[書評]のメルマガ

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[書評]のメルマガ vol.436
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■■ [書評]のメルマガ   2009.12.11 発行

■         vol.436
■■  mailmagazine of book reviews [ これまでとこれから 号]
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[CONTENTS]------------------------------------------------------
★短期集中連載「なぜ、フリーペーパーなのか」
 →全国各地のフリーペーパー発行者の「生活と意見」をお聞きします。
★「関西古本女子だより」次田史季(ちょうちょぼっこ) 
 →大阪と神戸の「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「食の本つまみぐい」遠藤哲夫
 →〈大衆食堂の詩人〉エンテツが料理文化史の重要本を紹介します。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。

*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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■短期集中連載 なぜ、「フリーペーパー」なのか
(5・終)『セイカノート』のこと 竹内厚
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関西の情報誌『Lマガジン』の編集を長くしていた。長くといっても8年くらい。
昨年末に雑誌が廃刊になった。結構、突然の話だった。そして、会社を辞めた。

そんな中で声をかけてもらったのが、京都精華大学で3号連続のフリーペーパ
ーを出すという話。マンガ学科のある芸大として知られる精華大だが、中には人
文学科もあって、その認知度をもっと高めたいというのが学校側の希望だった。
だから、対象読者は受験を控えた高校2、3年生が中心。そういえば昔、Z会が
出してた雑誌、『Z-Kan』というのがあったことを思い出した。面白い執筆陣を集
めてたわりには、あっという間に休刊になった。あれは、高校生向けだったか、
大学生向けだったか。

大学案内の冊子はすでにある。だから、このフリーペーパーでは学校案内を繰
り返すことはしなくていい。1号ごとに「映画」「音楽」「本」の3つのテーマで
特集を作って、精華大のことは連載コラムというカタチで側面から紹介すること。
精華大出身の編集の方が連載ページを受け持ち、自分が特集面を担当する。およ
その枠組みは話を受けた時点でだいたい決まっていた。

『Lマガジン』がカルチャー誌だったから、「映画」でも「音楽」でも「本」でも、
記事にしたいようなことはいくらでもあった。ただ、それをどう高校生に届けるか。
これがこのフリーペーパーの一番のカギで最大の壁、そして面白いところだと思っ
た。とはいえ、それをいかに誌面化するかはかなり難しい。悩む間もなく、編集作
業ははじまって、結果それなりにも形になっていったのは、デザイナーの川名潤
(pri graphics)さんによるところがとても大きい。

ちなみに、川名さんとは細かいことはほとんど何も相談していない。川名さん
は『Lマガジン』のADをやってもらってた頃からのつきあいだったし、向こうは東
京でこっちは大阪という地理的事情もあった。でも何より、大学のフリーペーパー
という枠組みのなかで、お互いにやれる範囲でやりたいようにやるということだっ
たと思う。

高校生向けということで言えば、「映画」特集を『戦場でワルツを』のドキュメン
タリー話からはじめて、SPOTTED PRODUCTIONS、シマフィルムといった映画制作者へ
と抜けていく構成が良かったのか悪かったのか。「本」をテーマに、華恵、白根ゆた
んぽ、菊地成孔のインタビューから始めたのがどうだったか。間違いなく自分は好
きやけど、高校生の読者も好きだった?と大声で聞いてみたくなる。

それにしても改めて、なぜフリーペーパーなのかと問われると答えが見つからな
い。今年1年で、他にもいくつかのフリーペーパーの編集に関わったけど、フリペ
ゆえの主張は特にしてこなかった。結局、どれも依頼されての編集仕事だったから
かもしれない……と書き進めるほどに、あんまり自分が何も考えてないことに気づ
いてガックリする。もちろん、編集はしたけど持ち場でベストを尽くしたという感じ。
雇われサラリーマン根性が抜けてないのかもしれない。

何かしらのお題に対して、硬軟、メジャー/マイナー、その他いろいろなバラン
スと個人的嗜好をうまく按配しながら情報を切りそろえて形にしていくこと。長年
やってきただけに、個人的にはこの一連の流れにあまり迷いはない。それでも、せ
っかく情報誌を辞めたから違う方法論で編集をしたいという思い、もしかすると強
迫観念もなかなか根強い。単行本の編集をしたり、東京の雑誌を手伝ったり、場づ
くりの企画に顔を出したりしながらの、いわば編集モラトリアム。自分ごとながら、
これがなかなかメンドくさい。でも、実際のところはそのうちなるようになりそう
な気がして、ぼんやりと過ごしている。今はただ、もくもくと様々な編集機会を逃
さず試すのみだ。

最後に。3号だけの予定だった『セイカノート』は来年3月にまた違うかたちで
出すことになるかも。改めて考えると、大学が出すフリーペーパーってもっともっ
と可能性があるはずで(遅い!)、チャンスがあればさらに変テコな、でも高校生に
ラブずっきゅんなやつを作ります。ではまたー。

〈たけうち・あつし〉今はRe:Sというところに所属しながら、Re:Sの仕事をした
り、個人で仕事を受けたり。ちなみに、Re:Sにはかなりはっきりしたメッセージを
持った同世代の編集者がいます。対照的です。
「Re:S」http://re-s.jp/home/

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■関西古本女子だより  次田史季
(28・最終回)10年目の初旅行
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来年4月に10年めに入ろうとしている貸本喫茶ちょうちょぼっこですが、いま
まで4人で旅行をしたことがありませんでした。それが、今回なんとなく話がま
とまり、10月24、25日と初旅行に行くことになりました。大阪からと東京から
合流なので、間をとって愛知県にしようということに決まりました。

宿を決めるのは、ご飯を食べに行くところを決めるときと同じように、ネット
であそこがいいここはどうと、それぞれ宿の候補を挙げることから始まります。
私はいつもネットのやりとりには出遅れて、いつの間にか決まっていたというこ
ともしばしばなのです。今回は福島さんに宿の予約をお任せし、全部手配しても
らいました。私たち3人に任せると、いつになるか分からないと思ったのかどう
かはわかりませんが。愛知県渥美半島にある猫ちゃんのいるちょっといいお宿、
角上楼にお泊まりすることになりました。

さて、当日。大阪組は3人で新大阪で待ち合わせ。会った瞬間、私の荷物に驚
く2人。真治さんの荷物は、普段の私の荷物よりも少なそう!と私も違う意味で
驚きました。私はいつもなぜか荷物が多くなってしまうのですが、今回はいいお
宿に泊まるとわかっているのになぜか不安になり、バスタオルを2枚も入れてし
まったのでした。

そして3人は新幹線で名古屋まで。名古屋からは名鉄で豊橋まで。新幹線で直
接豊橋まで行った方がらくちんで早そうですが、郷田さんの調査の結果、安い方
法で行くことに。安い切符は郷田さんが3人分用意してくれました。東京からの
福島さんとは豊橋で合流。福島さんも私の荷物に驚いていました。確かに、パソ
コンを持ってきた福島さんの荷物とどっこいどっこいの重さだったので、無理も
ないでしょう。

お昼前に豊橋に着いたので、少し散策しながら乳母車やさんなどをひやかしつ
つ、とうふ田楽と菜めしのお店へ。たくさん食べて満腹に。お店の前で写真など
撮ってみました。甘味処が近くにあったのでのぞいてみましたが、おなかがいっ
ぱいのため今回は断念。ちくわやさんも気になりましたが、帰りにまた来ましょ
うということで豊橋としばしお別れ。

バスに乗って早速宿へ。一番後ろの席で熟睡。少々雨が降っておりました。着
いたら、まず喫茶風のバーへ通され、お茶とお菓子をいただきました。置いてあ
った雑誌などを眺めつつゆっくりした後、どきどきしながらいよいよお部屋へ。
木造の本館から、中庭を通った別館にありました。洋室と和室と螺旋階段の上に
はベッドルームとシャワールームとお風呂が。

真治さんは部屋へついたとたん、ソファーへ横になり、福島さんはお庭を見に
外へ。郷田さんと私はカメラを持って部屋中を探検。ソファーの上の真治さんと
外にいる福島さんもカメラに収めました。夕飯前にお風呂に入りましょうという
ことで、真治さんは檜のお風呂へ、あとの三人は露天風呂へ。温泉ではなかった
ので何度も入らなくてもいいかと言っていたのに、夕方、夜、朝と違うお風呂に
入り結構楽しみました。

お風呂上がりに、また喫茶バーへ寄り、福島さんと郷田さんはビール、真治さ
んと私はジュースをいただきながら宿の雑誌を熟読&おしゃべり。そのとき、お
つまみを出していただいたのですが、福島さんは、その半分を囲炉裏風のテーブ
ルの灰の中に落っことしてしまいました。ちょうちょぼっこの4人の中で一番し
っかりしていて落ち着いているイメージの福島さんですが、あわてんぼうの一面
が見えたひとときでした。

さて、いよいよ夕飯。廊下を歩いていたら、浴衣を着せてあげると呼び止められ
ました。せっかくなので着せてもらうことに。それぞれ好きな柄を選ぶと、80歳を
過ぎているという大女将がきびきびとした手つきで着付けてくれました。浴衣を着
たのは久しぶりでうれしく、かしこまったような気持ちになりましたが、おいしい
料理をたくさん食べている間にきつくなって少しゆるめ、部屋に帰った瞬間みんな
脱いでしまったのはちょっともったいなかったです。

部屋に帰ってからは、だらだらおしゃべり。何をしゃべったんだか、いつもと同
じようなこと。

ベッドが2つ、お布団が2つだったので、どこに誰が寝るかをジャンケンで決め
ました。郷田さん、次田、福島さん、真治さんの順に勝ち、それぞれ布団、ベッド、
ベッド、布団を選択。真治さんだけがご不満だった様子。

朝起きると、みんないなくて私だけおいてけぼり。私以外の3人は、少し早く起
きてお風呂に行っていたのでした。朝食まであまり時間もないので、部屋のガラス
張りのシャワールームでシャワーを浴びて朝食へ。久々に豪華な朝食。毎朝こんな
んだったらいいのにねぇと言いながら。

猫好きな2人は、宿の猫とふれあう。夜は福島さんがだっこして、朝は真治さん
が猫と見つめあう。

さて、名残惜しくも宿をあとにし、宿のバスで近くの海岸まで送ってもらいま
した。海を見て波を見て、貝や石を拾い、おみやげに。そのあと道々写真を撮り
ながら、灯台へ。

蜘蛛や蝶がたくさんいる道を散歩しながら、福島さん念願の漁港へ。福島さん
が、おっちゃんにいろいろ聞いたりして、えらく丹念に魚を見ているなぁと思って
いたら、まさかの購入!小さい魚入りの発泡スチロールの箱をぶら下げて歩く福島
さんは、今まで以上に格段に足どり軽く、かなりうれしそう。るんるんといって差
し支えない様子。カメラを向けると、とったどーのポーズをしてくれました。

それぞれお土産を買って、またバスに揺られ、電車に揺られ豊橋まで戻ってき
ました。そしたら事件が! 福島さんのあんなに喜んでいたお魚がない! 電車に
乗ったとき、福島さんが網棚の上に魚の荷物を置いた瞬間、福島さん以外の3人み
んなで絶対忘れるよと言っていたのでした。忘れるからやめた方がいいと冗談交じ
りに言っていたのが、ほんとに忘れるとは。降りる20分前くらいから、お手洗いに
行きたいというのに集中していたからかもしれません。真治さんはバスにストールを
忘れ、私はカメラのキャップを落としたので、バスに残っていないか確かめてもら
っているときのできごとでした。ふいに気づいた福島さんは、急いで駅まで逆戻り
し、まもなく折り返す電車の中から間一髪でお魚を取り戻したのでした。真治さん
と私の忘れ物と落し物も無事見つかり、その待ち時間が功を奏し、お魚は無事福島
さんの手もとに返ってきて一件落着。

ネフのおもちゃで遊んでいたとか言われたりしている福島さんですが、おつまみ
を灰の中に落としたり、大事な魚を置いてきたり、あわてんぼうで超うっかりやさ
んが露になった旅行でした。

ちなみに真治さんは、豊橋に戻って、一件落着のあと遅いお昼代わりをとりに
行った、「三愛」というホットケーキ屋さんで旅行一の笑顔を見せておりました。私
も真治さんと同じ、マロンクリームシャンティ(ホットケーキを使った三愛風モンブ
ラン)をいただいたのですが、勝手に顔がにやける味でした。福島さんが頼んだラズ
ベリーも、郷田さんが頼んだシンプルなバターもとてもおいしそうでした。

最後にブックオフに寄って、豊橋をあとにしました。

〈つぎた ふみき〉ちょうちょぼっこメンバー。マンガ読書会の発表のひどさにい
つもあきれられています。先日、元お向かいさんだったおまめこと柴田尚美さんの豆
本講座をちょうちょぼっこでひらきました。また春頃にできたらなぁと思っています。

貸本喫茶ちょうちょぼっこ
〒550-0014 大阪市西区北堀江1-14-21 第1北堀江ビル402
http://www.geocities.co.jp/chochobocko/
open 第1〜3週末 金18:30〜21:00、土日 13:00〜20:00

★前野健太さんがちょうちょぼっこでライブをしてくれることに!
「貸本喫茶の夜」(企画:夏のあくび)
12月20日(日)@大阪北堀江 貸本喫茶ちょうちょぼっこ
出演:前野健太
開場18:30/開演19:00 (21時頃終演予定)
チケット代
ご予約1,500円/当日2,000円(共に別途+1drink代500円要)
※限定20名l(先着順)となります。
※ご来場の皆様に特製「ちょうちょぼっこマッチ」をプレゼントいたします。

<チケットのご予約>
natsuakubi@gmail.com
宛にメールをお送りください。
その際、件名に「12月20日ライブ予約」、本文に「お名前・ご予約人数・電話番
号又はメールアドレス」をご記入ください。こちらからのメールの返信を もちまし
てご予約完了となります。
※万が一、3日以内に返信がない場合はお手数ですが再度メールをお送りください。

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■食の本つまみぐい  遠藤哲夫
(35・最終回)ごまんとある料理の本を無用にする一冊
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玉村豊男『料理の四面体』鎌倉書房、1980年

人類の歴史のなかでも料理の歴史は最も古いほうだろう。少なくとも日本の文
学の歴史と比べたら、かなり古い。そして日本の文学は、ながいあいだ料理の歴
史について無関心だった。いまでも大勢は、そうである。だけど、その空白を、
この一冊が埋めている。ほかの食べ物や料理の本など、まったく無価値で退屈な
存在にしてしまう力がある。のみならず、言葉と論理をもって、ものごとの本質
や原理に迫る愉しみを教えてくれる。

『鶏料理三百六十五日』といった本を「全部丸暗記したとしても、三百六十五種
類の料理しかつくれないのである。/イッパツで料理の一般的原理を発見し、そ
れを知ったらあとは糸を紡ぐように引けば引くだけ次から次へと料理のレパート
リーが無限に出てくる……というような方法がないものだろうか」と考えた著者
は、大胆不敵な試みをした。つまり、何をどう食べるかの生活の技術としての料
理を、四面体におさめてみることによって、どんな素材でも、そこにあてはめる
と、たちまちその料理法のいくつかを思いつくという料理の構造を見つけ出した。

著者はフランスに留学し、世界各地をほっつき歩いた。本書の話は、アルジェリ
アで出合った「アルジェリア式羊肉シチュー」から始まる。「世界の国々を旅行して、
いろいろなものを食べてみると」まったく違った姿の料理に最初はおどろくが、そ
のうち「材料や調味料は異なるとはいえ、料理の方法じたいにはそう変わりないの
ではないか」と気づいたこと。それから、四面体にはフランス構造主義の影響、か
なり直接的にレヴィ=ストロースからのヒラメキがみられる。

とかく日本人の枝葉末節の知識を自慢しあう習慣のなかでは、フライとてんぷら
とトンカツと目玉焼きとチャーハンとやきめしに共通する原理とちがいなどは見過
ごされがちだ。しかし、あじの日干しもローストビーフもおなじ料理だし、刺身は
サラダなのであると著者は語る。その論理と言葉のつかいかたは、料理の愉しみだ
けでなく文章を読み考える愉しみも広げてくれる。登場する各国の料理も、手に入
る材料でつくってみたくなる。一冊で、いろいろにおいしい。

この連載は、これが最後。連載を始めるときに、最初は江原恵さんの『庖丁文化
論』で、最後は本書で締めくくろうと決めていた。日本の料理の歴史のなかで、も
ちろん万全ではないが、「画期的」といえるのは、この2冊だろうと思う。しかし、
どちらも古本でしか手に入らない。料理は「実用」か「趣味」そして「くえればよ
い」「うまければよい」から成長のない文化なのかも知れない。

〈えんどう・てつお〉ありがとうございました。ひきつづき、よろしくお願い致し
ます。Webサイト「小学館ブックピープル」で、料理研究家・瀬尾幸子さんの料理
に文章をそえる「わははめし」連載中。毎月1日ごろ更新で、5回まで掲載中。
来春、書籍化の予定。
http://bp.shogakukan.co.jp/wahahameshi/

「ザ大衆食」http://homepage2.nifty.com/entetsu/

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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(79・最終回)二日酔いにて役に立たず
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『酒とつまみ』12号が出てしばらくは、年末へ向けての雑誌の仕事やら、単行本
の仕事やらで、忙しく過ごした。11月も半ばになって、やっとひと息ついたのだが、
その頃には、12号の営業仕事は、すでに落ち着いていた。

 そして12月初旬。連載をしてくださっている松崎菊也さん、すわ親治さん、石倉
直樹さんがそろって舞台に立つ『はだかの王様』というライブが開催された。毎回、
風刺と音楽とで楽しませてくれるライブだが、私たち『酒とつまみ』は、最新号が
出れば必ず、会場で売らせてもらってきた。

 12号の完成が、前回の9月の公演に間に合わなかったため、この会場で売らせて
いただくのも、ずいぶんと久しぶりのことになる。元気に売り子をしよう。と、当
初は思っていた。

 でも、できなかった。理由は酒だ。前日、冷たい雨が降る日比谷を歩いていて、
ああ、飲みてえ、と思ったのが午後4時半。それから4軒で、上がりが朝5時、と
いうことになってしまった。

 途中、酔っているせいか、なかなかうまく帰れない事情もあって、帰宅は7時を
過ぎていたか。少し寝て、すぐに起きる。ライブの出演者やスタッフの方たちに差
し上げる酒を買ってから会場に向かわなくてはいけない。

 駅前の大きなスーパーで、けっこう上等なブレンデッドのスコッチを買う。それ
を肩から下げるカバンに入れ、電車に乗り、膝の上にカバンを置いて、ああ、これ
でなんとか間に合うなとため息をついたら、両サイドに座っている人が同時に私を
見た。酒臭いんだ。

 ああ、これはまずいなあ。できるだけ息をしないようにするが、ああいうときは、
なんというか、体全体がアルコールを発散しているみたいだ(たぶん、間違いない)。
で、とても申し訳ないのだが、ひとまずは乗っていくよりないので、心の中でゴメ
ンゴメンと謝りながら電車を乗り継ぎ、会場に着いた。

 しかし、酔いはいよいよぶり返す感じなのだ。まったく、使い物にならない。昼
の公演であるから、お客さんで1杯召し上がってから来ている人というには、想定
にしくい。つまり、ちょっと飲んだだけですぐにそれとわかる会場に、アルコール
漬けみたいな人間がひとり入り混むのだから、これは問題だ。私はできるだけ、売
り場を離れていなければならない。

 なんのために来たのか、まるでわからない。私は、どうも、いつも使い物になら
ない。

 それでも、WクンもSさんも一緒だから、販売自体は順調で、その日も、33冊も売
れた。嬉しいなあ、と思う。いつものとこながら、これは本当に嬉しいのだ。

 そして打ち上げ。赤坂の居酒屋で出演者の方々、プロデューサー、スタッフ、み
なさんと同席をさせていただく。どうにも調子が悪くて最初の生ビールを吐きそう
になるのだが、2杯めで元気になり、そのあとは芋焼酎をお湯割りでビシビシと飲む。

 用事のある人から先に、三々五々、帰っていく。最後には、主催者のお二人と松崎
さん、私とWクンが残った。もう、だいぶ、飲んでいる。でも、いつまでも酒が飲め
るような気もしてくる。私も、遠慮なしに喋る。

 酒とつまみを始めてからの7年。いや、創刊の準備をしていた頃から数えるとちょ
うど8年、ずいぶん飲んだなあ……。松崎さんは、まだ酒つまが影も形もなく、ある
のは話だけ、こんなバカをやろうかと思います、という決心しかなかったときに、「そ
の話、乗った」と言ってくださったのだった。

 それ以来の連載。創刊2号には、すわさんを紹介してくださり、後に石倉さんにも
イラストを描いていただけるようにしていただいた。こんな私に、ずいぶんと長く、
お付き合いをいただいている。

 生キャベツに細切りの塩コブをふりかけ、ごま油のドレッシングをかけただけの1
品が、ばかにうまい。丼ばち1杯で180円。ますます、うまい、と思う。

 とにもかくにも、今日という日までやってくることができた。それで良しとして飲も
う。そんな気分になってくれば、腹の中に、ぽっと火が点いたような温かさを感じる。

「毎号、創刊号のつもりでつくったらいいよ」
 松崎さんが、私に言ったことばだ。できたばかりの創刊号を肴に1杯飲んでいただい
たときだった。「これ、ひょっとすると、相当、おもしろいことになるぞ」。
そうもおっしゃった。

 私はまた、思い出す。そして、『酒とつまみ』を始めたからこそ、この出会いがある
のだと、思いを新たにする。

 たくさん、たくさん、飲んだ。打ち合わせと言って飲み、取材と言って飲み、入稿
祝い、校了祝い、刊行祝いと言っては飲み、営業がうまくいけば書店さんの近くで
飲み、『酒つま』を置いてくださるバーへ納品に行けば当然そこで飲み、深夜、自宅
でひとり、読み返しては、また、飲んだ。それが、とても楽しかった。

 今後も、そんな日々が続いていくことだろう。

〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集長。
長い間ありがとうございました。今回で、この連載は終了します。79回、書かせてい
ただきました。少し経ったら、じっくりと読み返してみたいと思います。『酒とつまみ』
13号の制作も開始しています。ぜひ、ご期待ください。最後になりますが、編集の南
陀楼綾繁さんに、このような場へお誘いいただきましたこと、感謝いたします。http://www.saketsuma.com

ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(89・最終回)解放出版社の巻 大飯食らいだけが取り柄のうどの大木ビル
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エロ・銭・覗きを3本柱とする『週刊新潮』の発行元が、”新潮社”と名乗
るのも厚顔の極みだが、社名の臆面のなさという意味では、この社の右に出る
版元はない。”解放出版社”様だ(千代田区神田神保町1ー9 稲垣ビル8階)。
ここは東京営業所で、本社は大阪市浪速区の”大阪人権センター”にあると
(これまた御大層な箱物名だ。名が体を表わしてりゃいいけど)。

 東京営業所のあるのは、要するに神保町交差点。九段方面からの靖国通りと、
後楽園側からの白山通りが交差する、角地の稲垣ビルに(ビルは9階建てで、
最上階に大家が)。「岩波ホール」前の信号に立ち、明大方面に渡ろうとすると、
なぜか8階なのに、解放出版社の白地に紺文字の看板が、嫌でも眼に飛び込む。
むかつく社名だ。水戸黄門の印籠のように、有無を言わせない押し付けがまし
さが爆発。「俺は絶対に解放されたかねんだ、糞馬鹿野郎!!」金のない日は
(1年中という事だが…)、常に心中で看板に怒鳴り返している。看板目撃者の
50人に1人はそう思ってるはずだ(第3者委員会で決定された訳ではなく、筆者
の直感)。

 実は筆者、稲垣ビルの1〜2階は、「廣文館書店」と長年勘違い。隣り合わせで
ビルの色こそ似てるが、全く別物だった(付近で40年近く生活してるのに、初老
開きめくらですいません!)。両物件共に、下手なペンキ屋が値切られて塗った感
じの白いビル(でもかなり色褪せてて、黄を10%は混ぜた風に見える)。特に稲
垣ビルの芸のない造りは付近でも目立ち、大飯食らいだけが取り柄のうどの大木
野郎が、居眠りしつつ立ちすくんでるよう(ひいき目に見て、栃木県の3流私大の
体育館)。

 解放出版社に落ち度がある訳ではないが、やはり大義が売りの版元は、入居物
件の趣味や立地条件、交通量等を考えた方がいい。知らないうちに、進歩的で善
良な市民を敵にしてるかも(オメ−だけだっつーの!!)。目立つ場所にある割に、
大味感溢れる建物の外見がマイナスに作用してか、現在6〜7階は空き部屋。関
係者じゃないけど、中にも侵入(日本じゃこれでパクられ、最高裁で有罪になる
の忘れてたよ。今井功最高裁判事よ、君はハレンチ裁判官の鏡として、日本司法
史に刻まれる)。

 外見と同じレベルで黄ばんでた。場所柄、排気ガスのせい?省エネ主義者ゆえに、
エレベーターを無視、狭い階段をテクテク。粋がるもんじゃないっすね。6階で息
切れ。解放出版社の玄関も拝見せずにトボトボと、「このビルに共同トイレはない」
との警告のある、1階まで戻る。階段横の窓ガラスとか、もっときれいに磨いと
いてくれると、外の景色楽しみながら、8階までたどり着けたのに(うるせえ!)。

『人権反射鏡』『人権50話』『人権のまちづくりガイドブック』『わたしの人権教室』
『いのち・愛・人権』『人権百話』『「人権の宝島」冒険』『ちょっと待て!人権がある』
『人権教育の未来』…同版元の2010年版図書目録の、最初の数ページ開くだけでこ
れだ。さぞや聖人君子揃いの版元なんだろうよ。「人権粗茶に人権まんじゅう人権
ようじも!」と、俗人は突っ込みたくなるな、恥ずかしくって(あ〜あ、しがねえ
エロ本屋で本当に良かったヨ)。

 内澤旬子の『世界屠畜紀行』以外は、ここの本は持ってない。これからもだろう。
差別撲滅に異論はないが(実現は無理だろうが目標としては正しい)、もう少し日本
語を大切にしろよ。稲垣ビルの外壁の色同様、この版元の図書目録に掲載された”大
義後”は、片っ端から色褪せてて悲しい。

〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)、『出版業界最底辺日記 エロ漫
画編集者「嫌われ者の記」』(ちくま文庫)、『東京の暴れん坊 俺が踏みつけ
た映画・古本・エロ漫画』(右文書院)。『出版奈落の断末魔 エロ漫画の黄
金時代』なる恥ずかしいタイトルとカバーの新刊が、アストラから好評発売中。
なお、この連載に関しての批判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(た
だし、謝るとは限りません)。
mangaya@air.linkclub.or.jp
http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/

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[書評]のメルマガ vol.432
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■         vol.432
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[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。週末は広島とわめぞへ。
★短期集中連載「なぜ、フリーペーパーなのか」
 →全国各地のフリーペーパー発行者の「生活と意見」をお聞きします。
★「関西古本女子だより」頓花恵(トンカ書店) 
 →大阪と神戸の「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「音を探してページをめくる」貴島公
 →音楽サイト「モノノフォン」の主が、音とテキストの関係を考察する。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。
*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
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★今週末は広島で本イベント
 11月7日(土)、8日(日)の2日間は、広島で「お好み本ひろしま2009」
が開催。一箱古本市、路面電車イベント、北尾トロトーク、湊かなえトークなど
盛りだくさんの内容です。南陀楼は6日(金)19時に前夜祭として行なわれる
倉敷〈蟲文庫〉トークと、7、8日両日の岡崎武志さんとのトークに出演します。
もちろん、一箱古本市でも本を売ってます。広島のみなさま、ぜひおいで下さい。
http://www.bookrainbow.com/okonomi/

★今年最後の「外市」
第17回 古書往来座 外市 〜軒下の古本・雑貨縁日〜
南池袋・古書往来座の外壁にズラリ3000冊の古本から雑貨、楽しいガラクタ
まで。敷居の低い、家族で楽しめる縁日気分の古本市です。2009年度、最後
の開催になります。

2009年11月7日(土)〜8日(日) 
雨天決行(一部の棚などは店内に移動します。)
7日⇒11:00ごろ〜19:00(往来座も同様)
8日⇒12:00〜18:00(往来座も同様)

古書往来座 外スペース
東京都豊島区南池袋3丁目8-1ニックハイム南池袋1階
http://www.kosho.ne.jp/~ouraiza/

メインゲスト
BOOK ONN(オンライン)http://www.bookonn.com/
文壇高円寺(荻原魚雷)いつもより出品量を増やして参戦!!
http://gyorai.blogspot.com/

なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

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■短期集中連載 なぜ、「フリーペーパー」なのか
(5)やむにやまれず動いてみた。 上原 敏(『フリーマガジンSCHOP』)
----------------------------------------------------
 みなさん、こんにちは。名古屋でSCHOP(スコップ)というフリーマガジン
を発行している上原といいます。「あなたの知らない名古屋を掘り起こす」をテ
ーマに、2005年2月に家内制手工業で開業後、一部工場制手工業に移行して早
3年。いろんなご縁により、今回この場に登場させていただくことと相成りま
した。

「なぜ、フリーペーパーなのか」

と、びゅーんと飛んできた玉をカキーンと気持ちよく振りぬきたいと思いつつ、
キーボードの前ではや5分。

「この連載をお読みになっている皆さんにしてみれば、お馴染みの背景、理由
ではないのかね?」という疑心暗鬼に包まれて、そのまま、背後で鳴ってる
13th floor elevatorsの2nd『EASTER EVERYWHERE』1曲目「SLIP INSIDE THIS
HOUSE」に意識をうずめそうに。とはいえ、第三の眼は未だ開かず。そう、自分の
中には「疑心暗鬼」という忍び寄るささやきこそが、まず「フリー」という選択
になったのだと思えます。それは、『ORDINARY FUNERAL』の大嶋さんの語る「気軽
さ」に直結する心的葛藤だと思いますが、「これで500円もとるの?」って認識
の裏返しで、モノの価値と対価のバランスについて、「そのモノにふさわしい価値」
「いや、そんなものあるの?」って揺らいでるためにとりあえず棚上げしちゃっ
たってのが真相なんでしょう。自腹切ってるのに、この有様。

 ただ、自分にとって「フリーかどうか」という点よりもむしろ、「この眼前の面
白い状況、現象がただ忘却されていくのを見過ごすことができない!」って焦燥感
の方が重要だったし、幸いなことに、ハードコアちっくに筆を構えて「何者かにな
る」なんて強い自意識も溶解し、多少、衝動にスーサイドする自分を傍観できる齢
も重ねてしまって、わずかの小金を稼ぎ出す身として「棚上げ、上等!」って軽く
いえちゃった、侘しさもあるでしょうね。

 名古屋って、日本の製造業の基盤地域で、生活にもコストパフォーマンスを重
視する傾向があるので、オルタナティブな文化を育みにくいエリアではあると感
じるんです。でも、その環境そのものがクリエイションには相応のストレスを与え、
リアクションを期待しない孤高のアーティストが生み出され、結果的に秘匿され
てきた歴史もあると思います。

 とはいえ、関西にはエルマガジンがあり、全国ベースでもマガジンハウスのrelax
なんて素敵な雑誌があって、名古屋には、ない。そういう土地柄ですからなくて当
たり前なんですけど、ない。

「え? 何でないの?」って思って数年を過ぎると「まずいでしょー」ってなりま
せん? 名古屋のオルタナティブな文化をかなりバックアップしている新栄今池界
隈の人々も高齢化が進んでる(まだまだ元気過ぎるくらい元気ですが)のに、明ら
かに団塊ジュニア世代以降の支持力や発信力が落ちてる。そんなわけで、疑心暗鬼
と仲良くするのは一旦幕引きにして、スコップが世に出ることになったワケです。

 あ、それじゃ「なぜ、ペーパー?」に答えてないですね。簡単に言うと、フェチで
あり、メディアの差別化だと思います。編集された1冊の本には、ディテールがあり
物語があり質感があり体験がある。だから、「残すべき記録や景色は紙で。それ以外は
WEBで。」と使い分けています。

 スコップは現在、主に4人のスタッフで製作していて、皆、本業をやりつつ手伝
うスタイルです。企画・取材・編集・営業、企画補助、表紙デザイン、レイアウト
デザイン・WEB運営という分業体制で「季刊」を標榜していますが、夢中で遊んで
ると陽が暮れちゃった子供みたいに日々が過ぎ行き、今年は1冊しか出せてないと
いう状況です。(南陀楼さんにも執筆頂いたミニコミ『そうぞうしい本』発行、トラ
ッシュカルチャーマガジン『TRASH-UP』最新号の名古屋インディーズミュージック
に関する試論「オルタナゴヤ 〜まだ暮れない黄昏とまだ明けきらない夜の間で〜」
の執筆など、いろいろとご縁ご協力頂きました。すいませんと同時にありがとうご
ざいます。)

 発行部数は、3000部。開始当初は、反響は正直言ってなかったですね。フリーペ
ーパーって、読者を選ばないけれども、読者に金銭的負担を強いない分、読み捨て
られやすいですから。でも、長く続けていると、取材や配布を通じて得られる交流
や縁で徐々に反響が連鎖していく。紙で発行しているから、手から手へ渡ることも
あって、意外な人が読んでいたりで、勝手に旅してくれる。これは利点だと思います。
 
 さすがに4年も経過すると、疑心暗鬼が「おまっとさん!」とばかりに顔を出す
ので、奴の裏をかきつつ、真剣に遊んでいきたいものです。「名古屋って何か面白い
ことないの?」って思ったら、「あ、そうそう」とうちのWEBをチラッと覗いてみて
もらえると嬉しいです。地方も案外なかなかですよ。

〈うえはら・さとし〉
平日夜間休日限定編集者兼ライター。京都出身。名古屋に転居後、2005年フリーマ
ガジンSCHOP(スコップ)を創刊。本を通して街で遊ぶイベント『BOOKMARK NAGOYA』
の実行委員としても活動中。

フリーマガジンSCHOP(スコップ) http://schop.boo.jp/

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■関西古本女子だより  頓花恵
(26)今昔の記憶
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 阪神大震災以後、神戸の下町は大きく変化したといいます。新たな都市計画を元
に区画整理が行われ、「昔ながら」の土地は大きく消失しました。

 そんな中、残された下町の佇まいを満喫しようというところから発足した「下町
レトロに首っ丈の会」。月に一回、下町遠足ツアーという下町散策案内を催していて
商店街や裏路地の喫茶店に入り、お昼にそばめしを食べ、立ち呑み屋さんでちょっと
一杯。地元の看板絵師さんやお面作家さんによるお教室なども開かれます。

 またこのグループは手の平サイズの『下町レトロ地図』も発行していて、通常観
光マップには掲載されないような小さなお店や銭湯、定食屋さんをずらり紹介。町
に生活する人と同じ目線で作られていて「生きた神戸」を感じさせられます。

 先日、個人的に午前中ツアーをお願いしました。横溝正史の生誕の地から出発し、
説明を受けて新たに知った三菱重工や川崎重工といった工業港とそれに伴う地域の
人々との密接な関係。駄菓子屋さんを梯子して100円分のお菓子をじっくり選び、
未だ現役ゲーム機テーブルの喫茶店でレモンスカッシュ。
 
 地図を片手にさらなる神戸を求めてぶらり探訪、地域の人に話を伺う糸口になる
かもしれません。
 
 かつて神戸のトーアロードにあったコスモポリタンホテルを住まいとした西東三鬼
の『神戸・続神戸』は戦中戦後の粋なモダン文化を思う存分味わえる一冊。謎のト
ルコタタール人や一癖二癖もあるエジプト人、ドイツ人水兵との交流。斬新、アナ
ーキーな俳人の生活は映画のような国際都市と深く繋がっていて、洒落が利いてい
て魅力的です。

 変貌する町の記憶と風景を少しでも留めていたいと町歩きしながら出会う小さな
発見が無性に嬉しくなるのです。

〈とんか・めぐみ〉神戸元町にてザックバランな古本屋「トンカ書店」を営業中。
イベント案内: 
11/24〜11/30 ノブヨシキタイ 作品展「ハイヌウェレ」
12/1〜12/25 絵本即売会「コミュニケエホン」
12/18(金)20:30より 「クリスマス・ボードゲーム大会」
12/19(金)20:30より 「オザキシュウヘイ シタールLIVE」   
詳細はHPまで

トンカ書店
650-0011 神戸市中央区下山手通3-3-12元町福穂ビル2D
078-333-4720
http://www.tonkabooks.com/

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■音を探してページをめくる  貴島 公
(18・最終回)メモ・フロム・ターナー
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片岡義男『ぼくはプレスリーが大好き』角川文庫、1974年3月 原著1971年

 手元にある角川文庫版のあとがきによれば、この本の原著は、1970年の夏に書
かれ、1971年に三一書房から出た。その後、『音楽風景 ロックというアメリカの
出来事』と改題されて1991年にシンコーミュージックから、『エルヴィスから始
まった』と改題されて1991年にちくま文庫として、再刊されているが、現在は絶
版もしくは品切れ状態であるようだ。内容を正確に表しているのはちくま文庫版
の題名だけど、客観的にすぎる。『音楽風景』では音楽が流れている風景を描写し
たもののように受け取れるし、補うように付けられている「出来事」がアメリカの
それに限定されていることにも躊躇する。当時の風潮に対してカウンター気味に付
けられている(から後に改題されることになるのだが)ものだけど、「ということは
いったいどういうことなのだ?」という著者自身が抱えた問いから読み始めること
ができるという点で、「ぼくはプレスリーが大好き」という最初の題名が最も秀逸だと
思う。

 手元にある角川文庫版は、片岡義男と言えば、の赤い背表紙ではない、のだが、
出た当時に買ったものでもない。かなり経ってから、角川文庫大量投入によるブー
ム(あまり本を読まない弟が何冊も本棚に並べていたのを思い出す)も過ぎ去った
頃に、古本屋の軒先に置かれた均一台で見つけた。片岡義男の名を知ったのは、や
はり角川文庫で出ていたビートルズの訳詞集、そしてジョン・レノンの1970年のイ
ンタビューをまとめた『ビートルズ革命』の翻訳者としてで、ブームよりは前なの
だが、一方で既に『ロンサム・カーボーイ』がパイオニアのカーオーディオのCM
に流用されていて、お洒落でアメリカンな作家というイメージがあった。FMでや
っていた「きまぐれ飛行船」もたまに聴いていたものの、そのイメージを覆すこと
はなかった。そして軽やかな恋愛小説の名手としてのブーム。いろんな意味で無縁
だった。「宝島」誌は読んでいたけど、JICCに移ってからのもので、晶文社から
出ていたときの深い結びつきについては知らなかった。だから、手に取ったのは均一
台で、音楽について書かれているのならまぁ読んでみよかといった軽い気持ちからだ
った。読み始めてすぐ見て見ぬふりをしていたことを後悔した。

 エルヴィス・プレスリーがどれだけ良くて、そんなエルヴィスをどれだけ好きか
ということを綴ったもの、ではない。プレスリーが登場し、熱狂的に受け入れられ
たということの背景と意味に、出来事や言葉を丹念に拾い集めることで、少しずつ
迫ろうとする試みだった。角川文庫版のあとがきで、その作業について、「ぼくとい
う個人にとってのごく個人的なメモ」をつけることだったと著者は書く。全体を予
想しないで、即興的に書いていったものだとも。ここには、ボブ・ディランやジョ
ン・レノンからフランク・ザッパやNRBQまで、おびただしい数のミュージシャ
ンの発言が書き付けられている。ひとつひとつ明示されてはいないけれど、雑誌の
記事から採られたものだ。背景をたどるための歴史叙述についても、多くの本を元
にしていることがあとがきに記されている。しかし、それらはあくまでも自分の経
験を探るための「個人的なメモ」なのだ。でも、それを「つけた」ことの責任は取
るという穏やかな気概がある(そのあたり「勉強」とは少し異なる)。

「371-1-」という同文庫ラインナップにおける片岡義男の著作の一冊目であること
が示されているこの本を読むことで、片岡氏の評論を読むことを覚えた。自分の経
験に探りを入れながらメモをつけ、メモをつけながら考えるという作業は、『音楽
を聴く』など、その後の評論でも行われている。片岡氏の評論は、音楽に限ったも
のではないけれど、この作業は、音楽という言葉にならないものについて書くこと
にとても合っている。背景や歴史をたどらなくてもいい。それはそうすることが必
要だと思ったらやればいい。重要なのは、思い出話や自慢話ではない、(自分の)経
験を、自分で探って、伝えるということだ。その実例をこの本は示してくれている。

 おまけ。ビートルズ語では長らく「シェアスタジアム」と表記されてきたアメリ
カの球場について、ここでは近年のMLB語と同じく「シェイスタジアム」と表記
されています。そのことをわざわざ言わないのがよいです。

〈きじま・こう〉説明業、趣味・読書と音楽鑑賞。
「音楽本について書きませんか」と南陀楼綾繁さんからお誘いを受けて始めた連載
は、今回が最終回です。最初は、音楽好きの邪道な視点による紹介を目論んでいた
のですが、後半、音楽について語ることのヒントをくれる本について紹介すること
が多かったように思います。音楽とテキストの関係については…ともかくとして。
語調も方針も定まらない連載におつきあいくださ(った方に限)り、ありがとうご
ざいました。

「モノノフォン」
http://homepage1.nifty.com/hebon/fhp/

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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(78)仮式会社から株式会社へ
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『酒とつまみ』12号は、2009年9月18日午後、印刷所より納品された。また暑い
時期の納品だ。これは厳しいが、避けて通れない。

 大きなミスはないか。最新号の束を雑居ビルの3階まで運び上げていくとき、必
ず気になるものである。それで、だいたいは息の切れやすい私が先に梱包を開け、
パラパラとめくったりするのだが、今回は最初に、背表紙を見た。

 下のほうに、「酒とつまみ社」と印刷してある。この文字自体は創刊号から印刷さ
れていたものだが、ひとつだけ違うことがある。最初、名前の下に入れていた「(仮)」
という1文字が取れたのである。

 創刊号から11号まで、発行元は大竹編集企画事務所。背表紙に「酒とつまみ社」
と入れたのは洒落であって、事実そこに、(仮)と印刷して、これはなんですかと聞
いてもらえると、ええっとまあ「仮式会社」ということで、一応は後仮(あとかり)
っていうことなんですが、などと嬉しげに話したものである。

 それが、今、取れた。私は、奥付を見る。発行元は、株式会社酒とつまみ社とな
っている。編集発行人は、W君。
 創刊からちょうど丸7年経過して、雑誌はたったの12号までしか出ていないが、
大きなことが変わり、新しい時代になったのだと、はっきり思った。

 中身は、相も変らぬバカ話のオンパレード。前号からほぼ1年を経ての、ようや
くの刊行となった。

 銀座コリドー街の『ロックフィッシュ』に明るいうちから出かけ、まずは納品。
そしてみんなで、ハイボールで乾杯する。
 うまい。1年ぶりに出た最新号を祝うハイボールは、ことのほかうまかった。

 この12号を販売しながら、酒とつまみ社ではすぐに13号の準備に入ることにな
る。私の役割は、まず、自分の担当するページを滞りなく進めておくこと。それに尽
きる。時間がかかるのは『山手線一周ガード下酩酊マラソン』で、12号のときもひど
く時間がかかった。

 だから、まずはガード下。とにかくひと駅でも始めてしまわないど先が続かない
から、オータケを引っ張って、みんなで行こうという話になった。
 そして、まだ納品関連の仕事も全て終わってはいない9月下旬、W君、N美さん、
Sさん、私の4人は、連れだって代々木の駅へ降りた。
 さあ、ガード下マラソン、原宿を目指しますよお……。

 原宿へ向かう途中の住宅街を4人して歩く。ガードもなければ店もない住宅街。
まあ、しょうがねえや。と思いながら見上げると、きれいなきれいな月が出ていた。

〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集長。
いつまでも飲み方というものを覚えられず、相変わらず、飲みすぎては具合が悪く
なるということを飽きずに続けています。先日も2日連続のトークイベントに参加
させていただいている間、緊張のため飲みっぱなし。トーク終了の翌々日の朝にな
って動悸が止まらないという怖いを思いをしました。
http://www.saketsuma.com

ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(88)新宿書房の巻 潰れずに頑張ってるベテランビル
--------------------------------------------------------------------- 
“日常の重層を探査する”新宿書房(社長・村山恒夫)は、千代田区九段北1ー8ー、
2、第2フクハラビル301号に居を。我が漫画屋から徒歩4〜5分。週1〜2回は通
う、アニメ声のおばちゃんが色っぽい(50代後半か)、「小諸そば」九段下店のすぐ
裏手。付近の主要版元は頭に入ってると増長してたが、まだまだ甘かった。本当は今
回、“気鋭の政治思想家”仲正昌樹の歴史的名著、『Nの肖像』の発行元で知られる、
双風舎の予定だった。が、急な冷え込みの中、浅草まで出張取材するのも面倒なので、
近場で済ませた(テキトー!)。

 5階建ての同ビル、外見は地味だが好感の持てる建物だ。4〜5階に大家さんが住
んでるせいか、清潔。定礎が昭和53年、つまり1978年とあるから、30年以上たつ訳だ
が、15年古いだけの我が三信ビルのオンボロ振りに比べると、いかに建物は綿密な維
持、管理が大切か痛感させられる。

 外見も中も白壁が基調。床や窓枠、各部屋のドア、変電設備等はこげ茶色。よくあ
るコントラストだが、両者共によく磨き上げられてるせいか、キュートだし廊下も狭
いのに、閉塞感を抱かせない。ただここまで神経質だと、退去する際に敷金をめぐっ
て、一悶着あるかもな(推測)。弱点はエレベーターがない点。家賃はかなり安い可
能性。70年に西新宿で設立されて以来、新宿区と千代田区とで移転を繰り返している
同社だが、かつてはエレベーター付き事務所だったのでは?(06年に新宿三栄町から
同ビルに越して来ている)。

 今、一番売れない分野の本を出してる版元の1つ。『どぶろくと女』(阿部健)、
『女湯に浮かんでみれば』(堀ミチヨ)、『ガルシア・マルケスひとつ話』(書誌コ
マンド)、『メコンデルターフランス植民地時代の記憶ー』(高田洋子)…愚書はな
さそうな近刊ラインナップだが、同時に店頭で見たとしても、身銭を切って買う程の
訴求力もない。そんな中途半端さが、出版物全体に漂う。桜映画社ってトコと関係あ
るらしいが、「まあよく潰れずに頑張ってますね!」と、求められもしないのに、エー
ルを送りたくなる。

 筆者にとっての新宿書房は、何と言っても『住所と日付けのある東京風景』(冨田
均)の版元様だ。この1冊は圧倒的で、『エイリアン・ネイションの子供たち』(野
崎六助)や『正直エビス』(蛭子能収)は即売り飛ばしたが、未だに大切に保存。に
しても冨田均、いい本出してるのに、ちっとも売れっ子にならない。人格に問題があ
るのか(仲正昌樹ほどじゃないだろうが…)、当人にその気がないのか…(下手な詩
のせいとも思えない)。

 70年代から生き残った人文系版元は、団塊世代の老化に伴う趣味の変化に合わせ、
歴史、旅、健康、福祉等に刊行物をシフトして来たが(現代書館はその筆頭)、新宿
書房はその気もなく、かたくなに我が道を歩んでる感じ。んなんで著者に印税払えて
んですか?(右文書院と一緒にして済まない)。

 詳しい事情は知らないが、前の大戦末期、ソ満国境に取り残された(関東軍主力部
隊は、家族共々さっさと逃亡後)、現地召集された老兵からなる、アリバイ的捨て石
部隊のように、同書房が見えなくもない(向かって右隣の九段第2勧業ビルには、通
称“全抑協”、つまり財団法人・全国強制抑留者協会も入居)。  
 
〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)、『出版業界最底辺日記 エロ漫
画編集者「嫌われ者の記」』(ちくま文庫)、『東京の暴れん坊 俺が踏みつけ
た映画・古本・エロ漫画』(右文書院)。『出版奈落の断末魔 エロ漫画の黄
金時代』なる恥ずかしいタイトルとカバーの新刊が、アストラから好評発売中。
なお、この連載に関しての批判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(た
だし、謝るとは限りません)。
mangaya@air.linkclub.or.jp
http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/

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[書評]のメルマガ vol.429
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■■ [書評]のメルマガ           2009.10.16発行

■                     vol.429
■■  mailmagazine of book reviews  [ 優雅な気持ち 号]
■■-----------------------------------------------------------------
[CONTENTS]------------------------------------------------------
★「ふぉっくす舎のエンターテインメント玉手箱」根岸哲也
 →“本棚のために家をつくった男”がずっと読み続けてきた作家たち。
★「もっと知りたい異文化の本」内澤旬子
 →ナイフ一本で牛を屠る体験を言葉にした作家のノンフィクション。
★「千駄木ドロナワ日記」川原理子
→地域雑誌『谷根千』の若手スタッフが綴る、日々のあれこれ。
★「林哲夫が選ぶこの一冊」
→ついに最終回。忘れられた画家・宇崎純一の再評価の過程をたどる。
★「全著快読 編集工房ノアを読む」北村知之
 →「全著快読」新シリーズ。大阪の文学出版社の全冊を読みます。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。
★「新・新刊書店の奥の院」荒木幸葉
 →休載です。

*本文中の価格は、表示のあるもの以外は、税抜き(本体)価格です。

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■ふぉっくす舎のエンターテインメント玉手箱
(15) ストイックなまでにミステリと向き合った小泉喜美子 その2
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集英社文庫から復刊された小泉喜美子の『弁護側の証人』を再読して驚いた。
もっとラストのどんでん返しの輪郭がはっきりしたミステリと記憶していたが
違ったのだ。初読時の自分は、ラストまで読んでも、この小説に何が起こってい
るのかすぐには理解できずに、トップシーンを含む何か所かの描写を読み返し、
やっと作者のたくらみに気づいたに違いない。復刊版の道尾秀介の解説は、直接
的な説明を避け、巧妙なヒントで読者を真相に誘導する素晴らしいものだった。

このような洗練されたラストこそ、小泉が目指したものだろう。佐野洋は「推
理日記」で、「泥くさいミステリーがあってもいいはず」だと言う佐野に対して
「泥くさくてはいけないの。洗練されていなくては、ミステリーとは言えない」
との小泉の言葉を紹介している(「小説推理」77年9月号)。また、死や犯罪と
いう深刻な題材から楽しい虚構を創るには、なまじの肩肘張った“感動的な”小
説に倍する作者の成熟と洗練が要求される(『メイン・ディッシュはミステリー』
新潮文庫)とも、ミステリの確固たる特質は、洗練であり、都会性である(『男
は夢のなかで死ね』光文社文庫)とも書いた。そんな自分のミステリ観をことあ
るごとに小泉は強く主張した。九代目団十郎・五代目菊五郎を見ていなくちゃい
かんといきまく古老を団菊じじいと呼んだのにならい「されば、われもチャンド
ラーばばあと化し、この世に数々の害をなさん」(「ミステリ・マガジン」80年
8月号)といった心境からなのだろうが、実作者からの批評ということもあり、
しばしば作家たちの反発も招いた。

『弁護側の証人』も短編が原型だったが、デビュー前に、「エラリィ・クイーン
ズ・ミステリ・マガジン」三周年記念短編コンテストで、田中小実昌とともに佳
作に選ばれてもいる(入選は結城昌治)。短編ミステリにも思い入れが深く、長編
と短編では手法が異なり、「短編は短編ならではのアングルやセンスでミステリに
仕上げる」とし(『殺人は女の仕事』青樹社のあとがき)、その手本となるような短
編ミステリの秀作を発表した。いくつかの作品は推理作家協会賞の短編部門で候補
になるものの受賞はしなかった。名誉欲にも恬淡な小泉が賞を欲していたことを知
り、評論家の新保博久は、そのことに驚くとともに、自分が自信を持っていた方法
論で書いた「作品が認められるなら、日本の推理界も捨てたものではない、絶望し
なくて済むと、考えていたのではないか」と分析する(『時の過ぎゆくままに』講
談社文庫の解説)。

小泉のミステリ評論を続けて読むと、狭量とも思われかねない自分のミステリ観
の強い主張に、いささか戸惑うときがあるのも事実だ。しかし、自らの方法論を愚
直に実践したことを遺された作品群が示している。すぐれた外国ミステリに嗤われ
ないものを書こうという気持に嘘はないと書き、「この気持を忘れたら、誰よりも
真っ先に私自身が―私の内部にいる一人の熱心なミステリー愛好家が真っ先に嗤う」
と続ける(『メイン・ディッシュはミステリー』)。ここまでストイックな姿勢を貫
いて産み出されたミステリだと知ると、つい肩肘はって姿勢を正して読みたくなる
が、ミステリは、気楽かつ優雅な気持ちで読まれることを小泉は望んでいた。ミス
テリーは「香水であり宝石であり薔薇である」(『ミステリーは私の香水』文春文庫)
と小泉は書いた。

◎小泉喜美子はこの作品を読め!
『弁護側の証人』『ダイナマイト円舞曲』※(集英社文庫)
『血の季節』(文春文庫)※
『時の過ぎゆくままに』(講談社文庫)※
『男は夢のなかで死ね』(光文社文庫)
『暗いクラブで逢おう』『月下の蘭』(徳間文庫)※
『女は帯も謎もとく』(トクマノベルズ)※
※絶版・品切れのため、古書店等でお求めください。

〈ねぎし・てつや〉 1966年生まれ 団体職員。『弁護側の証人』の好評をきっかけ
に小泉作品の復刊が続くことを願う。祖母の三回忌で、読書好きの伯父夫婦に、今、
何を読んでいるか訊ねると、土屋隆夫との答え。「『影の告発』とか?」と重ねて訊
ねると、「知ってるのか?」と驚かれる。日々、新しいミステリが産み出される中、
古い名作が読み続けられているのは嬉しい。

「ふぉっくす舎」
http://d.hatena.ne.jp/foxsya/

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■もっと知りたい異文化の本  内澤旬子
(40)刃先に宿る感覚
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佐川光晴『牛を屠る』解放出版社、2009年

生きた牛を絶命させ、いかに切り分けて食用肉や皮としていくか。
本書は著者が、小説家としてデビューする前に勤務していた屠畜場での「牛を屠
る」仕事を、丹念にわかりやすく綴ったノンフィクションである。

屠畜場について書かれた本は少ない。さらに日本語で読めて、著者本人に屠畜場
就労体験があるのは、アプトン・シンクレアと、大泉黒石、そして著者の三人の小
説家だけだろう。

シンクレアは、1900年代シカゴで潜入取材を敢行。目的はあくまでも移民たちの
悲惨な労働実態を描くこと。
大泉黒石は、貧困に導かれ「牛殺し」の仕事に就いた。とはいえたった数日で音を
あげる。大正期の屠畜場の様子はわかるものの、職業として「牛を屠った」と言える
のかどうか。

その点著者の勤務年数は十年半におよび、勤務先の施設が機械化する前であったた
め、文字通りナイフ一本で牛を屠る、高度な技術を身につけることとなる。
繊細な刃物仕事の妙を文字にするのは難しい。頭で考えずに指先を動かすようにな
ってはじめてできるものだ。コツなどという雑駁な言葉でくくるにくくれない濃密な
世界。

シンクレアや大泉が実際に体験した強みとばかりに悲惨さや凄みばかりを強調して、
この仕事の持つ奥行きや、ある種の豊かさを伝えていないのは本当に惜しいと常々思
っていたので、著者が外から見ただけでは決して届かない刃先に宿る感覚までをも言
葉に置き換えてくれたことは、本当に喜ばしい。

屠畜は、肉を食べる日常に欠かせない行為であるのに、偏見や差別を含む視線を向
けられ易い。
家畜の命を断つことへの逡巡は、現場で汗を掻いてナイフを振るう彼らにも、「噴
き出す血の熱さ」を知らずに肉を食べるだけの我々にも、同じとは言い難いけれど、
確実に存在する。この書を通じてほんの少しでも近づき合えたら、と願ってやまない。

※「北海道新聞」2009年8月30日の書評欄より転載。

〈うちざわ・じゅんこ〉イラストルポライター

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■千駄木ドロナワ日記 川原理子(谷根千工房)
(16)本人にどうぞ
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2009年9月29日
ある新聞社Aさんから、Mあてのファックスが届く。
メールで送った原稿に変な記号が着いているので、取り除いてから送ってください
とのこと。ファックスには期限や連絡先などいっさい書いていない。Mは丸森に行っ
ておりしばらく帰ってこないので、間に合うか心配になり、電話番号を調べて、問い
合わせた。

締め切りは、と聞くと「ご本人はわかっていると思いますが」。そのあと、怒りの
声が続く。
「M さんは、誤字脱字がひどいし、英字とかながまざってめちゃくちゃ。こんなひ
どい風に送ってくるのは、ひとりしかいませんよ。字数も多かったりすくなかったり。
4月に担当になり、驚いてます。はじめ原稿用紙でもらっていたけれど、Mさんの字
を読むのが大変なので、メールで送ってもらうようにしたようですけれどね。ワード
かなんかで書いてもらえないんですか。なんとかパソコンの使い方を教えてください。
できないのは、本人のやる気がないからです。新聞の編集者は、そういうものをなお
すのが仕事ではありません。だめなら、掲載しないまでです。まあ、連載もあと2ヶ
月だと思ってがまんしていますが。」

申し訳ない。私たちもMのメールのひどさには困っている。変換ミスが多いのは、
目が悪いせいもあるけれど、せっかちな性格ゆえ。そして、編集の人がなおしてくれ
ると思っているのだろう。ワードはパソコンに入っているし、添付の仕方も3回くら
い説明しているのだけれど、だめ。原稿用紙時代は字数を守っていたけれど、メール
に直接書くようになって、それもしなくなった。

でも、本人へ直接言ってほしい。

10月6日
祖母の検査のお供で病院へ。1泊入院するので、荷物もちだ。部屋へ着くと早速寝
巻きに着替え、腸の洗浄液を2時間かけて飲む。飲むたびに嫌そうな顔をして、口を
ゆすぐ。「終わったらモンブランを食べる」と言っている。

建物は年月を感じるけれど、病室は窓が大きくて、明るい。看護婦さんたちも、にぎ
やか。先生はやさしい。
麻酔が覚めたらさっそく同室の人と孫の話を始めるので、恥かしくなり、かえる。

〈かわはら・さとこ〉谷根千工房社員(もしかして元となるのでしょうか?)
町の文化祭、芸工展2009開催中。谷根千工房は(というかYさんが)、「吉田敬子鋸
屋根写真展」と「D坂シネマ 〜仕事の結果〜」」で参加しています。写真展は10月
18日〜25日、シネマは10月20、22、24、25日の開催。

・田村七痴庵独演会 第二回 『彷書月刊』編集長が語る小さな雑誌の作り方
場所 古書ほうろう http://www.yanesen.net/horo/
日にち 11月4日(水)
時間  18時半開場/19時開演
木戸銭 1000円(飲み物持込み可)

出演  田村七痴庵(彷書月刊)
ゲスト 川原理子(谷根千工房)

※ご予約は電話かメールで。
古書ほうろう 03-3824-3388
horo@yanesen.net
(お名前、人数、当日ご連絡できる電話番号をお書き添えください)

「谷根千ねっと」
http://www.yanesen.net/

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■林哲夫が選ぶこの一冊
(37・最終回)関西の夢二なんて言わせない
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宇崎純一『絵画の手本』エミヤ書店・家村文翫堂、1914年10版

宇崎純一(うざき・すみかず)といっても、ごく一部の古書マニアしか知らないだろ
うが、それでもここ何年か、かくいう小生があちらこちらで再評価をうながす記事を書
いたこともあって、古書の世界ではかなり知名度がアップしてきたように思う。

宇崎純一は明治二十二年(1889)に生まれ昭和二十九年(1954)に亡くなった。父
は兵庫県の小野の出身で、大阪難波に出て、食品業などいくつかの商売を手がけた。そ
の長男としておそらく兵庫県で生まれた。子供のころから絵が好きで、ちょうど竹久夢
二らが活躍を始めた時期に青年時代を過し、夢二ばりの少女や子供、風景などの線画を
描いた。それらを青春の形見としてまとめ、処女画集『スミカズ画集妹の巻』(エミヤ
書房)として出版したのが明治四十四年(1911)、『夢二画集春の巻』(洛陽堂、1909)
に遅れること一年半である。いずれ家業を継ぐはずだったが、この出版をきっかけにイ
ラストレーターとしての道が開かれた。

『妹の巻』から時を置かずに出した二冊目が『絵画の手本』(初版は1911)である。こ
れがロングセラーとなった。大正時代を通じて何度も版を重ね、小生が入手したものは
十版だが、十八版までは確認している(昔の重版記載はあまりあてにはならないが)。結
局、大正期だけでも八種類(未確定)の画手本や詩画集を著し、絵葉書、雑誌の表紙、
挿絵、装幀などについては、総数がどのくらにになるのかはっきりしないほどの仕事量
をこなしたようである。◯にスの字のサインで知られ、スミカズ・ブランドのグッズも
売られていたという。

「関西の夢二」あるいは「大阪の夢二」と呼ばれたものの、夢二のような多面的な天
才はむろん望むべくもない。しかし、絵手本の簡略な線描にひらめくセンスには捨て
難い魅力がある。夢二は同時代のヨーロッパの美術の動向に通じており、未来派など
の前衛的なスタイルでさえいち早く取り入れている。そういう貪欲さが純一にはうか
がえない。せいぜいフェリックス・ヴァロットンやボナールなどナビ派の画家たちの
スケッチや版画を連想させるくらいである。しかし、だからこそ却っていとおしい、
エフェメール(つかのま)の美に包まれているような気がしてならない。

古書の世界ではかなり知名度がアップしている、と書いた。その証拠は古書価がび
っくりするほど上がったことである。小生がかなり傷んだ『絵画の手本』を入手した
のは京都のある古書店だったが、それはもう十年ほども昔の話であって、他に『スミ
カズ画の手本』(家村文翫堂、1919)と『続画の手本森の花』(エミヤ書店・家村文
翫堂、1912再版)も併せて三冊、一万円少々だったのではないだろうか(ちょうど
この時期だけ購入記録をつけていないので正確な数字が書けない)。

この値段でも当時はそうとうに苦悶したものだ。ただし、それらはその古書店の棚
に何年間も晒されたまま動きそうな気配はなかった。たぶん主人の思い入れのこもっ
た値に違いなかった。だから悩んでいる間に売れてしまうということもなく、どうに
かこうにか都合をつけた小生の手に入ったわけである。他にもわりといい状態の『続
画の手本森の花』の初版を他店で購入し、『スミカズ画集妹の巻』を『日本古書通信』
に載っていた某書店の目録から見つけ出した。どちらも一万円が目安だったと思う。

ところが最近は三万円は当り前、五万円で出ていることもある。古書の値付けにお
いては状態の善し悪しがもっとも重要な要素なので、数字だけでは即断できないにし
ても、宇崎純一の名前が認知されてきたことはまず確かではないだろうか。その証拠
というほどでもないが、小野市で一九九二年に開催された「幻の画家・宇崎純一 大
正ロマンの残影」展(小野市立好古館)の図録に大阪の某書店が一万円の値段を付け
た。これは現在までのところもっとも充実した宇崎純一についての図録である(B5
判、本文28頁)。元の売価は800円だったはず。

第二次大戦後忘れられてしまった宇崎純一を早くから再評価していたのは肥田晧
三氏である。「大正ロマンの片影」という文章を『季刊銀花』(一九七〇年夏号、文化
出版局)に発表されており、それは『上方風雅信』(人文書院、一九八六年)にも再
録されいる。肥田氏は若き日に目撃したスミカズ本人の姿を印象深く覚えておられる
そうだ。

スミカズを忘れなかった同時代の作家に藤沢桓夫がいる。藤沢は大阪高校時代に『辻
馬車』という同人雑誌を出していたが、その版元を引き受けた波屋書房は宇崎純一の
弟・祥二が経営していた。純一と共同経営だったともいわれるが、とにかく店は弟が
切り盛りし、出版活動も行なっていたのである。『大阪自叙伝』(サンケイ新聞連載、
1972〜73、後に朝日新聞社より単行本化、さらに中公文庫化)で藤沢の回想するスミ
カズはカフェーに入り浸る趣味人といった風ではあるが、とにかくスミカズのことをは
っきり覚えてくれていたことに感謝したい。小生は『大阪自叙伝』でスミカズを記憶に
刻んだ。

一九八四年に兵庫県加古川市の凡画廊で「スミカズ展」が開催された。スミカズは加
古川の風景をその画手本のなかに何度か描いている。そこに凡画廊のオーナーが興味を
もったことがきっかけだったようだ。小生もこのとき初めてスミカズの画手本や原画、
絵葉書などを目にしたのである。やはり肥田皓三氏のコレクションが中心だったよう
に思うが、これがある意味で、再評価のスタートだった。不完全ながら純一の生涯につ
いての聞き取り記事も『凡画廊新聞』四号に掲載されている(凡画廊はすでに閉店した
と聞いた)。

そしてその翌年、もう一人スミカズに注目していた人物、生田耕作氏が中心となっ
て京都のアスタルテ書房で「スミカズ・ひでを展」を開催した。「ひでを」は純一よ
りもさらに忘れられたまったく素性の不明な画家である。数点の絵を生田氏が発見し
たということからの展示だった。これはまだアスタルテ書房が三条通に面したビルの
上階にあった時期になる。

こんな前哨戦があった後に「幻の画家・宇崎純一 大正ロマンの残影」展が開かれ、
図録が出版された。この展覧会はスミカズの存在とその有力コレクターの存在を一部
の人々に強く印象づけたのであるが、残念ながら、宇崎純一に関する伝記的な事実は
まったく明らかにされていない。仮に何か差し障りがあったとしても、生没年さえも
見えないというのは解せなかった。

スミカズの略歴がほぼ正確に記されたのは『藤原せいけんの大阪』(藤白会・豊田善
敬編、創元社、1995)であろう。かなり詳しい聞き取りが行なわれ、戸籍書類も参照
した形跡がうかがえる内容になっている。ただ、発行部数が少なかったためか、この
記述はほとんど知られていなかった。小生もごく最近、人から教えられて参看し、そ
の内容の濃さに吃驚したのである。

しかし、小野市立好古館の図録と『藤原せいけんの大阪』の略歴があれば、スミカ
ズのことはほぼ分かったことになる、かといえば、それがそうではない。ごく最近、
スミカズの出生について子息の宇崎明夫氏より堺市在住の詩人である瀧克則氏が詳
しく聞き取りをした調査から、驚くべき事実が明らかになった。驚くべき、とはちょ
っとオーバーながら、その事実を知ると、スミカズが絵師になった理由がなんとなく
分かるような気がする。また晩年、戦後の苦闘時代の様子も初めて記録されている。

ということで瀧氏の論考「宇崎純一ノート」が掲載された『spin』06「宇崎純一
の優しき世界」は十一月初に刊行予定。著作年譜や関連文献一覧も備え、何より肥田
氏や生田誠氏のご協力も得てカラー口絵16頁を割いてスミカズ抒情画の粋を再現す
るように努めた。関西の夢二なんて言わせない、スミカズはスミカズだ、というとこ
ろを見ていただきたい。

ああ、これでまた古書価が……。

〈はやし・てつお〉
長らくご愛読ありがとうございました。これにて連載終了です。一冊にまとめる、予定
は今のところありません……。

「デイリー・スムース」http://sumus.exblog.jp/

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■全著快読 編集工房ノアを読む   北村知之
(10)死の先どり
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大槻鉄男『樹木幻想』1980
山田稔『特別な一日』2008

盆のころから、夜になるとじんましんがでるようになった。お腹や太ももが、世界
地図のようなまだらに赤く腫れてしまう。かゆみがあると、頭のなかがタワシでこす
られているように落ち着かない。

 先日、リンゲルナッツの『運河の岸辺』(第一書房)をいただいた。といってもコピ
ーなのだけれど、それでも嬉しかった。本当の『運河の岸辺』のように、二つ折りに
した紙を重ねて綴じてある。わざわざ用意をしてくれたOさんは、「本物が見つかる
まで、これで我慢してください」と言っていた。じんましんがでるたびに、この『運
河の岸辺』を繰っている。

『運河の岸辺』には、板倉鞆音の詩のコピーが挟みこまれていた。

告別

めらめら焼けているのが俺だとすれば
俺もどうやら死んだようだ
下火になった
焔のしたで
骨格が薄紅にすけて見えたが 
やがて灰色に冷却した
竹箸でつまみあげると
醜い骨片となって散った
「それではこれで」
俺は皆にお辞儀をすると姿をけした
妻だけがちょっと後を追うようにみえた

 リンゲルナッツやケストナーなどの訳ではない、板倉鞆音の詩を読んだのははじめ
てだった。大槻鉄男のエッセイ「火葬場  木山捷平のこと」をおもいだす。大槻鉄
男は自作の詩「骨」と木山捷平の「死に場所」を対比させて、「自分の中に死をみて
いる」と木山の死への親しみを羨むように指摘している。

骨(前半)

火葬場から出た骨には目方がない
目方のないこの白い骨の群
ひとびとの目は失われた目方のために重い
だがこの骨には目方がない

死に場所

死に場所は
火葬場の中がいい。
火をつければ灰だ。
きれいなもんだ。
白い骨だ。

山田稔はエッセイ「蝋梅忌まで」のなかで、大槻鉄男の「死の先どり」の様子を描
いている。板倉鞆音の詩もまた「自分のなかに死をみている」。たしか板倉鞆音と大槻
鉄男は、愛知大学で一時期同僚だった。

 今晩もじんましんを我慢しながら、いつまでも同じ小さな環をくるくるまわるよう
に、詩集を読んでいる。

〈きたむら・ともゆき〉
1980年生まれ。海文堂書店勤務。
第5回 海文堂の古本市を開催します。10月23日(金)〜11月1日(日)
http://www.kaibundo.co.jp/

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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(87)晶文社の巻 排気ガスを日々たっぷり浴びた非文化的な社屋
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 今回も含めもう3回で終わる本連載、一箱古本市&土下座結婚の中興の祖とし
て知られる、南陀楼綾繁編集長の思惑はともあれ、筆者としては田舎に住んでた
頃に憧れていた、“東京の文化的出版社”が、いかに零細企業に過ぎないかという
現実を、貧弱な社屋を通して心に刻むという点を、主旨として来た。イメージと現
実の落差味の賞味だ。つまり、小学館や集英社、秋田書店やモ−タ−マガジン社等は、
イメージ通りで退屈だ(金持ちには個性がない)。その点、既にない潮書房のバラッ
ク社屋など、戦後闇市ムードたっぷりで涙物だった。現代書館も裏街の写植屋風で、
情緒があった(今は両社共にこじんまりした自社ビルに)。

 都市計画だか何だか知らないが、木造家屋の新築が許されず、本当はある貧富の
格差が、街並にだけは露呈されなくなった都心、つまり千代田区の景観は本当に退
屈だ。その点、御茶ノ水駅の中央線ホームから眺めた、神田川沿いの秋葉原に至る
土手の一帯は、うさん臭い建築物に溢れ、すさんだ心が“いやされる”。創業50周
年を迎えた、サイのマークで知られる晶文社は、その裏手の外堀通り沿いにある
(千代田区外神田2−1‐12)。

 久々の理想的社屋。実は筆者、学生時代から数え、40年近く付近で仕事してる
のに、同社を見物するのは今回が初めて。田舎で植草甚一やポール・ニザン、ベン
ヤミン他を読みふけり、何かの偶然でこの御殿前を通った、70年代のローカルイン
テリは、にわかに信じられず、「おんなじ名前の、ミシン屋か弁当屋なんだんべなあ?」
(上州弁)と確信、昌平橋方向へ下ったはずだ。そのくらいせこい御殿だ。

 問題の平野ビルは2階建て。幅は「田村書店」と右隣の金物屋を合わせた程度。
千円札大の黄緑と濃い緑のタイルで覆われた建物、どう考えても築30〜40年以上。
排気ガスを日々たっぷり浴びてすすけた外見からは、機械油や生ゴミの臭気はとも
かく、文化の香りなど一切して来ない(ここは倉庫で、他に立派な本社があるのか?)。

 1階中央のガラスブロック(60年代的!!)に、映画『私は猫ストーカー』のポ
スターが1枚。実は筆者も上京直後、70年代初頭に本御殿を眺めたのなら、感慨は
大いに違ったはずだ。「エンツェンスベルガーや小林信彦、ピーター・ブルックの本
出してるトコがここかよ。気取らねえでいいな。粋っちゅんかも。やっぱし出版社
は外見じゃねえで。中身さ。出す本に決まってるだんべや!」(上州弁)

 社員のほとんどが自主退職、既刊本管理会社と化してしまった今の晶文社には、
このすすけたボロビルは、余りにフィットしすぎる。似た境遇の筆者もいたたま
れなくなり、御茶ノ水駅へ引き返そうとすると、一軒置いたカナヅメ電機のシャッタ
ーにも、35年お世話になったが、廃業するとの白い貼り紙が(凄く達筆)。文化屋も
電機屋も青息吐息。ましてやエロ漫画の下請け編プロにおいては…。

 同社HPの採用情報を見ると、時給1200円でバイトを募集中。整理した人間の
代わり?それにしては時給が高い。だから傾く。今後は1000円にしろと、要らぬ
他人の懐の心配。残る2回、どこにしようか?(1社は仲正昌樹の名著、『Nの肖像』
で知られる、双風舎に決定済み)。

〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)、『出版業界最底辺日記 エロ漫
画編集者「嫌われ者の記」』(ちくま文庫)、『東京の暴れん坊 俺が踏みつけ
た映画・古本・エロ漫画』(右文書院)。『出版奈落の断末魔 エロ漫画の黄
金時代』なる恥ずかしいタイトルとカバーの新刊が、アストラから好評発売中。
なお、この連載に関しての批判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(た
だし、謝るとは限りません)。
mangaya@air.linkclub.or.jp
http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/

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[書評]のメルマガ vol.428
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■         vol.428
■■  mailmagazine of book reviews  [ お仕事ちょうだい 号]
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[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。秋のブックイベント9連発。
★短期集中連載「なぜ、フリーペーパーなのか」
 →全国各地のフリーペーパー発行者の「生活と意見」をお聞きします。
★「関西古本女子だより」郷田貴子(ちょうちょぼっこ) 
 →大阪と神戸の「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「食の本つまみぐい」遠藤哲夫
 →〈大衆食堂の詩人〉エンテツが料理文化史の重要本を紹介します。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →次号掲載。

*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
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★秋のブックイベント その1・不忍ブックストリート
秋も一箱古本市2009
谷根千恒例の一箱古本市、今年の秋は6か所で開催します!

2009年10月10日(土)11:00〜16:30
*雨天の場合は11日(日)に順延

大家さん(古本市会場
宗善寺、ライオンズガーデン谷中三崎坂、コシヅカハム、アートスペース・
ゲント、C.A.G.+Negla、大円寺
 
≪お楽しみイベント≫
・あのひとの一箱
不忍ブックストリートで本に関わる仕事をしているひとたちが、自宅の本棚か
ら一箱を出店します。ベールに包まれた読書生活が明らかに!? あのひとは普段
どんな本を読んでいるんでしょう?

・メリーさんの奇妙な果実 〜第2章〜  古書ほうろう
昨秋、大人気を博したヤギのメリーさんが、秋も一箱古本市に帰ってきます!メ
リーさんに扮するのは、美術家・中村正さん。古書店を舞台に、動物人形たちが
生み出されてゆく不思議なライブパフォーマンスをお楽しみください。
今年は子ヤギのティペットも登場します。こちらもお見逃しなく!

・路上ペンギン写真展  宗善寺
東京の街を徘徊するペンギン・銀の輔の即席即日写真展を開催します。カメラマ
ンは写真家・高野ひろしさん。谷根千界隈の写真も一杯あります。銀の輔も会場で
待ってます!

・そうすけの100m書行  古書ほうろう
「書法現場展ライブ」でもおなじみの書家、北村宗介氏が、宋代の三大書家黄山谷
の草書李白詩巻全文を一行書100mに書き上げます。遅々と歩み、筆と紙との接点
のドラマは展開します。「百聞は一見に如かず」。書の大きなうねりと風を感じてく
ださい。
14時 古書ほうろう集合 すずらん通り縦断

・まちのイベントあれこれ
秋も一箱古本市当日は、まちのあちこちでイベントが開かれています。併せてお楽
しみください。
芸工展    10月10日(土)〜10月25日(日)
谷中まつり  10月10日(土)・11日(日) 初音の森ほか
菊まつり   10月10日(土)・11日(日) 大円寺

詳しくは
http://d.hatena.ne.jp/seishubu/

★秋のブックイベント その2・京都
子どもの本専門店メリーゴーランド京都2周年記念企画          
“小さな古本市”

10月10日(土)・11日(日)・12日(祝月) 10:00〜19:00

会場   寿ビル5F メリーゴーランドとギャラリーギャラリーの公共スペース
   600-8018 京都市下京区河原町通四条下ル市之町251-2 寿ビル5F
電話 075−352−5408(メリーゴーランド京都 担当,三野 協力,扉野)
E-mail mgr-kyoto@globe.ocn.ne.jp

ミニ・ライブ   吉田省念と三日月スープ 
10月12日 15:00スタート 投げ銭ライブ

出品者
アトリエ箱庭、伊藤まさこ、岡崎武志堂、文壇高円寺古書部、海文堂古書部、
貸本喫茶ちょうちょぼっこ、GALLERYGALLERY、古書コショコショ、古書善行堂、
とらんぷ堂書店、トンカ書店、FORAN、BOOKONN、古本オコリオヤジ、
増田喜昭、moshi moshi (モシモシ)、りいぶるとふん、吉田省念と三日月スープ

★秋のブックイベント その3・仙台
こしょこしょ古書市

10月18日(日曜日)
13:00〜18:00(18:30解散予定)

東北学院大学土樋キャンパス
六軒丁祭 古書市会場

http://blog.livedoor.jp/kosyoblog/

★秋のブックイベント その4・大阪
第2回ひねもす古本市〜男の子と女の子編〜

本と繋がる、人と繋がる。いろいろな人のいろいろな本棚、のぞいてみませんか。
年齢も職業もばらばらだけれど、「本が好き!」という共通点を持った人達が集ま
り、一日だけの古本屋さんを開きます。自分が読み終えた本、自分にとっての役目
は終えたけれども誰かのところでまた利用されたらいいなぁと思う本、みんなに紹
介したい本、などを持ち寄って対面販売する……という趣旨の催しです。合間に小
さなライブもありますよ。今回の古本市のテーマは、「男の子と女の子」です。「男の
子と女の子」な本、音楽、雑貨などなどお楽しみに!

日時:2009年10月18日(日) 11:00〜17:00
場所:中崎町Common Cafe(http://www.talkin-about.com/cafe/)
〒530-0015 大阪市北区中崎西1-1-6 吉村ビルB1F (地図)

・古本出店:Coto+Ri/「Sanpo magazine」古本部/a smile and a ribbon/ちんぷ
んかん文庫/はなめがね本舗/空色文庫/艶文亭/うずまき舎/はにわ屋/雨甘堂/MAGIC
ラ部/ねこざき堂。/暢気文子/caramba(特別出店) 
・ライブ(投げ銭制):ちんぷんかんぷん(15:30〜) セロテープス (13:30〜)
・場内音楽:なかぐち/ごろ寝/とよなか/箸休め / あまおうじ
・本にまつわる雑貨:natsuakubi
・ごはん:箸要らず / モッフル もふろび
・おやつ提供:ミロワール

http://hinemosubook.web.fc2.com/

★秋のブックイベント その5・福岡
ブックオカ2009

2009.10.18(日)〜11.18(水)

「福岡を本の街に」を合い言葉に、地元福岡の書店・出版社・雑誌社・制作者等の
有志で立ち上げた実行委員会が中心となって、2006年に始めた本のお祭り、ブッ
クオカ。第4回目となる今年も、本や活字の魅力を再発見するさまざまなイベント
を開催します。
ことしの目玉は恒例の特製文庫カバー。TVQでも放映中の『毎日かあさん』や今
春映画化された『いけちゃんとぼく』、そして現在公開中の『女の子ものがたり』
の原作者で漫画家の西原理恵子さんの描き下ろし。また10.25(日)には西原理恵子
さんが来福し怒濤のトーク。ほかにもさまざまなイベントあり、トークあり、ワーク
ショップあり。今年も読んで・見て・聞いて・食べてたのしいブックオカ。間もなく
スタート!!

一箱古本市 in けやき通り 10月31日(土)

ほかの企画はサイトを
http://www.bookuoka.com/

★秋のブックイベント その6・神戸
第5回 海文堂の古本市

2009年10月23日(金)〜11月1日(日)
海文堂書店 2F <Sea Space>

 楽しみにしてくださるお客様も増えてきました「海文堂の古本市」も、第5回です。
いくらステキな本でも、絶版になってしまっては新刊書店はお手上げです。そこから
先は古本屋さんに頼るしかありません。
今回も、神戸近郊の古本屋さんと新刊書店・海文堂が力を合わせて、本好きのお客様
に喜んでいただきます。「コレを探してたんや!」とか「こんなん、みつけた!」と
声を上げながら“私の一冊”と出合ってくださいますことを……。

<参加古書店>
やまだ書店(平野商店街)/イマヨシ書店(平野商店街)/レトロ倶楽部(中央区)/
あさかぜ書店(明石市)/一栄堂書店(長田区)/オールドブックス ダ・ヴィンチ
(中央区)

海文堂書店
〒 650-0022 神戸市中央区元町通3−5−1
TEL (078) 331-6501 FAX (078) 331-1664
http://www.kaibundo.co.jp
http://d.hatena.ne.jp/kaibundo/

★秋のブックイベント その7・広島
《ひろしまぶっくでいず参加企画》
お好み本ひろしま2009

本が大好きな方も、今まであまり本に接していない方も、新しい本の楽しみ方を見つ
けてみませんか?  一箱古本市や様々な形で本と接している方々のトークショーな
どを、秋の読書週間に合わせて開催致します。

2009年11月7日(土)・8日(日) 二日間
     AM10〜PM4時
開催場所:広島市内中区袋町周辺、JR広島駅前周辺
主催:お好み本ひろしま2009実行委員会

・前夜祭:岡山県倉敷市「蟲文庫」田中美穂さんトーク
      司会進行・南陀楼綾繁さん
日時:11月6日(金) 19時〜20時30分
場所:カフェパコ(広島市中区大手町3−8−3 2F)

一箱古本市
日時:11月7日(土)・8日(日) 2つ日間開催
         両日ともに10時〜16時
      場所:広島市中区袋町周辺
      共催:袋町裏通り活性化委員会(大家さん)
      出店費用:一日1000円
      ただいま、出店者募集中です。
      http://fly8.jp/2009110708/

・岡崎武志×南陀楼綾繁トークライブ
日時:11月7日(土) 12時30分〜13時30分

・北尾トロトークショー
日時:11月7日(土) 14時〜15時30分

・「路面電車貸切イベントPART1」やまだ屋トレイン発車!
  広島名物路面電車を貸し切って、ライブ&トークを行います。
日時:11月7日(土) 16時〜17時30分
場所:JR広島駅前―江波駅間往復
出演:玉城ちはる(広島出身シンガーソングライター)
   ゴトウイズミ+アコーディオン(広島在住ミュージシャン・ヲルガン座勤務)
   野口美紀(広島在住・オカリナ奏者)

・湊かなえトークショー
日時:11月7日(土) 18時〜19時

・「路面電車貸切イベントPART2」
  広島名物路面電車を貸し切って、創作落語&トークを行います。
日時:11月8日(日) 11時〜12時30分
場所:JR広島駅前―江波駅間往復
出演:岡崎武志(ライター、書評家)
   南陀楼綾繁(ライター・編集者)
   平々亭青馬(へいへいていぶるま)広島在住

◎ 松浦弥太郎トークショー
日時:11月8日(日) 14時〜15時30分
→予約終了

詳しくはサイト
http://www.bookrainbow.com/okonomi/

★秋のブックイベント その8・佐賀
BOOKマルシェ佐賀2009
11/13(金)〜15(日)

一箱古本市 in 佐賀 概要・注意事項
日時:11/14(土)15(日)の両日  11:00-16:00
会場:絵本の店ピピン〜エスプラッツ周辺の軒先
※雨天決行(雨天の場合、屋内会場への変更あり)
白山名店街アーケード内+656広場
募集数:各日25箱(両日合計50箱)
※定数に達し次第応募を締め切らせていただきます。【10/30応募〆切】
参加費:各日1箱¥500 ※両日参加も可(その場合¥1000)

その他、小柳帝トークショー、『私は猫ストーカー』上映記念・浅生ハルミント
ークショーも。
http://book-marche.com/

★秋のブックイベント その9・ふたたび京都
cafe de poche vol.8 −私的読書週間− 〜音楽〜

2009 Oct.29(thu)-Nov.1(sun) 12:00 - 19:00
    Nov.3(Holiday)Cafe 11:00-14:00(L.O.), Live17:00-
at:trico+

cafe de pocheはスタッフのセレクトした本でつくる期間限定のブックカフェです。
8回目となる今回のテーマは「音楽」。音楽を楽しむためのテキスト、読書を楽し
むための音楽。音を感じる小説や音楽家にまつわる本、解説、詩集、音楽雑誌、楽
譜、コンサートのパンフレット、ライナーノーツ……。そんな“音楽”をイメージ
する本や印刷物、“本”を感じる音楽をたくさんご用意してお待ちしています。
最終日には、たくさんの本に囲まれたギャラリーでのアコースティックライヴを開催。
スタッフ・ゲストの蔵書放出の古本マルシェも開催します。
紅葉あざやかな秋のひとときを、お気に入りの一冊、そして一曲とともに。

ライヴ(予約制) 11月3日(火・祝)17:00−
ふちがみとふなと / 吉田省念と三日月スープ
fee 2500円(tax in) drink持込可
予約受付開始 10月10日(土)10:00〜
cdp@zacca.com までメールにてお申込下さい。(先着順)
定員になり次第締め切ります。  
            
古本マルシェゲスト 
  古本オコリオヤジ 古書善行堂 古本けものみち スクラップ館 火星の庭
アトリエ箱庭 貸本喫茶ちょうちょぼっこ カライモブックス ポコモケ文庫 ほか

cafe de poche による小冊子、CDP vol.1「音楽と本と人」を限定販売します。
*期間中、六曜社地下店焙煎のコーヒー、Luluの焼菓子をお愉しみいただけます。
  気になる本を手にとって、心ゆくまでおくつろぎください。
*11月1日(日)には数量限定の“三日月スープランチ”を予定しております。

cafe de poche http:// cccc.ra indrop. jp/cdp
produced by 小西佐紀子/大林ヨシヒコ/伊東琴子/ナカムラユキ
                
trico+(LOGO)
地図     zakka+galerie+petit cafe
〒606-8255京都市左京区北白川西瀬ノ内町27-1
TEL&FAX075-723-1185 
HP: http://tricoplus.petit.cc
阪急河原町駅より市バス3番線「北白川小倉町」下車3分
  JR京都駅より市バス5番線「北白川別当町」下車5分
  叡山電鉄「茶山駅」より徒歩8分

なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

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■短期集中連載 なぜ、「フリーペーパー」なのか
(3)フリーペーパーから始まった 大嶋宏和(『ORDINARY FUNERAL』)
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 個人的にマンガを描き、作品がたまると『ORDINARY FUNERAL』というタイト
ルの冊子を作っています。最初に作ったのは2004年の夏。コピー印刷でA5サイズ、
ホッチキスで中綴じ、という形式が基本です。冊子を作ろう、と決めてからマンガを
描き始めたので、「自分で本を作る」という事自体に憧れていたのだと思います。と
にかく外側を作りたかったのです。

 ですから、内容までは深く考えていませんでした。個人的な体験や愚痴といったも
のを、そのままマンガにしていました。居酒屋にて本気で「あの女性タレントなら、
つきあってって言われても俺は断るね」とか下らなすぎる会話で盛り上がる事があり
ますよね。そういう程度の内容です。とても人に見せるものではないのですが、当初
は友人に配るだけだったので成立していました(やさしい人たちばかりだ)。作って
る本人の感覚としては、友人に宛てた手紙のようなものでした。友人に配るのだから、
もちろんタダです。

 こういう流れでフリーペーパーを作り始めました。冊子という形式ならではの反応
もありました。手紙なら、普通受け取った側はあまり他人にその内容を見せませんが、
冊子の場合、友達がその友達に見せる、という事があります。初対面の人が、すでに
僕の事を知っているという状況がいくつかありました。こういう人とのつながりを生
む、コミュニケーションツールであることに気付きました。

 次にそのコミュニケーションを少し拡げようと思い、フリーペーパーとしていくつ
かの場所で配布することにしました。本屋やレコード屋にお願いして、店先において
もらいました。「友人ならともかく、赤の他人に自分のマンガが通用するのか?」と
いうためらいもありました。けれど、フリーペーパーという形式が気分を軽くしてく
れるようでした(気に入らなければ捨てられるだけさ、と開き直る。怪文書をバラまく
気分)。

 そうすると、お願いに伺ったお店の方から、直に感想などを伺えるようになりまし
た。また、冊子を拾ってくれた、全く接点のないような人からメールをもらうことも
ありました。こうなってくると、さすがに冊子に対して、自分の作品のような気持ちが
めばえてきます。人に読んでもらうのだから、いつまでも飲み屋の会話のようなものじ
ゃダメだ、と考えるようになりました。さらに、もっと面白いものを描きたい、という
欲のようなものまで湧いてきました。外側だけ作って満足だったものが、だんだんと内
側に目が向きはじめたようです。

 今まで気楽に、気の向くままに作っていた冊子なのですが、ここに来てだんだんと
制作のペースが落ち始めます。うんうんと悩みながら作るので、1冊作るのに1年以
上かかるようになりました。そうこうしている間に、同じように自主制作で冊子を作
っている方や、マンガを描いている方などと知り合うようになりました(フリーペー
パーでやっている人もいれば、値段を付けて売っている人もいる)。さらにそういっ
た方々から、「今度ウチの冊子に原稿描いていただけませんか」と依頼されるように
なりました。

 近いところでは、大阪の『sanpo magazine』という個人出版誌にマンガ短編を描
かせていただきました。この冊子はフリーペーパーではなく、販売されているもので
す。そこに僕のマンガが。さらに原稿料までいただいてしまった。これはもう、完全
に次元の違うところまで来たな、という感じがしました。最初のころの「気楽なお手
紙」な気分はとても通用しません。自分勝手にしていたころと違い、プレッシャーを
感じます。けれどその分、自分の作品に真剣に取り組めました。まるでプロ作家気取
りかも知れませんが、「もっと面白いものを」とめばえた自分の作品への欲は、こう
やって満たされていくような気がしました。

 現在、僕はマンガを自分の冊子のために描きためています。どういった形のものに
なるか分かりませんが、フリーペーパーではなく値段をつけて売る形式にするつもり
です。友人への手紙、コミュニケーションツール、など色々な目的で冊子を作ってき
ましたが、今度は自分の欲求を満たすために作ろうと思っています。「お金をつけた
とたんそっぽ向かれたらどうしよう(タダなら読むけど、お金払ってまで見たくな
いよ)」などと不安もあります。けれど「面白いもの」「人に伝わる作品」を求めて、
気楽さを捨ててみようと思っています。

 こうして思い返してみますと、フリーペーパーという手軽さから始まった僕の冊子
作りも、少し遠いところに来たようです。なんと言いますか、親元を離れる子供の
ような、頼もしいような寂しいような、そういう感慨が湧いてきます(自分自身のこ
となんですが)。

〈おおしま・ひろかず〉
2004年よりマンガ冊子『ORDINARY FUNERAL』を作成。大阪市在住。
関西自主制作誌イベント「PEN AND PAPER」に参加。ミニコミ、ZINEなど自主
制作誌を作る人たち自身で動いて運営するイベントです。次回開催は11月8日(日)、
京都のCAFE LA SIESTAで開催されます。詳しくはHPをご覧下さい。
http://penandpaper.ojaru.jp/

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■関西古本女子だより  郷田貴子
(26)気のせいかなって思えば平気よ
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通勤電車で読書ができるようになりました。新しい仕事がはじまり、数ヶ月。ちょ
うちょぼっこはもう10年。何年くらいお勤めできるでしょうか。それから、賞与は
もらえるのでしょうか。不安要素がいっぱいです。

前回、真治さんが、私とるきさんのことを書いていたので、へー、どんな風だっけ
ねと思って再読しましたら、るきさんが「気のせいかなって思えば平気よ」と言って
いて、るきさん!と思いました。が、るきさんは私より冷静で淡々としていると思う
のでした。

るきさんがナポリに突然旅立ってしまったように、わたしも、どこかに旅立ってし
まいたい。
毎朝、通勤途中で一緒になる高校生の群れの中で、ヨーロッパの石畳や、大陸の草
原を歩いている自分を想像して現実逃避をはかっています。

さてちょうちょぼっこの4人は、もうすぐ知り合って10年ですが、一度も一緒に
旅をしたことがありませんでした。なんとこの秋、はじめての旅行にでかけることに! 
いいだしっぺは真治さん、手配するのは杏さん、最後まで目的地を知らないのが次田
さん、という感じです。最初で最後にならなければよいですが。

さておしまいに、私の手元にやってきた詩集の話をひとつ。少し前、開店したばか
りの京都の善行堂で、探していた(山本さんが、その本を古本市で買った日記を読ん
だことがあったのです)木村恭子さんの『あざらし堂古書店』(三宝社)という詩集
をみつけ、ちょうちょぼっこの日記に書いたら、偶然、同じ日に善行堂に行ってたと
いう方からメールが届きました。木村さんの詩は、よいですよねと。

そして、木村恭子さんご本人から「くり屋」という小さな個人詩誌が届く運びにな
ったのです。木村さんは、ちょうちょぼっこのことも知っていてくださり、嬉しいお
便りも同封されていました。(以前にも、別の方から木村さんの詩集をいただいたので
した。)

木村さんの詩には、おそらく職業柄、子どもや老人、それから誰も知らない街がよ
くでてきます。そこには、まるで私もみたことがあるのではないかという瞬間が書か
れていたりして、はっとします。

メールをくれた葉月さんは、「詩学」に掲載されていたいくつかの詩のコピーと、
葉月さんが木村さんの詩集『ノースカロライナの帽子』について書かれた同人誌も一
緒に持ってきてくれました。そして、まだ手にしたことがなかった詩集「十二月」渓
水社までみせていただけることに。

さらに木村さんが発行している詩誌に寄稿されていた木川陽子さんの詩集『芽キャ
ベツ記』夢人館、『夕映えと』という小さな追悼詩集も一緒に。それもまた、よかっ
た。るきさんじゃなくて、るいさんの記という詩をすこしだけ。

 もうわたしにはご飯も炊けない
 何もできないのだ と
 腹の底からよくわかった
 生煮えの米や甘藷を
 そこらじゅう吐き出したまま
 るいさんは
 ゆめのなかですこし泣いた

お米が炊けなくなるのと、本が読めなくなるのと、どっちが先かなぁと、近いよ
うな遠いような先のことを考える。

それはひとまず、本が人を呼び、また人が本を呼んで新しく出会える場所が数は
多くなくてもたしかにあることを嬉しく思い、当番がめんどくさいのよねぇと思う
ばかりの今日このごろですが、ちょうちょぼっこもやっててよかったと思ったりし
ていることを忘れてしまいそうになるので、書いておこうと思ったのでした。

〈ごうだ・たかこ〉
老人宅を自転車で訪問する日々。自分の老後がいちばん心配。最近ちょうちょぼ
っこでは、こっそり漫画読書会なるものを開催中です。仕事帰りに漫画のコマを
コンビニでコピーしてレジュメをつくったり。10月は、京都の古本市に参加し
ますヨ。

小さな古本市
http://www.merry-go-round.co.jp/kyoto.html
cafe de poche vol.8 −私的読書週間− 〜音楽〜
http://cccc.raindrop.jp/cdp/cdp/

貸本喫茶ちょうちょぼっこ
〒550-0014 大阪市西区北堀江1-14-21 第1北堀江ビル402
http://www.geocities.co.jp/chochobocko/
*営業日は、第1〜3週末です。 金18:30-21:00、土日 13:00-20:00
貸本喫茶ちょうちょぼっこ
〒550-0014 大阪市西区北堀江1-14-21 第1北堀江ビル402
http://www.geocities.co.jp/chochobocko/

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■食の本つまみぐい  遠藤哲夫
(34)「農業ブーム」の根にあること
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別冊宝島『もっと食わせろ!』JICC出版局、1992年11月

この夏、陣内秀信さんらが企画委員の、都市研究誌『city&life』93号(季刊、
第一住宅建設協会、編集協力・アルシーヴ社)の仕事をした。一年前には「美味
しいまちづくり」のテーマで、岩手県一関市と青森県八戸市を訪ねた。その前は、
「路地・横丁空間からの都市再生」の特集で、東京の横丁・路地の取材に関わっ
た。今回の特集は「マチとムラの幸福のレシピ」だった。「日本で最も美しい村」
連合に加盟の北海道美瑛町、山形県大蔵村、長野県大鹿村を取材した。そのあと
講演で御前崎市の御前崎へ行く機会もあった。美瑛町以外は鉄路の無い交通不便
の地域だ。「過疎」といわれ「高齢化率」も高い農山漁村地域。ほかにも仕事ぬ
きで新規就農者や生産者を訪ね、東京の横丁・路地から地方都市から農村から、
「まちづくり」なんてものを考えることになったが、俺としては「食」と「農業
ブーム」の動向が気になっていた。

美瑛町では5年ほど前に都会から新規就農した2人の方に会った。そのあと大
鹿村へ行ったとき、何人かの通りがかかりの人と話をしたら、そのうち2 人の方
は、20年前に都会から移住したといった。「20年前」と聞いて、ピンとくるものが
あった。20年前、1989年だ。そのころ、俺は、バブルの金を運用して一発やる話
にのり、ある山村へ行って、移住を前提に農業生産法人などをつくり「農業ビジネ
ス」に参入すべく、うごめいていた。今回の『city&life』93号には、北海道大学
観光学高等研究センター教授の佐藤誠さんの談話が載っている。佐藤さんは、20
年前熊本大学にいて、「グリーンストック運動」を始めた方だ。俺も、その構想の
影響を受けていたし、似たようなことをやろうとしていた。いま「農業ブーム」と
いわれる動きの根には、20年前ぐらいから続く大きな変化があるのだ。そのころ
から顕著になった、日本の食と農が直面する大きな問題を、「胃袋ビジネスの裏の
ウラ」とセンセーショナルな書き方でチョイと分析のおかしいところもあるが、大
雑把に総花的に知るには、本書は好都合だ。

本書の発行はバブル終焉の92年。80年代中ごろのバブルと共に「一億総グルメ」
が始まり、こんにちまで続く「B級グルメ」騒動の一方で、農業の衰退は加速度的
にすすむ。東京は「グルメ」騒動、食料生産の農村は疲弊、相反する現象。こんなこ
とが長続きすると思っているほうがおかしい。そのころすでに、「グルメ」騒動にふ
りまわされずに、都市と農村のありかたを考えながら食を考える動きがあった。本書
の「まえがき」に相当する「たかがメシの話から」の書き出しは、こうだ。「うまい
もんが食いたい! そう思って本書を開いても、ここには「究極の味の店」の紹介も
なければ、「食が危ない! もっと安全な食べ物を!」と叫ぶ声もない。この両極端
ともいえる「食」への関心のはざまに、われわれの「日々の食」はあるのだ」

いまだって都会では、細分化された「専門」に特化した「グルメ談義」と「安全・
安心・健康」のはざまで、「日々の食」「たかがメシの話」への関心は、きわめて低レ
ベルといわざるをえない。人間だからなのか、日本人だからなのか、にっちもさっち
もいかなくなってからでないと自ら変れない、手を打てない。「日々の食」「たかがメシ」
もグルメネタになってしまうグルメ談義のほうが盛んで、反比例するように農業の衰退
が続いたのち、行きづまった現実が目の前になって、農業政策の「転換」が始まった。

「小泉改革」というと郵政が注目されるが、むしろ農政だった。これがまあ切羽詰っ
てからだとこんな方法しかないのか、まさに丸投げ、「保護」からトツゼン「市場」
へ丸投げだ。いまや右往左往の無政府状態。であるがゆえの活気もあって「農業ブ
ーム」という傾向でもある。新農業基本法、新農地法などで、参入も離農もやりや
すくなった。だけど、4割減反。水田の4割を減らすのだ。そりゃ、景観まで変る
わな。稲作専門農家は給料4割カットくらったようなものだ。離農や耕作放棄が
急増。が、しかし、その農政について賛否はあっても、コトここまできてしまう
と妙手なんぞなさそうだ。

結論を急いで書けば、行きづまっているのは、「東京一極集中」であり、東京を
モデルにした「まちづくり」であり、そのもとでの農業なのだ。東京の人びとが、
「日々の食」「たかがメシの話」をどうするか、東京の「まちづくり」を自分のま
ちの街路の賑わいだけでなく、東京を支える農業や農村まで視野に入れられるよう
になったとき、つまり自分のまちから「マチ」と「ムラ」の関係を考える「まちづ
くり」になったとき、もしかするとよりよい変化になるかも知れない。「農業ブーム」
には、その気配もわずかにある。だけど、極端な一極集中の中央集権のもと、長年
のピンハネと依存に慣れきった東京が、簡単に変れるだろうか。自ら変れない東京
の弱みにつけこみ、モンスターのような「胃袋ビジネス」は健在だ。20年前より、
もっとすごいことになっている。

「日本社会は、どうやらまだまだ幻の"うまいもの"を、忘れものを探すように、生
真面目に追い求めている」「その窮屈至極な食べ物の世界に、ジャーナリズムが大
きな風穴を開けるのはいつの日のことになるのだろうか」とライターの一人、林巧
さんは「現代ニッポン人の味覚の指向を決めた男たち」で書く。江原恵さんが「グ
ルメ時代の迷信」を寄稿していたので買っておいたままだったが、いま読むと、
失われた20年間にタメイキが出る。しかし一方では、 20年前ぐらいから始まっ
た「グリーンストック運動」の新しい段階の展開、たった7町村で5年前に始まっ
た「日本で最も美しい村」連合は30町村をこえる勢い、八戸が発祥で先日の第4
回も盛況だった「B1グランプリ」など、いずれも地方から始まり地方が拠点であ
る動きも活発だ。「東京は上で先で手本、地方は下で後で真似」とはちがう関係、
目が離せない地方の動きも着実に広がっている。

〈えんどう・てつお〉Webサイト「小学館ブックピープル」で、料理研究家・
瀬尾幸子さんの料理に文章をそえる「わははめし」の連載が始まっている。毎月1
回更新で、3回目まで掲載中。来春、本になる予定。
http://bp.shogakukan.co.jp/wahahameshi/

「ザ大衆食」http://homepage2.nifty.com/entetsu/

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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(77)酒つま広告小史2
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『酒とつまみ』にいかなる広告が掲載されてきたかを、前回から2回にわたって
振り返っている。

第6号あたりから、広告主のバリエーションがぐんと増えるのだが、ちなみに第
6号では、「早稲田古書店街」や、「村田順子さん」の広告が初登場している。そし
て第7号。表2は「ふじもと歯科診療室」と「ほねつぎ是政整骨院」。この2枚看
板はその後の8号、10号でも我らが『酒つま』の表2に君臨した。

7号に初登場したのは札幌の館浦あざらしさん主宰の「海豹舎」と、もうひとつ
が「ZONE」。「特殊美装、洗浄剤・消臭剤オーダー製造」の会社だそうで、『酒
つま』を応援してくださる方々の幅の広さに、一瞬うろたえたのだった。

そして第8号。創刊号からお世話になりっぱなしの「高円寺文庫センター・信愛
書店」が初登場。「海豹舎」は『北海道いい旅研究室』の最新号がしばらく出ない
ことを告知するという、実にユニークな広告を出稿した。

「大日本生ゲノム」の広告掲載が始まるのは第8号で、次の第9号では、「日本ス
ローコメディ協会」製作の表3一面広告を掲載。タイトルは「朝酒新聞」。トップ
ニュースは日露酒脳会談なのだが、私は、新聞のタイトル下の小さな広告欄に爆笑
した。「飲酒運転防止に」というサブキャッチの後にあったコピーは、「あなたの飲
酒代行します」というものだった。

これを見た瞬間から5分ほど、私は笑い続けていた。ようやく笑い止んで、〈人
の代わりに飲んで、その人から金もらえるのか〉と思った瞬間からまた、5分笑った。
同協会製作の「朝酒新聞」は、最新の12号まで変わらず掲載されている。

 第10号になると、小誌名物連載「つまみ塾」の瀬尾幸子さんのご著作の広告の
ほかに、「森本暢之/たらすな」さんの広告、「日比谷・酒と本を愛する会」の広告、
11号では「吉田戦車/伊藤理佐」さんの広告、さらには「中村よお」さん、「竜巻
竜次」さんの広告も初登場。個人の方からの広告が着実に増えている。

 そして最新の12号では、「本町靭」さんの個人広告に加え、「情報センター出版
局」から『テレビ鑑賞家宣言』、「集英社」から『今宵も酒場部』と、書籍広告も増
えた。実は私も自著2冊を紹介する広告を掲載しているのだが、これは誌面にもあ
るとおり自腹広告。ちゃんとお金を払います。

 自腹広告といえばもう一人、小誌カメラのSさんがいる。創刊号より『酒とつま
みと男とおんな』という連載を手がけてきたが、なぜか行き詰まり、第8号からは
『酒とつまみとハゲとボイン』とタイトルを変更。装いも新たに新境地の開拓に挑
んだが、なぜか行き詰まり、第10号で2分の1ページを使って連載休止の言い訳
を掲載。

 その後一念発起して第11号からの復帰を目指したが、やはり行き詰まり、すで
に言い訳もしていることから一切の担当スペースを喪った。そして12号までの約1
年、連載復帰への執念を燃やしたのだが何も出てこず、とうとう自ら金を出すこと
を条件にスペースを確保した。つまりは自腹広告。広告に込められたメッセージを
端的に言うと「お仕事ちょうだい」。こんな感じだ。

 いやはや『酒つま』の広告の歴史は短いが、そこにはなにやら感慨深いものもあ
る。そろそろ、Sさんと私のもとには、新生『酒とつまみ』社から広告料の督促が
来る頃である。
 
〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集長。
『酒とつまみ』第12号、無事に納品されました。そして今、配本、発送作業を継続
中です。未だお手元に届かない方、今しばらくの間、お待ちくださいませ。よろしく
お願い申し上げます。
http://www.saketsuma.com

第19回神保町ブックフェスティバル
大竹聡さんトークショー
『酒とつまみ』編集長、大竹聡の話のおつまみ
開催日時 2009年11月1日(日曜日)15:00から17:00 開場14:45
開催場所 東京堂書店・神田本店6階
参加方法 要予約。ご参加費無料
電話または、メール(tokyodosyoten@nifty.com)にて、件名「ブックフェスティバル
酒とつまみイベント希望」・お名前・お電話番号・参加人数、をお知らせ下さい。
10月29日以降は、お電話にてお問合せください。
電話 03−3291−5181

ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

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[書評]のメルマガ vol.428
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■         vol.428
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[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。秋のブックイベント9連発。
★短期集中連載「なぜ、フリーペーパーなのか」
 →全国各地のフリーペーパー発行者の「生活と意見」をお聞きします。
★「関西古本女子だより」郷田貴子(ちょうちょぼっこ) 
 →大阪と神戸の「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「食の本つまみぐい」遠藤哲夫
 →〈大衆食堂の詩人〉エンテツが料理文化史の重要本を紹介します。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →次号掲載。

*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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★秋のブックイベント その1・不忍ブックストリート
秋も一箱古本市2009
谷根千恒例の一箱古本市、今年の秋は6か所で開催します!

2009年10月10日(土)11:00〜16:30
*雨天の場合は11日(日)に順延

大家さん(古本市会場
宗善寺、ライオンズガーデン谷中三崎坂、コシヅカハム、アートスペース・
ゲント、C.A.G.+Negla、大円寺
 
≪お楽しみイベント≫
・あのひとの一箱
不忍ブックストリートで本に関わる仕事をしているひとたちが、自宅の本棚か
ら一箱を出店します。ベールに包まれた読書生活が明らかに!? あのひとは普段
どんな本を読んでいるんでしょう?

・メリーさんの奇妙な果実 〜第2章〜  古書ほうろう
昨秋、大人気を博したヤギのメリーさんが、秋も一箱古本市に帰ってきます!メ
リーさんに扮するのは、美術家・中村正さん。古書店を舞台に、動物人形たちが
生み出されてゆく不思議なライブパフォーマンスをお楽しみください。
今年は子ヤギのティペットも登場します。こちらもお見逃しなく!

・路上ペンギン写真展  宗善寺
東京の街を徘徊するペンギン・銀の輔の即席即日写真展を開催します。カメラマ
ンは写真家・高野ひろしさん。谷根千界隈の写真も一杯あります。銀の輔も会場で
待ってます!

・そうすけの100m書行  古書ほうろう
「書法現場展ライブ」でもおなじみの書家、北村宗介氏が、宋代の三大書家黄山谷
の草書李白詩巻全文を一行書100mに書き上げます。遅々と歩み、筆と紙との接点
のドラマは展開します。「百聞は一見に如かず」。書の大きなうねりと風を感じてく
ださい。
14時 古書ほうろう集合 すずらん通り縦断

・まちのイベントあれこれ
秋も一箱古本市当日は、まちのあちこちでイベントが開かれています。併せてお楽
しみください。
芸工展    10月10日(土)〜10月25日(日)
谷中まつり  10月10日(土)・11日(日) 初音の森ほか
菊まつり   10月10日(土)・11日(日) 大円寺

詳しくは
http://d.hatena.ne.jp/seishubu/

★秋のブックイベント その2・京都
子どもの本専門店メリーゴーランド京都2周年記念企画          
“小さな古本市”

10月10日(土)・11日(日)・12日(祝月) 10:00〜19:00

会場   寿ビル5F メリーゴーランドとギャラリーギャラリーの公共スペース
   600-8018 京都市下京区河原町通四条下ル市之町251-2 寿ビル5F
電話 075−352−5408(メリーゴーランド京都 担当,三野 協力,扉野)
E-mail mgr-kyoto@globe.ocn.ne.jp

ミニ・ライブ   吉田省念と三日月スープ 
10月12日 15:00スタート 投げ銭ライブ

出品者
アトリエ箱庭、伊藤まさこ、岡崎武志堂、文壇高円寺古書部、海文堂古書部、
貸本喫茶ちょうちょぼっこ、GALLERYGALLERY、古書コショコショ、古書善行堂、
とらんぷ堂書店、トンカ書店、FORAN、BOOKONN、古本オコリオヤジ、
増田喜昭、moshi moshi (モシモシ)、りいぶるとふん、吉田省念と三日月スープ

★秋のブックイベント その3・仙台
こしょこしょ古書市

10月18日(日曜日)
13:00〜18:00(18:30解散予定)

東北学院大学土樋キャンパス
六軒丁祭 古書市会場

http://blog.livedoor.jp/kosyoblog/

★秋のブックイベント その4・大阪
第2回ひねもす古本市〜男の子と女の子編〜

本と繋がる、人と繋がる。いろいろな人のいろいろな本棚、のぞいてみませんか。
年齢も職業もばらばらだけれど、「本が好き!」という共通点を持った人達が集ま
り、一日だけの古本屋さんを開きます。自分が読み終えた本、自分にとっての役目
は終えたけれども誰かのところでまた利用されたらいいなぁと思う本、みんなに紹
介したい本、などを持ち寄って対面販売する……という趣旨の催しです。合間に小
さなライブもありますよ。今回の古本市のテーマは、「男の子と女の子」です。「男の
子と女の子」な本、音楽、雑貨などなどお楽しみに!

日時:2009年10月18日(日) 11:00〜17:00
場所:中崎町Common Cafe(http://www.talkin-about.com/cafe/)
〒530-0015 大阪市北区中崎西1-1-6 吉村ビルB1F (地図)

・古本出店:Coto+Ri/「Sanpo magazine」古本部/a smile and a ribbon/ちんぷ
んかん文庫/はなめがね本舗/空色文庫/艶文亭/うずまき舎/はにわ屋/雨甘堂/MAGIC
ラ部/ねこざき堂。/暢気文子/caramba(特別出店) 
・ライブ(投げ銭制):ちんぷんかんぷん(15:30〜) セロテープス (13:30〜)
・場内音楽:なかぐち/ごろ寝/とよなか/箸休め / あまおうじ
・本にまつわる雑貨:natsuakubi
・ごはん:箸要らず / モッフル もふろび
・おやつ提供:ミロワール

http://hinemosubook.web.fc2.com/

★秋のブックイベント その5・福岡
ブックオカ2009

2009.10.18(日)〜11.18(水)

「福岡を本の街に」を合い言葉に、地元福岡の書店・出版社・雑誌社・制作者等の
有志で立ち上げた実行委員会が中心となって、2006年に始めた本のお祭り、ブッ
クオカ。第4回目となる今年も、本や活字の魅力を再発見するさまざまなイベント
を開催します。
ことしの目玉は恒例の特製文庫カバー。TVQでも放映中の『毎日かあさん』や今
春映画化された『いけちゃんとぼく』、そして現在公開中の『女の子ものがたり』
の原作者で漫画家の西原理恵子さんの描き下ろし。また10.25(日)には西原理恵子
さんが来福し怒濤のトーク。ほかにもさまざまなイベントあり、トークあり、ワーク
ショップあり。今年も読んで・見て・聞いて・食べてたのしいブックオカ。間もなく
スタート!!

一箱古本市 in けやき通り 10月31日(土)

ほかの企画はサイトを
http://www.bookuoka.com/

★秋のブックイベント その6・神戸
第5回 海文堂の古本市

2009年10月23日(金)〜11月1日(日)
海文堂書店 2F <Sea Space>

 楽しみにしてくださるお客様も増えてきました「海文堂の古本市」も、第5回です。
いくらステキな本でも、絶版になってしまっては新刊書店はお手上げです。そこから
先は古本屋さんに頼るしかありません。
今回も、神戸近郊の古本屋さんと新刊書店・海文堂が力を合わせて、本好きのお客様
に喜んでいただきます。「コレを探してたんや!」とか「こんなん、みつけた!」と
声を上げながら“私の一冊”と出合ってくださいますことを……。

<参加古書店>
やまだ書店(平野商店街)/イマヨシ書店(平野商店街)/レトロ倶楽部(中央区)/
あさかぜ書店(明石市)/一栄堂書店(長田区)/オールドブックス ダ・ヴィンチ
(中央区)

海文堂書店
〒 650-0022 神戸市中央区元町通3−5−1
TEL (078) 331-6501 FAX (078) 331-1664
http://www.kaibundo.co.jp
http://d.hatena.ne.jp/kaibundo/

★秋のブックイベント その7・広島
《ひろしまぶっくでいず参加企画》
お好み本ひろしま2009

本が大好きな方も、今まであまり本に接していない方も、新しい本の楽しみ方を見つ
けてみませんか?  一箱古本市や様々な形で本と接している方々のトークショーな
どを、秋の読書週間に合わせて開催致します。

2009年11月7日(土)・8日(日) 二日間
     AM10〜PM4時
開催場所:広島市内中区袋町周辺、JR広島駅前周辺
主催:お好み本ひろしま2009実行委員会

・前夜祭:岡山県倉敷市「蟲文庫」田中美穂さんトーク
      司会進行・南陀楼綾繁さん
日時:11月6日(金) 19時〜20時30分
場所:カフェパコ(広島市中区大手町3−8−3 2F)

一箱古本市
日時:11月7日(土)・8日(日) 2つ日間開催
         両日ともに10時〜16時
      場所:広島市中区袋町周辺
      共催:袋町裏通り活性化委員会(大家さん)
      出店費用:一日1000円
      ただいま、出店者募集中です。
      http://fly8.jp/2009110708/

・岡崎武志×南陀楼綾繁トークライブ
日時:11月7日(土) 12時30分〜13時30分

・北尾トロトークショー
日時:11月7日(土) 14時〜15時30分

・「路面電車貸切イベントPART1」やまだ屋トレイン発車!
  広島名物路面電車を貸し切って、ライブ&トークを行います。
日時:11月7日(土) 16時〜17時30分
場所:JR広島駅前―江波駅間往復
出演:玉城ちはる(広島出身シンガーソングライター)
   ゴトウイズミ+アコーディオン(広島在住ミュージシャン・ヲルガン座勤務)
   野口美紀(広島在住・オカリナ奏者)

・湊かなえトークショー
日時:11月7日(土) 18時〜19時

・「路面電車貸切イベントPART2」
  広島名物路面電車を貸し切って、創作落語&トークを行います。
日時:11月8日(日) 11時〜12時30分
場所:JR広島駅前―江波駅間往復
出演:岡崎武志(ライター、書評家)
   南陀楼綾繁(ライター・編集者)
   平々亭青馬(へいへいていぶるま)広島在住

◎ 松浦弥太郎トークショー
日時:11月8日(日) 14時〜15時30分
→予約終了

詳しくはサイト
http://www.bookrainbow.com/okonomi/

★秋のブックイベント その8・佐賀
BOOKマルシェ佐賀2009
11/13(金)〜15(日)

一箱古本市 in 佐賀 概要・注意事項
日時:11/14(土)15(日)の両日  11:00-16:00
会場:絵本の店ピピン〜エスプラッツ周辺の軒先
※雨天決行(雨天の場合、屋内会場への変更あり)
白山名店街アーケード内+656広場
募集数:各日25箱(両日合計50箱)
※定数に達し次第応募を締め切らせていただきます。【10/30応募〆切】
参加費:各日1箱¥500 ※両日参加も可(その場合¥1000)

その他、小柳帝トークショー、『私は猫ストーカー』上映記念・浅生ハルミント
ークショーも。
http://book-marche.com/

★秋のブックイベント その9・ふたたび京都
cafe de poche vol.8 −私的読書週間− 〜音楽〜

2009 Oct.29(thu)-Nov.1(sun) 12:00 - 19:00
    Nov.3(Holiday)Cafe 11:00-14:00(L.O.), Live17:00-
at:trico+

cafe de pocheはスタッフのセレクトした本でつくる期間限定のブックカフェです。
8回目となる今回のテーマは「音楽」。音楽を楽しむためのテキスト、読書を楽し
むための音楽。音を感じる小説や音楽家にまつわる本、解説、詩集、音楽雑誌、楽
譜、コンサートのパンフレット、ライナーノーツ……。そんな“音楽”をイメージ
する本や印刷物、“本”を感じる音楽をたくさんご用意してお待ちしています。
最終日には、たくさんの本に囲まれたギャラリーでのアコースティックライヴを開催。
スタッフ・ゲストの蔵書放出の古本マルシェも開催します。
紅葉あざやかな秋のひとときを、お気に入りの一冊、そして一曲とともに。

ライヴ(予約制) 11月3日(火・祝)17:00−
ふちがみとふなと / 吉田省念と三日月スープ
fee 2500円(tax in) drink持込可
予約受付開始 10月10日(土)10:00〜
cdp@zacca.com までメールにてお申込下さい。(先着順)
定員になり次第締め切ります。  
            
古本マルシェゲスト 
  古本オコリオヤジ 古書善行堂 古本けものみち スクラップ館 火星の庭
アトリエ箱庭 貸本喫茶ちょうちょぼっこ カライモブックス ポコモケ文庫 ほか

cafe de poche による小冊子、CDP vol.1「音楽と本と人」を限定販売します。
*期間中、六曜社地下店焙煎のコーヒー、Luluの焼菓子をお愉しみいただけます。
  気になる本を手にとって、心ゆくまでおくつろぎください。
*11月1日(日)には数量限定の“三日月スープランチ”を予定しております。

cafe de poche http:// cccc.ra indrop. jp/cdp
produced by 小西佐紀子/大林ヨシヒコ/伊東琴子/ナカムラユキ
                
trico+(LOGO)
地図     zakka+galerie+petit cafe
〒606-8255京都市左京区北白川西瀬ノ内町27-1
TEL&FAX075-723-1185 
HP: http://tricoplus.petit.cc
阪急河原町駅より市バス3番線「北白川小倉町」下車3分
  JR京都駅より市バス5番線「北白川別当町」下車5分
  叡山電鉄「茶山駅」より徒歩8分

なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

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■短期集中連載 なぜ、「フリーペーパー」なのか
(3)フリーペーパーから始まった 大嶋宏和(『ORDINARY FUNERAL』)
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 個人的にマンガを描き、作品がたまると『ORDINARY FUNERAL』というタイト
ルの冊子を作っています。最初に作ったのは2004年の夏。コピー印刷でA5サイズ、
ホッチキスで中綴じ、という形式が基本です。冊子を作ろう、と決めてからマンガを
描き始めたので、「自分で本を作る」という事自体に憧れていたのだと思います。と
にかく外側を作りたかったのです。

 ですから、内容までは深く考えていませんでした。個人的な体験や愚痴といったも
のを、そのままマンガにしていました。居酒屋にて本気で「あの女性タレントなら、
つきあってって言われても俺は断るね」とか下らなすぎる会話で盛り上がる事があり
ますよね。そういう程度の内容です。とても人に見せるものではないのですが、当初
は友人に配るだけだったので成立していました(やさしい人たちばかりだ)。作って
る本人の感覚としては、友人に宛てた手紙のようなものでした。友人に配るのだから、
もちろんタダです。

 こういう流れでフリーペーパーを作り始めました。冊子という形式ならではの反応
もありました。手紙なら、普通受け取った側はあまり他人にその内容を見せませんが、
冊子の場合、友達がその友達に見せる、という事があります。初対面の人が、すでに
僕の事を知っているという状況がいくつかありました。こういう人とのつながりを生
む、コミュニケーションツールであることに気付きました。

 次にそのコミュニケーションを少し拡げようと思い、フリーペーパーとしていくつ
かの場所で配布することにしました。本屋やレコード屋にお願いして、店先において
もらいました。「友人ならともかく、赤の他人に自分のマンガが通用するのか?」と
いうためらいもありました。けれど、フリーペーパーという形式が気分を軽くしてく
れるようでした(気に入らなければ捨てられるだけさ、と開き直る。怪文書をバラまく
気分)。

 そうすると、お願いに伺ったお店の方から、直に感想などを伺えるようになりまし
た。また、冊子を拾ってくれた、全く接点のないような人からメールをもらうことも
ありました。こうなってくると、さすがに冊子に対して、自分の作品のような気持ちが
めばえてきます。人に読んでもらうのだから、いつまでも飲み屋の会話のようなものじ
ゃダメだ、と考えるようになりました。さらに、もっと面白いものを描きたい、という
欲のようなものまで湧いてきました。外側だけ作って満足だったものが、だんだんと内
側に目が向きはじめたようです。

 今まで気楽に、気の向くままに作っていた冊子なのですが、ここに来てだんだんと
制作のペースが落ち始めます。うんうんと悩みながら作るので、1冊作るのに1年以
上かかるようになりました。そうこうしている間に、同じように自主制作で冊子を作
っている方や、マンガを描いている方などと知り合うようになりました(フリーペー
パーでやっている人もいれば、値段を付けて売っている人もいる)。さらにそういっ
た方々から、「今度ウチの冊子に原稿描いていただけませんか」と依頼されるように
なりました。

 近いところでは、大阪の『sanpo magazine』という個人出版誌にマンガ短編を描
かせていただきました。この冊子はフリーペーパーではなく、販売されているもので
す。そこに僕のマンガが。さらに原稿料までいただいてしまった。これはもう、完全
に次元の違うところまで来たな、という感じがしました。最初のころの「気楽なお手
紙」な気分はとても通用しません。自分勝手にしていたころと違い、プレッシャーを
感じます。けれどその分、自分の作品に真剣に取り組めました。まるでプロ作家気取
りかも知れませんが、「もっと面白いものを」とめばえた自分の作品への欲は、こう
やって満たされていくような気がしました。

 現在、僕はマンガを自分の冊子のために描きためています。どういった形のものに
なるか分かりませんが、フリーペーパーではなく値段をつけて売る形式にするつもり
です。友人への手紙、コミュニケーションツール、など色々な目的で冊子を作ってき
ましたが、今度は自分の欲求を満たすために作ろうと思っています。「お金をつけた
とたんそっぽ向かれたらどうしよう(タダなら読むけど、お金払ってまで見たくな
いよ)」などと不安もあります。けれど「面白いもの」「人に伝わる作品」を求めて、
気楽さを捨ててみようと思っています。

 こうして思い返してみますと、フリーペーパーという手軽さから始まった僕の冊子
作りも、少し遠いところに来たようです。なんと言いますか、親元を離れる子供の
ような、頼もしいような寂しいような、そういう感慨が湧いてきます(自分自身のこ
となんですが)。

〈おおしま・ひろかず〉
2004年よりマンガ冊子『ORDINARY FUNERAL』を作成。大阪市在住。
関西自主制作誌イベント「PEN AND PAPER」に参加。ミニコミ、ZINEなど自主
制作誌を作る人たち自身で動いて運営するイベントです。次回開催は11月8日(日)、
京都のCAFE LA SIESTAで開催されます。詳しくはHPをご覧下さい。
http://penandpaper.ojaru.jp/

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■関西古本女子だより  郷田貴子
(26)気のせいかなって思えば平気よ
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通勤電車で読書ができるようになりました。新しい仕事がはじまり、数ヶ月。ちょ
うちょぼっこはもう10年。何年くらいお勤めできるでしょうか。それから、賞与は
もらえるのでしょうか。不安要素がいっぱいです。

前回、真治さんが、私とるきさんのことを書いていたので、へー、どんな風だっけ
ねと思って再読しましたら、るきさんが「気のせいかなって思えば平気よ」と言って
いて、るきさん!と思いました。が、るきさんは私より冷静で淡々としていると思う
のでした。

るきさんがナポリに突然旅立ってしまったように、わたしも、どこかに旅立ってし
まいたい。
毎朝、通勤途中で一緒になる高校生の群れの中で、ヨーロッパの石畳や、大陸の草
原を歩いている自分を想像して現実逃避をはかっています。

さてちょうちょぼっこの4人は、もうすぐ知り合って10年ですが、一度も一緒に
旅をしたことがありませんでした。なんとこの秋、はじめての旅行にでかけることに! 
いいだしっぺは真治さん、手配するのは杏さん、最後まで目的地を知らないのが次田
さん、という感じです。最初で最後にならなければよいですが。

さておしまいに、私の手元にやってきた詩集の話をひとつ。少し前、開店したばか
りの京都の善行堂で、探していた(山本さんが、その本を古本市で買った日記を読ん
だことがあったのです)木村恭子さんの『あざらし堂古書店』(三宝社)という詩集
をみつけ、ちょうちょぼっこの日記に書いたら、偶然、同じ日に善行堂に行ってたと
いう方からメールが届きました。木村さんの詩は、よいですよねと。

そして、木村恭子さんご本人から「くり屋」という小さな個人詩誌が届く運びにな
ったのです。木村さんは、ちょうちょぼっこのことも知っていてくださり、嬉しいお
便りも同封されていました。(以前にも、別の方から木村さんの詩集をいただいたので
した。)

木村さんの詩には、おそらく職業柄、子どもや老人、それから誰も知らない街がよ
くでてきます。そこには、まるで私もみたことがあるのではないかという瞬間が書か
れていたりして、はっとします。

メールをくれた葉月さんは、「詩学」に掲載されていたいくつかの詩のコピーと、
葉月さんが木村さんの詩集『ノースカロライナの帽子』について書かれた同人誌も一
緒に持ってきてくれました。そして、まだ手にしたことがなかった詩集「十二月」渓
水社までみせていただけることに。

さらに木村さんが発行している詩誌に寄稿されていた木川陽子さんの詩集『芽キャ
ベツ記』夢人館、『夕映えと』という小さな追悼詩集も一緒に。それもまた、よかっ
た。るきさんじゃなくて、るいさんの記という詩をすこしだけ。

 もうわたしにはご飯も炊けない
 何もできないのだ と
 腹の底からよくわかった
 生煮えの米や甘藷を
 そこらじゅう吐き出したまま
 るいさんは
 ゆめのなかですこし泣いた

お米が炊けなくなるのと、本が読めなくなるのと、どっちが先かなぁと、近いよ
うな遠いような先のことを考える。

それはひとまず、本が人を呼び、また人が本を呼んで新しく出会える場所が数は
多くなくてもたしかにあることを嬉しく思い、当番がめんどくさいのよねぇと思う
ばかりの今日このごろですが、ちょうちょぼっこもやっててよかったと思ったりし
ていることを忘れてしまいそうになるので、書いておこうと思ったのでした。

〈ごうだ・たかこ〉
老人宅を自転車で訪問する日々。自分の老後がいちばん心配。最近ちょうちょぼ
っこでは、こっそり漫画読書会なるものを開催中です。仕事帰りに漫画のコマを
コンビニでコピーしてレジュメをつくったり。10月は、京都の古本市に参加し
ますヨ。

小さな古本市
http://www.merry-go-round.co.jp/kyoto.html
cafe de poche vol.8 −私的読書週間− 〜音楽〜
http://cccc.raindrop.jp/cdp/cdp/

貸本喫茶ちょうちょぼっこ
〒550-0014 大阪市西区北堀江1-14-21 第1北堀江ビル402
http://www.geocities.co.jp/chochobocko/
*営業日は、第1〜3週末です。 金18:30-21:00、土日 13:00-20:00
貸本喫茶ちょうちょぼっこ
〒550-0014 大阪市西区北堀江1-14-21 第1北堀江ビル402
http://www.geocities.co.jp/chochobocko/

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■食の本つまみぐい  遠藤哲夫
(34)「農業ブーム」の根にあること
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別冊宝島『もっと食わせろ!』JICC出版局、1992年11月

この夏、陣内秀信さんらが企画委員の、都市研究誌『city&life』93号(季刊、
第一住宅建設協会、編集協力・アルシーヴ社)の仕事をした。一年前には「美味
しいまちづくり」のテーマで、岩手県一関市と青森県八戸市を訪ねた。その前は、
「路地・横丁空間からの都市再生」の特集で、東京の横丁・路地の取材に関わっ
た。今回の特集は「マチとムラの幸福のレシピ」だった。「日本で最も美しい村」
連合に加盟の北海道美瑛町、山形県大蔵村、長野県大鹿村を取材した。そのあと
講演で御前崎市の御前崎へ行く機会もあった。美瑛町以外は鉄路の無い交通不便
の地域だ。「過疎」といわれ「高齢化率」も高い農山漁村地域。ほかにも仕事ぬ
きで新規就農者や生産者を訪ね、東京の横丁・路地から地方都市から農村から、
「まちづくり」なんてものを考えることになったが、俺としては「食」と「農業
ブーム」の動向が気になっていた。

美瑛町では5年ほど前に都会から新規就農した2人の方に会った。そのあと大
鹿村へ行ったとき、何人かの通りがかかりの人と話をしたら、そのうち2 人の方
は、20年前に都会から移住したといった。「20年前」と聞いて、ピンとくるものが
あった。20年前、1989年だ。そのころ、俺は、バブルの金を運用して一発やる話
にのり、ある山村へ行って、移住を前提に農業生産法人などをつくり「農業ビジネ
ス」に参入すべく、うごめいていた。今回の『city&life』93号には、北海道大学
観光学高等研究センター教授の佐藤誠さんの談話が載っている。佐藤さんは、20
年前熊本大学にいて、「グリーンストック運動」を始めた方だ。俺も、その構想の
影響を受けていたし、似たようなことをやろうとしていた。いま「農業ブーム」と
いわれる動きの根には、20年前ぐらいから続く大きな変化があるのだ。そのころ
から顕著になった、日本の食と農が直面する大きな問題を、「胃袋ビジネスの裏の
ウラ」とセンセーショナルな書き方でチョイと分析のおかしいところもあるが、大
雑把に総花的に知るには、本書は好都合だ。

本書の発行はバブル終焉の92年。80年代中ごろのバブルと共に「一億総グルメ」
が始まり、こんにちまで続く「B級グルメ」騒動の一方で、農業の衰退は加速度的
にすすむ。東京は「グルメ」騒動、食料生産の農村は疲弊、相反する現象。こんなこ
とが長続きすると思っているほうがおかしい。そのころすでに、「グルメ」騒動にふ
りまわされずに、都市と農村のありかたを考えながら食を考える動きがあった。本書
の「まえがき」に相当する「たかがメシの話から」の書き出しは、こうだ。「うまい
もんが食いたい! そう思って本書を開いても、ここには「究極の味の店」の紹介も
なければ、「食が危ない! もっと安全な食べ物を!」と叫ぶ声もない。この両極端
ともいえる「食」への関心のはざまに、われわれの「日々の食」はあるのだ」

いまだって都会では、細分化された「専門」に特化した「グルメ談義」と「安全・
安心・健康」のはざまで、「日々の食」「たかがメシの話」への関心は、きわめて低レ
ベルといわざるをえない。人間だからなのか、日本人だからなのか、にっちもさっち
もいかなくなってからでないと自ら変れない、手を打てない。「日々の食」「たかがメシ」
もグルメネタになってしまうグルメ談義のほうが盛んで、反比例するように農業の衰退
が続いたのち、行きづまった現実が目の前になって、農業政策の「転換」が始まった。

「小泉改革」というと郵政が注目されるが、むしろ農政だった。これがまあ切羽詰っ
てからだとこんな方法しかないのか、まさに丸投げ、「保護」からトツゼン「市場」
へ丸投げだ。いまや右往左往の無政府状態。であるがゆえの活気もあって「農業ブ
ーム」という傾向でもある。新農業基本法、新農地法などで、参入も離農もやりや
すくなった。だけど、4割減反。水田の4割を減らすのだ。そりゃ、景観まで変る
わな。稲作専門農家は給料4割カットくらったようなものだ。離農や耕作放棄が
急増。が、しかし、その農政について賛否はあっても、コトここまできてしまう
と妙手なんぞなさそうだ。

結論を急いで書けば、行きづまっているのは、「東京一極集中」であり、東京を
モデルにした「まちづくり」であり、そのもとでの農業なのだ。東京の人びとが、
「日々の食」「たかがメシの話」をどうするか、東京の「まちづくり」を自分のま
ちの街路の賑わいだけでなく、東京を支える農業や農村まで視野に入れられるよう
になったとき、つまり自分のまちから「マチ」と「ムラ」の関係を考える「まちづ
くり」になったとき、もしかするとよりよい変化になるかも知れない。「農業ブーム」
には、その気配もわずかにある。だけど、極端な一極集中の中央集権のもと、長年
のピンハネと依存に慣れきった東京が、簡単に変れるだろうか。自ら変れない東京
の弱みにつけこみ、モンスターのような「胃袋ビジネス」は健在だ。20年前より、
もっとすごいことになっている。

「日本社会は、どうやらまだまだ幻の"うまいもの"を、忘れものを探すように、生
真面目に追い求めている」「その窮屈至極な食べ物の世界に、ジャーナリズムが大
きな風穴を開けるのはいつの日のことになるのだろうか」とライターの一人、林巧
さんは「現代ニッポン人の味覚の指向を決めた男たち」で書く。江原恵さんが「グ
ルメ時代の迷信」を寄稿していたので買っておいたままだったが、いま読むと、
失われた20年間にタメイキが出る。しかし一方では、 20年前ぐらいから始まっ
た「グリーンストック運動」の新しい段階の展開、たった7町村で5年前に始まっ
た「日本で最も美しい村」連合は30町村をこえる勢い、八戸が発祥で先日の第4
回も盛況だった「B1グランプリ」など、いずれも地方から始まり地方が拠点であ
る動きも活発だ。「東京は上で先で手本、地方は下で後で真似」とはちがう関係、
目が離せない地方の動きも着実に広がっている。

〈えんどう・てつお〉Webサイト「小学館ブックピープル」で、料理研究家・
瀬尾幸子さんの料理に文章をそえる「わははめし」の連載が始まっている。毎月1
回更新で、3回目まで掲載中。来春、本になる予定。
http://bp.shogakukan.co.jp/wahahameshi/

「ザ大衆食」http://homepage2.nifty.com/entetsu/

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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(77)酒つま広告小史2
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『酒とつまみ』にいかなる広告が掲載されてきたかを、前回から2回にわたって
振り返っている。

第6号あたりから、広告主のバリエーションがぐんと増えるのだが、ちなみに第
6号では、「早稲田古書店街」や、「村田順子さん」の広告が初登場している。そし
て第7号。表2は「ふじもと歯科診療室」と「ほねつぎ是政整骨院」。この2枚看
板はその後の8号、10号でも我らが『酒つま』の表2に君臨した。

7号に初登場したのは札幌の館浦あざらしさん主宰の「海豹舎」と、もうひとつ
が「ZONE」。「特殊美装、洗浄剤・消臭剤オーダー製造」の会社だそうで、『酒
つま』を応援してくださる方々の幅の広さに、一瞬うろたえたのだった。

そして第8号。創刊号からお世話になりっぱなしの「高円寺文庫センター・信愛
書店」が初登場。「海豹舎」は『北海道いい旅研究室』の最新号がしばらく出ない
ことを告知するという、実にユニークな広告を出稿した。

「大日本生ゲノム」の広告掲載が始まるのは第8号で、次の第9号では、「日本ス
ローコメディ協会」製作の表3一面広告を掲載。タイトルは「朝酒新聞」。トップ
ニュースは日露酒脳会談なのだが、私は、新聞のタイトル下の小さな広告欄に爆笑
した。「飲酒運転防止に」というサブキャッチの後にあったコピーは、「あなたの飲
酒代行します」というものだった。

これを見た瞬間から5分ほど、私は笑い続けていた。ようやく笑い止んで、〈人
の代わりに飲んで、その人から金もらえるのか〉と思った瞬間からまた、5分笑った。
同協会製作の「朝酒新聞」は、最新の12号まで変わらず掲載されている。

 第10号になると、小誌名物連載「つまみ塾」の瀬尾幸子さんのご著作の広告の
ほかに、「森本暢之/たらすな」さんの広告、「日比谷・酒と本を愛する会」の広告、
11号では「吉田戦車/伊藤理佐」さんの広告、さらには「中村よお」さん、「竜巻
竜次」さんの広告も初登場。個人の方からの広告が着実に増えている。

 そして最新の12号では、「本町靭」さんの個人広告に加え、「情報センター出版
局」から『テレビ鑑賞家宣言』、「集英社」から『今宵も酒場部』と、書籍広告も増
えた。実は私も自著2冊を紹介する広告を掲載しているのだが、これは誌面にもあ
るとおり自腹広告。ちゃんとお金を払います。

 自腹広告といえばもう一人、小誌カメラのSさんがいる。創刊号より『酒とつま
みと男とおんな』という連載を手がけてきたが、なぜか行き詰まり、第8号からは
『酒とつまみとハゲとボイン』とタイトルを変更。装いも新たに新境地の開拓に挑
んだが、なぜか行き詰まり、第10号で2分の1ページを使って連載休止の言い訳
を掲載。

 その後一念発起して第11号からの復帰を目指したが、やはり行き詰まり、すで
に言い訳もしていることから一切の担当スペースを喪った。そして12号までの約1
年、連載復帰への執念を燃やしたのだが何も出てこず、とうとう自ら金を出すこと
を条件にスペースを確保した。つまりは自腹広告。広告に込められたメッセージを
端的に言うと「お仕事ちょうだい」。こんな感じだ。

 いやはや『酒つま』の広告の歴史は短いが、そこにはなにやら感慨深いものもあ
る。そろそろ、Sさんと私のもとには、新生『酒とつまみ』社から広告料の督促が
来る頃である。
 
〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集長。
『酒とつまみ』第12号、無事に納品されました。そして今、配本、発送作業を継続
中です。未だお手元に届かない方、今しばらくの間、お待ちくださいませ。よろしく
お願い申し上げます。
http://www.saketsuma.com

第19回神保町ブックフェスティバル
大竹聡さんトークショー
『酒とつまみ』編集長、大竹聡の話のおつまみ
開催日時 2009年11月1日(日曜日)15:00から17:00 開場14:45
開催場所 東京堂書店・神田本店6階
参加方法 要予約。ご参加費無料
電話または、メール(tokyodosyoten@nifty.com)にて、件名「ブックフェスティバル
酒とつまみイベント希望」・お名前・お電話番号・参加人数、をお知らせ下さい。
10月29日以降は、お電話にてお問合せください。
電話 03−3291−5181

ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

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[書評]のメルマガ vol.424
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■■ [書評]のメルマガ   2009.9.17 発行

■         vol.424
■■  mailmagazine of book reviews  [ 読書の準備 号]
■■------------------------------------------------------------
[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。秋の古本イベントいろいろ。
★短期集中連載「なぜ、フリーペーパーなのか」
 →全国各地のフリーペーパー発行者の「生活と意見」をお聞きします。
★「関西古本女子だより」頓花恵(トンカ書店) 
 →大阪と神戸の「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「音を探してページをめくる」貴島公
 →音楽サイト「モノノフォン」の主が、音とテキストの関係を考察する。
★「〈畸人研究〉今柊二の読書スジ」
 →準備しすぎて、なかなか読み出せなくなってしまうことってあるよね。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。
*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
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★第3回「鬼子母神通り みちくさ市」
 昨年11月30日にプレ開催としてスタートした商店街での古本フリマ
「みちくさ市」の第3回を9月20日に開催します。商店街の店先で一般
参加者が古本や雑貨などを販売し、わめぞによるミニ古本市も商店街内数
か所で開催します。鬼子母神通りが一日限定の古本街になります。

2009年9月20日(日) 10:00頃?16:00
雨天の場合、翌日21日(月・祝日)に順延(この日が雨の場合は中止)

※当日は、鬼子母神堂境内にて手創り市も開催されております。こちらも併せ
てお楽しみください(21日に順延の場合は開催なし)。
http://www.tezukuriichi.com/

会場
雑司が谷・鬼子母神通り
東京都豊島区雑司が谷2丁目・鬼子母神通り周辺
http://kmstreet.exblog.jp/

★不忍ブックストリートの秋も一箱古本市
本が好き、本も好き。
そんなこだわりの一箱を集めて、青空古本市を開催します。
本と人、出会いを探して、谷根千の街歩きはいかがですか?

2009年10月10日(土)11:00〜16:30
*雨天の場合は11日(日)に順延

≪会場≫
宗善寺/ライオンズガーデン谷中三崎坂/コシヅカハム
アートスペース・ゲント/C.A.G.+Negla
http://d.hatena.ne.jp/seishubu/

★あなたも入札ができる!
東京古書組合主催 「古書の日」イベント

《日本の古本屋博》
10月4日(日)〜11日(日)  
東京古書会館 〒101-0052 東京都千代田区神田小川町3-22
Tel 03-3293-0161 E-mail info@kosho.or.jp

10月4日は「古書の日」です。これを記念して、各種イベントを開催します。
期間中、ぜひ東京古書会館へ!

・体験古本市場
10月4日(日)  12:00〜14:00 (出品・入札参加希望の方は9:30〜16:00) 
BF1ホール
ナビゲーター・岡崎武志氏
大正から現在まで、さまざまな古本取引のスタイルを紹介するめずらしい機会です。
レトロな雰囲気あふれる、大正時代の古本オークションを再現するほか、現在のス
タイルのオークションには、古本屋と一緒に出品や入札でご参加いただけます。
出品・入札とも先着200名。もちろん見学のみも大歓迎です。

お問合せは東京古書組合・広報課(tel 03-3293-0161)まで
http://www.kosho.ne.jp/koshonohi/index.html

なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

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■短期集中連載 なぜ、「フリーペーパー」なのか
(3)ちっぽけな紙一枚が変えてくれたこと
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 はじめまして。こんにちは。
 仙台で『月刊佐藤純子』を発行しております佐藤純子と申します。同じようなタ
イトルのグラビア誌がありますが『月刊佐藤純子』にはグラビアはありません。お
見せできるようなグラマラスな体型でもありません。お間違えのないよう、あしか
らず。

 発行しております、とはいったものの、みなさんが普段、街で見かけるおしゃれ
なフリーペーパーのような立派なものではないのです。毎回28コマ程度の、コマ
すらもフリーハンドでゆがんだ不揃いのマンガをコンビニでコピーしてA4サイズの
紙一枚、ぺらりと友人知人に押し売りならぬ押し配りしているだけのものなのです。

 毎回1コマ目は「こんにちは ジュンコです」というあいさつと自画像からはじ
まる日々雑記やせたいとか髪を切ったとか親知らずを抜いたとか酔っぱらって帰っ
て記憶がないとか、世界が1ミリたりとも動かないような、たわいもないことばか
り書いています。友だちへの手紙の延長です。『月刊〜』と名付けましたが、調子に
乗って隔週くらいのペースで書いているので、読んでくれるひとからは「もはや月
刊じゃないね」なんて言われますが、あははーそうだねー、と笑ってごまかしてい
ます。

 創刊号を書いたのは、今年の一月末。わりと最近のことです。年賀状を出さなく
っちゃ、と思いつつもうっかりうかうかしているうちに、寒中見舞いももはや季節
外れというころになってようやく重い腰ならぬ腕を動かして、筆無精を詫びつつ、
年賀状を書くのが遅れた理由をマンガにして書いて送ったのがはじまりです。

 ついでに、その理由をお話させていただきますと、グレゴール・ザムザはある
朝目が覚めると昆虫になっていましたが、私の場合、大晦日の朝、目が覚めても
目が開きませんでした。両目ともものもらいになっていて、それでも仕事にいかな
くては、とひどいほうの目に眼帯をして、その上からメガネをかけて出勤ししかも
風邪を引いていて熱が出て顔がむくんで頭も痛くなってきて、眼帯をしていないほ
うの目も腫れ上がって視野がどんどん狭くなり、接客できる顔じゃないから帰れ、
との慈悲深くも容赦ない上司のことばもあり、予定を早めて帰省し、実家で手厚い
看護のもと年越しするも、元旦には眼球から出血、白目がなくなり赤目、まるでホ
ラー映画。救急病院で診察してもらった結果、全治二週間という散々なお正月だっ
たので年賀状を出すのが遅れてごめんなさい。

 と、こんな内容で、『月刊佐藤純子』賀正病床号(グラビアなし)とタイトルを
つけて配ったのが、思いのほか楽しんでもらえたようで、ほめてもらえたのがう
れしく、また書くのも楽しくて、調子に乗って書き続けて今に至る、というわけ
です。

 ところで、仙台で今年の6月に、「Book!Book!Sendai 2009 6月の仙台は本の月」
と称して、本にまつわるイベントをあれこれ開催しました。このBook!Book!Sendai
のメンバーに入っていまして、パンフレットやチラシの絵をかかせていただきま
した。地元紙の河北新報のサイトの中でブログを書かせていただいたり、東京の
わめぞのフリーペーパー「わめふり」仙台特集にもマンガを載せていただいたり
と、『月刊佐藤純子』効果か、予想外のうれしいたのしい展開が続いています。こ
んなにしてもらえていいのかしらー?? と戸惑いつつも、うれしい日々です。

 絵の勉強をしていたわけでも、マンガの練習をしていたわけでもなく、たまた
ま気がむいて書いて配ってみた、それだけのちっぽけな紙一枚がきっかけで、私の
ちっぽけな生活と世界は、すこーしだけ、変わりました。読んで喜んで楽しんでく
れるひとがいるということは、うれしくありがたく、こういうやりかたを得たとい
うことは、たのしくいつまでもほそぼそとゆるゆると書きつづけていけたらいいなぁ、
と思います。自分を表現したい!とか、情報を発信したい!とかの意欲はあまりなく、
いつかメジャーデビューを!なんて野望もなく、あくまでも、おたより。

 自分のステップで踊りつづけられたらそれでいいや、なんて、やっぱりちっぽけで
すが、そんな踊りを見てくれるひとがいるうちは、踊りつづけようと思います。いつ
かどこかで『月刊佐藤純子』を目にする機会がありましたら、あぁまだこのひとは踊っ
ているなぁ、って、ちょっとだけでも思い出してくれたら、それだけで、うれしいです。

〈さとう・じゅんこ〉仙台駅前の書店員。福島生まれの福島育ちで仙台暮らし。

「Book!Book!Sendai」http://bookbooksendai.com/
「河北新報ブログ」http://flat.kahoku.co.jp/u/junko/

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■関西古本女子だより  頓花恵
(25)喫茶本散策
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 神戸は喫茶店の多い街。
 貿易が栄えた港町ということから外国人向けの商館などで珈琲が振舞われるように
なり、異国情緒感じるハイカラ神戸の喫茶店は相次ぎました。その後は港湾労働者や
商社向けの大衆喫茶へと流れは繋がります。

『珈琲博物誌』によると神戸元町商店街3丁目に位置する茶商「芳香堂」が明治11年
に焙煎豆の飲用告知をしたとあり、喫茶として珈琲を取り扱った最初の店ではないか
ともいわれています。当時、珈琲の飲用習慣が広まっておらず味が定着せず流行しな
かったともありますが鹿鳴館時代を過ぎ徐々に輸入量が増えていきました。その中で
本格的な喫茶店が登場し、紆余曲折を経て現在の喫茶文化に至った模様です。

『珈琲豆本』というとても愛らしい本があります。全13巻。全て珈琲に関する豆本で
パラパラ捲っているだけで夢心地。花柳界で活躍していた芸姑さんが新しい飲み物を
楽しんでいたという記述も見られますが神戸の芸姑さんもまた然り。

 喫茶店で楽しみなのがモーニングサービス。珈琲一杯の値段で卵やトースト、フル
ーツなどがついてくる小さな幸福です。喫茶店それぞれの雰囲気やこだわりを知る上
でも食べ比べるのは面白いものです。神戸の「履き倒れの街」を象徴するケミカルシ
ューズ産業が盛んな長田区では昼夜働く人々にモーニングサービスが支持されました
が、名古屋、岐阜をはじめとする大衆喫茶文化の背景にはそういった地場産業との密
接な関係があるのかもしれません。

 朝モーニングをいただきながら読む本も喫茶本といえるでしょうか。行きつけの喫
茶店で時を忘れて読む一冊は珈琲、紅茶の良きお供です。喫茶本とは心安らぐ嗜好品
なのです。

〈とんか・めぐみ〉神戸元町にてザックバランな古本屋「トンカ書店」を営業中。
イベント案内:9/16〜9/30 岸本亜希子 銅版画展「その男、登場人物」
10/1〜10/15「moppemaco collection」
10/16〜10/23 村上穂積 作品展「神戸JAGナーレ」
詳細はHPまで

トンカ書店
650-0011 神戸市中央区下山手通3-3-12元町福穂ビル2D
078-333-4720
http://www.tonkabooks.com/

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■音を探してページをめくる  貴島 公
(17)歴史も唄のためにある!
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柳澤愼一『明治・大正 スクラッチノイズ』
ウェッジ文庫、2009年6月 原著2000年11月

 昔いっとき流行ったナントカの謎ものから、トリビアもの、雑学もの、封
印・発禁ものに至るまで、うんちくものは苦手です。微に入り細に入り調べ
上げながら、実のところ、取り上げている対象についてはどうでもよさげだ
から。どうでもいいところがイイんだなんてポーズまでとるものまでいそうだ。
そのくせ、とってつけたようなもっともらしい「主張」で話をまとめようとし
たりして、白々しい。

 この本の著者は、50年代から活動している歌手、俳優、ヴォードビリアン、
と書き出してみたものの、「CMソング、怪獣ソング、耳をつんざくロック
のリズムが子守唄代り・遊び唄代りの」世代ゆえ、かろうじて『奥さまは魔
女』のダーリン役の声優だったことを知るのみ、著者について紹介する資格
があるとは言えないけれど、それはともかく、明治元年から大正14年まで、
年を追って、興の向くまま話を脱線させながら、好きなジャズ小唄や演芸ソ
ングをたどったもの。ものはついでと語られる挿話はうんちくと言えなくも
ないけれど、あまたのうんちく本とは正反対。思い出したように現在や過去
の世相を斬りつつも、心はいつも好きな音楽のほうに向いている。

 なぜそのようなことがって、ときどき挟みこまれる参照指示を見るだけで
も、わかる。ある人物に触れるときに、「明治××年の章にも登場」とか、
「××頁にも」と文の中で注記して読み返す機会を示さずにいられないのは、
その名について、読者の興味を喚起しよう、少しでも記憶にとどめてもらう
ようにしようという意志のあらわれだから(しかも、人名については索引も
付いている)。話のネタにするだけなら、登場する名前なんてどうだってい
い。話としてウケればよいのだから、間違っていても、どってことない。で
も、ハナシの眼目は、できれば、話題にしている楽曲を耳にして、楽しんで
もらいたいというところにある。とすれば、名前を記憶の片隅にでもとどめ
てもらわないことには困るのである。

 著者は大ベテランではあるけれど、それでも、明治・大正は過去の話。こ
こに書かれている出来事を体験してきたわけではない。調べて書いたものと
いうことでは、世のうんちく本と変わらない。けれど、いつできた楽曲であ
れ、聴いて感銘を受けたなら、その経験は自分のものだし、自分の時代のも
のである。楽曲について知りたいと思い、過去の話にたどりついたのなら、
楽曲について語る限り、節度をもって過去に接する、というか、チシキとし
て語らずに済むという見本のような本。書かれたのは40年以上前で、にもか
かわらず、つい最近の出来事、話題が「とってつけたように」ではなく、織
り込まれている。強靭。こんな風に話せたらいいなと思う。「怪獣ソング」を。

〈きじま・こう〉説明業、趣味・読書と音楽鑑賞。
大正12年の章に出てくるアイシャム・ジョーンズの「夢の中で貴方に会いた
い」は、ロバート・クラム経由でカバーしたというジギタリスのアルバム
(復刻CDあり)で知った愛聴曲だけど、最近になって観たジョージ・ハリス
ンの追悼コンサートで最後に歌われているのを見て、ジーンときてしまった。
それを、ジョージの曲で締めくくらないのは「ジョーク」だなんて言う自称
ビートルズマニアがいるみたいで、溜息。近寄らないようにしよう…。

「モノノフォン」
http://homepage1.nifty.com/hebon/fhp/  

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■〈畸人研究〉今柊二の読書スジ
(29)読書と準備 レニ・リーフェンシュタール
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 昨今、廉価版DVDが充実している。ベルリンオリンピックの記録映画である
『民族の祭典』『美の祭典』が各500円で買えるとは。歴史的資料以上に映像と
して美しいのは、周知のとおり。ただし、残念ながら『意志の勝利』(Triumph of
the Will)は国内盤はないのだった。

 仕方がないので、以前買っておいたレニ・リーフェンシュタール自身による
『回想―20世紀最大のメモワール』上・下(文春文庫)を取り出してきて、未
読だったので、読もうとした。ちなみに、これ上が657ページ、下で759ペー
ジとスゴイボリュームです。すると、『レニ・リーフェンシュタールの嘘と真実』
(スティーヴンバック著・清流出版)が出ていることがわかったので、これも準
備して読むことにしよう。わはは、これも535ページもあるよ。

 ただし、このように準備をしっかりしすぎるとなかなか読めなくなるものだ。
以前、村上春樹『海辺のカフカ』を買ったときにも、『少年カフカ』を買ってから
読もうと思っていたら読むタイミングを逸してしまったし、そうこうしているうち
に文庫本も出てしまい、こちらは手軽で読みやすそうだと思ってさらに購入しても
読まないのだった。なんだか、プラモデルを買った後に塗料も全部買ってスタンバ
イしている状態と近いですね(笑)。

〈こん・とうじ〉畸人研究学会
神奈川新聞にて連載している「かながわ定食紀行」が、神奈川新聞のかもめ文
庫にて、文庫本としてついに刊行! 値段は定食一回分です(笑)

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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(76)酒つま広告小史 1
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『酒とつまみ』12号の発行が遅れまくりながらも、新たな体制に向けてW君が
奔走しているとき、私はふと、現在、とても増えてきた広告について振り返っ
てみた。

 創刊号から11号までを取り出してみると、面白い。もちろん、創刊号に広告
などない。表2は、あいさつ文、表3には、寄稿の募集などを掲載、表1、表4
は現在とほぼ変わらない(表4にISBNとバーコードがついただけ)。

 では第2号はどうかというと、これまた広告はない。
 最初の広告が入るのは次の3号。部数を、第2号の倍の4000部に増やした
ときからだった。現在も継続している『中南米マガジン』や『ジャッピー!』の
広告がこのときスタート。この2誌は、わざわざ当方を訪ねて交換広告に誘って
くれたのだった。
 もちろんベタ空きの表3スペースを提供した。

 そして4号。さらに3分の1ページの広告が3本入ってきたので、これを表2
にもっていった。3号まで続いた表2=ご挨拶ページという構図が、このとき初
めて崩れた。
 ただ、いいことばかりだったわけじゃない。この4号に広告を掲載したある企
業からは、現在に至るまで広告料をいただいていない。こちらに不手際があった
のではない。払ってくれと電話としてもまったく効果がないのである。

 しかしながら、そういう哀しいことにもめげずにすむような、楽しいことも起
こってくる。まずは、広告主。4号からは今も表2ページの常連である「ふじも
と歯科診療室」が登場、6号には「是政整骨院」からはページを分け合う形とな
った。是政は府中、「ふじもと歯科」は稲城。いずれも多摩エリアである。私は、
このページを、「多摩・医療系広告のページ」として、毎回楽しみにするようにな
った。

 レコード会社にお勤めの方から広告を出したいというお話をいただいたときは
驚いたが、決まった時期にちゃんと発行できないという広告媒体として極めて問
題のある媒体のためか、最終的には商品広告などでなく、社員有志による応援広
告となった。これは、とても嬉しかった。

『酒とつまみ』は、酒類の製造・販売会社、飲み屋さん、おつまみの製造・販売
会社あどからの広告はお受けしないという、極めて高尚な志のもとに運営されて
きたのだったが、そういう申し入れがほとんどなかったのも、『酒つま』らしい、
のひと言につきるだろう。
 一方で、予想もつかない広告主が現れ、この小さな誌面を使ってくれることにも
なった。
 号数としては、5号あたりから、広告主のバリエーションがさらに増え、現在に
つながる、面白い流れができていく。

「へんな雑誌だよなあ、やっぱり」
 私は、バックナンバーの広告ページをめくりながら、思わずにやついてしまうの
だった(このお話、次号へ)。

〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集長。
たいへん長らくお待たせいたしました『酒とつまみ』12号は、もうすぐ校了です。なんとか事故もなく、無事に発行できればと願っております。今回もたいへんアホな1冊。ぜひ、ご期待ください。
http://www.saketsuma.com

ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(86)法研の巻 一般人は相手にしないご立派感あふれるビル
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「フィルムセンター」帰りの午後8時半過ぎ、京橋から東京駅に向かい歩いてると、
よくデモ隊にぶつかる。最近も2度、裁判員制度反対デモに遭遇。チョコッと付き合
う。広い道を歩くのは楽しい。日本の汚職裏金警察が、何の法的ないし条例的根拠を
もってしてか、一車線の4分の1しか使わせないのは、かなりムカつくが。世界感覚
からすると、4分の1民主主義国家って事だろう。テロ国家ロシアの暴力的官憲さえ、
道一杯のデモを認めている(民主党は、警官共の違法な強制職質&デモ規制を即廃止
させろ!)。

 2回目のデモの解散地点が、「フィルムセンター」裏手…というより、「銀座テア
トルシネマ」後方の「水谷橋公園」。このデモ参加で2つの発見を。まず公園の入口
に向かって、すぐ裏手が銭湯の「銀座湯」(右手が「銀座テアトルシネマ」)。入口
が1階だがお風呂は2階。壁の絵も富士山じゃなく、和光の時計をメインとした白黒
タイルと粋。2つ目が公園正面の、道を隔てた10階建ての法研本社ビル(中央区銀
座1-10-1)。一軒をはさんで別館。銀座ビルも別に近所にあるという、超金持ち版元
だ。

 全身こげ茶色の石で覆われた、シンプルだが、手抜きがほとんどなさそうな造り。
しかも公園から見ると、“不動産用物件アングル構図”とでも言おうか、建物が一番
広く堂々として見える、向かって左角を中心に眺める事に。立派感はいよいよ高まる
(その証拠に、ほぼ同じ造りの別館は、並のビルにしか見えない)。銀座に古くから
ある版元と言えば、実業之日本社、マガジンハウス。両社共に凋落する一方なのに、
大したもん。他にも、全国各地にビルや地所も持ってるらしい。

 敗戦翌年に中野で創業した同社、一般には『おひとりさまの老後』(上野千鶴子)
くらいしか知られてないが、本社ショーウインドーのキャッチ、“社会保険・健康づ
くり情報発言”にある通り、一般人などそもそも商売相手にしていない。定期刊行物
名や値段にもそれは明らか。

 『月刊介護保険』(年間購読料15840円)。『週刊社会保障』(同41460
円)。『月刊へるすあっぷ』(同9960円)。『旬刊健康のひろば』(同9300
円)。『月刊ジャストヘルス』(同2820円)。『月刊ヘルスアンドライフ』(同
3420円)。一般向けらしい“年金と暮らしの快適情報誌”『ゆたか』(同100
0円)もあるが、ほとんどは料金の取りっぱぐれのない、関係官庁や自治体、病院、
福祉施設等。身銭で誌代を払う酔狂な人など、眼中にないのだ(やっぱ、天下り役人
とかも受け入れてるの?)。

 社員の仕事は編集も営業も、アホ役人や周辺の馬鹿共の相手なので、屈辱的かつ退
屈そう。だが、今でも彼等は手堅くローンが組めるんじゃ、とも推測させる。きっと
御殿同様、安定感ある銀座タッチのオーラを、周囲に発散させているのだろう。

 銭湯といえば、話題のわめぞ民の武闘派イラストレーター・武藤良子。9月の池袋
「古書往来座」の外市で、「銀座湯」体験を話す。「へ〜、和光の時計台かあ。さす
が銀座。実はまだあそこ行ってないの。男湯と女湯、ブチ抜いて和光だったか?」
「そ…そこまでは」「ダメじゃんか塩爺!また行って確認してこいっ!!」「合点だ
っ!!!」

〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)、『出版業界最底辺日記 エロ漫
画編集者「嫌われ者の記」』(ちくま文庫)、『東京の暴れん坊 俺が踏みつけ
た映画・古本・エロ漫画』(右文書院)。『出版奈落の断末魔 エロ漫画の黄
金時代』なる恥ずかしいタイトルとカバーの新刊が、アストラから好評発売中。
なお、この連載に関しての批判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(た
だし、謝るとは限りません)。
mangaya@air.linkclub.or.jp
http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/

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[書評]のメルマガ vol.420
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■         vol.420
■■  mailmagazine of book reviews  [ ヘンなオジサン 号]
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[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。夏のブックフェスが長野で。
★短期集中連載「なぜ、フリーペーパーなのか」
 →全国各地のフリーペーパー発行者の「生活と意見」をお聞きします。
★「関西古本女子だより」真治彩(ちょうちょぼっこ) 
 →大阪と神戸の「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。
★「食の本つまみぐい」遠藤哲夫
 →休載です。

*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
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★夏のブックフェス その1・高遠
「本の町をつくろう」を合言葉に、長野県高遠町で二日間のイベントが
開催されます。トーク、展覧会、ライブなど盛りだくさん。東京からの
バスツアーも用意されています。
8月29日(土)、30日(日)

詳しくはサイトを
http://takatobookfestival.org/

★夏のブックフェス その2・小布施
 長野県小布施町で町立図書館がオープンするのに合わせて、一箱古本市が
開催されます。図書館主宰での一箱古本市は全国初でしょう。町内には美術
館やギャラリーなどが多くあり、文化的な雰囲気の強い町です。県外からも、
観光がてら一泊二日で参加されてみてはいかがでしょう? 

まちとしょテラソ市(古書市)
はじめての方でも大丈夫。リンゴコンテナ1箱に中古本を入れ、販売する
古書のフリーマーケット「まちとしょテラソ市」を開催します。
ぜひ、お店のオーナーとして参加ください。
また、8月に準備を手伝っていただけるサポーターを募集しています。
出店募集要項を確認の上、出店登録ください。

■日時
9月5日(土)午前11時〜午後6時まで
9月6日(日)午前10時〜午後6時まで

詳しくはサイトを
http://www.machitosho.com/

★〔本〕のメルマガ&〔書評〕のメルマガ
 10周年記念 読者&執筆者感謝イベント

 〔本〕のメルマガ&〔書評〕のメルマガ10周年記念 読者&執筆者感謝イベ
ントです。誰でも参加できますので、ぜひどうぞ。

 お申込みは、
 http://www.honmaga.net/modules/eguide/event.php?eid=1

 パーティ形式で、縁とゆかりのある方入れ替わり立ち替わりその場のノリで
トークしていただくという、トークセッション方式です。

 日時:8月28日(金)19:00-21:00(途中入退OK)
 会場:ビジョンセンター秋葉原
    東京都千代田区神田淡路町2-10-6 OAK PLAZA 2F
    http://www.visioncenter.jp/location/index.html

 会費:(※飲み放題・食べ放題つき)
     メルマガ読者   2000円
     過去の執筆者 1000円
     それ以外の方  3000円

 詳細はHPまで。ぜひご参加くださいませ。
 http://www.honmaga.net/modules/eguide/event.php?eid=1

なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

---------------------------------------------------
■短期集中連載 なぜ、「フリーペーパー」なのか
(2)フリペをつくる、暑苦しいヒトとして タテイシナオフミ(『HOWE』)
----------------------------------------------------
「フリーペーパーは、名刺代わりになる」というのが、私の考えるフリーペー
パーの利点のひとつである。なので私から自己紹介を受けた人は、A4用紙三つ
折りの怪文書を渡されることとなる。輪転機で印刷した1色刷りのその怪文書
には『HOWE(ハウ)』というタイトルがつけられている。

『HOWE』は私が勤務する大学の事務局内でもひっそり流通し、そして一部の学
生さんたちにも読まれている。そして縁あってこの大学で出会ってきた学生さ
んたちには(事務職員という立場をあまり考慮せずに)ことあるごとに「君の
その想いをフリーペーパーやミニコミを作ることで表現してみてはどうだ!?」
と語りかけ、私自身がフリーペーパーづくりを通して感化されてきた「手作り
の思想=Do It Yourselfの精神」やら、「格安コピー屋の活用方法」やらにつ
いて、頼まれてもないのにひたすら語って聞かせる。果ては「うちの大学が、
日本でもっともフリーペーパーを作る学生の多い大学になったらステキだと思
わないか?」と同意を求める。そうやって学生さんを煽っておきながら、肝心
の自分のフリーペーパーは年に1度か2度ほどしか出せていなかったりもする。

 こうして近頃の私はフリーペーパーづくりの楽しさについて、うっとうしい
ほど語りまくっている。そのかたわら雑雑とした日常のなかであれこれネタを
繰っては次号のフリーペーパーづくりにつなげようと苦心している。しかしそ
もそもの出発点においてはそんな暑苦しいヒトになるなんて想像もしていなか
った。それは1995年の5月のことで、パソコン用基本ソフト「ウインドウズ
95」が登場する半年ほど前、つまり「インターネット」という言葉がまだあ
まり知られていない頃である。高校3年生だった私は、とある書店にあった別
冊宝島『メディアのつくり方』を立ち読みしていた。そのなかで『俄』という
名の、三つ折り型のレイアウトの手本として紹介されているフリーペーパーの
誌面をみて、自分もこういう手段で気軽に何かを表現していけばいいんじゃな
いか、とひらめいた。

 さっそくその日の夜、自宅にあったワープロで、『HOWE』という名前のフリ
ーペーパーを作ってみた。この誌名は、その当時からハマっていた70年代の英
国プログレッシヴ・ロックバンド「YES」のギタリスト、スティーヴ・ハウの名
前からいただいた。ライヴ映像を観ていると、この技巧派ギタリストは演奏に
集中するあまり、しだいにファンキーというかコミカルというか、なんとも言
いがたい顔の表情をみせていき、それが「プログレッシヴ」という、なんでも
アリな勢いをかもしだす言葉とともに、当時の私の「何かを心ゆくまで表現し
つくしてみたい」と願う心象に妙に訴えかけるものがあったのだ。そしていつ
か実際にハウ氏に会って「あなたの演奏技術と、顔の面白さに感銘を受けてフ
リーペーパーを作り続けてきました」とか言ってみたいと夢想したのである。
 
 かくしてそんな高校生がフリーペーパーという手段を使って、周囲の友人た
ちに、古くさいけど面白くてファニーなプログレッシヴ・ロックの魅力につい
て語り広めようと企んだのである。ただしロックの話題だけだと相手にされな
いと思った臆病な18歳は、高校の遠足で訪れた前時代的な公共レジャー施設
の話やら、黒い絵しかない「ぬりえコーナー」やら、意図の見えにくい記事も
混ぜ込んだ。こうして完成した創刊号を10部ほど印刷し、ためらいながらも
友人たちに渡してみた。読者からの具体的なリアクションがどうだったかをあ
まりよく記憶していないのだが、早々に第2号を作ったことを思うと、どうや
ら気をよくして次回作に取り組んでいたようだ。

 やがてそれなりに表現欲求も高まってくると、不特定多数の人に読んでもら
えそうなフリーペーパーへとシフトしていくことになる。そうしたなかで、指
揮者カラヤンのさまざまなポーズを勝手にコラージュしてストーリーを作って
みたり、カラオケボックスに置いてある曲目リスト本のページを熟読して、連
続する曲名の並びのなかで「ある種のポエム作品」が成立しているような箇所
を紹介してみたり、地元奈良の不動の観光シンボルであるシカを「粗暴なフー
リガン」として捉えなおして糾弾してみたり……と、さまざまなネタを試して
今日に至っている。

 こうして細々とフリーペーパーを作りながら感じていることは、いくらネッ
トでブログがたくさん書かれるようになった時代においても、紙に印刷してで
きあがったものには、なぜかついつい立ち止まって読ませてしまう不思議な力
が働いているということである。紙のフリーペーパーを渡すということは、メ
ッセージそのものを渡すことと同時に、「紙のギフト」として渡しているような、
そういう感覚もありえるのではないか。ギフトというほど、もらってうれしい
メッセージかどうかは別として……。

〈たていし・なおふみ〉普段は大学職員(ただし非正規雇用)。最近、初のミ
ニコミ冊子づくりに取り組むも苦闘中。ほぼ毎日更新の個人ブログ「HOWE
*GTR」のアドレスは http://howe-gtr.air-nifty.com/  
またフリーペーパー「HOWE」のお問い合わせは 
prog_howe@hotmail.com まで。

---------------------------------------------------
■関西古本女子だより  真治彩
(24)デザイン・フォー・ライフ
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 京都の夜。
 N夫妻とMさんと飲んだ際、「なんていうか、人生のロールモデルを探して
いるんですよ。」と発言したところ、大いに笑われた。いや、いや、これ、真
剣なんですってば。
 結婚もせず、母親にもならず、仕事をバリバリするキャリアウーマンでもな
く、これと言って情熱を傾けるものもなく、気づけば34歳かよって感じなんで
すが、なんにも積み重ねるものがなくって、人は生きてゆけるものだろうか、と、
この頃、思うわけです。「まだ、若いよー」なんて声が聞こえてきそうですが。
「嫁がず、孕まず」の広津桃子や、生涯独身で、定年まで銀行に勤め、そのか
たわら詩を書いた石垣りんなんて人もいますが、彼女たちには「文学」という
揺るぎがない人生の土台があるわけで、参考にはなりそうにありません。

 K文社で働くNさんと飲むと、「福島さんって、モテそうですね。」とか「次
田さんって、笑顔が絶えないですね。」とか「郷田さんって、つくづく魅力的な
ひとですよね。」など、ちょうちょぼっこ他メンバーの良い面をキャッチコピー
風にちょいちょい会話に挟み込んできます。その度にわたしは「あー、そうな
んですかねー。」とか「そうでもないですよ。」と、嫌なヤツ丸出しの気のな
い返事をするわけです。ロールモデル話のときも「郷田さんて、るきさんみたい
ですよね。」と言うわけですよ。一緒に飲んでいた見目麗しき女性、Mさんも
「あ、わかるー。」と同意。いや、わたしだって、わかりますよ。けれど、同
時にイラっとも。
 
 高野文子が描く「るきさん」は、のんびり、マイペース。浮世離れした不思
議な女性。独身で一人暮らし。キャリアウーマンでもないけれど、にこにこ毎
日を楽しんで暮らしている。
 まあ、なかなか、こんな風にはなれませんわねえ。だって、「るきさん」が
飄々とわが人生を楽しんでいるのは、他人から自分がどう見られているかとか、
社会的地位とか安定、そういうことを一切気にしていないからですもの。ぼん
やりとしているようで、確固たる自分があるわけです。まあ、そのようなこと
を考えますと、郷田=るきさん説はあながち間違いではございません。わたし
なんて、るきさんのともだちで、キャリアウーマンの「えっちゃん」にすらな
りえません。

 またもや京都の夜。
 Nさん夫妻とS木さんと飲む。S木さんはNさん同様、K文社で働く、わた
しより2歳年下の32歳の女性。最近は嵐の大野君に夢中とのこと。中学時代
は新撰組に夢中だったらしいので、今、流行りの「チーム男子」好きかと思い
きや、「チーム男子」を遠くから愛でるタイプではなく、チームのなかに自分
を介入させていくタイプの方でした。今はジャニーズアイドルグループ、「嵐」
のなかで、自分が取り合いされる妄想をしている時間が楽しくて仕方がないそ
うです。うーん、わたしより重症かもしれません。けれど、ちゃんと話してみ
ると、S木さんはるきさん同様、確固たる自分の信念、人生の指針をお持ちの
ようでした。Nさんの旦那さんが「S木さんは既に自分という運命に出会って
いるね。」とおっしゃっていましたが、まさにそうでした。

「人生の土台がないんです。」なんてことをわたしは言いますが、まあ、その
土台っていうのは、仕事だったり、家族であったり、情熱を傾けるものであっ
たりを意味しますが、揺るぎがない「自分」があれば、そんなものはなくても
いいわけです。S木さんが「こんな感じで生きていきましょうよー。」とテキ
トーなことを言っていましたが、「ですよねー。」と答えておいた。

 この日はくだらない話が延々と続き、喋りに没入したあまり終電を逃してし
まいました。結局、Nさん宅に泊めてもらいました。書庫に布団を敷いてくれ
たので、ああ、地震きたら、怖いなあと一瞬思いましたが、本に囲まれて眠る
のは大そう心地がよかったです。
 ロールモデルは「ま、いっか。」というのが結論です。頭のなかでは、田辺
マモルの「ライフサイクル」が流れていました。

〈しんじ・あや〉
ちょうちょぼっこメンバー。
最近、スケジュール帳にはマンガの発売日しか記されていません。

貸本喫茶ちょうちょぼっこ
〒550-0014 大阪市西区北堀江1-14-21 第1北堀江ビル402
http://www.geocities.co.jp/chochobocko/

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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(75)知らぬ間にトシ食ったよなあ!
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『中央線で行く東京横断ホッピーマラソン』の文庫化のために、新たに12駅
を走りだす。これはこれで、けっこうたいへんだよなあ、などと気楽に構えて
いた2月の下旬。『酒とつまみ』に連載をお願いしている南陀楼さんと飲んだ。

 この連載は、古本屋さんを巡ってから酒場へ流れて酒を飲むという企画で、
毎回、一緒に歩き、飲んできた。 
 今回の模様は、南陀楼さんの連載に描かれる(次の12号です、すみません)
わけですが、この飲みの席で私がずっと、思っていたのは、ああ、トシ食った
なあ、ということだった。

 酒の残り方が激しくて、このころ、夕方に飲み始める酒がなかなか入ってい
かなかった。思えば、『酒とつまみ』という雑誌を始めようと思う前から連日
の酒を飲んできたわけで、それが、今に続いているのだから、相当な連日飲酒
を重ねてきたことになる。準備に入ったのが'02年のはじめだから、ちょうど
7年。

 あのころ、まだ30代だったんだよなあ。飲み疲れるといつも、そんなこと
ばかり考えていた。南陀楼さんと飲んだ晩も、そんなことを考え考え、飲むう
ちに次第に調子が出てきて、別れるころに、別のところで飲んでいるという友
人からの連絡に迅速に対応してまた深酒をした。

 そんな状態で迎えた3月。ホッピーマラソンの残りを走り始める。ちょうど、
『本の雑誌社』から出していただく本のための書き下ろし分を書くのと同じタ
イミングだった。

 千歳烏山から、蘆花公園、八幡山、上北沢、そして桜上水。長く京王線に親
しんできたけれど、深く馴染んできたわけではない駅が続く。どの店へ入るか。
どこならホッピーがあるのか。走り始めてみると、今となってはちょっと懐か
しいホッピー酒場探しが、妙に楽しい。

 やっぱり、トシを食ったなあ、とは思う。けれども、ホッピーの飲める酒場
を当てずっぽうに訪ねて歩くのは、以前と変わらず楽しい。むしろ、一軒訪ね
る旅にドギマギし、懸命になって飲んだいたときに比べると、はるかにリラッ
クスしてホッピー酒場を訪ねることができる。

 店の人と話をし、居合わせた常連さんと話をする。それが、7年前に比べる
と、すこしばかり余裕をもってできるのだ。

 年齢を重ねるのも悪くないな、と思う。怖いオジサン、おもしろいオジサン、
いろいろいるんだよなあ、と思っていた対象のひとりに、いつしか私もなって
いたのだ。
 
 店には、若い客もいる。私より若い店主の店がある。彼らには、私はどう見
えているのか。きっと、そうとうにヘンなオジサンなのだろう。ホッピーを訪
ねて、東京から高尾へ、そして高尾から新宿へ、各駅に降りて飲み歩いている
ヘンなオジサン。

 そうですよ。ヘンなオジサンなんです。でもね、これ、やってみるとおもし
れえんだよ。いつか『酒とつまみ』って雑誌も、ぜひ手に取って見て下さいね。
バカしかしてない雑誌ですが、やってみるとおもしれえことばっかり掲載して
いる雑誌でもあるんです。

 以前ならそんなエラソーなこと思いもしなかっただろうに、このときの私は、
自らのヘンなオジサンぶりと、『酒とつまみ』のヘンな雑誌ぶりを、少しだけ
誇りたい気分になっていた。

〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集長。
週刊誌のインタビューを受けたときに「家庭菜園」をしたいと口走ったのです
が、読んでいただいた方からの反応の多くは「嘘だろ」というものでした。た
しかに菜園はまだです。でも、この8月から9月には、プランターで小松菜を
育てます。そして、おいしい小松菜とカモ肉で、うまい鍋をつくるのです。と
答えると、あ、そう、と受け流される毎日。
http://www.saketsuma.com

ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(85)フレグラスジャーナル社の巻 あやしさの香るパルテノン風社屋
--------------------------------------------------------------------- 
 版元様に限らず、興味ない分野の会社の御殿は、何度前を通っても、眼には
ともかく頭に入らない。“美と香りで健康をクリエイトする”(同社HP会社概要
より)、フレグランスジャーナル社は、目白通り沿い、千代田区飯田橋1−5−9、
精文館ビル1階に居を構える(道路を隔てた、竹書房の斜め反対側)。週に1〜2
回通う裏手の喫茶店、「珈琲美学」に行く際は必ず前を通るのに、頭に登録されて
いなかった(真ん前の歩道に立つ、「北辰社牧場跡」の石碑の一文は、大昔に読ん
だ。幕府に恭順した榎本武揚が、旧幕臣の働き場所として設立した牧場で、一時
は四〇〜五〇頭の牛が草を食んでいたと)。
 
 パルテノン。子供の頃に図鑑で見た、アテナイのアクロポリスにある殿堂を、
つい連想するほどに精文館ビルは堂々としている。10階建てにすぎないが
(大した敷地でもない)、灰色の石を基調に、各階の窓の下部分には横に茶色
の石が走り、素人が見てもデザイン的に決まっているとため息(窓部分はブラ
ック)。さほど有名でもない版元が、気楽に賃貸出来るような物件には見えない。

 御殿のネタ不足の折り、数日前ようやく入口右側のラックに、山のように積
まれたパンフ類に手を。『アロマテラピ−第3版」(シャーリー・プライス/
レン・プライス)『妊娠と出産のためのクリニカル・アロマセラピー』(デニス・
ディラン)『ヒーリングビューティ』(唐津絵三子)『ナチュラルテストステロン
男性更年期とハーブの活用』(スティーブン・ハロルド・ビューナー)…。正直
なトコ、カルトの出版部門かと最初は(そもそもまともな版元が、こんな立派
なビルに入れっこねーよ! まあ我が漫画屋の入る三信ビルに比べれば、どの
ビルもパルテノンではあるが…)。

 ところが調べると設立40年近い有限会社で、取次は地方・小出版流通セン
ターと、パルテノンイメージとは大いなるギャップ。しかも右隣のアクサビル
6階では、蔵書8000冊を誇る「香りの図書館」まで運営(入場料200円。
本の貸し出しは不可)。いずれの要素も、だからといって即立派という証明にな
る訳ではないが、刊行物のうさん臭さに比べ、“実直な香り”も一瞬だが鼻を突
く(これも手か?)。

 今日も「珈琲美学」へ行ったので、帰りに同社1階を見物させてもらおうと
も思ったが、同じ香りでも、サンダルから脂足の悪臭をまき散らしてる初老男
がウロついちゃ、塩をまかれそうだし断念。ただ出版の他、セミナー・イベン
ト事業、コスモセラピー商品(俺的には理解不能)の通信販売事業もやってる
らしいので、そっちの方が利益が多いのか?(出版物との関連商品も販売して
るのかどうかは、不明)。

 も1度よくパンフ類を見たら、コスモセラピー商品て、はち蜜や精油も入
ってるとか。最初からそう書けよ。いずれにしても、生活必需品とも思えない
商品や出版物で、あんな豪華なビルに、御殿を2部屋も構えられるとは!!
俺もいい香りのするエロ漫画誌でも編集するか!?

〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)、『出版業界最底辺日記 エロ漫
画編集者「嫌われ者の記」』(ちくま文庫)、『東京の暴れん坊 俺が踏みつけ
た映画・古本・エロ漫画』(右文書院)。『出版奈落の断末魔 エロ漫画の黄
金時代』なる恥ずかしいタイトルとカバーの新刊が、アストラから好評発売中。
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■コンテンツ
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★トピックス
→〔本〕のメルマガ&〔書評〕のメルマガイベントの告知です。
 来てくださいね!

★「マキャヴェッリ全集を読む」/朝日山
→今回も大作です。

★「書評で巡る、男の生き様劇場」蕃茄山人
→ボクシング・コラム集を取り上げます。

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■トピックス
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 10周年記念 読者&執筆者感謝イベント詳細決定!
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ントですが、会場と日程、時間が決まりました。

 お申込みは、
 http://www.honmaga.net/modules/eguide/event.php?eid=1

 パーティ形式で、縁とゆかりのある方入れ替わり立ち替わりその場のノリで
トークしていただくという、トークセッション方式です。

 日時:8月28日(金)19:00-21:00(途中入退OK)
 会場:ビジョンセンター秋葉原
    東京都千代田区神田淡路町2-10-6 OAK PLAZA 2F
    http://www.visioncenter.jp/location/index.html

 会費:(※飲み放題・食べ放題つき)
     メルマガ読者  2000円
     過去の執筆者  1000円
     それ以外の方  3000円

 本来であれば、過去の執筆者の皆様には個別にイベントのご連絡を差しあげ
るのが礼儀かとは思いますが、発行担当も変わり、時間も流れ、連絡先がわか
らなくなってしまっている方には、個別に連絡ができません。どうかメルマガ
紙面で一緒にご案内させていただくことをお許しください。

※これまで〔書評〕のメルマガに御寄稿・御執筆いただいた皆様
 (編集同人・インタビュー含む、漏れ・ダブリはご一報ください)

水谷幹夫 守屋淳 畠中理恵子 地場潤一 石飛徳樹 ミラクル福田 田崎洋
幸 美野貴美 春久仙 臼井真紀 原口賀尚 間渕典子 水内終一也 朝日山
ウインダム茴香(ういきょう) 中山修一 今野倫子 辻和人 辻野純一 林
弘平 三澤友貴子 五月 小林圭司 キウ 天野恵二郎 平林享子 内澤旬子
林哲夫 柳瀬徹 南陀楼綾繁 グッドスピード ペク・ソンス 高野ひろし 
中山亜弓 平林享子 渡辺洋 阿呆怪奈 バルタン 高萩さま 荒木幸葉 貴
島 公 帰山健一 夷蔵 岡田新一 青木忠司 金子拓 荒木幸葉 永見優子
オオウラウタコ 荻原千尋 吉田勝栄 Juki 塩山芳明 大橋あかね 高野麻
結子 工原和子 リック (子) 平岡忠 高倉美恵 うらたじゅん 荻原魚
雷 森山裕之 山本善行 加藤幸典 高野麻結子 ふじたかなこ 大竹聡 四
釜裕子 五庵保典さん 小野浩三さん 竹中朖さん Rick 原正弘 宇田川新
聞 勝川克志 佐藤健太 石井章 大竹美緒 永見優子 柴田尚美 濱田研吾
遠藤哲夫 竹内啓 福島杏子 長谷川洋子 真治彩 奈良敏行 樽本周馬 今
柊二 桂牧 高頭佐和子 前田和彦 蕃茄山人 郷田貴子 斎藤哲也 タンク
ロウ 足立亨 志木実 ザビエル・ふくおか 忘れっぽい天使 キック・ライ
ダー きじまこう 扉野良人 笈入建志 佐伯由美子 掩耳 ガーリックひつ
じ 小野寺優 小町ラッコ 畠中理恵 次田史季 奥園 隆 稲盛有紀子 小
柳暁子 青柳隆雄 喜納えりか 藤田加奈子 宮地健太郎 甘木 神戸鶴亀本
舗 石井章 石川あき子 野崎歓 渡邉裕之 扉野良人 鶯谷万亀子 野口英
司 つばめ 青木亜紀 密偵おまさ 四谷書房 とり にとべさん 松本典子
北村知之 退屈男 晩鮭亭主人 西村義孝 小林浩 塩戸蝶子 松本八郎 き
じまこう 小柳安夫 S/L 影坂狩人 ふくおかひろやす 大林えり子 宮
本裕子 ミゾノウエユウイチ 奥園隆 みなみけいじ あまカラ サワダトー
ル 中野朗 杉村悦郎 岡田@川崎追分町 樽本周馬 山崎邦紀 大友 慶 
堀内恭 川原理子 宮川恵子 川口 正 田中町子 歸山健一 干場みゆき 
松下浩 盛厚三 栗田朋子 リコシェ・柳ヶ瀬和江 沼辺信一 よーまる 阿
部麗奈 貴島公 Book Love  頓花恵 中嶋大介 北村知之 武藤良子 根岸
哲也 藤墳智史

 詳細はHPまで。ぜひご参加くださいませ。
 http://www.honmaga.net/modules/eguide/event.php?eid=1
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■「マキャヴェッリ全集を読む」/朝日山
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【マキァヴェッリ全集を読む7】
政治小論その1

今回はマキァヴェッリのデビュー前から、ヴァレンティーノ公宮廷に派遣さ
れ、常備軍の設立に奔走したあたりまでに書かれた政治小論に触れる予定で
いたのだが、予定の半分で 140行に達してしまった。今回も長くなってすみ
ませんf(^ー^;

とりあえず全集第六巻にある「政治小論」の該当箇所の要約を並べる。

「ピサ包囲論」
マキァヴェッリがピサ問題に携わっていたときの提言書。ヴェネツィアにカ
ネを払って軍隊を撤収させ、傭兵隊長パオロ・ヴィッテリに攻めさせようと
する時の戦略について述べている。まずピサは言うことをフィレンツェの言
うこと聞くか否かから始まり、リソースの関係で万全の策はできないと言っ
た上で、とりあえず戦わずに済む包囲を提案。

そこに傭兵隊長らは、別の手を提案した。ピサは食い物に不自由しないから
包囲しても降伏しない。だから攻めなきゃ無理でしょ?
それでとりあえず四・五十日間包囲して、その間あちらの傭兵の分断工作を
する。この時期が過ぎたら攻めるぞ!

「ピストイア党争処置論」
フランス王ルイ12世のところから帰ってきた一ヶ月後派遣されたピストイア
紛争についての文書。

ピストイアという地域の統治にフィレンツェはパンチャティキ家(メディチ
派)とカンチェリエーリ家(共和政府派)の争いを利用していたが、党派抗
争が激化しパンチャティキ家が追い出される。すると殺戮と重大な破壊行為
が続き、フィレンツェが軍隊を派遣、統治してパンチャティキ家を戻した。

しかし、チェーザレ・ボルジアがフィレンツェにやってくると統治に人を割
けなくなって軍は撤収)。するとまたパンチャティキ家は追い出されて・・
・・をどうするかという話。パンチャティキ家はメディチ派だが、追い出し
てしまえば他地区のメディチ派とつながるし、カンチェリエーリ家のやりた
い放題にさせるのもまずい。両家敵対しつつ均衡を保っているのが好都合だ
ったのだが、そうもいかなくなったのだ。

再び軍隊を出して鎮圧。犯罪者の処罰、追放などで治安を回復。武装解除と
ともに法制を整備し被害者の補償などの手を打つが、将来のことを考え追放
されていても善良で評判のよい者は「厚意を持って遇する」など、フィレン
ツェだけに従えば安心して生活していけると住民が思うように知恵を絞って
いるのがわかる。

「セニガリア顛末記」
「ヴァレンティーノ公宮廷からの報告」のダイジェストだが、一部にこの外
交使節報告書と食い違うところがあって、以前から研究者の間で問題になっ
ていた文書。マジョーネ連合が反乱を起こした直後の謁見について、使節報
告書にはチェーザレが全く恐れていないかのようなことを書いているのに、
この文書ではビクビクしていたと書いてあったりする。

藤沢先生の解説によれば、この文書は1512年以後に書かれており、しかも自
分の記憶だけで書いている。もともとマキァヴェッリにとってこの事件は印
象に残っており、当時は見えなかったこの事件の全貌を頭の中で再構成しよ
うとしていた。

だから謁見していた当時では全く恐れていないように見えたチェーザレでも、
その後10年以上現場を踏んできたマキァヴェッリには、あれは虚勢だったん
だなと気がついたのだろうという感じで評価されている。

「資金調達についての発言」
マキァヴェッリは傭兵に軍事を頼る国をよくないと考えていた。上司のピエ
ロ・ソデリーニの演説原稿を頼まれて、その旨書いている文章。ヴァレンテ
ィーノ公宮廷から帰ってきて二ヶ月後に書かれたもの。

これまでフィレンツェが独立を保ってこれたのは幸運であったにすぎない。
にもかかわらずというか、最近でもチェーザレがやってきて傭兵として「雇
え〜カネ払え〜」と言ってきて頭抱えていたのに、チェーザレが失脚したら
もう忘れているおまえら何なのよ?

「キアーナ渓谷地方の叛徒の処置策について」
1503年8月執筆。キアーナ渓谷地方は、例のチェーザレが「カネくれ〜」と
やってきたときに乗じてフィレンツェに叛旗を翻した地方。その裏にはやは
りチェーザレがいた(ヴィテロッツォ・ヴッテッリが暴れた)わけだが、も
ともとフィレンツェのトスカーナ地方統治の方法は「ピストイア党争処置論」
にあったような、都市内での党派対立を米ソ冷戦のごとく安定的にさせて自
分たちには向かってこないようにするやり方だった。

しかし、両党派は自分たちが敵対党派より有利にたとうとするし、弱い党派
は他国と手を結ぼうとするので慢性的に政治的不安定が生ずる。にもかかわ
らずこうしたやり方が「よかったように見えた」のはフィレンツェやヴェネ
ツィア、教皇等の勢力が均衡していたからだ。それをぶっつつぶそうとする
チェーザレが出てきたから均衡が崩れた。

で、どう処置するかはリウィウスの「ローマ史」に描かれた古代ローマ共和
制のやり方をやればよろしい。敵を相手にするには慰撫するか抹殺するか。
中途反場はダメだ!とやったところで、その後は書かなかったのか散逸した
のか、未完に終わっている。

で、ここから感想。
小論といえども、これらいわゆる論文やエッセイではなく、フィレンツェの
役人として書いた提案書や草稿である。でも、無味乾燥な感じではなく、使
節報告書にもあるマキァヴェッリの鼻っ柱の強さがありありと見える。そし
て「キアーナ…」に見られるように、まだ「新入役人」の時代から古代ロー
マの共和制をモデルにするなど、後にマキァヴェッリの思想を特徴づけると
される内容が書かれている。

ということは、マキァヴェッリは役人になる前から読み親しんだリウィウス
の「ローマ史」に書いてあることを、現場で確認していただけではないかと
読むこともできそうだ。

しかし、それならマキァヴェッリは単にリウィウスの言うことを16世紀の人
にわかりやすいように・翻訳・したことで世界史に残る人物となったのか?
そうかも知れない(^_^;)

しかし、そうとも言えないようなところもある。それは、チェーザレに対す
る扱いだ。もともとチェーザレはイタリア統一までは考えていなくて、父で
ある教皇アレクサンドルの使いっ走りみたいなものだったらしいことは前回
に書いた。

使節報告書を読めば、当然マキァヴェッリもそんなことは気づいている。に
もかかわらず、なぜチェーザレを実態以上に評価するのか。もちろんチェー
ザレの姿にイタリア統一を実現できる素質を見いだしたのはある。だが、そ
れだけなのか。

ここまで読んだ範囲では、「資金調達・・」までのチェーザレがフィレンツ
ェをかき回している時には、チェーザレを褒めたりは当然していない。とこ
ろが、フィレンツェの将来をどうするのかというテーマの話になると、チェ
ーザレをネタに出してくる。

昭和40年代、ある人が、ダイエーの中内氏とも付き合いのあった某コンサル
タントにこんな質問をしたことがある。

「中内さんと商店街がやり合っているが、どちらが勝つ?」
「中内さんだ。商店街は人数が多い。中内さんは1人だ」

ダイエー対商店街の競争になった場合、ダイエーは意思決定をする人が1人
だが、商店街はたくさんいることがネックになると言っている。言い換える
と中内と商店街の一番大きな差は、意思決定のスピードだとコンサルタント
は言っているわけだ。

同じことをマキァヴェッリも考えたのではないのか?使節報告書にもあった
ように、フィレンツェの意思決定の遅さにマキァヴェッリは何度もイライラ
させられている。これに対し、フランス王やチェーザレの意思決定は格段に
早かった。

マキァヴェッリは、政治にリウィウスだけでなく、スピードを持ち込むこと
がフィレンツェの安寧に役立つと考えたのではないか?。ネタにするにはフ
ランス王よりチェーザレだ。しかしながら自分が仕えているフィレンツェは
共和制である。十人委員会などの機関が意思決定するのである。

むむむ……なんてことを考えつつこうした小論を書いていたのではないかな
ぁと、意思決定が早くない私は思うのであった。
ということで、再びつづく……

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「書評で巡る、男の生き様劇場」蕃茄山人
 (53)ハード・ボイルドが許容される最後の場所から
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藤島大『キャンバスの匂い ボクシング・コラム集』
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熱いラグビー評論からスタートし、スポーツ全般にフィールドを広げつつあ
る当代一のスポーツライター・藤島大の最新刊である。オビに曰く、

「無名の4回戦ボクサーから世界チャンピオンまで『ボクシング・ワールド』
連載を書籍化した叙情的コラム集」

いきなりの自分語りで恐縮なのだけど、僕はスポーツが苦手だ。するのも見
るのも苦手。特に苦手なのが元スポーツ選手の政治家。だってあの人たちと
来たら…。いやそんな話はどうでもいい。つまり僕はスポーツ全般に暗いの
だ。たまに仲間同士で行った喫茶店でスポーツ新聞の回し読みをしたりして
も読むところが無くて、やむなくエロ記事を眺めていると助平だといわれた
りする。理不尽な話だ。いやそれもどうでもいい話だ。

そんなわけで、もちろんボクシングにも強い興味は無かった。だけど、通勤
電車の車窓から一瞬見える雑居ビルの2,3階にあるボクシングジムの中の男
たちの姿に一瞬、胸が熱くなる感覚と言うのはわかる。ほら、映画「Shall
we ダンス?」の冒頭、役所広司が草刈民代に一目惚れするシーン、あの感覚
ですよ。四角く切り取られた明かりの中に浮かぶ、見知らぬストイックな男
たちの美しい筋肉や、その不器用な生き様(想像)、さらには背後に横たわ
る様々な物語(妄想)には、激しくグッと来ちゃうのである。

この本をなぜ買ったかというと表紙である。シミと落書きだらけの白壁の前
にファイティング・ポーズを取る、名も知らぬ若き軽量級ボクサーのモノク
ロのポートレート。逆光ながらこちらを射るようなまっすぐな視線に惹かれ
た。宵闇に浮かぶ雑居ビルの一室でスパーリングに没頭する男たちを見たと
きの感覚に近いものを覚えた。つまり一目惚れ、ジャケ買いである。

このコラム集には、一話あたり3ページ(2000字程度か)の短いコラムが百
十余編収録されている。読む前には、「短すぎて物足りないのでは」と思っ
たのだが、この尺が最適なことは読み始めればすぐにわかる。濃く、熱いこ
のコラム、このくらいの長さなのがちょうどいいのだ。通勤のお供によし、
寝る前に一編二編というのにも最適だろう。

一編が短いが故に、多くのボクサーの姿を伝えている。陰と陽のコントラス
トが鮮やかだ。若いボクサー、老いたボクサー、富めるボクサー、貧しいボ
クサー、それぞれの人生がキャンバスで交錯する。

まさに玉石混淆。キラキラと強い輝きを放つ「玉」もあれば「石」もある。
しかしこの石たちはただの石ではない。見る角度を変えれば鈍いながらも深
く強い光を持つ石たちなのである。著者の熱いハートと視線が寡黙なボクサ
ーたちを束の間光らせる。

とは言え、熱いだけじゃない。1980年代の関川夏央の海外ルポ(特に南米)
にも似た憂鬱と倦怠もある。決してはしゃがない。含羞さえ湛えつつ職業人
としての誇りを持ってクレバーに伝える。そのバランスの巧みさ。また読み
進むにつれ、練達のボクサーのフットワークにも似た、いや元・ラガーマン
の著者だけに、俊足スリークォーターバックの足裁きにも似た華麗なレトリ
ックに魅せられていく。

「この列島に暮らす少なくない善男善女は、強くて賢い勝利よりも、強くて
優しい敗北に心臓をつかまれたのだ。」(畑山隆則−坂本博之)

「待った。うんと待った。それは忍耐であり才能でもあった。グローブとワ
セリンの神は、聖なるリックを見捨てなかった」(リック吉村−嶋田雄大)

「どんなに未熟な四回戦ボーイでも、ボクサーはボクサーである。凡人なら
ジムの扉の手前で引き返すところを、一歩、踏み込んだ勇者なのだ」(レフ
ェリーもまた尊敬に生きる)

適度に気障。些細な仕草、小さな一言から背後に横たわる物語を見出す。美
しき肉体への賛美。老いへの恐れ、悲しみ。ボクサーの数だけ箴言がある。

全編に溢れるハードボイルドな名セリフの数々。今どき酔いどれの私立探偵
でも吐かないようなセリフを臆面もなく操る。でもそれにノー・ガードで興
奮してしまう僕たちがいる。それは、「名探偵なんていない」ことを知って
しまった僕たちに残されたハード・ボイルド、それがボクシングという競技
に奇跡的に、でも確実に存在しているからかもしれない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
蕃茄山人=都内出版関係某社勤務。1.5秒出演した映画『美代子阿佐ヶ谷気分』
が渋谷・イメージフォーラムにて公開中。退屈な日常と多忙な妄想はブログ
『蕃茄庵日録』に連載中。http://d.hatena.ne.jp/banka-an/

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■あとがき
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 発行が大幅に遅れてしまい、申し訳ございません。だんだん要領が飲み込
めてきましたので、だんだんと遅れずに発行できるようになるかと思います。

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念イベントは本の街、神田神保町・御茶ノ水から歩いて行ける会場です。

 出版関係の方、そうではない方もお気軽にご参加ください。楽しみにお待
ちしています。(あ)
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 パーティ形式で、縁とゆかりのある方入れ替わり立ち替わりその場のノリで
トークしていただくという、トークセッション方式です。

 日時:8月28日(金)19:00-21:00(途中入退OK)
 会場:ビジョンセンター秋葉原
    東京都千代田区神田淡路町2-10-6 OAK PLAZA 2F
    http://www.visioncenter.jp/location/index.html

 会費:(※飲み放題・食べ放題つき)
     メルマガ読者   2000円
     過去の執筆者 1000円
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 詳細はHPまで。ぜひご参加くださいませ。
 http://www.honmaga.net/modules/eguide/event.php?eid=1

なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

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■短期集中連載 なぜ、「フリーペーパー」なのか
(1)待っているだけじゃ始まらない 黒星恵美子(「甘茶手帖」)
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 昨年5月30日に私は「甘茶手帖」という、生まれ育った街であり、今現在
も住んでいる、(広島県の南部)「呉市」をテーマにしたフリーペーパーを発
行した。

「甘茶手帖」はA5版の全8ページという、小さなフリーペーパー。発行して
いるユニット名を「マツボックリ姉妹社」という。
 姉の松見という姓と妹である私の、黒星という姓を単純に組み合わせて、口
のなかでモゴモゴ言っていたら、コロコロと変化していき、たどりついたのが
マツボックリ。なんだかかわいいし、覚えやすいので、これでイイや!と「マ
ツボックリ姉妹社」に決めた。

 このユニット名からわかるように、作っているのは私と姉のふたり。
 以前、東京の出版社に勤め、雑誌や書籍の編集をしていた私は5年前に地
元呉に戻り、フリーでライターや編集の仕事をしている。
 しかし、フリーランスなのでコンスタントに仕事があるわけではない。そう
なれば時間はあまるし、取材や原稿書きだって回数をこなさないとヘタになっ
てしまう。
 それならば、ひさびさに戻ってきた故郷「呉」の今を知るためにも、テーマ
を「呉」にしたフリーペーパーを作ればいいじゃんね〜、なんて、そんなのん
気な会話は、ふたりでお茶したあとに何度もしていた。

 だけど、なんせ私たちには自力で簡単にフリーペーパーを作る技術がなかった。
 それが、ある日、突然解消されたのである。MacのPagesというソフトをい
じくっていたら、なんとなくの形が偶然、できたのである。
 できてしまえば話は速い。各々の得意分野を生かし、私が取材、執筆、写真、
レイアウトを担当し、姉がイラストを担当して作り始め、約1年の間に6号ま
で発行してきた。

 第1号で取り上げた企画の1つめは、前々から不思議に思っていた、呉の夏
祭り「よっしゃこい祭り」(呉では“よさこい”を“よっしゃこい”という)。
ここ数年、和風な出で立ちとハデなメイクの集団が舞う「よさこい祭り」は広
島県内や各地方で盛りあがっている。
 そして、呉市ではもう10年以上も続いているという。もともとはどこから発
生し、どうして10年以上も続いているのか。そんな話を聞けば「よっしゃこい
祭り」の魅力もわかるだろう、と調査を開始した。

 2つめは、呉市内にはないだろう、と思っていた、「天然生活」や「クウネ
ル」読者に愛されている、最近流行の女性店主の自宅ショップ取材。自宅の一
角を天然素材で居心地のいい空間にかえて、手作り作品を並べ、週に一、二度
オープンさせるお店。
 お店を紹介することはもちろん、ネットと並行して情報を公開して、手作り
が好きな子育て中のママがお客や作家になってにぎわっている現象も伝えた。

 こんな感じで、6号まで街に住む人の顔が見えるように、と数人の店主、サ
ークル活動のリーダーなどに会い、原稿にして1年間続いた。

 どうして、地元に焦点をあてたフリーペーパー作りが楽しいんだろう。自分
でもはっきりわからなかった理由は、最近、読んだ『すごい本屋!』(朝日新
聞出版刊)でつかめた。
 著者の井原万見子さんは山奥で本屋さんを営んでおり、本で人と人をつなぎ、
エスキース展、絵本原画展、著者トークイベントと次々とイベントを成功させ、
街の人々に本との思い出をたくさん作っていった。本書の「当初から厳しい環
境にありました。ただ黙って待っているわけにはいかないと動いていたら、イ
ベントを開催できました」の文章は、私の目にはゴシック体に光輝いて映った。

 まだまだ積極的な井原さんの域には達していない私たちだけど、私たちが動
いている精神もここにある!と共感した。
 何もないからと待っていても何も始まらない。最初はささいなきっかけで始
めたフリーパーパー作りだけど、動いているうちにこの田舎街にも憧れや理想
を抱いて動いている人や店があること、街中にはレンガ造りの魅力的な建物が
多いことを再確認し、ますます街への好奇心はふくらんでいった。

 もちろん、できれば印刷して、デザインも凝っていて、写真が際立った、保
存性のある、カッコいい冊子がいいには、いい。
 だけど、そこまでの冊子を作るには私たちには現実的なお金も技術もない。
 でも、力がないと何もやらないより、自分たちでできる範囲で、届けたい情
報を発信して楽しもう、と自宅のプリンターで印刷して、ホッチキスでとめ、
折っていく作り方に落ち着いた。
 作っていること自体が楽しい。人に会うのも楽しい。イヤ、正直にいうと作
っている自宅作業はちょっとしんどい。
 だけど、完成するとうれしい。毎回の読者の反応はぼちぼちだけど、半年た
ったころに、思いがけず“熱い反応”をもらったことがあり、客観的に、読者
のもとに届いているんだ、と実感したこともある。

 毎回刷る三百部の紙・インク代は持ち出しだけど、それ以上の楽しさ、うれ
しさ、しんどさがあるからこそ、私たちはフリーペーパーを作るのである。

(くろぼし・えみこ)「甘茶手帖」編集部 毎回分厚くなってくる、銀色夏生の
「つれづれノート16」を読書中。 

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■関西古本女子だより  頓花恵
(23)神戸人物往来
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写真家永田收さんに出会ったのは2006年2月。店舗取材の同行カメラマン
として来店されたのがきっかけでした。
それ以来、頻繁にお顔を見せてくださるようになり、永田さんのライフワー
クでもあるミニコミ誌も知ることとなりました。

永田さんは20代に世界各国を長期放浪され帰国された後、主に関西の下町を
中心に「市場」「大衆喫茶」「関西大震災」といった変貌する街をテーマにしな
がら、取材を基にした文章と写真を『SANPO 下町通信』と題して創刊されま
した。そしてその活動は創刊から15年経った今、下町通信は40号を迎えました。

つい先日、神戸トアロード沿いのギャラリーで永田さんの写真展『神戸人物
往来』が開催されましたが、ずらり並んだる作品は全て「市井の人々」。神戸
ドッグ裏の喫茶店女主人、プサン出身市場のキムチ屋主人。老舗食堂の女将、
等々、永田さんが実際に関係してこられた無名の人たち。私的交遊録ともいえ
るその写真には確実に存在した人の人生と、確実に存在した街並を感じされら
れます。

永田さんの写真には「記録」という写真本来の客観的側面と、通い交わり続
けた人々や街の「記憶」という主観的側面の両面において訴えるものがあると
思います。

最近、神戸市の須磨区に引越した永田さんはたまたま家の裏山の散歩道に出
会い、以来頻繁に街歩きだけでなく山歩きにも開眼された模様です。

〈とんか・めぐみ〉神戸元町にてザックバランな古本屋「トンカ書店」を営業中。
イベント案内:
8/1〜8/15「脳内浮遊」
8/16〜8/31「香山哲 骨オリハル婚」
8/22(土)20:30〜「パブリッシュゴッコ vol7」
詳細はHPまで

トンカ書店
650-0011 神戸市中央区下山手通3-3-12元町福穂ビル2D
078-333-4720
http://www.tonkabooks.com/

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■音を探してページをめくる  貴島 公
(16)オリジナルなサウンドトラック
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矢作俊彦『マンハッタン・オプ』I-IV
ソフトバンク文庫、2007年10月・11月(1981年発表)

 探して、めくれば、音楽が出てこないことはない。ロイ・エルドリッジ、
ビング・クロスビー、チャック・ベリー、パット・ブーン、ヘレン・メリル
にロッド・スチュワート。舞台はマンハッタン。登場人物には、舞台に立つ
役者、クラブに出ている歌手やピアニストもいる。音楽は、時にラジオから
流れ、主人公のとりとめない思いを言葉へと促したりもする。80年代初め頃
の設定にしては、出てくる名前がちょっと古い? それには理由がある。

 固有名詞の多くは、音を鳴らすものとしては登場しない。それらが登場す
るのは、比喩の題材としてである。パット・ブーンやチャック・ベリーにつ
いて知っていなければ理解できないような野暮な書き方はしない。むしろ、
ああ、そんなかんじなのかと逆算して、視線の輪郭をなぞることができるよ
うになっている。大切なのは主人公のとらえかたであり、彼がとらえた風景
であって、音楽ではないし、音楽家の名前ではない。その意味では、いくら
めくっても、音楽は出てこない(小道具扱いでもない)。

 にもかかわらず、このユニオン・スクウェア近くの雑居ビルに事務所を構
える探偵のエピソードを、わたしは音楽抜きに読むことができない。文庫本
の解説にあるとおり、この作品の元が俳優・日下武史氏の語りによるラジオ
番組だからであり、そこで挿入されていた音楽もめあてに、愛聴していたか
らだ。夜11時45分からの10分間、月曜から金曜の5日間でひとつのエピソー
ド。1日に、2曲、挿入曲が流れる。1曲は中盤に語りの背景として、もう
1曲は最後に、その日の語りの余韻のうちに。「エアチェック野郎」のわた
しは最初の1曲は捨てるとして、最後に流れる1曲は「録音」する気満々で、
一時停止ボタンに指をかけていた。

 放送時には各エピソードのタイトルは告げられなかったと思う。単行本に
まとめられた際、ジャズスタンダードの曲名がタイトルとして並んだこと、
番組のテーマ曲としてカウント・ベイシー風の曲が使われていたことで、番
組でもジャズが使われていたという印象をもたれている節があるけれど、実
際にはいろんな種類のポップソングが使われていた。設定にと言うよりも放
送当時に沿った80年代ポップスもあれば、普通の番組ではかからないような
奇妙な味のものもあった。しかも、今思うと、どうも「雰囲気選曲」ではな
かったようなのだ。すれちがう思いを抱えて「不公平だ」と嘆くアル・クー
パーの "Unrequired"。自暴自棄でぶっ倒れている部屋に奇妙な青い(blues
coloured)月の光が射し込んでいるケヴィン・エアーズの "Eveybody's
Sometime And SomePeople's All The Time Blues"。ちゃんとエピソードのサ
ウンドトラックになっていた。過去に複数の出版社から出ていたシリーズを
編み直した4冊の文庫をめくりながら、放送当時の選曲リストがあればと、
記録をとっておかなかった自分をうらめしく思った。

〈きじま・こう〉説明業、趣味・読書と音楽鑑賞。
「××××と言えばジャズ、だから××××を読むときにはジャズを聴きな
がら」というのは、申し訳ないけれど、どうにも恥ずかしい。それでジャズ
が好きになったりすればいいのだろうけど、なんだか小道具扱いっぽくて。
自分が好きで読む本のサウンドトラックくらい、思い浮かぶ自分の好きな音
楽を勝手に充てたい。そんなわたしは何故だか「北村薫と言えば青木孝明」。

「モノノフォン」
http://homepage1.nifty.com/hebon/fhp/

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■〈畸人研究〉今柊二の読書スジ
(28)平岡正明の死
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 平岡正明がなくなった。68歳。若すぎる。ショックだ。なぜならばまだお
会いしていなかったのだ。世間ではジャズ評論家としても高名だが、私にとっ
ての平岡氏は、『ハマ野毛』の編集だった。横浜の野毛のミニコミ(いや、タ
ウン誌か)『ハマ野毛』を立ち上げ、横浜の奥深さを示してくれたのは彼だっ
た。ひたすら地面に数列を書きつづける、横浜きってのナゾの畸人『ナンバー
ズ』をおそらく最初に紹介したのも『ハマ野毛』だった(6冊出た『ハマ野毛』
のアンソロジー『ヨコハマB級譚』に「アスファルト道路」というタイトルで
写真付で紹介されている)。まだ「畸人研究」を立ち上げる前に読んだ『ハマ
野毛』は私にとってインパクトがとても強かった。当然横浜名物で映画にもな
った「メリーさん」も登場する。

また、彼の小説『皇帝円舞曲』は、三浦半島が独立する壮大な物語だが、そ
の構成力に圧倒され、これは大名作だと読後にうなった。

最近読んだのは平凡社新書の『昭和マンガ家伝説』だった。小松崎茂、長谷
川町子、手塚治虫、西岸良平、秋本治という素材も縦横無尽だが、実は漫画を
語ると同時に強く時代を語る評論でもあった。この新書のあとがきで、自分を
「遅れて来た漫画批評家」と記していてので、この後の漫画批評を期待してい
たのに…。いくら何でも、いなくなるのは早すぎる。

…いつか、野毛の「萬里」でお会いするのを夢見ていたのだが、それは不可
能となってしまったのだった。

〈こん・とうじ〉畸人研究学会
神奈川新聞にて連載している「かながわ定食紀行」が、神奈川新聞のかもめ文
庫にて、文庫本としてついに刊行! 値段は定食一回分です(笑)

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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(74)ホッピーマラソン文庫化決定!
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『酒とつまみ』の年末は、地元浅草橋界隈で飲むのが恒例となっている。2008年
暮れの29日も同様で、私、W君、そしてカメラのSさんは、まず、『西口やきと
ん』の客となった。

 11号を出したのが9月。そろそろ本格的に12号の準備に入るべきタイミング
だったが、なかなか思うように事が運ばない。まあ、今年もお疲れ様。来年ま
た頑張ろうということで、いつもお世話になっている店で飲む。それで、ひと
まず良しとしよう。そんなところだったろうか。

 その日は、もう一軒、ここもお世話になっている『しょっと おかめ』にも
顔をだし、大将のやさしい顔を見てホッとしたのだったが、どうもこの晩はS
さんのノリがすこぶるよく、我ら3人は、Sさんお気に入りのフィリピンパブへ
と流れた。

 私も嫌いじゃないけれど、さすがに年末の飲み疲れもあり、個人的には、子
供ふたりの進学やら引越しのことなども連日気になっていて、少々ヘバってい
た。W君にはそもそも、フィリピンパブで飲む趣味はない。
 
 ひとり元気なのはSさんだ。ご満悦といった表情で楽しむ。女性を前にして
いるせいもあるだろう、オレに任せておけというビッグな態度も垣間見える。
ここの勘定、絶対払わしてやるんだかんな、と、誓いながら、もう電車もない
深夜、私はただ飲むしかない。

『酒とつまみ』を今後、どうやって続けていくのか。そのことについて、W君
は常に考えていたし、私にも彼にばかり重荷を背負わせてしまっていることに
ついての屈託が、ずっとあった。けれど、見ている限り、Sさんには、そうい
ったものがない。全然ない。実に楽チンそうに見える。

 今度生まれることがあるならば、ああいう性格に生まれたい。フィリピン嬢
がつくってくれる水割りを飲んでは軽い吐き気を覚えながら、私は思ったもの
である。

 そんなふうにして(どんなふうか?)年を越し、いよいよ2009年を迎えた。
この年は、酒とつまみ社が本格的な出版社へと移行する大事な1年だ。私にと
っても、酒とつまみに出来る限りの貢献をすべく、いろいろと見直しをしてい
かなければならない1年になる。

 そんなとき、W君が言った。「ホッピーマラソンの在庫、だいぶ減りました
ね」。それは、かねてよりお話だけはいただいていた文庫化の準備をいよいよ
開始しようということを意味していた。

 出版社は筑摩書房。文庫化にあたって、単行本で走りきらなかった千歳烏山
から新宿までの残り区間を走り、加筆して、1冊にしようという話である。

「中央線で行く東京横断ホッピーマラソン」という企画の第1回は、『酒とつ
まみ』創刊号の巻頭に掲載した。そのときの「酔客万来」インタビューのゲス
トは中島らもさん。巻頭にこのインタビューをもってこようという私に、巻頭
は絶対ホッピーマラソンと譲らなかったのはW君だ。その後、本誌でたまって
きたコンテンツを単行本にしようと盛り上がったときも、W君は「酔客万来」
より先に「ホッピーマラソン」を出すのが心意気だと言った。

「ホッピーマラソン」は、『酒とつまみ』のひとつの原点であり、ライターと
しての私にとっても原点にほかならない。文庫のためのボーナストラックで巡
る駅は12駅だ。私は、創刊号のためにホッピーを飲み歩いていた頃と同じ気
持ちで、まだ見ぬ酒場を訪ねてみたいと思った。

〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集長。
ちくま文庫版『中央線で行く東京横断ホッピーマラソン』の校正を、先ごろ無
事終えました。8月12日ごろ、店頭に並ぶ予定です。きっと楽しんでいただけ
る1冊になっていることと思います。なにとぞ、よろしくお願いします。本誌
の12号、遅れておりますが、制作を進めております。今しばらくのご猶予を
お願いいたします。
http://www.saketsuma.com

ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(84)主婦と生活社の巻 威風堂々、フィルムセンター直近の成金風御殿
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 きっと年に1人はいるに違いない。面接で入社希望の動機を尋ねられ、「『週
刊女性』や『JUNON』、『LEON』等、御社の伝統にのみこだわらない、
時代を切り開く雑誌の数々に魅了されました!」と、シレッと調子こき台詞を
並べながら、内心は「ムヒヒヒ。結構うれしそうな顔してやがるな、マヌケそ
うな人事部長が。本当はな、〈フィルムセンター〉が眼と鼻の先で、いくらで
も映画が見物できそうだから受けただけ。超低給な映画関連版元に入るより、
ここで女子供向け雑誌編集しながら、東西の古い映画を観てる方が優雅だヨ!」

 カモフラージュ作戦に成功、上手く入社したからといい、そうは新人が会社
を抜け出て“優雅な趣味”浸れるほど、本業界は昔も今も甘くはないが、妄想
を抱くには充分の近さだ(歩いて3分?)。主婦と生活社(中央区京橋3-5-7)。
フィルムセンター(中央区京橋3-7-6)。みそ汁のさめない距離だ。

 首都高速道路沿いの主婦と生活社ビルは、10階建て。ややクリームがかった
白いビルで、高速に沿って細長く、幅は狭めで潮出版社を連想させる形。しか
し規模からいえば段違いで、版元様の御殿としては堂々たるモノ。建物の2カ
所に据えられた、白地に黄赤ベタ文字のガッチリした社名看板も、「ウチは潰
れた婦人生活社や、今や“妾版元”みたいな主婦の友社とは、全然勢いが違う
ぜ!!」と主張してるかのよう。

 1階の出版物のショーウィンドーも豪華。首都高速沿いとはいえ、間に退出
道路があるので、日陰になってる訳でもない。社の幹部専用と思われる1階の
駐車場には、ジェームス・ボンドが乗るような真っ赤なスポーツカー。エロ本
屋の場合なら、痴呆な2代目の持ち物と相場が決まってるが、京橋の10階建て
版元の場合は?(ズバリだったら御免!)

 経営の内情はともかく、威風堂々たる御殿であるが、それが付近の景色にう
まく溶け込んでるかとなると、話は別だ。京橋と言えば経済的にも文化的にも
由緒ある場所だ。『日本文壇史』(伊藤整・講談社)を開いてても、神楽坂と
並んで頻出する。だから付近にも、「ひょっとして戦前から建ってんじゃねえ
か?」と思わせるような、4〜5階のボロビルが未だにゴロゴロ。中には聞い
た風な名前の画廊が、多数構えている。

 同じ並びの京栄ビル(「アートスペース羅針盤」入居)、吉井ビル、細い道
を隔てた第2吉井ビル(「小野画廊」入居)、えんじ色の閉鎖されてるらしい
山村ビル、同色の山村ビル別館と、黒澤明監督の『どですかでん』の色彩感覚
を思わせる、“ハレンチなボロさ”に満ちた個性派御殿が、ズラリと取り囲ん
でいる。敗戦翌年に設立された主婦と生活社など、あるいは付近では鼻垂れ小
僧かも(そういう意味では分相応な、無意味かつ無個性な、成金風御殿ではある)。

 ただ出版不況は同社も直撃してる模様。HPの採用実績を見ると、05年5名
(男2・女3)、06年4名(男2・女2)、07年5名(男2・女3)、08年1
(男)。これじゃ「フィルムセンター」狙いのお調子者は、一次で落選必至だな。

〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)、『出版業界最底辺日記 エロ漫
画編集者「嫌われ者の記」』(ちくま文庫)、『東京の暴れん坊 俺が踏みつけ
た映画・古本・エロ漫画』(右文書院)。『出版奈落の断末魔 エロ漫画の黄
金時代』なる恥ずかしいタイトルとカバーの新刊が、アストラから好評発売中。
なお、この連載に関しての批判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(た
だし、謝るとは限りません)。
mangaya@air.linkclub.or.jp
http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/

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[書評]のメルマガ vol.413
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■■ [書評]のメルマガ           2009.6.16発行

■                     vol.413
■■  mailmagazine of book reviews  [ 時空のひろがり 号]
■■-----------------------------------------------------------------
[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。堀内誠一展のお知らせ。
★「ふぉっくす舎のエンターテインメント玉手箱」根岸哲也
 →“本棚のために家をつくった男”がずっと読み続けてきた作家たち。
★「もっと知りたい異文化の本」内澤旬子
 →決して履けない、世にも美しい靴の全体像を描いた大著をご紹介。
★「千駄木ドロナワ日記」川原理子
→地域雑誌『谷根千』の若手スタッフが綴る、日々のあれこれ。
★「渡辺洋が選ぶこの一冊」
 →カズオ・イシグロの新作はどこかで時代の衰弱を反映しているのか?
★「全著快読 編集工房ノアを読む」北村知之
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →休載です。
*本文中の価格は、表示のあるもの以外は、税抜き(本体)価格です。

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■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
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★世田谷文学館で堀内誠一展
「堀内誠一 旅と絵本とデザインと」
7月4日(土)〜9月6日(日)

アートディレクターとして、また絵本作家として、数多くの名作を遺した堀内
誠一さん。また旅を愛し、雑誌でイラストと文章で各地の文化風俗を紹介した
ことでも知られています。今展では、早熟な才能を開花させた10代から晩年に
至までの功績を辿り、「デザイン」「絵本」「旅」の3領域にまたがった創作活
動の全容を紹介。今日でもなお受け継がれている彼の創作世界をぜひ体感して
ください。

(トークイベント)
「堀内さんの旅」 巖谷國士
7月11日(土) 14:00〜

「堀内さんの絵本」 スズキコージ×土井章史
8月8日(土) 14:00〜

「堀内さんの雑誌づくり」 石川次郎×幅允孝
8月29日(土) 14:00〜
*料金 各回1000円(展覧介入場券付き) 
各回の当日11時より1階ロビーにてチケット発売。定員150名。

世田谷文学館
http://www.setabun.or.jp/

 この展示にあわせて、平凡社コロナ・ブックスから、『堀内誠一 旅と絵本
とデザインと』が6月末に刊行されます。
http://heibonshatoday.blogspot.com/2009/06/blog-post_8661.html

なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

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■ふぉっくす舎のエンターテインメント玉手箱
(11)「星々のかがやきと時空のひろがり」を詠う詩人・光瀬龍 その2
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 70年代に入って、光瀬龍は、時代SF、生物エッセイ等、多方面な作品群を
発表し始める。しかし、それ以前の宇宙SFにより大きな魅力を感じてしまう
のは仕方のないことのように思える。

 光瀬の作品を形容するときに多くの評論家が使う単語に「東洋的無常観」が
ある。なるほど、言い得て妙だと思うが、この感覚は初期の宇宙SFに顕著なも
のだ。先頃、亡くなった中島梓は、光瀬SFの信奉者であり、自ら『ベストオブ
光瀬龍』(太陽企画出版)を編んでいる。『総解説世界のSF文学』(自由国民社)
の『たそがれに還る』、『百億の昼と千億の夜』、『喪われた都市の記録』の解
説で、彼女は光瀬SFの特徴を「人間が抗しえない時の流れ膨大さと非情さを詩
情にみちてうたいあげ」「時の流れの中の滅びに直面して、なおも生きてゆか
ねばならぬ人間のドラマ」と書いている。このような特徴ゆえに、発表から40
年〜50年が経過した宇宙SFが、現在も鑑賞に耐えるものになっている。広大
な宇宙や、時の流れの中での、人間や人間が作り出した文明の小ささ、儚さを
虚無的に詠いあげた「詩情」だけではなく、ファンがSFというジャンルに求
める途方もないスケール感を兼ね備えてもいる。

 代表作である連作短編「宇宙年代記」シリーズについて、大伴秀治(昌司)
のインタビュー(「SFマガジン」63年10月号)での「いまSFマガジンに発
表している一連の作品も、僕自身は、歴史小説のつもりで書いている」との光
瀬の発言は、宇宙SFに専心していた頃から、歴史小説への関心が強かったこ
とが窺えるが、後年、発表する歴史SFでは、中島が評したような特徴は、影
を潜めていると言わざるをえない。

 光瀬は同人誌「宇宙塵」に発表した処女長編『派遣軍還る』を書き直した『SF
マガジン版/派遣軍還る』連載開始時に「人の書いたものでも、それが“ハード
な宇宙小説”であると聞くと、読まぬ先からゾクゾクしてきます」、宇宙小説を
「お好みのかたには満足と酩酊を、そうでないかたには星々のかがやきと時空
のひろがりとをお見せしましょう」と語っている(「SFマガジン」75年9月号)。

 復刊された歴史SF『多聞寺討伐』や、押井守脚色のコミック『夕ばえ作戦』」
(画・大野ツトム「月刊COMIC リュウ」連載中)によって、光瀬と出会った新
しい読者には、光瀬が宇宙SFで詠いあげる「星々のかがやきと時空のひろがり」
に是非とも触れてほしい。

◎光瀬龍はこの作品を読め!
『たそがれに還る』(ハルキ文庫)※
『百億の昼と千億の夜』(ハヤカワ文庫JA)
『喪われた都市の記録(上下)』(ハルキ文庫)※
『宇宙救助隊2180年―宇宙年代記全集〈1〉』 (ハルキ文庫) ※
『辺境5320年―宇宙年代記全集〈2〉』(ハルキ文庫) ※
『無の障壁』(ハヤカワ文庫JA)※
『ロン先生の虫眼鏡』(徳間文庫)※
『多聞寺討伐』(扶桑社文庫)
『征東都督府』(角川文庫)※
※絶版・品切れのため、古書店等でお求めください。

〈ねぎし・てつや〉 1966年生まれ 団体職員。〈ふぉっくす舎〉の屋号で
「外市」などで古本を売る。国立博物館で開催されていた「国宝 阿修羅展」
は、大人気でした。阿修羅といえば、『百億の昼と千億の夜』をコミック化し
た萩尾望都描く美少女「阿修羅王」の印象が強いです。

「ふぉっくす舎」
http://d.hatena.ne.jp/foxsya/

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■もっと知りたい異文化の本  内澤旬子
(39)纏足が「本当の歴史」となるとき
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高洪興著 鈴木博訳『図説 纏足の歴史』原書房、3800円、2009年4月刊

腰痛が治り、背筋をつけてきたこの二三年で、靴への愛がごうごうぱちぱち
と燃えてます。もともと好きだったんですけどね、あたしらの年代は大女はロ
ーヒールと決まってましたし、腰も痛いしで我慢していたんですよ。ここんと
ころ七センチヒールすら低いと思えるくらいです。九センチヒールの甲の反り
具合がたまりません。

革から入った靴迷界のはずなんですが、最近はもうなんだか革をフォルムが
ちょっと越してますね。十一センチとか、もう歩くための形じゃないのに履い
てしまう狂気すら愛してますわ。いや、さすがに自分は十センチ超のための筋
力はないんで履けませんけど、靴売り場で眺めるのは大好きです。試着して足
を嵌めるときの快感ときたらもう、はい。

ところで、踵の高さなんてものではなく、自分では決して絶対どんなことを
しても履けない、世にも美しい靴がこの世にはあるのです。ちなみに紳士靴で
はありません。紳士靴のフォルムも美しくて大好きですが、昨今婦人用に誂え
てくれますので、履けます。

では決して履けない、世にも美しい靴とはなにか
それが纏足者用の靴なのです。木底の布製のようです。

 纏足靴の美しさに目覚めてしまったのは、鳩山郁子の連作『シューメイカー』
(青林工藝舎)を読んでから。ちょっとわかりにくいところもあるので、前段
となる『カストラチュラ』(青林工藝舎)から読むことを お勧めします。ええ
と纏足にまつわる部分だけ抜粋しますと、中国に非常に近い架空の国を舞台に
して、革命前の王朝にいた去勢歌手(カストラチュラ)たちが、纏足をしていて、
革命後に生き延びた一人が労改で云々という設定から始まるのです。

 中野美代子の著書などで、清王朝末期の王宮には噴水などの西洋趣味のもの
があったことを読みかじっていたもので、ま、カストラートがいてもおかしく
ないような気がしたし、彼らが纏足をするというのもホントにすんなりはいっ
てしまって、たいへん楽しく読みました。「シューメイカー」という表題作は、
労改から消えたカストラートが時空を超えて八十年代ロンドンの靴職人のもと
に纏足者用の靴を発注するという話です。
 いやもうそこにでてくる纏足者用の靴がどれをとっても美しい美しい。狂気
の沙汰の美しさなわけです。

 野暮だとは知りつつも、あまりにもおもしろい設定だったので、これはどこ
までが作者の創造でどこまでが史実なのか、知りたくなりました。というとこ
ろでちょうど『図説 纏足の歴史』が出たというわけです。纏足の起源や方法
(超絶に痛そうです)から習慣、祭り、結婚、などなど、とりあえず纏足につ
いての全体像が網羅されています。

 それにしても千年にもわたる習俗だったとは知りませんでした。纏足をする
民族の数も想像よりもずっと多い。というか、客家の女性など、纏足しない民
族の方が断然少ない。そこまで万延していたんだ。で、靴の形もいろいろある
わ、付属品もあるわ、靴に酒入れて飲む変態もいるわ、いやはや、奥の深すぎ
る世界でありまして、十二分に堪能させていただきました。

 この本にはしかし男性の纏足者の記述はあるにはありますが、役者と、女装
癖どまりで、去勢歌手についての記述はありませんでした。これだけ細かく書
いていて(397ページ)、去勢歌手についてまったく触れない、ということは、
やっぱり史実には存在しない存在だったんですかねえ。参考文献リストもつい
てますのでもう少し纏足についての本を読んでみようと思った次第です。

 しかしこの本を読んでなによりたまらなかったのは、2005年の時点で、中国
国内にただ一軒ではありますが、纏足者用の靴を作っている靴屋があるという
記述です。纏足を一度してしまうと元に戻すのは大変なことで、清朝末期に起
きた天足運動という纏足解放運動以来、纏足女性は美女から奇形へと評価大逆
転され、時代に翻弄されつづけてきたわけです。いま現在も推定九十歳くらい
の纏足女性が生存している可能性が高いのです。最後の纏足女性がみまかる時、
中国政府は世界にそのニュースを配信するんでしょうか。おそらくそのとき、
纏足はようやく本当の歴史となるのでしょう。

〈うちざわ・じゅんこ〉イラストルポライター
『週刊現代』で「リレー読書日記」を担当しています。
http://kemonomici.exblog.jp/

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■千駄木ドロナワ日記 川原理子(谷根千工房)
(14)「なかったこと」にできないこと
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2009年4月29日
曳舟「ほうせんかの夕べ」へ行く。
たまたま前日に谷根千工房の前で会った人が、チケットを見せてくれたので、
行きたくなったのだ。
「関東大震災韓国・朝鮮人受難者追悼碑」建設のためのチャリティーコンサ
ートで、歌手の李松子さん、趙博さん、李政美さんの歌はすばらしく、辛淑玉
さんのトークには永六輔さんも飛び入り参加(引っ張り出された)して、面白
かった。

ロビーの展示も興味深かった。当時の新聞記事は検閲が入るので、やたらと
伏せ字が多くパズルのようだが、読めば震災の惨状とともに、日本の軍隊や市
民によっておこされた朝鮮人虐殺事件や、それをあおった伝聞による不確かな
情報も書かれている。

今回の展示で圧巻だったのは、東京の地図に、事件のあった場所をプロット
し、その事件の記述と出典が書かれたものだ。私の住む文京区を見ると、やは
りある。子供のころ歴史の授業でも習ったけれど、実際にどこで何が起きたか
を知ると、ずっとリアルに想像することができる。東京中で、恐ろしい虐殺が
行われていたのだ。ただ、調べた人によれば、これでも今回の展示は膨大な記
録の中のごく一部だし、まだ調査の途中だそうだ。

大虐殺に関する公文書は、ほとんど残ってないため(意図して見せないのだ
ろうか)、聞き取りや、昔の新聞、地域資料、またはその時代を生きた作家の
日記などから事件に関するものを抜き出して集めてきたという(谷根千24号も
ご存知だ)。

この調査がはじまったのは、1970年代半ば。墨田のある小学校の先生が、荒
川放水路の聞き取りをしたことによる。地元の人たちから放水路のことともに、
虐殺の歴史を知り、「追悼する会」を作った。
30年前は、まだその時代を過ごした人たちが、貴重な証言をしてくれたが、
今はもういらっしゃらないだろう。その当時に聞いておいてくれて、本当によ
かったとおもう。そうでなければ、事件の数々はなかったことになってしまっ
たかもしれない。

また、今回の催しの中で、暴徒化した日本人から、朝鮮人を守ろうとした警
察官や市民もいたことを知った。何か起こったとき、私も簡単に流言に惑わさ
れず、理性と勇気ある行動をとれる人間になりたい。本当に。

〈かわはら・さとこ〉谷根千工房社員
今年も水族館劇場が光源寺にやってきて、そして公演を終えました。小屋が建
ち始めると、なんだかそわそわ、嬉しくなっちゃって。来年もできればこの町
で会いたいけれど、放浪の精神を持った人たちかもしれない。また戻ってきて
と言うと、どこかへ行ってしまいそうな……。

「谷根千ねっと」
http://www.yanesen.net/

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■渡辺洋が選ぶこの一冊
(31)淡い挫折感と抒情が漂う
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カズオ・イシグロ『ノクターンズ 音楽と日暮れの五つの物語』(Nocturnes
Five Stories of Music and Nightfall)
Faber and Faber, 2009/5 ISBN978-0-571-24499-7

−−今回はカズオ・イシグロさんの短編集『ノクターンズ』ですね。
−−はい。じつはスーザン・ソンタグさんのご子息による彼女の晩年の記録
(邦題は『死の海を泳いで スーザン・ソンタグ最期の日々』)を読んでいた
んですが、英語がすかした英語で主語と動詞も分からないくねくねした文体な
んでうんざりして(私の力不足というだけかもしれませんが)、これは上岡伸
雄さんによる翻訳(岩波書店)を図書館で借りて最初から読みなおすことにし
て、丸善に飛んで行って買ってすぐ読みだしたんですが、10ページほどで、イ
シグロ・ワールドというか、悲しみを漂わせながらしめっていない軽やかな文
章の世界に傷を癒すように入っていけました。

−−再起を果たすために若い女と再婚して芸能ジャーナリズムにうけようとす
る老歌手ガードナーが、愛し合いながら離婚を決意した妻と、新婚旅行の地ヴ
ェニスを訪れる。そこで出会ったロシア人のギタリストに伴奏を頼んで、ゴン
ドラから妻に歌を贈ることにするという冒頭の「クルーナー(低音の流行歌手
の意)」。

 壮年にさしかかった風来坊の「私」と、結婚して倦怠期にある同級生のカッ
プルのほろ苦い交歓を描いた「降っても晴れても」では、「私」と危機を迎え
たカップルの彼女を結ぶジャズの思い出がカギになっています。イアン・マキ
ューアンだとドロドロになりそうな設定を作者は、喜劇的なエピソードで感傷
を抑えながら、少しだけせつない黄昏のようなトーンで描いています。

「モールヴァン丘陵」は丘陵地帯にある姉のカフェを手伝う、仕事の見つから
ない若いギタリストが、スイスから休暇でやって来た中年の流れの音楽家夫妻
に励まされるが、好きな自分たちの音楽では食えない彼らの姿に人生の厳しさ
もを垣間見るという話。

−−何か、イシグロさんならいくらでも書けそうな抒情的な作品集のように思
えてきますが。
−−ここまではそう感じるところもありますね。ただリアリズムでの会話の書
き方もやはりうまいんだなあと思いました。

 でもそれだけでは終わらないところがイシグロさんなのかな。続く「ノクタ
ーン(夜想曲)」では、実力はあるがルックスに難ありのサックス吹きスティ
ーヴが逃げた女房の男の金で有名な医師による整形手術を受ける。包帯が取れ
るまで療養している高級ホテルの隣室はやはり整形手術を受けた有名な女優で、
彼女は先の「クルーナー」に出てくる歌手ガードナーの別れた妻リンディです
(「クルーナー」ではウェイトレス上がりの奥さんに過ぎませんでしたが)。
彼女はスティーヴの演奏を気に入り、夜中にホテル内を彷徨中に見つけた音楽
賞の授賞式の準備された会場から年間最高ジャズ・ミュージシャンのトロフィ
ーを盗み出して彼に与えようとするが……。スティーヴとわがままで人の意表
をつく行動に出るリンディが二人とも顔に包帯を巻きつけたまま真夜中のホテ
ルを走り続けるといった図はグロテスクのようでもあり喜劇でもあり、不思議
な味わいです。

−−一人のピアニストをめぐる悪夢のような日々を描いた『充たされざる者』
やクローン人間を主人公にしたSF風な『わたしを離さないで』の作者ならで
はでしょうか。あまり類を見ないという。
−−最後の一編は「チェリストたち」。ハンガリーからイタリアにやって来た
チェリストの青年チボーが、合州国から来たベテラン・チェリストだというエ
ロイーズに出会い、彼女の教えを受けてめきめきと腕をあげていくが、彼女は
実は……。そして時が流れ、という青春の終わりのような物語です。

−−表現する者、探求する者の世界に関わろう、世界を救おうという思いが挫
折していく『充たされざる者』や『わたしたちが孤児だったころ』(以上、本
書以外はハヤカワepi文庫)のような切迫感はないですね。まあ、この2冊は、
その切迫感を前面に押し出したところから、傑作とも無理のある作品とも評価
が分かれるわけですが。
−−そうですね、この本は強烈な感情を秘めたというのではなく、淡い挫折感、
抒情が全体に漂っていますね。作者にとって、前作『わたしを離さないで』か
ら次の長編に向かうブリッジのような、一時の凪のような作品かもしれないし、
どこかで時代の衰弱を反映しているのかもしれないけれど、私は好感を持ちま
した。
−−早川書房のホームページを見たら、もう翻訳が出るみたいですね、恐れ入
りました(邦題『夜想曲集』とのこと)。

〈わたなべ・ひろし〉詩人
ソウルに3泊4日行ってきました。日本人観光客ばかりで、日本語通じまくり
で、何だかなあの「外国」でした。

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[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。春の本イベントいろいろ。
★寄稿「「黒い大西洋(ブラック・アトランティック)」を経たあとで
 「文化」を語ること」藤墳智史(松籟社)
 →「場所のない」ユートピアの可能性を論じた新刊が出ました。
★「関西古本女子だより」福島杏子(ちょうちょぼっこ) 
 →大阪と神戸の「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「食の本つまみぐい」遠藤哲夫
 →〈大衆食堂の詩人〉エンテツが料理文化史の重要本を紹介します。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
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★もういちど大阪でフリーペーパー展
【JAMフェス 09】
〜アートと音楽をこよなく愛する印刷屋さん、レトロ印刷JAM〜

新店舗への移転オープンを記念して、な、な、なんと! 6/21(日)から
7日間、リニューアルイベント【JAMフェス 09】を開催します。会場内を埋
め尽くす、フライヤーやアート作品に囲まれながら(もちろんすべてレトロ印
刷!)ライブあり、ワークショップあり、トークイベントありと、盛り沢山に
楽しめる7日間です!!

◇開催期間: 2009年6月21日(日)〜6月27日(土)
  ・6/21      14:30〜20:00
  ・6/22-6/26  12:00〜18:00
  ・6/27      12:00-20:00

◇会場: レトロ印刷JAM・新店舗
◇入場料: 無料

★フリーペーパー=小さなメディアの放つ光展
内容もカタチもさまざまなフリーペーパーが大集合。南陀楼綾繁が全国から厳
選した約70誌のフリーペーパーを展示します。制作者のこだわりや想いが感じ
られるものばかりです。最新号は持ち帰りできます(数に限りがあります)。

【トークイベント】
〈紙モノ〉のいまとこれから
椎谷智晴(パンタロン代表) http://www.pantaloon.org
橋本裕(JAMスタッフ)
南陀楼綾繁(ライター)
フリーペーパー、チラシ、フライヤーなどの〈紙モノ〉の魅力と、それらが今
後どうなっていくかについて語り合います。フリペ発行者のプレゼンテーショ
ンタイムもあり。
◎日程: 6月21日(日)
◎時間: 16:30〜18:00
◎参加費: 無料
参加希望者は、サイトの申し込みフォームに、必要事項を明記してお申し込み
ください。受付後、参加者の方には改めてJAMより案内メールをお送りします。
※先着30名様には、座席を用意しております。

イベントの最新情報・詳細はJAMフェスページをチェック!!
http://jam-p.com/fes.html

レトロ印刷JAM・新店舗
大阪府大阪市北区本庄西1-6-14 1F
tel 06-6485-2602
http://jam-p.com/
▽地下鉄御堂筋線「中津駅」1番出口より徒歩13分
 谷町線「中崎町駅」2番出口より徒歩5分
 堺筋線/谷町線「天神橋筋6丁目駅」11番出口より徒歩8分
▽JR「大阪駅」御堂筋北口より徒歩15分
▽阪急「梅田駅」茶屋町口より徒歩15分

★神戸〈海文堂書店〉のイベント
・第4回 海文堂の古本市
2009年6月5日(金)〜6月14日(日)
*6月5日(金)午後2時から、≪特選目録大抽選会≫開催!

<参加古書店>
やまだ書店(平野商店街)/イマヨシ書店(平野商店街)/レトロ倶楽部(中
央区)/あさかぜ書店(明石市)/一栄堂書店(長田区)/オールドブックス
ダ・ヴィンチ(中央区)

・高橋輝次 著『古書往來』(みずのわ出版)刊行記念トークイベント
古書探索の愉しみ 神戸の詩人を中心として
2009年6月14日(日) 午後3時半〜5時半
*入場無料
*当日開催中の古本市は午後3時にて販売を中止し、トークイベント終了後に
再開します。

大阪・創元社の元編集者で『関西古本探検』(右文書院)の著者高橋輝次さん
が、その続編となる『古書往來』を神戸・みずのわ出版から刊行されました。
一冊の古本から、忘れられた小説家、詩人、出版人を甦らせ、古書探索の醍醐
味を伝えます。また2000項目にも及ぶ索引は、関西の出版文化史を知るうえで
貴重な資料となっています。
高橋さんの著作には、竹中郁、山村順、林喜芳、小林武雄、足立巻一、亜騎保
など神戸の詩人が多く登場します。彼らは文化のメインストリートだった元町
通りを闊歩したことでしょう。

出演:高橋輝次(編集者・古本者)
季村敏夫(詩人)
聞き手:加納成治(古書店「街の草」店主)

★猫の聖地で《私は猫ストーカー》上映会
不忍ブックストリート+スローラーナー Presents
『私は猫ストーカー』特別上映会

イラストレーター浅生ハルミンのエッセイを原作に、主人公ハルと、それをと
りまく人々、そして、すれちがう猫の姿を描いたユーモラスで、ちょっぴり切
ない傑作。谷中・根津・千駄木のあちこちでロケし、地元の猫がたくさん出演
する『私は猫ストーカー』(7/4よりシネマート新宿にてロードショー/配給:
スローラーナー)を、公開前に地元の皆様にお目にかけます。

日時 2009年6月29日(月) 開場18:00 開映18:30
会場 不忍通りふれあい館 地下1階ホール 文京区根津2-20-7
http://www.city.bunkyo.lg.jp/sosiki_busyo_kumin_shisetsu_shinobazu.html
参加費 500円(カンパ) 予約優先
※全席自由。DVDによる上映です

上映後、鈴木卓爾さん(監督)、浅生ハルミンさん(原作)、南陀楼綾繁さん
(不忍ブックストリート)によるトークがあります

予約・問合せ先 
電話 03-3770-3717(スローラーナー)土、日、祝日はお休みです。
shinobazu@yanesen.org(不忍ブックストリート) 
※お名前、人数、電話番号をご記入ください
当日の連絡先 090-9347-8767(不忍ブックストリート・河上)

映画『私は猫ストーカー』 原作◎浅生ハルミン(洋泉社刊) 監督◎鈴木卓爾 
出演◎星野真里 江口のりこ 宮崎将 品川徹 諏訪太朗 寺十吾 岡部尚 
麻生美代子 徳井優 坂井真紀 
7/4(土)よりシネマート新宿にてロードショー!! (2009年/HD作品/103分) 
公式HP◎http://nekostalker.jp/

★6月の仙台は本の月
・一箱古本市 in サンモール一番町
2009-6-27(土) 11時〜17時
場所 サンモール一番町商店街
連絡先 杜の都を本の都にする会 080-6039-8581
《参加料》 「一箱古本市」出店料1,500円(要事前申し込み)。

・いがらしみきお×塩山芳明トークイベント
いがらしみきお(漫画家)と塩山芳明(漫画編集者)によるトークショー。
司会は南陀楼綾繁(編集者/ライター)。
出版業界の最底辺を支えてきた編集者・塩山芳明の新刊『出版奈落の断末魔』
(アストラ)の刊行を記念して、塩山編集の漫画誌から華麗に転身した漫画家
・いがらしみきお(仙台在住)が、当時を振り返る。
毒舌で知られる塩山さんはいがらしさんと旧知の間柄、よそでは聞けない貴重
な話題、爆弾発言が連発!?するかも。
2009-6-26(金) 19時00分〜20時30分
場所 市民活動シアター(「仙台市市民活動サポートセンター」地下)
連絡先 杜の都を本の都にする会 080-6039-8581
《参加料》2,000円(要事前申し込み)。定員100名

・「私のブックカフェをつくろう」ブック・カフェ講座
「貸本喫茶ちょうちょぼっこ」と「book cafe火星の庭」のつくり方を紹介。
全国の「本とカフェ」のあるお店をスライドで見ながら、参加者が「わたしの
ブックカフェ」を構想します。
「こんなブックカフェがあったらいいな」「こんなブックカフェをやりたいな」
というアイディアを形にしてみましょう。
ナビゲーターは大阪「貸本喫茶ちょうちょぼっこ」福島杏子、仙台「book cafe
火星の庭」店主の前野久美子。
2009-6-26(金) 16時00分〜18時00分
場所 市民活動シアター(「仙台市市民活動サポートセンター」地下)
連絡先 杜の都を本の都にする会 080-6039-8581
《参加料》2,000円(要事前申し込み)。

詳しくは
http://bookbooksendai.com/

なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。

「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

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■寄稿 「黒い大西洋(ブラック・アトランティック)」を経たあとで
「文化」を語ること
藤墳智史(ふじつかさとし) 松籟社編集部
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市田良彦、ポール・ギルロイ、本橋哲也 著/小笠原博毅 編『黒い大西洋(ブ
ラック・アトランティック)と知識人の現在』(松籟社 四六判 272ページ 
並製 定価:2,200円+税 発行予定日:2009年6月17日)

「黒い大西洋(ブラック・アトランティック)」――本書の著者のひとりであ
るポール・ギルロイによって描き出された、書名と同時に概念でもある言葉――
が、本書の核心かつスタート地点となる。ポール・ギルロイ『ブラック・アト
ランティック』(月曜社)には、ネルソン・マンデラにまつわるエピソード――
政治犯として投獄されていた時、マーヴィン・ゲイの歌声(ホワッツ・ゴーイ
ン・オン)に代表されるモータウン・サウンドに慰めを感じ、感謝していたと
いうデトロイトでの発言――が登場するが(同書187−88頁)、このエピソー
ドに、「黒い大西洋」が明確に現れている。つまり「黒い大西洋」とは特定の
国家、民族、文化に依らない共同性を可能にするユートピア的な空間のことで
あり、それは一方で、奴隷制度という最悪の経験(ディストピア)を反転させ
る形で成立した「場所のない」ユートピアであること。そして、そのユートピ
アが言語としての「音楽」という文化(レコードやラジオ)を決定的なインフ
ラとして成立しているのだと。本書中の言葉を用いるならば、特筆すべきは「複
数の大陸を横断する共同性が音楽を媒介に作り出されてきたという主張」であ
り、音楽が知性的な言語として「近代と反近代、前近代を分割する線を揺り動
かしながら」、「共同の知性とは何かを再審に付している」ことなのだ(本書19
−21頁)。

 本書の第1部「黒い大西洋からの声」では、『ブラック・アトランティック』
の著者ポール・ギルロイ氏、『ランシエール』(白水社)の著者市田良彦氏、
そして『ポスト・コロニアリズム』(岩波新書)の著者本橋哲也氏の3氏によ
る議論が繰り広げられる(2007年10月に神戸大学で開催されたシンポジウム
をもとに構成)。ある意味においては「文化」概念を捨て、普遍性について積
極的に考えるべきだとする市田氏。自らが打ち出した「黒い大西洋」の終焉を
宣言するギルロイ氏。そして、再度、文化を念入りに政治化することを模索す
る本橋氏。3氏はそれぞれの視点から『ブラック・アトランティック』を丹念
に読み込み、「黒い大西洋」の今日的な意義を模索し、そのインフラである「文
化」の位置づけを再考する。ここでの議論が、本書第2部「黒い大西洋、再び」
への伏線となる。

 第1部での問題提起に対して、第2部は、ギルロイ自身と前述の問題提起に
ついての「解説」の役割を担う。第2部前半のインタビュー(フランスのムー
ヴメント誌より訳出)では、『ブラック・アトランティック』が成立するまで
の経緯とともに、それ以降の仕事の展開や、最新の著書『ポストコロニアルな
メランコリー』での問題意識が披露される。

 すでに著者本人によって終焉が宣言されたギルロイの「黒い大西洋」と伴走
しながら、前述の3氏の問題提起を受け止め、「黒い大西洋」と「文化」の概
念の今日的な意義を模索すること。編者の小笠原博毅氏による解説(書き下ろ
し)が、この難しい作業を引き受ける。ここでの重要な手がかりとなるのが、
上野俊哉氏による「ディアスポラ」に関する一連の仕事である(『ディアスポ
ラの思考』(筑摩書房)、「ディアスポラ理論における歴史の文体」(『歴史を
問う』(岩波書店)所収))。これを参照しつつ、ユダヤ人の離散の経験に由
来する「ディアスポラ」が、単純に移動状態(=ノマド)を称揚するための概
念としてではなく、ルーツとルートとの緊張関係から浮かび上がる、近代の資
本主義に普遍的な状況を示すための概念として描き出される。グローバルな移
動が活発になり、国家という枠組みが弱体化したように見えても、誰もが自由
自在に移動できるわけではなく、人種、民族、文化といった枠組みによる閉鎖
的な「キャンプ」が点在し、実際には移動はキャンプ間の移動へと切り詰めら
れている。そうやって弱体化していった「黒い大西洋」を、「ディアスポラ」の
概念の二重性を強調することよって救い出し、その意義を再度打ち立てること
――第1部の三者三様の問いへの解答が搾り出されていく過程が、本書のクラ
イマックスとハイライトを飾る。

◆トークセッション開催のご案内
『黒い大西洋と知識人の現在』の刊行にあわせて、6月26日(金)の18:30
より、ジュンク堂書店新宿店8階カフェにて、トークセッション『「文化政治」
は、もう終わったのか……?』が開催されます。講師は市田良彦さん(本書著
者)と上野俊哉さん(『ブラック・アトランティック』訳者)、司会は小笠原
博毅さん(本書編者)です。入場料は1,000円(1ドリンクつき)、受付・ご
予約はジュンク堂書店新宿店(TEL.03-5363-1300)まで。

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■関西古本女子だより  次田史季
(21)イギリスの片田舎にある古本村
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「ポンド安が続いているから、イギリスに行くのはお得。」という知人の言葉
でイギリスに1週間行った。「はて、どこにいこうかしら」と迷っていたとこ
ろ、かつて北尾トロさんが『翼の王国』(2005年12月号N0.438)に「王様と
古本とボク」というタイトルでイングランドとウェールズの合間にある小さな
村のことを思い出した。

その記事によると、リチャード・ブースという人が1961年に1件のお店を
買い取って古本屋を開業したことをきっかけに、少しずつお店が増えて、今で
は古本屋が30軒並ぶ村となっているとのことだった。なによりも、リチャード・
ブースが城を買い取り、王様を自称しているという点が不可思議で興味を持った。

せっかくの機会だからとこの村、ヘイ・オン・ワイに行くことにした。ロン
ドンのパディントン駅から2時間半。ニューポートという駅で電車を乗り換え、
1時間揺られるとヘレフォードという駅につく。ここから更に数時間に1本の
バスに乗り換え1時間弱で村についた。村の外れではちょうどフェスティバル
が開催され大勢の人がいた。フェスティバルでは作家の講演会、リーディング、
サイン会などが毎日のように行われ、イギリスだけでなく、アメリカやヨーロ
ッパ各地から人が訪れるそう。英語はさっぱりのため、村を散策して過ごした。

ゆるやかな傾斜の高台にある小さな村にはあちこちに古本屋が並んでいた。
詩集を扱う古本屋、児童書を扱う古本屋、音楽関連を扱う古本屋から幅広い分
野を扱う古本屋などなど様々。ガーデニングに関連する古本を扱う古本屋など
もありびっくり。こちらでは、植物、庭だけでなく、鳥、ミツバチや生物に関
連する書籍も扱っていた。かつてのお城にある古本屋には100円均一本のよう
なコーナーが。こちらは、「オネスティブックショップ」と書かれていた。外に
箱がおかれ、そこで支払いをしてもらう仕組み。はて、英国の古本屋はどこで
もこんな風なのかしら。残念ながら王様のリチャード・ブースを拝見すること
ができなかったけれど、古本屋さんを回って、アメリカの女性の手仕事の本や
スコットランドの植物のイラストが書かれた本などを手にした。

かつては、乳製品などの商品が売られたマーケットでにぎわい電車も通って
いたにもかかわらず、電車は廃線となりすっかり、いまや人口3000人足らず
の村となったという村。にもかかわらず40軒弱の古本屋が軒を連ねる不思議
な村。牧草地帯やなだらかな緑に囲まれた空間は、うつらうつらして見た夢の
ように心地よかった。

〈ふくしま・きょうこ〉
貸本喫茶ちょうちょぼっこのメンバー。古本村で泊めてもらった夫妻が、バー
ナードリーチや濱田庄司などのかかわりからイギリスの陶器についてあつく話
をしてくれた。改めてイギリスと日本の陶芸のつながりを知りたいと、ずいぶ
ん前に購入した『民藝四十年』柳宗悦を少しずつ読んでいる。

貸本喫茶ちょうちょぼっこ
〒550-0014 大阪市西区北堀江1-14-21 第1北堀江ビル402
http://www.geocities.co.jp/chochobocko/

第1〜3週末 金18:30〜21:00、土日 13:00〜21:00
5月から土日の営業時間が20:00までになります。

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■食の本つまみぐい  遠藤哲夫
(33)こういう仕事を大切にしたい。
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WEBサイト「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」http://www.zukan-bouz.com/

今年で、この編集体制のメルマガは終わりとのことなので、どうしても、こ
れを紹介しておきたい。本ではなく、WEBサイトだ。

最近、DNA鑑定のやり直しで真犯人ではないことが確定的になった事件が話
題になっている。話題になってから、かつての鑑定方法の欠陥というか不完全
が話題になる。それまでは、まさかDNA鑑定方法に不完全があるなんて考えて
みない。メディアに書かれていることを信用している。

そしてメディアでは、これだけのサンプルを調べている、これだけのことを
知っているから正しいんだぞというような主張が取り上げれ繰り返され、その
もとの知識は大丈夫なのかは、問い返されることが少ない。問い返されること
が少ないのは、たいがい「大学の先生」の肩書がついたひとが、メディアに登
場し、たくさんの例をあげて、もっともらしい話をするからだ。そういうこと
で判断していると、とんだ間違いを犯しやすいということを、DNA騒動は教え
てくれた。

たくさんの例、それも自分が知らない例を、たくさんあげられると、素人と
しては、おかしいなと思っても、なかなか問い返すことが難しい。が、サンプ
ルの数を、いくら集めても、そのサンプルが偏っていたり、それを分析する、
もとの知識が間違っていたら、分析の結果に狂いが出る。今回のDNA騒動が教
えることの一つは、このことだ。

食の分野では、そんな例は枚挙のいとまもないほどある。食文化は、だいぶ
以前に江原恵さんが指摘していることだけど、生産や流通から、こつこつ調べ
上げ積み重ねなくては見えてこない部分がある。だけど、それは大変な労力を
必要とする。飲食店を、数千件でもいいし何万件でもよいが食べ歩いたぐらい
で、それを分類し、あたかも日本の食文化を把握し知りつくしたかのような話
が重なってきた。そういうものを根拠に積み重ね、もうグチャグチャで、何が
真実かを見極めるのも困難なほどだ。グルメが盛んなわりには、食品に関する
基本知識に欠ける状況が続いているのも、そういうことが関係するだろう。

そもそも、食べ歩きという行為自体が、それぞれの趣味に偏っている。それ
は当然だろう。ある地域の食をみた結果ではなく、自分の趣味の結果にすぎな
いものでも数が集まれば、それなりの傾向が出る。それは自分の趣味の傾向を
あらわしているにすぎない。だから自分の趣味の傾向の話しにしておけばよい。
それはそれで楽しいものである。それを、あたかも「食文化」調査をやったか
のような話にするから、おかしくなる。そういうものが、メディアで「権威的」
に流布される。

ごく簡単な例をあげると、昔から東西の分類がある。箱根の関所から西と東、
だの、関が原から西と東だの、そういう類のことで、物知り顔で「日本の食文
化」を語る。よくある話だ。ここでは、なにが欠落しやすいかというと、植生
の高さ分布だ。もっといえば、土質や気候の分布も関係する。だけど、単純な
平面的な分類のなかでは、それが5地域になろうが、10地域になろうが、あ
らわれない。もっと細かい分類にしないと、あらわれない。そして、細かい分
類にするほど、分類の意味がなくなる。

なので、食文化の把握としては、とにかく平面分布だけで終わらせることな
く、たえず緯度と高度や土質や気候の特徴などを意識する。どこかへ行ったら、
好きな飲食店に入るだけでなく、なるべく市場やスーパーを含めた食品店とみ
るといったことを重ねる。

農産物のばあいは、それだけでも、かなりちがう。「常識」のおかしいとこ
ろも、比較的容易に見つかる。悩ましいのは海産物だ。魚貝類は、近海漁業の
衰退があるとはいえ、名称も含め、かなり地域的なちがいがあるし、また逆に
大規模化によって、主な水揚げ漁港が変り、かつてと流通の地図が塗り変って
いる。最近は広域地域ごとの、つまり市場間の競争も激しく、把握しにくい。
実際、どのような魚貝が、どの市場にあるか。あるいは、ある地域の魚貝の生
産は、どんなアンバイなのか。

そういうことを知りたいと思ったら、いまイチバン頼りになるのが、この
「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」なのだ。このすごさは、「ぼうずコンニ
ャクの食べる魚貝類だけでなく多彩な生物の図鑑です。掲載種は2000種、食用
の水産生物の一般的なものは総て網羅。検索法・食べ方を詳しく解説していま
す」とあるように、食べ方まで、現地で調べていることだ。こんな地味な作業
をコツコツ積み重ねる仕事は、ほんとに貴重だ。

ザ大衆食のサイトでもブログでも、ときどき引用させてもらっている。ぼう
ずコンニャクさんは、全国を飛び歩いていて、なかなか会える機会がないのだ
が、一度呑んだことがある。このサイトのように、ハッタリのない、誠実で、
かつ呑んで楽しい人だ。

図鑑では、各魚介に「ぼうずコンニャクが勝手に決める魚貝類の物知り度」
ってのがあって、「★これを知っていたら学者 ★★これを知っていたら達人 
★★★これを知っていたら通 ★★★★これは常識 ★★★★★これ知ってな
きゃハジ」てなマークがついている。現状の食文化に対する、ぼうずコンニャ
クさんのアイロニーもこもっているようで、おもしろい。

彼の、いくつもあるブログを見てもらえばわかるが、料理に関する知識も抱
負だし、実態に即した判断をしている。とにかく、こんなに労力のいる仕事を、
ただで利用させてもらえる。食文化を薄っぺらな話で終わらせないためにも、
こういう仕事を大切にしていきたいものだと思う。

〈えんどう・てつお〉今月25日発売予定のミーツ・リージョナル別冊大阪版
『酒場本』に「エンテツのめし屋酒のススメ」ってなものを書いています。好
評のスローコメディファクトリー@下北沢での泥酔論トークライブは、今月27
日に5回目をやります。
「ザ大衆食」http://homepage2.nifty.com/entetsu/

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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(73)酒とつまみ社、始動す。
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 編集にも営業にも事務作業にもなにひとつ貢献しない名ばかり編集長として
の私は、11号発行後も、イベントに出るくらいがせいぜいで、ロクな働きをせ
ぬまま過ごしていた。

 そうこうしているうちに、『もう1杯!!』という本を産業編集センターか
ら出版していただいた。『中央線で行く東京横断ホッピーマラソン』以来2冊
目の本だが、日ごろから『酒とつまみ』を応援したくださる書店さんには、と
ても温かく迎えてもらったように思う。

 変な話だが、他社から出た単行本の取り扱い状況を気にして書店を回り、そ
の結果として『酒とつまみ』本誌や関連の書籍もしっかりと継続販売していた
だいていることに気づく、ということもしばしばだった。

 こうして、2008年は暮れていくのだが、この年には、大きな出来事があった。
 11号発行より以前のことになるが、酒とつまみ社という会社が正式に発足し
た。これまで、本誌の背表紙に『酒とつまみ社(仮)』と印刷し、仮式会社だあ、
などと言っていたのだが、それが本物の会社になったのである。

 これは編集Wクンの会社。これまでどおりの場所で、新しい会社はスタート
した。発行元である大竹編集企画事務所は、『酒とつまみ』の企画、編集、製作、
販売、管理のすべてを『酒とつまみ社』に全面的に業務委託する形をとった。

 私は、まったく文字通りの名ばかり編集長ということになるのだが、思えば、
創刊号の発行からすでに6年以上の月日が流れている。その間も、実質的に企
画編集の根幹を担い、営業についても、書店さんや個人読者との方々のパイプ
を地道に少しずつ太くしてきたのは、Wクンだ。この新しい会社のスタートに
あたって、私はあらためて、Wクンへの感謝の気持ちを強くしていた。
 
 年末、連夜続く酒の席の、一段落した後の一人飲みの時間には、きまって、
そのことを思っていた。『酒とつまみ』がなければ、『ホッピーマラソン』は
なかった。そして『ホッピーマラソン』がなければ『もう1杯!!』もなかっ
ただろう。『酒とつまみ』を始めること、継続することは、経済的にもたいへ
んな負担になったし、それは今も変わらない。しかし、そういう負担よりもは
るかに大きいものを手に入れる契機になったのも、間違いなく『酒とつまみ』
だった。俺はこれからどこまで頑張れるか。そう考えながら飲む酒の味は、い
つもより甘く感じられた。

〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集長。
酒を飲むことが仕事のようになって久しいのですが、この6月、本の雑誌社よ
り、これまで書いたものや新たに加えたものを織り交ぜて1冊の本を出版して
いただきます。酒がらみの話が大半のこの本、タイトルを『今夜もイエーイ!』
と言います。『酒とつまみ』、『酔客万来』ともども、なにとぞよろしくお願い
します。
http://www.saketsuma.com

ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

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★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。塩山さんの新刊が出るぞ。
★「関西古本女子だより」頓花恵(トンカ書店) 
 →大阪と神戸の「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「音を探してページをめくる」貴島公
 →音楽サイト「モノノフォン」の主が、音とテキストの関係を考察する。
★「〈畸人研究〉今柊二の読書スジ」
 →著者を書店まで29800円のDVDボックスを買いに走らせた理由とは?
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。
*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
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★広島で一箱古本市
 11月に本イベントが予定されている広島で、その前哨戦として
「空中一箱古本」が開催されます。どの辺が「空中」かは、自分の目で
確かめてください

日時 2009年5月16日(土) 17日(日) 11時〜16時

場所 広島市中区袋町6−36
   広島市まちづくり市民交流プラザ(TEL082-545-3911)
   北棟と南棟を結ぶ空中渡り廊下が出店場所です。

詳細は
「お好み本ひろしま2009 スタッフブログ」
http://okonomibon.cocolog-nifty.com/blog/2009/04/post-6315.html

★6月の仙台は本の月
 活発な活動を続けているBook! Book! Sendaiが6月にさまざまな
イベントを開催。主なものは以下です。
◎一箱古本市&ブック・ブック・カフェ in サンモール一番町
◎古本縁日 in 仙台 〜「わめぞ」の古本・雑貨市〜
◎古本屋起業講座
◎「私のブックカフェをつくろう」ブック・カフェ講座
いがらしみきお×塩山芳明トークイベント(司会・南陀楼綾繁)
ほかにも、いろいろやります。開催日時など、詳細は下記を。
http://bookbooksendai.com/

★西荻ブックマークで山王書房を語ろう
第33回西荻ブックマーク
『昔日の客』を読む 〜大森・山王書房ものがたり〜

出演:関口直人(音楽プロデュサー/ディレクター) 
岡崎武志(ライター、書評家)
会場:今野スタジオマーレ

6月28日(日) 開場16:30/開演17:00
料金:1500円(会場でお支払い下さい)

定員25名 要予約

多くの文士に愛され、小説の舞台にもなった東京大森の古書店「山王書
房」(昭和28年〜52年営業)。店主関口良雄が残した今や幻の名随筆『昔日
の客』を、ご子息である関口直人さんをお招きして紹介いたします。ナビゲ
ーターはご存知岡崎武志さん。お二人のまるで掛け合い漫才のような名調子も
聞き物です。このささやかなイベントを通じて、広く一般に読み継がれる復刊
運動の一助になることを祈ります。

申し込みはこちらから
http://nishiogi-bookmark.org/

なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

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■関西古本女子だより  頓花恵
(21)神戸海岸忘日抄
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今年は最大16日間ものゴールデンウィーク休暇を過ごした方がいると耳にし
ました。若葉風吹く神戸の街はたくさんの観光客で賑わい、人で溢れた眩しい
街に改めて観光都市を意識しながら、一段と活気で華やいだ通りから一本路地
へと抜け出でます。

 スーツケースを引いた遠方からの来店者さんに神戸の観光名所を尋ねられた
り、近くのゴハン屋さんへの案内地図を書きながら、今まさに黄金週間中のお
客さんの様子を尻目に自分は果たしてこの囲いの中に繋留されているのだろう
かと1冊の本をふと思いました。

 堀江敏幸『河岸忘日抄』、異国のとある河岸に停泊した船に住むことになっ
た「彼」のたゆたう日々。日がな一日本を読み、クレープを焼き、珈琲を入れ
て、時々やってくる郵便配達夫と共に語らい、古いレコードを聴きながら過去
を振り返ったり未来を想ったりしながらゆるやかに日を忘れてゆきます。

小説はセーヌ河を思わせる河の流れと同じようなゆるやかなリズムを刻み、
読者もまた河のリズムに身をまかせつつ、変化のない主人公の日常の中に確実
な変化を感じながら自分自身を重ねてゆきます。本来の目的を失った船は只そ
こに留まり浮かんでいるだけだけれども、新しい居住者と共に河から大海原へ
の航海を空想しているようなそんな印象です。

静まり返った店内で思うこと、小説の言葉を借りるなら「終わりもなくはじ
まりもない、ながく単調なそしてかけがえのない持続」。だけど停泊船に憧れ
を感じながらも当船は留まることにひどく臆病なのでぐるぐると旋回してしま
うのです。

ゆらりゆらりと日を忘れて浮かんで過ごせたらなぁとドック近くの錆びた海
を眺めながら対岸の光を眺めています。

〈とんか・めぐみ〉神戸元町にてザックバランな古本屋「トンカ書店」を営業中。
6/1〜6/12 北欧買い付けのため臨時休業致します。

イベント案内:6/15〜6/30「北欧お土産展」
7/1〜7/15「佐藤悠介作品展 おとぎの世界」
7/16〜7/31「betty chowの絵封筒展」
詳細はHPまで

トンカ書店
650-0011 神戸市中央区下山手通3-3-12元町福穂ビル2D
078-333-4720
http://www.tonkabooks.com/

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■音を探してページをめくる  貴島 公
(15)意味が消えても、楽しさは残(せ)る
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牧野良幸『オーディオ小僧の食いのこし』共同通信社、2009年4月

 オーディオ、つまり、音声の記録再生媒体および装置についての年代記。
出版社はちがうけれど、2008年に出版された前著『僕の音盤青春記 1971-
1976』(音楽出版社)と構成がほぼ同じ、続編・姉妹編と言っていい(巻末
には広告も出ている)。ズッコケ気味の思い出話を抑えたタッチで語る一方、
イラストでさらに茶化したり、脱線ネタを盛り込むことで、行為のおかしみ
を取り出すことに成功している。

 わたしは著者よりも五歳下だけど、小さな頃はともかく、中高生の頃の体
験に共通するところは多い。特にイラストに込められた小ネタには苦笑させ
られっぱなし。FM放送の録音中に家族が蛍光灯をつけるのを防ごうとした
り、カセットテープの巻から残り分数を読んで最後まで録音できるか秘かに
勝負したり。あんまり書くと、ネタばれになるのでこのへんにしておくけれ
ど、ああ、そや、そやったなと、音楽を聴くという行為に不可避だった行為
のあれこれが、情けなさと一緒によみがえる/こみあげる。

 言ってみれば、「あるある」ネタのオンパレードなのだが、それらのほと
んどが、いまでは、メディアの変化によって、失われている。と言うよりも、
不必要・無意味なものになっている。放送を録音する行為を指すエアチェッ
クという言葉について、人前でその語を話すことを恥ずかしく思っていた隠
れキリシタン状態が、エアチェックという行為そのものが廃れることによっ
て終わりを告げるくだりが象徴的に思える。外的要因によってたまたま不可
避であったというだけの非本質的なことになってしまうのだ。そのことが明
らかになると、もう逆戻りはできない。

 非本質的な行為にも「意味」はあっただろう。でも、それを語ったとして
も、過去を知る者が懐かしく思うくらいで、救い出すことはできない。どん
なに資料を駆使して過去を再構成しても、書き手が無意味であると思ってい
ることをきちんと扱うことは難しく、そのつもりはなくても、貶めてしまっ
たりする。著者は、意味があったということを胸に秘めながら、楽しさだけ
を語ろうとすることで、思い出話や慇懃無礼な資料であることを免れている。
それにしても、「しかたがなかった」行為にすら意味を見出してしまうのは
楽しいというか、哀しいというか。

〈きじま・こう〉説明業、趣味・読書と音楽鑑賞。
年代記ものでは、二階堂黎人『僕らが愛した手塚治虫』(小学館)も、手塚
作品に止まらず、記憶をベースに資料をきちんと拾っていて、楽しく読んだ。
意見の異なるところはあっても、同じものを見ているなぁ、と。現役体験至
上主義ではないですが、「関心」を資料から拾うのは難しいです。

「モノノフォン」
http://homepage1.nifty.com/hebon/fhp/

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■〈畸人研究〉今柊二の読書スジ
(27)ラーメン本三冊
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現在『定食学入門』(ちくま新書)執筆のために様々な食に関する本を読ん
でいるけど、かなり役立つのがラーメン本。研究者が多く良書を見つけやすい
のだった。また、ラーメンを中心に記していてもその周辺の土地の食文化や、
またはラーメンを含んだ定食について記していることが多々あるのだった。な
かでも概論と各論が素晴らしい三冊を以下で紹介。

大崎裕史『無敵のラーメン論』(講談社現代新書)。簡潔かつ深く掘り下げ
たラーメンの歴史。そして旭川から鹿児島までの全国の麺、スープ、具の徹底
調査、紹介。ラーメンの背景にある全国の食文化もわかる。実は店名で「○○
食堂」とつくラーメンの店は、店名のごとく、ご飯ものも提供する場合もある
ので、知らない土地での定食屋さがしのときに役立つのだった。なお本書には
写真も多数掲載されており、ラーメンという「食」の百科事典として素晴らし
い仕上がりぶり。

東海林さだお編『ラーメン大好き!!』(新潮文庫)。定食研究の大先達であ
らせられる東海林先生は、ラーメンもことのほか愛されているのだった。ラー
メン店主へのインタビューあり、座談会あり、東海林先生によるラーメン制作
もありと実に楽しい一冊。村上龍からジャンボ鶴田まで寄稿しているのもすごい。
 
嵐山光三郎編著『インスタントラーメン読本』。これも新潮文庫。偉いなあ、
新潮文庫。ひたすらインスタントラーメンを続けて食べ続ける企画があって、
嵐山氏の凄みを感じさせる一冊。この本は特に大学生のときに読んで強い影響
を受け、インスタント焼きそばの偉大さに強く共感したのだった。

〈こん・とうじ〉畸人研究学会
神奈川新聞にて連載している「かながわ定食紀行」が、神奈川新聞のかもめ文
庫にて、文庫本としてついに刊行! 値段は定食一回分です(笑)

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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(72)またまたトークで酔っ払う
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 2008年10月、『酒とつまみ』11号の販売は順調に推移していた。
 その勢いもあって、私は、11月の初旬には、東京新聞主催のイベントで話す
という大役を仰せつかった。

 司会者がいて、ふたりの人間がその質問などに答える形式で進むイベント。
お相手は『古典酒場』の倉嶋編集長だった。企画は『大人の自遊大学』、酒を
テーマにした講座を開くとのことだった。

 どういう運びになるのかまるで見当もつかないまま当日が来てしまい、ああ、
何を喋ればいいのかまるでわからないと実に不安な状態で内幸町のビルを訪ね
た私は、なんかこう、あまりにもきちんとしたセミナー形式の会場のあり方に
まずビビリ、本番前の打ち合わせで、
「とにかく本番の間、少しだけでいいから飲ませてください」
 と、担当の方にお願いしたのだった。

 手が震えるとか、そういうことではなく、新聞社の会議室状の部屋で、素面
で、真面目に聞きに来てくださっている方を相手に喋るというのは、ちょっと
無理です、というほどの意味だ。
 頼んだ甲斐があって、本番開始時に、焼酎を出してもらうことができた。水
だの氷だの、ぜいたくは言えない。生のままで飲むのだが、さすがは倉嶋編集
長、意に介さず、ぐびりとやる。女傑です。

 私のほうは、喉を熱くしてから胃へ流れ落ちていく焼酎の感覚で、ようやく
ひと息ついて、司会者の方から振られる質問に、どうにかこうにか答えていく
だけ。
 どんな、つまみが好きか、今までどんな店がうまいと思ったか、初めて入る
店を選ぶときはどうすべきなのか、などなど、まともに答えろと言われたら途
端に無口になってしまいそうな質問が次々に来たような気がするが、実はあま
り、覚えてもいない。
 
 どうにかこうにか第一部の講座が終る。この後は、場所を変えての2次会。
これは酒の入る懇親会で、ホッピービバレッジから担当の方もいらっしゃって、
おいしい飲み方を伝授してくれたりもする。

 受講された方々は、2次会の会場でも、最初のうちには、あまりお話になら
ない。場は、なんというか、シーンとしている、という感じに近い。
 ああ、これはどうしたらいいのか、わからない。まともな話もできず、盛り
上げることもできない私は、いてもたってもいられない。

 そのとき、倉嶋編集長から『古典酒場』の法被を持参しているとの話を聞い
た。彼女ももちろん羽織っているのだが、ここはもう、私もお仲間に入れても
らうしかない。
 で、結局のところ、『古典酒場』の法被を着た私は、次々にお客様に声をか
けて歩くことになった。

 盛り上げるつもりだが、そんなことで簡単に盛り上がるわけでもない。しか
し、何かしなければ、という思いだけはあった。
 幸いなことに、宴はその後、お酒も入ったことで和やかな雰囲気となり、中
には『酒とつまみ』を創刊号から応援してくださっているという読者さんもい
て、私としても、とても嬉しい一夜となった。

 イベントの後は、古典酒場、東京新聞の方々と一緒に、飲みに出る。虎ノ門
から銀座へ流れ、徐々に緊張も解れる間に完全に酔っ払い、実はことの詳細を
よく覚えていない状態で、帰路についた私なのでありました。みなさま、本当
にお世話になりました。ありがとうございました。

〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集長。
いい陽気になってきました。朝帰りに比べりゃこんなもん軽いぜと嘯きながら
帰宅した晩のこと。殊勝にも風呂場で湯を浴び、少しさっぱりとして全身の雫
を拭っているとき、ふと伸びをしたならば、そのままふらりと後方へ体重が移
動、背中が何かに触れたことで安心したものか、そのまま体重をかけたら浴室
へ仰向けにひっくり返った。大怪我はない。でも右腕がまだ、痛みます。
http://www.saketsuma.com

ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(83)龍書房の巻 満たされない地方公務員のようなたたずまい
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龍書房は千代田区飯田橋2―16―3、金子ビル2階に居を構える。早い話が、
我が三信ビル(飯田橋2―3―2)の玄関を出たら、右折して2〜3分のトコ
だ。聞いた事のあるような、ないような版元様だ。要するに何のイメージも湧
かない。

 金子ビルも地味。6階建ての下駄履きマンション風だが、築30年は優にた
つのでは? 白い壁面も汚れが目立ち、縦線のスミっぽい汚れがスダレ状に
(“スダレ状”というと、つい映画『野獣の青春』での、カミソリ片手のいか
れた川地民夫を連想。こ…怖いよ−!!)。30代後半の、結婚意欲はあるの
に出来ない、満たされない地方公務員(男)のようなたたずまいだ(趣味→
エロ漫画・プロレス・鉄道)。

 左側がT氏宅、右側のビルは日経印刷がほとんど占拠。10余年前、やおい漫
画誌『コラージュ』(東京三世社)は、ここが担当してたんだよと懐旧に浸っ
てると、後ろから「今日は!」。出入りのヤマトのオッサン。真ん前が地区の営
業所なのだ。

 ボケのせいもあるが、どうも版元と出版物のイメージが合致しない昨今。か
つてのように、各種図書館で『週刊読書人』を、身銭で『日本読書新聞』を買
わなくなった頃からその傾向が(ネ…ネタが古すぎ)。特に後者は広告代が安
いせいか、全く知らない版元が、訳のわからない本を宣伝、田舎文学青年には
非常に勉強になった(埼玉の上尾付近にあった林道舎、まだあります?)。

 もちろん、龍書房にはHPなんてケーハクなもんはない。ステキだ!(「古
書現世」の特上肉大魔人、セドローの口調で)「ジュンク堂」池袋店の在庫ペ
ージから、出版物の傾向調査。『ヒロシマ・消えない記憶』(梶杏子)『歌を
愛する女たちの挑戦』(伊藤早苗)『蟹シャボテンの花』(笠原勇)『信長謀
殺光秀でない』(井上慶雪)…一体どういう版元様? しかも、ほとんどの刊
行物が、在庫ゼロの黄赤ベタ文字表示。あるいは予約制?

 2ページ目に入り何となくリンカクが(全41点を10点づつ表示)。『家永・
教科書裁判 高裁・最高裁 第13巻 第一次訴訟上告理』(教科書検定訴訟記
録刊行委員会篇)『家永・教科書裁判 高裁篇 第14巻 第二次訴訟差戻審』
(同)。「わかった!(金田一モノ映画の加藤武タッチで)共産党系なんだ。こ
こら昔から、全労協全国一般東京労組とか、教科書ネット21だの、共産党系団
体多いしナ」。

 しかし落ち着いて考えると、後の2団体は『赤旗』によく関係者が登場する
が、龍書房の名前は見た事もない(広告ページも含め)。更に“在庫なき在庫
ページ”をめくる。『犬を連れた奥さん』(葉山修正)←我が『獣欲』(一水社)
とは無関係と思われる。『宮本武蔵の覚悟』(中津攸子)『りり子の場合』(泉
紀子)『蒙古襲来と東北』(中津攸子)『角栄現象の構造』(藤山淳二)…。

 刊行物をたどるほどにカフカ状態に。学術書と自費出版をミックスした、社
民党シンパの版元様?今度、菓子折りの1つも持って、社の由来でも伺いに行
こうか。初夏なのにブルブル震えながら、あの汚れたスダレビルに。

〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)、『出版業界最底辺日記 エロ漫
画編集者「嫌われ者の記」』(ちくま文庫)、『東京の暴れん坊 俺が踏みつけ
た映画・古本・エロ漫画』(右文書院)。『出版奈落の断末魔 エロ漫画の黄
金時代』なる恥ずかしいタイトルとカバーの新刊が、アストラから好評発売中。
なお、この連載に関しての批判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(た
だし、謝るとは限りません)。
mangaya@air.linkclub.or.jp
http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/

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■        vol.404
■■  mailmagazine of book reviews [ めしを作る覚悟 号]
■■------------------------------------------------------------
[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。春の本イベントいろいろ。
★「関西古本女子だより」郷田貴子(ちょうちょぼっこ) 
 →大阪と神戸の「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「食の本つまみぐい」遠藤哲夫
 →〈大衆食堂の詩人〉エンテツが料理文化史の重要本を紹介します。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。
*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
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★今年もいろいろやります、不忍ブックストリートの一箱古本市
 通算8回目となった一箱古本市。今回は初めての大家さんも登場。1日
50箱、2日で100箱が揃います。2日間参加すれば、谷根千の隅々までを
歩けます。スタンプラリーもあるよ。

5月3日(日・祝) 谷中側の9スポット
4日(月・祝) 千駄木側の10スポット
11:00〜16:00 雨天決行

 また、これにあわせて「一箱古本市week」を開催。月25日(土)〜5月
6日(水・祝)の12日間。一箱古本市を含む、50近くの企画がエントリーし
ています。

 主な企画をご紹介しますと……。
◎『ベスト・オブ・谷根千 町のアーカイヴス』(亜紀書房)刊行記念座談会
森まゆみさんとジョルダン・サンドさんの谷根千建築紀行
5月2日(土) 旧安田邸

◎南陀楼綾繁セレクト「フリーペーパー=小さなメディアの放つ光」展
4月25日(土)〜5月6日(水・祝) ブックカフェ・ブーザンゴ
トーク 4月29日(水・祝)

◎菅原克己の風景展〜昼と夜の空のつぎ目で〜
4月29日(水・祝)〜5月11日(月) 谷中ボッサ
オープニング雑談会 4月29日(水・祝)

◎出張ミシマ社〜ミシマ社を丸ごと1日再現します!〜
4月25日(土) 茶ノ間

詳しくは
http://d.hatena.ne.jp/shinobazukun/

★仙台でも一箱古本市
「一箱古本市 定禅寺ブックストリート」
仙台のシンボル定禅寺通りの緑の回廊、ケヤキの木の下で、1人が一箱分の
古本を持ち寄って販売する『定禅寺ブックストリート』を、初めて開催します。
 季節はケヤキ並木が、陽射しに輝きはじめるみずみずしい4月。オープンカ
フェやラブソングコンサート、ことばで遊ぼうコーナーや紙芝居、白いノート
ブックで私の本づくりなど、楽しい企画も準備進行中です。

日時 2009年4月29日(祝日) 11時〜17時
   雨天の場合:5月2日(土)
場所 定禅寺通り・緑の回廊
http://attakakokoronet.blogspot.com/2000/01/bookmarkets.html

なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

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■関西古本女子だより  次田史季
(20)本を見に行く
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「さんどめ さんがつ にのにのいち」も好評のうちに(?)無事終わりまし
た。途中で何度か本を追加したので、何度も足を運んで下さった方もありまし
た。また、今回は新企画の「くらしか視聴覚教室 VOL.1 100円ジャンボリー」
が開催されました。ゲストの中嶋さん(オンライン古書店BOOKONN店主、アホ
アホエキスポ著者)が 100円で買った本と「古書くらしか」さんが100円で買
ったレコードを持ち寄って雑談するというゆるいイベントで、二人のやりとり
が微妙にぎこちない感じで進められました。非売品のどこかの学校の合唱曲あ
り、父の世代の人の子どもの頃の日記あり、たまに自慢話もあり、二人の100
円の歴史を垣間見たような気がしました。

今回ゲストとしてきて下さった中嶋さんが、本の整理をしているということ
を聞き、ちょうちょぼっこの3人(真治、郷田、次田)とエルマガジン社のIさ
んと今回のDMのデザインをして下さったKさんとで中嶋さんちを訪問すること
になりました。福島さんから届いたお菓子と宅配でピザを頼んで、パーティ気
分を楽しみました。何年か前に真治さんと二人で中嶋邸を訪れた際、ここでパ
ーティがしたいと言っていた念願がかなったのでした。食べるのとおしゃべり
に夢中になり、本を見にきたことを忘れそうになりましたが、床一面に積んで
ある本の山につまづきそうになりながら、6冊ほど選びました。

沢野井信夫著『版画のいろいろ』、凸版印刷株式会社発行『パンの本』、海
野弘著『アール・ヌーボーの世界』、長沢節監修『スタイル画の世界』サセック
著『This is London』、『This is New York』

『版画のいろいろ』は、「『版画とは”ふれあい”のすべてである』と定義す
ることができるでしょう。」というだけあって、ほんとにいろいろ載っている。
『パンの本』はどこかで見たことがあるなぁと思っていたら、『アホアホエキ
スポ』に載っていたのだった。『アール・ヌーボーの世界』は海野氏の初著書。
文庫は持っていたが、造形社版ははじめて見た。『スタイル画の世界』 NHKの
長沢節の特集を見てから、より彼のファンになる。節さん以外のセツ・モード
セミナーの人たちも書いて(描いて)いる。サセックの洋書絵本『This is New
York』は、ちょうちょぼっこで月1、2回開催している「英語の会」で読んだ
もの。ロンドンも気になったので。

ピザを囲んだささやかなパーティでは、マンガの話で盛り上がりましたが、
そこから、マンガの読書会はできないものかという話になりました。そのうち、
実現するかもしれませんので、そのときはまたお知らせ致します。

〈つぎた ふみき〉ちょうちょぼっこメンバー。
先日、「季刊謄写技法第6号」が届いた。今回は和とじで渋い表紙。内容はか
なり盛りだくさん。冬と夏はあまりやる気が起こらないので、やるなら今しか
ないと思いつつ毎年すぐに暑くなってしまう。ちょうちょぼっこでガリ版講座
をと考えてはいるのですが。

貸本喫茶ちょうちょぼっこ
〒550-0014 大阪市西区北堀江1-14-21 第1北堀江ビル402
http://www.geocities.co.jp/chochobocko/

第1〜3週末 金18:30〜21:00、土日 13:00〜21:00
5月から土日の営業時間が20:00までになります。

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■食の本つまみぐい  遠藤哲夫
(32)「実用書」をバカにしちゃいけないよ。
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瀬尾幸子『ちゃぶ台ごはん』小学館、2009年

この4月になって発行になったばかり。瀬尾幸子さんの本は、07年10月15日
vol.332の25回目で『簡単!旨いつまみ』(学習研究社、2007年)を紹介した。
そのあと『おつまみ横丁』が出て絶好調、『おつまみ横丁 もう一軒』が続き、
たしか両方で80万部をこえるベストセラーになった。というわけで、本書の腰
巻には、「『おつまみ横丁』の瀬尾幸子さんが作り続けてきた愛蔵レシピ101」
とある。

じつは、おれは、「料理理論」については、傲慢といえるほどの自信を持っ
ている。ここでも、これまでイチオウ有名な著書をいくつも取り上げてきたが、
ほとんど腹の中では馬鹿にしながら書いている。黙っていても、それはねーだ
ろ、ってところを見抜いたうえで書いている。そんなつもりなバカですね。

食べることについては、食べることができて文章さえ書ければ、誰だって書
ける。だからだろう、文章を書くたいがいの人が、書く。そして、たいがい、
調子にのってアヤマチを犯すことが少なくない。ま、それを文章の「表現力」
だか「技法」だかで、フツウの読者は誤魔化せても、おれは誤魔化されないよ、
と、おれは自信満々なのだ。

しかし、瀬尾さんについては、馬鹿にできない。困った。馬鹿にできなくて
は、おれの立つ瀬がない。でも、とにかく、瀬尾さんの頭の中には、料理に関
するカンジンなところが、ぎっしり詰まっている感じがする。そのカンジンな
ところとは、「料理研究家」であるかぎり、台所まわりのことは当然で、すご
いのは台所と料理が成り立っているバックグラウンドに関する幅広さと深さだ。
今回も、それを、強烈に感じたので、これはもう、どこの台所にも常備してほ
しいと思って、二冊目だけど、紹介することにした。

「料理研究家」の肩書でも、「0.1」ぐらいのことを「1」ぐらいに伸ばし
て料理本を出している人は、いくらでもいる。そして、「100」のことを
「1」 に凝縮するひとは、少ない。ま、ストックが貧弱なのだな。それは、
フローに走るメディアの責任であるかも知れない。

たいがいの住まいには調理設備がある。だけど、料理をしない人はいるし、
する人もいる。自分で作って食べることを基本にしている人もいれば、そうで
ない人もいる。その違いは、どうしてあらわれるのだろうか。その背景は一口
で説明するのは難しい。その人が生を受けてからの知識や習慣や経験や体験な
どの全てが、そこに凝縮している。それは料理のレベルでも同様で、大げさに
いえば、仮に、フライパンに油をひく行為一つに、その人が生を受けてからの
全てが凝縮してあらわれる。しかも、料理は物理的であり、誤魔化しがきかない。

それをレシピとして表現するとなると、かなりの困難がつきまとう。結果的
に、圧倒的によくある例だが、無味乾燥なマニュアルのようになってしまう。
そんな料理本を見ても、楽しくないし、やってみようという気が起きない。

で、近年は、レシピに、なにやら楽しげなエッセイ風のものがプラスされる。
ことによると、楽しげなエッセイ風にレシピがプラスされる。すると、ますま
す、化けの皮がはがれる。昨今の、なんでしょうねえ、「ナチュラル」系?
「癒し」系? 同じようなブックデザインで、同じような文体で。本書におい
ても、そういう文体を真似たような解説がついている。だけど、中身が、だん
ぜん違うのだ。

『簡単!旨いつまみ』のとき、「「つまみ」は料理ではないのか? といえば
料理だし、やはり本書は「料理論」があるひとの本になっている。むしろ高邁
な本格的なこけおどしのきく料理より、それが際立つようだ」「瀬尾さんの料
理には、独得のスピード感とリズム感がある。まさに「速攻」なる言葉がふさ
わしいのだけど、リズム感は料理の原則や構造から生まれるから、それがわか
っていないと表現されない。アイデアとスピードだけで奇をてらったものにな
る」と書いた。

『おつまみ横丁』は、新書版というコンパクトのサイズで、レシピを3ステッ
プでわかりやすくしたことが、使いやすく売れる要因の一つになったと思う。
しかし、実際のところ、的確に3ステップでまとめるのは容易ではない。簡単
にすればするほど、ストックが貧困なら、ボロが出る。それは、その後増えた
類書を見れば歴然だ。

そして、本書は、やはりB6のコンパクトサイズで、全部が3ステップとい
うわけではないが、ほぼ、おなじように簡潔なレシピになっている。

「日々、飽きずに食べられるおかず」「作り続けても飽きない」そして「季節
のものも、季節を問わずいつでも作れるものも、作り方は簡単ですが手抜き料
理ではありません」と言い切る。これは、瀬尾さんの一貫した立ち位置だと思
う。本来、ごはん、つまり本書における「めし」と「おかず」は、そこがカン
ジンだろう。だけど、こう言い切って、そのとおりにレシピを示される人は、
めったにいない。だってね「飽きない」ですよ。

料理は毎日のことだ。いや、そこから考えているかどうか。毎日のことだと、
覚悟のはっきりしてない人も少なからずいるようだ。だけど、毎日、食事はし
ている。そのとき、自分で作るものだという覚悟があるかどうか。実際にでき
ないことがあっても、自分が立ち返るところは、自分の台所だという、生活に
対する「姿勢」のような「思想」のような「哲学」のような、覚悟があるかど
うか。そこまで問われることになる。

ラー油を手づくりする一方で、製品の濃縮だしをつかいこなす。「ずっと続
くことだから無理は禁物。時間がないときは、無理をしないで作れるもので晩
ごはんにしましょう」と説く。すべては、そこから始まるのだ。生きる覚悟が
あるなら、めしを作る覚悟もしよう。そういうことなのだ。

東大宮の小さな本屋にも、この本は置いてあるから、どこでも簡単に買うこ
とができるだろう。買って、瀬尾さんが、こともなげに簡単にまとめているこ
とを、注意深く読んでみよう。生きる心構えや生活の美しさは、即物的に見え
る料理のレシピ、ハウツーに宿るものなのだ。何か作りたくなるだろう。

〈えんどう・てつお〉発売中のミーツ・リージョナル別冊『東京ひとりめし』
に「遠藤哲夫の[信濃路]偏愛話。」を書いています。スローコメディファク
トリー@下北沢での泥酔論トークライブは、好評のうちに今月26日が4回目。
「酒とつまみ」のサイカメさんと「スナック」についてオシャベリの予定。
「ザ大衆食」http://homepage2.nifty.com/entetsu/

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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(71)11号完成・拡販トークでトークできず
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ベロベロ泥酔校了を終えた『酒とつまみ』編集部に待望の11号の完成品が納
品されたのは、2008年9月5日のことだった。この季節の納品はきつい。完成時
に取次店に直接納品されるのは1000部だったので、残り9000部を、エレベータ
ーのないビルのことゆえ、階段で3階まで担ぎ上げるのだ。きつい。オレには無
理だ。

 とはいえ、納品日にはカメラのSさんも駆けつけてくれるし、編集部にはN
さんという女性ながら強い味方もいる。焦らず、ポツポツやろうよ。そんな声
をかけるのは、息が続かない私だが、9000冊の重みというのは、やはり、あり
がたいもので、階段の上がり降りをしながら、ときどき、ちょっと感動してい
たりする。

 担ぎ上げを追え、ビールで乾杯。このビールは猛烈にうまい。そして、その
日のうちに手配すべき最初の出荷分の準備にかかる。関係者の方々、連載陣の
方々、今回の取材をお受けいただいた方やお店への献本を最初に行い、夕方か
らは銀座のバーへ創刊以来の納品行脚に出る。この1日だけで、総出荷数は
1340冊(取次店への1000冊を含む)に及んだ。

 ああ、すごいよなあ、と感慨深く思ったのは、それから約ひと月立った、9月
の末のことだ。毎日の出荷分を記してあるノートを見て驚いた。5日に納品さ
れたばかりというのに、8日には出荷が2000冊を超え、10日時点では3295冊。
その後も途絶えずに出荷が続く。

 個人で申し込んでいただいてる読者の方々、直接取引をしていただいている
書店さん、飲み屋さん、酒屋さんなどへ毎日毎日出荷が続く。一件ごとの冊数
はそう多くはない。個人の方であれば1冊という人も多い。だから、出荷作業
には時間がかかり、この時期、編集人WクンもNさんも休む間もない忙しさで
出荷を続ける。例によって、私は酒を飲みすぎて使い物にならないか、そもそ
も仕事場へ出てこられないというひどい状況にあるのだが。

 で、9月の末日の数字である。発売から25日経ったこの日。出荷冊数は5707
冊を数えたのだ。500部でスタートし、その後2000、4000、5000と印刷部数を増
やした『酒とつまみ』だったが、創刊4号から7号までは5000部で推移した。
5000部が、ギリギリの天辺なのかなあと思ったときもあった。
 
 それが、1ヶ月足らずで5700を超える出荷を数えたのだ。編集にも営業・出
荷にもほぼ役に立っていない名ばかり編集長の私であったが、感慨だけは人一
倍深い。思わず感涙に咽びそうになり、またまた、グイグイと飲みに出かける
のであった。

 月が変わった10月初旬。倉嶋編集長率いる名物雑誌『古典酒場』のトークセ
ッションに参加させていただいた。『古典酒場』主催のイベントで、ゲストに
は作家の渋谷和宏さん、ホッピービバレッジの石渡美奈さんが招かれ、私もそ
こに混ぜていただいた。

 お客さんも飲み、トークする側も、ついでに言うと主催者代表の倉嶋編集長
も飲みながら喋るという壮絶なイベントで、私はコレを機会にせめて拡販につ
なげ、『酒とつまみ』編集部の役に立ちたいと思いながらもトークはままなら
ない。ただ、酔って、振っていただく話にやっと答えるのが精一杯だった。

 それでも、会場で『酒とつまみ』は13冊も買っていただくことができた。
嬉しい私は、渋谷さん、倉嶋さんたちと一緒に、会場のあった同じ市谷の『三
晴』へ流れる。

 ここでもホッピー。ああ、終わった終わったという安堵感からぐぐっと酒が
進み、そのころになって不思議なことに喋れるようになってくる。バカ話ばか
りだけれど、それなりに自分も盛り上がれる。

 打ち上げも終了間際になったとき、ふと思ったのは、なんでこの喋りが、本
番でできないのだろう……。今ならもう少しおもしろい話ができるのに……。

 まあこれも、酔った頭で思っていることでして、実際には、取りとめもない
話を繰り返しているに過ぎないんですよね。そう、それがわかっているからな
おさみしい、トーク後の深酒なのでありました。
 
〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集長。
『ミーツ・リージョナル別冊〔東京篇〕東京ひとりめし』に登場させていただ
きました。コーナーのタイトルは『イケナイ昼酒』。大写しになった自分を見
て慄きました。昼から飲んじゃダメだって顔色しているんです。でも、好きな
3軒に寄らせていただいています。ぜひ手にとっていただきたくお願い申し上
げます。エンテツさんもばっちりご登場です。
http://www.saketsuma.com

ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/
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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(82)日本エディタースクール&出版部の巻 オレンジ色の憎いビル
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 遠山企画なるエロ漫画編プロの社員編集者時代(70年代末〜90年代頭)、
よくバイトの面接を。既に死語と化したが、当時は“編集馬鹿”と呼ばれる珍
人類が、男女を問わずに腐るほどいた。当然、零細編プロの募集にも火災硫の
ごとく押し掛ける。その際に履歴書を見て最初に外したのが、日本エディター
スクール出身者。「馬鹿で不細工で生意気で、誰1人使い物にならん!!」と
の、古い言い伝えがあったから。どの程度の信憑性があったのかは今も不明だ
が(1人も採用してないのだから、確認する術もない)。

 千代田区三崎町2ー4ー6、古堂ビルに、同スクール及び出版部は入居(3
階〜8階を占拠状態)。専大交差点を水道橋駅に向かって直進、駅の数百メー
トル手前の右手に位置(鉄建建設のチョイ手前)。同ビル、1階に“モダン食
堂”「東京厨房」、2階に他テナントが入るのみで、エディタースクールビル
と言っても過言ではない。出版業界のかつての好景気が、しみじみと偲ばれる
(何しろ全日制1年で、学費等が98万もかかると。闇金屋ものけぞるか?)。

 けど今後は厳しいんじゃ? 100万もだまし取られる、いや払い込むなら、
元金保証(就職保証)がある訳じゃなし、貯金しといてDTP屋に就職、給料
もらいながら技術を会得した方が、よっぽど合理的。数年で退職、100万及び
DTP屋時代の貯金で、じっくり“編集馬鹿業界”入りをめざすのさ。俺の考
えどっか間違ってる?

 悪趣味さにおいて同スクールの御殿は、本連載でも間違いなくワースト3に
入る。水道橋西通りに面した古堂ビル正面は、黄ベタ×Kピンクベタ×アイ30
パーセント。つまり品のないオレンジ1色。向かって右が「スターバックス」
が1階に入る、薄茶の上品なビル。左手が鉄建建設の関連会社と思われる、テ
ッケン興産のホワイトビルだから、目立つの何の(楳図かずおのサイケな自宅
に負けてない)。

 しかも、各階の淡い緑色のブラインドが、耐久年数の3倍は使用してると見
え、壊れかけたアコ−デオンのようにだらしなく、目立つ割に小汚い同ビルの、
視覚的マイナスイメージに拍車を。断末魔の出版業界の明日を象徴する、コク
のある景色と理解すべきかも知れないが。

 ビル右側に、スミベタ文字白ヌキで、“出版学校 日本エディタースクール”
の縦長の巨大看板。別にその上に、“日本エディタースクール出版部”のミニ
看板。つまり、8階の一番景色のいいトコに入居してるらしい。『印刷発注の
ための資料』『翻訳出版の実務』(宮田昇)『校正記号を使ってみよう』等は
わかるが、『新体操の光と影 通訳が語る25年間』(松浦たか子)『現代日本
の高齢者生活年表』(河畠修・厚井薫)となると、よくわからない。

 70年代、筆者は埼玉の西川口に長く住んでいたが、新日本文学系作家の講師
による、埼玉文学学校のビラが、ペタペタ電柱に貼られてるのを良く見た。も
はや両者共に消滅したが、“オレンジ色の憎いビル”こと、日本エディタース
クールはどうであろうか? 

〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)、『出版業界最底辺日記 エロ漫
画編集者「嫌われ者の記」』(ちくま文庫)、『東京の暴れん坊 俺が踏みつけ
た映画・古本・エロ漫画』(右文書院)。『出版奈落の断末魔 エロ漫画の黄
金時代』なる恥ずかしいタイトルとカバーの新刊が、アストラから好評発売中。
なお、この連載に関しての批判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(た
だし、謝るとは限りません)。
mangaya@air.linkclub.or.jp
http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/

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■         vol.400
■■  mailmagazine of book reviews  [ 黄金時代 号]
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[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。塩山さんの新刊が出るぞ。
★「関西古本女子だより」頓花恵(トンカ書店) 
 →大阪と神戸の「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「音を探してページをめくる」貴島公
 →音楽サイト「モノノフォン」の主が、音とテキストの関係を考察する。
★「〈畸人研究〉今柊二の読書スジ」
 →著者を書店まで29800円のDVDボックスを買いに走らせた理由とは?
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。
*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

-------------------------------------------------------------------
■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
-------------------------------------------------------------------
★塩山芳明の新刊とトーク
 エロ漫画編集者・塩山芳明さんの新刊『出版奈落の断末魔〜エロ漫画の黄金
時代〜』(アストラ)発売を記念して、トークショーを開催いたします。トー
クの相手は、「わめぞ」の武闘派イラストレーター・武藤良子。そして、司会
は「わめぞ」の宿敵「不忍ブックストリート」からの刺客・南陀楼綾繁。さら
に文系ファンタジックシンガー・Pippoのミニライブ付きです。

ワメトーク vol.4
『出版奈落の断末魔〜エロ漫画の黄金時代〜』刊行記念トークショー
嫌われ者の記 場外乱闘篇〜本当は愛されて死にたい奴らの90分1本勝負〜
+Pippo の‘古本J君とゆこう Spring Tour 2009 ミニライブ付き

日時 2009年4月12日(日)/16時〜18時(開場15時30分)
会場 上り屋敷会館 2階座敷 (東京都豊島区西池袋2-2-15)
参加料 1000円
予約 メールにて受付中
wame.talklive@gmail.com

★シンポジウム「尾崎翠の新世紀 ――第七官界への招待――」

日時:2009年3月27日(金)、28日(土)
会場:日本近代文学館・講堂

■3月27日(金) 12:00開場
13:15- 【講演】川上未映子(作家)
    「いったい、第七官界って何のことやと思います?」
15:00- 【朗読】澤登翠(活動弁士) ギター伴奏:湯浅ジョウイチ
    「朗読『アップルパイの午後』」
■3月28日(土) 9:30開場
10:00- 【上映】映画「こほろぎ嬢」
(原作:尾崎翠「歩行」「地下室アントンの一夜」「こほろぎ嬢」)
浜野佐知監督トーク
13:00- 【講演】池内紀(ドイツ文学者・エッセイスト)
  「尾崎翠の新しさ」
14:45- 【パネルディスカッション】
「尾崎翠文学によせて―〈少女〉と〈幻想〉の交差」
司会:菅聡子(お茶の水女子大学教授)
パネリスト:
     吉野朔実(漫画家) 高原英理(作家・評論家) 木村紅美(作家)
入場料:1日500円 *28日の映画は入場料1000円(映画パンフレット付)
※要予約 *3月12日(木)より映画以外の予約を追加受付
http://osakimidori.info/


なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

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■関西古本女子だより  頓花恵
(19)40年間のフリーペーパー
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 あるきっかけで『松風新聞』を知ることになりました。A3コピー用紙に手
書き文字で綴られたその新聞、聞けば83歳の現役カメラ屋主人によるフリー
ペーパー。確かに写真コンテストのことやシャッタースピード、露出補正につ
いての事項が少しばかり弱々しい文字ですが紙一杯ぎっしりと記されています。
そして初刊は1968年! 40年も前から発行され続けているフリーペーパー、
これはなんとも興味深い!!!

 神戸市須磨駅に程近い「松風カメラ」店主、竹中真佐夫さんは1960年頃わ
ずか1坪半の小さな店を構えることになりました。店名は須磨に流されていた
在原業平にその名を授けられたという伝承上の姉妹、松風・村雨から。

 写真の同人達で情報を交換しようと思い立ったものの、現在のような印刷機
のない時代、原版を実際に写真に収めて(勿論モノクロ)焼き増ししたものを
配り始めました。『松風新聞』の始まりです。それからの『松風新聞』はまさ
に印刷技術の歴史と共に歩みます。当時まだ貴重であった舶来モノのガリ版刷
り道具を使い始め、それが国内品として活発に使われるようになっていき、コ
ピー機の変遷を辿って現在に至るわけです。

 当然写真やカメラの普及のために始められた新聞なのですが、地域の出来事
や事件などにも触れ、中には阪神大震災当日に書いた号もあり、須磨を中心と
した神戸の貴重な資料としても歴史を刻んだ新聞です。

 初刊当時は年に数号の発行であった新聞も、最近は一ヶ月に一回の発行。竹
中さんが年を重ねられる毎にその内容と発行間隔はグレードアップ。2009年最
新号で437号。

 そしてさすが専門家、最近の記事では「デジカメだより」という連載欄を設
けられ時代の移り変わりにも見事対応されています。
 日本最高齢(?)現役フリーペーパー制作者竹中さん、すでに来月発行分に
ついて執筆中。

 40年間も書き続けてこられた理由は?
 竹中さん、大笑いで「楽しいから。それだけやー」。

☆「松風新聞」は松風カメラの店頭配布のみになります。

〈とんか・めぐみ〉神戸元町にてザックバランな古本屋「トンカ書店」を営業中。
イベント案内:4/16〜4/30「パリ直通乙女雑貨市」
5/1〜5/14「車内距離展」
詳細はHPまで

トンカ書店
650-0011 神戸市中央区下山手通3-3-12元町福穂ビル2D
078-333-4720
http://www.tonkabooks.com/

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■音を探してページをめくる  貴島 公
(14)ターンテーブル・ブックス ライナーノートの書き方ひととおり
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堀部篤史『コーヒーテーブル・ブックス ビジュアル・ブックの楽しみ方
23通り』mille books、2007年6月

 音を探さずにページをめくることも、たまにはあるのだけれど、そんな時
に、不意に、好きな音楽についての記述に出くわすと、それだけでとてもう
れしくなってしまう。『コーヒーテーブル・ブックス』は、タイトルが本に
ついての本であることを告げている。レコードジャケットのデザイナーやレ
コード収集家が文中に登場しても、いや、これは本についての本だからと期
待しないようにしていた。だから、ちょうど半分くらいのところで扉にあら
われた「書影」を見たときはほんとに驚いた。この表紙の本があるのなら欲
しいと思った。そう思った時点で、著者の思うツボなのであった。

 実は、その項は、この本の中では異例なことに、レコードそのものについ
て書かれたものだった。書影と思ったのは、レコードジャケットだった。ベ
イルートの2006年発表のアルバム『グラグ・オーケスター』。エミール・ク
ストリッツァの一連の映画で知られるようになったバルカンブラスを思わせ
るも、作ったのは、民族的にも地理的にも遠く離れたアメリカの二十代の青
年。特に似せようとしているわけでもなさそうなポップソングであることが
かえってかえって謎めいていた。そして、ジャケットに使われた写真。図書
館で見つけた切れっ端、つまり本から取れてしまったページに載っていたと
いう、本の題名も撮影者もわからない写真だという。ほんまかいな、と思い
つつ、その本があるのなら、見てみたいと思った。だから、本についての本
のつもりで読んでいたところに飛び込んできた「書影」に驚かされた。著者
もほんまかいなと感じたらしい。その気持ちが、仕掛けならざる仕掛けのよ
うに「書影」としてレコードジャケットを配置することになったのだと思う。

 作品から受けた感触を伝える手際の良さに、ライナーノート(レコードに
添えられた解説や案内文)として付いていてもいいくらいだと思い、改めて
前書きを読んだら、そこにはちゃんとその手際についての記述があった。そ
のことでますます、ライナーノートの基本ができてるなぁと感嘆する。

  独立した一つの物語や情報が詰まった書籍と、同じく一つの情報体系を
  持った個人の共通項を見つけ出し、記号によってそれらを結びつけ一冊
  の本をより大きな公約数の中に位置づけるということ。(P.5)

 それは「自身が本屋である」という経験が培った「編集能力」であると著者
は言う。そうか、作品についての情報か、個人の経験かのどちらかしかなく
て、「翻訳」して魅力を伝える(同 P.5)ことなどまったく考えてなさそう
な無惨なライナーノートに欠けていたのは、編集能力だったのか。

 著者は、個性的な品揃えで知られる京都の書店「恵文社一乗寺店」の店長。
アートブックも多く扱っている同店だから、正直なところ、そうしたハイソ
な本の紹介か、セレクトや店のコンセプトについての本なのではないかと思
い、あまり期待していなかった。オシャレなショップとして定評もあること
だし、ちょっと構えて手に取ったのだ。そしたら、ほんとに本について書か
れているだけだし、糸口には「ああ、なるほど」と思わされることしばしば
だしで、狗頭羊肉なんでないかいとタイトルにちょっと文句をつけたくなっ
た。コーヒーテーブルに似合う本について書かれた本ではあるけれど、うち
の部屋では、ターンテーブルの上に置いておこう。コーヒーテーブルなんて
ない、という事情もあるのだが。

〈きじま・こう〉説明業、趣味・読書と音楽鑑賞。
パソコンの調子がわるいせいで、帳面の愛用が復活。今年に入ってからは、
テキスト入力専用機「ポメラ」も併用して、電車で、カフェで、ポチポチと
メモ。デジタル、モバイルなんだか、アナクロ、アナログなんだか。

「モノノフォン」
http://homepage1.nifty.com/hebon/fhp/

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■〈畸人研究〉今柊二の読書スジ
(26)昭和二十年DVDボックスを買うまで
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 日本橋の丸善(言わずもがなですがもここはステキですね)で、「昭和二十年」
というDVDボックスのチラシをもらった。終戦直後の日本の様子がカラーで映
し出されているという。GHQ秘蔵の総天然色映像で、全7巻からなる。全部で
420分。最近は戦前戦後のカラー画像もかなり発掘されてはいるが、チラシに
は何やら見たことのないカラー画像がジャンジャン出ていて、異常に欲しくな
った。だが、このボックス、29800円もするので、そうホイホイと買うわけには
行かない。しばらくどうしようかと迷っていたところ、神保町の三省堂で、こ
のDVDボックスのお試し版がついた『総天然色で見る日本の終戦 DVD付』
(メディアボーイ)というのがあって、これは1980円。よしとこれならと思って
買ってみた。

 本書の方は、歴史の記述とカラー画像が掲載されていて、これはまあ普通な
のだが、お楽しみのDVDを見るともうステキすぎる。さすがGHQだけあって、
軍事施設関係をよく撮影している。さすがはカラーだけあって、実際の帝国海
軍の軍艦のくたびれた金属の様子などがものすごくよくわかる。いや、スゴイ
存在感です。こういうの日本人は作っていたんですね。昔、ウオーターライン
シリーズなど、軍艦の模型をよくつくっていたからなおさら親近感があるなあ。

 また、映像に出てくる日本人の顔があまり我々と変化がないように見えたの
も新鮮だったな。そして何よりも、引き揚げ船として使用していた空母に乗っ
て復員している兵隊の皆さんの様子がスゴカッタ。もう本当に鈴なりに人を搭
載している。ああ、こりゃ日本に帰ってくるのは大変だったんだなあ。もう、
この瞬間の映像を見た瞬間に、30000円持って、DVDボックスを買いに走ってい
ったのだった。

〈こん・とうじ〉畸人研究学会
神奈川新聞にて連載している「かながわ定食紀行」が、神奈川新聞のかもめ文
庫にて、文庫本としてついに刊行! 値段は定食一回分です(笑)

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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(70)機内校正はつらいよ
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 真夏のお遍路企画でびっしり汗を搾りとられてカサカサのパサパサになった
8月。ヒー ヒー言っている間に、今度はなんと、スコットランドへ行くこと
になった。同行のカメラマンは、我らがSさんだ。

『酒とつまみ』の仕事ではない。しかも、このとき、遅れに遅れていた(私が
遅れさせた張本人だ!)『酒とつまみ』11号の製作が佳境に入ったときだっ
た。出張期間は正味6日間で、入稿か校了にぶつかる可能性がある。私は編集
W君に、スコットランドへ行ってもいいかどうか相談した。

「せっかくの機会ですから、行って来て下さい。最悪、校了にいてもらえれば」
 そう言ってくれるのだった。出張日程も直前まで定まらず、冷や冷やしたが、
結局のところ、入稿をW君に任せ、入稿時点でのゲラのコピーをSさんと私と
が持って、出張中に読み込んでくるということになった。スコットランドから
帰国したその日に仕事場へ戻り、読みこんでおいたゲラを校了紙に反映して、
その日の夜中までに校了しようという計画。それしか方法がなかった。

 現地での取材は、毎日長時間に及ぶことが予想された。ゲラをじっくりと読
む時間はない。私は、往路の飛行機の中で読むしかないと腹を決め、成田を出
た飛行機の機内でひと眠りした後は、まあ、それはもう、ウイスキーなど飲み
ながらではあるのだけれど、なんとか読み続け、ロンドンで1泊した後、スコ
ットランドへ移動する国内線の中でも、なんとか読み続け、これで、あとは、
帰りの機内で読み切れるだろうというところまで、たどり着いた。

 問題だったのはSさんである。旅慣れたSさんは、機内ではぐびりぐびりと
酒を飲み、当然のことながら熟睡してしまう。これは、到着後に疲れを残さな
い工夫である。現場だけが勝負のカメラマンだから、それで当然なのだけれど、
この人、言わなくていいことを言う。

「ダイジョブダイジョブ、もうね、けっこう読んじゃったから」
 現地へ着いた1泊目の夜。ゲラは読めてますかと問う私に、Sさんは言うの
だ。本当かなあと訝ってはいたが、その懸念はやはり、現実のものになった。
 すべての仕事を終えて、ロンドンから成田へ向かう飛行機の中でゲラを取り
出したSさんの姿を見て、私は彼のテーブルの上を覗き、思わず笑った。まだ、
巻頭特集の途中なのだった。
「ダイジョブダイジョブ、後ろのほうは読んであるから」
 もちろんウソである。

 ゲラを読み終えた私は、ウイスキーを飲んでは少し眠りということを繰り返
していたが、目が覚めるたびにSさんを見ると、老眼鏡を鼻の先にぶら下げた
まま、がっくりとコウベを垂れて眠っている。アホや。これでは読み切れるわ
けがない。

 だからたぶん、11号の校了については、ほぼW君と私のチェックしか反映
されてない。でもまあ、それは大勢に影響のないことなので、問題ないです。
 帰国した私たちは、もうヘロヘロで、校了紙への反映を終え、3人して大日
本印刷の守衛室へとタクシーを飛ばし、納品後は近くの『三晴』でガバガバ飲
んだ。

 それはそれは効く酒で、ベロンベロンになったのは言うまでもない。

〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集長。
春は何かと別れのあるシーズンで、やはり飲み会が多い。中には、馴染みの店
が、店を閉じるなんて切ない話もあるので、俄然、酒が深くなる。こちらが引
っ越しをする関係で、これから寄りにくくなるなあと思われる店などには、逆
に足しげく通い、行けば行ったで深くなる。このところ、吉祥寺のある店へ行
くと、決まって朝帰り。皆様にご迷惑かけることもあるでしょう、ホントにみ
なさん、すみません。
http://www.saketsuma.com

ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/


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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(81)高麗書林の巻 アジア的湿気に満ちた爺様のももひき風ビル
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 今回はすずらん通りの、東方書店にしようと神保町に向かったが、コースを
いつもと変更、水道橋経由でチンタラ歩いてると、“韓国図書 韓国政府刊行物”
との添え書きのある、高麗書林の看板を発見(何度も横を通ってたが、統一協
会のインチキ壺売りの店舗かと、長い間勘違いを)。

 千代田区三崎町3―4―8 ヤマダビル2階。専大通りに面しており、並びに
はニチレイ水道橋ビルや、道を隔てて鉄建建設やエディタースクールが。ヤマ
ダビル、どう見ても築30年強は経過(46年の、我が三信ビルの足元にも及ば
ないが)。

 出入りは専大通り側ではなく、向かって右の横路地から。1階部分は茶色の
石。2階以上は縦幅30〜40センチのラインが左右に無数に走る、シルバ−のア
ルミ風壁面に覆われているが、風雨にすすけ果て、ヨイヨイの爺様のももひき
に見えなくもない(く…苦しい形容…)。

 もひとつ特徴が。各階の天井が低く、平体1番をかけられた気分で、凄い圧
迫感が(写研製の“写真植字Q数表・全角”って、今はどこで入手を?)。ビ
ルオーナーは絵が趣味なのか、各階の踊り場に、下手な油絵が飾ってある(ま
さか自分で描いたとか?)。

 高麗書林は2階。エレベーターは使わずにテクテク。古ビルの例に漏れず陰
気だが、掃除は行き届いている。同書林、階段を上がった左右の2部屋に入居。
韓国書籍の輸入販売がメインのせいか、ドアは両方開け放たれている。正面の
壁には“ザ・売り絵”といった感のある、バラの絵。下に紙で、右→一般単行
本、語学、辞書。左→年鑑類とのご案内(もちろん日本語)。親切だなあ!(筆
者の唯一の海外旅行体験は韓国だが、国民は非常につっけんどだった印象が)。

 設立は62年と。会社案内には“47年目を迎える図書輸出入と、出版販売一
筋で今に至る”とあり、「こりゃ単なる本屋で、連載の趣旨に反するか? や
っぱ東方書店にしとけば…」とも思ったが、“やがて『韓日辞典』『日韓辞典』
のほか、一連の韓国語学習教科材、“韓国文化叢書”の発行”ともあるので、
問題ないようだ。

 ただ最近でこそ勝負がついた感があるが、分断国家の宿命で、高麗書林半世
紀の歴史にあおいて、種々の抗争とかもあったんでしょうね。南と北の諜報機
関の、血で血を洗う暗躍とか。扱う輸入書や刊行物には全く興味ないが、社史
を出してくれるなら、是非一読したい版元だ。

 アルツハイマー爺さんのたるんだももひきビル、店子にもコクが溢れている。
専大通りに面したビルの1階、山田眞薬局、2階、高麗書林、3階、ネス留学
センター、4階、日タイ文化交流センター&東京一般労働組合、5階、コミッ
クハウス(分室)。

 こうもアジア的湿気に満ちた入居者ばかりじゃ、ビルも早く古びるわな(シ
ャレですねん)。街の不動産屋は敬遠しそうなメンツ揃いだから、オーナーは
余程理解ある人か、左翼なのかも。エロ本屋もOKなのだから、リベラリスト
としては筋が通っている。漫画屋も入居したいが、三信ビル(坪1万)よりは
家賃が高そうだ。

〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)、『出版業界最底辺日記 エロ漫
画編集者「嫌われ者の記」』(ちくま文庫)。1980年以降書き散らしたコラムを
まとめた『東京の暴れん坊 俺が踏みつけた映画・古本・エロ漫画』(右文書
院)が好評発売中。

なお、この連載に関しての批判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(た
だし、謝るとは限りません)。
mangaya@air.linkclub.or.jp
http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/

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[書評]のメルマガ vol.396
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■        vol.396
■■  mailmagazine of book reviews [ おでかけ解禁 号]
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[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。名古屋で本イベントです。
★「関西古本女子だより」郷田貴子(ちょうちょぼっこ) 
 →大阪と神戸の「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「食の本つまみぐい」遠藤哲夫
 →〈大衆食堂の詩人〉エンテツが料理文化史の重要本を紹介します。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。
*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
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★今年も「BOOKMARK NAGOYA 2009」開催!
 3月7日〜29日の期間中、名古屋の書店、雑貨屋、カフェなどを会場に
様々なフェアやイベントが行われます。たくさんあるので、主な企画のみ
ご紹介。

・【一箱古本市 in 円頓寺商店街】
日時:3月21日(土)・22日(日)
時間:11:00〜16:00
東京の不忍ブックストリートで始まったフリーマーケット形式の古本市が名古
屋で初開催! 名古屋の昔ながら の下町情緒が残る円頓寺商店街を会場に、
商店街の軒先をお借りして、本好きの人々がそれぞれに持ち寄った古本を販売
します。 うららかな春、レトロな下町と本の散策をお楽しみください。ライ
ブやトークイベントもあります。
出店者大募集!! http://www.bookmark-ngy.com/hitohakobosyu

◎古本市巡りが何倍も楽しくなる、「一箱古本市ツアー」
日時:3月21日(土) 14:00〜/15:00〜(2回)
集合場所:円頓寺商店街ふれあい館前
参加費:無料
案内人:林哲夫・岡崎武志・山本善行・南陀楼綾繁・荻原魚雷・扉野良人

◎古本大学in円頓寺キャンパス 
日時:3月21日(土) 17:00〜18:30
場所:那古野コミュニティーセンター
参加費:1000円
講師:林哲夫・岡崎武志・山本善行・南陀楼綾繁・荻原魚雷・扉野良人

◎その他、無料で楽しめるライブ・パフォーマンスなどをご用意しております。

・【南陀楼綾繁セレクト 「フリーペーパー=小さなメディアの放つ光」展 】
会期:3月14日(土)〜3月28日(土)
会場:カフェ パルル
内容もカタチもさまざまなフリーペーパーが大集合。ライター・南陀楼綾繁が
全国から厳選した約60誌のフリーペーパーを展示します。制作者のこだわりや
想いが感じられるものばかりです。最新号は持ち帰りできます(数に限りがあ
ります)。2008年11月に福岡の本のイベント「BOOKUOKA」の一環で開催された
展示の巡回展になります。名古屋発のフリペも集結!
※最新号は持ち帰りできます(数に限りがあります)。

◎トークイベント
内容:今回のフリーペーパーをセレクトしたライターの南陀楼綾繁さんと、
「ぱんと名のつくものは何でも」取り上げる京都のフリーペーパー「ぱんとた
まねぎ」の林さんをお招きしてフリーペーパーの魅力や制作についてのお話を
伺います。
出演:南陀楼綾繁(ライター・編集者)×林舞(『ぱんとたまねぎ』発行人)
日時:3月20日(金・祝)13:00〜14:30
会費:500円+別途ドリンク代500円
定員:30人
※要予約yoyaku@bookmark-ngy.comにてお申し込みください。
〃鑢召防ず「フリーペーパー展・トークイベント参加希望」と明記してください。
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ゥ瓠璽襯▲疋譽
※問い合わせinfo@bookmark-ngy.comまたはYEBISU ART LABO 052(203)8024迄。

・【ブック“トーク”ナゴヤ】(定員各30名)
「本」にまつわる様々な話題をお届けする、週代わりのトークイベントです。
今年はなんと豪華4本立て。いずれも聴き逃せない内容ばかりです。ご予約は
お早めに!

【第一週】
失われたときめきを求めて! 小説とわたし」
3月7日(土)15時〜 参加費1000円
吉川トリコ(作家)×清水良典(文芸評論家)

【第二週】
「出版社営業マンが見た! 本屋が出来ること」
3月14日(土)18時〜 参加費500円
稲垣学(マガジンハウス)×加藤ゆき(丸善名古屋栄店)

【第三週】
「東西古本よもやまはなし sumusの集い」
3月20日(金)18時〜 参加費1000円
岡崎武志(書評家・古本ライター)・南陀楼綾繁(ライター・
編集者)・山本善行(書物エッセイスト)・荻原魚雷(文筆業)
林哲夫(画家)・扉野良人(僧侶・文筆家)

【第四週】
「名古屋絵はがき物語」
3月28日(土)18時〜 参加費1000円
井上善博(名古屋市博物館学芸員)

ご予約・お問い合わせ
メール:suzuki@shimauma-books.com
電話:052-783-8150(シマウマ書房)

その他、タイトルだけ載せます
・【Happy smile sunday! 〜憧れのあの本はこの人たち
が作っていました〜 】
・【本屋プロレス in NAGOYA】 BOOKMARK NAGOYA 2009 オープニングイベ
ント!
・【柴田元幸×岸本佐知子選  紅白読書の腕前本合戦〜名古屋場所二場所目】
・【名古屋の読者と書店員が選ぶ「名古屋文庫大賞」】
・【ぼくのわたしの本棚展】
・【「1950年代/名古屋の映画館」紙モノ展】

詳しくは
http://www.bookmark-ngy.com

★岸川真トークショー
 先日『フリーの教科書 生き延びるための読書』(早美出版社)を上梓した
岸川さんが、書店でトークをします。

その1 三省堂・神保町本店
2月25日(水) 20:15頃開場 
ゲスト:佐藤忠男 司会:わたなべりんたろう

その2 ジュンク堂・新宿店
3月7日(土) 18:30頃開場 
ゲスト:青山南、滝本誠

詳しくはブログを
http://d.hatena.ne.jp/kshinshin/

なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。


「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

---------------------------------------------------
■関西古本女子だより  郷田貴子
(18)こぼれおちないように
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 ここしばらく、試験勉強をしていたので本をさっぱり読まなかった。教科書
を読んで、覚えなくてはならないことだらけですでに脳の容量が足りなかった
ので読書はひかえていたのです。特に国内、国外の歴史上の人名がさっぱり覚
えられなくて。本を読んでしまったら、脳内に新しい登場人物が増えてしまう
と思って手が伸びなかったのです。記憶がこぼれおちないように。

 試験が終わった日、ちょうど会場の最寄り駅付近にブックオフがあって、ひ
さしぶりに店内に迷い込んだらば、文庫、新書、雑誌が半額セール中で、まる
で棚の本たちが、おつかれさま、おつかれさまとさざめいているようでした。
店内の棚をはしからはしまで眺めてもいい時間をめいっぱい堪能。ごほうびは、
100円本買い放題!と思ったけどそれは重たいので、しかもちょっとぱっとし
ないので取り消す。

「古本と男子」で買った本さえも読んでいないままだったので、ぼちぼち読み
始める。藤本和子の『ペルーからきた私の娘』に収録されている、ヴィラード
盲目病棟の章には、アメリカの精神科病院に60年も入院したまま死んでしまっ
た盲目の日本人男性が登場する。外村繁の『澪標/落日の光景』や上林暁『聖ヨ
ハネ病院にて』には、夫婦の闘病生活が描かれている。去年はじめてちょっと
入院したからか、闘病記が気になるのでした。

 私が職場で関わる人々にも、知られざる長い長い物語があるのだろうなと思
いつつ、しみじみ読む。傘をどこからかとってきては、自宅に100本以上ためこ
んでいるおばあさん、通販で精力剤やガーターベルトを注文するおじいさん、
緊張しないおまじないだからと言い体中にカイロをはりつけている人、旅の予
約をしては出発日を忘れてしまい旅立てない人、いろんな人がやってくる職場
も、またもうすこしでおわかれなのです。朝の通勤電車がすいていて、やっと
読書が楽しめると思ったのに残念。

 3月のちょうちょぼっこは、にのにのいちを開催します。にのにのいちは、2
月のはずだったけど、諸事情により「さんどめ さんがつ にのにのいち」と
いうことでよろしくお願いします。

〈ごうだ たかこ〉ちょうちょぼっこメンバー。
もうべんきょうはこりごりなのです。厄年もおわったし、今年はのびのび過ご
そうと思います。おでかけ解禁、脱もやしっ子。走ったり泳いだりしてみよう!

「さんがつ さんどめ にのにのいち」
期間:21年3月 7日(土) 8 日(日)
       13日(金)14日(土)15日(日)
       20日(金)21日(土)21 日(日)
場所:貸本喫茶ちょうちょぼっこ
主催:古書くらしか/貸本喫茶ちょうちょぼっこ
さんどめの「にのにのいち」はさんがつ開催です。今回も選りすぐりの 200
円本を出展者それぞれが200冊大放出します。古本教育さんは2週目から参戦。
2週目以降も本が追加されるので、何度も足をお運びください!
[出展者]
M堂/エス堂/古本教育/古書くらしか/貸本喫茶ちょうちょぼっこ

「くらしか視聴覚教室 VOL.1 100円ジャンボリー」も同時開催

日時:2009年3月8日(日)19時頃から
ゲスト:中嶋大介(オンライン古書店BOOKONN店主、アホアホエ キスポ著者)
「古書くらしか」さんが100円で買ったレコードとゲストが 100円で買った本
を持ち寄って雑談します。掘り出し物ではなく、100円でしか買えない(買いた
くない)100円ならではの中古レコや古本の魅力を紹介します。19時頃からゆ
るく開催しますので、ご自由にお越しください。

貸本喫茶ちょうちょぼっこ
〒550-0014 大阪市西区北堀江1-14-21 第1北堀江ビ ル402
http://www.geocities.co.jp/chochobocko/

第1〜3週末 金18:30〜21:00、土日 13:00〜21:00
※2月22日はお休みです。

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■食の本つまみぐい  遠藤哲夫
(31)ただ呆然と見るほかない食品廃棄の都「東京」
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佐竹利允『残ぱん東京』食糧問題研究所、1975年8月

「さまざまな宣伝におどらされた消費者は、消費は美徳のムードに酔っていつ
しか浪費の谷間に落とされていった。節約は美徳の時代に生きた戦前戦中派の
ひとたちは、この浪費軌道を暴走する戦後派の姿を、ただ呆然と見るほかなか
った」

 著者は、そう書いているのだけど、べつに戦前戦中派の人間じゃなくたって、
ただ呆然と見るほかないだろう。しかも、いまだに、本書の時代から、ほとん
ど何も変っていないことに、ただ呆然とするしかない。

 つまり、コンニチでも食糧自給率は騒がれるのに、食品廃棄率への取り組み
は、新聞などで「食の不安と裏腹に日本人はあまりにも飽食に慣れ切っていな
いだろうか」「世界の人口は約六十三億人。しかし、この中には、満足な食事
どころか水すら飲めない最貧国が数多くある」「私たちの食生活を顧みて、無
駄はないだろうか。子供たちに「食事は残さず食べなさい」と言う親は少なく
なったと感じる」と報じられるように、個人の習慣や気の持ちようのレベルに
還元されて終わっている。

 食品廃棄率対策ぬきで食糧自給率向上を言ったところで、風呂の栓をしない
で水を入れているようなものだ。しかし、この問題は、極端な東京一極集中の
最も暗部に関わることなので、そうは簡単な解決策が立たない実態もある。

 いま「百年に一度の不況」とかでマスコミは騒々しい。だけど今回と同じよ
うにヒステリックにマスコミが騒いだ不況があった。1971年の「ドル・ショッ
ク」に続く、いわゆる73年の「オイル・ショック」というやつだ。74年、日
本経済は戦後初のマイナス成長となる。

 ということで、買えるだけ買い、所有するだけ所有し、占有するだけ占有す
ることに疑問を抱かず生きてきた「大量生産大量消費社会」に対する反省の空
気が生まれた。オイル・ショックは「資源の有限」を自覚させ、世界的食糧危
機が叫ばれた。石油は、あと十数年で枯渇するというような話もあったとおも
う。とにかく、明日にでも世界が食糧危機に陥り食糧自給率が50%を切った日
本は大変な事態になるとマスコミは例によって危機感を煽った。「食糧自給率
の向上」や「食糧備蓄」がいわれた。

 本書は述べる。「たしかに「食糧自給」とか「食糧備蓄構想」とかの施策論は、
一見前向きの響きをもつし訴求力がある。「節約は美徳」などと謳い上げてみ
たところで、消極的な姿勢なイメージは免れないだろう。が、こと食糧に関す
る限り、もっと地道な思想があって然るべきではないか。人間一人一人の生き
るための糧は、一人一人が自らの日常の中でとらえるべき問題とおもわれるか
らである」

 本書は、食品廃棄や残飯問題について正面から挑んだ書として、当時注目さ
れた。おどろくべきことに、いまでもそうなのだが、食品廃棄については統一
的なデータを管理しているところがない。著者は、関係するデータを集め、銀
座や新宿のゴミを追い、「残飯紳士」や「豚もいやがる給食残飯」などを取材、
その実態にせまる。散漫ではあるが、残飯だけではなく食品廃棄の全般に関し
て、当時考えられるだけの角度から触れている。飲食店や家庭の残飯もちろん、
生産や流通の段階で出る廃棄処分、まずい給食のことなども。みな捨てるのに
カネがかかることである。

 そこに浮かび上がるのは、たしかに「一人一人が自らの日常の中でとらえる
べき問題」から出発しなければならないのだが、大消費都市として日本の鬼っ
子のように成長してしまった「東京」の姿だ。その後、ますます消費へシフト
を強めた東京の欲望は、買えるだけ買い、所有するだけ所有し、占有するだけ
占有することに向かって、留まるところを知らないかのようだ。

 70年代中ごろは、まだ、男が語る「食」は、仕事上でのことか、道楽や趣味
でのことだった。「生活」は女まかせだった。だから、「一人一人が自らの日
常の中でとらえるべき問題」は、とくに戦後生まれの女の問題にされている。
だけど、廃棄の多い飲食店を最も利用していたのは男たちだったし、女たちを
労働と消費の市場に誘い出し、女なしでは過剰な欲望に支えられた消費経済が
成り立たない事態をつくりあげたのは、男が実権を握る政策ではなかったか。
そのことには触れてない。そういう時代だった。

 むしろ本書の時代以後、男の手のひらの上で、「東京」と「女」を「広告塔」
に、死蔵や廃棄物が省みられない消費社会の暴走と迷走が激しくなったように
おもう。そして「男」と「女」は共鳴しあい手を携えて、死蔵と廃棄するほど
モノを買う日常にコーフンしシアワセを感じるようになった、かのようなバレ
ンタインデー間近なのだ。「地道な思想」なんて、とても…と、東京を眺めな
がらおもう。
 ただ呆然と見るほかない。

〈えんどう・てつお〉3月7日、大阪市立大学高原記念館でのシンポジウム
「場所の力」にパネラーで参加、「都市の隙間――<貧乏くささ>の居場所を
めぐって」ということで筑波大専任講師の五十嵐泰正さんと対談します。
詳しくは、http://enmeshi.way-nifty.com/meshi/2009/01/37-d359.html
「ザ大衆食」http://homepage2.nifty.com/entetsu/

---------------------------------------------------------------------
■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(69)泣きながら決算して遍路旅へ
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 2008年の6月、7月は、例年のことではあるが、事務所の決算作業に追わ
れた。『酒とつまみ』の発行元は(有)大竹編集企画事務所なので、事務所の
決算では、『酒とつまみ』の売上や経費などについて、細かく把握していかな
くてはならない。

 言うのは簡単だが、実際には結構面倒である。経費については大まかに言っ
て領収書の仕訳ができればOKだが、問題は売上の把握。書店さんや取次店さ
ん別に、何冊を預かっていただき、そのうち何冊が期間中に売れたのか、返品
はいくつか、引き続き店頭に置いてもらっているのは何冊か。それらをきっち
り追いかけていかなければならない。

 もっとも手間がかかるのは、直接購読をしていただいている個人読者の売上
の把握である。個人の読者の方々には、送料をご負担いただいていて、このこ
とには心から感謝を申し上げる次第なのだが、郵便振替というのは、そのたび
に口座徴収料という名目でお金がかかる。それが、80円であったり、120円で
あったり、振替用紙をすべて見て確認する必要がある。

 毎週あるいは最悪でも毎月、この作業をしっかりやっておけば問題ないのだ
が、ざっくりとした数字の把握だけに留めておくと、決算期には結局すべてを
洗い直すことになる。つまり、1年分の振替用紙をめくって、売上のあった月
日と売上金額及び口座徴収金額を拾い出し、加算していくのだ。

 こうやってようやく、売上がわかり、期末を越えて市中在庫となる売り掛け
金の額がわかり、めでたく決算ということになるのだが、ここまでもっていく
のに、毎年、最低でも2回くらい泣きが入る。得意ではないのだ、こういう作
業が。原稿仕事や麻雀なら徹夜もつらくないが、決算書づくりのための徹夜は
骨身にこたえる。ついでに言っておくと、私は、エクセルが使えない。

 さて、そうしてようやく決算とあいなった。弊社は5月末決算だから、納税
の締切が7月末ということになる。で、そのあたりの日程がどうなっていたか
を、手帳を繰って確かめてみると、決算関係書の必要書類などをひとまず会計
事務所へぎりぎりで送ったのが20日過ぎとあった。

 その後、24日から28日まで北九州へ取材に行き、帰京翌日に、会計事務所に
て書類に署名捺印。30日には急ぎの取材と原稿を片付け、31日、納税期日の当
日に振り込みのあった原稿料を納税に回したその足で、私は四国へ旅立った。

 四国への旅は、真夏のお遍路を目的としていた。

〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集長。
10年前の体型に戻ると宣言したのが昨年11月のこと。飲みすぎが原因で少し
ばかり食欲も落ちていたから豪語しても安心していたのだが、この年始からの
一か月、食うわ食うわ。現在、腹周りパンパン、ズボンがどれも苦しいです。
http://www.saketsuma.com


ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(80)ダイナミックセラーズ出版の巻 濃密なわびしさに満ちたビル
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 以前本欄で取り上げた能楽書林のある通りは、靖国通りから1本入っただけ
だし、専大にも面してるのに、実に寂しい。店もコンビニ1軒(「ミニストッ
プ」)、定食屋の「三好弥」、中華の「たいよう軒」(冷し中華は抜群!)、も
う1軒店名失念の中華があるのみので(「昭和軒」でした)、地方のシャッタ
ー通り並に閑散(気分が高ぶった際、ここを通ると冷静になれるという効用は
ある)。

 靖国神社に尻を向け、右側が以上のさびれた商店街(左側が専大)。「たい
よう軒」の手前に、茶色のレンガ色のビルが。1年前に漫画屋が追い出された、
栄昇ビルと外観がそっくり。大きさこそ3分の1位だが、4階の辺から前部に
傾斜がついて、広いベランダが各階についてるトコまで同じ。北向きなのに、
すごく日当たりが良さそうだし、静かで仕事に集中出来そうだ。

 ここがアオキビスポークビル(千代田区神保町3ー2。1階の、「アオキビ
スポーク洋品店」が大家だろう)。ダイナミックセラーズ出版は本ビルの最上
階、7階に。この通りを初めて歩いた頃からあった(20年以上はたつか?)。
印象的な、パチモン風社名で覚えやすかったせいもあるが、理由がもう1つ。
95年に死んだ遠山企画の故遠山孝社長が、この版元の噂話をしていた事が。
「…なんて本、塩山君も知らないよな。今、ベストセラーだって、ダイナミッ
クセラーズの知り合いが言ってたけど…」90年前後だと思う(同社設立は
78年)。

 友人知人が極端に少なかった遠山にしては(あの性格じゃ当然)、珍しいエ
ピソードなので今でも記憶に(遠山孝に興味ある人は、『アックス』連載、清
水おさむの「JUKU」の一読を)。以降前を通りながらも、「確かここは…」
と思うのみだったが、今回初めて検索してみて、カン違いじゃなかったと(遠
山の知り合いは、もうとっくに死んじゃったかも知れないが)。

 青木信光の総指揮で、『幻想発禁濃密文庫』&『幻作珍籍美学文庫』の、2
大活字ポルノシリーズを刊行中。遠山の実話誌時代の後輩でも、同社に迷い込
んでいたのか?(社長は高濱宏次)。エロ漫画以上に先のない世界なのにと、
お節介な心配したが、ポルノはほんの一部らしい。

『百万人の手話』『母親って大変なんだからね!』『全国優良老人ホームガイ
ド』『PKOカンボジア地雷源』…当たりそうなモノには、必ず触手を伸ばし
てる無節操さが、社名通り実にダイナミック!!(あっ! 活字ポルノと手話
の本、下ネタでヤユするのうっかり忘れた。これだから初老男は…)

 幻想のように濃密なわびしさに満ちたこの通りも、一時だけ混雑する時間帯
が。夕方の6時前後だ。専大の夜間部学生は、ダイナミックセラーズのある、
ビルの向かいの校舎に全員が通学を。コンビニもこの時だけは人で埋まる。

 7階のダイナミックセラーズから下を眺めると、映画『第三の男』で、大観
覧車の中でオーソン・ウェルズがつぶやいた台詞を、思わず吐きたくなるのか?
(たかが7階じゃアリどころか、まだまだ人間にしか見えねえな)

〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)、『出版業界最底辺日記 エロ漫
画編集者「嫌われ者の記」』(ちくま文庫)。1980年以降書き散らしたコラムを
まとめた『東京の暴れん坊 俺が踏みつけた映画・古本・エロ漫画』(右文書
院)が好評発売中。
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[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。トークと展覧会のお知らせ。
★「関西古本女子だより」頓花恵(トンカ書店) 
 →大阪と神戸の「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「音を探してページをめくる」貴島公
 →音楽サイト「モノノフォン」の主が、音とテキストの関係を考察する。
★「〈畸人研究〉今柊二の読書スジ」
 →スタインベックの『怒りの葡萄』とリーマンショックの関係って?
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。
*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
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★南陀楼綾繁のトーク十番勝負はあと2回です

・その9
ハードスタッフ・ナイト〜先端的硬派雑誌の復活〜

出演
小西昌幸(『ハードスタッフ』編集発行人、先鋭疾風社代表)
南陀楼綾繁(ライター・編集者)

パンク、幻想文学、特撮、テレビドラマ、漫画、ブックデザインなど、さまざ
まな文化事象から自らが得たものを熱い筆致で語るミニコミ『ハードスタッフ』。
1976年に創刊され1993年までに11号が発行された。それからナンと15年ぶ
りとなる最新号(追悼総力特集・林直人の夢の丘)の発行を記念して、編集発
行人の小西昌幸さんに徳島から来ていただき、お話を伺います。小西さんのも
うひとつの顔である「創世ホール」での仕事についても、たっぷりお聞きします。

日時 2009年1月19日(月) 18:30開場/19:00開始

場所 古書ほうろう
文京区千駄木3-25-5 1F
電話 03-3824-3388
http://www.yanesen.net/horo/

入場料 1000円(要予約、飲みもの持込み自由)
予約方法 
(1)ビレッジプレス「ぐるり」編集部
info@village-press.net 03-3928-7699 *イベント名をお知らせください
(2)古書ほうろう 店頭受付のみ

・その10(最終回)
不思議版元K会の伝説

出演
T本S馬(K会編集部)
南陀楼綾繁(ライター・編集者)

昨年5月から続いた十番勝負の掉尾を飾るのは、ブログ書き込み厳禁のシーク
レット企画です。この出版不況のなかで、「誰が買うんだろう?」と思わせる
豪華本や個人全集を出しまくっているK会。新入社員がやらされる儀式がある、
あの全集は1分で決まった、学校を持っている、武闘派の社員がいる……など
数々の「K会伝説」を検証します。なにかピンと来たヒトは集まれ!

日時 2009年2月28日(土) 18:30開場/19:00開始
場所 対抗文化専門古書 気流舎
世田谷区代沢5-29-17 飯田ハイツ1F
電話 03-3410-0024
http://www.kiryuusha.com/

入場料 800円(予約優先、15人限定)
予約 ビレッジプレス「ぐるり」編集部
info@village-press.net 03-3928-7699

★フリーペーパー展が大阪に巡回
南陀楼綾繁セレクト「フリーペーパー=小さなメディアの放つ光」展

会場:Calo Bookshop and Cafe
大阪市西区江戸堀1丁目8-24 若狭ビル5F
Phone/Fax 06-6447-4777
http://www.calobookshop.com/

2月17日(火)〜3月7日(土)12:00〜20:00(土曜日は18:00まで)
2/22(日)・23(月)・3/1(日)・2(月)は休み、最終日は17:00まで
※2/21(土)はイベント開催のため16:00で閉店。

内容もカタチもさまざまなフリーペーパーが大集合。南陀楼綾繁が全国から厳
選した約60誌のフリーペーパーを展示します。制作者のこだわりや想いが感じ
られるものばかりです。最新号は持ち帰りできます(数に限りがあります)。
2008年11月に福岡の本のイベント「BOOKUOKA」の一環で開催された展示の
巡回展になります。

トークイベント「フリーペーパーと出会うには〜書店の店頭から〜」
山下賢二(ガケ書房店長)×南陀楼綾繁(ライター)
日時:2月21日(土)16:30〜18:00
会費:1000円(1ドリンク付)
定員:30人 ※要予約
info@calobookshop.comまでお申し込みの方全員の氏名と代表の方のお電話番号
をお知らせください。折り返しご連絡します。

置き場所や発行部数が限定されているフリーペーパーを、どのように見つけ、
手に入れるか? 京都だけでなくたくさんのフリペの配布場所として知られて
いる〈ガケ書房〉の名物店長に、お気に入りのフリペや発行している人たちと
の交流をお聞きします。フリペ発行者のプレゼンテーションタイムもあり。

なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

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■関西古本女子だより  頓花恵
(17)『にぐるまひいて』
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新年あけましておめでとうございます。
今年はどんな一年になるのでしょうか。
どうか穏やかで平和な日々であってほしいと思う時、いつも浮かぶ一冊の絵
本があります。

『にぐるまひいて』絵:バーバラ・クーニー、文:ドナルド・ホール。

とうさんは家族みんなで一年間働いて収穫し作ったものすべてをにぐるまに
のせてポーツマスの市場をめざします。市場に着くと、とうさんが刈り取った
羊の毛も、それをかあさんが紡いだショールも、紡いだ糸で娘が編んだ手袋も
売ります。収穫したものを入れてきた空き箱、空き樽、空き袋も売って、最終
的にはにぐるまとそれをひいていた牛も全部売ります。

それで得たお金の一部で家族が必要とする新しい道具と、家の人たち全員で
舐める薄緑色のハッカキャンディーを買って、とうさんは再び皆の待つ家へと
時間をかけ帰路につきます。そして再び家族は収穫の準備をし、季節は巡って
ゆくのです。

この絵本の中では特別なことは何一つ起こりません。大きな出来事は何もな
いのです。ただただ家族はそれぞれ自分のできる仕事をし、季節を感じながら
日々を過ごしてゆくのです。

それにもかかわらず、必要最小限の生活の中にどれほど大切なものが詰まっ
ているか、時にあたたかく、時に厳しい自然の中で暮らしていくことの尊さと、
平穏な日々の愛おしさをじわじわ感じさせてくれる美しい作品の一つだと感じ
ます。

周りを見回すとモノで溢れ返り、季節感もなく、過ぎ去ってゆく日常。本当
に大切なものはと問われたらちょっと小首をかしげてしまう。幸せってなんだ
ろうと聞かれたらやっぱり分からなくなってしまう。

そんな時にこの絵本を開きます。バーバラ・クーニーの穏やかで静かな描写
の中にとても豊かな時間が流れているのです。

どうか新年も、にぐるまをひけるような年であってほしいと切に願います。

〈とんか・めぐみ〉神戸元町にてザックバランな古本屋「トンカ書店」をほぼ
無休で営業中。
【イベント】
1/16〜1/31「坂井ユウジロー:放浪看板展」
2/1〜2/28「ハコ旅 旅するふしぎかわいい雑貨たち 神戸編」
詳細はHPまで

トンカ書店
650-0011 神戸市中央区下山手通3-3-12元町福穂ビル2D
078-333-4720
http://www.tonkabooks.com/

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■音を探してページをめくる  貴島 公
(13)言葉にできないけれど、確かにあるもの
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津村記久子『ミュージック・ブレス・ユー!!』 角川書店、2008年6月

 音楽が好きな高校生の女の子が主人公の小説を読んで、主人公のように「そ
れってあたしのことやんか」と思った、なんて、四十も半ばを過ぎたおっさん
が言うのは、ちょっとどうかと思うのだが、ここにあるのは、「かつては自分
もそうだった」というノスタルジーでも、同じ趣味を持つ者の世代を越えた
「あるある」感でもない。主人公たちが好んで聴いているバンドや音楽(激し
く速いのに情緒あふれるタイプの音楽と思われる)にも馴染みがない。いまの
わかいもんがどんな音楽をどんな風に聴いとんのかという興味(あんまり持っ
てないですが)に応えるようなものでもない。馴染みがないので、断言はでき
ないけど、ほのめかすことで、なんかわからんけどわかってもらおうとするオ
マージュものではないと思う。

 いや、「あるある」感は、正確には、あるにはある。舞台が大阪なので、い
くつかの場面は、(よく)知っている場所を連想させるし、主人公の行動にも
思い当たる節がいくつもある。買ったばかりのCDを、店を出てすぐに開封し、
それだけでは飽き足らず、仔細に検分するために、落ち着ける場所を探す、と
か。最近あったことを話してみてと言われて、聴いたCDについて話してしまう、
とか。まずいなぁ、笑いごととちゃうなぁと思いつつ。でも、ちがうのだ。読
んでいくうちに、この主人公に好感を持つようになったのは、「趣味」にまつ
わるあれやこれやのせいではない。

 物語は、高校3年の夏から卒業にかけて、進路に対する気持ちが定まらない
主人公アザミが遭遇する出来事に寄り添って、進む。一連の出来事の背景には、
アザミと親友(という言葉は意識的に避けられているが)のチユキが前年に起
こした事件に象徴される不器用で無茶な友情のありようが描かれていて泣かせ
るのだけど、それらの出来事の手前で、アザミは、いつも立ち止まっている。
その立ち止まりかたに、わたしは好感を持つ。彼女は、移り気で、ものごとを
途中で投げ出したり諦めたりしがちな子として描かれている。そのことに自分
でも気付いており、自分のことを「最低」だと考えている。その原因がほのめ
かされてもいるけれど、それは蛇足のような気がする(親の寛容に対する説明
にはなるが)。移り気だけど、言葉に対してものすごく繊細で、そこのところ
は投げ出すことができないでいるからだ。だから、立ち止まってしまうのだし、
不器用な友情にもつながっている。「自分の考えていることをうまく口にでき
ない人を、どうしても置いていくことができな」いやつなのだ。

 著者のほかの作品はまだ読んでいない。この作品を読もうと思ったのは、イ
ンタビューで、「音楽を聴くこと以外何も持っていない」ことを「全力で肯定
する」と語っているのを、背筋に冷たいものが走るのを感じつつ読んだからで、
だから、村松友視が、市川雷蔵の文章について評した「二分の一と四分の二と
八分の四と十分の五…このちがいを言い分けようとする心根」を思わせる文章
が、著者の常なのか、この作品ゆえなのかはわからない。でも、主人公にとっ
て、そうした言葉にできないゆえの立ち止まりを後押しするのが、音楽だとい
うのは、とてもよくわかるし、(主人公にとって)よかった、と思うのだ。主
人公は、言葉にはできなくても、あるものはあるということを、知っている。
それを言葉にしてしまえるとは思っていない(自分にはできないという気持ち
も含めて)。でも、言葉にできなくてもいいとも考えない。言葉にはできなく
ても、あるものはある。音楽がそうだから。そのことを、彼女は知っている。
「音楽を聴いたという記憶だけで生きていける」というのは嘘じゃない、と思う。

〈きじま・こう〉説明業、趣味・読書と音楽鑑賞。
『ミュージック・ブレス・ユー!!』を読みながら、作中に登場する音楽とは
別に、背景に流れる音楽として、大久保由希さんの歌を思い浮かべてました。
去年発売された『MIRROR & MOUTHPIECE』は、わたしにとって、2008年の
ベスト…20くらいの1枚です。すみません、絞り切れなくて、価値演出にな
らなくて。

「モノノフォン」
http://homepage1.nifty.com/hebon/fhp/

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■〈畸人研究〉今柊二の読書スジ
(25)リーマン恐慌とスタインベック
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 どこを向いても、不況に関するニュースだらけの昨今。
なかでも昨年2008年9月のリーマンブラザーズの倒産から状況が一挙に悪化
してきたことは周知のとおりである。その後あまりにも状況が早く動くので、
ニュースから目が離せません。

ということで、少し状況を理解しようと思って読んだのが、岩崎日出俊『リ
ーマン恐慌』(廣済堂出版)。元リーマン幹部によって記されている本書は、
投資銀行やサブプライム問題などの基本がよくわかってなかなか勉強になる。
2008年12月発行なので、情報も新しいしね。

なかでも大恐慌時代のことを例として、現代の状況と比較しているが、大恐
慌の際の状況を知るためにはスタインベックの『怒りの葡萄』を読むといいと
著者は記す。かつての大恐慌はアメリカで大流民を発生させた。『怒りの葡萄』
でもオクラホマを追われた主人公一家が、カリフォルニアをさまようことになる。

確か『怒りの葡萄』は中1のときに、読書好きの叔父からパールバック『大
地』と一緒にもらったな。『大地』のほうは激しく面白くて一日ぶっ通しで読
んだ記憶があるが、『怒りの葡萄』はつらくて途中でやめてしまったな。ただ
年齢の変遷とともに、自分のなかのセンサーも変化するものなので、ここは一
つ再度『怒りの葡萄』にチャレンジしてみよう。『蟹工船』の次は『怒りの葡
萄』がブームになるかも(笑)。

〈こん・とうじ〉畸人研究学会
神奈川新聞にて連載している「かながわ定食紀行」が、神奈川新聞のかもめ文
庫にて、文庫本としてついに刊行! 値段は定食一回分です(笑)

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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(68)風呂屋で飲みトーク
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 2月、3月と『酒とつまみ』10号はいつもながら、少しずつ、順調に、出荷
部数を重ねていった。とはいえ、私が果たす役割は、以前に増して少なくなっ
てきた。

 編集も営業も、事務も、日々の雑事も、W君とN美さんのふたりに頼り切っ
ていていた。私がしていたことと言えば、酔客万来のインタビューで安部譲二
さんとの酒宴に参加したこと、瀬尾幸子さんのつまみ塾の試食撮影会に参加し
たこと、あとは、私自身の連載企画「山手線一周ガード下酩酊マラソン」の取
材に出かけたことくらいである。

 そうこうしているうちに4月になったが、生活していくための稼ぎ仕事の量
も膨大なものになり、このころ、体力は底をついていたと思う。3月には、血
尿が出ながら仕事を休めない、酒も休めないという状況になっていた。

 そんな4月5日のこと。「わめぞ」(早稲田、目白、雑司が谷地区の「本」
に関係する仕事をしている人間の集まり)が主催する「第1回 月の湯古本ま
つり 〜銭湯で古本浴〜」に、トークのゲストとして呼んでいただいた。古書
に造詣が深いわけでもないので、古書現世の向井さんから話をいただいたとき
にも、何をしたらいいのかわからないと答えたが、お伺いすると、ただ、酒を
飲んで、なんでもいいから話してくれればいいという。お相手は大衆食堂の詩
人・遠藤哲夫さん。ふたりして、銭湯の空の湯船に入って、飲みながら、何か
を話す、ということなのだ。

 わからない。何でもいいから話してくれと言われても、なにを話すべきなの
か、わからない。私は、こういう状況に弱い。むしろ、ああせいこうせいと、
うるさく制約を受けたほうが、ならば見事にすり抜けてやるなどとやる気にも
なるのだが、なんでもいいから好きにやってくれればいいよ、というのは困る。

 結局のところ、エンテツさんに、なにもかも、任せることに勝手に決めて、
少し酒を飲んでから、目白の「月の湯」へ向かった。
 
 さすがだな、と思ったのは、エンテツさん。時間ぎりぎりになるまで来ない。
連絡を取ろうにも携帯電話をお持ちではない。どうしたのかなあ。と、関係者
何人かが同じことを口にしたころ、やあやあ、と、にこやかに登場された。聞
けば、2時間ほど前から飲んでいるという。さすがだな。

 もう、こうなったら、エンテツさんのほろ酔いに乗っかるしかないと、私も
また、本番直前に、カップ酒を2本、立て続けに流し込んで、湯船へと入った
のだった。

 トークは、エンテツさんのペースで順調に進み、予定の1時間はあっという
間に過ぎた。その間、カップの酒をもう1本ほど飲んだから、終わるころには、
ほわりと顔もあたたかく、実にいい気分で、昨今のズタボロな状態が嘘のよう
に、私は、イベント関係者やエンテツさんのお仲間たちの列に連なり、打ち上
げの店がある池袋へと、ゆらゆら歩いているのだった。

〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集長。
年末の12月18日に、『もう1杯!!』(産業編集センター)という本を出版
させていただきました。私の、酒飲みエッセイです。思い出話から旅酒話、酒
場の物語など全部で20本の話を掲載しました。『酒とつまみ』同様、一杯飲
むときのおつまみにしていただけますと幸いです。なにとぞ、よろしくお願い
します。
http://www.saketsuma.com

ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(79)弓立社の巻(廃墟篇) すでに空き家のネズミビル
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 週に2〜3回は通う、「神保町シアター」への筆者の道順はこうだ。九段方
面から神保町交差点を渡ると、「さぼうる」前にもすずらん通りにも折れる亊
なく、一ツ橋寄りの中華の「三幸園」と、「ゴルフキッズ」の間の路地を左折、
直進(人通りがなく落ち着く)。左側にある、“天婦羅・洋食”の「あまみ」
の朽ちかけた看板を越すと、左右に「東京堂書店」の汚れが目立ち始めたクリ
ーム色のビル。左手はすずらん通りに面した、東京堂の店舗の勝手口だ。すぐ
並びに、ネズミ色の陰気なビルがある。その2階に弓立社が(3階のメビウス
は関連会社?)。

 3階建てで一部4階の“ネズミビル”(屋上にトタン張りのホッ建て小屋も
増設)、一応は角地に。左手に折れるとすずらん通り(角にコーヒーの「ドト
ール」)。創業昭和12年の落合木版(印鑑・ゴム印・名刺・諸印刷)が建物
の右手を占拠。大家と推測される。1階の左側は最近までキッチン「ジロー」
が。今は空き家。角地に向かって左手、つまり東京堂の勝手口側に、弓立社&
メビウスへの階段が。

 今日(1月12日)は祭日のせいか、周辺以上に静まり返っていた。いや、
平日でも通る度にこうだ。ネズミビル、外壁は5センチ位の横のシマが一面に。
窓はすべて曇りガラス。落ち着いたすずらん通りの裏と言うより、充満するう
らぶれ感(我が漫画屋の入居する、飯田橋2丁目の三信ビルには貫禄負けして
るが)。

 人の出入りどころか、生き物の気配さえ感じられない静寂感だ(シーン)。
ここで本当に『東京女子高生制服図鑑』(森伸之)や、数々の吉本隆明グッズ、
副島隆彦、渡辺京ニらの本が制作されているのか?(著者の傾向には一貫性が
あるね、ガツーンとした)。こんだけ丈夫なアルミのポストもあるんだし。が、
念のために中を覗くと、チラシの山…。「?????」最後の手段で、仕方な
く同社の検索を。「アチャ−!!!」3年前に西日暮里に移転してるよ(どう
せなら、偉大なグルの住む千駄木にすりゃいいのに)。

 つまり、俺が「神保町シアター」に頻繁に通い始めた頃、ネズミビルは既に
もぬけの殻だったのだ。うらぶれてるはずだよ(ひょっとして、漫画屋が追い
出された栄昇ビルみたいな問題が?)。まあいい。同館今は森雅之特集。今夜
は『千羽鶴』(監督・吉村公三郎・’53大映)。そろそろ出掛けなければ。
静寂感漂うネズミビルの横を通って。

〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)、『出版業界最底辺日記 エロ漫
画編集者「嫌われ者の記」』(ちくま文庫)。1980年以降書き散らしたコラムを
まとめた『東京の暴れん坊 俺が踏みつけた映画・古本・エロ漫画』(右文書
院)が好評発売中。

なお、この連載に関しての批判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(た
だし、謝るとは限りません)。
mangaya@air.linkclub.or.jp
http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/

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★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。師走ですが、いろいろトーク。
★特別寄稿「『アホアホ本エクスポ』ができるまで」中嶋大介
 →「内容もデザインもアホな本」を紹介する本はどうやってできたか。
★「関西古本女子だより」真治彩(ちょうちょぼっこ) 
 →大阪と神戸の「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。
★「食の本つまみぐい」遠藤哲夫
 →引越しのため休載です。
*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
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★彷徨舎『ハルミンの読書クラブ』『ナリコの読書クラブ』刊行記念
浅生ハルミン×近代ナリコトークセッション
「古本と猫」

日時:2008年12月19日(金)20:30〜
※閉店後の開始です。運営の関係上、20:15までに4階売場までお越しく
ださい。

会場:三省堂書店神保町本店4階特設会場
定員:30名様
入場料:500円(税込)店頭もしくはお電話にてご予約の上、当日お支払
お問い合わせ先
三省堂書店神保町本店4階
03-3233-3312(代)
受付時間:10:00〜20:00
※トークセッション終了後、サイン会を行います。

★岡崎武志 恒例年末ライブ

年末 岡崎武志コクテイルライブ
12月21日(日) 7時開場、7時30分開演
チャージ1000円
場所 古本酒場コクテイル

岡崎武志今年のニュースベスト10、古本ベスト10を中心に話します。古本
入札市、歌もあり。

予約 古本酒場コクテイル
電話03−3310−8130 メールcocktail@hotmail.co.jp

★12月、1月のほうろうトーク
・『ぐるり』プレゼンツ
南陀楼綾繁のトーク十番勝負 その8
雑誌が生まれる場所〜『おかしな時代』刊行記念〜

出演
津野海太郎(編集者・演出家)
南陀楼綾繁(ライター・編集者)

〈サブカルチャー〉が生まれていく過程を時代の息づかいとともに描いた『お
かしな時代 「ワンダーランド」と黒テントへの日々』(本の雑誌社)の著者・
津野海太郎さんを迎えてトークします。『新日本文学』、『ワンダーランド』、
『水牛通信』など、津野さんが関わってきた雑誌について、たっぷりとお話を
聞いていきます。また、執筆者あるいは読者として関わってきた雑誌について
も話していただきます。『季刊・本とコンピュータ』以来の師弟による対談です。
どこまでつっこめるか、乞うご期待!?

日時 2008年12月17日(水) 18:30開場/19:00開始

・南陀楼綾繁のトーク十番勝負 その9
ハードスタッフ・ナイト〜先端的硬派雑誌の復活〜

出演
小西昌幸(『ハードスタッフ』編集発行人、先鋭疾風社代表)
南陀楼綾繁(ライター・編集者)

パンク、幻想文学、特撮、テレビドラマ、漫画、ブックデザインなど、さまざ
まな文化事象から自らが得たものを熱い筆致で語るミニコミ『ハードスタッフ』。
1976年に創刊され1993年までに11号が発行された。それからナンと15年ぶ
りとなる最新号(追悼総力特集・林直人の夢の丘)の発行を記念して、編集発
行人の小西昌幸さんに徳島から来ていただき、お話を伺います。小西さんのも
うひとつの顔である「創世ホール」での仕事についても、たっぷりお聞きします。

日時 2009年1月19日(月) 18:30開場/19:00開始

場所 古書ほうろう
文京区千駄木3-25-5 1F
電話 03-3824-3388
http://www.yanesen.net/horo/

入場料 1000円(要予約、飲みもの持込み自由)
予約方法 
(1)ビレッジプレス「ぐるり」編集部
info@village-press.net 03-3928-7699 *イベント名をお知らせください
(2)古書ほうろう 店頭受付のみ

★第2回 海文堂の古本市〜 歳末古本掘り出し市 〜

12月11日(木)〜12月21日(日)
海文堂書店 2F・ギャラリースペース <Sea Space>
兵庫県神戸市中央区元町通3丁目5番10号
電話:078−331-6501
FAX:078−331-1664

 資本主義の矛盾露呈、社保庁役人の年金サボタージュ、ネットに洗脳された
無差別犯罪、まさかまさかの阪神タイガースV逸……と散々だった今年。
 そんな1年を吹き飛ばせ〜と、ドカ〜ンと大古本市だあ! 海文堂、2008年
のファイナルイベント(“最後っ屁”イベントとも言います)であります。今
春の第1回に引き続き、一癖も二癖もある古本屋さんが結集します。
 年末年始用の掘り出し本、みつけてください。

〈参加古書店〉
あさかぜ書店(明石)・一栄堂書店(長田区)・オールドブックス ダ・ヴィンチ
(中央区)・みょうが堂古書店(宝塚)・レトロ倶楽部(中央区)・やまだ書店
(兵庫区)

なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

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■特別寄稿 『アホアホ本エクスポ』ができるまで  中嶋大介
その2 「アホアホの人」として
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 恵文社さんと共同でつくったミニコミは、単行本『アホアホ本エクスポ』と
同時進行でつくりました。『アホアホ本エクスポ』の副読本的な本にしようと
いうところからスタートしました。ブログと単行本では、ぼくの主観的な視点
で展開していますが、ミニコミではもっと様々な視点で楽しめるものにしたい
と考えました。

 最初の打合せの時に、ぼくから言ったことは、アホアホ本の「買い方・売り
方・つくり方」についての本をつくりたいということでした。それじゃ、もう
すぐ下鴨神社で古本市があるし、そこで買ったアホアホ本を紙面で紹介しよう
ということになりました。そして、このミニコミの柱はインタビュー記事にし
ようということになり、大西祥平さん・近代ナリコさん・しまおまほさんにお
願いしてみようと、堀部さんから提案がありました。ぼくからは、どどいつ文
庫さんと、赤田祐一さんにお願いしたいと提案しました。どどいつ文庫さんは、
20年ほど前から海外のアホアホ本と言える変わった本を売られている方なので、
アホアホ本の売り方についてお話を伺うのであれば外せないと考えました。赤
田さんは、単行本でも紹介した『全国制服図鑑』(飛鳥新社)に編集者の一人
として参加されていて、アホアホ本のつくり手としてのお話を伺いたかったの
と、「ヒドい本」というくくりでアホアホ本にも通じる本を買われていた時期
があったとお聞きしていたので、ぜひお願いしたいと考えました。自分たちが
本当にインタビューしたいと思う方々にお願いしたら、結果的に豪華な顔ぶれ
になってしまいました。

 ミニコミのデザインもやらせていただいたのですが、これもなかなか大変で
した。ある程度読み応えのある本にしたかったので72ページとそれなりにボ
リュームがあります。インタビュー記事もテキスト量が均等でなかったりして、
テキストを流し込むだけで四苦八苦。データの入校日をちょっと延ばしてもら
って、アホっぽい味付けを最後に付け足して、なんとか完成といった感じでした。

 ぜーぜー言いながら、なんとか単行本とミニコミを制限時間内に仕上げたの
ですが、一息つく暇もなく、次は展覧会の準備に取りかかりました。『アホア
ホ本エクスポ』で紹介したアホアホ本を展示して、お客さんが自由に手に取っ
て楽しめるものにするというのは、最初から決めていたので、その点について
は問題なかったのですが、ただ本を展示するだけでは、展示会場として見た時
に地味なので何かパネルをつくることになりました。これまたホントにギリギ
リで、展示の準備をする当日にやっと完成するといったバタバタぶり。

 とりあえずここで一安心。しかし、そうのんびりもしていられなくて、あと
一つトークショーという難関が残っていました。トークのお相手は、堀部さん
と近代ナリコさんにお願いしました。お願いしたと言うより、無理矢理ひっぱ
り出した感もあります。スライドを交えたものだったので、そのスライドのデ
ータづくりもギリギリで、堀部さん、近代さんと事前に打合せした時にはまだ
スライドで映す画像ができていなくて、全然打ち合わせになりませんでした。
どうなるのかわからないままトークショー当日をむかえたんですが、グダグダ
感も含めて楽しんでもらえたんじゃないでしょうか。嬉しかったのは、思って
いたよりもたくさんの方が来てくださったことです。誰も来なかったらどうし
ようという不安も正直ありました。本をつくることだけで精一杯だったので、
告知があまりできなかったのとDMをつくるのが遅かったり、開催日が平日だ
ったりと、不安材料がいろいろあったので、ホッとしました。展覧会にも多く
の方が来てくださいました。これは恵文社さんの集客力によるところが大きい
のと、連休があったりして日程にも恵まれた部分もあります。

 恵文社の展覧会の様子が関西を代表するバラエティ情報番組『なるトモ!』
で『アホアホ本エクスポ』と共に取り上げてもらったり、青山ブックセンター
で常盤響さんとトークショーをしたり、ド深夜のラジオ番組に出演するハメに
なったりと、何が何だかわからないまま、流されるまま時が過ぎて今に至ると
いった感じです。

 今後の予定としては、来年1月に東京の某埋立地でイベントする予定があり
ます。2月ごろにも東京でトークショーをするかもしれませんし、名古屋でも
イベントできればと考えていたりもします。もうしばらくは「アホアホの人」
としての活動が続きそうです。

単行本『アホアホ本エクスポ』(BNN新社):全国の書店にて絶賛発売中!
ミニコミ『AHO AHO - EXPO』:サイトでも販売していますが、下記のお店でも取
り扱っています。
〈恵文社一乗寺店(京都)、ジュンク堂大阪本店(大阪)、 itohen(大阪)、海文
堂(神戸)、スペースモス(神戸)、東京堂書店 (東京)、三省堂書店(東京)、音
羽館(東京)、BASARA BOOKS (三鷹)ほか。〉

〈なかじま・だいすけ〉
1976年京都府生まれ。大阪市在住。2006年から古本販売のサイト 「BOOKONN」を
はじめる。アホな本を紹介するブログ「ahoaho- expo」も2007年からスタート。
「BOOKONN」http://www.bookonn.com/
「ahoaho-expo」http://ahoaho-expo.com/
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■関西古本女子だより  真治彩
(16)精神の深い安堵
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 なかなか寒くならないので、冬がきたのに気づかないふりをしていたけど、
昨日、スーパーからの帰り道、吐く息の白さに、頬の冷たさに、冬の到来を確
信した。なんか、センチメンタルで、「おねえちゃん、気づけばひとりだよ」
いつぞや妹から言われた一言をふと思い出す。

 窓のそとで、洗濯物が風に揺れていているのを眺める。階下のグラウンドに
は寒空のした、野球をするひとたちが小さく見える。タイツ、タートルネック、
下着、冬の洗濯物は地味な色ばかりだなあと思う。冷めた紅茶を飲んで、寂寥
感が増す。

 瀬沼孝彰の詩集『凍えた耳』に「石の街を行く人たちに安堵を」と題された
八木幹夫の文章が付録としてある。
「ぼくらは日々、自分たちの生活の向こう側にあるマイナスの極を遮蔽されて
生きている。ものの腐敗する形や匂いを遠避けられたままだ。しかし、人は光
の中でのみ生きる訳ではない。闇が精神の深い安堵をもたらすことを忘れては
ならないだろうう。」という一文が目にとまる。

 日常の中で、十分悲しくなったり、寂しくなったり、どうしようもなくなっ
たりするけど、そんなのは一晩も眠れば簡単に忘れることができる。不眠を知
らず、空腹の時間もない。 孤独でもないし、追い詰められてもおらず、それ
どころか、いささかの余裕すらあり、なんとなくやりすごす術もしっている。
精神に深い安堵をもたらす闇をわたしは持ってない。
だから、詩を読むのか。

谷底まで着いた眠りを
さらに蹴落とす疲労が
もう一息でぼくを墓にしてしまうことも可能だ
(永塚幸司 「朝まで墓になる話」)

朝 食パンが一枚半はいったビニール袋を
歯で噛み破る
歯はぼくの左手なのだ
なかからぷーんとイースト菌のいい匂い
(川崎彰彦 「朝2」)

いろいろな事を望んだが
駄目だった
そして今度は本当に
駄目になった
申訳ないみたいに
みじめなんだ
(伊藤茂次 「僕の写真」)

 妹の言う通り、「気づけばひとり」なのかなあ、と悲しいきもちになる。ま
あ、それはそれで、とおもうことにする。

〈しんじ・あや〉
「いくつですか?」と聞かれ、「さんじゅうさんさい!」と世界のナベアツ風に
アホになって 言ってみたが、誰も笑わなかったというのはうそかほんとうか。
ちょうちょぼっこでは12月には器のイベント開催中! クリスマスプレゼント
にどうぞ。

ちょうちょぼっこ×松原工房
ほん よむ かっぷ

長崎・波佐見町の日用食器"松原工房"さんがちょうちょぼっこにやってきま
す。プレゼントにも素敵な器です。箱もかわいい!
特別メニューも考え中。松原工房さんの器でサーブします。
http://matubarakoubou.vessel-arita.net/

期間:2008年12/ 5(金)、6(土)、7(日)
        12(金)、13(土)、14(日)
         19(金)、20(土)、21(日)
 金曜日18:30〜21:00  土、日曜日13:00〜21:00
※最終日21日の営業は21:00まで、松原工房の展示は19:00まで。
貸本喫茶ちょうちょぼっこ
〒550-0014 大阪市西区北堀江1-14-21 第一北堀江ビル4F
http://www.geocities.co.jp/chochobocko/
*営業日は、第1〜3週末です。 金18:00-21:00、土日 13:00-21:00

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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(67)トークショーでド緊張の酒
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 2月に入ると、かねてから予定されていたトークショーに出演することにな
った。場所は八重洲ブックセンターで、お相手は太田和彦さん。主催が三栄書
房『古典酒場』で、司会は同氏編集長の倉嶋紀和子さんだ。

 こういうのは、とても苦手で、マトモに考えると頭が変になってしまいそう
なので、なんか本でも買うようなつもりで八重洲ブックセンターまで行くのだ
が、あっ、いけねえ、と思ったときにはすでにド緊張モードに入ってしまう。
早く酒を飲まないと、とてもではないが、マトモにしゃべれそうもない。

 控え室で、八重洲ブックセンターの方にご挨拶をし、コーヒーなど飲み、平
静を装うのだけれど、本音を言えば、コーヒーにウイスキーをドボドボ注いて
ほしい。やばいなあ。そこへ太田さんが来られ、しばらくして、倉嶋さんも現
れる。倉嶋さん、和服姿なので「いいねえ」と冷やかし半分に言えば「小料理
屋の女将の予定だったのですが、関取みたいになってしまって」と答えられた。
それがおもしろかったのもあるけれど、どうやら倉嶋さんのほうが緊張してい
るみたいなので、私は、少しばかり落ち着いたのだった。

 しかし、会場へ足を運んで、また、ビビり直すことになった。100名以上の
お客さまがすでに待っていたのだ。大半が太田さんのファンの方であることは
想像がつくのだけれど、これは焦る。このド緊張は、トークが始まり、目の前
のコップに注がれている液体が実は水ではなくて酒であることに気づくまで続
いた。

 関取、いやいや、美人女将の倉嶋さんが緊張しながらも律儀に司会進行を務
められ、また、太田さんの軽妙かつ当意即妙な話術に助けられて、どうにかこ
うにか、トークショーを終えることができた。

 そして、トークのあとのサイン会、というのでしょうか。太田さんのご著作
を手に並ぶ方だけでなく、なんと私のほうにもお並びいただける方もいて、こ
れはこれは、どうもすみませんと頭をさげつつ、下手な字を書き、握手なども
したのだったが、このときとても驚いたのは、太田さんの、ひとりひとりの読
者さんに対する丁寧な応対である。日付と名前だけでなく、杯の絵なども添え
て手渡すのだが、ひとりに、しっかりと時間をかけて、丁寧に書き、描く。こ
れなら、もらった読者さんは、とても嬉しいと思う。そういうことがちゃんと
できる人であることが、実はご著作にもしっかりと書かれているんだよなあ、
などと、ただただ慌てふためくばかりの私などは思うのだった。そして、そん
なときになってようやく、こういうイベントを組んで下さった三栄書房さんに
も、場所を提供してくださり、拙著なども販売してくださった八重洲ブックセ
ンターさんにも、ありがたいことだったのだなあと、しみじみ思うのだった。

 トークのあと、夕方からは再び終結して、関係者による打ち上げが行われた。
場所は神田の『みますや』。刺身に日本酒。10名ほどで、賑やかに飲んだ。穏
やかで気取らず、ざっくばらんで楽しい太田さんの酒は、このときも、私をと
てもいい気持ちに導いてくれた。

 良き先輩に会い、話を伺い、酒を飲み、そして、『酒とつまみ』も『ホッピ
ーマラソン』も売れた。佳日、と呼びたくなる1日だった。

 私は、凍てつく寒さの中、神田駅まで歩き、中央線に乗って帰るのではなく、
銀座線に乗って銀座へ向かった。緊張状態から解放され、酒も入って陽気にな
った私は、まだまだ話し足りないようだった。
 
〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集長。
ある朝、寝床の中で考えました。「昨日の晩は『円熟』ロング缶4本か。度数
6%だから1本のアルコール量は30mlで4掛けて120ml。ウイスキー換算なら
度数40%だから120mlを4で割って10掛けて、300ml。なるほど、ボトル半分
弱ね。『円熟』もなめたらいかんな……」。早く起きろ、と自分を激励したい今
日この頃です。
http://www.saketsuma.com

ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(76)日本文芸社(にちぶん)の巻 汗臭い読者層のイメージを裏切るビル
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『漫画ゴラク』で知られる日本文芸社が、靖国通りの反対側に御殿を移し、も
う何年になるのだろう? 数年前までつい旧社屋のあった所で、「確か〈野望
の王国〉が連載されてた頃はここに…」と、立ち止まる事さえ。最近アーケー
ドが撤去され、やっとあの頃の記憶が消えた(旧社屋の入口は、北関東の場末
の農協タッチで、『漫画ゴラク』の誌面とシンクロしていた)。

 千代田区神田神保町1ー7。今の御殿の住所だ。“古本界の文芸坐”、「田
村書店」の並びだし、本好きは日に何度前をも通る。ただこの御殿、妙な造り
なのだ。アイベタに白ヌキの“日本文芸社”との看板を確認後、数メートルの
トンネルを抜けないと、同社のエレベーターにはたどり付けない(エレベータ
ーの左側は、「古瀬戸珈琲店」入口)。
 
 つまり御殿の全容は、旧社屋の側から見るか、裏手に回らないとつかめない。
筆者は面倒なので、トンネルの隙間からキョロキョロ。鈍く光るメタリックな
シルバーの外壁で、落ち着いてて、竹橋あたりの商社ビルのようにも見える。
昔の社屋と異なり、『漫画ゴラク』の汗臭い読者層を、御殿イメージとしては
完全に裏切っている。

 1959年の設立で、社員86名と。う〜ん、敗戦直後の、カストリ雑誌全盛期
からあるのかと思ってたが(昨年倒産した、司書房を子会社に持つ、桃園書房
がそうだった)。要は、漫画の成長と共に伸びて来た出版社なのだ。同社設立
1〜2年前から、邦画界はハッキリ下降期に入っているし。

 エレベーターまでのトンネルの両側には、『漫画ゴラク』に加え、『荷風』、
ケータイデジタルコミック『ギリもば』他のハデな電飾広告。いつまでも「野
望の王国」視するのは、失礼なのかも(でもスゲー面白かったし…)。『漫画
サンデー』がホワイトカラー相手だとすると、『漫画ゴラク』は肉体労働者(土
方やトラックの運チャン)の昼間をカバー。夜をカバーするエロ漫画編集者と
しては、他人のような気がしなかった(失礼!)。

 1階の喫茶店を除くと、にちぶん(紀文と間違えそう)こと日本文芸社が、
御殿内を全部使用してるらしい。今回はサボってエレベーターでオフィス覗き
はしなかったけど、さぞ余裕がある事だろう(本当言うと、同業者でにちぶん
に出入りしてたり、DTP屋公栄社も仕事してるらしいので、知り合いに遭遇
したくなかった。「何してんの?」「“版元様の御殿拝見”てのネットで連載
してて…」なんて会話、交わすのドーメンだもん)。

 書いててフッと気づく。『漫画ゴラク』、もう10年以上開いた事ねえよ。喫
茶店のスポーツ新聞で、時々PRは見るような気もするが…。まさかエロ劇画
誌『漫画ラブトピア』にも描いてた、和気一作の連載は今もと、同社HPをチ
ェックしたら、「逃亡夜」を堂々連載中。「ミナミの帝王」の郷力也(もう要
介護のヨボヨボ爺さんのはずだ!)といい、御殿は読者を裏切っても、誌面の
精神は22世紀まで継承される可能性が。漫画産業がより急降下しても、『漫画
ゴラク』だけは生き延びそうだし。

〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)、『出版業界最底辺日記 エロ漫
画編集者「嫌われ者の記」』(ちくま文庫)。1980年以降書き散らしたコラムを
まとめた『東京の暴れん坊 俺が踏みつけた映画・古本・エロ漫画』(右文書
院)が好評発売中。

なお、この連載に関しての批判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(た
だし、謝るとは限りません)。
mangaya@air.linkclub.or.jp
http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/

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■         vol.384
■■  mailmagazine of book reviews  [ 率直な叱咤 号]
■■------------------------------------------------------------
[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。福岡に大西巨人が来る!
★特別寄稿「『アホアホ本エクスポ』ができるまで」中嶋大介
 →「内容もデザインもアホな本」を紹介する本はどうやってできたか。
★「関西古本女子だより」頓花恵(トンカ書店) 
 →大阪と神戸の「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「音を探してページをめくる」貴島公
 →音楽サイト「モノノフォン」の主が、音とテキストの関係を考察する。
★「〈畸人研究〉今柊二の読書スジ」
 →小説を読む気がまったくしないのは一体どういうことだろう。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。
*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
-------------------------------------------------------------------
★『おやじがき』(にんげん出版発行)刊行記念トークショー
秋の☆おやじがたり〈サーモントロ篇〉

出演 内澤旬子(イラストルポライター)
平山夢明(作家)

印刷、書斎、屠畜、そして次は……おやじ! モノとヒトをクールな目で見つ
め描くイラストルポライター・内澤旬子さんの新刊『おやじがき』刊行を記念
し、ホラー作家の平山夢明さんをお招きして爆笑必至のおやじ談義を繰り広げ
ます。哀しくも愛らしい、めくるめく「おやじワールド」へようこそ!

『おやじがき 絶滅危惧種(レッドデータ)中年男性図鑑』
にんげん出版より11月下旬刊行 
B6判変型 並製 84頁 定価¥1,300+税 

内澤旬子(うちざわ・じゅんこ)
1967年、東京都生まれ。緻密な画力と旺盛な行動力を持ち、世界各国の図書
館、印刷所、トイレなどのさまざまな「現場」を取材してきた。著書『センセ
イの書斎』(幻戯書房)、『世界屠畜紀行』(解放出版社)。共著に『印刷に恋
して』(松田哲夫・文 晶文社 第三回ゲスナー賞「本の本」部門銀賞)、
『「本」に恋して』(松田哲夫・文 新潮社)など。
http://d.hatena.ne.jp/halohalo7676/

平山夢明(ひらやま・ゆめあき)
1961年、神奈川県生まれ。『超怖い話』シリーズなどの実話怪談作品、『ミ
サイルマン』(光文社)などのホラー小説など、多方面で活躍。『独白するユ
ニバーサル横メルカトル』により、2006年日本推理 作家協会賞短編部門賞
を受賞。同名タイトルの作品集にて、2007年度『このミステリーがすごい!』
国内部門一位。近刊に『「超」怖い話M(ミュー)』(竹書房文庫)、吉野朔実
氏との対談集『狂気な作家のつくり方』(本の雑誌社)など。
http://blog.livedoor.jp/hirayama6/

日時 11月29日(土)15 :00〜17:00(開場14:45)
会場 東京堂書店神田本店6F
参加費:500円(要予約)

ご予約は、電話(03‐3291‐5181)またはメール(tokyodosyoten@nifty.com)
にて、イベント名、お名前、お電話番号、参加人数をお知らせください。
なお、11月28日以降は、電話受付のみとなります。

東京堂書店神田本店
〒101‐0051 千代田区神田神保町1‐17
TEL03‐3291‐5181(代表)
http://www.tokyodoshoten.co.jp/

★福岡で大西巨人展+鼎談
「大西巨人・走り続ける作家」展

代表作『神聖喜劇』は、1968年の初刊以来4度の再刊を経て、2002年、光文社
文庫として新たに刊行。近年ではシナリオ化や漫画化など多様な展開をみせてい
ます。今回の企画展では、在福時代、特に敗戦直後の雑誌「文化展望」における
活動と雑誌に掲載された大西巨人による評論について考察を行うとともに、既刊
作品の紹介を行います。福岡ゆかりの作家・大西巨人の世界を、この機会に是非
御覧ください。

会期 平成20年11月15日(土)〜12月21日(日)

【第1会場】
福岡市文学館(福岡市赤煉瓦文化館)
福岡市中央区天神1丁目15−30
 (福岡市営地下鉄・天神駅下車12番もしくは16番出口から徒歩約5分)
展示時間/9:00〜21:00
休館日/月曜日(祝日の場合は翌日)
展示内容/「作家大西巨人」「作品世界」「発展的展開」の三つの内容について、
関連書籍、雑誌を展示して解説

【第2会場】
福岡市総合図書館1階ギャラリー
福岡市早良区百道浜3丁目7−1(西鉄バス・福岡タワー南口バス停下車徒歩
約5分)
展示時間/10:00〜19:00(日・祝日は18:00まで)
休館日/月曜(祝日の場合は翌日)、12/2(火)休館
展示内容/小説『神聖喜劇』の作家自筆原稿を展示し、その作品世界について
紹介

入場料  無料

問い合わせ
福岡市総合図書館文学・文書課
電話 092(852)0606
http://toshokan.city.fukuoka.lg.jp/docs/bungakukan/html/bungakukan.html

《鼎談〜大西巨人さんを迎えて〜》
なお、これに関連して大西巨人を迎えての鼎談が行なわれます。
ナマ大西巨人を見られる貴重な機会なので、お見逃しなく。

平成20年12月10日(水) 18時30分

会場 あいれふ(福岡市健康づくりセンター)講堂
福岡市中央区舞鶴2丁目5−1
(福岡市営地下鉄・赤坂駅下車、3番出口より徒歩約4分)

出演
大西巨人(作家)
坂口博(創言社編集人)
波潟剛(九州大学准教授)

定員 100名
料金 無料(※要整理券)
申込方法
往復はがきに「住所・氏名・年齢・電話番号・イベント名」を記入の上、福岡
市総合図書館文学・文書課まで。
申し込みは、往復はがき1枚につき1名のみです。応募者多数の場合は、抽選と
なります。

申込締切 11月27日(木) ※当日消印有効

申し込み・問い合わせ先
福岡市総合図書館文学・文書課
〒814-0001 福岡市早良区百道浜3丁目7−1
電話 092(852)0606

★軽井沢の古本屋で岡崎武志トーク
秋の感謝祭
第一部「岡崎さん古本トーク」
11月22日(土)15:30〜17:00 
参加料:1000円 (飲み物付)

第二部「星座観察会」
11月22日(土)19:30〜21:00
参加料:300円 

追分コロニーも開店以来ほぼ2年が経過しました。古本屋としてしっかりやっ
ていくためにはまだまだ努力が必要ですが、ここまでお客様の暖かいご支援も
あり、なんとか頑張って営業してくることができました。そのお客様への感謝
の気持ちをこめて、厳しい冬が始まる前に、今年最後のイベントを企画しまし
た。2部構成で夕方の第1部は、今人気のライター岡崎さんの「古本トーク」、
夜の第2部は「ベルデ軽井沢」支配人の手水さんによる「星座観察会」です。
浅間山麓の方だけでなく、東京など遠くからも参加していただきたく、夕食や
手頃な値段の宿泊斡旋も行います。信濃追分は自然がすばらしいところです、
晩秋の静かな季節に、皆様の来店をお待ちしております。

追分コロニー
軽井沢町追分612 「油屋旅館」の東隣「柳屋」内
「堀辰雄記念館」が斜め前です。
電話:0267-46-8088(開店時間のみ)
http://www11.plala.or.jp/colony/

★雑司が谷の商店街が、1日だけの古本街に!
鬼子母神通り みちくさ市
  
日時 2008年11月30日(日)
雨天の場合は、12月6日(土)に順延(この日が雨の場合は中止)
10:00ごろから16:00まで
  
会場 雑司が谷・鬼子母神通り
東京都豊島区雑司が谷2丁目・鬼子母神通り周辺
Google地図 >> http://tinyurl.com/6xmc4y
  
東京メトロ副都心線・雑司が谷駅1番出口または3番出口すぐ
都電荒川線「鬼子母神前」下車=会場前
JR山手線・目白駅から徒歩10分、池袋駅東口から徒歩12分

当日朝7:00に開催の有無を決定します。
以下の方法で開催の有無を確認できます。
・みちくさ市ブログ http://kmstreet.exblog.jp/
・みちくさ市携帯サイト http://mblog.excite.co.jp/user/kmstreet/
・わめぞブログ http://d.hatena.ne.jp/wamezo/
・旅猫雑貨店 留守番電話 03-6907-7715
・みちくさ市本部携帯電話 090-1766-2008(当日のみ)

同日、鬼子母神境内では手創り市が開催されています。こちらも合わせてお楽
しみください。(12月6日に順延した場合、手創り市は開催しておりません)
・手創り市 http://www.tezukuriichi.com/

★西荻ブックマークで佐藤泰志を語る
「そこのみにて光り輝く 〜佐藤泰志の小説世界〜」

出演:岡崎武志(書評家、ライター)
文 弘樹 (図書出版クレイン)
廣瀬洋一(古書 音羽館)ほか

会場:今野スタジオ『MARE(マーレ)』
1500円・定員25名・要予約
※予約後にキャンセルの場合はお早めにご連絡願います。
主催:西荻ブックマーク実行委員会

18年前に惜しまれつつ世を去った佐藤泰志。 昨年、吉祥寺の出版社クレイン
より作品集が刊行され、再び注目を集めつつあります。清冽な文体が織りなす
作品世界を朗読や証言などを交え、本人不在のトークショーを成立させます。

<<さとう やすし>>
1949年4月函館生まれ。1974年、国学院大学卒業後、さまざまな職業に従事し
ながら、文筆活動を続ける。5度の芥川賞候補、第2回三島賞候補となる。1990
年10月自ら命を絶つ。享年41歳。

【予約・連絡先】
 西荻ブックマーク
 mail:nbookmark@gmail.com
 TEL 03-5382-1587(音羽館) FAX 03-6762-9100(西荻コム)
 料金 1500円
  
なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

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■特別寄稿 『アホアホ本エクスポ』ができるまで  中嶋大介
その1 内容もデザインもアホっぽく
----------------------------------------------------------
 2007年1月にアホな本を紹介する「ahoaho-expo」というブログをはじめま
した。アホな本にテキトーなツッコミを入れながら紹介するというスタイルで、
ハウ・トゥ本やタレント本など、個人的にアホだと思った本ばかりで価値のあ
る本はほとんどなく、古本マニアの方からすればおもしろくない内容かもしれ
ません。古本とかに全然興味のない人にも楽しんでもらえるようにと心がけて
やっているつもりです。 どういう風に見ていただいているかわかりませんが、
自分としてはそういう気持ちでいます。

 そんなブログをはじめてからちょうど1年が経ったころに一通のメールをい
ただきました。送り主はBNN新社の編集者の方で「ウチで書籍化しませんか?」
という内容でした。それから何度かメールをやり取りして、ぼくが東京へ遊び
に行った際にお会いしたりして、 少しづつ具体的な話になっていきました。

 親しい友だちには、「ahoaho-expo」が本になることを話したりして自分の考
えを固めたり、アドバイスをもらったりもしました。扉野良人さんの出版記念
パーティが京都であった時に、恵文社一乗寺店店長の堀部さんも来られていた
ので、本が出たらなにかフェアができればいいなという話をしました。この時
は何気なく言っただけだったけど、 堀部さんはちゃんと覚えていてくださって、
それから一ヶ月半後にメールをいただく。はじめは恵文社のサイトでフェアを
やりましょうかといった内容だったが、「急遽その時期ギャラリーに空きがで
きてタイミングもいいのでいっそアンフェールで企画展等はどうですか?」と
いう嬉しいお誘いをいただく。ありがたい提案なので、もちろんすぐに「やり
ます!」と返事をする。後日、堀部さんと打合せをした時に「企画展 に合わ
せて共同でミニコミもつくりましょう」ということになる。BNN新社から出
す単行本と、ミニコミを同時進行でつくるなんて、こんなおもしろいことはな
いなと思っていたが、甘かった。これが予想以上 に大変でした。

 恵文社一乗寺店・ギャラリーアンフェールでの企画展では、BNN新社から出
す単行本で紹介したアホな本をすべて展示して、お客さんが手に取って楽しめ
るようにするということにしました。会期が10月7日からのスタートなので、
単行本とミニコミを逆算してその日までに仕上げるといった感じで、スケジュ
ールとしては企画展を中心にいろんなことが動いていきました。

 BNN新社から出す単行本のタイトルは『アホアホ本エクスポ』に決まりまし
た。デザインもぼくにやらせてもらえることになって、アホな感じというニュ
アンスを人に説明してやってもらうより自分でやった方が良いと思っていたの
で、それはとてもありがたかった。テキストは強調する部分を大きくしたいと
考えていたので、レイアウトしながらテキスト量を調整していきました。図版
もレイアウトしながら選んだので、本の制作とデザインを分けて考えるのでは
なく完全に同時進行でつくっていきました。

 本のデザインをするのは今回がはじめてだったので、完璧な出来ではありま
せん。はじめから完璧なデザインを求めてはいなかったとも言えます。どこと
なくユルい感じも含めてアホっぽくなるのがベストだと思っていました。結果
的に装丁も含めて、アホっぽいデザインになったんじゃないかと自分では思っ
ています。

 ブログを元にしてつくった本ではありますが、フォーマットが全然違うので
同じ本を紹介していても伝わり方は随分違うんじゃないかと思います。自分で
つくっていて発見することも多かったですね。この単行本のために、新たにた
くさん書き足しました。紹介したいアホな本はたくさんあったので、ネタに困
ることはありませんでした。バランスを考え て書き足したつもりです。だけ
ど今読み返すと、エロネタがちょっと多いかなとも思います。エロ関連の本は、
本当にアホなのが多いので、これでも削ったつもりなんですけどね。あと、ブ
ログにはなかったコラムも10編掲載し、常盤響さんへインタビューをさせてい
ただき、岡崎武志さん・近代ナリコさん&浅生ハルミンさん・どどいつ文庫さ
んへは原稿を依頼しました。これらは編集者さんのアイデアです。自分の好き
なようにやらせていただきましたが、編集者さんには要所要所で的確にアドバ
イスしていただいたり、いろんなアイデアをいただきました。

 ある程度時間的な余裕をもってつくったつもりでしたが、最後はバタバタと
してしまって、企画展に間に合わないんじゃないかと焦った時もありました。
なんとか間に合わすことができてホッとしています。一冊の本をつくるのって、
予想以上に大変なことなんだなと改めて思い知らされました。(つづく)

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■関西古本女子だより  頓花恵
(15)『年を歴た鰐の話』
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「いかん。分別がなければいかん。俺は、この蛸は食はぬぞ。」
餌が取れなくなって家族を食べようとした年寄りの鰐は一族から追放され、
居場所探しの流浪の旅に出ます。途中出会った蛸の女の子は親切で年とった鰐
に餌を探して運んでくれます。そんな優しい蛸の女の子に思いを馳せながらも
鰐は毎夜、蛸の女の子が眠りにつくたびに彼女の足を一本ずつ食べてしまうの
です。そして……。

レオポール・ショヴォ原作『年を歴た鰐の話』は初版昭和16年、山本夏彦の
処女出版本であり、長い間絶版の状態でしたがそんな「幻の書」も待望の復刊
となり手に取ることができるようになりました。美しい語感とリズム。若干24
歳にしての名訳。山本夏彦の生涯一貫した主張の原点ともいえる作品です。

毒言翁とも天下のへそ曲がりとも呼ばれた山本夏彦の随筆を読んでいると次
第にその叱責が心地よくてたまらなくなってきます。同じ主張の反復が頭と心
に響くのです。
そしてその悪言ともとれる文字の羅列が果たして本当にそうであったのかと
疑問に変わるのです。

当店はお昼12時30分の開店。開業当初は正午でしたがぐずぐずしているう
ちに時間が押してつい何分か遅れるようになりました。困ったものだと開店を
30分遅らせることにしました。今度は情けないことにずらした時間にも少しば
かり遅れてしまうのです。

「遅い! いつから待っていると思っているんだ!」「時間は守りなさい!!」
「一番最初のお客を大事せんか!!!」いつも怒って待っていてくださる一人の
お客さんがいます。相変らずのギリギリオープンですがその方の怒り顔を思う
と大慌てで店に向かいます。やがてこれは戒めであり偽りのない率直な叱咤の
気持ちだと分かりました。

時間励行、待ち構えて得意顔になっているとそのお客さんは「当たり前だ」
と云わんべくして店内に入られます。そして時に「結構、結構」と仰るのを聞
くと一際嬉しくなるのです。

年を歴た鰐とは山本夏彦本人ではないかという創作逸話もありますが、愛し
い蛸を食べたいと思った鰐は自分の気持ちに正直で、言葉を大切にした山本夏
彦の主張もまた真っ直ぐだからこそ読者の胸に響くのでしょう。

〈とんか・めぐみ〉神戸元町にてザックバランな古本屋「トンカ書店」をほぼ
無休で営業中。
12月で3周年を迎えることが出来ました。12/1〜12/25、昨年に引き続きク
リスマス絵本特集として古今東西の絵本500冊を放出いたします。絵本講座
も同時開催です。

トンカ書店
650-0011 神戸市中央区下山手通3-3-12元町福穂ビル2D
078-333-4720
http://www.tonkabooks.com/

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■音を探してページをめくる  貴島 公
(12)フォークソングはどこから来て、どこへ行くのか
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ピート・シーガー(矢沢寛・訳)『虹の民におくる歌』
社会思想社、2000年6月

 この本は、図書館で借りて、読んだ。著者のフォークソングシンガー、ソン
グライターのピート・シーガー自身が、日本語版への序文で、この本の値がは
ること、百部を図書館に寄贈したことを書いていることに免じて許してくださ
い……って、別にやましく感じる必要はないんやけどね。共同購入のようなも
のだし。と開き直るのもちゃうとは思いますが。

 値がはる(ちなみに税抜7,500円、頁数の問題ではないけれど、256頁)の
は、ひょっとしたら著作権料、使用料の問題もあるかもしれない。というのは、
この本、ピート・シーガーの自伝であるとともに、彼が歌い、伝え、作ってき
た歌を集めた歌集でもあるから。

 図書館本ということで、どきっとしたことがひとつ。ぱらぱらとめくってい
たら、一面に抹消線や印、メモなどの書き込みが! と思ったら、それは、日
本語版を作るにあたり、分量を原著の半分にしつつ、原著には載っていないが、
日本の読者に伝えたい曲や原著出版以降に作られた曲などを追加したため、ど
こを削って、何を追加したかを読者に知らせるために、原著の目次に訳者とシ
ーガー自身が書き込みをしたものをそのまま載せていたのだ。びっくり。よく
見ると、印刷されたものであることはすぐにわかったけど、それでも、校正の
直しが間に合わなくて、思い余ってそのまま急遽印刷所で差し替えたとか、そ
んなのではないかと思って、ドキドキしました。シーガーの自筆、てのはポイ
ントにはならないか、この本を読もうというひとには。

 歌集でもあると書いたけど、この本で、シーガーは、話題のおもむくまま、
歌の背景を語り、出会いの場面を思い起こし、起こした影響について話してい
く。おおまかには、1930年代に始まるシンガーとしての活動を、年代順に追
っていく構成になっているけれど、実際には思いが及べば、そのときに触れる
という形式で、これまだ自身もそのように書いているのでよいことにして、と
りとめがないと言っていい。でも、それがこの本を、辞典や教科書としてもも
ちろん「使える」とは思うけれど、それらにつきものの面白味のなさから救っ
ている。コンサートでのおしゃべりのようなもので、本人の口から、ひとつひ
とつの歌についての話が聞けるというわけです。自作解説の理想的な形のひと
つだと思う。そして、この形が成り立つのは、ピート・シーガーというひとが
「考えて」歌を作っていることの証でもある。

 中学一年の英語の最初の授業で、「花はどこへいった」を聴いた。塾の講師
からは「ウィ・シャル・オーバー・カム」を教わった。ポピュラーソングで英
語に興味を持ってもらおうという、まぁ、安易な作戦ではあるけけれど、選曲
からわかるように、わたしたちの教師は「そういう年代」のひとたちだった。
彼らは、わたしたちがやることにうるさく言ってきたり、時に自分たちの若い
頃を自慢気に語ったりしていた存在だったから、屈託がないわけではない。い
わゆる「フォークソング」はおとなしく、ありがちで、あまりおもしろくない
ものに思えたけれど、そこには彼らへの反発もあったかもしれない。いまでも、
たぶん、彼らと「フォークソング」に対する思いを共有することはできないだ
ろうし、若いひとが共感しているのを見ると、わたしたち(世代)の彼らへの
反発に対する反発が彼らへの共感につながるという不毛なサイクルのあらわれ
ではないかと疑ったりする。でも、どうせなら、そんな周辺事情からは離れて、
本人の話を、歌を聴いたほうがいい。反発も共感もそれからでも遅くない。本
人は、信奉者や敵対者が語るよりも、複雑で、一筋縄ではいかないはずだから。

〈きじま・こう〉説明業、趣味・読書と音楽鑑賞。
MDレコーダーが壊れてしまい、プレイヤーがパソコンと携帯音声ファイルプ
レイヤーのみに。部屋が片付いたら、オーディオ機器を新調しようと考えてい
るのですが、そうすると永遠に無理ということになりそうで思案中。

「モノノフォン」
http://homepage1.nifty.com/hebon/fhp/

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■〈畸人研究〉今柊二の読書スジ
(24)周恩来、クレンペラー、ドトールコーヒー
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それにしても小説を読む気がまったくしないのは一体どういうことだろう。
一日に新刊古書をあわせて数冊は必ず買ってはいるものの、ほとんどが実録も
の、ノンフィクション、エッセイなどばかりだ。そんなに小説がきらいでもな
く、30台前半まではかなり小説を読んでいたが、昨今は御無沙汰となってしま
ったから不思議なものだ。

ちなみに、今読んでいるのはまず高文謙『周恩来秘録 党機密文書は語る』
上・下(文藝春秋)。サラリーマンの派閥どころではない恐ろしい人間関係の
構造が本書からひたひたと伝わってくる。かなり話題になった本だがあらため
て読むとすごいなあ。そしてこれと同時に併読しはじめたのがヴィクトール・
クレンペラー『私は証言する ナチ時代の日記 1933-1945年』(大月書店)。
仏文学者で言語学者である著者のナチス時代を生き抜いた記録。日記本ですね。
これも激しさのなかでどう生きていくかという勇気の出てくる本。

そしてもう一冊が鳥羽博道『ドトールコーヒー「勝つか死ぬか」の創業記』
(日経ビジネス人文庫)。生まれてはじめて日経ビジネス人文庫なんて買った。
これは何もドトールの創業者にあやかろうというのではなく、単純にドトール
コーヒーが好きだからだ。そもそも高校3年のときに雑誌「ポパイ」でドトー
ルの存在を知り、上京してジャーマンドッグとブレンドコーヒーを飲むのが憧
れだったのだ。実際食べてみると、安くてシンプルなのにとてもおいしかった。
以来私のドトール人生が始まった。ところで、スターバックスのファンブック
などは何冊も出ているのにドトールはなぜないのか? 愛好家は多いはずなん
だがなあ。私はいつかドトールの本をつくりたいなと思いつつ、鳥羽氏のこの
文庫を読んでいるのだった。

〈こん・とうじ〉畸人研究学会
神奈川新聞にて連載している「かながわ定食紀行」が、神奈川新聞のかもめ文
庫にて、文庫本としてついに刊行! 値段は定食一回分です(笑)

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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(66)新年会で『サムライ』大合唱
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 正月2日の大泥酔による顔面負傷からようやく立ち直りかけていた1月25日。
私と編集Wクン、カメラのSさんは、双葉社『週刊大衆』の新年会に呼んでい
ただいた。

『週刊大衆』には今も連載を持たせていただいているが、最初の出会いは、『中
央線で行く東京横断ホッピーマラソン』の刊行を記念した重松清さんとのトー
クライブのとき。新宿のジュンク堂書店で1時間ばかりの会を終えると、最後
に恥ずかしながら拙著にサインする時間があり、そのとき、列に並んだひとり
の青年が、拙著をまとめて5冊買ってくれた。それが、『週刊大衆』編集部の
最若手Mさんだった。

後にこの5冊は、同誌の読者プレゼントに提供され、さらに、私には、『今
週のうまいもん』という連載の話が、同誌編集部最若手から2番目のSさんか
らもたらされ、現在は『飲めよ歌えよ酔人伝』と名をかえて継続していただい
ている。おふたりとも、『酒とつまみ』に早くから注目していてくれた人。浅
からぬ縁のある、ありがたい編集部なのだ。

 新年会当日。同誌で名物連載をもっている井崎脩五郎さんを囲んで神楽坂の
そば屋で一足先に飲んでいると聞いた私は、『酒とつまみ』2号のインタビュ
ーにご登場いただいた井崎さん会いたさに、いそいそと出かけた。夕方だとい
うのに、もうかなり飲んでいる。井崎さんも、周りの人も、実に楽しい酒。得
体の知れなかった(今もそうか)『酒とつまみ』が、どうやら1万部も印刷す
る雑誌になったことを、井崎さん、我がことのように喜んでくださる。それが
嬉しくて、私も、焼酎のそば湯割りをビシビシと飲む。

 残念なことに、その日、地元町内会の重鎮のお通夜がある井崎さんは、新年
会本番には出席できない。あとのことは丹下に任せますから、と言って、井崎
さんはタクシーに乗り込んだ。丹下さんとは、競馬新聞『ホースニュース馬』
で当時、本紙予想を担当していた丹下日出夫さんのこと。井崎さんとは先輩後
輩の間柄、私もお顔だけは、テレビの競馬解説を見て知っていた。

 さて、新年会本番。私たちは、ぐいぐいと酒を飲みながら、ときに、丹下さ
んに、「シンガリからの4頭をずばり当てたことがあります」などとくだらな
い話をするのだが、丹下さん、嫌がるどころか、実ににこやかに対応してくれ
る。井崎さんも、丹下さんも、ずば抜けてお人柄がすばらしい。だから、酒は
さらにさらに進む。

 そして2次会。会場がまた、実にすばらしいスナック。毎週の校了のあとに
は必ず編集者が集まって飲むという昔ながらの温かさを持った編集部だけに、
みなさんが行きつけにしているスナックの居心地も格別。その日は、別の出版
社の新年会流れの人たちも大挙して押し掛けていたのだが、他社の人がいても、
気取らず、威張らず、俺らのほうが飲むし、歌もうまいんだかんな、ってな感
じでぐいぐいと飲む。

 井崎さんから「あとを任された」丹下さんもすごかった。酔って歌って盛り
上げる井崎脩五郎の名代、ぬかりがあってはならぬとばかりに、我ら若輩を制
してマイクを握るや、歌うはジュリーの『サムライ』。♪片手にピストル〜、
心に花束〜、唇に火の酒〜、背中に人生を〜、ああ〜、ああ〜、ああ〜、ああ
あ〜♪ 絶唱なんである。

 すごい。おもしろい。腹が捩れる。そういう絶唱。競馬の解説もめっぽうお
もしろいが、丹下さん、酒も、酒場も、めっぽう上手なのだ。何回目かのサビ
の部分では、双葉社も、もうひとつの出版社も、みんなで合唱。私は、この光
景を録画して、次号『酒とつまみ』の閉じ込みDVD付録にできないものかと、
やはり絶唱しながら思っていた。

〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集長。
昨夜も泥酔で帰宅。でも、仕事がらみの酒であったから遊んできたのではない、
だからまだ仕事の連絡もできるはずだと自分に言い聞かせつつ、ある編集者さ
んに連絡をとった。で、今朝。ケータイに発信履歴はあるものの、何を話した
か覚えがない。やばい。すぐにまた電話をして「取材日程の報告をしたよね」
と聞くや、編集者答えて曰く「してないよー」。やばいです。
http://www.saketsuma.com

ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(75)茜新社の巻 顔や臭気を感じさせない無個性地味ビル
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事務所移転後も飯田橋駅を利用してたが、ほんの少し近くなるようなので、
最近は最寄り駅を水道橋駅に変更。西口を出て横断歩道を渡り、パチンコ「み
とや」と「ルノアール」の間の路地をを左に直進、突き当たりを右折、少年画
報社ビル先のあいあい橋を渡ると(下は日本橋川)、あっという間に秋田書店
倉庫前に(隣が築45年の我が三信ビル)。通勤の道順変えると、少し若返りま
すヨ!(ウソ)

「みとや」と「ルノアール」の間の路地を、途中で右折すると右手に居酒屋
「加賀屋」。突き当たりの広い道(ベースボールマガジン社と少年画報社が両
側に)を渡らずに右折すると、コミックハウス、茜新社、系列デザイン会社、
青い鳥の入居する、原島本店ビルが(1、2階に3社が。同ビルは7階建て。
千代田区三崎町3ー6ー5)。

 わずかに灰色がかった白っぽいビルは、正面の細かいタイルといい、黒の窓
枠といい、よくあるビルとしか表現のしようのない地味さ。同コンツェルン代
表の宮本正生社長は、少し健康がすぐれないとの噂だが、業績は相変わらず好
調と(うらやましい…)。ただ昔からコミックハウスグループは、編集者の顔
や臭気を感じさせないトコが、同社の“個性”というようなイメージだったか
ら、あるいはお似合いの御殿なのかも。

 ビルは逆L字型で、空いた右手に駐車場、その隣が古くからの酒屋「旭屋」。
近所の首都高下にある、7セントラルビルに遠山企画が入居してた頃は(80年
代半ば)、しょっちゅうカンビールを買いに。細い路地を隔てた角地には、全
造船会館があって、総評の左派系労組が多数看板掲げてたけど、ボロビルは昔
のまま、民間会社のモノに。隣組の東京アニメーター学院、そしてコミックハ
ウスグループといい、“プチ観光都市”水道橋は、シャレないで時代をドン欲
に取り込んでく感じが、悪くないよ。

 三たび「みとや」と「ルノアール」の間の路地に戻るが、右折せず直進する
と、完成直後には建築雑誌に写真が掲載されたに違いない、個性的な西洋タン
ス風のT氏邸。その左のAB・River水道橋ビル(4階建て)の3階には、
上野で火事に遭った後の、全盛期の東京三世社が、駅の反対側に自社ビルを建
てるまで、しばらく入居。

『SMセレクト』馬鹿売れ時代で、しこたま金をため込んだ時期。次のエピソ
ード、まだ本連載で書いてないと思うので(2度目だったらご免なさいヨ。何
せ初老ボケ男で)。80年前後、売れっ子エロ劇画家の間宮青児に原稿依頼する
が、どうしても承諾しない。妙にかたくななモノを感じ尋ねると、三世社の漫
画誌には描きたくないと。彼の師匠の青柳裕介は、メジャー化以前、『ヤング
コミック』(少年画報社)でエロい連載を。その参考に緊縛写真を見せてもら
おうと、2人で前出のビル時代の三世社を訪ねたら、けんもほろろな対応をさ
れたのだと。

 突然訪問した側が悪いと思う。えっと、どこ行った茜新社?
   
〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)、『出版業界最底辺日記 エロ漫
画編集者「嫌われ者の記」』(ちくま文庫)。1980年以降書き散らしたコラムを
まとめた『東京の暴れん坊 俺が踏みつけた映画・古本・エロ漫画』(右文書
院)が好評発売中。

なお、この連載に関しての批判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(た
だし、謝るとは限りません)。
mangaya@air.linkclub.or.jp
http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/

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[書評]のメルマガ vol.380
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■        vol.380
■■  mailmagazine of book reviews [ おかしな時代 号]
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[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。秋の古本イベント、たくさん。
★「関西古本女子だより」福島杏子(ちょうちょぼっこ) 
 →大阪と神戸の「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。
★「食の本つまみぐい」遠藤哲夫
 →引越しのため休載です。
*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
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★第2回 月の湯古本まつり 〜古本、沸いてます〜
月の湯は昭和8年創業。木造破風造り建築で、浴場には富士山のペンキ絵、床
は今ではめずらしい六角形のタイルを使ってある昔ながらのたたずまいの銭湯
です。現在は週3日の営業。そんな定休日の銭湯をまるまるお借りして、古本
市を開催。カフェスペースもご用意いたします。

■日時
10月11日(土)10:00〜18:30 
入場無料/雨天決行/当日入浴不可

■会場
月の湯  東京都文京区目白台3−15−7
地図はこちら:http://tinyurl.com/ytdlz9
月の湯の様子:http://www.bunny.co.jp/zousi/shop/04.7_15tukino.html

◎古本市(場所:女湯/風呂場と脱衣所両方、男湯/脱衣所)
■ゲスト参加者(9月14日現在)
西秋書店(神保町)http://www1.ocn.ne.jp/~nishiaki/index.htm
古本海ねこ(オンライン)http://www.umi-neko.com/
火星の庭(仙台)http://www.kaseinoniwa.com/
古書ほうろう(千駄木)http://www.yanesen.net/horo/
にわとり文庫(西荻窪)http://niwatorib.exblog.jp/
古本オコリオヤジ(林哲夫)http://sumus.exblog.jp/
善行堂(山本善行)http://d.hatena.ne.jp/zenkoh/
岡崎武志堂(岡崎武志)http://d.hatena.ne.jp/okatake/
古本けものみち(南陀楼綾繁)http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/
文壇高円寺(荻原魚雷)http://gyorai.blogspot.com/
ハルミン古書センター(浅生ハルミン)http://kikitodd.exblog.jp/
他、外市常連参加者予定

▼わめぞオールスターズ
古書往来座 http://ouraiza.exblog.jp/
古書現世(早稲田)http://d.hatena.ne.jp/sedoro/
立石書店(早稲田)http://tateishi16.exblog.jp/
ブックギャラリーポポタム(目白)http://popotame.m78.com/shop/
貝の小鳥(目白)http://www.asahi-net.or.jp/~sf2a-iin/92.html
琉璃屋コレクション(目白・版画製作・展覧会企画)
木村半次郎商店(文筆家・木村衣有子)http://mitake75.petit.cc/
m.r.factory(武藤良子・雑司が谷)http://www.toshima.ne.jp/~mryoko/
旅猫雑貨店(雑司が谷)http://www.tabineko.jp
リコシェ(雑司が谷)http://www.ricochet-books.net/
藤井書店(吉祥寺・名誉わめぞ民)
bukuぶっくす(「buku」・池袋)http://www.c-buku.net/
退屈文庫(退屈男・名誉わめぞ民)http://taikutujin.exblog.jp/

▼「本」だけじゃないのです!
刃研ぎ堂(包丁研ぎ) http://www1.tcn-catv.ne.jp/kai555/
古陶・古美術 上り屋敷(会場では特選ガラクタを販売)
          http://www.wakahara.com/agariyashiki/

▼カフェコーナー
男湯の風呂場はカフェコーナー。各種お飲物、軽食をご用意いたします。
乙女湯のたしなみ http://otomeyu.exblog.jp/
萬福亭 http://d.hatena.ne.jp/koshohoro/

主催:わめぞ http://d.hatena.ne.jp/wamezo/

★秋も一箱古本市2008
10月12日(日)11:00〜17:00
雨天の場合 10月13日(月祝)に順延

会場
光源寺  宗善寺  ライオンズガーデン谷中三崎坂

本が好き、本も好き
天高く馬肥ゆる読書の秋、「本と散歩が似合う街」谷中・根津・千駄木で、秋も
一箱古本市を行います。一人一人が「店主」となって、一日限り、一箱だけの
お店を開店。箱の中身は十人十色。本で埋まった箱もあれば、一風変わったも
のを売る箱もあります。あわせて、かんのん楽市や物怪図書館、街頭紙芝居も
登場!
本と人、出会いを探して、坂から坂への街歩きはいかがですか?

お楽しみイベント
光源寺
■かんのん楽市
古道具、雑貨の販売から、カフェ、刃研ぎまで、個性的なお店が集まります。
古本探しの合間にいっぷくどうぞ。

■日本物怪観光(ニホンモノノケカンコウ)提供『物怪図書館』
お寺の境内に忽然と現れた一日限りの物怪図書館。妖気漂う不思議な本が揃っ
ています。

■「じゃんぼ」の街頭紙芝居 13:00/15:00
紙芝居師じゃんぼによる懐かしの街頭紙芝居。ちびっこも泣いて喜ぶお楽しみ
クイズ、駄菓子の販売もあります。

■B−ぐる記念乗車券プレゼント
「芸工展2008」のパンフレットをお持ちの方、先着150名様に文京区コミュニテ
ィバス「B−ぐる」の記念乗車券をプレゼントします。

宗善寺
■TOKYOBIKEのレンタサイクル
1台につき3時間500円で、谷根千の街をすーいすい。(保証金5000円。返却
時に全額お返しします。台数には限りがあります。)

ライオンズガーデン
■大円寺の菊まつりはこちらからすぐ。
10月11日(土)、12日(日)菊人形の展示や縁日など。

芸工展
■秋も一箱古本市2008は芸工展に参加しています。
キーワードは、「まちじゅうが展覧会場」。http://www.geikoten.net/

最寄り駅
◎千代田線/千駄木駅、根津駅  ◎南北線/本駒込駅
大家さん、周辺住民の方々のご迷惑にならないよう、ご協力お願いします。

主催:不忍ブックストリート青秋部
後援:古書ほうろう/往来堂書店/オヨヨ書林
ブログ:http://d.hatena.ne.jp/seishubu/
お問い合わせ:akimo-hitohako@adagio.ocn.ne.jp

★第26回西荻ブックマーク
中央線の酒と薔薇と古本の日々〜古本酒場ものがたり〜
出演:狩野俊 角田光代

2007年10月12日(日)
場所:こけしや別館2階
16:30受付/17:00開演
¥1,500 定員100名

高円寺の知る人ぞ知る酒場、コクテイル。夜な夜な集まる常連のひとり、直木
賞作家の角田光代と店主、狩野俊による出版記念トーク・イベント。スライド
ショーによるコクテイルの変遷や角田さんによる『古本酒場コクテイル』の朗
読、出版記念の特製オリジナル・カクテルの試飲会など盛りだくさんの内容と
なっております。

★ジュンク堂書店池袋本店「JUNKU 連続トークセッション」
「おかしな時代『ワンダーランド』と黒テントへの日々」(本の雑誌社)刊行
記念
『ワンダーランド』と黒テントへの日々、そして「おかしな時代」を彩ったふ
つうではない人たち
津野海太郎 × 平野甲賀

2008年10月16日(木)19時より 

アングラ劇団旗あげのかたわら『新日本文学』で編集を学び、晶文社で雑誌み
たいな本を次々刊行。黒テントをかついで日本縦断のはて、幻の雑誌『ワンダ
ーランド』を創刊!
60年安保から東京オリンピック、そして70年前後の大学紛争まで、若者の文
化が台頭した「おかしな時代」を自らの体験に沿って描いた津野海太郎が、六
月劇場から晶文社まで、サブカルチャー草創期をともに歩んだ積年の相棒・平
野甲賀と語る。

「おかしな時代」を彩るふつうではない人たち
小野二郎、長田弘、藤本和子、村松克己、山元清多、岸田森、悠木千帆、草野
大悟、佐藤信、花田清輝、長谷川四郎、大西巨人、杉浦康平、平野甲賀、植草
甚一、片岡義男、小林信彦など。

■入場料 1000円(ドリンク付)
■会場 ジュンク堂書店池袋本店 4階カフェにて
■定員 40名(お電話又はご来店にてお申し込み先着順)  
■受付 お電話又はご来店(1Fサービスカウンター)にて先着順に受付。
※トークは特には整理券、ご予約のお控え等をお渡ししておりません。
※ご予約をキャンセルされる場合、ご連絡をお願いいたします。
お問い合わせ 池袋本店 TEL03-5956-6111

なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

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■関西古本女子だより  福島杏子
(14)時間の隔たり
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 都市生活をしていると、日々の仕事と家路への往復に追われる。年金、公務
員改革、汚染米といったニュースが連日流れ、地に足がついた生活とはなんな
のだろうかと頭には浮かぶものの、立ち止まって考えることもない。幸いにも
比較的長い夏休みをとることができるので、行ったことがない土地への旅を計
画する。それは、逃避行のようではあるけれど、日本国内のフェリーでいける
未知の土地をたいてい選ぶ。フェリーは日常を離れ、なぁんにもない海の中を
まっすぐに進んでいく。ついた先には、「伝統」というとあまりにも大げさだ
けれど、その土地ならではの郷土料理、習慣、祭りなどが根付く。同じ日本の
中で都市とあまりに違う側面にいつもハッとする。

 今年は、飛行場もないフェリーで25時間かかるという小笠原にむかった。小
笠原は、欧米系の移民が住んでいた過去もあり、戦争中には島民は内地へと強
制移住させられ、戦後はアメリカの占領地となった経緯があるということも今
回知った。そしていま、島の75%は新島民という元々島に縁もない人々が占め
ているという。だからなのか、かつて訪れた島のどこよりも歴史が分断してい
るようにも感じた。そのため、昔ながらの街並みだとか風習だとかを感じるこ
ともなかった。ただ、飛行機でどこでもひゅっと飛べる現代の中では、1週間
に一度程度しかやってこない船と共に生活がまわっているその島はとても異質
な空間として魅力的だった。

 大正時代にもそんな南方の島は観光地として雑誌などに広告が掲載されたそ
う。往復と滞在の旅程は10日間ほどで組まれていたとか。スキャンダルによっ
てすっかり人気を失った北原白秋は1914年に小笠原へ移住して数ヶ月生活を
したという。ちょうどほぼ時期を同じくして銅版画家の長谷川潔も「海岸の帆
船(小笠原島)」という木版画の作品を残している。長谷川潔が小笠原に行っ
たのかどうかは調べた限りではわからなかった。ただ、この時期にはるか遠く
に離れた南の土地への憧れは多くの人がもったようだ。

100年近くが経っても島への交通手段はなにひとつ変わらず、2000人が現在
生活する島には古本屋も本屋もない。商店には、数日遅れた日付の新聞が並ぶ。
船しかないという交通手段がもたらした時間の隔たりがこの島の歴史のひとつ
だろう。そして、なにより東京都のひとつを成していることも奇妙に感じた。
 
〈ふくしま・きょうこ〉
東京生活も早2年半。ねこが多く住む街に住まいを移しました。貸本喫茶ちょ
うちょぼっこでは、10月は、「古本と男子」の第二部を開催中。1969年から
1973年生まれの男子に古本をよりすぐっていただきました。大阪にお越しの
際にはぜひお立ち寄り下さい。

貸本喫茶ちょうちょぼっこ
〒550-0014 大阪市西区北堀江1-14-21 第一北堀江ビル4F
http://www.geocities.co.jp/chochobocko/
*営業日は、第1〜3週末です。 金18:00-21:00、土日 13:00-21:00

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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(65)新春・ズタボロの祝い酒
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 著者自らが返品引取りの悲哀を経験した2007年12月もなんとか暮れ、『酒
とつまみ』10号の配本も、ようやく落ち着いた。

 そして迎えた新春は、正月2日からラジオに出させてもらうという幸運に恵
まれた。コラムニストの勝谷誠彦さんが「コラムの花道」を担当する日だった
が、勝谷さんの勧めで、その前の時間帯に出演させてもらったのである。
 多少の慣れもあり、また、正月ということもあって、スタジオにカップ焼酎
など持ち込んで少しばかりアルコールが入っていたため、喋ること自体は無事
だった(と思う)。

 無事ではなかったのは、その後のことだ。出番を終えた勝谷さんとふたり赤
坂の街へ繰り出し、正月だというのに営業している店を見つけて飲み始めたの
は午後3時前くらいか。
 勝谷さんとは初めての酒だから、緊張して、ペースを同じに保とうと思った
のが間違いだった。なにしろ、早いのである。

 夕方には酩酊。番組の司会者である小西さんやスタッフの方々が合流してく
ださったときには、完全に酩酊しており、実は乾杯したことさえうろ覚えとい
う有様。プロデューサーのお財布を自分のカバンに入れてしまったり、帰路ど
こかで転び顔面に負傷をしたりで、とんでもないことになった。その詳細は繰
り返さないが、後から判明したことだけ、このタイミングで触れておきたい。

 酩酊状態でみなさんを迎えたときのこと。当時のディレクターさんが、仕事
を終えて最後に合流してくれたのだが、私は彼に、こう言ったというのだ。
「てめえ、オレの話がつまらねえってのか!」

 まったく記憶がない。少し慣れたとはいえ、ラジオの生本番という緊張状態
は、上がり症の私にはそもそも荷が重い。加えて何かおもしろいことを喋らな
くては出てきた意味がないという気持ちも強い。酔った挙句にそれが爆発した
ものと思われる。

 なぜディレクターさん相手にそれが出るかというと、番組の間中、ガラスで
仕切られたスタッフのスペースから、冷静に番組の進行を見ている人だからだ。
 私はバカだから、彼が大笑いすることを、どこかで望んでいて、そうでもな
いのかな、うまくいってないのかな、ということを、精一杯の緊張の中で思っ
ていたのだ。
 それが、酒で、爆発してしまった。なんという無礼。ラジオ出演は先方の好
意によるもの。私にとっては『酒とつまみ』を宣伝できる逃してはいけない貴
重なチャンスだ。それを、なんという無礼な結末にしてしまったことか。お詫
びのしようもない酒になってしまった。

 それから、もうひとつ。どうやって帰ったのか不明な私は、後日、領収書を
頼りにタクシー会社に連絡をした。すると、真相がわかった。一度乗った車を
降りて、車の前をふらふら歩くうちに転び、起きないので運転手さんが助けて
くれたということなのだ。その模様は昨今流行の事故モニターにちゃんと映っ
ているという。これも営業と思って出かけたのだが、我ながらひどい酒になった。

関係者の方々にお詫びしたい気持ちでいっぱいのまま、翌3日、フジテレビ
の『東京マスメディア会議』に出でいる自分を見てまたゲンナリ。アホづらし
てへらへらしている。
憂さを晴らそうと酒のコップを口元へ運ぶのだが、昨夜負傷した唇が腫れて、
痛い、痛い。俺はいったい、何をしているのだろう。
 
〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集長。
『酒とつまみ』11号がなんとか出まして、またTBSラジオ『ストリーム』に
出せていただき、上に書いたエピソードなどお話をし、改めてお詫びをしてき
た次第です。お酒はほどほどに。自らに言い聞かせつつ、連日連夜飲み続ける
バカ野郎でございます。
http://www.saketsuma.com

ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(74)情況出版の巻 みそ汁で加工したスペイン調ビル
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筆者が出勤前に毎朝寄る、高崎駅構内の「くまざわ書店」は、ヘンテコな雑
誌を平積みに。「ウニタ書店」でもあるまいに、『新世紀』(あかね図書販売)
がそう扱われるのは、大家のJR東日本高崎支社を陰で支配する、革マル系東
労組の圧力があるのは明白だ(こぶし書房の書籍もメートル単位で!)。事の
善悪はともかく納得。カルト系組織ゆえ、それなりの売上げも確保出来るのだ
ろう(『人間革命』や『聖教新聞』とは比較にもならんとしても)。

 他の『水声通信』『軍事研究』『月刊日本』、そして『情況』に至っては、
「???」。高崎周辺に、急に左右インテリが増えたとの噂も聞かない(現駅
ビルに改装される前も、他の書店が入居してたが、こぶし書房、あかね図書販
売の本こそ、靖国神社内遊就館書籍販売コーナーでの扶桑社同様、超VIP扱
いされてたが、他は並の品揃えだった)。

 70年代にもめったに手にしなかった、『情況』6月号を買ったのは春先(定
価1500円!!)。“緊急特集:『実録・連合赤軍』をめぐって”が目的。本畑
の常連、塩見孝也、植垣康博、荒岱介らのエッラソーな屁文には生ゲロたっだ
が、当時の無名活動家のつづる、森恒夫、永田洋子の横顔は新鮮な不快さだった。

『情況』の発行元、情況出版は千代田区西神田3ー1 ウィンド西神田ビル501
号(関連版元、世界書院も)。かつて本欄でも取り上げた、専大出版会と道を
隔てたトコ。斜め後ろには、これまた2回も取り上げた、あかね書房が入る千
代田ファーストビル南館。首都高速よりには、同じく使用済み(コンドームじ
ゃねえ!!)朝日出版社も(要するに漫画屋の事務所の近所なので、安易にシ
ラミつぶしに素材に)。

 7階の同ビルは、正面がオレンジ。塗りっ放しで表面がザラついた、新聞紙
を広げた位の大きさの、タイル状の壁面が超安っぽい(側面は黄色で、ケーハ
クさをよりプッシュ)。入ると床は黒っぽいが、壁はまたもやイエロー。ビッ
クリなのは、エレベーター前のアーチ型の門。茶色のブロックで固められてい
る。つまりガウディ、いやスペイン風とでも言うのか?(何となく闘牛が突進
して来そう…)。

 ガウディと言ったが、この南欧風と言うか、みそ汁で加工したスペイン調ビ
ル、奇形っぽさも確かに。背後を日本弘道会ビル、左手を本造廃屋に囲まれて
るせいか、ビルの形がすっごくいびつ。玄関から右手に、例のアーチをくぐる
とエレベーター。左手奥には非常階段が。いずれの壁にも斜体。四方から圧迫
するゆがみは、俺のようなナイーブな神経の者には耐えられない。ドイツ表現
派映画の代表作、『ガリガリ博士』の登場人物になったような気分。

 日本一長い編集後記でも知られる『情況』編集部の皆さん、神経を病まない
ように注意を。1階のそば屋「ひかり」は、味はともかく量の多さで有名。た
だ経営者のあんちゃん、従業員を邪険に扱いすぎ。組合結成されるかも?
  
〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)、『出版業界最底辺日記 エロ漫
画編集者「嫌われ者の記」』(ちくま文庫)。1980年以降書き散らしたコラムを
まとめた『東京の暴れん坊 俺が踏みつけた映画・古本・エロ漫画』(右文書
院)が好評発売中。

なお、この連載に関しての批判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(た
だし、謝るとは限りません)。
mangaya@air.linkclub.or.jp
http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/

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[書評]のメルマガ vol.376
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■         vol.376
■■  mailmagazine of book reviews  [ 夏の終わりに 号]
■■------------------------------------------------------------
[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。展覧会の情報など。
★「関西古本女子だより」頓花恵(トンカ書店) 
 →大阪と神戸の「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「音を探してページをめくる」貴島公
 →音楽サイト「モノノフォン」の主が、音とテキストの関係を考察する。
★「〈畸人研究〉今柊二の読書スジ」
 →西日本出身者にはきっとわかる「大阪」という町の位置とは。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。
*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
-------------------------------------------------------------------
★秋も一箱古本市
天高く馬肥ゆる読書の秋、「本と散歩が似合う街」谷中・根津・千駄木で、
秋も一箱古本市を行ないます。一人一人が「店主」となって、一日限り、一
箱だけのお店屋さんを開きます。一箱古本市は、春秋合わせて通算7回目。秋
も一箱古本市は、3回目の開催となります。

2008年10月12日(日)11:00〜17:00
雨天の場合は13日(月祝)に順延

現在、出店する店主さん募集中。詳しくは下記をご覧下さい。
http://d.hatena.ne.jp/seishubu/

★米子でも一箱やります!
 山陰随一の文化都市、米子市でも一箱古本市が行なわれます。近県の方は
ぜひご参加ください。「店主さん」も受付中。

第2回 KIHACHI祭り in米子
米子・まちなか一箱古本市
            
日時:平成20年9月27日(土)午前10時〜午後3時
場所:本町通り商店街(戸板市)〜笑い通り商店街(笑い市)
本部:今井書店/青杏文庫2階
 ※イベント終了後、3時30分より今井書店青杏文庫2階にて
  南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)氏のミニトークショーを行います。
出店無料・ミニトークショー入場無料!

お問い合わせ・出店のお申しこみ
米子・まちなか一箱古本市プロジェクト/夢蔵プロジェクト
http://yhitohako.exblog.jp/
http://yumekura.exblog.jp/
担当:桝井(090ー7127ー6689)
田中(090−2805−2259)
E-MAIL ta-na-ka@imail.plala.or.jp
    ファックス(0859)22−5592

★古書ほうろうでトーク&ライブ、三連発
 千駄木の〈古書ほうろう〉で10月にトークやライブのイベントが続きます。

その1 高平哲郎 トークショー 
日時 10月4日(土)15時〜 
出演 高平哲郎
料金 1000円

その2 芸工展2008 参加企画
寒空はだか ワンマンショー
日時 10月18日(土) 開場19:00/開演:19:30
出演 寒空はだか(歌うスタンダップコミック)
料金 2000円

その3 『ぐるり』プレゼンツ
南陀楼綾繁のトーク十番勝負6
ライブ&トーク ふちがみとふなとと吉田ハウスレーベルの18年

出演 ふちがみとふなと(ミュージシャン)
南陀楼綾繁(ライター・編集者)
入場料 予約2000円/当日2500円

予約方法 
古書ほうろうにて、メール、電話、店頭で受付
(メールでお申し込みの場合は、件名に「10月◎日 イベント名」を入れてください
お名前、人数、当日ご連絡の取れる電話番号を、お書き添えください)

★「〈熱き時代〉の新宿、新宿の〈いま〉」

2008年9月16日(火)〜11月30日(月)
紀伊國屋書店 新宿本店 3階・5階・6階
紀伊國屋書店 新宿南店 5階・6階

昭和2年以来、新宿の地に店を構え続ける紀伊國屋書店新宿本店が、今改めて
「新宿」という街の持つ「場の力」に迫る大ブックフェア!

・じんぶんや小冊子特別版を限定2000部配布!
《寄稿:本間健彦・田家秀樹・唐十郎・若松孝二・宇野亜喜良・四谷シモン・
秋山祐徳太子・赤瀬川原平・森山大道・中平穂積・菊地成孔・吉田豪・平沢剛・
鴻上尚史・マキノノゾミ・横内謙介》
・上記小冊子寄稿者の著作ほか新宿文化関連書籍を大展開!
・『田辺茂一と新宿文化の担い手たち』(1995年新宿歴史博物館開催の特別展
図録)の限定復刻を販売!
・「わめぞ」(早稲田・目白・雑司が谷の古書店街)による60〜70年代刊行古
書の販売!

★『酒とつまみ』11号出来!
 みんな待ってる『酒とつまみ』最新号が出ました。「酔客万来」は安部譲二
さん。ほかに「山の手線一周ガードした酩酊マラソン」「思いつきレポート
つまみで研究したっていいじゃないか」など、いつも通りの内容です。381円。
そろそろ各書店に並んでいる模様。

★『球体3号』(ヨシモトブックス発行ワニブックス発売)刊行記念トークシ
ョー

「球体ってなに? 立花文穂と本のはなし」
立花文穂責任編集『球体』。「『球体』は、美術、写真、ことば、…さまざま
な表現をぐちやつとまるめた紙塊である。」
文字や本を素材やテーマにしたアーティストと、アートディレクター、作家
が、雑誌『球体』を中心に語り合う本の話。

出演
立花文穂(アーティスト)
有山達也(アリヤマデザインストア代表)
石田千(作家)

10月3日(金)18:00〜20:00(開場17:45)
東京堂書店神田本店6F
参加費:500円(要予約)

ご予約は、電話(03‐3291‐5181)またはメール(tokyodosyoten@nifty.com)
にて、イベント名、お名前、お電話番号、参加人数をお知らせください。
尚、10月2日以降は、電話受付のみとなります。

東京堂書店神田本店
〒101‐0051 千代田区神田神保町1‐17
TEL03‐3291‐5181(代表)
http://www.tokyodoshoten.co.jp/

★あがた森魚に捧ぐ展覧会

60歳の誕生日を記念して、展覧会を開催いたします。26名のアーティストに
よる、あがた森魚に寄せる作品展示の他、あがた森魚ライブも開催いたします。
ライブのご予約は、ビリケンギャラリーまでお電話にてご連絡ください。

《あがた森魚 惑星漂流60周年展》
会期 2008年9月20日(土)〜10月1日(水)

参加作家(敬称略 五十音順)
荒井良二/井口真吾/石塚公昭/井出情児/宇野亜喜良/川上和生/川上隆子
/川口喜久雄/くるはらきみ/桑本正士/沢田としき/七戸優/城芽ハヤト/
鈴木翁二/高橋キンタロー/中野真典/花輪和一/原マスミ/ヒロタサトミ/
牧野良幸/三橋乙揶/森雅之/ヤギヤスオ/山田勇男/山福朱実/吉田光彦

《あがた森魚 惑星漂流60周年! ライブ》 
日時/9月25日(木) 夜7時より 入場料/1500円 定員/30名 要予約 
会場・問合せ/ビリケンギャラリー 電話/03-3400-2214

なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

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■関西古本女子だより  頓花恵
(13)『夏のおわりのト短調』
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店を開けて間もなくして通ってくれるようになった男の子がいます。店の真
向かいのアパートに住んでいて、顔を覚えるようになり一言二言増えるように
なりました。
その間に長かった髪が短くなったりまた長くなったりそして坊主頭になった
りするのをカウンター越しに眺めていました。時には岡山の実家で取れたトウ
モロコシやお母さんが編んだレースのドイリーなんかを手渡してくれることも
ありました。

閉店間際の店内にフラっといつものようにやってきて本を選んでお会計、そ
して「明日引越しすることになりました」という突然の報告。実家に戻るそう
なのです。
進学や就職、転勤などでお別れの挨拶を受けるのはやっぱりいつも慣れませ
ん。いつも見送ることしかできないのです。
身体に気をつけて元気でね。弟みたいなそのお客さんに声を掛けてから、引
越しの道中で読む1冊を選んでもらいました。
彼は遠慮しながら売価300円の大島弓子『夏のおわりのト短調』を手に取り
ました。
 
 この作品は不安定な人の心を描いています。平和に暮らしてきた主人公の視
線の先に浮上した背けたくなるような出来事。認められない受け入れられない
事実。それでも物語の主人公はその後も生活を終りまで繰り返すでしょう。

友人の初盆を迎えました。彼女とは古本屋で偶然に出会い、共に古本屋を巡
り、遠く離れても互いに読んだ本の感想を送り合う間柄でした。いつかレンタ
カーを借りて全国の古本屋さんを端から端まで巡りたいなぁというのが手紙の
結びの常でした。

夏はおわりました。永遠の別れは孤独で怖い。

冒頭の彼は店を後にする前にお尻のポケットから小さな愛らしいトランプを
取り出して置いてゆきました。実家に戻ったら話によく出た手芸好きのお母さ
んに編物を教わるのかもしれません。彼にも私にも物語の主人公にも季節は再
び巡ってくるのです。

〈とんか・めぐみ〉神戸元町にてザックバランな古本屋「トンカ書店」を営業中。
イベント案内:10/15〜10/30「カフェアズマの古本市」
神戸元町の喫茶店「CAFE AZUMA」の店主、東有治さんによる古本市です。
「CAFE AZUMA」さんらしい映画関連モノ以外にも推理小説、SF小説も並ぶ予定です。

トンカ書店
650-0011 神戸市中央区下山手通3-3-12元町福穂ビル2D
078-333-4720
http://www.tonkabooks.com/

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■音を探してページをめくる  貴島 公
(11)ちはやふる地下のタナカミチ(注)
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ジュリアン・コープ(奥田祐士・訳)『ジャップロック サンプラー』
白夜書房、2008年8月

「戦後、日本人がどのようにして独自の音楽を模索してきたか」を副題とする、
おそらく日本語は読めないイギリス人が書いた「日本のロック」の研究書。著
者は70年代の終わり頃に活動し始めたミュージシャンで、同世代の中では渋め
のバンドで活動したのち、ソロで活動している。表通り的ではなかったものの、
ポップな作風で、王子っぽい人気もあったのだが、花輪和一かよと思わずツッ
コんでしまった亀男ジャケのレコードを発表したあたりから、作風も含めて、
ずぶずぶと酩酊感漂うあやしいかんじになり、現在に至る。『クラウトロック
サンプラー』というドイツのロックについての研究書も出しており、本書はそ
の第二弾というところ。クラウトにしてもジャップにしても侮蔑的な意味合い
があるのが気になるけれど、そこは措く。サンプラーの語がそのままではピン
とこないのだけど、検証というかんじでいいのかな。

 取り上げられているのは、日本のロックといっても、選りにも酔って、いや
選って、正史なんてものがあったとしても、おそらくそこには登場しないと思
われるものばかり。GSブーム後に英米産作品に比肩しうる本格派を目指した
ニューロック(最近復活したらしいフラワー・トラベリング・バンド、スピー
ド・グルー&シンキ)、徹底したアンダーグラウンド(裸のラリーズ)、前衛
派(一柳慧、タージ・マハル旅団、佐藤允彦)、「天井桟敷」の舞台音楽(J・
A・シーザー)、瞑想志向初期段階(ファー・イースト・ファミリー・バンド、
マジカル・パワー・マコ)など。「ディスク・ユニオン」っぽいと言えなくも
ないけど、著者の嗜好が一貫していることはよくわかる。一貫しすぎていて、
困るのである、この本は。

 本国ジャパンにおいても、こうした音楽についてのまとまった研究は少ない。
ので、勉強になるかと言えば、ならない。著者は、自分を魅了する日本の音楽
の一部について来歴を明らかにしようとして、副題が示すように、戦後の日本
史を辿り直す。本書を読むまで知らなかったのだが、著者には歴史マニアの一
面があり、その方面の著作もあるらしい。そして、歴史マニアの常としてと言
ったら失礼になるかもしれないけれど、断片的な知識やてがかりから全体を構
想したり、知られざる繋がりを発見することに魅入られている。その結果、日
本語が読めないという不利を思えば致し方ないのだが、誤解や読み間違いにも
とづくゴーインマイウェイな解釈が頻出し、時にそれはほとんど妄想と化して
しまっている。妙に詳しいのがまた困ったところで、えっそやったん? と一瞬
思ってしまうような新事実が明らかにされていたりもするのだが、信用しよう
にもできない記述が目白押しで、なんとも。加山雄三の若大将シリーズが若い
将軍を主人公にした時代劇とされていたり、永島慎二『フーテン』を原作とし
て『男はつらいよ』が作られたとする件りがわかりやすい例。著者はふざけて
おらず、大真面目に研究成果としてそのように書いている。リアル『ちはやふ
る奥の細道』、本当にあった『素晴らしき日本野球』なのである。

 翻訳は、誤解や漢字の読み間違いまで、あえてそのまま残し、訳注で訂正す
るという方法を取っている。裏を取るというよりも、ほとんど否定に終始して
いる、著者の(妄想による)ヒーロー的レコードプロデューサー、折田育三氏
へのインタビューも追加されている。誤記は細かなレベルにまであり、全体と
しても妄想暴走気味なので、正しながら翻訳することは不可能と判断されたの
だと思うけど、それにしても忍耐が要っただろうなぁと想像する。律儀の一言
に尽きる。意地になってるでしょと注に話しかけたくなるくらい。

 そんな無茶苦茶な本だけど、トンデモ本として哂うことにはためらいがある。
著者の日本のロックへの過剰な愛情に敬服しているからではない。レコードを
聴いて、制作スタッフの名をチェックしたり、インタビュー記事を読んだりし
て、自分の中に音という言葉に置き換えられないものの地図や歴史を描くこと
は自分でもやってることではないか。とすれば、似たようなものなのではない
か、と。著者にとって、触れることのできる「事実」は音楽そのものでしかな
い。歴史マニアとして語るときに、音楽への評価をもとにして、人間関係や史
的な影響関係を捏造して語るのは困ったものだけど(特に沢田研二への評価は
ひどく、誹謗に近い)、音楽への評価をなによりも優先する姿勢は潔い。わず
かなてがかりを元に、あれこれ探っていくのは愉しい。反省させられつつも、
あっぱれとも思う。

(注)田中未知はJ・A・シーザーとは別人。というか、そもそもジュリアン・
コープは本書でそんなことは言っていない。

〈きじま・こう〉説明業、趣味・読書と音楽鑑賞。
 この夏、唯一、聴きに行った「夏フェス」(だったのか?)で初めて聴いて
感激したウリチパン郡。むかしのスティーヴ・ヒレッジが好きなのではと思わ
せるところが随所にあったけれど、これも思い込みかも。

「モノノフォン」
http://homepage1.nifty.com/hebon/fhp/

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■〈畸人研究〉今柊二の読書スジ
(23)田辺聖子と大阪の昔
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年に数回大阪に行く。もともと四国から出てきた私にとっては、東京や関東
の人と大阪の「見え方」は違うところがある。故郷の四国から東の方向を眺め
たとき、まず「大阪」という巨大な山があって、その向こうにある「東京」と
いう巨大な山がよく見えないほどであった。それほど大阪の存在は大きくて、
大学進学においても、関西の大学に行く連中と関東に行く連中はほぼ均等な割
合だった。

私自身は、東京という山にやってきて、20年以上経つわけだが、それでも大
阪という存在は私のなかでとても大きい。四国は大阪の影響も強いので、大阪
にくると、「帰ってきた」感覚もあり、さらに「都会」に出てきた感覚もある
のだった。このあたりの心境は西日本出身者にはわかってもらえる気がする。

 さて、大阪という大都会を理解しようとするとき、文学作品を読むのはとて
も素晴らしいことで、一時期は山崎豊子の『暖簾』『花のれん』などを読んで
船場や難波の「感じ」がかなりつかめたけれど、ここ最近は田辺聖子だ。ふと
したきっかけで『道頓堀の雨に別れて以来なり』という川柳作家の岸本水府の
伝記巨編を読み上げて以来、もう完全にやられてしまった。現在は中公文庫で
上中下の3巻もので出ていて、近代大阪の人々の流れもとてもよくわかる。岸
本さんは「番傘」という川柳雑誌も出していて、ミニコミを出しつづける苦労
も私がシビれた原因だったのかも知れない(笑)。

そして、この巨編を読み終えた後にとりかかったのは『楽天少女とおります−
私の履歴書』。自伝だが、これまた大阪の戦前の商家の雰囲気がよくわかるし、
写真が豊富なのもイイ。応召する店の人を囲んで洋食を食べている写真などは
特にステキだ。ビフカツがテーブルに並んでいて、今以上に大阪ではビフカツ
は市民権を持っていたのだなあ。この『楽天少女とおります』は、NHKのド
ラマ『芋たこなんきん』のアナザーバージョンですね。で、これを読み終えた
とき、『私の大阪八景』もイイと知人から聞いてこれを現在読書中。さらに終
わったら、『ほっこりぽくぽく上方さんぽ』を片手に大阪に出かけようと思っ
ている今日この頃であった。

〈こん・とうじ〉畸人研究学会
神奈川新聞にて連載している「かながわ定食紀行」が、神奈川新聞のかもめ文
庫にて、文庫本としてついに刊行! 10月中旬です。値段は定食一回分です(笑)

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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(64)著者自ら返品引取りの悲哀
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 2007年12月は驚異的な忙しさだった。なに、飲まなければ忙しくなかろう。
と言われればそれまでのことですが、『酒とつまみ』11号発行後イベントの直
売後には、少しばかり飲み会も続いた。

 最初は、創刊号からお世話になっている大日本印刷の担当者さまとの忘年会。
創刊10号の記念なので、創刊メンバー全員が揃っての飲み会で、ぜひにと参加
をお願いした。新宿3丁目のうまい居酒屋でごくごくと飲み、創刊号以来のあ
れこれを話し、飲み会終了後にもまだ足りず、一人でバーへ行って酔いつぶれ
た。嬉しい酒なのだが、なぜか酔いつぶれた。
 その翌日も相当に深い飲み会。翌々日も西日暮里で2軒ガツンと飲んで、翌
々々日は日曜日だったが、その日のメモの冒頭はひと言、「限界」と書いてある。

 その日、昼過ぎからなんとか立ち直って仕事場へ車で出向き、11号や単行本
をかなりの分量積み込んだ。東京郊外の書店への直取引分くらいはなんとか自
分で営業しようと考えたからだ(というのも最近ではWクンとN美さんになに
もかもまかせっきりで名ばかり編集人に加えて名ばかり発行人名ばかり営業マ
ンに成り果てていたから)。

 まず国立へ向かって納品し、立川の混雑を敬遠して三鷹へ。ここで納品した
駅前の書店で、
「いつもご苦労さま」
 と、声をかけられた。これが、妙に嬉しかった。創刊して6年。以前は頻繁
に書店に足を運び、こうした言葉のやり取りも多かったのだが、このところ、
ご無沙汰をしていた。できる限り早く納品して、体を休めたい。それが本音だ
ったのだと思う。そこに優しいひと言をかけられて、創刊からしばらくの間の、
直営業の喜びを呼び覚まされた。

 しかし、営業回りは楽しいばかりではない。数日後の阿佐ヶ谷でのこと。新
規納品分と引き換えに売れ残りを引き上げてくるわけだが、そこには10号に加
えて単行本2冊がある。店長さんは言った。
「『酔客万来』はいいねえ。これはいける。まだ預かっておいてもいいです。
でもね、『ホッピー』動かないねえ。持って帰って」
 ああ、「ホッピー」とは私の唯一の単行本『中央線で行く東京横断ホッピー
マラソン』のことである。
「動かないっすか」
 と食い下がる私に店長はかぶせる。
「なあんでかなあ。昨日ホッピー飲んでみたんだけど、わかんないんだよね」
 飲んでみたってわかんないでしょ。
 でも、突っ込む気力もない。なにしろ私は著者である。著者自らが返品を受
け取るのである。切ない。これこそ悲哀だ。

 私は、「ホッピー」の入った紙袋を提げ、中央線に乗るのだ。
 駅頭で独語する。なんで売れないんだろう。
 私はその理由を、ホッピーをがぶ飲みしながら考えることにして、仕事場へ
は向かわず、下り電車に乗り込むのだった。

〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集発行人。
縁あってスコットランドへ行ってまいりました。折悪しくというべきか幸運と
いうべきか、『酒とつまみ』11号入稿3日後の渡英で、機内で校了用のゲラ読
みに終われ、帰国後は仕事場へ直行、校了をしてからWクン、Sさんと大日本
印刷近くの『三晴』で飲み、吉祥寺『ハバナムーン』でさらに飲み、明け方帰宅。
時差ぼけもあって体調ボロボロですが、11号、やっと出ます。長らくすみませ
んでした。
http://www.saketsuma.com

ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/
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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(73)赤城スポーツ新聞社の巻 誤字、脱字も減る落ち着いた2階建て
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 皆様知っての通り、「ブックオフ」は駅前店舗にゃロクなのない(携帯セド
ロー人種の社交場)。コレが地方になると、幹線道路沿いという事に。埼玉の
国道17号線沿い、つまり上尾、桶川、深谷なんて本当にひどい。武装SSが電
撃進行後に、我が大日本帝国陸軍第731部隊が1カ月駐屯。最後にチェチェン
内戦を生き抜いた、精鋭ロシア軍が徹底掃討した、美女の特産で知られる秋田
県と言った惨状(形容がくどかった?)。

 群馬県内も事情は同じで、特に高崎市内の店舗は最低最悪。隣接する前橋は
なぜかまだ比較的マシ。時々行くのが、両毛線前橋大島駅から徒歩20分くらい
の、前橋広瀬店(南陀楼綾繁編集長も数年前に巡幸した、この世の果ての中型
店。子供用中古品売場も併設)。途中にアパートが急増中だが、かつては畑の
中の工場地帯(かつては桑畑で、萩原恭次郎がどどめを喰ったか?)。

 同駅前広場から徒歩5〜6分(不動産屋の口上なら2〜3分)のトコに、赤
城スポーツ新聞社との看板を出した建物が(前橋市天川大島町1203-6)。クリ
ーム色の2階建て。一応鉄筋らしいが、全体は地方の工務店といった感じ。た
だ敷地は広く、駐車場も6〜7台は優にOK。裏庭には凝った枝振りの松も。
豪華御殿と言う訳ではないが、落ち着いたたたづまいが渋い。こういう環境で
編集作業すれば、誤字、脱字も減るだろう。

 白い看板にピース紺で社名がクッキリ。その上に“オート 競輪 競馬”の
黄赤ベタ文字が、3行。ウ〜ム、困ったぞ。一水社のタコ多田編集局長(エン
テツ爺さんの昼酒仲間)と違い、俺には一切のギャンブル知識がない。「けど
まあ、ネットで調べれば刊行物くらいは…」と、半月ほど前に広瀬店に行く途
中、社屋前で外観等をメモった時には軽く考えていた。

 が、池袋「古書往来座」での外市の疲れもいえないのに、南陀楼編集長から
矢の催促。仕方なく検索するが、住所他のデータばかりで、ギャンブル新聞
(推測)の固有名詞が出て来ない。「地方公営ギャンブルは火の車だと言うし、
まだ本当に刊行してるの?」、てな疑問もわくが、あんだけ落ち着いた、しか
も活気ある社屋を維持してるのだから、刊行し続けてるはずだ(多分)。

 1件も出版物の固有名詞を出せなかったのは、本連載でも初めてだと思うが、
まあいいじゃないのさ。版元はちゃんと存在してんのだし。それより何より、
HPの設置どころか、臭わせもしないトコが、どっかすがすがしい。こういう
版元様もあっていいんじゃないの!(というか、主要客のオヤジ共には、ネッ
トなど無縁?会員制の、有料極秘情報とかも配信しとらんの?)。

 右隣は、高山製麺の工場。群馬は昔からそばよりうどんがメイン。冬場はみそ
汁代わりにお切り込みを作り、飯のおかずにも。もう40年くらい喰ってねえな。
   
〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)、『出版業界最底辺日記 エロ漫
画編集者「嫌われ者の記」』(ちくま文庫)。1980年以降書き散らしたコラムを
まとめた『東京の暴れん坊 俺が踏みつけた映画・古本・エロ漫画』(右文書
院)が好評発売中。

なお、この連載に関しての批判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(た
だし、謝るとは限りません)。
mangaya@air.linkclub.or.jp
http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/

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[書評]のメルマガ vol.372
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■        vol.372
■■  mailmagazine of book reviews [ 物書きの流刑地 号]
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[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。久々にコミケに出ます。
★緊急寄稿「わめぞ文庫、創刊す」武藤良子
 →雑司が谷の暴れん坊イラストレーターはいかにしてこの本をつくったか。
★「関西古本女子だより」次田史季(ちょうちょぼっこ) 
 →大阪と神戸の「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「食の本つまみぐい」遠藤哲夫
 →〈大衆食堂の詩人〉エンテツが料理文化史の重要本を紹介します。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。
*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
-------------------------------------------------------------------
★コミケに南陀楼のミニコミだします
 8月17日(日)開催のコミックマーケットにて、10年ぶりにミニコミを
発売します。出店場所は、「西 な―15b」けものみち計画です。

けものみち文庫1
積んでは崩し 南陀楼綾繁のブックレビュー&コラム1999〜2004
A5判・88ページ・表紙カラー
定価1000円+税

けものみちに埋もれていた掲載誌やパソコンのハードディスクから発掘され
た、南陀楼綾繁の書評や本に関するコラムのテキストを集成。もちろん全文単
行本未収録。

 なお当日は、わめぞ文庫1『大阪京都死闘篇 武藤良子関西旅行記』や、
和光大学学生によるミニコミも販売します。ぜひお出でください。

★『ぐるり』プレゼンツ 南陀楼綾繁のトーク十番勝負 
・その4 声に出して読みたい盗作〜『〈盗作〉の文学史』刊行記念〜

出演 栗原裕一郎(ニュー評論家)
南陀楼綾繁(ライター・編集者)
ゲスト 安藤礼二(文芸評論家)
朗読  佐藤わこ(詩人)

井伏鱒二、庄司薫、大藪春彦、山崎豊子、立松和平……。著名作家をめぐって
囁かれてきた〈盗作〉疑惑を徹底検証した、『〈盗作〉の文学史 市場・メデ
ィア・著作権』(新曜社)の著者・栗原裕一郎さんをお招きして、このスキャ
ンダラスにして業の深い問題を語り合います。『神々の闘争 折口信夫論』
(講談社、芸術選奨新人賞受賞)の安藤礼二さんもゲストとして参戦。オリジ
ナルと盗作を並べての朗読タイムなど、底意地の悪いトークになりそう!? 

日時 2008年8月18日(月) 18:30開場/19:00開始
場所 古書ほうろう
文京区千駄木3-25-5 1F
電話 03-3824-3388
http://www.yanesen.net/horo/
入場料 800円(要予約)

予約方法 
(1)ビレッジプレス「ぐるり」編集部
info@village-press.net 03-3928-7699
(2)古書ほうろう 店頭受付のみ

・その5 映画本に憑かれて

出演 高崎俊夫(編集者)
南陀楼綾繁(ライター・編集者)

『月刊イメージフォーラム』の編集部を経て、フリーランスの編集者として、
『ものみな映画で終わる 花田清輝映画論集』(清流出版)、山崎忠昭『日活
アクション無頼帖』(ワイズ出版)などを手がけている高崎俊夫さんに、「映
画本」編集の面白さと厳しさについて、たっぷりと伺います。あの映画評論家、
この俳優の裏話が聞けるかも。

日時 2008年9月12日(金) 18:30開場/19:00開始
場所 対抗文化専門古書 気流舎
世田谷区代沢5-29-17 飯田ハイツ1F
電話 03-3410-0024
http://www.kiryuusha.com/
入場料 800円(予約優先、15人限定)

予約 ビレッジプレス「ぐるり」編集部
info@village-press.net 03-3928-7699

★倉本四郎をめぐるトーク
『ポスト・ブックレビューの時代』上巻(右文書院)刊行記念
「倉本四郎の言葉 「週刊ポスト」の書評と時代」
出演:枝川公一・松山巖
進行:渡邉裕之

9月11日(木)18:00〜20:00(開場17:45)
東京堂書店本店6階 参加費500円(要予約)
*お問い合わせ・ご予約は東京堂書店03-3291-5181
または、1階レジまでお尋ね下さい。

★森岡書店の展覧会とトーク
・Peecoファッション画展
8月18日(月)〜8月30日(土)
13〜20時 日曜休み

Peeco
1945年、横浜生まれ。ファッション評論家。
1975年、ラジオで双子のコンビ「おすぎとピーコ」としてデビュー。ファッ
ション評論家としてテレビ、雑誌、新聞など数々のメディアで活躍中。2004
年にはアルバム「“恋は一日のように”ピーコ シャンソンを歌う」でCDデ
ビューし、シャンソン歌手としても活動の場を広げる。本展では、自筆のフ
ァッション画14点を展示販売いたします。

・トークと朗読の会「カタリココ」
大竹昭子×ミーヨン(写真家)
9月6日(土) 午後7時30分開場 8時開始
要予約 1500円

〒103-0025
東京都中央区日本橋茅場町2-17-13
第2井上ビル305号 森岡書店
http://www.moriokashoten.com/

★ちょうちょぼっこでライブと古本市
・ひきたまライブ
カリンバ弾き語りのひきたまさんに、ちょうちょぼっこでライブをしていただ
けることになりました! 夏休み中のちょうちょぼっこへ是非!

2008年8月22日(金)19:00open 19:30start
¥1500(1ドリンク付)
ご予約はメールにてお願い致します。(chochobocko@ybb.ne.jpまで)

ひきたま’s spicy music
http://www1.odn.ne.jp/hikitama/

・古本と男子
本を愛する男子たちが「ちょうちょぼっこ」で古本市を3ヶ月連続で開催します。

第1部
2008年9月6(土)、7(日)、12(金)、13(土)、14(日)、19(金)、
20(土)、21(日)

M堂(松岡 高)1946年生まれ
本の森(高橋 輝次) 1946年生まれ
街の草(加納 成治)1949年生まれ
古本オコリオヤジ(林 哲夫)1955年生まれ
にとべ文庫(にとべさん)1963年生まれ

第2部
2008年10月4(土)、5(日)、10(金)、11(土)、12(日)、17(金)、
18(土)、19(日)

文壇高円寺古書部(荻原 魚雷)1969年生まれ
モズブックス(松村 明徳)1970年生まれ
スクラップ館(扉野 良人)1971年生まれ
談(折田 徹)1971年生まれ
古書 さらち(aku)1973年生まれ

第3部
2008年11月1(土)、2(日)、7(金)、8(土)、9(日)、14(金)、
15(土)、16(日)

BOOKONN(中嶋 大介) 1976年生まれ
縦縞堂(三谷 修)1979年生まれ
エエジャナイカ(北村 知之) 1980年生まれ
古書文箱(薄田 通顕)1984年生まれ


なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

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■緊急寄稿 「わめぞ文庫」、創刊す  武藤良子
雑司が谷の暴れん坊イラストレーターはいかにしてこの本をつくったか
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 神保町の「地下室の古書展」で知り合った旅猫雑貨店の金子さんから、雑司
ヶ谷に実店舗を構えるという話を聞いたのは2006年6月のこと。わが町、雑司
ヶ谷に、雑貨屋ができる。しかもどの駅からも遠い、陸の孤島・雑司ヶ谷2丁
目に店を出す、というのを聞いたとき、これは何かせねばならない、という思
いがむくむくと湧きあがった。

 と言うのも、目白のブックギャラリーポポタム、南池袋の古書往来座、とこ
こ1〜2年の間に、近所に面白そうな店が続々とオープンしたからだ。そこに
旅猫雑貨店も加わるとなれば、これは何かしなければと、思わないほうがおか
しい。とりあえず飲み会でもしませんか、と一度もちゃんと話したこともない、
古書往来座にメールを出してみた。そして、数日後届いた返信メールには、1
人でいくのは恥ずかしいので早稲田の古書現世も誘っていいですか、と書かれ
ていた。こうして目白と雑司ヶ谷に早稲田が加わり、2006年11月に池袋西口
の中華料理屋「蘭蘭」で飲んだのが、そもそもの「わめぞ」のはじまり。

「わめぞ」は、早稲田・目白・雑司ヶ谷の頭文字からつけられた名前で、メン
バーに、本好き、古本屋が多いことから、その活動は、自然と「古本市」とい
う形がとられている。古書往来座の軒先を借りての「外市」は隔月で開催され、
その合間をぬって、銭湯でトークショーと古本市をやったり、副都心線開業に
合わせて近くのお寺で古本市をやったりしている。

 その「わめぞ」が、ついに出版にまで手を出すことになった。おもしろいけ
れど、出版社では企画が通らないようなもの、そういうものを世の中に出して
いくという。まるで、物書きの、文章の、流刑地のようで、「わめぞ」でしか
できない楽しい素敵な試みだと思う。

 その、素敵な試み第一弾に選ばれたのが、ワタクシの『大阪京都死闘篇 武
藤良子関西旅行記』だ。
 今年の4月に1週間、大阪京都を旅行した。大阪のギャラリーiTohenでの個
展「日曜おんな」に合わせての旅だ。展示のための旅行にもかかわらず、一箇
所にじっとしているのが苦手な私は、ギャラリーを抜け出し、ひたすら大阪と
京都の町を歩きまわっていた。路地を歩き、町を見、飯を食い、酒を飲む。夜
は安宿に泊まり、眠れない夜を過ごす。そんな1週間の記録を東京に帰ってか
らブログに書いたところ、なぜか、おもしろい、と評判になった。観光名所を
訪ねているわけでもなく、旅行らしいことは何一つしておらず、ただ真面目に
ひたすら歩いていた1週間。真面目に歩けば歩くほど、おもしろい出来事に遭
遇した1週間。そんな旅行が、みんなの目に、物珍しく映ったのかもしれない。

 その関西旅行から帰ってきて1ヵ月後の5月、扉野良人さんの『ボマルツォ
のどんぐり』(晶文社)の出版記念が高円寺のコクテイルで行われた。某版元
のAさんに、一緒に行かない、と誘われてノコノコと参上した私は、そこで岡
崎さんとナンダロウさんに会い、アレおもしろいから本にしてみたら、と言わ
れたのだ。ブログでタダで読めるならわざわざ本にする必要はないのでは、と
酔っ払って絡む私に、それは全然違う、とナンダロウさんは言い放ったのだ。
何が全然違うのかよくわからないものの、その言葉には、それなら作ってみよ
うじゃないか、と思わせる何かがあった。

 題字を描き、挿絵を描き、言い足りなかったものには注釈をつけ、それをワ
ードで組んで印刷し、出来たものをホチキスでとめる。50ページを越えるそれ
は、一度ではホチキスでとまりきらないほど分厚く、見た目は稚拙ながらも、
それでもなんとなく本のカタチをしていた。小学生の文集並みの、はじめて作
った自分の本。なんだか妙にうれしかった。

 コクテイルの夜からさらに1ヵ月後の6月、「わめぞ」仲間のNさんの新居に、
みんなで遊びに行くことになった。ナンダロウさんも来れるというので、そこ
にこの作ったばかりの稚拙な本を持っていき、ナンダロウさんに渡したのだ。
はい、と。まさか本当に作ってくるとは思ってもみなかったらしく、うれしい
のか、困っているのかわからない、ものすごく微妙な顔で、ナンダロウさんは
笑っていた。その本は、ナンダロウさんの手からその場にいた「わめぞ」仲間
の間を回遊し、おもしろい、と「本」に関してはうるさい人たちからお褒めの
言葉をいただき、そしてそのまま「わめぞ文庫」第一号として、出版すること
が決まってしまったのだ。しかもナンダロウさんの解説つきで。

 このフットワークの軽さ、決断の早さ、前向きさ。そんな「わめぞ」を私は
愛する。「わめぞ」がなかったら、たぶん一生日の目を見なかったこの私の旅行記。
どうぞ、よろしくお願いします。

*わめぞ文庫001
武藤良子著『大阪京都死闘篇 武藤良子関西旅行記』
解説・南陀楼綾繁
定価 500円(税込)

8月17日(日)、コミックマーケットの「けものみち計画」ブース(西 なー
15b)で先行発売。正式発売日は、9月の古書往来座外市初日(9月6日)。
以後、通販も予定しています。詳しくは下記を。
http://d.hatena.ne.jp/wamezo/

〈むとう・りょうこ〉1971年生まれ。イラストレーター。
挿画の仕事に『白蓮れんれん』、『FUTON』、『庭の桜、隣の犬』、未來社のPR誌
「未来」の表紙など。
http://www.toshima.ne.jp/~mryoko/
http://d.hatena.ne.jp/mr1016/

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■関西古本女子だより  次田史季
(12)自然で、かろやかで、やさしくて
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 最近、違う二人の素敵なピアノを聴いた。

 一人は、高橋悠治氏。
 ゆったりした明るい柄のシャツに、らくちんそうなズボンとかわいい靴に身
を包み、力まず、軽やかにそっと弾きはじめる。
 鍵盤から離れたときの手の動きはとてもやわらかで、うっとりとなる。
 
 初めて彼を知ったのは、精華大でたまたま借りた水牛楽団のテープを聴いて
興味がわき、少し調べていると彼の名前に行き当たったのだった。
 それ以来、何度かピアノコンサートのちらしを見かけては行きたいと思いつつ、
なかなか行けなかったのだが、今回念願叶い、はじめて彼のピアノを生で聴く
ことができた。バッハ、プゾーニ、モンポウ、オリジナルを堪能。
 小澤征爾も「日本も外国もひっくるめて。悠治ほどすぐれた才能をもってい
るやつも少ない。彼の能力はフランスのピエール・ブーレーズ級だと思う」と
言っている。

 そのライブからほどなく古本屋さんで、彼の著書『ことばをもって音をたち
きれ』に出会った。少し前には『音楽のおしえ』とも出会い、部屋に積んであ
った。今まで彼の著書に出会ったことがなかったのに、短期間に2冊と出会う
とは何か引き寄せられていると感じた。
 彼は『音楽のおしえ』のあとがきで、「作者にとっては、まちがいなく昨日
の思想にすぎないこれらの文章をあつめて刊行するのは、ここで一応達した結
論や、一時的解決の発表ではなく、読者に対する問題提起(それは音楽の領域
にとどまるものではない)」であり、それを手がかりにして各自の別な結論に
達すれば、それでよいだろう。」と書いている。こういうスタンスの本はあり
そうでなかなかないように思う。だから、何度でも読みたくなるのだと納得した。

 もう一人は渋谷毅氏。
 彼のことを知ったのは、郷田さんとさねよしいさこさんのライブに行ったと
き。さねよしさんのうたがもっと素敵になるようなピアノを弾いていらっしゃ
った。東京では定期的にライブをされているけれど、関西ではなかなか聴けず、
一度は行かねばと思って初めて行ったのが、奈良の教会でのライブ。アットホ
ームな、でも教会独特のしんとした雰囲気の中、ジャズを堪能。

 そして今回、ちょうちょぼっこにも来て下さった華乃家ケイさんと渋谷さん
の共演が「はなのや」で見れるということで、真治さんと一緒に行ってきた。
第一部は渋谷さんのソロ、第二部は、華乃家さんとCD「たそがれの夢」にも
収録されている歌を含む、昭和の懐メロ、第三部は、華乃家さんのちんどんと
渋谷さんのピアノのセッションという、なんとも豪華なプログラム。

 私の好きな、「買い物ブギ」がピアノだけの伴奏バージョンで聴けて感動だ
った。渋谷さんとは、終わったあと少しだけお話もできた。大阪にはあまりい
いハコがないとのことだった。

 二人のピアニストの共通するところは、自然で、かろやかで、やさしくて、
いい意味で無理していないところだと思う。でもそれはいままでのピアノを弾
いてきた歴史があるからできることなんだろうと思う。
 お二人の曲は、ちょうちょぼっこでもときどきかけています。華乃家さんの
本も扱っています。

〈つぎた ふみき〉ちょうちょぼっこメンバー。最近、スープカレーのお店で
バリの音楽と踊りを見て聴いて、よい時間を過ごしました。特にケチャがよく
て、いろんなケチャが見たくなりました。ちょうちょぼっこは8月はお休みで
すが、22日(金)ライブをします。みなさまお誘い合わせの上、お越し下さい
ませ。9月からは3か月連続古本イベント「古本と男子」も!

貸本喫茶ちょうちょぼっこ
〒550-0014 大阪市西区北堀江1-14-21 第一北堀江ビル4F
http://www.geocities.co.jp/chochobocko/
*営業日は、第1〜3週末です。 金18:00-21:00、土日 13:00-21:00

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■食の本つまみぐい  遠藤哲夫
(29)むかしは、よかったなあ、「グルメ」なんぞいなくて。
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創元社編集部編『続・大阪味覚地図』創元社、1965年1月

 きのう8月7日大阪から帰ってきた。この原稿の締め切りは9日とばかり思
い込んでいたのだが、さきほど、きのうが締め切りだと気がついた。なので、
とり急ぎ、この本にした。

 本書が発行になったころ、おれは、臨時雇いを転々としたのち、やっと正社
員で入社できた会社の仕事で、大阪に一年近く住んでいた。そして、今回は、
9月1日発売予定の「ミーツ・リージョナル」10月号の「ザ・めし」特集の取
材で大阪へ行ったのだけど、少し時間があったので、そのころ住んでいたあた
りをウロウロした。当時もそうだったが、今回も行ってみて、変っていねえな
あと思ったのは、そこは阿倍野区の東天下茶屋というところだが、つまりキタ
でもミナミでもない、大阪のはるか南のはずれの「下町」というか「場末」な
のであり、いつも新しい開発の波からは捨て置かれてきた。その風情が満々と
漂っていた。

 おかげで、天王寺の近鉄デパート横から出る、「阪堺電軌上町線」は一部路
面を走るチンチン電車のままで、東天下茶屋駅そばの「玉突」屋もそのままで、
おれはトツゼン、あの1960年代なかごろにタイムスリップしたのだった。

 大阪にいるあいだに、本書にのっている店は一軒も行かなかった。本書の存
在すらも知らなかったし、いまでもあまり本を買わないおれは、当時はめった
に本屋に寄ることもなかった。だいたいおれの職種は営業で、奈良、京都、神
戸をまわっていることもおおく、出先でテキトウに店を選んで食べることをし
ていた。ふところぐあいにあわせ、カネがないときはないなりに、あるときは
あるなりに。

 とにかく大阪は、フツウでも、安く食べられた。キタナイ、コワイをカクゴ
すれば、さらに安く食べられた。そんな中で、おれが東京から行って、よろこ
んでよく食べたのは、スブタとシャブシャブなのだ。どちらも、東京では、手
が出ないほど高かった。というか、シャブシャブは大阪へ行って初めて知った。
一人用のシャブシャブ鍋が据付けられたカウンターに座って、フツウに、昼飯
に牛肉をシャブシャブやりながら食えるというのは、カンドー的だった。スブ
タ・ライスも、東京では、ありえない値段で食べられた。

 知らなかったが、本書を見ると、シャブシャブがその名前で大阪の都心の街
頭に進出したのは、ちょうどこの時期のことらしい。そのころサラリーマンの
多いキタの街を歩いていると、「シャブシャブ」のポスターや看板があって、
それでおれは入ってみたりしたのだが、「本みやけ〈スキ焼き〉」の項に、こ
う書いてある。「スキ焼きのほか、バター焼き、水炊きがあるが、バター焼き、
水炊きは、あっさりしていていくらでも食べられるので、うっかりしていると
予算が超過するおそれがある。ここの水炊きと同じ方法で「シャブシャブ」と
いう名で売り出している店もあるが、水炊きに関しては、ここが元祖といって
もいいだろう」

「シャブシャブ」の「元祖」については、いろいろ伝説があるが、カウンター
で1人でも食べられる方式は、このころ普及したにちがいなく、70年代に東京
でも普及したが、いつのまにか姿を消した。

 それはともかく、本書は、まだ「グルメ」の気配もないころで、本書の執筆
陣も「食通」や「評論家」を気どることなく、店の受け売りを自慢そうに語る
能書きも控えめだ。ときには食通を皮肉ってすらいる。梅田地下街にある、オ
ヤジたちの憩いの場「ぶらり横町」。そこの「お里」、ここはいまでもあるが、
おれは入ったことがない、いわゆるホルモンの串焼き屋ということになるか。
そこには、こう書いてある。「ここではビフテキなんか牛肉のクズである、な
んて気がするのは不思議だ」

 いまどきの「グルメ」や「評論家」は、味覚の楽しみより「自分自慢」が多
いが、当時は、書き手の余裕というか、味覚を悠々と楽しんでいる様子があふ
れている。

「イタリア〈スパゲティ〉」の、「ほかに野菜オンリーのスパゲティもある。
これは人の好みや食欲によるから絶対とはいえないが、わたしはこれが最高の
ように思う」なんて書き方を見ると、むかしは、ほんとに人や味の個性を理解
している人たちが書いていたのだなあ、そこへいくと、いまは自分が絶対の
「神様」のような口ぶりの連中がふえたことよ。マズイものやマズイ店をあげ
つらねて、えらそうにしている連中も、ふえた。ああ、むかしは、よかったな
あ、だいたいこんな本なんかなくても、じゅうぶん食を楽しんでいたんだもの。
と思うのだった。ああ、やっぱり、むかしはよかった。

 とりあげられる店も、「あかふんどし」なる安直な飲み屋から、ガスビル食
堂のような高級店まで。「続」とあるが、『大阪味覚地図』の改訂版のことの
ようだ。1970年版『大阪味覚地図・北』になると、創元社編集部編ではあるが、
執筆者に大久保恒次さんのような「大物」が登場、やや「通好み」「通気どり」
がクサイかんじになる。

〈えんどう・てつお〉大阪の雑誌の取材だの、新潟日報にコラムの短期連載だ
のと、もっぱらローカルにやっています。
ザ大衆食 http://homepage2.nifty.com/entetsu/

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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(63)ライブとイベントで直販順調
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 2007年12月7日。『酒とつまみ』10号が、編集部に届いた。といっても、
例によってみんなで手分けをして運び上げるのだ。部数は1万部。増えること
はありがたいが、持ち運びの苦労はそれだけ増していく。痛し痒しというとこ
ろだろうか。

 この日も夕刻から、銀座の店を回り、いつもの通り、最新号をお届けにあが
ったが、今回ばかりは、ああ、間に合ったなあという感慨が強かった。
 というのも、翌8日、9日に、連載陣の松崎さん、すわさん、石倉さんが出
演する『はだかの王様』の公演があるからだった。松崎さんから連載エッセイ
の原稿をいただいたのは遥かに以前のこと。今回のお話の舞台は灼熱のビアホ
ール。つまり、原稿をいただいてからでさえ、それだけの月日が経っていたの
である。これで、ライブ公演に間に合わないようなことがあれば洒落にならな
い。だからこそ、公演前日に10号が納品となったことが、非常な幸運に思われ
たのだった。

 できたばかりの最新号です。公演会場で販売をさせていただきながら、私は
いけしゃあしゃあと言ってのけた。すみません。しかし、久しぶりの1冊とい
うこともあり、また、松崎さんたちのライブの会場でこの雑誌を買うことを楽
しみにしてくださっているお客様もいらっしゃることから、売れに売れた。こ
の2日間の直販部数は100冊を越えた。

 そして、週が明けて、12日の夜には、お世話になっている「古書ほうろう」
さんにて、トークライブに呼んでいただいた。司会はやはり連載陣の一人、南
陀楼綾繁さん、トークの相手は、あの『モツ煮狂い』のクドウさんである。

 たくさんの方々にお運びいただき、お客さんにも、出演者にも酒が出たから、
どんな会になるのだろうと思っていたが、巧みな司会とクドウさんの誠実な性
格に助けられ、私はただ緩々と酒を飲み、会が進んでいくにつれて、けっこう
しっかりと酔っ払っていくのだった。

 それにしてもクドウさんの情熱はすごい。日本中のモツについて調べつくし
たならば、いずれは目を世界に向けたいという。これには笑った。世界のモツ
を調べようと考えている人は、クドウさんのほかに、あんまりいねえんじゃね
えかなあ、なんてことを思いながら、また、酒を飲んだ。
 会の後には、古書ほうろうのみなさんも、遅くまで付き合ってくださって、
さらに酒を飲んだ。
 そして、この晩もまた、最新号を販売していただいた。その数、45冊。まった
くもって、ありがたい一夜となった。

〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集発行人。
沖縄、北九州、四国と取材が続いてひどく日焼けをし、連日脱水ぎりぎりで痛
風発作に怯えつつビールを飲みまくる日々。とくに2日間の四国お遍路はヘビ
ーでした。禁酒して気温36℃の中を歩くのみ。死ぬかと思った。酒つま11号、
今しばらくお待ちくださいませ。
http://www.saketsuma.com

ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(72)芳賀書店の巻 “H”マークがドーン!!の成人さん御用達ビル
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誤字、脱字には大寛容なエロ漫画界一筋のせいか、本の数をこなす割に他人
の誤植にはまず気づかない(でも、昨今の朝日文庫がひどいの位はわかる)。
50半ばにしてこの程度の俺が、学生時代に既に、「本当に校正してんの?」と
呆れ果てた本を次々に出してたのが、芳賀書店だ。ゾッキで買った寺山修司や
松田政男、武智鉄二や大島渚の本のひどいの何の。座頭市(勝新)やめくらの
お市(松山容子)が校正してんのかと、マジで考えた。

 当時(70年代前半)の同書店は、今も本店がある専大交差点の同じ場所。
木造のバラック風2階建てだったと。1階で小売りしてて、自分トコのゾッキ
も扱っていた(古本専門だったと思うが、記憶はハッキリしない)。ハッキリ
してるのは、1年中店舗のあちこちに赤旗が林立してた事。神保町交差点、今
みずほ銀行のATMがあるトコの地下にあった、岩波系新刊小売りの信山社と並
ぶ、神田駿河台地区の労働争議のメッカ(書泉グループがそれに加わるのは、
数年後の70年代半ば)。

 かつてのバラック店舗の跡地には、芳賀書店本店の堂々たる9階建てビルが
(神保町周辺に計4店舗)。白夜書房といい、ビニ本で財を成した版元って、
案外シャレた御殿を。ビルは正面から見ると、外観が3等分されている。真ん
中が黒を基調としたガラス窓。右側が階段、左側が壁面。両側はいずれも、千
円札大の薄茶のレンガで覆われていてシック(30個に1個くらい、スミアミ80
%くらいのレンガが散ってるが、その規準は不明)。

 ビル入口には、3色パンならぬ、4色パン状の黒っぽい社のトレードマーク
が(相撲の行事が手にする、うちわみたいな奴のカッコ)。中央に“H”とドー
ン!! もちろん、“H本”の意味じゃなく、社名のアルファベットだろう(違っ
てたりして…)。ただ正面にあつらえられた横文字、“ADULT BOOK VUDEO DIGITAL
VIDEO DISK”はどうか? 御殿のムードブチ壊わしと言うか、“ビニ本成金”が
そこまで素直に、恥多き出自を明かす事もないかと。“18歳未満云々”の表示だ
けで、未成年も入って来ないだろうし(ひょっとして外人さん対策?)。

 本御殿前は週3回、古本屋街に行く度に通るが、最近はめったに入らない。
エロ本編集者にはエロ本屋嫌いが多いせいでもあるが、店内にかつての熱気が
なく、寂しくなっちゃうからだ。20世紀までの同店は、眼の血走った全世代に
渡る発情野郎の群れを、レジのニコニコおばちゃんが巧みにさばいていた。昭
和の疑似家族的風景のエロ本屋(熟女ブームはまだ先の話)。

 客が減ったからおばちゃんが消えたのか、あるいはその逆なのか、最近は若
い兄チャンがレジに目立つ。オナニー仲間からオカズを買うようで、下半身が
落ち着かないと思うが(時給はおばちゃんょり安そう)。

 昨今版元としては、シネアルバムシリーズくらいしか見ないが、60〜70年代の
モノは、今復刊すればそれなりに売れると思うが。無論、その際は、誤植だけは
直してくださいヨ!
  
〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)、『出版業界最底辺日記 エロ漫
画編集者「嫌われ者の記」』(ちくま文庫)。1980年以降書き散らしたコラムを
まとめた『東京の暴れん坊 俺が踏みつけた映画・古本・エロ漫画』(右文書
院)が好評発売中。

なお、この連載に関しての批判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(た
だし、謝るとは限りません)。
mangaya@air.linkclub.or.jp
http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/

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[書評]のメルマガ vol.368
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■         vol.368
■■  mailmagazine of book reviews  [ お腹は正直 号]
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[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。展覧会の情報など。
★「関西古本女子だより」頓花恵(トンカ書店) 
 →大阪と神戸の「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「音を探してページをめくる」貴島公
 →音楽サイト「モノノフォン」の主が、音とテキストの関係を考察する。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。
*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

-------------------------------------------------------------------
■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
-------------------------------------------------------------------
★中里和人写真展『SELF-BUILD』

バー・トタン、詫び寂びコンテナハウス、アナーキー・キッチュ庭園、2階
建てトラック住宅、隅田川完全0ハウス、コルゲートパイプ邸など…。自分で
建てたさまざまな理想の家がある。自分たちの手で造った不思議な庭がある。
ここには、眠っていたセルフビルド・スピリッツが目を覚まし、家や庭、アー
ト空間に変身したフラジャイルで堅牢なセルフな景色がある。建築家石山修武
氏と巡った、現代のSELUF-BUILDワールド。中里氏制作の「移動する組み立て
小屋」5号も展示します。

2008年7月5日(土)〜7月16日(水)
13:00〜21:00   木・金曜日休み

ROBA ROBA cafe(ロバロバカフェ)
世田谷区経堂2-31-20
tel + fax 03-3706-7917
http://www15.ocn.ne.jp/~robaroba

★『そろそろ産まなきゃ 出産タイムリミット直前調査』(阪急コミュニケー
ションズ)刊行記念
三浦天紗子・古屋美登里・豊崎由美さんトークショー
「産む幸せ・産まない幸せ」

産んで幸せとはかぎらず、産まずに後悔しないとは言い切れない。でも、な
んとなく延ばし延ばしで来て、結局、産むにはきつい年齢になっていたという
のはちょっと切ない。自分で納得できる、理想的な〈出産/非出産〉のかたち
って何だろう――。3人の対話から、そのヒントが見つかるかもしれません。

日時:7月24日(木) 19:15〜
会場:リブロ東池袋店 店内カフェ・リブロ
参加費:1000円(税込) ワンドリンク付
お申込み:リブロ東池袋店 TEL 03-5954-7730

★カタリココ feat.小林エリカ
朗読とトークの会『カタリココ』が、今年はそれぞれ特徴的な店作りをして
いる古書店を舞台に行われます。

出演:大竹昭子(ナビゲーター) 小林エリカ(ゲスト)
7月19日(土) OPEN:20:10 start20:30
料金:1500円

会場:渋谷・Flying Books
東京都渋谷区道玄坂1-6-3 渋谷古書センター2F
*予約:6月23日(月)より店頭、電話、メールにて受付けます。
tel:03-3461-1254  mail:info@flying-books.com

小林エリカ (こばやし・えりか)
1978年東京生まれ。1998年、コミック「爆弾娘の憂鬱」シリーズでデビュー。
イラスト、映像、コミック、小説と、異ジャンルにまたがる活動を展開してい
る。最新刊は詩をベースにしたコミック『終わりとはじまり』(マガジンハウ
ス)。現在、アメリカと日本の人々の18歳の記憶と写真を収集する「アメリカ
ン/ニッポン・クロニクル」プロジェクトを行なっている。他の著書に『ネバ
ーソープランド』『空爆の日に会いましょう』などがある。
http://www.homesickless.org/flowertv/

★nakaban展覧会「ナの山」

7/14(月) 〜26(土)
open 12:00 〜19:00(最終日17:00まで) *日曜・祝日休廊

gallery福果
101-0051 東京都千代田区神田神保町1-11-2F
tel&fax:03-3259-6555

★田中清代『おばけがこわいことこちゃん』銅版画展 
絵本『おばけがこわいことこちゃん』(ビリケン出版刊)の銅版画と小品を展示。

場所 ビリケンギャラリー
7月12日(土)〜7月31日(木) 毎週月曜日定休
営業時間 12:00〜19:00
住所/〒107-0062 東京都港区南青山5-17-6-101 ビリケン商会
http://www.billiken-shokai.co.jp/index.html

★仲俣暁生「現代小説を考える」
いま多くの人に読まれている日本の「現代小説」は、明治以来の「近代文学」
を起源としつつも、SFやミステリ、ホラーといったエンタテインメント小説
や、アメリカをはじめとする外国の現代文学、そしてマンガやアニメといった
他ジャンルの表現からも強い影響を受けています。この講座では、「現代小説」
の起源を村上春樹と宮部みゆきの登場に置き、桜庭一樹や川上未映子ら、平成
時代に活躍する若手作家の作品理解にまでつなげていきます。

朝日カルチャーセンター・新宿
7/22, 8/26, 9/9 火 19:00-20:30 全3回
受講料 会員 8,820円 一般 10,710円
http://www.asahiculture.com/

★西荻ブックマーク「三木鶏郎と冗談音楽」

出演:山川浩二(やまかわひろじ)
広告評論家、1927年生まれ。電通ラジオ・テレビ局などで企画プロデューサー
として活躍。三木鶏郎氏とは、大学時代から、「日曜娯楽版」(NHKラジオ)の
ライタースタッフの一員として係わり、電通時代は、三木鶏郎のCMソングのプ
ロデュースを一手にひきうける。電通退社後は広告評論家として活躍しつつ、
「アド・ミュージアム東京」のオブザーバーを務める。著書に『広告発想』、
『映像100想』、『昭和広告60年史』など多数。

2008年7月13日(日)
今野スタジオ『MARE(マーレ)』
16:30受付/17:00開演
¥1,500 定員25名

予約はこちらから
http://s1.shard.jp/nishiogi/index.htm

★第3回「女子とふるぽん〜」寄港市
ダイバー店内で開く、ガールズ&ミセスのミニ古本市

きたる7月8日(火)〜12日(土)、女性の本を中心としたミニ古本市をひ
らきます。乙女&オトメンの本、懐かしい本、欲しかった本、意外な本…いっ
ぱいの5日間。(途中で補充あり)ぜひ、ぜひ、遊びにいらしてくださ〜い。

参加:えこし会(江古田詩人会)、奈良の小さな古本屋 このはな文庫、木南
文庫(オトメン代表)、こだぬき書房、トカゲ書林、ゆず虎嘯(こしょう)、
古本ピックルス、林檎文庫、古書マーメイド

7月10日(木)夕には、えこし会による「朗読&ライア ミニコンサート」
もございます。

〒101-0051 千代田区神田神保町2−12 川島ビル1F(但し木造)
03−6657−3277
http://bookdiver.exblog.jp/

★エノアール&沢マン上映会イベント
インディーズ・ドキュメント映像2本立ての上映会とフリートークのイベント

上映内容
1)「エノアールカフェ We are living in the park!」 (監督:吉田卓史)
ホームレスたちとブルーテント村で暮らしながら、物々交換カフェをきりもり
するアーティスト、小川てつオといちむらみさこ。公園暮らしの日々は、たん
たんとしていながらお伽の世界のようにファンタスティック。二人のそれぞれ
の生き方と、テント村が立ち退き要求をされるまでを追った記録。

2)「沢田マンションのかまんろうライフ」(監督;サワダトール)
高知の九龍城、立体長屋とも呼ばれるセルフビルドマンション「沢田マンショ
ン」。“便利でキレイ”な暮らしとは対極にある手づくりマンションに集まっ
てくる若者たちと、それを見守る大家さん。その沢マンに魅了され、惚れ抜い
た男・Nの一日を、建築物のダイナミズムとともにレポート。“かまんろう”は
土佐弁でtake it easy(まあ気楽にやりましょ)の意。

7/19(土)  14:00開場 / 14:30〜上映 / 16:00〜フリートーク
参加費:500円
定員:20名(予約者優先:電話またはメールにて)
※ドリンク販売します(ソフトドリンク200円、アルコール 400円/スナック付)
会場:ブックギャラリーポポタム
豊島区西池袋2-15-17 03-5952-0114 popotame@kiwi.ne.jp
http://popotame.m78.com/shop/index.html

なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

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■関西古本女子だより  頓花恵
(11)金沢と銘菓を巡る
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 先月、金沢にでかけました。といっても滞在時間はわずか半日。美術館と古
本屋さんとご当地名物巡りの駆け足旅行です。

金沢といえばやはり文学のまち。江戸時代、多くの学者文人を招き入れ図書
や学問の集積を図ったことから「天下の書府」と呼ばれた町。そして各文豪を
輩出し、様々な作家に愛された町でもあり、市内を廻る観光バスには金沢三文
豪の名前をとった泉鏡花号、徳田秋声号、室生犀星号が観光客を乗せてゆらゆ
ら走っておりました。始終興奮で胸は騒ぎっぱなしです。

しかし時間は有限。古本屋さん散策は駆け足で、文学館も好きなところだけ
を覗き、美術館もそこに流れる空気で良しとしたにもかかわらず、結局落ち着
いてしまったのはお茶屋さん。美味しそうなお茶菓子をガイド本で確認しては
厳しい時間制限にも関わらずついふらら。伝統的な町並みを眺めながらもお腹
は大変正直なのです。

文芸雑誌『ホトトギス』の同人であり、女流俳人の第一人者でもあった中村
汀女。句集を発表しただけでなくお菓子を愛した人でもありました。その中で
汀女が全国の銘菓について句と文章で表した俳句エッセイ『ふるさとの菓子』。
金沢の銘菓、出てきます。「長生殿」「加賀さま」「加賀志ば船」「千歳」「深
山の月」……。

「加賀志ば船」に至っては「見事な白砂糖の化粧引き。口にふくむと強い生姜
の味が花のようにひろがって、砂糖にとけ合いそして霧散する。反りを打たせ
たかたちもよく、近頃好きな菓子五指のうち。掛紙も逸品。」とのこと。

どの銘菓に対しても鋭い分析、そして強く愛情を感じる文章です。汀女のよ
うなお菓子ツウでもなく、まして銘菓なぞほとんど口にしていませんが「一つ
の菓子のうまさ、甘さに、その日の苦労が霧散する」という気持ち、それはま
さに一緒!

ともあれ汀女が季節感を大切にする日本の菓子と俳句を結びつけたのはごく
ごく自然なことであったのではないでしょうか。

金沢から神戸へと戻り、お土産の落雁を味わいながら汀女ならどう表現する
のだろうなどと大藩加賀の面影をしのびしのびしております。

〈とんか めぐみ〉神戸元町にてザックバランな古本屋を営業中。
7/19〜7/26 『ブックカバー・ディスカバー展』 総勢33名による手づくりブック
カバーが集まります。お気に入りのブックカバーを見つけてください。

トンカ書店
650-0011 神戸市中央区下山手通3-3-12元町福穂ビル2D
078-333-4720
http://www.tonkabooks.com/

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■音を探してページをめくる  貴島 公
(10)「探してページをめくる」ということ
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大阪府立文化情報センター編『「プガジャ」の時代(新なにわ塾叢書1)』
ブレーンセンター、2008年6月

 大阪の暮らしや文化を伝え、遺すことを目的とした講座シリーズの一本とし
て行われた、関西の情報誌「プレイガイドジャーナル」(以下、プガジャと略
す)の足跡をたどる講座の記録をまとめたもの。何度かあった方向の転換に伴
う「時代」の変遷を、それぞれの時期に編集に携わったひとたちに話を聞いて、
浮かび上がらせようとしている。彼らの話を読んでいると、読者として感じて
いたことがそんなに外れていたわけではなかったのだなと思わされることが多
かった。

 わたしがプガジャを読み始めたのは、興味の対象が住んでいる町では手に入
らなくなりつつあった(そしていくらか自由になる小遣いがあった)十代の後
半で、そのまま、この本でも繰り返されている「事実上の」最終号まで読み続
けた。といっても、毎号買っていたわけではなく、興味のある記事やイベント
がある月だけ。古くなった号を残すこともなかった。情報誌だからということ
もあったろうし、消化したという自信もあったのだろう。いま手元にある数冊
は、版型を変える前の数号と事実上の休刊前の数号。ま、なくなるとなると惜
しくなるというよくある心情から。

 そんな程度のつきあいだけど、情報誌が要るときはプガジャだった。読み始
めた当時のかんじでは、映画好きはLマガジン、演劇や音楽好きはプガジャと
言われていたようだけど、それよりも健全なLマガに対して、プガジャはあや
しかったのだ。安かったというのもあるけれど。演劇や音楽に強いというのは、
初期のスタッフが演劇や音楽を作る側のにんげんでもあったからで、作る側か
らの発信という雰囲気が強かった。ミニコミや自主制作レコードを扱うコーナ
ーの発想が、アメリカ西海岸の影響だったとは意外だったけど、結果として、
次の世代の活動の受け皿にもなっていったのだから、趣味や価値観を越えた、
作り手やおもろいもんを応援する姿勢が受け継がれていたのだろう。そのあた
りの按配についてはガンジー石原さんの発言が面白かった。

 おもろいもんに出会うために「あったらええな」と思えるものを作っていた
のが、採算やなにやらが合わなくなってくる。おもろいもんに出会いたいとい
うひとの割合も減ってくる。情報にも金銭的な事情が絡んで余裕がなくなって
くる。創刊当時の「情報が何になる?」という扱われ方との対比が可笑しく、
また哀しい。いまでは、情報は氾濫しているはずなのに、余裕がない。情報を、
事情から解放することはできるだろうか。ここで語られているエピソード、夥
しい注、巻末の年表から、なくなったもの、変わったものを読み取ることにそ
のヒントがあるような気がする。

〈きじま・こう〉説明業、趣味・読書と音楽鑑賞。
直接音楽に触れる内容でなくて、すみません。いつものように枝葉を拾ってひ
っかきまわすのが申し訳なくて。

「モノノフォン」
http://homepage1.nifty.com/hebon/fhp/

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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(62)テレビ収録に10号に間に合わず
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 ようやくのことで入稿した『酒とつまみ』10号は、2007年11月28日、校了
した。この日も、Wクン、Sさんと3人で乾杯。浅草橋秋葉原間のガード下に
あるロック立ち飲み『ショットおかめ』にて、ニラとモツの炒め物や魚肉ソー
セージなどを肴にホッピーで激しく乾杯したのだった。

 納品予定は、12月7日(金)。部数はついに1万部を数えた。500部でスター
トしたミニコミが10号めで1万部を印刷するまでになったことは、繰り返しに
なるが幸運としかいいようがないのだが、やはりこれはたいへん嬉しいことで、
納品の日が待ち遠しかった。

 しかし、実にうまくない事態も発生していた。12月3日に、フジテレビの『東
京マスメディア会議』という番組の収録に呼ばれていたのだが、本の発行が正
式には7日になるため、この収録時点では最新号の内容を開陳することができ
ないのである。

 この番組には7月にも出させていただいていて、今回が2度目の出演という
ことになるのだが、前回出演の後、最新号が出ていないという状態であるから、
正直言って、あまり話すことがないのだった。
 事前に打ち合わせに来られたディレクターさんにもその旨を伝え、何かおも
ろいネタはないかという問いに、それならば『酔客万来』とか『ホッピーマラ
ソン』の話をさせてくださいと言うのだが、反応ははかばかしくなく、実際の
収録日にも、どうにも居場所がない感じで、私はただ、ビールを飲んでいるの
だった。

 そもそもテレビでなにかうまいことを話せるわけもなく、極端なあがり症で
もある私だから、控え室からビールを飲んで、収録中も飲んでようやくリラッ
クスし、話を振られても、あまり喋らない、いや喋れないという状態で良しと
考えていたし、実際にそうなった。

が、翌年の年明けの放送を見れば、ランジェリー雑誌の紹介をしているとこ
ろで、モデルさんに簡易囲いの中でブラを装着してもらうというネタがあって、
どんなんなってんのとスタジオは盛り上がるのだが、そのとき、陰気な顔して
頬を掻いている私の顔がスッと映されていて、そのスケベなオヤジ顔が妙に印
象に残るのだった。

それでも10号が出ましたというお知らせにはなったのだと自分に言い聞かせ
つつテレビ局を出て、夜もふけたお台場を歩いていると、無性に飲みたくなっ
てきた。新橋へ向かう「ゆりかもめ」の車中で頭の中にあったのは、「飲みた
い」「飲みたい」というちょっとヤバイ思いだけなのであった。

〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集発行人。
一週間のうちに日帰りの出張が4件も入るなど稼ぎ仕事に忙殺されて(あまり
稼げないのだけれど)『酒とつまみ』の制作にまたもや多大な迷惑をかける日々。
ひたすら申し訳ないわけですが、11号の準備は少しずつ進めております。最
近思うのは、私こそ、酒を思い切り控えるべきなのではないかということです。
http://www.saketsuma.com

ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(70)エヌピー通信社の巻 老人スーツ向きの奥ゆかしいビル
--------------------------------------------------------------------- 
「ジュンク堂」池袋店先の、「古書往来座」の軒先を用いた、素人&プロ混合
古本市は、通称“外市”と呼ばれ、好事家の間ではそれなりの知名度も既に。
小生もここ数回連続出店してるが、余りの売り上げ不振に、「これじゃあ外市
の恥さらし!!」と、「古書現世」の向井の野郎にドヤされるのはともかく、
“年収2百万未満ド下流青年”、退屈男にまで同情の視線を浴びせられると、
初老男の胸は無情感で一杯に。

 仕方なく店番をサボり、近所を散歩してると、まず眼に飛び込んで来るのが、
幸福の科学の悪趣味な建物。それを避け、「古書往来座」前の、明治通りのゆ
るい坂を池袋駅方面に昇ると、右手に“エヌピー通信社”との、白地に黄赤ベ
タ文字の看板が。モーターマガジン社やベースボールマガジン社のモノに比べ、
実に奥ゆかしい小振りな看板だ。

 ビルは6階建て(豊島区南池袋3-8)。正面は老人のスーツ向きと言うか、
淡いコゲ茶色。両側はスミアミ約30%色の壁。向かって左に細い道。つまり一
応角地。海外の通信社か何か?けど池袋に支社ってのもヘンテコと眼を凝らす
と、玄関右手に金色のプレート。「???」十文字でそれは4カ所に区分され、
重厚なスミ文字で“納税通信”とクッキリ。なな…なるほどそっち関係で…
(と言っても、版元の素姓や刊行物は、全くイメージ出来ない。こんな事なら、
外市のしけた店番の方が気楽だったかもって、何の反省?)。

 1948年、つまり60年前、外務官僚の会田晴宣が、税を通じ、日本人の誇り
を取り戻そうと設立したと(会田我路の親戚じゃないよネ?)。定期刊行物、
『納税通信』『税理士新聞』『オーナーズライフ』(フリペ)。書籍、『税務
調査のすべて〜対応マニュアル&ノウハウ集』『税理士がホンネで語る 新税
務調査の急所』etc。フーッ…。

 役人が設立した版元じゃ、民商のように税務署と闘ってくれる本は出さない
な。国家権力の先兵たる(機動隊と並んで)税務署の、お許しの範囲内で、節
税道を指南して下さるのだろう(でなきゃこんな、税務署職員の使い古したバ
ッグ風のビルは建たんヨ)。

 以上のデータはピー屋、いやエヌピー社様のHPを参考にした。あんまし儲
からないが、外市は本当にありがたいヨ。参加しなかったら、ピー屋、いやエ
ヌピー通信社なんて、全く知らないまま死んでたよ俺(それで何の不都合もな
いし)。
 
 池袋の版元と言うと、すぐ思い浮かぶのが、数年前の神保町の“ゾッキの花
形スター”、小沢書店。“生前”に1度、偶然前を通りかかりたかった(確か
「古書往来座」の近所だったはず。一時付近に住んでた、笙野頼子の小説にも
面影が出て来る)。70年代は詩集に加え、自立小僧達の書名負けした、訳の
わからん評論集を乱発してた国文社も近所で、今の「ジュンク堂」の辺から看
板も見えた。どこに移転したのか?(倒産の噂は聞かないし)
 
 調べりゃすぐわかる時代だが、思いがけずに遭遇したいのが、若き日の恋人
であり、版元様の個性溢れる御殿なのだ。
   
〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)、『出版業界最底辺日記 エロ漫
画編集者「嫌われ者の記」』(ちくま文庫)。1980年以降書き散らしたコラムを
まとめた『東京の暴れん坊 俺が踏みつけた映画・古本・エロ漫画』(右文書
院)が好評発売中。

なお、この連載に関しての批判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(た
だし、謝るとは限りません)。
mangaya@air.linkclub.or.jp
http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/

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[書評]のメルマガ vol.364
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■■ [書評]のメルマガ   2008.6.16発行

■        vol.364
■■  mailmagazine of book reviews [ 幻のマスコミ 号]
■■------------------------------------------------------------
[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。今回はひとつだけ。
★「関西古本女子だより」真治彩(ちょうちょぼっこ) 
 →大阪と神戸の「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「千駄木ドロナワ日記」川原理子
→地域雑誌『谷根千』の若手スタッフが綴る、日々のあれこれ。
★「食の本つまみぐい」遠藤哲夫
 →〈大衆食堂の詩人〉エンテツが料理文化史の重要本を紹介します。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。
*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
-------------------------------------------------------------------
すみません、情報集約している暇がなくて、今回はひとつだけ。

★『ぐるり』プレゼンツ 南陀楼綾繁のトーク十番勝負 
・その2
「東京アンダーグラウンド食味談義〜『続東京裏路地〈懐〉食紀行』刊行記念〜」

【出演】
藤木TDC(文筆業)
南陀楼綾繁(ライター・編集者)
【ゲスト】
塩山芳明(エロ漫画下請け編集者)
クドウヒロミ(『モツ煮狂い』発行人)

B級グルメなんてぶっつぶせ! すいとん、ホルモンスープ、鯨カツ、腸詰
などの怪しい闇市料理を食らうことで東京の裏面史を描いた名著『東京裏路地
〈懐〉食紀行』(ミリオン出版)の続編刊行を記念して、著者の一人、藤木TDC
さんとともに、シャレや酔狂では食えない味について語ります。休憩時間には、
モツ煮込みを販売します。

日時 2008年6月18日(水) 18:30開場/19:00開始
場所 古書ほうろう
文京区千駄木3-25-5 1F
電話 03-3824-3388
http://www.yanesen.net/horo/

入場料 1000円(ホッピー付、要予約)
予約方法 
(1)ビレッジプレス「ぐるり」編集部
info@village-press.net 03-3928-7699
(2)古書ほうろう 店頭受付のみ

・その3
「ぼくが『HEAVEN』の住人だった頃」

出演
近藤十四郎(ミュージシャン)
南陀楼綾繁(ライター・編集者)

1980代初頭に仇花のように咲いた、自販機雑誌『HEAVEN』。高杉弾、山崎春
美、羽良多平吉、隅田川乱一らがやりたい放題に暴れたこの伝説の雑誌に、創
刊からスタッフとして関わった近藤十四郎さんにたっぷりお話をうかがいます。
香山リカ『ポケットは80年代がいっぱい』の読者は必聴! 近藤さんの生演
奏もあるかも!?

日時 2008年7月25日(金) 18:30開場/19:00開始
場所 対抗文化専門古書 気流舎
世田谷区代沢5-29-17 飯田ハイツ1F
電話 03-3410-0024
http://www.kiryuusha.com/

入場料 800円(予約優先、15人限定)
予約 ビレッジプレス「ぐるり」編集部
info@village-press.net 03-3928-7699

近藤十四郎(こんどう・としろう)
1954年岡山生れ。71年(高2)より東京。エルシー企画〜アリス出版〜群雄社に
て『HEAVEN』、豪華パンフレット『陽炎座』(鈴木清順監督)などを制作。その後
フリー。ソロ/バンドによる音楽活動も並行。「バカズ」〜「ゴールデンDAS」そ
して今夏、新生「水の底楽団」始動!

なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

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■関西古本女子だより  真治彩
(10)かもめかもめ
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十三の第七藝術劇場に3人で映画をみにいった夜のこと。映画がはじまるま
えに、ちらしをたくさんとって座っていたら、赤と青のちらしをみたしんじさ
んが、「あ、ヤーチャイカ」と言いました。しんじさんは、黒川創の『かもめ
の日』という本を読んでいて、ヤーチャイカっていうのは、わたしはかもめと
いう意味で、とおしえてくれた。手に持っていたのは、「ヤーチャイカ」とい
う覚和歌子の詩をもとにした写真映画のちらしでした。脚本と監督は、詩人で
ある覚和歌子と谷川俊太郎の二人。
http://yah-chaika.com/

その後、九条のシネヌーヴォで「ヤーチャイカ」をみた。写真映画というの
は、誰かに本を読んでもらっているように、ところどころ少し待つという感覚
が新鮮なようなもどかしいような。主演の二人が動かないのが少しものたりな
かったけれど、言葉と写真から、においや音がたちこめるようでした。それか
ら、めぐりあわせについていろいろ思う。

「ヤーチャイカ」が収録されている詩集『ゼロになるからだ』には、映画で使
われていない部分がありました。

 まだ若かった母が 縫ってくれた赤い帽子と
 それをかぶって歩く 麦の畑道
 ここから見える私の赤い帽子は
 海辺の町の外れを留める 光る小さな待ち針

小さな赤い待ち針をかもめのわたしが引き抜いていくのを遠くからみている
わたし。こないだひこうきにのったことをおもいだしました。それよりも、も
っともっとはるかな眺め。遠く遠く。わたしとは関係ない「ヤーチャイカ」と
いうその言葉が、映画のなかでささやかれるたび、なんだか懐かしいきもちに
なるのでした。

パンフレットはちらしの青と赤と対比するように、真っ白なかもめ色。UAや
内田也或子が文章を寄せています。それから、日本科学未来館長の毛利氏も。
日本科学未来館のプラネタリウムで上映されていた「暗やみの色」というプロ
グラムで朗読される谷川俊太郎の「闇は光の母」という詩も、宇宙につながっ
ています。この冊子、もう売ってないのかしら。
https://www.miraikan.jst.go.jp/j/goodstool/booksgoods/kurayami.html

谷川俊太郎の『二十億光年の孤独』が、読みたいな。と思ったらこんな文庫
がでていたのですね。万有引力とは、引き合う孤独の力、でしたか。
http://www.amazon.co.jp/二十億光年の孤独-集英社文庫- た-18-9/dp/4087462684

『ゼロになるからだ』では
「今とても 母に会いたいです」という最後の一行が、映画では、
「今とても ひとりです」となっているのでした。

〈ごうだ たかこ〉ここ数ヶ月、働いていない。働いてない時間には、漫画ば
っかり読みたくなる。それで、おさいふの中身を気にせずに漫画がたくさん買
えるように、働こうという気がわいてくるので、健全であると思う毎日。

貸本喫茶ちょうちょぼっこ
〒550-0014 大阪市西区北堀江1-14-21 第一北堀江ビル4F
http://www.geocities.co.jp/chochobocko/
*営業日は、第1〜3週末です。 金18:00-21:00、土日 13:00-21:00

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■千駄木ドロナワ日記 川原理子(谷根千工房)
(8)「仕方ない」なんて思わない
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5月27日(火)
谷根千そぞろ歩き絵図の改訂で、印刷屋さんへ行ったら、地図に使っている
紙は、昨年から15パーセント値上がりしていて、6月1日からさらに値上がり
すると言われた。以前より外国で紙をたくさん使うようになり、日本の紙もよ
く売れて、値が上がっているそうだ。インクやフィルムなどの石油製品も上が
り、印刷屋さんは大変だ。

新聞を読めば、食料も上がっている。わたしはもともと、ひとにもらったも
のばかり食べているので、最近の値上がりの厳しさを実感しないままでいたが、
宅配をたのんでいるパン屋さんが、来月からの値上がりを決定。上げ幅が意外
に大きくて、驚いた。
東京都の銭湯料金も20円値上げで450円に。燃料が値上げだもん、仕方がな
い。浴場組合のホームページによれば、経営が厳しく、本当は480円にしないと
やっていけないそうだ。(値上げは理解するけど、あと15日間、入浴券の有効
期限までは待ってほしかった。券が期限内にお金を足さないと使えなくなると
いうのは、なんだかつまらない)

でも、それぞれの家や会社で出費が増えるのだから、どこかにお金が集まっ
ている、誰かが前よりもうけているのではないかと思うのだけど、それは、誰
だろう? そちらに対しては、「仕方ない」なんて決して思わない。

6月1日(日)
神奈川のKご夫妻が家の梅の実をもぐというので、手伝わしてもらった。梅
の実は熟しかけているのか青に赤み、黄みがかったものもあり美しく、よい香
りがした。小ぶりの木で、手を伸ばせば簡単に取れる。木の上のほうは、枝が
空に向かってまっすぐ伸びているので、イスに乗っても手が届かない。鳥のた
めかな。

梅の実を採ることだけに熱中して約1時間半、バケツ三杯ほど収穫できた。
わけてもらって、翌日、谷根千工房で梅サワーと梅ジュースをつくる。梅サワ
ーは、梅と氷砂糖を交互にし、酢を注いで2ヶ月。梅ジュースは梅に砂糖をま
ぶし毎日ゆする。ほかに、谷中の豆料理屋、ビーンズキッチンさんに教えても
らった方法でも梅ジュースをつくる。梅と砂糖を炊飯器に入れ、8時間保温し、
8時間ねかせると、あめ色のほろ苦い梅ジュースの出来上がり。水で割って飲
むと、おいしかった。

完全に熟した梅はそのまま食べることができると、あとで聞いた。

〈かわはら・さとこ〉谷根千工房社員
最近町の多肉植物にも目がいくようになった。育てている人が結構いる。多肉
植物の多くは、小さいときは瑞々しくかわいらしい姿をしているが、育つと茎
(幹?)がたくましくなり、うねうねと暴れたように伸びる。谷根千の町のあ
ちこちに砂漠を思わせる一区画がある。

「谷根千ねっと」
http://www.yanesen.net/

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■食の本つまみぐい  遠藤哲夫
(28)自由化と国際化の中で、美味しい食文化ブームの始まり 。
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『文藝春秋デラックス 美味探求 世界の味 日本の味』1976年2月号

出版文化史的には、1978年が「食文化流行」ということになっているようだ。
この連載の1回目の江原恵『庖丁文化論』は1974年。そのころすでに食文化本
ブームのきざしはあった。77年に男子厨房に入ろう会が発足した。ワザワザそ
ういうものができたのは、まだまだ男子厨房に入るべからずの空気は強かった
が、ここはひとつ男もやってみようじゃないかという気配が濃厚になってきた
ことがある。これという趣味もなく働くことが「生きがい」だったような男た
ちが、なんだか気がついたら「中流意識」で豊かな気分になって、すぐ安直に
手が届く趣味といえば「食」ということだったようでもある。

ありていにいえば、それは、男性自身の自らの解放的変化というより、70年
前後の「自由化」という「外圧」の波のなかで成長した食品産業や飲食産業に
煽られてということだったと思う。敗戦で占領軍に「解放」「民主化」された
構図と似てなくもない。そういった「事情」が、タイトルの「世界の味 日本
の味」から思い出せる。国際化する日本の「世界の味」それと一対の70年から
国鉄が始めたディスカバージャパン「美しい日本と私」の「日本の味」なのだ。

かくして、75年あたりを境に、髪を伸ばしてカウンターカルチャーやってい
た男たちも髪を切って市場と消費の担い手になっていったように、食べ物のこ
となんか口にするもんじゃねえといっていた男たちもヘラヘラ安直に流行を追
って食談義をやるようになった。

登場するのは、文藝春秋とツキアイの文壇系を中心に、食系の当時新進気鋭
と注目されていた筑波常治、江原恵。そして、「食味評論家」なる肩書で稼ぎま
くっていた、ガラクタのような知識蒐集とばらまきで困ったもんだオジサンの
多田鉄之助。伝統の格調高い、平野正章さん。といった面々。

カラーグラビアを飾るは、世界各国の食卓、田沼武能。この方も稼いでいた
ねえ。続いて、スコッチとワインとブランデーの写真と能書き。「自由化」日
本、「国際化」日本の中流男子は、これぐらい知っていなきゃあという感じだ
が、高級輸入酒に混じって赤玉ポートワインがあるのは愛嬌か。当時の歌舞伎
町の角打ちでよく飲んだ「アリス」なんていう、すぐ頭が痛くなる合成ウイス
キーはさすがに載ってない。滝田ゆうが、ホテルオークラでステーキを食べる
という「マジメ訪問」が笑える。陳舜臣が「人物・日本史記 北大路魯山人」
で、魯山人は「性格にカドがあるばかりか、人間性にも欠陥があったのであ
る」とバッサリ。しかし、その後の食談義は、その魯山人の悪いところばかり
を真似てきたような感じがあるな。

と書いていると長くなる。でも、これは書きたい、「アンケート特集 最後
の晩餐」。北杜夫、岡本太郎、佐藤愛子、小沢昭一、長部日出夫など、おもし
ろーいのだが、古山高麗雄がサイコー。「てめえが死ぬと決まったら、直前に
何を食いたいかという設問ですが、そういう架空話には切実になれません」と、
食べ物の話はいっさいせず。

野坂昭如が「食道楽くそくらえ」、これはまあ彼らしい。ようするに「まずい」
も「うまい」も、味覚の話を同席したものたちで共有したい「一種の甘えだろ
う」、みっともねえ。まあ、しかし、日本の男たちは、なんでも仲間意識の「甘
え」のネタにするのだよ。そういうのが好きなんだなあ。ちっとも変わってい
ない。

筑波常治、この方、ときどき行く知人の落語会に例の緑のファッションであ
らわれる。まだ健在なので驚いた。勝手に殺してはいけないな。80年ごろ二度
ほど、怪談とも快談ともつかぬ話をしながら飲んだことあるが、当然ながら老
いた。おれも。日本料理の実態について述べたのち、「このように見てくると、
日本料理だけについても、実態は通俗のイメージとずいぶんちがう。食物史の
研究は未開拓であり、(略)ためにしばしばあやふやな"常識"をもとに、見当
はずれな論議が展開されがちとなる」と書いている。これも30年たつのに、
ちーっとも変わってねえな。

さて、それで、こういう「食文化」「食談義」ってことになると、あの瀬尾
幸子さんのような、いま『おつまみ横丁』が15万部以上とか売れている「実
践派」は、この当時から顔を出す幕がない。このへんに、まあ日本の男たちの、
飲食店と文献知識蒐集を舞台にした、つまり日々の台所ぬきの食談義の本質と
いうかインチキ臭さが感じられる。それも、ちーっとも変わってない。

そりゃそうと、このムックには、いくつかのレシピがあるのだが、堂々と美
味しいウンチクをたれながら「化学調味料」を使用している。たいがい、そう
いう味覚で育ったのよ。ま、そういうこと。

〈えんどう・てつお〉呑んでいる事も多く忙しい中、でも、先月は落としてし
まったし、南陀楼さんは9日の締め切りを遅れないようにというようなことを
メールに書いてあったし、とにかく急いで書きました。すみません。いろいろ
やっていますが、興味ありましたらブログでもごらんください。来月早々、関
係しているゲストハウスが旅人のためのインフォメーション・カフェを中野に
オープンします。ブログで詳細は告知しますが、ご支援よろしく〜。
ザ大衆食 http://homepage2.nifty.com/entetsu/

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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(61)酒がどんどん進む夜
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2007年の9月以降は、記念すべき創刊10号の発行へ向けた準備期間とな
った。もちろん、9号と『酔客万来』、それから、『酔客万来』の発行にあわ
せて「またちょっと置いてみてはもらえませんか」と依頼した拙著『中央線で
行く東京横断ホッピーマラソン』の営業活動も継続していた。

営業の中心はWクンとN美さん。酒がらみの雑誌記事の取材執筆に追われま
くる私は、午前中に自宅でちょっと原稿、午後から酒場取材、夕方以降は翌日
からの取材先の酒場への挨拶や下見を繰り返して、ほぼ毎日直行直帰。仕事場
にいる時間は、1週間に5時間。なんて状態に陥っていた。

そして、このような状態が2ヶ月も続き、11月になってようやく、第10号の
原稿もほぼ揃ってきたのだった。創刊10号を記念する企画は、みんなで10合
の酒を飲みながら来し方を振り返るなど、記念号にふさわしいというかなんと
いうか、いつもの通りの緩いものが多かった。入稿は11月19日(月)の深夜。
Wクンと私、カメラのSさんの3人で、市谷大日本印刷までタクシーで向かい、
守衛室に原稿を預け、その足で市谷田町にある『三晴』へ行った。

ここは、創刊号巻頭に掲載した『ホッピーマラソン』連載第1回の取材先だ。
ホッピーを頼み、名物のアシタバの天ぷらなどにかじりつきながら飲んでいると、
感無量といった心持になってくる。

ちょうど5年前。500部印刷した創刊号を持て余した私は、印刷所からの納
品当日、やはり市谷にある『地方・小出版流通センター』の社長を訪ね、200
部流通しようというお話をいただいたのだった。その日立ち寄ったこの店の大
将は、創刊祝いだといって勘定を受け取らなかった。そんなことが懐かしく思
いだされる。あの幸運がなかったら、『酒とつまみ』はこんなに人に知ってい
ただけるミニコミ雑誌にはならなかったな。そんな思いが膨らんでくる。

振り返ると、10号までの『酒とつまみ』は、幸運に恵まれ続けた。
中島らも、井崎脩五郎、蝶野正洋、みうらじゅん、高田渡、重松清、なぎら
健壱、井筒和幸、松尾貴史、玉袋筋太郎という方々をロングインタビューのゲ
ストに迎えることができたことも大きかった。私らのような無名の単なる酒好
き、ある意味では不気味なミニコミ制作集団と飲んでくださり、愉快な話をた
くさんいただいた。

自らの経験をもとにした経験談や、酒にまつわるおもしろ話を連載の形で提
供してくださった方々にも、あらためて感謝したいと思ったし、そうそう、大
日本印刷を忘れちゃならない、と思った。薄っぺらなミニコミ500部の印刷を、
どうして受けてくれたのか……。今となっては不思議な気もするのだった。
直接取引の書店さんや酒場とのお付き合いにおいても、売れないからすぐに引
き取れというような話はほぼ皆無だった。それくらい、やさしく付き合ってく
れる人たちに恵まれて、『酒とつまみ』は少しずつ知られるようになり、雑誌、
ラジオ、そしてとうとうテレビにも登場、一気に知名度を増して山のようだっ
たバックナンバーの在庫が消滅するということにもなったのだ。

幸運に次ぐ幸運。とうとう、10号まで来たねえ……。
酒がどんどん進んでいく夜になった。

〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集発行人。
某夜のこと。午後4時半から飲み始めて深夜にたどり着いた4軒目。よしゃあ
いいのに、そこでも3、4杯。とうとうカウンターでウトウトし、店を出たと
ころの2段ほどの階段によろけ、踏ん張れないからそのまま前のめりに転びま
した。おーっとっと。へへへ。腹ばいのまましばし笑うのですが、危ないよ、
そこは車の通る道路なんですから。
http://www.saketsuma.com

ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(70)小学館の巻  裏日本の県庁レベルの「幻のマスコミ像」ビル
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 大英帝国植民地時代の香港の公園には、犬と中国人入るべからずとの立て札
があったと。似た思いを抱かせる、“ここより当社管理地のため、許可ない者
の立ち入りを禁ず”との白いプレートがモノモノしい、陰惨ムード溢れる集英
社ビルの向かって左手に、話題の小学館ビルが(俺の漫画原稿返せーっ!!!)。

 千代田区一ツ橋2−3。小学館や集英社は、住友不動産ほどではないにしろ、
付近に腐る位の家作を持つ大地主だが、一番ポピュラーな白山通り沿いの、1
階にJTBの入ったビルを御殿本丸と認定、いざ進行。

 集英社に比べ、白っぽさを基調とした明るい建物だ。特徴ある造りではない
が、長方形の9階建て。裏日本の県庁レベルの押し出しはあり、『小学一年生』
や『少年サンデー』(5〜6年前ならともかく、1年もたたん原稿なくしちゃ
まずいゼ!)の読者だった、田舎の青少年が社屋前に立てば、「やっぱり東京
の出版社っつんなぁすんげえもんだや」(北関東弁)と、菅井きん風感慨をも
らすだろう(上京後、初めて見た版元様の御殿が、潮書房や現代書館の旧社屋
だった地方インテリ諸君の、その後の歩みが心配だ)。

“白っぽさを基調とした明るい建物”と書いたが、量的には白は角部分他一部
で、真正面の窓部分は、アイベタ×赤20×スミ20という感じの、暗くて重い
ブルーとでも言おうか、いわく言いがたい色調だ(側面も)。けどインウツな
感じがしないのは、窓が小さく区切られ、碁盤の目のようににぎやかなせい
(最近のビルは大きな1枚ガラスで、暗く冷感症的)。刊行物の影響か、昭和
30年代の木造マンモス小学校の外観のようにも見える。

 ビル内に立ち入りこそしなかったが、ビル左手玄関に地下鉄神保町駅が接し
てるためか、出入りする人も多く建物全体に活気が(集英社の陰惨ムードが引
き立て役に? なお、同社に個人的恨みは一切ありません)。グルリ一周。裏
手の一ツ橋センタービルも、同社関連物件と見え、育ちの良さそうな兄ちゃん
姉ちゃんらが、幸せそうにチャラチャラ出入り。前出両社に加え岩波書店もあ
るここらだけは、“テレビや映画で描写される幻のマスコミ像”が、具体的に
存在するのだと改めて実感(漫画屋の入居する三信ビル3Fは、3事務所が小
汚い共同トイレを。さっきから行きたいのに、誰かずーっと入ってて…。下痢
か?)。

 一周すると、また例の警告のある集英社入口付近に。再びムッとしつつも小
学館ビルに眼を戻すと、地下1階商店街の案内が。居酒屋「九州」、純喫茶「T
OP」、理容室「アドニス」…午前8時から午後10時まで営業と。御殿の地
下を貫通、地下鉄入口に接したビル玄関へ抜けられる構造。いやはや、マンモ
ス版元の家作はモノ凄い。歩き疲れてしまいましたよ、メクラでチンバの野良
犬のように(集英社に入ったら捕獲されるね、間違いなく!)。

 で、雷句誠の原稿だけど、抗議したら後から数枚出て来たって事は、1誌下
版後に1本ずつの原稿を整理してないのか? エロ漫画の下請けでもそれ位は
する。ただ10年放置したらなくなるよ、多くの版元、編プロで。移転の際に連
絡出来ない漫画家の原稿は、処分せざるを得ないから(都心の貸し金庫じゃね
えし。殺人の時効だって、こないだまで15年だった)。 
  
〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)、『出版業界最底辺日記 エロ漫
画編集者「嫌われ者の記」』(ちくま文庫)。1980年以降書き散らしたコラムを
まとめた『東京の暴れん坊 俺が踏みつけた映画・古本・エロ漫画』(右文書
院)が好評発売中。

なお、この連載に関しての批判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(た
だし、謝るとは限りません)。
mangaya@air.linkclub.or.jp
http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/

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[書評]のメルマガ vol.360
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■          vol.360
■■  mailmagazine of book reviews  [昔日の客 号]
■■------------------------------------------------------------
[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。
★「関西古本女子だより」頓花恵(トンカ書店) 
 →大阪と神戸の「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「音を探してページをめくる」貴島公
 →音楽サイト「モノノフォン」の主が、音とテキストの関係を考察する。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。
*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
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★これが最後の「アンダーグラウンド・ブック・カフェ」
 トーク、展示、ライブ、映画上映ありの古本イベント「UBC」が最終回。

6月1(日)〜3 (火)10:00-18:30
東京古書会館地下ホール

佐野繁次郎装丁展
トーク「モダニスト佐野繁次郎の装幀」
林哲夫+西村義孝
6月1日(日)午後1時〜 500円

講演「編集者・国木田独歩と謎の女写真師」
黒岩比佐子
6月1日(日)午後4時〜 500円

地下室の落語会「鯉昇、(本の街に)リターンズ!」―Risyou Returns―
6月2日(月)午後7時開演 於東京古書会館地下ホール
木戸銭1,500円
出演 瀧川鯉昇 三遊亭遊喜 瀧川鯉太
http://underg.cocolog-nifty.com/

★岡崎武志・山本善行『新・文學入門』(工作舎)発売記念イベント
サイン会
6月21日(土)、ジュンク堂京都BAL店、5時から

トーク&サイン会
6月22日(日)、神戸の海文堂、3時から5時まで

★『ぐるり』プレゼンツ 南陀楼綾繁のトーク十番勝負 
その1「フリー編集者であり続けるには」

出演 岸川真(フリー編集者・シナリオライター)
南陀楼綾繁(ライター・編集者)

『「映画評論」の時代』(カタログハウス)をはじめとする刺激的な単行本を
編集し、独立零細自営の編集者の実態を描いた『フリーという生き方』(岩波
ジュニア新書)の著者でもある岸川さんに、フリー編集者を続けていくために
必要なことをお聞きします。

日時 2008年5月30日(金) 18:30開場/19:00開始
場所 対抗文化専門古書 気流舎
世田谷区代沢5-29-17 飯田ハイツ1F
電話 03-3410-0024
http://www.kiryuusha.com/
入場料 800円(予約優先、15人限定)
予約 ビレッジプレス「ぐるり」編集部
info@village-press.net 03-3928-7699

岸川真(きしかわ・しん)
1972年生まれ。日本映画学校卒業後、映画製作者をめざしつつ、フリーの編
集者、インタビュアーとしてさまざまな本を手がける。最近編集したのは、佐
藤忠男『映画でわかる世界と日本』(キネマ旬報社)。

なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

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■関西古本女子だより  頓花恵
(9)昔日の客と昔日の古本屋
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いつものように店番をしていると顔なじみの初老のお客様がお見えになりま
した。
「この度の『ちくま』(筑摩書房の月刊PR誌)を読まれましたか? まだな
らこのページを読んでみられるといいですよ」と仰って開かれたのが、荻原魚
雷さんが連載されているページで『昔日の客と店主と写真集』と題された文章
でした。大森の古書店、山王書房店主の関口良雄さんが記されたエッセイ、
『昔日の客』に纏わるお話です。私はその場でその文章を夢中になって拝読し
ました。上林暁や尾崎一雄らと親交深かった著者のお店の風景とはどんなもの
だったのでしょうか。すぐにでも『昔日の客』を手にとってみたい気持ちにか
られましたが、その文面にも〈「幻のエッセイ」とはけっして誇張ではない〉
とあるくらい希少な本なので到底私には手に届かないような存在に思いました。

 すぐ後日、その初老のお客様が来店され、驚いたことにその手に『昔日の
客』。聞けばお持ちになっていたようで私に貸してくださるとのこと! 荻原
魚雷さんが〈五年も探した本だから、読むのがもったいなくて、一気に読み通
せなかった。それでどうしても読みたかった表題の「昔日の客」というエッセ
イを一行一行かみしめながら読んだ。〉と記されていましたが、正直、涙の出
る思いでそのご好意に感謝し、やはり勿体無くてすぐに読むことができません
でした。

 函入り布装丁の本には銀杏の葉が型押しされています。口絵には版画家、山
高登さんの作品。口絵は大森曙楼の風景画に『銀杏子の散歩道』と題されてい
ますが、「銀杏子」というのは関口良雄さんの俳名。関口さんが亡くなられて
後、出版された俳句集『銀杏子句集』もその後読む機会を得ました。

 偶然所持していた可卦喇同人による豆本、『可卦喇』に収録されてる内容(関
口痩浪人名義)を多少書き改め直した日記や、正宗白鳥や尾崎士郎いった方と
の交流エピソードやら、風貌がトルストイに似てるから勝手にトルストイの爺
さんと心の中で読んでいる来客者の話……古書店を通じ行き交う人々を関口さ
んは温かい目線で描かれていらっしゃいます。
 あらためて読書や古本の楽しみを知った気がします。また貴重な書籍を貸し
てくださった方のこの新米書店への激励を強く感じ、決意させられる思いでした。 

表題にもある「昔日の客」というのは関口良雄の元にかつて通っていた芥川賞
作家、野呂邦暢から送られた言葉によるものです。いつか駆け出し古本屋の私
にも語れる言葉を持てる日がくるのでしょうか。
『昔日の古本屋より 感謝をもって』。

〈とんか めぐみ〉神戸元町にてザックバランな古本屋を営業中。
5/17〜5/31 『京都黒猫堂、高橋さんを偲ぶ展』東方出版楠川さん主
催によります追悼展をトンカ書店にて催します。黒猫堂さんの書籍が並びます。

トンカ書店
650-0011 神戸市中央区下山手通3-3-12元町福穂ビル2D
078-333-4720
http://www.tonkabooks.com/

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■音を探してページをめくる  貴島 公
(9)幻じゃない40年
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向風三郎『ポップ・フランセーズ 名曲101徹底ガイド』
音楽出版社、2007年11月

 この本で言うところの「ポップ・フランセーズ」とは、「フランスで聞く
ことができる大衆音楽全般のことであり、その音楽スタイルや国籍などは問
題にしていない」とまえがきにある。大衆音楽の分類は、「好み」に応じて
便宜的に設定されるものだけど、それがしばしば音楽スタイルと地域の組み
合わせで表されるとすれば(地域が音楽スタイルを越えた共通性をもたらす
のかどうかはともかくとして)、この本は、好みに沿ってある種の音楽をガ
イドするものではないことになる。対象の定義によって、続く「名曲」「ガ
イド」の意味を変えてしまっている。よくあるガイドブックではありません
なんて一言も言わずに。

 では、この本がガイドしているのは何かと言えば、歌が流れ、聴かれ、時
に歌われる風景、その歌を生み出した背景ということになる。日常のちょっ
とした変化や歴史には記されないかもしれない出来事、作り手たちの悪戦苦
闘や私生活の右往左往。歌の数だけ綴られるそれらのエピソードは、雑学も
のとしても充分に面白い。フランスものの事情にわたしが疎いだけかもしれ
ないけれど、音楽周辺の話だけに絞っても、ヴェロニク・サンソンと70年万
博の関係、エルトン・ジョンによるフランス・ギャルへのアンサーソング、
レオ・フェレのムーディ・ブルースへのシンパシー、ジャン・ミッシェル・
ジャールの『幻想惑星』の売れ方など、そうだったのかと感嘆すること多数。
フランスの生活感、メディアの変化なども織り込まれている。

 選ばれている曲もいわゆる名曲とは趣きが異なる。ヒット曲であることが
まず前提。フランスの事情に疎いので、ヒット曲だったのかどうかを判定す
ることはできないけれど、聴いたことのある曲を拾うだけでも、いわゆるフ
レンチポップスあり、シャンソンあり、パンクロックあり、歌謡曲あり、他
民族ものあり、いまでも聴かれているものもあるけど、一発屋もあるという
具合で、共通項がない。あるとすれば、おそらくヒット曲ということなのだ
(ジュリーがフランスで出したシングルまで含まれている)。ヒット曲は世
相を映すから? それもあるかもしれないけれど、それだけではないように
思える。

 1968年から2007年までの百を越える楽曲についてエピソードを綴りながら、
そこに個人的な思い出話の類がほとんどなく、突拍子もない冗談すら含まれ
ているのにもかかわらず、通して読むと浮かびあがってくるものがある。浮
かび上がってくる著者の信条(それは1968年5月に始まる)の当否にはここ
では触れない。ヒット曲が流れている風景のどこかに、一貫して、著者の姿
を感じ取れるということにまず驚いたから。取り上げられている歌を知らな
くても読める、なんて言ったら、音楽は関係ないみたいで、それはちがうの
で困るけれど。

〈きじま・こう〉説明業、趣味・読書と音楽鑑賞。
 最近本屋さんで驚いたことと言えば(と訊かれているわけではないのです
が)、川島芳子についての新書が出てるなぁと思って手に取ったら、著者が
シンガーソングライターの寺尾紗穂さんだったこと(『評伝 川島芳子』
(文春新書、2008年3月))。東大大学院の修士論文を元にしたものらしい
ですが、本業とのつながりのなさになんでか好感を持ってしまいました。

「モノノフォン」
http://homepage1.nifty.com/hebon/fhp/

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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(60)脅かすんじゃあないよ!
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『酔客万来』という編集部として第2弾となる単行本を無事に出版した8月は、
ちょっとヘビーだった。痛風発作のため、完璧な断酒にまで至らなかったもの
の、薬を飲みながらのおっかなびっくり暮らし。自宅でホッピーの外だけを飲
んだり、ノンアルコールビールを飲んだりしつつも、外へ出れば酒の席があり、
そこではまあ、こりゃやばいんじゃないのと思いながらサンマ尽くしのつまみ
でレモンハイを飲んだりしていた。

 それでも、ちょっとびびるだけで、わが肉体の数値というものは劇的に改善
されることもわかった。発作後、1週間我慢して病院へ行き、そのとき当然採
血するのだけれど、翌週また行って採血されつつ最初の採血の結果を知らされ、
さらに翌週も出かけていって、2回目の血と尿の検査結果など言い渡されるわ
けだが、たった1週間びびっていただけで、もちろん薬も飲んだのだけれど、
痛風がらみの尿酸値は平常値に戻り、肝臓がらみのγ―GTPとやらも、一気
に200も下がっていた。もとが580ですからね。威張れたもんじゃあない
んですが、この調子でびびり続ければすぐに100を切るね、なんか思ったも
んだ。

 仕事のほうは、酒がらみが同時期に3本もスタートする感じで、下見やら打
ち合わせやら取材やらで、けっこうのみ、8月14日には、みんなお盆で休んで
るんだからさ、とか言いながら、編集W君とN美さんを誘い出して銀座ロック
フィッシュで午後3時からバカ飲みしたりもした。

 まるっきり仕事場に顔を出せない状態。というのも、午後には取材・打ち合
わせがひしめいていて、夜は酒になる。午前中にせめて原稿を、となると、仕
事場へ行くより自宅でそれを片付けて直接人に会うほうが無駄がない。でも、
そのために、『酔客万来』に関して、ほぼ、営業活動をしていない状況にも陥
ってしまった。
 9月に入ってすぐ、TBSラジオ『ストリーム』に出させていただき、そこで
少しこの本のことを喋らせてもらえたのが私としては最大の収穫で、そのスタ
ジオにも、近くの蕎麦屋で1杯引っ掛けてから行くようなひでえ状態だった。

 痛風を診てくれていたのは高校時代の同級生で、数値が大したことないから、
あまりきつく治療を勧めるというわけではなかったのだが、8月の末に高校の
同級生数人と朝まで飲むような激しい一夜を過ごしたとき、同席してくれた医
師は、もう一人の医師とふたりして、言ったものだった。
「あのね。肝臓のさ、GOTとかGPTってやつはね。肝硬変になってからだと、
あんまり数字が出ないのよ。だからね。お前の場合も、肝臓、ちゃんと見ない
とダメだね。あはは」

 で、超音波検査を受けることになった。嫌だよ。肝硬変は。肝癌と言われた
ら泣く。そんなことを思いつつエコー検査を受け、その後で診察室へ帰ったら、
言いやがったね。
「オータケ。肝臓がん、は、ないみたいね」
「……」
「でね、肝硬変」
「……?」
「なってないみたいね。ニッポンの平均的酒飲みオヤジだね。軽い脂肪肝って
とこかな」

 脅かすんじゃあねえよ。なにひとつ言葉を継ぐことのできない私を見ながら、
友人の医師はひたすらニヤニヤ笑うのだった。

〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集発行人。
府中にある東京競馬場が、今、開催中です。競馬の途中で飲むのも好きですが、
途中は懸命に考えて大わらわで馬券を買って、その後で飲むビールは最高です。
京王線東府中駅近くの18時閉店の飲み屋で、そら豆とビール。勝っても負け
ても、これはうまい酒です。
http://www.saketsuma.com

ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(68)モーターマガジン社の巻 威風堂々の『ナバロンの要塞』ビル
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 北関東のド田舎に住みながら、車やバイクの免許を持たない俺が、村で一種
の“かたわ者”扱いされてるのは本当(身障者手帳こそないが)。『唖侍』(若
山富三郎主演・'72日テレ)、いや『めくらのお市』シリーズ(松山容子主演・
'69〜'70松竹)でもなかった、単なるかたわ者の俺が、一番無縁な版元様の
前を、月に1度は通るハメに。

 レンガ通りとやらにある、モーターマガジン社だ(港区新橋5-33-10)。我
が漫画屋の大スポンサー一水社が、通りを隔てた裏っ側にあるため(港区新橋
5-35-8。もちろん、こちらは自社ビルじゃない)。7階建ての、威風堂々たる強
固そうなビルだ。エロ本屋はどんな立派なビル建てても、どっか出っ歯の人が
口元を無意識に隠すような、“コソコソ感”がぬぐえない。が、コゲ茶色のレ
ンガで全身を覆ったこのビルに、その種の引け目はみじんもない。「どっから
でもかかって来いっ!!」と、ビル全体が全世界に向かって叫んでいる(『ナバ
ロンの要塞』か?)。

 そのイメージ形成の大砲役を果たしているのが、巨大な看板(はっきり言っ
てコレに比べりゃ、ベースボールマガジン社の物など、三八式歩兵銃)。ビル
の2階から6階にかけて、縦に「ドッカーン!!!」。で、一字ごとにかなり
空けて(余裕シャクシャク)。なつかしの写研写植文字、オーランミンチョウ
が扇風機ですすんでるような書体で、モ ー タ ー マ ガ ジ ン 社。
看板見ただけで、何の義理も借金もないのに、「へへーッ!!」と平伏したく
なる。

 冷静になって考えれば、便利なバイクは車に次ぐ“日常の殺人兵器”でもあ
る。小谷野敦ではないが、大気汚染面でもタバコなど比較にならないほど凶悪
(暗にエロ本は煙害以下だと言ってマス。肺ガンにもならんし)。つまり、何
も俺もそんなコソコソしなくてもいいのだが、やっぱ下半身産業って、理論武
装をいくらしても、伏し眼がちになっちゃうんですったら(カワユイでしょ?)。

 更に同社、近くに心強い援軍が。チョイ先の道の反対側に、うり2つの看板
でゴルフダイジェスト社が。どう見ても、肉体関係なしの間とは思えぬそっく
り振りに調べたら、子会社と。当然これまた立派な看板だが、“モ社”のそれ
のような圧倒的迫力はない。「所詮ゴルフか…」いざとなれば、軍事転用も容
易なモーター産業関係媒体と、ナンパ産業の差でも申しましょうか(エロ本屋
と同レベルとまでは言わんが…)。

 月刊『オートバイ』で、大正12年の創業と。一水社も古く、敗戦直後からと
聞いたが、ちょっと太刀打ち出来ない。『モーターマガジン』『ホリディオート』
『ミスターバイク』…『江戸川乱歩全集・恐怖奇形人間』('69東映京都)じゃ
なかった、単なる“マシンかたわ者”の俺には、死ぬまで縁のなさそうな出版
物ばかり。HPを見てて「オヤッ?」と思ったのは、大阪と並び、静岡に支社
がある点。車は愛知でしょうが、バイクはこっちになるのかと、スピード音痴
の俺もさすがに気がついた。                      
   
〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)、『出版業界最底辺日記 エロ漫
画編集者「嫌われ者の記」』(ちくま文庫)。1980年以降書き散らしたコラムを
まとめた『東京の暴れん坊 俺が踏みつけた映画・古本・エロ漫画』(右文書
院)が好評発売中。

なお、この連載に関しての批判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(た
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■ 発行部数  5382 部
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[書評]のメルマガ vol.356
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■■ [書評]のメルマガ   2008.4.14発行

■        vol.356
■■  mailmagazine of book reviews [ 詩を書くひとたち 号]
■■------------------------------------------------------------
[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。春はあちこちで古本市が!
★「関西古本女子だより」真治彩(ちょうちょぼっこ) 
 →大阪と神戸の「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「千駄木ドロナワ日記」川原理子
→地域雑誌『谷根千』の若手スタッフが綴る、日々のあれこれ。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。
★「食の本つまみぐい」遠藤哲夫
 →超多忙にて休載です。
*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
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★続・雑誌に未来はあるか?――「路字」創刊記念
「小さなメディア」と自主流通の可能性

4月16日(水)19:30〜 
阿佐ヶ谷ロフトA http://www.loft-prj.co.jp/lofta/index.html
料金:1000円
出演:仲俣暁生(フリー編集者、文筆家)、南陀楼綾繁(ライター、編集者)
ゲスト:大竹昭子(作家)、吉田保(編集者、フリースタイル)

商業誌がつまらなくなっている一方で、ミニコミやインディ雑誌やフリーペ
ーパーといった自主流通メディアが元気だ。新刊書店ではなく、古書店や飲み
屋、雑貨屋やカフェに置かれているこれらの「小さなメディア」のなかに、雑
誌の未来を見いだせないか。『sumus』『彷書月刊』『ぐるり』『WB』『酒とつまみ』
など、さまざまなミニコミ&フリーペーパーで活躍し、東京・谷中で「不忍ブ
ックストリート」を主宰している南陀楼綾繁と、下北沢でフリーペーパー「路
字」を立ち上げたばかりの仲俣暁生が、町と連動したメディアがもっている可
能性について語りあう。入場者全員に「路字」創刊号を配布します。

★ちいさな古本博覧会

開催日時:5月10日(土)/11日(日)  10:00〜18:00
会 場 :西部古書会館
     杉並区高円寺北2-19-9
     JR中央線高円寺駅下車徒歩5分

2000年以降に開店した新世代の古書店を中心に、多彩な古書店が大集結。独
自の感性で選んだ、優れ本、懐かし本、珍し本のあれやこれや。個性あふれる
店が、それぞれ自慢の品物をプレゼンテーションします。面白楽しいイベント
も同時開催。今までの古書催事とは、一味違う賑わい空間を創出します。探し
ていた本、初めて出会う本、あなたにふさわしい本をここで見つけてください。

参加店舗
Paradis(パラディ)、コクテイル書房、常田書店、アジアンドッグ、オヨヨ書林、
そら屋六進堂、はらぶち商店、モダンクラシック、書肆アゴラ、音羽館、風船舎、
しましまブックス、書肆楠の木、アバッキオほか

・厳選オークション 10日(土) pm1時、pm3時 2回開催
・岡崎武志のBOOK JOCKEY 11日(日) pm1時-2時
・最終大売出し 11日(日) pm3時-6時

詳細情報は以下
http://blog.livedoor.jp/furuhon_hakurankai/

★ロバロバカフェ春の古本市
もう3回目だっけ? すっかりおなじみです。

参加店
booby bookstall、book cafe 火星の庭、book pick orchestra、
yojohon book store、貸本喫茶ちょうちょぼっこ、古書モダン・クラシック、
とらんぷ堂書店

4月26日(土)〜5月7日(水)

ロバロバカフェ
156-0052 世田谷区経堂2-31-20
TEL&FAX  03-3706-7917
定休日 木・金曜日
http://www15.ocn.ne.jp/~robaroba/index.html

★神戸でも古本市
海文堂の古本市 〜 本におぼれる2週間 〜

4月26日(土)〜5月10日(土)
海文堂書店 2F <Sea Space>

新刊本屋に「限界」アリ。古本屋もしかり。ならば、両者揃えばカンペキ・
安心、ダイジョーブ。で、【海文堂の古本市】。古本屋さん8店が当店にやっ
てきます。中国書・文学・探偵小説・地図・絵ハガキ・一枚刷・野球・サブカ
ル・近現代史……。ジャンル豊かなクセ者揃い。2006年11月に開催の「三
箱古本市」は大盛況でしたが、今回はさらにパワーアップ。新しい本と古い本
が醸し出す“本の匂い”が店内に溢れます。本好きにはたまらない2週間。あ
れこれいっぱい物色して、本の海におぼれてくださいませ!

参加店
あさかぜ書店(明石)・一栄堂書店(長田区)・カラト書房(灘区)・オール
ドブックス ダ・ヴィンチ(中央区)・みょうが堂古書店(宝塚)・レトロ倶
楽部(中央区)・やまだ書店(兵庫区) 1F常設:ちんき堂(中央区)

海文堂書店
〒650-0022 兵庫県神戸市中央区元町通3丁目5番10号
電話:078−331-6501
http://www.kaibundo.co.jp/

★不忍ブックストリートの一箱古本市
関連企画とあわせて、次号で告知します!
なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

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■関西古本女子だより  真治彩
(8)それでも詩を書くひとたちがいて
----------------------------------------------------

 詩や詩人について書かれている本を好んで読むようになったのはごく最近の
ことだ。詩が好きなのかと問われれば、「いや、好きっていうかー」とちょっ
と変な具合に気恥ずかしくなって、肯定はできない。
 
 詩を読むという選択肢や詩を楽しむ素養というものがじぶんのなかにはあま
りなかったのだけど、詩論や詩人論を読んで、詩人の人となりを知り、ある程
度の詩の解説を読んで詩集に入っていくという、読み方を最近はしている。
『我が感傷的アンソロジー』(天野忠)→『近江の詩人井上多喜三郎』(外村
彰)→『井上多喜三郎全集』といった具合。「なんもわかっちゃいないよ、き
み」と詩を愛するひとからは言われそうだけど、だって、わからないから仕方
ない。

『我が感傷的アンソロジー』とおなじくらい好きな詩人論に『死んでなお生き
る詩人』(北川朱実)という本がある。ちょうちょぼっこの次田さんが「天野
さんのことが書いているよー」といって教えてくれた本。この本には永塚幸司、
瀬沼孝彰、長岡三夫、氷見敦子など、これまで聞いたこともない詩人について
書かれている。どの詩人も、もうちょっと楽に生きたらよいのにと思うほど、
社会に馴染めず、なんだかつまづいてばっかりで、孤独な感じがした。けど、
なんとなく、なるほど、こういうところに詩はあるのだな、とか、分かった気
になって、いや、たぶん分かってないのだけど。ただ、この本を読んで、永塚
幸司や瀬沼孝彰の詩集を読んでみようという気になったのはほんとうかも。

「僕は、一生懸命詩人になろうとしている奴はいやでね、普通の生活をしてい
るなかでボソっと書いている人がいるでしょう。あれが詩人だと思う。」(BOOKISH
3号 特集:木山捷平)で高田渡は言っている。渡さん!けど、みんな、ボソ
っとは書いていないみたいと思いながら、渡さんの歌の歌詞みると、現代詩が
たくさんあって今になって驚くわけ。「生活の柄」(山之口貘)、「ブラザー軒」
(菅原克己)、「系図」(三木卓)、「夕暮れ」(黒田三郎)、「夕焼け」(吉野弘)。

なるほど! ってなにがなるほどかはさておき、とりあえず、詩をちょっと
ずつ読んでいこう、とか思っている今日このごろなわけです。

〈しんじ あや〉
ちょうちょぼっこメンバー。気づけばちょうちょぼっこも8年目に突入しまし
た! 若い子に、「オウム事件の時、何歳だった?」と聞いて、その答えに軽
くショックを受けるのがわたしのなかの流行りです。

貸本喫茶ちょうちょぼっこ
〒550-0014 大阪市西区北堀江1-14-21 第一北堀江ビル4F
http://www.geocities.co.jp/chochobocko/
*営業日は、第1〜3週末です。 金18:00-21:00、土日 13:00-21:00

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■千駄木ドロナワ日記 川原理子(谷根千工房)
(7)8年ぶりの本
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3月15日(土)
川原湯温泉に行き、夜、『密語のゆくえ』(岩波書店・松枝 到 著) を
読む。
手紙や会話調でなかったら、さらに難しく感じただろう。どんな本だったか
と問われても、内容は説明できない。けれども、心の中に一本、川が流れたよ
うな気がした。最後まで進めたということは、私も8年前より、少しは成長し
たのだろうか。(わからなくても平気なあつかましさが身についただけか)

この本には懐かしく、また恥ずかしい思い出がある。
並河萬里 の写真に引かれて、和光大学人文学部にはいった(補欠でどうに
か入れてもらった)1年目、松枝先生の授業に登録したので、どんな先生かと、
図書館で『密語のゆくえ』を借りた。しかし、出てくる言葉、出てくる人物知
らなくて、読んだとはいえない状態。辞典をひきながらでも読むべきであった
のに、眺めた、ページをめくった、字数を数えたにとどまってしまった。

その上、黙っていればいいのに、ばかな私は先生に「梵字の本、読みました
が、むずかしくてわかりませんでした」と言ってしまった。先生は「そう?
あれは僕の愛だよ」とおっしゃった。
この本に始まって、大学の4年間は恥の掻き通しだった。何にも知らないく
せに、根拠のないプライド、見栄っ張り。いまもなかなかなおらない。

そうそう、登録した松枝先生の授業は「コーランを読む」だった。しかし授
業の初日集まった学生を見て、先生は「コーランはアラビア語で読まないとい
けないが、あなたたちはアラビア語は読めないだろうから」と、コーランをや
めてイスラムの装飾文字の研究書(英文でチンプンカンプン)を読むことにな
った。コーランについては「岩波文庫で井筒俊彦という人の訳であるから、読
みたい人は自分で読みなさい」とのことだった。先生は、講義要綱を作った時
点で、アラビア語ができる学生が集まってくると思っておられたのだろうか。

そんなことで、コーランの授業はなくなり、装飾文字の講読はどうなったか。
しまいまで読んだかどうか忘れてしまった。とちゅうでやめてはいないと思う
けど、覚えてないなら同じことだ。

〈かわはら・さとこ〉谷根千工房社員
虹の玉というブドウの実みたいな姿の多肉植物を冬に買って、ほったらかしに
しておいたが、元気。ぽろぽろ取れた葉からも、根が出るらしく、少しづつ増
えています。水はあげないほうがいいくらいだそうなので、ものぐさで留守が
ちな人向き。モジホコリは、ピンク色ののカビにやられること3回、そのたび
に小さくなっていったが、ついに再起不能に。とけたオートミールの上でカビ
にやられていたので、どうすることもできなかった。管理が悪くてごめん。

「谷根千ねっと」
http://www.yanesen.net/

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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(59)納品日くらい働けって
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『酒とつまみ』発の単行本第2弾『酔客万来』はいよいよ完成のときを迎えた。
インタビューの録音テープを起すところから始まる編集作業のごくごく一部に
しか貢献できなかった私は、せめて印刷所からの納品の日にははりきって働き、
その後の営業活動にも、実に久しぶりに力を入れてみようなどと考えていたの
だった。
 でも、できなかった。体がついていかなかったのだ。

 この本の校了は、07年7月22日。日曜日だった。深夜まで作業してから大
日本印刷の守衛室に校了紙を届ける予定であったので、私は車で仕事場へ行っ
た。しかしこのとき、自宅から車で行こうと決意したのには、もうひとつの理
由があった。足が痛かったのだ。

 前日、自宅で原稿作業をしている頃から左足の甲が痛み始め、当日には靴を
履くのが躊躇われた。仕事場でもずっとサンダル履きで軽く足を引きずる感じ。
どうもおかしい。酔っ払って昨日、どこかで足を捻ったか?
 その疑いは、翌日になって、間違いであることがわかった。翌日にはもう歩
けなかったのだ。これは捻挫じゃない。

しかもその日は、『酒とつまみ』10号の酔客万来コーナーの取材日。ご出演
は玉袋筋太郎さんで場所は中野坂上だ。けれど私は歩けない。自宅までタクシ
ーを呼び、三鷹駅へ出て荻窪で丸の内線に乗り換える。そのあたりまでで体力
のほとんどを使ってしまうほど、足が痛えのである。
 中野坂上の駅から目指す加賀屋さんまで普通なら5分ほどの道に20分をかけ、
額にあ脂汗が滲んだ。ああ、歩けねえってのに、これから大酒を飲むのか……。

 で、その後のことは思いっきり端折りますが、痛風と診断され、薬を飲んで
痛みこそ和らぐものの、どこか違和感を抱えつつ、同時に、好きなものを食っ
て好きなだけ飲めばすぐに再発、なんてことを気にしながら恐る恐る飲んで、
頭にくるとガブ飲みしていたのであるから、31日の納品日のときにも、まだ
まだ本調子ではなかったのだ。
 でも、薬のお陰で、痛みは引いている。私は頑張ろうと思うのだ。

「無理しないでいいですよ、私やりますから」
 そう言ってくれたのはN美さんだ。華奢な体でこのクソ暑いときに、エレベ
ーターのない雑居ビルで本を運び上げるというのは、ちょっとした懲罰に近い。
でも、彼女はそう言って微笑むのだ。

 私は咄嗟に、甘えることにした。梱包の数など数えたりしながらお茶を濁す。
作業が終わると、みんなに缶ビールを配った。
「かんぱーい!」
 もっとも声が大きかったのは私であろうか。

納品日くらい、働けよな……。最大の功労者である編集Wクンの顔はそう語
り、カメラのSさんはバカにしくさった目で私を見ていた。
おいおい、なんなんだよ、その目つきは? などと言わずに、痛風患者の大
敵であるビールをおいしくいただく私であった。

〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集発行人。
その後痛風との付き合いは、表面的には穏やかで、食事も酒も基本的に制限せ
ず、でもやはり、飲みすぎた翌日には左足の甲に若干の違和感を覚える感じで、
続いています。それはそれでいいのですが、酒浸り・仕事漬けの日々を送って
いたら先般、血尿でました。
http://www.saketsuma.com

ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(68)ベースボールマガジン社の巻 スポーツ版元の“汚れたTシャツ”ビル
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 首都高速の真下を、陰気に流れる日本橋川。飯田橋2町目付近から水道橋方
向へ、新川橋を渡るとすぐ『週刊金曜日』の入居するビルが、との話は前回書
いた。新川橋に向かって左手、約200メートル離れた所に、あいあい橋が
(“iーi bashi”とのルビ。千代田区役所の役人の馬鹿さ大爆発!!)。

 JR水道橋駅への近道になるため、小さいが人の絶えないこの橋を渡ると、道
を隔てて少年画報社ビル(本連載で扱い済み)。狭いのに通行車両が多く、危
険なこの通りを渡らず、左手に進むとベースボールマガジン社だ(千代田区三
崎町3‐10‐10)。6階建てで白が基調。窓枠は黒。外壁はシミ他の黒っぽい
汚れが目立つ。運動する者の上着が汚れるのは仕方ないが、スポーツ系版元の
外見が不潔なのは見苦しい。ケチらず、すみやかに塗リ変えなさい(余計なお
世話?)。

 それに学んだのか、道を隔てたトコにある別館は、汚れの目立たないコゲ茶
色(同じく6階)。右側を、銀色でLLサイズの電柱状のモノが貫いており、機
能重視から外見重視への転換がうかがえる。2代目が、親の遺産でビル建てる
とこうなりがちだが、果たして真相は?

“白い薄汚れたビル”(“濡れたTシャツ”ならぬ“汚れたTシャツ”か?)は、
確かに面白味のない御殿だが、好感を抱かせる面も。看板だ。白地にオレンジ
文字で「ベースボールマガジン社」とババーン!!!(誰も「東京堂書店」1
階レジでの、畠中新米書店員並の存在感だなんて言ってません)。

 2、3、4階にかかると言えば、その巨大さがわかってもらえると思う(ビ
ル左端に縦に)。看板のトップには、同社のシンボルマークでもある、円盤投
げの青年(オッサンにしか見えないが)がブルーでチョコン。この危ない道を
通った者の99パーセントは、同社の存在をドタマに刻んだはずだ(少年画報社
の“赤胴ビル”など、13パーセントがいいトコ)。だからこそ外壁改修一日も
早くな(うるせっつーの!!)。

 普段は出版物にも触れるが、全く関心のない分野だしと思ってると、玄関に
恒文社の重厚なプレートも。創立者(池田恒雄)の一字を付けたとおぼしきこ
の子会社、かつてはとても商売になるとは思えない、東欧系の翻訳小説を多数
刊行(『時間と分』を買ったが、文字が小さすぎて読む気になれなかった)。
後に『噂の眞相』で、社長が外国の勲章欲しさに、競争の激しい英米仏等を避
け、穴場を狙ったと読み即納得(同姓の脂ぎった爺様が、カルト界で同じ真似
を今も)。

「社長の道楽で銭をドブに捨てずに、俺達の給料上げろ!!」と、各スポーツ
誌の編集は、はらわたが煮えくり返った事だろう。が、社長族はどこでも同じ。
『SMセレクト』が絶頂を迎えてた頃の東京三世社も、『少年少女SFマンガ競
作大全集』なんて、超赤字本ダラダラ出してたし。そういや、自社ビル建てる
前の同社は、この近所の雑居ビルに。お、コミックハウスと茜新社もすぐ眼の
前。次回は当然ここだな。                       
   
〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)、『出版業界最底辺日記 エロ漫
画編集者「嫌われ者の記」』(ちくま文庫)。1980年以降書き散らしたコラムを
まとめた『東京の暴れん坊 俺が踏みつけた映画・古本・エロ漫画』(右文書
院)が好評発売中。

なお、この連載に関しての批判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(た
だし、謝るとは限りません)。
mangaya@air.linkclub.or.jp
http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/

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[書評]のメルマガ vol.352
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■■ [書評]のメルマガ   2008.3.15発行

■          vol.352
■■  mailmagazine of book reviews  [名前はわかるよね 号]
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[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。一箱古本市やトークいろいろ。
★「関西古本女子だより」頓花恵(トンカ書店) 
 →大阪と神戸の「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「音を探してページをめくる」貴島公
 →音楽サイト「モノノフォン」の主が、音とテキストの関係を考察する。
★「〈畸人研究〉今柊二の読書スジ」
 →瞬間を記録するということでは鉄道関係の人々はスバらしい仕事をする。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。
*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
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★不忍ブックストリートの一箱古本市
 毎年春・秋に開催される「不忍ブックストリートの一箱古本市」。今年の春
はなんと、2日間開催です。また、この両日を含む、4月26日(土)〜5月6日
(火・祝)までは、一箱古本市weekとして、ライブ、展覧会、講談、トークなど
のイベントが15以上開催されます。こちらもお見逃しなく。

日時 2008年4月27日(日)& 5月3日(土祝)
時間 11時〜16時(両日とも)

現在、両日に出品する店主さんを募集中です(先着順、3月24日締め切り)。
すべての情報は下記をご覧下さい。

「しのばずくん便り」
http://d.hatena.ne.jp/shinobazukun/

★『山のぼりおり』発売記念石田千トークイベント三連発

エッセイスト・石田千さんが「のぼりおり」した十の山。『山と渓谷』での連
載を一冊にまとめた『山のぼりおり』の発売を記念して、トークイベントを開
催します。
石田千さんをよく知る御三方が、「いったいなぜ山のぼり?」という素朴な疑
問をぶつけたり、「山といえばね…」と思いもかけぬ話をはじめたり、山をテ
ーマにゆるゆるとおはなしする会です。
ちなみに、山のぼりに関してはみなさん初心者ですので、山の知識や経験は必
要ありません。お休みの日の開催です。散歩がてら、お気軽にご参加ください。

石田千×荻原魚雷(フリーライター)
会場 高円寺・古本酒場コクテイル http://koenji-cocktail.com/
日時 3月20日 (木・祝)16時30分開場 17時開演 19時終演
定員 20名(先着順)
料金 入場無料ですが、飲食代は別途かかります。ワンドリンク以上のオーダ
ーをお願いします。
申し込み方法メールにて「石田千トークイベント」とお申し込みください。宛
先はこちらcocktailbook@hotmail.co.jp
お名前、人数、当日ご連絡のつく電話番号を明記してください。

石田千×畠中理恵子(元書肆アクセス店長)
会場 神田・アンチヘブリンガン 千代田区猿楽町2-7-11ハマダビルヂング2F
日時 3月22日(土)13時30分開場 14時開演 16時終演
定員 20名(先着順)
料金 1000円(ワンドリンク付) 
申し込み方法メールにて「石田千トークイベント」とお申し込みください。
宛先はこちらantiheblingan@tcn-catv.ne.jp
お名前、人数、当日ご連絡のつく電話番号を明記してください。

石田千×田村治芳(彷書月刊編集長)
会場 神保町・ヒナタ屋 www4.plala.or.jp/HINATA-YA/
日時 3月22日(土)17時30分開場 18時開演 20時終演
定員 20名(先着順)
料金 1000円(ワンドリンク付)
申し込み方法メールにて「石田千トークイベント」とお申し込みください。
宛先はこちらhinata.ya@ivory.plala.or.jp
(ヒナタとヤのあいだに.がはいります)
お名前、人数、当日ご連絡のつく電話番号を明記してください。

注意書き※ 各回ごとに申し込み先が異なりますのでご注意ください。
※イベントに関する最新の情報www.yamakei.co.jp

★ブルース・インターアクションズの新刊
 ブルース・インターアクションズの新レーベル「P-Vine Books」より、2冊
が出た。北山耕平『雲のごとくリアルに 長い距離を旅して遠くまで行ってき
たある編集者のオデッセイ』は、1970年代に『ワンダーランド』や『ポパイ』
の編集者として活躍した北山氏の自伝的エッセイ。『本の雑誌』連載中の津野
海太郎「サブカルチャー創世記」と読み比べてみると面白い。1600円。もう一
冊は、ブル・モーガン『ビート・ジェネレーション ジャック・ケルアックと
旅するニューヨーク』。2381円。ケルアックの旅をたんねんにたどったもの。
ビート文学入門書でもある。本書の発行日は、ケルアックの誕生日にちなんだ
3月12日だ。
http://www.bls-act.co.jp/bm/index.php

★『女子の古本』発売記念
岡崎武志さん 浅生ハルミンさん トークイベント

『女子の古本』(筑摩書房より3月25日発売予定)の発売を記念して、著者
で書評家の岡崎武志さんと、表紙デザイン・挿画を担当したイラストレーター
の浅生ハルミンさんのトークイベントを開催します。

期日 4月13日(日) 午後5:30〜
場所 オリオン書房ノルテ店内ラウンジ
入場料 500円
お電話・メール・店頭にて席のご予約をお願い申し上げます。
トークイベント終了後、お二方によるサイン会を開催させていただきます。
サイン対象本は当日会場にても販売させていただきますが、
岡崎さん・浅生さんのご本でしたらお客さまお持ちの、弊社でお買い上げいた
だいた本でないご本でも結構です。

オリオン書房ノルテ店
TEL:042-522-1231
http://www.orionshobo.com/

もうひとつ岡崎さんのイベント。

岡崎武志 コクテイル・ライブ・トーク(春)
中央公論新社『ベストセラーだって面白い』の発売を記念して、岡崎さんのラ
イブ&トークをおこないます。

日 時 :3/18(火) 19:00開場 19:30開演
チャージ:1000円

場所 古本酒場コクテイル(高円寺)
http://koenji-cocktail.com/
※要予約です。お申し込み&お問い合わせは下記
 03-3310-8130またはcocktailbook@hotmail.co.jp

★水族館劇場、古書ほうろうに現る!

日時:2008年3月19日(水) 
    開場 18:30/開演 19:00(終了予定時間 22:00)
料金:1500円(簡単な打ち上げつき)
定員:40名(要予約)

演目
・第1部 さすらい姉妹『鞍馬天狗』
  作演出 桃山邑

・第2部 対談「いのちを屠るということ──やさしさ、について」
  内澤旬子(イラストルポライター)
  桃山 邑(水族館劇場代表)

*ご予約は、古書ほうろうまで、メール、または電話で。先着順にて受け付けます。
・メール あて先:horo@yanesen.net 
件名:3月19日 水族館劇場 申し込み
お名前、人数、当日ご連絡の取れる電話番号を、お書き添えください。
・電話:03-3824-3388
*飲みものは、ご自由にお持ち込みください。
*お問い合わせは、古書ほうろうまで。

なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

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■関西古本女子だより  頓花恵
(7)ある古書店でのあるご縁
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近頃、お店の中のやり取りでこんな光景が増えました。
「あ、袋は大丈夫ですよ」「そのままでー」「袋持ってますので」「袋ありま
ーす」……。購入していただいた本を袋に詰めようとすると、持参の袋を差し
出される方が多いのです。少し前までは女性に多かったのですが最近は男性も
かなり多くなりました。それも急激に。
 エコバッグというのでしょうか、鞄の中から携帯用カバンを取り出され慣れ
た手つきで詰め込まれていくのです。

そして、買取依頼のお話しでは、「どなたかに使っていただきたいのです」
「もらって生かして欲しい」「傷んでいますがいい本です」「家の人のもので
私は読んだことないのですが誰か欲しい人はいませんか」引き取り手を探して
おられる方の多いこと。本を捨ててしまうのはあまりに辛すぎる、そんな思い
が毎回伝わってきます。

 神戸の灘区にある神戸学生青年センターでは毎年六甲奨学基金のための古本
市が行われます。(今年は3/15〜5/15です)六甲奨学基金とは主に留・
就学生への奨学金支給などを目的にした基金でこの古本市も基金活動の一環に
なっています。古本市に並べられる古本は皆が不要になって送ってもらった本
で成り立っていて、売価も一冊100円〜300円とお値打ちで掘り出し物も多数
出るようです。古本市に本を送られる方の気持ち。買う人もそれを受け取る気
持ち。本のバトンです。

本に限らずですがこれ以上不要なものを増やさない、もし不要になったとし
ても必要とする人の元に届けたいという思いを最近強く感じるようになりまし
た。本に対する愛着も含めて査定をするのは時に責任重大のように思えます。
そして古本屋としての意味を感じさせられるのです。

〈とんか・めぐみ〉
神戸元町にてザックバランな古本屋「トンカ書店」を営業中。
イベント案内
3/15〜3/31 “給食をテーマにしたアート展”『給食のじかん』
3/15〜4/30 神戸5ヶ所のギャラリー、イベントスペース合同企画『おさんぽ
スタンプラリー』
詳細はHPまで

トンカ書店
650-0011 神戸市中央区下山手通3-3-12元町福穂ビル2D
078-333-4720
http://www.tonkabooks.com/

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■音を探してページをめくる  貴島 公
(8)名前はわかるよね(番号を調べてみてよ)
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村上春樹、和田誠『村上ソングズ』中央公論新社、2007年12月

 街の大きなCDショップには、読み物コーナーが充実しているところがあり、
雑誌だけでなく、書籍もそこそこ置かれている。輸入CDを扱っている店では
雑誌や書籍も同様で、しかも一般書店の洋書コーナーよりも安い。流通の違い
から、一般書店では付けられないオマケが付くこともある。それに……せこい
話だけど、店のポイントカードは書籍にも適用されるのだ! というわけで、
一般書店には申し訳ないけど、「音楽本はCDショップで買う」ことにしている。

 ただ、何故だか、あくまで経験上の話だけど、広範囲の読者を持つ著名な作
家の本は、音楽を扱ったものであっても、あまり置かれていないような気がす
る。最近では、的確なあがた森魚評にうれしくなってしまった(えらいピンポ
イントですんません)森達也『ぼくの歌 みんなの歌』がそうだし、村上春樹・
和田誠の両氏が好きな歌について、詞を訳し、随想を綴り、イラストを描いた
『村上ソングズ』もそう。見当たらない。ポイントが稼げない……のはともか
くとして、CD購入者にアピールしそうな気がするのだけど。

 CDショップの読み物コーナーで見かけ(たことが)ないことと関係がある
のかどうか(いや、ありません)、いわゆる音楽本とはちがったところが確か
にある。「あくまでも趣味的な本」とはあるけれど、村上さんの読者ではある
がレコード好きでないひと、ランディ・ニューマンやREMを聴いたことがな
い読者に向けても、「ひととき「趣味」をともにすることができたら」と考え
られている。まえがきを読んでいて、そのことを実感し、感激してしまった。
掲載しているレコードやCDの写真が手持ちのものであることに触れて、村上
さんは書く。「製品番号もいちおうそのまま記載した」。「いちおう」とある
のがうれしい。レコードがほんとに好きなこと、でも、そのことを無自覚に誇
ったりしないことが伝わってくるから。

 レコードやCDは、本よりも流通寿命が短いので、本に製品番号を記載する
ことは一考を要する。番号を載せても、読者がそれを読んだ時点で、注文する
のに役立つとは限らない。だから載せない、と濱田滋郎さんが『エル・フォル
クローレ』で書かれているのを読んで、潔さにうなった。でも、もう一方で、
奥付記載の習慣がないレコードにとって、製品番号は「版」を知るための手が
かりであり、手元のそれがどのようなものであるかを示すものでもある。注文
の役には立たなくなっても、身の証のために添えておいてあげたい。だから
「いちおう」なのだと、村上さんの本をろくに読んだこともない身で申し訳な
いけど、勝手に推測している。本を読んで、興味がわいて、聴きたくなったら、
村上さんも書いているように、「インターネットか何かで最新情報を検索」す
ればいい。読者に少し手間暇をかけさせることになるけれど、そのことで、製
品番号を載せることにまつわる屈託が緩むのであれば、喜びたいと思う。

〈きじま・こう〉説明業、趣味・読書と音楽鑑賞。
『ぼくの歌 みんなの歌』と『村上ソングズ』には載せられなかった文章につ
いて共通点があります。というわけで、今回のタイトルは訳しちゃダメらしい
某バンドの歌のタイトルより。でも、この歌は手持ちの訳詞集2種のどちらに
も載ってなかった。……別の意味で訳しちゃダメだったりして。

「モノノフォン」
http://homepage1.nifty.com/hebon/fhp/

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■〈畸人研究〉今柊二の読書スジ
(22)定点観測と鉄道
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東京というか、首都圏で暮らしていると、すさまじい勢いで街並みが変化し
ていくのがわかる。特に今年は東京メトロ副都心線が6月に開通することもあ
ってか、新宿をはじめとして明治通りでの変化が著しい。変化の最中は、どう
変わっていくかに気持ちが行ってしまうけれど、しばらく経つと、消えて行っ
た街並みやモノが懐かしくなるのだった。そういう意味で、街を瞬間瞬間に記
録することはとても大事な気がする。

瞬間を記録するということでは鉄道関係の人々はスバらしい仕事をする。『写
真で比べる昭和と今 国鉄風景の30年』二村高史 (山海堂)は、国鉄風景に
特化した定点観測の一冊で、駅、路線、施設、運転、車両などを全国にかけて
記録している。現在は跡形もなくなっている貨物ホームや、今も痕跡をとどめ
る広大な構内を持つ駅など、どれも興味深い。また「大変貌した東京近郊の駅」
では、昭和48年の武蔵野線新松戸駅前がスゴイ。駅前には商店はおろか、人家
もほとんどなく、ただ平原が広がっているのだった。そして現在は駅前から線
路が見えなくなるほどビルなど建物が立ち並んでいる。ここまで変化するとは。

また、「上野駅のいま昔」での地平ホームとコンコースの変化も楽しい。や
っぱり昔のほうが強烈なエネルギーを感じたなあ。

 なお、定点観測ということならば、『懐かしの横浜市電―あの頃の市電通り
へ』天野洋一・武相高校鉄道研究同好会 (竹内書店新社)も実にナイスな一
冊だった。

〈こん・とうじ〉畸人研究学会主幹。
東京新聞にて、隔週火曜日の夕刊にて「立ちそば大好き!」連載中。

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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(58)新たな女性スタッフ活躍す
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『酒とつまみ』創刊号から5号までの座談会的インタビュー『酔客万来』を単
行本にまとめる作業は、発行人である私がタッチしていないところで、少しず
つ進んでいった。

中島らもさん、井崎脩五郎さん、蝶野正洋さん、みうらじゅんさん、高田渡
さんと一緒に酒を飲んだときの連載記事を、一冊の本にする。それは、前年に
やはり『酒とつまみ』連載から単行本化した『ホッピーマラソン』と同じ経緯
であるが、今回の『酔客万来』の場合、大御所5人の言葉をどれだけ生き生き
と伝えられるかという点で、ホッピー本のときより編集のハードルが高かった
ように思う。しかし、編集Wクンは、表紙のデザインから紙質、全体の構成、
テープ起こし、原稿執筆、脚注作成、校正その他もろもろ発生する作業を着実
にこなした。

この連載の前号にも書いたが、私はもう、まるでタッチしていない。やりた
いんだが、どうにも手がつけられる状態ではなかった。少し後になってからの
ことだが、編集者のクレジットからオータケの名前を外そうかと、Wクンは真
剣に考えたらしい。それが実態だった。

 さて、寒風吹きすさぶ感のある『酒とつまみ』編集部であったが、この頃、
いいことがあった。新たな女性スタッフのN美さんが参加してくれたのだ。W
クンも私も、以前から知っている人で、偶然にもその頃、少しばかり時間が作
れるような状況にあったため、頼んで来てもらった。

 創刊メンバーであり本誌に連載も持ってもらっているY子さんも別嬪だが、
N美さんもまた、別嬪なのである。それがどうしたというなかれよ。仕事場に
花が咲いたみたいではないか。おそろしくオヤジ臭いことを言うようであるが、
恐れることはない。それが私の正直な感想だった。
 そして、『酒とつまみ』編集部はがらりと雰囲気を変えるのだ。N美さんは
Wクンの指示のもと、営業、事務、配本、そして編集と、実に幅広い仕事をこ
なしてくれるようになる。

 私がとても驚いたのは、それが私にない部分でもあるかと思うが、N美さん
は、言われた作業をその日のうちに片付けようとしていることだった。普通は
時間を気にする。何時までが仕事、と、思う。しかし彼女はそうではなくて、
これを終わらせて帰ろう、と思うタイプなのであった。私はすぐに仕事を翌日
に回して酒を飲みに行くタイプなので、このあたり、とても驚いたし、嬉しく
もあった。

「なんか、懸案だった仕事が片付くねえ」
 私はWクンに言った。N美さんは、いずれやらないとなと思っていた仕事を
片っ端から処理していってくれた。
 そして、『酔客万来』はいよいよ、完成間近となっていくのである。

〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集発行人。
ああ今日は一滴も入らないなと思いながら誘われるままに缶ビールを飲んだ日
曜日、その場で2本開け、次の飲み会に合流してからは焼酎の3杯目くらいか
ら調子がついて、結局5,6杯で、さらにまた次、場所を変えてウイスキーを
3,4杯。最後のほう、何を話したか、まるで記憶がございません。休日もこ
れですから、体もちません。
http://www.saketsuma.com

ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(66)週刊金曜日の巻 戦艦の艦橋のようなデルタビル
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 別に寂しくはないが、定食屋「まさみ」に行っても、橋向こうが近頃は静か。
橋とは、首都高速の下を流れる、日本橋川にかかった新川橋(しんかわははし)。
橋を渡ってすぐの角地、千代田区三崎町3ー1ー5、神田三崎町ビル6階に、
『週刊金曜日』は入居。

 三角形の角地に沿って建てられた同ビルは7階。2階までは普通のビルだが
(角地の先端には、オブジェ風のシルバーの円柱が数本並び、ちょいとハイソ
気分)、3階以上は窓と薄茶の壁部分の押し出しが威風堂々としており、戦艦
の艦橋のよう(かつて本欄でも取り上げたが、丸岡明が経営に関わってた、能
楽書林の社屋を連想)。左翼雑誌の入居するビルに、戦艦を連想するのも失礼
な気がするが、かつて『丸』で拝んだ、連合艦隊の「長門」に特に似ている
(『丸』の発行元で能楽書林同様に本欄で扱い済みの、光人社&潮書房の粋な
ビルが、先月漫画屋が移転して来た、千代田区飯田橋2ー3ー2、三信ビル
303号の右手窓辺から、よ〜く見える)。

 あの騒ぎは確か、松崎菊也なる、エッラソーなだけでワンパな芸を繰り返す
退屈芸人の、皇室パフォーマンスをめぐってだったが、本人と編集部の電光石
火のような謝罪文にはあきれた。左翼雑誌たるもの、裁判所の命令さえ無視、
断固日教組の全体集会をこばみ続けた、かのプリンスホテルのような、野蛮な
かたくなさが欲しかった(それが売り上げにもつながる)。

 当時の右翼の街宣活動は、よく神保町帰りに見物に。警官が20人くらい、本
当に面倒臭そうにイヤイヤ警備してた。左翼デモの際のように、スキあらばテ
ロってパクってやろうってな、戦闘モードはゼロ。皇族警護のような気配りに
溢れた、“社交ダンス風規制”。お陰でプーチン独裁帝国のロシアは、日本の
裏金公安警察を、支配の手本にしてると悟る(けど連中もデモを道路の片側で
しかさせなかったり、先頭に警察車両を配置するような、“土人警備”までは
しとらん。すぐ殺すが…)。

 デルタビルに向かって右は、千代田ファーストビル西館の裏手にあたり、「西
神田百樹の広場」と名付けられた小公園が。ダンス警備の私服共が、ここでダ
ベッたり、アリバイ的に街宣車を撮影させていただいていた。編集部のある6
階からは、両者の新婚夫婦のような様がよく見物出来たろうが、どんな気分だ
ったのか?(たのもしかったりして…)。

『週刊金曜日』は2度講読を中止した。1回目は創刊の際で、余りの退屈さに
残金はあったのに、「もう送らんでくれ!」とハガキを書いた。2度目は右翼
騒動の時。「そんなに根性ある誌面に?」と買い始めたが、騒動の存在自体を
封印しようとする腰抜け振りに、即再び講読中止。

“編集者の生活感の希薄さ”。同誌の創刊時からの伝統(『ビッグイシュー』
にもそれを)。権力に痛めつけられてる人や弱者は、多数誌面に登場するのに、
扱う編集者の手際が悪いというか、手袋して接している感じ。多分、いい家の
坊っちゃん、お嬢様ばっかなんだろう。今後編集を採用する際は、新聞奨学生、
ないし夜間部卒に限定してみちゃどうかね?(エロ本業界出身者とかもね!)                      
   
〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)、『出版業界最底辺日記 エロ漫
画編集者「嫌われ者の記」』(ちくま文庫)。1980年以降書き散らしたコラムを
まとめた『東京の暴れん坊 俺が踏みつけた映画・古本・エロ漫画』(右文書
院)が好評発売中。

なお、この連載に関しての批判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(た
だし、謝るとは限りません)。
mangaya@air.linkclub.or.jp
http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/

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[書評]のメルマガ vol.348
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■          vol.348
■■  mailmagazine of book reviews[ 高田渡の声 号]
■■------------------------------------------------------------
[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。
★「関西古本女子だより」福島杏子(ちょうちょぼっこ) 
 →大阪と神戸の「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「千駄木ドロナワ日記」川原理子
→地域雑誌『谷根千』の若手スタッフが綴る、日々のあれこれ。
★「食の本つまみぐい」遠藤哲夫
 →〈大衆食堂の詩人〉エンテツが料理文化史の重要本を紹介します。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。

*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
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★名古屋の本イベント「BOOKMARK NAGOYA」開催中
 福岡に続き、一都市単位での本イベントが名古屋で開催中です。数が
たくさんあって紹介しにくいですが、〈リブロ〉での「名古屋大古本市」、
〈三省堂書店〉での「岡崎武志×豊崎由美選 紅白読書の腕前合戦」をはじ
め、古本市、トーク、ワークショップ、写真展、演劇など、なんと36もの
企画があります。詳しくはサイトでチェックを。3月2日(日)までです。
http://www.bookmark-ngy.com/

★わめぞ新企画 今度はお風呂で古本市だ!
第1回 月の湯古本まつり 〜銭湯で古本浴〜

月の湯は昭和8年創業。木造破風造り建築で、浴場には富士山のペンキ絵、床
は今ではめずらしい六角形のタイルを使ってある昔ながらのたたずまいの銭湯
です。現在は週3日の営業。そんな定休日の銭湯をまるまるお借りして、古本
市とトークショーを開催。カフェスペースもご用意いたします。

日時 4月5日(土)11:00〜18:30 雨天決行

会場 月の湯 東京都文京区目白台3−15−7
地図はこちら:http://tinyurl.com/ytdlz9
月の湯の様子:http://www.bunny.co.jp/zousi/shop/04.7_15tukino.html

◎古本市(場所:女湯/風呂場、脱衣所)
参加者
火星の庭、古書ほうろう、オヨヨ書林、古本オコリオヤジ(林哲夫)、善行堂
(山本善行)、ふしあな書店(扉野良人)、岡崎武志堂(岡崎武志)、古本け
ものみち(南陀楼綾繁)、文壇高円寺(荻原魚雷)、ハルミン古書センター
(浅生ハルミン)、エエジャナイカ(北村知之)
わめぞオールスターズ
古書現世/立石書店/藤井書店/m.r.factory(武藤良子)/
旅猫雑貨店/リコシェ/ブックギャラリーポポタム/bukuぶっくす
退屈文庫/琉璃屋コレクション ほか

◎トークショー(場所:男湯/風呂場)
第1部 14:00〜15:00 岡崎武志さん「坂を登れば文学がわかる」
「坂」が出てくる小説を通して岡崎武志さんが文学をわかりやすくレクチャー
します。 定員30名。

第2部 16:00〜17:00
大竹聡さん、遠藤哲夫さん「酒とつまみと男と男」
「酒とつまみ」編集発行人の大竹聡さんと、「大衆酒場の詩人」の異名を持つ
『汁かけめし快食学』(ちくま文庫)の著者である遠藤哲夫さんの酒飲み話。
公開飲み会です。 定員30名。

予約受付は3月1日(土)から。予約方法は「わめぞブログ」にて改めて発表
します。3月1〜2日に開催の古書往来座外市会場でも受付いたします。
トークショー入場料は銭湯入浴料と同じ、430円/1人1回につき

◎カフェ(場所:男湯/脱衣所)
萬福亭チキンライス(古書ほうろう)
焼き菓子 mws a point(ムーズアポワン・目白)
お茶 乙女湯のたしなみ
その他、ソフトドリンク各種、ビール、酒類の販売もあり

「わめぞblog」
http://d.hatena.ne.jp/wamezo/

なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

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■関西古本女子だより  福島杏子(ちょうちょぼっこ)
(6)にのにのいちのに
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ちょうちょぼっこで昨年も開催した2月に200円の本を200冊売るイベント
を現在行っている。正確にいうと、7組の参加があるので、200冊×7組=1400
冊だ。

真治さんが中心になって参加される方への連絡やフリーペーパーの企画を考
えてなんとか開催までこぎつけた。このところのちょうちょぼっこの集客を考
えると、お客さんが来るのだろうかと内心不安だったけれど、蓋を開けると初
めてちょうちょぼっこを訪れる方もけっこういらっしゃって、ありがたい。知
り合いの方もあちこちから足を運んでくださった。久しぶりにお会いする方も
多く、こういう場があることでみなさんと簡単に交流を持つことができるのは
悪くない。

初日は、夜にオープニングパーティーを開催。還暦を控えたKさんから20代
の若い方まで年齢さまざま、その会合の仕切りは「にのにのいちのに」を一緒
に主催した古書くらしかさんの手際よい司会でぎやなか会合になった。そして
メインのイベントはくらしかさんの提案もあってビンゴゲームを! ちょうち
ょぼっこを含めて普段ビンゴに縁のなさそうな人たちが「34ばーん」「5ばー
ん」という声でいっせいに「おぉ!」とか「あ〜!」とかにぎやかに。ビンゴ
の人には、出展者が選んだ古本を。パーティー雰囲気を作り出すビンゴの威力
ってすごいんだなぁと初めてビンゴを見直した。

早速、「来年もするんですか?」という質問もいただいたけれど、まだまだ
未定。7組の出展者が出す本のジャンルもばらばらだし、お客さんの求めてい
る本も必ずしも一致しない。だからこそ、幅があっておもしろいんだろうなと
感じた。続けられる気力があれば、また来年もやってもいいかもしれない。

〈ふくしま・きょうこ〉
このところ、新刊本を買うことが多い。そうすると、1冊の単価が高いので古
本屋へ行っても単価を以前より気にしなくなる。よいのかわるいのか。もうち
ょっとお財布を占めながら本を買わねば。ちなみに数日前に買った新刊本は新
幹線で読むために『見る美 聞く美 思う美』節子・クロソフスカ・ド・ロー
ラを。

貸本喫茶ちょうちょぼっこ
〒550-0014 大阪市西区北堀江1-14-21 第一北堀江ビル4F
http://www.geocities.co.jp/chochobocko/
*営業日は、第1〜3週末です。 金18:00-21:00、土日 13:00-21:00

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■千駄木ドロナワ日記 川原理子(谷根千工房)
(6)大人も楽しい科学博物館
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2月9日
久しぶりに上野科学博物館に行く。地球館の3階で、きのこと変形菌の観察
会に参加する。この冬は、コケの本を読んでから小さなものに興味がある。参
加者は子どもばかり。なかにまじって顕微鏡をのぞくと、きのこの胞子や、
子実体になった変形菌の胞子のうに胞子が詰まっている様子、また原形質流動
というのだろうか、あぶくのようなものがさらさら流れるのがよく見えた。先
生がクモノスホコリは胞子のうをぐるぐるまわして胞子を振りまくとおしえて
くれた。だから図鑑の絵はくびがよれよれしているのかと納得。黄色いモジホ
コリとオートミールを分けてくれたので、家で育てることにした。

2階のエスカレーターの踊り場で、水滴顕微鏡を作る。そのつくり方を教え
てくれた先生は、土中生物の研究者で、研究ではなかなか食べてはいけない
から普段は給食のおじさんをしているそうだ。私の隣で顕微鏡を作っていた男
の子は知り合いらしく、「なぜその道に進まなかったんだ」と言っていた。い
やいや、ここで顕微鏡を教えてくれていることだって、「その道に進んでいる」
のだと思う。でき上がった顕微鏡にレンズにする水滴をたらし、先生の集めた
極小のアリやクモ、孵化したばかりのセミ、星の砂などを見る。これはとても
便利。材料は紙やプラスチック板なので軽くて持ち運びしやすい。ゆらすと、
レンズが震えるのがご愛嬌。

1階では菌類とカエルツボカビの30分の講習を受ける。こちらも面白い話。
科学博物館は、こどもが行くところのような気がしていたけれど、意外と大人
も楽しめる。これからもっと利用しようっと。

〈かわはら・さとこ〉(谷根千工房社員)
もって帰った変形菌は、レースの花が咲いたように広がった。オートミールを
置いたら、ちゃんとやってきた! 人に見せびらかしていたら、明るかった
せいかシャーレの裏側へ移動した。

「谷根千ねっと」
http://www.yanesen.net/

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■食の本つまみぐい  遠藤哲夫
(27)「古き良き」道楽者の時代の最後を飾る
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添田知道編『新訂 東京の味』保育社カラーブックス、1968年

 この連載の9回と10回は文藝春秋編『東京いい店うまい店』文藝春秋だった。
1967年の発行。本書は、その翌年。この二冊の厄介になった「高年者」は多いは
ずだ。

「外食本」にはいくつかの系譜があると思うが、『東京いい店うまい店』と本
書は、かなり傾向がちがう。『東京いい店うまい店』は、高まる中流意識を背
景にした消費主義の台頭を反映している。タイトルも「いい」「うまい」を掲
げ感興を煽り消費を刺激。といっても、現在のその種の食べ歩き飲み歩き本に
比較したら、コケ脅かしの表現はなく穏やかなものだが。

 いっぽう、本書は、その大衆の旺盛な消費主義にのまれようとしている、い
わゆる「食通」「食道楽」といった、ま、悠々と数寄を楽しむ傾向の消えゆく
最後のともし火といった風情だ。

 まさに「数寄者」という言葉がピッタリな『日本春歌考』の著者、添田知道
が編者。「地域差がうすれてくること、これも時の流れというのだろう。東京に
は全日本の味があつまるばかりか、世界の味があつまっている。江戸伝来の味
も保たれはするが、それにもまして東京は地球の〈味のるつぼ〉になっている。
それを一応はすなおに認識した上で、考えることである」。東京の味に東京の街、
時の流れをみる。まだこの当時は、東京の味で東京の街を語ることができた。

 浅草田圃・草津亭、なべ家、おでんのお多幸本店、とんかつの双葉、どぜう
の飯田屋、さくら肉の中江、ふぐの魚直、フランス料理のプルニエ、生ビール
のミュンヘン居酒屋、酒場のシンスケ、酒亭のぼるが、甘酒の天野屋、桜もち
の山本屋、三笠会館は「若鶏のからあげ」……消費主義と情報化の小ざかしい
グルメ情報に荒される前の、落ち着きのある高級店から大衆店まで、人びとに
愛され「老舗」「名店」といわれた数々。建物もそうだが、銀座歩行者天国や、
浅草の変わる前のニューアサクサ周辺の通りの写真などにも、時の流れを感じる。

 本書のあと1973年に、石倉豊・桜井華子共著で『続 東京の味』が出るの
だけど、そのときにはもうサブタイトルに「ヤングのムードと味覚の店」とつ
くほど、「若さ」「新しさ」が東京であるかのように変わっていた。添田知道が、
舌打ちしながらも愛した東京の味と街は、彼が舌打ちしたほうへむかって激し
く押し流されることになった。
 執筆は、添田のほかに、鮎貝久仁子、大竹新助、加藤恵、北村ただし、桜井
華子、神保朋世、永井保、野一色幹夫、福永文雄、蒔田やよひ、宮尾しげを、
山本竜、渡辺公平。

〈えんどう・てつお〉フリーライター。
なんだか手を広げすぎて、昨年よりトシを一つとるというのに忙しくなるだけ。
youtubeデビューは、3月公開予定の携帯コメディ専門サイト「マイコメ」の、
告知コマーシャル映像。はて、今年は何をやるのやら、自分でもわからん。
http://jp.youtube.com/watch?v=OXuvWjTg30w

「ザ大衆食」 
http://homepage2.nifty.com/entetsu/

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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(57)蘇る高田渡さんの声
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金と人手がない。金を稼ぐためにたくさん仕事をし、疲れてまた酒を飲む。
甘ったれているといえばそれまでの繰り返しで、単行本『酔客万来』の仕事は
遅れまくった。

 Wクンの負担はさらに増し、私がやると言っていたテープ起こしを代わって
もらい、私がまとめた第一段階での原稿に、細かく手を加えてもらいながら、
作業は少しずつ進んでいった。私はこのときすでに、ほとんどタッチしていな
い状態になった。

 今回の『酔客万来』には、創刊号から5号までに登場いただいた5人の、い
わばノーカット版の原稿を載せることにしていた。再録の許可と、原稿内容の
再確認が必要になる。
 高田渡さんの奥様からは、雑誌掲載時の原稿、全体のテープ起こし原稿、そ
して、単行本掲載予定の原稿のすべてを見せてほしいという要望が寄せられた。

 それからずいぶんと時間がかかって、原稿一式をお届けにあがったのは5月
の1日のことだった。ご自宅まで届け、挨拶をした。
 掲載にストップがかかることなど、若干の不安もあったが、それから2週間
ほど経っていただいた返事は、とても好意的なものだった。

 修正は、高田渡さんの言葉の言い回し、語尾のニュアンスなどについて、ほ
んの少しばかりのもので、そのとおりに修正してみると、本当に高田さんの口
調が蘇るようだった。高田さんが亡くなって以来、生前に残された曲や原稿を
新たに編集するのは、これが初めてのことだった。だからこそ、大事に、細か
く見ておきたかった。それが高田さんの奥様の意向だった。そして、その思い
は、原稿に見事に反映されたと、私は思った。

 忙しい。金がない。どうするんだ? 私は自分の置かれている環境に翻弄さ
れるばかりで、自分からは何も創り出せずにいた。しかし、高田さんの奥様が
入れてくださった修正の指示を見たとき、思いが晴れるような気がした。

 忙しいとかたいへんだとか。そんなことを言うのではなく、目の前にあるこ
の仕事を、きちんといいものにする。それこそが、もっとも大切なことなんだ
と、その晩、どこかの飲み屋で、酔った頭で考えていた。

高田さんの声が蘇る。「キミは何も勉強してこなかったな?」 本当だ。オ
レは何も学んでいない……。小さな目の前の仕事に面と向かうこと。やっつけ
の仕事をするくらいなら、やらないほうがマシだということ。誰に頼まれもせ
ず、金を当てにもせず、自分たちの作りたいものを作って売る。『酒とつまみ』
を始めたときには確かに持っていた一種の気分を、その日私は、ダラダラと焼
酎を飲みながら、それでも懸命に思い出そうとしていた。

〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集発行人。
『酒とつまみ』10号の納品に回っていた12月。納品と同時に返品も引き取っ
てくるケースが多いのですが、辛かったのは『ホッピーマラソン』。これ、私
の唯一の著作ですが、著者自らが返品引取りを行なうわけですから、その切な
さたるや、その哀しさたるや。『酔客万来』ともども、まだ在庫あります。ぜ
ひよろしくお願いいたします。
http://www.saketsuma.com

ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(65)続・あかね書房の巻 “間借り感”皆無の大御殿
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本連載初の続編。あかね書房はかつて取り上げた際、“土方衆の飯場のよう
なプレハブ御殿”と、例の調子で書いた。あれから何年もたってないのに、そ
の御殿の余りの変貌振りには誰もがのけぞる。何せ今やあかね書房は、西神田
3丁目、住友不動産千代田ファーストビル南館の1階を、ほとんど占拠してる
のだ。

“占拠”との70年代用語は、やや思想的誤解を招くかも。同ビル入口右手の石
碑にはこうある。“事業主 三松堂印刷 あかね書房 住友不動産”。つまり、
れっきとしたビルオーナーの1人らしい(三松堂も、かつてのプレハブ社屋に
隣接)。当然、“間借り感”は皆無。ビル正面入口ほど絢爛豪華ではないが、
左寄りのあかね書房入口ドアも、何と天地幅が3メートルも(銀色にまぶしく
輝くとっては、ジュラルミン、あるいはステンレス?)。

 文字通りの“大御殿”。一方で出版物ショールームには、『かさぶたってど
んなぶた』『むしのおんがくがっこう』『百人一首大事典』他の、かつての社
屋にこそフィットしそうな、同社らしい絵本がズラリ。完成直後など、贈り物
の蘭が、森のように部屋中を覆う様が外からも見え、ビハリー・ヒルズで豪邸
暮らしをする、日本共産党の国会議員みたいなムードだった。

 14階建てのビルはオールブラック。丸みこそないが、ブラックスキンを装填
したペニスを連想させずにおかない。これは筆者の職業病というより、路地を
隔てたとこにある、大洋図書グループ(ミリオン出版他)ビルが醸し出すモノ
かも(このビルは白っちゃけた小学生のチンポコ、いや明るい色だが、正面が
巨乳女の胸のように卑猥な弧を描いてる)。

 専大通りを跨ぐと、同じ住友不動産が開発した、千代田ファーストビル西館、
及び同東館が威容を(両ビル共に禁煙らしく、居住者が近所の公園を喫煙場に
占拠、大迷惑だった時期も。最近減ったが、ビル内に喫煙施設がやっとこさ?)。

 西館の一角には、断固買収を拒否してるとみえ、未だ民家が。クリーム色の
木造家屋で、屋根には赤ガワラ(地中海沿岸センス?)。左手入口に博幸印刷
(株)と。右手は母屋らしく、2階によくフトンが干してあり、神保町帰りに
この生活感ある建物を見ると、心が暖かくなる。同時に祈る。「子供やお孫さ
んの代になっても、住友不動産の軍門に下るなよ!!」と。

 付近には行き付けの定食屋、「まさみ」も。バブル期には坪5000万の値が
付いた持ち家で、今も相変わらず600円の日替わり定食を商う、スタミナ婆
ちゃんが先日も言った。

「元の住人であそこいらのいいビルに、口車に載せられて入った人は、皆さん
苦労してるみたいだよ。光熱費や管理費がベラボーに高いんだって。やっぱり
地べたに足が乗ってない生活は…」

 博幸印刷も「まさみ」も同じ我が階級だが、あかね書房はもはや全くの他人
て感じ(昔からだろう?)。
〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)、『出版業界最底辺日記 エロ漫
画編集者「嫌われ者の記」』(ちくま文庫)。1980年以降書き散らしたコラムを
まとめた『東京の暴れん坊 俺が踏みつけた映画・古本・エロ漫画』(右文書
院)が好評発売中。

なお、この連載に関しての批判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(た
だし、謝るとは限りません)。
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★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。
★「関西古本女子だより」頓花恵(トンカ書店) 
 →大阪と神戸の「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「音を探してページをめくる」貴島公
 →音楽サイト「モノノフォン」の主が、音とテキストの関係を考察する。
★「〈畸人研究〉今柊二の読書スジ」
 →小津安二郎ら映画監督が愛した食堂についての本をご紹介。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。
*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
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★徳島で海野十三展
「日本SFの父」と呼ばれた作家・海野十三の展覧会が、出身地の徳島で開催中。

場所 徳島県立文学書道館(徳島市中前川町2)088-625-7485
2月10日(日)まで 9時30分〜17時。
月曜日休館(ただし1月14日開館、15日休館)

関連イベント
1月20日(日)13時30分から朗読会「海野十三作品を読む」
2月3日(日)14時から講談「蠅男」ほか=旭堂南湖氏(上方講談師)
※会期中、「徳島のSF文学展」を同時開催

★辻真先講演会「アニメ三国志〜脚本執筆1500本・疾風怒濤の青春録〜」
 同じく徳島県の北島町創世ホールでは、アニメ界の黎明期から成長期安定期
を支えた超大物脚本家・辻真先の講演が。

2008年3月2日(日) 14時半
〒771-0207
徳島県板野郡北島町新喜来字南古田91
TEL.088-698-1100 

★食道楽の人・村井弦斎
 神奈川近代文学館で、『食道楽』の作家・村井弦斎の展覧会を開催。3500点
もの館蔵資料を駆使して、この人物の全体像に迫る。弦斎の評伝の著者である
黒岩比佐子さんの講演もあり。

会期 2008年(平成20年) 1月19日(土)〜 3月2日(日)
休館日は月曜日(2/11は開館)
開館時間 午前9時30分〜午後5時(入館は4時30分まで)
神奈川近代文学館展示室
231-0862 横浜市中区山手町110
TEL045-622-6666

『食道楽』体験イベント
1月26日(土)
展覧会の解説と『食道楽』ゆかりの食品の試食・家族合せゲームの体験

記念講演会
2月2日(土)「私の本について話そう 『食道楽』と日露戦争」
講師:黒岩比佐子(ノンフィクション作家)

語りと音楽「花音」朗読コンサート
2月16日(土)
「食道楽」ほか

★『東京サイハテ観光』房総ツアー
『東京サイハテ観光』(交通新聞社・文/中野純:写真/中里和人)の刊行を
記念して、房総ツアーを行ないます。ヒカリモ、黒潮ジャングル、夢の桟橋、
サハリン岬、民家トンネルなどなどを巡り、夜には中野純のナイトハイクもあ
ります。また、オマケとして、日本三大朝市の一つ勝浦朝市にも寄ります。全
行程マイクロバスで移動します。

期日:2月16〜17日。1泊2日。東京出発・帰着(千葉方面でも乗り降り可)
費用:27000円 (宿代2食付(勝浦の海辺の民宿)・ バス代・
新刊書「東京サイハテ観光」付)
募集人員:20名(先着順・定員になり次第終了)

問い合わせは下記
sana1956@w8.dion.ne.jp
電話090-3689-3740(中里和人)

★結構人ミルクホールに行こう!
 千駄木のくつろぎ空間として知る人ぞ知る、古本喫茶〈結構人ミルクホール〉。
このお店が営業危機に陥っています。同店では現在「閉店阻止セール」を開催中。
ゆっくりと本が読めるし、コーヒーも美味しい店なので、ぜひ足を運んでください。
チーズケーキの通販もできます。

〒113-0022 東京都文京区千駄木2-48-16
http://kekkojin.heya.jp/

なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

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■関西古本女子だより  頓花恵
(5)ある古書店でのあるご縁
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100年近くにも及ぶ神戸で最も古い古書店が2008年1月半ばをもって閉店す
るという知らせを店に来られる何人もの方から受けました。それだけの大きな
事件だったのです。

 その古書店について私が語るのはあまりにおこがましく恐縮してしまいます。
ただそんな皆から惜しまれて消えてしまう古書店で以前、岡潔の『春宵十話』
を手にしたことを思い出しました。世界に名を馳せたこの日本人数学者は「数
学とは情緒であり、情緒とは野に咲く一輪のスミレを美しいと思う心」と答え
ました。     

大雑把な言い方ですが、自分は数学というものが苦手だから古本屋さんにな
りたいのかなと思ったことがあります。理系の学問に対して無機質で固いイメ
ージを勝手に抱いていたのかもしれません。

2008年に映画化されるという東野圭吾の第134回直木賞作品『容疑者Xの献
身』の中でハンガリー生まれの数学者、ポール・エルデシュのエピソードが登
場します。「よい定理には美しく自然で簡明な証明が必ずあるという信念をも
っていた」また、第一回本屋大賞を受賞した小川洋子『博士の愛した数式』の
主要人物である博士の言葉に「本当に正しい証明は一分の隙もない完全な強固
さとしなやかさが矛盾せず調和しているものなのだ」とあります。そしてこの
本の解説文を書き、またその参考文献となった著書記した数学者の藤原正彦は
この作品を「数学と文学を結婚させた、そしその結婚は幸せなものだった」と
評しています。今や数学の美を語る物語も続々登場し、背反した存在のように
思っていた両者が今一番近い存在になっていたのです。

藤原正彦の語る「論理より情緒」という言葉も、岡潔が度々繰り返した「数
学は情緒である」という言葉もある種の衝撃をもって眺めていましたが、今思
えば限りなく全ては等しいということを諭してくれていたのでしょうか。私と
数学の魅力を結び付けてくれたこの古書店とのご縁にも隠された方程式があっ
たのかもしれません。

〈とんか・めぐみ〉
神戸元町にてザックバランな古本屋『トンカ書店』を営業中。

トンカ書店
650-0011 神戸市中央区下山手通3-3-12元町福穂ビル2D
078-333-4720
http://www.tonkabooks.com/

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■音を探してページをめくる  貴島 公
(7)文章も唄のためにある!
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Hotwax責任編集『黒沢進著作集』ウルトラヴァイヴ、2008年1月

 黒沢進という名に覚えがないと、この書名は唐突に感じられるかもしれな
い。2007年4月に亡くなった、日本ポピュラー音楽の研究家が雑誌や単行本
で発表してきた文章を集めたものです。書店での惹きを考えると、「GS論
集」、「日本のロック史研究」、文中から拾えば「ファズる心」など、対象に
からめたタイトルを付けたほうがよい気もしたけど、いま、その例をあげてみ
て感じる居心地の悪さを、編者の方々はとっくに承知のうえで、このような
ストレートな書名を掲げたようにも思えます。

 本の世界になぞらえれば、書誌編纂家にあたるだろうか。主としてGS=
グループサウンズという和製英語で呼ばれた60年代の日本のポピュラー音楽
の周辺の活動の跡を丹念に拾い集め、ディスコグラフィ(録音物誌)や紹介
記事にまとめる作業を行っていたひとです。わたしが初めて黒沢進氏の名を
知ったのは、1986年の『資料・日本ポピュラー史研究 初期フォーク・レー
ベル編』で、作品の有名・無名に関係なく詳細を記録し、関係者へのインタ
ビューやコラムで作品の周辺への興味を満たしてくれる構成に驚かされた。
海外や過去のポピュラー音楽レコードに付きものの「解説」に常々不満を抱
いており、作品に接してから起こすアクションのためにはディスコグラフィ
と関係者へのインタビューがあれば十分と感じていたわたしには、待望の一
冊でした(のちに『日本フォーク紀』として再刊された)。

 450ページを越える、この本には、ほとんど図版がない。レコードの表紙
や歌手やバンドの写真もない。黒沢氏の筆になるものとして、初出時には図
版に対して付けられていたであろうキャプションのみ再録されているのには
戸惑ってしまう例もあるけれど、愛情なくして成し得ないが、愛情を伝える
のが目的ではないということが感じられる黒沢氏の姿勢への尊重と共感が伝
わってくる。とは言え、ここまでの説明でひょっとしたら想像されてしまっ
たかもしれないがちがちの禁欲主義とは無縁。中核を成す映画の中の歌唱・
演奏シーンについて書かれた文章からは、発見を喜び、ただただ楽しむ様子
が伝わる。また、「カルトGS」に代表される、興味をもってもらうためな
ら軽率の謗りを受けかねない造語の提案も厭わない。愛読していた雑誌連載
(もちろんこの本にすべて収録)「シネマは唄のためにある!」にならって
いえば、黒沢氏の文章は「唄のためにある!」としか言いようがない。

 「唄のために」できること、楽しみかた、探しかたのヒントがここにはた
くさん詰まっている。結果として残された膨大な情報を前にすると、これを
正史として受け取るひとも出てくると思うけど、そのことの是非とは別に、
黒沢氏の活動、逝去からわずかな期間でここまでまとめられた編者の方々の
ことを思うと、それだけでは申し訳なく、勿体ない。音楽を聴く喜びや楽し
み、背景までも掘り下げたくなる気持ちとはどんなものなのか、そのドキュ
メンタリーとして、繰り返し読んでいくことになると思います。
 なお、英語書名には「Vol.1」とあり、本書の中では説明がないものの、
続編が予定されているようです。

〈きじま・こう〉説明業、趣味・読書と音楽鑑賞。
読みかけの本はカバーを外して持ち歩いているのですが、そのためにカバー
と本体が生き別れになるケースが続出。キモチだけカタチばかりの年末年始
の片付けでは、劇的な再会に立ち会うことができて、それだけで幸せな気分
に……。まちごてるのは重々承知しております。
「モノノフォン」
http://homepage1.nifty.com/hebon/fhp/

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■〈畸人研究〉今柊二の読書スジ
(21)映画監督と食
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貴田庄『小津安二郎の食卓』(ちくま文庫)を読んでいるが、これがまたズ
イブンと面白い。不勉強のため、小津安二郎の映画は「宗方姉妹」くらいしか
見ていないが、ここまで食べ物がいっぱい出てくるととても見たくなってくる。
最近入手しやすい価格帯でDVDが出ているので少しずつ見ていこう。ちなみ
に小津の映画に出てくる「カロリー軒」のくだりを読んでいると、お茶の水の
「キッチンカロリー」を思い出してしまう。このような「安価で栄養をしっか
りととろう」という思想は小津の頃から、今なお定食界に継承されているのだ。
国立名物の「スタ丼」こと「スタミナ丼」や名古屋地方でよく見られる「ベト
コンラーメン」なども同じ考えですね。ちなみに、ベトコンというのはベトナ
ム戦争とは何の関係もなくて「ベストコンディション」の略です(笑)。

いずれにしても、映画監督というのは食に対してスルドイセンスを持った人
が多く、画像なりエッセイなりで、後世に食べた記録を残してくれているのが
よい。山本嘉次郎の『日本三大洋食考』を一瞬綱島の古書店でみかけて、買お
うと思って翌日行ったらなかった。やはり「古本は迷ったら買え」ですね。

ちなみに、映画監督が書いたわけではないけど、松竹大船撮影所に出入りし
ていた映画人の行きつけの定食屋のことを女主人がつづった『松竹大船撮影所
前松尾食堂』 山本若菜(中公文庫)もナイスな本。同店は今はないけど、映
画人が愛用した洋食屋「ミカサ」は健在。そう言えば、昨秋京都・下鴨にある
「のらくろ」という洋食屋にトルコライスを食べに行ったが、以前はすぐそば
に松竹下加茂撮影所というのがあり、撮影所のスタッフたちにとても愛された
と聞いた。ちなみに撮影所は後に太秦に移転したのだった。

〈こん・とうじ〉畸人研究学会主幹。
東京新聞にて、1月15日より、隔週火曜日の夕刊にて「立ちそば大好き!」と
いう連載が始まります。
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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(56)苦境に届いた1本のメール
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 2月の半ばになって、ようやく書店への配本にも目処が立ってきた。という
ことは、つまり、次号の準備に取り掛かるべきときに差し掛かってきたことを
意味する。私と編集Wクンは、書店への納品後に時間を作り、飲み屋でビール
や焼酎を飲みながら、打ち合わせをした。

 思えば、創刊号の準備をしていたのは、2002年の春先のこと。あれからちょ
うど5年が経過していた。最初の頃、ふたりはそれぞれに小さなノートを持ち、
バカなネタを言い合っては書き留めて、どんなページにするかを思い描いた。
しかし、5年経ったこのとき、我らの最大の問題は、どのようにして『酒とつ
まみ』を続けていけばいいのか、ということだった。

 問題はふたつ。人手と金の、両方がないということ。もちろん、食うための
仕事もある。あるどころか、教育費負担に喘ぎながら毎晩の深酒を止めない私
の場合、ひっきりなしに食うための仕事をこなさなくてはならない。

 このとき、我らは、酒とつまみの記念すべき10号の前に、編集部としては第
2弾となる単行本『酔客万来』の準備に取り掛かることを決めていた。まずは、
雑誌掲載用に取材したときの録音テープを聴きなおし、テープ起こしをやり直
す必要がある。それをもとに、雑誌掲載時には省略していた話なども盛り込ん
で一冊の本にしようと考えたのだ。

 しかし、どう考えても、その時間がない。しかし、時間がないとは言えない。
金もない。しかし、これを出さないわけにはいかない。どうにもならないなあ
と心底思いながらも、酔いの手伝いもあって、私は大きなことを口にしたくなる。
 金はなんとかなるさ。テープ起こしも、どんどん進めるよ……。いつものク
セだ。こういうことをするから、後でウソをついたことになる。わかっている
のだけれど、やはり、無茶なことを口走る私であった。

 そんな頃、連載陣の一人である有田芳生さんからメールが来た。日垣隆さん
が、自身のブログで酒とつまみを応援してくれていたのだが、その中で、あの
貧乏編集部は「酔客万来」インタビューの酒場代を払えているのかという疑問
が呈されているとのことだった。そのことについては有田さんもご自身のブロ
グに書かれ、私は、問い合わせに対して編集部でちゃんと払っていると返事も
したのだが、有田さんのブログには、もうひとり反応を示した人がいた。重松
清さんだ。

 重松さんは、ご自身が「酔客万来」に登場したとき、酔っ払ってヘロヘロに
なりながら、その場の酒代を払いたいと訴えた私のことを、有田さんあてのメ
ールに書いたのだ。そして有田さんは、重松さんからの返事について書いたブ
ログ原稿を、私にメールしてくれた。
 ヘロヘロになりながら金を払わせろと訴えた私のことを、重松さんは、この
人は信用できるなと思ったと、書いている。

 金はない。人でもない。編集Wクンにはますますの負担をかけそうだ。しか
し、やはり、こんなに温かく見守ってくれる人がいる以上、頑張らなければな
らない。
 私は、ちっぽけな仕事場のパソコンの前で、有田さんと重松さんに、深々と
頭を下げたいような気分だった。

〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集発行人。
第10号の書店配本も、ようやく終えることができました。お待たせをしました
皆様、申し訳ございませんでした。正月早々、勝谷誠彦さんとご一緒できる機
会に恵まれ、調子に乗った私は昼から一升酒。帰宅したとき、顔面の中央から
血を滴らせておりました。今もまだ、顔面が痛えです。
http://www.saketsuma.com
ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(64)西田書店の巻 自社ビルっぽさがプンプン漂う
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昔から年賀状を書く習慣はないが、40過ぎ頃からもらった相手には仕方な
く出すように。今年も栄昇ビル上階の、波乗社は“夜のエロステッキおじさん”
こと、坂崎重盛老からもらったので返事を。宛先、つまり、千代田区飯田橋2
−11−5 栄昇ビル…と書いていて感慨深いモノが。

 実は栄昇ビルの新所有者、ハイサイド・テンという所から、「不動産引渡命
令申立書」が東京地方裁判所に提出され、我が漫画屋にはもう一軒の店子共々、
引渡命令が年末に下されたのだ。こちらも執行抗告状を出してるが、ほとんど
却下されちゃうと。来年の今頃は、どこで何をしてるのやら?(上野公園か隅
田川沿いの青テントの下で、ネーム貼りしてたり)。

 西田書店が入居する山本ビル(千代田区神田神保町2ー34)は、規模こそ
小さいものの、茶色のレンガ作リの外観が、栄昇ビルそっくり。西田書店は2階。
自費出版の貼リ紙もあるが、時節柄ウサン臭く思われるから、外した方が得策
かも。店子も個性的なトコがズラリ。4階→卯月本舗。真性芸術研究会。ウィ
ザート。3階→ティーエムプラネット。明大軍縮平和研究所編集部。リゲル。
2階→西田書店。1階→倉庫っぽい。

 西田書店は何年か前まで、近所の専大通りに面したトコに、国宝級のオンボ
ロ社屋が(同社HPによれば、小金井にある「江戸東京建物園」に保存されて
ると。確かに潮書房の旧社屋よりは、はるかに威厳があった)。

 ひょっとして山本ビルは、西田書店の持ち物? というのも普通このクラスの
ビルは最上階に山本さん一家が居住、1階で家業を営むなり、商人に貸す。こ
こは倉庫(いかにも版元様のって感じ)。それに明大軍縮研究所は、西田書店
発行の『季刊軍縮地球市民』の編集元だろう。断言はしないが、自社ビルっぽ
さがプンプン(だとすれば競売にかけられ、追い立てを喰う事もない。いいなあ…)。

 出版物を見るとよりその思いはつのる。『もう一度「人間」の不思議さを考
えよう』(河合聰)『希望の現代経済』(長田浩)『その時、君が見た空』(村
田省吾)『ボンジュルノ ふたりでフィレンツェ』(東郷俊一郎・光子)。そ
して『季刊軍縮地球市民』だ。家賃だの、まともな給料を従業員に払っていて
は、とても運営していけるラインナップとは思えない(間違ってたら御免なさ
いよ。竹入義勝バッシング本でも出してると、背景が非常に分りやすいが、そ
んな風も一切ない)。

 帰ろうとすると、近所の雑居ビルに『図書新聞』のプレート。大昔から、シ
ョボイ古本屋ナンバー1、「ダイバー」の近所だったはずなのに(本連載でも
既に取り上げた)。プレートも新しかったし、やっぱり? そだそだ、人様の
事より、漫画屋も早く新しい事務所探ししなくっちゃ。                       
   
〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)、『出版業界最底辺日記 エロ漫
画編集者「嫌われ者の記」』(ちくま文庫)。1980年以降書き散らしたコラムを
まとめた『東京の暴れん坊 俺が踏みつけた映画・古本・エロ漫画』(右文書
院)が好評発売中。

なお、この連載に関しての批判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(た
だし、謝るとは限りません)。
mangaya@air.linkclub.or.jp
http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/

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 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。
★「関西古本女子だより」次田史季(ちょうちょぼっこ) 
 →大阪と神戸の「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「千駄木ドロナワ日記」川原理子
→地域雑誌『谷根千』の若手スタッフが綴る、日々のあれこれ。
★「食の本つまみぐい」遠藤哲夫
 →〈大衆食堂の詩人〉エンテツが料理文化史の重要本を紹介します。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
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*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
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★nakabanコラージュ展
「ポケットからカミツレ 」
12/13(木) 〜1/15(火)
open 14:00 〜23:00
*お休みは12/19(水)、12/30(日) 〜1/4(金)、1/9 (水)

場所 カフェNOMAD
文京区根津2-19-5
TEL 03-3822-2341

12/25(火)、音楽会「くつしたからギター」有。
出演:青木隼人(guitar) 入江泉(musical saw) 波多野敦子(violin)
中林久和(bandoneon) 津田貴司(guitalele)
詳細は近日店頭にて!

★クリスマスイブは早稲田へ
週末は、早稲田に行こう!」
第2回 ウィークエンド・ワセダ 〜お店で古本市〜

古本屋店内の棚を他店に開放して古本市を開催します。「お店で古本市」です。
会場も1軒増えて三ヶ所に。初日は夜の開催。南陀楼綾繁の「古本けものみち」。
今回は最新掘り出し物を500冊ご用意!

日時
2007年12月21日(金)〜24日(月・祝日) 雨天決行
21日(金)19:00〜23:00
22日(土)11:00〜19:00
23日(日)11:00〜17:00
24日(月)11:00〜17:00

会場(3ヶ所で開催!)
◎第一会場 立石書店
東京都新宿区西早稲田2−1−2 ハイツ森川1階
TEL&FAX 03−6276−4011
http://d.hatena.ne.jp/tate-ishi/

参加者
〈早稲田〉
いこい書房/谷書房/ブックスアルト/さとし書房
〈わめぞ〉
旅猫雑貨店/リコシェ
〈その他ゲスト〉
古本けものみち(南陀楼綾繁) http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

◎第二会場 飯島書店
東京都新宿区西早稲田2−9−16
TEL&FAX 03−3203−2025

参加者
〈早稲田〉三幸書房/二朗書房

◎第三会場 古書現世 
東京都新宿区西早稲田2−16−17
TEL&FAX 03−3208−3144
http://d.hatena.ne.jp/sedoro/

参加者
〈早稲田〉
平野書店/三楽書房/渥美書房
〈わめぞ〉ほか
藤井書店(吉祥寺)/m.r.factory(武藤良子)/退屈男/
〈その他ゲスト〉
蟲文庫(岡山・倉敷市)http://homepage3.nifty.com/mushi-b/

★正月は池袋「外市」へ
2008年、いきなり「外、行く?」
第6回 古書往来座外市 〜わめぞ初詣で〜

いよいよ2年目。往来座の外壁にズラリ2000冊の古本から雑貨、楽しいガ
ラクタまで。包丁研ぎのコーナーもあります。敷居の低い、家族で楽しめる縁
日気分の古本市です。お正月休みのラストは「外、行く?」。

日時
2008年1月5日(土)〜6日(日) 
5日⇒11:00〜20:00(往来座も同様)
6日⇒11:00〜17:00(往来座も同様)
雨天決行(一部店内に移動します)

会場
古書往来座 外スペース(池袋ジュンク堂から徒歩4分)
東京都豊島区南池袋3丁目8-1ニックハイム南池袋1階
http://www.kosho.ne.jp/~ouraiza/

ゲスト
聖智文庫(藤沢)http://www5.ocn.ne.jp/~syouchi/
にわとり文庫(西荻窪)http://niwatorib.exblog.jp/
海月書林(荻窪) http://www.kurageshorin.com/
その他、わめぞオールスターズ他、約30名が参加します。



主催・古書往来座  協賛・わめぞ


なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

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■関西古本女子だより  次田史季(ちょうちょぼっこ)
(4)当番の日のこと


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 12月8日(土)は、ひさびさのちょうちょぼっこの当番の日だった。4、5
週目はお休みにしているので、前の月の3週目に当番をしていなかったら、よ
けいに久しぶりという感じがする。

「Lmagazine」を見て来てくれた男の子と絵本やマンガの話をしていると、取材
の人が来る。ちょうちょぼっこをオープンした年や、引っ越しした年を聞かれ、
パッと答えられず。前の場所で始めたのが2001年4月で、2004年1月に引っ
越しをし、2月に今の場所でオープンした。○周年パーティーの類は全然して
おらず、時が経つにつれどんどん記憶があいまいになってゆく。取材の前には
予習をしておかないと。

 4時を過ぎたころから、いっぺんにお客さんがやってきた。この日は、チャ
イとジャスミンティーの注文が多かった。多いと言っても2人とか3人とかな
のだけど。取材で常連さんはいるんですか、と聞かれ、5、6人はいますと答
えていたが、取材後、5人の常連さんが来てくれて、10人くらいですと言って
おけばよかったと思った。たいして変わらないか。

 何回か来てくれて、顔見知りになると、相手からのときもあるしこちらから
のときもあるが、大抵なにかしら話をする。この日は、一人は古本屋でガラス
絵を買ってきた帰りで、包み紙を少しやぶって見せてくれた。相撲の絵が描か
れていて、戦前のものかもしれないとのことだった。

 一人は、『書肆アクセスという本屋があった』が届いたと持ってきて見せて
くれた。そのとき、ちょうど海文堂では畠中さんと近代さんの対談が行われて
いるだろう頃だった。一人は、帰ろうとしているお客さんと以前会ったことが
あったみたいで、沖縄にはまりやすい女の人の話と、プサンに船で行く話をし
ていたので、私もいっしょに聞いていた。

 そんなことをしている間に、時間は過ぎ、恵文社の年末年始古本市に送る前
に読もうと思っていた本は読めず。出したいけど読みたい本が多くて困る。今
年の恵文社の古本市は、少し違った感じになりそうなので、楽しみ。年が明け
ると、今度は「にのにのいちのに」の準備に本格的に取り組まなくてはいけま
せん。

 昨年大好評だった、2月に200円の古本を200冊売る「にのにのいち」を更
にパワーアップした第2弾、その名も「にのにのいちのに」2008年2月開催
決定! 今年は、7組の出展者が200円の古本を200冊ずつ売ります。このイベ
ントにあわせて出展者によるフリーペーパーも作成中。お楽しみに!

〈つぎた・ふみき〉貸本喫茶ちょうちょぼっこのメンバー。今年こそはと最近
毎年言ってるような気がするけれど、先日、滋賀県にある、ガリ版伝承館へ行
き、来年こそはと懲りずに思う。三重県にはガリ版指導に熱心な先生が何人か
いらっしゃるらしい。

貸本喫茶ちょうちょぼっこ
〒550-0014 大阪市西区北堀江1-14-21 第一北堀江ビル4F
http://www.geocities.co.jp/chochobocko/
*営業日は、第1〜3週末です。 金18:00-21:00、土日 13:00-21:00

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■千駄木ドロナワ日記 川原理子(谷根千工房)
(5)増ページと遅刊のスパイラル
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2007年10月20日(土)
 昼、神保町の学士会館、活弁士澤登翠さん35周年の会で、映画保存協会の里
親制度で復元された「モダン怪談100000000円」を観る。ドリフみたいな映画
だった。よくこんなおかしな映画つくったな〜と思うとともに、よくぞ復元し
てくれました。

 その後、書肆アクセスにいくと、噂の『苔とあるく』(WAVE出版)が平積み
になっていた。コケなのに表紙がピンクというのが新しい。先日往来堂で買っ
た『苔の手帳』の写真は白黒だったけれど、こちらはカラー。やはりコケのよ
うなものは、色がついていたほうがわかりやすい。

 夜、足立区の朝鮮学校で、北海道の朝鮮学校の生活を撮ったドキュメンタリ
ー「ウリハッキョ」を観る。さわやかな青春映画。最後、修学旅行で祖国へ行
く生徒たちの乗る船に向かって、日本人(一般市民か、拉致被害者か、ナショ
ナリストか)が入港反対の抗議行動をする場面があった。この映画の監督は韓
国人であるため、修学旅行についていくことはできない。隣同士の3つの国、
ゆがんだ関係。

11月14日(水)
 韓国の仁川(インチョン)で住民による町づくりをしているグループ「希望
をつくる町の人々」9名が来訪。谷中を案内したら、お寺や家々を見て、きれ
いな町!と喜んでくれた。三盛社から『谷根千』88号が届く。インチョンの人
たちも手伝ってくれたので、あっという間に運び込めた。80ページでやっぱり
重い。自転車でよたよた配達して、やっと10月分の給料がもらえた。

 今、谷根千は増ページと遅刊のスパイラルに襲われている。
 とっかかりが遅いのに、後で削ればいいさと、全体像を考えずに膨大な量の
記事を書く。対談は、対談者がお互いに付けたしあってペ中身が膨らむ。それ
で進むのが遅くなる。すると、約一名どんどん書く人がいるので、遅刊するほ
どページが増える。終わりが決まっているので後回しにはできない。そしてま
すます遅くなる。

これはマイナスが大きい。谷根千を配達しないとお金は入らないのに、月単
位で家賃はかかるし、給料はもらいたいしで出てく一方。制作費も多くかかる。
88号は印刷代だけでも20万円の増。

 しかし本の値上げはできない。毎号何十冊も買いとってくださるお店には申
し訳ないし、終刊号分までもらっている定期購読の方々には、差額をください
と申し上げにくい。配達に行けば、ただでさえ「最近売れないわネ」と言われ
るのだから、値上げしたらさらに売れなくなるだろう。集金時に計算を間違え
るだろうというのも大きな理由。

 現在は88号を配達し終わり、みんな「どんどん出そう!」と意気込むんでい
るのだが…。

〈かわはら・さとこ〉谷根千工房社員
「谷根千やめたらウチにきなよ」と言ってくれる人はうれしい。おでんやさん、
宅急便配達、花豆つくり…。どんくさい私でも役に立てるか。

「谷根千ねっと」
http://www.yanesen.net/


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■食の本つまみぐい  遠藤哲夫
(26)いかがわしさの中の確かな料理
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魚柄仁之助『魚柄の料理帖 人生、楽しく食べること』光文社文庫、1997年

 前回の瀬尾幸子さんは、料理は作ってなんぼのものじゃ、ぐちゃぐちゃ能書
きたれてないで、冷凍食品でもインスタントでもいいから使って、とにかく作
ることだ、自分がうまくて楽しければいいんだよ、という主張で、おれは激し
く同意する。今回も、チョットちがうが、その「系統」といえる。

 生協など「できるだけ安全性の高いハムを求めて共同購入の輪が広がっとる
ようですが、な〜んで「作ってみよう」って人がおらんでしょうネ? ハム会
社と同じ作り方でなくても、プロの言う本物のハムでなくてもかまわんと思う
ですが、やろうともせずに、作れないと信じ込んでいるみたいです」こう言っ
て作る「豚タンハム」は、たしかに、農林規格でいうハムではない。だけど、
簡単に作れるし、うーむ、なにやら添加物だらけのハムよりハムらしいかもな
あと思えるものができる。それに、なにもプロをお手本にすることはないのだ。

 全編そんな調子で、その文章のダサイ戯作調とあいまって、なにやらホラ吹
きハッタリいかがわしい怪しいムードむんむんなのだが、カンジンな料理の作
り方の説明は丁寧でわかりやすいし、やや奇怪と思われる手段を用いたりする
が、「食生活を科学的に研究し」と言っていることにはウソがないようだ。な
により、食生活のあり方を、料理作りを通して考えさせるものがある。ひとの
文章についてアアダコウダいえるおれじゃないが、おれには苦手だなあ読むの
シンドイよと思う文章の中に、けっこう深いものがある。とかく、この著者の
本は、「節約」「倹約」の本として読まれがちだが、それは皮相的すぎるだろう。

 いわゆる魚柄本は、『台所リストラ術』に始まって何冊あるか知らないし、
数冊しか目を通していないが、おそらく本書が、このひとのなんやらよくわか
らない人となり、料理に対する考えや姿勢、特徴がよくまとまっているのでは
ないかと思う。つまり、「人生、楽しく食べること」という副題だが、内容的
には「人生、カネをかけないで、楽しく作って食べること」につきる。気どる
んじゃないよ。ってことだ。

 本書は、カッパブックスから1995年に『あー! もったいない 1食100円
の窮極のメニュー』のタイトルで出た。これも持っているが、著者本人は、大
いに不満があったようで、構成をかなり変えている。実用書としての使い勝手
か、エッセイとしての読む楽しみか、どちらかによるだろう。

〈えんどう・てつお〉フリーライター。
北九州市発行『雲のうえ』5号、大衆食堂特集「はたらく食堂」、好評無料配
布中。携帯動画番組で都内の大衆食堂大衆酒場めぐりをやることに、年内は撮
影に追われ、来年早々オンエアの予定。はたして?

「ザ大衆食」 
http://homepage2.nifty.com/entetsu/


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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(55)遅れまくる配本への督促状
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 疲労感の固まりになりながら、なんとか年末のうちに入稿を済ませた『酒と
つまみ』9号の校了紙は、翌2007年1月9日に出てきた。正月を挟んでいたの
でずいぶん時間が経ってしまったような気がしたが、その週の週末には校了せ
ねばならず、その後には、配本へ向けた準備も待っていた。もとより、年末年
始も飲み続けであるから、新年が始まって10日だというのに、なんだこの疲れ
方は! というくらい疲労困憊していた。

 9号の印刷部数は、前号に引き続いて8000部。地方・小出版流通センターへ
の初回納品は1700冊と決まった。差し引いて、残りは6300冊。これを完売し
たいと思えば思うほど、やはり遥かな道のりだなと、しみじみ思った。

 1月22日。大日本印刷から、第9号8000部が納品された。編集Wクンと私
に加え、デザインIさんもカメラSさんも仕事場へ来て、例によってエレベー
ターのないビルの4階にある仕事場まで、みんなで梱包を運び上げた。ひ弱な
私などはたちまち息が切れ、真冬だというのに汗がダラダラ出るのであるが、
その分だけ、納品完了後のビールがうまい。みんなで乾杯。うまかった。 

 それから、執筆陣の方々や、取材への協力をいただいた方たちへの送本作業
に入る。宛名の一部は、一部20円で私の娘に書かせたもので、甚だ拙い文字の
宛名なので恐縮至極なのだが、なに、それは、私が書いても変わらない。『酒
とつまみ』編集部において、宛名がシールになって印刷される日が、いつ来る
のか、まだ、皆目見当もつかないのであった。

 納品当日は、弊誌を置いてくださる銀座の「ル・ヴェール」「ロックフィッシ
ュ」という2軒を回り、その後中央線沿線へと納品行脚をする。私は、「ロッ
クフィッシュ」であえなく酔ってしまい、結局のところ西荻窪の信愛書店さん
への納品は、編集Wクンに任せた。

 翌日から、スケジュールを組むのがとても難しい日々が始まった。自宅から
仕事場へ向かう午前中には、その途中の書店により、府中で取材がある午後に
は、午前から立川、国立、府中と書店を巡り、赤坂で打ち合わせがある夕方に
は、その少し前に、まとめて3軒の書店を回る。そんな具合だった。しかし、
配本は、なかなか進まない。

 Wクンももちろんフル稼働で配本作業をしている。私も、出切る限りの配本
をしている。しかし、1日に持って歩ける冊数には限りがあり、酒に絡む取材
や打ち合わせが多い身としては自家用車を使うこともできない。納品は、遅れ
に遅れた。

 そして、月が変わった2月。都内某有名書店にようやく納品に伺うことがで
きた私は、店長からこんなことを言われた。
「やっと出ましたか。いやあ、問い合わせがあるんだよ、まだ出ないのかって。
なんで、こんな本がまだ届かないからと言って、苦情を言われなくちゃいけな
いんだ」

 これは、小言ではない。店長は、笑いながらそう言って、注文もがっちりと
くれたのである。発行も遅れれば配本も遅れる。それでも、笑って、待ってい
たよと言ってくれる人がいる。私には、それだけで十分だった。

 翌週のことだろうか。神田三省堂の新刊ランキングで、『酒とつまみ』9号
は、14位に食い込んでいた。これは飛び切り嬉しいニュースであると同時に、
まだ終わっていない配本への督促状でもあった。

〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集発行人。
第9号発行から、なんと10ヶ月半。やっとのことで第10号が出来上がりまし
た。10号記念ですが、内容はほぼ、いつもと同じです。今、配本作業を開始し
たところですが、まだまだお待たせをしてしまう方があるかもしれません。で
きる限り早く行なおうと思います。よろしくお願い申し上げます。
http://www.saketsuma.com

ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(63)論創社の巻  “都心の谷間感”タップリの安っぽいビル
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 白山通りを1本渡っただけなのに、さくら通りはすずらん通りに比べて格段
にわびしい。昔からで、今タイ料理屋がある辺には、つまみ一品100円均一の、
小汚い居酒屋や定食屋が。1970年代半ばまでは健在だった。すずらん通り入口
の、「あそこで絶対生物を頼んじゃいけないヨ!」とよく大学の先輩に忠告さ
れた、「ニュー浅草」よりも安かった記憶(ただ、都心で飲んでる気分にはな
れなかった)。

 論創社(有限会社)は、そのさくら通りの左側でドン詰まりのチョイ手前、
北井ビルの2階。1階は肉屋の「北井商店」(大家さんとみえ、4、5階は北
井さんの表札)。3階はOZプロダクション。我が漫画屋同様に怪しい社名で、
とても他人とは思えない(“極太ステッキエロオジサン”が率いる、栄昇ビル
上階の波乗社のように、真っ当なお仕事ならごめんなさいヨ!)。

 5階建ての北井ビル、いかにもさくら通りに溶け込んでるというか、小汚い。
肉屋さんも都心の人口減で大変なのか、あんまメンテナンスに回すお金がない
らしく、元々のクリーム色が、菅前総務相の額並に脂とホコリまみれ。しかも
セメントの継ぎ目に、なぜか縱横にブルーのラインが。安っぽさ100倍!!(誰
ですか? 谷隼人主演の70年代東映映画、『非情学園・ワル』を真似て、「チャ
チィぜ!」と粋がってんのは? 俺か…)。

 ただ中は清潔。同ビル、間口は狭いが奥行きはあり、玄関には大家さんの趣
味だろうか、菊などの鉢植が所狭しと並べられ、いかにも一昔前の神保町(千
代田区神田神保町2ー23)。日当たりは悪そうだが、“都心の谷間感”タッ
プリで、編集作業には打ち込める環境かも。

 歴史は古い版元のはずなのに、HPを見ると論創海外ミステリだ、中島かず
きコレクション、あるいは高橋いさおシアターブックと、趣味外の本ばっかで
「???」。昔はもっと交錯する部分もと探索すると、いいだももの本がズラ
リ。『恐慌論』『レーニン、毛、おわった』等。昔はその手の版元だったけど、
理屈じゃ喰えないと、ミステリに進出と勝手に推測(利益は“ももんがあ”に
吐き出してるとか?“ももんがあ”とは、ほとんど忘れたが、70年代の某党派
のいいだももへの蔑称。多分革マル派)。

 で、何か記憶あると思ってたら、数日前に下版した『Mate』(一水社発行
のエロ漫画誌)2月号連載、南陀楼綾繁の「活字本でも読んでみっか?」、第
100回目用の記念すべき本が、よりによって同社の『出版業界の危機と社会構
造』(小田光雄)だった(ホントに偶然スよ)。モクローセンセ、著者の分析
を結構高く評価。そのまま終えれば可愛いのに、著者の既刊本が無視されたと
の嘆きに、“書評が出なかったのは、内容よりも、こういう著者の凄まじい個
性が敬遠されたからじゃ…”とイヤミを。もっと人に愛されるように努力なさい。

『Mate』の見本誌が出来たら、神保町散歩のついでに、1冊同社のポストに
入れといてやるか?エロ漫画誌の書評じゃ喜ばねえ?だとすると小物過ぎるが…。

〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)、『出版業界最底辺日記 エロ漫
画編集者「嫌われ者の記」』(ちくま文庫)。1980年以降書き散らしたコラムを
まとめた『東京の暴れん坊 俺が踏みつけた映画・古本・エロ漫画』(右文書
院)が好評発売中。

なお、この連載に関しての批判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(た
だし、謝るとは限りません)。
mangaya@air.linkclub.or.jp
http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/

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[書評]のメルマガ vol.336
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■          vol.336
■■  mailmagazine of book reviews   [ だんだん寒く 号]
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[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。
★「関西古本女子だより」頓花恵(トンカ書店) 
 →大阪と神戸の「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「音を探してページをめくる」貴島公
 →音楽サイト「モノノフォン」の主が、音とテキストの関係を考察する。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。
★「〈畸人研究〉今柊二の読書スジ」
 →休載です。
*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
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★神保町〈書肆アクセス〉は17日で閉店
 神保町のすずらん通りで、地方出版社や小出版社、ミニコミを扱っている新
刊書店〈書肆アクセス〉が11月17日(土)を最後に閉店します。小川町の
「展示センター」時代から31年間、現在の地に移ってからでも26年間の歴史
に幕を下ろします。現在、店内では最後のフェアとして「アクセス店員が選ん
だ20冊」が行なわれています。

 なお、版元・書店・読者・著者など、さまざまな立場でこの店に関わった
人々が寄稿した本が、11月末に刊行されます。80人の寄稿、30人のメッセー
ジに加え、アクセス年表、文献目録などで構成。付録として、これまで4回
発行された「神田神保町路地裏マップ」の復刻が挟み込まれています。
営業中の店内に置きたいという希望は、タッチの差で間に合いませんでした
が、とてもいい本になったと思います。

『書肆アクセスという本屋があった――神保町すずらん通り1976-2007』
岡崎武志・柴田信・安倍甲 編
『書肆アクセスの本』をつくる会 発行
右文書院 発売
四六判・約250ページ
本体1143円+税
11月末刊行

なお、本書は刊行の趣旨に同意してくださった多くの方からの基金によって制
作されました。ご協力に心から感謝します。収支報告は刊行後にブログで行な
います。
http://d.hatena.ne.jp/jinbouac/

★海文堂で畠中×近代トーク
 そのアクセス店長・畠中理恵子さんと『モダンジュース』の近代ナリコさん
のトークが、神戸の海文堂書店で行なわれます。会場ではアクセス本も販売
します。

畠中理恵子さん×近代ナリコさんトーク
進行 林哲夫さん
日時 2007年12月8日(土) 15時〜17時
場所 海文堂書店・2F <Sea Space> (ギャラリースペース)
入場料 500円

 本の世界を「女の子」のキーワードで変えた近代ナリコさんと神田神保町の
良心・畠中理恵子さんに、読書・出版、そして〈書肆アクセス〉閉店までを本
音で語り合っていただきます!
 たくさんのみなさんのご参加をお待ちしております。なお、トーク終了後、
ゲストのお3人を囲んでの“海文堂名物”【近くの居酒屋・大座敷宴会】を挙
行いたします。こちらにもご乱入くださいませ(割り勘ですけど……)。

海文堂書店
〒 650-0022 神戸市中央区元町通3−5−10
TEL (078) 331-6501 FAX (078) 331-1664
http://www.kaibundo.co.jp

★『酒とつまみ』+『モツ煮狂い』イベントは満員目前

『酒とつまみ』+『モツ煮狂い』最新号発売(たぶん)記念!
 冬の夜長の酒飲みトーク 酒のつまみにモツ煮はいかが?

 2002年に創刊された『酒とつまみ』は「飲兵衛のバカ話だけを集めた、決
して人様のお役に立たない雑誌」。口コミで火がつき、いまでは大書店でもフ
ツーに売ってる〈リトルメジャー〉な雑誌となりました。対する『モツ煮狂
い』は2006年創刊。「モツ煮をテーマに東京の郊外史を掘り起こす」という
深遠な趣旨のもと、モツ煮の名店を紹介しています。カラープリンタ出力・ホ
チキス留めという体裁で、一部に熱狂的なファンを持つ〈ビッグマイナー〉な
ミニコミです。
 どちらも新しい号が待たれているのにナカナカ出ない、じゃあ、一緒にイベ
ントをやるコトにして、そのときまでに間に合わせよう――。これが今回のイ
ベントの最大の目的です。果たして当日、会場に無事最新号が並ぶのか?
 ホッピーを飲みつつ、冬の夜長を一緒にグダグダと過ごしましょう!

出演:大竹聡(『酒とつまみ』編集発行人)
   クドウヒロミ(『モツ煮狂い』編集発行人)
進行役:南陀楼綾繁(ライター・編集者)

日時:2007年12月12日(水)
   18:30開場/19:00開演〜酒がなくなるまで
場所:古書ほうろう 
   東京都文京区千駄木3−25−5
   tel/fax 03-3824-3388
   horo@yanesen.net
   http://www.yanesen.net/horo

入場料:1000円(ホッピーセット付き) *入場は予約者優先。
ご予約:古書ほうろう宛、メール(タイトル:「冬の夜長の酒飲みトーク申込み」)
    もしくはお電話にて承ります。

*なお、クドウさん特製の「モツ煮」を先着順で提供する予定です
(1杯200円)。品切れ御免です!

★オフノートの3つのライブ

◎韓絃楽 滅紫月(けしむらさきのつき) 公演VOL.14
KOREAN TRADITIONAL MUSIC

2007年11月24日開演:夕刻6時30分より
西荻窪 がざびい TEL:03-3395-0133
杉並区西荻北5-9-12そらの上
徒歩:JR中央線 西荻窪駅北口より徒歩8分 北銀座街を直進
バス:JR中央線 西荻窪駅から荻窪・井荻方面2つ目バス亭「西荻北5丁目」
お問い合わせ:090-4240-7562 「韓絃楽 滅紫月」実行委員会

◎―ROSA 7TH ANNIVERSARY―『紙の月』
11/26(月) @池袋LIVE INN ROSA
OPEN/START 19:00/19:30
ADV/DOOR ¥2000/¥2500(+1order)

出演
薄花葉っぱ(京都) http://www.geocities.jp/happahakka/
三枝彩子(オルティンドー)http://blog.livedoor.jp/urtynduu/
※バイオリン+津軽三味線を交えての演奏予定
石橋英子×アチコhttp://d.hatena.ne.jp/achicoo/
オープニングゲスト 8bit

◎CD『街角の唄たち/オクノ修』『桃源楽/吉育』合同完成記念ライブ
桃源楽 -MUSIC FROM HEARTLAND-  

出演
オクノ修 唄・ギター
吉育 ブルースハープ
関島岳郎 チューバ、リコーダー
船戸博史 コントラバス
恵良真理 パーカッション
水晶 ウクレレ
ウエッコ ギター(スケジュール調整中)

11月28日・水曜日 
磔磔 Tel: 075-351-1321
京都市下京区 富小路仏光寺下がる
阪急 河原町駅下車11番出口/地下鉄四条駅下車南5番出口より徒歩5分
http://www.geisya.or.jp/~takutaku/ 

開場18:00 / 開演19:00
前売2000円 / 当日2500円 ( drink charge 別)

★金沢で平野甲賀展覧会+トーク

GALLERY TOKI-DOKI EXHIBITION vol.1
平野甲賀の仕事展  「コウガグロテスク/僕の仕事帖」

日時  2007年11月10日(土)〜20日(火)
          10時30分〜19時00分〔14・15日休〕
会場   GALLERY 時々(ブックカフェあうん堂・2F)

トークイベント「コウガさんの<仕事>術」&サイン会
日時  11月10日〈土〉 15時〜17時〈開場:14時30分)
会場  ブックカフェ あうん堂
料金  1500 円(1ドリンク付)
定員  20名(駐車場がございませんので、お車はご遠慮下さい)

あうん堂
〒920-0831 石川県金沢市東山3-11-8
tel 076-251-7335
huruhonya@aun-do.info
http://www.aun-do.info/

なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

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■新連載 関西古本女子だより  頓花恵
(3)時を隔てても絵本は忘れられない
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日々届く、買取依頼のダンボール。事前に大体の内容物は伺っていますが、
実際何が送られてきたのかは箱を開けるまでのお楽しみです。

 先日は子どもさんが小さい頃に読んでいた児童書を送りますというご連絡を
受け、届いた荷物を紐解くと出てきたのは色鮮やかな絵本たちがズラーリ。
『だるまちゃんとてんぐちゃん』、『かいじゅうたちのいるところ』、『もりの
なか』……うんうん、読んだ読んだ。懐かしい思い出も溢れます。

 自分が幼い頃読んだものを、今の子どもさんも同じ目線で共感しているとい
う不思議感。例えば、大きな卵から大きなカステラを作って食べるお話にワク
ワクさせられた『ぐりとぐら』。中川季枝子さんと大村百合子さんによる圧倒
的人気を誇るこの絵本も初版は1967年。どれだけ多くの子どもたちが大きな
カステラをぐりやぐらと一緒にいただいたのでしょう。

 今日はイラストレーターで絵本作家でもある太田朋さんの作品展『自転車に
乗って』を観に行きました。シンプルな線に短い言葉が胸に響きます。ページ
を開いてみれば日常から少しだけ離れた場所へと運んでくれる。絵と言葉が紡
ぐ想像豊かな世界。そう、子どもさんだけでなく我々大人もやっぱり絵本が大
好きだったりします。幼き頃の気持ちを思い出したくて求めたり、また違った
角度で読み返したり、誰かにすすめてみたり。

 古本屋を始めて以来当店で一番多い探求本が実は絵本なのです。「表紙が紫
色で、ネコの絵がバーンと載っているんです」「おばあちゃんが野草でおだん
ご作る話なんですが」「魚が満月の夜に大宴会を開くんです」これらはみんな
実際に受けた探求本で、皆さんこれ以上のことはあまり覚えておられませんで
した。(ちなみにそれぞれ『おなかのかわ』、『よもぎだんご』『あたごの浦』
です)タイトルや作者の名前、時には肝心のお話の内容さえうろ覚えでも、
読んだ時に何かを感じた本は時を隔てても忘れられない、そんな魅力が詰ま
っているのだなぁと改めて実感しました。

さて来月はクリスマス。たくさんの絵本をご用意してお待ちしたいと思います。

(イベントのお知らせ)
12/1〜12/25 communicaエホン展〜クリスマス絵本即売会〜
古今東西の絵本を500冊以上展示販売致します。オリジナルメッセージカード
やラッピングサービスもあります。

〈とんか・めぐみ〉
神戸元町にてザックバランな古本屋『トンカ書店』を営業中。
トンカ書店
650-0011 神戸市中央区下山手通3-3-12元町福穂ビル2D
078-333-4720
http://www.tonkabooks.com/

---------------------------------------------------------------------
■音を探してページをめくる  貴島 公
(6)個体発生は系統発生を繰り返す(といいな)
---------------------------------------------------------------------
松永良平『20世紀グレーテスト・ヒッツ』音楽出版社、2007年7月

 この本が店頭に並んだとき、「著」とあることから、松永氏の文章を集めた
ものだと早合点し、手に取ったら、インタビュー集だったので、少々がっかり
してしまった。目次に並んでいるインタビューされているひとたちの名の半分
にもピンとこない。音楽の「あったはず」の背景への想像力をもった氏の文章
を期待してしまったからだけど、読み始めたら、がっかりしたことを忘れてた。
すみません。

 渋谷にある「ハイファイレコードストア」のウェブサイトに掲載されていた
読み物がもとになっている。二、三度見かけた気もするけれど、前述のように
名前にピンとこなかったからか、ちゃんと読んでいなかった。登場するのは、
大雑把に言えば、音楽業界の裏方や脇役。雑誌編集者、レコード会社ディレク
ター、ディスクジョッキー、レコード店店主など。でも、ここで語られている
のは、と言うか、松永さんの視線の先にあるのは彼らの業績ではない。経歴を
たどることで見えてくるのは、彼らを魅了したポピュラー音楽であり、それら
が流れていた場所なのだ。

 この本は、ただかつて巷で流れていた歌というのではなく、ポピュラー音楽
に的を絞っている。この本が思い定めているものとはズレがあるかもしれない
けれど、ポピュラー音楽を聴くことは、巷で流れている歌が好きというのとは
異なるワザワザ感がある。ワザワザ感をともなう聴き方というものがあり、か
つてはそれをポピュラー音楽が誘発していたのだ。そのことを、ポピュラー音
楽を聴くことの草創期に立会い、そうした聴き方を成り立たせることに携わっ
てきたひとたちの言葉が示してくれている。

 すれっからしの今では、例えば、「いい音楽を好きなひとはいいひとだろう、
いい人が好きな音楽ならいい音楽だろう」(椿正雄氏、P.132)なんて、とて
も言えない。そんなわけない(特に前段)。でも、この言葉には胸を打たれる。
そうでなくては、ワザワザ、こんなことやらないよと思えるような話が、この
本にはたくさん出てくる。それらに感激できるのは、伝説や武勇伝やトリビア
だからではなく、確かに、身に覚えがある(え、あるある?)からだ。登場す
る音楽や人については知らなくても、20世紀に生まれた、ある「聴き方」に
触れることができる本です。

〈きじま・こう〉説明業、趣味・読書と音楽鑑賞。
10月19日に発売されたバイクモンドのCD『いいよいいね』には、この7月に
閉鎖された大阪・新世界のライヴスペース「ブリッジ」での録音が2曲収め
られています。その日はキーボード奏者、千野秀一さんをホストとしたプロ
グラムで観に行ったのですが、遅刻して、一番手のバイクモンドは観られな
かったのでした。聴けて嬉しいやら、その場に居なかったのが悔しいやら。

「モノノフォン」
http://homepage1.nifty.com/hebon/fhp/

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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(54)胃が痛え金がねえ本が出ねえ
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 2006年10月からはライターとしての仕事でも酒場めぐりが続く日々となっ
た。この年の春にやったのと同じ種類の仕事で、毎日毎日、昼間から酒の入る
日常となって、またまたヘロヘロになった。

 11月に入ると、酒の仕事が続く傍らでなぜかカキを大量に食う1週間が続
くことになった。酒が飲めて、カキが食える。たいへん結構なことなのだが、
さすがにちょっと体にもこたえていたらしく、カキ取材の後半で胃痛に襲われ、
痛む胃にストレートのウイスキーを流し込むにいたって、普段からの金欠もス
トレスとなったか、どうにもやる気の出ない状況となった。

『酒とつまみ』9号の準備は遅れまくり、8月初旬から配本を始めた『中央線
で行く東京横断ホッピーマラソン』の拡販にも身が入らない。浅草で朝から晩
まで馬券を買いながら酒を飲みまくろうという取材を実行したのは、そんなと
きだった。

 まだ胃の調子が本当ではなく、朝からなんとも憂鬱だった11月12日。編集
W君と私は浅草のWINSに集合。朝一番のレースから馬券を買い、ハシゴ酒をす
ることになった。その顛末については本誌9号掲載の『馬券酒マラソン』の記
事を見ていただけると幸いですが、この日、胃痛・金欠・本は遅れまくりの私
と、同じく金欠のW君に神様が降臨した。最終レース間近までハズレまくり、
単なる酔っ払いと化していた二人が、それぞれ18万円、19万円という配当を
受け取った。

 このたいへんな幸運は、直接『酒とつまみ』の営業に関する話ではないのだ
が、ようやく9号まで来ながら失速気味の私にとってはとてもいい景気づけに
なった。少なくとも、ほんの少しの間、金銭的な心配から解放される意味で、
幸運としかいいようのないことだった。

 この頃から、編集部制作原稿より先行して送っていただいている連載陣から
の原稿が届き始めて、レイアウトができるとファックスで確認するような状態
に入るのだが、まだまだ、編集部制作分が進まない。
 おまけに個人的には、10年来住んだ自宅を越すことになり、毎週週末には、
貯めまくって整理してなかった各種資料や古い本などの整理にも追われた。

 そして、『酒とつまみ』9号の入稿は、その後も紆余曲折を経て、12月27
日となった。
すでに日付の変わった28日、大日本印刷の守衛室に、私とW君は、入稿をした。
 やっと、入った。それだけだった。

〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集発行人。
目、肩、腰にどよーんとした疲れが来はじめたのは3年ほど前だが、ここのと
ころそれが激しくて、酒を飲んでないときはつらくてしかたがない。でも、飲
んでいると不思議に平気なもんだから、つい飲んでしまう。そんなことの繰り
返し。先日、電車の中で、「温泉に行きたい」と呟いていました。どなたか、そ
んな企画を、書かせてくれませんか?
http://www.saketsuma.com

ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(62)うさぎ出版の巻 チョコバーがボッキしたビル
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『ディズニー・フェアリーズ妖精の谷』『おしゃれキャット・マリー』『ファ
イディング・ニモ』…うさぎ出版ってこの種の本出してたんだ。ジュンク堂の
在庫一覧をネットで見てビックリ。何となく学参系の版元かと(ガキもすっか
り成長、この畑とも縁が切れて久しい。尚、同社にHPはない模様)。

 入居するエマタナカビルは(飯田橋2ー5ー2)、目白通りを九段に向かっ
て左側、竹書房のチョイ先。左に分かれる、専大通り手前の角地に近いトコ。
杉本エマが貯金したモデル代で建てた、“ハーフボディビル”かと思いきや、
8、9階に江間さんが入居。例によっての70年代風妄想で相済まぬな(うさ
ぎ出版は7階)。“うさぎ部屋”を間近で見物しようとしたら、1階ロビーま
では自由だが、エレベーターの左側壁面にインターホンがあり、各部屋を呼び
出す形式。う〜ん…。このタイプは、エレベーターが開くなり、事務所内と直
結してる場合が多い。恥ずかしいから、安易な“外見立ちション取材”に転換。

 茶色で縦長の、チョコバーがボッキしたような同ビルは、思い出深い場所に。
左手のスカイコート九段下は、1階に「オリジン弁当」が入居、時々夕飯を買
いに(200円チョイのまぜ御飯が、サッパリしててうまい)。1〜2カ月前、
日本経団連前会長、奥田碩が秘書と警護の者を引き連れ来店、ジックリ見物し
ながら、100円の握り飯一つ買わずに、エッラソーに去ったとは(唇をペロペ
ロしつつ)、漫画屋HPの「日刊漫画屋無駄話」に書いた。

 一方右手のSNビルはかなりガタが。1階の博多ラーメン「赤のれん」(安
くもうまくもなく量が少ない)があるトコには、かつて老舗洋食屋の「伊香里」
が。拙著『出版業界最底辺日記』(ちくま文庫)にも度々登場するが、“安い
うまい感じいい”の近所では有名な店だった(出前もOK)。女性コックさん
も1人いて、常にキビキビキビ。笈田敏夫(ジャズボーカリスト兼俳優。石原
裕次郎版の『嵐を呼ぶ男』が有名)似のマスターが、レジ脇で指揮を取ってた
日々が懐かしい(末期は家賃の支払いにも困ってたと、後に近所のゴシップお
ばさんに聞いた。うんと悲しいな…)。

 エマタナカビル、正面こそチョコレート色だが、御多分に漏れずに両側は淡
いクリーム色。どこのビルもこういうパターンが多いが、ビルの側面や裏手は
人間のパンツか?(やたら汚れが目立つ白系が多い)気分的にはわかるが、正
面と同系色にした方が経済的だと思うが(何か物理的理由でも?)。

 4階にはアルク出版企画が。同社にはちゃんとHP。『新祖国論』(辻井喬)、
『200ジャズ語事典改訂新版』、『大江戸版 好色男のファルスタッフ』、『女
は見た目!』(枝口玲己)…何かこっちの版元様の方が、つまらん行数埋めしな
いで済んだ感じ。けど考えようだ。“うさぎ出版”の部分を、“アルク出版企画”
と入れ替えて読んでもらえば、一粒でニ粒味わえるってモノ(ケッ!)。

〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)、『出版業界最底辺日記 エロ漫
画編集者「嫌われ者の記」』(ちくま文庫)。1980年以降書き散らしたコラムを
まとめた『東京の暴れん坊 俺が踏みつけた映画・古本・エロ漫画』(右文書
院)が好評発売中。
なお、この連載に関しての批判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(た
だし、謝るとは限りません)。
mangaya@air.linkclub.or.jp
http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/
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[書評]のメルマガ  vol.333       
■■-----------------------------------------------------------------
■■ [書評]のメルマガ           2007.10.17発行

■                     vol.333
■■  mailmagazine of book reviews  [ 休載おおくてスマン 号]
■■-----------------------------------------------------------------
[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。
★「入谷コピー文庫 しみじみ通信」堀内恭
 →限定15部でオモシロ小冊子をつくる極小版元の活動報告です。
★「千駄木ドロナワ日記」川原理子
→地域雑誌『谷根千』の若手スタッフが綴る、日々のあれこれ。
★「真駒内石山堂通信」杉村悦郎
 →山口瞳熱愛者と永倉新八のひ孫。二人がお伝えする札幌の本事情。
★「林哲夫が選ぶこの一冊」
 →『気まぐれ美術館』復刊記念。洲之内徹のエッセイの魅力とは。
★リレー連載「書肆アクセス閉店から見えてくること」
 →『書肆アクセスの本』(仮題)編集作業にて今回休載です。
★「今月ハマったアート本」平林享子
★「もっと知りたい異文化の本」内澤旬子
★「全著快読 梅崎春生を読む」扉野良人
 →休載です

*本文中の価格は、表示のあるもの以外は、税抜き(本体)価格です。

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■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
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★和光大学芸術学科編集術コース シンポジウム「私の編集術」
 表現学部芸術学科では、2007年に新しく〈編集術コース〉を新設しました。
これを記念して、10月27日(土)に、新宿西口の住友スカイルームで三部
構成のシンポジウムを開催いたします。

日 時 2007年10月27日(土) 10:00−18:00
会 場 住友スカイルーム(新宿駅西口から徒歩5分)
入場無料
先着約300人(予約の必要はありません)

◆Section A 10:00 → 12:30  美術をめぐる編集術
美術館、ギャラリー、アーカイブ、美術雑誌など、
それぞれの専門家が「編集としての美術の現場」について語り合う。
パネラー: 池田修(BankART1929代表)、橘川英規(国立新美術館情報資料室)
       楠見清(Art on Research & Strategy主宰)
司 会: 半田滋男・和光大学芸術学科准教授

◆Section B 13:00 → 15:00  生活の編集術
料理や衣服のアレンジ、町歩き、書店の棚、部屋づくり、ネット・ショップの
運営など、衣食住のさまざまな場に編集術の冴えを発見する。
パネラー: 森まゆみ(作家)、永江朗(評論家)、和田哲哉(信頼文具舗店長)  
司 会: 津野海太郎・和光大学芸術学科教授

◆Section C 15:15 → 17:30  記憶の編集術
都市は歴史の集積によってかたちづくられている。
また、人文知は今後どのように継承されていくのか。研究者による発表と討論。
パネラー:中谷礼仁(早稲田大学理工学術院准教授)、二木麻里(翻訳家)
司 会: 野々村文宏・和光大学芸術学科准教授

お問い合わせ 和光大学学部事務室
(Tel 044-989-7497 FAX 044-988-1435)

★第5回古書往来座外市〜吉祥寺より愛をこめて〜

日時 11月3日(土)・4日(日) 
3日⇒11:00〜20:00(往来座も同様)
4日⇒11:00〜17:00(往来座は22:00まで)

会場
古書往来座 外スペース(池袋ジュンク堂から徒歩5分)
東京都豊島区南池袋3丁目8-1ニックハイム南池袋1階

参加者
▼メインゲスト
藤井書店(大棚 吉祥寺)/百年(大棚 吉祥寺)/BASARA BOOKS
(箱 吉祥寺)
▼スペシャルゲスト
古本けものみち(南陀楼綾繁・内澤旬子)/嫌記箱(塩山芳明)/文壇高円寺
(荻原魚雷)/ハルミン古書センター(浅生ハルミン)/不思議(「はてな」・
千駄木)/やまねこ書店/ふぉっくす舎/伴健人商店(晩鮭亭)/他、お客様
オールスターズ(朝/Y‘s/おんじょろ)
▼わめぞオールスターズ
古書往来座(雑司が谷)/古書現世(早稲田)/立石書店(早稲田)/m.r.
factory(武藤良子)/旅猫雑貨店(雑司が谷)/リコシェ(雑司が谷)/
ブックギャラリーポポタム(目白)/琉璃屋コレクション(目白 版画製作・
展覧会企画)/ぶくぶっくす(buku・池袋)/貝の小鳥(目白 紹介ページ)/
退屈男(名誉わめぞ民)
▼「本」だけじゃないのです!
刃研ぎ堂(包丁研ぎ)/古陶・古美術 上り屋敷(会場では特選ガラクタを販
売)/オグラ(手回しオルガンミュージシャン えっ!!?雑貨でご参加くだ
さるとの、う・わ・さ?)

◎ワメトークvol.3 
塩山芳明『東京の暴れん坊 俺が踏みつけた映画・古本・エロ漫画』(右文書院)
刊行記念
「うるさい奴らは皆殺し!」
内澤旬子(イラストルポライター)×塩山芳明(エロ漫画編集者)

おまえらうるせぇんだよ! 街にあふれる騒音、仕事がらみのとんでもない人
間の声、周辺にあふれる「うるさいもの」をガチンコ者、毒舌家で知られるお
二人にメッタ斬りしていただきます。マル秘映像の上映もあり。
なお、外市とワメトークの会場で、11月刊の塩山芳明『東京の暴れん坊』
(右文書院)を先行発売します。1980年代移行書いてきた映画評・書評・
コラムからヤバイ文章のみ精選したものです。書き下ろし100枚を追加。

日時 11月4日(日) 14:00〜16:00(開場1:30)
会場 上り屋敷会館2階座敷 東京都豊島区西池袋2−2−15 
地図はコチラです。
http://f.hatena.ne.jp/wamezo/20070413174217
参加料 600円
定員 40名
予約方法
予約・問い合わせは古書往来座が受けます。電話・メール・FAXのいずれか
で、お名前、参加人数をご記入の上、お申し込みください。
古書往来座 営業時間11:00〜22:00
TEL&FAX 03−5951−3939
ouraiza@kosho.ne.jp

なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

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■入谷コピー文庫 しみじみ通信  堀内恭
(9)「亀有名画座の落書き」を振り返って
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 昨年12月に刊行したのが、『その昔、今はなき亀有名画座の廊下には〈落書
きコーナー〉があった』(堀内家内工業・編)という長いタイトルの小冊子2
冊でした。「一宿一飯篇」と「花札勝負篇」という2冊は、藤純子の東映人気
シリーズの映画「緋牡丹博徒」より題名を拝借したものでした。

 これは、1999年2月に閉館した亀有名画座の廊下に貼ってあった「落書きコ
ーナー」のうち、手元に残っていた1991年から閉館までの10年間分、27枚か
らの落書きメッセージをセレクトしたものでした。

「ヒキガエル顔がかわいい。林由美香特集、お願い」
「仕事が疲れた。外回りの営業をサボってきました」
「女性でも安心して観られる映画館ですね。いつまでもがんばってください」
「神代辰巳が死んだ。……絶句」
なんて、ぼやきまじりや鬱憤を晴らすもの、熱すぎるピンクやロマンポルノ映
画への観客の声が入り混じった落書きばかりを年代順に羅列したものです。

 表紙のイラストはハピイ氏橋さんにお願いしました。「エロい門には福マン
来たる」という文字とともに、とてもドキッとする、「大正ロマン」を思わせ
るエロかわいい女優たちの絵を描いてもらいました。

 この小冊子は、『映画芸術』第418号の編集後記で、編集長の荒井晴彦さん
が取り上げてくれました。
「映画館の落書きっていいよな。〈声〉って感じがする。ピンクやロマンポル
ノを見に来て、これを書いた人たちは、いまどうしているだろう。どこへ行っ
ちゃったんだろうか。こういう人たちとまた映画館で会いたいな」
と書いてくれました。ありがたかったです。この荒井さんの編集後記を読んで、
冊子を購入したいと手紙をくれた方が3名いたことも初めてのことでうれしか
ったです。

 名画座の支配人だった今井通雄さんは80歳。今でも元気でいられて、時折お
話させてもらっていますが、今井さんの元気な笑顔には今も救われています。

〈ほりうち・やすし〉1957年生まれ。フリー編集者。
10月下旬に、赤穂貴志君の『都内名画座・ピンク劇場 潜入レポート』を刊行
予定です。浅草新劇場、新文芸坐など13の名画座のレポートです。


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■千駄木ドロナワ日記 川原理子(谷根千工房)
(4)泡盛でふらふら
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2007年7月28日(土)
 三河島・真土小学校で開かれる「統一マダン」に行く。本当は29日だったが、
参院選の選挙日変更のため、急遽変更となったそうだ。ちょっとずらしただけ
で、こんなところにもしわよせがくるんだな。
「統一マダン」は、日暮里の喫茶店で新聞読んでたら、隣に座った兄さんに、
お祭りやるんだけど来ない? と誘われたのがきっかけだ。マダンとは場所。
統一マダンは「朝鮮半島の平和と南北の和解と統一、在日同胞の和合と団結、
韓日民衆の連帯をめざして1994年から毎年開催されてい」るそうだ。

 キムチやチヂミ、ゴーヤチャンプルー、ラーメン、モツ煮、シソジュース……
いろんなものが売ってる。昨年はマッコリで真っ赤になったが、今年は泡盛で
ふらふらになった。
 舞台では、テコンドーや朝鮮舞踊、歌の披露など。舞踊は近くの朝鮮学校の
生徒さんたち。
 お祭りの後、片付けを少しだけ手伝って帰った。

9月20日(木)
 東日暮里には資源回収の会社があつまっている。古紙、缶やビン発泡スチロ
ール、布、廃タイヤなど専門別に別れ、集めてきたものを仕分けし、まとめ、
資源として売る。Mと東京国際大学のゼミ学生11名が東日暮里の荒川リサイク
ルセンターへリサイクルの話を聞きに行くというので、同行する。集合場所の
日暮里駅南口から20分ほど歩くとリサイクルセンター。

 江戸時代、浅草では集めた古紙と古布でちり紙「浅草紙」を漉いていた。和
紙を水につける間ひまだから、職人は吉原へ行った。遊女たちは彼らを「客じ
ゃないよ、冷やかしだよ」と言い、「ひやかし」という言葉はそこから来てい
るらしい。
 古紙を回収し川端に紙を漉いていたのでバタヤとよばれ、またゴミを拾うの
でくず物やとよばれ、社会的抑圧を受けてきたそうである。回収業は、勧業博
覧会のときに府境の外へ追い出され、のちにペストがはやると消毒所があるこ
こ東日暮里にほかの廃品回収業者も集まったそうである。

 現在は、古紙回収業はなかなか儲かる優良企業らしい。しかし、仕事は大変
きつく、3ヶ月持てばこの仕事はできるが、たいていはやめてしまう。収集し
たものをブロックにする際には大きな音がでる。近所から苦情もくるが、ゴミ
の行く末を生活と結びつけるために、あえてここで、人々の目の前で、頭を下
げながら中間処理をしているそうだ。

〈かわはら・さとこ〉谷根千工房社員。
次号がまだできません。いろいろな催し物を考えては、お客様集めに苦労する
日々。雑誌のことはついつい後回しになってしまいます。リサイクルセンター
の話、詳しくは谷根千88号をご覧ください。特集は介護です。消費税525円
です。

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■真駒内石山堂通信〔番頭篇〕 杉村悦郎
(20)マコイシ堂の夜は更けて
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 9月29日土曜日、わが家で遅ればせながら、店主と番頭による真駒内石山堂
オープン記念のパーティーをやった。と言うのはウソで、ネットのシステム構
築を一手にやってくれた電脳番頭のアガリー夫妻を招いて慰労しようと――と
いうのもウソで、この際だから、とわが家のダウン寸前のパソコンの新機種購
入と設定を頼んだら、快くOKしてくれて、その日がやって来たわけである(店
主なんてこの際だから、と本業のほうのHP制作も頼んじゃったりして)。僕
等って、ちょっと、あくどくない?

 夕方、あいにくの土曜出勤から5時すぎ帰宅すると、パソコンの設定はあら
かた終わっていて。中野店主も1時間後、ノイエッセンの手作りソーセージを
ぶら下げて到着。で、メインディッシュはアガリーご主人のリクエストで、(う
ちのカミさんが)悠久二千年の伝統を誇る水餃子を用意した。

 それと酒。ご夫妻差し入れの珍しい日本酒が宅配便の紙箱に入っているよ、
と言われ、開けてみると、なんと墨文字で「吟醸 真駒内石山堂」。知り合い
の酒屋に頼んだ特注品とか(ほんと、3秒ほど、店主も番頭もどういうことか
理解できなかった)。さらに先月、私が初めて会った新選組ファンの女性トリ
オから真駒内石山堂開店祝いに(よく知ってるね。書評のメルマガで知ったん
だろうな)ともらった木箱入りの「小樽限定 純米大吟醸 北の誉」(永倉新
八マニアなら、なぜ「北の誉」か、わかるんだけどね)。これは当然記念写真
を撮った。後日、マコイシ堂のHPにアップします。さっそく電脳番頭に頼ま
なくちゃ。

 酒宴ではマコイシ堂の現状と将来について話し合うつもりもあったんだが。
だって、注文を受けた本がなかなか見つからないとか。注文が来て発送すると、
HPのリストに「売切れ」と表示するが、現状は店主からのメールを電脳番頭
が受けて、パソコン処理するというお粗末ぶりで。世間に対して脇の甘い僕等
は、またもや古書須雅屋店主の連載にネタを提供してしまった。北海道新聞
「朝の食卓」にこう書かれた。「注文本が本のジャングルに紛れて見つからぬ
という、懊悩と混乱を早くも味わっているらしいのには、やはりな、と微笑」
(まあネ!)

 酒は愉しいのがいい。これは当然であって、酔うほどに新選組の永倉新八が
晩年に愛用した黒羽織なんかを出したりして、これをはおって記念撮影(カビ
くさいけど意外と受けた!)をしたりとか。今、店主が最も興味を持っている
下町散歩「別冊SANPO」追悼号で知った故平野英雄氏の話とか。50部限定コ
ピー印刷のお客様向けミニコミ「真駒内石山堂通信」の話とか。話題は四方に
散らばり、みんな、わけもなく盛り上がるのだった。

 アガリーご夫妻は真駒内の隣町の平岸に住んでいる。近いからといって、こ
んなふうに頼りきっていいとは店主も番頭も、まったく思っていない。でも、
いつか真駒内石山堂が「真駒内石山 平岸堂」と店名変更になってもしゃーな
いか、とうっすら思っている。

〈すぎむら・えつろう〉真駒内石山堂通信編集長
10月13日から3日間、木古内、松前、函館と鄙びた旅をしてきます。

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■林哲夫が選ぶこの一冊
(29)
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洲之内徹『絵のなかの散歩』新潮社、1973年。

 10月28日は洲之内徹の命日。今年はちょうど歿後20年になる。いのは画廊、
キッド・アイラック・アート・ホール、砂丘館ギャラリー、菊川画廊、ロート
レック画廊などで「気まぐれ美術館」に関連した展示や催事が予定されている。
また新潮社からは10月25日に『気まぐれ美術館』が六冊セットで復刊され、
「とんぼの本」に『洲之内徹 絵のある一生』が加えられる。また、某社では
洲之内徹の未発表随筆を集成しようという企画もあるらしいし、ちょっとした
洲之内ブームなのかもしれない。

 だからというわけでもないだろうが、某古書店の目録に高額な洲之内徹が三
冊並んでいて驚かされた。

・棗の木の下 見返切取 現代書房 1966 1万
・気まぐれ美術館 田村泰次郎宛書名入 新潮社 1978 5万
・絵のなかの散歩 献呈署名入 新潮社 1973 1万

 いやはや、こんなに高くなっているとは知らなかった。とくに『棗の木の下』
は見返切取アリでこれだ。念のために調べてみると「日本の古本屋」には現在
(10月10日)二冊出品されており、42,000円と20,000円の値段が付いている。

 二番目の『気まぐれ美術館』にいたっては驚愕の他ない。田村泰次郎の旧蔵
書は三重県立図書館に収められていて、簡単に検索できるようになっているが、
当然ながら『気まぐれ美術館』は見当たらなかった。いつの頃か、田村の元か
ら離れたのであろう。『棗の木の下』は入っている。

 田村は昭和十七年に中国で洲之内と知り合い、戦後も親しくつき合っていた。
洲之内の小説を中央の文芸雑誌という檜舞台に推薦したのも田村である。その
結果「棗の木の下」「砂」はそれぞれ昭和二十五年の上期と下期の芥川賞候補
に挙げられた。その後、小説にしがみついて生活が行き詰まっていた洲之内を
画商の道へ引き込んだのも田村である。もともと現代画廊は田村が創業したも
ので、昭和三十六年に二年足らずで廃業したが、その店を名前もそのままに洲
之内が受け継いだ。その名の通り現代美術を扱う野望が田村にはあったようだ
が、いまだ時期尚早だった。

 ところが洲之内は、歿する寸前まで、二十五年以上も現代画廊の経営を続け
る。『芸術新潮』誌上における「気まぐれ美術館」の快調な連載(1974?87)
の効果も十二分にあって、とびきりユニークな画廊として知られるようになる
のだが、洲之内がとりたてて経営が上手だったというわけではなかったようだ。
ただ、話し好きなところやワンマンなところは画商の性格として必ずしもマイ
ナスではなく、作家や顧客の心をつかむ呼吸も心得ていた。そして何よりマイ
ナー作家に対する天性の嗅覚を持ち合わせていた。

 例えば、追悼集『洲之内徹の風景』(春秋社、一九九六年)にフジヰ画廊の
藤井一雄氏が「同じ屋根の下で」という回想を寄せているなかに次のようなく
だりがある。初め現代画廊はフジヰ画廊の上階にあった。洲之内は《紛れもな
く私の師匠[ルビ=せんせい]であった》と藤井氏は言い切る。

《壁面を見ると、現代画廊の方がずっと変化があっておもしろかった。私の画
廊もだんだん現代画廊に似た陳列になっていった。この頃の洲之内さんは、山
口長男の小品を買い込んでいたので、私も相当数買った》
《難波田龍起のコンポジションも切れ味がいいので、結構買った。抽象のもの
は、この二人のものだけだった》

 藤井氏は洲之内にならって買い集めた山口と難波田の作品を自分の画廊に掛
けてみた。すると画廊のメインを占めている具象の絵が急に色あせて見え出し
た。「こりゃ、やばいぞ」と直感した。このままにしておくとメシのタネであ
る具象画を売る気持ちが萎えてしまう。

《買い集めた二十点以上の山口をそのまま住居の倉庫にしまった。これがちゃ
んとした値で売れるのは一九九〇年頃、三十年も経ってからである》

 一九九〇年頃とは、すなわち洲之内徹の歿した三年後である。画商というの
も容易な仕事ではないようだ。

『棗の木の下』は洲之内の自費出版だった。「はしがき」は田村泰次郎。発行
所の現代書房は、洲之内がやはり中国にいたときからの友人菊地一雄が発行人
となっており、住所は神田神保町1-32で、現在は古書店・沙羅書房がある番
地(靖国通りからランチョンの横路を北へ二つ目の北西角)。ありがちなこと
だが、まったく売れなかった。しかしそれも四十年経つと事情は変わってくる。

 記憶に新しいところでは『en-taxi』10号(2005年6月)の付録として文
庫本サイズの『復刻 棗の木の下/砂』が刊行されるという、ある意味、事件
が起こった。画期的な企画だったが、正直なところ、今さら洲之内の小説を読
みたいとは思はなかったのも事実である。小説家として大成しなかった理由が
よく分かる(ちなみにこの付録、初出の表示が入れ違っている。正しくは「棗
の木の下」が『群像』、「砂」が『中央公論文芸特集』に発表された)。

『絵のなかの散歩』献呈署名入一万円にもちょっと驚く。数年前に知人が靖国
通り沿いの某書店で見つけて買ってくれた署名本がその四分の一ほどの価だっ
た。むろん古書の値段は日々変動する。最近は署名の価値がやや過大に評価さ
れる傾向にあるのかも知れない。あるいはやはり洲之内ブームか。

 それはそれとして、『絵のなかの散歩』が傑作だということは確かである。
洲之内が五十代になってようやく到達した境地を示している。小説でも随筆で
も論文でもなく、そのいずれでもあるような、美術と美術家を自分自身と交錯
させながら「ぐにゅぐにゅっと」描き出してゆく。新しいエッセイのスタイル
が確立されている。

「赤まんま忌」「画廊のエレベーター」「山発さんの思い出」などいずれ劣ら
ぬ秀作がゴロゴロしているが、ここでは関根正二の「魚」を見つけた話と古賀
春江の「ミルク」に関する逸話を紹介しておこう。

 洲之内は大井か大崎あたりの古道具屋で「正二」とサインの入った魚の絵を
ごく安い値段で買う。関根正二らしいところはこれっぽっちもないものの、
「なんとなく関根の匂いがするような」気がして、その絵をまず美術評論家の
柳亮に見せるが、「ちがうね、これは」と一蹴される。

 次に関根正二と親しかった有島生馬に絵を見せる。「何とも言えない」と有
島は言い、「君はどうしてもこの絵を関根正二にしたいらしいな」と笑いなが
ら、関根と若い頃から友達だった伊東深水を紹介してくれる。

 北鎌倉の伊東深水を訪ねると、ちょうど東京へ出かけるところで、二人で横
須賀線の電車に乗り込み、車中で洲之内は風呂敷包みを解いて関根の絵を取り
出す。すると深水は一目見るなりこう言った。
「あ、こら関根だ、うんと若い頃だな」
 このあっけない一言でその絵は関根正二が十五六の頃の若描きだと判明した
のである。その後、関根正二の展覧会にその絵を貸し出したところ、後日、有
島生馬にばったり会ってこう言われる。
「君はとうとう、あれを関根にしちゃったな」

 要するに掘出し自慢なのだが、まったく自慢げなところはなく、それぞれの
登場人物がいきいきと描かれており、自慢というのはこういうふうにしなけれ
ばならない、という見本みたいな一編になっている。

 それと対照的なのが古賀春江である。まずは絵とはまったく関係のない、中
学生時代の初恋の少女が古賀という名前だった、美術学校受験のために上京、
合格して帰郷すると、彼女は転校してしまっていた、という前振りが延々と続
き、そのなかに重松鶴之助が登場(「気まぐれ美術館」連載で詳しく語ること
になる)したりはするのだが、古賀春江にたどりつくまで八頁を費やしている。
全部で九頁のエッセイなのに、である。

 その初恋の古賀さんに古賀春江の絵葉書を使って便りを出す。若き洲之内は
古賀春江を女性だとばかり思い込んでいた。

《こういう立派な女の人もいる、あなたも境遇に負けずにしっかり勉強しなさ
いとかなんとか、青二才のくせに、というよりも青二才だからこそ言えるもっ
ともらしい偉そうなことを書いてしまったのだった》

 そして古賀春江の「ミルク」という絵の解説に移る。けれどもどうやら洲之
内は古賀の絵が好きではないようだ。《クレーの精神的多様性はあ古賀春江に
は見られない。いつも一本調子。童話的なリリシズムとでもいうべきものだけ
が彼の身上である》などと書く。

 じつはここで洲之内が図版を掲げて説明している絵は古賀春江ではなく広幡
憲の作品だった。編集部註として末尾に追記されている。広幡は秋田生れ。戦
後間もなく二科の会員になるが、三十七歳で事故死した。無心に絵を見れば古
賀春江とはまったく違う作風である。どうやら古賀に対する冷淡さが洲之内か
ら慎重な観察を奪ったようだ。

 結局、洲之内は古賀春江で二度大恥をかいたことになる。だが、しかし、考
えようによっては、好きでもない古賀春江に何故か惹かれて取り上げてみると、
それは夭逝の画家広幡だった、というのは、いかにもウルトラ・マイナー好み
の洲之内徹にふさわしい失敗ではなかろうか。

 これら以外のエッセイも佳作ばかり。『絵のなかの散歩』献呈署名入一万円
も案外高くないのかも知れない。

〈はやし・てつお〉
白水社刊『古本屋を怒らせる方法』絶好調発売中。『spin』02号も快調です。
01号残部少なくなって来ました。お早めにどうぞ。ご注文はみずのわ出版まで。
http://www.mizunowa.com
デイリー・スムース 
http://sumus.exblog.jp

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■あとがき
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 前号のメールの件名から号数が抜けていました。今月も発行が遅れたうえ、
休載がたくさん出てしまいました。すみません。それでも字数があまり減って
ないのはナゼだろう? では来月。      (南陀楼綾繁)              

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[書評]のメルマガ vol.332
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■          vol.332
■■  mailmagazine of book reviews[ スピード感とリズム感 号]
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[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。秋は神保町が賑やかに。
★「関西古本女子だより」郷田貴子(ちょうちょぼっこ) 
 →大阪と神戸の「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「食の本つまみぐい」遠藤哲夫
 →〈大衆食堂の詩人〉エンテツが料理文化史の重要本を紹介します。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。

*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
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★ブックオカが開催中
 昨年からはじまった福岡の本イベント「ブックオカ」。今年は10月ぜんぶに
イベントがまたがるという凄さ。「福岡の書店員が選んだ激オシ文庫フェア」
「書店員ナイトin福岡」「カフェで再現! ブックレシピ」など20近くの
企画が。そのなかからいくつか紹介。

◎「全国リトルマガジンフェア」(〜31日) 丸善福岡店
書肆アクセスの選んだリトルマガジンが並びます
26日(金)18:30〜 南陀楼綾繁トーク「全国リトルマガジン紀行」

◎「一箱古本市」
27日(土)11:00〜16:00 けやき通り(雨天の場合は翌日)

◎「ブックオカアカデミー」 石村由起子、福島杏子、内沼晋太郎
27日(土)13:00〜

イベントの詳細はサイトを↓
http://www.bookuoka.com/

★書肆アクセス、店内最後のフェア
第6回 書肆アクセスフェア
「けものみち計画」が選ぶ 書肆アクセスの30冊

期間;2007年10月15日(月)から11月2日(金)まで
会期中、フェア対象書籍お買い上げのお客様には、オリジナル小冊子をプレゼ
ントします。

地方・小出版流通センター 直営店 書肆アクセス
千代田区神田神保町1−15
03−3291−8474
http://plaza.rakuten.co.jp/accesshanjoe/

★神保町シアターで「東京映画」
神保町シアター特集プログラムの第2弾、「川本三郎編 映画の昭和雑貨店2 
昭和30年代ノスタルジア」が10月20日(土)より11月2日(金)まで上映
されます。評論家・川本三郎が昭和の日本映画の中から選んだ17作品を、1日
4作品ずつ上映。「洲崎パラダイス 赤信号」「たそがれの東京タワー」「東京
の孤独」「渡り鳥いつ帰る」など。ナカでも、古書市場が出てくる、三島由紀夫
原作の「永すぎた春」は神保町で観るのにふさわしい映画。

★大崎梢・南陀楼綾繁トークショーin神保町ブックフェスティバル
「本屋さんには謎がいっぱい」

 書店員が活躍するミステリなどで人気のある作家・大崎梢さんと南陀楼が書
店の「謎」について語り合います。大崎さんはコレがトーク初登場とのこと。

10月28日(日)13:30〜
会場:岩波ブックセンター3階
入場無料

申し込み方法
(1)はがきに〒・住所・氏名・電話番号を明記して
〒100-8502 東京新聞広告局「本屋さんには謎がいっぱい」係へ
(2)同じくファクス03−3595−4877 
(3)東京新聞HP http://www.tokyo-np.co.jp/book/zinbocho/ で申し込み
いずれも応募は1枚または1回でお一人分。応募多数の場合は抽選。
締め切りは10/17日必着

★「ハンガリー絵本原画展 ―レイク・カーロイを訪ねてー」
 オンライン古書店の〈パビリオン・ブックス〉が企画する、ハンガリーの国
民的芸術家レイク・カーロイの展覧会。日本初公開となる原画30点をはじめ、
貴重な絵本の数々をご覧いただけるまたとない機会です。

2007年10月22日(月)〜11月4日(日)/東京 Amulet(アミュレット)
東京都千代田区神田神保町1-18 三光ビル1F
tel/fax 03-5283-7047
11:00〜19:00(初日のみ13:00〜) 会期中無休

2007年11月29日(木)〜12月23日(日)/奈良 Gallery OUT of PLACE
奈良市今辻子町32-2
tel/fax 0742-26-1001
12:00〜19:00 月〜水曜定休

2008年1月15日(火)〜1月28日(月)/京都 恵文社一乗寺
ギャラリーアンフェール
京都市左京区一乗寺払殿町10
tel/fax 075-711-5919
10:00〜22:00(最終日のみ18:00まで) 無休

(イベント)
アニメ上映 スライド&トークショー
2007年12月1日(土)16:30〜19:00
会場/奈良 Gallery OUT of PLACE 参加無料

パビリオン・ブックス
http://pavilion-b.ocnk.net/

なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

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■関西古本女子だより  郷田貴子(ちょうちょぼっこ)
 *「毎日が本のなか」を改題します
(2)愛しのトンカさん
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10月は、大阪でもあちこちで古本市がひらかれてます。ちょうちょぼっこは、
京都にて、秋のまほろば古本市に参加します。これを書いている今日のこと。
あやしかった天気に、陽の光が。主宰の扉野さんの念力ですね。手廻しオルガ
ンのオグラさん、萩原魚雷さん、そのほか出品者のみなさんとの、鴨川沿いの
ゆうべは楽しそう。私は、行けないので、あとの2人におまかせ。

さて、大阪豆ごほんというタイトルの連載は、おまめさんが忙しくて、いつ
のまにか終了の運びに。今度は、トンカさんと一緒の連載ということでうれし
いです。トンカ書店には、こないだ、ちょうちょぼっこ在阪組の3人でお邪魔
してきました。「ほんの手帖展」をみにいったのです。大島さん秘蔵のミニコ
ミ誌古本の展示販売などの中に、「ボブ」と「ちょうちょぼっこ図書目録」も
ありました。自分たちもひさしぶりに思い出して、まほろば古本市にも持参す
ることに。なつかしの「ボブ」には、書肆アクセスの畠中さんにも、ミニコミ
を扱うお店の人として、書いていただいたのでした。

トンカ書店には、わたしたちがお邪魔してる間も、お客さんがたくさんおと
ずれ、トンカさんのさわやかな「いらっしゃいませ」と「ありがとうございま
した」を何度もきき、「すげー」とささやきあう三人。でも本当に、トンカさ
んのお店には用がなくても、立ち寄りたくなるのです。私も元町で働いてたら、
仕事帰りに「きいて、きいてトンカさんー」とあそびにゆくにちがいない。

トンカさんに向かう前に、どこかでごはんを食べようと繁華街をうろうろし
て、途方にくれ、東京の杏さんに「どこか食べる店おしえてくれ」と電話をし
て、あきれられる。おしえてもらったピザ屋にもたどりつけず。杏さんは、今
月末、福岡のブックオカというイベントの、ブックオカアカデミーという講座
に登場するので、お近くの方はぜひどうぞ。最近福岡にできたらしい珈琲と古
本のお店、coffonとやらも気になります。

最近、漫画ばかり読んでいて、きちんと本を読んでないのだけど、この間や
っと読み終えたのは、岩阪恵子の『淀川にちかい町から』という短編集。少し
歩くと淀川の土手にでることのできる、旭区大宮や千林あたりに住む人々のく
らし。梅田にでかけても、おいしいと思えるものがなくなったねぇと、家で芋
のお粥を食べる老夫妻や、うどんやで食べるあったかいきつねうどんの味など
を、しみじみ思いうかべながら、読む。同じ著者の『ミモザの林を』という詩
集をみつけたい。

〈ごうだ・たかこ〉貸本喫茶ちょうちょぼっこのメンバー。
10月のちょうちょぼっこでは、チェンマイのこどもたちの作品がたくさん。
通常の営業時間外にも、オープンしてます。詳しくはHPを。
http://chochobocko3.seesaa.net/article/54654460.html

貸本喫茶ちょうちょぼっこ
〒550-0014 大阪市西区北堀江1-14-21 第一北堀江ビル4F
http://www.geocities.co.jp/chochobocko/
*営業日は、第1〜3週末です。 金18:00-21:00、土日 13:00-21:00
貸本喫茶ちょうちょぼっこ
〒550-0014 大阪市西区北堀江1-14-21 第一北堀江ビル402
http://www.geocities.co.jp/chochobocko/
*営業日は、第1〜3週末です。 金18:30-21:00、土日 13:00-21:00

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■食の本つまみぐい  遠藤哲夫
(25)スピード感とリズム感のある料理
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瀬尾幸子『簡単!旨いつまみ』学習研究社、2007年

『酒とつまみ』の「瀬尾幸子のつまみ塾」が早く本にならないか、だけどあの
編集部はそれどころではなさそうと思っていたら、こんな本が出た。瀬尾さん
は近頃「つまみ本」が続いているらしい。「私、つまみ研究家にされちゃいそ
う」と言っていた。瀬尾さんの肩書は「料理研究家」だ。「つまみ」は料理で
はないのか? といえば料理だし、やはり本書は「料理論」があるひとの本に
なっている。むしろ高邁な本格的なこけおどしのきく料理より、それが際立つ
ようだ。

「アイデア自慢の速攻レシピ102品」満載。「瀬尾幸子のつまみ塾」もそうだ
が、瀬尾さんの料理には、独得のスピード感とリズム感がある。まさに「速攻」
なる言葉がふさわしいのだけど、リズム感は料理の原則や構造から生まれるか
ら、それがわかっていないと表現されない。アイデアとスピードだけで奇をて
らったものになる。

「酒のつまみ5か条」の中から、「ササッと作れてすぐ食べられる。これ、つ
まみの最低にして最大の条件」。「酒のつまみは、”おかず”ではない」「腹が
さほど膨れない、チマチマとしたものがいくつかあるというのが嬉しいのだ」
「ときにはチープな味もよし」。この最後があるから「素材の味を生かしたも
のがいい」「旬も大切にしたい」が、教条ではなく生きてくる。インスタント
や既製品もドンドン使うのだけど、それでもよいところ、それではいけないと
ころの区別がある。

 無造作のようでいて原則がある。たとえば最初の「刺身のごまじょうゆ和え
二種」では、「白身には白ごま、脂ののっている青魚には黒ごまが鉄則」と。
この鉄則が大事なのだが、ごまをタップリまぶした刺身、うめえんだよなあ。
「魚肉ソーセージ焼いただけ」では、「魚肉ソーセージは斜めに5佗に切る」。
「酒のつまみにぴったりの甘くない卵焼き」では、みじん切りの「長ねぎがし
んなりしてきたら、強火にし、卵を一気に流しいれる」。これらは、レシピの
表現以前に、料理の原則や構造に対する理解があってのことだ。ま、料理研究
家なら、それぐらいアタリマエなのだが、これが昔から、そうでもないのだ。

「感涙つまみ」という囲みが4つ。中でも「ねぎ塩のつまみ」と「みそ漬け」
は、原則や構造をコンパクトにまとめたものといえる。ねぎ塩やみそ床を作っ
ておき、いろいろに利用するのだけど、このやり方を知っておくと、じつに簡
単にさまざまな料理を楽しめるようになる。さらに第4章は「いつかは作って
みたかった 魚に勝負を挑む!」は、「あじをおろす!」「いかをさばく!」
「干ものを作る!」「しめさばに挑戦!」。ま、楽しい料理の入門書としても
よい。

 瀬尾さんは酒好きだ、もちろん量もいける。最近は、よく一緒に飲んでいる
ので、チトほめすぎたかも知れないが、酒好きの料理研究家じゃなきゃできな
い一冊であることは確かだ。ところが、この本、奥付には瀬尾さんの写真入プ
ロフィールがあるのに、表紙まわりには、どこにも名前が出てない。ムックに
しても、タイトルに「瀬尾幸子の」とか入れようがあるだろうと思って聞いた
ら、ご本人もほか関係者、そんなことはスッカリ忘れていたらしい。

〈えんどう・てつお〉フリーライター。
10月25日発行の「雲のうえ」5号は、北九州市の食堂特集「はたらく食堂」。
38ページに27店。編集=大谷道子、アートディレクション=有山達也、絵=牧
野伊三夫、写真=齋藤圭吾、文=おれという顔ぶれです。よろしく〜

「ザ大衆食」 
http://homepage2.nifty.com/entetsu/

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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(53)人生初のトーク&サイン会
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 テレビに出させてもらったり、本の雑誌のみなさんと酒をご一緒させていた
だいたりで浮つきまくっていた2006年9月の末、極めつけのイベントの日がと
うとう来てしまった。

 重松清さんが参加を快諾してくださった、トーク&サインの会なのである。
場所は、ジュンク堂書店の新宿店特設会場。ここで私は、自著である『中央線
で行く東京横断ホッピーマラソン』と、小誌『酒とつまみ』について、語り合
い、サインなどもするという、すごい話になっていたのだった。

 私は、あがり症だ。とても、緊張する。遅れたらたいへんと思い、とても早
い時間から新宿へ到達、ドキドキする胸をかかえて、さて、ビールでも飲んじ
まうかなんて、自分自身に減らず口をたたいてみるものの、とてもではないが
そんな勇気もなく、まだ、誰も来てないよなという時刻には、会場へ着いた。
 するとしばらくして、小誌を店内で販売してくださっている銀座の酒場の常
連さんがふらりとやってきて、「やあやあ、ここですか、立派な会場じゃない
ですか」とにこやかに声をかけてくださった。わざわざ、この日の予約までし
て、たいへん忙しい方なのに、ずいぶん早い時刻から来てくれたのだ。参った。
ぐんぐんと緊張が高まってしまう。

 そのうちに、書店のスタッフの方に加え店長さんにも挨拶をいただき、アワ
アワ入っている間に、小誌スタッフと前後して、以前から応援してくださって
いる顔見知りの方々も続々と来場された。ああ、もう、いけない。

 そこへ重松さんも登場。奥の喫茶室で、
「まあまあ、オレに任せておいてよ。まずオレが出て行ってあなたのことを少
し喋ってから呼ぶからね。そうしたら出てきて。あとはこっちで突っ込むから
心配いらない」
 重松さん、それだけ言ってにこりと笑い、会が始まるや本当にそういう流れ
になって、私はもう、ただただ、マイクを持つ手が震えているのをどうやって
隠すかに専念していたのだった。

 話は、今回の単行本の企画の経緯やら、酒とつまみは今後どうするのか、と
いった、非常に広い範囲に及んだと思うのだけれど、実はあまり覚えていない。
頭真っ白というけれど、まさにそんな感じで、恥ずかしながら、ひとまず会が
終わりかける頃になって、やっと人心地がついた次第だった。

 ただ、よく覚えていることもある。重松さんが、「これだけ酒場のことを書
ける人はなかなかいないよ」というようなことを発言してくれたこと。とても
恥ずかしかったが、同じくらい嬉しかった。初めて体験する種類の嬉しさだっ
たように思う。

 それともうひとつ、会の終わりに、たいへん多くの方が、私の本を買ってく
ださり、サインを受けてくださったことである。このときになって私は、ふた
たび、手が震え始めた。早くビールの1杯も飲まないと、いや、ビールでは間
に合わない、ウイスキーをひと口ふた口飲まないとまともに字が書けない……。
 そんなことを思いながら、必死で手の震えを抑制していたのだった。(禁断
症状ではないと思います、一応)

〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集発行人
痛風ってのはなかなか痛えもんだなあなどと、実はビビッているくせにデカイ
口をたたいていたら、今度は血尿が出ました。これは、けっこう、怖いもんで
すねえ。とても怯えて2日間くらい酒をやめようとか思いつつ、ビールをチビ
チビつないで、3日目にヤケクソでウイスキー飲んだから、きれいな尿が出て
ほっとした次第。

http://www.saketsuma.com
ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(61)多賀出版社の巻  ミッフィーちゃんのいる“中国製カツラビル”
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“社会科学図書出版の多賀出版”が入居する、UNOビルは千代田区飯田橋3−
2−4。目白通り沿いの潮出版社ビル裏手の路地で、2軒隔てた飯田橋駅寄り
には現代書館のビル、より駅寄りには三笠書房(フランス書院)の御殿も建築
中。やたら本連載への登場頻度の高い版元が並ぶが、何の事はない、筆者の毎
日の通勤コース(テヘへヘ…)。

 UNOビル(多賀出版は1階)が出来たのはまだ10年位前だと思うが、当初は
見る度に神楽坂の某版元のビルを連想。英知出版だ。コンクリートを打ちっ放
しの外観がソックリ。英知のそれが建った頃は、まだまだエログラフ誌に勢い
があった頃(既にどこかに叩き売られたらしいが…)。一方、当時のUNOビルに
は、ミッフィーちゃんの著作権管理会社、デイック・ブルーナ・ジャパンが入
居。受け付けには人間大の例のキャラの置き物も。両セメントビルのイメージ
の落差に、内心クスクス(暇な奴だ…)。

 スミアミ55パーセント前後の同ビルは4階建て。窓枠のみスミベタ。所ど
ころにポツンポツンと小さな黒い穴。正面向かって1階右端に1台分の車庫
(金属のすだれ状シャッターはシルバー)。左側端にアーチ型階段。階段入口
前に花壇(ビデオで監視中とのヤボな警告あり)。つまり、スミアミ、ブラッ
ク、シルバーで決めた、シャレた建物なのだ。

 が、設計者の努力を水の泡にしてるのが、屋上のせこいプレハブの存在。上
等のスーツで決めた紳士が、バレバレの安物カツラを付けたとでも言うか(笑
いをこらえて全員知らぬ振り)。箱をいくら立派にしても、持ち主の品性次第で、
公園の青テント以下の御殿にとの見本。設計者のむせび泣きが聞こえるようだ
が、ここ店子が良く変わるような。ミッフィーちゃんと多賀出版の間にも確か…。
一見はシャレてるので(中国製カツラだが)、家賃が高い?

 同社、75年に府中市で設立と。社長は多賀省次(似たような名前の公明党の
代議士、昔おったね)。『都市観光のマーケティング』『現代的経営管理論の研
究』『ポーからジュール・ヴェルヌ、ランボーへー冒険物語の系譜をたどる』
『エクセルで政策評価ーすごくよくわかる実践的統計分析マニュアル』『憲法
を身近に』『公会計情報と政策情報システム ソフトネットワーク戦略研究叢
書第4巻』…。

 高岡厚子という人の、『ポーからジュール・ヴェルヌ〜』を除けば、まず読
書意欲の湧きようのない出版物ばかりだ(これとて定価3360円と聞いてはチ
ョット…)。既に700点以上刊行と。年に22冊前後。1階のあのフロアーだけ
で出してんじゃ、多いよなやっぱ(こういう趣味外の版元様、もっと幅広く研
究する必要が)。

 UNOビル、管理面でも種々うるさいのか、“多賀出版株式会社”との小さな
プレートが、ブラインドの隅にひっそり。“中国製カツラビル”が、粋がって
んじゃねえよ。

〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)。『嫌われ者の記』をベースにし
た新刊『出版業界最底辺日記 エロ漫画編集者「嫌われ者の記」』(ちくま文
庫)が好評発売中。
なお、この連載に関しての批判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(た
だし、謝るとは限りません)。
mangaya@air.linkclub.or.jp
http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/

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★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。秋の本イベントあれこれ。
★「音を探してページをめくる」貴島公
 →音楽サイト「モノノフォン」の主が、音とテキストの関係を考察する。
★「〈畸人研究〉今柊二の読書スジ」
 →「オタめし」「アニメシ」を満載した驚異の「おたく食」本が出た!
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →単行本作業で多忙のため、休載です。

*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
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★秋の古本、本イベントいろいろ
とても載せきれないので、簡略情報のみ。詳細は各サイトをご覧ください。

9月27日(木)〜10月2日(火)
早稲田青空古本祭
http://www.w-furuhon.net/aozora/

10月1日(月)〜31日(水) *一箱古本市は10月27日(土)
ブックオカ(福岡)
http://www.bookuoka.com/

10月5日(金)〜7日(日)
PURE BOOKS 2007(代々木上原〈hako〉)
http://www.purebooks.net/

10月13日(土)
不忍ブックストリートの「秋も一箱古本市」
http://d.hatena.ne.jp/seishubu/

10月14日(日)〜16日(火)
アンダーグラウンド・ブック・カフェ(東京古書会館)
http://underg.cocolog-nifty.com/tikasitu/

★平野甲賀さんのレクチャーイベント「こういう本がぼくは好き」
副題は「自作とチェコのチャペック兄弟やヨゼフ・ラダを中心に」。黒川創
さんを聞き手に、スライドでの実作紹介をまじえて、ブックデザインについて
話す。

日時:2007年9月22日(土)14時から17時30分(13時30分開場)
会場:Shin-bi(シンビ)
   京都 四条烏丸下ル西側 COCON烏丸 3階
チケット:前売1,500円 当日2,000円
お問い合わせ:編集グループ
http://www.groupsure.net/

★「ごたごた荘」のドキュメンタリー
「東京、練馬。住宅街の路地の奥に、平屋作りのプレハブ小屋がある。共同保
育所「ごたごた荘」。“共同保育所”とは「保育者と保護者が一緒に作る保育所」
のこと。公立保育園で保育士をしていた遠藤美保子さん(58)が「預けっぱな
しはごめんです」を理念に1982年、保護者の有志たちと設立した認可外保育
施設だ」(番組サイトより)
 石神井書林さんやポポタムさんもこのごたごた荘のメンバーで、さまざまな
イベントを行なっている。
 そのごたごた荘の日々を描いたドキュメンタリーが、NHKで放映されます。

9月23日(日)22:00〜22:59 NHK教育テレビ
ETV特集「ごたごた荘の人々」
http://www.nhk.or.jp/etv21c/

★中西らつ子イラスト展「らつこてん」
かつて青木光恵らとともにミニコミ「みぢかちゃん新聞」を発行、近年は落
語や文楽を題材にしたイラストや漫画で活躍中の中西らつ子さんのイラスト展。
併設「子どものための落語の展示」。

期間:開催中〜10月16日(火)まで(水曜日休館)
会場:大阪府立上方演芸資料館「ワッハ上方」
   大阪市中央区難波千日前12-7 YES・NAMBAビル
入場料:大人400円、高・大学生250円、小・中学生120円
お問い合わせ:ワッハ上方 
http://www.wahha.or.jp/

なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

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■新連載 毎日が本のなか  頓花恵
(1)本とコーヒーを交換する
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私が神戸元町に古本屋を開いて今年で2年になります。
当初、古書組合に入るつもりだったのですがひとまず店買いで様子をみよう
と思い思いしているうちに結局今まで加盟せずに来てしまいました。

お客様からの買取が入荷窓口の全て。持ってきてくださるものはジャンルを
問わず全て買い取ることを決意せざるを得ませんでした。
この頼りない店の先行きを思ってくださってか、色々な方々が毎日本を持っ
て来て下さいます。
ご老人は戦記ものを、ご婦人は手芸本を、学生さんは小説を、子どもさんは
漫画や絵本を……。そしてそれらが並んだ棚を見てまた別の方がではこれはと
本を運んできてくださるのです。

店に並ぶ本に一貫性がなくなってくると「スニーカーを買ってください」、
「こけしを連れてきました」、カバン、服、マッチ、キーホルダー、リボン、
湯呑み、大きな壷……。なんだか分からなくなってきましたがそれもまたご縁
でしょうか。
勿論、本は一冊ずつ査定してお支払いするわけですが、中には物々交換の方
もおられます。定期的にいらっしゃるおじいさんは杖の先に本を入れた袋をひ
っかけて、暑い中階段を上って来られます。
この方の場合、コーヒー1杯と本1、2冊が大体の交換条件です。今日は庭
でなっていたイチヂクをお裾分けしていただきました。今年は生り年だそうです。

 ほぼ年中無休でやっているので「外の」世界はお客さんから伺うばかり。
沖縄に行きました。映画を見ました。アイドルと写真を撮りました。お酒を10
杯も呑みました。免許が取れました。彼女と別れました。留置所から戻りまし
た。似顔絵を描いています。お腹がすくと不安です。安くて可愛い服を見つけ
ました。

 開けたばかりのわずかな月日ですが、毎日毎日が不思議な話。毎日毎日が
本の中にいるようなそんな日々なのです。

トンカ書店
650-0011 神戸市中央区下山手通3-3-12元町福穂ビル2D
078-333-4720
http://www.tonkabooks.com/

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■音を探してページをめくる  貴島 公
(5)歌を使わずに鳴らすには
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ヒキタクニオ著『角』光文社、2005年10月、1,700円

 前回、「小説そのものを普段読まない」と書きながら、その舌の根も乾かぬ
うちに、また小説です。ただ、不純な動機から読んだことに変わりはなし。今
回は、主人公が校閲者であるとテレビの書評番組で聞いたから。それにしては
手にとるまで時間がかかりすぎているが、要するに忘れていたのです。ようや
く思い出して手にとる。うわわ、アイドルのエッセイ集のようなすごい表紙。

 印刷に携わる者として、校正は避けることができない作業だし、他業種のそ
れの実際にも興味がある。そんな訳で興味を持ったのだけど、確かに校閲ネタ
はあるものの、主人公の身に起こった異変と校閲作業との間に因果はなさそう
だし、校閲者ならではの特殊能力が事件を解決するわけでもない。というか、
そういう話ではないのか。主人公が勤める出版社校閲部の上司の失踪事件あた
りでは、校閲者ゆえの受難なのかと(わが身を振り返りつつ)身構えてしまっ
たのですが。

 読み出すまで知らなかったのだけど、本作には「クレイジーキャッツ」と題
された章がある。主人公に対する比喩でも、登場する(しません)ストリート
ギャングの団体名でもなく、あの、かつて大人気を誇ったコミックバンドのク
レイジー・キャッツを指している。植木等の名も出てくる。そして、登場人物
たちは作中、場面設定は職場の宴会にて、クレイジーのヒット曲を歌いまくる
のだ。「五万節」、「スーダラ節」、「ゴマスリ行進曲」に「ドント節」。た
だし、どれも校閲作業を戯画化した替え歌で。題名すら告げられていない。

 「あっ」と思って、奥付や最終ページを見てみたけど、やはり、「日本音楽
著作権協会許諾番号」の記載が見当たらない。やられたっ。六〇年代から連綿
と続く職場の伝統、自嘲気味のわるふざけ、宴会の雰囲気、それらを伝える有
効な道具立てとして、メロディを作中に響き渡らせながら、「使用」はしてい
ないのだ。使用料を払わないためではなかろうし、実名も出しているから、ど
こかにお伺いは立てていると思うけど、放映時には定額枠内で好き放題に「使
用」しながら、商品化の段になると障りのない曲に差し替えてしまうテレビ番
組とちがって、気持ちがいい。いや、その手があったかという話ではなくて。

〈きじま・こう〉説明業、趣味・読書と音楽鑑賞。「詩のボクシング」全国大
会で優勝したこともあるミュージシャン、倉地久美夫さんの新譜『スーパーち
とせ』に入っている「ベストカメラ」に説明業者として感涙。「なんだよ!簡
単じゃねぇかよ!」。その一言が聞きたくて。

「モノノフォン」
http://homepage1.nifty.com/hebon/fhp/

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■〈畸人研究〉今柊二の読書スジ
(20)驚きの「オタめしクッキング」
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渋谷駅前の山下書店(渋谷警察の前になりますか)はさほど大きな本屋では
ないが、場所柄もあってか、なかなかグッとくる品ぞろえである場合が多い。
今回もふらりと入って、何気なくアニメ関係のところを見ていると異彩を放っ
ているムックが一冊。なんと料理本で『オタめしクッキング コンビニ食材で
簡単にできる!』(グラフ社)ときたもんだ。

サブタイトルは「オタクのオタクによるオタクのための料理本」とのことで、
様々な角度からのオタクに関する料理記事で構成されており、実に新鮮であった。

前半はオタク活動からくるオタボリック症候群対策のための簡単レシピから
はじまり、「イベント直前!体力をつけるレシピ」「原稿修羅場の友レシピ」
「祝・入稿完了!一人打ち上げレシピ」「オフ会のおつまみレシピ」など、コ
ミケなどにターゲットをしぼったレシピが続々と紹介される。

これだけオタク、それもイベントに向かう人たちに対象を絞りまくった料理
本というだけでもエライが、本書では「涼宮ハルヒの憂鬱」などアニメに出て
くるゴハン、つまり「アニメシ」の再現、さらにはメイドカフェでの「ケチャ
ップおえかき教室」(今、メイドカフェではオムライスにケチャップで文字を
記してくれるサービスがある場合もあるのです…)、そして圧巻は「キャラ弁」
コーナー。ちなみにキャラ弁とは、アニメのキャラクターなどを形どった弁当
のこと。現在、若いママたちの間では子供の弁当づくりで、ピカチュウなどの
キャラクターを形づくるのがかなり流行っているのだ。本書ではケロロ軍曹か
らハルヒまで素晴らしい再現ぶりの弁当が並んでいる。…しかし、もし自分が
高校生で、昼に弁当をあけて、中がハルヒの弁当だったら、裸で歩くより恥ず
かしいかもしれない(笑)。

いずれにしても、2007年現在のおたくの食事情をまとめたガイドブックとし
ても貴重な一冊ともいえます。良かったら書店で手にとってみてください。と
もかく驚けますから。

〈こん・とうじ〉畸人研究学会主幹。
『がんがん焼肉もりもりホルモン』(ちくま文庫)が好評発売中。新刊『定食
ニッポン』(竹書房文庫)もよろしく。

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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(52)『本の雑誌』のみなさんの世話になる
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『タモリ倶楽部』収録の日に、収録中と、その後の飲み屋さんへの納品でヘロ
ヘロになった私は、たしかその日、久しぶりに吐いた。40歳を過ぎて吐くか。
そういうことを思うわけだが、吐いてしまったのだから仕方がない。
毎年9月は私にとって鬼門である。夏の疲れと、夏の深酒がたたって、どう
にもならない。でも、深酒するから、ほんとうに、どうにもならない。

そんなとき、私は編集Wクンと一緒に本の雑誌社に浜本茂さんを訪ねた。酒
とつまみの連載の打ち合わせである。また、こうして会っていただけるときに
はこれまでにも、販売の仕方やらなにやらを、教えていただいてきたのだ。と
いうより、連載の打ち合わせというのは、あまりしたことがなく、私たちはい
つも、浜本さんに会うためだけに訪問しているのかもしれなかった。

今回の話題は『中央線で行く東京横断ホッピーマラソン』。いかにして売る
かという話で、営業の杉江さんも同席してくださった。
私が、営業に行って話がひとつ決まったり、あるいは納品が済んだ後などに
は、ついビールを飲んでしまい、その後、仕事にならないという話などをした。
すると杉江さんは、怪訝なものを見る目つきであったが、ひと言、
「僕が売りましょう」と言ったのだった。注文カードなどはありますかという
ので、ああ、注文カードってのはつまりそのお、なってもごもごしていると、
「それじゃ、それも僕が作りましょう。明日から書店を回るときに、一緒に営
業をします。注文はファックスで書店から入りますから」

 信じられない話ではないか。このざっくばらんさ、信じられない。
 私たちはその後、浜本さんと販売のHさん、編集のMさん、Fさんといった
若手のみなさんと、酒を飲みに行った。その席でも、やはり、なんとも、ざっ
くばらん、なのである。本の雑誌の人たちは、とても明るく、話がおもしろく、
威張らずに、私らの話なども聞いてくれる。浜本さんに日頃から感じてきた人
間の素晴らしさを、みなさんに感じ、ヒネた性格の私は、つい、酒を飲みすぎた。

 みなさんと別れてからもう一軒行き、翌日はまたもや二日酔いだった。はあ
はあ言いながらなんとか仕事へ出て、仕事をしていると、午後だったか、1枚
のファックスが入った。
それは、杉江さんが作った注文書に自ら注文冊数を記入し、ファックスして
くださったものだった。

 ああ、ほんとに、来たよ、注文が。アタシがホッピーばかり飲んでいる間
に……。
 翌日も来た。今度は書店さんからのファックスだった。アタシがホッピーば
かり飲んでいる間に……。
 お前が行けよ、営業に! 私は、自分に向かって、そう言わざるを得なかっ
た。杉江さん、ありがとうございました!
 
〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集発行人
単行本『酔客万来』の完成直前、痛風になりました。痛いの痛くないのって。
ほんとに痛い。食い物にもものすごい制限がある。私は頭に来て、いけない魚
のひとつである秋刀魚の塩焼きをつまみ、もっともいけないとされるビールを
飲みました。翌日は、足を引きずっても先へ進めないくらい痛かった!
http://www.saketsuma.com

ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

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■あとがき
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 15日までに2号発行することになっているのに、自分の仕事が終わらず、
ついに20日過ぎまで引きずってしまいました。読者の方々、関係各位に深謝。
 おまめの柴田さんが子育てで忙しいようなので、代わりに、神戸のトンカ書
店・頓花恵さん(なんとこれが本名です!)に連載していただくことになりま
した。よって、「大阪豆ごほん」という連載タイトルは解消します。ちょうちょ
ぼっこさんの回のタイトルをどうするかは、未定です。では。
  (南陀楼綾繁)

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[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。ミニコミ『HB』ってナンだ?
★リレー連載「書肆アクセス閉店から見えてくること」
 →11月閉店の同書店をめぐる問題。まずボーダーインク・新城さんから。
★「入谷コピー文庫 しみじみ通信」堀内恭
 →限定15部でオモシロ小冊子をつくる極小版元の活動報告です。
★「千駄木ドロナワ日記」川原理子
→地域雑誌『谷根千』の若手スタッフが綴る、日々のあれこれ。
★「真駒内石山堂通信」杉村悦郎
 →山口瞳熱愛者と永倉新八のひ孫。二人がお伝えする札幌の本事情。
★「もっと知りたい異文化の本」内澤旬子
 →今度ジュンク堂で対談する辺境冒険家・高野秀行さんの本をご紹介。
★「全著快読 梅崎春生を読む」扉野良人
 →『桜島』などで知られる梅崎春生(1915〜65)の全著作を完読します。
★「今月ハマったアート本」平林享子
★「中山亜弓が選ぶこの一冊」
 →休載です

*本文中の価格は、表示のあるもの以外は、税抜き(本体)価格です。

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■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
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★ミニコミ『HB』に注目
 ビジュアル優先のリトルマガジンが多いなか、久しぶりに読みごたえのある
ミニコミが出ました。創刊号の特集が「高田馬場」って、シブすぎだろ!

『HB』vol.01 500円(税込)
特集「高田馬場から考える」
・「さよなら古書感謝市」
向井透史(「古書現世」店主)「古書感謝市のあゆみ」(再掲)
「学生街なんてなくなっていたんだ」
「高田馬場駅前 栗売りと南部せんべい」
「コットンクラブの夜は更けて」
「多国籍化する高田馬場?」
「BIGBOXは改装中」
・向井秀徳「DRUNKEN HEARTED」 
・HB's column
「東京駅周辺の変化の中で」
「ミール・ガンバールと又吉イエス」
「とんかつのためなら」
「ボンバルディア・がんばるでぃあ!」
「映画的日常」
・インタビュー
森山裕之(『QJ』前編集長)「モテる雑誌がつくりたかった」
ほか

取り扱い店は以下をご覧ください。
http://d.hatena.ne.jp/hbd/

★第4回 古書往来座外市〜西荻、わめぞ上陸〜

日時 9月1日(土)〜2日(日) 
1日⇒11:00〜20:00(往来座も同様)
2日⇒11:00〜17:00(往来座は22:00まで)

会場
古書往来座 外スペース(池袋ジュンク堂から徒歩5分)
東京都豊島区南池袋3丁目8-1ニックハイム南池袋1階
http://www.kosho.ne.jp/~ouraiza/

メインゲスト(大棚使用約200冊出品)
古書 音羽館(西荻窪)
にわとり文庫(西荻窪)

スペシャルゲスト
街から舎(本間健彦)、書肆アクセス(神保町)、嫌記箱(塩山芳明)、
白水社、ハルミン古書センター(浅生ハルミン)、文壇高円寺(荻原魚雷)、
貝の小鳥、伴健人商店(晩鮭亭)、ふぉっくす舎、他、往来座お客様オール
スターズ

★うらたじゅん展
9月1日(土)〜9月13日(木)
うらたじゅん展 夏のてっぺん
漫画家・うらたじゅんの水彩やパステルによる作品展。

〈ビリケンギャラリー〉
http://www.billiken-shokai.co.jp/index.html
ビリケン商会:03-3400-2214
毎週月曜日定休
営業時間 12:00〜19:00
住所/〒107-0062 東京都港区南青山5-17-6-101 ビリケン商会

★内澤旬子×高野秀行トーク「肉から覗いた世界」
 旅をしていて必ず訪れるのは市場、トイレ、屠畜場……。持ち前の旺盛な好
奇心で世界を歩くイラストルポライター、内澤旬子さんと、「誰も行かないと
ころへ行き、 誰もやらないことをやり、誰も知らないものを探す。そして、
それをおもしろおかしく書く」がモットーの辺境冒険作家、高野秀行さん。
各国の辺境の地で、ワニ、カワウソ、サル、ニシキヘビなど、さまざまな「マ
イナー・ ミート」を食べてきた高野さんと、世界の屠畜現場を見てきた内澤
さんが語り合う、「肉から覗いた世界」。

JUNKU 連続トークセッション
2007年9月15日(土) 19:00〜
会 場 ジュンク堂書店 池袋本店4階喫茶にて。
入場料1,000円(ドリンクつき)
定 員 40名
受 付 1階 案内カウンターにて。電話予約承ります。
ジュンク堂書店 池袋本店
TEL.03-5956-6111 FAX.03-5956-6100
http://www.junkudo.co.jp/

なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

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■リレー連載・書肆アクセスの閉店から見えてくること
その1 「役割を終えた」わけではない
新城和博((有)ボーダーインク編集者、元Wander編集長)
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 書肆アクセスの畠中さんからの電話の内容は、何かしら予感があった。「実
はですねぇ、言いにくいんだけど、アクセスが十一月をもって閉めることが、
正式に決まったんですよぉ」。申し訳なさそうな、困ったような、でもしょう
がないような感じ。このニュアンスには心当たりがある。二年前に、ボーダー
インクの創立(1990年)以来、不定季刊ながらも出し続けてきたシマーコラ
ムマガジン『Wander』の終刊が決まった時の、僕の心持ちと似ている気
がした。「役割が終わったのでは」と言われた日にはねぇ(『Wander』は
2005年12月に終刊)。

 沖縄でもここ一、二年の間に次々と「街角の本屋さん」が閉店している。今
年に入っては月平均に一件くらいのペースで、長年続いてきた本屋の閉店の知
らせが来る。売上げが激減した、という当たり前の理由である。一方でショッ
ピング・モールには中規模のチェーン書店の出店も相次いでいる。そんな中で
の「書肆アクセス閉店」の知らせだ。しかし「ああまたひとつ街角の本屋が消
えていく……」という風には片づけられない問題があるのではないかと思う。
ないかも知れないけれど、考える糸口を幾つか探りたい。書肆アクセスが閉ま
ると、沖縄の版元ボーダーインクの編集者は、具体的にどう困るのか?

 ボーダーインクを含め、地方小に加入している沖縄の出版社は9社(06年現
在。そのうち複数の出版社の流通をかねているところもあるので実質的にはも
う少し増える)。アクセス仕入れのみが3社。合わせると、アクセス店内の中
ではそれなりの棚勢力であろう。しかし〈沖縄県産本〉の流通の多くは、沖縄
県内である。比率を正確には出したことはないが、普通の県産本の場合だと、
部数の八割から九割が県内で流通している(「沖縄県産本」とは、沖縄県内の
出版社から発行された本を指す。内容は別に沖縄関係に限らないが、やっぱり
沖縄に関する事が圧倒的に多い)。ボーダーインクの本も基本的にはその比率
である。部数の三割以上が県外で売れたという本は数少ないはずだ(ボーダー
インクの県外書店流通は地方小のみ)。たまに県内より県外での売れ行きの方
がいい本があるが、それは例えばボーダーインクだと『沖縄の鉄道』とか、
『ダンプ・カーニバル』とかのように、全国にマニアがいる類のものとなる。
(「沖縄には『沖縄マニア』がいるじゃないのさ」と思うかもしれないけれど、
それはまた全然別の話だ)。

 だからボーダーインクの地方小の売上げの中での書肆アクセスの数字という
のは、沖縄の街角の本屋さんの郷土コーナーに置かれているボーダーインクの
本の売り上げとそんなには変わらないかもしれない。数字の上では、ひとつの
書店の売上げが減るという風に考えていいのだろう。

 しかし前出の『Wander』は、完全に沖縄に住んでいる人に向けて作り
始めた小さな雑誌だったが、創刊当時から思いの外、県外の読者からの反応が
あったのは、多分アクセスに置いてもらっていたからだ。沖縄の本を眼にする
機会が今と比べると圧倒的に少ない頃だったので、当時、沖縄に関心を持って
いた首都圏の読者たちの多くがアクセスでたくさんの沖縄県産本を手に入れた
に違いない。僕らも、東京の読者から問い合わせがあった時には、「神田すず
らん通りにある『書肆アクセス』という本屋にありますが」という受け答えを
当時どれほどしたことか。(そういえばそんな風に問い合わせてくる電話が減
ったなぁ)。

 また沖縄に取材にくるマスコミやライターの方々がボーダーインクに連絡を
してくる場合も、アクセスでボーダーインクの本を手にしたからという場合が
非常に多かった(これは今でもそうかも)。だからWanderが少部数にも
かかわらず、沖縄を代表する雑誌のごとく取り上げられていたのである。折し
も「復帰二十年」頃の沖縄ブームの中で、沖縄と東京を結ぶ情報拠点としての
機能が書肆アクセスにはあった。その情報は、多分大手マスコミには載りにく
い類の、レアな感情がまぶされていた。書肆アクセスの閉店を聞いてやはりシ
ョックだったのは、その情報拠点がなくなるということだった。

「書肆アクセスランキング」も、その売上げというより、沖縄の版元としては、
対外的な沖縄イメージを知るための目安であった。書肆アクセスを失うことと
は、沖縄の版元ボーダーインクにとっては、売上げではなくて、地産地消型の
〈沖縄県産本〉が、対外的な沖縄イメージに対してどの程度の影響力があるの
か、という指標だ。

 版元として僕たちが東京に出掛ける時の拠点も、書肆アクセスであった。と
りあえず書肆アクセスに行ってなにがしかの情報を得て、そして同じ地方・小
出版社周辺の人たちと出会えるということは、沖縄ではなかなか味わえない
「出版を続けていく勇気」を得ることだった。「勇気」ではハズカシイ場合は、
「意地」でも「モチベーション」でもいいけれどさ。専門書でもないのに、今
後、千部、二千部の本を地域で出版して生活していくのであれば、そういう刺
激は必要だと思う。こういう事を書くと、無明舎出版(秋田)のあんばいさん
に「だから新城君は……」と説教されそうだが、まぁいいや。

 地域の出版物は東京の読者にとっては、マニア・専門者向けのもの以外は
「特産物」的な意味合いがあると思う。基本的には現地に行かないと手に入ら
ない、味わえないもの。それを一同に集めて並べる。書肆アクセスは、そうい
う地方特産品の市場(いちば)なわけで、市場は実際に物を並べているからこ
そ意味がある。特産品を並べることが、そのまま情報発信源となる。一、二年
に一度くらいしか書肆アクセスに行かない僕も、店内に入るたびに「おお」と
いうため息をつきたくなる。いいはずよー、こんな本屋があって。(アクセス
のブログを毎日チェックしていてもこんな感慨にはふけらない)。

 ところが、Wanderも書肆アクセスも、「役目を終えたのではないか」
という指摘を受けてしまったわけで、さりげなく一緒くたにしてしまったがま
ぁいいか、それはつまり従来の市場型の情報発信拠点では、今の時代の傾向の
一歩先を目指せないということなのだろうか。あれから何度かやってきた沖縄
ブームの中で、沖縄に関する企画は、沖縄の出版社の専売ではなくなった。特
に沖縄の生活文化・ザブカルチャーをポップに表していく手法が当たり前にな
った頃に言われた「ボーダーインクの本は以前ほどパンチがなくなった」との
指摘に対して、何か打つ手はあるだろうかと、僕も今もって悪戦苦闘中である。
書肆アクセスの悪戦苦闘はこれからではないか、という気もするのだが、地方
小センターの示した数字はシビアなものであった。

 地域情報を発信する拠点としての本屋は、市場(いちば)としての機能(魅
力)がある。流通システムの強化は市場(しじょう)の再構築として期待はし
たいが、情報発信の拠点としての役割はどうなんだろうか。そういう意味で、
地方小センターと書肆アクセスは、どこかで別物だという認識があった。地方
小が、地方の版元にとって頼れる魅力のひとつは、書肆アクセスがあったから
だ、というのは紛れもない事実で、そこを今後どう埋めるのかは、考えていか
なくてはならないだろう。

 最後にもうひとつ、書いていて思ったのだが、書肆アクセスの役割である他
の書店への卸しとしての役割、ショーケースとしての役割については、沖縄か
らとても見えにくいものだった。そういえば地方物産のアンテナ・ショップっ
て、沖縄県の「わした」を含めて、今なかなか厳しいようである。アンテナ・
ショップの機能よりも、小売店としての売り上げを挙げるのがメインになって
いるようだ。

 さて思いつくままに、大雨の那覇でいろいろ書いてみたが、アクセスに本を
並べている全国各地の版元は、またそれぞれに違う事情と在庫を抱えて、書肆
アクセスの閉店について考えているに違いないと思う。個人的には、アクセスの
畠中さんに会えなくなるのはさびしいなぁということだが、それはまた別の話。

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■入谷コピー文庫 しみじみ通信  堀内恭
(7)未亡人本とともに、桂浜吉
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「未亡人本……こういうジャンルがあるかどうか知らないが、亡くなった愛す
べき夫への鎮魂歌、作家・文化人・芸能人・スポーツ人等の妻たちが、この手
の本を書き残している。(中略)この手の本は、読み物として読み飛ばされた
あとは、世間からすっかり忘れ去られていくように思う。特に芸能人・スポー
ツ人の場合は。(中略)芸能・スポーツ未亡人本は世間ではランクが下と見ら
れるのだろう、まさに旬の本のままで終わっている。だからこそ、読んでみよ
うと思った」

 という〈まえがき〉で始まったのが、『そ・し・て……未亡人読本』でした。
 2006年8月刊行。著者は桂浜吉君。土佐のいごっそうです。

「未亡人」と聞くと、にっかつロマンポルノの「未亡人下宿シリーズ」をすぐ
思い出すのですが、この『未亡人読本』は、亡き夫について書かれた本を読ん
でみようというものです。

1 向日葵篇
  古尾谷雅人、川谷拓三、東八郎、林家三平、レオナルド熊、鳳啓助、坂本九
2 曼珠沙華篇
  牧野茂、藤田敏八、蔵間、出門英、川口浩、ジャイアント馬場、力道山
3 寒椿篇
  高橋悦史、津田恒美、手塚治虫、木村功、藤山寛美、松田優作、横山やすし、
  ジャンボ鶴田、エディ・タウンゼント、中田ダイマル

と続き、以上の24名の方々を取り上げています。

「夫婦という絆の強さや哀しさ、人間の死という重く深いさまざまな瞬間を伝
えたい」と浜吉君は書いていますが、それぞれの強い個性の持ち主の生き様、
死に様が、読むと伝わってきます。

「たかが未亡人本、されど未亡人本」、こういうディープなジャンルの本たち
があること、埋もれていたことをそっと教えてくれたこと、発見でしたね。

〈ほりうち・やすし〉1957年生まれ。フリー編集者。
前回お知らせした『その手は語る 2』は著者の事情で刊行が延期されました。
すみません。『そ・し・て……未亡人読本 黒百合篇』(今回は6人)を8月
に刊行予定しています。

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■千駄木ドロナワ日記 川原理子(谷根千工房)
(3)世界エスペラント大会の遠足に参加する
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2007年7月9日(月)
 7月9、10日は光源寺駒込大観音のほおずき千成り市。この日にお参りする
と、四万六千日分のご利益がいただけるそうだけど、そんなにお世話になって
しまっていいのかな。
 谷根千工房はワタアメと生ビールで参加。昨日までと打って変わっていい天
気になった。3時頃光源寺さんへ向う。ヤマサキさんの向丘ミニツアーも行な
った。「谷根千」も持っていったけど、売り手も買い手も、非日常の方に力が
入る。(本は端に追いやられた)
 今年はビールのおつまみに高知からミニトマト(最高)を仕入れ、きゅうり
の浅漬け(すずらん通りのスナック、美奈子さん直伝)を用意した。ワタアメ
売りは毎度マキちゃんと千駄木の詩人Kさんにくわえ、往来堂書店店長のOさ
んが初登場。師匠マキの技を身につけようと必死。

 私たち谷根千屋の右となりは和紙のランプ屋さん。ランプは作るのに手間が
かかり、4つしか持って来れなくて、売れるのも売れないのも心配している。
左はワイン屋さん。近々向丘に本当の店を開店するらしい。私たちはワインを
飲みながらビールを売る。
 正面でチキンライスを売るのは古書ほうろうのお二人。ナンプラーとシャン
ツァイがきいた一年間楽しみの味。満腹横丁のおこわやヤキソバもおなじみ。
今年は大豆アイスクリームやゴミで腐葉土を作るグループも出店。ほおずき市
は年々大きく、個性的になっているような気がする。
 それから、汐見小の時のIちゃんが来ていた! 同じ町に住んでいながら、
卒業して以来ずっと会ってなかったのに。これも観音様のご縁だ。

8月10日(金) 
 今年の第93回世界エスペラント大会は横浜で行なわれた。日本での開催は
40数年ぶりらしく、1年以上前から日本側の準備委員会や関係者は力が入っ
ていた。私もはじめての大会参加。大会ではさまざまな講演会や講義、遠足、
合唱の練習、演奏会、食事会などが同時多発的に催される。
 今日は、9時から言葉と経済の講義を聞き(ほとんどわからなかった。言葉
とお金、地域通貨の話のようだった)、午後は上野、谷中への半日遠足の手伝
い。手伝いといっても、前にコースを決めるときに手伝っただけ。
 
 遠足の参加者はイタリア人とフランス人各1名、初心者の日本の学生4名、
担当の話せる日本人2人と話せない私の計9名。1時から上野国立博物館を見
学し、3時から町歩きの予定だったが、4時まで博物館にいて、そのあと子供
図書館のカフェテリアで休憩したため、寛永寺も根津神社も谷中銀座も駆け足
で通り過ぎた。町もゆっくり歩いてもらいたかったのに、ねんねこ家さんで招
き猫を買ったくらい。残念。
 参加した外国のお二人は、「エスペラントで話しなさい」と、私も学生たち
にたくさん言葉を教えてくれた。手伝いに行ったのに、役に立てず、教わって
ばかりになってしまった。でも、それが世界大会の遠足の目的のようだ。

〈かわはら・さとこ〉谷根千工房社員。
夏は学童保育でアルバイト中。小学生の奇想天外さに学んでます。谷根千最新
号、其の八十七は安田邸の特集。ほかに岸田衿子さんと奥本大三郎さんの対談
や、蕗谷虹児、桂ユキ、日医大の鶴岡疎開など大贈ページ号です。次号の特集
は介護です。

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■真駒内石山堂通信〔番頭篇〕 杉村悦郎
(18)オー!アガリハマ
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 この連載は「真駒内石山堂通信」と称しながら、真駒内石山堂のことがちっ
とも登場しないじゃない? と見抜いたのは、なにを隠そう、ナンダロウ・ア
ヤシゲさんであった(それにしてもアヤシゲさん、作家の佐々木譲のブログ日
記に最近やけに出てきますな。『ミニコミ魂』を採り上げて「南陀楼氏には、
ぜひ続編を作ってもらいたいものだ」とか『ナンダロウアヤシゲな日々 本の
海で溺れて』にふれて「著者の本をもっと読んでみよう」と言わしめたりとか)。

 さて、真駒内石山堂はご心配なく、9月10日いよいよ待望のオープン。現在、
仮アップしてデータ入力作業も快進撃をつづけ、ざっと1万点。例えば、今、
ちょっとした話題の佐藤泰志なんて『きみの鳥はうたえる』『そこのみにて光
輝く』『黄金の服』『移動動物園』『大きなハードルと小さなハードル』『海
炭市叙景』が全部初版でそろっている。初期の作品も読みたいっていうお客様
には、とっておきもあるのだが。佐藤泰志は僕等の1歳上だった(でもさ、高
校生のときだけど、「北方文芸」に佐藤泰志の『市街戦のジャズマン』が載っ
た。大江健三郎の影響を色濃く受けた作品だったが、まあ、あの時は少なから
ず衝撃ではあったよな)。

 オープンに向けてここまで進んだが、僕等に苦労話はなにひとつない。“IT
弱者”を自認する中野店主と私なのに、なぜかって? 救世主が現れたのであ
る。上り濱桂子さん(あがりはま、と読むが、濱の字はメルマガでは文字化け
してしまう)。ちなみに上り濱姓は、関東以北ただ1軒、全国でも8世帯だけ
とか。

 店主は『国立の先生 山口瞳を読もう』(柏艪舎)で忙しく、私も『箱館戦
争銘々伝』(新人物往来社)で忙しく、上り濱さんがぜーんぶやってくれたの
である(で、“手代”からいっきに“電脳番頭”の地位を得た)。私たちがや
ったのは上り濱さんに澄川の居酒屋「八剣伝」で気持ちよーくお酒を呑んでい
ただくことだけ。

ちなみにHP制作担当の前任者・永井クン(山口瞳の会会員)は勘当されち
まったが、上り濱さんからカワイソー! のひと言があり、『国立の先生―』
出版記念の恩赦で(入店は厳禁の)“店頭丁稚”として復職した(こんど「八
剣伝」に誘うからな)。すでに真駒内石山堂オープニングパーティ会場はスス
キノ「焼き鳥じゃんぼ」を押さえてある。

 と、ここまでは順風満帆だったのだが、実は値付け作業がまだ済んでおらず、
これをお盆前後に完了しなくてはならないし、さらに店主の自宅に置いてある
本を店舗のほうに移動する作業もある。発送システムも整備されているわけじ
ゃない。
最近、店主と二人で酒を呑むと、お互いこの件にはふれず、わけのわからん
話題に移っていく。早くやらなくては! とわかっているんだけど、いつもの
日延べ病にすでに感染している二人なのだった。こころなしか電話で話す機会
も減り、時間も短くなった。どうなっちゃうんだろう? と9月10日の日めく
りカレンダーを見ると、その日は、おゝ大安か! きっと大丈夫だ、と思った
りするのだが――

〈すぎむら・えつろう〉真駒内石山堂ライター&エディター
『箱館戦争銘々伝』(上・下、新人物往来社)が出版されました。北海道在住
の研究家の共同執筆で、私も5編書いてます。お近くの図書館でご一読を。

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■もっと知りたい異文化の本  内澤旬子
(33)日常と非日常のあいだの「死」
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高野秀行『アヘン王国潜入記』集英社文庫 2007年

 タイ北部の山岳民族のトイレを取材したことがある。車で何時間もかけて薮
状態の山を駆けて着いた村は、あたりを焼いて拓いた畑があったくらいで、本
当になんにもないところだった。野菜などの作物を作ったところで、町に運ぶ
のに時間がかかりすぎて売れないのだという。しかしこのご時世、地球に住む
人間ならば、現金ゼロで暮すことはかなり難しい。とくに集団では。
 そこでアヘンである。なにしろほんの握りこぶしくらいの大きさの樹脂で高
額の現金が手に入る。それに腐らない。山間部の人々のためにあるような作物
なのだ。問題はそれが違法であるということだけだ。

 たずねた村ではアヘン栽培のことを話題にするのは御法度だと、はじめに釘
をさされていた。てゆうことは、やってるってことなのか。こんなしょぼい村
がねえ……。悪の香りも漂わず、頽廃の気配もみじんもない。そんなものなの
かね。
 わずかな体験だけど、あのとき感じたことはそうはずれてはいなかったようだ。
 高野秀行の『アヘン王国潜入記』は、タイ・中国・ミャンマー国境あたりの麻
薬地帯「ゴールデントライアングル」の村に長期滞在して、村人とともに芥子の
栽培から収穫そしてなぜか吸引、そして中毒までを体験する記録である。

 彼の滞在したワ州の小さな村を一言であらわすと、やはり「しょぼい」に尽
きる。本当にごくごく普通の、脱力するほど貧しい農村なのである。うーんや
っぱりそうだったか。著者は「無法地帯に潜入した」という気負いもなく、じ
つに自然にしょぼい村の人々に受け入れられ、暮しはじめる。
 地理的にも政治的にも隔絶された地域で生きることが一体どういうことなの
か。電気がない。水道もない。洗濯も水浴びもままならない。シラミが凄い。
まあここらへんはある程度は想像つく(しかし数ヶ月体験するのは本当にキツ
かったろう)。

 驚いたのは、「原因不明」のまま村人が死んでいくところだ。医療機関がな
いので、病名がわからないまま、本人に体力がなければ? いいや、運がなけ
れば、彼らは簡単に死んでしまう。
 人の死に出会うことは、短期の取材であってもない訳ではない。しかしその
人の背景までは見えないので、「死」は抽象的もしくは、報道的にとらえられ
がちだ。ところが著者は長い日数をかけ、脱力するくらい単純で不便な農作業
の繰り返しにつき合った果てに、「死」に出会う。それはまるで住んでるアパ
ートの隣の人か、友人の親が死んだような「死」なのである。村人たちととも
に働き、飲み交わし、彼らの暮しぶりや性格などを知った上でなければ、描く
ことが出来ない「死」に、しびれるような感銘をうけた。

 この本の一番の盛り上がりは、著者がごく自然に(!)アヘン中毒になって
いくところなのかもしれないが、もちろんそこも面白いのだが、私にはやっぱ
り、村人の「死」のシーンが忘れられない。そして突然の死をまぎらわすかの
ように、ごく自然にアヘンを吸い出す村人たちに混ざって当然のようにアヘン
を吸う著者が妙にかわいらしく、一歩まちがえば悲惨な光景のはずなのに、ど
こかほのぼのさせてしまうその天賦の才能に、ひたすら舌をまいたのであった。

〈うちざわ・じゅんこ〉イラストルポライター。

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■全著快読 梅崎春生を読む 扉野良人
(22)視点を変えれば
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『風ひかる』(講談社/1957年) 全集未収録

 本書を読みだして「貴島一策」の名が現れたとき「ハテ、この名前は前に聞
いたゾ」と一瞬、活字から目を離した。冷房の効いたバスの窓の外はギラギラ
と太陽が瓦屋根に照りかえしている。今日も三十五度を超える猛暑日で、あと
二つ三つ先の停留所で炎天に降り立たねばならない。

 貴島一策、すぐに思いだした。この連載の四回前に紹介した短編「紫陽花」
に出てくる名だ。たしか貴島一策は確たる理由もなく突然、夫人を連れて心中
する小説のキーパーソンである。「紫陽花」の主人公は、そう野田三郎、貴島
の名が見えてほどなく本作にも登場する。しかし『風ひかる』は、すでに出だ
しから「紫陽花」の主人公の目では書かれてはいない。

「バスを降りた。太陽は真上にあり、日射しはかなり強かつた。大気もさわや
かに乾いている。庄司みどりは靴音をひびかせながら、道をまつすぐに歩いた。」

 庄司みどりは両親に先立たれたので、父が出資した事業の共同経営者の貴島
一策を頼りにして毎月、生活費を受けとっていた。みどりは生活費を受けとる
代わりに、毎日の出来事を克明に記録した日記をつけて、それを貴島に見せる
という条件を言いわたされていた。日記をつけて三年になる。その日もみどり
は、その月の日記を携えて生活費を受けとりに貴島邸を訪ねたのだが、貴島一
策と夫人が自殺したことを青天の霹靂のように告げられる。

 貴島は、自分たちの死後の始末をこと細かく指図する遺書をのこしていて、
そこにはみどりの生活費がうち切られること、そしてみどりと一緒に貴島邸に
呼びだされた野田三郎もまた、毎月貴島から支給されていた八千円の学資が当
然のことながら廃止となることを言い渡される。もっとも野田はこの三月で卒
業していたので、貴島から問われなかったのをいいことに、毎月のこのこ貴島
邸を学生服を着て訪問していたのだ。貴島の遺書では、すでに野田が卒業して
いることはお見通しだった。

 わたしは「紫陽花」の紹介で「些細なことが私たちの日常をすきまなく埋め
つくしていると感じる瞬間がある。微々たることが、皮膚感覚の問題として迫
ってくる。『紫陽花』は日常のなんでもない部分が生々しく描写され、ちょっと
怖い話」と評した。しかし『風ひかる』では、庄司みどりという生きる術をと
つぜん奪われた健気な女の目を通して、ふだんは些細と見過ごしている日常の
中にも、それが生きるヒント、きっかけとなり、立ち止まっていたものが再び
歩きはじめる、という微かな希望が受けとれる話として思わずほろりとすると
ころがあった。

 庄司みどりは貴島の死後まもなく、貴島が死の直前に書いた手紙を受けとる。
そこにはみどりを虚脱させることだけしか書かれていなかった。(貴島の小父
さんたちは、きつと遊びに死んで見たんだ)と思わせるものでしかなかった。
死人の手紙は「すべてこの世は、茶番です」と締めくくられる。ならば、私た
ちはどうして生きていられよう。
 みどりが手紙を受けとり、その封をきるまえに「さわらないで、さわらない
で!」とひとりごとを呟く。読者にさえ伝わる、このいやな感じはどこから来
るのか。それは「死者」ではない、「死人」の手紙は私たちから希望を奪う。

「では、何故、今日マカロニを食べる気になつたのか。土曜日という解放感が
そうさせたのか。穴のあいた、しこしこしたマカロニの歯ざわり、マカロニと
いうやつは、どうして穴をあけるのだろう。やはり竹輪をつくる時みたいに、
糸か紐を中心にまぶしつけ、あとで引つこ抜くのか。」

 いや、このマカロニ考は野田三郎のものだけれど、それは梅崎春生のもので
もある。私たちマカロニの歯ざわりだけで、なにかを実感することがある。
「ああ、いい風!」とみどりはつぶやく。土曜の午後、野田とふたりおとずれ
た貴島邸に通じる道から柔らかな風が吹いてきた。野田も答える「こういう風
を吸い込むと、僕はおにぎりをつくつて、遠足に出たくなる」と。生きている実
感なんて、そんなものかもしれない。

 今日は送り盆である。わたしには、それが死者の風を吸って送るような気が
した。さて、本を閉じ、猛暑の道へ降り立とう。夜は、送り火を眺めてのビー
ルが楽しみだ。

〈とびらのよしひと〉1971年生まれ。お盆は仕事が忙しい。それはわたし
が坊主だから。毎年、盆が過ぎると寂しさがつのる。盆に開かれる下鴨古本市
が終わるためか、古本市にやってきた呑み友達が帰ってしまうためか。綾繁さ
ん、魚雷さん来年もまた下鴨で。

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[書評]のメルマガ vol.324
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■          vol.324
■■  mailmagazine of book reviews [ 夏は京都で古本市 号]
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[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。明日から下鴨&下亀です!
★短期連載「Book Love の、本と出会いと」
 →一箱古本市・南陀楼綾繁賞受賞記念! Book Loveさんのコラムです。
★「大阪豆ごほん」真治彩(ちょうちょぼっこ) 
 →大阪のふたつの「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。
★「食の本つまみぐい」遠藤哲夫
 →著者多忙のため休載です。

*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
-------------------------------------------------------------------
★ガケ書房で「下亀納涼古本まつり」

8月11日(土)〜17日(金) 12:00 〜 22:00
ガケ書房
〒606-8286京都市左京区北白川下別当町33
075-724-0071
http://www.h7.dion.ne.jp/~gakegake/index.htm

毎年開催されている古本界のフジロック「下鴨納涼古本まつり」。 下鴨神
社境内にて、青空の下、多くの古本屋さんが出店します。ガケ書房では、それ
にビンビンと便乗します! 下鴨祭りと同じ日程でそしらぬ顔で便乗します!
本家が‘鴨‘なのでガケ書房のご本尊は‘亀‘!!  なわけで開催します
「下亀 納涼古本まつり」。

(古本提供者)順不同
友部正人 ふちがみとふなと 岸田繁(くるり) オクノ修(六曜社) あー
す書房 蟲文庫 興居島屋 書肆砂の書 岡崎武志 山本善行 高橋輝次
南陀桜綾繁 荻原魚雷 尻プロダクション ふるほんミシシッピ Lマガジン
編集部 ガケ書房

同時開催
2007年8月11日(土)〜8月25日(土)
「くすすみてぬぐい・招布(まねぎ)展」

★佐藤さとる「コロボックル物語」展
佐藤さとる作のコロボックル物語は日本を代表するファンタジーです。「だ
れも知らない小さな国」「豆つぶほどの小さないぬ」「星からおちた小さな人」
など、かわいい小人コロボックルが活躍する物語は、発表から半世紀近く経っ
た今なお、子どもにも大人にも感動を与え続けています。
佐藤さとるの物語と村上勉の絵は、そのリアルさでコロボックルが今もどこ
かに住んでいるような気持ちにさせます。初公開の資料と村上勉の原画でコロ
ボックルの世界を体験してください。佐藤・村上コンビによる名作絵本のひ
とつ『おばあさんの飛行機』原画も全点展示。

会期 2007年(平成19年) 8月4日(土)〜 9月30日(日)
休館日は月曜日(9/17、9/24は開館)
開館時間 午前9時30分〜午後5時(入館は4時30分まで)
会場 神奈川近代文学館展示室
観覧料 一般400円(300円)、20歳未満及び学生200円(150円)
高校生以下、65歳以上は入場無料
 *(  )内は20名以上の団体料金

なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

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■短期連載 Book Love の、本と出会いと
(3)最終回 本の軌跡を辿る
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私が古本を手にするたびに、かつての持ち主の痕跡を探してしまうようにな
ったきっかけは、こんな二人の言葉だった。

それは弟が草太(甥っ子・当時2歳)の絵本棚を見せてくれたときのこと。
取り出したその一冊は汚れがひどく、特に中ほどにある見開き一杯に主人公の
姿が描かれたページはぼろぼろでセロテープが何箇所にも貼られていた。「草
太はこの絵本が大好きなんだ。特にこのページがお気に入りで、ここを開くた
びに大喜びしてページをひっぱって破いてしまうんだ」

それからまもなくして、古文書の修復家にお話を伺う機会があった。彼はそ
のとき手がけていた、特攻隊員が出撃前に両親宛に書いたものだという古い手
紙を見せてくれた。「ここに数箇所、小さな水滴の跡のような染みがあるでし
ょう、これはもしかしたら手紙を書いた本人、もしくは手紙を受け取った両親
の涙の跡かもしれないのですよ。だから僕はこの染みは、記録のひとつとして
残しておきたいと思うのです」

彼らの言葉がきっかけで、私は古本の物理的状態に目を向けるようになった。
書き込みやページの破れ、染み、汚れといった本に残された痕跡から、かつて
の持ち主の姿を想像してみるようになった。

たとえばページの角の折れ。これは単なるしおり代わりか、それとも意味あ
るページの印なのか。意味あるページであるとするならば、いったいどの一文
に彼は心惹かれたのだろう?

はたまたページの端のインクの染み。周囲がこすれているのは、あわててこ
の染みをふき取ろうとしたのか。焦ったあまりに指がインクで汚れたことに気
づかずにいて、前小口にまで指紋を残してしまったのか。

そして綴じの奥深くに挟みこまれた一本の縫い針。これはしおり代わりに挟
んだものなのか。それとも何かのメッセージなのか……。

なぜ、どうして? 時にはミステリーさながらの謎を与えてくれるものもあ
る。考えたところで正確なところは何もわからないのだけれども、だからなお
さら、想像の羽を広げることができる。

あなたも一度、手元にあるその一冊の古本をじっくりと眺めてみませんか?
本そのものに秘められたストーリーを読み解いてみませんか。新刊書では味わ
うことのできない、新たな本の楽しみ方を知る事ができるかもしれません。

◎本日の一冊:
いせひでこ『ルリユールおじさん』理論社
毎日のように読んでいた図鑑がぼろぼろになってしまった女の子は、製本職
人のおじさんに本を直してもらうことにした……。本は飾るためのものではな
い、かといって読み捨てるものでもない。それを再認識させてくれる BookLove
お気に入りの絵本です。

〈BookLove〉本と本にまつわるモノが大好き。
http://honnozakka.exblog.jp/

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■大阪豆ごほん  真治彩(ちょうちょぼっこ)
(37)時間の目印
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「書評のメルマガ」をちょうちょぼっこは2ヶ月に1回というペースで書かせ
てもらっている。ちょうちょぼっこはメンバーが4人いるので、自分の順番が
来るのは8ヶ月に1度ということになる。なので、順番がまわってくると、時
間の経つことの早さや適当に日々を過ごしていることが形となって目の前にあ
らわれるような気がして、ちょっとした恐怖のようなものを感じる。

 堀江敏幸の『めぐらし屋』の中に「時間をさかのぼるための、欠かせない目
印はなんだろう。」という一節がある。わたしも「時間の目印」についてよく
考えていたので、この一節が頭に残った。学生時代だと、小学校3年生の二学
期、中学校2年生の冬休みといった、目印というか、さかのぼるのに必要なア
イテムがいろいろとある。(それでも忘れがちだけど)
 
 学生ではなくなって、継続して同じ職場にいなければ、時間をさかのぼるこ
とが非常に困難に感じられる。年齢だけではなかなか時間の経過を感じ取るこ
とができない。わたしはいま、32才だけど、同世代の人は子どもをもって、子
どもの成長とともに、時間を刻んでいっているのかもしれないなあとか感じる。

 24歳の夏も、28歳の夏も、32歳の夏も、まるで金太郎アメのように、どこ
を切っても同じものが出るのではないか、ちゃんと、時間を刻めているのか、
時間が早く過ぎているのではなくて、自分のまわりに澱んでいて、ぐるぐる同
じところをめぐっているだけではないのか、ふと不安に感じることも、最近あ
るのだけど、それこそが歳をとった証拠かもとちょっとだけ笑えてくる。いや、
でも、自分が32歳になった実感は全くないわけで。それって、病気なのか。
それとも、みんなもそうなのか。

 大阪に出てきて9年目、ちょうちょぼっこを始めて7年目になる。あまり営
業日もなく、活動もほぼないちょうちょぼっこだけど、時間をさかのぼるため
の目印になりつつある。幸いにも営業日誌なるものを適当につけているので、
たまに読み返しては笑ったりしている。

2001年6月16日(土):つぎた
「おかたくさんがモダンジュースのおねえさんと古本屋をしたいおにいさんと
いっしょにきた。アックスをくれるそうです。」

おかたくさんとは、『SAVY』(関西の情報誌)などで美術のコーナーを担当し
ている美術家の方で、その方が「モダンジュースのおねえさん」=近代ナリコ
さんと「古本屋をしたいおにいさん」=扉野良人さん?を連れてきてくれたと
いうことで、2001年当時のわたしたちは、そのおにいさんおねえさんのこと
をほんとうに知らなかったのだなあ、おっと、時間は確実に過ぎてるねえなど
と感慨深く思ったりする。わたしたちは記録するのが苦手で、最近は営業日誌
も書かず、日記もあんまり書いていないのだけど、過去のものを読み返してい
ると、やっぱり、ちゃんと記録しておこうと肝に命じるのだけど、なかなかう
まくいかないというか。

 さて、このようにして2007年の夏も過ぎてゆくわけですが、8月11日はち
ょうちょぼっこを閉めて、久しぶりに在大阪組の3人で下鴨古本市に出かける
予定で、楽しみにしている。それはあんまり関係ないお話だけど。それでは、
また8ヶ月後に。

〈しんじ・あや〉
最近、白髪がひどくて困っています。なにかよいくすりはありませんか。
*6月より「貸本喫茶ちょうちょぼっこ」の金曜日の営業時間が18:30〜とな
りました。

貸本喫茶ちょうちょぼっこ
〒550-0014 大阪市西区北堀江1-14-21 第一北堀江ビル402
http://www.geocities.co.jp/chochobocko/
*営業日は、第1〜3週末です。 金18:30-21:00、土日 13:00-21:00

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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(51)もったいなくて、ありがたくて
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 7月中に溜め込んでしまった仕事に追われつつ、『中央線で行く東京横断ホ
ッピーマラソン』の配本作業にも追われ、アップアップの毎日を送っていた
2006年の8月、取次ぎをお願いしている地方・小出版流通センターのご担当
者から、1本の電話をいただいた。ジュンク堂の新宿店さんが場所を貸すから、
何かイベントをやらないかというお誘いだった。

 トークイベント、あるいはサイン会というようなことなのだろうけれど、と
てもではないが、私なんぞに務まるものではないと咄嗟に思った。しかもお話
をよく伺えば、誰が著名な方をお招きしてトークライブ&サイン会のようにし
てはどうか、ということなのだった。著名な人って……。気軽にお声をかけら
れる人などいるわけがない。

 それでも、せっかくのお話、なんとかしなくてはと思い、悩んだ挙句に私は
『中央線で行く東京横断ホッピーマラソン』の最終回に駆けつけてくださった
重松清さんにお願いする決心をした。メールにて、その旨を伝えた。すると重
松さんは、間髪入れずに快諾してくださったのである。
 重松さんはメールに書いた。トークのあとのサイン会は『ホッピーマラソン』
か『酒とつまみ』に限定し、サインはタケさん(私)がする。重松さんご自身
は自著にはサインをしない、と。末尾には「主役はタケさんです」とあった。
私はこのメールをもらったときのことを、よく覚えている。すぐにでも電話を
かけて直接御礼を言いたい。その気持ちは、もったいなさと、ありがたさに混
じりあって、いつまでも消えることがなかった。

 人生で初めてのトーク&サイン会が決まり、ただでさえ浮ついている私はこ
の後、『タモリ倶楽部』さんから3度目の出演依頼をいただき、さらに浮つい
た人間になっていった。
 9月2日。神田の立ち飲み屋さんで行なわれた収録には、なぎら健壱さん、
井筒和幸さんといった、『酒とつまみ』の酔客万来にご登場いただいた方がお
見えになり、そこに、すっかり酔っ払った状態で、私たちも混ぜていただいた。

 緊張と酔いとで、収録後にはヘロヘロになった。そして、ヘロヘロのままで、
国分寺にある『いっぱいやっぺ』という店に、この本を届けに行った。もう飲
めない状態だったが、居合わせた常連さんたちは、私が『酒とつまみ』3号の
取材でお邪魔したときのことを覚えていてくださり、「おお、ホッピーの、あ
のときの本できたか、ちょっと見せてみな」と言って1冊を手に取り、みんな
で回し読みをしてくれた。なかには、この店にお邪魔したときの箇所を、声に
出して読む人もいらっしゃって、場はとても和み、いい夜になった。

 自分の身の丈に合わないことが立て続けに起こった上に、浮ついた私は大量
の酒を体内に入れて、文字通り、ふわふわと宙を漂うような気分だった。もっ
たいなさと、ありがたさが、体中に充満しているような気がした。
 
〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集発行人
7月末日。『酒とつまみ』創刊号から連載している『酔客万来』の単行本が完
成しました。登場するのは中島らもさん、井崎脩五郎さん、蝶野正洋さん、み
うらじゅんさん、高田渡さんの5人。雑誌連載時には掲載できなかったエピソ
ードも加筆したロングバージョンです。
書店さんへの流通、配本も開始しております。よろしくお願いします。
http://www.saketsuma.com

ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(60)新曜社の巻  神保町路地裏地帯のよどんだビル
--------------------------------------------------------------------- 
 仕事終了後、ビールをグッとやる前に、銭湯に行きたい季節。昨夜も神保町、
専大交差点近くの「梅の湯」へ(大人430円)。一心不乱に20分以上、自分の
体を洗いまくってる無気味な中年男がいて(この手は例外なく薄汚く醜く馬鹿
そう)、ちょっとめげたがサッパリ(異常客からは1500円くらいは強制徴収す
べし)。帰りに近所を散歩しながら、本欄のために立ちション取材。ここらに
も確か版元様が2〜3社…。

 驚いた。まだ新しいホテル「若葉館」が取り壊わし中。ここにも味気ない高
層ビルが建つのだな。その斜め向かい、すすけたクリーム色の多田ビルの1〜
2階に、新曜社は入居(千代田区神田神保町2‐10)。あるのは昔から知ってい
た。ちゅうのもピース紺に白抜きで社名が入った、同社のドデカイ看板は近所
でも名物。イヤでも眼に。60年代は北関東の電器店の、モーレツハレンチセン
ス。金にそう縁のある版元とも思えないが(看板屋が親戚に?)。

 神保町路地裏地帯のよどんだ一角。左隣がトタン張りの北神町会の物置き。
多田ビル、右に入る路地と左手車道の、一応角地に立地(6階)。この路地が
味わい深い。すぐ隣は民間マンションで、その右はシルバー会館。2階建てで、
確かに銀色のアルミのような金属で覆われている(汚れてボロボロだが、力な
い光沢がまだピカーリ)。シルバー編機ってのが昔あったが、関係でも?(人
の出入りする気配はない)。

 多田ビルも当然よどんでいる。1階は倉庫。書籍が種類ごとに分けられて平
積み。人影はない(昼間も行ったが同じ)。現代書館の1階倉庫など、常に人の
出入りが激しく活気が(漫画屋の近所)。地味な学術書の版元はこんなもんか?

 69年に編プロとして設立、版元にのし上がったと、同社HPに。昔、大塚英
志の本を1冊買ったきりだが(大塚の本も四方田犬彦や柳美里同様、ヤギの糞
並にポコポコ出るが、一体誰が読んでるのか? 面白いって噂も全然聞かない
し。輸出でも?)、コツコツと新人育てちゃ、メジャーに1本釣りされちゃっ
てる、昔の勁草書房のようなイメージが(囲っちゃって有望な新人の芽を摘む、
河出書房新社よりは太っ腹で偉いのかも)。

『資本主義黒書』『母に心を引き裂かれて』『心理臨床の創造力』。昨今の新
刊。結構、“売ろう!!”って感じなのね、すすけたビルで編集してる割には。
刊行本も、大新聞の書評に良く取り上げられるし、弱小版元なのに書店でも好
意的扱いされてるムードが。ただ俺は、今後も1冊も買わないんじゃないかと。
「梅の湯」の潔癖症異常客ほどじゃないが、新曜社の看板とも言える、村上陽
一郎や小熊英二って(大塚英志もだが)、どっか宮崎学ないし佐藤優ぽいって
言うか、インチキ臭さ感じるし(他の著者に失礼だヨ!)。

 わかりづらい「梅の湯」への道。水道橋駅前からの大通りを、専大交差点ま
で直進(左側をね)。「さくら水産」が見えたら、手前路地を左折。入ったす
ぐ左のマンションの1階。番台のアンチャンは無愛想だし、扇風機もロクにま
わってないので暑いが、選択の余地がないので仕方ない。自治体の資金援助受
けてるのなら、かなり腹立たしいな。

*編集部より 前号の回数はただしくは「59回」でした。訂正します。

〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)。『嫌われ者の記』をベースにし
た新刊『出版業界最底辺日記 エロ漫画編集者「嫌われ者の記」』(ちくま文
庫)が好評発売中。
なお、この連載に関しての批判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(た
だし、謝るとは限りません)。
mangaya@air.linkclub.or.jp
http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/

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[書評]のメルマガ vol.320
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■■ [書評]のメルマガ   2007.7.13発行

■          vol.320
■■  mailmagazine of book reviews   [ 澁澤と堀内 号]
■■------------------------------------------------------------
[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。中京大学やトンカ書店で。
★短期連載「Book Love の、本と出会いと」
 →一箱古本市・南陀楼綾繁賞受賞記念! Book Loveさんのコラムです。
★新連載「音を探してページをめくる」貴島公
 →音楽サイト「モノノフォン」の主が、音とテキストの関係を考察する。
★「〈畸人研究〉今柊二の読書スジ」
 →1980年代に愛読していた、片岡義男のエッセイ集とその思い出を。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。
★「大阪豆ごほん」柴田尚美(おまめ) 
 →柴田さん、オメデタのため、しばらく休載です。

*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

-------------------------------------------------------------------
■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
-------------------------------------------------------------------
★澁澤龍彦・堀内誠一 旅の仲間展
2007年6月25日(月)−7月28日(土)
休 館 日曜、祝日(7月1日は開館)
開館時間 午前9時−午後5時 入場無料

1987年8月、ともに下咽頭癌に冒され亡くなった、澁澤龍彦と堀内誠一の没
後20年を期して開催するものです。本展は澁澤龍彦と堀内誠一が交わしあっ
た書簡、一緒に出掛けた旅の写真、堀内誠一のイラストレーション、2人にか
かわる書籍・雑誌など資料が多くを占める展示です。殆どが未公開だったもの
であり、これを期に新たな澁澤龍彦像、堀内誠一像が生まれる可能性をはらんで
もいます。

中京大学 アートギャラリー C・スクエア 
〒466-8666 名古屋市昭和区八事本町101-2
TEL 052-835-5669
http://www.chukyo-u.ac.jp/c-square/top.html

★「ある蔵書家の本棚展」
7月1日〜7月31日
姫路ののどかな城下町・京口で先日、築約60年の古民家が取り壊されました。
眠っていた屋敷の整理とともに出てきたのは、壁一面の本棚に並べられた4000
冊もの蔵書たち。酒とタイガースをこよなく愛し、大好きな本をながめて暮ら
したある蔵書家の本棚が、夏休みの1ヶ月間、トンカ書店にて再現されます。
また展示した本は全てご購入いただくことができます。

山口市之助
大正10年生まれ。兵庫県姫路市で製紙原料の問屋工場を営みながら、好きな
ものと家 族に囲まれ、静かに暮らした蔵書家。平成3年死去。

トンカ書店
神戸市中央区下山手通3-3-12 福穂ビル2-D
078-333-4720

★また増える古本イベント

「週末は、早稲田に行こう」
WEEKEND WASEDA Vol.1 〜お店で古本市〜

2007年8月3日(金)〜5日(日)
3日(金) 19:00〜23:00
4日(土) 11:00〜19:00
5日(日) 11:00〜17:00

会場(2ヶ所で開催!)
◎第一会場 立石書店
東京都新宿区西早稲田2−1−2 ハイツ森川1階
TEL&FAX 03−6276−4011
http://d.hatena.ne.jp/tate-ishi/

参加店舗
〈ゲスト〉古本けものみち(南陀楼綾繁)http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/
〈早稲田〉いこい書房/二朗書房/谷書房/ブックスアルト/さとし書房
〈わめぞ〉旅猫雑貨店/リコシェ

◎第二会場 古書現世 
東京都新宿区西早稲田2−16−17
TEL&FAX 03−3208−3144
http://d.hatena.ne.jp/sedoro/

参加店舗
〈ゲスト〉bookcafe 火星の庭(仙台)http://www.kaseinoniwa.com/
〈早稲田〉平野書店/三楽書房/渥美書房
〈わめぞ〉ほか 古書往来座/m.r.factory(武藤良子)/退屈男/ハルミン古
書センター

主催 古書現世/立石書店  
協賛 わめぞ http://d.hatena.ne.jp/wamezo/

なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

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■短期連載 Book Love の、本と出会いと
(2)メッセージ・イン・ア・ボトル/大海に放たれた一冊
----------------------------------------------------
海辺をちょっとでも歩けば、砂浜に打ち上げられたさまざまな漂着物を目に
することができる。ヒトデや貝殻、流木、缶や瓶にサンダル、帽子……。そん
な折、誰しも一度は思ったことがあるのではないだろうか。メッセージ・イン・
ア・ボトル。小瓶に入れられ大海に放たれ、流れにまかせてこの地にたどり着
いた異国からの手紙はないものか、と。誘惑にかられる者も多いだろう、果て
しなき大海原に向かって、自分の思いを込めた小瓶を投げいれることを。

そんな偶然にまかせた方法でメッセージを放った者がいる。それも、ボトル
ではなく本で。

彼のやり方はこう。まず彼は、特に思い入れの強い本を10冊用意した。その
一冊一冊の後ろ見返しに、彼はその作品に対する自分の思いを書き入れた。そう
して彼は、その本を大海に放った。大海、とは、東京23区。いつのまにか地下
鉄駅構内に設置されるようになった、乗降客が自由に借り出すことのできる「メ
トロ文庫」の10ヵ所に、彼は思いを込めたそれらの本をしのばせたのだ。メッ
セージの最後には、「あなたの感想を書き入れてください。そしてこの本をま
たもとの駅の棚に戻してください」と添えて。

今、彼のメッセージは大海のいずこを漂っているのだろうか。同じ感覚を持
つ見知らぬ仲間の手に届いたであろうか。それとも、いまだ誰に興味を惹かれ
ることもなく、駅の本棚の片隅に置き去りにされたままの状態なのだろうか。
利用者のマナーの低下から、メトロ文庫の閉鎖が増えているという話も聞く。
幾多の荒波を乗り越えてでも、彼の思いがいつの日か、あなたのところに届き
ますように。そしていつの日かまた、彼の手元に届きますように。

◎本日の一冊
石井忠『漂着物考――浜辺のミュージアム』INAX出版
海岸に打ち寄せられるさまざまな漂着物を集めた写真集。君たちはどこから来
たのだ? 君たちの身に、いったい何が起こったのだ? 潮に洗われたモノた
ちの姿に、洞察力と想像力がかきたてられる一冊。

〈BookLove〉本と本にまつわるモノが大好き。
http://honnozakka.exblog.jp/

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■音を探してページをめくる  貴島 公
(4)ジュリーっ!
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平安寿子『あなたがパラダイス』朝日新聞社、2007年2月、1600円

 映画作品を、音楽に興味があるから観るということがよくある。俳優も監督
も、ときには物語すらそっちのけなので、不純な動機で申し訳ないといつも思
う。この小説を手にとったのも、そんな不純な動機からであって、しかも小説
そのものを普段読まないので、云々することは申し訳なくてしょうがないのだ
けど、「ジュリー」についてなら、許してもらえそうな気がする。すくなくと
も、小説の主人公たちには。

 境遇が異なる三つの物語の主人公たちには、二つの共通点がある。ひとつ
は更年期を迎えたということ、もうひとつは実在の歌手、ジュリー(沢田研二)
の歌を聴くということ。かかわりかたも、それぞれ。ずっと追いかけている熱
狂的なファン、若い頃には聴いていたが今ではその頃の歌を聴くこともない元
ファン、そして興味がなかったのに成り行きで興味を持つ初心者。
 
 熱狂の対象や若い頃を思い出させるものとして描くのであれば、架空の人
物でもよいはずだけど、そうしなかったのは、活動歴40年を越えるジュリーの
現在が魅力的だったからにちがいない。毎年新作を発表し、新作を中心にし
たコンサートを行う現役であること、その新作が年齢相応のメッセージを持って
いること。その姿が広く伝わっていない理由も作中に記されている。その事情は、
シングル曲限定ではあるけれど、90年代初めまでは愛聴していたわたしも同じ。
この小説は、そんなジュリーを忘れた大人たちに、更年期と同じ不可避の現実
であるかのように、ジュリーの現在を提示してくれる。

 音楽についての個人的な体験を語ろうとすれば、語り手が主人公になれない
紹介文や評論は、小説には敵わない。でも、小説のかたちにすれば、体験を他
人に伝わるように表現することができるかと言えば、そううまくはいかない。
音楽について自分を主人公にすれば、ヘタをすれば、自慢話になるのがオチだ
から。この小説がそのあたりをクリアしているのは、主人公たちとジュリーの両
方に応援の気持ちが込められているからだ(やや情報性に傾いた感のある3本
目を除く2本に特に)。大切なのは、書き手自身ではないのだ。それができたの
は、書かれているのが、スターとしての遠さと同世代のメッセンジャーとして
の近さを持ったジュリーだからかもしれないし、そんな彼のファンだからかも
しれない。評論への転用はやっぱりむずかしそうやなぁ。

〈きじま・こう〉説明業、趣味・読書と音楽鑑賞。
 21世紀のジュリーを聴いてみよかなと思っていたら、かつて彼を支えた井上
堯之氏の『ドント・ドリンク・ザ・ウォーター(ウォーター・マインドII)』
が約30年ぶりに再発されるというニュースが。老いを讃えた歌が並ぶB面を初
老気味な今、改めて聴いてみたいと思っています。

「モノノフォン」
http://homepage1.nifty.com/hebon/fhp/

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■〈畸人研究〉今柊二の読書スジ
(19)人生はつながり
---------------------------------------------------------------------
ある日、産経新聞の記者の方から連絡があった。「この本と出会った」とい
うコラムで、オススメの一冊を紹介してくれと。はいはいと返事をすると、
「実は…」と記者の方が話しはじめた。なんと記者の方は、昔私が講師として
働いていたSゼミという学習塾の後輩だったのだ! 

Sゼミでは気楽な講師の仲間達が何人もいて、楽しくもハゲシイ青春の日々
であった。そしてSゼミを去るにあたり、日々の講師生活のていたらくをミニ
コミとして書き綴ったら、塾長のエバがいたく気に入ってくれ、「印刷代は出
してあげるから長いのを書いて」と言われ、その言にのっかって、大河小説
『海千山千』を書き上げ、単行本として発行したのであった。あれは1992年
だったか。確か500部つくってくれて、関係者に配られたり、またはSゼミ
に残されたりした。産経の記者の方は、某教室で責任者がもっていた『海千山
千』をもらいうけ、それを読んでくれていたらしい。「いや、あの『海千山千』
の今柊二さんとつながってうれしい」とかいうようなことをいわれる。今柊二
の名前は、実はこの『海千山千』あたりから使い始めていたが、こんなところ
でつながるとは…。こちらもびっくりで実にうれしかった。

ということで、書評は何にしようかと思ったが、やはりスジから行けばSゼ
ミで働いていた1980年代後半に愛読していたものがいいなと思い、片岡義男
『5Bの鉛筆で書いた』(角川文庫)を紹介することにした。詳しく記すと産
経新聞に記した書評とダブルので書かないけれど、片岡さんのエッセイは非常
にデリケートで心に残るものが多く、特に食べ物の記述が強く印象的だったの
だ。実際彼のエッセイに描かれていたキャンディバー、つまりスニッカーズな
どのようなチョコ菓子だが、それを元町ユニオンなどに買いに行ったものだっ
た。今ではありふれているけど1987年前後はまだまだ輸入に強いスーパーじゃ
ないと入手できなかったのだよ。

 というようなかんじで産経新聞に記したところ、今度は神奈川新聞から連絡。
神奈川新聞は現在「かながわ定食紀行」を隔週日曜に連載をしているのだけれ
ど、なんと片岡さんから献本がきたと…。ナゼ産経新聞ではなくて神奈川新聞
に送られてきたのかわからないけれど、ともかく私の文章を片岡さんが読んで
くれたということで、これは感動しました。

そして神奈川新聞経由でいただいた本は『白いプラスティックのフォーク――
食は自分を作ったか』(NHK出版)。まさに直球ストライクの片岡的「食」ワ
ールドの一冊。表紙にフォークをあしらったブックデザインもイカしているけ
ど、中身もスゴイ。片岡さんを構成するアメリカの「食」と日本の「食」。こ
の二つの要素についてじっくりと語られていく。良いエッセイを読むと、自分
とその本をかこむ空間に膜が張り、そこだけ時間の流れが急にゆっくりしはじ
める錯覚を覚えるけど、まさにそんなタイプの一冊。全部読むのがとても惜し
いのでなおさらゆっくり読み進めた。全体の中では、ハワイで昼食を食べてい
ると、日系の人に自分のお父さんに間違われる話が妙にこころに残った。

〈こん・とうじ〉畸人研究学会主幹。
『がんがん焼肉もりもりホルモン』(ちくま文庫)が好評発売中。新刊『定食
ニッポン』(竹書房文庫)もよろしく。

---------------------------------------------------------------------
■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(50)バーになぜこんな本が?
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 週があけて決算書類への捺印もすませた私が『酒とつまみ』編集部へと足を
運ぶと、そこで待っていたのは、納品されたばかりの『中央線で行く東京横断
ホッピーマラソン』の山だった。

『酒とつまみ』本誌と異なり、取次店への最初の納品部数もわずかであったし、
直接取引の書店さんへの事前の告知もほとんどしていなかった。さらには、『中
央線で行く……』と銘打った本を違う沿線や地方の書店さんに積極的に売り込
むことに、少しばかり気後れしていたりもしたので、納品直後の出荷数はわず
かなものだったのである。
 しかもぺらぺらな本誌に比べれば厚さもあって、狭い仕事場で、なんという
か、非常に嵩張っているのだった。

あ〜あ。これ、どうすんだろうなあ! 私は『酒とつまみ』創刊号500冊を
目の前にしたときと同じ気分を味わっていた。
 しかしながら、とにもかくにも営業開始である。私はまず、本誌で『バーテ
ンダー酒を語る』というエッセイを連載してくださっている佐藤謙一さんの店
に、できたばかりの『ホッピーマラソン』を持ち込んだ。
 ここは銀座6丁目にある、高級と言われるバーである。私なんぞが気安く顔
を出せる店ではないのだが、創刊前から執筆を快諾してくださった上、『酒と
つまみ』をお店で積極的に販売していただくなど、実にお世話になっているお
店であり、マスターなのだ。

「おお、できましたね。おめでとう」
 マスターはそう言うなり、梱包を破って1冊を抜き出し、カウンターの中央
に面陳(表紙を前面に向けて陳列すること)したのだった。冗談かと思ったが、
そうではない。
「ここに置いて、売らせてもらいますよ」
 ちょっとヘンなことになった。銀座のバーのカウンターに、いかにも場違い
な私の単行本が陳列されている。

気になって気になって、実はその後、頻々と通うことになったのだが、カウ
ンターの端で見ていると、本を見つけたお客さんが、「これ、なに?」などと
聞いている。すると、この店のチーフバーテンダーがなんと言ったか。
「当店のオフィシャル・ブックでございます。販売をしておりますので1冊い
かがでしょうか」
おいおい。オフィシャル・ブックって何のことよ? ちょっと待ってくれよ。
などと焦る間もなく、
「著者の方があちらにお見えですから、せっかくですからサインもいかがでし
ょうか」
よしてくれー!

冗談みたいな話だが、冗談じゃない。私はこの夏、バーで自著にサインをす
るという、なんとも気恥ずかしい経験を、たびたびすることになったのだ。

〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集発行人
30年ぶりで新宿ゴールデン街に寄らせてもらいました。若い編集者さんに連れ
て行ってもらったのですが、連日の深酒と、それまですでに2軒ハシゴしてい
たことも手伝ってめいて状態に。最後の話題が集団的自衛権の行使についてで
あったことだけ記憶しております。迷惑な酔っ払いだったのでしょう。すみま
せん!
http://www.saketsuma.com

ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(58)東京地図出版の巻 川口近辺にありそうな地味でごついビル
--------------------------------------------------------------------- 
東京地図出版は、千代田区神田神保町2ー36ー15。水道橋駅前からの通
り(水道橋西通りと呼ぶと)を、後楽園に尻を向けて直進、靖国通りと交わる
交差点の、手前100メ−トルくらいの所を左折した路地に位置(食堂「ナギ」
と、既に営業してないらしいが、氷屋、「黒坂商店」の間の路地右側)。

 地味でごついビルだ。4階建て(一部5階?)で基本的に灰色のセメント。
一部に茶色のタイル。ただ敷地は広く、一区画のほとんどを占拠。隣接する小
山ビルも同社のモノらしく、第2編集部の表示。右折してもまだ同社。日南プ
リントは関連会社か? とにかく広いので、1957年創業の同社としては、本
当は50周年記念に当たる今年、高層自社ビルでも建てたかったのでは?(広
い通りに面してないから、法的規制を受けて駄目だったか等、勝手に推測)。

 倉庫付近には、出版共同流通の青い箱がゴロゴロ。出荷用のフォークリフト
も当然完備。建物のいかついイメージもあってか、版元と言うより工場の雰囲
気(川口近辺の)。屋内禁煙とみえ、ベランダに喫煙者が2〜3人ウロウロ。
ワイシャツにネクタイ姿なので、ここが川口の鋳物工場じゃないと悟らせる。

 回りには高層ビルが増え、日当たりも悪い。何となく閉塞感も(「黒坂商店」
の木造2階建てが超オンボロで、1950年代ムードバリバリ。「給料上げて下
さい」と頼んだデッチを、「俺は赤が大嫌いなんだよ!!」と怒鳴る、主人役
の東野英治郎のしわがれ声が聞こえてきそうだ)。東京地図出版の御殿は、幸
い60年代には達してるが、今のままでは日照時間は減る一方。

 同社の刊行物で一番有名なのが、道路地図のミリオンシリーズ。前回の情況
出版の入居する、ウィンド西神田ビルを間にはさみ、大洋図書グループが森本
組のビルを買い取り、移転してきたのもつい数年前。同グループの稼ぎ頭が、
各種エロ本のミリオン出版。内心、苦々しく思ってんだろな、東京地図出版の
上層部としては(色っぽい熟女が昼間働いてるそば屋、「侘助」でハチ合わせ
しても、取っ組み合いのケンカなどしないで)。

 腹が減った。ついでだから、「ナギ」で735円の定食でもと思うが、どうも
足が進まない。ちゅうのもここ、独特の雰囲気が。安いし味も悪くないし清潔
なのに、経営者の個性なんだろうが、入店するなり一挙一動を監視される。実
は1回冷し中華を食べただけなのだが、旧ソ連における、シベリアの極寒ラー
ゲリに叩き込まれた気分に(そういうのが好きな方はどうぞ!)。

 味は趣味ではないが、ウィンド西神田ビル1階のそば屋、「ひかり」のとり
そば(650円)にするか。ボタ山みたいな量がとにかく感動的(吹きさらしで
ノー冷房なのが弱点)。そういや本連載、ここんとこ御近所ばっか。神田近辺
でない、例えば千駄ヶ谷の河出書房新社あたりに、もう取材に行くべき時期かも。 

〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)。『嫌われ者の記』をベースにし
た新刊『出版業界最底辺日記 エロ漫画編集者「嫌われ者の記」』(ちくま文
庫)が好評発売中。
なお、この連載に関しての批判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(た
だし、謝るとは限りません)。
mangaya@air.linkclub.or.jp
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---------------------------------------------------------------------
■あとがき
--------------------------------------------------------------------- 
 大竹さんの「酒とつまみと営業の日々」が今回で50回となりました。塩山
さんのももうすぐ60回だし、長期連載が増えてきたなあ。  (南陀楼綾繁)

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[CONTENTS]------------------------------------------------------
★短期連載「Book Love の、本と出会いと」
 →一箱古本市・南陀楼綾繁賞受賞記念! Book Loveさんのコラムです。
★「大阪豆ごほん」次田史季(ちょうちょぼっこ) 
 →大阪のふたつの「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「食の本つまみぐい」遠藤哲夫
 →〈大衆食堂の詩人〉エンテツが料理文化史の重要本を紹介します。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →ネタ拾いが間に合わず、休載です。


*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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■短期連載 Book Love の、本と出会いと
(1)本棚で待ち伏せ
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『白馬の王子様は本棚の前にいる、かもしれない』

 先日、オーストラリア・メルボルンにある公立図書館でこんなイベントが開
催された。

 Literally Dating !
 出会いをお探しですか?あなたのお気に入りの一冊と、気に入らなかった一
冊をもってお越しください。金曜日の夜、本を通じて、素敵な出会いをみつけ
ましょう。

 読書週間のキャンペーンではありません。リーディングサークルの集まりで
もありません。そう、これは公立図書館主催の出会い系パーティー。参加費20
ドル。あっという間に52人の参加者が集まり、パーティー終了後にはめでたく
13組のカップルが成立。主催者は次のパーティーも企画中だという。

 本は、相手を知る手がかりとしてうってつけのものだ。お気に入りの本が同
じであれば、それだけでまずは話が盛り上がる。会話を交わすことによって、
さらに相手を知る手がかりが増えていくだろう。

 そんな本を通じての絶好の出会いを見事に棒にふった人物がいる。私だ。私
は人生で3回、ナンパされたことがある。その3回ともが書店での出来事であ
る。一回目は渋谷タワーレコード最上階にあったタワーブックスはビジュアル
本の棚の前、二回目は新宿紀伊國屋書店本店岩波文庫の棚の前、そして三回目
は池袋リブロ文庫平積み棚の前、での出来事なのである。当時の私は青かった。
そして何より暗かった。書店の棚の前にいることが一番の幸せだったあの頃は、
いきなり見ず知らずのオトコに話しかけられ、動転し、脱兎のごとく逃げ出し
たのである。何ともさえない当時の私。

 悲しいかな、書店で声をかけられるという幸せには、私はその後一度たりと
も巡り会っていない。図書館主催の出会い系パーティーも国内では期待できな
い。ならばいっそ、今度は自分のほうから声をかけてみようか。本棚の前で、
今まさに本を取り出そうしているあなたに声をかけてみようか。

 でもきっと、そんな余裕は私にはないだろう。だって目の前の棚には、さら
に魅力的な本たちが並んでいるのだから。

◎本日の一冊:『Living With Books』
著者 Alan Powers 出版社 Sterling Pub Co Inc

 書斎、寝室、キッチン、バスルームなど、生活の場で本を効率的かつ魅力的
に収納・ディスプレーする事例150を集めた写真集。我が家では絶対あり得な
い、と思いつつも、いつの日にか、と夢見るための一冊。

〈BookLove〉本と本にまつわるモノが大好き。
http://honnozakka.exblog.jp/



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■大阪豆ごほん  福島杏子(ちょうちょぼっこ)
(36)芥川龍之介から同時代の作家たちへ
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 中学生の頃、国語便覧を読むのが好きだった。特に作家の紹介部分では、写
真とどこに生まれ、どんな歩みをし、どんな亡くなり方をしたのかが書かれて
いるその年表をよくながめていた。特に眼をひいたのは芥川龍之介だった。
「牛乳屋に生まれた」、「母フク発狂した」というその文字がひどく頭に残っ
た。そこから、芥川龍之介に興味をもって好んで読むようになったが、いまひ
とつ「おもしろい」と思えなかった。唯一、遺作となった『歯車』は陰鬱な雰
囲気をもった作品で印象深かったが、さいきん再読してみて初めて読んだとき
のような衝撃はまったくなかった。

 2年ほど前、知り合いの方が「芥川龍之介のことを書いた本はおもしろい」
と言っていたのを耳にし、芥川の連れ合いだった芥川文さんが書かれた『追想 
芥川龍之介』(筑摩書房)を手始めに読み、彼と交流のあった人たちに興味を
もった。田端文士村の主とも言える芥川の周りには、多くの人が集まっていた
様子に彼の人となりや作家たちの横のつながりが垣間みられる。先日、広津和
郎の『同時代の作家たち』を読んだが、そこには宇野浩二が精神を病んだとき
に芥川と共に入院させるために尽くしたことが書かれている。それは芥川が自
殺をするほんの少し前のことだった。

 芥川自身がエッセイなどで自らの生活のことや交友関係を記していなくても、
周囲の人々が細かく彼との交流にふれていたり、彼が自殺をはかったその時間、
近所で芥川の話をしていたということを書いていた文章も眼にしたことがある。
歴史ほど忠実ではなく個人の主観がどっぷり入っているどの文章も作家たちが
実際に交わしたに違いないやりとりがもととなり、生身の人間やその場の雰囲
気が映しだされておもしろく感じる。それは芥川に限らず、作家たちのつなが
りが書かれている文章全般に、同時代を共に生きた者たちのつながりがみえて
くるからだろう。そんな本の読み方がおもしろいと近頃思う。そういう流れか
ら今は室生朝子『大森 犀星 昭和』(リブロポート)を少しずつ読んでいる。

〈ふくしま・きょうこ〉30歳になって1年が経過しようとしているが、29歳で
は見えなかった40歳がすぐそこに見えることに驚いた。そして、人生の折り返
し地点も少しずつ見えてきている位置にたっているということに気がつき、年
齢というものがひとつの生き物のごとく我が身を浸食しているように感じてい
る近頃。

貸本喫茶ちょうちょぼっこ
〒550-0014 大阪市西区北堀江1-14-21 第一北堀江ビル402
http://www.geocities.co.jp/chochobocko/
*営業日は、第1〜3週末です。 金18:00-21:00、土日 13:00-21:00

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■食の本つまみぐい  遠藤哲夫
(24)厖大な資料を駆使し「常識」を破壊
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スティーブン・メネル著、北代美和子訳『食卓の歴史』、中央公論社、1989年

 翻訳本は、第11回の『美食の文化史 ヨーロッパにおける味覚の変遷』以来
だ。そのときタイトルだけ何冊か紹介したなかでも、本書は、将来のヴィジョン
を考えるうえで、もっとも重要になるだろう一冊だ。はやく取り上げたいと思
い、一度原稿を書こうとした。しかし、かなりイイカゲンなおれでも、なかな
か書けないまま登場が遅れてしまった。というのも、本書は「構造主義の限界」
を指摘しながら、「発達論的アプローチ」を試みているからだ。

 こんにちの日本の食文化をめぐる議論や常識は、70年代以後のサブカルブー
ムのなかの食文化ブームの影響をくぐりぬけている。そのブームをリードした
のが、構造主義や影響下の文化人類学だったといえる。その時代に、食の分野
の仕事に関わり、食文化に興味を持ったおれにとっては、本書が指摘する、そ
の限界の一つ一つは、わが身のことであり、内容を噛み砕き飲み込むのに、自
己変革なみの努力が必要なのだ。というわけで、何度も、この500数十ページ
におよぶ労作を読み、ま、なんとか書いてみるか、というかんじになった。

 おれが気になる、本書の特徴の根本は、こういうことだ。たとえば、美食と
粗食、美食と健康、うまいまずい、安くてうまい、といったふうに異なる二項
で考え、どちらが正しいか、イヤイヤどちらかではなくどちらもだよという考
え方は、ごく「常識」になっている。また、そういう考え方は食文化の分野に
かぎらず、理系と文系、経済と文化、実益と趣味、あるいはモノとココロとい
ったぐあいに存在する。本書は、それは、複雑化する現代を理解するには不適
切だし限界がある、あまりにも思考が単純すぎるというのだ。そのようにこれ
までの「常識」を打ち砕いていく。そこが、帯にもあるように、「刺激的文化
論」となっているゆえんだろう。

 著者はイギリス人である。そして、アングロ・サクソンのプロテスタントで
質実剛健のイギリスと、ラテンなカトリックの美食のフランスというぐあいに、
何かと異質な対照性で比較される両国の、印刷物が資料として残る中世からの
食文化を詳細に検討している。駆使する資料の量たるや、スゴイ。とくに、
「第7章 職業としての業界誌」「第9章 家庭のコックの啓蒙?」「第10章
ガストロノームとガイド」のように料理書だけではなく、業界誌や婦人誌や
ガイド本など多様な資料を動員し、その現実生活への影響に分析を加えている
点は類書にみられないし、文献研究の姿勢と方法は実証的かつ具体的で誠実で
ある。文献研究のあり方を考える上でも良書といえるだろう。

「第9章 家庭のコックの啓蒙?」で“キッチンは、家の中で、一番大事な部
屋になりました。あなたが、他のどの部屋よりも、ピカピカに磨き上げておき
たい部屋です。”という1960年代の婦人雑誌の論評を取り上げて、“これは、
恐ろしく解放されていない考えだ。”と切り捨てながら、その根本にある、「仕
事」と「趣味」について、こう述べるあたりに、著者の真骨頂があるようだ。
“一方には、社会的に束縛された「仕事」があり、他方には、スポーツ、芸術、
趣味など、仕事には欠けている興奮と楽しみを追求する模倣、あるいは、遊び
の行為を意味する「余暇」がある、というように、正反対の二つの範疇の行為
しかないと考えるのは誤りだ。”

 ようするに、食べ物への嫌悪や食べ物を楽しむ能力の欠如を含め、人間の味
覚と料理術は、どう発達してきたかであるが、訳者あとがきは著者の主張をう
まくまとめている。“人は、よりおいしいものを、という感覚的欲求を満足さ
せるためだけではなく、社会における自らのステータスを確認し、誇示するた
めにも食べる、というのが、本書におけるメネルの主張の眼目である。自分よ
り下の階級とは異ったものを食べたい、という人々の要求が、食の発達をうな
がしてきたというのである。” “現代日本社会にグルメブームとして表出し
ている社会のエートスを考えるとき、ひとつの重要な手がかりになると思える。”

 貧乏人同士が貧乏を確認しあうなんて、おかしいかんじがしないでもないが、
貧乏人だって、いや貧乏人だからこそか、少しでも優位に立ち他を蔑み同類仲
間との連帯や共感が欲しい。その欲求を食べ物で確認する行為が、さまざまな
グルメ本や食べ歩き本の市場をつくっている。それが、うまいまずい以上の要
因にもなっているとナットクできる。また、自然のままのナマの味が最高とさ
れる近頃の日本だが、それは普遍でもなんでもないどころか、ある種の社会動
向を反映している、ということも本書を読めばナットクできる。

 だけど、やっぱり、とりわけ日本の大衆は、単純な思考や話を好む。多様性
の増大のなかで、日本の大衆食は、どうなっていくのだろうか。ためいき。

〈えんどう・てつお〉フリーライター。
できたら中野駅周辺、もしくは中野から東地域、ビル一戸まるまる借りたい。
なかなか条件にあう物件がなく困っている。秋までに決めたい。求む情報。

「ザ大衆食」 
http://homepage2.nifty.com/entetsu/

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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(49)ホッピーマラソン納品の日
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 2006年7月6日に印刷所への入稿をすませた『中央線で行く東京横断ホッピ
ーマラソン』は、無事、校了した。かくなる上は、取次店を経由して注文書を
配布するだけでなく、直接取引で『酒とつまみ』を盛り上げてくださってきた
書店さんにも、ファックスや電話で、発行のご案内をしなくてはならない。

 今回は、記念すべき編集部初の単行本であり、私自身にとっても初のピンで
書く単行本である。書店さんへの案内に加えて、できることなら、知り合いの
編集者や、これをおもしろがってくれそうな新聞社、出版社に対しても、事前
に案内書を送るなどして、本の紹介を促進したいとも考えていた。しかし、そ
れらの作業のすべてに、私は手をつけることができなかった。

 6月、92歳になる実家の祖母が病に倒れていた。いったんは入院をさせたが、
完治には手術が必要だということで、私たち家族は悩み、結局病院で死なせて
しまうことになることへの恐れから、自宅で看取る決心をした。
 
 母と、その日から実家に泊り込むことになった私とで、看病をする日々が始
まった。7月の末は大竹編集企画事務所の決算報告書の提出期限でもあり、例
年、たいへんな思いをしているのだが、このときはそこに、夜中にも病人の様
子を見るという作業が加わり、通常の仕事もままならない。フリーライターと
いう稼業には、少し仕事を休めば翌月にはあっさりと干上がってしまうような
あぶなっかしいところがある(私だけのことか?)。
 仕事で不義理をすること、それに起因して金欠になること、決算の事務作業、
そして病人の看護、それらにただただ追われるだけで、とてもではないが、書
店さん、新聞社・出版社などへのご案内に手が回らなかった。

 そして、決算書類の作成にも目処がついた7月の下旬、祖母は逝った。静か
で、平和な最期だった。
 ごく近い身内に限った通夜を行い、翌日には、告別式が営まれた。少人数の
葬儀には広すぎる座敷で、親族は明るく祖母の思い出を語り、運転のある者以
外はみな、気持ちよくビールを飲んだ。火葬場で骨を拾い、初七日の法要まで
済ませてから、私はふと時計を見た。午後1時をすでに過ぎている。編集部で
は、この日の午後に印刷所から納品される『中央線で行く東京横断ホッピーマ
ラソン』の束を、カメラのSさんと編集Wクンのふたりが、ダラダラ汗を流し
ながら運び上げているはずだった。

「ばあちゃん、1冊、本が出ましたよ。ちょっとトボケタ本だけどね。長い間、
いろいろ、ありがとう」
 喪服の上着を脱いで空を見上げながら、私はそんなことを思っていたようだ。

〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集発行人
『酒とつまみ』発の単行本第2弾『酔客万来』の編集作業が進んでいます(編
集Wクンが進めてくれています)。雑誌掲載時にはこぼれたネタも盛り込んで、
にぎにぎしい本にしたと思います。今回は創刊号の中島らもさんから、第5号
の高田渡さんまでのインタビュー集です。乞うご期待!
http://www.saketsuma.com

ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(58)情況出版社の巻  アフリカならはえる? 波打つ茶色ビル
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『情況』の発行元、情況出版株式会社は、千代田区西神田3ー1ー3、ウィン
ド西神田ビルの5階に。世界書院と同居。一方が発売元になってるのかも(タ
ダ原稿を書くのに、1000円以上する同誌を買うのも馬鹿らしいのでテキトー)。
場所は首都高速、西神田出入口の古本屋街寄り。眼の前に専大出版局、数軒首
都高速寄りにあかね書房と、いずれも本欄で取り上げた版元様の御殿が、つい
この間まで存在したが、既に影も形もない(さわやか。東京のいいトコだいね
えと、つい上州弁)。

 ウィンド西神田ビルは、アフリカならよりはえよう。壁面が茶色の泥を塗り
たくって仕上げられており、波さえ打ってる(そう見えるだけで実はセメント)。
1階が魚がし料理の「辰巳屋」、隣接してそば屋「ひかり」が最近オープン(昔、
「東京ラーメン」という、五目そばのうまい店があったと記憶)。6階に水産
新潮社(水産講談社でなくホッ!)、東京食料新聞社、2階に継命新聞社、宗
教法人正信会事務所と、店子も個性的。

 エレベーター前にもヘンテコな門。一部レンガで作られた逆Uの字型の、映
画『浮雲』でまだ純情だった、高峰秀子が森雅之と南方で出会う際、伏し目が
ちにくぐれば絵になりそう(いくら行数埋めとはいえオーバーな…)。5階ま
で行ってみる(エレベーターが開くなり、内部が一望出来る形式だと嫌だなぁ
と思いつつ)。逆だった。開くなり事務所でも廊下でもなく、無愛想なドアが。
「………」何となく気がめいり、すごすご退散(7階建ての本ビル、そうは見
えないがいびつなのかも)。

『情況』には一つだけ接点が。明大夜間部での2〜3歳後輩にYが。文学研究
部でショーもない同人誌出してたが、そこはかつて重信房子や遠山美枝子が所
属してた事もある、政治的サークル。九州生まれで度胸のあるYは、たちまち
活動家になり2度パクられ、中退して同誌編集部に身を寄せていた(俺? 生
来の小心者ゆえ、義理で嫌々参加した学外デモでも、外側だと警官にこずかれ
て怖いので、内側でコソコソしてたら、女性活動家のドブス女Bに、「塩山君、
男のくせにだらしないよ!!」と差別的な一喝をされ、シオシオのパー)。で
もお陰で前科もつかず、こうして立派なエロ本屋になれたのだ。ブス女Bに心
から感謝すべきか。

 ウィンド西神田ビル裏手は、日本弘道会ビル。前は前出の通り専大の成金風
キャンパス群。が、人通りは昔から少なく陰気(専大の学生の少なさは異常な
レベル。夜間部だけなの?)。ただすぐ騒々しくなりそう。あかね書房のあっ
た一帯に、住友不動産が巨大なビルを建築中。高級賃貸マンションに一部はな
るらしいが、すぐ隣はミリオン出版も擁する、大洋図書グループの本社ビル
(元森本組東京支社)。付近じゃピンクの制服に身を包んだ看護婦が、怪し気
な撮影をしょっちゅう。「ザマ見ろっ!!」ってトコか。まぁ、いずれにして
も、『情況』にゃ関係ねえな。 

〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)。『嫌われ者の記』をベースにし
た新刊『出版業界最底辺日記 エロ漫画編集者「嫌われ者の記」』(ちくま文
庫)が好評発売中。
なお、この連載に関しての批判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(た
だし、謝るとは限りません)。
mangaya@air.linkclub.or.jp
http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/

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[書評]のメルマガ vol.312
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■■ [書評]のメルマガ   2007.5.13発行

■          vol.312
■■  mailmagazine of book reviews  [ 逃げ去るつばめ 号]
■■------------------------------------------------------------
[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。今回見出しのみ……。
★新連載「音を探してページをめくる」貴島公
 →音楽サイト「モノノフォン」の主が、音とテキストの関係を考察する。
★「〈畸人研究〉今柊二の読書スジ」
 →朝、通勤電車、夕食後、寝床。あらゆる機会を見つけて本を読むのです。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。
★「楽しみと日々 古書展と書簡をめぐるあれやこれや」つばめ
 →謎の人物「つばめ」による書誌探求の余談です。ついに最終回。
★「大阪豆ごほん」柴田尚美(おまめ) 
 →柴田さん、オメデタのため、しばらく休載です。

*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
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1時間以上かけてまとめた今回の「ホンのメド」ですが、ちょっとして
拍子にすべて消えてしまいました。ショック……。すいませんが、今回は
見出しのみです。(日付順)

★5月15日〜26日 村岡マサヒロ個展「楽しい肝ランラン」(目白、ポポタム)
★5月17日、18日、19日 「cafe de poche vol.6」(京都、trico+)
★5月20日 「ちょこっと古本市」(高円寺書林)
★5月20日 海野十三忌07 末永昭二講演会(徳島・北島町、創世ホール)
★5月26日 「spin」創刊記念 本好きガチンコ対決(神戸、海文堂書店)
★5月29日〜6月9日 大竹昭子「きみのいる生活」展(目白、ポポタム)

ついでですが、情報を送ってくださる方にお願い。
情報を提供してくださる場合には、イベントのタイトル・内容紹介・日時・
場所・住所・URLをかならずお書きください。自店のサイトからコピーされ
た情報はだいたい住所が落ちています。こちらでそれらを検索してまとめてい
ますが、正直いってかなりの手間です。
できればこれまでの「ホンのメド」をご参照の上、情報をまとめていただくよ
うお願いします。じゃないと、多くの情報を紹介できないので……。新刊情報など
も同様です。どうかご協力を。

なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

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■音を探してページをめくる  貴島 公
(3)歌のない歌(謡)本
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『こわくない夢 原マスミ作品集』新潮社、2007年4月、2500円
目黒区美術館「原マスミ大全集!」http://www.mmat.jp/event/haramasumi/

 目黒区美術館で6月24日まで開催されている「原マスミ大全集!」を観てき
ました。1980年代に発表された3枚のレコードジャケットが裏も見えるように
展示されていて、近づくと、歌が聞こえてくる。もう終わってしまいましたが、
期間中に原さんの歌を聴くコンサートが行われるなど音楽家としての活動にも
目が行き届いていています。

 一般書籍として新潮社から発売された『こわくない夢 原マスミ作品集』は、
この展覧会のカタログでもあり、展覧会と同じ構成で章立てされています。そ
の第一部を成すのが1990年に出版された角川文庫『トロイの月』に収録された
作品。角川書店から出ていた吉本ばなな(当時)作品の表紙画が注目を集めは
じめた頃に出たこの文庫を、わたしは「歌本」として買った。収められている
32編の詩のうち、ほとんどが3枚のレコードで発表された歌だったからです。

 気になりつつも友人にレコードを借りるなどして遠巻きにして聴いていたわ
たしが原さんの歌をほんとにいいなと思ったのは生で聴いてからのこと。既に
新しいレコードは作られなくなっていた。レコードに入っていない歌はもちろ
ん、レコードを持っていなかったわたしは「ちゃんとした歌詞」が欲しくて、
『トロイの月』を手にしたのだ。いま読み直すと、載ってると思い込んでいた
未録音曲が載っていなかったり、レコード通りでなかったりもするのですが。

 言葉として、詩集として読むことができるかどうか覚束ないわたしですが、
作者によって文字に定着された言葉が、歌として耳にしただけのそれと異なる
ことはわかります。かなや漢字のつかいかた、区切りかたにも、作者の力は注
がれているから、どのように文字にしているかも知りたい。レコードを買うこ
とは、「ちゃんとした歌詞」を手にすることでもありました。歌詞を本にまと
めたものを求めるのも然り。でもそれを見て歌うなんて!勝手に文字にするこ
とよりもまずいのではないかと思いますが、内緒です、見逃してください。

『こわくない夢 原マスミ作品集』には残念ながら歌詞は載っていませんが
(寄せられた文章の中で触れられているのみ。町田康氏が触れている「かなし
いのはいやだ」は好きな歌です。乞レコード化)、歌が喚起するのと似たもの
を感じさせてくれます。これも「ちゃんとした歌詞」なのかもしれません。歌
えませんが。

〈きじま・こう〉説明業、趣味・読書と音楽鑑賞。
詩として発表された言葉に曲をつけて歌うという場合もあり、この時期になる
と、高田渡さんのことが思い出されますが、そんなときは詩集も歌本にしてし
まいます。申し訳ないです。

「モノノフォン」
http://homepage1.nifty.com/hebon/fhp/

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■〈畸人研究〉今柊二の読書スジ
(18)沖縄「食べ」本ベスト3!
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 恐ろしい勢いで、『定食ニッポン』(竹書房文庫)ができあがってしまった。
当初は「まぼろしチャンネル」(http://www.maboroshi-ch.com/)での連載を
ただまとめるつもりでいたが、制作が進行していくにつれ、そんな甘い考えで
は一冊にはまとまらないことが判明し、気がつくと8割程度は書き下ろしもし
くは未発表記事となった。

 さて、全国の定食研究に余念のない今日この頃であるが、未踏の地で豊穣な
る定食文化が花開いているであろうと推測できる地がある。それは沖縄だ。近
年、沖縄の食の独自性に関しては、ゴーヤーチャンプルをはじめ広く知られる
ところとなり、横浜の鶴見など、沖縄料理を食べさせるポイントなどに行けば、
かなりリアルな沖縄定食を食することもできる。しかし、沖縄の食に関するい
くつかのスルドイ書籍を読むと、やはり現地を踏破せねばならないという思い
が強くなってくる。今回はそんな思いをたぎらせる3冊を紹介。

『沖縄の誘惑』(文春文庫ビジュアル版)。名作シリーズ「B級グルメシリー
ズ」の血を引くだけあって、実に深い沖縄ガイド本となっている。初版は1987
年だから、実に20年前から沖縄食に関してハイレベルの紹介を行なっていたの
だ。沖縄そば(本書では「すば」と呼ぶ)の研究ページもさることながら、吉
村昭による「沖縄のビフテキ」が秀逸。

『うりひゃー!沖縄』文/アジア光俊・絵/よねやまゆうこ(光文社知恵の森文
庫)。イラスト・豊富な写真・わかりやすい解説で総攻撃をしかけてくるステキ
な一冊。沖縄でフツーの食べものなかには、東京の食べものと異なったものが
多いことを示している。「ブルーシールアイスクリーム」などアイス文化の隆
盛や、「ジャリパン」などの報告は類書の追随を許さない。ちなみに「ジャリ
パン」というのは菓子パンのバタークリームの部分に「ジャリッ」とするほど
大量の砂糖が入ったパンのことで、読んでいて、気付いたのは、確かに東京で
は食べなかったけど、私の故郷の四国ではよくあったなという発見。南国の特
徴なのだろうか?さらに米軍が持ち込んだ「ポーク」(豚肉の缶詰のランチョ
ンミート)、南米移民たちが里帰りでもたらしたコシンヤ(ブラジルコロッケ)
など、異文化を受けとめて同化させてしまう沖縄の懐の深さもよくわかる。

『沖縄大衆食堂』仲本清司+腹ぺこチャンプラーズ著(双葉社)。タイトルの
とおり、直球ストライクの沖縄定食の紹介・研究の一冊。ついつい図書館で目
にとまり、借りたあとに「ヤバイ、これは買うべき本だ…」と気がつき、すぐ
に返却して、渋谷のブックファーストでなんとか購入(2001年初版)。さらに
買った後に読みはじめると「いかん、読みすすめると現地に非常に行きたくな
ってしまう」とあせってしまった。「おかず定食」「中身汁定食」「ジューシー」
「味噌汁定食」(沖縄の味噌汁はやや違うのだ)などナゾの定食の紹介ばかり
でなく、素材や定食屋での南国的な過ごし方(「ナカユクイ」と呼ばれ座敷席
で昼過ぎなどにだらだらすることらしい)なども網羅している。とうぜん、定
食屋のカナメであるナイスなおばちゃんたちもどっさり登場し、眺めていると
やはり飛行機に乗って沖縄を目指したくなってしまうのだった。

〈こん・とうじ〉畸人研究学会主幹。
『がんがん焼肉もりもりホルモン』(ちくま文庫)が好評発売中。新刊『定食
ニッポン』(竹書房文庫)もよろしく。

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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(48)誰が買うのかホッピーマラソン
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 本体価格1400円。初刷り3000部で、『酒とつまみ』編集部初の単行本とな
る『中央線で行く東京横断ホッピーマラソン』をスタートすることになった。
これは私自身にとってピンで書く初の単行本。自費出版と言われりゃその通り
だが、そんなこたあ気にしちゃいられない。とにもかくにも、早く出版できれば
良いという気持ちだった。そういう気持ちになっている自分自身が嬉しかった。

 ただし、金のことは別である。単行本となると、いかに帯もカバーもつけな
いとはいえ、『酒つま』本誌と同様というわけにはいかない。わずかに3000部
の印刷製本代が、4月に出したばかりの『酒つま』8号、8000部の印刷製本代
を上回るのである。
 うわあ、さすが単行本だよなあ――。

 定価と部数を決めた当初は、『酒とつまみ』編集部はいつものように、だい
ぶノー天気だった。が、少し時間が経ってくると、私の胸には、不安が膨らみ
始めた。取次店さんは一体何冊流通してくれるのか。直取引の書店さんとの取
引は全体の4割に及ぶとはいえ、書店さんは大袈裟に言えば全国各地に点在し
ているのであり、『中央線で行く』などと地域限定した企画の書籍を、一体全
体、どれだけ取り扱ってくれるのか。そして個人読者の方々。『酒とつまみ』
本誌を応援してくださるとはいえ、『ホッピー云々』は文字通りの酔狂、1400
円とは片腹痛いと言われたって、それはそれで、仕方のないことなんだよなあ、
などと、考え始めたのである。

 しかし、どうしたって夢も見てしまう。
 税抜きの本体価格が1400円ということは、7掛けで書店さんに委託した場合、
それが売れれば、編集部としては1冊980円の売上になる。1000冊で、えーっ
と、おお、98万か! 98万なら、ひとまず印刷製本その他必要経費でトントン
だなあ……。
 1000冊で云々と考えるあたりが、そもそもダメなのかもしれない。2000冊
なら、経費と関係スタッフへのギャラが出て、3000冊完売なら利益が出る。そ
う考えてこそ、商売なのだろう。しかし、なんとか売れてくれればと考えたの
は、このとき、1000冊だった。

 というのも、1000人もの人が、1400円の『ホッピーマラソン』を買うという
ことが、どうにもうまく、想像できなかったのだ。
『酒とつまみ』初の単行本としては、創刊号の中島らもさんに始まる『酔客万
来インタビュー』の再録本がふさわしいのではないかと、実は、この期に及ん
で私は、そう感じていたのである。

〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集発行人
連絡事項があって寄った酒場で、1杯だけ飲んで立とうと思っていたが、つい
2杯目を飲み、その間に顔見知りが来て、しばらく喋っていたら、ものすごく
久しぶりの人がわざわざ訪ねてきてくれて、嬉しいもんだからその気になって、
1杯が12杯に。そんな日々に続く間に、朝帰りも清清しい季節となりました。
http://www.saketsuma.com

ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(56)明星大学出版部の巻 
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 小学校に上がる前から、叔母さんたちが熱中していた、『平凡』や『明星』
を盗み読みしてた世代ゆえ、当然、明星大学は“みょうじょうだいがく”だと
確信。それは40過ぎまで続き(群馬じゃ同大に進学する者もまずいなかった)、
或る日突然不明を恥じる事に。それもすこぶるつきの美女によって。

「あたし、明星(めいせい)の大学院に通ってますぅ!」「め・い・せ・い?」
表面上は平静を装っていたが、全く意味不明。相手はサニー嬢(もちろんペン
ネーム)。昨年赤字続きで廃刊になった、『レモンクラブ』の読者でコスプレ
マニア。全盛時代の同誌で投稿ハガキコーナーを担当。コミケ他で美女振りが
知られてたため、男女を問わぬカリスマ人気が(菜摘ひかると対極の健全キャ
ラ)。「そ…そういえばあんたの大学の出版部、この近所にあるヨ」「やばい
かも〜!」何とか編集部に遊びに来た清純派読者(実態は知らないが)に、恥
をさらさずに済んだ(当時の『レモンクラブ』10万部強。昨年の廃刊時2万
部弱)。

 明星大学出版部の入居する信濃ビルは、千代田区飯田橋4‐1‐11。潮出版と
目白通りを隔てた場所。9階の同ビルはL字型で、目白通りに面した1階に「
セブンイレブン」(全ての雑誌をテープどめ、立ち読み出来ない店舗として近
所で有名)。5階までは並びのエレベーターで。6階以上は裏手に回った日陰
のエレベーターを(ちょいと面倒)。

 信濃ビルは灰色のレンガで覆われた、清潔感あふれる作り。9階に新村さん
(大家さん?)。7階に明星大学出版部、信濃印刷、信濃商事が(ビル名から
すると、信濃印刷のオーナーが新村さん?などと勝手に推察)。6階に鉄道活
性化研究会、千代田永田書房、白樺企画と、表側の5階までとは異なり、味の
ある店子が並ぶ。

 清潔感あふれるビルだが、エレベーターは狭く、壁面も茶に近いえんじと毒
々しい色で、朝の出勤時はめげるかも。一応7階まで行ったが、外観と違って各
事務所はキュークツな感じ(外側は立派なオフィスビル。中は単なる雑居ビル)。

 同大出版部、本部はキャンパスのある日野にあるらしい。都心の出張所的存
在なので、これで充分なのかも。『人間性と人間形成の教育学』『ハートフルメ
ッセージ 初等音楽家教育法』『学校いやいやお化けウォブリ−』…いかにも
大学の教員が、無理矢理学生に売り付けるためだけの…と言った感じの出版物
が並ぶが、大学出版部協会(あんですな、こんなの)の加盟社は、どこも似た
ようなもんだろう。

“好きなことして、一番になろう”。明星大学のキャッチフレーズだ。世間は
そう甘くない事を、 キッチリ教えるのが大学かと思うが、これくらい迎合しな
いと、客(学生)は高い学費を納めてくれない時世か。ところでサニー嬢、結
婚してれば子供がアニメ狂になる頃。親子でコスプレってます?

〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)。『嫌われ者の記』をベースにし
た新刊『出版業界最底辺日記 エロ漫画編集者「嫌われ者の記」』(ちくま文
庫)が好評発売中。
なお、この連載に関しての批判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(た
だし、謝るとは限りません)。
mangaya@air.linkclub.or.jp
http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/

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■楽しみと日々 古書展と書簡をめぐるあれやこれや  つばめ
第16回(最終回) 逃げ去るつばめ その2 見出されたTOKIO(フェイク)
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平成19年2月17日
 にいがた国際映画祭で、コムグリット・ドゥリーウィスモン監督『親友 Dear
Dakanda』を観る。『赤い郵便箱』を原作とする、この映画は、美術学校の画学生
が主人公。ヒロインのひとりは、その同級生。絵描き村もどきのコロニーで、
暮らしている。もうひとりは、離島に住むナースで、まちに出るたびに大量の
本を買い、私設図書館ができるほどの本好き。物語のなかで『ちいさな王子』
が橋のような役割を果たしていて、期待以上に楽しむことができた(翌日以降
は『ヒョンスンの放課後』『ディア・ピョンヤン』『ココシリ』を観た。)。

 生涯学習センター図書館にゆく。光文社古典新訳文庫の『ちいさな王子』が
あったので、借りておく。その後、少し調べ事をする。

 そのころ、私には、とても気になることがあった。ある古書展で、匠秀夫編
著『未完 佐伯祐三の「巴里日誌」 吉薗周蔵宛書簡』(形文社 1995)を入手し
たのだが、周知のとおり、東京地裁平成14.7.30判決・判例タイムズ1160号173
頁は、青木茂の鑑定結果に基づき、吉薗コレクション(父親の吉薗周蔵が佐伯
祐三との個人的な交流の過程で入手したと称して、遠野市在住の女性が所有・
保管していた多数の絵画)を贋作と断定している。

 私は、吉薗周蔵宛書簡も偽手紙であることを示す歴然とした証跡があるので
はないかと考えた。そこで、相互貸借を利用して、武生市教育委員会美術館準備
室小林頼子特別研究員起草『吉薗周蔵氏由来の「佐伯作品・資料」に関する調
査報告』を越前市立図書館から取り寄せたりしていたのだった。

 その日、私は『日本切手専門カタログ2006』を借りて、図書館を後にした。
同書には、天野安治編「日付印を中心とした日本消印図鑑」が収められている。
「1937年(昭和12年)12月,船(局)名のローマ字綴りがヘボン式から内
閣訓令式に改められた。」との記述があり、東京をTOKIOと表記した1937年
の欧文機械日付印の例が掲載されていた(同書p774参照)。私は、天啓を受
けた。欧文日付印における「東京」の表記は、昭和12年12月を境にTOKIO
(当時のヘボン式)からTOKYO(内閣訓令式)に変わったのだ。

 匠の編著を確認すると、p235の書簡の到着印(1926年)、p277の絵葉書の
到着印(1928年)が、東京をTOKYOと表記していることが読みとれる。宛名
書きにおいても、贋佐伯祐三は一貫してTOKYOと表記し続けている。また、小
林起草の調査報告p47所収のジョルジュ・ネッケルの吉薗周蔵宛書簡の到着印
(1928年)も東京をTOKYOと表記し、ネッケルの僭称者もTokyoと書いている。

 これに対し、築添正生編『1914年ヒコーキ野郎のフランス便り バロン滋野
と滞欧画家とたちの絵葉書より』(sumus文庫06)p62の滋野清武の絵葉書の到
着印(1919)は、TOKIOとはっきりと読みとれる。「パリ留学初期の藤田嗣治」研
究会編集・発行『藤田嗣治書簡 妻とみ宛(三)』の口絵に収められている書簡の到着印(1915)もTOKIOである。図録は確認していないが、蕗谷虹児(1926か
らパリ留学)記念館で目にした欧文の消印をあしらった作品も、TOKIOと描いて
あった。

『本の雑誌』2006年11月号で、坪内祐三さんは大島一洋著『芸術とスキャンダ
ルの間』(講談社現代新書)を「かなり名著だと思うよ。」と評しているけれど
も、私は、そうは思わない。この本は、新聞記事等を要領よくまとめているか
もしれないけれども、明らかな贋作(吉薗コレクション)について「筆者に真
贋を判定する力はない。」などと判断を逃げている。直観と経験に根ざした洞
察力も、調べを尽くす批判精神も、万人が納得できるだけの根拠を示す論証力
も備えていないのでは、との印象を抱いてしまう。

 なんて終わりかたをするのもひとつの案だとおもいますが、いかがでしょうか。

 つばめさま
       新潟市美術館で「青山二郎の眼」展を見た日に 燕喜館にて
                     いなかのつばめ にせつばめ

【逃げ口上】
 長い間にわたって、つたない冗談に付き合っていただきありがとうございま
した。
 むやみやたらと物事を明確にすることばかりに熱心だった年ごろを過ぎたせ
いか、連載期間中は、「マリ・クレール」を「マリー・クレール」と表記したり、
増村「保造」を「好造」と書き間違うなど、多くの誤りを重ねました。ポーの
小説の題名を念頭に置いたとか、スキゾーと書いたほうがふさわしい増村作品
もあるというのは、後から思いついた言い訳にすぎません。
 それでは、また会う日まで。

 どんと晴れ Don't hurry どっとはらい そして願わくば...どっと(笑)
 
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[書評]のメルマガ vol.308
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■          vol.308
■■  mailmagazine of book reviews [ 書かれていないもの 号]
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[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。イベント・展覧会が色々です。
★「大阪豆ごほん」次田史季(ちょうちょぼっこ) 
 →大阪のふたつの「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「食の本つまみぐい」遠藤哲夫
 →〈大衆食堂の詩人〉エンテツが料理文化史の重要本を紹介します。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。
★「楽しみと日々 古書展と書簡をめぐるあれやこれや」つばめ
 →やたらと本に詳しい謎の人物「つばめ」による書誌探求の余談です。

*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
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★4月15日は西荻と高円寺へ
 西荻窪の南口にある柳小路通り飲食街で、月に一回行われているイベント
「昼市」に、フリマ形式の古本市が参入します。名づけて「昼本市」。飲み食
いしつつ、古本を物色してください。

昼本市
4月15日(日)11:00〜16:00
参加店舗 元我堂、よるのひるね、音羽館、にわとり文庫、ハートランド、
すうさい堂、退屈男、バサラブックス

 そしてこの日は6時から、高円寺の〈コクテイル〉で「オヨちゃんとモクロ
ーくんの古本ジェットストリーム」が行われます。第4回となる今回は、ゲス
トにライターの岡崎武志さんをお迎えし、この日、南陀楼が40歳を迎えるコ
トや、2週間後に行なわれる「一箱古本市」や、岡崎さんの新刊『読書の腕前』
(光文社新書)の刊行など、いろんなことを記念してお送りします。お題は、
「箱」。一箱古本市の箱、単行本の函など、箱のアレコレについて。

オヨちゃんとモクローくんの古本ジェットストリームvol.4 
「箱」のハナシをしようじゃないか

4月15日(日曜日) 18:00〜
古本酒場コクテイル
高円寺北2-24-13
TEL 03-3310-8130
http://koenji-cocktail.com/
*予約優先

出演:南陀楼綾繁
山崎有邦
ゲスト:岡崎武志

 こうなったら、この日はいちにち中飲んだくれだあ!

★新日本文学会の肖像
 4月9日、みすず書房から、小沢信男『通り過ぎた人々』が刊行されます
(本体2400円)。「新日本文学会とはなんだったのか。軽妙なタッチでペーソ
ス豊かに描かれた追悼録から、戦後日本を代表する文学運動体の盛衰が浮かび
上がる。花田清輝に見いだされ、学生のころから新日本文学会の事務・編集に
携わり、2005年3月の解散時まで半世紀にわたって在籍した著者が、そこで
出会った人々の思い出を書き残しておきたいと綴った。」(オビより)
 小沢さんの前を通り過ぎていったのは、次の人たち。井上光晴/寺島珠雄/
向井孝/菅原克己/関根弘/古賀孝之/石田郁夫/菊池章一/内田栄一/小野
二郎/藤森司郎/久保田正文/畔柳二美/富士正晴/秋山清/藤田省三/庄幸
司郎/田所泉。
 一部を除けば、知られているとはいいがたいですが、いずれも重要な仕事を
残した人たちです。なにか、ピンと来るものがあったら、ぜひ本書を手に取っ
てください。

★京都大学総合博物館で「地図出版の四百年―京都・日本・世界―」
地図を刷り、地図を売る。そこには、分かりやすさと奇抜さ、そして手にと
ってもらうための仕掛けがあった。貴重な京都図・日本図・世界図を中心に、
四百年にわたる出版人の創意と工夫をとらえていく。
 また、展示と同時に、京都大学大学院文学研究科地理学教室・京都大学総合
博物館 編『地図出版の四百年―京都・日本・世界―』も刊行される。ナカニ
シヤ出版発行。定価 2,940円(税込)。
期間:2007年4月4日〜5月6日
場所:京都大学総合博物館 2階企画展示室
主催:京都大学総合博物館
http://www.museum.kyoto-u.ac.jp/japanese/event/exhibition070404.html

また、この期間の毎週土曜日に公開講座も開かれます。

4月 7日(土):「江戸時代の地図出版」
4月14日(土):「西洋における地図の出版と社会」
4月21日(土):「博物学と地図との関係」
4月28日(土):「世界・地域の認識と出版地図」
時間:午後1時30分〜午後4時
会場:京都大学総合博物館 2階セミナー室
定員:30名(応募者多数の場合は抽選)
受講料:6,200円

★〈ふぉっくす舎〉〈食堂 アンチへブリンガン〉共催
猿楽町食堂学校 1時限目
和田靜香バラエティ・トークショー
「病気と音楽と相撲のはなし…あと農業も!」

「日本一の病院マニア」は見た! 体当たり爆笑病院放浪記『ワガママな病人
vsつかえない医者』(文春文庫PLUS)の刊行を記念して、音楽評論家の
和田靜香さんのトークショーが開催されます。

4月22日(日)午後3時30分〜5時30分(開場 午後3時)
チャージ 1000円+1ドリンク以上オーダー
定員25名

会場  食堂 アンチヘブリンガン
千代田区猿楽町2-7-11ハマダビルヂング2階
(水道橋駅徒歩5分・神保町駅徒歩10分)
03-5280-6678
※トーク終了後、午後7時30分まで、店内で引き続き飲食できます

参加希望の方はメールでご予約ください。「トークショー参加希望」と件名に
記入のうえ、〈ふぉっくす舎〉 negitet@yahoo.co.jp まで。 
1.お名前 2.人数 3.お電話番号(念のため) を必ずご記載ください

★海文堂で、池澤夏樹さんの朗読会とトーク&サイン会
池澤夏樹さんの短編小説集『きみのためのバラ』が、4月下旬に新潮社から
出版されます。これを記念し、池澤さんをお招きいたしまして、この新刊に収
められている作品を池澤さんご自身に朗読していただきます。さらに、サイン
会もおこないます。

日時:4月29日(日)午後2時〜4時
   午後2時〜3時:朗読会 & トーク
   午後3時〜4時:サイン会

会場:海文堂書店 2F<Sea Space>
兵庫県神戸市中央区元町通3丁目5番10号
電話:078−331-6501
http://www.kaibundo.co.jp/

★池袋モンパルナスの作家たち
「池袋モンパルナス」の代表作家として戦後高く評価された長谷川利行の「支那
之白服」、幻想的な古代モチーフを題材に独自の世界を作った難波田龍起の「ヴ
ィナスと少年」「ニンフの踊り」、板橋に暮らし、常に芸術家グループの中心
にいた寺田政明の「灯の中の対話」、など、当館所蔵作品の中から選りすぐり
の約80点の戦前、戦中、戦後の様々なスタイルの油彩画を「独立美術協会」「新
人画会」などの発表の場となった美術団体や社会的背景との関連で紹介し、新た
な魅力を発見する新しい試みです。(サイトより)

板橋区立美術館
開催中〜5月6日 
http://www.city.itabashi.tokyo.jp/art/index.html

★パリのエスプリ 佐伯祐三と佐野繁次郎展
佐伯祐三と佐野繁次郎の青年時代のつきあいを調査しながら、両者に見られ
る文字の絵画的な表現が彼らの芸術作品にどのような意味を持っていたかを考
察。そして、日本近代洋画における文学や文字との親近性を垣間見ることによ
り、美術は美術、文学は文学と区別するのではなく、総合的な視野にたって芸
術を生み出し、それらを享受しようとしていることを再確認し、さらに、昭和
の絵画において、絵画作品のなかの文字の視覚効果について熟考できれば幸い
です。(プレスシートより抜粋)

神奈川県立近代美術館葉山館
開催中〜5月20日 
http://www.moma.pref.kanagawa.jp/museum/index.html

★ 澁澤龍彦−幻想美術館
本展は雑誌「コドモノクニ」などに熱中した「昭和の少年」としての顔に始
まります。文学の世界では、マルキ・ド・サドやユイスマンスの翻訳者・紹介
者として脚光を浴びますが、澁澤は一方で既存の美術史の枠にとらわれること
なく、多くの美術家たちを紹介しました。マニエリスムの時代からシュルレア
リスム、近世から同時代の日本の美術家まで、澁澤が紹介した美術家の作品を
展示し、その嗜好や視点を探ります。また、1960年代は三島由紀夫や土方巽、
唐十郎など、文学や演劇、美術の先鋭たちがジャンルを超えて緊密に結びつく
時代でした。澁澤の周囲には、引き寄せられるかのように芸術家たちが集まり、
一種のサロンの様相を呈していたといわれています。そのような交友のなかで、
澁澤龍彦が時代をどのようにリードしてきたかを検証し、その美的視野の全体
像を提示しようとする展覧会です。(サイトより)

埼玉県立近代美術館
開催中〜5月20日 
http://www.momas.jp/

★澁澤龍彦の驚異の部屋
澁澤龍彦の膨大な美意識の世界を年代的かつ百科事典的にたどるのではなく、
現在の優れた作家たちの手による、澁澤さんが偏愛した事物やオブジェ観念を
形象化・具体化したオブジェの展示を企画しております。
会場には、新旧の作品を含めた多様なオブジェ作品はもとより、岩石・貝殻・
骨の標本・鏡・書物・写真などの自然物や人工物などによる夢の宇宙誌的な作
品が展示されます。(サイトより)

【出品作家】
池田龍雄、大月雄二郎、加納光於、桑原弘明、合田佐和子、アンティエ・グメ
ルス、鈴木真、建石修志、谷川晃一、中西夏之、四谷シモン

【レクチャー】
巌谷國士「澁澤龍彦の驚異の部屋」  
4月21日(土)午後6時〜 1500円(ワンドリンク付)

期間;2007年4月7日(土)−5月20日(日)
場所:ギャラリーTOM
〒214-0011 東京都渋谷区松涛2-11-1
電話:03- 3467-8102 
http://www.gallerytom.co.jp/

休館日: 毎週月曜日
開館時間: 10:30-17:30
入館料: 一般600円/小中学生200円/視覚障害者及び付添者300円

★モダン日本の里帰り 大正シック ホノルル美術館所蔵品より
本展の出品作品は、世界的に高い評価を受けているホノルル美術館の日本美
術コレクションから、人間性豊かでロマンティックな香りを漂わせた大正時代
から昭和戦前期にかけての作品を、同館の学芸員が選んだものです。展覧会は
「絵画と版画」「装飾美術」「きもの」「大正時代の流行歌の本」の4 つのテ
ーマで構成され、モガ(モダンガール)などの時代風俗を描いた日本画、アー
ル・デコの影響を受けた、ユニークで斬新な柄の着物や工芸品など約80点が、
新たな視点でとらえられています。(サイトより)

東京都庭園美術館
4月14日〜7月1日 
http://www.teien-art-museum.ne.jp/index.html

*情報提供 藤田加奈子さん

なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

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■大阪豆ごほん  次田史季(ちょうちょぼっこ)
(35)「ねこねこいち」を終えて
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「にのにのいち」と「ねこねこいち」も盛況のうちに(はじめだけ?)おわり、
ひと段落。4月は、いつものちょうちょぼっこをしています。

今回、猫特集をしてみて世の中には猫好きが多いことを再確認しました。そ
して猫本もたくさんあることも。でも、前回、郷田さんが書いていたように、
私は猫がとても好き!という感じではありません。会社では生命保険の人に毎
年もらうイヌネコ卓上カレンダーを使っていて、毎月違うネコちゃんがでてく
るとかわいいと思ったりはしますが、自分でネコ写真集を買ったことはありま
せん。そんななので、「ねこねこいち」のために本をさがしているときも、ネ
コ好きな人がどういうものを求めているのかがよくわからず、選ぶのが難しか
ったです。

それでも道端でネコを見かけると、見に行きたくなります。でもそれは、ネ
コが好きだからというよりも、ネコの動きを観察したいという興味からだと思
われます。だから、ネコがいそうな裏道を通るのは好きです。何回かネコをみ
かける場所があって、いつもそこを通るときは注意してみながら通るのですが、
ある日、いた!と思ったら、錆びた缶のようなものでした。暗かったので、ネ
コとよく似た形をしているものと間違えたのでした。ネコ好きの福島さんは、
ネコを見つけるとすごい早さで、捕まえるような勢いで近付いていきますが、
私は少し離れたところから見ています。もう見つけた時点でだいぶん満足なの
です。すぐに逃げてしまったら、少し残念ですが、またその辺で会えるかもし
れないと思うとそれはそれでよいのです。ちょっとサービス精神旺盛なすぐに
逃げないネコに出会ったときには、少し観察して、カメラにおさめたりします。
でも触ることはありません。基本的にはこわいのです。

浅生ハルミンさんの『私は猫ストーカー』はそんな熱烈なネコ好きではない
けれど、何か気になるという私には、とても興味深い内容でした。人のストー
カーは犯罪ですが、猫なら大丈夫。何かのレビューにドライな猫好きにおすす
めと書かれていて、なるほどと思いました。ネコ好きでなくても読みたくなる
猫本もたくさんあることを発見した「ねこねこいち」でした。「ねこねこいち」
を恒例のイベントにしようと計画中。また来年お楽しみにー。

〈つぎた・ふみき〉
平成生まれの新入社員が入ってきて驚きましたが、バイトで書店員をしていた
マンガ好きだったのでちょっと安心しました。いつちょうちょぼっこのことを
話そうかと様子見中。「ロバロバカフェ 春の古本市(4月28日〜5月9日)」
にちょうちょぼっこも参加します。是非、お立ち寄り下さい。

貸本喫茶ちょうちょぼっこ
〒550-0014 大阪市西区北堀江1-14-21 第一北堀江ビル402
http://www.geocities.co.jp/chochobocko/
*営業日は、第1〜3週末です。 金18:00-21:00、土日 13:00-21:00

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■食の本つまみぐい  遠藤哲夫
(23)科学化される調理
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杉田浩一『「コツ」の科学 調理の疑問に答える』柴田書店、1971年

「ビールをつぐとき、コップを傾けるのはなぜ?」「海の魚は皮から焼き、川
魚は身から焼くとされているのはなぜ?」「火の上でサンマやウナギを焼くと
き、横からあおぐのはなぜ?」「すきやきの肉としらたきは、ふれ合わないよ
うにするのがよいというのはなぜ?」…というぐあいに、「この本は調理にあ
らわれるいろいろな「こつ」を、科学の目でながめるのを目的としています」
(著者のことば)

おれが持っているのは1977年の45刷だが、昨年の11月15日に『新装版
『こつ』の科学』として発行された。柴田書店食の殿堂メールマガジン 2006
年12月01日は、そのことを「初版から30年、累計25万部の「こつ」の科学
が、写真、図版を全面的に新しくし、新装版として登場!」と伝えている。
「昭和43年〜44年にかけて、二年間にわたり『月刊専門料理』に掲載された
記事に加え、現場のベテラン調理師から寄せられた疑問、調理学の講義におい
て取り上げられている問題を多数追加し、なんと287項目を収録。普遍的な
調理の仕組みを知ることで、新しい料理の世界が広がります」。料理のプロ、
専門家のニーズを背景に生まれた本だ。

1970年前後から外食産業は「産業」といわれるようになる。そのころ誕生し
成長するファミリーレストランが「産業化」の急先鋒を担った。しかし、その
前から外食は、かなりの市場規模で存在していた。なのに「なぜ」いまさら「産
業」だったのか。簡単に言ってしまえば、飲食業が、銀行の貸付の有力な対象
として、また投資の対象として、「一人前」とみられる事業分野に位置づいた
ということなのだ。別の見方をすれば、生業的な経営から企業的な経営を志向
するものが生き残る競争環境になった。さらに別の言い方をすれば、人びとの
胃袋は生活を超えて市場に引きずり出され、投資の対象になったということで
もある。

というわけで、調理は見て覚えるもの、「なぜ」なんて考えないで先輩のや
るとおりにやればよいといった、「身体で覚えろ式」の体験訓練主義的な悠長
なことでは、資本回転率を上げることで利益を大きくする法則の投資の期待に
応えられないことになった。「調理学」といえば聞こえはよいが、大方のもて
はやされる学問がそうであるように、より短期の人材育成を目的とした「マニ
ュアル化」が進む。

でもまだ、この初版の時期は、「こつ」や「秘伝」を神秘的な権威として守
ろうという保守主義は濃厚だった。そのためか、「著者のことば」では、「「な
ぜ?」を知っても調理のウデが急に上がることはないかもしれません。ところ
が逆に、ウデをもつ人が「なぜ?」を考えることは、調理という仕事の進歩と
向上に、はかり知れない大きな力になると思います」と、ウデのある職人に気
をつかっている様子をうかがえる。

しかし、そのころから、職人が神秘主義的に守ってきた調理法は、どんどん
身も蓋もないほど丸裸にされる。調理の内容は科学され、調理作業もビデオカ
メラで詳細に分析され、マニュアル化される。資本と急成長する市場のニーズ
に応える体制ができあがっていく。さらに食味センサーなるものまで生まれ、
どんどん計量化され、味覚づくりの現場は、いまや化学実験室のような有様に
なっている。それが累計25万部の背景といえるだろう。

おもしろいのは、そのように科学的に丸裸にされた味覚を、一方ではグルメ
たちが「こつ」だの「秘伝」だの「まぼろし」だのと神秘主義的にありがたが
ることだ。ともあれ、依然としてインチキくさい根拠のない知ったかぶりが横
行するなかで、ここに書かれた「なぜ?」を知っておくことは、日々の料理に
役立つだけではなく、料理の構造への理解を深めながらウンチクを楽しむのに
よい。

〈えんどう・てつお〉フリーライター。忙しい。アル中一直線。

「ザ大衆食」 
http://homepage2.nifty.com/entetsu/

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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(47)ホッピーマラソン部数決定!
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 2006年6月。『酒とつまみ』編集部は、創刊以来初の単行本となる『中央線
で行くホッピーマラソン』の追い込みにかかっていた。というのは、ウソで、
編集WクンもデザインのIさんも、ただひたすら、私の原稿を待っていた。

「5月の連休で一気に書くからよ。後はよろしく頼みますわ」
 と強気な発言をしていたのも私だ。しかもこの連休、実は2005年のゴールデ
ンウイークのことなのであった。つまり、書くよ書くよ、初の単行本をついに
出すのよと掛け声だけ盛んで実はほとんど何も進まない月日が、丸1年に及ん
でいた。

 さすがに私も焦っていた。単行本用のボーナストラックである京王線バージ
ョンの、半分に満たないところまでは、05年の10月初めまでに書いていたの
だが、食っていくための仕事に追われ、追われて疲れて深酒をし、その後、年
を越えてからは8号の製作作業でもドツボにはまり、息も絶え絶えなのだった。

 しかし、もういい加減に書かないと、本は出ないなあ、というところまで追
い込まれていた。私にはいつか書くという気持が残ったとしても、1年にわた
って原稿を待ってくれている仲間の気持ちが、この機を逃しては完全に離れて
しまうという危機感もあった。なんとしても書ききらなくてはいけない。

 で、集中して書いたら、ああ、書けた。06年6月半ばには最後まで書き切り、
校正紙をWクンが丹念に読んでくれ、修正箇所へのアドバイスももらった。本
編の最後、作家の重松清さんが登場する箇所になると、とたんに文章のトーン
が弱くなることを指摘して、「ヒヨルな」と忠告してくれた。こちらの性格を
見抜いている。怖い編集者だ。
 けれど、指摘は至極もっともな話でもあったので、その修正も月末には終え、
入稿は7月6日。大日本印刷のMさんが、原稿をとりに来てくれた。

 本編256ページ。カバーも帯もなし。掲載箇所の原稿確認をお願いした重松
清さんからは、帯に使う推薦コメントを頂戴していたが、予算の関係で、帯を
つけることができなかった。
 それでも、ようやく、入稿した。後は最終の校了作業をして、本の完成を待
つばかりである。協議の結果、定価は本体価格1400円。部数を、なんと3000部
と決めた。私は、頭がクラクラした。

 原稿をMさんに渡した後、Mさんをそのままお誘いし、デザインのIさん、
カメラのSさん、編集Wクン、私の5人で、「浅草橋西口やきとん」で入稿を
祝った。普段はこんなに頼まないくらいのつまみを注文し、通称ボールと言わ
れる、レモンハイボールを次々にお代わりして、私はまた、頭がクラクラした。
このメンバーが集まり、Mさんが持参した束見本を手に飲んだ晩から、すでに
2ヶ月が経っていた。

 どんな本になるのだろう。私にとって、ピンで書く初めての単行本が、どの
ような顔をしているのか。不安でもあり、楽しみでもあった。みんなに感謝し
たい気持ちが湧き上がって、私はボールをまた、お代わりした。酒が、止まら
なかった。

〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集発行人
自宅から遠くない場所でシコマタ飲んで意識も不確かになった明け方、どうや
らタクシーに乗せてもらって帰宅。下りるとき、どこか遠くから帰ってきたよ
うな気がしていたがメーターは1000円台。「運転手さん、俺、どこから乗って
きた?」「吉祥寺ですよ」「へ?」疲れているであろう運転手さんに爆笑され
たのは生まれて初めてのことでした。
http://www.saketsuma.com

ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(56)作品社の巻  “朽ちたセメント製長屋”風ビル
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“1979年(昭和54年)1月創立。中上健次「水の女」、山田太一「沿線地図」
を処女出版、翌年、「精読者のための文芸誌」を標榜し、純文芸雑誌「作品」
を刊行するも通刊7号にて休刊。軽薄知小の時代に抗い、硬派であるが人文・
日本文学・海外文学・芸術・随筆など幅広いジャンルで独創的出版物を刊行す
るように心掛けています”(HPの会社案内より)。

『日本残酷写真史』『体位の文化史』『ヴァギナの文化史』『オルガスムの歴
史』『お尻とその穴の文化史』『ペニスの文化史』『マスターベーションの歴
史』『おなら大全』等、確かに“独創的出版物”の乱れ撃ちだ。その作品社は
千代田区飯田橋2ー7ー4(我が漫画屋の目と鼻の先)。

 目白通りに面したオオムラビルの3階。向かって右側が竹書房、左が明治生
命の各ノッポビル。わずか4階建てのオオムラビルは目立つ。両側が、白いタ
イルで覆われた明るい建物のせいもあるが、灰色のすすけた同ビルは、“朽ちた
セメント製長屋”風イメージ。大村さんが1階と4階に居住。大企業所有ビ
ルのようには、手入れが行き届かないのかも。加えてすぐ前に歩道橋。高速道
路や歩道橋から見下されるビルは、どこも3割方安っぽい(日当たりが悪いせ
いも?)。

 1階にラーメン「和三房」。7〜8年前にオープンした際1度だけ行ったが、
少量で値段が高い割に、味は並だったので以降はプッツリ(なぜかレジ後方に
62年度日活映画、『望郷の海』のポスターが。主演の小林旭より名悪役、深江
章喜が大きくレイアウト。さっき見たら既になかった)。店の構えがこれまた
陰気で、オオムラビルにピッタシ。

 陰気と言えば、明治生命飯田橋ビル、麹町飯田橋通郵便局、そして1本道を
渡ったトコにあった個人経営の喫茶店、「エリカ」(1月末に閉店。今は「串
八珍」が)には、作品社の出版物も2〜3(エロ系でないモノ)。同社社員も
出入りしてたのだろう。誰からも振り向かれず、手アカまみれのコミックスの
ブックエンド役を果たしてたが、作品社の暗いたたずまいとピッタリで時々苦
笑した。

 同社は河出書房新社の系列版元と聞いたが、今も? 福田和也が『週刊新潮』
の連載で、河出は執筆者を他社に教えず、昔から囲い込む社是がと書いていた。
漫画界で言えば、集英社みたいなトコらしい。ひょっとすると作品社の陰気さ
は、ビル自体のイメージからだけではなく、閉鎖的な内部から発せられている
のかも。

『日本残酷〜』(5刷)『体位の〜』(9刷)『ヴァギナの〜』(16刷)『オルガス
ムの〜』(2刷)『お尻とその穴〜』(10刷)『ペニスの〜』(8刷)『マスターベ
ーションの〜』(5刷)『おなら〜』(4刷)。“精読者”はやはり心強い。先程も
「珈琲美学」帰りに歩道橋を渡った。夕陽を受けたオオムラビルは、どっか酷
使しすぎたAV女優の、ゆるんだアナルのように見えなくもなかった。 

〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)。『嫌われ者の記』をベースにし
た新刊『出版業界最底辺日記 エロ漫画編集者「嫌われ者の記」』(ちくま文
庫)が好評発売中。
なお、この連載に関しての批判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(た
だし、謝るとは限りません)。
mangaya@air.linkclub.or.jp
http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/

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■楽しみと日々 古書展と書簡をめぐるあれやこれや  つばめ
第15回 逃げ去るつばめ その1
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 南陀楼綾繁さんがブログ(http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/)で掲載し
ている「路上派少年遊書日記――1981年・出雲」を読んでいると、すこし時
代は遅れるが1980年代半ばのころを思い出す。今から振り返れば、『ショー
ト・ショート・ランド』の流れの果てだろう。地元ラジオ局の番組で、三題噺
の掌編を募集するコーナーがあった。わたしは、県庁所在地からすこし離れた
土地の中坊だった。ゆきの通学時間、チャリンコに乗りながら構想を練り、授
業のあいだに書き上げ、かえりに投函することを何度か繰り返した。息をひそ
めて、耳を澄ます。巣穴のなかの甘い戦慄。

ときには続けて採用されることもあったが、賞品がおくられてくるのは、最
後に読み上げられたときだけ。雪が降るクリスマスイブに、はじめて掉尾を飾
って、白い米菓の詰め合わせが届いた。いまでも亀田製菓のせんべいをかじる
と、あのころの空気の匂いまでがあざやかによみがえる。と書くと、途中から、
嘘が混じっているような気がする。花のない冬だし、鼻も詰まっていたから、
香りは分からないだろう。刺すような寒さを感じていただけかもしれない。
 
 河上進少年は、当時の日記を大切に守ってきたというのに、わたしは、もと
もと日記をつけられない怠惰な性分であるし、ノートに記した草稿のたぐいは、
自分の才能に見切りをつけた高校生のころ、きれいさっぱり燃やしてしまった。
吉田小五郎が、柏崎に帰る直前に、「日記を書く男」だの「偽物を作る男」の
心理を書いた原稿など、誰にも見せないままみんな燃やしてしまったという話
(『柏崎だより』所収の「焼却爐」「本を焼く」参照)が心に浮かぶ。

 それから二十年がたち、日記を書く方々は、着実に仕事を積み重ねている。
これに対し、わたしは、時折思い出したように空砲を放つのみである。今回の
連載も、まだ読み通していない『失われた時を求めて』を、この機会に読み進
めて、集英社文庫版(鈴木道彦訳)の刊行ペースにあわせて、ちくま文庫版
(井上究一郎訳)とひそかに読み比べながら、筆を進めようともくろんでいた。
たとえば、こんなふうに、訳文を対照しながら。

【集英社文庫版第4巻p157[抄訳版第1巻p377]、「若いツバメ」=「ジゴロ」
等のルビあり】

サン=ルーが、たまたま親戚[親類]ないしは親しい仲間のなかの二、三
の「若いツバメ」の名前を口にすると、シャルリュス氏は日頃の冷淡さと
は打って変わったほとんど獰猛とも言える表情を浮かべて、「あいつらは嘴
の黄色いろくでなしだ」と言い放った。

【ちくま文庫版第3巻p125、ルビはなし】

サン=ルーの縁者とか親友とかのなかにあって二、三の「ジゴロ」に類す
る男について、シャルリュス氏は、その名を偶然サン=ルーが挙げたとき、
いつもの冷淡さとはきわだってちがうほとんど獰猛なともいえる表情をし
ながら、こういった、「とんだ下司野郎だ。」

 それなのに、横道にそれているあいだに、そして、まだ4巻までしか読み終
えていないというのに、集英社文庫版は完結に至り、時を逸してしまった。と
んだ「のら烏」だ。嘴の黄色いツバメだ。

 実をいうと、文章を書くよりも、事実を調べたり、趣向をあれこれ考えるほ
うが格段に楽しい。だからというわけでもないだろうが、その日に起こったこ
とをその日のうちに書くことは、苦手である。もっとも、熟成に時間をかけて、
いざ文章にしてみても、頭に描いていたほどではないし、「趣向倒れ」に陥る
こともしばしばである。

 たとえば、書こうかなと思って、書かなかった話のメモ。
 矢島正見編著『戦後日本女装・同性愛研究』(中央大学出版部、本体7200円、
中央大学社会科学研究所研究叢書16)を村山書店で確か4000円程度で購入し
た。乱歩の随筆に「ノガミの男娼」が出てくるが、高校生のころは、その正体
がよく分からなかった。いまでもよく分かったとはいえないが、この本から手
がかりを得たような気がする。また、三橋順子の論述(「性転換」の社会史)
を読んだおかげで、増村好造監督『セックス・チェック 第二の性』や『エド・
ウッド』(クリスチーヌ・ジョルゲンセンに便乗しようとしたはずの映画Glen
or Glendaが劇中に登場)を興味深く観ることができた。

同じグループの仕事として『異性装・同性愛書誌目録』(中央大学社会科学
研究所調査研究資料集第3号)の存在を知り、発行所に請求して、入手した。
この文献目録は、『探偵小説四十年』に出てくるので乱歩の読者には周知の「夜
の男の生態」という座談会(旬刊ニュース昭和24.2.10号、現物未見)を採録し
ていない。などなどと、連想や探索を広げてゆくと、収拾がつかなくなる。し
かし、筆が止まった本当の理由は、古書現世が『戦後日本女装・同性愛研究』を
3500円で売っていて、ショックを受けたからだったりする。

 拙稿も『スピン』で林哲夫さんが「淀野隆三日記を読む」の連載を始めるき
っかけになったりして、それなりの役割を果たしたと自負している。材料が尽
きたというわけではないけれど、続きを書くには、まだ機が熟していないので
あろう。いずれは舞い戻るかもしれないけれども、ひとまず筆を擱こう。季節
柄、燕は巣作りに専念する必要があるから。たとえば僕が一羽の燕であるとす
れば(小山清「落穂拾い」)

 と書きかけたまま、『スピン』1号所収の北村知之「エエジャナイカ1」の
最後の3行をみて、慄然とする。

 世の中に書かれていないものは何もない。

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[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。今年もやります、一箱古本市。
★新連載「音を探してページをめくる」貴島公
 →音楽サイト「モノノフォン」の主が、音とテキストの関係を考察する。
★「〈畸人研究〉今柊二の読書スジ」
 →朝、通勤電車、夕食後、寝床。あらゆる機会を見つけて本を読むのです。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。
★「楽しみと日々 古書展と書簡をめぐるあれやこれや」つばめ
 →やたらと本に詳しい謎の人物「つばめ」による書誌探求の余談です。
★「大阪豆ごほん」柴田尚美(おまめ) 
 →柴田さん、オメデタのため、しばらく休載です。

*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
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★「外市のしずく」は明日
古本市イベント「ちょっとだけ、外、行く?」
「第1回外市」のしずく〜幻の2日目〜

 2月24日に開催された古本市イベント「外市」のささやかなアンコールが
開催されます。今度は日曜日。往来座の台をどかさない程度の小規模開催です。
岡崎武志さん、南陀楼綾繁、浅生ハルミンさんをはじめ、第一回外市の参加者
たちが一箱だけで参加します。

[参加店舗] ※火星の庭さんのみ大棚での参加になります。
bookcafe 火星の庭(仙台)/古書往来座(南池袋)
古書現世(早稲田)/立石書店(早稲田)
ごたごた荘古本部(正体は某有名古書店主)/旅猫雑貨店(雑司が谷)
ブックギャラリーポポタム(目白)/退屈男(名誉わめぞ民)
岡崎武志堂(岡崎武志)/古本けものみち(南陀楼綾繁)/ハルミン古書セン
ター(浅生ハルミン)/北條一浩(「buku」編集長)/他往来座お客様オール
スターズ

特別企画・bookcafe 火星の庭 半額セール!!
店主・前野久美子さんのご好意により、外市の残品(洋書絵本のみ除外)を全
て半額にて販売!

[日時] 2007年3月11日(日)/11時〜17時
※往来座は、22時まで営業します。雨天決行!
[場所] 古書往来座 外スペース 
東京都豊島区南池袋3-8-1 ニックハイム南池袋1階/TEL:03-5951-3939 

★「不忍ブックストリートの一箱古本市」、もうすぐ店主募集開始!
 谷中・根津・千駄木エリアの書店、雑貨店、ギャラリー、カフェなどの店舗
の軒先をお借りして、一人が一箱分の古本を持ち寄って販売する青空古本市、
それが「不忍ブックストリートの一箱古本市」です。2005年春、2006年春と
秋に続き、今年は第4回目となります。おかげさまで、すっかり地域に定着し
たイベントになってきました。
 当日までには「不忍ブックストリートMAP」の改訂版も完成します。地図を
片手に、街を散歩しながら、古本に出会えるという、日本初のネットワーク型
古本市です。恒例のスタンプラリーも行ないます。

第4回「不忍ブックストリートの一箱古本市」
2007年4月29日(日)11:00〜17:00
*雨天決行

 この一箱古本市に出品される方(店主)を募集します。箱の総数は100箱を
予定しています。店主の受付は、今回から先着順となります。

◎応募期間
応募開始 3月15日(木) 午前0時
定数に達し次第、受付を終了します。

◎応募方法
3月15日から以下のURLで申し込みができます。
http://sbs.yanesen.org/cgi-bin/entry.cgi

◎参加費
2000円

その他、詳細は「不忍ブックストリート公式サイト」(http://sbs.yanesen.org/)
およびブログ「しのばずくん便り」(http://d.hatena.ne.jp/shinobazukun/)に
順次アップされます。

◎「助っ人」(ボランティアスタッフ)募集
事前の準備から当日の運営まで、できる範囲で「一箱古本市」を手伝って下さ
る方を求めています。「助っ人」として手を貸してくださる方は、メールにてお
申込みください。
hitohako@yanesen.org/ 件名:「助っ人」参加希望

★よるのひるねでも店主募集
 阿佐ヶ谷の〈よるのひるね〉で、古本市「よるひるふる」3を開催します。
現在、ひと箱古本出店者若干募集とのこと。サイトをご覧ください。

3月18日(日) 11:00-18:00 よるのひるね内
参加者 股旅堂・阿佐ヶ谷駅前のふるほんや・よるのひるね
http://members.jcom.home.ne.jp/yoruhiru/

★ロバロバカフェでも古本市
 経堂の〈ロバロバカフェ〉で、ゴールデンウィークに古本市を行います。こ
ちらは一箱じゃなくて、100〜200冊での出品になります。参加希望者は、3月
12日までにご連絡ください。詳細はロバロバカフェまで。

4月28日(土)〜5月9日(水) 
ロバロバカフェ・春の古本市

ロバロバカフェ
TEL&FAX  03-3706-7917
http://www15.ocn.ne.jp/~robaroba/index.html

★なぜか深川で『彷書月刊』フェア
 東京江東区にあるギャラリー・深川いっぷくで、古本と古本屋さん・すべて
の本を愛する方のための情報探求誌『彷書月刊』の創刊23年目お祝いイベント
「新春・彷書月刊まつり」を開催中。

[会期] 2007年3月7日(水)〜3月25日(日)/11時〜18時/月・火定休
※会期中の休み:3月12日・13日・19日・20日
[場所] 深川いっぷく 
東京都江東区白河3-2-15 1F/営業日:水曜〜日曜・祝日/11時〜18時
休業日:月曜・火曜日・祝日の翌日
※東京都現代美術館の近く、深川資料館通り商店街沿い

【展示】タイムマシン彷書月刊(会期中常時展示)
【イベント:いっぷく・いっぱこ古本市】
3月16(金)・17日(土)・18日(日)・21日(水・祝)
彷書月刊の執筆陣を中心に、いっぷくの外と店内にお宝古本箱が並びます。

【トークショー】 3月21日(水・祝) 15時〜16時半※要予約
◇なないろさんの古本入門教室〜ガッチリ なんでも 聞きまショウ
定員:30名/参加料:800円
田村治芳(彷書月刊編集長)×阿部麗奈(リコシェ)

【ライブ+ミニトークショー】3月24日(土) 16時〜18時※要予約
◇ウクレレブラザーズ いっぷくライブ
定員:30名/参加料:ライブ&トーク(茶菓子付)1000円
首席ウクレレ奏者:高野ひろし

◇トークショー 副編集長は見た!裏窓からみた彷書月刊編集部◇
南陀楼綾繁×皆川秀(彷書月刊副編集長)

[ トークショー・ワークショップの予約 ] ※イベント名を必ずお伝え下さい
深川いっぷく:メール/リコシェ:メール、FAX:03-3804-3907
どちらかのメール、又はFAXにてご予約お願いいたします。

★岡崎武志 トーク&サイン会
 3月16日に光文社新書から刊行される、『読書の腕前』を記念して、各所で
岡崎武志さんのイベントが行なわれます。以下、さわりのみ……。

◎神戸・海文堂書店
岡崎武志 トーク & サイン会 & 一箱古本市
2007年3月31日(土) 15:00〜17:00

◎京都・ガケ書房
岡崎武志・山本善行 トーク&古本オークション&サイン会
4月1日(日) 16:00〜18:00

 このほか、4月15日(日)に高円寺〈古本酒場コクテイル〉で行なわれる
「オヨちゃんとモクローくんの古本ジェットストリーム」にも、岡崎さんがゲ
ストとして出てくれます。詳細情報は各店のサイトおよび岡崎さんのブログを
チェック!
http://d.hatena.ne.jp/okatake/

★林哲夫さんの展覧会
 東京美術商協同組合所属の54店舗が絵画・近代美術をテーマに出店し、各店自
慢の美術品を展示・販売する「2007東美アートフェア「春」」に、林哲夫さんが
「開窓近作展」と題して、出展します。

ブースNo.4-6 林哲夫「開窓近作展」

[会期] 3月16日(金)10時〜19時、17日(土)10時〜18時、
18日(日)10時〜17時
※入場無料
[会場] 東京美術倶楽部
東京都港区新橋6-19-15/TEL:03-3432-0191 



なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/


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■音を探してページをめくる  貴島 公
(2)印度へ虎狩りにですって
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宮沢賢治『セロ弾きのゴーシュ』
青空文庫 http://www.aozora.gr.jp/cards/000081/card470.html

 イギリスのポップグループ、ボンゾ・ドッグ・バンドの第3作『おたまじゃ
くし Tadpoles 』を初めて手にしたとき、日本人の多くは、と大きく出る必要
は全くないのだが、1曲目の題名を目にして、「あ、印度の虎狩」と思ったの
ではないか。Hunting Tigers Out in "INDIAH"。60年代の終わり頃、彼の地で
はヒットしたという「恋のスペイスマン」めあてに、80年代半ばようやく復刻
されたLPを買ったわたしもそうだった。

 コミカルな「Hunting Tigers」は、曲調からして、宮沢賢治(1896年−1933
年)の『セロ弾きのゴーシュ』に出てくる「印度の虎狩」とは思えなかった。
しかしながら、このバンドは20、30年代の古いジャズソングやヴォードヴィル
曲をレパートリーにしていることで知られており、果たして「Hunting Tigers」
も作者はハーグリーブス、ダメレル、エバンス(戦後ペリー・コモがリバイバ
ルヒットさせた「イフ」などで知られるチーム)。自作ではないらしい。だと
したら、賢治と同時代、音楽好きでレコードマニアで知られる彼がこの曲の存
在を知っていた可能性もある! と考えると楽しくなった。

 他愛のない思いつきだけど、どこかに接点はないかと、『ゴーシュ』をコン
サート評かレコード解説のように読んで、曲の扱いを分析したり、映画館付き
の楽士のことを調べたり、徳川義親『じゃがたら紀行』(中公文庫、1980年)
を読んだりしていたところ、原子朗編著『宮澤賢治語彙辞典』(東京書籍、
1989年)に、当時賢治が知り得たはずの情報の中に「印度へ虎狩りにですって」
というレコードがあったことが記されていた。作曲者はエバンス。おー、まさ
しく、これは。古いSPレコードは見つけられなかったけど、テレビで放映され
た生誕か没後何周年かの記念番組で、このレコードをほんの少しかける場面が
あり、聴くこともできた。

 ところで縷々綴ってますが、この件についての調査、分析は、佐藤泰平氏の
『宮沢賢治の音楽』(筑摩書房、1989年)所収の「「セロ弾きのゴーシュ」私
見」で余すところなく行われており、わたしの思いつき研究もそこで打ち止め
となった。なので、改めて書くようなことでもないのだけど、ボンゾズがコン
ト仕立てでこの曲を演奏しているテレビ番組『ドゥノット・アジャスト・ユア・
セット』が去年復刻されたり、古い録音を集めた『ボンゾ・ドッグ・バンドが
教えてくれた歌たち SONGS THE BONZO DOG BAND TAUGHT US』(Lightning Tree、
2007年)なんていう企画CDが発売されたりしたので、1曲をめぐってあれこ
れ想像をめぐらせたり、文献を読んだりしたことを記しておきたくなったので
した。

 そのテレビ番組の復刻映像に付けられた字幕によれば、彼の曲の題名の意味
は「人食い虎、インドに現る」。え、「Hunting Tigers」て、虎狩りのことで
はなかったのか。あぁ。

〈きじま・こう〉説明業、趣味・読書と音楽鑑賞。
『ボンゾ・ドッグ・バンドが教えてくれた歌たち』発売のニュースを知ったの
はちょうど2年前。延期延期でようやく出ました。賢治文献で知られているも
のとは楽団が異なり、歌も繰り返しのところしか歌われていないのが残念です
が。いまのところ輸入盤のみ。http://www.lightning-tree.com/


「モノノフォン」
http://homepage1.nifty.com/hebon/fhp/

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■〈畸人研究〉今柊二の読書スジ
(17)濫読・乱読の記録
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 うーむ、忙しい。またしても書き下ろしに近い形の定食文庫本と複数の連載
が重なり、日々のスケジュールがどんどんタイトになっていく。それでも書店、
古書店めぐりを定期的に行なわないと気がすまないので困ったものだ。そうし
て本を買い込むと読むべき本が蓄積してくる。なるべく効率よく読むために一
日のなかでどの時期にどれを読むかを決めるようになってくるわけだった。以
下で最近の状況を簡単に記してみよう。

朝本…『まだある・駄菓子編』(初見健一著 大空出版)。アイオープナーは
カラーの食べ物系の本がいい。これとか、かの文春文庫の『B級グルメシリー
ズ』をぼんやりと眺める。

通勤電車本…『平凡パンチ1964』(赤木洋一著、平凡社新書)。『アンア
ン1970』を読もうと思って購入したら、『平凡パンチ1964』を読んで
からのほうがいいかと思って、こちらから。雑誌づくりのワクワク感が本書い
っぱいに溢れていて、一気に読み上げてしまった。読後に『証言構成『ポパイ
の時代』』(赤田祐一著、太田出版)を書棚からまた取り出してしまい読み始
めてしまう。いつになったら『アンアン1970』が読めるのだろう。『平凡
パンチの時代』(マガジンハウス)も読みたいし。

夕食後本…大体23時くらいに夕食(晩飯)を食べるのが私の日々のペース。そ
の後いきなり風呂に入るわけにも行かないので、ここで読書タイム。現在は、
『天皇のロザリオ』上・下(鬼塚英昭著、成甲書房)。マッカーサーとカトリ
ックが仕組んだ日本改造計画の謀略に迫る本。…うーん、これはいろいろな意
味でスゴイ本ですね。著者が竹細工職人というのも意表をつかれるなあ。

寝本…いつも原稿書きつつ玉砕して果てるというかんじで寝るが、たまたま本
を読むときはさっくり終わるものを。現在は『回転寿司「激安ネタ」のカラク
リ』(吾妻博勝著、宝島社)。面白いが、やはり回転寿司に行きたくなくなる
ので困る。

〈こん・とうじ〉畸人研究学会主幹。
『がんがん焼肉もりもりホルモン』(ちくま文庫)が好評発売中。『畸人研究』
最新号も出ました。

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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(46)5000部なら2ヶ月で品切れ!
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 さまざまなメディアでの紹介によって、『酒とつまみ』という雑誌の知名度
は確実に上がっていった。これは推測になるけれど、知名度の向上というのは、
メディアでの紹介のその先に、手にしてくださった読者が、知り合いに口コミ
で広めていくという理想的な形で進んでいったような気がしている。

 というのも、メディアで紹介された後の反響は、その時点で出ている最新号
への注文として最初に現れるのだが、その後で、バックナンバーの注文も来て
いたからだ。
 知っていただくチャンスが増えることは、バックナンバーの販売にもつなが
っており、これは、多くの在庫を抱えてきた編集部として、心から嬉しいこと
だった。

 弱小ミニコミにとって、在庫を抱えるのは苦しい。置く場所を考えるだけで
も、次の号を出す意欲をそがれるほどだ。『酒とつまみ』編集部でも、そうい
う時期が長く続いた。
 創刊からの各号の出荷開始と品切れまでの期間を見ると、創刊号では約10ヶ
月、2号では8ヶ月かかって2000部をひとまず売り切った形になる。それに勢
いを得て3号を4000部刷った頃から長く在庫を抱えている。3号が品切れにな
るまで、1年と7ヶ月かかっている。部数を5000部とした4号以降はさらに厳
しい状況になった。

 2004年1月発行の4号は、05年秋に『タモリ倶楽部』で2度にわたって知っ
ていただく機会を得たことで急激に在庫を減らしていたが、06年5月時点でも
品切れには至らなかった。5号、6号には、さらに在庫に余裕がある状態。『酒
とつまみ』の天井は5000部なのか。ときおり、悲観的にならざるを得なかった。
500部で始めたミニコミが5000部まで刷れるようになったのだから、それで十
分とも思えたが、やはり、そこには残念さもあったのである。

 状況が変わったと感じられたのは、7号の5000部が、実質的には6ヶ月ほどで
品切れ状態になったときだった。06年の2月末である。
 そして編集部は、8号を8000部刷る決意をし、06年4月13日に配本を開始
したのだ。その翌月が歓喜の5月であったことは前回にも書いたが、実は6月
13日までのちょうど2ヶ月の間に、5738冊を出荷していた。部数が5000部な
ら、すでに品切れということになる。6月上旬には、連載陣の松崎菊也さんた
ちのコントライブの会場で、一挙に96冊を売っている。

 ライブ会場の別室で行なわれた松崎さんたちの打ち上げに参加させてもらい
ながら、私はしこたま飲んだ。なにしろ、5000部ならもう品切れという信じら
れない事態に突入していたのだ。平静でいられるわけがない。
 そして編集部は、この頃から、初の単行本『中央線で行く東京横断ホッピー
マラソン』の刊行へ向けて、本格的に動き始めるのである。

〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集発行人
『酒とつまみ』9号の配本作業もようやく一段落。お届けが遅れた読者と書店
の皆様、本当に申し訳ございませんでした。最近では飲み疲れが相当に来てい
るようで、先般ホッピーを飲んでいてふと気がつくと、「外」を入れるのを忘
れて飲んでいるのでした。これでは甲類焼酎のでっかいオンザロック。体に障
りますよ、本当に(泣)。
http://www.saketsuma.com

ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(55)松柏社の巻 謙虚さ溢れる“スト破り”自社ビル
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 雑居ビルが高層ビルへとスクラップ&ビルド化される中、飯田橋付近では
“事務所難民”が大量発生中だが、同様なのが“喫煙者喫茶店難民”。隔離さ
れる今風の安い店は落ち着かないと見え、コーヒー一杯400円前後の、数少
ない個人経営の残存喫茶店は、中高年の根強い支持を。が、目白通り沿いの作
品社手前にあった、「エリカ」も遂に廃業(コーヒーはまずかったが、BGM
をかけないので落ち着いた)。

「これからの食後の読書は?」と思案。「「樹」の、ラリったマスターの面な
んざ見たかねえし…」。思い出したのが、目白通りの反対側、「津つ井」と
「トクミヤ洋服店」の間の路地を入ったトコの「珈琲美学」(ひでえ店名)。
健在なのかと心配したが、入ると大盛況(タバコの煙も)。個人経営の喫茶店
は、愛煙家とスクラム組んで生き残るしか道はないな(これに役所が介入する
のは、確かに斎藤貴男が言う通り、禁煙ファシズム。ちなみに筆者は非喫煙者)。

 松柏社は路地の右側、「トクミヤ洋服店」の裏手に。千代田区飯田橋1ー6
ー1。堂々たるという規模ではないが、学術系版元らしい、謙虚さ溢れる5階
建て自社ビルだ。路地に面した側は、淡いオレンジ色と、一部コゲ茶色の、細
かいタイルで覆われている。1、2階を同社、3階に都市建築編集研究所、4
階がネクスト、5階は表示なし。1948年設立の英語教材で知られる版元だ
が、社名さえ思い出したくない人も多いだろうから(筆者も)、業務内容につ
いてはこれ以上触れない(『フォークナー研究』の発行元でもありマス)。

 で、松柏社ビルが謙虚に見えるのはもう一つ理由が。付近の人なら絶対知っ
てるはずだが、同社ビル左手には強烈な物件が(その左が「珈琲美学」)。何
と、木造の3階建て住宅が今も現役で、小津安二郎風というより、千葉泰樹風
のたたずまいを(“横丁の小津安”テイストの、『下町』や『好人物の夫婦』
等で知られる千葉監督の映画群は、肩が凝らなくていい)。

 1階は部分的にセメントで固められてるが、他は全部板張り(キッチン「南
海」のカレー色)。路地より少し高台にあり、狭い庭も(ガラパン等の干し物
ヒラヒラ)。一般人も住んでるらしい。一番印象的なのが、3階の「シネマ・
アベ」の白看板。“映画・製作 世界の名作16ミリ(日本語版)配給・販売”。
しかも窓には、お化けの出そうなすだれまで(なぜか2階の窓にも)。とても
21世紀とは思えない(「シネマ・アベ」の実態は、あえて知らない方がいい気
が。そう思わせるド迫力が、建物と看板にはある)。

「トクミヤ洋服店」も異色。先日も横を通ると、職人さんが5〜6人。遂に取
り壊しかと思いきや(これまた文化財級)、ネズミ色の外壁の塗り替え中。都
心から個人の家が次々と追放される中、この一角はまだまだ頑張っている。一
方、松柏社ビルは、一種の“スト破り”に見えなくもない。別に後ろめたいと、
建物が意志表示するはずもなかろうが、無責任な通行者にそう思わせる、濃密
な立地条件下の松柏社の御殿ではある。


〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)。『嫌われ者の記』をベースにし
た新刊『出版業界最底辺日記 エロ漫画編集者「嫌われ者の記」』(ちくま文
庫)が好評発売中。
なお、この連載に関しての批判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(た
だし、謝るとは限りません)。
mangaya@air.linkclub.or.jp
http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/

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■楽しみと日々 古書展と書簡をめぐるあれやこれや  つばめ
第14回 中上健次と二人の死刑囚 その2
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【ジャズ・ヴィレッヂの常連客中上健次が語る話】
 中上健次(1946.8.2-1992.8.12)。1965年上京。1970年8月、羽田の国際
空港事業株式会社に勤務。

(「青春の新宿」より)
 十八の歳に上京したのだが、その東京に着いた次の日に電車に乗って出かけ
た町の中で入ったモダンジャズ喫茶店がいわば私の運命を狂わせた。そのモダ
ンジャズ喫茶店ジャズ・ヴィレッヂは歌舞伎町の朝日ビルの通りにあった。

(「ジャズの日々」より)
 十八から、二十三まで、ジャズを聴いたのは、新宿の「ジャズ・ヴィレッヂ」
という喫茶店だった。

(「路上のジャズ」より)
 一つ通り向うのモダンジャズ喫茶店に、永山則夫が、ボーイとして働いてい
た、永山則夫が、連続ピストル射殺事件の犯人として逮捕されて、それを知っ
た、確か、二十歳までを生きると書いたのは、永山則夫だった。

(「小説の敵」より)
 二十一、この頃、新宿で日がな一日ジャズをきく生活にあきはじめ、毎日、
近くの図書館に通ったことがある。元気のない時だった。丁度、その頃、永山
則夫が逮捕されたのだった。

(「永山則夫の存在を否定した文学者たち」より)
 僕は、逮捕されてからすぐにショックでね。僕と一歳くらいしか違わないん
だよ。僕が新宿で遊んでたときにね、彼は歌舞伎町の「ビレッジヴァンガード」
というところで、ボーイやってたんだ。今はポルノショップになってる。僕は
十八で上京して二日目から、すぐ近くのジャズ喫茶に入りびたりになっていた。
彼は、捕まるまで、その店で働いていた。捕まってから、そういえばあいつか
なと思った。[初出は「月刊TIMES」1990年7月号の由]

【ビレッジゲートのボーイ北野武が語る話】
 北野武(1947.1.18-)。

(『コマネチ!ビートたけし全記録』より)
 1966年、大学にはこの頃からほとんど行かなくなり、新宿界隈で過ごしてい
た。新宿中央口前の「風月堂」に入りびたり、新宿の喫茶店「びざーる」など
でバイト生活を送る。1968年、この頃、新宿のジャズ喫茶「ビレッジゲート」
でボーイとして働く。当時の給料は1日200円だった。他にもバイト先を転々
と変わり、羽田空港のエア・グランド・サービス(AGS)では中上健次らと
知り合う。1970年、日本交通・早稲田営業所に入所し、タクシー運転手とし
て働く。1972年、この年の夏、ストリップ劇場の浅草フランス座でエレベータ
ーボーイに。座長の深見千三郎(久保七十二)に弟子入りを志願。おいらの自
分史

(『浅草キッド』より)
 あいまに『ビレッジゲート』という新宿のジャズ喫茶のボーイとして働き、
夜はフーテン仲間の友だちの下宿に転がり込んで、居候させてもらったりし
ていた。

(『六〇年代「燃える東京」を歩く』より)
 その頃、新宿のジャズ喫茶のボーイとして働いていたことがあった。思い詰
めた表情をしていたのは、おいら以外にもいっぱいいた。直接会ったことはな
いけれど、永山則夫も同じところで、バイトしてたらしい。一歩間違えば、お
いらだってとてつもない凶悪犯罪を犯していても不思議はない。おいらも「燃
えた」六〇年代

(「映画・差別・新宿」より)
 あれはね、ビレッジバンガードだよ。ジャズ・ビレってね、後にピテカント
ロプスっていう名前に変わってね、もうこれ大変な所になっちゃってね(笑)。
皆、手入れ受けて、ひでえ目に遭った所なんだけど。俺ずっとボーイ。1500円
だよ。1500円って時給じゃないんだよ。一日だよ。50円でね、ビレッジゲート
でコーヒー飲んでね。モーニングサービスでサンドウィッチ食い放題でさ。
[初出は「シティーロード」1991年10月号の由]

【蛇足】
「蛇淫」は、市原市の両親殺しの新聞記事に触発されて書かれたが、中上健次
は、調べを尽くしたわけではない。長谷川和彦監督『青春の殺人者』は、「蛇
淫」をもとにした映画であるが、実際の事件をも調べに調べたという。そのせ
いか、映画は、支離滅裂で、つまらない。

 原作の設定では、女は、両親が殺害した男とは幼なじみ。男が経営するスナ
ックの従業員で、両親と同居している男の自宅に住み着いている。実際の事件
では、女は、いわゆるトルコ嬢であって、後に死刑判決を受けた男は、女と客
として知り合い、内縁の夫がいることを知りつつ結婚を考えるようになり、両
親に内緒で借りたアパートの一室に住まわせていた。映画では、設定は原作ど
おりなのに、父親が、興信所かどこかに依頼して、調査したということになっ
ていたように記憶している。幼なじみという設定で、それはないだろう。

 動機も、実際の事件では、当然のことながら、無花果なぞは全く無関係で、
判決(千葉地裁昭和59年3月15日判決、東京高裁昭和61年8月29日判決・
判例時報1225号124頁)の認定によれば、父親が、知人に依頼して女が勤め
ている店の内容や女のことを調べてもらったこと、女がいかなる職業の女であ
り、客に対してどういうことをする女であるかを具体的に卑猥な言葉で述べ続
けるに及んで、意表を衝かれて驚き、女の職業が父親に知られてしまったから
にはもうどうしようもないと思うとともに、最も大切なものが壊されるような
思いを抱き、こんなことを言い続ける者は父親だろうがなんだろうが殺してや
ろうととっさに決意した、というものである。

 判決は、父親殺害後に、「私もこれでこの人から開放される。××[被告人]
はこの人の子ではないかもしれない。これから二人きりで暮らそう。」と母親
が言ったという被告人の供述は、信用性に疑問があるとしている。映画では、
母親が似たような台詞をいう場面があったような気がする。

 実際の事件は、昭和49年10月30日午後5時20分ころ、発生した。この事
件で、殺害された母親が隣の「ふるさと」食堂に米飯を買いに行った日付けが
事実認定上問題となっている。そのとき、萩本欽一が出演している番組が放映
されていたことは間違いないが、それが10月29日午後7時30分放映開始の
「55号決定版」だったのか、10月30日午後7時放映開始の「日本一のおかあ
さん」だったのかが判決で大真面目に検討されている。たしかミヒャエル・ハ
ネケ監督の映画は、日常生活のなかでニュースがずっと流れているうちに、事
件が起こるというパターンが多いような漠然とした記憶があるが、現実には、
深刻な事件の背後に、お笑い番組が流れている、ということもある。

 というようなことを書きあぐねていて、新潮文庫版(昭和57.11.25発行)の
小林信彦『日本の喜劇人』を読んでいたら、次のような一節を目にしてしまう。

 歌舞伎町のジャズ喫茶「ビレッジ・バンガード」で早番のボーイをしていた
たけしは、遅番の或る青年と、毎日、すれちがっていた。青年は〈連続射殺魔〉
の永山則夫である。

 小林信彦が文章で断定的に書くなら何か確実な根拠があるに違いないとは思
いつつも、伝聞であるならしょせんは語りの初期型にすぎないとも考えて、時
が経つほどはっきりする伝説の輪郭と時が経つほど不透明になってゆく事実と
の間で、わたしは、伝説の源にたどりつくことがなかなかできない。これから
さきは、考証が可能な世界から、口承の世界に入ってゆくであろうから。


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[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。古本イベントいろいろ。
★最終回「たった一本の本棚から」岡田@川崎追分町
 →病気療養の日々を綴ったあのブログの主が、大事に読んでる本の話。
★「大阪豆ごほん」郷田貴子(ちょうちょぼっこ) 
 →大阪のふたつの「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「食の本つまみぐい」遠藤哲夫
 →〈大衆食堂の詩人〉エンテツが料理文化史の重要本を紹介します。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。
★「楽しみと日々 古書展と書簡をめぐるあれやこれや」つばめ
 →やたらと本に詳しい謎の人物「つばめ」による書誌探求の余談です。

*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
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★京大で大伴昌司展
昭和の高度成長期に、少年誌の巻頭グラビアの企画構成や怪獣図鑑、放送脚
本など、ポップカルチャーの分野において先駆的な仕事を残した伝説の天才プ
ランナー・故 大伴昌司。今回、その膨大な原稿・原画や貴重な資料が京都大
学に寄託されることになりました。
 独自の「図解」の方法論を、ありとあらゆる分野に当てはめ、少年誌の枠を
飛び抜けて、その範囲は未来工学、DNA、国際問題などのシリアスなトピッ
クにまで。当時、その内容の先進性に驚いた立花隆が「少年マガジンは現代最
高の総合雑誌か」と評しました。とりわけ、横尾忠則とのコラボレーション企
画は今も語り草になっています。
少年誌を舞台に彼が確立したビジュアル・コミュニケーションの方法論は、
その後の日本の雑誌文化のベースとなっているのです。
懐かしくて奇想天外な大伴昌司の世界にタイムスリップしてみてください!

「ビジュアルジャーナリズムをきり拓く 元祖オタク OH 大伴昌司の世界」
会期:1月30日(火曜日)〜2月23日(金曜日) 9時30分〜17時
会場:京都大学百周年時計台記念館 歴史展示室内(企画展示室)
入館料:無料
問い合わせ先
京都大学大学院文学研究科現代文化学専攻
〒606-8501 京都市左京区吉田本町
TEL 075-753-2800

★「わめぞ」の地・往来座で「外市」
 近頃ときどき目にする「わめぞ」とは何ぞや? コレは早稲田・目白・
雑司ヶ谷をつなぐキーワードなのです。この謎の「わめぞ」のメンバーを中心
として、〈古書往来座〉で一日限りの古本市が行なわれます。

「外、行く?」
古書往来座 外市(そといち)〜軒下の小さな古本祭〜

日時:2月24日(土) 雨天決行(やや縮小します)
11:00〜19:00(往来座は22:00まで営業)

会場:古書往来座 外スペース
東京都豊島区南池袋3丁目8−1 ニックハイム南池袋1階
電話番号 03‐5951-3939
http://www.kosho.ne.jp/~ouraiza/

参加店舗
第一回ゲスト:bookcafe 火星の庭(仙台) http://www.kaseinoniwa.com/

わめぞ古本屋軍団:
古書往来座(雑司が谷)/古書現世(早稲田)/立石書店(早稲田)

わめぞオールスター:
武藤良子(雑司が谷)/旅猫雑貨店(雑司が谷)/リコシェ(雑司が谷)/
ブックギャラリーポポタム(目白)/琉璃屋コレクション(目白)/
退屈男(名誉わめぞ民)

一箱古本市スペシャルゲスト:
岡崎武志堂(岡崎武志)/古本けものみち(南陀楼綾繁)/
ハルミン古書センター(浅生ハルミン)/北條一浩(「buku」編集長)
他、往来座お客様オールスターズ約5名

★ダイバー第1回 古本寄港市
神保町の古本カフェ「ダイバー」を港というかバースに見立て、その内外にボ
ートや屋台が7日間だけ停泊するイメージで…。老若男女、個性豊かなニワカ
店主(実はお客様)たちが一箱ずつ、埋蔵品や均一本、お宝本(ホント?)を
持ち寄ります。どうぞ楽しい縁日気分で、覗きにいらしてください。お待ちし
ておりま〜す! ということです。コッチにも退屈男さんが参加。

期間:2月13日(火)〜19日(月) 11:30〜19:30
参加店主:退屈文庫、古書無人島、バナナポート、うずしお書店、野窓書店、
ぐるぐる丸 ほか

古本カフェ ダイバー
〒101-0051 千代田区神田神保町2―12 川島ビル1F
TEL&FAX 03-6657-3277

★ポポタムの展覧会

◎いちむらみさこ・小川てつオ 本本<BONBON>展
2月13日(火)〜2月17日(土)

「Dear.キクチさん、ブルーテント村とチョコレート」「このようなやり方
で300年の人生を生きていく」(ともにキョートット出版)の著者二人が、
これまでにつくってきた手作り本<BON>の展示です。
旅の記録、アート活動の副産物、手作りの読み物……気負いなく柔軟な本の形。
それぞれの本を体験する読書空間〜インスタレーションをお楽しみください。

トークイベント 
2月16日(金)18:30〜20:00(参加費500円/お茶付)
いちむらさん、小川さんを囲んで本づくりの話など。

◎村尾かずこ個展/漆喰でつくる楽しいお店の看板展
2月20日(火)〜2月24日(土)

伝統的な壁を塗る材料や技法として使われる漆喰、土、フラスコ画法でつくっ
た絵看板の作品展です。 「銭湯、金魚屋、居酒屋、本屋、小鳥屋、たまご屋、
ねこの花屋……。本当にありそうなお店とあまりなさそうなお店の看板をつく
ってみました。」 職人でもある作家が左官の仕事を描いた絵本「どぞう」(SA
BU出版)の原画展も同時開催。

会場 ブックギャラリー ポポタム
東京都豊島区西池袋2−15−17
03-5952-0114 日・月休み 12:00〜18:00
http://popotame.m78.com/shop/

★池田憲章、徳島で佐々木守を語る
石川県出身の佐々木守(1936-2006)は、戦後日本を代表する脚本家だった。
彼が手がけたのは「ウルトラマン」「怪奇大作戦」「アルプスの少女ハイジ」
「七人の刑事」「コメットさん」など、そのまま戦後テレビドラマの歴史とい
ってよいほど多彩だ。佐々木が作品に託したもの、彼がめざしたものとは何だ
ったのか。佐々木から薫陶を受けたSF特撮研究家・池田憲章が万感込めて熱く
語る!

池田憲章 講演会「故郷は地球〜脚本家・佐々木守がめざしたもの」
日 時:2月25日(日) 14時30分から
会 場:北島町立図書館・創世ホール 3階多目的ホール
〒771-0207
徳島県板野郡北島町新喜来字南古田91
TEL.088-698-1100 FAX.088-698-1180

★POPって何?
 京都精華大学が運営するショップ/ワークショップスペース「shin-bi」
で二ヶ月に渡り行われる「POP」についてのシリーズ企画。2月16日(金)
の第1回は、細馬宏通、安田謙一、山本精一三氏による「感覚を拡げる 鼎
談・POP?」。コミュニケーション論の研究者であるとともに、ポップソング
論を多く執筆し、自ら音楽活動も行っている細馬氏、大通り・路地裏を問わず
片隅に蠢くものを拾い集めるロック漫筆家の安田氏、様々な領域に素足・素面
で踏み込んでいく音楽家であり、執筆家としても知られる山本氏が、「POP」と
は何かを捉え直す、とのこと。

2007年2月16日(金) 19時から
「shin-bi」(しんび)
参加費:1800円
京都市下京区烏丸通四条下ル水銀屋町620番地 COCON烏丸 3F
http://www.shin-bi.jp/

★大正レトロ・昭和モダンポスター展 〜印刷と広告の文化史〜
 明治末から昭和戦前期にかけて制作されたポスター及びポスター用原画約160
点を通じて、印刷技術の変遷や広告としての特性に焦点を当てた展示を行う。

2月10日(土) - 3月25日(日)※
10時 〜17時(入場:16時30分まで)
姫路市立美術館
観覧料:一般800円/大学・高校生500円/中学・小学生200円
姫路市本町68-25
http://www.city.himeji.hyogo.jp/art/
※休館日については、上記ウェプページでご確認ください。

★絵本酒場「コクテイル」
2月14日・バレンタインデーから3月14日・ホワイトデーまで、「酒と
愛と絵本の日々」ということで、「古本 海ねこ」の棚がコクテイルに登場して、
絵本・雑誌などを出張販売いたします。

「絵本酒場コクテイル」は、酒場ですので通常の営業は19:00〜25:00で
すが、期間中の土曜、そしてイベントがある日曜(2月17日・2月24日・
3月3日・3月4日・3月10日)は15:00から営業。海ねこも店番いた
します。

◎トークショー(対談)
「収集家 VS 古本屋──本とレコードと懲りない面々」
編集者・収集家 沼辺信一さん
音羽館・店主  広瀬洋一さん

日時 3月3日 ひな祭り(土曜)17:00〜19:00 
チャージ 700円

◎トークショー(対談)
「絵本作家と編集者 幸福な関係」
児童文学者 渡辺鉄太さん
編集者   小宮由さん
日時 3月4日(日曜)17時〜
チャージ 700円

お電話、あるいはメールにてコクテイルまで。
不在の折は、留守番電話になっています。
03−3310−8130 cocktailbook@hotmail.co.jp

コクテイルでは、移転3周年を記念して、ほかにもいろいろ
イベントを行います。詳しくはサイトをご覧ください。

古本酒場コクテイル
高円寺北2−24−13 あづま通り
03−3310−8130
営業時間 19:00〜25:00
コクテイル ホームページ
http://koenji-cocktail.com

★ネーポン祭
探偵ナイトスクープや中島らも氏のエッセイ等々でも取り上げられ、幻のド
リンクとまで呼ばれた『ネーポン』の生産終了を偲んで『ネーポン祭』を開催。
『ネーポン』を題材に、WAKKUN(涌島克巳)さん や永田収さんなどなどアー
ティストの方による作品を店内にて展示。
2/24(土)20:30より かつてTVで取り上げられたネーポンにまつ
わる番組の上映会を行います。(入場無料)
ネーポンはモチロン、製造元ツルヤ食品研究所に関する商品なども販売予定。
神戸発祥の味の最後を堪能していただければ。

2月17日(土)〜28日(水)

トンカ書店
神戸市中央区下山手通3−3−12 元町福穂ビル2D
078-333−4720(TEL&FAX)

*情報提供 貴島公さん、北村知之さん

なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

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■たった一本の本棚から  岡田@川崎追分町
第5回(最終回)  病院は辛いよ
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ソルボンヌ景子『入院対策雑学ノート』ダイヤモンド社、2000年

 ソルボンヌ景子は唐沢俊一の奥さんです。この本は、彼女が20歳の際に、
クモ膜下出血で2ヶ月、そして、翌年、肝炎で4ヶ月入院した体験記です。
(そして、この体験を漫画化した作品を読んで、唐沢俊一が感動したことがき
っかけで、二人は結婚します)

 この本には、色々な意味で「怖い」ことが書かれています。まず、入院する
と、(病気の種類にもよりますが)すごくお金がかかる。これは、著者の友人
の貧乏脚本家夫妻が、夫が奇病にかかり、必死に入院費を捻出した文章が収録
されています。
 また、病院では、手術や治療の前段階として、検査や注射や点滴などが、日
常的にあり、それらのほうがよほど、不快だったり、痛かったりする。
 ただでさえ病人で辛いのに、「病気を治すため」とはいえ、さらに辛い辛い
体験をしなくちゃいけないのです。おそろしい話です。

 ところで、私は1年半、「病気」で仕事を休んでいるのですが、西洋医学的
には「病気」と認めてもらえておらず、自宅で東洋医学で治しています。 
 その1年半の「病気」体験で、重々わかったのが、自分が精神的にも肉体的
にも、「まったく我慢強くない」ということです。
 ちょっとあちこち痛いだけで「痛いよ、辛いよ」と口に出して大騒ぎする。
病気が停滞するとすぐ落ち込み、妻に愚痴ばかりこぼす。

 また、病気が長引くと怒りっぽくなり、あちこちに抗議の電話のたぐいを入
れまくる。
 ついには、自転車のカゴに毎日のようにゴミが捨てられていることに腹を立
て、住んでいるマンションの住人全員のポストに、「クレーム」のビラを投函。
結果として待っていたのは、大家さんからの、「みんなが怖がっているから、
このマンションからすぐ、出ていってほしい」というお言葉でした。

 さて、こんな私が、医者が認めてくれるホントの「病気」になり、入院した
ら、どうなることでしょう。
 検査の痛さや辛さなどに耐えられるでしょうか。たとえば癌になった時など、
おそらく、「痛い、痛い」とわめく、見苦しい患者になるでしょう。
 漫画『おたんこナース』に、看護婦に向かって「あなたは健康なんでしょう。
あなたが憎い」と恨みをいだく患者のエピソードがありましたが、私もそんな
ヤな患者になりそうな予感がします……。

〈おかだ@かわさきおいわけちょう〉
というわけで、引越し先を早急にみつけて、引越しをしなければならなくなり、
この連載は最終回にさせていただくことになりました。しかし、「それでも人
生は続く」です。皆様のご健康をお祈りいたします。

〈追記〉
前回のこの連載でとりあげた、『フィンランドに憑りつかれ、裏切られた男』
の著者・小野寺誠さんに出版社経由で手紙を書いてみたところ、なんとお返事
をいただきました。
67歳の今もバックパッカーとして世界中をあてもなく放浪、先日までタイ北
部にいたそうで、今度は中央アジア方面に向かうそうです。実に、壮絶な人生
です。
なお、小野寺さんは、昨年、20数年ぶりにフィンランドに赴き、昔なじみの友
人たちと再会されたそうです。

「腰痛日記@川崎追分町」
http://d.hatena.ne.jp/kokada_jnet/

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■大阪豆ごほん  郷田貴子(ちょうちょぼっこ)
(34)散歩しましょ、ぼくの猫さん
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前々回、杏さんが猫の話をしていました。前回、真治さんが犬の話をしてい
ました。今回はまた猫の話。ちょうちょぼっこでは2月から3月にかけて、
「にのにのいち」と「ねこねこいち」を開催します。「にのにのいち」は、以
前、「おとなの古書市」などを開催してくれたオリタさんが、200円の古本
を200冊売りにきてくれます。レコードもあるそうです。でも珍しい本はな
いそうです。ちょうちょぼっこのサイト の日記に、オリタさんが「にのにの
にっき」を連載中なのでそちらを参照くださいませ。「ねこねこいち」は『L
マガジン』が猫の特集をするというので、それにあわせてなんとなく集めてい
た猫の本を売ることになりました。

ちょうちょぼっこの4人はみんな猫が好き、というわけでもありません。福
島さんは「こたつ」という猫をずっと飼っていたし、真治さんは実家に何匹か
猫がいて、今もすごく飼いたいけど諸事情によって飼えないそう。そんな2人
は猫が大好き。古本が好きな人は猫が好きな人が多いのかしらというほど猫、
猫、猫とみんな言っている気がします。でも 次田さんは、特に好きとか嫌い
とかないみたい。次田さん自体が猫とか犬とかの動物に近いような気がします。
食べてる時とか、考えている時とか。

私の実家にも猫(みーちゃん)がいますが、玄関でつながれて飼われてたり、
妹は猫が近づくと「ぎゃあ」などと言ったりするくらいあんまり誰にも可愛が
られていません。室内猫なのに、家の中で野良猫のようになっています。私が
実家に帰っても狭い家の中でぜんぜん出会うことがありません。たまにその姿
をみつけると、ずっと寝てていいなぁと羨望のまなざしでまじまじとみつめる
くらい。そのまなざしにほとんど愛はありません。

以前、猫が大好きという友人に「ぜひ読んで読んで」と、やまだ紫の『性悪
猫』という漫画を渡されました。確か、ちくま文庫のものだった。可愛らしく
ない絵だなぁなんて思いながら読み進めると、あらまぁ猫が喋っているよ、し
かも嘘っぽくない! 描かれている猫の表情に見入りました。どの猫の表情も
何かいいたげで、何か思いふけっているので す。実際の猫をあんまりよくみ
たことがなかったけれど、なんだか猫の気持ちがわかったような気にさえなっ
てしまったのです。しみじみ読んだ漫画はそれがはじめて。ちょうちょぼっこ
には青林堂からでているハードカバーもあります。

ずっと飼われている猫と、拾われてきた猫の会話があります。

「どうしたね、恐いものなぞないとさっき言ったろうに」
「『守らねばならぬものなど今更もちあわせない』と言いすてたのじゃなかっ
たか」

「わたし野良だもの なんだって平気よ
「衣はすりきれて 食は饐えて 住いは朽ちて 持たないことは恐くないよ」
「持ってしまうと恐くなるよ 失くすのが恐いよ」

猫がこんなに難しい漢字で喋っているのに、全然違和感がない。
遠い目をする拾われてきた猫はほんとにそう思って佇んでいるとしか思えない。

猫「わたしはおかあさんであるから 素直に言えないこともあるよ、
  あのさ 仔猫みたいに 抱いてよ 砂袋みたいに 抱いていてよ」

おかあさん猫が、飼主である人間のおかあさんに喋りかける場面も、文字だ
けではわかりにくいのですが、甘える姿と表情が切なく愛らしくなんとも言え
ません。どの猫がおかあさんだとか、考えたことがなかった私は、はっとしま
した。

最後に、日向ぼっこして眠る猫のひとりごとです。

「せけんなど どうでもいいのです
 お日さま いっこあれば……」

ほんとほんと。猫好きのみなさま、ちょうちょぼっこでお待ちしております。

〈ごうだ・たかこ〉
節分の豆を食べながらネット上をうろうろしていたらしばらくお会いしてない
おまめさんの本『おまめの豆本づくり』(白泉社)をみつけて驚きました。
立春ですね。「さんぽしーましょぼくのねーこさん」とうたいながら散歩した
いものです。

貸本喫茶ちょうちょぼっこ
〒550-0014 大阪市西区北堀江1-14-21 第一北堀江ビル402
http://www.geocities.co.jp/chochobocko/
*営業日は、第1〜3週末です。 金18:00-21:00、土日 13:00-21:00

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■食の本つまみぐい  遠藤哲夫
(22)日本人はコクですよ
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伏木亨『コクと旨味の秘密』新潮新書、2005年

岡崎武志さんは、『サンデー毎日』9月12日号の「文庫王の一冊」で、拙著
『汁かけめし快食學』を紹介評し、「ピケを張り、革命旗を掲げる」「これは
「食」を通しての、著者による階級闘争なのだ」と書いた。ま、じつは、その
つもりだ。階級闘争だの革命だのとかは、あるいは近頃の「改革」もそうだが、
目に見える外側の派手な言動や行動が注目されやすい。が、しかし、イチバン
問題なのは、人びとの内側なのだ。

たかがカレーライスを、いつまでもインドが元祖でイギリス経由の伝来だな
んていっているアタマで、政治だの経済だの文学だのを論じてみたところで、
茶飲み話のようなものだ。ま、茶飲み話なら、それはそれでよいのだが、なに
やら、ジャーナルだの編集だの評論だのエッセイだのと、いっちょうまえの仕
事をしているツラしているから笑ってしまう。かくて、現実の腐りきった現状
は何も変わらない。っつうことなんだね。自分が食べているものを正しく認識
することは、自己認識と社会認識の第一歩だと思うが。ま、事大主義におかさ
れたアタマには、そんなこといっても、わからんだろう。

『汁かけめし快食學』は2004年7月の発行、そのもとである『ぶっかけめし
の悦楽』は1999年の発行、そして本書『コクと旨味の秘密』は2005年だ。

『ぶっかけめしの悦楽』は、いろいろなメディアで紹介されたが、『汁かけめ
し快食學』のときも同様、その評のポイントは汁かけめしにあって、カレーラ
イスを汁かけめしの歴史に位置づけたことについては、あまり注目されてない
か、ま、判断できかねている様子がアリアリだった。そんな中で、『日経ビジ
ネス』2000年2月4日号「話題の書」は、無署名ながら、「今や国民食の代表
と言われるカレーライスは、一体どこから来たのか──。インドが「本場」で、
英国から伝来したというのが通説になっているが、本書の著者は室町時代の武
士が始めた“汁かけ御飯"以来の、日本固有の食文化から生まれたものだとい
う持論を展開する」「かけ御飯の進化の過程を辿り、「旨味のある汁、そこに
味噌をとけば味噌汁、醤油と片栗粉をとけばあんぺい汁、カレー粉と片栗粉や
小麦粉をとけばカレーである」とカレーライスの本質を説く著者。かけめしに
焦点を当て、日本の食文化の特徴をとらえた会心作だ」とした。

日本人の大勢が、とりわけ「コク」と「ウマミ」を意識したのは80年代、ア
サヒドライの広告「コクがあるのにキレがある」あたりからだろう。それまで
は、まとめて「ダシ」というかんじだった。つまり「ダシがきいている」とか
「きいてない」というふうに。

まず「ウマミ」が、化学的に抽出され「具体的な物質」の味として、国際語
になった。しかし、「コク」は、依然としてアイマイだった。それは、単なる
感覚的な主観的な味覚なのかもしれない。2004年の『汁かけめし快食學』のこ
ろでも、学界はともかくとして、一般的に得られる知識としては、そんな状態
だった。ただ「コク」という言葉は、いたるところで使われるようになっていた。

だから拙著では、汁かけめしを特徴づけるのは「コクとウマミ」である、そ
して、インドやイギリスのカレーと、日本で国民食といわれるほど普及したカ
レーライスは、おなじような名前であっても、まったく調理と味覚がちがう。
それは「コクとウマミ」を得る調理があるかどうかであり、伝来といわれるも
のには、それがない、ちがう料理なのだ。伝来した料理を日本流に変えて普及
したのではなく、「コクとウマミ」による汁かけめし料理が、伝来のカレー粉
を生かしたのがカレーライスだ。と述べながらも、コクについては科学的な根
拠があっての話ではないので、主観と体験にもとづくものだとした。ただ、「料
理とはなにか」から始まり、論理的な根拠は、それなりにシッカリしていたの
だが。ま、有名人や大学者や専門家のいうことじゃないと、なかなか信用され
ないものだ。

で、本書だが、その「コクの構造」を科学的に解剖している。それと、拙著
で論理的につめた、コクに関する基本的なことは、ほとんど近い内容だ。カレ
ーライスについても触れているが、おれの主張とピッタリ重なる。やはり、お
れは天才なのだ。たとえば、コクは、アイマイなものだが、日本人にはナント
ナクわかる、それが日本人の証明であるかのように、テナことをおれは書いた。
伏木さんは、コクは「日本のおいしさや満足感の中心に位置しているとさえ言
えます。日本人の好みや趣味にまで深く関わっているようにも感じます」と書
く。日本人のアイデンティティからコクをはずせないだろう。

ま、そういうわけで、本書は、ものを食べる日本人なら、必ず読むべきもの
であり、これを読んで拙著『汁かけめし快食學』を読めば、拙著は先見性や洞
察力や観察力や思考力など……頭脳のよさに富んだ、ようするにコクのある本
だと理解できるはずだ。

どうもちかろごは、文章の長さだの、カタカナの多さだの、表現の瑣末をあ
げつらねてよろこんだり溜飲さげたりしているコクのない本読みが多いようだ
が、やはり、人間もコクがないと薄っぺらなことばかり言うようになるから、
いけないね。ひとのことはいいから、自らコクのある人間になること、それが
革命や改革への道なのだ。ちょっと自慢がすぎ、本書の紹介になっていないか?
ま、読めば、わかる。

〈えんどう・てつお〉フリーライター。昨年、ほったらかしにしていた次の本、
新年早々に編集者から刃つきラブメールをもらった。しかし、夜中に酔って見
たらしく、まったく記憶になく、そのまま一月がすぎ、またメールをもらって
しまった。今年は実業のほうをやるつもりで始まっているし、どうなるのだろ
うか、この本。って書くと、ヤバイかな。やります、やります、必ずやります。
「ザ大衆食」 
http://homepage2.nifty.com/entetsu/

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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(45)1日30冊を出荷した歓喜の5月
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『酒とつまみ』8号が納品されてから、朝日新聞の亀和田武さんのコラムで紹
介していただき、TBSラジオにも出演させていただいたことはすでに書いたが、
実は4月中に、月刊誌『dancyu』のWebでも、編集者さんのお気に入
りの1冊として、もったいなほどありがたい紹介文を掲載していただいていた。

 それらの反響が5月に噴出した。TBSの『ストリーム』というラジオ番組で
は、放送した内容をホームページからダウンロードして再生することができる。
そのことを私は、このとき初めて知った。さらに、『dancyu』の紹介文
の末尾には、小誌のホームページのアドレスを掲載していただいていた。 
 インターネットに非常に疎い私が、その威力を知ることになった。ネットを
介してラジオ番組を聴いてくださった方と、『dancyu』のホームページ
から小誌のホームページへと飛んできてくださった方たちが、ネットを通じて
直販を希望されたのである。

 その数がすごい。編集部には『酒とつまみ』の各号ごとに出荷ノートがある
のだが、その5月のページを繰ってみると、毎日びっしりと出荷の記録が残さ
れている。
取次店である地方・小出版流通センターへの追加の出荷は460冊。編集部
と直接取引をしていただいている書店さんへの追加発送分(初回配本を除く)
が約230冊。いつも激烈に注文をくれる銀座のバー『ロックフィッシュ』へ
の追加が100冊。そして、ネットを通じて注文をくださった個人読者への送
本が、128冊を数えた。これだけで、900冊を超える。1日30冊の超ハ
イペースだ。

 私が本当に驚いたのは、個人の読者さんからの注文数が、取次店からの追加
注文数の約3割にものぼったことである。
 本を作ったら、それを買っていただく必要がある。弱小も弱小。零細企業と
呼ばれる会社さえ、私たちから見れば立派すぎるくらいの大企業。それほどの
弱小所帯ではあるが、作った以上は売らなくてはならない。買っていただいて
初めて、次の号を作ることができるからだ。

 そんなスタッフ一同にとって、メディアを通じて知っていただいた方から、
よし、見てやろうかという意思表示を直接いただけることは、驚きであり、心
底ありがたいことだった。

 毎日来る注文に、コツコツと対応したのは編集Wクンである。私はどうだっ
たか。私は酒を飲んでいた。できたばかりの創刊号を持って地方・小出版流通
センターに飛び込み営業をかけ、200冊の注文をいただいた頃のことを、そし
て、書店の店頭で「この本を置いてください」と勇気を振り絞ってお願いした
日のことを、ゆっくりと思い出しながら、ホッピーやレモンハイ、ウイスキー
のソーダ割りなどを飲んでいた。
 ありがてえや。本当にありがてえ……。
平成18年の5月は、静かな歓喜の1ヶ月だった。

〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集発行人
1月22日、ようやくのことで『酒とつまみ』第9号が印刷所から納品された。
目下、全国の直接取引をしていただいている書店さんや個人の読者の皆様への
配本作業を必死で継続中です。発送が遅れ、たいへん申し訳ございません。今
号も、なにとぞよろしくお願いいたします。
http://www.saketsuma.com

ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(54)図書新聞社の巻  神保町が全滅しても生き残りそう
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“本屋でくれる新聞”の『週刊読書人』や、“全共闘のシンパ新聞”の『日本
読書新聞』に比べ、地味な『図書新聞』は昔から座敷わらしのような存在だっ
た。 “御殿”があるのは、千代田区神田神保町2ー1ー8。白山通り裏手で、
露地を隔てて天ぷら「いもや」。白い4階建ての鈴木ビルはややすすけている
が、同社の白地に黒い極太明朝体文字の看板は、よ〜く目立つ。2階がメイン
のようだが、1階も倉庫に(一時、売れそうにない本も出してたヨ)。

 露地に御殿も看板もよくなじんでいる。当然で、筆者は学生時代から数え、
付近を歩き回るようになり約35年になるが、『図書新聞』はズ〜ッとここに。
何しろ近所には、男なら99パーセントの確率で行ってるはずの、エロ本の殿堂
「東西堂書店」が。学生時代はもっぱら実用に、今は仕事でここへ(エログラ
フ誌類から、ブラシ絵用の写真資料をパクるため大量買いを。ここ、新刊も
「日本特価書籍」同様に一割引き)。

 そんな際、ふと露地を見ると必ずこの看板が。「まだあるんだな〜。どこで
売ってるんだろな〜。誰が買ってるんだろな〜。大きなお世話だな〜」。暇だ
と余計な事も考えたり。引っ越さないトコ見ると、よっぽどいい大家さんなの?
(アコギな三菱銀行の貸しはがしに遭った、我が栄昇ビルの旧大家さんのよう
に)。座敷わらしにふさわしいたたずまいだ。

 逆にふさわしくないのが、同社HP。中でも、“ゴリゴリ・レビュー”であ
るとのキャッチの付いた店主敬白は、石原“激親馬鹿”慎太郎知事のドタマ並
にイカれまくり。“思想の本舗・図書新聞では創業55年一貫して知のトレンド
を練り続け、アヴァンギャルド・シーンの生きた批評を完全パック、産地直送
させて頂いております。媚びない。退かない。甘くない。そのラジカリズムに
徹した辛口の本格書評は…”。最初はギャグのつもり? と思ったが、結構本
気らしい(55年も練り続けたら、粉も空気になっちまうよ)。

 で、昨年数十年振りで同紙を買う(自分の本の書評が出てたため。コレが20
代の時であれば、うれしくて数十部買い占め、親類縁者に配りまくったかも。
さすが50代になると…)。紙面の感じは60〜70年代のまんま。シーンと静まり
返っている。キッチリとレイアウトされて読み易いのだが、サッパリ面白味が
ない。文章の中身で勝負せよなのか?(北朝鮮や創価学会のマスゲームと、ど
っかムードが似ている)

 さっきも昼飯ついでに「東西堂書店」に寄り、看板をチラリ。もちろんいつ
ものまま(隣のヤマト樹脂光学がビルを建築中で、ちょっと息苦しそうだが)。
近くの定食屋「マミ−」は健在だが、「グラン」はまたも長期休業中。個人商
店が次々と廃業に追い込まれる中、白地にスミ文字の同社の看板は不敵ですが
すがしい。神保町が大火で全滅しても生き残りそうだ。いや、『図書新聞』が
廃刊になってもか?(チ〜ン…) 
〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)。『嫌われ者の記』をベースにし
た新刊『出版業界最底辺日記 エロ漫画編集者「嫌われ者の記」』(ちくま文
庫)が好評発売中。
なお、この連載に関しての批判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(た
だし、謝るとは限りません)。
mangaya@air.linkclub.or.jp
http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/

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■楽しみと日々 古書展と書簡をめぐるあれやこれや  つばめ
第13回 中上健次と二人の死刑囚 その1
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 平成17年10月16日午後7時。東京古書会館。地下室の古書展。『極私的東京
名所案内』刊行記念。坪内祐三トークショー。たまゆら。たまもの。orchis.聞
き手亀和田武。目覚めよと呼ぶ声あり。1968年。新宿。ジャズ喫茶ビレッジ・バン
ガード。ウエイターのバイト、北野武。常連客、中上健次。そしてもうひとり、
客とも同僚とも目を合わせない陰気なボーイ、永山則夫。暗いあんちゃんたち。
ちょっとデキすぎた伝説。「その三人が、本当にそこで出会っていたのかどう
かを、じつはぼくと亀和田さんでここ十数年、調査しているんです。」。彷書
月刊2005年12月号31頁。

 わたしは、真相は藪の中だと思うものの、本当に三人が出会ったという証拠
はないと思う。以下に記したのは、そのことを調べたときに、資料から抜き書
きしたメモである。

【連続拳銃魔永山則夫の物語】
 永山則夫(1949.6.27-1997.8.1)19歳。

(拳銃を盗む)
 昭和43年10月初め、「駅馬車」、横須賀基地、22口径小型拳銃(婦人の護身
用)、実包50発くらい、米国製ジャックナイフ、8ミリ撮影機、ハンカチ2枚、
ドル紙幣十数枚。

(東京プリンスホテル射殺事件)
 東京タワー。10月11日午前零時50分、東京プリンスホテル、弾丸2発、綜
合警備保障株式会社派遣警備員27歳、独身。増上寺。有栖川宮記念公園。

(京都八坂神社射殺事件)
 見物するところの多い京都へ行こう。大きな噴水のある寺。鳩がたくさんい
たのでしばらく遊ぶ。新京極。「ヒットラー十三階段の道」。10月14日午前1時
35分、京都八坂神社境内、「ぼん、どこへ行くのや」、2発、「そんなことよさん
か」、4発、警備員69歳、妻と6人の子、一日三合の晩酌が楽しみ。

(北帰行)
 池袋の兄に9000円無心。上野。青函連絡船。函館。札幌。長万部。「私の故
郷(北海道)で消える覚(後)?で(帰)たが、死ねずして函館行のどん行に
乗るこのone weekどうしてさまよつたのか分らない/私は生きるせめで二十
歳のその日まで、罪を最悪の罪を犯しても、残された。/日々を、せめて、み
たされなかった金で生きるときめた。/母よ、私の兄姉妹とよ許しは問わぬが
私は生きる。寒い北国の最後のと思われる短かい秋で私はそう決めた。」福音
館書店の社会科学習小辞典余白[映画「裸の十九才」では金田一京助編『明解
国語辞典』を使用。新明解は1972年初版発行]。

(函館のタクシー強盗殺人)
 10月26日午後11時13分、亀田郡七飯町、弾丸2発、帝産函館タクシー会社
勤務31歳、妻と2人の幼子、7200円。

(名古屋のタクシー強盗殺人)
 11月5日午前1時25分、名古屋市中川区、「港へ何しに行く。今行っても何
もないよ。」「あんた、東京の人でしょう。今晩どうする。」、4発、八千代タ
クシー株式会社勤務22歳独身、7000円、セイコー腕時計。

(逮捕)
 昭和44年4月7日午前1時40分、原宿駅近く、一橋スクール・オブ・ビジ
ネス、2発命中せず、日本警備保障株式会社東京支社警備員22歳。残り十七
発所持。

(第1審の判決書より)
 昭和43年12月から新宿の深夜喫茶店スカイコンパでボーイ見習として働き、
昭和44年1月から新宿の喫茶店ビレッジバンガードに移り、原宿事件で逮捕さ
れるまで、同店でボーイとして働き、その間恋人もでき、同棲生活を送るなど
約四か月間普通の生活を送っていた、いわゆるゴーゴーなどに熱中して明るく
勤務していた、スカイコンパ支配人「素直で忠実で非常に若さあふれる」、ビ
レッジバンガード支配人「他の従業員より明るい」、東京地裁昭和54年7月10
日判決・刑集37巻6号690頁(死刑)。

(第1次控訴審の判決書より)
 昭和43年11月末に上京し、幸荘に住んで、12月4日からスカイコンパに、
昭和44年1月8日から深夜喫茶店ビレッジ・バンガードにボーイとして勤務、
東京高裁昭和56年8月21日判決・刑集37巻6号733頁(無期懲役)。

(検察官の上告趣意より)
 昭和43年12月4日から同月末まで新宿区所在のマンモスバー「スカイコン
パ」に、昭和44年1月8日ころから4月5日まで同区所在の喫茶店「ビレッジ・
バンガード」に、それぞれ店員あるいはボーイとして勤務したが、勤務先上司
の証言によれば、勤務態度は大変まじめで明るかったという。最高裁昭和58年
7月8日判決・刑集37巻6号609頁(破棄差戻)。

(佐木隆三『死刑囚永山則夫』より)
 ビレッジバンガード支配人の証言。「ビレッジバンガード」は、喫茶もやれ
ば酒も飲ませるモダンジャズの店で、午後一時から翌日の午前九時まで営業す
る。当時の従業員は十三人で、勤務時間は、昼は午後一時から九時、夜は午後
九時から翌朝朝五時まで。午前五時から九時は夜勤の者が交代で残業していた。
ボーイの永山は夜の勤務で、よく午前九時まで残業をした。たいへん真面目で
明るい性格だった。永山は体が小さく、明るい顔をしてお客さんと踊ったりし
て、可愛がられていた。「一〇八号事件」のあと明るいというのは、とても普
通ではなく、故意に明るくしていたのかもしれない。給料の支給額は、本給が
二万七〇〇〇円で、残業手当と歩合がある。歩合は日払いだから、総額として
は四万から四万五千円くらいだった。

(教訓)
 殺人者が、常に、暗い、陰気な、表情を見せている、とは限らない。
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[書評]のメルマガ vol.295
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■■ [書評]のメルマガ   2007.1.16発行

■          vol.295
■■  mailmagazine of book reviews  [ 失われた片割れ 号]
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[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。いろんな場所でトークあり。
★新連載「音を探してページをめくる」貴島公
 →音楽サイト「モノノフォン」の主が、音とテキストの関係を考察する。
★「たった一本の本棚から」岡田@川崎追分町
 →病気療養の日々を綴ったあのブログの主が、大事に読んでる本の話。
★「新・新刊書店の奥の院」荒木幸葉
 →新天地・金沢でも書店員となったアラキ。売り場で拾った話をご紹介。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。
★「楽しみと日々 古書展と書簡をめぐるあれやこれや」つばめ
 →やたらと本に詳しい謎の人物「つばめ」による書誌探求の余談です。
★「大阪豆ごほん」柴田尚美(おまめ) 
 →柴田さん、オメデタのため、休載です。

*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
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★塩山芳明のハナシを聞け!
 昨年上梓した『出版業界最底辺日記』(ちくま文庫)が好評の塩山芳明が、
調子に乗って、トークを行ないます。同書の書評に対しての著者からの反論・
イチャモン・罵声のコーナーもあり。

嫌われ者大新年会〜アホ文化人・新刊本・古本ブーム総斬り!!!
弁士・塩山芳明
乗せ役・南陀楼綾繁
庶務・退屈男

日時 1月21日(日)
場所 古本酒場「コクテイル」
〒166-0002 杉並区高円寺北2-24-13
電話 03-3310-8130
PM:6:30より(満員必定要予約)。チャージ料800円。

★『チェコA to Z』(ブルース・インターアクションズ)刊行記念
「ビールとアニメとチェコっとの話」

 チェコ大使館内にオープンしたチェコセンターにて、『チェコA to Z』
の発売を記念したイベントが行われます。『チェコA to Z』の著者お
ふたりのほか、チェコセンター所長ペトル・ホリーさんをお迎えして、
下記のような内容を予定しています。

1. チェコセンター内の映写室で、チェコ旅にまつわるトークショー+
チェコアニメの紹介
2. 会期中の展覧会「フランシチェック・スカーラ 写真マンガ展 
ツィール君の冒険」をホリーさんの解説付きで見学
3. 談話室にてチェコビールで歓談(未成年の方はソフトドリンクとな
ります)

 チェコへの旅を予定されている方はもちろん、普段一般の方は入れない部屋
をお借りしての特別開催となりますので、この機会にどうぞご参加下さい。

『ビールとアニメとチェコっとの話』
開催日:2007年1月25日(木)
開催時間:19:00〜20:30位 ※時間外特別開館
場所:チェコセンター(チェコ大使館内)

参加ご希望の方は、下記いずれかの方法でお申し込み下さい。
・メールにてお申し込み bip_sales@bls-act.co.jp
・FAXにてお申し込み 03-5770-5024
※いずれも、タイトルに「『チェコA to Z』1/25イベント参加希望」と
御明記の上、氏名、ご参加希望人数、ご連絡先(お電話番号/メールア
ドレス)をご記入下さい。
(先着50名様ほどを予定しております)

★中之島図書館で林哲夫さんが講演

演題:「雑誌“辻馬車”と波屋書房の周辺〜大阪出版史の一齣(ひとこま)」
講師:林哲夫氏(画家・文筆家)

演題:「三好米吉とは何者か?〜雑誌「柳屋」と近代の大阪出版界を考える」
講師:熊田司氏(大阪市立近代美術館設立準備室研究主幹)

日時:平成19年2月3日(土) 13時?16時30分
場所:中之島図書館・3階文芸ホール
応募締切:平成19年1月23日(火)必着

中之島図書館
大阪市北区中之島1-2-10
電話: 06-6203-0474(代表)

★内堀弘・高橋徹・田村治芳3氏による「本」の鼎談 

日時:2月3日(土曜日)15時00分から17時00分(開場14時45分)
場所 東京堂書店
メール(tokyodosyoten@nifty.com)にて、件名「内堀さん高橋さん田村さん
鼎談参加希望」・お名前・お電話番号・参加人数、をお知らせ下さい。2月2
日以降は、お電話にてお問合せください。電話 03?3291?5181

★ 市制90周年記念 鈴木信太郎展
 二科会、一陽会で活躍し、文化功労者としても顕彰された洋画家・鈴木信太郎
(八王子市八日町出身)の初期から晩年までの活動を4つのセクションに分け、油
彩、水彩画などの作品を中心に約100点を紹介する。(サイトより)
 実際に目の当たりにすると、幸福感で胸がいっぱいになる絵が目白押し。ぜひ
ぜひ展覧会場へ! 本関係の展示もあり、佐野繁次郎らと同様、鈴木信太郎と出
版文化との関わりもなかなか興味深くモクモクと大変刺激的でした。装幀や挿絵
リストが完備されていたりと、図録も充実しています。

開催中〜2月4日 
八王子市夢美術館
http://www.yumebi.com/index.html

★ 中村宏・図画事件 1953-2007
 1950年代、政治的・社会的な事件や事象を取材して描かれた作品群は「ルポル
タージュ絵画」として注目を集めました。
それ以降も、時々の社会状況と深く関わりながら描かれてきた作品は広く支持さ
れ、戦後日本美術史において高く評価されています。
本展は、そのような中村作品を包括的にとらえ、油彩画約100点に、装丁・挿
画・イラストレーションや資料など約200点を加えた総数300点を通して、制作の
全貌を明らかにするものです。(http://www.zugajiken.jp/index.php より)

1月20日〜4月1日
東京都現代美術館
http://www.mot-art-museum.jp/


★ 浜野佐知『こほろぎ嬢』上映
 1998年に、尾崎翠の作品と人生の謎に挑み、『第七官界彷徨−尾崎翠を探し
て』を製作・監督した浜野佐知が、『百合祭』という世界的なセンセーションを
巻き起こした作品を経て、再び尾崎翠作品の映画化に取り組んだのが、本作だ。
 「こほろぎ嬢」といえば、尾崎翠ファンに人気の高い短編小説。これに「歩
行」「地下室アントンの一