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[書評]のメルマガ vol.710


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■■ [書評]のメルマガ                2020.10.10.発行
■■                              vol.710
■■ mailmagazine of book reviews           [とても不安 号]
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■コンテンツ
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★トピックス
→トピックス募集中です。

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→<129>横山光輝の「ゆるゆる」漫画道

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→111 まっすぐ考える

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
→第128回 幻視・・・レビー小体型認知症になって

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/SHOW−Z
→今回はお休みです

★献本読者書評のコーナー
→書評を書きたい!という方は、まだまだ募集中

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■トピックス
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■今回の献本読者書評のコーナー
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 この本の書評を書きたい!という皆様、詳細は巻末で!

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■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
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<129>横山光輝の「ゆるゆる」漫画道

 神戸市長田区の、とりわけJR新長田駅から鷹取駅にかけての地区は、1995年
の阪神大震災で壊滅的な被害を受けた。
 このあたりは元々戦前からの工業地帯で、とりわけ、地場産業であるゴム工
業と、そこから派生した製靴業が盛んな地区だった。
 JR新長田駅から海側にかけての一帯には、そんなゴム関連工場や製靴工場が
建ち並び、新長田駅周辺は、それらの工場労働者の歓楽街であり、駅と国道2
号線を中心として縦横に商店街が形成された、西神戸の中心となる繁華街でも
あった。

 そこを、大震災とそれに起因する火災が襲った。
 街は、一面焼け野原となり、中小の製靴工場やゴム工場は、壊滅的な被害を
受けた。
 おりから、中国や東南アジアはじめ、安い輸入品に押されていた中小の製靴
やゴム製品のメーカーは、街の復興が始まった後も、立ち直る体力すらなく、
廃業を余儀なくされるところが相次いだ。

 市が主導した復興事業で、新長田駅周辺には上層が住宅となった大規模な再
開発ビルがにょきにょきと出現し、震災の傷跡も、少なくともその表面からは、
消えた。
 震災前の、あちこちに路地が走る雑然とした街並みは、再開発によって高層
ビルと広い街路に生まれ変わった…が、そこに、西神戸随一とも言われた賑わ
いは、戻ってこなかった。

 震災で地場産業が衰退し、地元の労働人口が減ったならば、外から人を呼び
込もう、と、地元の商店街が寄り集い考えたのが、お隣の須磨区出身で、長田
にもなにかと縁の深い漫画家・横山光輝を前面に押し出しての「街おこし」。

 まずは、震災で空き地となった、新長田駅近くの空き地に「原寸大」の鉄人
28号を打ち建てた。
 それも、わざわざ堺の鉄工所に依頼して、「本物」と同じ“鋼鉄の身体”と
する念の入りよう。
 鉄人の立つ空き地は、「鉄人広場」と名付けられた。

 さらに、商店街のあちこちに横山光輝「三国志」のキャラクターを配し、
「三国志」絡みのイベントを、毎年開催することにした。
 神戸は、昔から在日華僑が多く住み、中央区に中華街もあり、そのほど近く
には「関帝廟」もあるから、「三国志」で「行ける」と思った…のかな?

 一連の「鉄人」及び「三国志」イベントがスタートしたのが2009年。
 駅近くにあって、電車からもよく見える「鉄人像」は、いまや新長田の名物
として定着している。
 …が、「三国志」の方は、イマイチ盛り上がりに欠けている…ような気が、
しないでも、ない。
 アリテーに言えば、ちょっとスベリ気味…?

 そんな長田の商店街を歩いていたら、空き店舗を利用して、横山光輝の漫画
を紹介するコーナー…っても、シャッターに複製原画のパネルが張り付けてあ
るだけなのだけど…があって、どれどれ、と覗いてみた。
 そこに展示されていたのは、横山作品の中でも「レア」な部類に属する自伝
的作品で、神戸の街が作中に描かれていることでも「レア」な、『まんが浪人』
という作品だった。

 展示されていたのは、その抜粋で数ページだったのだが、なかなか面白そう
な漫画で、全編を読みたくなり、帰ってからアマゾンを渉猟し、これの収録さ
れている単行本を見つけて注文した。
 『横山光輝 超絶レア・コレクション』(潮出版)というのが、それ。
 1970年代に、「高一コース」「中一時代」といった受験誌や、潮出版の「週
刊言論」などに掲載され、過去の単行本には未収録の作品を集めたアンソロジ
ー。
 問題の『まんが浪人』は、1974年に「別冊少年ジャンプ」に掲載された読み
切り作品で、巻末に収録されていた。

 タイトルの通り、漫画家・横山光輝が、漫画家として一本立ちするまでの
「浪人」時代を描いた自伝作品だ。
 漫画家の自伝的作品って、藤子不二雄Aの「まんが道」はじめ、数々あるの
だけど、その中にあって、この横山光輝『まんが浪人』ほど「ゆるゆる」の自
伝が、かつてあったろうか?

 神戸市須磨区に生まれた横山は、高校卒業後、大学へ行くという級友を尻目
に、「親父は安サラリーマン」なので「長男の俺には働いてもらいたいらしい」
から、「まあ、銀行の試験でも受けてみるか」と、地元の銀行(神戸銀行だっ
たらしい)に就職。
 級友から「マンガはどうする?」と訊かれているので、高校時代から漫画は
描いていたようだが、あくまで「あれは趣味や」と割り切っている。
 が、銀行勤めも「3ヶ月」で「俺にはあってない」と見切りをつけて退職。
以後は家でゴロゴロしながら、近所の貸本屋の本をすべて読みつくす読書三昧。

 そんな生活を母親から「世間体が悪い」と咎められ、知人の伝手を辿って堺
の自転車屋に再就職…するも、これまた長続きせず、神戸に帰って映画会社に
就職。
 神戸市内で映画館を何軒かチェーン展開するその会社で、映画のチラシを作
ったり、看板の原画を描く仕事は性に合ってたようで、ようやく腰が落ち着く。
 この会社の所在地が、新長田駅近くだったらしい。

 その間にも、「趣味」の漫画は描き続け、大阪の貸本出版社に持ち込んだ作
品が採用され、次作の依頼も受ける。
 その貸本が、東京の出版社・光文社「少女」の編集の目にとまり、そのまま
転載という形で、雑誌デビュー。
 少女向けのその作品は、結構評判となり、同じ光文社の「少年」からもお呼
びがかかり、かねてから温めていた『鉄人28号』の企画案を出すと、即採用。
 「少女」で連載が始まったときに、映画会社は退職していたが、『鉄人』の
連載を機に、東京と神戸を行き来する煩わしさを解消すべく、東京へ転居、以
後「現在に至る」…というのが、大筋。

 浪人時代の、貸本屋の本を読みつくすほどの読書量と、映画会社時代に、仕
事のために「内外の映画合わせて五百本」にのぼる映画を見たこと、が、後の
漫画家生活の大きな糧になっているのは、確かだろうが、この「自伝」、「何
がナンでも漫画家に!」という気張ったところがひとつもない。
 どころか、「なんとなく」就職し、「なんとなく」趣味で描いていた漫画が
採用され、「なんとなく」漫画家になってしまい、ただ「不便だから」との理
由で東京へ出る。
 拍子抜けすること夥しい「自伝」なのである。

 とはいえ、密かにその内に秘めたものは、あった、と思う。
 『鉄人28号』は、ロボットであるが、それ自体に「意思」というものはなく、
リモコンを操ってこれを操縦する人間によって、善悪いずれにもなり得る、と
いうのは、同じ「少年」に連載していた『鉄腕アトム』へのアンチテーゼだっ
たろうし、「少年サンデー」でのヒット作『伊賀の影丸』の主人公、少年忍者
であり幕府隠密…ということはつまり「体制側の走狗」に、白土三平『忍者武
芸帳』の主人公と同じ名を与えたのも、なんらかの意思表示だったに違いない。

 そもそも、自分の創り出す漫画に対しての自負や矜持というのがなければ、
あれほど大部の長編作品は、とうてい生み出せるものではない。
 が、そういった「熱さ」をあえて外に出さず、うちに秘めたまま、飄々淡々、
平然とふるまうのが、どうにも「神戸」らしい、と思うのだ。

 漫画家…に限らず、神戸出身の表現者には、こういう人が多い、とも思う。
 以前ここに取り上げた、伊藤重夫、西村ツチカ、あるいは西村しのぶといっ
た漫画家たちも、総じてこの傾向にある。
 佐々木マキ、村上春樹なんかもそうだ。

 外に対してはあくまで「ゆるゆる」で、「熱」は内側に秘めて人には見せな
い、のが「神戸流」…と言い切ってしまうのも「どうか?」とは思うが、「神
戸らしい」のは、確かだ。

 ところで、横山光輝・作『伊賀の影丸』は、わしらが小学生の頃、テレビで
も放映されていたのだけど、アニメじゃなくて、『ひょっこりひょうたん島』
と同じ「ひとみ座」が操る人形劇で放映されていたのだった。
 そのスポンサーが、「サンリツパン」だったのだが、袋の中に三つほどが連
なって入ってたあの四角いパン、今もあるんでしょうか?

太郎吉野(たろう・よしの)
阪神タイガースお膝元在住。右投げ右打ち。趣味は途中下車、時々寝過ごし乗
り越し、最長不倒距離は三重県名張。
ちなみに「阪神タイガース」の「阪神」は、「兵庫県阪神地方」を指します。

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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111 まっすぐ考える

『死について考える本』
 メリー=エレン・ウィルコックス 作 おおつかのりこ訳 あかね書房

 コロナ禍で、毎日何人が陽性で何人が亡くなったかの数字が報道されます。
 そして、コロナで亡くなった人数と比較するために他の死因での数も出ます。
 毎日、少なくない人が死んでいることを気づかされる日々。

 本書は「死」について真っ正面から書かれたものです。
 
 まずは人間の体について。
 人間の体は7000000000000000000000000000個(0は27個!)の原子でできてい
 るということ。
 そのほとんどが、水素、酸素、炭素、窒素の原子。
 これらの原子は地球が誕生してからずっと地球の中で再利用されていて、
 わたしたちの体の原子は、むかし恐竜の一部だったかもしれないし、セコイ
 アの巨木、あるいは小さな花だったかもしれない。

 ひゃあ!ってなりました。
 
 自分では見えない自分の体の中をのぞいてしまった感覚です。
 セコイアの巨木の原子が体の中にあるなら、それはちょっとおもしろいと思
 いませんか。

 命の鍵は酸素であり、死因が感染症であれ、その他の病気であれ、命が尽き
 るのはすべて酸素不足の結果だということ。

 死後、体がどんな変化を迎えるのかも丁寧に教えてくれます。
 また身近な人が亡くなったときの喪失についてもふれています。
 悲嘆(ひたん)におそわれた時、助けになるヒントも教えてくれます。

 悲嘆は死と向きあったときだけにおこるものではありません。
 「喪失からたちなおる」章で書かれていることは、日常におけるつらいとき
 の助けにもなります。

 日記を書くという助けも書かれていて納得です。
 今年に入り、コロナで息苦しい日々が続いたとき、家族で交換日記をつけた
 のですが、なかなかよかったです。
 話すのとはまた違うコミュニケーションは、日々が落ち着くまで続きました。

 生きていればいつか死を迎える、そのあたりまえのことを考える一冊。
 巻末の「死」を考えるブックリストは22冊もの本が紹介され、この本から次
 の本選びもサポートしています。

 読み終わってから「死」がいままでよりずっと立体的に近くに感じられまし
 た。これからも折に触れて読み返すことになりそうです。

 『セント・キルダの子』
 ベス・ウォーターズ 文・絵 原田勝訳 岩波書店

 2020年ケイト・グリーナウェイ賞最終候補作絵本。

 力強くあたたかいタッチの絵はどこかマックロスキーを思い起こしました。
 絵は版画の技法を用いて、手作業で制作した原画をもとにつくられています。
 このモノプリントという技法は、一度に一枚しか作れず、同じものは二度と
 作られないそうで、絵本で見ることができるすばらしい芸術作品です。

 描かれている島は、イギリス、スコットランドのはずれにあるセント・ギル
 ダ諸島。

 この絵本で描かれているのは、最後にこの島で暮らした子どものひとり、ノ
 ーマン・ジョンの暮らしです。

 外の世界から離れたこの小さな島で暮らす人たちは、互いに協力しあい、ま
 ずまず幸せな生活を営んでいました。この島では一度に180人以上の人が暮ら
 していたことはなく、1930年代には36人まで減っています。

 新型の蒸気船がイギリス本土から島にくるようになってからは、観光客がお
 とずれるようになり、その観光客からの情報により、島の若者は外の世界を
 知り離れていきます。この流れは日本の田舎に暮らす者としてよくわかる状
 況です。

 海に囲まれ、海鳥が多く自然の美しいこの島で、ノーマン・ジョンは子ども
 時代を幸福に過ごし、島を離れてからも、暮らしぶりについて周りに話をし
 ていたそうで、ノーマン・ジョンからお福分けいただいた読後感が残ります。


 『わにの なみだは うそなきなみだ』
      アンドレ・フランソワ 作 ふしみ みさを訳 ロクリン社


 ヨーロッパではうそなきのことを「わにのなみだ」というそうです。
 ご存知でしたか?

 さて、それではどうしてそうよばれるようになったのか。
 絵本ではその理由が描かれています。

 と、書くと何か知識が増えそうに思えるかもしれませんが、
 ちょっと違います。
 すっとぼけたおもしろみをただ楽しむ絵本なんです。

 すぐれたグラフィックデザイナーであるフランソワの描く絵は、肩に力の入
 っていない、のびやかな線の上に色が軽いタッチでのせられています。

 わにのなみだを流せたら人生楽しくいけそうだなって思えるかも?
 リラックスできる絵本です。


 最後にご紹介するのも絵本です。

 『どれも みーんな アントニオ!』

 スザンナ・マッティアンジェリ 作 マリアキアラ・ディ・ジョルジュ 絵
 ふくやまよしこ 訳 関口英子 監修

 前号でもご紹介した、いたばし国際絵本翻訳対象 最優秀翻訳大賞受賞作品、
 今回はイタリア語部門での作品です。

 発行は山烋・春陽堂書店 発売元は春陽堂書店。

 作、絵ともに日本では初めて紹介される絵本。表紙の黄色が目をひきます。
 短大生の娘も、ひとめみて「いいね、この表紙!」と気に入っていました。
 いろんな表情をしたアントニオがそこにいます。

 タイトルのとおり、アントニオはひとりなのだけど、パパとママの前では息
 子であり、祖父母の前では孫になる。学校では生徒になり、本を読んでいる
 ときは「本の虫」にもなる。

 ありとあらゆるアントニオが、のびやかな線と淡いきれいな発色で描かれて
 います。

 確かにひとりの子どもにはいろんな面があります。

 絵の具のパレットを開いたかのように、どのページのアントニオも個性的で
 かっこよくすてきでかわいい。

 子どもと一緒に読んだなのなら、あなたもアントニオのひとりだよと伝えた
 くなるかもしれません。

 大人が読んでも、自分の中のいろんな面が大事に思えてきます。


(林さかな)
会津若松在住。
「本の雑誌」新刊めったくたガイド海外文学担当(2020/12まで)
http://1day1book.strikingly.com/

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■「日記をつけるように本の紹介を書く」/多呂さ
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第128回 幻視・・・レビー小体型認知症になって

 認知症にもいろいろあって、レビー小体型認知症という種類の認知症は認知
症全体の20%を占めているという。このレビー小体型認知症の症状は、幻視を
視る、ということが大きな特徴らしい。このレビー小体型認知症と診断された
人が、自分が視た“幻視”を絵に描いて残している。その幻視の絵をもとに一
冊の本が上梓された。

『麒麟模様の馬を見た 目覚めは瞬間の幻視から』(著者:三橋 昭)
(監修者:小野賢二郎)
(発行:メディア・ケアプラス)(2020年8月30日 第1刷発行)

 本書は、レビー小体型認知症と診断を受けた人が描いた幻視を本にしたもの
であり、レビー小体型認知症についての解説とか幻視のメカニズムを説明する
ことなどは二の次になっている。どちらかと云えば、闘病日記のようなものだ
が、著者の日々の出来事は最小限に留められている。著者の視た幻視とその様
子、そして著者自身の感想が書かれた本なのだ。

 著者の三橋昭さんは、ある明け方(2018年11月下旬)、飼い猫のたまちゃん
がベッドサイドに来る気配を感じた。目を開けるとたまちゃんがこちらに歩い
てくる。そして手を伸ばしてたまちゃんをなでようとしたら、手がたまちゃん
の体にすっとはいってしまった。・・・・・これが幻視の始まりだった、との
こと。そしてその後翌月、ベッドで土偶の幻視を視た。たまちゃんの幻視のと
きは、誰にも云わず内緒にしていたが、土偶を視てさすがに医者の診察を受け
ることにして、家族にも幻視を視たことを伝えた。

 それからは、あれよあれよと生活が患者としてのそれにシフトして、大病院
に検査入院をし、診断結果が主治医から伝えられた。「レビー小体型認知症」。
それが2019年3月14日のこと。
 三橋さんは、自分の視た幻視の記録を取ろう、と考え、最初は文字だけの説
明だったが、途中から絵を描くようになった。絵の勉強をしていたわけではな
いが、三橋さんの絵は稚拙な中にもユーモアを感じる温かい絵が多い。そして
恐ろしい幻視もあるのだが、三橋さんがそれを絵にすると、ユーモラスなもの
を感じてしまう。歯をむいて向かってくる大きな魚、なんてけっこう怖いと思
うのだが、その様子を描いた絵は、ちょっとかわいい。

 2019年6月に三橋さんは戸建ての自宅から駅近マンションに引っ越した。階
段を使わなくても生活できる。レビー小体型認知症は幻視を視るだけが症状で
はなく、歩行障害など、行動の自由が衰えていく症状も徐々に出てくるのだ。

 この頃になると、三橋さんはほぼ毎日幻視を視る。本書の大部分はその幻視
の絵とそれに添えられた一言コメントである。

 花が多い。花は薔薇が多い。動物も多い。ふつうの動物もあるが、擬人化さ
れた動物もある。ナルニアの世界のようだ。カードトランプの絵は、不思議の
国のアリスに影響されているのだろうか。あと迷路のような枝珊瑚のような模
様もたくさん出てくる。数字や文字の羅列とか。ふだん見ているものを幻視で
視た、というわけではない。折りたたみ式洗濯ハンガーが幻視で出てきたが、
三橋家にはそれはない。どういう理由でその幻視を視るのか。それは謎。三橋
さんの幻視はまったくフィクションにしてファンタジーの世界が広がる。本書
の題名、『麒麟模様の馬を見た』も幻視。どんなものかと云えば、それは本書
の表紙になっている。

 幻視はほんの数秒で消えてしまうという。そして基本は墨一色。線で表現さ
れた絵になる。天然色で視た幻視は、立体的になっているという。幻視の三次
元の世界が広がる。

 三橋さんは幻視を楽しんでいるようだ。ある幻視を視たときに、この幻視は
カラーで視たかった、という感想を漏らす。三橋さんはほとんど大部分を私た
ちと一緒の世界で過ごしているが、一日のうちほんの数秒だけ、別の世界を体
験しているのだ。羨ましい。無理をしてふつうの人のフリをする必要はない。
社会におもねる必要もない。と三橋さんは云っている。三橋さんは楽しみつつ
慎重にご自分の病気と付き合っている。早期発見がよかった、とも書いている。

 三橋さんは、「未知の記憶」ということばに出会い霧が晴れたという。「未
知の記憶」。著述家の松岡正剛氏の著作物にあったことばで、三橋さんはこの
ことばに出会って、“あたり一面にもやっとしている重ったるい霧が一気に晴
れたかの思いがしました。”と表現している。デジャヴとは違うが、見たこと
はないけど、なんだか記憶に残っている、そういう記憶が「未知の記憶」とい
うことばに収斂されている。そういうことを気に留めて、本書のページをめく
ると、三橋さんの未知の記憶の断片を感じ、三橋さんと共に記憶の旅をしてい
るような気持ちになるのだ。

 幻視は、まぼろしではない。と三橋さんは断言している。確かに視えている
ものだ、と。楽しんでいるが、その代償はある。それは闘病である。三橋さん
は同じ症状で苦しんでいる患者やその家族の参考になれば、という気持ちでこ
の本をつくった。
 本書を読んで、私たちはレビー小体型認知症についてもう他人事ではなく、
身近な存在に気付かされるのであった。

 YouTubeで三橋さんの幻視イラストが見られる。
https://www.youtube.com/watch?v=xPsC2Ohp0f4
https://www.youtube.com/watch?v=Rh6JiH9uohA
 “幻視の日々”で検索。

多呂さ(コロナ禍の日常が“日常”なのだ、と思いたくないですが、いま私た
ちはこのコロナ禍のどのあたりにいるのでしょうか。半分くらい来たのでしょ
うか、それともまだほんの入り口に位置しているに過ぎないのでしょうか。そ
れを考えるととても不安になります)
 ブログ→ http://d.hatena.ne.jp/taro3643/

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■献本読者書評のコーナー(応募要項)
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 この本の書評を書きたい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡くだ
さい。

・渋谷昌三 著『人を傷つける話し方、 人に喜ばれる話し方』(WAC)
 http://web-wac.co.jp/book/bunko/280

・『ヒューマン ― 私たち人類の壮大な物語』(発売:紀伊國屋書店)
 http://www.human.ac.jp/cm/president.html#book3

・『たまご社長が教える運をつくる仕事術』(三楽舎)
 http://www.sanrakusha.jp/archives/1510

・『支え合い・学び合いで育つ「わたし」』(エディット・パルク)
  http://web.kyoto-inet.or.jp/people/cogito/%8Fo%94%C5%88%C4%93%E0/%8Ex%82%A6%8D%87%82%A2%81E%8Aw%82%D1%8D%87%82%A2.html

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

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 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
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 皆さんのご応募、お待ちしております。

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 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社の皆様より、献本を募ります。冊数は何冊でもOKです。下記
 まで御自由にお送り下さい。(著者の皆様からの直接の献本はご遠慮くださ
 い。かならず出版社からの献本をお願い致します。)

 〒142-0041 東京都品川区戸越5-4-3 アズ品川ビル4階
       ビズナレッジ株式会社内 [書評]のメルマガ 献本 係

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、文章執筆実績と熱意優先で選ばせていただきます。(過去に
 執筆された文章などございましたら、合わせて御連絡ください。)

3)発行委員会はいただいたメールの中から、ピックアップし、献本いただいた
 本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に応募数が満たない場合
 には、60日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンや楽天などのオンライン
 書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。つまり
 は当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願いしま
 す。(あまりにも短いものは書評とは呼べませんので、文字数の条件を設け
 ました。書評は500字以上でお願い致します。)

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

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■あとがき
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 ここのところ、コロナパニックは収まってきたように感じますが、逆に、漠
然とした不安のようなものが雰囲気として世の中を覆っているような気がしま
す。

 こういうときこそ地に足をつけ、自分の中の不安を味わいながら、目の前の
ことに集中することが重要なんだろうな、と思います。

 特に今、個人的に重いお仕事の締切を抱えてまして、そのためにも、自分に
も目の前の仕事に集中するように、言い聞かせております。(あ)

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