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[書評]のメルマガ vol.701

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■■ [書評]のメルマガ                2020.05.20.発行
■■                              vol.701
■■ mailmagazine of book reviews    [民主主義に踏み留まるのか 号]
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■コンテンツ
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★「トピックス」
→ トピックス募集中です

★「音楽本専門書評 BOOK’N’ROLL」/おかじまたか佳
→ #118『愛と幻想のファシズム』

★「目につく本を読んでみる」/朝日山
→ 『農家はつらいよ――零細メロン農家・年商1億までの奮闘記』 (DOBOOKS)

★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→ 『生き物の死にざま』(稲垣栄洋・著 草思社・刊)

★【募集中】献本読者書評のコーナー
→ 献本お待ちしています!

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■音楽本専門書評「BOOK'N'ROLL」/おかじまたか佳
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#118『愛と幻想のファシズム』

 ポスト・コロナ時代がどんな世界になるか、多くの人が自身の考えを発信し
ている。
 その中で、ひとつ確かだと思ったのは、民主主義かファシズムか、という選
択を迫られるだろうということだ。

 自粛警察という奇態な言葉が生まれたように、自粛しない人たち、もしくは
自粛していないと思われた人たちに対するバッシングが激しい。
 なぜ、彼らは自粛しないのか。それは、日本が欧米諸国のような罰則を伴う
強権的外出「禁止」が法的に出来ず、あくまで自粛の「要請」に留まらざるを
得ないからだ。
 ならば、法を変えるべき、と、そう思っている人は多いのではないか。
 具体的には、国民の基本的人権を保障した法律、すなわち日本国憲法の変更
である。

 もちろん、今回のような「緊急事態に限る」という制限は付ける。その上で、
公益のために一部の人間のわがままを抑えるのだから、これをファシズムと呼
ぶのは不当だという考え方に立つだろう。

 しかし、「緊急事態」の定義は、言葉による以上、不透明さがつきまとう。
解釈の幅がどうしても出来る。
 その時権力を握っているのがどんな人物か、現時点では予測がつかない。

 だがそれよりも、根底にある国民観が、「同じ日本人だからと言って、誰も
が信用できる訳ではない」というものであることになる。
 一部のわがままを抑える、というのだから、一定数の勝手な人間がいること
が前提だからだ。

 一方、民主主義の前提は「国民への信頼」だろう。
 信頼できないものを「主」にするはずはない。
 日本がこの民主主義を選び取った背景には、大日本帝国時代、国家や軍部が
主導した戦争で世界に悲劇をもたらした歴史への反省がある。
 つまり、国家よりも、国民を信ずる、という決意と思想が込められた民主主
義だ。
 さらに言うなら、われわれ自身が一人の国民であるのだから、それは「互い
を信じ合う」ことに他ならない。

 そんなこと言っても、実際勝手な奴がいるのだから、信頼できなくてもしょ
うがないだろう、という反論も想定できる。
 だから、国家によって強権的に規制しないとダメだ。いくら民主国家でも犯
罪は国が取り締まるではないか。殺人などの重罪には死刑だってあり得る。人
間の集団には、そういう暴力的な装置も時に必要なのだ、と。

 この場合は、国民同士の相互信頼よりも、国家の方が信用できる、というこ
とになる。

 国民か、国家か。
 われわれは、一体どちらを信じて生きていくのか。

 コロナ以降の日本で、恐らく改憲論議としてこの選択が迫られる日が来ると
いうのは、十分予想されるシナリオだと思った。

 国家を信用する考え方を、民主主義に対応するうまい言い方が他にないので、
便宜上ファシズムと呼ぶならば、村上龍の『愛と幻想のファシズム』には、優
れて今日的なテーマが描かれていることになる。

 本書が刊行された当時は、村上龍が「経済」の勉強を始めた、と話題になっ
た記憶がある。初版を買って読んだのも、ちょうどそのころ就職して企業戦士
の一人になったばかり、これから自分が参入する「経済」という世界に文学が
どう切り込むのか、関心があったからだと思う。

 しかし、これは「政治」の物語でもある。

 主人公の鈴原冬二は若いハンターだ。彼は弱肉強食、適者生存こそが、自然
なあり方だと考えている。
 しかし、人類はヒューマニズムという胡散臭い思想に毒され、弱者を「食う」
のではなく、「救う」社会を築いた。その結果、昔なら幼少期に死んでいた人
間も生き延びるようになり、人口は爆発。民主主義、平等主義が、弱者の発言
権を容認したために、世界は現実から目を逸らし、安逸に流される愚民の群れ
に動かされ、結果ひたすら破局へと驀進することになった、というのが彼の立
場だ。

 これを解決するには、もう一度狩猟時代に戻って、強者と弱者の選別、淘汰
を行う以外にない。

 そのためには、現在の世界システムをひっくり返す必要がある。
 かくて鈴原冬二は、狩猟社なる政治結社を立ち上げ、仲間を集めて世界シス
テムを動かすエンジン、「経済」の転覆を志す。

 彼の具体的な戦術は暴力だ。
 都合の悪い人物を暗殺したり、失脚させたり。自衛隊にシンパをつくりクー
データーを起こさせたり。
 後半では、ハッカー集団を使って、さまざまな偽の情報をマス・メディアに
流させる。重要人物の映像をCG加工して、言ってもいないことを言ったよう
に見せかけてしまう。世界はその誤情報に右往左往し、恐慌が起こり、内戦や
紛争が勃発する。

 1987年に上梓された本なので、まだ「フェイク・ニュース」という言葉はな
い。インターネットも情報流通の経路としては一般化していない。もっぱらテ
レビや新聞によって、ニュースは世界を駆け巡っている。
 しかし、それだけにこの謀略の先見性には驚く他ない。いくら経済の勉強を
したとはいえ、作家の想像力がここまで時代を先取りするものだろうか。
 最後の方には、ほぼ言葉だけだが「AI」すら登場するのである。

 逆に言えば、当時は途方もない物語に思われた『愛と幻想のファシズム』が、
世紀を跨いでようやく現実味を帯びて来たのである。

 鈴原冬二率いる狩猟社は、終盤、自分たちの存在を誇示するために、ビッグ
・イベントを企画する。反対勢力からは、まさにヒットラーのナチス党大会だ
と揶揄されるが、あくまで一政治結社の主催するイベントに過ぎない。
 しかし、多くの国は出席者として大使を送り、まるでオリンピックや万博の
ような日本の国家的イベントへと肥大していく。

 このイベントのテーマ曲を、狩猟社がドイツの現代音楽作曲家キルシェに依
頼するところが、音楽本としての注目点だ。

 鈴原冬二はロック嫌いで、音楽はクラシックしか聴かない。ことにお気に入
りはモーツァルトである。
 残念ながら、あまりモーツァルトを聴いたことがないので、この作曲家を主
人公の好みに設定した村上龍の意図はよくわからない。
 しかし、鈴原がドイツ人の「現代音楽作曲家」を選ぶ点のは非常に面白い。

 まず、単純にドイツということで、ナチスを連想する。
 しかし、より重要なのは、キルシェが「現代音楽」の作曲家であることだ。

 ポップスの場合、作曲家は英語でソングライターだが、クラシックでは、コ
ンポーザーと呼ばれる。
 コンポーズは本来、「構成する」という意味だ。人は作曲家というと、天啓
を得て閃いたメロディを楽譜に定着する人だと思うし、ロマン派ぐらいまでは
実際そうであっただろう。だが、20世紀に入ると、より「構成する」ことが重
要になってくる。もはや自らメロディをつくらないのも当たり前だ。
 
 例えば、バルトークはルーツであるハンガリーの民謡を素材にコンポーズし
た。
 ホルストの『組曲:惑星』中の一曲で、平原綾香が「ジュピター」としてヴ
ォーカリーズした「木星」の有名なメロディもどこかの民謡だったはずだ。
 ジョン・ケージは易の占いを用いて旋律を決定し、偶然性の音楽をコンポー
ズした。
 藤枝守は、植物の葉に流れる微弱電流のパターンを音程に変換するという手
法で、『植物文様』をコンポーズしている。

 こうした現代音楽の作曲法に基づき、キルシェも自分ではメロディをつくら
ない。
 非常に弱い動物で、なぜ進化の過程で淘汰されなかったのか、現代でも謎と
されているある動物の、遺伝子パターンを元に主題をつくるのである。
 そしてそれを冒頭で提示する時、使われる楽器は、シンセサイザーなのだ。

 いわばバイオテクノロジーから導き出された旋律を、エレクトロニクスに歌
わせる音楽なのである。

 ここで読み手は戸惑いを覚える。
 そもそも弱者の淘汰を目的に鈴原は動いてきたのではなかったか。なのに、
なぜ、弱者でありながら淘汰を免れた動物の遺伝子をモチーフにさせたのか。

 そして、狩猟時代に返る、ということは、原始に返る、ということであるは
ずなのに、素朴なアコースティック楽器ではなく、最先端の電子楽器を起用す
るのはなぜか。

 先の疑問の答えは、自然淘汰を是としながら、淘汰に打ち勝つ能力が「強さ」
だけではない、ということへの、鈴原の漠然とした気づきがあるからだと考え
られる。
 適者生存ではあっても、適者たる資質が「強さ」とは限らない。少なくとも、
「強さだけ」とは限らない。「弱さが勝つ」ということはあり得ることだ。そ
のことへの直感的な理解が、鈴原の心の底に眠っている。主人公の思想の揺ら
ぎが、物語を立体的にする。

 そして、もうひとつの疑問には、「身体観」の問題だと答えよう。

 鈴原はケミカル・ガスから自衛隊の戦車、果ては核兵器まで、さまざまな現
代技術を利用する。また、サイバー・テロを行うためにハイテクを駆使する。
 これはハンターたる彼にとって、矛盾ではない。
 なぜならハンターもまた、銃を使い、ナイフを操る。生身の肉体ひとつで猛
獣と戦う訳ではないからだ。
 その時武器は、ハンターにとって、身体の一部である。熊が爪を持ち、虎が
牙を持つように、人は武器を持つ。それは拡張された身体である。
 銃やナイフから、核兵器やハッキング技術までは、相当な開きがあるようだ
が、しかしそれが「道具」という、たったひとつの概念に括られることは、既
にスタンリー・キューブリックが映画『2001年宇宙の旅』で、類人猿の放り投
げた棍棒が宇宙船にオーヴァーラップするという衝撃的なビジュアルを通して
指摘している。

 したがって、狩猟社会に戻ろうとする人間が、ハイテクを携えていくことは
決して矛盾ではない。

 ちなみに、弱者でありながら淘汰を免れた謎の動物はディクディクと言う。
いまでは日本の動物園でも見られるらしい。

 そして、2020年。
 予期せぬパンデミックに見舞われたわれわれの目に、鈴原冬二の民主主義へ
の挑戦は、どう映るのだろう。
 幻想のファシズムは、現実のファシズムになるのか。
 それとも、民主主義に踏み留まるのか。

 ともあれ、選択するのはわれわれの世代になる。
 その選択が、これから先の世界にとって、よいものになりますように。

村上龍
『愛と幻想のファシズム』
上 一九八七年八月二〇日 第一刷発行 一九八七年九月二四日 第二刷発行
下 一九八七年八月二〇日 第一刷発行
講談社

おかじまたか佳
素人書評家&アマチュア・ミュージシャン
もともとインドア派なので、外出自粛はさほど苦になりません。むしろ外出が
必要な時、緊張で憂鬱になってしまう。世間とは逆向きのストレスです。

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■「目につく本を読んでみる」/朝日山
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『農家はつらいよ――零細メロン農家・年商1億までの奮闘記』 (DOBOOKS)

新規就農したい人よりも、毒親に苦しむ人が読むべき本

 新規就農したいと言う人の中にはもともと農地を持っている農家出身の人を
うらやむ人を時折見かける。そういう人がこの本を読むと、そんな気持ちが吹
っ飛ぶだろう。隣の芝生は青く見えるかもしれないが、実際は真っ赤っかだっ
たりすることもあるのだから。

 この本の著者、寺坂祐一さんは、消費者相手の直販で大成功した農家として
以前から有名な方でした。除草剤散布事件で全国的な話題になった北海道のメ
ロン農家、寺坂さんが血を流しながら書いた自叙伝。「血を流しながら」とは、
彼の人生が毒親を克服する人生だったから。

 北海道の零細兼業農家の跡取り息子として育てられた寺坂さん、親の期待に
応えようとする素直なお子さんでした。しかし、不幸なことに彼の家庭は、世
間で言うところの毒親に支配されていました。じいちゃんばあちゃん、父さん
母さんみんなアル中だったという・・・そんな状態でも素直に育ったのはアル
中のダメじいさんではあったけど、かわいがってくれたおじいちゃんがいたか
らだったようです。

 寺坂さんの子供時代、農家であることに誇りを持っている寺坂家でしたが、
当時の基幹農業者であったおじいちゃんはアル中で、父親は水道屋さんに勤め
ていて、それなりに高い給料を得ていました。と言っても当時の水準ですと全
国レベルでは大卒30歳の平均年収くらいでしたけど・・・ま、それはともかく、
寺坂家は農業収入では食えなかったのです。

 そうした家庭事情を知らない中学生の寺坂少年は、進路として旭川の農業高
校に行きたいと思いました。地元にも農業高校はありましたが、まじめで農業
で生きていくんだと思ってましたから、勉強したい。だから、地元の農業高校
に通って狭い世界で学ぶだけではなく、もっと広い世界を見たい。地元以外の
ことも知りたいと思ったのです。

 これに親は反対しました。じいちゃん、ばあちゃん、父さん、かあさん、み
んな「毒親」だったからです。そんな親たちの言う通りにしてはダメなのです
が、中学生の寺坂少年は気がつきませんでした。素直な中学生なんだから、当
然ですよね。妹さんは、賢くて気がついておられたようで、さっさと逃亡しま
したが、最後にすばらしい活躍を見せてくれます・・・これは読んでのお楽し
み。

 話を戻して、高校卒業後、寺坂さん就農してみたら、秋が終わった時に通帳
見ると残高マイナス160万円。全然儲かってない。でも家が破産しなくて済ん
でいたのは父親が水道会社から月給を取ってきたからでした。

 農業で飯を食えていない。にもかかわらず農家であることに対し妙にプライ
ド高い寺坂家・・・時はバブル経済の時代、普通の農家ならこういう経営状態
だと親は子供に農業継げとは言いません。「農業では食べていけないから、勉
強していい学校に入って、給料のいい大企業に入れ」と子供に助言するもので
した。

 しかし、その逆を寺坂家はしていたわけですね。親の言う通り農業の道に入
った寺坂さんは絶望しかかりますが、唯一活路を教えてくれた人がいました。
北海道の農業高校では、卒業後、さらに勉強したい人のために農業専攻科とい
う過程が用意されていたそうで、その農業専攻科の担任だった榎本先生が、寺
坂さんにメロンを作らないかと提案したのです。

 この、榎本先生の提案が今に続く寺坂さんの人生を決めました。まじめな寺
坂さんが、(アル中の)親の言う通りやっておれば未来はない。そう思って榎
本先生は、当時北海道で活況を呈しつつあったメロン栽培を勧めたのです。

 そこから寺坂さんの快進撃が・・・続かないというか始まりもしない。北海
道の全てがそうではないのですが、寺坂家の地元はアホみたいに保守的な地域
で何か新しいことをしようとすると足を引っ張りたがる人が多い地域だったよ
うです。その上親が毒親ですからもう・・・これは相当メンタルが強い人でも
負けてしまう環境です。

 実際、寺坂さんはメンタルを病みました。何度も死のうかと思いました。し
かし死ぬことも精神病院に入ることにならなかった。なぜか?

 なんとか自分の農業に役に立てたいとwebマーケティングなどを学びに行っ
た時に知りあった仲間たちも心の支えになりましたが、何よりも奥さんとカウ
ンセラーがいてくれたことがよかった。読んで行くと、奥さんとカウンセラー
がよくなかったら、この方は100%つぶれていましたね。

 血を吐く苦労をして農業やってきて、そんな中で、何者かによる除草剤散布
事件。この事件に直面した時も、寺坂さんは精神を病んでいました。そんな状
況でも踏ん張り、事件を乗り越えた後にも続く毒親問題も乗り越えて、彼が見
たものは何なのか?

 この本は、農家や新規就農したいと思う人が主な読者層になると思いますけ
ど、そんな人たちよりも毒親に今も苦しめられている人が読むべきです。

 苦しんでいるのはあなただけじゃない。それが分かるだけでも読者は救われ
ると思います。


(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)
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■「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
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メメント・モリ。セミもサケもヒトも生きて死ぬ

『生き物の死にざま』
(稲垣栄洋・著 草思社・刊)

 長い間、書店が閉まっていて、本を買うのは巨大通販サイトのみ・・・。そ
れで間に合うっちゃあ間に合うんですが、やっぱりね、書店をぶらりと覗いて
気になる本をパラパラ立ち読み、おもむろにレジに向かって購入・・・そんな
生活がしたいよね、と思ってから2か月。

 やっとその欲求がかなって昨日、書店に行って購入した本がこの本です。地
味めな本なのでなかなか書評とか広告には出てこないから、ア〇ゾンでは探せ
ないタイプの本です。

 これはタイトルにある通り、「生き物の死にざま」を描いた本です。そのま
んまなんですよ。著者は大学の先生で専門は雑草生態学。セミやらシャケやら
はちょっと専門外みたいですね。

 内容は、「生き物の死にざま」を描いてあります(説明が下手ですみません
が、そのまんまなんで、ある意味、このタイトルが秀逸ということです)。

 引用しますね。

 「セミは必ず上を向いて死ぬ。昆虫は硬直すると脚が縮まり関節が曲がる。
(中略)彼らの目に映るものは何だろう。澄み切った空だろうか。夏の終わり
の入道雲だろうか。それとも、木々から漏れる太陽の光だろうか。

 ただ、仰向けとは言っても、セミの目は体の背中側についているから、空を
見ているわけではない。昆虫の目は小さな目が集まってできた複眼で広い範囲
を見渡すことができるが、仰向けになれば彼らの視野の多いは地面を向くこと
になる。

 もっとも彼らにとっては、その地面こそが幼少期を過ごしたなつかしい場所
でもある。」(セミ「空が見えない最期」)より。

 ね、続きを読みたくなったんじゃありませんか。

 この感じでシャケやカマキリやカゲロウなんかのことが書いてあります。
 文章は声でいえば低音ボイス。抑えた感じの派手なところがまったくない文
章で淡々と生き物の最期を描いています。

 シャケなんてね、もう卵を産むまでに障害(自然の障害とニンゲンが作った
障害と両方です)がありすぎてそこをケナゲに泳ぐとこなんて読んでるとせつ
なくて泣けてきますよ。

 ただ、思ったのは生物に感情移入しすぎてもいけないのかなということ。
 生物はなんのために生きているのかというと、親子の情愛とか、遺伝子を残
そうという強い意志で生きているのではないのです。筆者が文中で何度も述べ
ているように、サケが生まれ故郷の川をめざして泳ぐのも、ハサミムシが自ら
の体を子に食べさせて死んでいくのも、意志の力ではなくすべて遺伝子に組み
込まれた生物としての本能に因るものということがわかります。

 生物を擬人化して書いてあって感情移入しやすいけれどそれは便宜上のこと
であって、地球上の生き物はみな本能の波のまにまに生きているんですね。
 それでヒトですよ。ヒトももちろん生物なんで本能に従って生きてるんです
ね。サケと同じ。
 この本が身に染みて感じるのは、年齢を重ねたこともあるけれど、パンデミ
ックがやってきていつもよりも死が身近になったせいでもあると感じています。
生物はみな生きて死ぬ。メメント・モリ!
 だからジタバタしないで淡々と流れにそって生きていけばいいんだとちょっ
と思いました。
 もうね、検察長官が賭け麻雀したとか、沖縄でゴルフした芸能人はけしから
んとか、お上からマスクが届かないなんてどうでもいいことだとこの本を読ん
で思いました。(給付金はもらいます)。

大友舞子(おおとも・まいこ)
昭和20年代生まれのフリー編集&ライター。関東生まれで関西在住。

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ─ 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510


 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

 〒142-0041 東京都品川区戸越5-4-3 アズ品川ビル4階
       ビズナレッジ株式会社内 [書評]のメルマガ 献本 係

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
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 書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。つまり
 は当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願いしま
 す。(あまりにも短いものは書評とは呼べませんので、文字数の条件を設け
 ました。書評は500字以上でお願い致します。)

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 5月20日号です。遅くなりましてすみません。(あ)

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