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[書評]のメルマガ vol.700


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■■ [書評]のメルマガ                2020.05.10.発行
■■                              vol.700
■■ mailmagazine of book reviews  [カルボナーラとペペロンチーニ 号]
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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<124>『牛乳配達DIARY』、日常生活は滑稽に満ちている

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第122回 福島県双葉郡の消防士たち

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→106 世界は広く、時々小さく

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→テレワークの普及がもたらすコロナ後のキャリアを考えてみた。

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■ネクスト・ソサエティ・フォーラム2020 in zoom
 「 What's Next?-危機の時代とドラッカー-」
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 ――すでに起こった未来と「コロナ後」の世界

この全地球レベルの危機をどう乗り越え、次なる展開に利することができるか。
さまざまな領域のプロフェッショナルに参集いただき、ネクスト・ソサエティ
創造、そしてそれぞれの第二の人生展開の作法を有意義にシェアできる場にし
たいと思います。長丁場となりますが、ぜひお集まりください。
(*入退出自由)

【日時】2020年5月16日(土) 10:00〜18:00 (開場9:30〜)
 
【オンライン開催】 Zoomアカウントを利用 
 *当日は、チケット購入時のメールに記載されている「イベント視聴ページ」
  よりご覧いただけます。

【参加資格】主催団体会員および紹介者(「一般」で参加できます)

【参加費】無料

【プログラム(予定)】
 https://nsf2020inzoom.peatix.com/

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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<124>『牛乳配達DIARY』、日常生活は滑稽に満ちている

 世間では、コロナコロナで何もかもが「お休み」となり、ドラッグストアの
棚からマスクが消えた…と思っていたら、いつの間にかスーパーの棚から、パ
スタとパスタソースも消えていた。
 どうやら、家族が連日家に居るようになって、しかもおいそれと外には行け
ない現状から、家庭で手軽に作れて日持ちもする乾麺とレトルトのソースを、
皆さんが大量に買い込んでいくせいらしい。

 我が家では、「1.6ミリ」の麺と、ソースは、オーマイの「まぜて絶品コク
旨ガーリックトマト」並びに「濃厚カルボナーラ」を愛用していたのだが、今
やこれがどこにもない。
 「1.6ミリ」の麺は、どうやら一番人気でもあったようで、これが真っ先に
店から消えた。
 仕方なく、麺はもう太さに贅沢は言わず、とりあえずはあるものを買ってく
ることにした。なので、ただいま台所に常備されているパスタは、「1.4ミリ」
と「1.7ミリ」が混在している。

 ソースもまた、我が家愛用のオーマイ製品はとりわけ、1袋に2人前という
リーズナブル、かつまた結構旨い、というのが災いしたか、真っ先に棚から消
えていた。
 ところが、やはり1袋に2人前入りで、我が家ではオーマイのが売り切れて
る時の次善品と決めている「キューピーあえるパスタソース カルボナ−ラ」
は、どこのお店でも結構残っていて、これは助かっている。
 他社製品でも、トマト系のソースは売り切れが多いのだが、なぜかペペロン
チーニとカルボナーラは、どこでも結構残っているのが、不思議。
 みんな、そんなに嫌いなのか? カルボナーラとペペロンチーニ。
 というか、おそらくは、パスタやパスタソースは、主に学校が休みの子供の
お昼として買われているんだろうから、お子さん方の好みではない、てことな
んでしょうね。

 街へ出てみると、車の通りと人通りのめっきり少なくなった、というよりも
殆ど人の見当たらない町中を、Uber Eatsの自転車やバイクが忙しく駆け回っ
ている。

 まったく、こんな状態がいつまで続くねん? とため息つきながらネットを
逍遥してたら、webマガジン「トーチ」で、第1回となる新人漫画賞の大賞が
発表されていて、その受賞作の一部が掲載されていた。
 「!」と衝撃を受けた。
 これは、買わねば、ぜひとも買わねば、と、4月に早速単行本になって発売
されるという、受賞作『牛乳配達DIARY』を取り寄せた。

 さらに、最近は漫画は電子書籍で済ますことが多いのだけど、これは、この
作品は、ぜひとも「紙で読みたい」と思って紙版を取り寄せた。
 が、後で知ったのだが、この作品は電子版では発売されてなかった。
 リイド社、えらい!
 これは、電子ではなく、是非ともに紙で読んでほしい漫画だと、わしも思う。
 「大賞」受賞に際しては、審査員全員一致で「これ!」と即決したそうだが、
それも大いに納得だ。
 漫画界は、またもや新しい才能を手に入れた。

 作者のINAさんは、愛知県瀬戸市でつい最近まで牛乳配達の仕事に就いてい
て、受賞作は、そのころの日常を、ほぼそのままに描いた作品。
 牛乳配達の日々の中で、ふと「これを漫画にしたら面白いんじゃ…」と思い
つき、とりあえずは見様見真似で漫画に仕立て、自費出版で本にしたものを、
「トーチ」に応募作として送ったらしい。

 牛乳配達に限らず、仕事を持っている人なら誰もが、ふと感じたことがある
だろう鬱屈や屈託、あるいは倦怠や焦燥が、小市民的かつとてもいじましくも
切なくつつましい日常の中に「ひょい」と不意打ちに顔を出すさまが、「リア
リズム」でもって描かれている。

 そう、「リアリズム」なのだ。それも、つげ義春の言う「リアリズム」。
 この「牛乳配達DIARY」を読み進むうち、つげ義春の『大場電機鍍金工業所』
とか『義男の青春』あるいは『下宿のころ』といった、自身の体験をもとに作
られた一連の「リアリズム」作品を読み返したくなってきた。
 で、記憶の中でこのINAさんのリアリズムに一番近いつげ作品は、単行本
『隣の女』に収められた数編だと思い出し、探したのだが見つからない。
 見つからないとなると俄然読みたくなってきて、これまたアマゾンで注文し
てしまいました。

 つげ式「リアリズム」作品とINAリアリズム、どちらも自身の体験をベース
に描かれている、というだけでなく、描かれるエピソードそれ自体は、悲惨だ
ったり惨めだったりいじましかったり、イタかったり、とてつもなくうら寂し
く物悲しかったりするにも関わらず、作品全体に漂う空気は、奇妙に明るくて
笑ってしまうような可笑しみに満ちている、というところも共通している。
 絵柄はまったく違うとはいえ、背景がこちらに何かを語りかけてくるところ
も共通だ。

 単行本中には、おそらくはINAさん自身が牛乳配達の途中で、配達に使う軽
バンから撮ったであろう写真が何葉か挿入されているのだが、この写真もまた、
見事に「つげ的」風景が切り取られている。

 と、ここまで書いて、改めて『牛乳配達DIARY』をぱらぱらとめくっている
と…
 巻末の著者紹介欄に、「24歳の頃、友人から借りた『無能の人・日の戯れ』
に衝撃を受ける」とあるではないか。

 「あ、やっぱり…」と思うと同時に、なんだか独り相撲を取っていたような
恥ずかしさにも襲われたのではあるが、しかし、INAさんには、「つげ式リア
リズム」の後継作家として、今後の活躍を勝手に、大いに期待してしまうので
ある。

 実際、すでに「トーチweb」誌上にて、『牛乳配達DIARY』の“後日譚”とも
言える『つつがない生活』の連載が始まっていて、こちらは、いじましくもつ
ましい日常の中に、「ペーソス」などと横文字で表現したくない、なんとも言
えない可笑しみが滲み出ていて、INA版『無能の人』とも言える作品になるん
じゃ、とひそかに期待しているのです。


太郎吉野(たろう・よしの)
阪神タイガースお膝元在住。右投げ右打ち。趣味は途中下車、時々寝過ごし乗
り越し、最長不倒距離は三重県名張。
ちなみに「阪神タイガース」の「阪神」は、「兵庫県阪神地方」を指します。

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第122回 福島県双葉郡の消防士たち

 今月は震災関連本を紹介する。あれから9年以上経ったので、だいぶ色褪せ
て聞こえるかもしれないし、いまさら感も否めない。そういう気持ちが“風化”
と云えるわけで、それはそれで仕方ないことと思うが、それでも今回紹介する
本がもう5年早く出版されていれば、この本はもっともっと話題になり、部数
もいったであろうことは、すぐに想像できる。
 なぜ、9年も経ってからの出版だったのか、それは本書を読めばすぐ氷解す
るわけで、実際にこの本を手に取って、本書を読んでこの9年間のブランクを
理解してほしい。

『孤塁 −双葉郡消防士たちの3・11−』(吉田千亜 著)(岩波書店)
(2020年1月29日)

 本書は東日本大震災時に福島第一原子力発電所が立地している福島県双葉郡
をその管轄とする双葉消防本部のドキュメントであり、本書の執筆者は当事者
から綿密に話を聞いてそれを構成した若いライターである。かなりレベルの高
いノンフィクションだと思う。主に地震発生の3月11日から3月いっぱいの記
録であり、そして終章に双葉郡の消防士たちのその後が書かれている。

 いままで、たくさんの震災関連本を読んできた。震災発生時からその後のこ
とをさまざまな場面や職業から読書を通して、東日本大震災を追体験してきた。
その中で一種の真空地帯(関連する書物がなかなか見当たらない地域や事象)
ともいうべき場所がある。それが双葉郡であろう。また、もっと細かく云えば
双葉郡に住んでいた人たちを記録した書籍は極端に少ない。それは仕方がない
ことだと思う。住んでいた所を追われた。そしてもうその場所にはたぶん住め
ない。居住地を失い、同時にふるさとを喪失した悲しみと苦しみはなかなか表
現できない。そこに他人が介在することは難しい。その苦しみ・・・・・。

 しかしながら、仕事なら表現できるかもしれない。原発事故の下、命をかけ
て遂行した仕事について語っている本書は、双葉郡の消防士たちが、東日本大
震災にどう立ち向かったか、消防士たちの物語となっている。一層貴重な物語
なのだ。
 福島第一原発が立地している場所は、津波被害の直後から避難命令が出され、
住民たちは右往左往しながら取るものも取りあえず避難した。消防士は避難を
誘導する係として粉骨砕身、地元住民のために仕事をした。しかし普通の避難
ではない。放射能汚染からの避難なので、避難を誘導する彼ら消防士だって生
命の危険が及んでいる。
 地域の住民。飼われていた牛馬や他の家畜たち。そして福島第一原発で働く
人たち。・・・・・彼らには光があたる。しかし消防士たちは黙々と仕事を遂
行するのみで光があたっていない。光があたる、ということはマスコミの取材
がある、ということだ。つまり彼ら双葉郡の消防士たちにはマスコミの取材が
なかった。そのことを踏まえれば、本書はまさに貴重な資料と云える。今の世
はマスコミに伝わらなければ、貴重な記録は埋もれてしまうだけだ。もしも記
録を取っていれば、の話である。

 彼らはその後、各地に避難した。そして双葉郡から避難している人たちと同
じように差別を経験している。むしろ消防士という職業ゆえ、最後まで高濃度
の放射線量にさらされていた分、一層ひどい差別に耐えなければならなかった。
 本書の執筆者は消防署員全員から取材したかったであろう。しかしそれはで
きなかった。消防士という仕事から離れてしまった元隊員も存在する。元の身
分を隠して別の場所で生活している人もいる。
 それでも口を開いて取材に応じた、隊員たちとその家族に大きな拍手を送り
たい。彼らの存在を誇りと思いたい。すばらしい。

 本書のクライマックスは、原発内で発生したとされる、建物の一般火災の消
火のために緊急出動するくだりである。そのときの様子が本書の表紙の写真と
なって、読者である我々に迫ってくる。完全防備なので、出動する隊員たちの
表情はわからない。しかし本書を読んでこの表紙の写真を見れば、その覚悟と
悲壮感は読者に迫ってくる。本書の帯にはこうある。“きっと特攻隊はこうだ
ったんだろうと思った”。と。

 消防士たちを大いに不安にさせたのは、事故後、情報がほとんど伝わらなか
ったことだった。どこがどのように放射能汚染されているか、隊員たちはまる
でわからなかった、という。自分の命を張って地域住民の避難をしている彼ら
には、放射線量の情報は一切伝わっていなかった。不安と恐怖の中で救急搬送
をしなければならなかった。彼らは、まさに取り残された人たち、なのであっ
た。また、双葉郡の住民たちの避難が完了し、自分たちもようやく避難するこ
とになり、それぞれ何十日ぶりかで家族と再会して、避難先に落ち着いたとき、
彼らはその異常と普通の乖離の激しさを最初に感じたという。災害の真っ只中
の非日常が続く双葉郡と避難先の日常の差の激しさに驚いた。

 本書の題名は「孤塁」。まさに“孤独に自分自身の持ち場を離れず守る”。
地元の消防署員はその気持ちに尽きているのである。素晴らしい。

 大地震と津波、そしてそれに続いた原発事故。双葉郡では非日常が続いてい
るがそれが日常化してしまう。そのことが“災害の風化”なのである。本書の
ような素晴らしい記録の物語は災害を他人事にせず、自分のこととあらためて
考えさせる、素晴らしい書物である。

多呂さ(人との距離が劇的に変化しています。日常が大きく変化しました。こ
の日常がもしかすると、程度の差はあれずっと続くかもしれません)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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106 世界は広く、時々小さく

 いまは、明日がどうなっているのかよくわからない、不思議な時間が流れて
いる感覚が続いています。ひとまず、という気持ちで毎日ご飯を食べて、よく
眠り、本を読み、映画を観て、庭の野の花を愛で、散歩して、仕事をします。
 深く息をすることを意識しています。

 最初にご紹介する本はパキスタンを舞台にした物語。

 『囚われのアマル』
 アイシャー・サイード 作 相良倫子 訳 さ・え・ら書房

 12歳の少女アマルは、勉強好きで、将来は教師を夢見ています。住んでいる
村は大地主一家が牛耳り、村人の多くはその地主さんから借金しています。

 アマルは自分の家はそこまでの借金があることを知らなかったのですが、大
勢の人前で、地主さんの息子、ジャワッド氏にたてついてしまったため、借金
の肩代わりすることになってしまいます。まだ12歳だというのに。

 そうなると学校へも行けません。住み込みでの女中として働かなくてはいけ
なくなったからです。

 アマルの今までの生活が一変し、ただ働くだけの日々を読んでいると、『小
公女』を読んでいるかのように思われたのですが、これは「現代」のパキスタ
ンのことなのです。

 物語はノンフィクションですが、描かれている強制労働は国際的な問題とさ
れているにも関わらず、なかなか改善されていません。

 アマルが強制労働させられるきっかけは、自分の気持ちを恐れずに地主の息
子に伝えことでした。けれど、その勇気ある行動ができたからこそ、それから
のアマルの運命も変えていくのです。

 児童文学の王道のストーリー展開に引き込まれ、アマルがどうなるのか一時
も目が離せない臨場感が最後まで続きます。

 広い世界では知らないできごとが起きている。いや、狭い世界でも知らない
ことは多々ありますが。本を読むということは、そのどちらにも気づかされま
す。

 『城跡の謎』
 『地主館の罠』
 アストリッド・リンドグレーン作 菱木晃子訳 平澤朋子絵 岩波書店

 以前のリンドグレーン全集より、大きさはひとまわりほど小さくなり、大人
にも読みやすいサイズ、新たな訳と装丁で、より魅力的になったリンドグレー
ン・コレクション。

 読み始めたら止まりません!

 最新刊は名探偵カッレシリーズ第二弾。『地主館の罠』(菱木晃子訳 平澤
朋子絵 岩波書店)。

 邦訳されたときは『カッレくんの冒険』(尾崎義訳)として刊行され、今回
はタイトルも改められています。

 ちなみにシリーズ1作目は『名探偵カッレ 城跡の謎』(旧訳:名探偵カッ
レくん』(尾崎義訳))は昨年9月に刊行。

 シリーズ3作目が刊行されたタイミングで続けて読もうと思っていたのです
が、家にいる時間がたっぷりとれるいま、手にとったらやめられなくなりまし
た!

 訳者あとがきによると、リンドグレーンは、犯罪学の権威で、のちに国立犯
罪技術研究所を設立するハリー・セーデルマンの秘書をしていたことがあり、
その時の知識がこのシリーズに生かされているとあります。読み終わったらし
ごく納得。

 名探偵カッレの仕事ぶりはとても緻密で、また推理していく筋道がとてもわ
かりやすく描かれています。また犯人を追うばかりでなく、夏休みにたっぷり
と遊びまくるカッレたちの描写はのびのびと楽しんでいる様子が幸福感に満ち
ていて、自分の中の子ども心がくすぐられます。

 遊びの描写には、事件の伏線が隠されているのですが、読んでいる間はただ
ただ子どもたちの「バラ戦争ごっこ」の本格的さにおもしろがっているだけで、
後半の推理で、へぇ、あれが、なんとまぁとなるのです。

 リンドグレーンの他の作品でもそうなのですが、登場する子どもたちの遊び
は大人目線からすると「やめなさい!」と言いたくなるものばかり。

 例えば、『地主館の罠』の1シーン。

 小川にかかる橋は、いつも子どもたちを誘惑する。(中略)幅の狭い手すり
がついている。この手すりの上を、平均台みたいにバランスをとって歩くのが、
おなかの底がくすぐったくなるほどスリルがあって、気もちがいいのだ。

 おなかの底がくすぐったくなるほどのスリル!

 でも、子どもたちが手すりを渡っているのをみたら、情けなくも私は止めて
しまいそうです。見守れるくらいの度量が欲しい。
 リンドグレーンの物語に出てくる子どもたちはカッレだけでなく、皆、本気
でとことん遊び、いたずらをするので、そのたびに受け止める力を試されるよ
うな気持ちになります。

 さて、おなかがくすぐったくなるほどのこのシーン、
 ひとりの大人はカッレたちの行為に立ち会い、つぶやくセリフも唸ります。

 遊びの中でのスリルやぞくぞくする気持ちは、子ども時代ならでは。
 
 謎ときがおもしろいので、筋は詳しく伝えられませんが、
 読んだら、原っぱをかけまわったような爽快感があります。
 
 最後に新装版の挿絵について。北欧という外国の雰囲気、子どもたちの表情、
探偵小説ののスリル感、そのどれもを併せ持った絵が平澤朋子さんによって描
かれています。

 シリーズ最終巻『名探偵カッレとスパイ団』の刊行(今秋予定)が待ち遠し
い!

(林さかな)
会津若松在住。「本の雑誌」新刊めったくたガイド海外文学担当。
http://1day1book.strikingly.com/

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■「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
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テレワークの普及がもたらすコロナ後のキャリアを考えてみた。

『キャリアノートで会社を辞めても一生困らない人になる』
野津卓也著 東洋経済新報社(2010/8/27)

 政府が緊急事態宣言を5月一杯まで延長しました。それに伴い、仕事は自宅
でテレワークになったという方が先月よりさらに増えているのではと思います。

 この間、ネット上では「STAY HOME」「お家にいよう」「巣ごもり」といっ
たキーワードが登場し、家の中でどうやって時間をつぶそうか?みたいな記事
が多く目に飛び込んでくるようになりました。仕事がテレワークになると、こ
れまで通勤に使っていた時間がまるまるなくなりますし、休日は外出自粛の流
れが続いていますので、やはり時間を持て余す方が一定数いる影響なのではと
思います。

 勿論、時間の使い方は人それぞれで良いと思うのですが、せっかく自宅で自
由に使える時間が増えたのであれば、1つお勧めしたいことがあります。それ
は自身の職務経歴を振り返り、棚卸しをしてみることです。

 テレワークの普及は働き方だけではなく、組織やキャリアにも大きな影響を
もたらすことが想定されます。

 もう10年以上前から、日本の終身雇用制は徐々に崩れ、欧米のように「何が
できるか」で報酬やポジションが変わる、実力成果主義的な雇用へ変化してい
くと言われておりました。しかし、人事制度上では成果主義を導入したとして
も、実状として終身雇用、年功序列を引きずっている会社はまだ多数。それが
今回を契機とし、変化が進む可能性が高まっているのです。

 終身雇用制の下では、労働時間が長い人、会社に遅くまで残っている人が評
価されやすい風潮がありました。しかし、必ずしも出勤を必要としないテレワ
ークが主流になると、仕事の評価は、純粋なアウトプット量と質が最重視され
るようになります。労働時間の長さが評価になりにくいのは勿論、単に会社に
行っていればいいという働き方は許容されなくなっていきます。

 また、仕事のために会社に行く必要がなくなれば、地方に住みながら都心の
企業に採用されて仕事をするような事例も出てくるでしょうし、すでに副業を
容認する企業の増加も予想されます。

 結局のところ、これからはキャリアを会社に依存する時代は終わり、自律的
に形成していくことが本格的に求められるようになる、と。そのためにも、ま
ずはこれまでのキャリアの棚卸しを実施し、自身の事を振り返ってみることを
お勧めしたいなぁと思うのです。

 今回、数多あるキャリア関連本の中から本書を取り上げたいと思ったのは、
PI(パーソナルアイデンティティ)という考え方に基づき、自分らしさを活か
したキャリア形成を勧めている点にあります。

 本書の中でPIとは「『自分は何者なのか』ということを、他者との比較、社
会の中で位置づけることにより、明確な自己像として統一していること」と定
義されています。

 仮に会社の肩書を外しても、他人に自分が何者なのかを語ることができる。
会社に頼らなくても一生困らないキャリアを構築するためには、まずこのよう
な自己基盤を確立することが重要と説いているのです。

 本書の一番の特長は、合計30種類にも及ぶワークの豊富さです。まずPIを
発見、再認識するためのワークとして、幼少期から現在までの自分史作成、強
み・弱みの分析、価値観の確認。ここまでで自己分析を固めてから、職業人生
の振り返り、今後のキャリア目標策定へと進んでいきます。

 その途中途中では、自身がどのような職業に興味関心を抱くかのテストや、
自身の目標と会社のビジョンとの整合性チェックなど、企業人がキャリアを考
えるうえで必要な要素がしっかり抑えられています。すごく使いやすいし、理
にかなっているので、キャリア研修の元ネタに使う研修講師もいるんだろうな
と勘ぐってみたりもして。

 これ、しっかりやってみようと思うと、とても1日、2日で終わる内容では
ないんですね。ある程度まとまった時間を確保して、じっくりと自分に向き合
いながら進めていく必要があります。その意味でも、テレワークや外出自粛で
行動が制約されることで、自由な時間がある今の状況を利用するのが一番だと
感じるのです。

 この本が発売された2010年は、リーマンショック後の経済の冷え込みにより、
日本企業の人材採用が冷え込んでいた時期でした。今回の新型コロナウィルス
騒動、一部の識者にはそれを超える経済危機になるとの見方もあります。

 「会社に依存しないキャリア形成」とはその時も、いやその前から言われ続
けていたことですが、今回ついにメジャーな考え方になるのではないかと、期
待と不安の両方を感じながら、推移をみていきたいと思っています。」


show-z
都内企業に勤務する人事担当者。
テレワークになり、思いのほか仕事が捗るので、実は社内でのコミュニケーシ
ョンが苦手だったのではと気づいた今日この頃。うーん。

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ― 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510

・『支え合い・学び合いで育つ「わたし」』(エディット・パルク)
  http://web.kyoto-inet.or.jp/people/cogito/%8Fo%94%C5%88%C4%93%E0/%8Ex%82%A6%8D%87%82%A2%81E%8Aw%82%D1%8D%87%82%A2.html

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

----------------------------------------------------------------------

 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

 〒142-0041 東京都品川区戸越5-4-3 アズ品川ビル4階
       ビズナレッジ株式会社内 [書評]のメルマガ 献本 係

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンや楽天などのオンライン
 書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。つまり
 は当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願いしま
 す。(あまりにも短いものは書評とは呼べませんので、文字数の条件を設け
 ました。書評は500字以上でお願い致します。)

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 今回は5日遅れで発行。ちょっとリカバリ中?(あ)

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