[書評]のメルマガ

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[書評]のメルマガ vol.698


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■■ [書評]のメルマガ                2020.04.10.発行
■■                              vol.698
■■ mailmagazine of book reviews  [というミスティフィケーション 号]
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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<123>つげ義春を探して

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→105 心を動かすこと

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→新型コロナウィルス騒ぎで、唯一「良かった」と思えた話。

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第121回 内田樹の生きてきた道

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■EMS緊急公開講義「コロナ時代をどう生き抜くか」(オンラインイベント)
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 登壇者は、まさに、今、話題の…というおふたり。

 ご興味あればどうぞ。テレビやSNSでは知れない、本音の話を聞くことが
できます。

 2020/4/21(火) 21:00〜2020/4/21(火) 22:30
「生物学者 池田清彦先生に新型コロナウイルスの最前線を訊く
 コロナ対応にみる失敗の本質1」池田清彦×西條剛央
 https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/01advr10xgbnz.html

 2020/4/24(金) 14:00〜2020/4/24(金) 15:30
「医療崩壊を防ぐゾーニングと自己隔離の原理と方法
 コロナ対応にみる失敗の本質2」岩田健太郎×西條剛央
 https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/010tc110xghke.html

(この緊急公開講義による収益は、全額、スマートサプライによるコロナ支援
のマッチングの準備を進めている非営利団体である一般社団法人Smart Supply 
Visionに寄付させていただきます)

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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<123>つげ義春を探して

 例年、我が家の周辺はこの時期、にわかに騒がしくなる。
 選抜高校野球の歓声は、球場から約2キロ離れた我が家にも、時折風に乗っ
て飛び込んでくる。
 周辺道路には応援バスが、全国から列を連ねて連日到着する。

 加えて、このあたりには花の名所も結構多くて、週末ごとに人が押し寄せ、
昼日中からあちこちで、ブルーシート敷いた宴会が繰り広げられる。

 センバツが終われば、今度はプロ野球の開幕で、満員の電車が甲子園駅に到
着するたび、ユニフォーム姿やら選手の名前を刺繍で入れた特製ニッカボッカ
やら、思い思いの「応援服」に身を包んだ人たちが、やや目を血走らせ、我先
に球場に向かって行く。

 今や世界を覆いつくした感のある新型コロナウィルスが、そんな風景を一変
させた。
 コロナは、センバツを中止に追いやり、オリンピックを1年延期させ、プロ
野球の開幕もまた、いつになるやらわからん…ところへもってきて、とうとう
「非常事態宣言」まで発令されてしまった。
 甲子園球場周辺も、周辺の桜はそこここで満開に咲き誇っているというのに、
ほとんど人が歩いていない、という異常な状態。

 関係先の学校も、軒並み新年度の授業開始を「延期する」との連絡が3月末
から入っていたのだが、これがまた今回の非常事態宣言を受けて「再延期」と
の連絡が相次いでいる。
 日銭稼ぎの非常勤渡り鳥の身には、かなり厳しい状況と相成ってきた。

 徒然なるままに、本の整理をしてみたり…というか、この機に、部屋に溢れ
かえっている本を「なんとかせい」との厳命を、家内総理から受け、本の断捨
離を決行。
 どうしても置いときたい本だけを残して、あとは学校の図書室に寄贈するこ
とにして、主に漫画と小説を、段ボールに4箱ほども車に積んで学校へもって
いった。

 本を整理するうち、先月の当欄に書いた稲垣足穂や、その他懐かしい漫画な
ども出てきて、これらをまた、再読するのも楽しみとなった。

 そうやって「発掘」した本の中に、高野慎三『つげ義春を旅する』(ちくま
文庫)があって、これまた懐かしく再読。
 かつて青林堂「ガロ」で、つげ義春の担当編集者でもあった高野氏が、つげ
漫画に描かれた風景を追って旅をした、その記録。
 つげ義春の漫画は、自身の実体験を元とする「私漫画」や、実際に旅をした
土地が舞台になっていたり、またその土地の風景が背景に取り入れられている
ことが多く、つげ漫画の風景を追う、ということは即ち、つげ義春の半生を追
うことでもある。

 20年ほど前から、主催しているウェブサイトのために、ずっと「風景」を撮
りためている。
 たまにこれを整理してみると、わしもまた、知らず知らずのうちに、「つげ
的」風景を追いかけていることに気づかされる。
 すなわち、都会の隅に忘れられたような路地裏や、運河沿いの赤錆の浮いた
トタン葺きの倉庫、低い屋根の長屋が連なる路地、崩れかけたような小屋、そ
して旧街道筋。

 数年前、健康診断に引っ掛かり、食生活や飲酒、生活習慣などについて医師
から様々なアドバイス受けた中に、「できるだけ歩きなさい」というのがあっ
て、ある時期、時間を作っては、通勤の経路の中で、一駅、あるいは二駅を歩
く、ということをやっていた。

 これが嵩じて、週に一度京都へ通勤するに際して、朝も早よから家を出ては、
西宮から京都まで、1回につき約5〜6キロから10キロ見当、数週間かけて旧
西国街道を歩いたことがあった。

 時間にして、2〜3時間。前回の「続き」まで電車で行っては歩き始め、時
間がきたらば最寄りの駅へ行って、そこから再び電車で京都へ向かう、という
ことを繰り返して、ついに久世大橋を渡って東寺までたどり着いた時には、結
構な達成感が、あった。

 西国街道は、現在の国道171号線に沿っているのだが、轟々と車の行きかう
国道を外れて旧道に入ると、旧街道の面影とどめているところも多く、どこを
どのアングルで撮っても、いずれも「つげ的」風景になるのであった。

 これに味をしめて他日、今度は旧東海道をたどってみようと、大阪は天満橋
から京都三条大橋まで、やはり何度かに分けて歩いてもみたのだが、こちらは、
旧道がそのまま残っている個所も少なく、存外につまらなかった。

 ただ、江戸時代に始まり、昭和30年代まで「赤線」として続いた、橋本宿の
遊郭跡と、枚方からその橋本まで淀川の堤防上を行く旧道は、「つげ」はつげ
でも、弟の方の「つげ忠男」的風景だな、と茫漠と広がる河川敷を写真に収め
ながら、思ったのだった。

 頃もよし、コロナ禍がなければ、通勤の合間に時間を作って「風景狩り」に
も行けたのにな、と思う今日この頃。
 いや、コロナ禍で時間もある今こそ、その時…?なのか?
 幸いに、街にも人が少ないし。

 コロナ何するものぞと出かけるべしか、しかし、それは「蛮勇」というもの、
家に居ておとなしくしているべきか、今回「発掘」したつげ義春の文庫版で、
つげ的風景を再確認しつつ、悩ましくもある4月なのだった。


太郎吉野(たろう・よしの)
阪神タイガースお膝元在住。右投げ右打ち。趣味は途中下車、時々寝過ごし乗
り越し、最長不倒距離は三重県名張。
ちなみに「阪神タイガース」の「阪神」は、「兵庫県阪神地方」を指します。

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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105 心を動かすこと

 先が見えない毎日。すっきりしない心持ちの日が続いています。

 春休みが長くなっていた娘が、何年も片付いていない納戸をきれいにしてく
れました。おかげで久しぶりにみる本棚(何年も他のガラクタでみえなかった)
の本を眺められ、旧友に会った気分を味わったり、子どもたちの小さい頃の日
記帳や、読書感想文も出てきたりで、おなかを抱えて笑いながら読みました。

 長男が小学3年生の時に書いた『古事記物語』(鈴木三重吉)の読書感想文
も出てきました。――”この物語は”きぼう””わらい歌”があります。――
とはじまるので、つい今の大変な時に「希望」を感じられることが書いてある
のかと期待してしまったのですが、希望について具体的には書かれていません
でした。それでも「このお話しは大人の話しみたいでした」としめくくられて
いるのを読むと、『古事記物語』を再読したくなり、ほこりをかぶっていた本
を久しぶりに取り出しました。

 私自身も子どもの頃、「天の岩屋」が好きだったのですが、長男も感想文で
3つの話をとりあげている中の一つがこれでした。「つまりこのお話しは災い
が一どきに起こってきます」と書いていて、これまた今のことかとドキリとし
ました。(とはいえ、どんな災いかは書いていないのですけどね)
「天の岩屋」は天照大神の広い心を裏切る、やんちゃが過ぎる弟、須佐之男命
が登場します。弟は迷惑なことばかりして姉に迷惑をかけ、最終的には下界へ
おろされるのですが、話そのものはさっぱりした語り口なので、結末には気が
晴れます。

 さて、本の紹介です。

 いま、先の見えないパンデミックを前に重たい空気が充満し、9年前の今頃
に起きた震災時のような、非日常を感じます。

 あの頃は本を読んでいても、言葉が頭まで入ってこない感覚がありました。
 そんな時、すっと読めたのが『キリエル』(A・M・ジェンキンス作/宮坂
宏美訳/あかね書房)でした。宮坂さんのクリアな訳文が、気持ちをほぐして
くれたことをよく覚えています。

 その時の気持ちを覚えているからこそ、宮坂さんの翻訳新刊を読むのは楽し
みでした。

 『ソレルとおどろきの種』
 ニコラ・スキナー 作 宮坂宏美訳 ハーパー・コリンズ

 少女の頭から、黄色やオレンジなどカラフルな色の花が咲いている表紙絵か
らまず読みたい気持ちをそそられます。元気が出る色です。

 主人公はソレルは小学6年生。シングルマザーのママと2人暮らし。ママに
安心してもらえるよう、学校では優等生でいるソレル。次なる目標は、学校の
優等生コンテストで優勝すること。特典として、1週間の家族旅行がおくられ
るのです。ソレルはママと海外旅行に行ったことがありません。ふだんから優
等生でいる自分には十分チャンスがあるのではないかと考えます。

 ところが、裏庭で古びた封筒を見つけてから、ソレルが優等生で居続けるの
が難しいことがおきてきます。緑少ない町になっている理由がわかってくるか
らなのです……。

 運動場にコンクリートの建物をたて、子どもたちから土の上で走り回る環境
を奪う校長先生。その工事によって潤う建設会社。生徒が運動場を求めたら、
優等生コンテストのポイントをあげないとまでいう校長先生。

 ソレルの住んでいる町は住人が意識しないうちに、建設会社によって緑がど
んどん奪われていたのです。

 環境問題と共に、上の人が命じることに従順であることについても書かれて
います。学校でも会社でも、上の人の話にひとまず耳を傾けなくてはいけませ
ん。けれど、ソレルの行動は、自分の頭で考えることを忘れてはいけないんだ
と気づかせてくれます。

 ファンタジックな要素をからめながら、テンポよく展開していくリアリティ
ある話は一気読みでした。おすすめです。

 『コピーボーイ』
 ヴィンス・ヴォーター作 原田勝訳 岩波書店

 前作『ペーパーボーイ』6年後の物語。
 主人公のヴィクターは17歳になりました。

 前作を読んでいなくても、読んでいてすっかり忘れていても大丈夫。
 どちらの立場でも楽しめます。

 夏のアルバイトで新聞社のコピーボーイ(雑用係)として働いているヴィク
ターは、大学進学を間近に控えています。仕事をしている時、6年前に出会っ
た大切な存在であるスピロさんの訃報を知ります。亡くなったスピロさんとヴ
ィクターはある約束を交わしており、それを果たすために、17歳のヴィクター
はミシシッピ川の河口を目指すことになります。

 アメリカでは16歳で免許がとれるのが主流なので、ヴィクターも既に免許を
取得し自分の車ももっています。17歳といえば日本では高校2年生なので、そ
の年齢で車に乗って一人旅というスタイルに親目線で私なら送り出せるだろう
かと思ってしまいました。
 ヴィクターの両親も一人旅を応援しているわけではなく、むしろ反対の立場
だったので、ヴィクターもこっそりと出発せざるを得ません。

 一筋縄では見つからないミシシッピ河口。訳者あとがきによると、「メキシ
コ湾にむかって、いくつもに枝分かれして広がっていくミシシッピ川において、
河口をここと定めることはそう簡単ではありません」ということです。

 様々な人の力を借り、河口に近づいていくのですが、今度は大きなハリケー
ンが近づいてきて、いったいどうなるのかとハラハラがとまりません。

 自分がすべきと思った事を実行する強い気持ちを物語のそこかしこで感じ、
自分の17歳の時はどうだったろう。娘の17歳は、と読みながら自分の時間もい
ったりきたりしました。

 ヴィクターは心配事があると、好きな物語をタイプライターで打ちます。そ
れがヴィクターの気持ちを落ち着かせることで、だからこそ今回の旅のお伴は
タイプライターでした。好きなものが近くにある安心感が、丁寧に描かれ、読
み終わったあともヴィクターの存在感が消えません。


(林さかな)
会津若松在住。「本の雑誌」新刊めったくたガイド海外文学担当。
http://1day1book.strikingly.com/

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■「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
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新型コロナウィルス騒ぎで、唯一「良かった」と思えた話。

『あなたのチームは、機能してますか?』
パトリック・レンシオーニ著 翔泳社 (2003/6/18)

 今月7日、政府が「緊急事態宣言」を発出しました。それ以降、いやその前
からも含め、テレビやネットで目にするニュースといえば、新型コロナウィル
ス関連の話題一色となっています。

 ちなみに僕が働いている会社では、今月の上旬から全社員の出勤半減(ただ
し政府が出勤7割減の要請を発表したのでまた変わる可能性あり)、それに伴
う不急業務の延期または取りやめを進めている他、テレワーク(自宅でパソコ
ンを利用した在宅勤務)の導入準備が急ピッチで進められています。

 実はテレワークの検討自体は、昨年にもあったのです。「働き方改革」とい
う言葉が昨年4月からクローズアップされはじめ、その中で政府は「ワークラ
イフバランスの実現」「人口減少時代における労働力人口の確保の観点」など
から、場所にとらわれない働き方ができるテレワークの普及促進を強く謳って
きました。

 また、何か災害が起こってオフィスに出社できないような事態となった際の
業務継続計画(いわゆるBCP)の観点からも、在宅勤務またはサテライトオフ
ィスによるテレワークは今後絶対に必要になると考え、企画まとめてお偉い方
に上申したのですが、、、うやむやになってしまった過去が。

 その時、一番問題視されたのは「セキュリティ」でした。うちはシステム開
発の会社なので、他の業種に比べれば働き方の面では導入しやすい。しかし機
密情報を扱っているので、その情報が在宅勤務によって外部に漏れてしまって
は大変だ、と。うん、それはわかる。それならば、どのように安全なシステム
環境を実現するのか、他社事例なども調べながら検討を、、、と進めていくの
かと思いきや、途中からこの話題は、徐々にトーンダウンしていくことに。

 結局のところ、セキュリティの話だけではなく、皆それ以上に深入りしたく
ないっていうのが本音だったんですね。導入してから何か起こったらどうする
んだ、そのとき誰が責任を取るんだ(自分は取らないよ)、費用面はどうする
んだ、他に優先することがあるだろう、時が来たらその時に考えればいい(今
じゃなくてもいいよね?)、、、実際には誰も何も言わないけれど、リアルに
そんな声が聞こえてきそうな空気が、全体から感じられたのでした。嗚呼。

で、今。

 日に日に感染被害の拡大が報道される中、3月下旬に差し掛かる頃からテレ
ワークの検討は再開され、あれよあれよという間に進んでいき、現在、本格利
用に向けたテスト開始の手前までこぎつけているという状況です。社内でネゴ
して合意形成にもっていくだけでも最低半年はかかりそうだなと匙を投げてい
たのですが、気づいてみればたったの2〜3週間でこの状況に。なんだ、その
気になれば動くじゃん、この会社。

 経営・組織コンサルタントとして活躍しているパトリック・レンシオーニの
著書『あなたのチームは、機能してますか?』には、危ない組織の5つの症状
として、下記の内容が記載されています。

・意見は一致してないのに議論が起きない(信頼の欠如)
・不満があっても会議で意見を言わない(衝突への恐怖)
・決定したことでもきちんと支持しない(責任感の不足)
・衝突を避けて互いの説明を求めない(説明責任の回避)
・各自の仕事にかまけて全体を見ない(結果への無責任)

 業績不振に苦しむ架空の新興企業を舞台に、チーム作りの天才とされる女性
社長が就任し、まさに上記の状態となっている取締役たちボードメンバーの意
識改革と、業績改善に向けて動いていくストーリーです。主人公の社長が、ボ
ードメンバー内でこれら5つの問題点をあぶりだし、指摘し、時にメンバーと
衝突しながらもチームが機能していく過程が描かれています。

 うちの会社でもこの5つのうち、いくつかは当てはまるんだろうという感じ
で久しぶりに読み直したのですが、、、いくつかじゃなくてほぼ全部でしたね。
まぁうちの会社に限らず、同じことが言える日本企業って、他にも結構あると
は思うのですが。

 しかし、コンサルに高額なお金を払って、組織風土改革に取り組んだわけで
もないのに、目の前のコロナという事象1つで意思決定が加速するとは。

 組織にはよく「共通の目的」が必要だと言われます。感染拡大という危機意
識が共通の目的となり、組織の機動力や意思決定力が上がったのであれば、不
謹慎ですがコロナ騒ぎが来て良かったとも思えるのです。まぁ、ある種の「良
かった探し」ってやつですけどね。あとは、この騒ぎが落ち着いた以後、また
元の状態に戻らないことを祈りつつ。

show-z
都内企業に勤務する人事担当者。
コロナの影響で、採用でオンライン面接を取り入れる企業が増えているので
リアルでやるのとどのくらい結果に差が出るのか、どこかで実験を画策中。

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第121回 内田樹の生きてきた道

 内田樹(うちだたつる)さん。最近は“武道家”という肩書なのであるが、
少し前まで大学の先生であり、フランス文学者であり、たくさんの著作物のあ
る思想家である。また人との対談も多く、執筆子としてはこの内田先生は対談
集の方が単著の著作物よりも多いのではないか、という印象を持っている。対
談集の多い人っていうのは、これも印象なのだけれど、友だちとか仲間の多い
人、っていう感じ。実際に写真で見る内田先生はとても人懐っこいイメージが
するのである。

 そんな内田先生が、半生を振り返った自叙伝的なものを出版した、と聞いた
とき、随分と早いな、まだお若いのに、と思った。しかしながら、内田先生。
1950年(昭和25年)生まれなので、今年もう70歳の古希を迎えられる年齢だっ
た。半生記を執筆するにけっして遅くはない。

『そのうちなんとかなるだろう』(内田樹 著)
(マガジンハウス)(2019年7月31日)

 題名がすごい。ぜんぶひらがな。そしてこの超楽観主義的なこのタイトルフ
レーズは、せりふ以外のなにものでもない。読み終わってみると、内田先生の
独白だった、という印象。そしてたしかに内田先生は、なんとかなったんだな、
ということがよくわかる。

 大田区の下丸子という街で少年期を過ごした内田先生は、子どもの頃から破
天荒であったようだ。問題児は問題児でも、その行動は悪い方向に向かわなか
ったのは、やはりご両親やお兄さんがいて、樹くんを支えていたからだろうし、
仲間=友人たちに恵まれていたからだろう。むろん頭脳明晰で子どものころか
ら“世の中の仕組み”みたいなものを子どもなりに理解していたようだ。自分
の行動範囲の限界はどこか、ということをいつも考えながら行動=生活してい
た感じ。むろん当時の内田少年はそんなことを露とも思わず、これは後付けの
第三者による理屈に過ぎないが、“あの柵までが僕が行っていい範囲であり、
あの柵が僕の限界。そこから先は云ってはいけない”と思っていたのだろう。

 そのことは時代の要請、というか時代の流れもあった。1970年代に10代を過
ごした人たち(おそらくいわゆる団塊の世代と重なる)は、その後のどんな世
代(むろんこの執筆子の世代も含まれる)よりも早熟であり早い段階から世間
智に長けている人々が集団を構成していた。その世代がちゃっかりしているの
は、若さを武器にある意味で“甘え”ながら行動していることであり、大人の
庇護と大人の同情的な無視により、今に比べるととても破天荒なことができた
世代だった。世の中は成長している時代だった。一方で、行動範囲の狭くなり、
窮屈になった(新型コロナウィルス感染症蔓延以前のつい3ヶ月前の世界を云
っている)この現在を見よ! 現代の若者たちが不憫でならない。

 閑話休題。

 それでも、内田先生のさまざまな経験は時間を超えて現代の若者に素晴らし
い示唆を与えてくれるように思える。本書は、現代のこの窮屈な世の中でも、
自分自身を活かして充実させた人生を送るための指南書という側面を持ってい
る。

 例えば、労働=働く、ということについて、内田先生はこんなふうに云って
いる。曰く“人間を疲れさせるのは労働そのものではなく、労働をする「シス
テム」を設計したり、管理したり、合理化したりすることだ・・・”。

 執筆子はこのくだりで思った。現在行われている“働き方改革”について。
この改革はいわゆる“ブラック企業”を摘発し、長時間労働を強いる世の中を
改革するためのものであり、一定の成果はそれなりに上がっている様子である。
だがしかし、この改革によりひとりひとりの労働に対する意欲、というかモチ
ベーションが下がってしまっていることを強烈に思わずにはいられない。職場
のPCを完全に総務部にモニタリングされ、労働時間外に仕事をしたかったら、
時間外労働の申請をしなさい、しかしそれはむやみに出さない。労務費が増え
てしまうことは企業の収支決算から云えば最悪。だから仕事が途中でもPC切
って帰りなさい。・・・・・人は給料のためだけに労働をするのではない。や
りがい、達成感、意欲など数値化できないものが労働の理由になっていた。そ
れをこの“働き方改革”はぶっ壊してしまう。頑張る、というモチベーション
は長時間労働と対になっている。執筆子は従業員から頑張る、という気持ちを
奪ってしまうこの“働き方改革”に断固反対するのだ。で、内田先生の先の言
葉にもどる。

 先生は労働をする「システム」を設計したり、管理したり、合理化すること
が、なによりも人を疲れさせる、と云っている。まさにこのことが喫緊の問題
なのだ。労働者はみんなこの“働き方改革”という得体の知れないシステムに
疲弊している。悪いことに、依然としてこの国が進めている“働き方改革”は
悪いことではない、とほとんどの人が思っている。人をして、意欲を奪い疲れ
させしめるこのシステムは、おそらく何年後かに、この国をすっかり疲弊させ
てしまうに違いない。

 再度、閑話休題。

 内田先生の生き方は、日比谷高校での過ごし方に拠っている。スマートな生
き方。シティボーイである日比谷高校生。“「ミスティフィケーションしてい
ないふりをする」というミスティフィケーション”。空気に合わせて気楽に生
きているように見せかける。・・・・・そんな生き方。そして先生は言い放つ。
曰く“決断とか選択ということはできるだけしないほうがいいと思う。右に行
くか左に行くか選択に悩むということは、すでにそれまでにたくさんの選択ミ
スを犯してきたことの帰結。”と。・・・・・そんなことは凡人にはできない。
凡人はいつもいつも日常普通に右か左かで悩み、そして選んだものが違ってい
たことに対して傷つき、後悔し反省している。後悔と反省のない人生など、考
えられないのに、内田先生は“ふつうに自然な流れに従って道を歩いていたら
「どちらに行こうか」と悩むことは起きない。”と云い、悩む人生を送ってい
ない。まさに「そのうちなんとかるだろう」なのである。

 本書のあとがきに書かれている言葉。スティーブ・ジョブスの言葉。内田先
生はこの言葉に100%同意する、と云っている。

「And most important,have the courage to follow your heart and 
intuition.
They somehow already know what you truly want to become.」

「いちばん大切なことは、あなたの心と直感に従う勇気をもつこと。
あなたの心と直感は、あなたが本当はなにものになりたいのかをなぜか知って
いるから。」

 一番大切なことは勇気なのだ、という内田先生の意見に皆さんは賛成できる
でしょうか。


多呂さ(このいまの事態は、終わりの始まりなのでしょうか。それとも新しい
時代の始まりなのでしょうか。絶望感にうちひしがれそうになりますが、みん
なで乗り切りましょう。・・・・・というふうに結ぶのが正しいことなのか、
正直わかりません)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ― 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510

・『支え合い・学び合いで育つ「わたし」』(エディット・パルク)
  http://web.kyoto-inet.or.jp/people/cogito/%8Fo%94%C5%88%C4%93%E0/%8Ex%82%A6%8D%87%82%A2%81E%8Aw%82%D1%8D%87%82%A2.html

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

 〒142-0041 東京都品川区戸越5-4-3 アズ品川ビル4階
       ビズナレッジ株式会社内 [書評]のメルマガ 献本 係

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンや楽天などのオンライン
 書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。つまり
 は当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願いしま
 す。(あまりにも短いものは書評とは呼べませんので、文字数の条件を設け
 ました。書評は500字以上でお願い致します。)

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 続いて10日号をお送りします。

 しかしこうなると、日付ではなく、1号2号とかだけの方が良いかもですね。

 ほぼ不定期配信になってますが、コロナの間にリカバリするぞ!と、思って
おります。はい。

 すべての業務やイベントがオンライン化していますが、私が関わっているイ
ベントを、告知欄で紹介させていただきました。

 「原口の紹介」で、各回1,000円で参加可能です。

 御時間と御興味があれば、是非。(あ)

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