゃんと一緒に町に出かけられる年齢
 になったのが嬉しくてたまりません。

 一緒に町に出かけたときにカルメラがみつけたタンポポ。もう綿毛になって
 いたのですが、お兄ちゃんはわたげをふくときは願い事をするときだと教え
 てくれます。

 カルメラはどんな願い事をするのでしょう。
 あぁいいなぁと思えるラストが待っています。

 本書は『おばあちゃんとバスにのって』のコンビが描いた絵本第二弾。
 心を動かされるしっかりした物語に、コラージュを用い、デフォルメされた
 やわらかい色使いの絵がぴったりあっています。

『いっぽんのきのえだ』
 コンスタンス・アンダーソン 作 千葉茂樹 訳 ほるぷ出版

 木の枝からみえてくる自然を描いた科学絵本。

 一本の木の枝を、アジアゾウはハエたたきとして、うるさいハエを追い払い
 チンパンジーはスプーンとして使い、
 ダイサギはプレゼントとしてオスがメスに差し出し、巣作りをする。

 木の枝一本からみえてくる動物たちの暮らし、
 切り口ひとつで世界はまた新しく広がることを感じます。

 コラージュ、にじみ絵など様々な手法であたたかみのある写実的な絵が描か
 れ、ズームアップで描かれた動物たちがみな生き生きしています。

 最後にご紹介するのは伝記絵本です。

『「映画」をつくった人 世界初の女性映画監督アリ・ギイ』
 マーラ・ロックリフ 文 シモーナ・チラオロ 絵 杉本詠美 訳 汐文社

 映画史の研究者の中にはアリス・ギイではなく別の人物が最初に映画をつく
 ったという人もいるようですが、この絵本ではアリス・ギイが世界初の女性
 映画監督として描かれています。

 絵本では各エピソードのタイトルに、アリスが監督した映画の作品名を用い
 られ、それも劇場でみるようなタイトルの雰囲気で書かれ、映画の空気感を
 出しています。また、巻末には、映画それぞれの内容もダイジェストされて
 いるので、映画そのものにも興味がわきます。

 伝記絵本を多く手がけている作者は、今回も文字数に限りのある絵本の中で
 リズムよくアリスを紹介し、人物像を浮き彫りすることに成功しています。
 伝記絵本は絵と言葉の両方で語ることにより、その人となりが立体的にイメ
 ージできるので、幅広い年齢層が楽しめるのがうれしいところ。

 明るい色彩で描かれ、意志を感じるくりっとした目が印象的なアリス・ギイ。
 彼女のつくった映画をみてみたくなりました。
 

(林さかな)
会津若松在住。「本の雑誌」新刊めったくたガイド海外文学担当。
http://1day1book.strikingly.com/

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第116回 黒澤明の贖罪

 映画、それも黒澤明のことになると筆が進む。
 今月も黒澤明関連の書籍にお付き合い願いたい。

 ユニークな黒澤明論に出会った。しかし、論者の間では割と重要なテーマで
あり、さまざまな人が論評を加えているのだが、このことを黒澤明の中心に据
えたものは、執筆子にとって初めて出会ったものだ。
 そのテーマとは、“黒澤明はなぜ徴兵されなかったのか?”という問題であ
る。壮健な成人男子なら誰でも彼でも徴兵され、兵隊として何かしらの義務を
果たさねばならなかったあの時代において、終戦時に35歳であった黒澤明はな
ぜ徴兵されなかったのか? 180センチを越える身長を持っている偉丈夫だった
のに、どうして兵隊に取られなかったのか?

『黒澤明の十字架−戦争と円谷特撮と徴兵忌避−』(指田文夫 著)(現代企
画室)(2013年3月25日)

 著者の指田文夫氏は、2012年まで市役所に勤務しながらさまざまな評論やエ
ッセイを発表している文筆家であり、黒澤明についての評論も数多い。
 本書は指田氏による黒澤明が徴兵されなかったことについての評論である。

 本書では、まず東宝という映画会社について分析する。著者によれば、東宝
という映画会社は、円谷英二率いる特撮の専門家集団を所有していることによ
って、戦時中は軍部と特別なつながりを有していた。実際、山本嘉次郎監督作
品で円谷英二が特撮監督を務めた戦争映画『ハワイマレー沖海戦』(1942年)
では、戦後それを観た米軍が実際の海戦を撮ったと勘違いするほどの完成度の
高い特撮技術であった。その特撮集団は、戦争中に兵隊訓練用のフィルムを数
多く手がける。そのように軍部に協力することによって、他の映画会社よりも
より多くのフィルムの供給を受けていた。東宝は戦争遂行に協力しつつ、他社
よりも多いフィルムを使用して、直接戦争に関わる映画だけでなく、さまざま
な映画を制作した。

 むろん当時は、男女の色恋を描くことや反戦の映画が御法度であるから、映
画は程度の差こそあれ国民を鼓舞し戦争を賛美した映画を作らなければならな
かった。しかしそうであっても、国民の士気を高めるためであれば、戦場と兵
隊と銃後の守りだけの映画ではないものも作っている。黒澤明監督作品『姿三
四郎』(1943年)はその代表的な映画である。

 東宝は、特撮集団を使って戦争に協力しつつ、撮影や照明など映画作りのた
めの職人を徴兵から守った。戦争遂行のために最大限の協力することによって、
映画制作者たちの徴兵を免除してもらった。黒澤は監督という職人として、東
宝によって守られたのだった。

 それが著者、指田氏の考えである。

 そして、1945年(昭和20年)8月15日を迎える。この日を境に世の中は 180
度逆さまになった。東宝では戦争に協力したことによるその反動が、戦後最大
と云われる労働争議に発展した。

 さて、黒澤明である。黒澤明の本質は贖罪意識である。黒澤は、自分は戦争
に行かずに、国内で戦争賛美映画を作り、たくさんの若者を戦場に送り込み、
死なせてしまった・・・という罪を背負い、終生その想いを自己の中に培養し
ていた。黒澤は徴兵を逃れた、という贖罪意識で映画を作っていた。彼のまじ
めな性格は、一兵卒として出陣することにあった。しかし期せずして、会社に
守られて戦争に行かずに映画を作り続けることができた。だから戦後は、その
罪滅ぼしのために、贖罪のために映画を作り続けたという。

 著者がそういう想いを感じたのは「静かなる決闘」(1949年)を観たときで
あった、という。軍医として南方でけが人の手術をしていた医師(三船敏郎)
は、素手で患部に触れ、そのために梅毒に感染してしまう。戦争から戻った医
師には婚約者(三条美紀)がいる。医師は婚約者に梅毒に感染していることを
最後まで云わない。そして婚約者は去って行く。

 つまり、この医師は黒澤そのものなのである。すなわち、「自分の責任では
なく梅毒に罹った」=「自分から進んで徴兵を免れたわけではない」というこ
とである。

 黒澤は、自ら罪の告白をした。
 そしてその後も黒澤の贖罪は続く。著者によれば、その後の「野良犬」(19
49年)、「醜聞」(1950年)、「羅生門」(1950年)と“罪を背負った人間”
を描いている、という。そして、その“罪を背負った人間”がテーマである
「羅生門」は西欧人の心を奪い、ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を受賞した。

 ここまでは、いくつか首を傾げる処はあっても、まあ納得できる話だが、著
者によれば、かの「七人の侍」(1954年)も黒澤の贖罪意識による映画であり、
「赤ひげ」(1965年)も懺悔と許しの映画である、という理屈にはちょっとつ
いて行けなかった。素晴らしいこじつけに思えて仕方ない。詳細は本書を読ん
でみればよいだろう。

 黒澤明は、誰も戦争の責任を取らなかった戦後の日本において、自分の作品
の中で積極的に戦争の責任を取っている。と著者は云う。
 なるほど、そうかもしれない。でもそうではないかもしれない。黒澤に贖罪
意識はあったであろう。しかしそれだけが彼のあの作品群を制作する主なエネ
ルギーであったとは思えない。
 本書は黒澤明論として面白い展開を取っていると思った。

多呂さ(思えば、8月18日(月)を境に季節が変わりました。連日、雨が降る
季節になっています。ご自愛ください)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ― 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510

・『支え合い・学び合いで育つ「わたし」』(エディット・パルク)
  http://web.kyoto-inet.or.jp/people/cogito/%8Fo%94%C5%88%C4%93%E0/%8Ex%82%A6%8D%87%82%A2%81E%8Aw%82%D1%8D%87%82%A2.html

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

 〒142-0041 東京都品川区戸越5-4-3 アズ品川ビル4階
       ビズナレッジ株式会社内 [書評]のメルマガ 献本 係

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンや楽天などのオンライン
 書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。つまり
 は当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願いしま
 す。(あまりにも短いものは書評とは呼べませんので、文字数の条件を設け
 ました。書評は500字以上でお願い致します。)

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 台風の影響で千葉が被災しています。首都圏であっても復興には時間がかか
るというのは意外でした。我々は思ったより脆い基盤の上に生活しているのか
もしれません。(あ)

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