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[書評]のメルマガ vol.702


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■■ [書評]のメルマガ                2020.06.10.発行
■■                              vol.702
■■ mailmagazine of book reviews      [マスク、嫌いなんです 号]
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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→107 美しい絵本、考える自然科学の本

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<125>少女漫画の時代が、あった

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第123回 村上春樹と彼の父親のこと

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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107 美しい絵本、考える自然科学の本

 今年の時間の過ぎ方はいままでにない独特なものですが、それもまた慣れる
もので、晴れた日は庭でラジオ体操をして、ベンチブランコで本を読んでいま
した。自分の家に庭がなくても、緑や土のあるところを野生の庭といったのは、
フランスの庭師ジル・クレマンです。そう、きっとどこにでも庭はあるのです。

 さて、今回最初にご紹介する絵本は、クラウドファンディングで刊行された
ものです。訳者の横山さんはとびっきりの目利きで、刊行されている訳書のほ
とんどが「ひとめぼれ」して持ちこんだ作品です。

 本書はご自身で主催してクラウドファンディングをたちあげ、
 日々、SNSで情報を発信し、見事に目標を達成しての刊行です。

 『ジュリアンはマーメイド』
       ジェシカ・ラブ作 横山和江 訳 サウザンブックス

 ジュリアンはおばあちゃんとスイミングに行きました。
 2人で帰る電車の中で、マーメイド姿のきれいなお姉さん達が乗り込んでき
ました。

 「きれいだなあ」とみとれるジュリアン。
 空想します。自分もあんな風に、髪の毛をのばして、きれいなドレスを着た
いなあと。

 帰宅したジュリアンは、空想を現実にしてみようと、衣装を身につけている
と、おばあちゃんがまたもお出かけに誘ってくれます。どこへ行くのでしょう。

 表情豊かなのびやかな絵に魅せられます。

 ジュリアンはもちろん素敵なのですが、私自身の年頃と近くなりつつあるお
ばあちゃんのキュートさにも目が離せません。

 版元サイトの紹介文によると、「本作は、50代になってからトランス移行さ
れた友人との会話をきっかけに生まれた」とあります。

 ジュリアンがきれいなマーメイドのようになりたいという願いを、おばあち
ゃんが軽やかに受け止め、ジュリアンの望む姿が美しく描かれ、何度も読み返
したくなる絵本です。


 次にご紹介するのもとても美しい絵本。

 『中国の昔話 九色のしか』
           リン・シュウスイ 文 リャオ・ジャンホン 絵 
                   宝迫典子 訳 廣済堂あかつき

 薬草とりは王妃の命令で森へ「美しくなれる薬草」を探しに出かけます。
 森でいっしょうけんめい薬草を探しているとき、鳥たちの話が耳に入りまし
た。「美しい九色のしか」が森に住んでいるというのです。

 薬草とりは九色のしかを見つけ、うっとりと眺めました。と、その時にあら
われたクマに気をとられ、池に落ちてしまいます。九色のしかはそれを見て、
薬草とりを助けます。命を助けてくれたことに深く感謝する薬草とりに、しか
は自分のことは誰にもいわないよう口止めします……。

 昔話らしい、さっぱりとしたリズムのいい語り口に、影絵にみえるようなタ
ッチで黒を基調にして描かれた絵は相性ぴったりです。

 話の筋は恩のあるしかに対して、薬草とりがどんなことをしたかというもの
ですが、元は敦煌の壁画に描かれた物語。絵本の形になったおかげで、遠くに
いかずとも、自分に近づけてじっくり絵を楽しめます。

 創作にかけた時間は実に3年間。
 作家あとがきによると、何度も推敲しながら創作するその過程は一種の修行
のように思われると書いています。
 よりよいものをつくるために、満足いく形に仕上げていった、それがよく伝
わる贅沢な絵本です。


 『シェルパのポルパ エベレストにのぼる』
                石川直樹 文 梨木 羊 絵 岩波書店

 写真家の石川直樹さんが文章を書いた絵本。絵を描かれた梨木さんにとって
は本書が初絵本作品です。

 主人公のシェルパのポルパはヒマラヤ育ち。小さいときからヒマラヤの山を
眺めて暮らしてきました。いつか、シェルパとなって山に登る、それがポルパ
の夢でした。

 体力がついてきたことを認められ、おじさんからシェルパへの手ほどきを受
けるようになります。

 梨木さんの発色のきれいな絵は、ポルパの表情、ヒマラヤの山を臨場感をも
って伝えてくれます。大きく全体を描いた見開きの絵もすてきですし、私がも
っとも好きなのは、山の道具をもった手がズームアップされている絵です。
これらの道具で山へ登るんだという意志が感じられる手が描かれます。

 この絵本はシリーズとなっており、『冬虫夏草とおおきなヤク』(2020年秋
刊行予定)、『火星の山にのぼる』(2021年春刊行予定)となっています。

 本書で初めて荷物を運んでベースキャンプを往復したシェルパ。次はどんな
旅にでるのでしょうか。

 この絵本と一緒に読むのにおすすめは、福音館書店の月刊たくさんのふしぎ
「アラスカで一番高い山 デナリに登る」(2020年4月号)です。

 石川直樹さんが写真と文章のいずれもを担当されたもので、アラスカで一番
高い山、デナリの厳しく美しい山と登山の様子を知ることができます。
 ぜひあわせて手にとってみてください。


 最後に岩波少年文庫の『チョウはなぜとぶか』(日高敏隆)をご紹介します。

 本書は1975年に岩波科学の本として刊行され、その後1998年、高校生に贈る
生物学として刊行され、今回はこちらが底本とされています。

 著者が小学生の頃にアゲハチョウは何故、同じ道を飛ぶのだろうとという疑
問をもち、その疑問をずっと忘れずに持ちつづけ、後に動物行動学者となり、
探求し続けたことを書いています。

 我が家の庭にもモンシロチョウが毎日飛んできますが、どういう道を飛んで
くるのか疑問に思ったことはありませんでした。なにげないチョウの生態を深
く深く追求する様子に感嘆します。

 実験や観察がどれほど時間と手間をかけて行われてきたかが、つぶさに書か
れ、それまでチョウに興味をもっていなかった私も一気に引き込まれました。

 自分の見えている世界を深く追求していくおもしろさが本から熱く伝わって
きます。今年はコロナ禍でいつもの夏休みがあるのかどうかも、いまはまだわ
かりませんが、自由研究の参考にもなると思います。

(林さかな)
会津若松在住。「本の雑誌」新刊めったくたガイド海外文学担当。
http://1day1book.strikingly.com/

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<125>少女漫画の時代が、あった

 新型コロナは、これからもずっと、ほぼ未来永劫、付き合っていくしかない
ウィルスとなったみたいな今日この頃。
 ぼちぼち、恐る恐る、という感じで、社会活動及び経済活動も再開され始め
ている。

 関係先の学校と大学では、各校の対応にやや差があって、あくまで「遠隔」
主体で当面は様子を見よう、というところや、6月初めから一気に、従来通り
の対面授業を始めるところ、対面・遠隔それぞれにおよそ「半々」で始めると
ころ、と様々。

 しかし、「対面」の授業でも、学生と講師の間にはアクリルのパーテーショ
ンが設置されたり、座席が大幅に減らされて「ソーシャルディスタンス」が考
慮されていたりと、かなり慎重だ。
 教室では、講師も学生も「マスク着用」が、絶対原則で、これが、わしには
鬱陶しい。

 わし、マスク、嫌いなんです。息苦しいし。
 ことに、これからますます暑くなるし、マスクなんてしてられませんって…
と言うて、してないと、なんだか白い目で見られてしまうし。
 なので、教室では一応マスクはするのだが、一歩外に出ると、即座に外す。
 街でも、電車に乗ったり店に入るときにはマスクをするが、外に出たらば速
攻外す、という対応で済ませている。

 マスクについては、こんないい加減な対応だが、その代わり…というか、手
は、やたらこまめに洗うようになった。
 トイレに入った後、石鹸で手を洗うなど、以前にはまったくしなかったのだ
が、今は、せっせと洗ってます。
 以前は、「小」では、まったく手は洗わずに「スルー」で、「大」のときに、
水で「ちょろっ」と流す程度、だったんですが、とてもこまめできれい好きに
変身しました、はい。

 皆が皆マスクをしていて困ることがひとつ。
 新年度となり、どの学校でも新しい生徒や学生と接することになるのだが、
これが全員マスクをしているので、顔が覚えられない。
 出席を取るにしても、「はい」と声だけでは、どこから聞こえてくるのかわ
からない。
 なので、手を挙げてもらうようにしてるのだが、顔は、依然判別がつかない。
 今年、ずっとこれだと、とても困ったことになるぞ、と危惧しながらの2か
月遅れの新年度なのだ。

 4月、5月のコロナ「自粛」の日々、徒然なるままに本棚の整理などをして
いたのだが、「あれ、こんなのあったっけ?」とか、以前探して見つからなか
った本が意外なところから出てきたり、買った覚えも読んだ覚えもない本が出
てきたり、懐かしい本が出てきたり、が、やたらとあって、それら…買ったは
いいが読んでなかった本を読んでみたり、以前読んだがすっかり内容を忘れて
いた本を再読したり、の二か月間なのだった。

 W.P.キンセラ『シューレス・ジョー』( 永井淳・訳:文春文庫)なんて、久々
に読んだら映画も観たくなって、だいぶ前に買ったDVDの『フィールド・オブ・
ドリームス』を探し出しては、観てしまった。
 再度原作読み込んでから映画を見ると、こちらにも、新たな発見が多々あり
ますね。

 そんな再読本のひとつが、ちくま文庫版の米沢嘉博『戦後少女マンガ史』。
 これ、改めて読んでみたけど、戦後の少女漫画の歴史を、緻密に詳細に体系
的に網羅していて、まことに名著…いや、ただ「名著」なんて言葉では言い表
せないほどの労作であり、貴重な資料となり得ている。

 そして、これのあとに、やはり再読したのが、姫野カオルコ『部長と池袋』
なのだった。
 『部長と池袋』は短編集で、著者・姫野氏の少女時代から現在に至るまでの、
おそらくは体験に基づくと思われる作品が、多く収録されている。

 姫野氏は、その著書『昭和の犬』にも描かれているが、かなり特異な少女時
代を送った作家だ。
 父親が絶対君主として君臨する家庭で、母親もまたその父親に従順で、毎日
の生活は、この父親の抑圧の下、そこここ裕福であったにかかわらず、清貧的
ストイックな生活を強いられたらしい。

 そんな抑圧された少女時代に、あれこれ空想の世界に遊ぶしか楽しみのなか
った生活が、あの『ツ・イ・ラ・ク』における、女子中学生と若い教師との、
あり得ないほどに凄まじく赤裸々で生々しい性行為の描写に結実したのだ、と
思う。
 そして、その想像力の源となったのが、どうやら少女漫画であるらしい。

 姫野氏には、『ああ、懐かしの少女漫画』という著書もあるとおり、少女漫
画にはかなりの造詣があるようで、この短編集の中にも、少女時代に読んだ少
女漫画、あるいはそれらが掲載されていた雑誌をモチーフにしたものが何篇か
ある。

 姫野氏の厳格な父親にとって、少女漫画に限らず、漫画などは、教育上「よ
ろしくない」悪書に相違なく、ことに「少女フレンド」は、「不良が読む雑誌」
と決めつけて、一切買ってもらえなかったらしい。
 が、昭和30年代から40年代、たとえ買ってもらえなくとも、それを読む方法
は、いくらでもあったのである。
 友達に借りる、本屋で立ち読みをする、の他に、姫野氏にとって一番確実に
漫画雑誌を読む手段は、「散髪屋」だった。

 これ、同世代なので、よくわかる。
 当時の散髪屋さんはどこでも、順番待ちの客のために、少年サンデーやマガ
ジン、少女フレンドやマーガレットといった漫画雑誌を毎号買っては、待合の
椅子横に置いてくれていたのだ。
 わしもまた、小学生時代には、漫画は「悪」と決めつけられていて、唯一、
小学館の学年誌だけは買ってもらえたのだが、「サンデー」や「マガジン」は、
もっぱら散髪屋さんで読んでいた。

 散髪をしなくとも、「おっちゃん、漫画読ませてな」と断って、おとなしく
座って読んでいる分には、別段文句も言われなかった。
 姫野氏もまた、同様にして、滋賀県の片隅にある散髪屋さんの椅子で、毎週
のように少女雑誌を貪り読んでいたようだ。

 我が家では、わしが中学生のころには、漫画に対する考えもやや軟化してい
て、当時小学生だった妹などは、時々「少女フレンド」や「マーガレット」を
買ってもらっていた。

 これを、こっそり盗み読むのも、実はひそかな楽しみであった。

 散髪屋さん時代にも、人の眼を盗んでは、こっそり「少女フレンド」などを
読んでいたのだが、友達と一緒のときには、絶対にやらなかった。
 男が少女漫画を読むのは、とても恥ずかしいことでもあったのだ。

 ゴツゴツ武骨で荒っぽい少年漫画に比べて、華やかできれいな画面は、現実
離れしていて、結構のめり込んでいた。
 「ステディー」とか「ジンジャーエール」とか意味はわからずとも、なにや
らハイカラでおしゃれな雰囲気も楽しかった。

 『ベルサイユのばら』が宝塚で舞台化される、というニュースが衝撃をもっ
て伝えられたのが1974年。
 ちなみに、このときマスコミ各社は、「宝塚が劇画を舞台化」と報道したの
だが、当時、ストーリーのある長編マンガは、すべて「劇画」と括られていた
のである。

 漫画の中でも「傍系」でしかなかった少女漫画は、東京オリンピックを契機
とした「スポ根」もののヒットで、徐々に認知度を高めていたのだが、『ベル
ばら』の舞台化とヒットで、一気に中央に躍り出た。
 そして、その後の「花の24年組」の登場で、少女漫画は全盛期を迎えて、男
性の読者も徐々に獲得していく。
 80年代に入ると、もはや男が少女漫画を読んでいても、誰も違和感を覚えず、
それは、ごく普通、当たり前の光景となっていた。

 そんな少女漫画が、現在は徐々に萎みつつある。
 あれほど全盛を誇った少女マンガ誌も、今や数えるほどしか残っていない。
 ただいまの学生たちに、「かつて少女漫画は、3誌が週刊で発行されていた」
と言うと、一様に「信じられない」という顔をする。

 しかし、少女漫画の描き手たちは、今や少年漫画、青年漫画に進出し、かつ
ての少女漫画テイスト…緻密で奥深い心理描写や繊細でスタイリッシュな線…
を、青年漫画、少年漫画の世界に持ち込んで、独特の世界観の構築に成功して
いる。

 思うに、これからの漫画は、「少年」だの「青年」だとか「少女」だのとい
う区分けを取っ払い、ボーダーレスになっていくんじゃないか…いや、そうな
らないと、今後の漫画の発展は、とても望めないんじゃないか、なんだかそん
な気がする、6月ようやく年度初めの日々なのだった。


太郎吉野(たろう・よしの)
阪神タイガースお膝元在住。右投げ右打ち。趣味は途中下車、時々寝過ごし乗
り越し、最長不倒距離は三重県名張。
ちなみに「阪神タイガース」の「阪神」は、「兵庫県阪神地方」を指します。

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第123回 村上春樹と彼の父親のこと

 今月は村上春樹。たぶんとても売れている本なんだろうな、と思う。コアな
ファンが買っていると思う。
 わたしたちは、村上春樹、個人については、結構よく知っている。若い時に
何をしていたのか。何を考えていたのか、よく知っている。彼はいろいろな処
に自分自身のことを綴ったエッセーを書いているし、わたしたちは、それを読
む機会がたくさんある。村上春樹の家族のことはあまり知らない。

 そんな中、彼の父親のことを書いた本が出版された。

『猫を捨てる  父親について語るとき』(村上春樹 著)(文藝春秋)
(2020年4月25日)

 新型コロナウイルス感染症蔓延の真っただ中の出版である。
 本書は「文芸春秋」2019年6月号に載った記事を単行本にしている。月刊誌
に載せる長めのエッセーを単行本にしたわけだ。

 それにしても、本書の体裁。内容はともかく、一冊の本としての量が少ない
から大きさを新書版にして、紙も画用紙なみの厚紙を使っている。そして本文
中ところどころに高妍(ガオイェン)という台湾の若いイラストレーターの挿
絵が入っている。むろん文字は大きめ。上製本に巻きカバー付き。さすが天下
の村上春樹。村上春樹の文章だけでも充分であるが、さすがにそれだけだと色
気というか、ユーモアというか、そういうものが感じられず、村上春樹で一儲
けしたい、という出版社の強欲さが前面に出てしまう、残念な本になってしま
うのだが、これにイラストをつけることによって本書の価値がグーンと上がっ
たことは間違いない。この台湾の若いイラストレーターによるイラストが村上
春樹の孤独を表わしているようで、本の内容によく合っている。・・・気がす
る。本書の出版はひとえに編集者の勝利であろう。

 本書のハイライトは、お父さんの従軍経験の記述部分である。1917年(大正
6年)生まれのお父上は、ばっちり従軍体験者である。従軍したことによるさ
まざまな体験をこのお父上もあまり周囲に語らなかった。したがって、息子の
春樹さんは少ない情報から、お父上の軍歴を調べた。お父上は三度招集されて
おり、三度ともほんのちょっとしたきっかけで命拾いをしていた。特に二度目
の招集は、太平洋戦争直前の昭和16年(1941年)9月に招集されているが、わ
ずか2か月後の11月に招集解除になった。これはいまも大きな謎だという。村
上家の謎。お父上が招集解除にならず、そのまま従軍していたら、お父上の部
隊はフィリピン攻略隊としてマニラ方面へ派遣され、最終的には部隊壊滅して
いたという。そして三度目の招集は昭和20年(1945年)6月12日。この頃にな
ると既に日本軍は船も飛行機も戦車もないので、内地での勤務になり、終戦後
の10月に除隊となっている。

 詳細を語ることがなかった父親の足取りを息子は父親の死後、追体験をする
ように調査して記録した。

 息子の春樹氏は、“・・・かつての仲間の兵隊たちが遠くの南方の戦場で空
しく命を落としていったことは、父にとって大きな心の痛みとなり、切実な負
い目となったはずだ。・・・”と表現している。仲間を見捨てた人。一緒に死
ねなかった人。死に損なった人。生き永らえてしまった人。戦後の日本は、そ
んな帰還兵に満ち溢れてたのだ。

 こうして戦後となり、お父上は結婚し、春樹氏が生まれた。春樹氏は18歳ま
で関西で両親と一緒に過ごす。成長し大人になった春樹氏は、そこで父との諍
いがあったようだ。“心理的軋轢”と表現している。

 実はそのことを読者は一番知りたいと思っている。しかし、本書はそのこと
には触れていない。若い息子と軍歴のある頑固な父親がコミュニケーションを
欠き、引くに引けないほど険悪な状況になっていった、と想像するしかない。

 それでも命は父から子へ受け継がれ、連綿と続いている。“名もなき一滴”。
それでも“一滴なりの思いがあり、一滴の雨水の歴史があり、それを受け継い
でいくという責務がある”。
 結局、父親について考えた末に村上春樹氏は自己を大自然の中の一滴に例え
た。大きな何かと小さな自分自身を対比させたわけだ。


多呂さ(ひとりひとりがそれぞれコックピットにいるようなイメージ。距離が
近いのか遠いのか、よくわからず、でも一つ云えるのは、スキンシップはまっ
たくなくなりました)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ― 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510

・『支え合い・学び合いで育つ「わたし」』(エディット・パルク)
  http://web.kyoto-inet.or.jp/people/cogito/%8Fo%94%C5%88%C4%93%E0/%8Ex%82%A6%8D%87%82%A2%81E%8Aw%82%D1%8D%87%82%A2.html

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

 〒142-0041 東京都品川区戸越5-4-3 アズ品川ビル4階
       ビズナレッジ株式会社内 [書評]のメルマガ 献本 係

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンや楽天などのオンライン
 書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。つまり
 は当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願いしま
 す。(あまりにも短いものは書評とは呼べませんので、文字数の条件を設け
 ました。書評は500字以上でお願い致します。)

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 今回は発行日に発行しました!

 決して自慢出来ることではありませんがwww(あ)

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